Comments
Description
Transcript
新たな技術的対応の動き
<新たな技術的対応の動き> 平成24年における情勢の変化や新たな通知の発出等を踏まえ、新たに本指針に盛り込 んだ農業現場等において新たに必要とされる技術的対応について以下に紹介する。 (下記各項目の本文中の関連箇所には、★を付記) 1 農業新技術2012の選定 農林水産省では、近年の研究成果のうち、早急に生産現場へ普及を推進する重要なも のを毎年選定し、その普及推進を図っている。平成24年は、「農業新技術2012」 として、①「生産コスト低減を支援する技術」、②「作業の省力・軽労化を推進する技 術」、③「収量増加と品質向上のための技術」を選定したところである。 個別技術として、①では、「酪農の経営改善に貢献する泌乳持続性の高い乳用牛への 改良」、「トルコギキョウの低コスト冬季計画生産技術」、「トンネルダクトと枝ダク トを組み合わせた促成なすの低コスト株元加温栽培技術」の3技術が、②では、「操作 しやすく、果樹の管理作業の安全性を高めた高所作業台車」が、③では、「農地の排水性 を改良する低コストな補助暗渠工法」が選定されている。 また、東日本大震災被災地の災害に強い新たな農業生産拠点としての復旧・復興を実 現するため、「農業新技術2012」の公表に併せ、農地の復旧・復興や減災に資する 技術を「震災復興等を支援する技術」として紹介している。 本指針では、これらの個別技術について、「Ⅱ 営農類型別の技術的対応の方向」およ び「Ⅲ その他、特に留意すべき技術的事項」の関連箇所に紹介した。 これらの新技術については、我が国の農業の再生を技術的な側面から支えるものであ り、国と都道府県の連携のもと、早急に現場への普及を推進していく必要がある。 <関連情報> 農林水産省HP「農業新技術2012」 http://www.s.affrc.go.jp/docs/new_technology.htm -2- 【農業新技術2012の個別技術】 2 近年の気象状況を踏まえた技術の開発・普及 平成24年は1月~4月にかけての豪雪や低温、4月上旬の大型低気圧の通過、台風 や梅雨前線による暴風、豪雨等によって農作物や農業施設等に被害が発生した。 -3- 農林水産省では、被害を最小限とする観点から、本指針(「Ⅲ(Ⅱ) 主要作目の災害 対策技術上の基本的留意事項」に記載)を踏まえ、気象状況の変化に応じて農業現場で 行うべき技術的対策の事項について指導をしていただくよう通知してきたところである。 特に本年は夏場に記録的な高温を記録したが、平成22年夏に発生した農作物の被害を 踏まえて、全国的に温暖化適応技術の開発や普及が図られてきたところであり、これら の技術対策は本年度の夏の高温被害の軽減にも一定の効果があったと考えられる(下記 トピックの事例を参照)。 今後も地球温暖化の進行等の影響により夏場の高温被害の発生が懸念されることから、 さらなる温暖化適応技術の開発・普及に努める必要がある。 ぶどうにおける温暖化適応技術 水稲における温暖化適応技術 これまでに「安芸クイーン」で確認されていた環状 はく皮による着色向上効果について、黒系の「巨 峰」、「紫玉」においても効果を確認 肥効調節型肥料への追加穂肥により、 白未熟粒が軽減するなど、品質が向上 実証区 主幹部に5mm幅で環状はく 皮処理(満開約30日後) 対照区 ○ 水稲の品質調査結果(コシヒカリ) 巨峰の着色状況(8/10撮影) 整粒 白未熟粒 その他 実証区 85.4% 2.7% 10.7% 対照区 77.2% 4.7% 16.4% 【出典:平成24年度地球温暖化戦略的対応体制確立事業における実証結果】 3 米のカビ汚染防止のための管理ガイドラインの策定 →P9 収穫直後の籾米を気温と温度の高い場所で長時間かけて自然乾燥したり、汚れた建物 や設備で籾米や玄米を乾燥・貯蔵したりするなどの誤った管理をすると、米にカビを生 育させてしまう可能性がある。このようなことが起きないように、農林水産省では、み ずから米の乾燥調製、貯蔵、出荷を行っている生産者に向けて、乾燥調製や貯蔵段階で、 米に「カビを生育させない」ための管理点をまとめた「米のカビ汚染防止のための管理ガ イドライン」を策定した。 なお、今後も新たな知見が得られた場合は、順次ガイドラインを更新していくことと している。 -4- <関連情報> 農林水産省HP食品のかび毒に関する情報 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/ind ex.html 4 重要病害虫発生時対応基本指針の策定 →P28 国内にまん延すると有用な植物に重大な損害を与えるおそれのある重要病害虫が発生 した場合には、国及び都道府県が連携し、これを駆除し、そのまん延を防止するために 必要な措置を迅速かつ的確に講ずることが必要である。 このため、農林水産省では重要病害虫のまん延を防止するために必要な措置に関する 標準的な手続き並びに国及び都道府県の役割を定めた「重要病害虫発生時対応基本指針」 を策定した。 【重要病害虫発生時対応基本指針に定める関係機関の行動内容(流れ図)】 <関連情報> 農林水産省HP「重要病害虫発生時対応基本指針について」 http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/ap/ap.html 5 「野生動物管理システムハンドブック-ニホンザル・ニホンジカの総合的な被害対策 の進め方-」の策定 →P28 野生鳥獣による農作物等の被害は全国的に拡大しており、その被害は農業者の営農意 欲の低下や耕作放棄地の増加といった要因になっている。 このような中で、農林水産省では野生鳥獣による農作物被害対策を効果的に進めるた めに、防止対策の各種マニュアルを策定しており、実際の被害現場における対策の指導 等に活用されている。 しかし、実際の対策現場では、個別の被害対策技術にとどまらず、野生鳥獣対策の基 本である個体群管理、被害管理(防護対策等)、生息環境管理の主要な対策をシステム -5- として統合し、総合的に継続性のある対策を推進する必要がある。 このため、農林水産省では、特に被害対策の進め方が難しいとされるニホンザルとニ ホンジカを対象に、必要な野生動物管理システムと総合的な対策の進め方や被害対策に 取り組んでいる地域の調査事例等を掲載した「野生動物管理システムハンドブック-ニ ホンザル・ニホンジカの総合的な被害対策の進め方-」を公表した。 【集落ぐるみによる防護柵の設置】 <関連情報> 農林水産省HP「鳥獣被害対策コーナー」 http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/index.html 6 帰化アサガオ類のまん延防止技術マニュアルについて →P44 近年、ほ場周辺で問題となっている帰化アサガオは、熱帯及び温帯アメリカ原産で、 気温が高いほど生育がよく、国内でも温暖化によって分布域の拡大が予想されている。 帰化アサガオは、花が次々と咲き、種子を作りほ場内や地域全体に広がっていく。こ のため、侵入初期の適期に防除し、種子を作らせないことが重要である。また、一度大 豆畑に入り込むと、除草剤が効きにくく、つるが大豆にまきつくため、防除が困難にな る。 このため、(独)農研機構では、ほ場周辺における帰 化アサガオの防除の適期や方法、注意事項等をまとめた 「帰化アサガオ類の地域全体へのまん延を防止するた めのほ場周辺管理技術」を公表した。 【帰化アサガオ類の生育と要防除時期】 -6- <関連情報> (独)農研機構HP「帰化アサガオ類まん延防止技術マニュアル」 http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pam ph/012185.html 7 農作業事故の対面調査等の分析結果の公表について →P71 農作業災害や農作業事故は、企業における労働災害と異なり法規制の対象外となって いることから、その件数や事故原因が究明されていないため、事故の経験が農業機械の 改良や安全対策に組織的に結びつきにくい。 このような背景から、農林水産省では、全国的な規模で初めて、農作業事故の原因等 について、事故を経験された方々からの聞き取りにより詳細な分析を行い、その結果を とりまとめた「こうして起こった農作業事故~農作業事故の対面調査から~(事故事例 集)」を公表した。 これまではっきりとしていなかった事故原因が事 例として整理されており、農作業事故防止のための研 修会や座談会等においての活用が期待される。 【事故防止のための対策】 <関連情報> 農林水産省HP「こうして起こった農作業事故~農作業事故の対面調査から~(事 故事例集)」 http://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/23taimen.html -7-