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味の相互作用に関する研究
21341 味の相互作用に関する研究 2616 熊﨑 ほなみ 2509 金子未来 2626 田口愛実 要旨 みかんを食べた後に飲むお茶は苦く感じるという経験に興味を持った。そこで、味の相互作用に関す る研究を行った。 まず、なぜ柑橘類を食べた後にお茶を飲むと苦く感じるのかを調べるために、酸味のある食べ物とお 茶によって生じる苦味を調べる実験、苦味が相互作用によって生じることを確かめる実験、お茶以外の 飲み物でも苦味が増幅されるかを調べる実験を行った。柑橘類の酸味によってお茶の苦味が増強され、 苦く感じることが分かった。 2 つ目に、他に酸味によって影響される味はあるのかを調べるために、うま味、塩味、甘味について、 クエン酸による味の変化を調べる実験をした。うま味と塩味はあまり変化しないが、甘味は大きく増す ことが分かった。 3 つ目に、温度によって味の感じ方は変化するのかを調べるために、うま味、甘味、苦味のある液体の 温度を変えて実験した。味の種類によって味の強さの変化の仕方に違いがあることが分かった。 A 酸味と苦味の相互作用 1、 目的 柑橘類を食べた後にお茶を飲むと苦く感じる。それは何故かを調べるため、以下の3つの実験を行っ た。 実験① 酸味のある食べ物やお茶の種類を変え、苦味が生じるか調べる。 実験② 苦味が生じたのは、成分が混ざり変化したことによるものか、味の相互作用によるものか を調べる。 実験③ お茶以外の苦味のある飲み物でも苦味が生じるか調べる。 2、 本論 2-① 実験①について ⅰ 実験 使用した器具・装置など (A)酢・梅干し・ピュレグミ(カンロ)・みかん (B)飲料:茶・緑茶・カテキン茶・水 ・紙コップ 実験手順 (A)の酸味のある食べ物と(B)のお茶や水をそれぞれ一つずつ組み合わせる。(A)を食べたあとに(B)を飲 み、苦味を 0~10 で評価した。(数字が大きいほど、苦味が強い) 41-1 ⅱ 結果 表1に各実験者の苦味の評価を、図1に表1の平均を示す。 表 1 酸味のある食べ物と水・お茶によって生じる苦味 実験者Ⅰ 実験者Ⅱ 実験者Ⅲ 水 麦茶 緑茶 カテキン茶 水 麦茶 緑茶 カテキン茶 水 麦茶 緑茶 カテキン茶 飲料(B) 0 2 3 5 0 1 2 5 0 1 5 6 みかん 0 3 4 8 0 3 4 7 0 3 5 7 梅干し 0 1 1 4 0 1 2 4 0 1 2 5 ピュレグミ 0 5 7 9 0 5 6 9 0 6 8 9 酢 0 5 6 8 0 6 6 8 0 6 6 8 のみ 飲み物を飲む前に 食べたもの 図 1 酸味のある食べ物と水、お茶よって生じる苦味の平均 ⅲ 考察 表 1、図 1 より水を飲んだ時には苦味は感じなかった。 食べ物やお茶の種類に限らず、酸味のある食べ物を食べた後にお茶を飲むと苦味を感じた。 ただし梅干しは、塩味の方が強かったため、苦味が弱まったのではないか。 実験①で用いた酸味のある食べ物の成分をインターネットで検索して調べたところ、酸味の原因はクエ ン酸や酢酸であることが分かった。そこで、これからの実験ではクエン酸を用いることにした。 41-2 2-②:実験②について ⅰ 実験 使用した器具・装置など ・麦茶・クエン酸・精製水 ・電子てんびん・薬包紙・薬さじ・ガラス棒・紙コップ 実験手順 (1)クエン酸水溶液と麦茶にクエン酸を混ぜたもの(混合液)を作る。 (いずれもクエン酸濃度 1%) (2)クエン酸水溶液を飲んだ後に麦茶を飲んだ場合と、混合液を飲んだ場合の味を比べる。 ⅱ 結果② クエン酸水溶液を飲んだ後に麦茶を飲んだ場合では、実験①と同様に苦味を感じた。 混合液を飲んだ場合では、酸味を感じただけで苦みは感じられなかった。 ⅲ 考察 上記結果より、お茶とクエン酸を混ぜることによって苦味のある成分ができるのではなく、味覚の相 互作用によって苦味が感じられることが分かった。 2-③:実験③について ⅰ 実験 使用した器具・装置など ・クエン酸・精製水・コーヒー・青汁 ・電子てんびん・薬包紙・薬さじ・ガラス棒・紙コップ 実験手順 (1)クエン酸濃度 1%のクエン酸水溶液を作る。 (2)コーヒーを飲む。 (3)クエン酸水溶液を飲んだ後にコーヒーを飲み、(2)のコーヒーと味を比べる。 (4)青汁を飲む。 (5)クエン酸水溶液を飲んだ後に青汁を飲み、(4)の青汁と味を比べる。 ⅱ 結果 コーヒーも青汁も、そのままで飲んだ時より、クエン酸水溶液を飲んだ後に飲んだ時の方が苦味が増 幅された。 ⅲ 考察 上記結果より、お茶以外の苦味がある飲み物でも苦味が増幅されることが分かった。 41-3 3、考察 実験①~③より、柑橘類を食べた後にお茶を飲むとより苦く感じるのは、柑橘類の酸味によって、お 茶の苦味が増幅されたからだと考えられる。 B 酸味とその他の味の相互作用 1、 目的 味には、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の5つの基本味がある。 酸味と苦味の関係性は分かったが、基本味の中で他に酸味によって影響される味はあるのか。 2、 実験 使用した器具・装置など ・クエン酸・精製水・ほんだし(AJINOMOTO)*1・桃の天然水(JT)*2 ・ビターチョコレート*3・食塩水(塩分濃度 1%)*4 ・電子てんびん・薬包紙・薬さじ・ガラス棒 (*1:うま味 *2:甘味 *3:苦味と甘味 *4:塩味) 実験手順 (1) クエン酸濃度 1%のクエン酸水溶液を作る。 (2) ほんだしで作っただし汁(濃度約 1%)を飲む。 (3) クエン酸水溶液を飲んだ後にだし汁を飲み、(2)のだし汁と味を比べる。 (4) 桃の天然水を飲む。 (5) クエン酸水溶液を飲んだ後に桃の天然水を飲み、(4)の桃の天然水と味を比べる。 (6) ビターチョコレートを食べる。 (7) クエン酸水溶液を飲んだ後にビターチョコレートを食べ、(6)のビターチョコレートと味を比べる。 (8) 食塩水を飲む。 (9) クエン酸水溶液を飲んだ後に食塩水を飲み、(8)の食塩水と味を比べる。 3、結果 だし汁 変化が分からなかった。 桃の天然水 甘味がかなり増した。 ビターチョコレート 苦味が消え、甘味が増した。 食塩水 変化が分かりにくかった。 4、考察 だし汁と食塩水の結果から、うま味と塩味は酸味によって味が増幅されることはほとんどないと考え られる。 桃の天然水とビターチョコレートの結果から、甘味は酸味によって、強く増幅されることが分かった。 桃の天然水の甘味の変化は以前実験した苦味の変化よりはっきり分かったことから、苦味より甘味の 方が酸味によって増幅されやすいと考えた。また、ビターチョコレートでも、苦味が消え甘みが増幅 されたことから、やはり甘味の方が増幅されやすいと考えられる。 41-4 C 温度による味の強さの変化 1、 目的 アイスが溶けてしまってから食べると、冷たいまま食べる時よりも甘く感じるという経験に興味を持 った。 そこで、温度によって味の感じ方は変化するのかを調べるために、下記の実験を行った。 2、 実験 使用した器具・装置など ・だし汁・コーヒー・アイス・精製水 ・ガスバーナー・温度計・三脚・網・ビーカー(大・小)・紙コップ ・プラスチックのコップ・試験管ばさみ・着火マン・ガラス棒・電子てんびん・製氷皿 実験手順 (1) だし汁、コーヒー、アイスを精製水で 2 倍にうすめる。(濃すぎると、変化が分かりにくいため) (2) (1)のだし汁を 4 つに分け、 1 つは製氷皿に入れ、写真Ⅰのように冷凍庫で冷やす。(約 0℃) 1 つは室温にする。(約 20℃) 1 つはガスバーナーで写真Ⅱのように加熱し、約 40℃にする。 1 つはガスバーナーで同様に加熱し、約 60℃にする。 これらを飲み比べ、うま味の強いものから 4,3,2,1 と評価する。 (3) コーヒーもだし汁と同様に 4 段階の温度のものを用意する。 これらを飲み比べ、苦味の強いものから 4,3,2,1 と評価する。 (4)アイスもだし汁やコーヒーと同様に 4 段階の温度のものを用意する。 これらを飲み比べ、甘味の強いものから 4,3,2,1 と評価する。 写真Ⅰ 製氷皿で冷やしている様子 写真Ⅱ ガスバーナーで熱している様子 3、結果 表2に各実験者の温度による味の強さの評価を、図2に表2の平均を示す。 41-5 表 2 温度による味の強さの変化 温度(℃) だし汁 コーヒー アイス 実験者Ⅰ 実験者Ⅱ 実験者Ⅲ 平均 0 1 1 1 1 20 2 2 2 2 40 4 3 3 3.3 60 3 4 4 3.7 0 4 4 4 4 20 3 3 3 3 40 2 2 2 2 60 1 1 1 1 0 1 1 1 1 20 3 3 3 3 40 4 4 4 4 60 2 2 2 2 図 2 温度による味の強さの変化の平均 表 2、図 2 よりだし汁では温度が高い方が、うま味を強く感じるが、40℃と 60℃では変化は分かり にくく、個人差がでることが分かった。 コーヒーでは温度が低い方が、苦味を強く感じることが分かった。 アイスでは、0~40℃までは温度が高い方が甘味を強く感じるが、60℃まで熱してしまうと甘味が弱 くなることが分かった。 4、考察 結果より、だし汁は温度が高い方が、うま味を強く感じると考えられる。ただし、40℃~60℃では、 違いが分かりにくい。 コーヒーは温度が低い方が、苦味を強く感じると考えられる。 アイスは温度が体温に近い(40℃)方が、甘味を強く感じると考えられる。 41-6