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北太平洋における人工衛星を用いた 海洋生態系の時空間分布

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北太平洋における人工衛星を用いた 海洋生態系の時空間分布
29
No.
2006
006年3月
特集
生態系変動予測研究の
最新研究成果
北太平洋における人工衛星を用いた
海洋生態系の時空間分布変動に関する研究
プログラムニュース
フロンティアニュース
FRCGC/IORGC合同成果発表会開催報告
合同成果発表
二宮特任研究員が瑞宝重光章受章
松野特任研究員が日本学士院新会員に
平成17年度受章リスト
特集 生態系変動予測研究の最新研究成果
北太平洋における人工衛星を用いた海洋生態系の
時空間分布変動に関する研究
激に増加する現象)が明瞭であること、東部北太平洋では季
広大で変化の富んだ海洋学的特徴を持ち、全球的にも気候変動と大きな関わりを持つとされる北太平洋におい
ニャ現象への移行期の間に、西部北太平洋で大きな経年変化
て、植物プランクトン濃度および基礎生産の季節変動及び経年変化を明らかにし、海洋表層でおこる物理・化学
が観測されました。図 1の衛星画像を見ると、西部北太平洋
過程との関係を理解するための衛星マルチセンサーを用いた時系列解析研究について、最新の研究成果を笹岡
の亜寒帯循環域(図中の赤で囲った部分)では、1998年の夏
ポスドク研究員がご紹介致します。
季に基礎生産速度が他年の同時期よりも高いことがわかりま
地球環境フロンティア研究センター 生態系変動予測研究プログラム
ポスドク研究員 笹岡
晃征
節 変 動 が 小 さ く 、ク ロ ロ フィル 濃 度 も 通 年 で 低 く ほ ぼ
0.5mgm –3 以下の海域が多いことがわかりました。一方、
1997 年のエル・ニーニョ現象の始まりと 1999 年のラ・ニー
す。1998年は当海域において、例年よりも夏から秋にかけて
風が弱まり、水塊の安定度が増すとともに海洋表層の成層化
が促進され、例年より強い日射条件に伴って、植物プランク
トンの増殖が促進され、基礎生産が高まった可能性が考えら
図3 衛星検証用の自動昇降式ブイシステム
北太平洋は、アジア大陸の東側に位置し、世界の海の約
クトル、海面高度、海氷分布、水蒸気量等の物理的環境と植
れます(Sasaoka et al., 2002)。さらに、基礎生産と基礎生
20∼30%を占める非常に広大な海です。太平洋は地球規模
物プランクトン濃度、基礎生産速度等の海洋生態系の応答に
産を支える重要な物理・化学過程である風・日射量・栄養塩
フィルa濃度データ、水温データ及び塩分気候値データを入力
での深層大循環における終着点にあたり、特に高緯度である
関する情報を定常的に得ることができるようになってきまし
との関係を、衛星データを用いて統計学的に調べた結果、当
。
パラメータとしてpCO2を推定することができます(図2)
北太平洋亜寒帯域は、世界的にも非常に栄養塩が豊富で生物
た。さらに、衛星データを入力パラメータとして、海洋の基
海域では 65%以上もの基礎生産の変動がほぼ海上風の強さ
今後は、衛星マルチセンサーを用いた海洋生態系のプロセ
生産が高い海域だといわれており、豊富な漁業資源を持つこ
礎生産速度や、硝酸イオン濃度、二酸化炭素分圧等も見積も
と日射量(光合成有効放射)の強さで説明できることがわか
ス研究を継続し、衛星によるpCO2データも組み合わせて、海
とでも知られています。北太平洋の海洋学的特徴は、我が国
ることが可能となっています。衛星観測は、海洋環境を瞬時
りました。特に、西部北太平洋では基礎生産速度の変動が海
洋表層の物理外力(風、日射、流れ)と、植物プランクトン、基
東方では表層の亜熱帯循環系と亜寒帯循環系が接しており、
に広域を繰り返し観測でき、様々な時空間スケールで海洋表
上風の変動に大きく依存しているのに対して、東部北太平洋
礎生産、栄養塩、pCO2等との関係を調べていく予定です。海
亜熱帯・移行領域・亜寒帯域と異なった水塊が南北に存在し
層の諸現象を捉えることができることから、地球環境変動機
では日射の変動との関連が強いことが明らかになりました
洋表層における物理環境の変動と海洋における生物の応答、
ます。西部には西部亜寒帯循環、東部にはアラスカ循環が存
構の解明に有用な道具として注目されています。
( Goes et al., 2004)。このことは、北太平洋においてもエ
炭素循環との関係を定式化できれば、生態系モデルの開発や
在し、それら 2つの表層循環系の循環パターン変動は、全球
北太平洋における植物プランクトン濃度および基礎生産の
ル・ニーニョ等の気候変動によって、その物理的な擾乱が大
検証にも十分貢献出来ると考えています。一方、衛星データ
的な気候パターンの変動と密接に関連しているともいわれて
季節変動及び経年変化を明らかにし、海洋表層でおこる物
気から海洋を通じて海洋の基礎生産の変動にまで影響を及
は、実測データと検証して初めて物質循環研究に使うことが
います。このように広大で、変化の富んだ海洋学的特徴をも
理・化学過程との関係を理解するため、複数の環境要素を同
ぼしている可能性を示唆しています。
出来ます。衛星データの検証作業においても、名古屋大学、
つ北太平洋は、全球的にも、気候変動と大きな関わりを持ち、
時に観測できる衛星マルチセンサー(クロロフィルa濃度・基
気候変動に対する海洋生態系の応答とフィードバックのメ
北海道大学、長崎大学等と協力して研究を進めています。昨
海洋の物質循環・生態系への影響が大きい重要な海域である
礎生産・水温・海上風データ・硝酸イオン濃度等)を用いた時
カニズムを理解するには、適切な時空間スケールにおける大
年の9月と11月に、当機構海洋調査船「かいよう」を用いて四
と考えられます。
系列解析研究をこれまで行ってきました。その結果、西部北
気−海洋の二酸化炭素フラックスの定量的な見積もりを行
国足摺岬沖において、基礎生産を実時間で測定する「自動昇
現在、人工衛星から地球表面を観測するリモートセンシン
太平洋では東部北太平洋と比べて、植物プランクトン濃度の
い、その季節変化及び経年変化を明らかにすることが非常に
降式ブイ観測」を実施しました(写真、図3)。本航海はこれら
グ技術が急速に発展し、海面の日射量、海面水温、海上風ベ
季節変動が大きく、春季ブルーム(春に植物プランクトンが急
重要です。そのために、現在名古屋大学と協力して、衛星を
の研究の一環として実施したものです。
用いた二酸化炭素分圧(pCO2)推定モデルの開発を進めてい
ます。pCO2は溶存無機炭素濃度(DIC)と、全アルカリ度(TA)
参考文献
がわかれば求めることができます。そこで、現場観測データ
Sasaoka K., S. Saitoh, I. Asanuma, K. Imai, M. Honda, Y.
からDIC、TAと、クロロフィルa濃度、水温及び塩分との関係
Nojiri and T. Saino, Temporal and spatial variability of
式を求めました。これらの推定式を用いれば、衛星のクロロ
chlorophyll a in the Western subarctic Pacific
determined from satellite and ship observations from
1997 to 1999, Deep Sea Res., Part II, 49, 5557-5576,
2002.
Goes, J. I., K. Sasaoka, H. R. Gomes, S. Saitoh and T.
Saino, A comparison of the seasonality and
–2
mgCm Day
–2
interannual variability of phytoplankton biomass and
–1
production in the western and eastern gyres of the
–1
(mgC m day )
subarctic Pacific using multi-sensor satellite data, J.
図1 衛星で推定した北太平洋における夏季8月の基礎生産速度の月平均値
2
Frontier Newsletter No.29
図2 衛星から推定した北太平洋における1998年4月の月平均の
二酸化炭素分圧 (協力:名古屋大学Sarma博士)
Oceanogr., 60, 75-91, 2004.
Frontier Newsletter No.29
3
プログラムニュース
気候変動予測研究プログラム
生態系変動予測研究プログラム
田村仁ポスドク研究員の研究発表紹介
7月に着任した石井励一郎研究員を紹介します。
2006年2月20∼24日にハワイにおいてOcean Science Meetingという、世界各国から
前任地の京都の総合地球環境学研究所では、琵琶湖集水域の人間活動が富栄養
3500人ほどの研究者が一堂に集う大きな国際会議が催され、当プログラムから8人の研究者
化や種の絶滅など水域生態系に与える影響モデルの研究をしていましたが、これ
が参加しました。ここではそのうちの田村ポスドク研究員の研究発表について紹介します。
までの研究の関心の中心は生物多様性の維持機構についての理論的研究で、対象
近年、海流−波浪の相互作用が異常波浪(freak wave)の発生要因の一つとして極めて
は高等植物や造礁サンゴなどの一次生産者である固着性生物でした。光環境の
注目を集めておりますが、高解像度海流データの不足により波浪予測研究ではこれまでほ
変化に対する生物の形態や生活史形質の適応、送粉者・植食者との相互作用など
とんど考慮されておりませんでした。本研究ではJCOPE高解像度モデルによる海流を用
を介した新しい多種共存のメカニズムの発見や、人間活動がこれらの群集の生産
いて、より現実的な海流効果を考慮した高解像度波浪モデル開発を行うと伴に異常波浪の
や組成に与える影響の評価の研究を行ってきました。いずれのテーマでも私自身
出現確率の評価を行いました。超大型で非常に強い台風が通過した2004年10月下旬を対
は数理的手法を主に用いるのですが、野外調査や、分子生物学的手法を用いる仲
象として海流の有無で波浪計算を行ったところ、黒潮流向と台風の通過に伴う海上風の変
有義波高の差分の空間分布
動により、東シナ海、日本南岸においては黒潮流軸上で有義波高の増大が、さらに台湾東
(海流あり−海流なし)
岸では最大80cm程度の顕著な差が確認されました。
間に囲まれ、生物のさまざまなスケールでの生態(いきざま)を実際に見る機会
に恵まれてきたおかげで、常に観察される現象に根ざしたモデリングを心がけるようになりました。フロンティアでは、気候変動が植物個
体の応答に始まる直接的・間接的経路を介してどのように大陸スケールの植生変化という巨視的な現象として現れるのかを探りながら、植
生変動予測モデルの構築へとつなげていきたいと考えています。これは衛星観測に対応した大きい時空間スケールでの生態学的現象のモデ
リングという私にとっての新たなチャレンジでもあります。
水循環変動予測研究プログラム
地球温暖化予測研究プログラム
ハワイ大学 国際太平洋研究センター(IPRC)での福富慶樹研究員の研究活動を紹介します。
昨年10月よりハワイ大学 国際太平洋研究センター(IPRC)に滞在し研究活動を行っています。2001年から最近までは主に北ユーラシア
の気候と水循環の長期変動に関する研究を行ってきましたが、IPRCでは、以前の研究テーマで
あるアジアモンスーンに立ち戻りBin Wang教授の研究チームで活動しています。これまで東
インド洋上で発生する季節内スケールの南風の吹き出しの性質と関連する熱帯–中緯度相互作
毎年12月に開かれるAmerican Geophysical Union(AGU)Fall Meetingでは、地球科学の様々な分野における最新の研究成果について
議論が行われます。地球温暖化予測研究プログラムからも、数人のメンバーが今年の会議に参加しました。
用についても調べてきました。これは南半球中緯度ロスビー波の発達によってもたらされます
本会議で、私は、大気中の二酸化炭素の濃度の上昇に対する大西洋子午面循環の応答についての研究成果を発表しました。大気海洋結合
が、中緯度から熱帯へ向けた寒冷乾燥空気の移流、熱帯対流活動の発達や赤道波応答などの
モデルを用いた数値実験の結果、二酸化炭素濃度が8倍になった場合には、一旦弱まった大西洋熱塩循環の強度が回復するまで長い時間が
種々の現象を引き起こし、インド洋域の熱帯大気海洋に大きな影響を与えていることがわかっ
かかることがわかりました。回復するまでに、北大西洋で循環強度、海面水温、海面塩分の100年スケールでの変動が観察されましたが、回
てきました。現在は大気四次元同化データや衛星リモートセンシングデータを用いたデータ解
村上多喜雄博士(ハワイ大学気象学科名誉教授) 析によって南風吹き出しの赤道越えアジアモンスーン域への影響の力学や、大気海洋相互作用
と福富研究員
陳永利研究員による2005 American Geophysical Union (AGU) Fall Meeting参加報告
復後は現在と同様、10年スケールでの変動に変化しました。しかし、この変動の大きさは大気中の二酸化炭素濃度が高いほど大きくなるこ
とを明らかにしました。
この会議で、私は各国の研究者と活発な議論を行い、様々な意見を交換しました。過去や未来の海洋循環変動に関するセッションを始め
過程についてさらに研究を展開しています。
とする多くのセッションが、とても有益なものであり、重要な知見を得ることに役立ちました。
大気組成変動予測研究プログラム
地球環境モデリング研究プログラム
10月に着任した庭野将徳ポスドク研究員を紹介します。
庭野ポスドク研究員は、これまでは成層圏寒冷化・対流圏温暖化において重要な役割を果たす、成層圏の水蒸気が対流圏から成層圏へ
どのように輸送されるのか? というラグランジュ的な輸送過程の問題に取り組んで来ました。大学院では、観測が難しかった上部対流圏
大気モデルサブグループでは、全球雲解像モデル(NICAM)の開発が一段落し、現実的な実験を通して、モデルの検討・改良を行う段階に
から下部成層圏の水蒸気量を長期に渡り観測することに成功したアメリカの衛星搭載測器
入りました。昨年は、水惑星条件ながら、世界初の全球雲解像実験に成功しました。また、気候感度実験も併せて行い、初めて全球雲解像モ
(UARS/HALOE)で得られた水蒸気とメタンのデータを利用し下部成層圏におけるラグランジュ
デルを気候問題に適用しました。現在は、現実地形を導入し、熱帯の大規模雲システム、放射収支に対する雲の影響に着目した実験を行っ
的な上昇流の季節変動・経年変動を明らかにし、下部成層圏における輸送過程および力学場の理
ています。また、水惑星実験の解析も継続しています。
解に貢献してきました。また、京都大学でのポスドク研究員時代は、熱帯対流圏界面域の巻雲、エ
海洋モデルサブグループでは、中規模渦と呼ばれる数十kmのサイズの渦が気候システムの中で果たす役割を解明することを目標に、海
アロゾル、鉛直流など対流圏界面域の水蒸気量を支配する各要素の地域性・時間変動を調べてき
洋モデルを開発し、研究を進めています。現在、中規模渦の効果が特に大きな海域である南大洋およびラブラドル海のモデルを用いてシ
ました。今後は、これまで用いてきた研究手法や方法論を活かし関東域における光化学オキシダ
ミュレーションを行っています。南大洋領域についてはシミュレーションの結果から中規模渦の効果を定量的に評価することに成功しまし
ント予報を念頭においた領域大気化学天気予報システムの構築を行い、光化学オキシダント発生
における輸送過程の役割を明らかにしていく予定です。
4
次世代モデル開発グループの進捗について紹介します。
Frontier Newsletter No.29
た。我々のグループでは、領域モデルに加え、立方体格子という特殊な手法を用いて計算効率を高めた新モデルの開発も進めており、海洋
庭野将徳ポスドク研究員
全体の循環の中で中規模渦の効果を評価することにも挑戦しています。
Frontier Newsletter No.29
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R
Report
t
A
Awards
d
平成17年度 地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)
地球環境観測研究センター(IORGC)合同成果発表会
開催報告
二宮洸三特任研究員が瑞宝重光章を受章
平成17年度の秋の叙勲において、地球環境フロンティア研究センター地球温暖化予測研究プログラムの
二宮洸三特任研究員が瑞宝重光章を授与されました。瑞宝重光章は、公務等に長年にわたり従事し、
成績を挙げた方々に授与されるものです。気象庁長官などの公務を長い間務め、国家又は公共に貢献してきたことが
平成18年3月16日と17日午前、海洋研究開発機構横浜研究所の三好記念
今回の受章へと結びつきました。二宮特任研究員より喜びの言葉が届きました。
講堂にて「平成17年度地球環境フロンティア研究センター・地球環境観測研
究センター合同成果発表会」が開催されました。これは毎年年度末に、両セン
昨年の叙勲を光栄に思い、同時に、気象事業全体に対してのものと受け止めており
ターの研究者を対象とし、
プログラムを超えた交流の促進、情報交換の場とす
ます。また昨年気象学会から頂いた藤原賞も研究グループに対する評価と考えており
ることを目的として開催されているものです。今年度は特に観測研究と予測
ます。公務員として、前半の約20数年間は気象研究所、気象庁数値予報課で研究開発
研究の連携をより一層促進するため、例年とは形式を変えて2部構成で執り行
に携わり、後半の 10数年間は管理業務に従事してきました。その後、東京大学気候シ
ステム研究センター、地球環境フロンティア研究センターに参加する機会を得たこと
われました。
を幸いに思っております。長年にわたる多くの方々からの御支援に改めて御礼申し上
1日目は第1部として、まずFRCGCの時岡達志センター長の開会の挨拶か
ら始まり、FRCGCの6プログラムとIORGCの4プログラム1計画から成果の発
会場の様子
表がありました。また、両センターそれぞれの国際共同研究先である国際太平洋研究センター( IPRC: International Pacific
Research Center, University of Hawaii, Manoa)からジュリアン・マクレアリー所長が、国際北極圏研究センター(IARC:
International Arctic Research Center, University of Alaska, Fairbanks)から赤祖父俊一所長が来日され、講演を頂きま
げます。近い将来にはノンプロフェショナル研究者として、
「20世紀の日本の豪雪」、
「20
世紀の日本の豪雨」等の気象学的ドキュメントを纏めたいなどの夢を描いております。
二宮洸三特任研究員
これは特異気象現象の気候予測の基礎にもなる資料だと思います。その時には是非データの使用等の御支援を頂きたくお願い
申し上げます。
した。1日を通して約150名の参加があり、
どの発表についても活発な質疑応答が交わされました。
また、会場の外には各プログラムの成果に関するポスターが貼られ、昼休みや休憩時間などに意見交換をする姿が見られました。
全てのプログラムの発表の後には、平成17年度の両センターの業績優秀者の表彰が行われ、1日目は終了しました。
(業績優秀者
の詳細は下記にありますのでご覧下さい。)
2日目は第2部として、将来ビジョン討論会を行いました。海洋研究開発機構(JAMSTEC)長期ビジョン検討委員会の和田英太
松野太郎特任研究員が日本学士院の新会員に選ばれました
郎プログラムディレクター(FRCGC生態系変動予測研究プログラム、PD)と深澤理郎プログラムディレクター(IORGC海洋大循環
地球環境フロンティア研究センターの松野太郎特任研究員が、平成17年12月12日に日本学士院の
観測研究プログラム、PD)が座長及び司会を務めました。両センターの地球システム科学の中での特徴や目標、
またJAMSTEC内
新会員に選ばれました。本センターからの会員の選定は初の快挙です。
での位置づけや、日本の中での位置づけなどにつき様々な意見が出され、両センターの将来の進むべき方向について討論を行い
ました。この討論会での議論は和田PD、深沢PDによりまとめられ、JAMSTEC長期ビジョンなどに反映される予定です。
最後に、IORGCの杉ノ原信夫センター長の閉会の挨拶により、1日半にわたる成果発表会は幕を閉じました。
平成17年度業績表彰受賞者リスト
Suryachandra A. Raoz(研究員)
気候変動予測研究プログラム
気候変動モデル研究グループ
伊藤昭彦(研究員)
生態系変動予測研究プログラム
陸域生態系モデル研究グループ
高解像度逆モデルによる二酸化炭素のソース・シンク推定の高度化
6
Frontier Newsletter No.29
メリカの科学アカデミーで、当時の指導的気象学者J.G. Charneyが中心となって報告書をまとめ、地球温暖化のおそれを初
めて警告しました。
(その時のCO2 2倍時の昇温の見積もり3°C±1.5°Cが未だに変わっていない!)
ある、
と言ってよく付随する仕事としては会員に続くような(相対的に若い)優秀な業績をあげた研究者に「学士院賞」を贈る
は科学全分野にわたる最高の研究発表の場と見なされ、一部は現在でもその地位を保っています。ヨーロッパの伝統として、
最高権威者の集まる会合で、会員の紹介のもとに研究発表し、そこで認められたが故に権威ある会議録(プロシーディングス)
に論文が掲載されるという考えに基づくものです。日本学士院でも今の所そのような考えのもと、会員による紹介を皆で了承
陸域生態系モデルSim-CYCLEを用いたアジア地域の炭素収支の
解析および観測データ統合化
すれば掲載するという方針がかろうじて保たれています。
(レフェリー制導入が話題になっていますが。)現実には、多くの研
究者は著名な国際誌に投稿する方を選ぶので、日本学士院のものは残念ながら本来の趣旨での高い権威はありません。しか
し、現代の多数決的論文掲載基準のもとで、ユニークな故に理解され難い論文の場合、会員をして「なる程、
これは何か大事
地球温暖化時の降水携帯に関する研究、及びIPCC・AR4に向けた諸貢献
なものがあるらしい」と納得させれば公表できる、
というメリットはあるかと思います。
会員に選ばれて3ヶ月経ち、月1 回の例会に出席して、少しずつ勉強をしている所です。先に触れた社会、政府への発言機能
河宮未知生(グループリーダー)
地球環境モデリング研究プログラム
地球環境統合モデル開発グループ
学・工学・農学・医学を含む)で権威者と目される人の集まりです。世界の多くの国では専門科学者の観点から国家社会に大き
事、プロシーディングスを発行する事、外国のアカデミーとの交流を図る事などです。プロシーディングスは、諸外国では古く
江守正多(グループリーダー)
温暖化予測研究プログラム
地球温暖化研究グループ
ます。英語では"Japan Academy"ですから世界各国にあるアカデミーに相当するもので、様々な科学の分野(人文・社会科
しかし、日本の学士院は、
このような役割を果たしていません。専ら、学問的に大きな業績をあげた人の栄誉を称える為に
アジア地域における地表面熱収支変動の研究
Prabir Patra(研究員)
大気組成変動予測研究プログラム
温室効果ガスモデリンググループ
この度、日本学士院会員に選任され、大変光栄に感じています。
「学士院」と言っても余りなじみがないかと思い少し説明し
な影響があると思われる事に関して発言し、また政府に提言する役割も担っているのが普通です。身近な例では1979 年にア
インド洋のダイポールモード現象の発生と収束における季節内擾乱の
役割の解明
徐 健青(研究員)
水循環変動予測研究プログラム
広域水循環変動グループ
日本学士院会員に選ばれて ー 松野太郎
地球システム統合モデルの開発
についても、日本学術会議とも連携して何かすべきではないか、
と考える方もあるようです。自分なりに選ばれた事に相応し
い何かの形での責任を果たして行きたいと考えています。
Frontier Newsletter No.29
7
平成 17年度受賞リスト
山形 俊男
気候変動予測研究プログラム
プログラムディレクター
平成17年4月
二宮 洸三
地球温暖化予測研究プログラム
特任研究員
平成17年5月
平成17年7月
可視化情報学会 学会賞(SGI賞)
「非静力学大気モデルを用いて再現された雲場の可視化」
平成17年9月
2004年度日本流体力学会竜門賞
「地中海水レンズ渦の連続形成に関する数値的研究」
相木 秀則
気候変動予測研究プログラム
研究員
伊藤 昭彦
生態系変動予測研究プログラム
研究員
平成17年9月
江守 正多、對馬 洋子、長谷川 聰、
坂本 天、鈴木 立郎、他12名
2005年度日本農業気象学会賞(論文賞)
「東アジア陸域生態系の純一次生産力に関するプロセス
モデルを用いた高分解能マッピング」
加藤 知道
生態系変動予測研究プログラム
ポスドク研究員
日本気象学会藤原賞
「気象擾乱の多スケール階層構造に関する研究および
気象基礎教育の普及における功績」
岩渕 弘信
水循環予測研究プログラム
研究員
紫綬褒章
「気候力学・地球流体力学研究功績」
平成17年9月
平成17年11月
農業環境工学関連7学会2005年合同大会・ベストポスター賞
「青海チベット高山草原生態系におけるCO2フラックスの
年々変化」
日経地球環境技術賞
共生課題1
二宮 洸三
地球温暖化予測研究プログラム
特任研究員
平成17年11月
瑞宝重光章
「気象業務における功績」
平成17年12月
国際化学技術財団平成17年度助成研究
「地球温暖化と陸域生態系の相互作用を評価するための
炭素循環モデルの開発と応用」
平成18年2月
2005年日本流体力学会竜門賞
「正20面体準一様格子を用いた非静力学大気大循環モデルの
開発」
平成18年3月
水産海洋学会2005年度宇田賞
「海洋生態系の数値モデル研究」
平成18年3月
「放射伝達シミュレーションによる様々な大気条件下における
伊藤 昭彦
生態系変動予測研究プログラム
研究員
富田 浩文
地球環境モデリング研究プログラム
研究員
岸 道郎
生態系変動予測研究プログラム
研究員
日本生態学会ポスター賞
小林 秀樹
生態系変動予測研究プログラム
ポスドク研究員
森林の光合成有効放射吸収量の3次元分布解析」
No.29
2006年3月発行
独立行政法人海洋研究開発機構
地球環境フロンティア研究センター
〒236-0001 神奈川県横浜市金沢区昭和町3173-25 フロンティア研究棟2階
TEL: 045-778-5746 FAX: 045-778-5497 担当:和木・堀
http://www.jamstec.go.jp/frcgc/jp/ E-mail: [email protected]
編集・制作:財団法人 地球科学技術総合推進機構
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