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基本的視点 : 静岡の特性を活かした「魅力」の最大化 Ⅰ 人口

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基本的視点 : 静岡の特性を活かした「魅力」の最大化 Ⅰ 人口
資料4-2
「人口減少問題に関する有識者会議」提言骨子(案)に係る意見
基本的視点 : 静岡の特性を活かした「魅力」の最大化
(1)静岡県の特性を踏まえた人口減少対策の構築
・静岡県の魅力や特性を踏まえた、静岡にふさわしい人口減少対策とすることが重要。
・自然減対策と社会減対策は、どの自治体でも同じような内容になってくる。
「静岡らしさ」を打
ち出していくという意味で、首都圏では出来ない住まい方など、静岡らしいライフスタイルや
地域の姿を売りにしていくとよいのではないか。
・
「静岡県の人口減少対策」としてわかりやすいメッセージを打ち出すようなものに仕上げていく
とよい。
(2)静岡県の魅力の最大化
・人口流出を食い止めることも大切であるが、本県への流入を促進できるように地域の魅力を磨
き、さらにその魅力を高めていくことのほうがよほど重要である。
・静岡の魅力を高めていく努力が必要である。その土地への愛着があれば、嘆くのではなく仕事
を創るはずであり、そういう努力をすることが大切である。
・交流人口のセトル・ダウンを促すために、産業、生活、教育・育児、医療・福祉部門における
発展的な計画と支援策の充実が望まれる。
・優秀な高校生たちに地元に残るよう言うのは酷でもある。むしろ若者には進学や就職で世界に
羽ばたいてもらう一方で、ライフステージ後半で「やっぱり故郷の静岡に戻りたい」と思って
もらえるような地域づくりをしていれば、もしかしたら逆に若い人も踏みとどまるかもしれな
い。そういうことが大事なのではないか。
Ⅰ
人口減少の「抑制」戦略
1
自然減対策
(1)社会総がかりでの次世代育成の促進
《社会全体の取組》
○ 次世代育成に向けた意識改革
・次世代育成においては、自分たちの老後を支えてくれるのは今の若い世代であるという、世代
間の支えあいを実感することができるような取組が大切。
・企業風土の改革に向けては、トップにその意識を持ってもらうことが重要。
・社会の意識が古い考え方になるのは、子育てや PTA 活動に父親の参加が少ないことも影響して
いるのではないか。活動の参加者が女性ばかりで、言わば社会から隔離された状態になってし
まっている。
・少子化対策として、M字曲線の窪み解消に向けたジェンダー意識の転換が必要。国民全体の意
識を根本的に変えることから始めなければならないかもしれず、そのためには、初等教育から
の子育て、家族に関する教育の役割も重要。
○子どもの頃からの次世代育成の意識の醸成
・生活レベルで、高齢者と幼児など多世代が触れ合う機会が増えると良い。例えば高齢者施設と
児童施設の併設など、既存施設に多機能的なものを追加していくことも考えられる。子どもと
- 1 -
の触れ合いを経験して子どもを身近に認識するとともに、子どもを支えることで、生む側に回
る可能性も高くなる。
・生命や乳幼児にふれる機会がもてなくなっているので、教育機会をもつことによって(例えば
誕生学などがある)
、喜びや幸せを感じながら次世代を育成する素地が醸成されるのではないか。
小中高校から子どもに触れる機会を作っていき、他人の子どもでも普通に抱っこできるように
なるなど、誰もが気軽に子育てを助け合う社会になればよい。
(2)夢を持ち安心して家庭を築ける環境整備
《出会い・結婚》
○出会いの場の創出と結婚機運の醸成
・少子化対策で一番弱かったのは結婚。ここの取組をしっかりしていく必要がある。
○若者の雇用・生活の安定化
・雇用の安定が次世代育成にも繋がることを記載してはどうか。所得の安定が若い人の生活の安
定をもたらすと同時に、家族を持つことで安定した生活に繋がっていく。そのような行動を選
択できるように。
(3)希望出生数をかなえる環境整備
《 出産 》
○母子保健サービスの充実
○安心して出産できる環境の整備
・出産や子育て支援の地域密着型拠点として、フィンランド等ではネウボラという制度があり、
日本でも参考になるのではないか。妊婦、母子等が相談、検診等に訪れるワンストップ施設で、
助産師会、NPO などに委託し運営している。日本では三重県に事例がある。
・出産施設や産み場所、多様な出産環境(助産院出産、自宅出産など)も整わないと、一人目は
里帰りで産めるが、上の子がいる状態で二人目の出産環境が整わず、二人目を躊躇することに
なる。特に伊豆は、出産環境が整っていない。
・
「少子化対策」は、自身が生んでも生まなくても社会全体が携わる「次世代育成」になったが、
ヨーロッパではさらに「家族支援」へと移行している。生みたい人が3人産める支援等により
出生率 2.0 が達成できる。
・静岡県は住みやすいところなので、出生率はもっと高くてもいいはずである。
・出生対策は、女性へのプレッシャーにならないように最大限配慮する必要がある。
(4)子育て支援の充実
《子育て》
○待機児童ゼロの実現
・保育においては、例えば子どもが2~3人いると必ずしも同じ保育園に預けられず、子どもを
複数の保育園に送ってから出勤すると疲れ果てているという事例も生じている。行政に出来る
ことも多くあると思うので、洗い出し作業をした上で、市町や企業にも呼びかけて一緒に取り
組んでいくと良い。
○多様で質の高い保育・教育環境の提供
・在宅保育や病児保育など、多様な保育の拡充とPRが必要。3年保育を基本として待機児童の
解消を求めているが、SOHO や在宅ワーク、ひとり親など多様な家族にはハードルが高い。
・児童の放課後対策の充実も必要である。
- 2 -
・「面白い仕事や保育がありそうか」「子どもにとって良さそうな地域か」など、「保育園、
幼稚園から高校までの長い子育て期間を楽しめそうか」ということが、子育て世帯にとっ
て大切な要素となる。公立中高一貫や私立中高も、まだまだ他県と比較して充実しておらず、
教育環境の更なる底上げが必要である。
・スポーツ活動の利活用の視点が重要。地域のスポーツクラブを通じて、学校や家庭でできない
教育を行う。運動能力の発達はもちろん、学力向上にも資する。生活と結びつけた国語や社会
の教育を行うことも大事。
○地域や職場における子育ての支援
・育児と就業の両立など、少子化対策としてだけではなく社会全体として推進していくことが必
要。その鍵は企業にあり、企業との連携を考えていかなければいけない。
・福岡県と佐賀県の「女性の大活躍推進会議」では、女性が出産しても働き続けることができる
環境づくり等のため、企業と地方自治体がスクラムを組んで自分たちが出来ることを目標宣言
している。日本人は目標に向かって進むことが得意であり、静岡県でも出来ればよい。
・育児休業の取りやすさのためには、育児休業の取得が職場にとって痛手にならないよう、育児
休業、時短をバックアップする企業への支援が求められる。また、企業誘致の際に子育てのし
やすさをアピールするなど、経済(企業)と生活(子育て、介護)の情報を分離させずに横串
を刺す必要がある。
・長い育児休暇は、キャリアを積んだ女性が職場復帰するモーメントやモチベーションを減ずる
可能性がある。子育てのために休職しても、即戦力として職場復帰できるような施策の検討が
不可欠。
・製造業が盛んな地域は男性の未婚率が高い傾向にあり、この対策を検討してはどうか。
・自身が生んでも生まなくても、誰もが喜んで次世代を育成できる施策を念頭におくとよい。
(生
むだけでなく、誰もが支える側へ=ファミリーサポート、保育ママ、里親、育休代替員等)
(5)健康長寿の促進
《健康づくり》
○県民の健康づくりの推進
・
「未病の思想」からの疾病予防が、健康長寿に有効ではないか。
- 3 -
2
社会減対策
(1)産業の振興と雇用の創出
《産業・雇用》
○多極的な産業構造への転換
・静岡県が豊かな県であるのは2次産業があるからであり、それが失われている。魅力ある、生
きがいのある雇用づくりが大切であり、以下の方策が考えられる。
<付加価値のとれる農業づくり(もうかる農業の追求)>
・首都圏での市場開拓、チャネル開拓、マーケティング組織づくりが重要。東京で調査し
たところ、静岡の農産物のイメージは北海道の次ぐらいに好評価を得ている。また、国
際競争力のある静岡の農芸品について、物流と一体となって輸出産業化していくことも
重要。
<次世代自動車産業の集積づくり>
・移動システム産業、EV、ソーラーカーなどについて浜松を中心に集積ができるとよい。
なお、アセンブリ型(組立型)の集積可能性はゼロと言って良い。賃金の採算ベースを
考えると、国内では海外に太刀打ちできない。
<医療分野でのものづくり>
・厚生労働省の認可に時間を要する等といった日本における参入障壁を突破するため、国
際医療特区の活用が考えられる。また、ファルマバレーでの医工連携として、国に先駆
けたプロジェクトに取り組んでいく必要がある。
・企業との連携は中小だけでなく大手との連携を考えてもよい。大手企業も困っているし
技術を持っている。
<30 万人都市の育成によるサービス産業の創出>
・サービス産業が成立すると言われる 30 万人を超えている浜松市(80 万人)
、静岡市(71
万人)におけるサービス産業の創出。併せて、富士市(25 万人)
、沼津市(20 万人)
、
磐田市(17 万人)などを 30 万人化するための上手な誘引策が有効。
・外国人の減少は、製造業における減少と繋がっていると思う。生産拠点の海外移転などグロー
バルな展開がある中で、製造業に関する減少は避けられない部分があるので、この減少は受け
止める必要がある。
・消費人口や労働力人口の縮小に応じて、付加価値のある財の生産と販売が求められる。ICT 産業
や高度先端産業、知識型産業など、産業経済構造の転換が必要。知識型産業の誘致先として、
首都圏と中部圏の中間に位置する静岡県の立地条件は決して悪くない。
・消費人口規模の縮小と高齢化に応じた産業構造・営業体制の再編が必要。創業のほか転業も含
めた変化の促進を吟味することも視野に入れるべきであり、その際に既存資源の再利用の想定
は不可欠。
○地域資源を活かした産業の創出・集積
・ローカルなエリアでローカルな需要を満たしていくような地場産業や地元の資源の活用が必要。
マイナーでも良いから特殊性のあるものをあちこちに自分たちで生み出していく。他では出来
ないことをやることが大切であり、政府もその方向にある。
・農林水産業や、食料・エネルギーの地産地消についても落としこんでいくべき。静岡には農林
水産業の潜在的資源があり、熱海の温泉資源も活用できる。いかに魅力を高めていくかが大切。
- 4 -
・静岡県の自然、観光資源、食材などと CATV、インターネットなどの新しいメディアにより新し
い産業を振興し、静岡の特徴を出すと同時に大都市で行うのと同様の事業もできるのではない
か。IT を用いれば、地方でも本来、都会と同様の機会があるはず。都会と違って、住居費や食
費は安く土地も広い。それを IT でうまくつなげられないか。
・製造業の強さが回復すれば、雇用が生まれて人口減少の抑制に寄与すると思うが、企業の立地
に関しては他地域との競争であるため、企業が静岡県に立地したい、静岡県内で事業を継続し
たいと思うメリットの明確化が必要。
・静岡県の位置は、新幹線や高速道路など他県がうらやむような恵まれた場所にある。もう一度
ポスト工業社会の中で恵まれたインフラを活かしていくことをテーマとして考えていくことが、
長期的には必要。また、短期的な背景には製造業の構造変化があること、回復について少し長
い目で見ながら考えていくことが必要。
・若者が定着するような静岡県の産業振興が重要。静岡県内で大卒者が就職する仕事が減ってい
るのではないか。また、将来のキャリアが描くことができる魅力的な仕事が少ないため学生が
戻らないのではないか。東京に出て行った大学生や静岡県出身でない大学生が、静岡に来たい
と思う仕事を提供できることが大切。
○県内企業とのマッチング促進
・地元の優良企業と大学生をどう繋げるのか、そこに人が関わることが重要。県内に就職先を見
つけられない理由のひとつに情報のミスマッチがあるのでは。インターネット就職になってか
ら、実績が良くても知名度が低い企業には就職しない傾向がある。
・地元の魅力的な企業があるに違いないが、たとえば東京に来ている学生がそうした企業情報を
得る機会は少ない。
・県外出身の学生をいかに引き留めるかが大きな課題。静岡大学においては、県内出身者は地元
志向が強いが、県外出身者が留まってくれない。インターンシップ等、地元企業や団体等と一
緒に活動しているが、なかなか引き留められない。県内の高等教育機関において、静岡の住み
やすさ、仕事や子育てのしやすさを情報提供する機会や人材を拡充することが望ましい。
(2)女性や健康な高齢者が活躍する社会の実現
《女性・高齢者》
○女性に魅力ある新しい産業・仕事の創出
・女性や若者が静岡県に残るように、よく話を聞いて、ニーズを満たす取組をしていく必要があ
る。静岡県が東京に設置している拠点や施設においても話を聞いていくべき。
・サービス産業など、女性が働く場をいかに開拓できるかがポイントである。
・TFRが上昇しても、若い女性が減れば出生数は減少していく。若い女性を静岡県内に引き留
める方策は何があるのかということ。テレワークなどを進め新しい働き方を提案する県である
ことの PR や、
ホスピタリティ的な産業において活躍を促進していくことなどが鍵になる。
特に、
高学歴女性にとって魅力的な仕事として、世界中を相手にしたサービス産業としての観光の振
興などにより、英語や IT に堪能な女性を惹きつけることも必要。
・人口減少社会に適応するためにも、女性と高齢者に活躍してもらわなければならない。静岡県
の企業は女性にやさしい、ずっと働ける、そんなイメージを発信できればいい。
・高等教育を受けた女性からは、例えば地方における雇用慣行における男女差の感覚が古くさい
という批判、大企業の地方勤務地限定正社員になることで昇進が頭打ちになるといった実例も
聞く。これらは県の問題というより雇用慣行の問題であろうが、大卒が地方県に根付かない理
- 5 -
由のひとつであり、県としても検討すべきことではないか。
・女性の活躍促進に向けては教育が大切である。女性にとってもキャリアの形成が重要でやりが
いにもなるといったキャリア教育や、父親業は生涯の中でとても楽しいことである、パートナ
ーと子育てを共に担うことが子どもにとってもいいことであるといった仕事・家庭の両立に関
する教育について、若い男女へ実施していくことが重要。
○中高年齢層が活躍できる地域づくり
・50 代後半から 60 代前半の高齢者や定年退職したサラリーマンが、東京や海外から故郷に戻り、
地域との結びつきの中でまちづくりや健康づくりなどに取り組めるとよい。それまで培ってき
た能力や経験を生かして地域に貢献したいと思っている人が、ボランティアや地域活動をしや
すいまちづくりが求められる。静岡は外の人を受け入れるオープンな雰囲気があるので、スム
ーズにいくのではないか。
・地域では高齢化が進み、日本人は内向きになっていると言われるが、子どもや若者は自分たち
で行動したいと前向きに考えている。若い人たちに任せて、高齢者と一緒に活動するプログラ
ムを作るといったことなどを積み重ねていけば、人口は増えていくのではないか。
・高齢者の呼び込みというと、社会保障や福祉など財政的な負担が増加するといったイメージが
あるが、一方で消費のことも考えれば必ずしもマイナスではないという意見もある。
(3)魅力ある教育環境の整備
《教育》
○教育の多様性確保
・地元で質の高い教育、高等教育を提供していれば、将来的に人は戻ってくる。また、静岡に来
た人に安心して長く住んでもらうためには、子弟の教育環境が大切。
・公立中高一貫や私立中高が、まだまだ他県と比較して充実しておらず、教育環境の更なる底上
げが必要。教育資源が限られていては、長い子育て期間を静岡で過ごそうと思う人が限られて
しまう。
・教育の向上に向けてのポイントは、キーとなる人を巻き込んでいくことである。あまりお金を
かけずに取り組める方法もある。例えば、生徒会には意識の高い学生がいるので、各学校の生
徒会を集めてサミットを開催するとか、生徒会を絡めて地域でのボランティアをするといった
ことが考えられる。
○高等教育機能の充実
・大学においては、魅力ある講座を展開するとともに、県外から来た人になじんでもらうような
取組が良い。
(4)交流の拡大と移住・定住の促進
《交流・定住》
○交流の拡大
・静岡には、世界遺産富士山や伊豆など他県が羨むような観光資源がたくさんある。人口という
面では、観光に即効性はないかもしれないが、まずは静岡のよいところを知ってもらい、リピ
ーターになってもらい、その中から住んでみようと思う人が出てくるのではないか。人口減少
対策をあまり狭く捉えず、幅広に捉え、観光客=潜在住民と考えれば良いのでは。
・
「食」も人を呼び込もうとしたときに大事なテーマ。そこに住もうと思うときに何を考えるかと
言えば、気候や食など本能を満足させるものである。さらに、例えば、祭りなど有形・無形の
文化財を観光資源としてわかりやすくPRしていけば、観光客もその地域の良さを感じること
- 6 -
ができる。
・社会減対策として、人の集まるイベントの定着を位置付けてはどうか。皆が一つにまとまるこ
とが出来るものがあると良い。昔は祭りであったが、それの現代版、例えば野球やサッカー、
芸術活動などが考えられる。
○移住・定住の促進
・東京や名古屋には無いものを目指すことが大事。ホスピタリティとツーリズムなどを前面に押
し出す生活や住まい方など、魅力的な新しいライフスタイルを提案し、それが可能なのは静岡
に住むことです、といった新しい PR を考えることが必要。
・自治体プロモーションを積極的に行うことを提案する。千葉県の流山市はマーケティング戦略
として自治体をPRしており、大変注目されている。静岡は堅実で「いいものは、自然に人を
ひきつけるはず」という製造業ポリシーを感じるが、広告・情報戦略、第三次産業的ポリシー
が必要。静岡県は既に魅力的な状況であるので、どのようにPRして人を呼び込むかを考えて
いくとよい。
・UターンやIターンをできるだけ捕まえていくなど、外から人を呼び込む取組が大切。人が多
くいれば雇用が生まれる。
・静岡は交通インフラに恵まれ利便性が高く、また津波避難的な意味からも、居住に関する魅力
を提供できると良い。また、県外だけでなく県内の人にも魅力的な居住であれば良い。これら
は民間がやることかもしれないが、地方公共団体もやれることがあるのではないか。
・移住者を受け入れる体制を作っておくことが重要。地域の人との繋がりをつくる機会の創出、
市町がサポートする仕組みの構築などが考えられる。具体的な事例として、徳島県神山町では、
空き家を利用し、東京のベンチャー企業のサテライトオフィスができている。地域に迷惑のか
からない方法で受け入れていることと、入ってくる側に地域貢献を求めない緩い感じがよかっ
たようである。また、多地域居住ではセキュリティが問題となるが、コミュニティの中に安心
感があると良い。
・Uターンの受入れでは、例えば、高齢者施設での雇用と合わせて空き家や公営住宅を用意する
方法、子育てもセットでアピールする方法が考えられる。また、何かの機会で一度訪れたこと
がある場所ならば、移住先を決定する際に後押しとなるのではないか。併せて、常住人口にこ
だわらず、多地域居住というスタイルもある。
・例えば伊豆地域は、全体としては転出超過にあるものの、東伊豆エリアを中心に高齢者の転入
が多いといった特徴がある。東京では一等地でも高齢者福祉施設が建設されており、伊豆の住
みやすさをPRして首都圏の高齢者を呼び込むといった対策が考えられる。
○外国人や留学生の呼び込み
・ 2020 年の東京オリンピックは、東京に近い静岡県が取り組んでも良いテーマである。外国人は
富士山を皆が知っているし温泉もある。観光客を静岡に呼び込んでいくとともに、静岡の良さ
を知ってもらえば、住んでみたいと思う人もいるのではないか。
・アジアで日本語がブームとなっており、日本に来たい若者はたくさんいる。大学生とか言って
いたら遅いので、中高生レベルで日本語を勉強したい子どもを静岡に受け入れ、その子どもた
ちが海外に戻ってまた次の人たちを呼び込むといった、そのような取組が必要ではないか。
・静岡県は富士山や温泉などがあり、外国人に魅力的な地域であるので、関西から東京に至るゴ
ールデンルートの途中で引き留めることができる可能性がある。
・人口が減少していく日本の将来を考えた時に、外国人の定住、活躍をポジティブに捉えていけ
- 7 -
ばよいのではないか。既存の外国人コミュニティを生かし、静岡県が外国人受け入れの先進地
域となっていけるのではないか。
・静岡県が外国人受入れの先進性をアピールして、より良い人材に留まってもらうと良い。
・優秀な人材を呼び込む仕組みづくり、来て欲しい人材のイメージの共有を図っていくことが必
要。
(5)安全・安心な地域づくり
《安全・安心》
○地震・津波対策の推進
・県土強靭化対策が必要。大規模地震が高い確率で発生することが想定されており、地震の問題
を無視することは出来ない。
・静岡県は地震関連の報道が多くされており、不利な立場におかれている。静岡県が実施してい
る地震・津波対策を積極的にPRしていくことが安心につながる。
- 8 -
Ⅱ
人口減少社会への「適応」戦略
3
地域の持続的発展
(1)人口減少下における持続的成長
《生産性の向上》
○生産性の向上
・一人当たり年間県民所得のアップ(現状3位のキープ)を目指すべき。
・生産性の向上については、経済だけではなくライフスタイルを含めた総合的なイノベーション
が重要。言わば、
「ライフスタイル創造型イノベーション」
。
・企業は創造力ある人材を欲しており、クリエイティブ人材の存在が技術革新に繋がる。静岡県
は今まで製造業で潤ってきたが、これからは創造型で付加価値を上げていくことも大切。
(2)ライフスタイルの変化への的確な対応
《ライフスタイル》
○働き方の変革
・今後は人口構造的に、両親が働いて子どもを育てないとやっていけない。共働きを支える子育
て環境の整備、再就業や父の子育て支援などが必要。
・日本の雇用形態やライフスタイル(長時間労働など)には、性別役割分業が組み込まれている
ため、そのようなスタイルや価値観がOKな人でないと男女とも家庭を築けないことになる。
共働きも前提とした社会構造が必要である。
・将来の介護においては生活パターンが見えず、現在の給料は上昇しない。夫婦が一緒になって
支えていかなくてはいけない状況で、それもいいと思えるような生活を提示していく。そうし
ないと、家族が形成されていかない。
○環境に配慮した生活スタイルの定着
・地域でエネルギーの生産と消費が行えると良い。 静岡県でも南アルプス周辺などの豊富な森林
を活用した持続可能な体制が出来るかもしれない。例えばバイオマス発電は、林業と結びつき
ができ、地産地消で人が携わることができる。
(3)地域社会の活性化
《地域社会》
○地域における新しい絆の形成
・地域コミュニティの活性化として、
“新たな公”に参加してもらう取組が必要である。まだまだ
地域に根を張っていない。また、若者に、大人がまかないきれない部分を担ってもらうような
取組ができないか。
・地域で活動する諸組織、NPO などと行政とが連携をとり、その結節的な場として小学校、小学校
区が位置づけられうる。
・地域のために働きたい人々は潜在的には多いものの、そのような人々の想いと行動力を生かす
場や仕組みが無い。既存組織との連携ができるシステムを考えてはどうか。ソーシャル・キャ
ピタルについてはボトムアップからの視点が必要。
・既存の自治会は、役員や民生委員などの“役割型”であって、皆がやりたがらない。これまで
とは違った新しい結びつきが必要。そのひとつが介護保険事業の NPO。サービスを提供する中で
お困り情報を得ていて、人々の繋がりをつくっている。
・昔のコミュニティとは異なる集まるテーマが必要。
「ゆるい、でも楽しい繋がり」
。それが人々
を惹き付ける大きな魅力となるのでは。それを地域の中にたくさんつくる。ファブラボも一種
- 9 -
のコミュニティスペースで、教える・教えられることで繋がりができる。
・近くに子どもがいない単身高齢者など、家族内の相互扶助機能は期待できなくなってきている。
ステップファミリー、国際結婚など多様な家族形態に対するきめ細かな支援も必要。家族を超
えて繋がることができる場をいろいろな形でつくっていく、そんな地域社会像はあるのではな
いか。
○地域の国際化
・外国人の呼び込みは、今後はアジア諸国も人口減少に突入していくことから、長期的な視点で
見ると日本に来てくれる望みは薄くなっていくが、地域の国際化という視点では必要である。
・外国人が住みやすい県であることをアピールしていくこと、多文化を受け入れていくことも人
口減少対策として利点になる。製造業でたまたま来た外国人が、静岡の良さを知って永住権を
取得して住み続ける事例も多い。外国人に対する施策も考えていただきたい。
・留学生を相互に受け入れ、県立学校に1人は外国人ではないが、お互いに異文化に触れる機会
をつくっていったらよい。ただし、最近は親が子どもを海外に行かせたがらない傾向があるの
で、親の理解を得ることも必要。
・留学生の地域への溶け込みが大切だと思うが、まだまだである。インターンシップでも、企業
がなかなか留学生は受け入れてくれない。受け入れても定着しないと思われているのが理由で
はないか。また、小学校等で母国を紹介するような講座の開催なども考えられる。
○効率的で持続可能なまちづくり
・生活機能の検討はなかなか難しい。営業時間の例で言えば、夜は営業しなくてよいという考え
方の一方で、グローバル化の流れから常に営業が必要ということもある。
「地域性に応じて」と
いうことか。
・既存の地価が高い中で、無理やり中心市街地に近いところに詰め込むとかいうことは、生活の
質という点からも、必ずしも望ましいことではない。幾つかのポイントをつくりながら、生活
しやすい地域をつくっていくことをまず優先して考えていくべき。コンパクトシティという言
葉を無限定に使わないほうが良い。
・コンパクトという時に、具体的に何をしていくか考える必要がある。一番つまらない解は、駅
周辺に施設を集中させてタワー型マンションなどを建設させていくこと。どのスケールでコン
パクト化を考えるのか、現在コンパクトではない状態としたら何が問題となっているのかを考
えなくてはいけない。ゆったり住まう、居住地の選択性が高いということを大事にしていくべ
き。
・コンパクト化では、人口減少に対応した住みやすさの追及をしていくと良い。
・人口減少下でコンパクト化は当然必要だが、地域性に応じてコンパクト性の中身や広さを考え
ないといけない。また、満足度を下げない範囲でどのように進めるかを考える必要がある。例
えば都市再開発にあたり、今までの面的再開発から、道路網の整備によるアメーバ的な再開発
をしていくような発想も出てきている。また、タクシーの巡回サービスなど今まで使っていな
い機能を活用していくことでサービスを維持していく方法も考えられる。
・都市構造については、周辺町村に高齢者を抱えることは買い物難民や財政の効率性の視点から
も負担が大きくなる。集積に向けて思い切った考え方の転換も必要かもしれない。
- 10 -
(4)行政運営の効率化・最適化と連携の推進
《行政運営》
○既存の自治体の枠組を超えた対応
・今後は計画的撤退を進めていかざるを得ない。人口規模だけで考えれば明治時代の集落の分布
となるが、インフラ等が当時とは異なるわけであるから参考にはならず、人口3分の1の姿、
集落の規模など、新しい形を考えていかなくてはいけない。
・これからの社会を考えていく時に、市町村単位で行政サービスを提供する仕組みは持続可能と
は言えず、今後、集約等は避けて通れない。既存の自治体の区分けを超えた対応が必要になっ
ていく。人口流出を食い止めるというよりも堰き止める集積を作り、仕事・雇用を生み出して
いく必要がある。
・地域においては、市町村合併によって、逆に活力が削がれていることもありうる。合併のスケ
ールメリットがどうなっているのか。広域連携や集落単位など、市町の境界を取り払うことも
考えながら、地域の活性化を検討していくべき。
・市町村(平成の大合併前)程度の規模における地域経済を考えたときに、第一次産業、とりわ
け中山間地域などにおいては、林業・森林管理の合理化と自治体行政の効率化が不可欠である。
○今後の行政需要を踏まえた施策展開
Ⅲ
人口減少対策の推進体制
4
推進体制
○官民一体での推進
・人口減少対策の項目はいろいろとあるが、どこに力点を置いて取り組んでいくか。市町と協議
したうえで県が協力していくことが大切。主役は県というより市町と企業である。地域の議論
は地域でしていくべきであり、県全体だとリアリティがない。例えば5地域ごとに、市町や経
済界など様々な団体に入ってもらって議論していくと良い。
・市町とも率直な意見交換をして、連携して取り組んでいけば面白い取組ができるのではないか。
・県だけで進められるものではなく市町をまきこんでいかないと進まない。
○地域の特性を踏まえた推進
・市町村ごとの分析が大切であり、その結果でどこに重点を置くかが変わってくる。例えば伊豆
と浜松市では別の問題があるだろう。
・地域別の傾向、課題を踏まえた対策の検討が必要。政令市である静岡市と浜松市、プラス他の 3
地域(伊豆、東部、志太榛原・中東遠)のそれぞれの特徴、強みに応じた対策を構築していっ
たらどうか。
- 11 -
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