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第21号(2014.12.22) [PDFファイル/1.15MB]

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第21号(2014.12.22) [PDFファイル/1.15MB]
第 21 号
登録
ボランティア通信
2014.12.22
第 21 号 目次
1-4 国内動物を対象とした
狂犬病検査の実施につ
いて
国内動物を対象とした狂犬病検査の実施について
動物保護センター業務課
狂犬病は、日本国内においては1957(昭和 32)年の猫の発症事
4-5 ドッグ・トラスト ト
レーニング・プログラム
レポート その1
例を最後に 1958(昭和 33)年以降、輸入症例*を除けば人、動物
6
では依然として流行しています。このような状況の中、昨年 7 月、
最新統計
とも感染例の報告はありません。しかし、アジア諸国をはじめ諸外国
日本と同様に 50 年以上にわたって狂犬病清浄地域とされてきた台湾
で野生動物のイタチアナグマで狂犬病の流行が確認されました。
2013 年 7 月 17 日に台湾政府からOIE(国際獣疫事務局)に 3 頭のイタチアナグマでの発生の第一
報があってから 2014 年 7 月 7 日付けの報告までの時点で、イタチアナグマ 389 頭、犬1頭、ジャコウ
ネズミ 1 頭の発生が報告されています。台湾においてイタチアナグマの狂犬病の流行がわかったのは、台
湾政府や関係機関による犬、猫だけでなく野生動物も対象とした狂犬病の検査が継続的かつ体系的に実施
されてきたことによります。
*輸入症例:海外で狂犬病に感染した動物から咬まれるなどの感染を受け、日本に帰国後狂犬病を発症
する事例。1958 年以降では 1970 年 1 例、2006 年 2 例が報告されている。
一方、わが国の狂犬病対策は動物を対象とした一定の基準による体系的な検査体制はありません。また、
狂犬病の検査自体を実施する体制が整っていない地方公共団体もあるということです。このような状況で
は、迅速・的確に狂犬病に罹患した動物を探知できないおそれがあります。
そこで、厚生労働省では国内で動物の狂犬病検査を実施する場合の標準的な手法を定めるため、平成 25
年度厚生労働科学特別研究事業において、対象動物の選定方法等具体的な内容について検討を行い、この研
究を踏まえた「国内動物を対象とした狂犬病検査実施要領」を取りまとめ、平成 26 年 8 月 4 日付けで全国
の自治体に通知しました。
ページ
2
登録ボランティア
通信
登録簿ランティア通信
国内動物を対象とした狂犬病検査実施要領
この実施要領は、狂犬病の国内発生が確認されていない現状にあって、都道府県等において狂犬病に罹
患した動物を確実に探知することを目的にしています。実施要領は、狂犬病検査を実施する際の標準的な
手法をまとめたもので、検査対象動物の選定基準、検査の実施方法、検査結果の報告体制などが具体的に
示されています。
検査対象動物の選定基準
検査対象動物は犬だけでなく野生動物も含まれ、検査の優先度によりA群からC群の 3 群に分けられま
した。
A群は公衆衛生の見地から確実に検査を実施する動物で、犬では咬傷事故の加害犬で検診の経過観察中
に死亡したもの、狂犬病の疑われる症状が見られるもの、野生動物では咬傷事故を起こしたもので捕獲後
に殺処分をされたものとなっています。
B群は狂犬病の可能性を否定するために検査を実施する動物で、犬では地方公共団体に抑留、引取り又は
収容された犬のうち、健康状態、行動等に何らかの異常が認められ、かつ抑留・保管期間中に死亡したもの
又は譲渡不適となったもの、野生動物では地方公共団体の指定する保護施設等に救護された傷病野生動物の
うち、保管期間中に死亡したもの又は予後不良等の理由により処分されたもの、交通事故死したものとなっ
ています。
C群は狂犬病でないことを確認するために検査を実施する動物で、犬では地方公共団体に抑留、引取り又
は収容された犬のうち、健康状態、行動等に特段の異常が認められないものの、何らかの事由により譲渡不
適となったもの、野生動物では有害捕獲により捕獲された後に殺処分となったもの、狩猟により捕獲された
ものとなっています。
また、検査対象とする野生動物の種類について、その生態や人との接触機会の多寡等を考慮して優先度
の高い順に3つの種類に分類してあります。
第一優先種:アライグマ、タヌキ、アカギツネ、フイリマングース
第二優先種:アナグマ、ハクビシン、チョウセンイタチ、テン
第三優先種:コウモリ
猫については、人との接触機会が多いものの狂犬病の流行を維持しな
い動物種であるため、積極的な検査対象とはなりませんでしたが、必要
に応じて犬に準じた検査を実施することになっています。
神奈川県動物保護センター
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3
検査の実施と検査結果の報告
検査は地方公共団体が行います。検査の実施にあたっては万が一にも実験室内で感染が起こらないよう
安全面に十分注意して行います。検査結果については、動物 1 個体ごとに記録をとり、それをまとめて厚
生労働省に報告することになっています。またA群に該当する動物を検査する場合は、検査開始時及び結
果判明時に厚生労働省に報告することになっています。
検査の結果、陽性の場合や明瞭な結果が得られなかった場合は、国立感染症研究所において確定診断を
行います。それと併せて感染動物の特定や狂犬病罹患動物との接触者などの疫学調査が行われます。
神奈川県の対応
県保健福祉局生活衛生部食品衛生課では、厚生労働省からの通知
「国内動物を対象とした狂犬病検査の実施について」に基づき、神奈
川県内(保健所設置市を除く)における犬の狂犬病検査体制を整備す
るため、平成 26 年 10 月 24 日付けで「犬を対象とした狂犬病検査に
係る実施要領」を定めました。
保健福祉事務所(各センター含む)の役割
咬傷事故の加害犬であって検診の経過観察期間中に死亡したもの及び狂犬病が疑われる症状が見られ
るものについて、狂犬病の検査を依頼します。
動物保護センターの役割
保健福祉事務所から依頼のあった犬の死体または疑わしい症状
を呈する犬を収容し、狂犬病検査のための解剖と採材(検査のた
めの材料を採取すること)を行います。また、動物保護センター
に収容された犬の中で咬傷事故の加害犬で検診経過観察期間中に
死亡した場合も同様に扱います。
動物保護センターで採材した検体(脳など)は衛生研究所に送
られ検査が行われます。
衛生研究所の役割
動物保護センターから送られた検体について狂犬病検査を行います。検査の結果、陽性であった場合、
また明瞭な結果が得られなかった場合は国立感染症研究所に確定診断を依頼します。
県保健福祉局生活衛生部食品衛生課の役割
各機関から報告を受け全体の状況を把握しながら、厚生労働省への報告、各関係機関との調整などを
行います。
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登録ボランティア
通信
登録簿ランティア通信
台湾でのイタチアナグマの狂犬病については、分離されたウイルスの遺伝子情報から何十年も前から野
生動物で流行があったことが示唆されているとのことです。狂犬病の発生がないとされていた台湾で野生
動物の狂犬病が発見できたのは、台湾政府が 1999 年から動物の狂犬病調査を開始し、対象動物の解剖と
検査が可能であったことが大きな理由のひとつであると言われています。WHO(世界保健機関)では、
「狂犬病のない国においても動物の狂犬病調査を実施するのに十分な体制を維持し、国内に存在する感受
性の高い飼育動物及び野生動物種について狂犬病を疑う症例のある場合には、標準化された検査法によっ
て陰性を報告すべきである」として狂犬病の調査体制を整備するよう推奨しています。わが国でも遅れば
せながら、狂犬病の発生がない状況下であっても狂犬病が疑われる動物を積極的に探知する体制が構築さ
れようとしています。
本稿「国内動物を対象とした狂犬病検査の実施について」の執筆にあたっては、平成 25 年度厚生労働科学
特別研究事業「我が国における動物の狂犬病モニタリング調査手法に係る緊急研究」(研究代表者:国立感
染症研究所獣医科学部
井上智
氏)を参考としました。
ドッグ・トラスト
トレーニング・プログラムレポート その1
Dogs Trust International Training Programme September 2014
通訳/翻訳家
ノーマンテイラー邦子
イギリス便りをすっかりご無沙汰しておりましたが、皆様は相変わらずお元気でご活躍なされている
事と存知ます。
私のほうは今年9月にドッグ・トラストが主催する世
界の動物シェルター運営者に向けたトレーニング・プロ
グラムに参加し、大変貴重な時間を過ごさせていただき
ました。
一日10時間4日間のコースでしたが、それでも時
間が足りず、多くを削らなければならないくらいの盛
りだくさんの内容でした。
ドッグ・トラストは1891年に設立され、全国各地に20のリホーム・センターを有し、年間
約16,000匹の犬の譲渡実績をもつ国内最大の犬福祉団体です。
神奈川県動物保護センター
ページ
5
それに付随してドッグ・トラスト・インターナショナル が設立されたのが1996年です。
ブダペストで初のコンパニオン・アニマル福祉会議を開催し、各分野の専門家たちによるネットワーク
の必要性と素晴らしさを世に知らしめました。大成功を収めた福祉会議はその後毎年開催されています。
また2002年から2009年まで、海外初のプロジェクトに関わり、ルーマニアの動物福祉団体と共
同で、捕獲→不妊去勢手術→ワクチン→元の場所に戻す(CNVR)を実施しました。当時手術した犬は700
匹、5000匹をリホーム。その時までルーマニアには犬を救出するという概念はありませんでした。
現在も引き続き、大小のプロジェクトを世界各地で実施しています。
そのインターナショナル部門は世界各地の動物シェルタ
ー運営者を対象にイギリスのノウハウをお伝えする「動物
シェルター運営トレーニング・プログラム」を年2回開い
ています。経済的に恵まれない国やそもそも動物の福祉を
考える文化のない国々の人たちの力になるべく組まれたプ
ログラムです。
飛行機代をのぞく参加者の宿泊費用、ロンドン内の交通費、食事はすべてドッグ・トラストが引き受け
ます。プログラムに関わるスタッフの労力、時間も莫大なものになりますので、申し込み者の背景に多く
の動物の命を背負ってくる方々が優先となります。また大変人気のあるプログラムのようですので、受け
入れ人数なども考慮すると待機者もかなりいるような気配でした。お申込みはドッグ・トラスト・インタ
ーナショナルのサイトから申請します。
出席者は delegates と呼ばれ、(使節団、派遣団)、動物シェルターを運営している人たちなのです
が、必ずしもその国の人たちではありません。たとえば、中国で運営している代表はカナダ人と中国人、
台湾でサンクチュアリーを運営しているのはイギリス人、キプロスで猫と犬を保護してドイツに送ってい
るのはイギリス人でした。その他、インド、ナイジェリア、フィンランド、ハンガリー、ルーマニアなど
から参加していました。
ドッグ・トラストの使命であります「不必要な殺戮の脅威か
ら自由になり、すべての犬が幸せな生を楽しむ日を目指す」を
学びにやってきた各国の人たちの様子と、これをスローガンに
日々頑張るドッグ・トラストのスタッフの様子も交えながら貴
重なコース概要を今回数回に分けてご紹介させていただく機会
に恵まれましたことを深く感謝し、少しでも皆様のご活動のご
参考にしていただければこんなに幸せなことはありません。
(つづく)
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登録ボランティア
通信
登録簿ランティア通信
最新統計 平成 26 年度
平成 26 年 4 月 1 日~11 月 30 日の相模原市、藤沢市分を含む速報値
(犬)
原稿
迷子犬の保護 334 頭 飼い主へ返還 180 頭 飼い主から引取り 97 頭
県民へ譲渡 19 頭
ボランティア等へ譲渡 181 頭 致死処分 0 頭
運搬・収容中の死亡 31 頭
捨てられた猫 559 匹 飼い主から引取り 67 匹 県民へ譲渡 18 匹
ボランティア等へ譲渡 519 匹 致死処分 0 匹 運搬・収容中の死亡 72 匹でした。
☆なお、この他に飼い主不明として警察から当所が収容し、その後、飼い主が判明し
たために飼い主に返還した猫が1匹います。
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