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カレント寄稿
カレント寄稿
世界水ビジネスの
状と今後の展望
術で勝って、
ジネスで負 ける日本
吉村 和就
パ
ン
代
ご
鯰織毅獅鴨ャ
世界各国 は国を挙 げ て水イ ンフラビジネ ス創出 に取り組ん で いる。
二、 世界各 国 の水 ビ ジネ ス戦略
が実態 であ る。
きる こと にな った が、 民間企業 にと り、水道事業 のリ スク管 理 ︵
民 が経営す ること の議会
や住 民 の同意、責任 の所在、組合問題等 ︶ の不透 明さ があ り、遅 々とし て進 ん で いな いの
いな いので事業経営 の実績 はな い。した が って世界銀行や アジア開発銀行 が行う国 際入札
にも参加 できな い。 日本 でも 二〇〇 二年 に水道法 が改正され民間企業 が水道事業を経営 で
あ る。 フラ ンス人 にし てみれば、水道 は民営 が常識 であ る。 それ に比 べ日本 の水処 理メー
カーは、役 所 の仕様書 に基 づ いた機 器を納 入す るだけ で、事業運営、 そ のも のに関わ って
水 メジ ャーは、上下水道事業を 一貫 し て請け負え る実力を有 し て いる。 そ の背景 は、 ヴ
ェオリ ア、 ス エズとも フラ ンス国内 の上 下水道事業を 百五十年前 から遂行し て いるから で
一、 水 メ ジ ャー と 日本
日本 の技術 の存在感 はな い。 ﹁
技 術 で勝 って、 ビ ジネ スで負 ける 日本﹂ の実態 に迫 り、今
後進展す る世界水 ビジネ ス ヘの日本 の水戦略を 述 べる。
技術を有 し て いると自負し て いるが、世界水 ビジネ スの視点 から見るとガ ラパゴ ス化した
世界 の民営化された上 下水道事業 は水 メジ ャーと呼ばれ る仏 のス エズ、 ヴ エオリア、英
国 のテムズ ・ウ ォーター社 が市場を寡占し て いる。 日本 の水処 理技術者 は、世界 に誇 れ る
も出され て いる。
世界水 ビジネ ス市場 は、 二〇三〇年 には八十 ∼百 二十兆円 にな ると の予測もあ る。水 ビ
ジネ スの約 八割 は、民営化された上下水道 の事業経営 であ り二〇〇六年時点 では、世界 の
上下水道 の民営化率 はおよそ 一〇% だ った が、 二〇 一五年 には 一六% に拡大す ると の予測
はじめに
ビ表 現
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0 フラ ンスの水戦略
ヴ ェオリア社、 そし て ス エズ社、 二 つのフラ ンス系企業 は世界市場 で大きな ビジネ スを
展開し て いる。各 々の水部 門 の売 り上げは、
一兆六千億 円、 八千六百億 円 であ る。 この成
功 の裏 にあ る のは フラ ンス政府 の外交努力 である。 二社 がビ ッグ ビジネ スを締結す る前 に
は、常 にシラク前大統領 が各国 のト ップ と会談し、 ﹁
露払 い﹂を行 って いる。
0 シ ンガポ ール の水戦略
国内 の水需要 の五 〇% 以上を隣国 マレー シアから輸 入し て いた、 シ ンガポ ー ル政府 は
﹁これは国家存 亡 の危機﹂ であ ると認識し、国家プ ロジ エクトとし て水資源 の確保 に乗 り
出した。外資系水処 理会社を積極的 に誘 致し、国内企業 と組ま せ極 め て短時 間 にそ の技術
力 やノウ ハウを習得し世界水 ビジネ ス市場 へ進出、中国、 リビア、中近東など で大きな成
果を挙 げ て いる。
0 韓国 の水戦略
韓国 は先進的水処 理に関す る研究 開発事業、また〇五年 には水処 理膜 の開発事業を立ち
上げた。また世界 で活 躍 できる韓国企業を 二 つ以上育成す る ことを発表 し、国を挙 げ てシ
ンガポ ー ルの成功 に続 こう として いる。 八月 に筆者 は、韓国政府 の招聘 による世界都市水
フォー ラムで講演 およ びパネ リ ストを務 めた が、韓国 の取り組 みに圧倒された。 フオーラ
ムでは環境大 臣 が国とし て水 ビジネ スに力を 入れる ことを宣 言し、ま た韓国水 フォー ラム
の会長 チ ョー ジ ン ・ヒ ョン氏 は水 ビジネ スをブ ルーゴー ルドイ ング ストリーと命名 し、 世
界水 ビジネ ス ヘの進出を呼 び掛け て いる。
三、日本はなぜイ ンフラビ ジネ スで負 けるのか
0 日本 の成功 モデ ルは個人向 け製 品
今ま で世界 で成功 した 日本 型 ビジネ スモデ ルを見ると、す べて世界中 の個人 に販売され
たも のあ る。 ト ョタ、 日産、 ホ ング製 の日本車、 ソ ニー、 パナ ソ ニックなど の家 電など、
すな わち 日本国内 で技術的な課題を徹底的 にクリアし、 そ の上 で海外 の ニーズ ︵コスト感
覚、 デザイ ン︶を取 り入れ成功し て いる。
原発 や高速鉄道、 そし て水イ ンフラ のような、公共イ ンフラのシ ステム受注 ではす べて
苦戦し て いる。
0 公共イ ンフラビジネ スはト ップ セール スで決ま る
各国 は国益確保 とし て公共イ ンフラ受注 に国を挙 げ て邁進、大統領や国家 元首 がト ップ
セー ルスを繰 り返し て いる。UAE向 け の原発受注 では、韓国 の李 明博大統 領 が最前 線 で
指揮を とり、 UAE のム ハン マド皇太 子と直 に交渉 した結果 であ る。
ロシアが獲得した が、 これは昨年 ベトナ ム のズ ン
また ベトナ ム向け原 子力発電所 では、
ロシア製兵器 ︵
潜水艦 や戦闘機︶ の購 入交渉 の際 にメド ベー ジ ェ
首相 が モスク ヮ入りし、
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フ大統領 から ベトナ ムにおける原発建 設と バーター の申 し入れ があ ったから であ る。水イ
ンフラビジネ スに就 いては、水 メジ ャーと呼ばれる フラ ンス勢 が強 い。 これは フラ ンスの
シラク前大統領 が常 に中 心的な役 割を果 たし、最 近 ではサ ル コジ大統領 が中近東諸国を精
力的 に廻 って いる。な ぜなら今後中近東 では、十兆円規模 の水プ ロジ ェクト入札 が目白押
し であ り、各国ともト ップ セー ルスを 展開し て いる。
0 日本 の戦略 はあ る のか
日本 には、 こ のト ップ セー ルスの姿勢 が見られな い、さす がに相次ぐ原発 ビジネ ス敗退
で、今度 は ジ ャパ ン ・ナ シ ョナ ルチー ムを作 り、資金も援助す る仕組 みを作 ろう とし て い
るが、三周遅れ の マラソ ンとも いえる。今年 5月 の連体中 に直鳴前経産大臣、前原前国交
大 臣 がイ ンド、 ベトナ ム等 へ公共イ ンフラビジネ スのト ップ セー ルスを行 った が、誰も注
文書を持ち 帰 って来た大 臣は いな か った。
また企業側 にも責 任 があ る、 そ の最たるも のは日本 の企業数 の多さ であ り、他国政府 が
応援し て いるような、 いわばナ シ ョナ ルフラ ッグ の大企業 が存在 しな いこと であ る。企業
合併 が、 ほとんど進 ん で いな いのも 日本 の水業界 の特徴 であ る。さら に公共事業投資 の半
減 した国内市場 で同 じ業界同士 の企業 が、 日 々消耗戦を繰 り広 げ、企業体力 の限界 に挑 む
サ バイ バルゲー ム化 し て いる。 これ ではグ ロー バ ルな戦 いには勝利 できな い。今後 成長す
る水 ビジネ ス市場 で海外勢 と戦う為 には、再編 による規模 の拡大 が必須 であ り、また資金
確保 に ついても国 の支援 が不可欠 であ る。
四、 海 外 水 ビ ジネ ス ヘの展望
海外 で水 ビジネ スを展 開す る場合、 まず は情報 発信 であ る。海外 の企業 や技術者、 そし
て研究者 は、誇大広 告とも 思え るプ レゼ ンをす る が、 日本 から技 術者 が主体 で行う 英文 で
の情報発信 は少な い、 これ では世界 から認められな いし、世界 で戦う ことは不可能 であ る。
日本全体 が引き こも り現象 であ る、 これを打破す る ことは技術者 の責務 でもあ る。 日本 の
技術者 は世界的 にも勤勉 でま じめ、し かも約束 は守 ると いう評判 が高 いが、海外 コンサ ル
タ ント の目から見 ると① プ レゼ ン能力 の無さ、②市場 ニーズ の把握、市場調査能力 の欠如、
③ 経営 感覚 の鈍さ等 が指摘 され て いる。
おわ り に
日本 の産業界 は、 ガ ラパゴ ス化した国内仕様 に合わ せ仕事 をし てきた。海外 で仕事をす
る ことは、ま ったく の異文化と接す る こと であ り、斬新な アイ デアと素 早 い行動力 が求 め
られ る。 しかし今ま で護送船団方 式や横並 び社会を築き上げ てきた業界 や社内 にお いで、
出 る釘は打たれる風潮 が根強く残 って いる。 これ では絶対 に勝 てな い。 日本 経済 の二十年
に及 ぶ失敗 は、外国人経営 者や外資系企業を排斥す る閉鎖的な政策を続 けてきた こと であ
る。官民上げ て勇気を持 って荒波 にこぎ出さな ければ、 日本 の未来 はな い。
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