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軽減税率制度の “簡素な方法”の全容

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軽減税率制度の “簡素な方法”の全容
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売上高のみなし計算特例を導入
軽減税率制度の
“簡素な方法” の全容
平成 29 年 4 月 1 日から導入される予定の消費税の軽減税率制度の簡素な方法の全容が明ら
かとなった。インボイス制度を導入するまでの税額計算方法の経過措置及び特例(今号 8 頁参
照)が 11 月 26 日開催の与党税制協議会で示され、与党間で大筋合意した。
基本的に現行の税額計算の方法を維持。請求書への記載は「軽減税率対象と標準税率対象の
それぞれの取引金額」などと最小限とし、事業者への事務負担に配慮した。一方、税額の区分
計算が困難な小規模事業者については、売上高の一定割合を軽減税率対象の売上高とみなすこ
とのできる特例措置を導入する。また、現行の免税事業者制度は存続させる。各事業者団体も
軽減税率制度導入に反対する姿勢に変わりはないが、今回の与党の簡素な方法については対応
可能との認識を示している。
現行の税額計算方法と同様、請求書への記載は最小限に
与党税制協議会で示された税額計算の方法
の事務負担に配慮した簡素な税額計算の方法
は、インボイス制度を導入するまでの経過措
を手当てするとされていた。
置といえるもの。軽減税率制度導入する場合
今回示された税額計算の方法は、「区分記
には、インボイス制度もセットで導入するこ
載請求書等保存方式」と呼ばれるもの(図表
とで与党間は合意している。しかし、平成
1 参照)。公明党が主張していた区分経理に
29 年 4 月からインボイス制度を導入するこ
対応した請求書等保存方式をベースとし、こ
とは準備期間等から困難であるため、事業者
れをかなり簡略化した形となっている。EU
型インボイス制度では、請求書に記載された
税額を積み上げて税額を計算することになる
が、今回の「区分記載請求書等保存方式」で
は、事業者の記帳事務やシステム改修に大き
な負担が生じないよう、現行の税額計算方法
と同じく、税込価格を割り戻す方法(例え
ば、売上 108 円 ×8/108)を維持するもの
与党税制協議会で税額計算の「簡素な方法」に合意
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となっている。
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【図表1】 区分経理の方法の比較(現行方式・区分記載請求書等保存方式)
現行の請求書等保存方式
請求書
区分記載請求書等保存方式
請求書
請求書(控)
請求書(控)
○○御中
○○御中
○○御中
○○御中
11月分 21,800円(税込)
11月分 43,600円(税込)
11月分 21,800円(税込)
11月分 43,600円(税込)
11/1∼30 食料品等 5,400円
11/1∼30 食料品等 11,000円
11/1 食料品※ 5,400円
11/5 食料品※ 11,000円
11/8 雑 貨
11/9 雑貨
:
合計 21,800円
5,500円
:
:
合計 43,600円
合計 21,800円
合計 43,600円
(10%対象 11,000円)
(10%対象 22,000円)
( 8 %対象 10,800円)
注)※印は軽減税率(8%)適用商品
< 仕入 >
事業者
< 仕入 >
< 売上 >
10,800円
:
( 8 %対象 21,600円)
注)※印は軽減税率(8%)適用商品
事業者
< 売上 >
-
(単一税率のため ※ 印は不要)
①
※印の記載あり(買手による記載も可)
-
(単一税率のため税率毎の取引金額は不要)
②
税率毎の取引金額の記載あり
(買手による記載も可)
請求書等の交付義務なし
③
請求書等の交付義務なし
④
不交付、不正発行の罰則なし
不交付、不正発行の罰則なし
⑤
事業者番号・インボイス番号の記載なし
事業者番号・インボイス番号の記載なし
(出典:与党税制協議会)
また、現行どおり、請求書等の発行義務及
イス制度と大きく異なる。
び請求書等の写しの保存義務は課さないと
請求書等への記載も最小限としている。具
し、罰則も科さない。この点、EU 型インボ
体的には、「軽減税率対象品目についてはそ
▶支払対価が3万円未満の場合の請求書は?
現行制度上、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満の場合は、請求書等の保存
は不要とされ、法定事項が記載された帳簿のみ保存すればよいこととされている。また、課税仕
入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上のケースでも、請求書等の交付を受けなかったこ
とについてやむを得ない理由がある場合(今号 42 頁参照)は、法定事項を記載した帳簿にその理
由及び課税仕入れの相手方の住所又は所在地を記載することにより、仕入税額控除をすることが
可能になっている(消令
49 条)
。これらの取扱いは、今回の経過措置でも認められる。
【図表2】
売上税額の計算の特例
(売上を区分経理できない場合)
そのほか、小売業、飲食店業、タクシー業などを行う事業者から受け取る請求書等については、
買い手事業者の氏名又は名称が省略されたものであっても、これを保存する場合には仕入税額控
① 仕入を区分経理できる小売事業者及び卸売事業者
除ができるが、この取扱いについても現行どおりに認められる。
○軽減税率対象売上割合 = 軽減税率対象品目のための仕入
課税仕入総額
② ①以外の事業者
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通常の連続10営業日の軽減対象売上
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○軽減税率対象売上割合 = 通常の連続10営業日の総課税売上
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【図表2】 売上税額の計算の特例(売上を区分経理できない場合)
① 仕入を区分経理できる小売事業者及び卸売事業者
軽減税率対象品目のための仕入
○軽減税率対象売上割合 = 課税仕入総額
② ①以外の事業者
通常の連続10営業日の軽減対象売上
○軽減税率対象売上割合 = 通常の連続10営業日の総課税売上
③ ①及び②の計算が困難な事業者
50
○軽減税率対象売上割合 = 100
(売
法人
の旨」
(※ 印などで記載)及び「軽減税率対
象品目などの項目を忘れるなどして記載漏れ
象と標準税率対象のそれぞれの取引金額」を
となってしまったとしても、一定の場合には
記載すればよいこととし、その請求書等の保
仕入税額控除を認める。具体的には、買い手
存を仕入税額控除の要件としている。事業者
側で軽減税率対象品目などの項目を適正に付
番号やインボイス番号の記載も求めない。
記すれば、要件を満たす請求書等の保存があ
買い手側で付記しても仕入税額控除を容認 売上税額
仕入税額
るものとして仕入税額控除を認めるとしてい
【図表4】 消費税の納税額算出(イメージ)
現 行
この場合、売り手側がこれらの軽減税率対
売上額×8% − 仕入額×8% = 納税額
る。
軽減税率導入後:経過措置
売上税額
仕入税額
課税売上高が
5,000 万円以下の事業者に 3 つの特例計算
標準税率対象
標準税率対象
売上額×10%
仕入額×10%
以上がインボイス制度導入までの経過措置
課税仕入の管理ができれば可能
+
+
= 納税額
−
軽減税率対象
軽減税率対象
の概要だが、課税売上高
1,000 万円以下の
特例計算の方法は 3 つ用意されている(図
売上額×8%
仕入額×8%
免税事業者制度は存続する。現行どおり、免
表 2 参照)。まず、①簡易課税の適用を受け
軽減税率導入後:年間売上高5,000万円以下で
税事業者であっても仕入税額控除を行うこと
ない小売事業者及び卸売事業者については、
ができるため、現時点では特に大きな問題は
仕入れた商品をそのまま販売するため、売上
簡易課税制度を利用する場合
売上税額※
仕入税額
生じないことになりそうだ。
標準税率対象
売上税額
売上額×10%
ただし、問題となるのは、それ以外の税額
×
+
= 納税額
−
みなし仕入率
の区分計算ができない中小事業者だ。これら
軽減税率対象
売上額×8%
の中小事業者については、売上高の一定割合
※課税仕入れ総額に占める軽減税率対象売上げに係る課税仕
を軽減税率対象の売上とみなすことができる
入れ額の割合を売上高に乗じて、軽減税率対象の売上高を
算出するなどの特例措置により推計
特例措置を講じる。対象は簡易課税制度と同
の軽減対象割合は仕入の軽減対象割合と概ね
一致する。このため、課税仕入れ総額に占め
る軽減税率対象売上げに係る課税仕入れ額の
割合を売上高に乗じて、軽減税率対象の売上
高を算出する方法が適用できる。課税仕入の
管理ができれば売上税額の計算が可能だ。
様、2 期前の課税売上高が 5,000 万円以下の
セール等の特売日を除く 10 日間で計算可能
事業者となる。
ただ、仕入れた商品を加工等して販売する
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【図表 3】 税額計算の特例
課税売上高
売上税額の計算
仕入税額の計算
5,000 万円超
通常計算
1,000 万円超
5,000 万円以下
軽減税率売上高のみなし計算
【図表2】
売上税額の計算の特例
(売上を区分経理できない場
区分記載請求書の買手の付記
通常計算
による仕入税額控除の特例
① 仕入を区分経理できる小売事業者及び卸売事業者
せり売りの場合の適格請求書
簡易課税
の代替
○軽減税率対象売上割合 = 1,000 万円以下
軽減税率対象品目のため
課税仕入総額
免税事業者
② ①以外の事業者
○軽減税率対象売上割合 = 通常の連続10営業日の
場合や、仕入の区分経理を行うことができな
簡易課税制度は
3 年間現行制度を存続
通常の連続10営業日の
い事業者については、①の方法を適用できな
また、仕入れを区分できない場合について
いことが考えられる。このため、②①の方法
は、現行の簡易課税(売上高 5,000 万円)
を適用できない事業者については、課税期間
○軽減税率対象売上割合 = の適用を
3 年間可能としているほか、せり売
100
中の通常の事業を行う営業日の連続した 10
③ ①及び②の計算が困難な事業者
50
りで購入した場合には、取次ぎ事業者が発行
日間における売上高に占める軽減税率対象の
した請求書の保存を適格請求書の代替として
売上高の割合を当該課税期間中の売上高に乗
認めている。
じて、軽減税率対象の売上高を算出すること
なお、税額計算の特例及び消費税の納税額
ができるようにしている。通常の連続した
算出のイメージは図表3・4のとおりである。
10 営業日の売上を区分できれば税額計算が
可能となる。なお、この “通常の連続 10 営
業日” とは、益税を排除する観点からセール
などの特売日を除く、通常の連続した 10 日
間で算定する。
軽減税率対象の売上を 50% で計算
3 つ目の特例計算の方法は、前述の①及び
②の方法による計算が困難な事業者のために
用意されたものだ。③主として軽減税率対象
品目の販売を行う事業者であって、①又は②
の計算が難しい場合は、100 分 50 を当該課
税期間中の売上高に乗じて、軽減税率対象の
売上高を算出することができる。区分経理が
全くできない事業者であっても税額計算が可
能となる。
以上、売上を区分経理できない事業者につ
いては、これらの 3 つの特例計算の方法から
1 つを選択して適用することになる。
【図表4】 消費税の納税額算出(イメージ)
現 行
売上税額
売上額×8%
−
仕入税額
仕入額×8%
=
納税額
軽減税率導入後:経過措置
売上税額
標準税率対象
売上額×10%
+
軽減税率対象
売上額×8%
−
仕入税額
標準税率対象
仕入額×10%
+
軽減税率対象
仕入額×8%
=
納税額
軽減税率導入後:年間売上高5,000万円以下で
簡易課税制度を利用する場合
売上税額※
標準税率対象
売上額×10%
+
軽減税率対象
売上額×8%
仕入税額
−
売上税額
×
みなし仕入率
=
納税額
※課税仕入れ総額に占める軽減税率対象売上げに係る課税仕
入れ額の割合を売上高に乗じて、軽減税率対象の売上高を
算出するなどの特例措置により推計
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重要資料
インボイス制度を導入するまでの税額計算方法の
経過措置及び特例について
10 月 27 日の消費税軽減税率制度検討委員会において、
「益税批判を招かないよう、複数税率を導入す
る以上、インボイス制度を導入するが、平成 29 年 4 月からの導入は不可能であることから、当面は簡素
な方法とする」との方針が合意された。下記は、インボイス制度導入までの間の経過措置として導入す
る「簡素な方法」のたたき台を示すものである。
1.基本的な考え方
○税額計算の方法
現行制度では、税込み価格を税率で割り戻して税額を計算。EU 型インボイス制度では、インボイス
に記載された税額を積み上げて税額を計算。
⇒記帳事務やシステム改修に大きな負担が生じないよう、現行の税額計算の方法を維持する必要。
○税額の区分計算の特例
複数税率制度の下、税額計算を行うためには、標準税率対象の取引と軽減税率対象の取引を区分け
(区分経理)する必要。区分経理は、区分するか・しないかの選択肢しかなく、簡易な方法はない。
⇒区分経理ができない場合があることを想定し、どのような税額計算の特例を設けるかを検討する
必要。
○請求書に記載すべき事項
税額計算における標準税率対象の取引と軽減税率対象の取引の区分の根拠として、どのような内容の
請求書の保存を求めるか。
⇒記載事項は区分に必要な最小限のものとする。
2.インボイス導入までの間の経過措置及び特例(案)
【経過措置の原則】
(区分記載請求書等保存方式)
(1)税額計算の方法は、税込み価格を割り戻して計算する現行の方法を維持。
(2)現行通り、請求書等の発行義務(及び発行した請求書等の写しの保存義務)を課さない(罰則
もなし)。
(3)「軽減税率対象品目についてはその旨」及び「軽減税率対象と標準税率対象のそれぞれの取引金
額」が付記された請求書等の保存を仕入税額控除の要件とする。なお、売り手がこれらの付記を
失念した場合等においても、買い手が適正に付記した場合には、要件を満たす請求書等の保存が
あるものとして、仕入れ税額控除を認める。
(4)以下の現行の取扱いを存置する。
① 支払対価が 30,000 円未満の場合、及び請求書等の交付を受けなかったことについてやむを得
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ない理由がある場合において、請求書等の保存がないときにも仕入れ税額控除ができるとの現
行の制度は存置する。
(注)仕入れ税額控除にあたり、請求書等の保存を要しない場合
・自動販売機で購入する場合
・入場券、乗車券、搭乗券等のように証拠書類が回収される場合
・買い手が売り手に請求書等の交付を請求したが、交付を受けられなかった場合
・課税期間の末日までに支払対価の額が確定しなかった場合 など
② 小売業、飲食店業、タクシー業などを行う事業者から受け取る請求書等については、買い手
事業者の氏名又は名称が省略されたものであっても、これを保存している場合には仕入れ税額
控除ができるとの現行の取扱いは存置する。
【特例】
(4)税額の区分計算の特例(案)
① 売上を区分できない場合(売上税額の計算の特例)
【概要】税額の区分計算が困難な小規模事業者が、売上高の一定割合(軽減税率対象売上割合)を
軽減税率対象の売上高とみなすことができる仕組み。
【対象事業者】2 期前の課税売上高が 5,000 万円以下(簡易課税と同じ)の事業者で、申告の際に本
制度の活用を選択する事業者
【特例計算】
ア)
簡易課税の適用を受けない小売事業者及び卸売事業者
課税仕入れ総額に占める軽減税率対象売上げに係る課税仕入れ額の割合を売上高に乗じて、
軽減税率対象の売上高を算出。
イ) ア)以外の事業者
課税期間中の通常の事業を行う営業日の連続した 10 日間における売上高に占める軽減税率対
象の売上高の割合を当該課税期間中の売上高に乗じて、軽減税率対象の売上高を算出。
ウ) 主として軽減税率対象品目の販売を行う小売事業者であって、上記ア)又はイ)の計算が難
しい場合は、100 分の 50 を当該課税期間中の売上高に乗じて、軽減税率対象の売上高を算出。
② 仕入を区分できない場合
ア)
簡易課税(売上高 5,000 万円以下)の適用が可能(3 年間、現行制度を存続)
(法施行日以降に
最初に開始する課税期間まで(最長 2 年)、簡易課税選択の期日を課税期間の期末(原則は課税
期間の開始前)とする)
イ) せり売で購入した場合、取次ぎ事業者が発行した請求書の保存を適格請求書の代替と認める。
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