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Scorpion 偽 Ischnuridae

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ヤエヤマサソリにおける卵膜の消長に関する予備的研究
山崎一憲・牧岡俊樹
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サソリ類は、卵胎生もしくは胎生によって繁殖している (
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,。卵胎生サソリの症は卵に含
まれる卵黄を栄養源として成長するのに対し、胎生サソリの卵は無責卵であることから、脹発生に必要な栄養物
質は母体から目玉へ直接供給される。 胎生サツリの!If発生に関わるこの栄養供給はこれまでにもいくつかの種にお
いて報告がされている (
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.,Mathew,1956)。今回材料としたヤエヤマサソりは胎生種であり、目玉は卵巣管から
突出した卵巣盲嚢とよばれる保育器中で発生・成長する。その際、匹発生にともない卵巣盲嚢も著しく成長し、
とくに、卵巣盲嚢の先端部が伸長し appendixとよばれる栄養吸収のための構造を形成することはよく知られてい
る (
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)。しかしながら、佐および卵巣盲嚢におけるこのような栄養吸収が始ま
る以前にも、無責卵の発生には母体からの栄養供給が必要であると考えられる。しかし、早期症への栄養供給に
関する研究はいまだほとんど行われていない。
これまでに私たちは、ヤエヤマサソリにおける一次卵母細胞期から嚢肱期までの目玉発生とそれにともなう卵巣
盲嚢の成長の過程を組織学的に観察し、成長した卵巣盲嚢において液胞を蓄えて膨張した内層上皮細胞の液胞の
崩壊と症をとりまく櫨胞腔の拡張の時期が一致することを見いだし、 i
慮胞腔は内層上皮細胞の液胞由来の液状物
質の流入によって拡張すると考え、また脹はその液状物質を栄養としているのではないかと推測した (Yamazaki
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)。本研究では、早期妊の栄養取り込みを妨げると考えられる卵膜に着目し、佐発生開始前後の卵膜の
消長を組織化学的および電子顕微鏡的に観察した。
材料と方法
材料としたヤエヤマサソリは沖縄県西表島で採集し、週に一度シロアリを餌としてあたえ、 2
8Cの温度条件下
で飼育した。当研究室では、ヤエヤマサソリの継代飼育に成功しており、通常 6齢で成体となること (Makioka,
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)、繰り返し出産が可能であること (Makioka,1992a,
b
;YamazakiandMakioka,2001)、若虫出産後新たな世
代となる一次卵母細胞を含む卵巣盲嚢が成長を開始すること (Makioka,1992a) などの生活史上の諸点について
も確認できている。そこで今回は、一次卵母細胞を含む 5齢亜成体の卵巣と、出産後新たに成長・発生を開始し
た一次卵母細胞から嚢目玉期までの駐を含む成体の卵巣を材料とし、 PAS アルシアン青ーへマトキシリン三重染
色による組織化学的観察と透過型電子顕微鏡による観察を行った。
結果および考察
1
. 組織化学的観察
亜成体の卵巣では、一次卵母細胞は卵巣管の卵巣壁中に存在し、涛』包細胞によって囲まれていた。直径約 25μm
までの若い一次卵母細胞はそれら液胞細胞と密着しており、両者の間に膜状の構造物は認められなかった。直径
約 40μmに達した一次卵母細胞では鴻胞細胞との問に PASによって染色される隙聞が認められた。これは一次卵
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母細胞が PAS陽性の糖タンパク質の膜様の層によって囲まれていることを示している。
成体の卵巣で卵巣盲嚢が成長を開始してから約 1
4日目までの初期の卵巣盲嚢は、最大の大きさ(直径約 50μm)
に達した一次卵母細胞を含んでいるが、これらの一次卵母細胞も、 PAS陽性の糖タンパク質の膜様の層によって
閤まれていた。また一次卯母細胞が減数分裂を開始する直前にあたる約 1
6日目では、一次卵母細胞は PASとアル
シアン青の混ざった紫色の膜様の層によって囲まれていた。これは、この時期の一次卵母細胞の周囲で PAS陽性
の層に酸性ムコ多糖を含むアルシアン青陽性の成分が新たに加わったことを示している O この紫色の層は、症発
生が開始し、卵巣盲嚢壁の内層上皮細胞が液胞を蓄え始める約 2
2日日まで存在していたが、内層上皮細胞の液胞
が崩壊し始める約 2
4日目には消失していた。鴻胞腔が拡張を始める約 2
6日目(胞粧期)以後、医が嚢脹期に達
する約 30日目までの聞は、座周囲に紫色の層は存在しなかった。
2
. 透過型電子顕微鏡による観察
亜成体の卵巣において、直径約 35μmに達した若い一次卵母細胞では、卵母細胞の細胞膜上に微紋毛の存在し
ない場所と微繊毛の生え始めている場所と微紋毛が密に存在する場所がみられた。微紋毛の生え始めている場所
と微繊毛が密に存在する場所では微繊毛の周囲に電子密度の比較的低い物質が集まっているのがみられた。直径
約 50μmに達した一次卵母細胞の細胞膜には微紋毛が一様に存在し、一次卵母細胞は微繊毛も含めて厚さ約
0.4μmの電子密度の比較的低い物質の層によって全面が覆われていた。しかし、議胞細胞の細胞膜表面にはそ
れら電子密度の低い物質は到達していなかった。以上のことから、この物質の層は一次卵母細胞に由来し、した
がって一次卵膜に相当するものであると考えられる。
成体の卵巣において、成長を開始してから約 8日目までの卵巣盲嚢に含まれる直径約 50μmの一次卵母細胞の
周囲は、比較的電子密度の低い厚さ約 O
.7μmの層によって覆われ、それは液胞細胞表面にまで達していた。約
1
0日目の滅胞細胞内にはゴルジ体とそこから形成されたと思われる電子密度の高い小頼粒を含む小胞が多数観
察され、 j
慮胞細胞の細胞膜表面から一次卵膜に相当する層へ向けてそれら電子密度の高 U吋、頼粒が放出されてい
ると思われる像も観察された。約 1
6日目になると一次卵母細胞は電子密度の高い物質の層によって完全に覆わ
れていた。
以上のことから、卵巣盲嚢の成長開始以後約 1
0日日頃から、成長期の一次卵母細胞の周囲にすでに存在してい
た一次卵膜に相当する層に、 b
慮胞細胞由来の電子密度の高い物質が付加され、約 1
6日目の一次卵母細胞の周囲で
は、一次卵膜に相当する層は電子密度の高い物質からなる三次卵膜に相当する層とほぼ完全に混合すると考えら
れる。約 1
9日目の発生開始直後の脹の周囲にも二次卵膜に相当する層が観察された。しかし、卵巣盲嚢壁内層上
皮細胞の液胞が崩壊し始める約 2
6日日頃には、二次卵膜に相当する層は分解し始めており、波胞腔が拡張し始め
る頃には完全に消失していた。約 30日日になり嚢目玉期に達した匪では、目玉表層の各細胞の細胞膜に微繊毛の発達
が観察された。
今回の観察における時間的および位置的対応に基づき、ヤエヤマサソリの卵膜消長について次のようなことが
明らかになった。一次卵母細胞が直径約 35μmに達すると一次卵母細胞自身によって、その周囲に PAS陽性で電
子密度の比較的低い一次卵膜に相当する層が分泌され一次卵母細胞を包む。この一次卵膜に相当する層は成体卵
巣で卵巣盲嚢が形成されはじめてから約 1
0日日頃まで存続する。その後約 6日程の間に一次卵膜に相当する層
はi
慮胞細胞から分泌されるアルシアン青陽性で電子密度の高い二次卵膜に相当する層と混ざる。そしてこの二次
卵膜に相当する層は約 1
0日後の液胞腔が拡張し始める頃には消失する。
二次卵膜に相当する層が形成されてから消失するまでの期間は、卵巣盲嚢における a
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内層上皮細胞の液胞蓄積など劇的な変化の起こる時期に相当する。この変動の時期に、二次卵膜は卵母細胞ある
いは症を周囲の環境変化から保護する働きがあると思われる。また、この層が消失する時期は、 i
慮胞腔が拡張し
始める時期(胞脹期)であることと嚢匪期脹表層の細胞には多数の微紋毛が観察されたことから、目玉は二次卵膜
を失うことにより脹表面から栄養物質を取り入れることができるようになると推測される。つまり、ヤエヤマサ
ソリ症における卵膜の消失は、阪への栄養供給と密接に関係して起きていると考えられる。
胎生サソリにおいて、佐発生過程初期の脹周囲に卵膜が存在することは、わずかではあるが、これまでにも観
察されている (
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4細胞期日五時には存在していた卵膜がその後消失することを観察している。しかしながら、これまでに、卵膜の
由来さらには卵膜と脹への栄養供給との関係について追究した研究はない。今回の私たちの観察は、まだ予備的な
段階ではあるものの、胎生サソリにおける母体から妊への栄養供給に関する新しい視点を提供するとともに、今
後、サソリを材料として卵胎生から胎生への進化に関する研究を進めていく上でも有用な情報であると恩われる。
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