Comments
Description
Transcript
「農の雇用事業」で採択した研修生数
農業雇用改善推進事業 経営者と働く人を応援する “農業の雇用と労務”ガイド 63 Vol. 2015 年 1 月号 「農の雇用事業」で採択した研修生数 5,000 18,104 4,500 11,643 3,000 2,370 2,500 3,221 1,226 5,842 10,000 8,000 6,000 1,503 3,596 4,000 1,226 20年度 14,000 12,000 7,345 1,000 0 3,240 2,246 2,000 500 16,000 14,883 3,500 1,500 18,000 4,298 4,000 20,000 2,000 21年度 22年度 23年度 採択研修生数 24年度 25年度 26年度 0 累積採択人数 平成20年度より実施している農林水産省「農の雇用事業」では、農業法人等が新たに就業希望者 を正社員として雇用して実施するOJT研修に対して助成を行っている。 毎年多くの新規雇用就農者が同事業の研修生として採択され、 これまでの採択実績は1万8千人 を超える。 特集 OJT研修 従業員の育て方 新規で 採 用 し た 従 業 員 に 自 社 の 仕 事 を身につけてもらう場合、職場の先輩・ 上司など が 生 産 技 術 や 営 業 ノ ウ ハ ウ を 教える必 要 が あ り ま す 。 こ れ は 農 業 以 外につい て も 同 様 で す 。 職 場 内 で 部 下 を教育す る 手 法 と し て は O J T が 活 用 される場 合 が 多 く あ り ま す 。 O J T と 」の略で、 は、 「 On the Job Training 日常業務 を 通 じ て 上 司 が 部 下 の 教 育 課 題を見出 し 、 職 場 で 指 導 し て い く 従 業 員教育手 法 の 1 つ で す 。 日 本 に お け る OJTの 歴 史 は 5 0 年 以 上 前 に 遡 り ま す。今日 で は 従 業 員 の 採 用 方 針 や 業 務 内容も大 き く 変 化 し 、 そ れ に あ わ せ て OJTの 手 法 も 深 化 し て き ま し た 。 OJT研修 特に、 近 年 で は 6 次 産 業 化 の 推 進 等 せっかく採用した従業員でも、農業や職場の魅力を伝えら れずに離職してしまうのはもったいないものです。従業員の 職場への定着は本人の資質や認識の甘さによるところもあり ますが、職場の教育体制が不十分なために、従業員が仕事に 魅力を無くして離職することもあります。従業員の仕事に対 する興味と魅力を最大限引き出すと同時に、不安や不満を未 然に改善することで従業員定着率を向上させると同時に、自 社の労働生産性を向上させることができます。 今号では、従業員を自社で教育する OJT について、事業主 や職場上司の視点から注意すべき点を特集します。 にあわせて従業員1人ひとりが取り組 む業務内容も多様化する傾向がありま す。これまでの画一的な指導だけでは 問題点を解決できない場合もあり、従 業 員 ご と に 教 育 す べ き 課 題 を 設 定 し、 必要な技術や知識を教えて仕事へのや る気を喚起させることに重点が置かれ ています。 従業員の育て方 1.OJTの目的 OJTの目的は、より短期間で従業 員を育て上げ、労働生産性を向上させ ることにあります。このとき、より短 時間で従業員を育成するために、教育 に①意識的、②計画的に、③継続して 取り組むことが重要です。 特に、農業の生産現場では、以下の 項 目 を 意 識 す る と 良 い で し ょ う( 表 1) 。 4 5 6 7 2.部下の教育課題を明確にする 部下を育成する際、意識的に指導す ることが重要です。このとき、部下の 教育上の課題を明確にしておくこと が、短期間で部下の課題を解決するコ ツとなります。半人前の部下を一人前 に教育するには多くの課題があると思 いますが、まずは優先的に身につけて ほしい技術・知識を絞って教育するこ とが効果的です。そのためにも、上司 は部下の仕事ぶりを観察し、業務を遂 行する上でどのような技術・知識が足 りないのか課題を認識しておく必要が あります。 3 3.計画の策定 身につけてほしい技術・知識を絞り 込んだら、これらを「いつまでに」教 え、習得させるのか具体的な計画を策 定します。このとき、計画は年間計画 表等を作成して、具体的に紙に書き出 します。こうすることで上司と部下で 教育方針が共有でき、教わる側も、ど の時期に何を教わるのかが明確となる ため、仕事への目的意識が明確になり ます。 4.部下とのコミュニケーションは必須 近年は、従業員のコミュニケーショ ン能力不足や、指示された以上の作業 に積極的に取り組んでくれないことを 従業員教育の課題とする方が多くいま す(図1)。 日常業務において、上司からの一方 的な指示や画一的な指示は部下の意識 改善につながりにくいばかりか、上司 への不信感を増大させ、職場への魅力 を 低 下 さ せ る こ と に な り か ね ま せ ん。 部下のやる気を喚起し、仕事に前向き に取り組んでもらうためにも、部下と 出典:農業法人等従業員雇用定着のための アンケート調査結果 (2013 全国農業会議所) 2 日常業務を遂行する上での従業員の課題を明 確にする 教育課題は要点を絞る 研修計画は必ず紙に書き出して従業員と共有 する 部下の感じる疑問や不安に耳を傾けて、上司 と部下双方の意思疎通を図る なぜその作業がダメなのか、この作業が作業 工程全体の中でどのような位置づけを持つの か、どのようにしなければいけなかったのか 等を部下と話し合い、考えさせる習慣をつけ る 年間の研修終了後は上司と部下の話し合いの 下、教育成果を評価する 評価結果を昇給・賞与等の算定基礎に反映さ せる 1 か」などの要望を聞く姿勢を持つこと が必要です。 指示通りに 動かない 13% 知識・能力の向上等 の自己啓発に 取り組まない 39% 7.OJTの評価をする OJTがどの程度効果的に実施され たかについて、 OJTを実施した上司・ 部 下 双 方 を 評 価 す る こ と が 重 要 で す。 OJT実施当初に作成した計画に基づ いて、部下の各課題がどのように改善 されたのか評価します。また、部下は どのような点を努力したのか自己評価 します。評価は評価基準を明確にした 上で、上司と部下の面談のもとに決定 します。そして、結果は昇給・賞与な どの査定基準に組み入れることで、人 事考課の一部として位置づけることが できます。 OJTの評価にあたっては、部下の 成 長 度 合 い を 評 価 す る だ け で は な く、 上司の指導方法を同時に評価すること が大切です。具体的には、部下を目標 通りに教育・育成することができた場 合は部下と同時に上司も高く評価しま す。事業主はこの一連の指導も踏まえ てOJTを実施した従業員の昇給・賞 与・昇格などを決定していくことが望 ましい形と言えます。 なります。 ただし、仕事を任された部下が一生 懸命に取り組みベストを尽くしたもの の結果が伴わなかった場合には、上司 が責任をとる必要があります。教えた 内容を部下が遂行できていなかったこ となどが原因である場合は、この点に ついて再度OJTを実施して行かなく てはなりません。 自発的に動かない 36% 表1 OJT実施における留意点 6.仕事のやる気を引き出す 上司の担う作業の一部を淡々と処理 するために部下を使っていては、部下 の仕事に対するやる気は上がりませ ん。 ある程度の作業手順を習得したら、 その一連の流れについて部下に任せて みることも必要です。裁量権を与えら れることにより、今まで以上に創意工 夫の幅を広げて取り組むことができる ようになるかもしれません。また、上 司も部下に仕事の一部を任せること で、他の業務に集中して取り組みやす くなるメリットもあります。 部下は上司の仕事ぶりをみて育ちま す。上司が中途半端な仕事しか遂行で きないのに、部下に完璧な仕事を要求 することは困難です。上司の何気ない 行動やちょっとした発言が部下の意欲 ややる気に大きな影響を与えることと 遅刻などが多い 3% 人柄が悪い、 コミュニケーションが 不十分 4% 専門知識がない 5% 特 集 のコミュ ニ ケ ー シ ョ ン は 必 須 で す 。 部 させることができます。 下との会 話 を 通 じ て 指 導 内 容 が 理 解 さ れている か を 感 じ 取 り 、 部 下 の 感 じ る 5.上司と部下の信頼関係 疑問や不 安 に 耳 を 傾 け る こ と が 、 部 下 上司が部下を観察ししていると同時 の上司に 対 す る 信 頼 関 係 形 成 の 一 歩 と に、部下もまた上司の仕事ぶりを見て なります 。 います。上司も常に部下に見られてい ることを意識して、手本となることを まずは 、 身 近 な 作 業 に お い て も 部 下 の感じる 不 安 や 疑 問 に 耳 を 傾 け る こ と 心がけましょう。 「やってみせ、言って から始ま り ま す 。 聞かせて、させてみせ、ほめてやらね ば、人は動かじ」とある通り、部下が その際 、 同 時 に 指 導 内 容 の 意 味 を 理 解させることが重要です。具体的には、 初めて取り組むことは、何事も上司が ①なぜそ の 作 業 で は ダ メ な の か ( 失 敗 手本を示してあげることが肝心です。 す る の か )、 ② こ の 作 業 が 作 業 工 程 全 また、状況に応じて部下と話し合い 体の中で ど の よ う な 位 置 づ け を 持 つ の の場を設け、課題や意見を出し合うこ か、 ③ ど の よ う に し な け れ ば い け な とも必要です。部下の意見に耳を傾け、 かったの か 、 等 を 部 下 と 話 し 合 い 、 部 前向きに取り組む部下の姿勢を認める 下に考え さ せ る 習 慣 を 与 え ま す 。 ような柔軟な姿勢が欠かせません。 さらに 、 い わ ゆ る 「 指 示 待 ち 」 の 従 部下の教育がうまくいかず困ってい 業 員 に な ら な い よ う に、 作 業 前 ミ ー る と き は、 上 司 と し て「 何 を 教 え て、 ティング 等 の 場 で 他 の 従 業 員 の 作 業 進 どのように育ってほしいのか」を伝え 捗状況な ど を 確 認 す る 場 を 設 け る こ と ることが有効です。一方、部下からは で、従業 員 間 で 連 携 す る 必 要 性 を 意 識 「 上 司 に ど の よ う な 指 導 を し て ほ し い 図1 従業員への不満足理由 月刊かわらばん Vol.63 63 就業条件や役割を取り決める家族 勤農業を可とするのである。 経営協定についての講演が行われ この就農の方式を地元の多くの た。 企業に広げていき、新規に就農し てくれた人たちが70代まで従事 県からは、グループ協議などの 分析結果を踏まえた「家事の役割 してくれたら、地域農業の後継者 分担は最初が肝心、ライフステー 問題はかなり好転するはずだ。 ジに応じた協定の策定」などの報 50代までは商工側で、早い人 告があった。 は50代の後半から就農すると い っ た「 労 働 二 毛 作 」 。企業の農 特に、講師を務め、タイムマネ 業 参 入 を、 生 産 や 加 工 で は な く、 ジメントについて講演した社会保 険労務士法人たんぽぽ会の瀬川徳 就農人材の安定供給といった面か 子 代 表 社 員 は「 仕 事 の 手 順 や 整 ら推進してもいいと思うのだ。 理・整頓などで作業の効率化を生 むことができる」と話し、家族経 営協定について講演した三重大学 ワークライフバランスの鍵は の内山智裕准教授は「経営方針や 三重県津市 役 割 分 担 な ど を 話 し 合 う こ と が、 平成26年11月14日 (金) /全国農業新聞 経営発展と豊かな生活設計につな がる」と強調した。 農業は家族経営が主流で、1日 の 仕 事( ワ ー ク ) と 生 活( ラ イ 参加した農業者からは「現在の 状況・問題がとても分かりやすく フ)の切れ目がなく、業務効率の 解決すべき課題が見えて良かっ 悪い経営が多くなっている。県で は、仕事と生活時間を区分し、限 た」との感想があった。 られた時間で効果的な業務を展開 することが経営向上につながると し、 「農業のワークライフバラン スを考えるフォーラム」を10月 3 1 日、 津 市 の 三 重 県 教 育 文 化 会館で開いた。 フォーラムには、農業者、農業 関係機関・団体など約60人が参 加し、農作業の時間当たりの生産 性を高める時間管理(タイムマネ ジメント)や家族の話し合いで 月刊かわらばん 1月号 発行元:全国農業会議所・全国新規就農相談センター 〒102-0084 東京都千代田区二番町9-8 中央労働基準協会ビル2階 TEL:03(6910)1126 FAX:03(3261)5131 Eメール:[email protected] 農業雇用改善推進事業ホームページ http://www.nca.or.jp/Be-farmer/roumu/ デザイン制作:株式会社あーす ニュ ース という。先祖からの農地を持つ社 員の中には、早期退職して就農す る人もいると思う。 きちんとした組織で、職業人と してのキャリアのある人たちの就 農だから心強い。大型農機にもす ぐ習熟するはずだ。この人たちが 独立型就農をするのではなく、地 元のJAや規模の大きい農業生産 法人のスタッフとなってくれる と、展望は開けると思う。 50代まで商工側その後通勤農業 これは、人材面での農商工連携 である。JR以外にも、製造業な どとの連携も考えられる。60歳 か ら の 新 し い 職 場 と し て、 「就農 分 野 」 を と り 入 れ て も ら う の だ。 5 5 歳 あ た り か ら の「 早 期 出 向 」 があってもいい。 そして、地元JAなどの所属と なり、通勤農業を行う。生産技術 などの指導はJAや農業生産法人 が対応すればよいが、中山間地域 などでは、地元の高齢農業者が協 力 し て く れ る と い い。 つ ま り は、 農業後継者を、血縁や地縁だけで なく「広域」地元在住者とし、通 農業の雇用と労務に関するご相談や質問をお寄せください こんなニュースがありました 平成26年11月14日(金)/全国農業新聞 企業の農業参入は人材確保の好機 鉄 道 会 社 が 、 農 業 参 入 へ の 関 心 を高 め て い る と い う 。 テ レ ビ や 新 聞で 目 に す る の だ が 、 J R 各 社 を は じ め、 第 3 セ ク タ ー や 私 鉄 ま で、 各 地 で 具 体 的 に 進 ん で い る ら しい 。 共 通 す る 進 出 意 図 は 農 業 ・ 農 村 への 危 機 感 で 、 田 園 風 景 の 荒 廃 や 過疎 化 が 、 鉄 道 事 業 に と っ て も マ イナ ス だ と い う こ と の よ う だ 。 農 業側 に と っ て 心 強 い 援 軍 だ が 、 ほ とん ど の 事 例 が 、 農 産 物 生 産 や 加 工品販売といった参入方式なの だ。 一 方 で、 マ ク ロ 的 に 考 え る と、 いま の 農 村 に と っ て の 大 き な 問 題 は後 継 者 不 足 で あ る 。 農 村 側 で は 血縁 と 地 縁 を 重 視 し て い る が 、 こ れに こ だ わ り す ぎ る と 産 業 と し て は弱 体 化 す る の で は な い か 。 そこで鉄道、とりわけJR各社 への 期 待 だ 。 地 域 に 密 着 し た 組 織 であ り 、 し か も 広 域 を カ バ ー し て いる の で 、 地 元 在 勤 の 社 員 も 多 い NEWS-2 の N E W S 「労働二毛作」のすすめ NEWS-1