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Open Enterprise Magazine 200907
連 載 新テクノロジー・ビジョン̶第55 回 サイエンス・ライター 岩山知三郎/編集部 TechnologyVision インテルの創業とDRAMの商品化 ロバート・ノイス(中編) ロバート・ノイスは、1959年にフェアチャイルド・セミコンダクタの実質的な社長に e なり、集積回路 (IC) 事業を軌道に乗せた。 しかし、親会社の役員に就任したこと で半導体研究から遠ざかり、雑務に忙殺されるようになった。LSI時代の到来を 確信したノイスは、 ゴードン・ムーアとともに半導体メモリを開発・製造するインテ pl ルを創業した。ノイスは、新機軸となる製品を他社に先駆けて市場投入する戦略 を重視し、DRAMとマイクロプロセッサを世界で初めて商品化した。本稿では、 IC市場の立ち上がりからインテルの創業、DRAMの開発に至るまでのノイスの Sa m 軌跡をたどった。 商用モノリシックICのデビュー 一体形成型 集積回路( IC) 取 組 前 1958 年、 ・ ・ ・ 退社 年 8月 9 月間 上 達成 。同社 1個 。 製造 経験 8 人 技術者 伴 、冷暖房機器 創業 条件 職 引 受 20 、 。 社長、 300 万 ・ 。 Open Enterprise Magazine Jul 2009 ・ 1人 予測 、 手 。 後、 全株式 ・ ・ ・ 金額 、1957 年 持 寄 8 人 、2 年後 半導体事業 売上 買 取 権利 行使 譲渡 。 500 ・ ・ 約 30 万 ・ 1959 年 9月24日 、300 万 分 、 電報 受 取 ・ 退社 半年間 販売 ・ 3 倍 拡大 株式 1 万 9,901 株 、創 業者 8 人 投資銀行家 13 ・ 現行 売 50 出資元 。 1 、1960 年 ・ 650 万 利益率 高 事業 ・ 出資 受 1959 ・ 、製造 1959 年 3月 、二重拡散 ・ (c) Copyright 2009 IEEE. All Rights Reserved. 1958 年末 務 ・ ロバート・ノイス(1927.12.12 ∼ 1990.6.3) Robert Norton Noyce 創業者 600 倍 資産 ・ 社長 正式 就任 、 。 ・ 就任 IC 研究開発担当 責任者 。 開発 担当 インテルの創業とDR A Mの商品化 。IBM 、n型 MOS技術 1K DRAM 製造 年 自社製 1973 採用 計画 、 IBM以外 供給 。 、 DRAM 内製化 方針 IBM 約 2 年 早 、MOS技 術 ・ 除 、 IBM ・ DRAM 1103 購入 。 DRAM市場の盛衰 本社 16 梨畑 工場 建 設 、1971 年 6月 移転 、Intel 1103 80 万 赤字 1103 売上 成功 確信 準備 始 。新 、7月 8月 発生 、9月 見通 ・ 考 1 株 35.5 応募 700 万 。 約 近 資金 役員 従業 員 自社株 1 株平均 4.04 、 購入 株式 分割 220 万株 。 場 投入 超 利益 享受 約 10 万 個 、4K 技術 、1967 年 考案 1 IBM ・ 、1968 年 特許技術 考案 構成 製造 術 初 1977 年 、 技 技術 元技術者 1969 年 設立 半導体 供与 、 。 、1976 年 市販 DRAM市場 、 行 DRAM 早 NMOS 、1984 年 CMOS 移 世界 4% DRAM市場 。 一躍 75% 。 半導体 [1] Leslie Berlin, "THE MAN BEHIND THE MICROCHIP - Robert Noyce and the Invention of Silicon Valley", Oxford University Press 2005. [2] T. R. Reid, "The CHIP", Random House Trade Paperbacks 2001. [3] John Reed, "The Invention of the Intel 1103 The World's First Available DRAM Chip". [4] "Semiconductor Family Tree", Electronic News, July 8, 1968. [5] Donald F. Liddie, "SIGNETICS CORPORATION KEY EVENT CHRONOLOGY". 16 DRAM「MK4116」 発売 、 獲得 1973 年 「System/ 1 DRAM 採用 他社 256 [参照文献] 。IBM 64 。 撤退 決 線 書 込 読 出 DRAM 価格競争 一層激化 DRAM 、 内 電荷 有無 0 表現 、1 本 技術 市場 立 上 台 低下 、1985 年 n型MOSFET 1 。 、IBM DRAM RAM 採用 、 。 (Robert H. Dennard) DRAM 市 6,000 万 、 激化 、先行者 最 単純 製造効率 高 技術 1973 年 売上 一気 困難 DRAM 1972 年度 売上 2,340 万 稼 DRAM技 64 ・ 1972 年 1103 製造 、1 種類 Photo by Alan Orling, courtesy IBM DRAM DRAM 製 品 化 DRAM市場 競争 。 ロバート・デナード(1932.9.5 ∼) Robert H. Dennard 。 。 新規株 発行 調達 4K n型 MOS 変 n型 MOS 。 1971 年 10月13日 殺到 、市場 DRAM 向 p型 MOS 流 価 資金調達力 従業員 実 感 30 万株 術 、事業 軌道 乗 早 時期 、 値 会社 (NEC) n型MOS 株式 公開 n 、日立製作所 日本電気 出荷 、 順調 拡大 。 2K Sa m 移転 出荷 。 、1971 年夏 株主 公募 型MOS技術 約 10 万 5,000 平米 土地 南 370 Model 158」 「 同 168」向 e 、 pl 新社屋 建設 決定 世界 [6] "Oral History of Panel on the Development and Promotion of Fairchild Micrologic I n t e g r a t e d C i r c u i t s", C o m p u t e r H i s t o r y Museum, October 6, 2007. [7] Leslie R. Berlin, "Robert Noyce and the Rise and Fall of Fairchild Semiconductor, 1957-1968", Business History Review 75(1), Spring 2001. Open Enterprise Magazine Jul 2009 29 インテルの創業とDR A Mの商品化 、1959 年 9月 (Lionel Kattner) ・ (James Nall) 、 ・ (Robert Norman) 、 (Isy Haas) 、 ・ 生 (Sam Fok) 編成 親会社 。 ・ ・ 充当 ・ 。 1959 年末 社 1,260 人 超 、 後 毎月約 100 人 。 、8 人 化 始 。8 人 、 価格 、売上 10 。 、好業績 Micrologic Elementの製品カタログ 多方面 業 務 出張 ・ 連続 多忙 極 、 ・ 責任者 開発 ・ (Charles E. Sporck) 、 重視 。 募 代 製造部門 責任者 就 、部門間 折衝 退社 、1967 年 社長兼最高経営責任者 。 社 頃、1960 設立準備 進 人物 出会 、1961 年 2月 ・ ・ 「Micrologic Element」 名称 発 ・ 、 。 (Lionel Kattner) 、 120 ・ 利用 、同年 数 月間 IC 、3∼4 、 、価格 100 部品 、同 機能 50 分 1 、 、IC 初期 高 回路 面 積 最大 95%、設計 組立 9月 IC 開発・製造会社 最 大 90%、消費電力 最大 75%削減 。 IC開発 携 。 抵抗 実現 退社 、投資銀行 出資 受 説明 。当時市販 ・ (Mark Weissenstern) 汎用 5∼6 個 抵抗 一体化 ・ 合 向 Micrologic Element 個 ・ (David James) 、 設立 1日2 回 IC 組 論理回路 構成 (David F. Allison) Photo : John Brenneis, Copyright 2009(c) National Semiconductor Corporation IRE Show 開催期間中 、 、 、1961 年 8月 ノイスとチャールズ・スポーク(1976 年 3 月) 回路 展示 開催 、6 種類 創業 参加 ・ 役割 ・ 。同社 共 、 IC製品 果 設立 計画 。 退社 「IRE Show」 、 表 、6 種類 製品 、IC 開発・製造 特化 事業会社 、 開催 最初 総合電機 ・ ・ 多大 時間 費 IC 開発 終 年 設立 。 1961 年 3月 。 移籍 社内体制 不満 IC開発 成功 導 。 ・ 相次 販売 Sa m ・ (CEO) 就任 90%下 倍 拡大 利益 3 職務 変 移籍 ・ 増 。 、 TENEXとEmailの誕生 倍 増加 役職 就 3 人 、1959 年 (GE) 5倍 増加 創業者 、 、製造 落 ・ 員 660 倍 拡大 、IC 開 発 予算不足 大幅 遅 産 、 半導体事業 収益 企業買収 、 ARPANET誕生を支えた待ち行列の研究者 ・ ・ 開発 年 1962 e ・ 1959 年 pl ・ 技術者 多 、 説明 概 冷 。 、顧客 反応 。 Open Enterprise Magazine Jul 2009 21 TechnologyVision IC需要を牽引した政府市場とノイスの価格戦略 ・ 大統領 、 1960 年 1961 年 5月25日 連邦議会両院合同 会議 、「10 年以内 人間 月 着陸 、安全 地球 帰還 」 計画 発表 、220 億 以上 以来、米国 位 立 計画 万 8,800 防衛力 強化 努 旧 連 技術的 優 自信 深 往復 76 飛行 新 挑戦課題 示 、 克服 込 分 10 万 II” IC 3 年間 予算 割 当 月 就役 2,400 万 。海軍 1959 年 12 原子力潜水艦 “ 450 ” IC 採用 決 、航空宇 宙局(NASA) 1963 年末 打 上 IC 増 器 軽量化 重要 課題 市場 増 燃料 余分 必要 ・ 中距離弾道 IC 採用 決定 。 荷重 、制御機 国防 Electronics, Volume 38, Number 8, April 19, 1965 宇宙開発 、 、送受 信機、遠隔測定器、航空計器 場 拡大 。 社 開発 「MAGIC 」 、 ・ ・ 空機部門、 ・ 」、 計画 路 使用 (c) 2007 Computer History Museum. All rights reserved. 22 Open Enterprise Magazine Jul 2009 NOR 最大 論理回 。 。 IC 、政府 予算 購入 ・ 呼 工科大学 ・ ・ 。 、 IC 価格 、 抵抗、 個別 部品 使用 同 機能 実現 父” 1965 年 IC 購入 、 製造 1964 年 3入 4,100 個 。NASA 開 1964 年 AGC 構成 約 20 万個 (AGC:Apollo AGC 、 “慣性誘導装置 (MIT) 教授 力 ) 航 「 Guidance Computer) 」 研究所) 設計 、初期 製造 慣性誘導 誘導 ・ IC 使用 「MARTAC 420 汎用 制御 MIT計測研究所(現 ・ 、AC (現 (Charles Stark Draper) 開設 ・ 電子機器 誘導 発 市 。 Micrologic 、 (GM)傘下 IC部品数と製造コストの相関図 。 立 上 、 フェアチャイルドの “プレーナー” トランジスタ 大 人工衛星 “IMP-1(Explorer 18) ” 旧 連 技術的 圧倒 思 “ 発射 月 。 1962 年 、第 2 世代 購入費 。 、地球 Photo : NASA Office of Logic Design 採用 決 、電子関連 部材 機器 国防省 大陸間弾 対 、1961 年 ア ポ ロ 誘 導 コ ン ピュー タ(Apollo Guidance Computer) とインタフェース・パネル 、 軍用 Sa m 道 。 弱 、 陸間弾道 1号 打 上 航空 Micrologic Element 売上 国防省 連邦(当時) 1957 年 10月4日 世界 初 人工衛星 購入 50 万 。 軍 契約 機 1961 年 IC pl 予算案 議会 承認 80% 、軍 製造 e 米国 、安価 設定 理店 、 場合 価格 。同社 販売代 部品 懸念 、 売 、IC インテルの創業とDR A Mの商品化 用途 限 、個々 部 品 市場 縮小 年 考 IC 平均価格 程度 1個 、 32 先 見越 下 戦略 断行 価格 。 値 。 、1965 年 4月19日発 行 多 」 、「IC 部品 品 民間企業 年 品 数) 毎年 2 倍 速度 増大 ・ 部品数 急騰 、 企業 交渉 、 使用権 獲得 “ 、1964 年 日本 毎年訪 、日本 契約 、 ・ 約 18 月 供与 子部品会議 先進的 IC 、約 60 。 功績 対 ・ ・ 増大 2年 2倍 。 ・ ・ ・ 昇進 、半導体部門 加 IC 集積度 語 ” 授与 1965 年 1965 年 予測 修正 、 複雑 、 “ IEEE国際電 。1966 年 10月、 ・ ・ 」 理解 自身 、1975 年 合意 、 実際 集積度 数 2倍 。 1964 年当時 「IC ・ IC Photo : American Institute of Physics 示 法則” 名 実現 半導体製造技術 。 レスター ・ホーガン (1920.2.8 ∼ 2008.8.12) Clarence Lester Hogan (Carver Andress Mead) IBM 契約 締結 開発 。 Sa m 、IBM 上 工科大学(Caltech)教授 ” 供与 求 予測 IC 集積度予測 。 1965 年 、 “ 6 万 5,000 点 達 、大規模 回路 単一 構築 最速 株価上昇率 記録 1975 年 e 証券取引所 上場 、IC 集積可能 pl 144 今後 10 年 続 株価 、10 月 27 複雑性(部 、少 ・ ・ 論文 発表 、部 最小化 47% 政府関連以外 販売 。 込 (Cramming Circuits) 」 題 33 採用 増加 、1966 年 製造 IC 詰 More Components Onto Integrated 50 平均 8 。 雑 誌「 結果、IC 1964 年 平均 18 低下 、1965 年 下落 。1963 個 部品 集積 新設 州 。 精密機器事業部 。 運営 任 ・ フェアチャイルドからの離脱 ・ ・ 指名 、精密機器事業部 責任者 ・ 就任 。 開催 幹部会 毎月出席 、精密機器事業 軌道 乗 当時、 ・ (TI) 、IC 設計・製 造 関 特許 巡 係争 特許 TI 、 特許 ・ 特許出願 最初 製造 関 特許 ( 一体型回路 最終判決 下 1966 年夏 、 IC 共同発明者 州 、 担当 、特許 相互 月 。 事業 順調 見 年 3月 、1967 、 IC 。 両社 最高裁判所 前 考案 IC 量産 州 東海岸 半分 過 TI 出願内容 抵触 、 、西海岸 ( 特許) 。TI 、 主張 特許) 。 一方、 1959 年 7月30日 申請 申請 1959 年 2月6日 申請 、1964 年 6月23日 承認 特許 、1961 年 4月25日 承認 。 単一基板上 複数 部品 回路 形 成 構造 社長兼最高経営責任者 (CEO) 誘 ・ 受 、 退社 副官 失 。敏腕 、後任 就任 打診 同意 得 Open Enterprise Magazine Jul 2009 23 TechnologyVision 。 時期 、3 年以上 半導体 研究 経営 関 遠 不全 陥 技術者 ・ ・ 注目 、 低下 始 。 当時、半導体事業 売上 ・ ・ 。当時、 80%近 市場 IC 保有 1968 年 1月、 半導体 創業 構造的 問題 伴 納期遅 、1966 年末 2年 向 ・ 1967 年 5倍 増 部分的 機能 利益 、研究開発 製造効 率 関 、 出荷 市場 。 方針 打 一方 加 。 。 間 多 流出 、半導体事業 半導体 採用 出 退社 ・ 頃、IBM 将来 、 雑務 追 。 計画 。 取締役会 、就任 2 月 見切 ・ 、 マーシャン “テッド” ・ホフ(1937.10.28 ∼) Marcian Edward Hoff 創業者 取締役 (c) Intel Corporation 赤字 計上 1966 年 。 1,200 万 利益 計上 52 750 下落 昇格 、 務 。 ・ 考 大学 ・ 務 、MOSFET (金属酸化膜半導体電界効果 ) 開発 携 応 用物理学教授 転身 、 半導体事業 成長 。 自 説得工作 担 、 。 MOSFET 、 認 ・ 、 上 金属 ・ (現 ・ 1968 年 6月25日、40 歳 退社 。 ) (Julius Edgar Lilienfeld) 発明 研究所 ・ Kahng) 、 LSI時代の到来 形成 、1925 年 。 。 基板上 領域 酸化膜(絶縁体 ) 形成 破格 給与 招聘 尊敬 、半導体事業 混乱 収拾 難 。 研究開発部門 ・ (Clarence Lester Hogan) 目 執行役員 ・ ・ ・ 経営陣 唯一 、 務 最高経営責任者(CEO) 指名 。 懇願 Sa m 同社 取締役会 。 後任 探 赤字 転落 、1968 年 1月 株価 92 ・ 辞意 伝 同社 、1967 年 決算 万 会 会長 e 7月 初 、1967 年 pl 半分以上 占 ・ 最初 Atalla) MOSFET 、1960 年 (Dawon (Martin M. 動作 確認 ・ 合型 ) 消費 格段 少 。 (接 低速 、電力 。 ・ 1965 年 、論理回路 退社 1 週間後 退社 7月3日 、 。 ・ ・ 、 。 「 計画 投資銀行 退社 1961 年 ・ 24 J. Davis, Jr.) 共 ・ 後二人 、約 1 月間 自宅 計画 練 立案 約 Open Enterprise Magazine Jul 2009 (Thomas ・ 回路向 ・ ・ 加 」 創業 有望視 。 退社 、 ・ (Andrew 、1968 年 7月 、 始 新 参加 用途 技術 。 会社「NM 」 1968 年 7月18日 設立 会長、 Stephen Grove) 行動 共 決 商品化 p型MOSFET 副社長 担 社長、 。資本金 、