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新興市場における「経済成長」と「企業のコーポレートガバナンス」
お客様用資料 フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントによる市場の展望や投資テーマ 2012 年 5 月 新興市場における「経済成長」と「企業のコーポレートガバナンス」 新興市場が新興国の構造的な成長シナリオの恩恵を受けている、ということは周知の事 実です。また、信用危機・欧州財政危機の影響によって、先進国と新興国間の格差が益々 拡大しており、「二速の経済(低成長に留まる先進国と急成長する新興国)」へと確実に進 んでいます。 ニック・プライス フィデリティ・ワールドワイド・インベ ストメント 新興市場ポートフォリオ・ マネージャー 1998年リサーチ・アナリストとして入 社。その後の6年間に欧州の化学、 食品、タバコ及び通信セクターを担 当し、2004年欧州株式のアシスタン ト・ポートフォリオ・マネージャーに就 任。2005年末エマージングEMEA(欧 州・中東・アフリカ)の運用を始め 、 その成功によって2009年半ばグロー バル・エマージング・マーケッツのリ ード・マネージャーに就任。ナタール 大学商業・会計学士号取得。南アフ リカ勅許会計士協会会員、公認証 券アナリスト(CFA)資格保有。 概要 フィデリティの新興市場 株式の選別プロセスに おいて企業統治は重要 なポイント。 新興市場の経済成長、 確固とした企業ファンダ メンタルズ及び優れた企 業統治は、投資におい て強力な組合せ。 かなり緩やかな経済成 長にも関わらず、より株 主重視の投資文化を有 する南アフリカは信用危 機以降他の主要な新興 市場よりも大きく上昇。 新興市場における欧米 多国籍企業傘下の企業 のパフォーマンスが相対 的に高く、平均株価変動 率は低かったことを学術 調査も示している。 しかし、新興市場への投資は、「経済成長」の観点だけ見ていては不十分です。信用危機 後の世界では、個々の企業の資本政策、配当政策、戦略的な経営能力、企業統治(コー ポレート・ガバナンス)といった要因が、益々重要になっています。例えば、過去4年間の南 アフリカは、経済成長率が比較的緩やかであったにもかかわらず、株式市場の騰落率は、 他の主要新興市場を大きく上回っています。つまり、新興市場においても、優れた経営を 行っている企業を個別に見出すという、ボトムアップの銘柄選択手法が有効なのです。 グローバル経済において、新興市場は過去 20 年間非常に良好なパフォーマンスを上げま した。新興国における工業化、貿易増加及び消費拡大のテーマは今も健在で、まだまだ続 きます。 IMF は 2012 年の新興国の経済成長率を平均 5.4%と予想していますが、一方、先 進国の予想経済成長率はわずか 1.5%です。同様に、2013 年の予想 GDP 成長率はそれぞ れ 6.0%と 2.0%です。 経済成長と株式市場は密接な相関関係があります。新興国経済の重要性の高まりととも に株式市場の時価総額が増し、新興市場は魅力的な中・長期的投資対象になっていま す。 しかし、経済成長と株式市場の相関関係は単純ではありません。最も高い経済成長率をあ げている国の株式市場が最も収益率が高い、というわけではないのです。例えば、中国は 他の市場に比べて非常に高い経済成長を続けましたが、過去 4 年間の中国株式市場の パフォーマンスが大半の新興市場のそれを下回ったことは周知のとおりです。企業のファ ンダメンタルズ、株式のバリュエーション、マクロ経済環境、規制環境、企業統治、投資家 の期待等、数多くの要素が影響を及ぼします。 だからこそ、経済成長率だけでなく個別企業を綿密に調査する、多角的なボトムアップ・ア プローチが新興市場投資において有効です。新興市場の状況はより多様化・多層化してお り、益々、こうした手法が重要となっています。 ブラジル、ロシア、インド及び中国(BRICs)は、いずれも重要な新興市場ですが、幾つかの 魅力的な投資機会は他の国にあると私は考えます。これらの国々では、構造的な高い経 済成長率の誘惑にかられて企業がしばしば生産能力拡大に多大な投資をしますが、その 結果多くの企業は利益率やキャッシュフローの創出ではなく、売上高に重点を置くようにな り、これが株主価値の低下に繋がることもあります。 南アフリカの経済は 2008 年の景気後退からの回復が比較的鈍かったものの、(信用危機 以降の)過去 4 年間の同国の株式市場のパフォーマンスは BRICs 諸国を大きく上回りまし た(次頁図参照)。これには南アフリカにしっかりと根付いている株主重視の企業文化が大 きく起因しています。ボトムアップの観点から見ますと、こうした企業文化は南アフリカで上 場している多くの企業の魅力を高め、特に、アフリカ大陸のサハラ砂漠の南の地域で起き ている消費拡大の恩恵を受けている南アフリカ企業の場合は尚更です。 1/4 お客様用資料 これらの理由から、私は指標となる株式市場指数や競合ファンドに比べて南アフリカ株式 の組み入れ率を高めてきました。 サハラ砂漠以南のアフリカが有する構造的な経済成長機会が十分に市場に評価されてい ないと私は考えています。アフリカ大陸は急速な工業化の恩恵を受けており、低い水準 から急速な成長を実現する力があります。多くの国が多数の若い人口を抱え、低い依存人 口比率という有利な人口構成から成り、これが消費需要の伸びを支える強力な基盤となっ ています。また、低コストの労働力も先進国に対して優位に働いています。地理的にも、企 業統治の観点からも、南アフリカはこの巨大なサハラ以南の成長機会にアクセスできる理 想的な投資環境にあります。 世界各地の企業活動の容易さを独自に測る世界銀行の「ビジネス環境指数」* で南アフリ カはスペインやイタリア等の欧米先進国や BRICs 諸国より高く評価されており、投資家保 護に関しては、英国と並び、日本やフランスを上回る 10 位にランキングされています(調査 対象 183 ヶ国中)。 消費財メーカーであるショップライト、ミスター・プライス、タイガー・ブランド等は、アフリカで より広範に商品を販売すべく、南アフリカを足場にこぞって事業を拡張しました。通信会社 の MTN とボーダコムも他のアフリカ諸国にネットワークを広げ、携帯電話の急速な普及の 恩恵を受けています。際立った成長の一例として、ナイジェリアの携帯電話市場が挙げら れます。人口が非常に多いにも関わらず 2000 年時点の電話保有台数は全国でわずか 55 万台程度でしたが、今や携帯電話契約数は 9000 万を超えています。ナイジェリア最大の 携帯電話会社となった MTN のような企業は、優れた企業統治と、利益を増やし株主価値 を創出するための確固たるビジョンを持つ経験豊富な経営陣の恩恵を受けています。 南アフリカが主要新興市 場よりも大きく上昇した 事は、多くの投資家が考 える以上に企業統治が新 興市場における収益率の 重要な決定要因であるこ とを示唆しています。 南アフリカは他の主要新興市場よりも上回る上昇。 140 120 100 80 MSCI エマージング・マーケット MSCI 南アフリカ MSCI ブラジル MSCI 中国 MSCI インド 60 40 20 20 08 年 4月 20 08 年 10 月 20 09 年 4月 20 09 年 10 月 20 10 年 4月 20 10 年 10 月 20 11 年 4月 20 11 年 10 月 20 12 年 4月 0 出所:データストリーム、2012 年 4 月 27 日現在 企業を通じて新興市場の成長機会に投資する、という観点で、新興市場における欧米多国 籍企業の系列企業に投資するという方法もあります。これは、より高い収益率をもたらすと いうことも実証されています。エール大学経営大学院のマルティン・クレマーズ(Martijn Cremers)准教授は、新興市場を本拠地とする多国籍企業の上場系列企業が 1998 年 6 月 から 2011 年 6 月の期間に、現地の新興市場指数より概ね高いパフォーマンスを上げ、か つ株価の変動がより低かったことを発表しました(次頁表参照)**。こうした系列企業は、新 興市場の消費拡大の波に乗じることができると同時に、確立された企業統治の手法と親会 社の経営の安定性からも恩恵を受けます。また、親会社と緊密に連携して実績に裏付けさ れた事業やマーケティング戦略を立案・再現する傾向があり、豊富な情報に基づく研究開 発やブランド管理のノウハウを得ることもできます。唯一の注意点は、こうした銘柄は流動 性が低いことがあるため、投資規模や保有期間に配慮する必要があるということです。 2/4 お客様用資料 私はこの考え方に基づき、幾つか欧米企業傘下のアフリカ企業に投資しました。例えば、 ギネス・ナイジェリアは親会社であるディアジオ譲りの強力なブランドと優れた企業統治の 実績を有する上に、英国とアイルランドは例外かもしれませんが、何処よりも多くギネスが 売れる国を市場にしており、私が高く評価している企業の一つです。ハイネケン・インターナ ショナルの子会社であるナイジェリアン・ブルワリーズとネスレ・ナイジェリアも同様の、好ま しい企業・市場 成長の強力な組合せを備えています。巨大多国籍ビールメーカーである SAB ミラーとブラジルの携帯電話会社の TIM パルチシパソンエス(スペイン大手通信会社 テレフォニカの系列企業)の南アフリカ市場上場に際しての投資も、企業統治と成長機会を 重要視する同じボトムアップの手法によるものです。 この手法には勿論リスクもあります。最近のアルゼンチン政府によるスペイン石油大手レプ ソル傘下の YPF 国有化の動きは、こうした企業が直面しうる利害対立を浮き彫りにしてい ます。これ以前にも、レプソルは助成された燃料価格という不利をアルゼンチン政府から被 り、利益が圧迫されました。アルゼンチンのキルチル政権は、親会社を利する高額の配当 金が一因となり YPF が十分な投資を行っていないと非難してきましたが、ついには自国の 戦略的な石油資産をこの西欧企業にこれ以上支配されたくないと決断したのです。 また、政府が大きな持ち分を保有する新興市場の企業には、株主の利益が必ずしも重視 されないケースもあります。こうした企業は多くの場合、より高い政治リスクを抱えている傾 向があります。ロシアとブラジルのエネルギー大手であるガスプロムとペトロブラスに対して 私が否定的な見方をしているのは、国内価格に対する政府の制約や税金が主な理由で す。もちろん政府が株式の過半数を保有する企業が必ずしも全て悪い投資であるとは限り ません。事実、ロシアのスベルバンク(ロシア貯蓄銀行)は、ペレストロイカ以前に遡る遺産 と政府による過半数の株式保有のおかげで莫大な預金ベースと銀行セクターにおける支 配的な地位の恩恵を受けています。 最後に、新興市場の企業に対して、透明性が低いという理由で投資意欲を後退させる必要 はありません。企業統治、株主構成及び経営戦略などを精査するボトムアップの手法によ って、新興市場の企業の成長性を享受することができる、と私は考えます。これは、特に信 用危機後の環境において、大きな投資成果を上げられることは、既に実証されているので す。 新興市場における欧米多国籍企業の系列企業のパフォーマンス (1998 年 6 月 - 2011 年 6 月) 新興市場の 系列企業 親会社 系列企業の国 の株式市場 親会社の国の 株式市場 平均収益率 (年率換算) 27.4% 13.3% 21.5% 7.2% 株価変動率 (年率換算) 24.6% 21.4% 29.7% 19.0% 出所:エール大学経営大学院ファイナンス担当准教授 K.J. Martijn Cremers 著「Emerging Market Outperformance, Public-traded Affiliates of Multinational Companies」1998 年 6 月 - 2011 年 6 月。http://ssrn.com/abstract=2009973 より入手可能。 * 世界銀行のビジネス環境指数(Doing Business Project)は、183 の国・地域における事業に対する規制とその運用 に関する客観的な指標を提供している。 http://www.doingbusiness.org/rankings を参照。 ** エール大学経営大学院ファイナンス担当准教授 K.J. Martijn Cremers 著「Emerging Market Outperformance, Public-traded Affiliates of Multinational Companies.」 http://ssrn.com/abstract=2009973 より入手可能。 3/4 お客様用資料 フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントは、資産運用業界におけるグローバル・リーダーとして、英国、欧州、中近東及びアジア太平洋地域の個人投資 家や機関投資家に向け、資産運用サービスを提供しています。1969 年に設立、現在は世界 24 カ国でビジネスを展開、従業員は 5,000 名を超え、預かり及 び運用資産は約 19 兆円※にのぼります。ファンド等の延べ受益者数は 7 百万を超え、740 本を越える株式、債券、不動産、アセット・アロケーション型のファ ンドの運用を行なっています。運用を担当するファンド・マネージャーは、世界 12 カ国で調査を行なう、業界でも最大級の調査チームによる調査情報へのアク セスがあります。フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントは、独立系の運用会社で、非公開企業です。日本においては、フィデリティ投信株式会社が投資 信託及び企業年金や機関投資家向け運用商品やサービスを提供、フィデリティ証券が投資信託を中心とした個人の長期的資産形成を支援するサービスを 提供しています。 (※2012 年 3 月 31 日現在) フィデリティ投信株式会社 (金融商品取引業者) 登録番号:関東財務局長(金商)第 388 号 加入協会:社団法人投資信託協会、社団法人日本証券投資顧問業協会 当資料は、信頼できる情報をもとにフィデリティ投信が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料に記載の情 報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。また、いずれも将来の傾向、数値、運用結果等を保証もし くは示唆するものではありません。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の 株式等の売買を推奨するものではありません。当資料にかかわる一切の権利は引用部分を除き当社に属し、いかなる目的であれ当資料の一部又は全部の無 断での使用・複製は固くお断りいたします。投資信託のお申し込みに関しては、下記の点をご理解いただき、投資の判断はお客様自身の責任においてなさいま すようお願い申し上げます。なお、当社は投資信託の販売について投資家の方の契約の相手方とはなりません。投資信託は、預金または保険契約でないため、 預金保険および保険契約者保護機構の保護の対象にはなりません。販売会社が登録金融機関の場合、証券会社と異なり、投資者保護基金に加入しておりま せん。投資信託は、金融機関の預貯金と異なり、元本および利息の保証はありません。投資信託は、国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対 象とし投資元本が保証されていないため、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により投資一単位当たりの価値が変動します。従ってお 客様のご投資された金額を下回ることもあります。又、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なる ことから、リスクの内容や性質が異なりますので、ご投資に当たっては目論見書や契約締結前交付書面を良くご覧下さい。投資信託説明書(目論見書)につい ては、販売会社またはフィデリティ投信までお問い合わせください。なお、販売会社につきましては以下のホームページ (http://www.fidelity.co.jp/fij/fund/japan.html)をご参照ください。ご投資頂くお客様には以下の費用をご負担いただきます。 • 申込時に直接ご負担いただく費用: 申込手数料 上限 4.2%(消費税等相当額抜き 4.0%) • 換金時に直接ご負担いただく費用: 信託財産留保金 上限 1% • 投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用: 信託報酬 上限 年率 2.0265%(消費税等相当額抜き 1.93%) • その他費用: 上記以外に保有期間等に応じてご負担頂く費用があります。目論見書、契約締結前交付書面等でご確認ください。 ※当該手数料・費用等の上限額および合計額については、お申込み金額や保有期間等に応じて異なりますので、表示することができません。ファンドに係る 費用・税金の詳細については、各ファンドの投資信託説明書(目論見書)をご覧ください。 ご注意)上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、フィデリティ投信が運用 するすべての公募投資信託のうち、徴収する夫々の費用における最高の料率を記載しておりますが、当資料作成以降において変更となる場合があります。 投資信託に係るリスクや費用は、夫々の投資信託により異なりますので、ご投資をされる際には、事前に良く目論見書や契約締結前交付書面をご覧下さい。 BCR120529-1 CSIS120529-2 4/4