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世界を目指したアジアでの戦い アテネオリンピック

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世界を目指したアジアでの戦い アテネオリンピック
Technical
news
Vol.4
特集
アテネオリンピック、
テクニカルレポート
世界を目指したアジアでの戦い
∼U-19日本代表&U-16日本代表
JFAエリートプログラム/
C.デュソー氏を迎えて
2004ナショナルトレセンU-12
財団法人 日本サッカー協会
Technical news
Vol.4
特集①
テクニカルレポート
© Jリーグフォト
(株)
第28回オリンピック競技会
(アテネ/2004)
男子サッカー競技
2
特集②
U-19日本代表、U-16日本代表
世界を目指した
アジアでの戦い
45
2004年度、JFAエリートプログラム/
第3回トレーニングキャンプ
∼前INF校長、C.デュソー氏を迎えて
12
オープン !
JFAメンバーズサイト「JFAコミュニティ」
、
指導者・指導チーム検索システム「コーチ・スクエア」
珠玉のひとこと その5
2004ナショナルトレセンU-12
活動報告・ユース年代の日本代表チーム
2004JFAスーパー少女プロジェクト
年代別指導指針④
日本選手、フィジカル面での課題
∼アジアにおける各年代大会視察を通して
GKプロジェクト活動報告
∼U-18/U-15 GK合同キャンプ、公認GK-C級コーチ養成講習会など
2004ストライカーキャンプ
AFC U-17サッカー選手権大会2004∼技術・戦術分析
連載:クラブづくりを考えよう!∼サッカーをもっと楽しむために∼
連載:審判員と指導者、ともに手を取り合って・・・
技術委員会刊行物・販売案内
○表紙:大熊清・U-19日本代表監督/写真提供、Jリーグフォト㈱
○発行人:田嶋幸三
○監 修:財団法人日本サッカー協会技術委員会
○発行所:財団法人日本サッカー協会
○制 作:財団法人日本サッカー協会技術委員会・テクニカルハウス
○制作協力:エルグランツ(株)
○印刷・製本:サンメッセ(株)
※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。
14
1 7
1 8
24
28
30
32
34
38
40
42
44
56
MEN'S OLYMPIC FOOTBALL TOURNAMENT
ATHENS 2004
特集①
技術・戦術的分析
から守備に切り替わり、コンパクトフィー
1998年FIFAワールドカップでは、守備
ルドを形成するまでのわずかな時間を突く
から攻撃への切り替えの早さが強調され、
ファーストディフェンダーとは、相手チ
ことは、現代サッカーでは非常に重要とな
相手の一瞬の隙を突いてシュートまで持ち
ームのボール保持者に対応するディフェン
る。これに関しては、山本昌邦U-23日本
込むダイレクトプレーの傾向が強くなっ
ダーを指す。
代表監督は「攻守5秒の質」という表現で、
た。それを受けて2002年FIFAワールドカ
選手たちに意識づけを行っていた(11ペ
ップでは、それを阻止するために攻撃から
ージ参照)
。
守備への切り替えが要求されるように、世
1.ファーストディフェンダー
現代サッカーの守備戦術は、ますます組
織的になってきており、FW・MF・DFの3
テクニカルレポート(抜粋)
第28回オリンピック競技会(アテネ/2004)
ラインとGK、すなわちチーム全員が連動
攻撃者はまずボールを奪った瞬間に、ダ
界のサッカーは発展してきている。今大会
してコンパクトフィールドを形成し、相手
イレクトプレーを目指すことが重要であ
でも、守備側がボールを失った瞬間に相手
に対して時間とスペースを与えず相手の攻
る。それを達成するためには、チーム全体
のダイレクトプレーを阻止する切り替えが
撃能力を消すようになってきている。この
として、相手がほんの一瞬だけ見せる隙を
徹底してきている。
ことは、システム上3バックであろうと4
逃さない意識を持ち、またその隙を突いて
攻守の切り替えが早くなってきている中
バックであろうと関係なく、現代のトップ
攻撃を達成するだけのスキルが選手たちに
で、まずは相手のダイレクトプレーを阻止
レベルのサッカーの前提とも言える戦術に
求められる。
するための、ボール保持者へのファースト
なってきている。
今大会では上位チームは、守備組織を非
常にコンパクトにするとともに、ボールに
男子サッカー競技
ARG
□概 要
第28回オリンピック競技会(アテネ/2004)
男子サッカー競技
アテネオリンピック・男子サッカーは、8月
11日から28日まで、16チームが参加して決勝
戦まで合計32試合がギリシャ国内5つのスタジ
アムで行われた。選手参加資格は「1981年1月
1日以降生まれの選手」
、各チーム最大3名、こ
の制限を受けない選手(オーバーエイジ選手)
の参加も可能となった。
今大会、アルゼンチンが初日にセルビア・
モンテネグロを6-0で破り、その後も攻撃的な
サッカーを見せて、オリンピック初優勝を果
たした。大会得点王となったFW⑩C.テベスの
8ゴールを含めて17得点、失点0と安定した守
備、6試合すべてに勝利、まさに"完全優勝"で
あった。
3大会連続、7回目の出場となった日本は、
グループリーグで準優勝のパラグアイ、3位の
イタリアに敗れ、36年ぶりのメダル獲得はな
らなかった。
A
© Jリーグフォト㈱
GRE
4
ギリシャ
2
韓国
2-2
1
マリ
2-0
3
メキシコ
順位
B
C
に早いサッカーであり、ダイレクトプレー
-3
このファーストディフェンダーの徹底が
1-0
5
6
5
1
0-0
5
5
3
2
なされていたのが上位チームである。その
4
3
3
0
反面、コンパクトにはしているものの、そ
差
のコンパクトフィールドが単に形だけであ
5
1
り、ファーストディフェンダーがボールに
7
-1
4
4
0
5
5
0
ボール保持者の周囲に人数はいるものの相
差
手の攻撃を自由にさせ、失点につながって
しまう。ファーストディフェンダーの徹底
3-2
0-1
0-0
PAR
JPN
GHA
ITA
4-3
1-2
1-0
6
6
1-0
2-3
3
6
2-2
4
4
勝点 得点 失点
パラグアイ
4
日本
3-4
3
ガーナ
2-1
0-1
2
イタリア
0-1
3-2
2-2
ARG
SCG
TUN
AUS
6-0
2-0
1-0
9
9
0
9
2-3
1-5
0
3
14
-11
1-1
4
4
5
-1
があってこそ、コンパクトフィールドでの
4
6
3
3
組織的守備が絶大なる効果を発揮し、簡単
差
には崩されない守備を可能にするのであ
勝点 得点 失点
1
アルゼンチン
4
セルビア・モンテネグロ
0-6
3
チュニジア
0-2
3-2
2
オーストラリア
0-1
5-1
1-1
CRC
MAR
IRQ
POR
0-0
0-2
4-2
4
4
4
0
2-1
1-2
4
3
3
0
4-2
6
7
4
3
3
6
9
-3
順位
D
きていると言える。
差
3-3
3-3
優勝したアルゼンチンに見られたよう
7
2-3
2
コスタリカ
3
モロッコ
0-0
1
イラク
2-0
1-2
4
ポルトガル
2-4
2-1
2-4
勝点 得点 失点
各グループ上位2チームが、決勝トーナメント進出
A1
マリ
B2
イタリア
C1
アルゼンチン
D2
コスタリカ
D1
イラク
C2
オーストラリア
B1
パラグアイ
A2
韓国
0
※ 1
4
0
1
0
3
2
10
る。
2.ダイレクトプレー
∼守備から攻撃への切り替えの重要性
4.ゴールへのプロセス
守備が組織化されて崩すことが難しい現
代サッカーにおいて、攻撃でまず狙うべき
ITA
アルゼンチンvsイタリア 後半24分
イタリアのフリーキックがイタリア⑩A.ピルロに渡ったが、プ
レッシャーを受けこぼれたところをアルゼンチン⑤J.マスケラー
ノが拾い、すかさず⑩C.テベスに縦パスを入れた。同時に⑯L.ゴ
ンザレスが前に向かって長い距離を走り出している。⑩C.テベス
は縦パスを受けて、積極的にドリブルでしかけ、それによって、
イタリアの守備者が2人ひきつけられた。そこを上がってきた⑯L.
ゴンザレスに出し、⑯L.ゴンザレスはフリーでシュートを決めた。
このように、ボールを奪ってから相手の隙を突いて、無駄な手
数をかけずにしかけるダイレクトプレーは、得点チャンスにつな
がる確率が高い。また、このシーンではチーム全体がダイレクト
プレーの意識をもって切り替えをして走っており、この得点はそ
れによって生まれたものである。
述べたように、現代サッカーでは守備が非
常に組織的になっていて、攻撃側には時間
0
3
とスペースが与えられない中で攻撃をしな
1
0
優勝:アルゼンチン
<3位決定戦>
第2位:パラグアイ
1
3
第3位:イタリア
0
1
イラク
イタリア
図1-2 トランジション
ARG
15
11
10
ITA
∼攻撃から守備への切り替えの重要性
前項「2.ダイレクトプレー」で述べたこ
フィールドが形成され、自陣ゴール前で守
とは、裏返せば、守備側にとってみれば、
備が完全に組織化されてしまうと、それを
相手のカウンター攻撃を許さないことが必
崩して得点を奪うことは非常に困難であ
要になってくる。ポジションに関係なく、
る。
ボールが奪われた瞬間に、全員が攻撃から
はボールを奪った瞬間となる。相手が攻撃
※延長戦
はダイレクトプレーである。しかし、それ
3.トランジション
くてはならない。とくに、一旦コンパクト
したがって、攻撃側にとって第一の狙い
を狙い、得点を奪うことすら困難になって
きている。
プレッシャーをかけにいっていない場合、
前項「1.ファーストディフェンダー」で
■決勝トーナメント
行くことができる。
に、現代サッカーは攻守の切り替えが非常
4
MEX
0-2
ーが高い位置から積極的にボールを奪いに
16
傾向であるが、それがさらに高度になって
1
MLI
2-2
5
2002年FIFAワールドカップから見られた
勝点 得点 失点
KOR
からこそ、より前のポジションのプレーヤ
13
かけ、その周囲を組織で囲い込み、相手の
1
順位
ト(危機管理)がしっかりなされており、
しっかりとした守備がすでにしかれている
徹底されており、ボールにプレッシャーを
大会結果
■グループリーグ
順位
ボランチを含め、後方のリスクマネジメン
1
対しては常にファーストディフェンダーが
攻撃を封じ、ボールを効果的に奪っている。
日本サッカー協会は今年8月に開
催された「第28回オリンピック競技
会(アテネ/2004)」にテクニカル
スタディグループ=福井哲(技術委
員会委員)
、今泉守正(技術委員会委
員)、塚田雄二(ナショナルトレセン
コーチ)=を編成し、派遣しました。
テクニカルスタディグループが制
作した「JFAテクニカルレポート」よ
り、技術・戦術的な分析をはじめと
する抜粋を紹介します。
ディフェンダーが徹底されていた。その際、
図1-1 ダイレクトプレー
守備に素早く切り替え、相手のダイレクト
プレーを防がなくてはならない。
アルゼンチンvsイタリア 後半31分
アルゼンチン⑮A.ダレッサンドロが中盤でボールを持った際に、
⑮A.ダレッサンドロから⑩C.テベスへパスを出したが、イタリア
に読まれインターセプトされてしまった。そのままドリブルで持
ち上がられるが、⑩C.テベスはすぐに切り替えて奪い返しに行き、
ドリブルを追いかけ、スライディングタックルで奪い返した。相
手のダイレクトプレーにつながりそうなチャンスを素早い切り替
えで阻止した場面である。しかも、追いかけて奪い返したのがス
トライカーである⑩C.テベスであったことも、特筆に値する。得
点をとることが仕事である⑩C.テベスほどのストライカーであっ
ても、守備を免除されてはおらず、チームのピンチに戻ってディ
フェンスをし、相手の決定的なチャンスにつながりそうな場面を
未然に防いでいる。
◎同女子サッカー競技は、本誌次号にて紹介します。
2
3
MEN'S OLYMPIC FOOTBALL TOURNAMENT
ATHENS 2004
を阻止するために、攻守の切り替えが非常
が今大会であった。
に早いゲームが繰り広げられるようになっ
「ゴールを奪う」「ゴールを奪われない」
てきており、ダイレクトプレーを狙うこと
これがサッカーの本質である。まさに、そ
すら困難になってきている。
れをめぐる形で現代サッカーの戦術は発展
一旦、組織化されてしまったら攻撃でき
図1-8
ITA
ITA
11
9
2
してきている。
3
9
ないということでは、得点のチャンスがな
5.ゴールキーパー
かなか生じない。攻撃を遅らされ、コンパ
クトフィールドを形成されてしまってか
(1)大会ゴールキーパー
ら、どのように崩すのかを、攻撃側は考え
GKにオーバーエイジ(OA)枠を使ったの
なくてはならない。
JPN
この場合、最終ラインの背後を突けるこ
むGK陣は、それぞれ各国リーグに出場す
とが最善であるが、GKの存在もあり、そ
る世界基準でプレーするGKであった。シ
こが突けないときに、次に重要になってく
ュートストップの状況下では、安定したゴ
るのがバイタルエリアの攻略である。この
ールキーピングが随所に見られ、ブレイク
エリアにボールを運ばれると、ゴールに直
アウェイ、クロスの状況下においても同様
結するプレーが可能になり、守備側にとっ
2
3
3
1
図1-9
図1-11
11
JPN
4
10
JPN
10
9
5
3
4
5
9
3
16
4
17
ITA
ITA
18
18
図1-6は、準々決勝イラクvsオーストラ
ニカルなポイントとしては、GKの構えや
大会無失点のアルゼンチン⑱G.ルクス
リアから、決勝点となった後半19分、CK
そのタイミング、そして適切なポジション
からプレーをしているかどうか。反応速度
の安定感あるプレーが繰り広げられた。
アテネオリンピック決勝戦 アルゼチンvsパラグアイ © 伊藤隆司/SHOT
4
JPN
1
は、5か国だけであった。このOA選手を含
ては脅威となる。このエリアの攻略は、ど
図1-10
4
のチームも狙ってくるところである。その
人とボールを動かしつつ、相手のブロック
よって、縦のコンパクトを形成しにくくし
は、ベテランDF②R.アジャラを中心とす
からのこぼれ球をイラクFW⑦エマド.Mの
ためには、意図的なポゼッションプレーで
(守備組織)をずらし、崩していくことが
てきた。こうすることでディフェンスライ
る堅守のDF陣との連携が良く、6試合を通
オーバーヘッドキックによる得点である。
を縮めることや、オフ・バランスからの対
重要となる。時間がない、スペースがない
ンの幅が広げさせられ、ディフェンダー間
じて無難なゴールキーピングをしていた。
オーバーヘッドキックは、GKにとってタ
応能力を高めることにより守備範囲を広げ
"Less time, Less space"の中、素早い判断
の距離が長くなり、カバーしづらくなり、
大会でのNo.1 GKは、イタリアの⑱I.ペリ
イミングと方向性を見極めることが大変難
ることなどが挙げられる。
としっかりしたスキルに基づく、人および
数的優位でボールを奪うことが難しくなっ
ッツォーリであろう。A代表経験もある
しい。図1-7は、準決勝アルゼンチンvsイ
次にブレイクアウェイやクロスの状況下
ボールの流動的な動きが重要となる。
た。こうすることで中央のバイタルエリア
OAのGKで、大会を通じて存在感を発揮し
タリアから、アルゼンチンの先制点となっ
から決定的な得点を決めたシーンと、その
図1-3 ゴールへのプロセス①
PAR
8
12
15
10
ARG
それでもコンパクトフィールドを形成さ
が意図的に緩められ、こじあけられ、シュ
ていた。
た前半16分⑩C.テベスのジャンピングボ
逆で逃したシーンをとり出して、GKプレ
れると、このエリアが固められ、容易にボ
ートスペースが広くなる。また、フリーに
(2)プレー分析
レーシュートによる得点である。FW⑫M.
ーがどのように影響を及ぼしているか、比
ールを入れることができない。そこでコン
なったワイドポジションから中に入るボー
今大会のGKプレーを分析するにあたっ
ロサレスからのクロスをイタリアDF④M.
較考察する。
パクトフィールドをさらに意図的に崩し、
ルは、よりゴールへ直結したチャンスにつ
て、大会で生まれた特徴的な得点を考察し
フェッラーリがヘディングでそらしたボー
図1-8は、日本vsイタリアから、イタリ
バイタルエリアをこじあけるための手段が
ながる。
なければならない。それはひと言で言えば
ルを細かなステップで下がりながら見事に
アの2点目となった前半8分、FW⑨A.ジラ
ミートしたジャンピングボレーであった。
ルディーノの得点である。DF②田中闘莉
的なポゼッションの重要性が再確認された
当然のことながら、その前提としてバイタ
大会得点王となったアルゼンチンの⑩C.
こうした3得点に対して、GKが予測を立
王が自陣から前線にフィードしたボールを
大会となった。
ルエリアの攻略が念頭にあり、そのために
テベスによるクロスからの得点やイタリア
てるにはさまざまな経験が必要となる。ま
直接カットしたDF④M.フェッラーリがワ
各チームがいろいろな手段を講じてきて
こうした戦術がとられている。こうしたハ
の⑨A.ジラルディーノの得点等々。そして、
ず、選手それぞれの特徴を事前に知ること
ンタッチで⑨A.ジラルディーノへパスを出
いる。例えば、バイタルエリアを徹底して
イレベルな戦術のせめぎあいが見られたの
その得点へ至る前のクロスやラストパスな
ができるかどうか。ビデオなどでの映像で
した。このパスを受けた⑨A.ジラルディー
どがワンタッチプレーによって生まれてい
予備知識があれば、多少想定したイメージ
ノはDF③茂庭照幸をかわしてGK①曽ヶ端
ることに注目しなければならない。
作りや事前トレーニングを準備することが
準と1対1となり、先に動いた①曽ヶ端準
大会終了後、山本昌邦監督は「ペナルテ
できる。また、過去の試合などでこのよう
を見て、確実にゴール右へ蹴り込んだ。
ィエリア内における決定力、無理な体勢で
な失点をした苦い思いも経験となる。テク
必要となってくる。ボランチを含めた意図
アルゼンチンvsパラグアイ 前半41分
現代サッカーではバイタルエリアを攻略したくても、ゴール前
では守備のブロックが形成されていて、そこを崩すのは非常に困
難である。アルゼンチンはより高い位置に幅いっぱいにワイドプ
レーヤーを置くことで、コンパクトな守備組織を緩めることに成
功した。
⑩C.テベスから⑮A.ダレッサンドロにくさびが入るが、⑧C.デ
ルガドと⑫M.ロサレスがワイドに開いて高い位置にいるため、両
サイドのディフェンスが大きく広げられてしまい、思い切ってし
ぼりきることができずにコンパクトな状況が作れていない。そこ
を⑮A.ダレッサンドロがターンして、カバーのない状態で中央で
の1対1から決定機を作った。
突いておいて、守備を中央部に集中させて
おきサイドを使う。あるいは、片方のサイ
ドに集中させておいて、効果的なサイドチ
ただし、このように幅を活用した攻撃も、
図1-5
ITA
ェンジで逆サイドに展開するなどがある。
図1-4 ゴールへのプロセス②
3
ピッチの68mの幅を有効に活用する。
6
るバイタルエリアを意図的に崩すために、
12
10
11
6
15
5
つけなければならない」と語った。これは
9
2
JPN
3
1
今大会のアルゼンチンは、相手のディフェ
ンスラインを広げさせるために、幅を最大
限に活用して攻撃をしかけてきた。意図的
らない」ということになる。
まずは、その無理な体勢からワンタッチ
13
ーを出現させ、流動的に人とボールを動か
サイドの⑤J.マスケラーノからトップの⑩C.テベスに入れた瞬
間、コスタリカのディフェンスは中央のバイタルエリアに集中し
てコンパクトに守備をしている。⑩C.テベスがこのボールを落と
し、それを受けた⑮A.ダレッサンドロからサイドに出たノーマー
クの⑪C.キリ・ゴンザレスに渡り、シュートまでもっていくこと
ができた。
コスタリカはあらかじめワイドに開いたプレーヤーがいたにも
かかわらず、中央のバイタルエリアをコンパクトに守ろうとした。
その結果、幅を活用して高い位置に開いていたアルゼンチンのワ
イドプレーヤーがフリーになった例である。このように、アルゼ
ンチンは、ワイドプレーヤーを意識的に幅いっぱいに高い位置に
置くことによって、バイタルエリアを攻略できない場合でもワイ
ドプレーヤーを活用し、ゴールに直結するチャンスを作り出して
いた。
4
(図1-3,4)。ワイドプレーヤーにより高い
で仕事を仕上げる得点である。
11
図1-5は、日本vsイタリアから、先制点
7
6
9
AUS
11
位置取りをさせて、ディフェンダーが開か
CK
ざるを得ない状況を生み出し、横のコンパ
図1-7
クトを意図的に広げていき、シュートスペ
18
日本の右サイドを崩したMF⑪G.スクッリ
からのワンタッチクロスに際して、日本守
ARG
備陣のマークが一瞬甘くなるのを見逃さな
いく。イタリアも幅を広く使うことにより、
かった。ワンタッチクロスが上がってくる
ディフェンスを広げさせる戦術に出た。ま
するFW⑰J.カルドソの優れた駆け引きに
となった前半3分MF⑥D.デロッシがオーバ
ーヘッドキックで決めたシュートである。
ースを作り出し、あるいはそこから崩して
た、パラグアイは、相手の最終ラインに対
GKに置き換えると「ワンタッチで繰り出
トに対する対応能力を引き上げなければな
IRQ
しながら、ワイドポジションを突いてきた
アルゼンチンvsコスタリカ 後半3分
15 11
されるラストパスやクロス、そしてシュー
図1-6
により高い位置取りをするワイドプレーヤ
ARG
前ページ図1-9は、同じく日本vsイタリ
もワンタッチで仕事を仕上げる能力を身に
7
崩すことがますます困難になってきてい
CRC
「ワンタッチプレー」である。
10
12
ことを予測、そしてオーバーヘッドキック
3
16
ITA
4
14
8
18
5
7
によるシュートの予測と準備がともにでき
なかったと言わざるを得ない。
アテネオリンピック決勝戦 アルゼチンvsパラグアイ © 伊藤隆司/SHOT
5
MEN'S OLYMPIC FOOTBALL TOURNAMENT
ATHENS 2004
アから、後半開始早々の46秒、FW⑪田中
前ページ図1-11は、同試合の前半41分左
を確実に決める。また、GKは限りなく困
達也のラストパスから、イタリアDFの背
サイドからDF④那須大亮がワンタッチで
難な場面で、その1本のシュートを防ぐこ
後に飛び出した⑩松井大輔がイタリアGK
クロスを上げ、FW⑯大久保嘉人がヘディ
とが要求されるのである。
⑱I.ぺリッツォーリと1対1となるが、⑱I.
ングシュートしたシーンである。正確な④
前出の山本監督の言葉、これは言い換え
ペリッツォーリがしっかりと構え、先に動
那須大亮のワンタッチクロスに対して、イ
き出さないため、シュートタイミングが一
コンパクトフィールドにおいて、ファー
ゴールを奪う、というサッカーの最大の
ストディフェンダーが常に厳しいプレッシ
目的を達成するためには、このように個人
ャーをかけてくる中、ボールをうまくスク
として、またグループとして、常にゴール
リーンしてボールを失わない(図2-1)
。ま
を意識し、前を向き、しかけていくプレー
れば「ペナルティエリアに向けて、ワンタ
た、プレッシャーを受けながらも、相手を
が重要である。
タリアDFの間に入った⑯大久保嘉人は確
ッチで送られて来るパスを予測し、難しい
コントロールし、顔を上げ、周囲の状況を
(5)パスの質
歩遅れ、戻ったDF⑤D.ボネーラにクリア
実にヘディングでボールをとらえたが、ゴ
体勢からでも繰り出されるワンタッチシュ
観つつ、しっかりとパスをつなぐ。フィニ
今大会では、非常に質の高いパスが随所
されてしまう。こうした状況における決定
ール左へ飛んだシュートは、イタリア⑱I.
ートにも対応できなければならない」とい
ッシュの場面でも、コンタクトを受けつつ
に見られた。守備がコンパクトに組織化し、
力の差、イコールGKの対応力の差が世界
ペリッツォーリによって確実にゴール外へ
うことになる。こうした意味からも日本の
も、体勢を崩さずしっかりとゴールを決め
時間とスペースが与えられない現代のサッ
では問われることとなる。
弾き出された。シュートコースが多少甘か
GKは、試合における経験値を上げなけれ
るプレーが見られた。
カーでは、少しのずれでチャンスが消えて
次に、クロスのシーンから確実に決めた
ったこともあるが、彼のポジショニングや
ばならない。しかし、現在の状況において
プレーと、決定機を相手GKに阻まれたプ
構えるタイミングが的確で、ディフレクテ
は、年齢区分のある大会で、日常にタフな
レーである。
ィングによって確実に弾き出す判断も適切
試合、公式戦への出場機会に恵まれていな
な良いゴールキーピングと言えるであろ
いGKが大多数なのである。23歳以下の大
ポルトガル⑦C.ロナウドは、ゴールキーパーからのボールを受
けたが、相手が当たりにくることを察知、まずボールを相手に奪
われない外側に置いてからコンタクトをしている。
もう一人のディフェンダーが挟みにくるが、そのコンタクトを
利用して確実にボールをコントロールして持ち出し、その瞬間に
はすでに顔が上がって、前の状況が観えている。
イタリアの3点目となる前半36分⑨A.ジラ
う。
会となるオリンピックでは、その年代で、
図2-2 しかけ
ルディーノがヘディングで決めた得点であ
(3)まとめ
Jリーグに常時出場しているGK選手はJ1に
前ページ図1-10は、日本vsイタリアから、
る。日本の右サイドからDF③E.モレッテ
図2-1 コンタクトスキル
POR
7
IRQ
イラクvsポルトガル 後半23分
CRC
コンタクトを個人戦術のスキルという面
しまう。ギリギリのタイミングでも質の高
からとらえ、その質を高めていく必要があ
いパスを出すことで、シュートチャンスが
る。
生まれる。
(4)積極的なしかけ
アルゼンチンのポゼッションプレーにお
今大会も個人として、ゴールに向かう意
いて、常に味方に前を向かせるパスの連続
識の強さが見られた。倒れても、すぐ起き
は見事であった。また、コースやスピード
上がり、前を向く。そして、積極的にしか
において、味方がスペースを走っていくス
決定機を確実に決められないということ
は皆無であり、J2で2名、2クラブのみで
ィがワンタッチで上げたクロスに対して、
は、日本サッカー、アジアサッカーにおい
ある。要するにJ1、J2合わせて28クラブ
けていく。少しのスペースでも逃さずに前
ピードを殺さない、といったことを追求し
日本ゴール前へ入ってきた⑨A.ジラルディ
て幾度となく語られている。サッカーにお
に2名しか存在しないのである。この状態
を向く。そうすることで、ディフェンダー
ていくことが重要である。これは日ごろの
ーノが難しい体勢ながらもヘディングをし
ける攻撃と守備が相対関係にあるとするな
では、OA枠をGKで使わなくてはならない
は飛び込むことができない。隙を逃さず、
トレーニングから、厳密に質を追求して身
てゴール左上へ確実に決めた。これもワン
らば、決定機を決めきれない攻撃陣は、こ
のである。18歳∼22歳のGK選手を育成強
どんどん連続して前を向いていく攻撃が見
につけていかなくてはならないことであ
タッチクロスの予測と準備、難しい体勢か
れまた決定機を守りきれない守備陣という
化する方法と厳しい試合を常時経験する機
られた。
る。
らのヘディングに対する予測と準備がDF、
ことにも相通じる事柄である。日ごろのト
会を作るシステムを早急に考えなければな
GKともに不足していた。
レーニングの場面で、GKとの1対1の場面
らない。
個人戦術
10
14
アルゼンチンvsコスタリカ 後半37分
アルゼンチン④F.コロッチーニからサイドチェンジで⑭C.ロド
リゲスに渡った。⑭C.ロドリゲスは自分の前にギャップができて
いるのを観て、ファーストタッチでその間のスペースへ積極的に
入っていく。そのまましかけてドリブルで持ち上がり、⑩C.テベ
スにくさびを入れ、なおもそのリターンを受けるべく上がってい
く。その動きにセンターのディフェンスがつられた瞬間、⑩C.テ
ベスはゴール方向にターンし、シュートを決めた。⑭C.ロドリゲ
スの積極的なしかけの動きによって、⑩C.テベスに絶対かかって
いなくてはならなかったはずのマークが緩んだことによって生ま
れた得点である。
また、ボールを持っていないとき、すなわ
素となる。無造作に止めてしまってから次
ち「オフ・ザ・ボール」の場面で、周囲の
のプレーに移っても、もう状況は変わって
トタッチの置きどころが非常に重要であ
状況、味方、スペース、相手を観て判断し、
しまっていてチャンスがなくなっている。
る。
を達成するためには、その要素となる攻撃
ボールをより有利な状況で受けるための良
世界のトップレベルは、それくらい厳密な
の個人戦術が高いレベルで身についていな
い準備につなげていくことが重要である。
レベルにある。
くてはならない。組織化された守備を意図
(2)ファーストタッチ
1.攻撃の個人戦術
前章で述べてきたようなチーム戦術行動
的に崩すためには、個人の高い技術と戦術
が前提となっている。
(6)サポートの質
けとして、他の選手が走ることによってディ
相手がコンパクトに守ってくる中で、バ
フェンダーがひきつけられ、ボール保持者が
イタルエリアを意図的に崩すポゼッション
前を向ける、といったオフ・ザ・ボールのラ
プレーを有効にするためには、味方同士が
ンニングによって、味方に前を向かせるよう
意図的に動き、できたギャップを共有して
なプレーも見受けられた(図2-2)
。
いくことが非常に重要である。チーム全体
として、人とボールを意図的に動かしなが
図2-3 サポート
ら、ギャップを作り出し、それを活用して
いくことで、ゴールにつながる有効なポゼ
ITA
ッションプレーが可能となる(図2-3)
。
10
また、「ゴールを奪う」という、サッカ
12
2.守備の個人戦術
ーというスポーツの本質的な目標に向かう
攻撃と同様、守備のチーム戦術行動を達
あらかじめ周囲の状況を観て把握してお
ためには、常にゴールを意識したファース
成するためには、その要素となる守備の個
時間もスペースもない現代サッカーの中
いて、次のプレーのアイディアを持ち、そ
トタッチが重要である。これは前線のプレ
人戦術が高いレベルで身についていなくて
では、ファーストタッチは非常に重要な要
のアイディアを実現できるようなファース
ーヤーに限られることではない。ディフェ
はならない。守備のチーム戦術は高度に組
ンダーでもミッドフィルダーでも、前にス
(1)観る⇒判断
我々は、あえて「観る」という言葉を用
ペースが空いていたらファーストタッチで
いている。それはただ"見えている"だけで
積極的に中に入っていくことで、前線の状
はなく、判断の材料となる必要な状況がし
況は変わっていく。
っかりと「観えている」ことを指すためで
観て判断すること、判断にしたがってア
ある。目を向けるだけでなく、風景として
イディアを実現するのに最適なファースト
とらえるだけでなく、時間もスペースも限
タッチをすることが、今大会では高いレベ
られていて刻々と変わる周囲の状況を把握
ルで見受けられた。
して、必要な情報を得て、瞬時の判断につ
(3)コンタクトスキル
両チームのプレーヤーが入り混じって、
なげていくことが重要である。
パスを受ける前に観る、出し手がパスを
ボールをめぐって争う対人競技であるサッ
出す前に観る、シュートをうつときに観る
カーでは、相手とのコンタクトは避けて通
など、さまざまな場面で観ることは重要で
ることはできない。上背、体格だけでなく、
ある。ボールを持っているとき、すなわち
コンタクトスキルが重要である。アルゼン
「オン・ザ・ボール」の局面で周囲の状況
チンのFW⑩C.テベスは上背はないが
を観て判断することによって、より有効な
(168cm)、いたるところですばらしいコン
プレーにつなげていかなくてはならない。
タクトスキルを見せた。
6
また、個人ばかりでなくグループでのしか
アテネオリンピック、日本vsイタリア © Jリーグフォト㈱
16
15
図2-4 インターセプト
ARG
10
11
ARG
アルゼンチンvsイタリア 前半16分
ディフェンスラインからのビルドアップにおいて、多くのプレーヤ
ーが相手ディフェンダーのギャップを意図的に作りつつ、それを共有
し、ポゼッションをしていく。⑪C.キリ・ゴンザレスから2人のディ
フェンダーの間を通してパスがつながり、同じように⑮A.ダレッサン
ドロにつながる。その間に⑯L.ゴンザレスは走っていて、⑮A.ダレッ
サンドロから⑯L.ゴンザレスへ。⑯L.ゴンザレスはこのパスを受けて
ドリブルで上がり、ディフェンスが当たりに来たところでサイドの⑫
M.ロサレスへ。守備者がカバーしに下がるが、⑯L.ゴンザレスは再び
動き出し、そのディフェンダーとの間でできたギャップにパスを通し、
ワンツーで⑫M.ロサレスに渡り、サイドから楽にクロスを上げられ、
中央でこぼれ球を⑩C.テベスが見事なバイシクルキックでフィニッシ
ュ。このように、多くのプレーヤーがギャップを共有し、意図を持っ
てパスをつないでゴールチャンスへと確実につなげている。
SCG
アルゼンチンvsセルビア・モンテネグロ 前半42分
中盤でゴールに背を向けてボールを持ったセルビア・モンテネ
グロの選手に対し、アルゼンチン⑩C.テベスがプレッシャーをか
け、パスのコースを限定している。それによって出されたパスを、
⑯L.ゴンザレスが難なく読んでインターセプトした。そのままド
リブルでしかけていき、サイドに開いてフリーとなった⑩C.テベ
スにパスが出された。1対1となり、⑩C.テベスの技術で得点に至
ったシーンである。
このインターセプトには、⑩C.テベスのプレッシャーによるコ
ースの限定がある。また高い位置でインターセプトすることによ
り、そこから一気にシュートにいたる攻撃となる。
7
MEN'S OLYMPIC FOOTBALL TOURNAMENT
ATHENS 2004
織化され、組織で守る守備が徹底されてき
ールが入ったファーストコントロールを狙
させない、といった守備が徹底していた。
なかったりといった、ちょっとしたルーズ
ちのリズムができないまでも、相手の勢い
のオプションの一つとして持っておく必要
ている。その組織の守備を支えるのは、個
う、③振り向かせない、④ディレイ(遅ら
(2)チャレンジ&カバー
さの積み重ねが大きな差となる。
を止めるような入り方が必要となる。第3
があるであろう。「大きな国際試合とはこ
の守備の能力である。個の高い能力が前提
せる)、ジョッキー(相手を一定方向に追
ファーストディフェンダーがボール保持
今回は、同じような場面でやらせてしま
戦のガーナ戦では相手の核となるFW⑩S.
ういうもの」という強烈な経験をした今大
となって、組織化された守備が成り立って
いやる)といった優先順位が徹底されてい
者へ対応しに行くには、グループとして、
うのと、やらせてもらえないのとの差が非
アピアーを徹底して抑えることによって相
会であるが、今後、このような意識を持っ
いるのである。
る。スライディングタックルなどボールを
チャレンジ&カバーの原則が徹底されてい
常に顕著に確認された。今回、目の当たり
手の勢いを止め、自分たちのペースで試合
ておく必要があるであろう。
(1)1対1の対応
奪う技術が重要である。相手にボールが渡
ることが重要である。
にしたレベルを追求していかなくてはなら
を運ぶことができ、勝利につながった。
組織の守備には、個人の1対1の対応能
ったら、相手の状況をよく観て、取れる状
ファーストディフェンダーが正しいポジ
力が前提となる。3ページ「ファーストデ
況になったら取りにいく、相手の状況が良
ションからプレッシャーをかけ、セカンド
ィフェンダー」で述べたように、ファース
ければ無闇に行かない、といったように取
ディフェンダーはカバーリングも考える。
トディフェンダーがしっかりと機能しなけ
りどころが整理されていなくてはならな
こういったグループでの守備の原則が徹底
れば、組織によるコンパクトな守備も機能
い。
しない。守備の原則が高いレベルで習得さ
また、今大会のとくに上位チームでは、
ない。
5.試合への入り方の大切さ
どのチームも相手を分析した上で、自らの
ゲームプランを持ってゲームに入る。両者の
プランのどちらを押し出してゲームを運べる
今回日本チームは、グループリーグの第
かが重要になる。今大会では、自分たちのゲ
されていてこそ、個人の守備が発揮され、
1戦、第2戦とも、早い時間帯で圧倒され
ームプラン、闘うスタイルを貫き通せたチ−
それが組織として機能することとなる。
て失点をし、その後のゲーム運びに大きく
ムが上位進出を果たしたと言える。
れ実践されている。ファーストディフェン
ゴール前の守備の厳しさが見られた。簡単
高度に組織化された守備には、個人やグ
影響が出て、結局2試合落としてしまうこ
相手との力関係で圧倒できるようなとき
ダーのアプローチがしっかりなされている
に足を出してかわされるような守備はせ
ループの原則に基づく守備能力が前提とな
とになった。とくに1戦目でやられて警戒
であれば別かも知れないが、そうでないと
ことが重要である。
ず、最後の最後でしっかりと身体を寄せ、
っている。
していたにもかかわらず、2戦目も同様に
きは、ゲームへの入り方の慎重さ、そして
なってしまったことは悔いが残る。自分た
プランが崩された場合の想定をプランの中
また、①インターセプト(図2-4)
、②ボ
あるいは身体を投げ出し、決定的な仕事を
アテネオリンピック、日本vsパラグアイ © Jリーグフォト㈱
チームからの報告
日本の課題
今大会では、世界のトップレベルとの闘
いの中で、
「アタッキングサードでの攻防」
の質の差が明らかになった。ゴール前の決
定的な場において、攻防ともに非常にハイ
高い攻防を目の当たりにした。
ならない。
1.ゴール
3.ゴール前の駆け引き
ボール、ゴールへの執念はすさまじいも
アタッキングサードでの細かい巧みな駆
ほしかった。
アテネでの
戦いを
終えて
日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会【決勝戦】ヴェルディvsガンバ大阪
© Jリーグフォト
(株)
抽選会後、テクニカルスタッフがスカウ
ップアップした。ただ、3月のアジア最終
予選、所属チームでの活動と、長期にわた
ティング、情報収集にあたった。南米選手
り選手はかなり無理して闘ってきていた。
権視察、ヨーロッパ予選視察(これは自分
今後は、選手のオーバーワークをケアする
自身が行った)では実際にいろいろなこと
ことも含めて、調整をより細かく密にして
がつかめた。結果、パラグアイ、イタリア
いくことが必要ではないかと思う。
レベルであり、ギリギリのところでやる、
のであった。クロスがたとえ少し崩れてい
け引きにより、主導権を奪われてしまう。
やらせないといった非常に厳しくレベルの
ても、体勢を立て直して合わせてしまう。
ミドルサードであれば、チームとして動く
一瞬の隙でギリギリで上がってきた速いボ
ことができるが、一番肝心なゴール前で駆
ールをワンタッチで仕上げ、ゴールに結び
け引きができるかどうかが、勝敗を分ける
だろうと考え、バイタルエリアやボランチ
つける能力が非常に高かった。チャンスは
大きな差となる。
のエリアの攻略、コンビネーションを生か
(1)立ち上がりがポイントとなったパラグア
して人とボールを効率良く動かして、崩し
イ戦
図3-1 ゴールへの執念
ITA
9
11
10
8
6
16
5
2
アのFW⑨A.ジラルディーノの駆け引きは、
1.アテネ本大会への準備期間
う(図3-1)
。そういった中で、どんなボー
世界のトップクラスをいくすばらしいもの
(1)準備期間での重点課題
ルでもワンタッチで合わせる執念と技術
であった。レベルの高い個の駆け引きによ
アジア最終予選終了後、本大会抽選会(6
は、世界との差として受け止めることがで
り、ラインコントロールに苦労させられる
月9日)までは対戦相手が決まらないので、
きる。
こととなり、結果的にコンセプトであるコ
世界基準の中でレベルアップを図る目的で、
ンパクトな守備をかけにくくさせられてい
オリンピック本大会に出てくる以上の相手
メンタルとフィジカルのコンディション作
動いて、どんどん人とボールを追い越して
うな質の追求がなされているかどうかの差
た。このレベルの駆け引きができるように、
との試合を要望して、マッチメイクしてい
りがメインとなった。最終メンバー選考の
いく、バイタルエリアの使い方の出入りな
である。世界のトップレベルではこの差が
ゴール前の攻防のレベルを上げていかなく
った。相手チームの事情もあり、強い相手
前はどうしても選手が精神的に磨り減って
ど、スペースの活用は意識しながらできた
ゴールにつながり、勝敗の大きな分かれ目
てはならない。
を探すのは難しかったが、実力のあるトル
しまう面があるため、ピッチを離れたとこ
のではないかと思う。
コ選抜と試合(5月26日)ができたことは
ろでは良い環境を作るようにした。最終の
初戦・パラグアイ戦に関しては、勝敗を
大きかった。
選考の場ではあったが、チーム全体が良い
分けたポイントは立ち上がりだった。これ
雰囲気でやれたと考えている。
にはピッチに慣れるのに時間がかかってし
大会の経験を今後に生かす必要がある。日
にしなくてはならない。
4.守備の厳しさ
今大会での上位チームは、アタッキング
抽選会にて対戦が決定した後は、今まで
ていく攻撃の構築を重視した。そして、フ
大会3試合では、全体的にプレッシャーを
ィニッシュにかかるゴール前の精度、スピ
受けても、グループとして人もボールも素
ード感やゴール前のコンビネーションを準
速く動かしながら相手のゴールに向かうと
備した。
いう崩しは十分できたと思う。素速いボー
7月の石垣島でのキャンプは、暑熱対策、
ル回しの中で、選手もそれと一緒に絡んで
サードでの攻撃ばかりでなく、守備も非常
このチームでやってきたことを積み上げ、
事前の情報収集・分析の重要性は増して
まったなどの要素があったが、大きな大会
に優れていた。ギリギリのところでは身体
さらに磨き上げることに重点を置いていっ
いる。とくに、初戦で対戦するチームの情
ではミスが少ない方がより勝つ確率が高い
を投げ出してでもやらせない、クロスを上
た。さらに、オーバーエイジ(OA)選手
報収集は重要である。したがって、可能な
ということであり、その重みも大きい。そ
一瞬の隙を突いてギリギリのところで上
げさせない、といった厳しい守備が徹底さ
(1980年12月31日以前生まれの選手)のベ
限り現地での視察を行い、一人の目で見る
して、開始直後の失点で冷静さを保てなか
げるクロスの質、また、フリーになり蹴れ
れていた。少しポジションをずらされても
ースアップを含めたチーム力の向上も大き
よりも複数の目で見、また同じイメージを
ったことは残念であった。その原因のひと
る状態で最適なポジションにいる味方に合
相手につききる、正しいポジションをとり
な課題であった。直前のドイツ・キャンプ
共有できる方が望ましいと思う。
つとして、ディフェンスラインの選手たち
わせることができるかどうかも、今大会で
直す、といった守備を細部まで丁寧に追求
ではMF⑧小野伸二がチームに合流、攻撃の
アテネ本大会に向けた準備は、ほぼイメ
は、この試合が初の世界大会であり、過緊
は大きな差となってクローズアップされ
しないと、曖昧に離しているようでは、そ
コンビネーションに時間を費やした。結局、
ージ通りできたと思っている。現地でのシ
張があった。また、パラグアイ戦、FW⑰J.
た。
こを突かれて失点になる。
小野伸二を交えたゲームができず、ぶっつ
ミュレーション(ギリシャでの2試合)
、オ
カルドソが最終ラインの裏をとるうまさと
け本番で試合に入ることになってしまった。
リンピック代表クラスとのゲームを行う中
駆け引きはすばらしいものであり、最終ラ
コンビネーションを実戦で確認する機会が
で、確実にチーム力が高まり、個人もステ
インをうまく押し上げられず、普段よりも7
JPN
1
2.クロスの質
日本vsイタリア 後半0分
8
2.大会での3試合を振り返って
たら、もうシュートはうてなくなってしま
常からこのレベルの質を追求していくよう
チーム全体でバイタルエリアを意識した攻撃から、②田中闘莉
王が、寄ってきた⑯大久保嘉人に出し、②田中闘莉王はすぐに動
いてリターンを受け、そのまま中央の⑪田中達也につないだ。そ
こに2人のディフェンスが引きつけられ一瞬ギャップが生じる。
⑨高松大樹がオフ・ザ・ボールの動きでスペースをあけ、そのス
ペースに⑩松井大輔が上がっていく。この流れるような一連のプ
レーから、⑪田中達也のギャップを通したスルーパスが見事に⑩
松井大輔につながった。キーパーと1対1となる決定的なチャンス
となるが、イタリアディフェンスに最後の最後でシュートを思う
ようにうたせてもらえず、ゴールが決めることができなかった。
このように意図してきた攻撃の流れからチャンスを作るも、最
後の最後で決めるかどうか、攻め切るか守り切るかが、このレベ
ルでは勝敗の決定的な分かれ目となる。
ともに守らせたら相当厳しいゲームになる
パラグアイのFW⑰J.カルドソ、イタリ
となるのだということを思い知らされた今
3
(前U-23日本代表監督)© Jリーグフォト㈱
一瞬しかなく、それをコントロールしてい
日ごろの試合やトレーニングで、そのよ
4
山本昌邦
チャンスを確実にゴールに結びつけられ
また、勝手に判断してプレーを止めてし
るかどうか。この質を高めていかなくては
まったり、大事なところに全力で戻ってこ
9
MEN'S OLYMPIC FOOTBALL TOURNAMENT
ATHENS 2004
まうので、改善していかなく
アテネオリンピックU23日本代表コーチングスタッフ。
左より、石井知幸コーチ、山本昌邦監督、川俣則幸コーチ、菅野淳フィジカルコーチ
© Jリーグフォト㈱
(3)ガーナ戦、コンパクトな攻守が機能
てはならない。中盤であれば、
準々決勝への道が閉ざされた状況で、選
個の少し足りないところを組
手のモティベーションを保つのは難しい。
織でなんとかカバーできる。
しかし、
「このチームの中からドイツに何人
しかし、ゴール前は、組織で
行けるか」ということを常に問い続けてき
はなかなかカバーしきれない
た。
「勝点をとらないと決勝トーナメントに
個々の能力の差もあった。パ
行かれないガーナに対して、良いプレーを
ーフェクトに対応したのにも
して評価を上げろ。これが代表へのアピー
かかわらず、やられてしまっ
ルとなる闘いだ」と選手たちに檄を飛ばし
たシーンもあった。そういう
た。選手は非常に集中してよく闘ってくれ
∼8m距離を広げられてしまったことで、プ
闘いまでできるようになったということは、
た。最後まで選手がプロとして責任をもっ
レスが思うようにかからなかった。我々の
成長したということでもある。つまりは、
てやってくれたことで、彼らの成長を見て
守備のコンセプトである、コンパクトにし
基本の徹底度の差である。そして、それを
取れた。勝利を目指しながら選手が育って
てグループでボールにプレスをかけてボー
90分間やり通せるかということである。
いくことが一番大事だと思う。
ルを奪うことができなかった。
また、イタリアがペースを上げてきた立
ガーナ戦に関してはコンパクトなエリア
コンパクトなブロックを作ってプレスを
ち上がりの20分間、筋パワーによる「ハイ
を徹底すること(とくに、前半20分間絶対
かける守備をする相手に対して、攻撃はラ
パフォーマンス」の差が出た。しかし、20
に失点しないでいくためにどういう位置で
インを下げさせることがスペースを作り出
分を過ぎたあたりからは日本人の方が安定
どうラインを作るか)
、攻撃の中心の⑩S.ア
す上で大事な駆け引きになる。この点、FW
していたと思う。アジアの中ではそれほど
ピアーをつぶすことを考えた。MF⑥今野泰
⑰J.カルドソ、イタリアのFW⑨A.ジラルデ
差はないが、日本人もハイパフォーマンス
幸やDF⑫菊地直哉がFW⑩S.アピアーを止
ィーノは抜群に優れていた。細かい駆け引
の質を向上させるトレーニングが必要であ
め、最終ラインをしっかりとコントロール
きに遭遇したDFは本当に神経が磨り減った
ろう。今回の反省としては、試合の入り方
して高い位置をキープ、そこからプレスバ
と思う。
として、相手が来るなら来るなりに、少し
ックをかけながら、コンパクトにしてボー
(2)イタリアの質の高さ
ゆっくりかわしながら、いなしながら闘う
ルを奪っていくことができた。後半、相手
やり方も重要だったと思う。
がしかけてきた時間、約20分間よく踏ん張
イタリアはピッチをワイドに使ってくる
ので、ボールサイドにプレッシャーをかけ
イタリア戦の後半は、彼らの組織的な守
った。先制点があれば心理的にも余裕があ
たいときに距離があり、サイドで数的優位
備に対して、我々はバイタルエリアまで良
り、逆に追いかける側は無理なプレーが増
な状況を相手に作られたときに修正が難し
いタイミングでしっかりと縦パスを入れる
える。その先制点の重みを感じた試合であ
く、4バックで受けることを考えていた。実
ことができた。イタリアはリードしたら絶
った。とくに評価するのは、守備に関して、
際には何回かやってきたパターンであり、
対に相手にシュートをうたせないのが特徴
相手がペースを上げてきたところで、ライ
組織的には問題はなかった。
であるが、それを崩してバイタルエリアに
ンは下がってしまったけれども、しっかり
耐えることができたことである。
1失点目、DF⑮徳永悠平が間一髪のとこ
ボールを入れて、ボランチエリアを使いな
ろでタックルに入ったが、球際の差でクロ
がら、縦に崩していけるだけのコンビネー
スが上がって、決められてしまった。同じ
ションとスキルを見せてくれたことは、最
ようなシーンで我々はクロスを上げられず、
大の成果だと思う。例えば、サイドから流
差を感じた。また、イタリアは走っている
れるようなDF④那須大亮のクロスからFW
①自ペナルティエリア∼相手ペナルティエ
前に入ってくるボールだけではなく、行き
⑯大久保嘉人がヘディングでシュートまで
リア(ミドルゾーン)で、日本の持ち味
過ぎて後ろに来てしまったボールもワンタ
行ったシーンなど、我々が徹底してやって
(人が効果的に動いてボールをビルドアッ
ッチで仕上げる能力にも優れていた(バイ
きた周りの連動した動きにより数的優位を
シクルキックでの得点など)
。フィジカル的
作ってスペースを活用するというゲーム展
な要素もあるだろうが、間違いなく普段か
開が、ワールドクラスにも通用したことで
らこういう練習しているのだと思う。
あり、それは大いに自信にしてよいと思う。
3.大会を通じての成果と課題
【成 果】
プする)は世界レベルで通用した。
②バイタルエリアを高い技術とコンビネー
ションで崩すことは意識的にできた。
③最後の1秒まであきらめないメンタリティ
DF⑮徳永悠平がももに打撲を受けて交代
また、この試合ではGKのファインセーブに
というアクシデントもあり、この試合に関
3本くらい止められてしまったが、シュート
④後半まで戦えるスタミナは3試合を通じ
しては、立ち上がりの2失点シーンが決定的
を何本もうっていることがその証ではない
て相手より上だった。後半は必ず日本の
であった。クロスに対するステップの踏み
か。
方が落ちは少なくて、勝負は十分できる
は今後につながる。
方やタックルに行くときの球際の強さなど、
ペナルティエリアでの攻守両面の質の差が
こちらも良いプレーをしていたが、相手も
ある。身体の寄せ方やコースの消し方など、
それ以上のプレーを見せ、我々との力の差
いろいろな要素があることが、そういう駆け
(ゴール前の質の高さは世界のトップクラス
引きやテクニックに行き着く。悪いボールが
で、全体的にはクロスの質、球の質、ボー
来たら良いボールをよこせではなく、このレ
①立ち上がりの時間の闘い方(立ち上がり
ルのスピードやタイミング、走力など)は
ベルの闘いでは意外性のあるボールをもいか
20分間のパフォーマンスとメンタリテ
あった。世界のトップクラスを相手にする
にゴールにもっていくか、そういうことを徹
ィ)
には、そのちょっとの差で勝敗が決してし
底していかなくてはならない。
10
だけフィジカルフィットネスがある。
⑤全体的な内容は、世界に一歩近づくこと
ができた。
【課 題】
②両ペナルティエリア内のプレーの質の向
上(世界で通用するアタッカーとセンタ
イレクトプレーにつなげさせない、遅攻に
いの世界大会で初めて実力が発揮できるの
ーバック)
持っていかせる守備というのは徹底してい
であろう。今回は残念ながらピッチに立っ
た。
た7割くらいの選手たちが初めての世界大会
③決定力(メンタル、駆け引き、スピード、
スキル)
次に『ダイレクトプレー』
。イタリア戦で
のピッチだった。経験の積み重ねがないと、
−ポイントとなるシーン(例)
はサイドからクロスで入れられたプレーも、
世界大会で実力を100%出し切ることは難
a)パラグアイ戦・後半終了間際
取られてから12秒くらいで入れられている。
しい。稲本潤一、高原直泰、小野伸二、宮
我々もかなり攻守の切り替えは徹底してき
本恒靖、松田直樹、中田英寿などU-17世代
シュート たので、ボランチがすぐにプレスをかけに
で世界を経験した選手たちが、間違いなく
b)イタリア戦・前半終了間際
いった。そこをワンタッチで打開されてし
高い確率でA代表につながっていて、いい
まった。そういうレベルの闘いを私は本当
働きをする、余裕が違う。そういう意味で
に楽しむことができたし、選手たちも世界
も下の年代から強化を徹底して、早い年代
(得点状況1-3):⑩松井大輔の1対1
のレベルというものを感じ取れたはずであ
で世界を経験させるようにすべきである。
④ハイパフォーマンスの向上(イタリア・
る。
また、この大きなプレッシャーに対し、選
(得点状況3-4):⑰平山相太のヘディング
(得点状況1-3):⑯大久保嘉人の飛び出し c)イタリア戦・後半開始直後
左サイドDF③E.モレッティのオーバーラ
チャンスと見たときの追い越していく速
手自身がメンタル的な側面をコントロール
ップからクロスでゴールになったプレー
さと走力など、個の力を積み上げていかな
できるように、育成年代でそれをどう選手
などが基準)
くてはならないと感じた。それを感じるこ
に教えていくかというのも、ひとつの大事
⑤メンタル的に重圧に打ち勝てなかった選
とができたのは我々にとっても財産で、見
なテーマになるかもしれない。また、ミス
手もいた(初めての世界大会ではやむを
れば見るほど質が高かった。イタリアは
は誰もが通らなくてはいけない壁である。
得ない面がある)
。
我々と対戦した2戦目が一番パフォーマンス
ミスを次に生かして、自分が持っているも
が高かった。
のを出せるようなメンタルコンディション
(1)攻撃と守備について
日本人の特徴を生かし、グループで機能
オーバーエイジ(OA)の選定については、
作りをすることが必要である。経験という
していくための個々の判断力が非常に重要
JFAの方針はAFCアジアカップとアテネオ
のはひとつ重要なファクターだと思うので、
である。一人一人が役割を単純にこなすだ
リンピックに同一選手は起用しないという
経験をうまく生かしてほしい。
けではなく、お互いがカバーしあっていく
ことであったため、早い段階での決断が迫
ことが大事である。
られた。A代表とオリンピック代表の監督
4.総括、育成年代の選手に対して
守備に関しては、相手のレベルが高くな
が別で動いたことによる難しさが出たと思
国際試合ではチャンスはそれほど多くな
れば1対1で止めるのは難しい。それをグル
う。実際には、その後に高原直泰が肺動脈
い。パスの質やタイミング、ほんのちょっ
ープで止めるための一人一人の判断力が求
血栓塞栓症を発症、準備していたが残念な
とのところでちょっとずれただけで次のチ
められる。そういう個々の判断力は間違い
がら最終的にメンバーから外れることにな
ャンスが消えてしまう。その質の徹底とい
なく上がっている。
ってしまった。あらかじめ3人を指定してし
うのは絶対にしていくべきだと思う。
攻撃に関しては、パスのスピードや受け
まっているので、他の選手を入れるという
とくに今後はペナルティエリア内での決
る前の動きの質の改善によって、次への展
こともできる状況ではなかった。南米はパ
開の可能性が増え、ボールと人がうまく連
ラグアイもアルゼンチンも2004年南米選手
定力、守備と攻撃のペナルティエリア内で
の質の向上が重要である。ペナルティエリ
動する。さらにボールを持っている人が前
権にオリンピックチーム中心で出ていた。
ア内でシュートが入るか入らないか、防ぐ
を向いていればどんどん追い越し、厚みの
イラクはAFCアジアカップにオリンピック
か防げないかというところで勝敗が決まる。
ある攻撃ができる。ボールのないところの
チームを出し、オリンピックではベスト4に
ゴール前でのタイトな攻守の質の向上とい
駆け引きでボールを持った人をどう助けて
入った。これらのチームは実戦の中でチー
うのは、非常に大事である。ましてや、デ
いくのかというコンセプトを選手は良く理
ムを完成させ、本大会での好成績につなげ
ィフェンディングサードでミスすれば、そ
解していた。
た。
れは失点につながる。今までアジアの中で
パスの質に関しては、動き出している人
もうひとつの特徴として、上位に行った
は、ミスがあっても致命傷とならないとい
の前にボールを出すなど、普段のトレーニ
チームは、OAを皆センターバックで使って
う点で、救われていた部分があったが、世
ングの中から味方の動きを無駄にしない、
いた。どんなゲームになっても、それに柔
界大会の中ではそのミスは絶対に見逃して
前を向いて走っている選手のスピードをダ
軟に対応できるポジションに入れていると
もらえないのである。世界基準の中で不足
ウンさせないようパスをあわせることに、
いうことである。我々は今まで失点が少な
しているほんの少しの差が勝敗を分ける。
質の追求の積み重ねがあった。
かったし、高さもあったので十分にやれる
この厳しさを、今後に生かしていかなくて
(2)その他
と思っていたのだが、能力を発揮する前の
はならない。
キーワードを使いながら選手にプレーの
メンタル面で経験不足が出てしまった。試
ひとつひとつを連想させた。例えば『攻守5
合の流れを安定させたり、自分たちの方に
秒の質』
。アタッキングゾーンでもミドルゾ
引き込むような駆け引きがやはり重要なと
ーンでもチャンスだと思ったらチャレンジ
ころなので、OA選手がそのようなポジショ
させた。しかし、ボールを失ったときは取
ンにいたら、もう少し違う展開になってい
られた選手、もしくは周りの2∼3人は全力
たかもしれない。
で5秒間は前にボールを出させない、バック
『メンタル面』では、選手たちはこの2年
パスをさせる、ボールを持たせておく等、
間よく成長してくれたと思うが、この先さ
要するに守備への切り替えを徹底して、ダ
らに世界大会の大舞台を経験し、3回目くら
アテネオリンピック、日本vsイタリア © Jリーグフォト㈱
11
2004
JFAエリートプログラム
2004
JFAエリートプログラム
C.デュソー氏による選手に対
第3回 トレーニングキャンプ
してのレクチャーの中で、印象
に残ったのはT.アンリ選手の話
前INF校長、
C.デュソー氏を迎えて
池内豊 ナショナルトレセンコーチ、JFAエリートプログラムU-13監督
第3回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
第3回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
リ選手はピッチ内ではもちろん
思いでした。
のこと、ピッチ以外の生活に関
トレーニングの内容は、1つのトレーニングにパス&コントロ
してもサッカーがうまくなるた
ール、ポゼッション、シュート、ゲームが必ず盛り込まれ、その
めのことは積極的に取り組んで
上で、ポゼッション、ヘディング、シュートなどフォーカスした
いたことや、T.アンリ選手より
テーマを実践していました。C.デュソー氏は、選手のレベルや指
もうまい選手がいたにもかかわ
導期間によってテーマをフォーカスする度合いが違うことも話を
らず、彼が今活躍できている理
してくれましたが、この4つのトレーニングは、この年代でも非常
由などの話に、選手たちも真剣
に大切なことが理解できる内容でした。
に耳を傾けていました。
また、ポジション別のトレーニングはGK以外は行いませんでし
AFC U-17サッカー選手権大会観戦
今年度3回目を迎えた「JFAエリートプログラム」は、新たな選
手も加えながらU-14の選手20名、U-13の選手20名でJヴィレッジ
(福島県)を中心に実施しました。
今回の目的のひとつは、AFC U-17サッカー選手権大会の決勝と
3位決定戦の観戦でした。彼らの身近な目標であるアジアの大会
を実際にスタンドから観戦することで、そのレベルを感じ取るこ
とを狙いとしました。また、この大会で活躍を見せている選手の
中には、同プログラムに参加する選手と同じ年代(14歳)の選手が
指導スタッフ
特別講師:クロード・デュソー(フランスサッカー連盟)
特別講師(GK):グランジュ・ファブリス(フランスサッカー連盟)
U-14監督:足達勇輔(ナショナルトレセンコーチ/JAPANサッカーカレッジ)
U-14コーチ:島田信幸(鈴鹿市立白鳥中学校)
U-13監督:池内豊(ナショナルトレセンコーチ)
U-14コーチ:藪下和彦(甲西町立甲西中学校)
GKコーチ:山中亮(ナショナルトレセンコーチ/サンフレッチェ広島)
9月18日
いることも伝えての観戦でした。
9月19日
クロード・デュソー氏をお招きして
目的のもうひとつに、特別講師としてフランスサッカー連盟の
9月20日
クロード・デュソー氏(次ページ写真参照)を招いての指導がありま
した。C.デュソー氏によるJFAエリートプログラムの指導は、昨
9月21日
年に引き続き2回目となります。
C.デュソー氏のトレーニングキャンプの選手指導、選手へのレ
クチャー、日本の指導者とのディスカッションの中から、世界の
頂点に立つフランス代表の根底を支えているフランスサッカー連
9月22日
9月23日
15:00
16:00∼21:00
21:30
14:30∼16:30
09:00∼11:00
09:00∼12:00
14:00∼17:00
15:00∼17:00
09:00∼10:30
11:00∼13:00
15:00∼16:30
17:00∼18:30
09:00∼10:30
11:00∼13:00
15:00∼16:30
17:00∼18:30
09:00∼11:00
13:15
集合(藤枝総合運動公園サッカー場)
AFC U-17サッカー選手権大会観戦
バス出発→Jヴィレッジ
トレーニング(Jヴィレッジ、以下同)
U-13
トレーニング
U-14
コミュニケーションスキル
U-13
コミュニケーションスキル
U-14
トレーニング
U-13
トレーニング
U-14
トレーニング
U-13
トレーニング
U-14
トレーニング
U-13
トレーニング
U-14
トレーニング
U-13
トレーニング
U-14
トレーニング
トレーニング
解散
特別講師として招かれたファブリス氏がGK指導を行う。
12
ただきましたが、彼はINFの卒業生でC.デュソー氏の教え子です。
そのことからもINFの歴史の重さを感じることができました。彼の
ポジションを固定しないで、どのポジションが向いているのか見
指導も非常に熱心で、今回のGKトレーニングはフィールドプレー
極める年代である」ということを説明してくれました。また、ス
ヤーの2倍以上時間を使いながら、丁寧に指導してくれていました。
キルを身に付けることは、どのポジションでも必要なことである
今回の両氏の指導には、ユース年代の指導に関して再確認するこ
ので基本的なスキルトレーニングは全員に同じように行うことが
とが多くありました。選手、スタッフにとって、今後に意味のあ
必要であるとも言っていました。ですから、1対1などの攻撃と守
るトレーニングキャンプであったことは間違いありません。
備があるトレーニングでも、すべて同じようにその両方をトレー
1つのトレーニングの中での反復回数は、半端ではありません。
今年度の主なカリキュラム
今回のエリートキャンプでも、1回目より継続しているコミュニ
ボールを止めて、蹴る動作、また、それを動きの中で繰り返す。1
ケーションスキルのカリキュラムを三森ゆりか先生(つくば言語
人の選手が止めて、蹴る回数は何十回では収まりません。もちろ
技術教育研究所所長)にお願いして行いました。このカリキュラ
ん、反復トレーニングは、オーガナイズを変化させながら行って
ムを継続しながら、スキルアップを図っていくために新しく参加
いましたので、選手は集中してトレーニングに取り組んでいまし
した選手にも補習を実施し、少しでもトレーニングに参加できる
た。この年代は持久力をつけるのに適した年代であり、ボールな
ようにしていきました。
しでのトレーニングでそれを獲得させるよりは、ボールを使いな
ASE(社会性を育成する実際体験)も継続して行っていくカリキュ
がらそれを獲得させることが必要だとC.デュソー氏は話します。
ラムですが、今回はそのための時間を作って実施することではな
また、反復によってスキルを獲得させることの重要性も同時に話
くて、集合場所(藤枝市総合運動公園)に自分たちで集合することや
してくれました。
夜中のバス移動での自己管理を促していきました。
そして、C.デュソー氏の指導は、とにかく選手に行わせること
キャンプ全体での行動では、スタッフが必要最小限の情報を選
を強調していました。トレーニングで大切なファクターは、シン
手に与え、自分達で考え行動することも促しています。U-14の選
クロコーチングで促し、できたことを褒めていきます。とにかく、
手とU-13の選手とのつながりを持てるようにもオーガナイズして
選手自身で考えて実行することを促していました。したがって、
います。
選手はトレーニングの中では自分で工夫し、着実にレベルアップ
していきました。そのコーチングについては、指導対象によって
成システムの指導理念、選手の指導育成、また、C.デュソー氏自
も、もちろん変わってくるし、選手のレベルに関係なく同じアプ
身のベテラン指導者としての一面も紹介していきます。
ローチをした場合、もしかしたら選手がうまくなることを永久的
我々スタッフは、今回のトレーニングキャンプはすべてC.デュ
また、今回GK特別講師でグランジュ・ファブルス氏にも来てい
くありました。このことについて、C.デュソー氏は「15歳までは
盟国立スポーツ学院(INF)に代表されるユース年代の組織的な育
ソー氏に指導をお願いすることにしました。グラウンドでの関わ
第3回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
た。GKにおいても、フィールドの選手と同じ練習をすることも多
ニングできるようにしていました。
スケジュール
でした。ユース年代でのT.アン
指導をしていただいたC.デュソー氏には、スタッフも頭が下がる
に待ち続けることもあるかもしれないとのこと。選手を導いてあ
げるコーチングのバランスも必要なことだと話をしてくれました。
り方も最小限にすることによって、選手にC.デュソー氏のすべて
我々スタッフは、今回のエリート選手のトレーニングでの変化
を感じ取ってもらいたいという狙いがありました。U-14、13と基
を見たとき、選手自身に考えさせる指導の重要性を再確認するこ
本的にはトレーニングを分けて行っていましたので、多い日には
とができたと同時に、C.デュソー氏の選手を包み込むような指導
1日4セッションのトレーニングを準備からすべてお任せすること
を見て、この年代を指導する指導者の選手に対する接し方を改め
もありました。その中で65歳という年齢を感じさせず、精力的に
て確認することができました。
クロード・デュソー氏。フランスサ
ッカー連盟国立スポーツ学院(INF/
クレールフォンテーヌ)の校長を本
年夏に退官。1972年にINFが設立され
て以来、INFの中心人物として将来の
フランス代表となる選手たちの指導
第2回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
に携わった。INFでは、テストに合格
した13歳から15歳の選手が寄宿生活
を送りながらトレーニングに励んで
いる。これまでT.アンリ、N.アネルカ
など多数のフランス代表選手を輩出。
© Jリーグフォト㈱
13
JFAメンバーズサイト
「JFAコミュニティ」がオープン!!!
http://member.jfa.jp
* http://www.jfa.or.jp
からもアクセスできます。
JFAメンバー200万人構想の中で、登録メンバーに対するメリッ
トとしてメンバー専用サイト「JFA Community(JFAコミュニティ)」
を2004年10月28日に開設いたしました。
本サイトは現在、
「登録指導者」対象となっていますが、今後、
「審判員」
、
「チーム・選手」
、
「サポーター」などを対象としたサイ
トに順次拡大していく予定です。
日本サッカー協会からの情報発信のみならず、JFA⇔メンバー、
メンバー⇔メンバーのコミュニケーションツールとなることを目
指し、今後一層の内容充実を図っていく予定です。
JFAコミュニティ
「登録指導者」サイトのコンテンツ
■ JFAからのお知らせ
JFA主催する研修会・講習会等の情報など、JFAから指導者の皆
様にお知らせしたい内容が掲載されています。
■ 指導者掲示板
指導者⇔指導者、JFA⇔指導者のコミュニケーションツール
となる掲示板です。皆様の交流の場として活用していただけます。
■ テクニカル・ニュース
今まで発刊されている機関誌「テクニカル・ニュース」のバッ
クナンバーがすべて掲載されています。
■ 各種イベント報告
JFA主催した各種イベントを、文字情報だけでなく、動画とあ
わせてご覧いただけます。
■ テクニカルレポート
海外の大会や国内の主要大会のテクニカルレポートが掲載され
ています(一部ダイジェスト版あり)
。
■ OTHERS
JFA主催事業以外の情報を掲載していく予定です。スタート時
には「田嶋技術委員長のあいさつ」
「UEFAユースセミナーの報告」
が掲載されてます。
指導者・指導チーム検索システム
「コーチ・スクエア」スタート
JFAコミュニティ http://member.jfa.jp からアクセス!
「指導するチームを探している登録指導者」と「指導者を探してい
るチーム」がウェッブ上でお互いを検索することが可能になるも
のです。
本システムの利用対象者は、(1)指導するチームを探している登
録指導者、(2)指導者を探している加盟登録チーム、(3)指導者を探
している未加盟チーム・スクールで指導者を探している方ならど
者」を得られるようにサポートができればと考えています。
例えば、想定されるチーム側のニーズとして以下のケースが考
えられます。
例1:少子化にともなう教員数減によるサッカー専門部活動の顧問不足
例2:新しくチームを作りたいが監督やコーチがいない
例3:4種加盟登録チームの有資格指導者の義務化(2005年度登録から)
例4:サッカースクールにおけるコーチ求人
なたでも利用できます。
本システムを通じて、
「登録指導者は指導現場」
、
「チームは指導
14
是非、指導者の皆様は積極的に活用して下さい。
15
珠玉のひとこと
その
5
田嶋幸三(JFA常務理事/技術委員会委員長)
「人は物を知れば知るほど、
自分が知らないことに気付く」
KOZO
TASHIMA
2002年FIFAワールドカップ後、日本サッカー協会・技術委員会
委員長に就任した田嶋幸三氏から聞いた言葉である。
© Jリーグフォト㈱
『探究心の強さ』と『他者から学ぶ謙虚さ』。とくに、2001年の
『フットボール・カンファレンス』で招聘したロジェ・ルメール
氏(元フランス代表監督)の『学ぶことをやめたら、教えること
JFAの公認S級∼D級コーチまで、すべての指導者養成講習会の
冒頭、『オープン・マインド』な姿勢がすべての受講者に求めら
をやめなければならない』という言葉には、強く胸を打たれた」
と言う。
れる。
「指導者は、確固たるサッカー哲学やベースとなるコンセプトを
大きな山の山頂を目指すとき、道のりは当然長く、多くのルー
持つべきだ。それと同時に、他者に耳を傾け、他者から学ぶ柔軟
トがある。あらゆることを想定して準備しても、多くの困難にぶ
性も持たなければいけない」と委員長は考えている。
つかるだろう。山の途中で見る景色と、山頂で見る景色は当然ち
がう。山頂は見晴らしがよい分、さらに別の大きな山も見えてく
委員長がコーチ学の基礎を学んだのはドイツ(当時、西ドイツ)
る。
だ。選手時代、浦和南高校、筑波大学で日本一を経験し、日本サ
ッカーリーグの古河電工(現JEF市原)でFWとして活躍したあと、
1983年に西ドイツに渡った。
今から約20年前のサッカーといえば、
「ブンデスリーガ」全盛の
時代だ。ケルン体育大学での留学時代、バイエルン・ミュンヘン、
バイヤー・レバークーゼンでのコーチ研修を積む中で、多くの著
名なコーチたちと出合った。
「海外だけでなく、国内でも一流といわれる指導者の共通点は、
16
JFAは『10年後に世界のトップ10』という大きな山を登り始め
た。
現在の状況に甘んじることなく、まだまだ見たことのない景色
を求めて探求を続け、登り続ける。
選手や指導者だけはなく、審判、ファン、サッカーを愛する多
くのファミリーとともに・・・。
関口潔(JFA技術部)
17
2 0 0 4 ナ シ ョ ナ ル ト レ セ ン U - 1 2
トライ!トライ!!トライ!!!
ゲームの中でいきるスキルを身につけよう
今年度も9地域で開催、600名以上の選手たちが参加
「ナショナルトレセンU-12」は、昨年度から9地域を単位に開催されています。今年度も10月から来年2月
にかけて、JFAナショナルトレセンコーチおよび各地域のトレセンスタッフに指導により、各地域で開催さ
れます。
今号の「テクニカル・ニュース」では、今年度のテーマやトレ−ニングメニュー(抜粋)について紹介します。
期 間:2004年12月26日(日)∼
29日(水)
場 所:大津町運動公園・亀の井
ホテル大津店
(熊本県菊池郡大津町)
選手数:80名
期 間:2004年10月15日(金)∼ 18日(月)
場 所:帯広の森球技場・研修センター
(北海道河西郡芽室町)
選手数:60名
期 間:2004年12月25日(土)∼
28日(火)
場 所:広島ビックアーチ・ホテ
ルセンチュリー21広島
(広島県広島市)
選手数:40名
北海道
東北
九州
中国
関西
期 間:2004年10月8日(金)∼
11日(月・祝)
場 所:富山県南総合運動公園
サッカー場・呉羽少年自然
の家・富山県総合体育セ
ンター(富山県富山市)
選手数:43名
北信越
東海
関東
四国
期 間:2005年2月10日(木)∼
13日(日)
場 所:徳島県鳴門総合運動公園
陸上競技場・陸上競技場
内合宿所・体育館内研修
室(徳島県鳴門市)
選手数:48名
期 間:2004年10月8日(金)∼
11日(月・祝)
場 所:Jヴィレッジ
(福島県双葉郡
楢葉町)
選手数:72名
期 間:2004年12月26日(日)∼
29日(水)
場 所:びわこ成蹊スポーツ大学
(滋賀県滋賀郡志賀町)
アクティ・プラザ・琵琶
(滋賀県高島郡新旭町)
選手数:80名
期 間:2004年12月25日(土)∼
28日(火)
場 所:時之栖(静岡県裾野市)
選手数:120名
期 間:2004年10月8日(金)∼
11日(月・祝)
場 所:つま恋(静岡県掛川市)
選手数:64名
テーマについての解説
トライ!トライ!!トライ!!!
ゲームの中でいきるスキルを
身につけよう
感覚的なサッカーを大切にする
U-12の年代は感覚的にサッカーをする年代であり、まずは
その感覚を大切にしなくてはなりません。そのためにはトレ
ーニングの中では、失敗を恐れない積極的なプレーを常に求
めていきます。また、指導する側は、場の設定(オーガナイ
ズ)でテーマを選手が自然に獲得できるような環境をつくり、
子どもたちの自主性・発想を大切にしながら、判断に働きか
ける指導を心がけていきます。
守備では積極的にボールを取りに行くこと、最後まであきらめない姿勢を要
求します。そのような相手の守備に対して、自分の置かれている状況、相手の
対応などをしっかりと「観ること」を習慣化させます。そして、ターンやフェ
イントの技術、スピードや方向の変化を使いながら、相手をかわす技術を獲得
することを目指します。また、攻守においてコンタクトを嫌わないなどコンタ
クトスキルも導入していきます。
今回のトレーニングテーマとして
は、日本の課題である「1対1の攻防」
「パス&コントロール」
「フィニッシュ」
を中心にとり上げました。
パス&コントロール
左右同じようにコントロールできる、浮き球など難しいボールをしっかりと
コントロールできるようにしていきます。その上で次のプレーを意識したボー
ルコントロール、常にゴールを意識したボールコントロールを要求していきま
す。パスに関しても両足を同じように使い、パスも正確性・強さなども要求し
ていきます。
パーフェクトスキルを身につける
ゴールデンエイジのこの時期に、ボールコントロールのス
キルを確実に身につけさせます。ボールを扱うことにストレ
スを感じていては、ボールから顔が上がらず、周囲の状況に
気を配る余裕ができません。ボール扱いが自由になり、顔が
上がってこそ周りが観え、アイディアが出てくることになり
ます。そのためにトレーニングでは、すべてのトレーニング
のウォーミングアップで「ボールマスタリー(ボールフィー
リング)
」を入れています。さまざまな反復(ドリル)によ
り、とにかくボール扱いが自由自在になることを目的としま
す。また、各トレーニングにおいても、技術習得のための反
復(ドリル)練習を大切にしています。
フィニッシュ
常にゴールを狙い、シュートをうつことを目的とします。とにかくゴールを
決めることが大好きなこどもになることを促しましょう。その上で両足のキッ
クが同じように蹴れることや正確性を要求していきます。さまざまなキックや
ヘディングなども習得させていきます。
さまざまなゲーム
ゴールキーパー
基本技術・戦術の導入
ボールファミリア、キャッチング、ステッピング、ローリングダウンなどの
基本技術のトレーニング、そして、ゴール前でのシュートストップのトレーニ
ング(アングルプレー)を設定しました。トレーニングでは、ひとつひとつの
動作を正確に行うことを強調し、GKの最大の役割である「ゴールを守ること」
を強く意識させていきます。
専門的なトレーニングを徐々に導入
していく年代であり、
「ゴールキーパ
ーの基本技術」
「ポジショニング」の
習得を目指します。
ウォーミングアップ
ボールマスタリー・ボールフィーリング
︻
注
意
︼
各テーマは、下記の内容・オーガナイズを参考に、
選手数・時間などを考慮し、各地域で考えて行う。
①ウォーミングアップは15分∼20分程度。
②個々に目を向けた指導⇒個別に課題を発展させる。
③正しいデモンストレーションを見せることが重要。
1
インサイドタッチ連続
11 ロコモーション
2
プルプッシュ
12 方向転換(90度)
3
スライド
ボールを足の裏で外側に転がし、すぐにインサイドで内側に戻す
4
右足(アウト・イン交互)
5
左足(アウト・イン交互)
6
右足イン→左足アウト→左足イン→右足アウト
7
サイドステップ
8
アウトサイドシザース
9
インサイドシザース
10 シミー
18
1対1の攻防
フィールド
プレーヤー
①左前のボールを右足の裏で引いて同じ足のインサイドで右斜め
に押し出す(逆足も行う)
②左前のボールを左足の裏で引いて逆足のインサイドで右斜めに
押し出す(逆足も行う)
③左前のボールを左足の裏で引いて同じ足のインサイドで立ち足
の後ろから右斜めに押し出す(逆足も行う)
…など
13 各種ターン
①インサイドフック
②アウトサイドフック
③Uターン
④クライフターン
⑤ステップオーバー
…など
14 各種目を組み合わせて行う
19
2 0 0 4 ナ シ ョ ナ ルト レ セ ン U - 1 2
オーガナイズ ①
オーガナイズ ③ ターン
1対1∼ゴール前
図の見方
(攻撃側の)選手
(守備側の)選手
C
トラ イ ! !
トラ イ ! ! !
ゲーム5対5∼6対6(+2GK)
【ルール&オーガナイズ】
【ルール&オーガナイズ】
●ドリブルでDF(
)
をかわし、2つのマーカーの間を通過したらシュート
●シュート → DF → GK → シュート・・・とローテーションする
●DF(
)がマーカーより前で準備ができたらドリブルスタート
●サイドアウトはスローイン、エンドアウトはGKからリスタート
コーチ
ボール
C
マーカー
カラーコーン
人の動き
ボールの動き
オーガナイズ ②
トラ イ !
KEY FACTOR
KEY FACTOR
●観る
(ゴール・相手の動き・間合い)
●シュートのプランを
持ったドリブル
●フェイントのタイミング
●スピード・方向の変化
●最後まであきらめない
●ディフェンスの意識
●ポジショニング
●1対1の攻防
●ボディコンタクト
●ゴールの意識
GK
GK
ドリブル
オーガナイズ ④ フェイント
KEY FACTOR
●スムーズな足の運び
●バランスを保つ
●顔を上げる
C
●左右同じようにボールを扱う
FP パス&コントロール
ドリル1
ドリル2
【ルール&オーガナイズ】
OPTION
●コーチの手の合図でスタート
●1種目が終わったらすぐにボールをチェンジ
【ルール&オーガナイズ】
●左右回り方を決めてコントロール ●自由な方向にコントロール
●浮き球のコントロール
KEY FACTOR
1対1∼ボディコンタクト
【ルール&オーガナイズ】
KEY FACTOR
1対1∼相手をかわす
●A∼Dチーム、それぞれ自分のゴール以外にシュートで得点
●得点したら自分のチームの列に並ぶ
●ゴールされたチームの選手はファーストタッチで中に入り、ゴールを狙う
●A∼Dのチームで得点を競う
パス&コーン当て
KEY FACTOR
●ゴールへの意識 ●身体をうまく使う ●最後まであきらめない
●観る ●ターンやフェイントの技術
●スピード・方向の変化 ●積極的にボールを奪う
ゲーム∼5対5+GK
【ルール&オーガナイズ】
【ルール&オーガナイズ】
●ポゼッションをしながらコーンに当てて得点を競う
●ボールが外に出たら、コーチから配球
●アウト・オブ・ボールは、すべてGKからリスタート
KEY FACTOR
A
KEY FACTOR
●コミュニケーション
●まわりを観る ●ファーストタッチ
●パスの質 ●サポートの質
C
D
B
C
A
20
●コミュニケーション ●まわりを観る ●ファーストタッチ ●パスの質
【ルール&オーガナイズ】
① コーチ(
)Aから配球
② コーチ(
)Bから配球
●2つのマーカーゴールへドリブルインで勝ち
●ボールを奪ったら、逆のマーカーゴールへドリブルイン
B
KEY FACTOR
●コミュニケーション ●ファーストタッチ ●パスの質 ●ステップワーク
FP 1対1の攻防
●
から
にパス。
は他の
やコーンに当たらないようにコントロ
ールして
にパス
(どこにパスをしてもよい)
●パスを出したところに移動
C
●コミュニケーション
●まわりを観る ●ファーストタッチ
●パスの質 ●サポートの質 ●ゴールへの意識
GK
GK
C
●コーンを重ねたり、倒した
OPTION りして狙いやすくする
●タッチ数を制限する
21
2 0 0 4 ナ シ ョ ナ ルト レ セ ン U - 1 2
FP フィニッシュ
トラ イ !
トラ イ ! !
トラ イ ! ! !
GK 基本技術・戦術の導入
【ルール&オーガナイズ】
キック・ヘディングのドリル
①2∼3人1組で行う
②コーンの間を各種のキックを用いて通過させる
③ヘディングのドリル
④浮き球の処理をヘディングで行う
【ルール&オーガナイズ】
ボールマスタリー・ボールフィーリング
さまざまな運動で、両手を使ってボールを扱う
①2人1組(各自ボール1個)
で、お互い同時に、それぞ
れの選手が右手で相手の左手にボールを投げる
合図で逆回りにする
(左手で相手の右手に投げる)
②1人がバウンドボール、もう1人が相手の正面にボ
ールを投げる
(バウンドボールと正面キャッチの複
合)
④4人1組になり、4人同時に同方向にスローイング
2人はバウンドボール、もう2人は相手の正面に投げ
る (バウンドボールと正面キャッチの複合)
⑤1人がボールを上に投げている間に正面キャッチ
して、相手にボールを返す
③4人1組になり、4人同時に同方向にスローイング
合図で逆回りにする
KEY FACTOR
●正確性 ●さまざまなキック ●左右両足で蹴れるように
シュートのドリル
【ルール&オーガナイズ】
① ●対面のプレーヤーにパスし、DFかGKになる
●パスを受けたプレーヤーはシュートでゴールを
狙う(タッチ数の制限はとくになし)
② ●2人組で前のプレーヤーがドリブルし、その後
ろにもう1人のプレーヤーがついていく
●ドリブルしていたプレーヤーはボールを止め
て、ディフェンダーになる
●後ろのプレーヤーはボールをコントロールし
てシュート
③ ●対角のプレーヤーが同時にスタート
●タイミングを合わせて互いにパス
●そのパスをコントロールしてシュート
●パスしたタイミングで、ゴールポストの位置か
らDF(
)がスタート
キャッチング
【ルール】
【ルール】
①オーバーハンド
(胸の高さ)
②アンダーハンド
●腹部の高さ ●バウンシングボール ●グラウンダー
基本姿勢 「いつでもどこでも動ける姿勢」
●足の幅は肩幅よりやや広くする → 膝下を曲げられるくらいの幅
●膝を軽く曲げ、前傾姿勢を保つ
●両肘を軽く曲げる → オーバーハンド、アンダーハンドの
どちらにも行きやすい位置
●頭を固定し、しっかりとボールを観る
OPTION ●GKを置く
KEY FACTOR
●確実なフィニッシュ
●ファーストタッチの質
長座・立て膝・中腰のそれぞれの姿勢から行う
KEY FACTOR
●身体の正面でボールを処理する ●身体の側面で着地する
●身体の下側から地面に着地する(膝下→もも→上体)
アングルプレー①
【ルール&オーガナイズ】
●ゴール前での冷静さ
KEY FACTOR
背中合わせゴールでのゲーム
【ルール&オーガナイズ】
●構えるタイミングとその姿勢
●身体の正面でボールを処理する
●手の形
ゲーム∼4対4+GK
【ルール&オーガナイズ】
①5対5+GK ●ボールを持っているチームは2つのゴールに攻めることができる
●得点やGKがキャッチした後のリスタートはコーチから始める
②5対5
●攻撃5人、守備はGK1人とフィールドプレーヤー4人
●2分間で攻撃側が何得点できるかを競う
KEY FACTOR
●相手選手(1∼3)のシュートに対応する ●静止球のシュートに対応する
●ボールのコースに身体を運ぶ
●身体の前方でボールを処理する
●1回でボールをつかむ
ステッピング
●ダブルボックスで行う
●常にゴールを狙う
●確実なフィニッシュ
●ゴール前での冷静さ
●リバウンドの意識
●守備から攻撃への切り替え
KEY FACTOR
●常にゴールを狙う
●確実なフィニッシュ
●ゴール前での冷静さ
●リバウンドの意識
●守備から攻撃への
切り替え
ローリングダウン
【ルール&オーガナイズ】
●
●
が攻撃側の選手、
が守備側の選手となる
がコーンに触ったら得点、
がコーンに触っている間は得点とならない
シュートに対するポジショニング
ゴールの中央とボールを結んだ線上を意
識し、頭上を越されない距離だけ前に出
て角度を狭める
KEY FACTOR
●ポジショニング(位置・身体の向き) ●構えるタイミングとその姿勢
●適切な移動方法 ●プレーの方向 ●安全確実なシュートの処理
アングルプレー②
【ルール&オーガナイズ】
GK
KEY FACTOR
GK
●上体を相手の方に向けて対応する
●できる限り足を地面につけて対応する ●移動方法
●4つのゴールにそれぞれGKが入る
●各選手(GK)
はどこのゴールにシュートをう
ってもよい。もしくは中央の選手にパスをし
て、中央の選手がシュートをうつ
KEY FACTOR
●ポジショニング(位置・身体の向き)
●構えるタイミングとその姿勢
●適切な移動方法
●プレーの方向
●安全確実なシュートの処理
22
23
活動報告
ユース年代の日本代表チーム
将来の日本サッカー界を担う人材の発掘、育成を目的に、ユース年代の日本代表チームが各種大会への参加を
行っています。
今回は、U-15日本代表(1989年1月1日以降生まれの選手)
、U-18日本代表(1986年1月1日以降生まれ
の選手)の活動を各チームの監督が報告します。
U-15日本代表
ブラジル遠征/第7回日伯友好カップ
(ジーコカップ)など参加
2004年8月23日∼9月1日
【報告者】吉武博文
(U-15日本代表監督/ナショナルトレセンコーチ)
日本の課題
①ボールを失う
・コントロールミスが多い(観えていない、技術)
・ボールの置きどころが悪い(相手から遠いところ)
・ドリブルが遠すぎる(自分のコントロールができる範囲を越えている)
→
→
→
動きながら、うまくボールを扱う
状況に応じたところにボールを置く
ゆっくりボールを運ぶ
②プレーの選択
・シュートの場面で他の選択をする
・判断を変えられない(壁パス)
・ボールの移動中にポジションを変えられない
・しかけない
→
→
→
→
遠くてもシュートをうつ
判断を変えることができる
味方との距離を保つ
自分でしかける(何かしてからパスする、ひきつける)
③その他
・浮き球の処理が悪い
・ピボットやバイタルエリアを使えない
・パスの質(コースが悪い、丁寧さがない)
→
→
→
胸でもアウトサイドでも頭でもOK
少しでも隙があれば、くさびを狙う
パスが正確(丁寧、タイミング)
(2)気候
要であると感じた。
南半球なので冬であるが、日本の初夏の気温。ただし湿気が少
○ブラジル選手が一度ボールを持つと取れない。奪いに行くと
ないのでさわやか。今回は曇りや小雨が多かったので、暑くも寒
「いなされる、かわされる」といった感じ。速く寄せるとワンツ
くもないコンディションであった。
ーで裏をとられる。
○そして、ブラジル選手は自己主張をする。パスを受けたら何か
(3)宿舎
意図的なことをしなければボールを離さない。ゴール前では2
Entermares Hotelは治安の良い地区にあり、ビーチまで徒歩10分
対1でも自分でシュートをうつ。
くらいの位置。3階部を貸切状態で、4階にミーティングルーム
○それを『天然』
(教えられずにできる)でやってのけている。
(常設専用)
、レストラン(ビュッフェスタイル)
。こじんまりとし
■大会結果
2004年8月25日 16:00 ジーコサッカーセンター
U-15日本代表 3-1
(2-1)クルゼイロ
2004年8月26日 14:30 ジーコサッカーセンター
U-15日本代表 0-1
(0-1)フルミネンセ
2004年8月27日 16:00 ジーコサッカーセンター
U-15日本代表 1-0
(0-0)マドゥレイラ
※日本はグループ2位で準決勝進出を逃す。
1 1.大会概要など
(1)第7回日伯友好カップ
ブラジルでは、U-15の良質な国際大会がほとんどない。そこで
ジーコ(日本代表監督)が日本とブラジルの選手の国際交流を図
りながら、お互いにレベルアップしてほしいという願いを込めて
スタートした大会である。
ブラジルからはコリンチャンス、フラメンゴ、クルゼイロ、ヴ
壁パス、しかけ、身体を入れてキープ…だから、結果的に、現
者も少なくない。
ルピッチ3面+3/4ピッチ1面+フットサル(人工芝と砂)と、CT
U-15日本代表vsフルミネンセ © HARA Schuichiro
ジカルコンディションであり、メンタルコントロールである連
帯感なのであろう。
「ブラジル体操」
「手をつなぐ」
「みんなでお
にはフルピッチ2面+フットサル(砂)があり、ゆったりとした
祈りをする」意味がわかった。
環境であった。
飲み水はすべてミネラルウォーターを使用し、ベンチサイドに
○日本チームは、リアクションでのサッカーは上手であるが、マ
タンクがありそれをコップで飲む形式。ペットボトルに補給し対
イボールで「しかけて」
「崩して」
「引き出して」というような
応した。
プランを持って、自分たちのペースでゲームを進めることがで
きない。
シュハスコパーティ(焼肉)を企画していただき、対戦相手の
○日本選手は戦術などしっかり理解し、やろうとするし、
「できる」
選手と団欒のひと時を持つことができた。交流体験と内容など、
ときもある(いつもではないが…それが差)
。
かしこまったものでない雰囲気を味わえてよかった。
○ひとつ上のCFZ(昨年の優勝チーム)とのゲームでは、前線か
2 チームコンセプト
らのプレスも意識的にできた。
○DFにおける『よいスタートポジション』をとることができれば、
①代表としての誇りと歓びを持つ(ひたむきさ、和、自立、自ら
おおむね「やられる」ことはない。しかし、このおおむねが
感動)
きる、判断を変えることができる)
④トライして何かを得る(何かを始める、イメージを持つ)⇒フ
ァイナリストとなる。
3 成果と課題
○ボールを意のままに操れる技術は、日本選手もうまくなったと
24
○だからブラジル選手のパフォーマンスを左右するものは、フィ
なかった。会場となったCFZ(ジーコサッカーセンター)にはフ
③個々のレベルを上げる(関与する、1人→2、3、4人でやり
交代5人+GK、活躍した選手は1∼2年後にプロリーグに出場する
熟すればすばらしいパフォーマンスになりそうである。
ピッチは最高級でもなく粗悪でもなく、この年代では何も問題
ズ、鹿島アントラーズノルテ、U-15日本代表など合計16チームが
はトロフィーやメダル、副賞などが準備されている。35分ハーフ、
時点で成功しなくても5年後、10年後には技術的・体力的に成
(4)その他
②出会いを大切にする(仲間、新しい自分、世界、体験)
式の準決勝・決勝と進む。優勝、準優勝、最優秀選手、得点王に
○さらに、その場その場の状況で一番の選択をする。シュート、
たもので、U-15年代の選手には適しており、問題なかった。
ァスコダガマなど名門クラブが参加、日本からは鹿島アントラー
参加、4チーム×4グループのリーグ戦、各1位がトーナメント方
ブラジルチームから学んだこと
「常に」とならなければ、世界との差は縮まらないと感じた。
○ブラジル国内の試合は、どれも僅差で1-0や2-1はもちろん、3-0、
U-15日本代表vsフルミネンセ © HARA Schuichiro
思うが、ブラジルチームと対戦するとボール扱いや置きどころ
がまだまだ甘い。また、ドリブルスピードが自分のコントロー
ルできる範囲を越えて自滅するパターンが多い。
○また、キックの種類を増やすことと同時に、DFから寄せられて
も、50㎝の隙間があればパスできる「正確性」と「狙い」が必
3-1でも点差ほどの差はなく、どっちが勝ってもおかしくない。
○フィニッシュの差だけで試合が決まる。だからこそ、ストライ
カーが育つのかもしれない。
○また、リーグ戦の戦い方をよく知っている。負けることで自力
突破がなくなることが身体に染み付いている気がした。そして、
最低引き分けという試合を演じられることもすごい。
25
○ブラジルでは背番号は、ポジション固有の物であるかのように、
試合ごとに8番の選手が違っていたりする。
○今回の遠征では、どのチームも簡単に勝たせてくれないことを
強く感じた。国内のゲームがそうなることを強く願っている。
から失敗もしながらの遠征となった。選手はその主旨を理解し、
前向きに取り組んでくれたことも大きな収穫であった。また、大
2番目の目標である「ゴールを目指したビルディングアップ」
を奪うことができました。ボールの奪いどころをチームで明確
にできたこと、それを実践できたことはすばらしいと思います。
会期間中に選手同士の交流会(シュハスコパーティー)やスタッ
に関しては、トレーニングや試合を重ねるたびにチームとして
また、バイタルエリアに入れさせないようにしながらも、入
フゲームがあり、ブラジル文化に触れる機会も刺激となった。
のピクチャーが描けてきましたが、個人技術の精度不足からう
れられたら素早く挟み込むことを行いましたが、イタリア戦で
まく組み立てられないことが多かったと思います。
はバイタルエリアを意識するあまり、ボール保持者にプレッシ
③クロスからの攻撃
ャーがなく、中盤で自由にさせすぎたことが、背後へのパスを
最後にけがで参加できなかった選手が出たのは残念であったが、
4 総 括
②ゴールを目指したビルディングアップ
各チームの活動がある中、選手を派遣していただき心より感謝し
育成年代の代表遠征でもあり、自立を常に念頭において、スタ
ています。また、監督としてこのような良い経験をさせていただ
3番目の目標であった「クロスに3人が入る」に関しては、ま
ッフ全員が選手に接した。チーム荷物の管理や集合時間などの厳
いたことと、スタッフ全員がそれぞれの役割を果たしていただい
だまだと言わざるをえません。押し込まれる状況の中、少ない
守、キャプテン決めや各種座席決めなどもろもろ、体験させる中
たことにも大変感謝しております。
チャンスにも果敢に長い距離を走ってゴール前に飛び込んでい
く。また、それを見てバランスをチームでとっていくといった
ダイナミックさをもっと出していければと思いました。
そんな中、ブラジル戦、イタリア戦の後半は、クロスに飛び
込んでいく積極果敢な攻撃が何回かあったことは、今後の少し
の自信につながったのではないかと思います。
容易に出させた原因でした。
(5)トランジション
攻撃から守備への切り替えの一瞬の隙をつかれて、イタリア
戦は失点(2点目)しました。素早く切り替えて正しいポジショ
ンにつくことの重要性も、選手は身をもって知ることができた
と思います。
守備から攻撃に関しては、マイボールになったら、どんどん
飛び出し、味方をも追い越していく動きやエネルギッシュな動
U-18日本代表
第2回仙台カップ国際ユースサッカー大会参加
2004年9月15日∼23日
【報告者】上野展裕
(U-18日本代表監督/ナショナルトレセンコーチ)
■大会結果
2004年9月18日 13:02 仙台スタジアム
U-18日本代表 1-1(0-1) U-18ブラジル代表
2004年9月20日 15:39 仙台スタジアム
U-18日本代表 2-3(1-3) U-18イタリア代表
2004年9月23日 12:30 仙台スタジアム
U-18日本代表 3-4(2-2) U-18東北代表
1 チームとしての目標
代表としての誇りと責任を持って闘う。
【攻 撃】
【守 備】
①しかけ
②ゴールを目指したビルディングアップ
③クロスからの攻撃(3人、飛び込み)
①チャレンジ&カバー(積極的な守備)
②コンパクト
③囲い込み(ボールの取りどころを明確に)
【トランジション】 攻撃から守備、守備から攻撃
2 大会を終えての所感
(1)全般
26
が、そういった選手も国際試合を経験したことで、これからの
(4)守備
成長には大きなプラスになったはずです。
①チャレンジ&カバー
チームとしては、今回初めて選出した選手が多いため、初日
チャレンジとカバーを繰り返しながら、粘り強く守備をして
にASE(社会性を育成する実際体験)をとり入れて、コミュニ
いくとともに、積極的なアプローチでボールを奪いに行こうと
ケーションを図ったり、練習試合(30分×2:vs仙台育英)を組
しました。
きを見たかったのですが、試合によってむらがありました。
(6)メンタル
ブラジル戦も0-1から1-1に追い付いたこと、そしてイタリア
戦では0-3から2-3にまでできたことに関しては、メンタル面の
んだりしました。そんな中、選手はスタッフからの働きかけに
ブラジル戦では中盤でのアプローチの不足から、中盤を支配
強さも出たと思いますが、東北選抜の試合では皆で集中してや
よるだけでなく、お互いが練習中や練習後、試合後、選手同士
され苦しい展開になりましたが、ディフェンスラインがチャレ
るべきことをやってきての敗戦であったので、選手のモティベ
が積極的にコミュニケーションをとってくれたと思います。し
ンジとカバーを繰り返しながら、粘り強い守備を行いました。
ーションに少しのダウンがあったこと、またそれを上げる努力
かしながら、ブラジル・イタリアと比較すると、まだ差がある
しかしながら、第2戦、第3戦とディフェンスラインが崩壊して
を私がもっとするべきであったと反省しています。
と感じられます。
しまいました。コンパクトにするためにラインを高く上げるま
多くの選手が国体終了後すぐに集まり、また仙台カップ終了
ではよいのですが、ボールが出てくるときに正しいポジション
後、翌日から高円宮杯第15回全日本ユース(U-18)サッカー選
にいないことで、相手FWと並んだ状態になり、ピンチと失点を
手権大会に参加しています。強行日程ではありましたが、選手
繰り返しました。
にとってはすばらしい経験となったに違いありません。
(7)環境
すばらしい大会でした。練習ピッチもホテルも試合会場(仙
台スタジアム)もどれをとっても良かったと思います。
また、修正しても(正しいポジションにいても)
、なおその上
対戦相手に関しては、ブラジルは17歳のチームでしたが、こ
をいくイタリアのストライカーの質の高さと身体能力に対抗する
れから予選を戦っていくチームづくりの立ち上げとなるチーム
には、センターバックを3枚にして1人が深いカバーのポジション
だけに、ブラジル国内のすばらしいタレントが揃っていました。
イタリア、ブラジルと比較すると、個人の基本技術には開き
をとることが賢明な策なのでしょうか。大会前から予測はしてい
イタリアに関しては18歳のナショナルチームであり、2回の合宿
があります。単純に止める、蹴る、といった技術の差が、ビル
たことですが、個人の力がどれくらい通用するかを浮き彫りにす
をイタリアで積んできており(セリエAに出場している選手もい
ディングアップが正確にできるかどうか、あるいは最後のアタ
るためにも、中央で相手FWと2対2になっても守る中で、世界と
ました)
、この年代のトップクラスに入ってくるチームではない
ッキングサードでの仕事など、すべてに差となって現れていま
の個人の差を肌で感じとって欲しいと思いましたし、実際選手は
かと思われました。
した。
世界のスタンダードの力を感じとったに違いありません。
(2)技術
ただパスをするにもDFから遠い足にパスをしたり、味方のス
②コンパクト
3 最後に
縦にも横にもコンパクトになって、ボールを奪いに行こうと
U-19日本代表とJリーグにかかる選手を除いた選手での構成で
しました。縦にコンパクトになるという点では、まだまだ修正
あったため、新しい選手の発掘という点や、底上げをする点で
の余地が大きいと言えます。ボールにパワーがあるときは素早
はすばらしい経験を選手は積んだと思います。選手たちは一生
(3)攻撃
くステップバックすること(3mコンセプト)ができませんでし
懸命トライをしましたが、少しのためらいが(外国人選手に対
①しかけ
た。
しての)あったとも思いました。多くの選手はJリーグにいくこ
ピードを落とさないようなパスを出してあげるなど、精度に加
えて、意識も高めていかなければならないと思いました。
チームの攻撃の目標でもあった「しかけ」に関しては、選手
選手は、お互いのコミュニケーション、楽をしないで(オフ
は積極的にトライしてくれました。とくに柳澤隼(柏ユース)
サイド・トラップ)
、しっかりと上げ下げすることの大事さが身
は何度も突破し、チャンスを作りました。しかし、彼にも全体
に染みたのではないでしょうか。少しの隙も見逃さない世界と
今回の大会で、選手は自分の何が世界に通用し、何が通用し
にも言えることですが、突破してからのクロスの質、中央の人
の差を感じ取ったに違いありません。
なかったのかを、肌で感じ取ることができました。中には、国
のクロスへの入り方(タイミング)は、大いに改善の余地があ
③囲い込む(ボールの取りどころを明確に)
際試合の経験のなさから力を出し切れなかった選手もいました
ります。
とになるとは思います。今後さらに何らかの形で海外の経験や
国際試合経験を積んで、大きく羽ばたいてほしいと思います。
選手は、サイドに相手を追い込んでうまく囲い込んでボール
27
山郷のぞみ選手も参加
2004JFAスーパー少女プロジェクト・第1回トレーニングキャンプより
/2004JFAスーパー少女プロジェクト・第1回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
© Jリーグフォト㈱
(左)今泉守正氏、
(右)加藤好男氏/
2004JFAスーパー少女プロジェクト・第1回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
今回のキャンプにおける成果
2004JFA
スーパー少女プロジェクト
第1回トレーニングキャンプinJヴィレッジ
(1)山郷のぞみ選手のトレーニング見学
キャンプ初日のトレーニングの最後に、アテネオリンピック日本
2004JFAスーパー少女プロジェクト・第1回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
試合が始まるとしっかりとボールを捉え、かなりの飛距離を出す選
ス)のトレーニングを見学した。山郷選手の技能についてはもちろん
手もいた。また、飛んでくるボールに対して落下地点に入れない選
のこと、トレーニングに対する集中力や取り組む姿勢など、世界を
手はほとんど見られなかった。
相手に戦った選手のトレーニングを間近に見て肌で感じることがで
きた。
も行われ、選手たちは自分が目指すべきモデルとして具体的なイメ
ージを持つことができ、非常に貴重な体験であった。
(2)身体測定、フィジカルテスト、スキルテスト
身長、体重、垂直跳び、立位体前屈、反復横跳び、30mスプリン
ト、50mスプリント、キック力(左右)、スローイングについて測定を
JFAスーパー女子プロジェクトとは
日本の女子サッカーの大きな課題のひとつは、U-15年代において、
行った。
るゴールキーパー(GK)というポジションにフォーカスを当て、
チーム数、選手数が非常に少なくなってしまうことである。小学生
GKのキャンプを今回を含め年度末(来年3月)までに3泊4日で4回
世代では、およそ9,000人もいた選手たちが、この世代では約3,000
実施する。
人に減少してしまう。
この世代の選手数を増加させることはもちろん非常に重要なこと
であるが、サッカーを続けている選手たちの中には、実は非常に才
能が豊かであったり、少しだけより良い環境でサッカーをすること
によって、飛躍的に成長を遂げる選手が存在すると考えられる。ま
た、現在サッカーを競技として行っていない少女の中にも、タレン
今泉守正(技術委員会委員/ナショナルコーチングスタッフ)
加藤好男(ナショナルコーチングスタッフ/GKプロジェクトリ
ーダー)
指導スタッフ 川俣則幸(ナショナルコーチングスタッフ)
川島透(ナショナルコーチングスタッフ)
澤村公康(ナショナルトレセンコーチ/浦和レッズ)
八木邦靖(女子指導者養成・ユース育成コーチ)
トは存在する可能性が大きい。
こういった将来の日本女子サッカー界を背負って立つ可能性のあ
るタレントを発掘し、育成を図り、日本女子サッカーの強化と総合
開催日程
的な活性化につなげていくことを趣旨として立ち上げられたのが、
「JFAスーパー少女プロジェクト」である。
本年においては、世界と日本の間にもっとも差があると考えられ
9月17日 午後 身体慣らし、コミュニケーション、山郷選手 (さいたまレイナス)のトレーニング見学
9月18日 午前 身体測定、フィジカルテスト、スキルテスト、
キャッチングの構え
午後 シュートストップ(構え、ポジショニング)
9月19日 午前 フットベースボール(空間認知)
午後 ハイボールキャッチ、クロスボールの対応
9月20日 午前 シュートストップ(ローリングダウン)
(3)シュートストップ(キャッチングの基本、構え、ポジショニング)
最初はボールをキャッチする際に、ボールを挟むように手を出す
このころになると、選手同士もかなり打ち解け、声を掛け合って
非常に良い雰囲気でトレーニングは行われた。
(5)ハイボールキャッチ、クロス
キャンプ3日目になり、キャッチングがだいぶ安定してきた。
ハイボールのキャッチに関して、片足ジャンプができず、両足ジ
ャンプになってしまう選手もいたが、今回のキャンプでは高い位置
でボールをキャッチできれば、片足であることが望ましいが、両足
でも構わないだろうという方向性で指導した。
ボールが飛んでくる方向は、ゴール正面からとサイドから行い、
クロスボールに対するポジショニングの導入、シューターに対する
意識(視野の確保)について、徐々に実際のゲームで起こりうる状
選手も見られたが、ボールの後ろに手を持っていくこと、飛んでく
況を意識したトレーニングに移行してきた。
るボールに対して正対して構えること、構える際にボールがどこに
(6)シュートストップ(ローリングダウン)
飛んで来てもスムーズに手が出る位置を意識すること、できる限り
ボールに対して足を運び正面でキャッチすることを意識させた。
最初は手で投げられたボールから、次には蹴られたボールへと移
最初は、1人1個ずつボールを持って座った状態からローリング
ダウンを行った。そこから膝立ち∼立位へと移行し、次には投げら
れたボールに対してローリングダウンを行った。
行していったが、トレーニングの最後には、身体を横に倒すことへ
今回のキャンプでは実際に蹴られたボールに対するローリングダ
の興味を示す選手も出てきた。トレーニング開始の状態からかなり
ウンは行わなかったが、最後に行ったゲームではゴールに対して飛
の改善が見られ、それぞれに吸収力の高さを感じさせた。
んできたボールに対して身体を投げ出し、自然にローリングダウン
(4)フットベースボール
を行う場面も見られた。
リラックスを兼ね、キャンプ3日目の午前にハイボールへの導入
総括と今後の展開
3泊4日という短期間のキャンプではあったが、今後への可能性を
参加選手たち
ミングアップにおいてはキックにかなりぎこちなさを見せていたが、
女子代表のゴールキーパーである山郷のぞみ選手(さいたまレイナ
また、夜のミーティングでは山郷選手の体験談を含むレクチャー
八木邦靖(女子指導者育成/ユース育成コーチ)
としてフットベースボールを行った。サッカー未経験者は、ウォー
大きく感じさせる有意義なものであった。
キャンプスタート時には、サッカー未経験者を含んでいたため、
未経験者に対するトレーニング環境の提供である。彼女たちはそれ
ぞれの学校においては、異なる種目の部活動に所属しているために、
サッカーのGKトレーニングが行える環境がない。また、現在チーム
る少女
個人のレベルに大きな差があり、戸惑いが見られる選手もいた。し
に所属して日常のトレーニング環境のある選手に対しても、GKコー
このうち、10名がサッカーを専門としており、それ以外は、バレ
かしながら、コーチたちのきめ細かでポイントを押さえた熱心な指
チがいるとは限らないために、今回のキャンプで得られた成果が習
薦を含む)によって選出された、U-15の選手17名(都合により3名
ーボール4名、陸上競技2名、バスケットボール1名という内訳であ
導と、選手たちの真剣な取り組みによって、経験者においてはひと
慣化できるとは限らない。
は不参加)である。
った。サッカーを競技として未経験の選手もおり、スパイクやゴー
つひとつのプレーの質の向上、未経験者においては乾いた砂が水を
そこで、今回のキャンプにおいては個人面談を行い、キャンプか
ルキーパーグローブを手にしたのは初めてという状態でキャンプは
吸い込むような技能の向上が見られ、キャンプ最終日には、初日の
ら地元に帰った後のトレーニング環境や進路について話し合い、選
スタートした。
ゲームでは反応できないで見送っていたボールにしっかり足を運ん
手がそれぞれ持つ課題や方向性を抽出した。これらの課題に対する
でセービングしたり、ハイボールに対してしっかりとキャッチング
方策を第2回目のキャンプ(12月2日∼5日)に向けて、今後検討し
するなど、それぞれの能力の高さを改めて感じさせられた。
ていく必要性を強く感じた。
第1回目のキャンプは、9月17日から20日まで、Jヴィレッジ(福
島県)において実施された。参加選手は、全国からの応募(自己推
なお、参加の資格は以下の通りである。
①1989年4月2日以降に生まれた少女
②身長170cm以上の少女
③50m走を8秒1以内で走れる少女
④将来のなでしこジャパン(日本女子代表)のGKを目指す意欲のあ
28
県選抜クラスの選手から、初心者までさまざまなレベルの選手が
混在するグループでのトレーニングとなった。
今回のキャンプを通して得られた今後へのもっとも大きな課題は、
29
年代別指導指針④
10
世界のトップ
を
Ⅱ ボール保持者セーフテ
目指して! ィー鬼ごっこ
Ⅲ ツーバウンドキック
○鬼にタッチされたら鬼が交代して追いかけます。
○ボールを入れておき、ボールを保持している選手は鬼につかまりません。
○鬼が追いかけている選手に対してボールをパスして助けてあげましょう。
○レベルによって手でのパスでも良いし、足のパスでもできます。鬼もボール
も複数にするとより複雑になり、いろいろな動きが出てきます。
JFA技術委員会
テクニカル・ニュースの年代別指導指針
術・戦術の各項目に入りますが、各年代ご
について、前号までは指導指針の考え方を
とに進めていくのではなく、それぞれの項
説明してきましたが、今号からは技術・戦
目を「縦」に観て、各年代ごとの課題と合
に関し、イントロダクションとU-12年代
術の各論に入り、各項目を年代を越えて
わせて全体像の中のあり方を考えていただ
のトレーニングを紹介します。
○選手にナンバーをつけて、選手①→②→③…の順番でボールを回します。高
く蹴り上げて2バウンド目をキックしていきます。2バウンド目にぎりぎり届
くくらいの場所にキックできることを考えて、少し意地悪なキックもしてみ
ましょう(2バウンド目が1m以上バウンドするようにキックしましょう)
。
1
きたいと思います。
今回はその第1回として、
「1対1・守備」
2
鬼
5
「縦」に観ながら、トレーニングの留意点
4
を出していきたいと思います。
3
1対1・守備
再度確認しておきたいことは、「すべて
の年代は、育成の全体像の中にある」とい
うことです。指導者の皆さんは、通常ご自
分が指導している年代のことのみに関心が
U-16
状況の中で判断を伴う1対1(ゲーム状況、エリアなど)
やりたいことから → 行くか、行かないかの判断を的確に、取りどころの整理
やるべきことへ
高いかもしれませんが、そこだけで完結、
U-14
独立して考えるのではなく、是非とも全体
考えながら
像をイメージした上で各年代をとらえてい
U-12
ただきたいと思います。
感覚的に
したがって、ここで年代別指導指針の技
奪うチャンスを逃さない、相手を自由にさせない
チャレンジ&カバー、正しいポジショニング
取られたら、取り返す、最後まであきらめない
スライディング、守備の技術
※「テクニカル・ニュース」創刊号 42ページ参照
ボールを奪う 取られたら取り返す
Ⅰ ボールレスリング
Ⅱ 王様当てゲーム
○2人でボール1個。
○何をしてもいいので、ボールをキープします。
○相手はそれを奪おうとします。
○殴ったり、蹴ったりはなし。ボールを持ってランニングもなし。
○6人1組のチームの中で、1人王様を決めます。
○ボール1個を使用し、ボール保持チームは相手の王様にボールを当てれば得点。
○ボールを保持していないチームは、全員で王様を守ります。
○ボールを保持しないと攻撃ができないので、積極的にボールを奪いに行くよ
うにします。
第1回 1対1・守備∼U-12
U-12における1対1の守備は「ボールを取りに行く」、「取られたら取り返す」
、「最後まであきらめない」
1対1は、攻守ともに日本の大きな課題
に奪いに行くこと」を目標とします。積
させていくことが重要であり、コーチの
のひとつです。2003年度の各カテゴリー
極的に奪いに行くことで、守備の技術も
力量が問われるところだと思います。
の世界大会のテクニカルレポートからも、
身に付きます。守備を戦術的に教えるの
スライディングも両足同じようにでき
主要な課題として挙げられています。ベ
ではなく、感覚的に身に付けさせていく
る選手は非常に少ないです。同じように
ースは上がってきたようでありますが、
ことが大切です。
できれば、守備の技術として非常に有利
それでもまだ根本的に1対1の攻守は改善
また、守備は相手に対してのリアクシ
になります。両足のキックと同様、スキ
しなくてはなりません。ここに大きな差
ョンが多いので、いろいろな動き(反転、
ルやコーディネーションが身に付きやす
があるうちは、どれだけ組織を整えよう
バックステップなど)が必要になります。
い、この時期にこそ身に付けさせたい技
とも個人の能力の高いトップの国々に太
人間の身体の発育上コーディネーション
術です。もちろん、日ごろの練習環境に
刀打ちすることはできません。
能力は、U-12の年代がとくに獲得に適し
よって、なかなか練習のしにくい技術で
サッカーの本質は、ゴールを決めるこ
ていて、いろいろなステップワークやバ
はありますが、芝のグラウンドなど良い
と。そのためには、自分たちがボールを
ランス感覚などはこの年代で身に付けさ
環境でトレーニングをする機会がある際
持たなければシュートはうてません。相
せていきたい事柄です。ただ教えるので
には積極的に練習をし、自在にできるよ
手がボールを持っているときに、「積極的
はなく、楽しさの中から自然に身に付け
うにしましょう。
Ⅲ ハンドパスゲーム 4対4
○ラインゴール通過で得点。
○ゴールライン上での極端な待ち伏せ以外オフサイドはなし。
○ボール保持者にタッチしたら相手ボールになります。
Ⅳ ボール奪取ゲーム① 8対4
攻
撃
方
向
○4人がDFで、8人のボールを奪って外の味方にパス。
○全員がボールを奪うまでの時間を競います(ボールが味方につながらなかっ
た場合は攻撃側は再び中に戻れます)
。
【キーファクター】
積極的にボールを奪う
取られたら取り返す
コミュニケーション
【キーファクター】
ボール保持者へのアプローチ(第1DF)
ただ近づくだけでなく、奪いに行く。
コミュニケーション(第1DFの決定)
。
積極的に奪いに行く。
取られたら取り返す。
ウォーミングアップでできるコーディネーショントレーニング
これらのゲームの中から、自然にコーディネーション、さまざまなステップワークなどを身に付けることを狙いとします。
Ⅰ サークルドッジフットボール
○センターサークルの中に1組が入り、外側から足でパスをしながら、中の
相手にチャンスがあればボールを当てます。
○当てられた選手は外に出て、全員を当てられる時間を競います。あるいは
当てられても外には出ずに、時間内に何人当てられるかを競っても良いで
しょう。
Ⅴ ボール奪取ゲーム②
<オーガナイズ①>
○4人1組で3チームつくり、各チーム、
違う色のビブスを着ます。
○2色は各自ボールを持ってスタート。
1色はボールを持たずにスタート。
○ボールを持っていない人はボールを奪いに行きます。
○制限時間終了時点でボール保有者が
多いチームの勝利。
【キーファクター】
ボール保持者へのアプローチ(第1DF)
ただ近づくだけでなく、奪いに行く。
コミュニケーション(第1DFの決定)
。
積極的に奪いに行く。
取られたら取り返す。
30
※次号でU-14、U-16について掲載します。
<オーガナイズ②>
○2色はグリッド内に入ります。
○片方のチームは全員ボールを持ち、もう片方は持ちません。
○ボールを持たないチームはボールを奪って、マーカー間をド
リブル通過。
○ボールを持っている方は奪われないようにします。
○奪われたらすぐに取り返すようにします。
○ボールを奪われマーカー間を通過されたり、自分でサークル
の外にボールを出してしまったら、サークルの外に出ます。
○奪ったディフェンスは再び中に入ってボールを奪います。
○より短時間で全てのボールを奪うことを目標にします。
<オーガナイズ③>
○②と同様。ドリブル通過をコーンの間のパスとします。
31
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
J F A
P H Y S I C A L
F I T N E S S
P R O J E C T
JFAフィジカルフィットネスプロジェクト
© Jリーグフォト㈱
国、中国の選手たちの身長および体重は、
て変わってきますが、スピードや高さに対
て、お互いにフレッシュな状態でのフィジ
他の国々と比較しても群を抜いていまし
してあらゆるケースを想定して、闘える身
カルコンタクトやペナルティエリア内での
た。19歳以下の大会ですが、この2チーム
体をつくることは必要です。
パフォーマンスに現れるパワー、スピード
に関してはほぼ完成された大人の身体をし
ていたと言ってよいでしょう。体格だけで
日本選手、
フィジカル面での課題
∼アジアにおける各年代大会視察を通して
菅野淳(JFAフィジカルフィットネスプロジェクト)
サッカーをやるわけではありませんが、最
終的に決勝に残った2チームにスポットを
2004年アテネオリンピック
およびアジア最終予選2004
当ててみても、この年代では選手個人の体
格がチームパフォーマンスを左右する大き
な要因になっていると言えます。
ん。この前半の劣勢を跳ね返すこと、すな
わちキックオフ直後から正面から相手と互
角にパワフルな戦い方ができれば、近い将
来、日本代表が世界で活躍することができ
(1)U-23年代の特徴
ると思われます。
この年代では、既にそれぞれの国内リー
トレーニングに置き換えれば、各クラブ
グで主戦力として戦っている選手が多数出
において筋力トレーニングを含めたパワー
場しています。来るべきA代表の将来を担
系のトレーニングにもう少し時間を割き、
うという点からも、この年代の強化はどの
もちろんそれだけで終わらずにピッチ上で
ル面の課題は、身体の大きさに他なりませ
国でも重要視されています。特徴としては、
のトレーニング時に短時間でも試合と同じ
(2)日本の課題
U-19年代における日本選手のフィジカ
はじめに
に大きな課題があると言わざるを得ませ
この大会を通じて全般的に、選手個人の
もう一点はヘディングです。もちろん技
ん。とは言っても、今から身長を伸ばせと
国内リーグでの主戦力として戦い、その国
ような状況を設定し、クラブ内で"削り合
能力がチームパフォーマンスに大きく影響
術も含まれますが、とくにジャンプ動作を
言うわけにはいかず、かと言って身長の大
のA代表入りを目標に、当然のことながら
う(決してケガをさせるという意味合いで
2004年3月から9月までの半年の間にU-
すると感じました。ちょっとスピードが突
伴ったヘディング時にミスがあり、競り合
きい選手だけ並べればよいという単純なも
個人戦術や個人技術、そしてフィジカル面
はなく)"ような切磋琢磨する場面がより
23、U-19、U-17と各年代のアジア選手権
出していたり、身長が大きく身体的な部分
う相手がいないフリーな場面でもジャンプ
のでもありません。
すべてが完成されていなければなりませ
多く出てくれば、国際舞台で闘える選手が
がそれぞれ行われました。これまでアジア
で有利であったりすることによって、勝敗
のタイミングが合わず、"かぶって"しまう
U-19年代ならば、既に身長の伸びも止
ん。
もっと輩出されるのではないでしょうか。
の各種大会やオリンピック、FIFAワール
が左右されてしまう面があります。また、
シーンが見られました。浮き球のボールの
まっており、もう少し筋量を増やしていく
ドカップなど世界大会において、各国代表
この年代にしては少し長く感じられる90
処理や、自分のジャンプの頂点でボールを
ようなトレーニングをやってよいでしょ
の戦い方や特徴など技術・戦術的観点から
分という試合時間が、かなり選手たちのス
とらえることができる空間認識を高めるよ
う。とくに上半身の貧弱さは、フィジカル
アテネオリンピック出場によりU-23年
テクニカルレポートが制作・報告されてい
タミナを消耗させていました。その結果、
うなトレーニングをより多くとり入れる必
コンタクト時の上半身の使い方の不器用さ
代の日本選手の課題はかなり明確になりま
ます。今回はフィジカルフィットネスプロ
試合後半にバテてしまい足が動かなかった
要があるのではないでしょうか。
にも反映されます。筋トレをすると身体が
した。
ジェクトのひとつの試みとして、「各年代
り、脚の筋肉が痙攣を起こしてしまう選手
での特徴は何か」
、
「各年代での日本とアジ
が続出していました。
ア各国の違いは何か」、そして「10年後、
日本が世界でトップ10になるために各年
(2)日本の課題
重くなるという意見もよく聞かれますが、
AFCユース選手権大会
マレーシア2004
9月25日∼10月9日
(2)日本の課題
最後に
アテネオリンピックでは、結果的には1
勝2敗で目標を実現することができません
アジア最終予選2004(3月1日∼5日/3
でした。しかし、U-23日本代表の選手た
アジア諸国を圧倒して世界基準で戦うなら
月14日∼18日)では、守備をしっかり固
ちは、ただ単にアテネオリンピックに参加
ば、もはやそんなことは言っていられない
めてカウンターをしかける国々に手を焼き
して負けて帰ってきたわけではありませ
段階に来ているでしょう。筋トレそのもの
ました。リトリートされてスペースのない
ん。世界のレベルの高さを肌で感じること
は、単に筋肉を増やすだけかもしれません
状況を突破するために、単純にスピードだ
ができたし、自分のプレーで何が通用して、
が、それと並行して筋と神経を促通するよ
けで片付けられない、さらなるアジリティ
何が通用しないのかを実際に経験してつか
代で何が必要か」を探るべく、フィジカル
この年代の日本代表選手に関していくつ
フィットネスの観点から、すべての年代の
かの課題を挙げると、ひとつは守備時の相
試合を直接視察しました。もちろん技術・
手に対するチャレンジです。たとえ明らか
大会の特徴として、キックオフが夜とは
うなコーディネーションのトレーニングを
やコーディネーションが必要であると感じ
むこともできました。世界大会で結果を残
戦術面と切り離しがたい側面も多々ありま
に体格面で劣るとしても、もっと果敢に奪
いえこの時期のマレーシアは湿度が90%
導入したり、サッカーの動きをとり入れる
させられました。また、カウンターに対し
すことはもちろん大切ですが、出場するこ
すが、フィジカルの観点からということで
いに行くことで、その結果、弾き飛ばされ
以上あり、非常に蒸し暑い中で行われまし
ことによって、サッカーに使える筋肉にな
ても戦術的だけでなく、フィジカル的にも
とによって経験し、次に生かすことも重要
気づいた点をレポートします。
たりバランスを崩すなどにより、さらに次
た。また大会期間中雨も多く、ところどこ
りうるものと考えられます。筋肉によって
予測力を含めた動き出しの速さを高める必
です。親善試合ではなく真剣勝負の世界大
の課題=例えばフィジカルコンタクトスキ
ろ芝生がはげた状態で、ピッチ状態は決し
体重が増えたら、体重が増えた分さらにパ
要があります。
会には、出場しなければわからないことが
ル、重心のスムースな移動の問題など=が
て良いとは言えませんでした。さらに、試
ワーアップして動ける身体に変えていくよ
より明確になります。
合スケジュールは非常に厳しく、特にグル
うな前向きな考え方を期待したいと思いま
では、常にリードされる苦しい展開となり
も同じことが言え、とにかく常に世界レベ
す。
AFC U-17
サッカー選手権2004
9月4日∼18日
(1)U-19年代の特徴
オリンピック本大会(8月11日∼28日)
たくさんあります。そのことはどの年代で
これに関連して、スピードアップはでき
ープリーグの大会日程は試合の間が中1日
ましたが、相手の勢いが低下する試合終盤
ルの大会に出場し続け、世界レベルを肌で
るがスピードダウンができない選手が多い
というハードスケジュールによって行われ
また、フィジカルを前面に押し出すチー
になっても、自分たちの力を出し続け、後
感じながら、着実に世界レベルに近づいて
と感じられました。スピードダウン、つま
ます。おおよそアジアの大会は、このよう
ムに対する戦い方にまだまだ未熟さが感じ
半になって試合を優位に進めることができ
いくことが大切です。
U-16年代は身体ができあがりつつあり、
り止まることは、エキセントリックな筋力
な劣悪な環境の中でも戦わなければならな
られました。これは経験によって解決され
たことは、日本の特徴であり長所であると
そのためにも、各年代でアジアの地区予
心身ともにアンバランスなのが特徴です。
を伴うものであり、筋力の乏しいこの年代
いのが現状であり、フィジカル面はもちろ
る部分でもありますが、スピードあふれる
言えます。このことから、前半0-0、少な
選を突破して、世界大会に出場し続けるた
個人によっても身体的な完成度にかなりの
ですぐにできるようになるのは難しいもの
んメンタル面も含めて、どんな状態の中で
プレーや高さで勝負してくるチームに対し
くとも0-1くらいで折り返すことができれ
めのフィジカル的な要素は何か。まだまだ
違いがあり、決してこの年代で完成したも
ですが、この年代でも止まる技術を高める
もいつもどおりの力を発揮できるタフさが
て、ただ受身に回るのではなく、逆にそれ
ば、後半試合をひっくり返すことができる
手探り状態ではありますが、少しずつでも
のを望むものではありません。ただし、こ
ことはできます。日ごろから加速と減速、
必要です。
を予測してむしろはじき返すくらい慌てず
ことが予想され、監督がゲームプランを練
着実に明確になりつつあります。フィジカ
の年代では基本的な部分で技術やフィジカ
方向変換などいろいろなステップ動作や対
今大会において出場各国の選手たちの身
に対応できるようにいくことが、世界基準
り上げる上で貴重なフィジカル要素になる
ル面でも優位に試合を進めながら、日本選
ルにおいて、ある程度できていなければな
敵動作をトレーニングにとり入れていく必
長・体重データがないので正確なコメント
になるためには必要です。ボールポゼッシ
と思われます。
手が世界で活躍する日が来ることを願って
らないものがあると言えます。
要があると思われます。
はできませんが、最終的に決勝に残った韓
ョンなどどちらが主導権を握るかにもよっ
(1)U-16年代の特徴
32
反面、試合立ち上がり15∼20分にかけ
やみません。
33
COACHING
FOR
GOALKEEPER PROJECT
GOALKEEPERS
GKプロジェクト活動報 告
GK
PROJECT
今回の「GKプロジェクト」からの報告は、今年度初めて2つ会場で開催された「U-18/U-15 GK合
同キャンプ」、指導者を対象にした新規事業「公認GK-C級コーチ養成講習会」の報告を中心に、同プロジ
ェクトメンバーによる、各日本代表チームからの報告を紹介します。
© Jリーグフォト㈱
成果と課題
1. U-18/U-15 GK合同キャンプ
(1)成果
1999年度よりスタートした「U-18/U-15
GK合同キャンプ」も今年で第6回目を迎え
ることとなった。一昨年よりさらに回数を
日程・場所など
年間1回から数回へ、あるいは各地域開催が
可能かどうかなど検討されてきたが、今年
度は東西開催として右記の通り実施された。
目的・コンセプトなど
スケジュール
(1)目的
○東日本 10月2日∼3日 Jヴィレッジ
参加選手数:
【U-18】9名
【U-15】10名
○西日本 9月25日∼26日 熊本県大津町運動公園
参加選手数:
【U-18】10名
【U-15】8名
第1日目/15:00∼17:00 【U-18】シュートストップ&ブレイクアウェイ
【U-15】ボールフィーリング&シュートストップ
19:30∼21:00 ミーティング グループディスカッション(VTR鑑賞)
第2日目/9:00∼11:00 【U-18】クロスへの対応
【U-15】ブレイクアウェイ
12:15∼13:45 【U-18】シュートストップ&攻撃への参加
【U-15】クロスへの対応
【U-18】GKの基本スキルの応用
【U-15】GKの基本スキルの徹底
東西におけるU-18、U-15を代表するGKを
何ができて、何ができないか」を学び、今
況が一定していてかつ反復要素の多いメ
っても良かったのではないか?今後の検
きた。
ニューではミスが少ないが、試合形式や
討課題でもある。
○選手は2日間で3セッションというハード
スケジュールであったが、集中した前向
きな姿勢、態度で取り組んでいた。
相手と味方とGKといった関わる選手が増
してくる状況下ではミスが目立った。
まとめ
○U-18では、GKの攻撃参加で6対4のボール
1泊2日の短期集中開催ではあったものの、
○指導者においては、GKプロジェクトメン
ポゼッションを行ったが、フィールドプ
大きなけが人も出さず、予定通り実施でき
バーに加え、地域のトレセンGKコーチが
レーでミスが多く、日常フィールドプレ
たことは大変良かった。このことにより中
指導に関わってくれたことにより、とも
ーヤー同様のトレーニングが不足してい
央開催10月22日∼24日の2004ストライカー
に相互理解を深め、今後の情報伝達も含
ることを露呈した。バックパスを多用し
キャンプ(38ページ)との合同キャンプも
めてネットワークが広がった。
ぞれ30名前後に同様のトレーニングと合宿
況に関係なく、次のプレーを決めつけて
の機会を与えることができた。したがって、
(3)コンセプト
り、同テーマでディスカッションしたこ
プレーする選手が多かった。また、ゴー
GKプロジェクトとして、U-12からU-18まで
○選ばれし者の誇りと責任
とで、お互いの考えを話し意思疎通を図
ルキック、プレスキックにおいて正確性
のGKを約60名掌握できたこととなり、今後
に欠けるGKも目立った。
の追跡調査も含めて各選手の動向が楽しみ
通する課題への取り組みを通してポジショ
①積極的なゴールキーピング:攻撃的、チ
観る∼予測∼判断∼実行・プレー
落ち着いてサッカーに集中できる日があ
手にトレーニング機会を与えることがで
ーニングをして自分のプレーと比較した
く」
、コンビネーション、リーダーシップ
②良い準備:Good Position(位置と姿勢)
、
しい感があり、欲を言えば、中一日でも
どコーチとGK、相手とGKといった、状
含めると、U-18/U-15のGKが各年代、それ
(2)総合テーマ
また、指導者も同様に選手から「現在、
○トレーニングにおいては、ドリル練習な
○東西で開催されたことにより、多くの選
くなると同時に、プレーに入る前から状
集め、個人のレベルアップはもとより、共
さらなる向上心を刺激する機会とする。
グを実施するために、選手がやや慌ただ
ないチーム戦術の故か、視野が極端に狭
示・声「大きく、はっきり、タイミング良
ャレンジ、前向きな姿勢
○集合日と解散日がある中で、トレーニン
ジメントをしておかなければならない。
○選手は同世代の選手とともに、同じトレ
③DFとの連携:コミュニケーション、指
後の指導現場に役立てる機会とする。
ン特性を学び、他のGKと共有することで、
くの選手が参加できるようリスクマネー
○個人のレベルアップ
り、それぞれの革新を刺激し合っていた。
○自己管理
○東西会場とも芝生の環境でGKトレーニン
○U-15では、GKの基本姿勢やキャッチング
○時間厳守
グを行えたことで、選手のモティベーシ
の中で、やや悪い癖が付きつつある選手
今年度初の試みである東西GK合同キャン
○コミュニケーション
ョンも大変高かった。また、周辺地域か
がいた。主にはリラックスした状態で構
プを開催できたことは、各選手、各指導者
ら指導者も視察に訪れ、関心の高さも示
えられず、至るところに無駄な力が入っ
におけるチーム関係者のご理解とご協力に
していただいた。
ている選手、手の位置や重心において前
よるものであり大変有り難く思っておりま
トレーニングなど
である。
(2)課題
傾姿勢がとれない選手などが挙げられる。
す。また今回、開催場所を提供していただ
ナショナルトレセンで通常行われている
○開催間近にけがなどによって不参加選手
また、キャッチングにおいては、オーバ
いた、Jヴィレッジと熊本県サッカー協会の
内容だが、伝達講習会的なトレーニングで
が出たことにより、当初計画していた人
ーハンドとアンダーハンドの切り替えが
ご配慮で大津町運動公園サッカー場に対し
はなく、強化トレーニングとしてのプラン
数でできなかったことは残念である。今
スムーズにいかない選手が多く、ハンブ
ましても、心より御礼申し上げます。
を立てて実施した。
後は、バックアップも含めて一人でも多
ルをしているケースが目立った。
(1)トレーニング
U-18の強化ポイントは、クロスや攻撃へ
の参加が中心となり、プレッシャーを受け
た中での技術の発揮が課題となった。また、
U-18/U-15 GK合同キャンプ・東日本より
U-15の強化ポイントは、基本の見直しと柔
軟かつ俊敏な身のこなしを最大の課題とし
て取り組んだ。
各トレーニングごとに、テーマ別のGKプ
レー集を国際大会の中から編集して、ビデ
オ鑑賞をしてからイメージを持ってトレー
ニングへ向かった。
(2)ミーティング
U-18、U-15ともに、それぞれ国際大会で
のGKプレー集をビデオ鑑賞して、各グルー
プ別にディスカッションをし、代表者が発
表した。また、各グループの発表に対して、
U-18/U-15 GK合同キャンプ・西日本より
34
他グループから質問や意見が述べられた。
2. 2004年度公認GK-C級コーチ養成講習会
まとめ∼①コースを終えて
開催コース概要
①コースは、10月の三連休に実施された
①コース
②コース
が、あいにくの天候、台風22号上陸のため、
開催期日
2004年10月9日
(土)
∼11日
(月)
2005年1月14日(金)
∼16日(日)
交通機関などの問題で開催も危ぶまれた。
場所
Jヴィレッジ
鹿児島県鴨池運動公園
29名(23∼51歳)
30名(21∼50歳)
しかし、各受講者ともそれぞれリスクマネ
ージメントしてコースへ参加していただい
たために、予定通りスタートができた。ま
た、雨風とも大変強く、ピッチの状態が心
受講者
インストラクター
※コース全体としては、162名の受講希望があった。
加藤好男(GKプロジェクトリーダー)
、慶越雄二(ナショナルトレセンコーチ )
、
佐々木理(ナショナルトレセンコーチ)
35
COACHING
FOR
GOALKEEPER PROJECT
GOALKEEPERS
GK
PROJECT
配されたが、Jヴィレッジの配慮で雨天練習
指導実践全般では、受講者すべてがJFA
場を使用して実施できたので順調に消化で
公認C級コーチ資格を保持しているため、
きた。受講者には大変前向きに取り組んで
標準レベルをクリアしていた。ただ、日常
筆記試験に関しては、受講者全員が合格
いただいたため、初回としては、非常に充
の指導の中で、数人のGK選手としか関わら
実した質の高いものとなった。また、幸い
ない指導者は、5対5のゲーム形式における
に大きなけが人も出さずに最終日を迎えら
れたことも大変良かった。
(本誌前号参照)より出た課題を克服すべき
ングキャンプを行った。シュートストップ
姿勢で大会に臨んだ。権田修一(FC東京U-
やブレイクアウェイの状況下におけるプレ
実際に見ることができたチームのGKもフ
18)は全日本クラブユース(U-18)選手権・
ーは、ストロングポイントとして再認識す
ィジカル面のストロングポイントがあると
点に達していたものの、
「サッカー指導教本
決勝ラウンド出場のため招集を見送った。
べくトレーニングをした。強化ポイントと
は言えなかった。しかし、大会以外のトレ
GK編」を普段あまり活用されていないらし
○長谷川徹(名古屋ユース)
、川原隆広(佐
してクロスへの対応(コンタクトプレー、
ーニングマッチにおいて、1つ年代が上のカ
指導実践でグループ全体を統率するのに苦
く、整理する段階で苦労されていた様子も
賀東)とも、それぞれ全日本クラブユー
パンチングスキルなど)
、セットプレーの守
テゴリーと対戦すると、シュートストップ
労されていた。この機会を通して、新たな
うかがえた。今コースで初めて同教本を活
ス(U-18)選手権、高校総体などの大会か
備(FK、CKなど)
、攻撃への参加(キック
の範囲、フィードの質、距離といった点で
用していただいた方もいらっしゃったので
らの合流で、大会中は控え選手として参
の正確性と距離、質の向上)を重点的に行
ストロングポイントを持つ選手を見ること
はないだろうか?
加していた。
った。
ができた。このような点からも、今回参加
した日本選手の技術面、戦術面は決して低
カリキュラム一覧
講師コーチングデモ
指導実践
講義
指導環境に際しても、指導の幅と質を高め
ウォーミングアップ、ボールフィーリング、基本姿勢、キャッチング
移動技術(ステッピング)
、ローリングダウン&ダイビング
アングルプレー
(ポジショニング)
、ゲーム
(5対5)
、クーリングダウン
ていただきたいと感じた。
来年1月開催の②コースの受講者にも、①
○今大会では、シュートストップ、ブレイ
○第1戦のミュンヘン1860戦では、権田修
コース同様に質の高い、充実したコースへ
クアウェイの場面では安定したプレーを
一がブレイクアウェイの状況下で相手FW
となるよう期待したい。
発揮していたが、試合勘が戻っていない
と激突して頭を切る負傷をしたが、応急
【日本のGK】今回の日本チームのGKは、大
ためか、初戦においてバタバタするシー
処置をして試合を続行した。試合前の雨
谷幸輝(ランザ熊本U-15)
、木下正貴(御津
ンもあった。また、至近距離からのシュ
によりピッチ状態が滑りやすくなってい
中学校)の2名であった。大谷が2試合、木
ートシーンでは、シュートスピードに対
たため、ボールのバウンドを予測できず
下が1試合(ともにトレーニングマッチ1.5
応しきれないケースも出た。
遅れた対応となってしまう。主審によっ
試合)の出場であった。今回の遠征におい
ては、退場処分も有り得る状況であった。
て、チームコンセプトを踏まえた上で、GK
①テーマの状況下における下記の5つのファンクション・トピックをそれぞれ抽選
して選び、一人15分間の持ち時間の中で実施する。
②①と同様のスタイルでゲーム(5対5)における下記の5つのトピック内容を指
導する。ただし、ファンクション・トピックと同じものを再びできない。一人15
分間の持ち時間の中で実施する。
○クロスの対応シーンで、判断が遅れ、出
■テーマ「シュートストップ」
(1)基本姿勢 (2)キャッチング (3)移動技術(ステッピング)
(4)ローリングダウン&ダイビング (5)アングルプレー(ポジショニング)
遅れたり見逃すシーンもあったが、2試合
その他、全般の対応としては悪くなかっ
目には少しずつ慣れてきたようだ。ただ、
た。ただロングキックを数本ミスするシ
後方へのプレーで足が揃いステップ対応
ーンがあった。
①GKの理論およびコーチング法について
VTRを使って各トピックにおけるキーファクター、指導のポイントなどを中心に
確認していく。
②GKの一貫性指導について
グループ別にディスカッションを行い、各グループの代表者が発表する。テーマ
は年代別におけるGKの技術、戦術、体力、メンタルについてで、それぞれのグル
ープが4項目の中から1つ選びディスカッションする。
がとれず、ポストにボールを当ててしま
うこともあった。
2004年度公認GK-C級コーチ養成講習会・①コースより
【大会概要】2004年9月18日∼23日、仙台ス
タジアムにてU-18イタリア代表、U-18ブラ
ジル代表、U-18日本代表、U-18東北代表が
参加して開催された。
来る相手カウンターに際し無難に対応し
マであり、続けて参加している大谷幸輝に
た。ただ、ゴールキックを失敗するシー
ついてはさらにその質の部分の向上を求め
キックを連発してしまうシーンがあった。
ンが数回あった。
ていった。それに加え、ゲームの中での状
分ともにあったと言える。
があった。体格はいいのだが、プレーにダ
後半相手選手の退場もあり、押し気味にゲ
イナミックな動きがなく、体格よりも小さ
藤好男)
ームを運んだが、2-3でゲームを終える。
く見えた。
(以上、石末龍治)
きた。取って取られての展開で進んでいっ
たが、盛り返す力は残っていなかった。
テーマに関しては、試合の中で向上してい
ドイツのGKも守備範囲が広く、存在感も
に立て続けに失点し、苦しい展開となる。
感のある攻撃に押され気味の展開となる。
ムを読むというテーマを加えた。これらの
○同大会で失点0で優勝した日本チームGK
けてチームの信頼も勝ち取った。
○土田健太(前橋商)は、集合当初より腰
ームから離れ所属元へ戻った。
(以上、加
みなポゼッションからしかけてくるリズム
って自然に予測しようということで、ゲー
したプレーを発揮した。
った部分と、また課題として持ち帰った部
グはリハビリをして、翌日残念ながらチ
ピリットあふれるプレーで攻撃をしかけて
況やその変化、相手の心理などを狙いを持
り、権田修一が先発して1試合通して安定
はGKプレーとしての評価も高かったが、
東北選抜については、存在感に欠ける印象
【日本の戦い】ブラジル代表戦は、相手の巧
○第3戦目となる決勝はパウリスタ戦とな
戦に2本止めて勝利したことで、自信もつ
痛を訴えていたので、初日のトレーニン
ームであったが、非常にファイティングス
このテーマはナショナルトレセンU-14、
ーンや、手に持ってからのキックでミス
なく安定したプレーでゴールを守っていた。
最終戦は東北選抜との対戦。地域選抜チ
として掲げた。
クミスしてタッチに直接出してしまうシ
代早々失点して難しい局面だったが、PK
イタリアに押され気味に展開。30分、33分
combination」
「Reading the game」をテーマ
前回のイタリア遠征から継続しているテー
○川原隆広は3位決定戦に途中出場した。交
U-18日本代表∼第2回仙台
カップ国際ユースサッカー大会
た。日本が優勢に試合を進めていたため、
に対しては「Aggressive Goal Keeping」
「Good Position」「DF Communication &
ピンチらしいピンチはなかったが、数回
らない。
3. 各年代の日本代表チーム
○第2戦は北海道選抜戦で長谷川徹が先発し
くないという印象であった。
○攻撃への参加では、プレスキックをキッ
課題として引き続き取り組まなければな
第2戦(イタリア代表戦)
、大きな体格の
印象であった。
あり高いレベルにあった。
(以上、加藤好
男)
U-15日本代表∼ブラジル遠征
日本のGKに関しては、他チームのGKと
比べ技術、戦術ともに遜色はないと感じた。
シュートストップ時の技術(身体周辺)
、ポ
ジショニング、ブレイクアウェイ時のスタ
【大会概要】8月25∼30日にブラジル(リ
ートポジションが挙げられる。クロスに対
オ・デ・ジャネイロ)で開催された「CO-
しては状況によるポジショニングやさまざ
PA DA AMIZADE BRASIL-JAPAO」に参加。
まな球種への対応の向上が必要と感じた。
参加チームはブラジルから15チーム、日本
攻撃面ではフィードの判断、質の向上も必
【大会概要】2004北海道国際ユースサッカー
からU-15日本代表の他3チームが参加した。
要である。またリーダーシップやGKが主体
【大会概要】2004年8月4日から8月8日まで
大会は、8月19日∼22日に北海道札幌市で開
【GKのプレー分析】大会は2会場に分かれて
となった守備組織の構築、決断の強さ、狙
愛知県豊田市において豊田国際ユース大会
催された。参加チームは、日本、ドイツ
おり、すべてのチームの選手を見ることは
える範囲などはまだまだ向上が必要と思わ
U-16日本代表∼
2004年豊田国際ユース大会
U-16日本代表∼2004北海道
国際ユースサッカー大会
前半35分、相手クロスからの折り返しを決
【GKについて】ブラジル代表の2名のGKと
が開催された。参加チームはU-16日本代表
(ミュンヘン1860)
、ブラジル(パウリスタ)
、
できなかったが、全体的な印象としては常
れる。今大会においての相手チームはブラ
められ失点。後半になると日本もチャンス
もパワーこそ感じないが、しなやかな動き
を始め、オランダ、メキシコ、韓国、アイ
韓国(ソウル選抜)
、北海道選抜、コンサド
にゲームに関わり、広い範囲を守備するプ
ジル独特の個人の技術を生かした遅攻が多
を多く作ることができ、相手GKのキャッチ
や反射神経に優れており、
「運動神経がいい」
ルランド、名古屋ユース・愛知県選抜の計6
ーレ札幌ユースの計6チームである。
レーは少なかったと言える。どちらかと言
く、守備面でもGKが多く関わってチームと
【GKプレー分析】北アイルランド遠征、豊
えば、状況に関わりなくゴール前にポジシ
しての守備をするチームはあまり見られな
田国際と持ち越した課題を中心にトレーニ
ョンをとり、そのエリアだけを守るという
かった。
(以上、藤原寿徳)
ミスから同点にする。八田直樹(磐田ユー
GKであった。イタリアについてはDFとの
ス)の好守もあり、同点で終える。
連携がうまくとれており、派手なプレーは
36
チームによって争われた。
【GKプレー分析】7月の北アイルランド遠征
37
2004ストライカーキャンプ
2004年10月22日∼24日/Jヴィレッジ
昨年に引き続いての開催、14歳∼16歳の20名が参加
吉田靖(ナショナルコーチングスタッフ)
望月一仁(ナショナルトレセンコーチ/ジュビロ磐田)
黒崎久志(ナショナルトレセンコーチ/鹿島アントラーズ)
吉田弘(常葉学園)
特別コーチ:永島昭浩・武田修宏(JFAアンバサダー)
指導スタッフ
10月22日 午後 集合、ミーティング、メディカルチェック、トレ
ーニングⅠなど
10月23日 午前 トレーニングⅡ
午後 トレーニングⅢ、ミーティング
10月24日 午前 トレーニング Ⅳ、ミーティング
午後 解散
開催日程
Ⅰ
1
14∼16歳の選手20名。
選手の選考は各地域のトレセンコーチより推薦。
選考のポイントとして、素材・スペシャリティ(高さ・速さ・強さ・
ゴール感覚など)に重きを置いた。
トレーニング概要
ゴールをするために必要な要素として、メンタル(ゴールをすると
いう意欲・勇気)技術(シュートの技術)などいろいろあるが、日
本のストライカーの課題として、ゴール前で慌ててシュートをうっ
てしまい、ミスするケースが多々見られる。今回の主なテーマとし
ては、ゴール前でいかに落ち着いてシュートをうてるかということ
から、4つのテーマに分けて4回のトレーニング(M-T-M形式)を行
った。
ウォーミングアップ
2
3
ファーストタッチ∼
シュート
①いちばん良いところにファーストタッ
チしてシュート(いろいろな場所から)
4
C
②リターンをプルアウェーして
2対1
30m
○2対2でエリア間を移動できない。
○DFはボールを奪ったら、前のフィールドのFWにパス
○リプレーはGKのフィードから
○GKは直接FWにパスしない。
Ⅳ
1
【所 感】スペースのない状況の中のゲームで、後方か
らのパスを簡単にDFにインターセプトされたり、キー
プしても簡単にボールを奪われてしまうケースが目立っ
た。
パッサーの問題もあるが、受け手がDFを観ていな
い・意識していないため、DFに簡単に入り込まれてし
まうことが原因として考えられる。また、一度キープし
ウォーミングアップ
2
3
Ⅱ
1
C
見られた。
これは、コントロールの技術的な問題とDF・GK・ス
ペースなどを事前に観て、プランを持つ戦術的な問題が
ある(もちろんバランスなどのフィジカルの要素もあ
トレーニング オフ・ザ・ボールの動き
ウォーミングアップ
2対2+2フリーマン
8
○サイドのフリー
マンは2タッチ
以下
3
オフ・ザ・ボールの動き
からのシュート
○GKからサイド
のフリーマン 9
にパス
○サイドのフリ
ーマンからボ
ールを引き出
し、シュート
4
2対2+2フリーマンの
ゲーム
る)
。とくに自分の前にスペースがあるのにそこをうま
く利用できない選手が多かったように思う(無駄なタッ
チが多く、顔が上がらない)
。
クロスからシュート
クロスからの2対2
いかにゴールのできるエリアにDFから離れて、タイミン
グよく自分の有利な形で入っていけるか。
5
4対4のゲーム
【所 感】なかなかパスの出る前に有効な動きができな
い。2つのケースがみられ、動き過ぎて、タイミング良
くパスを引き出せない選手と、動きが単純でDFのマー
クをはずせない選手であった(パスが出せない状況でも
パスを受けようと早めに動き出してしまう、または、
DFを観ずに勝手に動き回る選手が多かった)
。
動きが複雑にならず、なおかつDFから離れてボール
を受けるためには、パッサーの状況・DFの状況・スペ
ースなどを良く観て、プランを持って動くよう選手に要
求していった。
また、もうひとつの問題として、DFの前で(足元)
パスを受ける選手が多く、ゴールに直接つながるエリア
でパスを受ける意識が足りないような気がした(ゴール
を意識していない)
。
○両サイドに攻撃のフリーマン
○エリア間の選手の移動はなし
○リプレーはGKのフィードから
○GKから直接フリーマンにパスしてもよい。
5
2対2+2対2のゲーム
ても身体をうまく使えないため、DFにボールを突っつ
かれたり、奪われたりしてしまう(ボールを自分の身体
で守れない)
。
フィジカル的な問題もあるが、日本のストライカーが
ゴール前の厳しい状況の中で、DFを圧倒することがで
きない要因のひとつとして、コンタクトスキルに問題が
あるのかもしれない。
ゴールになる確率の高いクロスに対して、DFを引き離
し、タイミングよく、かつ他の選手とコンビネーションを
とりながらゴール前に入っていってクロスに合わせる。
トレーニング クロスからのシュート
○2対1で突破したらシ
ュート
○シュートをうたれた
ゴール側の選手2人は
すぐに攻撃をしかけ
る(1人がドリブルで
しかける)
。
○攻撃をしていた選手
(シュートをうたなか
った選手)はDFに入
る。
4
30m
○GKからサイドのフリーマンにフィードしてクロス、2
人でゴール前につめる。
【所 感】やはり、ファーストタッチの質が悪い。足元
に止めてしまい、ヘッドが下がり、GKも観ずにあわて
てシュートをうってしまったり、ボールの置きどころが
悪く体勢を崩してシュートをうってしまうケースが多々
38
32m
GKからパスを
受けて2対2
32m
40m
2
3
後方からパスを受けて
(コーチを背にして)
シュート
2対2+2対2のゲーム
一番蹴りやすいところに止めて、GKを観てコースを狙
う。
4対4のシュートゲーム
32m
ウォーミングアップ
2
対象選手
トレーニング ファーストタッチ・フィニッシュの精度
Ⅲ
1
ゴール前のスペースのないエリアの中で、いかに自
分の身体を有効に使いながら、シュートまでもってい
けるか
(DFにマークされてもシュートできる)
。
うまく身体を使って
シュート
トレーニング (フィジカルコンタクト)
【所 感】最初のゲームではクロスの問題もあるが、ク
ロスに対してタイミング良くかつDFのマークをはずし
て飛び込むことができず、なかなか得点をあげることが
できなかった。原因として、早く入ってしまって、パワ
ーをもってボールにアプローチできない、いつDFと駆
4
5
6
クロスからゴール前の
2対1
(2対2)
クロスからの2対2∼
両サイドフリーマンのゲーム
4対4(両サイドフリーマン)
のゲーム
け引きするかがわからない、2人が同じ動きでスペース
を消してしまうなどであった。そのあたりは指導後の最
後のゲームでは有効なゴール前の入り方から、ゴールに
つながる場面が増えてきた。
□日本のストライカーの課題
(1)まとめ
上記の通り、ゴール前で落ち着いてシュートを
うてない原因として、ファーストタッチの質、オ
フ・ザ・ボールの動き、コンタクトスキルなどで
ゴール前で余裕のある状況を作り出せないことが
要因のひとつではないか。もっとこの年代でこの
ようなゴール前の実践的な(とくにDFをつけた中
で)トレーニングを実施していく必要性を感じた。
もちろん上記だけでなく、トレーニングを通して、
次の課題も浮き彫りになった。
①シュートの技術:狙ったところへシュートをう
てない(キックの技術・ヘディングの技術)
。そ
のため、2日目の午前のトレーニング後、集中し
たシュートトレーニングを実施
②ゴールへの意欲:常にゴールを狙っている選手
が少ない。また、自分のほしいタイミングでボ
ールを要求する声も出ない。ゴールへの意欲が
強く、自己主張ができるようでないと思うよう
に点は取れないはずであり、やや物足りなさを
感じた(我の強さがない)
。また、ゴール前に身
体ごと飛び込んでいくなどの迫力も足りない。
③フェイント:ゴール前で1対1になったとき、し
かけが遅い。これは自分のフェイントを持って
いないことも要因のひとつか。また、ファース
トタッチなどでもフェイントが入れば、もっと
DFから自由になれるはずである。
④ステップワーク:いろいろなボールに対応して、
思うように身体を運べない選手が多かった。
⑤ボディバランス:フィジカルコンタクトで簡単
に倒れてしまう選手が多かった。筋力とともに
ボディバランスの悪さ目立つ。
上記③④⑤を意識して2日目午後と3日目トレー
ニング後にボールタッチとステップワークのトレ
ーニングを実施した。
(2)その他
①夜のミーティングで、ビデオで撮影した自分た
ちのトレーニングの姿と世界のストライカーの
プレーを見せ、その差を感じてもらった。
②素材の発掘ということで、同時期に開催したGK
キャンプの選手と比較すると、非常に体格的に
見劣りしており、体格だけがすべてではないが、
この年代で身体能力の高い選手を発掘し、効果
的な刺激(トレーニング)を与えていかなけれ
ばならないことを痛感した。
③各担当コーチ・アンバサダーとも自分の経験か
ら、ゴールを奪うためのコツ、ヒントを選手に
対しトレーニングを通じて伝えようと必死にな
ってくれ、非常に有意義なキャンプになった。
39
テクニカルレポート(抜粋)
AFC U-17
サッカー選手権大会2004
技術・戦術分析
来見直されて強調された要素であった。それがある程度改善され、
AFC U-17サッカー選手権大会2004 テクニカルスタディグループ
須藤茂光(技術委員会委員/ナショナルトレセンコーチ)
、池内豊・上野展裕・内田一夫・望月一仁(以上、
ナショナルトレセンコーチ)
1. 基本レベル
(1)サッカーの本質
改めては挙げないファクターとなっていた。また、パススピードの
高さだけではなくタイミング、精度などさまざまな要素を含め、状
況に応じた「パスの質」という表現に変えていた。その反面、今回
決勝戦 U-16中国代表 vs U-16朝鮮民主主義人民共和国代表 © Jリーグフォト㈱
の大会では再度パススピードの欠如がクローズアップされた。ここ
場面が少なかった。アプローチをするものの簡単に振り向かせてし
で再び強く意識し直して、取り組まなくてはならないファクターで
まったり、リアクションになってしまい、足先でボールにいく状況
全体的にショートパス
ある。一時期、改善されたと感じられたファクターに関しても、引
になってしまうので、マイボールにならなかった。
に比べてミドルパスや
き続き意識を持ち続けることが必要である。
ロングパスの精度が低
それには、ボール状況と味方の状況を見て判断することから始ま
り、相手の状況の変化にどう対応し、そして、最後にチームのコン
どのチームもゴールを意識しながらプレーしていた。ドリブルで
く、種類も少ない。そ
積極的に攻撃をしかける意識が高く、守備から攻撃への切り替えの
のため、一瞬の隙をつ
アジア全体がコンパクトな組織的なサッカーを目指す中で、攻撃
速さについても、前線選手の動き出しの速さを意識しているチーム
く勝負のパスや効果的
に与えられる時間とスペースは限られたものになっていた。相手が
いと、本質である「ボールを奪う」
「ゴールを守る」ことができない。
が多かった。また、上位チームでは自分のドリブルの「型」をもっ
なサイドチェンジのパ
素早くプレッシャーをかけてくる中で、自分の形に持っていくには、
判断を伴って奪うことを、日ごろからトライしていかなくてはなら
ており、自信を持ってしかけていた。しかし、全体的な印象として
ス、とくに、クロスボ
最初のボールタッチで正確にコントロールすることが大切である。
ない。
プレースピードのコントロールができずに、ダイレクトになりすぎ
ールの質と精度に課題
しかし、ただボールを自分の足元に置くだけで、プレーが制限さ
て技術的なミスや判断のミスにつながり、サッカーが慌しくなる傾
が見られた。ゴール前
れて多種多様なプレーの選択ができない状況が多く見られた。多種
向があった。
でフリーな選手がいる
多様なプレーの選択ができるようにするには、動きながら状況に応
この大会も、組織化されたボール中心の厳しい守備が目立つよう
にもかかわらず、サイ
じたファーストタッチが重要になってくる。これには、意識と技術
になった。このような強固な守備を破るためには、組織だった攻撃
ドを突破して、フリー
の両面からのアプローチが必要である。高いプレッシャーがかかる
と個人の積極的なしかけが必要である。ましてや、この年代はパス
中でも発揮できるよう、日ごろのトレーニングやゲームでのコーチ
の質やサポートの能力が低いので、個人の突破力が重要な攻撃の要
ングで高めていかなくてはならない。
素のひとつとなる。
サッカーというボールゲームにおいて、攻守の切り替わり時は、
前線の選手の質の高い素速い動き出しとボール保持者との連携によ
りビッグチャンスが生まれる瞬間であり、この瞬間のダイレクトプ
U-16日本代表 vs U-16朝鮮民主主義人民共和国代表 © Jリーグフォト㈱
な状態であっても適当にクロスを上げてしまうことも多かった。
(3)ファーストタッチ
セプトと個人の判断が融合して、1対1の守備をしていかなくてはな
らない。これには、日ごろのトレーニングから判断や駆け引きがな
3. 1対1の攻撃 ∼ドリブル、しかけ∼
レーはカウンター攻撃の基本である。しかしながら、攻撃のすべて
日本も確実につなげる場面でも、簡単にラフなパスに走ってしま
がカウンターアタックではボールを失うことが多くなり、必然的に
う場面が多く見られた。しかも、そのラフに相手DFラインに入れる
ボールがしっかりコントロールできることで、自信をもって顔が
ドリブルで積極的に攻撃をしかける意識や前を向いてプレーする
守備をしている時間が多くなってしまう。
パスでも、明確な意図、狙いを持ったキックや種類が少なかった
上がり、状況を観ることができ、そのことが判断を伴うプレーにつ
意識は高く、自分のドリブルの「型」を持っているFWが個の能力
(例えば、前線のスペースを生かすために、スペースに落とすキック
ながる。朝鮮民主主義人民共和国のMF⑧リ・チョルミョンをはじめ
で闇雲にゴール方向にプレーする傾向があった。状況に応じてのド
とする各選手は、前を向く意識が他のチームと比べて明らかに差が
リブルの使い方やスクリーンの技術・戦術が課題であるが、朝鮮民
主主義人民共和国の選手は優れていた。
また、自チームがボールを保持し攻撃しているときは、ゴールに
直結したプレーを選択することが望ましいが(FWへ深い位置への
やアウトボールにならないキックなど)
。
パスや相手DFの背後へのパスなど)
、相手の守備組織や個人の状況
その中で、朝鮮民主主義人民共和国や韓国などは比較的質の高い
あった。スペースがなくても、前を向く意識が高く、前を向けなく
に応じ、一瞬の隙を見逃さずに攻める戦術眼と技術の精度が要求さ
パスを前線に入れていた。朝鮮民主主義人民共和国は30m∼40m程
ても身体を使ってスクリーンしながら前を向くチャンスを狙って向
日本はサイドにスピードある選手が多くいて、スピードある積極
れる。局面を突破し勝負のプレー(ラストパスやその1∼2つ前のプ
度のパスをインサイドキックで確実につないでいた。しかも、グラ
いていた。また、技術的にも高いパススピードでしっかりとパスを
的なしかけが見られた。しかし、中央突破とサイドを上手にしかけ
レー)をしかけるのか、より良い状況を作り出すためにアタッキン
ウンダーでスピードある精度の高いパスを供給していた。最終ライ
つなぐことで、狭いスペースでも積極的に前を向いていた。
ながらの柔軟なしかけが見られなかった。ただ、ミスは見られたも
グサードへボールを運び直すのかの判断が重要になる。最終的に勝
ンでのビルドアップ、中盤でのサイドチェンジ、FWに入れるくさ
負を決するのは、アタッキングサードでのプレーの質に凝縮される
びのパスやラストパスのスルーパスなど、あらゆる場面でインサイ
が、アタッキングサードにより良い状況でより数多くボールを運べ
ドキックを用いて、質の高いサッカーをしていた。速いパスが正確
なくては、決定的なシュートチャンスが多くは生まれない。
サッカーの本質である「ゴールを守る」
「ボールを奪う」
「ゴール
これも毎回挙がる課題であるが、重要性を再確認して高いレベル
でより徹底していかなくてはならない。
らの駆け引きができるような対応などが課題となって現れていた。
っていた。
アジア全体が「組織化された守備」の意識は高かった。リトリー
このように、積極的なしかけがあるからこそ次の課題が見えたので、
ころで冷静に闘える選手の育成が大切であることを再度痛感させら
ルが多かった。浮いたボール
2つを併用しながら状況に応じて使い分けるチームと3つのタイプに
れた。
やバウンドしたボールは受け
分けられていた。
トしてゴールを固めるチーム、積極的に前から奪いに行くチーム、
手のコントロールに時間がか
ボールを奪うことを目的としたアプローチはできていたが、相手
かるだけでなく、コントロー
の状況の変化に対応ができていなかった。粘り強く対応する選手が
キックの質(スピード・距離・精度)はアジア全体が上がってき
ルできるタイミングが限ら
少なく、相手の状況にかかわらず簡単に奪いに行き抜かれる場面や、
たと思われる。しかし、試合状況下の中でのパスの質になると、ア
れ、DFに的を絞られやすくな
簡単に振り向かせてしまい、足先で奪おうとするため自分のボール
バウトなものとなって悪くなっていた。そのため、ゴールを奪うた
る。浮いたボールや遅いパス
にできていない場面が見られた。最後にはファウルで止める場面が
めのポゼッションやゲームを落ち着かせる(ボールを守る)ための
では、受け手が判断する時間
多く見られた。ただし、決勝トーナメント上位チームの対応は、諦
ポゼッションがうまくできない。とくに、ハイプレッシャーの中に
とスペースを奪ってしまうこ
めないプレーぶりも含め良かった。
おいて、攻撃の一歩となるセットアップパスが雑となっていたので、
とになり、攻撃がスピードダ
ゲームに落ち着きがなくなってしまう。そのため、ラフなキックに
ウンする原因となる。
トライする気持ちは今後も持ち続けていくべきである。
日本はボールを奪うときとゴールを守るときを使い分けていたが、
ボールを奪う意識が低かった。そのため、1対1の局面になっても抜
パススピードに関しては、
東南アジア諸国などショートパスをつなぐチームが見られたが、 「強化指導指針1998年版」以
40
状況を観て次のプレーを考えながらしかけることや、状況変化か
に入ることで、狭いスペースでも積極的に前を向くプレーにつなが
逆に日本は浮いているボー
終始走ってしまう場面が多かった。
かけによるビッグチャンスは多く生まれた。
2. 1対1の守備
を奪う」から逆算しながら、サッカーの駆け引きを学び、肝心なと
(2)パスの質(キックの質)
のの全体にしかけようとする意識は高かった。そのため、個人のし
かれることを怖がってしまい、積極的にボールを奪いにいけなかっ
U-16日本代表 vs U-16タイ代表 © Jリーグフォト㈱
た。ブロックは形成しているものの、積極的にボールを奪いに行く
U-16韓国代表 vs U-16オマーン代表 © Jリーグフォト㈱
41
第3回
クラブづくりを考えよう!
(財)
日本体育協会が行う
総合型地域スポーツクラブ
育成推進事業
∼サッカーをもっと楽しむために∼
図2 総合型地域スポーツクラブ育成推進事業の実施体制
市町村教育委員会
都道府県教育委員会
(広域スポーツセンター含む)
連携協力
市町村体育協会
育成支援
指導助言
育成指定クラブ
根本光憲(
(財)日本体育協会・生涯スポーツ推進部クラブ育成課課長)
○設立準備委員会の開催
○スポーツ指導者、クラブマネージャーの
配置
○スポーツ交流大会、スポーツ教室の
16)年度、文科省より「総合型地域スポー
はじめに
とりまとめを行っています。
ツクラブ育成推進事業」の委嘱を受け、こ
また、ワーキンググループとして各種事業
連携協力
情報提供
開催
情報提供
都道府県体育協会
地域スポーツクラブ育成委員会
○クラブ育成アドバイザーの配置及び
巡回指導
○都道府県クラブマネージャー研修会の開催
日本体育協会
地域スポーツクラブ育成委員会
総合型クラブ育成の基本方針、実施要綱
の策定、育成対象クラブの決定など事業
全体の取りまとめ。
○総合型クラブ啓発研修会の開催
地方企画班(6ブロック)
中央企画班
○先進総合型クラブ状況調査
○クラブミーティングの開催
(全国3地区)
○育成指定クラブの現地ヒアリング
○クラブ育成アドバイザーミーティング・セミ
ナーの開催
○広報活動
総合型地域スポーツクラブ(以下、総合
れまで国と日本体育協会がモデル事業にお
の具体的企画立案を行う中央企画班を設置
型クラブ/*1)の育成は、2000(平成12)年
いて培ったノウハウを生かし、都道府県体
するとともに、さらに全国6ブロックに地方
度に策定された国の「スポーツ振興基本計
育協会および市町村体育協会という民間の
企画班を設立し、都道府県体育協会に委嘱
画」の中で、生涯スポーツ社会の実現に向
スポーツ団体が中心となって、地域住民の
配置したクラブ育成アドバイザーとも連
けた、地域におけるスポーツ環境整備のた
主体的な総合型クラブ創設に向けた取り組
携・協力して育成指定クラブへの指導・助
協会に1名ずつ配置された"クラブ育成アド
計画的なクラブづくりが行えること。
援を受けることができ、2005(平成17)年
めの重点施策として「2010(平成22)年ま
みを支援していくことになりました。
言や既存総合型クラブの実態調査、情報収
バイザー"の存在です。育成指定クラブの設
●創設後の円滑なクラブ運営に向けて、2年
度の育成指定クラブの募集は、来年1月から
集を行っています(図1)
。
立準備状況に応じたきめ細かな指導・助言
以内に総合型クラブにふさわしい理念や目
実施する予定です。
はもちろん、これからクラブ化を目指す団
的(規約など)
、運営組織、活動計画、資金
でに、全国約3,000の各市町村において、少
なくとも1つは総合型地域スポーツクラブを
育成」という目標が掲げられています。
クラブ育成推進体制の整備
さらに、都道府県体育協会においては、
○普及・啓発及び情報提供事業
○その他
○情報ネットワークの構築
自立したクラブづくりを目指して
日本体育協会では、まず本事業推進のた
都道府県教育委員会(広域スポーツセンタ
体の発掘や市町村体協に対するクラブ育成
計画などが準備できること。
めの体制整備に着手しました。従来の生涯
ーを含む)との連携・協力の下、クラブ育
のノウハウの提供など、地域に根ざした地
●将来、自主的な運営が円滑に実施できる
今後、ホームページ(http://www.japan-
年に「21世紀の国民スポーツ振興方策」を
スポーツ推進専門委員会内にクラブ育成に
成に関わる諸事業を展開します。ただ、こ
域住民によるクラブ設立のサポート役とし
よう会費を徴収すること。また、必要に応
sports.or.jp/)上で、中央企画班員・地方企
打ち出しました。この中の生涯スポーツの
特化して携わる部会として、地域スポーツ
れまで都道府県体協、市町村体協では、競
て積極的にクラブ育成に取り組んでいます
じて、スポーツ教室などにおいて参加料を
画班員といったクラブ育成に関わる関係者
充実・推進では、生涯スポーツ社会の実現
クラブ育成委員会を設置(事務局内に生涯
技スポーツ支援を中心とした事業を展開し
徴収すること。
や各都道府県クラブ育成アドバイザーを紹
を目指して、スポーツのあるまち、スポー
スポーツ推進部クラブ育成課を新設)し、
てきたため、クラブ育成の分野に関するノ
●領収書などの証拠書類および帳簿が整備
介し、クラブ育成支援のサポート体制を強
ツによるまちづくりを念頭におき、国民の
地域スポーツクラブ育成の基本方策の策定、
ウハウを有していないところも少なくあり
でき、経理処理が適切に行えること。
化・充実するとともにネットワークを構築
スポーツライフスタイルの多様化、高度化
各種クラブ育成推進事業の実施要項の策定
ません。そこで、今回の事業の中で最大の
総合型地域スポーツクラブ育成推進事業
したスポーツニーズに対応した多種目、多
など、クラブ育成事業全般の推進について
キーパーソンとなるのが、各都道府県体育
における今年度の育成目標は、全国200か
2004(平成16年)度募集の結果、日本体
に必要となる実践的な内容を情報提供する
世代、多志向を包含した総合型地域スポー
所。加盟団体である都道府県体協や市町村
育協会に設置した地域スポーツクラブ育成
SCステーション(仮称)の作成やメール
ツクラブの育成や、スポーツ少年団を核と
体協と積極的に連携し、また、広域スポー
委員会において審査の上、兵庫県を除く46
マガジンの発行といったクラブ育成支援情
ツセンターを含む都道府県教育委員会の協
都道府県(*2)・243クラブを育成指定クラブ
報を構築します(2004年12月開設予定)
。
力なども得て、募集しました。
としました。この指定クラブの中には、単
日本体育協会では、生涯スポーツ社会実
また、日本体育協会では2001(平成13)
したクラブづくりの必要性を掲げています。
図1 日本体育協会 総合型地域スポーツクラブ育成推進体制
☆ ☆ ☆
(図2)
。
育成指定クラブの募集
します。また、総合型クラブの育成や運営
文部科学省(以下、文科省)では、1995
募集対象者は、主としてスポーツ活動を
一世代のサッカースポーツ少年団やサッカ
現に向けた国民の多様なスポーツニーズの
(平成7)年度から総合型クラブ育成モデル
行っているクラブ、チーム、サークルなど
ークラブが多世代型そして、他の競技も包
受け皿として、地域住民による地域住民の
の団体、青少年のスポーツ活動に取り組む
含して会員を拡充・拡大し、総合型クラブ
ための自立した総合型クラブが全国に数多
スポーツ少年団、その他総合型クラブの創
へ移行しようとするチーム・団体が含まれ
く育成・定着していくことを目指していま
設を目指すグループや団体(例えば、学校
ています。
す(*3)。
生涯スポーツ
推進専門委員会
地区事業−115地区−を展開、日本体育協
会は、1997(平成9)年度からスポーツ少
年団を核としたクラブ育成モデル地区事
業−22地区−を開始し、2002(平成14)年
北海道・
東北
度からは、スポーツ振興くじ助成による総
合型クラブへの発展、創設を目指す活動へ
九州
地域スポーツクラブ
育成委員会
関東
のクラブ創設支援事業−82クラブ−と、自
北信越・東海
指定されたクラブは、当該クラブの事業
グループ、地域の自治会、青少年団体、市
計画書および予算書を作成し、総合型クラ
町村体育協会など)としています。
ブを設立するために必要な活動について適
そして、以下の募集要件を満たすことが
中央企画班
主的な総合型クラブがより積極的なクラブ
活動を展開できるよう、必要な経費の一部
中国・四国
開放やスポーツ教室をきっかけに集まった
近畿
できることとしています。
正と認められた場合、1クラブあたり300万
円を上限として委託金が交付されます。こ
のうち、総合型地域スポーツクラブ設立に
を助成するクラブ活動支援事業−42クラ
●総合型クラブの創設に向けて、拠点とな
向けたクラブマネージャーや公認スポーツ
ブ−を展開してきました。
るスポーツ施設の確保など、市町村体育協
指導者の活動についても、事業経費(謝金)
会および必要に応じ都道府県体育協会の協
として認められますが、既存クラブの既存
力が得られること。
の活動については、対象外となります。申
●創設までの年間活動計画を作成するなど、
請は1年ごとに行いますが、最大2年間の支
しかし、スポーツ振興くじ売上げ減によ
る助成金原資の大幅な減もあり、事業遂行
に困難をきたしていたところ、2004(平成
42
地方企画班
(*1)地域住民が主体的に運営を行い、2種目以上の複
数スポーツ活動が行われ、かつ多世代(ジュニ
アと成人、ジュニアと中・高年齢者、青年と
中・高年齢者等々)が活動基盤を共にしている
クラブ。
(*2)兵庫県教育委員会の施策である「スポーツクラブ
21ひょうご」により、クラブ設立支援事業を推
進していることから、本事業への参画は見合わ
せている。
(*3)702市区町村において、1,117クラブが創設または
創設準備中。文部科学省スポーツ・青少年局生
涯スポーツ課調べ(2004.7.1現在)
43
特集②
審判員と指導者、
ともに手を取り合って…
C O O R D I N A T I O N
B E T W E E N
T H E
F I E L D S
O F
R E F E R E E I N G
A N D
U-19日本代表、
U-16日本代表
U-19日本代表チームスタッフ
(左より、吉田靖コーチ、大熊清監督、武田宣弘GKコーチ)
© Jリーグフォト㈱
U-16日本代表チームスタッフ
(左より、布啓一郎監督、安達亮コーチ、、加藤好男GKコーチ)
© Jリーグフォト㈱
世界を目指したアジアでの戦い
T E C H N I C A L
第5回 AFCユース選手権大会マレーシア2004報告
AFCユース選手権大会マレーシア2004
U-19日本代表(1985年1月1日以降生まれの選手で編成)は2003年4月から活動を開始、同年10月の1次予
吉田寿光(国際主審/SR)
選を全勝で通過し、同大会に進出。その後も海外遠征などを重ね、チーム強化を図った。
© Jリーグフォト㈱
新潟県での直前キャンプを経て、同大会に出場。グループリーグは3連勝で首位で準々決勝進出、カタールにPK
戦で勝利して、6大会連続7回目のFIFAワールドユース選手権への出場権を獲得した。
しかし、準決勝で韓国にPK戦で敗れ、3位で同大会を終えた。
9月25日から10月9日までマレーシア
開かれました。
ライン、⑤主審と副審のチームワーク、
で、AFCユース選手権大会が開催されま
そして、25日からグループリーグが始
した。ご存知の通り、日本は2005年FIFA
まりましたが、以後のスケジュールは毎
ワールドユース選手権への出場権を獲得
日7時からモーニングトレーニング、10
我々が普段から日本で指導を受けてい
しましたが、3位に終わるという結果で
時30分から前日の試合分析、18時から第
ることと大きな違いは何もなく、日本の
した。
1試合、21時から第2試合、深夜0時過ぎ
審判員にとっては、基本的で当然のこと
この大会にはAFCから16か国16名の主
にホテルに戻るという流れでした。この
ばかりでありました。
審と15か国15名の副審が指名されまし
ような大きな大会ではいつもそうなので
しかし、日本ではあまり言われていな
た。私は主審として指名され、グループ
すが、睡眠時間が短い上、早朝からのト
いレフェリーのパーソナリティやオーソ
リーグB・初戦イランvs中国、同グルー
レーニングもインターバルトレーニング
リティが下がらないような判定や振る舞
プ最終戦で1,2位をかけた戦いとなった中
などかなり厳しいトレーニングが1時間
い、カードも必要以上には出さないなど、
国vsカタール、FIFAワールドユース出場
半ほど続くので、過酷なスケジュールと
1試合を通してトータルで審判の権威を
権をかけた準々決勝戦・ウズベキスタン
なりました。
示せと言うことが常に根底に流れていた
⑥試合前の戦術的準備、⑦重大な決定的
vs韓国の3試合の主審と、グループリー
クアラルンプールではグループBとCが
グCの2試合で予備審判を担当しました。
1日おきに試合をしていくので、毎日試
そこで、大会を通しての審判員のスケ
合が行われましたが、グループB担当の
ジュールの流れと、レフェリーセミナー
主審1名がフィットネステストをパスで
今大会あるいは過去に経験した2000年
の要点、そして実際にピッチで笛を吹い
きずに、もう1名の主審が試合をコント
ツーロン国際大会(U-21)や2002年アジ
て感じたことの3点について報告したい
ロールできずに、またグループC担当の
ア競技大会(U-23)で笛を吹いて共通に
と思います。
副審もパフォーマンスが悪く、それぞれ
感じたことがあります。それは、日本の
24日、28日、27日に帰国させられました。
選手(若い年代に限ったことではありま
そこで本来は担当グループが決まってい
せんが)は、多少のボディコンタクト
試合は25日から始まりましたが、審判
ましたが、2グループを皆で賄うことに
(それがファウルであってもなくても)で
員は22日にクアラルンプールに集合しま
なり、私もグループリーグだけで4試合
すぐに倒れてしまったり、シャツを少し
した。23日は9時から17時までレフェリ
も担当するという、輪をかけての厳しい
引っ張られたりすると、自分からプレー
スケジュールについて
を止めてしまうということです。日本以
ついては日本でやっているのと同じく
外の選手には、多少のファウルをされて
7時からモーニングトレーニング、10時
VTRを使い、良かった点、改善する点が
も笛が鳴らない限りは前へ進もう、プレ
から13時まで再びセミナー、15時にジョ
細かく指導されました。
私はグループBとグループCが試合を行う
セミナーの項目は、①判定の一貫性と
クアラルンプールにそのまま残りました。
敬意を得るために、②オフサイド、③主
20時からマネージャーズミーティングが
審へのガイドライン、④副審へのガイド
44
B
D
0-1
勝点 得点 失点
差
9
7
0
7
0-1
0
0
3
-3
3-0
6
4
3
1
3
1
6
-5
ベトナム
0-1
マレーシア
0-3
1-0
3
ネパール
0-3
1-0
0-3
CHN
QAT
IDN
IRN
1-0
5-1
0-0
1-0
2-1
2-6
1
中国
2
カタール
0-1
4
インドネシア
1-5
0-1
3
イラン
0-0
1-2
6-2
UZB
SYR
IND
LAO
1-1
2-1
5-2
2-1
4
ランダで実施されるFIFAワールドユース
5
-3
選手権(以下、WYC)への出場権がかか
3
4
9
-5
る大会で、一次予選を勝ち抜いた16チー
1-0
KOR
THI
YEM
IRQ
1-1
4-0
0-3
2-1
2-0
1. はじめに
3
1-4
3-0
3
2
2-5
イラク
-9
4
7
ラオス
1
12
7
0
3
1-2
3
4
7
1-2
0-4
0
大熊清(U-19日本代表監督)
0-1
1-2
1-1
1
4-1
1-1
イエメン
5
2
4
インド
タイ
1
3
4
シリア
4
6
6
8
4
3
7
∼AFCユース選手権大会
マレーシア2004
7
2
韓国
差
差
ウズベキスタン
2
勝点 得点 失点
U-19日本代表
チームからの報告
勝点 得点 失点
1
第34 回を迎えるこの大会は、2005年オ
勝点 得点 失点
差
4
5
4
1
0-2
4
3
4
-1
リーグ戦を行い、上位2チームが決勝トー
0-2
0
1
8
-7
ナメントのベスト8に進出し、準決勝進出
9
7
0
7
の4チームが自動的に2005年WYCへの出場
2-0
※各グループ上位2チームが決勝トーナメント進出。
ムが4グループ(各4チーム)に分かれて
権を獲得できる大会であった。
【試合方式】
①グループリーグは前後半各45分、計90分間試合を行う。
日本は過去33回の大会において優勝は
②準々決勝以降は前後半各45分、計90分間試合を行い、勝敗が決しないときは延長戦(前後半各15分)を行う。
なく、WYCへの出場権獲得を最低限の目
延長戦でも勝敗が決しないときは、PK戦にて勝者を決める。
③3位決定戦のみ、延長戦は行わず、90分間で勝敗が決しないときはPK戦にて勝者を決める。
標に、最終目標はアジア初優勝を掲げて大
会に臨んだ。
■決勝トーナメント
A1
日本
B2
カタール
PK5-3
0
0
PK1-3
ウズベキスタン
D2
韓国
ーを続けよう、ゴールに近づこうという
D1
イラク
強い意思が感じられます。これからは日
C2
シリア
本選手がもっともっと逞しくなって、世
終わりにします。
3-0
2
C1
界の舞台で活躍することを願い、報告を
NEP
3-0
4
順位
C
MAL
1-0
日本
順位
ピッチに立って・・・
スケジュールになりました。試合分析に
レフェリーセミナーの要点
A
VIE
1
順位
ットネステストが行われました。24日は
れぞれの会場へとバスで出発しました。
JPN
順位
と思います。
ーセミナーが開かれ、20時30分からフィ
ホール・バルとイポーの担当審判員はそ
大会結果 ■グループリーグ
な判定の7つでした。
B1
中国
A2
マレーシア
延長
1
2
0
1
3
0
2. 大会での6試合
2
2
(1)グループリーグ①
vsネパール
大会の初戦、選手には「緊張は当たり前」
2
0
第2位:中国
0
1
と伝えたが、やはりチーム全体に固さは感
優勝:韓国
第3位:日本
<3位決定戦>
1
PK4-3
1
日本
シリア
第4位:シリア
※以上、4チームが2005年FIFAワールドユース選手権(オランダ)の出場権獲得
じられた。立ち上がり相手が引いてスペー
スがなく、かつファウル気味の激しい当た
りに攻撃リズムができず、高い位置でボー
ルを奪うという狙いも、相手がほとんどデ
ィフェンスラインから単純に大きなボール
を蹴ってきたため、チームとしてなかなか
45
U-19日本代表、U-16日本代表世界を目指したアジアでの戦い
□U-19日本代表チーム ∼AFCユース選手権大会マレーシア2004参加
半15分に⑫苔口卓也(C大阪)が相手ディ
Pos.
フェンスラインの裏に、良いタイミングで
セーフティとはグラ
中盤からパスを受け、ワンタッチでゴール
ウンドの悪さ、一発勝
にうまく流し込んで先制できた。先制した
負など含め、ディフェ
ことによってチームは落ち着きを取り戻し
ンシブサードでのセー
たが、相手の激しいプレッシャーに、自分
フティであり、中盤・
たちのリズムで試合が運べているという状
前線へのフィードなど
態ではなかった。
はつなぐ意識をもち、
GK
GK
GK
DF
DF
DF
DF
DF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
FW
FW
FW
FW
名前
所属
松井謙弥
ジュビロ磐田←ジュビロ磐田Y←ヤマハジュビロSC掛川←ジュビロSS掛川
西川周作
大分トリニータU18←大分トリニータU-15/宇佐FC JY←四日市南サッカー少年団
山本海人※1
清水エスパルスユース←清水エスパルスJr.Yジュニアユース←清水FC
増嶋竜也
FC東京←市立船橋高←生浜中←千葉南FC/生浜FC
吉弘充志
サンフレッチェ広島←広島皆実高←末武中/下松JSC←下松SC
水本裕貴
JEF市原←三重高←伊勢SC←御薗スポーツ少年団
柳楽智和
アビスパ福岡←立正大淞南高←出雲市立第三中←四絡SC
小林祐三
柏レイソル←静岡学園高←上里FC Jr.←松林少年SC
渡邊圭二
名古屋グランパスエイト←沼津学園高←愛鷹中←愛鷹サッカー少年団
寺田紳一
ガンバ大阪←ガンバ大阪Y←ガンバ大阪Jr.Y←TOM FC
中村北斗
アビスパ福岡←国見高←喜々津中/長崎FC←喜々津少年SC
苔口卓也
セレッソ大阪←玉野光南高←上道中←平島SS少年団
兵藤慎剛
早稲田大学←国見高←海星中←茂木SS少年団
梶山陽平※2
FC東京←FC東京U-18←FC東京U-15←東京ガスFC Jr./江東FC
中山博貴
京都パープルサンガ←鹿児島城西高←伊勢中←玉江SS少年団
萩洋次郎
サンフレッチェ広島←サンフレッチェ広島Y←植田中←植田SS少年団
高柳一誠
サンフレッチェ広島FCユース←サンフレッチェ広島FC←広島高洋FC
船谷圭祐※3
ジュビロ磐田←ジュビロ磐田Y←FC松阪Jr.Y←松阪第二サッカー少年団
平山相太
筑波大学←国見高←田原中←ながなが帝踏イレブン
カレン・ロバート ジュビロ磐田←市立船橋高←柏レイソルY←柏レイソルY
渡邉千真
国見高校←国見中←国見FCJ/多比良小
森本貴幸
東京ヴェルディ1969←ヴェルディユース←ヴェルディJr.Y←ヴェルディJr.
※1:バックアップメンバー、※2:けがのため不参加、※3:追加参加
この試合で感じたことは、中盤でボール
やってきたことをすべ
をキープできず、全体の動き出しのタイミ
て出すようにと伝え
ングが遅れてサポートが良くないというこ
た。また、カタールが
と。59分に途中出場の⑧中山博貴(京都)
がロングシュートで3点目を奪い試合を決
基 本
をしていた。得失点差を考えると、グルー
の力の差もあり、我慢の時間帯もあるであ
の残る試合になった。守備については、試
成力を上げたいというものであったが、単
プ1位がほぼ決定していたこと、選手の経
ろうということも伝えた。そして、あとは
合を通して相手のシュートは2本で、最後
純なパスミス、ボールを受ける前の情報収
験・コンディションも含め決勝トーナメン
選手自身の「勝ちたいという気持ち」「使
までやられたシーンはほとんどなく、全体
集の欠如、判断の悪さから、なかなかイニ
トで使える選手を増やすこと、選手の疲れ
命感」が大切だと試合に送り出した。
の意識は浸透していると感じたが、前線で
シアティブをもってゲームを運ぶことがで
などを考慮して大幅にメンバーの変更を行
のサイドへの追い込み・球際での厳しさ・
きなかった。
った。
隙をつく
リスタート
隙をつくらない
ボールストップ
早いリスタート
試合については、練習から意識させたロ
試合は、大会での第1試合目の選手が多
場面が多かった。相手のトップ下の⑩
く、アジアの大会も初めてという選手もい
Abdulla Waleedが力では飛びぬけたキーマ
は通用する⑨平山相太(筑波大)の高さか
て、立ち上がりから苦しい時間が続いた。
ンだったので、⑲高柳一誠(広島ユース)
ら、⑮ 萩洋次郎(広島)が押し込んで前
ただ、選手には「この大会、我慢も大切だ」
をマンツーマン気味につけた。2トップの
半で2-0とリードしたが、この試合もディ
と伝えてあった。国際試合では、いつも自
力も今大会で特出していて、ディフェンス
メント進出決定の大切な試合であった。マ
フェンスラインからの組み立ても含めて、
分たちのリズムでサッカーができるわけで
ラインが守備に気を使い、攻撃の切り替え
レーシアは、第1戦ベトナムとの苦しい試
中盤の攻撃の組み立て・ボール回しは、本
はない。苦しい時間帯を耐える力、そして
がなかなかできなかったことが、攻撃に幅
合をものにして波に乗っていた。この試合、
来のリズムをピッチで表現するまでには至
そこから勝利に持っていくメンタリティを
を持てなかった大きな要因になっていた。
第1戦の反省から中盤のメンバーを変更し
っていなかった。
選手個人が理解し、自分のものにしてほし
さらに、攻撃への2人目のメンバー交代も、
いという気持ちは強かった。
連戦の疲れとコンディションの不良から⑩
58分に引いた相手に前線で起点を多く
スローインのクロス
ショートコーナー
「全員の守備意識」
「ボール中心の守備」
「ボールを奪う
(攻撃の起点)
」
守 備
前線のコースを限定
プレスバックの
完成度を高める
クロスの対応
攻 撃
声
縦をきる、
ボール中心の守備
ワンツーの対応
1. プレーの優先順位
ダイレクトプレー・縦パス
(ポストプレー)
・サイドチェンジの速い判断
2. サイドチェンジ
3. 突破力・決定力
4. ワンタッチプレー
指示の声
無駄なファウルはしない
ミスを連続しない
ひたむきさ
すること、⑳森本貴幸(東京V)のゴール
コンディションの問題もあり、ボールへ
に向かう姿勢を期待し⑪カレン・ロバート
のアプローチの速さ・強さ、攻撃のサポー
(磐田)と交代した。相手が疲れて間延び
トの速さ・意識など、相手の方が早い場面
が、結果的には2人目交代の⑥船谷圭祐
してきたこともあったが、相手にとって嫌
が目に付いた。また、相手選手における、
(磐田)がある程度、中盤で冷静にボール
な仕事をしてくれた。そして、69分、⑳
日本のこの年代にはない「ボールを奪い合
を回してくれて、ゲームをコントロールし
森本が3点目を決めて試合を決定付けるが、
うときの粘り強さ」に戸惑っていたように
てくれたが、試合の流れを変えるまでには
グラウンド状態の悪さもあるが単純なパ
感じた。それで攻撃では自信を持ってキー
至っていなかった。相手の前線3人の力、
ス、トラップのミスや判断のミスが多い試
プできず、サポートも消極的になり、一歩
中盤の個人の力、前線の起点・交代枠など
合であった。
目が遅く、守備でも日本ではボールを奪え
含め、まさしく「我慢」の戦いであった。
チームとしての意思統一も必要だが、厳
るタイミングなのに奪えない。チームとし
試合の流れは1点勝負の流れであり、動き
しいプレッシャーの中での、止める・蹴
てもイニシアティブをもった試合をするた
たいけど、メンバー交代の3人枠もあり、
る・キープ・突破のさらなる向上が必要
めには、これらのレベルアップが欠かせな
動くタイミングを見計らっていた状態が続
で、それらができる選手とできない選手の
いと感じた。
いた。
(4)準々決勝 vsカタール
守に頑張ってくれた⑪カレンを⑳森本に交
差が如実に現れた試合であった。
高い位置・良いタイミングでボールを奪う
らサイドでの数的優位を作ること、クロ
ことができなかった。
ス・シュートも含むワンタッチプレーを入
このような試合展開で、相手が引いてい
てダイレクトプレーができない場合、ディ
フェンスラインや中盤でボールを回しなが
46
(3)グループリーグ③ vsベトナム
れること、ロングシュートを狙うことなど
を徹底した。
立ち上がりから膠着状態が続いたが、前
システムは、日本もカタールも1-3-5-2
ということで、個人でのマッチアップする
ングシュートで⑫苔口が先制し、アジアで
ボールの奪う位置など、さらなる追求が必
第2戦のこの試合を勝てば、決勝トーナ
ボールを奪う・ゴールを奪う・ゴールを守る
の大会と言えるぐらい
て試合に臨んだ。狙いは中盤での攻守、構
(2)グループリーグ② vsマレーシア
「Be Alert !」
「連続性・連動性」
「攻守の切り替え」
「3ゾーンでのプレー」
グループリーグとは別
U-19日本代表、2005年FIFAワールドユース選手権出場権を獲得 © Jリーグフォト㈱
めてくれたが、攻撃ではとくに中盤に不満
要と感じた試合であった。
代表としての誇りと責任
チームの中で個性を生かす
チームコンセプト チームメイトを理解し、助け合う
勝利に向かって、ひたむきに闘う
コミュニケーション
を伝えた。
U-19日本代表 vs U-19カタール代表(2004年10月3日)© Jリーグフォト㈱
兵藤慎剛(早大)の足が痙攣していたため、
時間帯を遅らせなければならなかった。だ
延長に入り1点を取りに行くために、攻
WYCへの出場権がかかる、勝てば世界
代したが、相手の厳しいマークもあり決定
ベトナムは結果が出ていなかったが、こ
を経験できるし、負ければ失うものが多い
機がなかなかできないままPKに突入した。
のグループで一番技術がしっかりしてい
という試合であった。選手には、戦術と同
PKで勝ち、WYC出場権を勝ち取ったが、
て、中盤もきちっとつないでくるサッカー
時に『セーフティ』と『我慢』ということ
今大会でのカタールはフィジカルの強さを
47
U-19日本代表、U-16日本代表世界を目指したアジアでの戦い
ったが、決定機まではなかなか作れないた
め、中盤のメンバーを代えてシステムも14-4-2に変更した。結果、流れは変わった
が、点を入れるまでには至らず、最後FW
の枚数を増やし、点を取りに行った。そし
てロスタイム同点に追い付いた。
延長に入り、韓国は完全に足が止まり、
うになってきた。
○厳しい試合を重ねたことで、選手間のコ
ミュニケーションが良くなった。
○ゲーム体力(ゲームのプレーの質、厳し
さはまだまだ)
4. 課題
5. 総括
グループリーグでの相手のレベルが、決
来年6月のWYCには現在の高校3年生もプ
ン・カタールなどの力は非常に高く、今後
ロになり、新しい競争が生まれることを期
どのカテゴリーでも怖い存在になると痛感
待したい。
した。
勝トーナメントと比較すると比較的低かっ
試合の内容を検証してみると、ボールを
たため、準々決勝以降は別の大会のような
奪う厳しさ、プレッシャーの中での止め
レベルであり、選手たちは緊張もあったと
る・蹴る、キープ・ドリブルなどの技術、
思う。その中で出場権を獲得した選手たち
パスの受け方、決定力、指示の声など、ま
だまだ向上が必要なことも多かった。しか
チャンスはあったが決めきれず、逆にワン
○厳しい・激しいプレッシャーの中で、止
は、良くがんばったし大きな財産を得たと
チャンスを韓国に決められた。しかし、再
める・蹴る・キープ・ドリブルなどのプ
思う。しかし、課題にも挙げたが、個・チ
し、「全員守備・全員攻撃」の全員守備は
びロスタイムに右サイドからのクロスを⑨
レーやクリエイティブなプレーが出せな
ームとして、まだまだやるべきことが多い
浸透し、ピッチである程度表現できたし、
平山が決めて2-2で試合が終了し、PKの末、
い(本当の意味での闘いに慣れていな
のも現実である。この大会を経験し、代表
チームとしての我慢や粘りも以前より向上
優勝への道が閉ざされた。
い)。
権を獲得したことでさらなる高い目標と意
したと感じる。ただ、攻撃への切り替え・
全体的には押される時間帯の多い試合で
○高いレベルでのフィジカル (この年代は
識をもって、日々のトレーニングに打ち込
勇気・工夫・高い技術などは、個・チーム
あったが、2度ロスタイムに追い付いた粘
試合に出ている選手が少なく、フィジカ
んで欲しいし、チームとしても強化してい
ともに大きな課題は残ったと感じる。今後、
含め、一番怖いチームであった。決定力な
り強さは、今後チームの大きな財産になる
ルだけでなく成長が鈍化している)
きたい。
所属チームともコミュニケーションをとっ
ど含めると一番強いチームといえるかは疑
と感じた。
U-19日本代表 vs U-19韓国代表(2004年10月6日)© Jリーグフォト㈱
案して考えると、今後も非常に嫌な相手に
なることは間違いないと感じた。
(5)準決勝 vs韓国
(6)3位決定戦 vsシリア
選手の選考も再度検討すべき点が多いと感
年WYC出場権は中国・韓国・日本・シリ
じた。しかし、逆に期待以上に通用した選
アであるが、各チームの力を見てみると代
会、中盤が機能しなかったことが大きな問
盤・ディフェンスラインの選手のボール
手もいて、今後期待できる部分もあった。
表権は獲得できなかったが、イラク・イラ
実力的には妥当な準決勝での対戦であり、
ディフェンスラインのボール回しが消極的
日本にとっては乗り越えなくてはいけない
だったので、これらの問題を勘案しつつ、
壁であった。韓国との対戦ではとくに気持
メンバーの選考・戦術の徹底を図った。
試合は相手のプレッシャーの緩さもあっ
たが、前線の起点も多く中盤も機能し、こ
だが、試合に入ると韓国の激しい当たり
の大会で一番イニシアティブをとって試合
にボールを失うことが多く、中盤で前を向
ができた。しかし、前半のオウンゴールで
けることができず、前線での起点もなかな
流れが変わり、国際試合の怖さをこの試合
か作ることができなかった。また、前線へ
でも選手は感じたことと思う。内容的にも
の高さの部分でも、相手に跳ね返されるこ
中盤から縦パスも多く入り、中盤も含め高
とが多く、ルーズボールも拾うことができ
い位置での攻撃の起点が多く、中盤の飛び
なかった。しかし、これは我慢の時間帯で
出す回数も多かった。また、ディフェンス
韓国のプレッシャーも時間とともに緩くな
ラインのビルドアップの積極性なり中盤と
ると思ってはいたが、そのまま流れを変え
のコンビネーションも、以前の試合より良
られずに前半に1失点してしまった。相手
かった。
後半からメンバー交代や1-4-4-2へのシ
ステム変更も考えたが、前線のがんばり、
ディフェンスラインのボール回し、中盤の
を変えられる)
○身体の使い方(臀部・手など)
○パスの質とスピード
○指示の声
AFC U-17サッカー選手権大会2004
U-16日本代表(1988年1月1日以降生まれの選手で編成)は2003年5月から活動を開始、今年前半には早生まれ
選手のセレクションを行うなど選手の発掘・育成を行い、フランス、イランへの遠征や今夏の国際大会でチーム強化を図
ってきた。
同大会、日本は優勝した中国にグループリーグ最終戦で勝利するが、2試合目タイ戦での敗戦が響き、得失点差で3
位。この結果、2大会ぶり4回目となるFIFA U-17世界選手権(2005年/ペルー)への出場権獲得はならなかった。
U-16日本代表
チームからの報告
∼AFC U-17
サッカー選手権大会2004
布啓一郎(U-16日本代表監督)
3. 成果
○ダイレクトプレー(引いた相手などポゼ
と同じ1-3-5-2のシステムで後半に入るこ
ッションとの使い分けは課題が残った)
48
手は選択肢が多いし、ぎりぎりで選択肢
WYCに向けての鍵になると痛感した。
し、メンバーを変更せず、システムも前半
前半よりは、攻撃の形はできるようにな
の受け方も問題があった。
レッシャーの中でもできるかどうかが
○チーム全体のボールを奪う意識。
1.大会全般
AFC U-17サッカー選手権大会2004は今
回で12回目になる来年のFIFA U-17世界選
○セットプレー・クロスの対応。
○チームとして厳しい試合を我慢できるよ
U-19日本代表 vs U-19シリア代表(2004年10月6日)© Jリーグフォト㈱
○プレーの選択肢の乏しさ(外国の良い選
今後この試合でできたことが、激しいプ
サイドチェンジ・サポートなどの指示を出
とにした。
たのが、中東の国々の台頭である。2005
気がない)。前線の選手だけでなく中
る糸口を見出したいと考えていた。そして、
低でも0-1で折り返そうと考えていた。
最後に、大会全体を見てみて痛切に感じ
しい試合で機能しなかったことは、今後、
ースで受けられない・前を向けない・勇
題であったし、その問題をチームが解決す
の力・状況から、まず2失点目を避け、最
て、成長の加速を少しでも上げたい。
優勝はなくなったが、来年6月のWYCに
韓国はグループリーグ含めて、非常に苦
合は非常に難しくなると考えていた。
○ボールの受け方(引いた相手・狭いスペ
この大会に向けて、けがで中盤の選手選
考に苦慮した。その中、選出した選手が厳
向けて大切な試合であった。とくにこの大
しんでここまで勝ち進んできた。しかし、
ちが大切であり、気持ちで後手になると試
○判断(状況判断・サポート・情報収集な
ど)
念もあるが、選手個人のポテンシャルを勘
U-19日本代表 vs U-19韓国代表(2004年10月6日)© Jリーグフォト㈱
本は過去にこの予選を突破したのは2回し
いただき日本開催を実現したが、中国・朝
かなく(1994年と2000年)
、この年代が日
鮮民主主義人民共和国・タイの4か国での
本サッカーの育成のエアポケットとなって
グループリーグで1勝1敗1分け=勝ち点
いるとも言える。なかなか出場できない原
4=、同じ勝ち点4の朝鮮民主主義人民共
因は中学校から高校への受験期のハンディ
和国との得失点差1により、またもやグル
キャップ、16歳年代に公式戦がなくゲー
ープリーグを突破できずに敗退してしまっ
ムから遠ざかる選手が多くなること、16
た。決して、日本チームが他国に対して劣
歳で1つのゲームに多くの責任を持って闘
っていたとは考えられないが、アジア予選
うことがないので、リーダーシップやゲー
を突破させられなかったのは、チームの指
ムの流れを読むプレーができていないな
揮をとった監督に多くの責任があると思わ
ど、単に技術・戦術や身体の成長だけにと
れる。
どまらない原因があると思われる。
今回の大会を終えて、アジア各国のレベル
手権(ペルー)につながるアジア地区予選
今回は少しでもアジア予選突破の確率を
差も確実に縮まっており、日本が劣っている
であり、アジアの出場枠は3であった。日
上げるために多くの方々のバックアップを
わけではないが、決してリードしていること
49
U-19日本代表、U-16日本代表世界を目指したアジアでの戦い
□U-16日本代表チーム ∼AFC U-17サッカー選手権大会2004参加
Pos.
GK
GK
GK
DF
DF
DF
DF
DF
DF
DF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
MF
FW
FW
FW
FW
名前
長谷川徹
権田修一
川原隆広※
植田龍仁朗
松井陽佑
大島嵩弘
吉本一謙
金子拓也
森村昂太
渡邉昌成
青山隼
堂柿龍一
鈴木達矢
内田篤人
中島良輔
中野遼太郎
倉田秋
小澤竜己
喜山康平
平繁龍一
伊藤翔
く行い、前半より一歩寄せる意識を持つこ
大会結果 ■グループリーグ
CHN
順位
所属
名古屋グランパスエイト←名古屋グランパスエイト←瀬戸SC
FC東京U-18←FC東京U-15←さぎぬまSC
佐賀東高校←塩田中←塩田JFC
ガンバ大阪ユース←ガンバ大阪門真SC←門真SC
岐阜工業高校←SC岐阜VAMOS←各務原FC/尾崎SS少年団
柏レイソルユース←柏レイソルJr.Y←野田FC
FC東京U-18←FC東京U-15←JCPA東京FC
JEF市原ユース←JEF市原Jr.舞浜←フッチSC/矢切SC
FC東京U-18←FC東京U-15←BS少年SS
ジュビロ磐田ユース←ジュビロSC沼津←伊東少年SC
名古屋グランパスエイト←FCみやぎバルセロナ←館キッカーズスポーツ少年団
関西学院高等部←ガンバ大阪Jr.Y←ガンバ大阪Jr.
川崎フロンターレU-18/ジュビロ磐田Y←川崎フロンターレU-15←リバーFC
清水東高校←函南中←田方FC/函南SS少年団
ジュビロ磐田ユース←FCジョカトーレ関/SC岐阜VAMOS←中濃FC/金竜SS少年団
FC東京U-18←FC東京U-15←JCPA東京FC/小平八小アベリアFC
ガンバ大阪ユース←ガンバ大阪Jr.Y←FCファルコン
青森山田高校←名古屋FC←名古屋GJ
ヴェルディユース←ヴェルディJr.Y←読売日本SC Jr.
サンフレッチェ広島ユース←サンフレッチェ広島Jr.Y←サンフレッチェ広島
中京大学附属中京高校←FCフェルヴォ―ル愛知/小牧FC/名古屋グランパスエイト←名古屋FC/アクアJr.FC春日井
A
1
中国
3
日本
3-1
2
朝鮮民主主義人民共和国
1-2
4
タイ
順位
B
と、また前半得点を奪った後にアタッキン
6
5
5
0
1-2
4
4
3
1
グサードでの難しいプレーを奪われてカウ
4-1
4
5
3
2
ンターを受けていたので、周りのサポート
3
4
7
THI
1-3
2-1
2-1
0-0
0-0
-3
とコミュニケーションをしっかり行い、ボ
勝点 得点 失点
差
ールを動かしてアタッキングサードでしか
9
12
0
12
1-2
0
2
5
-3
0-2
3
2
11
-9
しかし、後半12分にCKをプッシュされ
6
4
4
0
て先行を許し、その後、交代とフォーメー
勝点 得点 失点
差
ションの変更で積極的に攻撃に出たが、1
1-2
2-1
1-4
KOR
VIE
LAO
OMA
1-0
8-0
3-0
1-2
韓国
4
ベトナム
0-1
3
ラオス
0-8
2-1
2
オマーン
0-3
2-1
2-0
IND
MAL
KUW
IRN
2-1
1-2
0-1
3
3
4
-1
0-0
0-5
1
1
7
-6
点が奪えずに1-2でゲームを失ってしまっ
1-3
4
3
4
-1
た。
9
9
1
8
3
インド
4
マレーシア
1-2
2
クウェート
2-1
0-0
1
イラン
1-0
5-0
3-1
UZB
QAT
IRQ
BAN
2-2
1-4
1-1
1-0
順位
D
差
PRK
1
順位
C
勝点 得点 失点
JPN
3
ウズベキスタン
1
カタール
2-2
2
イラク
4-1
0-1
4
バングラデシュ
1-1
1-6
1-3
勝点 得点 失点
差
2
4
7
-3
6-1
7
9
3
6
タイが朝鮮民主主義人民共和国に対して
3-1
6
7
3
4
引き分け以下であり、得失点差を考えると
1
3
10
-7
2点差以上で勝つことがグループリーグ突
※各グループ上位2チームが決勝トーナメント進出。
①グループリーグは前後半各45分、計90分間試合を行う。
U-16日本代表 vs U-16中国代表(2004年9月8日)© Jリーグフォト㈱
基本的にはお互い1-4-4-2のフォーメー
②準々決勝以降は前後半各45分、計90分間試合を行い、勝敗が決しないときは延長戦(前後半各15分)を行う。
延長戦でも勝敗が決しないときは、PK戦にて勝者を決める。
ションであるが、ともにサイドMFを高い
③3位決定戦のみ、延長戦は行わず、90分間で勝敗が決しないときはPK戦にて勝者を決める。
頭も身体もハードワーク
攻 撃
闘える選手
守 備
3ゾーンの意識
個人
声を出せる選手
グループ
ダイレクトプレーの意識
(ダイレクトプレーを常に意識したポゼッション)
動き出し∼連携・セカンドアクション
ポジションのモビリティ
(人を越えていく)
バイタルエリアの崩し
サイドの崩し、クロスの狙い、ゴール前の準備
フィニッシュとリバウンド
隙を突き、隙をつくらない
攻守の切り替えの速さ
個人
動き、プレッシャーの中でのボールコントロール
キックの質
ゴールを向き、向かって狙う
フィジカルコンタクト
(腕を含む身体の使い方)
位置に配置し、攻撃的にゲームを進める意
朝鮮民主主義人民共和国にボールを支配
チームコンセプト
個人で守ることができる
速いアプローチと1対1の対応
フィジカルコンタクト
(身体を張ることができる)
ヘディング、タックル
グループ
プレーを連続で
できる選手
ファーストディフェンダーの明確化
マークの受け渡し
背後の守備(360度のゾーン感覚)
ブロック形成(ボール中心の守備)
ラインコントロール
リスクマネージメント
(3mコンセプト、GK
ブレイクアウェイ、GKとの連携→プロテ
クト&カバー)
されたのは、コンタクトを伴うプレーで劣
■決勝トーナメント
勢になり、セカンドボールを相手に奪われ
A1
中国
て、ボールを前にフィードされていくうち
B2
オマーン
C1
イラン
D2
イラク
を拾われて二次攻撃を受け、相手の前に対
D1
カタール
してのパワーを出されてしまった。
C2
クウェート
に、全体が下がり過ぎてしまったことによ
る。そのことで、相手ボランチに対してプ
レッシャーが甘くなり、跳ね返したボール
後半は、センターDFの前でゲームを作
るボランチ(⑥ナム・ソングクまたは⑧
図があった。勝つことが最低条件の日本は、
1
0
3
0
4
3
PK7-6
B1
韓国
A2 朝鮮民主主義人民共和国
0
1
立ち上がりから前線からプレスをかけて、
高い位置でのボール奪取を図り、ややリズ
3
0
ムをつかみかけるが、自陣でのセンター
DF間の不用意なパスを相手FWにインター
1
0
0
0
第3位:カタール
2
1
カタール
イラン
※上位3チームが2005年FIFA U-17世界選手権(ペルー)
の出場権獲得
うにいかないゲームになってしまった。
ブルの組み合わせで一進一退の展開になる
が、前半27分にスローインから⑦鈴木達
(2)グループリーグ② vsタイ
お互いに勝ち点3がほしいゲームであり、
也(川崎フロンターレU-18)がワンタッ
チで、逆サイドの⑨堂柿龍一(関西学院)
高い位置に基点を作ることを目標とした。
負けるとグループリーグ突破がないタイは
に出して、そのままDFと入れ替わり、待
望の先制点を奪うことに成功した。
しており、フィジカルも強く、身体の使い
しかし、相手の速いプレッシャーに対して、
1-4-4-2から1-4-3-3の攻撃的なフォーメー
中での技術の発揮においては、もっと精度の
方もうまかった。
思うようにボールを動かせない時間が続い
ションになってきた。また、日本は1-4-4-
しかし、先制したことでかえって消極的
た。
2とフォーメーションは変わらないが、第
になってしまい、ボールプレスが甘くなり、
に勝つことはできないと思われた。
日本は前半、初戦の固さや雨によりピッ
チがスリッピーであったこともあり、ファ
後半の半ばを過ぎて、ようやくボールポ
1戦から5人を入れ替えてゲームに臨んだ。
タイにリズムを作られてしまった。前半
ーストタッチが安定せずにボールポゼッシ
ゼッションが良くなり、少しずつではある
緊張感のあった第1戦とは違い、立ち上
40分を過ぎてからのFKの守備で壁が機能
ョンが正確に行えなかった。そして、相手
がリズムをつかみ、シュートまで持ってい
がりはボールへの反応も速く、タイの不安
していなかったり、我慢しきれずに身体を
の正確で速いボールポゼッションに対して
けるようになってきた。得点チャンスもあ
定なDFラインとボールウォッチャーにな
投げ出してしまうなど、細かいところでの
朝鮮民主主義人民共和国、日本ともに1-
ボールプレスが後手になり、効果的なボー
ったが、全体としては朝鮮民主主義人民共
ったところを突いて決定機を作るが、得点
隙が出て、前半ロスタイムにPKを与えて
4-4-2のフォーメーションであった。朝鮮
ルの奪い方ができずに、攻撃にも厚みを作
和国の精度の高い「止める、蹴る」の技術
に至るまではいかなかった。タイも徐々に
同点で折り返しになってしまった。
民主主義人民共和国は基本技術がしっかり
れなかった。
とフィジカルコンタクトの強さに、思うよ
ペースをつかみ出し、ショートパスとドリ
2.試合報告
(1)グループリーグ① vs朝鮮民主主義人民共和国
50
半に半ばくらいからつなぎながら攻撃の厚
みを少しずつ作れるようになり、FKから
はないと思われた。そして、プレッシャーの
高さを追求していかないとアジアの中で確実
し、チーム全体として崩れることなく、前
第4位:イラン
かをはっきりさせることを指示した。攻撃
で厚みを作り、バイタルエリアとサイドの
<3位決定戦>
第2位:朝鮮民主主義人民共和国
して、日本のボランチがついていくのか、
では、ボールを動かしながら速いサポート
セプトされて、先制されてしまった。しか
優勝:中国
リ・チョルミョンが交互に顔を出す)に対
またはFWが1人下がってきて対応するの
(3)グループリーグ③ vs中国
破の条件になる第3戦であった。
【試合方式】
※はバックアップメンバー
けていくことを狙わせた。
後半はブロック形成からアプローチを速
U-16日本代表 vs U-16朝鮮民主主義人民共和国代表(2004年9月4日)
© Jリーグフォト㈱
51
U-19日本代表、U-16日本代表世界を目指したアジアでの戦い
のセカンドボールをキャプテン
ような選手の育成が必要になる。
⑤青山隼(名古屋グランパス)
がゲットして、一進一退で前半
(2)プレッシャーのある中での正確なビル
を終了した。
ドアップと、ボランチのビルドアップ能力
た。逆に、日本はプレッシャーを受けると
を高めることが必要になる。
キックの精度が落ちたり、前線へのフィー
グループリーグ1、2戦において、朝鮮
ドか確実なポゼッションかの判断が悪く、
ドアップ
民主主義人民共和国とタイは自陣から無理
数的に不利なのにFWに放り込んでしまう
後半の立ち上がり、左サイド
アタッキングサードだけに関わらず、プ
なロングフィードをすることは少なく、ボ
などの場面が多くなってしまった。このよ
のFKで相手の守備の組織がで
レッシャーの中でのDFラインからのビル
ランチを含め確実にボールを動かしてい
うになった要因はボールを受ける前の準備
きていない隙を突いて、素早く
ゴール前に上げたボールを⑮伊
GKプレーの報告
藤翔(中京大附属)が蹴り込ん
加藤好男(U-16日本代表GKコーチ)
で2-1とリードした。この相手
の隙を突くプレーは、選手の判
断で行ったプレーであり、流れ
1. 活動、選手選考について
3. GKプレー考察:
4. 大会総括
2大会ぶりのFIFA U-17世界選手権を目指したU-16日本代表、グループリーグで得失点差により準々決勝進出を前に敗退。 © Jリーグフォト㈱
の中で相手の隙を突けたことは
2003年5月に立ち上げたチームは、2003
○全試合出場した権田は、大会全般にお
○GKからのビルドアップにおいて左下表
が得点につながったと思われる。その他で
ゲームの終盤は相手の足が止まり、何回か
年度における活動は少なかった。しかし
いて終始安定したプレーを発揮してく
のデータを見ると60%以上がボールを
その後、追加点を狙って攻撃的な姿勢を
も動き出しの早さと、1回でアクションを
得点機を得たがゴールは割れなかった。
ながら、U-16という一つ上の活動の中に
れた。シュートストップ、ブレイクア
失ったこととなり、試合のリズム、流
崩さずにゲームを進めたが、中国との一進
終わらずにセカンドアクションを起こして
半数の選手が混ざり、国際試合に参加す
ウェイ、クロスの状況下において大き
れに対し悪影響を及ぼしたといえる。
一退のゲーム展開は変わらなかった。他会
いくプレーも出せていた。
ることによって経験を得た。
なミスもなく、数回にわたるファイン
○U-16年代は精神面でも不安定であり、
評価できると思われる。
場の朝鮮民主主義人民共和国vsタイのゲー
ムが3-0から4-1で朝鮮民主主義人民共和国
また、2戦目のタイ戦で1点を追いかけ
る場面では、3∼4回ビッグチャンスがあ
ったにもかかわらず1点が奪えなかった。
(2)全員の組織的な守備
ただ残念ながら、2003年9月以降2004年
セーブも見られた。また、チーム後方
それぞれの選手がややリーダー性に欠
最終戦においても、あと1点の得失点差で
3月までの期間に合宿1回であったことを
から味方選手と積極的にコミュニケー
ける。その要因はさまざまあると思う
グループリーグ敗退になったことは得点力
考えると、中学3年生という受験期とも重
ションをとるなど、試合におけるリー
が、チーム(クラブ)へ戻るとそのほ
の無さが大きな原因と言える。
なり、選手掌握が難しかった。
ダーシップも発揮した。
とんどがチームの中心選手ではなく、
リードとベンチに伝わり、DF④吉本一謙
まず、ボールプレス、すべては奪いに行
(FC東京U-18)をトップに上げて、1-3-3-
けないが相手にプレッシャーをかけるこ
3-1の攻撃的フォーメーションで最後の15
と、そのためには守備時の1人1人の走る
この得点力の問題はゴール前というプレ
活動開始以降、GK選手としては全9名
分にかけて総攻撃をかけたが、なかなか中
距離を短くしなければならず、コンパクト
ッシャーの厳しい中での、意図のあるファ
の選手を招集した。権田修一(FC東京U-
より広い守備エリアを確立することと、
いる状況ではないだろうか。また、試
国ゴールを割ることができなかった。しか
なブロック形成が必要になる。コンパクト
ーストタッチやシュートの技術的な問題、
18)
、長谷川徹(名古屋グランパス)は立
今大会の最大の課題であった後方から
合に常時出場できる選手は少数である。
し、ロスタイムにCKから3点目を奪い、選
フィールドの実現のために、ラインコント
シュートをより良い状態でうつために、チ
ち上げ時より選出され続けていたが、も
のビルドアップを的確に行うなどが挙
手も強い気持ちを示してくれた。グループ
ロールやGKのブレイクアウェイの能力が
ャンス時にオフ・ザ・ボールからどのよう
う1人の選手が見当たらなかった。2004年
げられる。
リーグ3戦目にして、ここまで闘った選手
重要になるが、選手は理解して真剣にトレ
にパワーを持ってゴール前に入っていくか
になって早生まれ選考の中から川原隆広
に対して十分な評価を与えて良いと思われ
ーニングに取り組み、大会では粘り強く組
の両面の課題があると思われる。厳しいプ
(佐賀東)が見出された。最上級生だが腐
球)の向上は、大きな課題となった。
のが現状である。したがって、試合の
るが、得失点差1で決勝トーナメントに進
織を崩さずに行えたと思われる。ボールプ
レッシャーの中での技術のレベルアップ
らずにバックアップとして最後まで帯同
日本の3試合におけるGKからのパスの
流れを考えたプレーや相手との駆け引
めなかったことは、1、2戦目において選
レスから挟み込みによるプレスディフェン
と、ゲームの流れの中でチャンスを感じ取
されチームに貢献してくれた。
成功、失敗をデータで表すと下記のよ
きなどにおいて、必ずしもアジアの中
手に力を出させることができなかったこと
スもしっかり行えており、どの国よりも組
りタイミングよくゴール前に入って行ける
に悔いの残るグループリーグ敗退となっ
織的な守備の意識は高かったと思われる。
た。
3.日本チームの成果
(1)攻撃におけるコンビネーションプレー
個人の力でゲームを作る部分では突出し
それがあったために、失点の3点もPK、
2. GK強化のテーマ
1,2年の若手選手で、3年生の陰に隠れて
GKにおいては控え選手ばかりである。
○U-16の年代でタフな公式戦が毎週ある
○GKのディストリビューション能力(配
うになる。
わけでなく、試合経験も不足している
でトップレベルとは言い難い。
トレーニングでは権田・長谷川とも、
○今大会でベスト4となった国々と韓国、
①積極的なゴールキーピング
この年代でキック力、正確性において
ウズベキスタン、日本が同レベルで西
CK、DFのミスパスによるもので、流れの
②良い準備(Good Position)
も大変良いものがある。しかし、試合
アジアと東アジアの両極化しているが、
中で崩された場面は3ゲームを通してほと
③DFとの連携
においてはこうしたデータが実情でミ
タイ、ベトナム、マレーシアなどとは、
んどなかった。
④つかむか弾くかの判断とそのプレー
スが重なる。公式戦の経験不足からか
プレースタイルが異なるためトレーニ
⑤クロスの対応(コンタクトプレー、パ
プレッシャーを受けると顕著となって
た選手がなく、上位に進出した国と比べる
4. 日本チームの課題
と個での力不足は感じたが、このチームの
(1)フィニッシュを含むアタッキングサー
ンチング他)
⑥セットプレーの守備(DF組織化、
立ち上げからのコンセプトであった、パス
ドの能力
が出てから動くのではなく、パスが出る前
今回のチームもフィニッシュにおける課
に積極的に動き出しボールに絡んでいくこ
題は大きかった。第1戦の朝鮮民主主義人
とは、意識してできていた場面が多かった
民共和国戦も出場してきて日本と闘うこと
と思われる。
は、相手に自信があるからであると思って
①∼③までのテーマが2003年度立ち上
4得点の内の1点もボランチからワンタ
いたので、ゲームは後半の残り20分の勝
げ時のもので、④∼⑧までのテーマが
ッチで逆に出たボールを得点につなげたも
負になると選手には伝えていた。予想以上
ので、パサーのボールを受ける前の準備と
に朝鮮民主主義人民共和国がレベルが高
レシーバーの攻撃のプランが一致したこと
く、押され気味の展開に戸惑ってはいたが、
52
○今後の課題としては、クロスに対して
FK,CK,PKなど)
⑦リスクマネージメント
○今大会選出した、GK3名はレギュラー、
数も試合になると減少してしまい、FP
控え、バックアップとさまざまな状況、
も受けに来なくなるという悪循環とな
立場であったが、それぞれの選手がそ
った。
れぞれの立場で、全力でトライしてく
⑧攻撃への参加
2004年度となってからのものであった。
U-16日本代表 vs U-16朝鮮民主主義人民共和国代表(2004年9月4日)
© Jリーグフォト㈱
ングゲームを組む必要性を強く感じた。
しまう。また、手によるスローインの
総数(本)
成功(本)
失敗(本)
れた。こうした姿勢、取り組む態度は、
各選手が所属するチーム、指導者の影
北朝鮮戦
32
7
21.9%
25
78.1%
タイ戦
26
14
53.8%
12
46.2%
中国戦
37
13
35.1%
24
64.9%
選手所属クラブの関係者に御礼申し上
合計
95
34
35.8%
61
64.2%
げたい。
響が著しく、コーチとしては大変仕事
がしやすかった。この場をお借りして、
53
U-19日本代表、U-16日本代表世界を目指したアジアでの戦い
の問題もあるが、やはりプレッシャーを受
技術は決して高くないことが言えると思わ
当たり前になっていた。しかし、日本はボー
けるとファーストタッチがぶれてしまうこ
れる。
ルの収まりの良い選手は、運動量が無かった
とと、キックの精度と球種を複数持ってい
またもう一つの要因は、相手チームがプ
り、攻守の切り替えが遅いことが多い。各チ
るかに関わり、アジアのレベルでも日本の
レッシャーをかけても、確実にワンタッチ
ームのエースと言われるような選手がリーダ
プレーで日本のプレスを外していたため
ーシップをとって一番がんばれるようなチー
に、ボランチやDFラインが下がりすぎて、
ムにならないと、日本がアジアで主導権をと
ボールを奪っても前線のFWとの距離が開
いてしまい、フィードの精度を落としてし
まったことも言えると思われる。逆に考え
ることは難しいと思われる。
(4)ヘディング、スローイン、スライディ
ングの強化
今回の代表チームに対して選手派遣など多
るが重要で、トレーニングしだいでは、比
方面でご協力をいただき、深く感謝してい
較的向上が早いのに軽視されていることが
ます。選手たちには、今回の厳しい経験を
多いと思われる。
忘れることなく、技術・戦術のレベルアッ
あのヘディングシュートが入っていれ
チームの勝敗を分けるのはその小さいこ
プに取り組み、フィジカル・メンタルとト
ば、と思う場面は何回かあった。ビッグチ
とではないだろうか。強いチームは小さな
ータルに闘える選手に成長してくれること
ャンスのヘディングで最後までボールを見
ことがしっかりできている。日本の強化の
を期待したいと思います。各チームに対し
ていないために「おじぎヘッド」になり上
ためには細かい技術に徹底的にこだわるこ
ましては、今後とも各カテゴリーの代表チ
に外してしまうことが多い。また、スロー
とも重要だと思われた。
ームの活動に対してよろしく御高配をお願
インを相手にカットされてカウンターを受
れば、相手のプレスを正確な技術で外せれ
けるなど、これらの技術は細かい技術であ
また、最後になりましたが1年半の間、
いいたします。
ば、相手の守備を後追いにさせることがで
き、相手の攻撃力も下げることができる。
ユース年代、
アジアサッカー連盟主催の選手権を終えて
しかし、今回は日本が相手の守備を後手に
回らせるような場面が少なかったことは事
実であった。
(3)うまい選手が闘えるのが当たり前なア
ジアのレベル
今回の大会ではアジアのレベルでも技術の
高い選手が、攻守にハードワークできるのが
U-16日本代表 vs U-16中国代表(2004年9月8日)© Jリーグフォト㈱
U-16日本代表 vs U-16タイ代表(2004年9月6日)© Jリーグフォト㈱
このテクニカル・ニュースを通じ、今
す。そして、その課題をどのように克服
「止める、蹴るの技術の向上」、「しかけ
後も、さまざまな年代別代表チームのレ
していくかということを考え、取り組ん
る」など、今回のU-16日本代表の課題が
ポート、そして、全日本少年サッカー大
でいく必要があります。
そのままテーマとしてとり上げられてい
会から全国高校選手権まで、国内で行わ
ユースの育成には、時間がかかります。
れているさまざまな大会の分析を継続し
我々は2002年FIFAワールドカップ以降、
て掲載していく予定です。このことは、
アジアサッカー連盟のレフェリーコミッティーの試み
今回、アジアサッカー連盟(AFC)のレ
技術委員長 田嶋幸三
技術委員長 田嶋幸三
「世界トップ10」を目指し、さまざまな
ます。これらの課題が改善されるように、
さらに徹底して取り組む必要があると考
えています。
現在の我々の代表チームのレベルが世界
試みをスタートさせています。例えば、
でどのレベルにあるのか、また、中・長
キッズプログラム、ナショナルトレセン
ムで徹底できないのかを考えなくてはな
期的に見て、我々が行っている内容の方
U-12の地域開催、クーバーコーチングと
りません。目新しいオフ・ザ・ボールの
向性が合っているのかなど、自分たちを
の連携、13・14歳からのエリートプログ
動きやウェーブといったものに対して
何故、それがそれぞれのクラブ、チー
間なども事前に抜き出してありましたが、
悪いためにこういうミスが起こるというこ
評価するものでもあり、また、皆さんの
ラムの展開、国体のU-16化など、日本の
は、敏感に多くのコーチが反応してとり
フェリーコミッティー(審判委員会)の会
レフェリーコミッティーとしての進め方に
とをきつい口調で当事者に伝えました。こ
トレーニング場面へも生かせるものであ
課題に対してさまざまな試みを既に展開
入れてくれます。しかし、もっともベー
議に参加させていただきました。
「AFC U-
合わせてその時間帯で我々に対しての説明
れについては、ミスを指摘するということ
るといえます。
しています。この結果が出てくるのは、
シックな止める、蹴る、前を向くなどと
17サッカー選手権大会2004」におけるマネ
を行ってもらいました。
ではなく、なぜミスが起こるのかという原
今回、U-19とU-16という2つのカテゴ
数年先になるかもしれません。今回のこ
いったことについては、それほど大きな
因を的確に見極め、それを修正するよう指
リーの日本代表チームが世界選手権への
のU-19日本代表、U-16日本代表の内容が
反応がないのも事実です。どのような伝
ージャーズミーティングの際、
「試合の翌
布監督の疑問点としては、競り合いの際、
日の朝に行われるレフェリーコミッティー
正当に当たっているにもかかわらずファウ
示していたことであり、それについて、私
出場権をかけて、アジアサッカー連盟
悪かった事実を踏まえ、すぐに対応しな
達の方法をとるべきか、どのような形で
のミーティングにチーム関係者であれば参
ルをとられてしまう、かなりファウルを受
自身高く評価しました。しかしながら、こ
(AFC)主催のユース年代の各選手権を
ければならないものについては、直接、
伝えればチームへ徹底できるのか、今後
加できる、参加してほしい」というアナウ
けているように見えるのにとられていない
のミスジャッジで我々の得点が認められる
闘いました。U-19日本代表は6大会連続
代表チームに対して、また所属チームに
具体的に考えていかなければならないと
ンスが同委員長のジェネラル・ブゾー氏か
という点で、それによってMF⑤青山隼がけ
わけではないことはお互いが重々理解して
のFIFAワールドユース選手権出場を決め
対してお伝えし、協力して改革していき
考えています。また一方で、成果は成果
らありました。ヨーロッパサッカー連盟
がをしたシーンを見せながら質問をぶつけ
おり、布監督自身もこれからのAFCのレベ
ました。U-16日本代表は残念ながら、グ
たいと思います(例:若手選手の試合出
として認識し、今後の取り組みへとつな
(UEFA)ではこのような会議に監督・コー
ました。それに対してブゾー委員長は、明
ルアップにつながるのであれば…と理解し
ループリーグで敗退してしまいました。
場機会を増やすなど)。ただし、今展開
げていきたいと考えます。
チが参加し、建設的な意見を述べ、双方の
確に我々に説明し、判定に問題がないこと
てくれました。
この結果は、勝ったから良かった、負け
しているものがすぐに否定される、とい
この2つのユース年代の選手権という
レベルアップに貢献していることを聞いて
を理解させてくれました。
たから駄目だったということではなく、
うものではないと思っています。むしろ
大きな機会を、再検討の重要な機会とと
いました。
内容と結果はともかく、監督・コーチを
もう一つの点は、前半41分に右クロスか
交えた、このようなフランクな会議をレフ
我々の進むべき道が正しいかを再確認す
それらをもっと徹底してやっていくこと
らえ、向上のためのステップとしたいと
ら日本チームがゴールしたシーンで、オフ
ェリーコミッティーが行っているというこ
るチャンスと考えています。客観的な分
が重要であると考えています。
考えています。U-19日本代表は来年行わ
布啓一郎監督と出席した。布監督自身がい
サイドか否かという点でした。これに対し
とを高く評価したいと思います。たとえミ
析からU-19、U-16とも、残念ながら我々
今回クローズアップされた技術・戦
れるFIFAワールドユース選手権に向け
くつかの判定に対してAFCとしての基準を
て、2列目から上がってきてのヘディング
スがあったとしても、このようなことを繰
が目指すサッカーではなかったのは事実
術・体力面の課題、そしてオフ・ザ・ピ
て、そしてU-15年代、U-18年代が次の
聞きたいという主旨で出席しました。ミス
シュートであり、明らかにオフサイドでは
り返しやっていくことで、間違いなくレベ
です。積極的なしかけができなかったU-
ッチも含めた課題の多くは、我々が各年
AFC選手権に向けて準備を開始します。
ジャッジに対しての不服ということではな
ないということでした。ブゾー委員長は、
ルは上がっていくに違いありません。ミス
16日本代表、中盤のつなぎが今ひとつで
代別の指導指針、各種テクニカルレポー
ユース育成全体で向上していけるよう
く、純粋に判定の基準について聞きたいと
このシーンに対して、このミスジャッジを
ジャッジをした副審はすぐに帰されまし
きなかったU-19日本代表。ここで「勝っ
トなどで分析・検討し、提示してきてい
に、今大会からのフィードバックを次回
いう気持ちでした。
した副審の問題点を他のオフサイドの判定
た。
た、負けた」だけではなく、課題を見つ
ることです。ここ数年のナショナルトレ
に生かしていきたいと思います。
けていくことが重要であると考えていま
センのテーマを振り返ると、
「前を向く」
初戦の朝鮮民主主義人民共和国戦の後、
我々が用意したテープを持って行き、時
54
ミスのシーンを合わせ、ポジショニングが
55
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施しているフィジカル測定種目を紹介し、フィールドで測定できる推奨種目を提示したガイ
ドラインです。
※1:FIFA(フィファ/国際サッカー連盟)の映像使用規定(ビデオ化権)により、JFA加盟登録チームおよびJFA公認指導者資格保有者のみ販売が許可されており、一般の方へ
の販売は許可されていません。
制作物の内容、購入方法などでの問い合わせ先は右記まで!(財)日本サッカー協会技術部 TEL:03-3830-1810
56
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□サッカー指導教本・ビデオ2002年度版(FP/GK)
□2002FIFA World Cup JFAテクニカルレポート/ビデオ
□FIFAコンフェデレーションズカップ2003 JFAテクニカルレポート/ビデオ
□FIFAワールドユース選手権2003 JFAテクニカルレポート/ビデオ
□FIFAU-17世界選手権2003 JFAテクニカルレポート/ビデオ
□第3回フットボールカンファレンス報告書/CD-ROM+DVD
□AFCアジアカップ-中国2004 JFAテクニカルレポート
□JFAフィジカル測定ガイドライン
□2003ナショナルトレセンU-16
□2003ナショナルトレセンU-14
□2004ナショナルトレセンU-12
□JFAキッズ(U-10)指導ガイドライン
□JFAキッズ(U-8)指導ガイドライン
□JFAキッズ(U-6)指導ガイドライン
□JFA 2004 U-16指導指針
□JFA 2004 U-14指導指針
□JFA 2004 U-12指導指針
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チーム名:
チーム登録番号:
57
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2004JFAスーパー少女プロジェクト
第2回トレーニングキャンプ
書籍紹介
本誌28ページにて紹介した「2004JFAスーパー少女プロジェクト」
の第2回目のトレーニングキャンプが、12月2日∼5日にJヴィレッジ
(福島県)で開催されます。
このトレーニングキャンプは、すべての指導者の方、見学することが
できます。詳細は下記までお問い合わせください。
■タイトル:
強くなるためのサッカーフィジカルトレーニング Q&A100
サッカー選手としてのレベルアップには、身体能力を高めることが不可欠。
本書には成長段階に応じた練習法からトレーニング法、コンディショニング、食
●お問い合わせ
〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス (財)日本サッカー協会・技術部
TEL 03-3830-1810/FAX 03-3830-1814
(月∼金/9:30∼18:00 土日祝日休業)
事までを網羅してあります。小学校高学年から大人まで、そして選手を支える親
にも楽しく理解していただけるよう、Q&A方式でわかりやすく情報が整理されて
います。
■出版社:スキージャーナル
■共 著:菅野淳(U-23日本代表フィジカルコーチ)・星川佳広(スポーツホト
ニクス研究所)
■価格(税込): 1,470円(256頁)
■目次
第1回トレーニングキャンプより © Jリーグフォト㈱
第1章 フィジカルトレーニングについて
第2章 からだについて
第3章 年齢・性別について
第4章 ポジションについて
JFA公認指導者海外研修会2004
第5章 スキルについて
JFAでは2005年3月7日∼13日、ドイツ・ブンデスリーガの強豪「バイヤー・レバークーゼン」にて指導者研修会を開催します。
詳細はJFAコミュニティ http://member.jfa.jpなどにて、後日ご案内いたします。
第6章 スタミナについて
第7章 パワーについて
第8章 スピードについて
第9章 試合前の準備について
第10章 ケガの防止・対策について
第11章 食事・休養・ライフスタイルについて
4種加盟登録チームの皆様へ
2005(平成17)年度、JFA第4種としてチーム・選手の加盟登録
する際には、『監督またはコーチに必ず1名以上の有資格指導者がいる
こと』が義務付けられます。
まだ、チームに有資格指導者がいないチームは、各都道府県サッカ
ー協会にて開催している指導者養成講習会に参加し、ライセンスを取
得するようお願い申し上げます。
●お問い合わせ
スキージャーナル㈱
Tel 03-3353-3051 Fax 03-3353-7852
スキージャーナルオンラインブックストア
http://www.skijournal.co.jp
■タイトル:サッカーの国際政治学
JFA指導者登録制度に関するお知らせ
読者プレゼント
「強くなるためのサッカーフィジカルトレーニング Q&A100」著者(菅
野氏)サイン入りを5名様にプレゼント。
官製はがきに①氏名、②住所、③連絡先を明記、④本誌への感想・
要望を添えて、下記まで応募ください。なお、商品の発送をもって発
表とさせていただきます。応募締め切りは12月15日(当日の消印有効)
。
【宛先】〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス
(財)日本サッカー協会・技術部「読者プレゼント/TN Vol.4係」
■タイトル : サッカーの贈り物
――素顔のJリーガー
国際サッカー連盟(FIFA)理事である小倉
1. JFA公認指導者登録制度/認定期限などの案内
預金口座振替依頼書
JFA到着期限
登録費
引落日
2004年11月15日
2004年12月27日
ライセンス有効期限
認定証/テクニカル・
ニュースなど発送日
テクニカル・ニュース
配布開始号数
2005年1月1日∼2005年12月31日
2005年1月28日
第5号
2004年1月17日
2005年2月28日
2005年3月1日∼2006年2月28日
2005年3月20日
第6号
2005年3月17日
2005年4月27日
2005年5月1日∼2006年4月30日
2005年5月20日
第7号
2005年5月18日
2005年6月27日
2005年7月1日∼2006年6月30日
2005年7月20日
第8号
純二JFA副会長が、Jリーグ設立、2002年
ピッチを離れた場でも活躍するJリーガー
FIFAワールドカップ招致などを振り返り、こ
たちの素顔を紹介した、Jリーグ選手協会編
の間に起きたさまざまな出来事、FIFAの活動
の書籍が出来ました。
などを紹介しています。
スポットライトの当らない場で地道な活動
■出版社:講談社
を続ける選手たちの心温まるエピソードが10
■著 者:小倉純二
編と、中山雅史会長と中村忠監事の対談で構
■価 格:735円(税込)
成されています。
■出版社 : 論創社
■価 格 : 1,050円(288頁)
※認定証/テクニカル・ニュース等の発送日は、配送の関係上、遅れる可能性があります。ご了承ください。
【連絡】テクニカル・ニュース Vol.5は制作上の事情により、1月28日の発行となります。購読者の皆様への配送は一部、2月1日以降になることがあります。ご了承ください。
58
本誌に関する各種の問い合わせは、下記までお願いいたします。
【問い合わせ先】 〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス (財)日本サッカー協会・技術部
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日本サッカーミュージアム
JFA公認指導者の方は割引料金で入場できます!
通常大人500円が登録指導者400円に!
今年度、日本サッカー協会(JFA)もしくは地域サッカー協会(地
域FA)、都道府県サッカー協会(都道府県FA)に登録している役員、
指導者、選手、審判員は証書の提示により、入場料が割引となってい
ます。
日本サッカーミュージアム
〒113-0033 東京都文京区本郷3-10-15 JFAハウス 電話:03-3830-2002
●JR「御茶ノ水駅」
、東京メトロ丸ノ内線「御茶ノ水駅」より徒歩7分、
●東京メトロ丸ノ内線、都営地下鉄大江戸線「本郷三丁目駅」より徒歩7分
日本サッカーミュージアム、B1F「2002FIFAワールドカップTMの足跡」より © AGC/JFA news
Best Regards, from JFA
短かった梅雨、長かった猛暑の夏、10月初旬というのに
古い大きな木が生えています。グラウンドの端は土手になっ
30℃まで気温が上がり、体育の日を目前に9度目の本土上
ていて、子どもたちが土手に向ってボールを蹴っていたそう
陸となった台風22号がやって来ました。
です。そこへ、このクラブのコーチが来て話をしてくれまし
この台風通過の真っ只中の10月9日は、今年度より開設
された「ゴールキーパーC級コーチ養成コース」の開催日で
たちにとっては黄金の木だと思っている。トレーニングでは、
した。交通機関の乱れにより受講者が無事たどり着けるのか、
選手の持っているさまざまな能力を引き出してくれる」と語
悪天候による練習場の確保などとスタッフは奔走しました。
っていたそうです。実際のトレーニングが始まると、ボール
幸いにも開催場所がJヴィレッジだったため、雨天練習場が
ポゼッションでは、その木が守備側にとって対応を難しくさ
完備されていたので無事スタートが切れました。
せたり、壁パスが有効であったり、消えるプレーから第3の
このような異常気象の日本列島で、恐らく多くの指導者の
動きが出てきたりと選手が楽しそうにプレーしていたそうで
皆さまも、練習場の確保や予定変更、試合の延期や中止の連
す。そして帰り際、そのコーチは「ここにあるものすべてが、
絡など、気苦労が耐えなかったことでしょう。このようなと
我々のトレーニングに必要なもの。コーチはそこに少しルー
きほど、日ごろの指導者間の交流が重要だと思い起こされた
ルを設けたり、条件をつけたりするだけで、選手自身が日ご
ことでしょう。勝手ながらお察し申し上げます。練習場の確
ろ気付かない無限の能力を導き出すことができるんだ。プロ
保では、野球部とラグビー部とスペースを分かち合い、クラ
シネツキやボバンのようにね。
」と誇らしく語ったそうです。
ブにおいてはジュニアユースとユース、あるいは中1、中2、
「無い中の工夫」は、私たち指導者の共通のキーワードかも
中3の各クラスとスペースを分かち合ったり共有したり、
しれません。今の日本では、物が溢れています。用具や練習
「無い中での工夫」に労力を割かれたことでしょう。ここで
少々サッカーこぼれ話を紹介いたします。
場の確保も良いほうなのかもしれません。「ある中での工夫」
も必要かもしれません。指導者の皆さま、お互いに知恵を出
以前、私が所属していたJEF市原時代の話です。チーム関
して、汗を出して、選手の成長に涙する、そんな指導者を目
係者がクロアチアにあるハイドロ・スプリットというクラブ
指そうではありませんか。可能性は無限です。指導の幅を広
を訪問した際のことです。このクラブの練習場は、広さがハ
げ、深みを創造して一歩一歩、歩もうではありませんか。
ーフコートにも満たない広場だそうです。その広場の中央に
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た。「我々の練習場にある木を邪魔だという人がいるが、私
加藤好男(GKプロジェクトリーダー)
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