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資料3-1 東京大学大学院数理科学研究科 山本昌宏 教授 提出資料
国際交流について:意義と問題点について 山本 昌宏:東京大学 2013 年 1 月 21 日 第 10 回数学イノベーション委員会 研究振興局 山本の国際交流 1. 2. 3. 4. 年間 30 名ほどの訪問研究者 15 名程度と共同研究(共著論文) 海外の院生のスカウト 産学連携への組込み 数理科学研究科の「教員一人当たりに対する外国 人訪問研究者数」は、東大内で一位 国際交流を重要と考え 実践している立場から の私見 数学研究の国際性 • 地域性、各国固有の文化・歴史に依存する割合 が低い • 知の多様化、グローバル化で国際性 • 施設などの制約が少ない:小さい都市でも優秀 な日本人数学者がいれば一流の人材が海外から 訪問しようとする 数学の国際交流の意義 • 院生の立場から • 研究者の立場から 背景 • 数学の分野の多様化 • 国際共同研究が常態化: ヨーロッパ共同体など • 多国間での研究・教育環境の規格化 例:ボローニャ・プロセスに基づく大学改革 ヨーロッパの大学の国際競争力を高めるために、統 一された大学圏を作る:学修課程と学位の構造の共 通化、学修プロセスの互換化 • 海外の教育機関の外国人学生の受入れの拡大 例:エコールポリテクニク http://www.admission.polytechnique.edu/home/ exchange-programs/internshipprogram/presentation/ • 海外の研究機関の評価では国際共同研究が1つ の評価基準:研究所の存続、廃止の評価で考慮 されることがある • Globalization (=英語化) でより学生を広く受け 入れたい 例:フンボルト財団 http://www.humboldt-foundation.de/ web/humboldt-fellowship-postdoc.html によるポスドク・プログラム、奨学金受給の条件の 大幅な緩和 院生の立場からの意義 • 海外でのインターンの機会 • 多様な研究動向にふれる • コミニュケーションスキル(発表、議論、執筆 は英語で日本語の論理やレトリックにはよらな いので) • 研究者ネットワークの構築 研究者の立場からの意義 • 関連分野の最新の成果をもれなく確保できる 例:産業界など異分野連携で数学の知見が求め られている際に取りこぼしがない。臨機応変か つ最速の課題解決のための国際的なタスク フォースを形成できる。すぐ解決できる。 • 結果の優先権の確保 • 研究成果の周知効果: 世界各地で類似の研究を やっている人と協調することにより不要な対立 をさけ研究も多様化できる: 数学研究は 1 回で成果を競うスポーツとは異 なる! 例:日本、ヨーロッパ、中国の研究者との共著 論文:それぞれの地域で認知度があがる • 関連分野ではあるが異質の研究者との共同研究 から、新たな研究が展開する可能性あり ←− 継続が必要 結論 国際交流はわが国の数学の底力を活かし、数学の 一層の振興を図るために有効である 国際共同研究のための留意点 • 相補的であること:専門分野の過度の一致を避 ける。得意、不得意を組み合わせる 例 JSPS-CNRS 共同研究 (H22-23): フランス側は制御論、日本側は逆問題 ドイツ:最適化、離散幾何学がさかん、日本は微分 方程式の理論面が得意 中国:理論−数値計算にバランスがよい研究者が多 い。日本は理論面にやや偏る =⇒ 補い合う • Win-Win 関係を目指す:外国に学ぶとか、外 国の研究者に教えてやるという風な一方向のや りかたであると長続きしない • 研究者の招へい+派遣 (院生も含む) • 組織より人単位での交流が重要 • 海外からの研究者に快適な研究環境を確保する (欧米と異なる生活習慣などのため) • 国際共同研究=継続は力 (異なる楽器奏者が調和した響きを奏でること と同じで時間が必要だが、合奏では 1 + 1 は 4 にも 10 にもなる!) 国際交流の遂行上の制度に関する問題点 • 大学の教員の時間の確保:国際交流は大学の教 員の第一の本務ではないので制度的な支援が少 なく、インセンティブに欠ける 例:200 名以上の規模の数学の国際会議を日本 で開催することが困難に感じられる(他国に開 催を譲るなど)= 国際的影響力の低下を招く • 事務員の確保:ビザ申請、在留資格申請、住居 の手配 (民間借入れ)、異文化への対応(食事 など) • 制度の柔軟な運用: 例:日本側が単一の大学に限定されると他大学 の院生の派遣が制度上不可能ではないが、時間 がかかるなどで柔軟な運用ができず、 「迅速さが命」の研究に向かない (タッチの差で同じ結果が出版されてしまった など) 提案:可能な形態 制度面で国際交流遂行に余裕のある大学をコアに 規模は小さいが特色ある研究をしている 複数の研究機関のスタッフや学生が 柔軟に参加できるシステムの構築