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特別寄稿> 特別支援教育時代の盲ろう養護学校 - Y・Y NET
<特別寄稿> 特別支援教育時代の盲ろう養護学校における情報支援技術 -ICT機器による自立支援技術と情報共有化の推進の在り方― 横浜市立学校の教育の情報化研究部会 横浜市立盲学校 高等部 普通科 教諭 松田基章 原稿公開にあたり------------------------------------------------2005・2006 年度の 2 年間にわたり、横浜市教育委員会主導で学校の教育 の 情 報 化 研 究 が 推 進 さ れ て き た 。特 別 支 援 教 育 実 施 に 向 け て 横 浜 市 立 の 盲 ろ う 養 護学校の部会でも 2 年間にわたり研究してきた。監修を横浜市教育委員会養護 総合教育センター田中宏和 指導主事にしていただき、本編・構成・大筋のまと め 、お よ び 視 覚 障 害 支 援 技 術 に つ い て は 、松 田 基 章 が ま と め た が 、聴 覚 障 害 支 援 技 術 に つ い て は 、清 水 隆 宏( 元 盲 学 校 教 諭 )現:横 浜 市 立 聾 学 校 教 諭 、病 弱・知 的 障 害 支 援 技 術 に つ い て は 、矢 吹 仁 寿( 元 盲 学 校 教 諭 )現:横 浜 市 立 高 等 養 護 学 校 二ツ橋分校 高等部教諭、肢体不自由障害支援技術については、金井大教諭 横浜市立上菅田養護学校教諭の原稿を寄稿していただいた。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -【 要 約 】- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - I T 新 改 革 戦 略 に よ る と 障 害 者 に 限 ら ず 誰 も が 安 心 利 用 し 、恩 恵 を 享 受 で き る I T 開 発 推 進 デ ィ ジ タ ル・デ バ イ ド の な い イ ン フ ラ 整 備 、ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン 化 さ れ た I T 社 会 の 構 築 、利 用 者・生 活 者 重 視 の 改 革 、生 涯 を 通 じ た 豊 か な 生 活 を 送 れ る 社 会 つ く り の 指 針 が 出 て い る 。こ れ ら の 国 際 的 流 れ を 汲 ん だ 国 の 施 策 や 特 別 支 援 教 育 の 移 行 の 中 、横 浜 市 の 盲 ろ う 養 護 学 校 の 各 校 に お い て は 専 門 性 を 継 承 し 、「 I T C 情 報 機 器 を 用 い た 情 報 支 援 技 術 の 研 究 」 を 推 進 し て き た 。 学 校 種 の 垣 根 を 越 え た 研 究 を 推 進 し て き た 結 果 、単 一 障 害 児 の 指 導 ば か り で は な く 、重 複障害児にする対処法や支援技術についても情報交換等を通じて情報を共有す る こ と が 重 要 で あ る こ と が わ か っ た 。( 盲 ・ ろ う ・ 養 護 学 校 の 事 例 の 紹 介 あ り ) 一 般 社 会 で は 、業 務 で コ ン ピ ュ ー タ を 扱 う こ と が 、今 や 常 識 で あ り 、生 徒 の 社 会 参 加 を 考 え る と き 、I T C 機 器 に 慣 れ 習 熟 す る こ と は 大 変 な 苦 労 も あ り 、こ れ ら を ど う 教 え る か と い う 問 題 も あ る が 、今 後 、誰 で も 使 え る 機 器 や ソ フ ト ウ ェ ア の開発(=ユニバーサルデザインの考え)は大変重要な課題となってきている 。 特 別 支 援 教 育 の 諸 学 校 で は 、セ ン タ ー 化 等 の 話 が 論 議 さ れ 、一 般 校 へ 支 援 も 進 め ら れ て い る 。ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン が 叫 ば れ る 昨 今 、一 般 校 で 普 通 に 障 害 児 が 教 育 を 受 け ら れ る の は 理 想 で あ る が 、地 域 の 機 関 や ボ ラ ン テ ィ ア 等 の 相 互 支 援 体 制 を 組 ん で い か な く て は な ら な い 。ま た 、支 援 事 例 を 整 理 し 互 い に 紹 介 す る こ と に よ り 、情 報 の 共 有 化 を 図 る こ と が 重 要 で あ る 。ネ ッ ト ワ ー ク を 通 じ た I C T 支 援 な ど 学 校 の 運 営 も よ り 効 率 的 な 運 営・方 策 が 必 要 に な っ て い る 。卒 業 生 の 相 談 にも応じられるような、情報共有システムの構築も考える必要があるだろう。 --------------------------------------------------------------- - 132 - 1 はじめに 平 成 1 8 年 1 月 1 9 日 内 閣 府 の I T 新 改 革 戦 略 - - い つ で も 、ど こ で も 、誰 で も--「ITの恩恵を実感できる社会の実現」 という試案が出た。その柱には、 次のような項目が挙げられている。 (1)子どもたちや技術への投資ネットワークインフラの整備 ○ITの「新たな価値を生み出す力」や「課題解決力」で構造改革を推進 ○ユニバーサルデザイン化されたIT社会を構築 ○利用者・生活者重視の改革 ○IT 化を妨げる社会的制約を排除 ○生涯を通じた豊かな生活(テレワーク、e-ラーニングの活用) (2)ユニバーサルデザイン化されたIT社会 ○誰もがITの恩恵を享受できるインフラの整備 ○いつでもどこでも使えるユビキタス化、世界一安心できるIT社会 上記は、平成7年12月に総理府がとりまとめた「障害者プラン~ノーマラ イ ゼ ー シ ョ ン 7 ヶ 年 戦 略 」、 「 全 員 参 加 の 社 会 づ く り 」を め ざ し て の 7 つ の 重 点 的 推進施策および、平成14年12月24日 障害者施策推進本部から出されてい る 、重 点 施 策 実 施 5 ヶ 年 計 画 な ど 、障 害 者 基 本 計 画 な ど と の 関 係 と も 密 接 に 関 連 するもので、重要な政府の方針になっている。 特に、①福祉用具等の研究開発とユニバーサルデザイン化の促進 ②国際規格 I S O / I E C ガ イ ド 7 1( 規 格 作 成 に お け る 高 齢 者・障 害 者 の ニ ー ズ へ の 配 慮 ガ イ ドライン)JIS 規格化 ③情報バリアフリー化の推進 デジタル・ディバイドの 解消 などICTを活用した施策の進展は注目されるところである。 高齢者・障害者の JIS 規格が平成16年から順次、制定され、視覚障害者に 音 声 情 報 を 提 供 し 、歩 行・移 動 等 を 支 援 す る 案 内 シ ス テ ム を 設 計 な ど が 現 実 の も の に な ろ う と し て い る 。併 せ て 、こ れ ら の 施 策 を「 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 」と「 ノ ーマライゼーション」の理念を踏まえ推進と述べている。 「 障 害 者 を 排 除 す る の で は な く 、障 害 を 持 っ て い て も 健 常 者 と 当 た り 前 に 生 活 で きるような社会が、ノーマルな社会である」という考え方である。国際的にも、 「 ア メ リ カ 障 害 者 法 」( A D A 法 ) が 有 名 で あ る 。 障 害 者 が 施 設 に 入 所 す る の で は な く て 、健 常 者 と 一 緒 に 社 会 生 活 を 送 る 中 で 、社 会 設 備 や 交 通 機 関 の バ リ ア フ リ ー 化 と い っ た イ ン フ ラ 整 備 の 改 良 が 進 み 、一 般 の 人 に と っ て も 便 利 な 社 会 基 盤 と し て 進 化 し て い る 様 子 が 伺 え る 。障 害 者 が 訓 練 な ど に よ り 社 会 で 自 立 で き る 制 度 充 実 の 流 れ の 中 、日 本 で は 2 0 0 3 年 4 月 よ り 支 援 費 制 度 が 導 入 さ れ 、社 会 の 在り方も含めて考えていこうというのが、この障害者プランの根底にある。 - 133 - 2 社会をとりまく急速な情報化と特別支援教育諸学校のITC支援技術 (1)社会を取り巻く情報機器をどう自立支援に活用するか? 平成 14 年度発行の「情報通信白書」によると、平成 14 年度末にインター ネ ッ ト 契 約 者 数 は 6 , 2 4 6 万 契 約 に 達 し 、携 帯 電 話 の イ ン タ ー ネ ッ ト 対 応 率 は 世 界 第 1 位 で あ る 。す で に 日 本 は 、国 際 的 に も 有 数 な 情 報 化 社 会 に 突 入 し て い る 。 そ ん な 社 会 状 況 の 中 、障 害 を 持 っ た 生 徒 達 へ の 支 援「 社 会 参 加 と 自 立 」は 、急 務 で あ る 。ま た 技 術 革 新 で 進 ん だ I C T 機 器 は 、よ り 重 度 障 害 の あ る 子 ど も た ち へ の 自 立 を 支 援 す る こ と も 可 能 と な っ て き て い る 。た と え ば 、P C の 高 性 能 化・小 型 化・マ ル チ メ デ ィ ア 化( 家 電 化 )を 中 心 に 、携 帯 電 話 の ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン 化 な ど 技 術 の 進 歩 は め ざ ま し く 、音 声 ス ク リ ー ン リ ー ダ ー の 発 明 、字 幕 装 置 の 改 良 、音 声 認 識 装 置 の 精 度 の 向 上 な ど 数 え れ ば き り が な い 。音 声 意 思 伝 達 装 置 な ど の 福 祉 機 器 は 、技 術 革 新 に よ り 容 易 に 購 入 が 可 能 に な り 、さ ら に 、イ ン タ ー ネ ッ ト 環 境 の 整 備 が 進 み 、 こ れ ら の イ ン フ ラ を 有 効 に 活 用 す る こ と に よ り 、「 障 害 を 補 う 」 目 的 で の 支 援 技 術 に つ い て 、 一 層 の 「 情 報 の 共 有 」「 支 援 技 術 の 効 率 的 な 改 革 」を さ ら に 推 進 す る こ と が 期 待 さ れ る 。ま た 、教 員 よ り 、生 徒 達 の 方 が 、こ れらの動きに敏感に柔軟に対応しているケースも数多く見られる。 (2) 障害児にとって使いやすい情報機器は、誰もが使いやすい! 一 般 社 会 で は 、コ ン ピ ュ ー タ を 扱 う こ と が 必 須 と な り つ つ あ る 。会 社 採 用 面 接 で 、「 メ ー ル や 文 書 作 成 、 表 計 算 は で き る か ? 」 と 聞 か れ る こ と は 今 や 常 識 に な っ て き て い る 。ま た 障 害 者 が 、こ れ ら の I T C 機 器 に 慣 れ 習 熟 す る こ と は 大 変 な 努 力 が 必 要 で あ り 、こ れ ら を ど う 教 え る か と い う 学 校 現 場 で の 苦 労 も あ る が 、今 後、誰でも使える機器やソフトウェアの開発(=ユニバーサルデザインの考え) は 大 変 重 要 な 課 題 と な っ て き て い る 。た と え ば 、平 成 1 0 年 の( 旧 )郵 政 省 通 信 政 策『 情 報 通 信 の 利 用 に よ る 高 齢 者・障 害 者 の 生 活 支 援 ~ ラ イ フ サ ポ ー ト( 生 活 支 援 )情 報 通 信 シ ス テ ム 推 進 研 究 会 調 査 研 究 報 告 書 』で は 、障 害 者 や 高 齢 者 の 生 活 の 利 便 性 を 向 上 さ せ る シ ス テ ム と 定 義 し 、現 在 の 情 報 通 信 シ ス テ ム は 障 害 者 が 円 滑 に 利 用 で き な い 現 状 を 指 摘 し 、情 報 へ の ユ ー ザ ア ク セ シ ビ リ テ ィ の 向 上 、ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン の 考 え 方 を 普 及・定 着 す る こ と が 必 要 で あ る と 述 べ て ら れ て いる。 (3) JIS 法の改定とユニバーサルデザインに設計された社会 ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン と は 、和 訳 で「 共 用 品 」と さ れ る 場 合 も あ る が 、本 来 は 「 最 初 か ら 誰 も が 使 い や す い デ ザ イ ン に 設 計 さ れ る べ き で あ る 」と い う 設 計 思 想 で あ る 。ユ ー ザ の 中 に は 当 然 、障 害 者 や 高 齢 者 も 、視 野 に 入 れ て 設 計 さ れ な け れ ば 公 正 で は な い 。「 障 害 者 は 実 は 、 シ ビ ア ユ ー ザ ー で あ る 」 と い う 考 え も あ る 。 障 害 者 に 必 要 な 特 別 な も の を 作 る と い う 発 想 で は な く 、い ろ い ろ な 使 わ れ 方 を 考 - 134 - 慮 し 、必 要 な 機 能 を 選 択 で き る よ う に す べ き で 、必 要 な い と 思 わ れ る 昨 日 で あ っ て も 、後 か ら 実 は 使 い や す い も の で あ る と い う こ と が わ か る ケ ー ス も 多 い 。一 昨 年6月JIS法が改正され障害者・高齢者に適合した工業規格が法制化された。 これによりユニバーサルデザインに配慮した日常品の開発も急速に進んできて いるようである。 日 本 発 の 独 自 な 例 と し て 、国 土 交 通 省 が 平 成 1 6 年 か ら 推 進 し て い る 自 律 的 移 動 支 援 プ ロ ジ ェ ク ト( h t t p : / / w w w . j i r i t s u - p r o j e c t . j p / 提 唱 者 は T O R N 開 発 者 の 東 京 大 学 の 坂 村 健 教 授 )が あ る 。街 そ の も の を 、ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン 化 し よ う と す る 計 画 で 、点 字 ブ ロ ッ ク や 目 印 の ビ ル の 中 に I C タ グ を 埋 め 込 み 、位 置 情 報( G P S )な ど も 駆 使 し 、買 物 情 報 や 街 の 情 報 を コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ボ ー ド を使って、情報を共有し活用する計画である。 いつでもどこでも誰でもが便利 に 使 え る ユ ビ キ タ ス ネ ッ ト ワ ー ク の 夢 を 追 求 し た プ ロ ジ ェ ク ト で 、多 く の 障 害 当 事 者 が 実 験 に 参 加 し て い る 。今 後 の 日 本 社 会 の 在 り 方 を 考 え 、加 齢 と 共 に 誰 も が 障 害 者 や 高 齢 者 に な り 得 、障 害 者 や 高 齢 者 こ そ I C T の 恩 恵 を 真 っ 先 に 受 け る べ き だ と い う 発 想 が 根 底 に あ る 。神 戸 や 大 阪 の 試 行 段 階 を 終 え 、産 業 界 を 巻 き 込 み 実用段階へと展開が進められている。 (4)障害者の自立と社会参加へ向けたアプローチ I C T 支 援 機 器 の 発 展 は 目 覚 し い 。最 近 は 、 「 自 立 」の 意 味 が 変 わ り つ つ あ る 。 今 ま で は 不 可 能 で あ っ て も 、I T C 機 器 や 補 助 的 に 人 の 支 援 を 受 け る こ と に よ り 、 自 己 の 目 標 を 成 就 で き れ ば 、 そ れ は 本 人 が 自 ら 決 め た こ と で あ り 、「 自 立 」 で あ る と い う 考 え で あ る 。情 報 通 信 社 会 の 進 展 の 中 、積 極 的 に I C T 機 器 を 活 用 す る こ と に よ っ て 社 会 参 加 と 自 立 を 進 め ら れ れ ば 、障 害 者 に は 、大 変 意 義 の あ る こ と である。 昨年 国会で自立支援法が通過した。近年にない急速な大幅な改革のないよう で あ る た め に 一 部 問 題 も 抱 え て い る よ う で あ る が 、障 害 者 自 身 が 自 立 を し て い く のを支援する意味合いおいては、新たな出発点が否応なく始まったわけである。 障 害 者 が 、 働 く 意 義 を 考 え 、「 こ う し た い ・ こ う で き れ ば ! 」 と い う 自 立 に 関 す る 意 識 の 変 革 が 支 援 技 術 の 発 展 に つ な が っ て い っ た 経 緯 が あ る 。例 と し て は 、ア メリカ合衆国の援助付き雇用(Suppor ted E mployment)が有名であるが、 日 本 で も 、横 浜 市 総 合 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン セ ン タ ー を 中 心 と し た「 援 助 付 き 雇 用 」 の取り組みは、自治体の先駆けである。 http://www .dinf .ne.jp/doc/japanese/prdl/jsr d/r ehab/r 085/r 08 5_008.htm こ れ ら の 訓 練 法 や 支 援 技 術 の 手 法 の 紹 介 を 見 る と 、I T C 情 報 機 器 の 利 活 用 が 訓 練事業の中核を占めている。 - 135 - 3 障害者用ITC支援機器とその歴史と経緯 (1)過去の発明と歴史・障害者用情報機器活用の盛衰 タ イ プ ラ イ タ の 発 明 者 は 、1 8 7 6 年 、ア メ リ カ の シ ョ ー ル ー ズ で あ る と 知 ら れ て い る 。し か し 、こ れ に 先 立 ち 1 7 1 4 年 に イ ギ リ ス の ミ ル が 発 明 し た 活 字 を 打 つ タ イ プ ラ イ タ の 元 祖 と 考 え ら れ る も の を 発 明 し て い る 。ミ ル の 死 後 、視 覚 障 害 者 の た め に タ イ プ ラ イ タ を 作 っ て い た こ と が 明 ら か に な っ た 。タ イ プ ラ イ タ は 、 視覚障害者が墨字を書くための手段としても普及したことは言うまでもない。 ま た 、電 話 を 発 明 し た ベ ル は 、聴 覚 障 害 者 の 母 や 彼 の 妻 の た め に 、音 声 を 電 気 的 に 伝 え る 方 法 を 研 究 し て お り 、こ の 研 究 の 副 産 物 と し て 生 ま れ た も の が 電 話 で あ る と 言 わ れ て い る 。現 在 、タ イ プ ラ イ タ は コ ン ピ ュ ー タ ソ フ ト ウ ェ ア の ワ ー ド プ ロ セ ッ サ へ と 発 展 し 、電 話 は 携 帯 電 話 へ と 、人 々 に 最 も 多 く 利 用 さ れ る 情 報 通 信 手 段 と な っ て い る 。こ れ ら の 発 明 は 、双 方 と も 障 害 者 の た め に 研 究 さ れ て い た こ と が 分 か る が 、実 は 偶 然 で は な く 、一 般 人 が 気 付 か な い こ と で も 障 害 者 に は 最 初 か ら 必 要 だ と わ か っ て い る 場 合 が 多 い 。そ の 意 味 で は 、障 害 者 は 貴 重 な シ ビ ア ユ ーザーだと言える。そうした障害者の強い必然性に基づいて開発された技術が 「 技 術 の 発 達 が 障 害 者 に 恩 恵 を も た ら す 」と よ く 言 わ れ る が 、実 は 、障 害 者 自 身 が 最 初 か ら 身 を 持 っ て 知 っ て い る 場 合 が よ く あ り 、障 害 者 の ニ ー ズ に よ っ て 世 の 中の一般向けの技術革新が促進されてきている。 た だ し 、電 話 が 普 及 し た こ と で 、逆 に 聴 覚 障 害 者 の 社 会 的 な 不 利 益 は 拡 大 さ れ 、 ア メ リ カ で は T D D と い う 文 字 通 信 手 段 、日 本 で は 近 年 フ ァ ク シ ミ リ が 普 及 し て 、 やっと聴覚障害者の通信手段の問題が解決に向かったこともある。 W e b 技 術 の 進 展 で 、動 画 や 画 像 が 増 え る と 、視 覚 障 害 者 は 映 像 の メ デ ィ ア を す ぐ に は 利 用 で き な い 。銀 行 や 駅 の 入 力 機 器 が 、従 来 の ボ タ ン 式 か ら 映 像 を 表 示 す る パ ネ ル 式 の も の に 変 わ る と 、視 覚 障 害 者 は 大 変 不 便 に な る 。新 し い 技 術 は 障 害 者 の 可 能 性 を 広 げ る 一 方 で 、バ リ ア を 拡 大 す る 危 険 も は ら ん で い る 。こ う い っ た意味でもユニバーサルデザインに適合した機器の開発が必要になる。 日本では、1970年頃電動のタイプライタが紹介され、養護学校でも利用が 始 ま っ た 。1 9 8 0 年 頃 に な る と 日 本 語 ワ ー ド プ ロ セ ッ サ へ と 移 行 。障 害 を 補 う 情 報 機 器 は 、全 国 の 養 護 学 校 に 導 入 さ れ て い っ た 。1 9 9 0 年 頃 に な る と イ ン タ ー ネ ッ ト の 利 用 が 始 ま っ た 。先 ほ ど N H K で も 放 映 さ れ た が 、東 京 都・光 明 養 護 学校など多くの養護学校でコンピュータ活用の事例が発表された。 盲学校においても 1980 年代に音声合成装置が発明され、80 年代後半、M S - D O S 用 ス ク リ ー ン リ ー ダ ー が 、視 覚 障 害 の 当 事 者 で あ る 斎 藤 正 夫 に よ り 開 発 されたことにより、DOS版のコンピュータの活用が普及した。1995年 WindowsPCの登 場で社会が沸きた っ ている頃、視覚障害者に は Windows が 一 切 使 え な く な り 暗 黒 の 時 代 が 訪 れ た と さ れ た が 、1 9 9 5 年 以 降 W i n d o w s - 136 - 版 の 音 声 ス ク リ ー ン リ ー ダ ー が 開 発 さ れ 、各 地 の 視 覚 障 害 に 恩 恵 を も た ら す こ と になった。昨今は、音声でも使える携帯電話が発明され、700 万台を超えるベ ス ト ヒ ッ ト に な っ て い る 。障 害 者 が 使 え る ハ ー ド ウ ェ ア や ソ フ ト ウ ェ ア は 、I C Tの進展で劇的な盛衰の歴史をたどっている。 (2) 障害の定義と障害者への情報支援技術 世 界 保 健 機 構 ( W H O ) は 1 9 8 1 年 、「 I m p a i r m e n t 」「 D i s a b i l i t y 」 「Handicap」の3 段階で「障害」の 定義をした。たとえば、めが ねを使え ば 日 常 生 活 に 差 し 支 え な い 程 度 に 矯 正 で き る 場 合 は 、一 般 的 に「 障 害 」と は 呼 ば な い 。意 思 の 伝 達 が 難 し い 場 合 、他 の 手 段 で 意 志 が 伝 達 で き れ ば 障 害 を 克 服 す る こ とが可能で、これらを「Technical Aid」と呼ぶ。そしてこれらの研究領域の こ と を A A C 「 A u g m e n t a t i v e & A l t e r n a t i v e C o m m u n i c a t i o n 」( 拡 大 ・ 代替コミュニケーション)と言う。最近では、アシスティブテクノロジー ( A s s i s t i v e T e c h n o l o g y )「 支 援 技 術 」 と い う 分 野 で あ る 。 ア シ ス テ ィ ブ テ ク ノ ロ ジ ー は 、欧 米 で は 以 前 よ り 用 い ら れ て い た 言 葉 で あ る が 、日 本 で は 、福 祉 工 学 や リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 工 学 と も 呼 ば れ て い る 。補 装 具 や 車 椅 子 な ど が そ の 一 例 で も あ る 。高 度 情 報 化 社 会 の 恩 恵 で 、コ ン ピ ュ ー タ を 便 利 に 利 用 す る 障 害 者 も 増えてきている。また会話補助装置などでコンピュータを活用する場合 も多い 。 4 横浜市での盲・ろう・養護学校における情報共有化の取り組み(事例) こ れ ら の 国 際 的 な 流 れ や 国 の 情 報 教 育 及 び 特 別 支 援 教 育 の 流 れ の 中 、横 浜 市 で は 、昨 年 か ら 横 浜 市 教 育 委 員 会 指 導 の も と 、横 浜 市 立 学 校( 小 学 校・中 学 校・高 等 学 校 ・盲 ・ろ う・養 護 学 校 お よ び 特 別 支 援 学 級 )全 校 約 5 0 0 校 を あ げ て 、学 校 の 情 報 の 共 有 化 に 取 り 組 ん で き て い る 。特 に 、盲・ろ う・養 護 学 校 の 各 校 に お い て は 特 別 支 援 学 校 へ の 移 行 の 流 れ の 中 、各 校 の 専 門 性 を 継 承 し 、各 校 で の I T C 情 報 機 器 を 用 い た 研 究 を 推 進 し て き た 。各 校 で の 研 究 授 業 や 情 報 交 換 、校 内 ネ ッ ト ワ ー ク の 推 進 、教 職 員 校 内 研 修 の 在 り 方 、情 報 の 授 業 の 今 後 な ど 、各 校 の 諸 事 情 を 知 る こ と に よ り 、学 校 種 の 垣 根 を 越 え た 、研 究 を 推 進 し て い く こ と が 重 要 で あ り 、単 一 障 害 児 の 指 導 ば か り で は な く 、重 複 障 害 児 に 対 す る 対 処 法 や 支 援 技 術の在り方を考えるよいきっかけとなっている。 横 浜 市 で は 昨 年 度 か ら 、学 校 教 育 の 情 報 化 に つ い て 、教 育 委 員 会 情 報 教 育 課 を 中 心 に 全 校 規 模 で 各 学 校 の 情 報 担 当 の 委 員 が 集 ま り 、学 校 種 を 超 え て 、情 報 交 換 や研究を進めてきた。 盲・ろ う・養 護 学 校 の 部 会 も 、昨 年 1 年 間 、毎 月 1・2 回 の ペ ー ス で 会 合 を 持 ち 、内 容 の 検 討 を 進 め て き た 。そ の 中 で 得 た 研 究 内 容 の 成 果 か ら 、今 後 の 特 別 支 援 教 育 へ の 移 行 を 視 野 に 入 れ 、各 校 種 別 ・ 障 害 別 な ど 、 そ れ ぞ れ の 観 点 か ら 、「 I CT支援技術」に焦点を絞って整理し、研究成果をまとめてみた。 - 137 - 横浜市立学校の情報化推進部会 盲・ろう・養護学校部会 【2年間の研究の経緯】 2006年5月 横浜市 学校の情報の共有化 盲・ろう・養護学校部会発足 2006年6月 本 年 度 の 方 針 ( 会 場 : 横 浜 市 立 聾 学 校 )・ M L の 運 用 開 始 2006年8月 横浜市 南公会堂での発表(8月22日) 2006年11月 今後へ向けての検討(横浜市立高等養護学校二ツ橋分校) 2007年1月 横浜市フェスティバルでの発表(横浜市 教育文化センター1月14日) 2007年3月 研究のまとめ、授業研究(横浜市立上菅田養護学校) 2007年4月 新部会発足 2007年度の研究開始 2007年8月 横浜市 保土ヶ谷公会堂での発表(8月18日) 2007年11月 横浜市での発表(横浜市 教育文化センター11 月 17 日) 2007年 12 月 研究のまとめ(横浜市イントラネット「YYネット」にWebアップ掲載) 次に、横浜市の各障害種別のITC支援内容と実践事例を「視覚障害における 支 援 」、 「 聴 覚 障 害 に お け る 支 援 」、 「 病 弱 障 害 に お け る 支 援 」、 「知的障害における 支 援 」、「 肢 体 障 害 に お け る 支 援 」、 に 分 け て そ れ ぞ れ 各 校 種 の 立 場 で 支 援 事 例 等 を紹介する。 これらの事例の詳細は、 横浜市教育委員会 ・横浜市 横浜夢ネット(イントラネット)に掲載されている YY ネット(公開サイト) http://www .edu.cit y.yokohama.jp/ ・横浜市 YYネット(ローカル 市内イントラネット http://www -local.edu.cit y.yokohama.jp - 138 - 市内限定) 視覚障害支援技術 「視覚障害における支援」の事例とその活用 横浜市立盲学校 高等部普通科 教諭 松田基章 1 視覚障害のICT活用の意義 視覚障害を有する生徒にとって、昨今のマ ウス入力を主体とした Windows(GUI) を使う機器の利用、1995 年以降スクリーン リーダーが開発されたといえ使いづらい機器 であることは言うまでもない。また、利用を するに当たっては、本人の相当な努力が必要 でありハードルは高い。キーボード入力は、 長期にわたりインターフェイスの入力法とし て 一 般 的 で あ る が 、ま ず キ ー ボ ー ド に 慣 れ 、 シ ョートカットキーを習得することは、コンピ ュータを使用するに必要不可欠のものである。 図 1 生徒の障害に応じたキーボ ードの準備は不可欠(個別) さらに、障害の程度は一様ではなく、個人差がある。個に応じての環境を整備す る 必 要 が あ る 。全 盲 児 童 生 徒 に と っ て 、パ ー キ ン ス ブ レ ラ ー な ど で 慣 れ て い る 点 字( 六 点 入 力 )入 力 で 文 章 を 書 く と い っ た 使 い 方 は 可 能 で あ る が 、イ ン タ ー ネ ッ トを活用したり、情報を送受信しようとすると、カナ入力やローマ字入力(この 選 択 は 個 人 に よ っ て 異 な る )な ど を 切 り 替 え て 平 行 し て 使 え る こ と が 必 要 に な っ てくる。また、Windows の操作設定ができない時期での六点キーボード入力 は、設定が自分でできないと、自立という観点ではいつまでも指導者を頼る結果 に な り か ね な い 。場 合 に よ っ て は 、点 字 入 力 専 用 の キ ー ボ ー ド を 併 用 す る な ど の 方法もあるが、指導者が場合に応じて機器を事前に研究し熟知しておく必要があ る。場合により、点字ディスプレイを接続しておき、確認させることも有効な手 立てである。ただし、これらの機器は高価でなかなか機器として整備できないこ とや、指導者が機器を接続できないといった現実もある。また、キーボードに必 要に応じてシールや点字を貼っておくことも、有効な 手段である。これらも個人のレベルで一様ではない。 本人の進度に合わせて計画的にレベルアップさせてい くなどの工夫が必要になる。 弱視児童生徒の場合は、その見え方は個人差があり ク ラ ス の ほ ぼ 全 員 違 う こ と も あ り う る 。対 応 と し て は 、 障害の程度に応じて画面環境設定を変える。マウスが 図 2 タッチパネル利用 使える生徒はマウスのユニバーサルデザイン使用に配 (弱視生徒用) 慮 す る な ど の 必 要 が あ る 。キ ー ボ ー ド 入 力 に つ い て は 生 徒 が 見 や す い キ ー ト ッ プ - 139 - に 貼 り 付 け た り 、場 合 に よ っ て は 油 性 マ ジ ッ ク で ポ イ ン ト す る だ け で 使 い や す い 場合もある。 弱 視 生 徒 で も 、ス ク リ ー ン リ ー ダ ー を 併 用 す る こ と で 、格 段 に 使 い や す く な る ケースもある。このあたりも本人としっかりQ&Aをしながら、環境を整えてあ げ る 必 要 が あ る 。肢 体 不 自 由 を 併 せ 持 つ 生 徒 の 場 合 は 、大 型 の キ ー ボ ー ド や タ ッ チ パ ネ ル 形 式 の キ ー ボ ー ド も 有 効 で あ る 。ま た 、音 声 合 成 入 力 も 精 度 を 上 げ て き て い る も の の 、本 人 の 発 声 の 質 に 併 せ て 機 器 や ソ フ ト ウ ェ ア を 微 調 整 す る 必 要 が あり、使うまでにかなりの調整が必要である。 キ ー ボ ー ド 入 力 の 習 熟 に は 、遊 び な が ら 楽 し ん で で き る キ ー ボ ー ド 入 力 ソ フ ト ウ ェ ア の 選 択 が 重 要 で あ る 。ま た 教 材 も 身 近 な 小 説 や 歌 詞 を 入 力 し た り 好 き な 食 べ物を入力するなど、教材の工夫・事前準備が必要である。また、目標を持たせ るためのキーボード検定やワープロ検定などを紹介していくことも必要である。 ま た 、週 の 決 ま っ た 授 業 だ け の 利 用 で な く 、毎 日 使 い 慣 れ る こ と が 早 期 に 使 え る 鍵 に な る 。コ ン ピ ュ ー タ ル ー ム の 解 放 や 教 室 へ P C 設 置 な ど 場 合 に 応 じ て 使 い や す い 環 境 を 整 え る こ と も 重 要 で あ る が 、大 概 は 不 正 利 用 や 設 定 が 変 わ る 、壊 れ る などの理由で鍵をかけるなどの禁止措置が取られるケースが多いことを耳にす る 。こ の あ た り は 指 導 者 が あ る 程 度 の リ ス ク を 受 け 止 め 、し っ か り と ル ー ル と マ ナ ー を 生 徒 に 解 き 、朝 昼 夕 い つ で も 使 え る 環 境 を 整 え て あ げ た い も の で あ る 。幸 い私が担当したこの数年間、マナー違反の禁止措置を取ることはほとんどなく済 んできた。 現在、通信情報白書の統計を見ると、ほとんどの家庭にブロードバンドが入っ てきており、通信環境も整備され、何処でも誰でもがコンピュータがネットに接 続 で き る よ う に な っ て き つ つ あ り 、コ ン ピ ュ ー タ を 単 な る 感 覚 代 行 機 器 と し て だ け で は な く 、よ り 積 極 的 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 広 げ る 手 段 と し て 、さ ら に 積 極 的な情報発信や双方向のコミュニケーション手段としてより有効に活用するこ と の 位 置 付 け が 重 要 で あ る 。も ち ろ ん 、今 ま で で も 、本 を 出 版( 墨 字・点 字 な ど ) し た り 、新 聞 へ の 投 稿・テ レ ビ や ラ ジ オ な ど の マ ス コ ミ を 利 用 す る 等 の 方 法 も あ る が 、そ れ ら よ り は る か に 自 由 度 が あ り 、可 能 性 や 柔 軟 性 を 持 っ て い る の が イ ン トラネットおよびインターネットの活用である。 (1)視覚障害者と社会生活の変化の現状 私 達 の 生 活 は 、今 や コ ン ピ ュ ー タ な し で は 成 り 立 た な い 。も ち ろ ん 、危 険 性 を は ら む 情 報 が 飛 び 交 っ た り す る 陰 の 部 分 に も 注 意 を 喚 起 し な く て な ら な い が 、そ の得られる情報の量やリアルタイムに伝わる情報のスピードは、視覚障害者自身 の 生 活 ス タ イ ル を 変 え て い く こ と が 予 感 さ れ る 。視 覚 障 害 者 で も 、電 子 メ ー ル ア ド レ ス や W e b ペ ー ジ を 持 つ 人 が 多 く な っ て お り 、今 後 は 銀 行 の 電 子 決 済 な ど も 急 速 に 進 展 し て お り 、視 覚 障 害 者 に と っ て も 、情 報 の 収 集・整 理・活 用 な ど 電 子 - 140 - 情 報 や イ ン タ ー ネ ッ ト を 使 い こ な せ る こ と が 必 須 の 条 件 に な り つ つ あ る 。就 職 に 際 し て も 案 内 を W e b か ら 入 手 し 、メ ー ル を 使 い こ な せ る こ と が 就 職 の 条 件 に な っ て き て お り 、情 報 の 授 業 ば か り で な く 、日 々 の 生 活 や 各 授 業 で 通 常・一 般 的 に 活 用 さ れ る よ う に な ら な い と 本 当 に 使 え る よ う に は な ら な い と 思 わ れ る 。情 報 格 差( D i g i t a l D i v i d e )に つ い て も 格 差 を な く す よ う な 研 修 や 配 慮 が 必 要 で あ る 。 教科書や出版物のディジタル化(Dai sy 図書の普及やバリアフリー出版など) も 進 ん で き て お り 、校 内 の 情 報 発 信 基 地 と し て の 学 校 図 書 館 情 報 セ ン タ ー 化 の 在 り 方 も 併 せ て 校 内 で 検 討 し て き た 。1 9 9 9 年 以 降 、校 内 の ネ ッ ト ワ ー ク 化・コ ンピュータの Windows 化(ソフトウェア・ハードウェア)を含めて校内環境 を一新してきた。また、経済産業省(旧通産省)の実証実験 OCR を使った読 書支援システム「よみとも」(1999年から2002年)への参加を始め、 W E B の ア ク セ シ ビ リ テ ィ 「 み ん な の ウ エ ブ 」( 総 務 省 2 0 0 1 年 ~ )・ ス ピ ー チ オ の 実 証 実 験( 経 済 産 業 省 2 0 0 2 )・第 3 3 回 全 国 学 校 図 書 館 研 究 大 会 図 書 館( 横 浜 会 場 2 0 0 2 )・図 書 館 情 報 化 の 研 究( 2 0 0 2 )・ C E C の 学 校 企 画 、 音楽科研究(1999)・理科研究(2000)・Flash のアクセシビリティ 研 究( 2 0 0 3 )な ど 多 数 の プ ロ ジ ェ ク ト に 参 加 し て き た 。こ れ か ら の 特 別 支 援 教育の在り方は、学校と地域・大学・企業などとも協力の輪を広げ、少しでも早 期 の 夢 の 実 現 を 果 た す た め に 、最 先 端 の 研 究 機 関 へ の 協 力 関 係 な ど へ の 連 携 を 積 極 的 に 図 る べ き だ と 考 え る 。ま た 、個 に 応 じ た ニ ー ズ に 応 え る べ く 支 援 機 器 の 導 入・研究開発を図っていくべきである。 2 コンピュータ(情報端末)ならびにインターネット活用の意義と課題 テ キ ス ト 情 報 の 内 容 把 握 に つ い て は 音 声 ス ク リ ー ン リ ー ダ ー や 点 字・点 図 デ ィ スプレー等で確認が可能ある。また、画像情報などは基本的に絵や写真が見えな く て も 、適 切 な 説 明 文 を 補 助 的 に 併 記 し た り 、複 数 の 形 式 で 情 報 が 提 供 さ れ る 必 要 が あ る 。最 近 で は 印 刷 物 等 、視 覚 だ け で し か 利 用 で き な か っ た 情 報 が 、W e b ページやマニュアルの電子化で、視覚以外の方法で も利用できるようになってきている。ただし、電子 化の方法を視覚のみに依存した形式にしてしまうと、 どのような装置やソフトをつかっても視覚障害のあ る人には利用できない。W3C などの国際団体では 情報の電子化についてガイドラインを作っており、 図3 点字入力キーボード 官公庁でも、情報のユニバーサルデザイン化に配慮するようになってきている。 情 報 の 送 り 出 し 側 の 責 務 と し て も 、障 害 の 有 無 に 関 係 な く 利 用 で き る 情 報 コ ン テ ンツを蓄積していくことが、今後の社会にとって重要である。 - 141 - 3 本校の各学部の実際 (横盲教育 46 号「前号」に記述) 本 校 の 情 報 活 用 事 例 と 次 の 図 書 館 事 例 に つ い て は 、W e b サ イ ト を ご 覧 下 さ い 。 市立盲 Web→視覚障害とは→横盲教育 46 号→各学部の情報教育等 4 情報教育と図書館(情報センター)の位置付けと連携 視 覚 障 害 者 に と っ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト は 読 書 支 援 最 大 の 武 器 に な っ て い る 。視 覚障害者=情報障害であるとよく言われるが、視覚から得られる情報の消失は、 各 種 情 報 の 8 0 % に 及 ぶ と も 言 わ れ る 。昨 今 の 急 速 な I T 時 代 背 景 の 中 、図 書 メ デ ィ ア の 急 速 な 変 遷 の 中 、イ ン タ ー ネ ッ ト を 通 じ て 電 子 図 書 館・マ ス メ デ ィ ア の 配 信 等 に よ っ て バ リ ア フ リ ー の 状 況 は 急 変 し た 。そ の 中 で 、学 校 図 書 館 の 存 在 意 義 や 在 り 方 も 問 わ れ て い る 。2 0 0 0 年 学 校 図 書 館 全 国 大 会 以 来 、図 書 館 の 情 報 化を進めてきた。現在、世の中に毎年出版される図書や雑誌は500万冊を越え る と 言 わ れ る 。視 覚 障 害 者 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク ( 点 字 デ ー タ ベ ー ス ) は 3 0 万 デ ー タ に 過 ぎ ず 、横 浜 市 立 盲 学 校 で は 、ボ ラ ン テ ィ ア を 中 心 に ご 協 力 い た だ き 、「 ど の 教 室 か ら も ネ ッ ト 検 索・図 書 蔵 書 検 索 が で き る ! こ と を 目 標 に 」校 内 へ の デ ィ ジ タルデータの公開を進めてきた。ただし、教科書や必要なデータは版権の関係で な か な か 手 に 入 れ る の は 難 し い 環 境 に あ り 、教 材 と し て 生 徒 が 使 い や す い 環 境 の データを用意するのには大変手がかかることは覚悟しなくてはならない。 5 通信環境激変の昨今と支援機器の数年の変化 マイクロソフト Windows が普及してからのPCの環境がこの10年あまり で激変した昨今、Vista が新たに登場したが毎年のように Windows95 から→ 98/98SE/ME/XP/2000 と OS(他にもモバイル)そのものがめまぐるしく 変 化 し 、こ れ に よ っ て 全 国 の 盲 学 校 で も 大 変 で あ っ た と 思 わ れ る が 、情 報 担 当 は 機 器 を 調 整 す る の に は 大 変 な 労 力 を 必 要 と し た 。視 覚 障 害 者 用 の ソ フ ト ウ ェ ア の バ ー ジ ョ ン も め ま ぐ る し く 変 わ っ た 。ま た 校 内 ネ ッ ト ワ ー ク も 1 9 9 9 年 設 置 か ら 2 0 0 0 年 図 書 館 大 会 、2 0 0 5 年 校 内 複 線 化 な ど 数 度 に わ た り 環 境 を 整 備 ・改 変 し て き た 。 モバイルや無腺なども図書館研究を契機に 大学や研究所の協力を得て試用研究を進めて きた。セキュリティ面での問題も概ね総務省 の通達で解決されつつある。最近は情報共有 の面で、ネットワークLAN接続のハードデ ィスクなどが各学部で利用されるようになり、 図 4 機能別サーバの配置と 校内ネットワーク基幹 生 徒 の 授 業 で も 活 用 さ れ つ つ あ る 。情 報 機 器( 先 に 紹 介 し て い る の で 省 略 )も 便 利な機器がどんどん出てきており、利活用の範囲も増えつつあり、これらの検証 も従来型の授業から転換する意味で、情報担当の研究テーマ(責務)である。 - 142 - 聴覚障害支援技術 「聴覚障害のおける支援」の事例(見える放送を中心に) 清水隆宏(元盲学校教諭)現:横浜市立聾学校 1 中学部教諭 はじめに ろ う 学 校 の 各 種 研 究 の 中 か ら 、「 障 害 受 容 」 の 過 程 を 検 証 し て み る 。 私 た ち を 取 り 巻 く 生 活 環 境 の 中 に は 、様 々 な 種 類 の 情 報 が 満 ち あ ふ れ て い る 。そ れ ら の 中 に は 、視 覚 情 報 だ け で な く 、普 通 電 話・バ ス や 電 車・繁 華 街 な ど で の 音 楽 や ア ナ ウ ン ス な ど の 音 声 情 報 な ど が あ る こ と を 学 習 す る 。次 に 、そ の 様 々 な 種 類 の 情 報 に つ い て 、自 分 の 聞 こ え の 程 度 と 関 連 付 け た「 障 害 」を 学 習 す る が 、そ の 現 実 を 認 識 し て 受 容 す る こ と が 難 し い 課 題 と な っ て い る 。聾 学 校 を 中 心 と し た 生 活 空 間 が 理 由 か 、特 に「 聞 こ え な い 事 に よ る 支 障 は 感 じ な い ! 」と い う 感 想 を 多 く の 児 童・生 徒 が 答 え て い る 。ま た 、近 年 の 電 子・通 信 技 術 の 進 歩 に よ り 、児 童・生 徒 は 、性 能 が コ ン ピ ュ ー タ に 近 づ い た 携 帯 電 話 と 小 さ い 頃 か ら 習 熟 し て い る コ ン ピ ュータを頻繁に活用して、情報としての支障は無いように感じている。聴覚障害 の 児 童・生 徒 に と っ て 、コ ン ピ ュ ー タ や 携 帯 電 話( メ ー ル )の 文 字 入 力 を 主 と す る 機 器 を 使 う 上 で は 、大 き な 障 害 と な る 部 分 は 少 な く 、逆 に そ れ ら を 利 用 す る こ とは、大変有効なツールとなっている。しかし、児童・生徒はそれらの情報の中 で 、特 に「 文 字 情 報 」に つ い て は 、完 全 に う ま く 利 用 し て い る と は 言 い 切 れ な い 事 例 が 数 多 く 起 き て い る 。そ こ で 、全 国 の ろ う 学 校 で 拡 が り つ つ あ る 電 光 掲 示 板 や 大 型 デ ィ ス プ レ イ を 使 っ た「 見 え る 放 送 」の 取 り 組 み を 通 し て 、ろ う 学 校 に お ける教育の情報化を考えてみたい。 2 本校におけるICT活用と情報に関する課題 本 校 に お い て 、各 学 部 の 幼 児・児 童・生 徒 の 学 習 活 動 で 、教 育 の 情 報 化 の 立 場 か ら 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 活 動 の 支 援 や 情 報 保 障 の 有 効 な 手 段 と し て 行 な わ れ て いる教育機器の使用例を観点別にあげる。 (1) 基礎学力(教科学習)の向上 近年、進路選択の多様化により、保護者からの「学 年(学齢)相当の教科学習実施の要望」が高まってい る 。本 校 で は 、 各 種 ア プ リ ケ ー シ ョ ン ・ 学 習 ソ フ ト ウ ェ アを活用し視覚的・体験的な学習活動を取り入れるこ と で 、問 題 を 把 握 し 、 そ の 内 容 を 正 確 に 理 解 し 、 解 決 し ていくといった学習態度を促しながら、基礎的な学力 を育成している。日本語の習得の遅れや抽象的な考え 方の遅れなどが、教科学習など学習活動上の大きな障 PC とプロジェクター 害となっているろう学校の児童・生徒には、Web 教 授業への活用の増加 材、特に画像や動画は貴重な教材になっている。 - 143 - (2)言語(読み・書き)能力の育成 中 学 部・高 等 部 で は 、総 合 的 な 学 習 の 時 間 な ど で 、全 体 発 表 に 向 け た「 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 」を P C を 使 っ て 行 な う 機 会 が 増 え て い る 。利 点 と し て は 、デ ィ ス プレイ上にイメージ図や絵を示して相手が誤解しやすい助詞や言葉の意味をわ か り や す く 説 明 し た り す る こ と が で き る 。ま た 、正 し い 漢 字 の 読 み 方 が 苦 手 な 児 童・生 徒 が 多 い の で 、ふ り が な ふ り を 行 な う 支 援 サ イ ト や ソ フ ト ウ ェ ア の 活 用 し て 正 し い 漢 字 の 読 み 方 も 学 習 し て い る 。携 帯 電 話 を 使 っ た 電 子 メ ー ル や カ メ ラ 機 能 を 使 っ た テ レ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 手 段 を 多 い に 活 用 し た り 、自 分 の W e b ペ ー ジ を 作 成 し 、多 く の 人 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 っ て い る 生 徒 も 増 え て い る 。自 分 の 意 思 を 伝 え る 正 確 な 日 本 語 の 文 章 が 書 け ず に 、誤 解 を 生 じ る な ど の 問 題 も 多 いが、それらから正しい文章表現や語彙の蓄積を図っている。 (3) 情報収集力の育成 児 童・生 徒 の テ レ ビ 番 組 へ の 関 心 は 高 く 、い ろ い ろ な 話 題 は 持 っ て い る 。最 近 で は、各種の「字幕放送」が積極的に提供されているが、専用の機器の利用度は、 学 校・家 庭 と も に 低 い 。イ ン タ ー ネ ッ ト の W e b ペ ー ジ 上 に は 膨 大 な 情 報 が あ る 。 そ れ ら の 情 報 か ら 、必 要 な 情 報 を 収 集 す る 技 術 は 、 概 ね 身 に 付 け て い る 。今 後 は 、 それらを選択し、活用する能力を育てる支援が、社会参加・自立で必要になる 。 (4) 情報化社会への対応 (職業教育IT活用能力の育成) 情報化社会への対応として、「情報教育」で、Web 教材などを使って情報モ ラ ル の 学 習 支 援 を 行 な っ て い る 。修 学 旅 行 の 事 前 学 習 な ど を 通 し て 、イ ン タ ー ネ ットを使ったコミュニケーションや情報の収集の技術を身につけるようにして い る 。特 に 、高 等 部 に お い て は 、社 会 参 加 に 向 け て 、職 場 が 要 求 す る ア プ リ ケ ー ションを使いこなす実習が求められる。さらに、年々向上し、開発・改善される コ ン ピ ュ ー タ・周 辺 機 器・ア プ リ ケ ー シ ョ ン に 対 応 で き る 資 質 を 育 成 す る 支 援 も 求められている。 (5)個別的な指導 多 く の 学 習 W e b 教 材 な ど か ら 、指 導 す る 児 童・生 徒 の 理 解 度 に あ わ せ て ソ フ トウエアを選択し、その児童・生徒の学習理解の促進を図る取り組みができる。 家庭においても教師と一緒に操作し、学習活動を自学自習に役立てる可能性が高 くなりつつある。 - 144 - 3 横浜市立聾学校「見える放送」システム 本校では、授業の始まりや終わりの合図は、チャイムが鳴ると同時にランプ (パトライト) が光って知らせ ている。また、 普段の校内放送 での連絡は、結 ディスプレイの操作 果として、聴こ 操作画面 小学部1階のようす える職員または 児童・生徒が内 容をボードに書 いたり、手話で 周りの人に伝え てきた。避難訓 練で緊急放送を する時の方法は、 パトライトの赤 通常の時間割の確認 時間を守った学校生活をする 緊急時は瞬時に画面が切り替わる 色 ラ ン プ が 光 っ て「 非 常 」を 知 ら せ 、そ の 後 音 声 放 送 と テ レ ビ 放 送( 文 字 )で 指 示をしている。 このような生活環境の中での反省として、①時間を守った生活が定着できない ②その日の日課や行事を理解した行動ができない ③生徒間の呼び出しや連絡が 取 り に く い な ど か ら 、常 に 職 員 が 校 内 を 動 い て ひ と つ ひ と つ の 指 示 や 伝 達 を す る 必要があり時間的なロスが多かった。 そのような状況で、中学部・高等部生徒の中に、全校テレビ放送を使った文化 祭のステージ発表を校内にライブ放送したり、避難訓練時の視覚(文字・画像) 情 報 が 工 夫 さ れ て 分 り や す く 、適 切 な 指 示 が 受 け ら れ る な ど の 経 験 か ら 、新 し い かたちの「情報保障システム」設置を求める声が上がってきた。 筑波大学附属 ろ う 学 校 で の 電 光 掲 示 板 に よ る「 校 内 放 送 文 字 表 示 シ ス テ ム 」や 東 京 都 立 葛 飾 ろ う 学 校 は 、「 見 え る 校 内 放 送 」が 行 わ れ て い る 。他 の ろ う 学 校 に お い て も 、こ の よ う な シ ス テ ム 設 置 に 取 り 組 ん で い る 。本 校 、横 浜 市 立 聾 学 校 で は 、I T 委 員 会 を 設 置 し て 、学 校 に 関 わ る コ ン ピ ュ ー タ 全 体 に 関 す る 計 画・整 備 を 情 報 教 育 部 と 協 働 し て 行 い 、「 見 え る 放 送 」 シ ス テ ム 設 置 に 向 け て 活 動 し て き た 。 「本校のみえる放送」について紹介 2005年4月より、本校では「見える」放送システムを校舎内にて稼動して い る 。「 見 え る 」放 送 シ ス テ ム で は 、聴 覚 に 障 害 が あ る 幼 児・児 童・生 徒 に 対 し て 、学 校 生 活 を 送 る 上 で 必 要 な 放 送 を 、文 字 や 画 像 な ど の 視 覚 情 報 に し て 提 供 し ている。 - 145 - 「 見 え る 」放 送 シ ス テ ム で は 、コ ン ピ ュ ー タ ネ ッ ト ワ ー ク シ ス テ ム を 活 用 し て 、 3 つ 出 力 装 置 を 通 し「 視 覚 的 な 放 送 」を し て い る 。1 つ は 校 内 5 ヶ 所 に あ る P D P( プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ )へ 、2 つ 目 は 校 内 各 教 室 に あ る テ レ ビ へ 、そ し て 3 つ め は グ ラ ン ド に あ る 電 光 掲 示 板 あ る 。こ の シ ス テ ム に よ っ て 、本 校 の 幼 児・児 童・生 徒 に 対 し て 、日 常 の 学 校 生 活 で の 情 報 保 障 は も ち ろ ん 、災 害 時 な ど の 緊 急 事態でも情報保障が行うことができる。 (1) 見えるディスプレイ 7ヶ所の廊下・オープンスペース(幼稚部1・2F、小学部1・2F、中高部 1・2・3F)に50インチのPDPが設置され、それぞれには、コンピュータ が 接 続 さ れ て お り 、職 員 室 に あ る コ ン ピ ュ ー タ( サ ー バ )に ア ク セ ス し 放 映 す る 情報を制御するようになっている。 6ヶ所のディスプレイには、同一の内容の放送を行うこともできれば、6ヶ所 す べ て を 違 う 内 容 の 放 送 に す る こ と も で き る 。こ の 柔 軟 性 こ そ が「 見 え る デ ィ ス プレイ」の最大の特徴となる。乳幼児から高校生までが在籍する本校にとって、 とても意味のあることだと考えている。 (2) 見える電光掲示板 職員室・グランドの電光掲示板へ文字情報を簡単に電光掲示板に表示できるシ ス テ ム で 、聴 覚 障 害 の あ る 学 生 に も リ ア ル タ イ ム に 情 報 の 伝 達 が で き る よ う に な っ た 。文 字 情 報 は 一 度 に 2 行 1 6 文 字 ま で 表 示 す る こ と が で き る 。こ の 電 光 掲 示 板を使って、体育などの授業運動会などグランドで行われる学校行事、あるいは 非 常 時 な ど に 幼 児・児 童・生 徒 へ 情 報 保 障 を 行 う こ と が で き る 。緊 急 時 に は 、回 転灯と連動させて、より効果的なアピールができる。(チャイムとも連動可能) (3)見えるテレビ 放 送 室 に あ る コ ン ピ ュ ー タ は 、職 員 室 に あ る サ ー バ か ら 放 送 す る 情 報 を 、校 内 の テ レ ビ 放 送 シ ス テ ム を 通 し て 校 内 放 送 を す る 。校 内 の 各 教 室 の テ レ ビ を 5・9 チ ャ ン ネ ル に 合 わ せ る と 放 送 を 見 る こ と が で き る よ う に な っ て い る 。つ ま り 、校 内 の す べ て の 教 室 で 、同 一 内 容 の 放 送 を 見 る こ と が で き る 。こ れ は 、特 に 緊 急 一 斉 放 送 な ど の と き に 効 果 が あ る 。す べ て の 幼 児・児 童・生 徒 が 一 斉 に 集 ま っ て 給 食をとるホールには、4台のテレビで、放送を行うことができる。 4 見える放送からみたICT活用の可能性と問題点の検討 (1) 見える放送に関する課題について 児童・生徒は、毎朝、毎日変わるその日の日程や連絡事項を確認したり、休み 時 間 や 放 課 後 に 日 程 の 変 更 や 緊 急 の 連 絡 事 項 な ど に 対 し て も 、以 前 の 音 声 に よ る - 146 - 校 内 放 送 よ り も 確 実 に 伝 わ る よ う に な っ た 。今 後 、更 な る 放 送 の 機 能 を 向 上 さ せ る た め の 課 題 と し て 、次 の 課 題 を 検 討 中 で あ る 。① 誰 で も い つ で も 運 用 で き る シ ス テ ム の 検 討 、中 ・高 等 部 生 徒 が 自 ら 活 用 で き る シ ス テ ム の 検 討 ②「 防 犯 」「 災 害」対策のため、報知器・報知器と連動した瞬時の提示方法の設定 ③インター ネ ッ ト や テ レ ビ 共 聴 シ ス テ ム と の 連 動 し た 放 送 、文 字 情 報 理 解 が 難 し い 生 徒 に 対 する、手話のアニーメーションや動画の情報を提示するシステムの構築 ④児 童・生徒の学習目標に合わせた文章の漢字にルビふる場面の検討 ⑤テロップ形 式で文章を提示する時の本校生徒に適合した文字数とスピードの検証など (2) ろう学校のICT教育の課題について 見 え る 放 送 の 導 入 と 同 時 に 、コ ン ピ ュ ー タ と 接 続 す る プ ロ ジ ェ ク タ ー の 使 用 頻 度が高くなってきた。これはプリント教材の拡大提示の他に、画像やイメージ 、 図・表 な ど を 使 っ た プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 形 式 の 授 業 へ の 移 行 も 考 え ら れ 、手 話 や 板 書 と 併 用 し た 児 童・生 徒 と の 正 確 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 支 援 ツ ー ル と い う 観 点での活用方法は非常に高い。指導者が児童・生徒と常に正対できると同時に 、 視 線 の 延 長 線 上 に 指 導 者 の 手 話 や 指 差 し 、提 示 の 画 面 が あ る の で 、児 童・生 徒 の 集中力は向上したという報告もあった。 ① 書き(読み)言葉 板 書 の 代 わ り に キ ー ワ ー ド を 提 示 す る 方 法 と 、大 量 の 文 字 数 の 説 明 文 を 提 示 す る 場 合 な ど 、児 童・生 徒 が 提 示 し た「 こ と ば 」が 理 解 で き た か 、提 示 す る「 こ と ば 」 が適切なものかを十分に吟味しフィードバック・評価していく必要がある。 ② 学習内容に合わせた活用と学習活動の効果 中 学 部 で は 、数 学 の 計 算 問 題 や 図 形 の 学 習 場 面 に 、社 会 で は 全 領 域 で W e b 教 材 の 提 示 や イ ン タ ー ネ ッ ト を 使 っ た 調 べ 学 習 に 活 用 さ れ て い る 。高 等 部 で は 、表 計 算 を 中 心 と し た 職 業 指 導 、国 語 科 の 漢 字 の ス テ ッ プ 学 習・指 示 語 の 読 み と り や 語 彙 の 不 足 な ど の 課 題 を 補 う 指 導 が 行 な わ れ て い る 。紙 の プ リ ン ト 教 材 よ り も 多 様 な 視 覚 的 な 教 材 を 準 備 す る こ と が で き 、幼 稚 部 か ら 高 等 部 ま で 、様 々 な 指 導 で 活 用を行う中、幼児・児童・生徒の反応の違いが実感できる。 一方で課題点として、 ① 本来、指導者の教材の作成や準備の負担軽減になるべきIT機器が逆に数倍 の労力がかかる場合が起きている。② 児童・生徒個々に応じて、それぞれのコ ン ピ ュ ー タ で ス テ ッ プ( 自 学 )学 習 を 行 う に は 、T・T 指 導 体 制 な ど 工 夫 が 必 要 になる場面が多く起きてしまった。③ 調べ学習などで、インターネット活用時 の 情 報 モ ラ ル の 指 導 の 必 要 性 を 常 に 意 識 し て 、「 情 報 教 育 」 な ど で 携 帯 電 話 も 含 めた「情報モラル」の学場面設定が大きな課題となっている。 ④ 幼児・児童・ 生徒に提示されるプリント教材もカラープリント教材が要求されるようになり つ つ あ る 。⑤ 学 校 予 算 の 関 係 も 含 め て 、各 学 部 に 応 じ た 使 用 基 準 作 成 も 早 急 な 検 討課題となっている。 - 147 - 病弱・知的障害情報支援技術 「病弱障害における支援」の事例 (二ツ橋養護学校TV会議システム活用) 矢吹仁寿(元盲学校教諭)横浜市立高等養護学校 二ツ橋分校 高等部教諭 二つ橋養護学校は平成12年度から15年度にかけて文部科学省から 1.子どもたちの楽しい学校生活や健康回復 に向けて、高速回線を利用したテレビ会議シ ステムなどの情報通信機器活用の有効性・可 能性について検証する。また、病院内の閉じ た環境の中から、広く世界の情報を取り入れ ることのできるインターネットを使った授業 の有効性についても検証する。 図 1 ビデオ機材(VTR)と 2.マルチメディアの活用を通し、子どもた ネットワークの接続 ち の 生 活 経 験 や 視 野 を 広 げ る と 共 に 、Q O L を 高 め る た め の 効 果 的 な 利 用 法 を 探 る 。と い う 目 的 で 研 究 指 定 校 に な り 、様 々 な 学 習 活 動 や 各 種 行 事 等 で T V 会 議 シ ステムの利用が図られ研究が進められてきた。 本 校 と 院 内 学 級 と の 合 同 行 事 の 話 し 合 い や 、作 品 の 鑑 賞 会・2 拠 点 間 の 朗 読 会 な ど に 利 用 さ れ 、ベ ッ ト サ イ ド に い る 子 供 た ち に は 経 験 の 幅 を 広 げ る 大 き な 手 立 てとなっていた。しかし ISDN 回線であったために、3つの院内学級と本校を 接 続 し て の 利 用 に は 音 声 の 遅 れ や 、画 像 の 不 鮮 明 さ 、突 然 の 断 線 な ど の 不 都 合 が 数 多 く 見 ら れ た 。1 6 年 度 に T V 会 議 シ ス テ ム 変 更 が 図 ら れ 、光 回 線 に な り 上 記 の 数 々 の 問 題 点 の 改 善 が さ れ 、飛 躍 的 に T V 会 議 の 利 用 が 学 習 活 動 の 中 に 取 り 入 れられた。 ・現在のシステム(本体 SONYPCS-1 IP ネットワーク接続 図 2 ネットワーク接続 図 3 本体 PCS-1 (リモコン) (接続画面) - 148 - 5地点間利用) ・利用法 ①各院内学級に向けて教科担当からの 授 業。 受け手側の生徒が TV 画面をリモコンを 使って自分で操作することが可能となり黒 板や資料にカメラを向け自分の視点として カメラを簡単に動かすことが可能。 ②学校行事に各院内からの参加。 ③職員間の会議や打ち合わせ。 図 4 ネットワークカメラ 利点: ・ ネットワーク接続環境さえ整っていれば、ベットサイドや色々な教室に移 動しての使用が可能である。 ・ Y・Y ネット常時接続なので、接続料金が別途に発生しない。 ・ 機器がそろっていれば、全国どことでも接続可能。 ・ リモコン操作が簡単。 難点: ・ まだ機器の価格が高い。 「知的障害の支援」事例 (横浜市立高等養護学校 二つ橋分教室の ICT 教育について) 矢吹仁寿(元盲学校教諭)横浜市立高等養護学校 二ツ橋分校 高等部教諭 高 等 養 護 学 校 二 つ 橋 分 教 室 は 、平 成 1 6 年 4 月 に 横 浜 市 立 高 等 養 護 学 校 の 分 教 室として横浜市瀬谷区二ツ橋町に生徒26名職員9名で開校された小さな学校 あ る 。1 7 年・1 8 年 と 新 入 生 を 受 け 入 れ よ う や く 今 年 度 で 3 学 年 全 員 が そ ろ い ま し た 。分 教 室 の 教 育 理 念 と し て さ ま ざ ま な 教 育 活 動 を 通 し て 、障 害 の あ る 人 の 社 会 参 加 を 積 極 的 に 進 め 、将 来 の 自 立 生 活 、地 域 生 活 に 向 け た 基 礎 的・基 本 的 な 力の育成をつとめることをかかげている。 その中での本校の ICT 教育として、 時 代 の ニ ー ズ に あ っ た 職 業 教 育 と し て 色 々 な 教 科 の 中 で 取 り 入 れ 、実 践 を 積 極 的 に行う学習活動に取り組んでいる。 具体的に学年ごとの教科の中での ICT 教育をあげてみると、1年生では情報 の 基 礎 学 習 の 授 業 で パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ に 関 す る 基 礎 的 な 知 識・技 能 を 身 に つけることを目標としている。 分教室の生徒は、中学のときに支援学級に在籍していた生徒が多いためか、 - 149 - P C に 触 れ た 経 験 は 多 い が 、自 分 で 文 字 を 入 力 す る 経 験 が 少 な い た め に ま だ ロ ー マ 字 入 力 が で き な い 生 徒 が 多 い の が 現 実 で あ る 。そ こ で 最 初 に 行 う こ と は 、中 学 校 の 先 生 に 自 分 で 撮 っ た 写 真 を は が き に 印 刷 し 、ロ ー マ 字 表 を 見 な が ら お 便 り を 書 く 学 習 を 行 っ て い る 。イ ン タ ー ネ ッ ト や ワ ー ド・エ ク セ ル・パ ワ ー ポ イ ン ト に ついても、基礎的な操作を中心に行っている。 生 活 数 学 の 時 間 に は エ ク セ ル を 使 っ て 小 遣 い 帳 等 を つ け た り す る が 、小 遣 い 帳 は 事 前 に 作 っ て あ り 、数 字 の 入 力 だ け で す む よ う に し て あ る 。生 活 社 会 で は イ ン ターネットを使って電車の運賃や施設利用費などを自分で調べ PC を活用して い る 。総 合 の 時 間 で は 、福 祉 に つ い て の 調 べ 学 習 を 行 い 、イ ン タ ー ネ ッ ト や 電 話 等を活用し調べ、発表を行った。 実 習 の 際 に 利 用 す る 交 通 機 関 の 回 数 券 購 入 も 、教 師 と 一 緒 に 利 用 す る 駅 ま で 行 っ て 自 分 で 券 売 機 を 使 い 購 入 す る 経 験 も 積 ん だ 。職 業 の 流 通 サ ー ビ ス で は P C を 使ってマニュアル作りなどもしている。 2 年 生 に な る と 、情 報 基 礎 の 時 間 に 変 わ っ て 職 業 の 中 に 情 報 が 加 わ り 、名 刺 作 り や ビ デ オ 加 工 、パ ワ ー ポ イ ン ト で の 趣 味 の 紹 介 、写 真 の 加 工 な ど 行 い 興 味 の 幅 を 広 げ る 活 動 を 多 く 取 り 入 れ て い る 。そ の 中 で ル ー ル や マ ナ ー を 知 る 機 会 を 作 り 、 昨 年 の 課 題 の 自 分 の 趣 味 の 紹 介 で は 、各 企 業 に メ ー ル を 送 っ て 資 料 の 利 用 承 諾 を 取 る 経 験 も 試 み た 。入 力 を よ り 確 実 に す る た め に 、フ リ ー ソ フ ト ウ ェ ア の タ イ ピ ン グ 練 習 を 行 い 、 楽 し み な が ら 文 字 入 力 を 覚 え た り し て い る 。( タ イ ピ ン グ フ ァ イター等) ま た 各 教 科 の 中 で も 1 年 生 同 様 、イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 し て の 調 べ 学 習 を 行 っ て い る が 、検 索 を 早 く 行 う た め の 学 習 も 情 報 教 育 の 中 で 行 っ て い る 。漢 字 を よ く 読めない生徒は「キッズ Goo」や「Yahoo キッズ」を使い、ふりがなを表示 さ せ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト で の 検 索 を 行 っ て い る 。そ う す る こ と に よ っ て 、他 人 に 尋ねることなく必要な情報を自分で得ることができるようになってきた。 3 年 生 に な る と 、卒 業 後 に 向 け て 実 生 活 に 必 要 な 情 報 処 理 を 中 心 に 行 っ て い る 。 ま た 、2 年・3 年 生 は 余 暇 活 動 の 時 間 も あ り 、卒 業 後 の 余 暇 活 動 に む け て イ ン タ ーネット等を使って調べ学習などを進めている。 - 150 - 肢体不自由障害支援技術 「肢体障害における支援」の事例 上菅田養護学校の肢体不自由学校の紹介 金井 大教諭 横浜市立上菅田養護学校 高等部教諭 横 浜 市 立 上 菅 田 養 護 学 校 は 、全 国 で も 有 数 の 大 規 模 養 護 学 校 で 、1 0 台 の 大 型 ス ク ー ル バ ス に 乗 っ て 、市 内 各 地 か ら 遠 く は 約 1 時 間 を か け て や っ て く る 。登 校 の 姿 も 様 々 で 、リ ク ラ イ ニ ン グ し た 状 態 で 、車 椅 子 を 自 力 で 、先 生 に 押 し て も ら い な が ら 、電 動 車 椅 子 を 操 作 し て 、独 歩 で と い っ た 具 合 で あ る 。そ れ 以 上 に 、多 様 さ を 見 せ て い る の が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 方 法 で あ る 。肢 体 不 自 由 の 場 合 、四 肢 や 顔 の 筋 肉 に 不 随 意 運 動 が 入 っ た り 、麻 痺 が 入 っ た り す る こ と が あ る の で 、意 思 を 相 手 に 伝 え よ う と し て も 、伝 わ ら な い 場 合 が あ る 。さ ら に 、重 度・重 複 化 の 傾 向 も あ り 、聴 覚 や 視 覚 に よ る や り 取 り が 難 し い 場 合 も あ る 。こ う し た 困 難 さ か ら 、 児 童 生 徒 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン す る こ と を あ き ら め る こ と が あ れ ば 、「 生 き る力」 ・「 自 己 決 定 力 」と い う 視 点 や 狭 義 で は 進 路 指 導 と い う 観 点 か ら も 、き わ め て 重 要 な 教 育 的 課 題 で あ る 。 よ り 身 近 な 言 い 方 を す れ ば 、「 自 分 が も し 何 か 感 じ て い た り 、考 え て い た り す る こ と が 相 手 に 全 く 伝 わ ら な い と し た ら 」と 、そ の 状 況 を 想 像 す る だ け で も 、事 の 重 要 性 は 十 分 理 解 さ れ る で あ ろ う 。こ の 課 題 に 取 り 組む中で、重要な支援方法の一つに入力装置の工夫がある。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 取 り 方 は 、千 差 万 別 で あ る 。表 情 を 読 み 取 と っ て 支 援 者 が 代弁 す る 、 ま ばた き の 回 数や 視 線 の 固 定な ど の ル ー ルを 決 めて yes/No や A/B を選択する、指文字やサインを使う、音声を介する、それらを組み合わせ た も の な ど が あ る 。し か し 、中 に は な か な か 意 思 疎 通 が 難 し い 児 童 生 徒 も 存 在 す る 。快 ・不 快 の 表 情 は 出 る け れ ど 、視 点 が 合 わ な い な ど の ケ ー ス 、あ る 程 度 、認 知 は し て い る の だ ろ う け れ ど 、本 人 の 意 思 表 示 の 手 段 が 見 つ か っ て い な い た め に 、 支援者側が十分に意図を汲めないケースなどが挙げられる。いずれの場合でも、 生 ま れ な が ら に 障 害 の あ る 子 ど も の 場 合 、早 期 の 段 階 か ら 障 害 を 補 い な が ら コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 育 て 、「 伝 わ る 」 と い う 成 功 体 験 を 積 み 上 げ て い く 必 要 が あ る 。 具 体 的 に は 、 お も ち ゃ の 入 力 装 置 を 押 し た ら 音 楽 が 流 れ た な ど の 、「 自 分 が 作 用 さ せ た 」と い う 自 己 効 力 感( s e l f - e f f i c a c y )の 充 実 で あ る 。次 に そ れ ら を 繰 り 返 す こ と 、お も ち ゃ の 種 類 を 広 げ て い く こ と 、ま た 、支 援 者 と と も に こ れ ら を 繰 り 返 す こ と に よ り 、認 知 面 で も 広 が り を も つ こ と が 不 可 欠 で あ る 。そ の 後 、 「 何 が し た い 」な ど の 欲 求 が 出 て く る と 考 え ら れ る 。そ の 際 に 、主 体 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 成 立 さ せ る に は 、「 何 」 を 「 ど う い う 手 段 で 」 伝 え る か と い う こ と が 重 要 に な っ て く る 。そ し て 、こ の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 支 援 は 、最 終 的 に 社 会 に 生 徒 が 出 る 際 に 必 要 な「 自 己 決 定 す る 力 」を 育 て る こ と に 焦 点 を 合 わ せ て い く べ き で あ る 。そ の た め に は 、支 援 者 同 士 の 共 通 理 解 と 共 に 、ど ん な 支 援 者 に も 分かりやすいコミュニケーション手段をとっていく必要がある。 - 151 - こうした視点から入力装置の工夫の例を、次に挙げていく。 ①自己効力感を高めるために、肢体に障害があっ て も 、主 体 的 に 活 動 す る 経 験 が 必 要 で あ る 。し か し 、 現実に玩具で遊ぶにしても、肢体に障害がある子ど もは困難な場合が多い。ところが、少しの工夫で遊 べるようにすることも可能である。たとえば、少し でも随意的に動く部位があれば、その部位でスイッ チ操作をすれば玩具を自分で動かせる。そのための 図1 BDアダブタ 機器も市販されている。図1のように、BD スイッ チ を 使 用 す れ ば 、市 販 玩 具 の 電 池 ボ ッ ク ス に 装 着 し て 、ス イ ッ チ を 使 用 す る こ と ができる。図2のような入力装置と組み合わせるこ とで、さまざまなおもちゃや電子機器の入力に用い ることができる。手指操作が困難な生徒でも、これ らの機器を組み合わせれば、比較的押しやすいスイ ッチを組み合わせて、様々なおもちゃや電子機器の 入力に用いることができる。また、図3のように、 ジェリービーンスイッチだけでもプラグが対応して 図2 ジェリービーンSW いるおもちゃであれば、プラグを指すだけでスイッ チ が 作 動 す る お も ち ゃ も あ る 。ボ タ ン を 押 す こ と で 入 力 ス イ ッ チ が 入 り 、鈴 が 動 き、音がなる仕組みになっている。認知面が不確か な生徒にとっても良い刺激になり、フィードバック されて繰り返しボタンを押す生徒の姿が見られる。 ②高い認知力を持ち、文字なども理解し、普段文 字盤などを使える児童生徒のケースの中で、音声を 通じたコミュニケーションが難しい生徒が結構存在 図 3 ジェリービーン・スイッ する。コンピュータは、記録したり再現することが チを利用した玩具 優れている機器であるので利用場面は多い。しかし 程 度 は 軽 く て も 不 随 意 運 動 が あ る 場 合 な ど は 、普 通 の キ ー ボ ー ド や マ ウ ス で は 使 いづらいケースが目立つ。こうした場合、入力支援 装 置 を 使 え ば 、ワ ー プ ロ 等 を 利 用 す る こ と が で き る 。 キーボードを誤って入力してしまう場合など、キー ボードカバーを利用すれば、キーを探りながら正し く打つことが可能である。また、上肢に障害があっ て下肢でキーボードを打つといった場合にも、キー 図 4 キーボードカバー ボードカバーが有効である。キーボードのカバーに 穴 が そ れ ぞ れ 空 い て お り 、キ ー に 対 応 し て い る 。多 少 不 随 意 運 動 で 震 え た り 、指 が定まらなかったりする生徒でも使用することができる。キーボード操作は、 - 152 - 「SHIFT キー」や「CTL キー」のように、同時に2つのキー操作が必要な場 合 が あ る 。し か し 、肢 体 に 障 害 が あ る 場 合 は 、そ う い う 操 作 が 難 し い こ と が 多 い 。 そのような場合には、W indow s の「ユーザ補助機能」や MacOS の「イージ ーアクセス」の設定を行うことで、例えば、一度「SHIFT キー」を押してから 他のキーを押せば、同時に押したのと同じ効果が得られる「順次押し下げ機能」 が標準でサポートされるようになった。 ③ このような肢体障害を支援する装置やソフトウェアは、近年非常に豊富に 共 有 さ れ る よ う に な っ た が 、重 度 の 知 的 障 害 を 伴 う 場 合 に は 、文 字 を 使 っ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 難 し い 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 手 段 は 、文 字 に 限 ら れ て い る わ け で は な い 。児 童 生 徒 の 実 態 に 応 じ て 、シ ン ボ ル に よ っ て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 うこともある。そこで、何枚かの絵カードを貼り付 けたボードを本人が見て、どこを見ているかによっ て意志を確認するというようなやり方が考えられる。 そのような考え方を発展させていけば、現在の技術 を駆使してもっと楽にコミュニケーションを行うこ とができるのではないかという発想で生まれたのが、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン・ エ イ ド( 意 思 伝 達 装 置 )で あ 図 5 V O C A の 例( f l a c k ) る。また特に音声を使ったものをVOCA(音声意 思伝達装置/Voice O utput Communicati on A id )と呼ぶ。 シ ン ボ ル を 使 っ た V O C A の 一 つ が 、図 5 の よ う な も の に な る 。図 5 は 、窓 を 16分割したものが、載っているが、8分割のもの、4分割のものなどもあり、 そ れ ぞ れ の 窓 が ボ タ ン に な っ て い る 。ボ タ ン を 押 す と 、あ ら か じ め 録 音 さ せ て い た音声が再生されるものである。裏には録音⇔再生の切り替えスイッチがあり、 使 用 者 が 言 い た い 事 物 を 音 声 と し て 録 音 す る こ と が で き る の で 、単 語 レ ベ ル 、句 レベル、文レベルでの録音が可能である。また、表面 の窓には、使用者が認識している絵や写真などを貼っ ておけば、本人が伝えたいものを押すことで、音声を 出力することの代用になりうる。また、カードは1枚 だけではなく複数枚あるので、状況や場面ごとにまと め て お く と 、「 朝 の 会 」 用 、「 発 表 」 用 な ど と 替 え る こ 図 6. VOCA の例 とができるので、ある程度柔軟に対応できる。ちなみ に そ れ ぞ れ の カ ー ド に は バ ー コ ー ド が 入 っ て お り 、そ れ ぞ れ の 窓 に 対 応 す る よ う に 音 が 記 録 さ れ て い る の で 、窓 の シ ン ボ ル と ボ タ ン に 関 連 な く 、使 用 者 に 合 わ せ る こ と が で き る 。文 字 は 認 識 で き な く て も 、事 物 は 視 覚 的 に 認 識 で き て い て 聴 覚 で の 理 解 が 困 難 な 生 徒 に 向 い て い る と 言 え る 。ま た 、と っ さ に 言 い た い こ と を 伝 え る と い う よ り は 、若 干 用 意 す る 時 間 と 手 間 を 要 す る こ と 、ま た 、使 用 者 の 真 に 伝 え た い 内 容 を 録 音 し て い る か を 検 証 で き な い 点 が デ ィ メ リ ッ ト と 言 え る 。実 際 - 153 - に 使 用 し て い る 生 徒 は 、「 ス ピ ー キ ン グ ダ イ ナ ミ カ リ ー 」 と い う ソ フ ト で 絵 中 心 の 日 記( シ ン ボ ル を 選 ぶ も の )を つ け て お り 、そ こ で 使 用 す る シ ン ボ ル を そ の ま ま こ の V O C A に 使 っ て い る の で 、本 人 の 中 で は 同 じ も の と 認 識 し や す い よ う だ 。 最 初 は 楽 し そ う で 、一 度 飽 き る と あ ま り 使 わ な く な り 、そ し て そ れ を 発 表 し た 時 に 反 応 が 良 か っ た の で 、ま た 使 う よ う に な る 、と い う 変 遷 を た ど っ て い る 。彼 に と っ て は 、主 体 は 手 話 を 通 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で あ り 、こ れ は あ く ま で 補 助 的 に 使 っ て い る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 一 つ で あ る が 、認 知 面 や 、文 作 り の 上 で 多 いに活用されている。補足になるが、VOCA も全てがシンボルによるものでは な い 。文 字 盤 音 声 発 生 装 置 の よ う な も の も あ る 。こ の 種 類 の V O C A は 5 0 音 図 に対応しており、一つひとつボタンを押して言いたいことが入力し終わったら、 発 声 ボ タ ン を 押 す 。す る と 、音 を 連 続 し て 読 み 上 げ て く れ る 装 置 で あ る 。仮 名 文 字 が あ る 程 度 理 解 で き る 生 徒 に 向 い て い る 。か な り 入 力 し や く な っ て お り 、丸 い ボタンはそれぞれくぼんでいる。 ④VOCAと同じようにコンピュータをコミュニ ケーション・エイドとして利用しようという試みも されている。先に述べたスピーキングダイナミカリ ーもその一つである。コンピュータを利用するメリ ットは、ユーザによっての個別設定が容易であるこ と、ディジタルデータとして他のソフトウェアとの 図 7. 入力スイッチの例 連携をする可能性があるということである。また、 ディジタルデータは、ユーザの必要に応じて自由に デ ー タ を 加 工 す る こ と が 可 能 で 、デ ー タ の 再 利 用 が 容 易 と い う 利 点 が あ る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン・エ イ ド に は 大 き く 分 け て 、シ ン ボ ル 選 択 に よ る も の と 文 字 選 択 に よ る も の が あ る 。当 然 な が ら 、後 者 は ユ ー ザ に 文 字 の 概 念 が 形 成 さ れ て い る 必 要がある。 肢 体 に 障 害 が あ り 文 字 が 書 け な い 、あ る い は 書 け た と し て も 判 読 し に く い と い っ た 場 合 に 、コ ン ピ ュ ー タ を 利 用 す る こ と で 、飛 躍 的 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が し や す く な る 場 合 が あ る 。肢 体 の 障 害 が 重 度 で 、キ ー ボ ー ド に 手 が 届 か な か っ た り 、 全 く 扱 え な く て も 、身 体 の ど こ か の 部 位 を 随 意 的 に 動 か す こ と が で き れ ば 、1 点 ~ 多 点 ス イ ッ チ で コ ン ピ ュ ー タ を 操 作 し た り 、ワ ー プ ロ を 打 っ た り す る こ と が で き る 。他 に 、銀 行 の A T M な ど で お 馴 染 の タ ッ チ パ ネ ル も 低 価 格 化 が 進 ん で お り 、 生 徒 が や り た い ソ フ ト の シ ン ボ ル を 覚 え て 、そ れ を 押 す だ け で ソ フ ト ウ ェ ア を 起 動させたり、Webサイトを表示させたりすることができる。 ①から④までの事例を通じ、児童生徒の「自己決定力」をいかに高め、その前 段 階 と し て ど の よ う に 入 力 装 置 を 導 入 し 認 知 面 を 高 め て い く か 、ま た 、コ ミ ュ ニ ケーション手段を児童生徒の実態に合わせて確立しているかについてまとめた 。 - 154 - 5 まとめと整理 (1)今後の盲ろう養護学校の情報教育の在り方 盲 ろ う 養 護 学 校 の 生 徒 達 は 、概 ね 情 報 の 授 業 が 大 好 き で あ る 。し か し「 情 報 の 授 業 で コ ン ピ ュ ー タ を 道 具 と し て 使 う 」こ と は 目 的 を 達 成 さ せ る た め の 手 段 に 過 ぎ な い 。教 師 が 、障 害 の ニ ー ズ に 応 じ た 指 導 計 画 に 基 づ き 障 害 を 補 い 支 援 す る と い う 意 味 で 、コ ン ピ ュ ー タ( 情 報 機 器 )を 有 効 に 活 用 す る 意 図 が 必 要 で あ る 。 コ ン ピ ュ ー タ を た だ 使 う と い う こ と だ け を 授 業 に 組 み 込 ん だ と し て も 、成 果 は さ ほ ど 期 待 で き な い 。ま た 、教 師 が 先 進 的 な 技 術 に 関 す る 研 修 を 積 ん で 、最 新 の 文 化 や技術も積極的に授業実践に取り込んでいく姿勢が要求されている。 (2)盲ろう養護学校の生徒・児童におけるインターネットの教育的意義 コ ン ピ ュ ー タ も 高 速 化 し 、大 多 数 の 各 家 庭 に 無 理 な く 入 っ て き て い る 時 代 を 迎 え 、「 イ ン タ ー ネ ッ ト 」 と い う 言 葉 が 、 い い 意 味 で も 悪 い 意 味 で も 市 民 権 を 得 て きており、年を追うごとに多くが、使い勝手も良くなってきている。 障害をも っ て い る こ ど も た ち に と っ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト は 特 別 な 意 味 を 持 つ 。特 に 、視 覚 障 害 の 児 童・生 徒 は 通 学 の 範 囲 も 狭 く 、世 の 中 の 情 報 に 触 れ る こ と が 少 な い の で 、 世 の 中 の 情 報 や マ ス コ ミ 情 報 は 貴 重 な 情 報 源 で あ る 。ま た 、メ ー ル・チ ャ ッ ト な ど の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル は 、他 人 と の 接 点 が 座 っ た ま ま で で き る の で 、有 効 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 手 段 で あ る 。そ の よ う な 子 ど も た ち に と っ て 、社 会 と の 接 点 が 一 つ で も 増 え る と い う こ と は 、ま さ に 障 害 を 補 う 手 段 で あ る 。普 段 、聴 覚 障 害 者 と 視 覚 障 害 者 同 士 の は 会 話 は 難 し い が 、電 子 メ ー ル や 電 子 会 議 室 で の や り と り を し て い て 全 く お 互 い の 障 害 に 気 付 か な か っ た と い う 例 も あ る 。も ち ろ ん そ れ は 、P C を イ ン タ ー フ ェ イ ス と し て 、障 害 を 乗 り 越 え る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 手 段( 支 援 技 術 )と 言 え る 。イ ン タ ー ネ ッ ト の 世 界 そ の も の は 、究 極 の バ リ ア フ リ ー と い う 意 見 も あ る 。逆 に 、犯 罪 事 件 に 巻 き 込 ま れ た り 、詐 欺 ま が い の 情 報 や 影 の 部 分 の 情 報 も 数 多 く あ り 、こ れ ら に 対 応 で き る 対 処 法 に も 十 分 に 扱 う 必 要 が ある。 (3) 情報発信と情報共有・個人情報の保護 学 校 の W e b ペ ー ジ を 通 し て 発 信 さ れ る 情 報 は 、条 例 に よ り 制 限 さ れ る こ と が 多 い 。横 浜 市 で も Y Y ネ ッ ト( 横 浜 夢 ネ ッ ト )を 通 じ て 、横 浜 市 の 個 人 情 報 保 護 条 例 に 準 じ 、イ ン タ ー ネ ッ ト に よ る 発 信 を し て い る 。特 別 支 援 諸 学 校 に お け る 個 人 情 報 の 保 護 の 観 点 に つ い て は 、特 に 配 慮 す る 必 要 が あ る 。発 信 す る 情 報 は 、教 育的意義をふまえ十分検討する必要がある。実名や顔写真・動画等の掲載には、 本人と保護者の承諾を、紙面等で十分に確認をする必要がある。 た だ し 、学 校 側 の 過 剰 な 安 全 へ の 配 慮 意 識 か ら 、失 わ れ る 物 も ま た 大 き く 、内 容 - 155 - も 制 限 せ ざ る 得 な い 場 合 が あ る 。ま た 、個 人 の 障 害 の 程 度 も 考 慮 し た 上 で 、メ ー ル や 掲 示 板 へ の 書 き 込 み な ど に つ い て は 、イ ン ト ラ ネ ッ ト な ど で 十 分 に 練 習 を 積 み 重 ね て 、実 施 す る 必 要 が あ る 。生 徒 は 、将 来 的 に は 好 む と 好 ま ざ る に か か わ ら ず 、ネ ッ ト バ ン キ ン グ 等 の や り 取 り が 必 要 な 時 代 が 目 の 前 に き て お り 、障 害 が あ る こ と を 理 由 に 恐 れ て 利 用 せ ず 、情 報 化 社 会 の 恩 恵 を 受 け ら れ な い デ ィ メ リ ッ ト は避けたい。トラブル等の対処法・解決手段も十分に教える必要がある。 ま た 、W e b ペ ー ジ を 通 じ て 、入 学 相 談 や 卒 業 生 か ら の 電 話 が 直 接 入 っ て く る こ と も 多 く な っ て き て い る 。そ う い う 意 味 で は 、す で に W e b ペ ー ジ は 情 報 の 一 方 的 な 発 信 だ け で な く 、情 報 共 有 や 交 流 の 場 や 手 段 と し て の 利 用 が 始 ま っ て い る 。 制 限 さ れ た 中 に も 工 夫 と 改 善 が 必 要 で あ る 。ま た 、個 人 の ペ ー ジ や N P O 団 体 の 手 に よ っ て 、障 害 を 隠 す の で は な く 、障 害 を 紹 介 し た り 家 庭 内 の I E P を 紹 介 す る ペ ー ジ も 登 場 し て い る 。こ れ ら は 、非 常 に 質 が 高 い 内 容 で あ る と と も に 、保 護 者の障害理解の促進としても意義がある内容となっている。 http://homepage3.nift y.com/H appyTeppy/ http://homepage3.nift y.com/H appyTeppy/i epdi ar y.ht ml (4)特別支援教育における情報機器の活用について 障 害 児 教 育 に お け る 情 報 機 器 の 活 用 に つ い て 、「 支 援 技 術 」 を 中 心 に 紹 介 し て き た が 、支 援 技 術 は 年 々 進 歩 し て い る 。ま た 、支 援 機 器 が そ ろ っ て も 、ユ ー ザ の ニ ー ズ を 的 確 に 把 握 し 、指 導 者 が よ く 理 解 し た 上 で 対 応 し な い と 支 援 は 成 立 し な い 。障 害 の あ る 児 童 生 徒 の 社 会 参 加 と 自 立 を ど う 支 援 し て い く の か と い う こ と を 、 今 後 さ ら に 検 討 し て い く 必 要 が あ る 。そ の た め に 、個 別 の 事 例 を 共 有 化 し て 、整 理する必要がある。 (5)指導者の教員の情報教育に関する意識改革 一 般 に 、教 員 の 情 報 モ ラ ル や 情 報 リ テ ラ シ ー・コ ン ピ ュ ー タ リ テ ラ シ ー な ど の ス キ ル ア ッ プ 研 修 が 必 要 で あ る 。各 学 校 の 情 報 担 当 者 の 時 間 的 な 措 置 と 共 に 、全 国的な連携やリアルタイムに相談が可能なシステムの構築が必要である。また、 ネットワーク管理を含めた公的な支援やボランティアの育成など学校独自の自 助 努 力 と 共 に 、公 的 な バ ッ ク ア ッ プ 体 制 の 構 築 が 必 要 で あ る 。学 校 の 情 報 化 は 情 報 教 育 単 独 で な く 、各 教 科 領 域・福 祉・国 際 理 解 な ど の 下 支 え と な る も の で あ る 。 各 学 校 で は 、校 内 研 修 会 を 含 め た 各 種 コ ン ピ ュ ー タ 研 修 会 等 や 、全 校 体 制 で 情 報 化に向けての共通理解を図る必要がある。 (6)特別支援教育の今後の展望と支援 現 在 、特 別 支 援 教 育 の 諸 学 校 で は 、セ ン タ ー 化 等 が 論 議 さ れ 、一 般 校 で の 障 害 児 の 支 援 が 進 め ら れ て い る 。ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン が 叫 ば れ る 昨 今 、一 般 校 で 普 - 156 - 通 に 障 害 児 が 教 育 を 受 け ら れ る の は 理 想 で あ る が 、機 器 や 人 員 な ど 物 理 的 な 面 で 、 す ぐ に は 環 境 整 備 が 難 し い 部 分 が あ る 。特 に 、図 書 館( 情 報 メ デ ィ ア )の 資 料 な ど は 、市 内 の 特 別 支 援 学 級 か ら の 貸 出 し 要 望 も 多 く 、協 力 支 援 体 制 を 組 ん で い か な く て は な ら な い 。I T C 機 器・ソ フ ト ウ ェ ア や ハ ー ド ウ ェ ア の 設 定 設 置・選 定・ 操 作 方 法 や 使 い 方 や 指 導 等 の ニ ー ズ も 多 い 。現 在 、ポ ス ト 2 0 0 5 が 叫 ば れ る 中 、 ま だ 市 内 各 校 の ネ ッ ト ワ ー ク 整 備 も 特 別 支 援 教 室 の 末 端 ま で 届 い て お ら ず 、ネ ッ ト ワ ー ク を 通 じ た I C T 支 援( 電 子 デ ー タ を 配 給 す る 。な ど )の と こ ろ ま で は 至 っ て い な い 。盲 ろ う 養 護 学 校 自 体 の 運 営 も 人 員 削 減 が 課 題 と な っ て き て お り 、よ り 効 率 的 な 運 営・何 ら か の 方 策 が 必 要 に な っ て い る 。ま た 、卒 業 し た O B や 新 卒 業 生 な ど に 対 し て 、い つ で も 相 談 に 応 じ ら れ る よ う な 、情 報 を 共 有 す る シ ス テ ム の構築も考える必要があるだろう。 特 別 支 援 教 育 の 中 で は 、障 害 種 別 を 超 え た グ ル ー プ 別 の 教 育 課 程 編 成 も 検 討 事 項 で あ る と さ れ て お り 、そ れ ら と「 各 障 害 種 別 ご と の 専 門 性 」の 確 保 を ど の よ う に 整 合 さ せ る の か 、ま た 、自 閉 症 や A D H D・軽 度 発 達 障 害 等 を 併 せ 持 つ 生 徒 に 応じた対応も予測され、これらの対応も今後の問題になる。 「 特 別 支 援 教 育 の セ ン タ ー 的 機 能 」 に つ い て は 、「 各 学 校 の 事 情 に 応 じ て 弾 力 的 に 対 応 で き る よ う に す る こ と が 適 当 で あ る 」と 明 示 さ れ 、期 待 さ れ る 機 能 と し て、以下の6項目が例示されている。 ① 小・中学校等教員への支援(指導に関する助言・相談、個別の教育支援計画 作成の支援) ② 子どもや保護者への相談・情報提供 ③ 障害のある児童生徒への通級や巡回による指導 ④ 様々な機関との連絡・調整 ⑤ 教職員に対する研修協力 ⑥ 地域への施設・設備の提供 そ れ ら の 実 現 や 体 制 整 備 の た め に は 、各 校 を つ な ぐ I T C 情 報 共 有 の ネ ッ ト ワ ー ク が 早 急 に 形 成 さ れ る こ と が 必 要 で あ る 。今 ま で 各 校 で 培 っ て き た 、専 門 的 な ケーススタディ等の資産のDB化が求められる。 - 157 - 尚 、最 後 に 多 数 の 方 々 の ご 支 援 と ご 協 力 で 、研 究 の ま と め が 完 成 し た こ と に 謝 辞を申し添えたい。 【本文執筆】 ・松田基章 横浜市立盲学校教諭 (統括・視覚障害支援技術) ・清水隆宏 横浜市立聾学校教諭 (聴覚障害支援技術) ・矢吹仁寿 横浜市立高等養護学校二ツ橋分校教諭 (病弱・知的障害支援技術) ・金井 大 横浜市立上菅田養護学校教諭 (肢体不自由障害支援技術) 【助言・監修】 横浜市養護教育総合センター 田中宏和指導主事 ・研究発表: 横浜市南公会堂(2005.8) 横浜市教育文化センター(2006.1) 横浜市保土ヶ谷公会堂(2006.8) 横浜市教育文化センター(2006.11) 【参考サイト】 ・特別支援教育とユニバーサルデザイン(独立法人国立特殊教育総合研究所) (http://ww w.nis e.go.jp/port al/univ ersal/abt /abt _sit e.ht ml) ・情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて(文科省 H11年) ( htt p://w ww.mext .go.jp/b_menu/shi ngi /chousa/shot ou/002/t oushin/980801b.ht m) ・情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて(文科省 H11年) ( htt p://w ww.mext .go.jp/b_menu/shi ngi /chousa/shot ou/002/t oushin/980801c.ht m) ・視覚障害者とコンピュータ (http://ww w.as ahi-net .or.jp/~be8s -snjy/conput er .ht ml) ・IT時報 2001年5月 (http://ww w.i-is e.com/j p/pr ess /pr es_ 200105 a.ht ml#2) ・財団法人コンピュータ教育開発センター 学校企画 (http://www.cec.or .jp/e2a/) ・視覚障害のある人のためのコンピュータ・アクセシビリティ (http://ww w.econ.keio.ac.jp/st aff /nakanoy/article/at ac/at ac 2 000/pc/at ac2000pc.ht ml) ・マイクロソフトアクセシビリティサイト (http://ww w.mi crosoft .com/japan/ms dn/access ibi lit y/gener al/ ms dn 3.asp) - 158 - 【参考文献】 ・特 殊 教 育 に お け る ネ ッ ト ワ ー ク の 活 用( 財 団 法 人 コ ン ピ ュ ー タ 教 育 開 発 セ ン タ ー ) ・こころリソースブック編集会:こころリソースブック ・松本廣:肢体不自由教育におけるコンピュータの利用研究時評 ・平成10年度研究報告書 「障害児教育における情報機器の活用」 -社会参加と自立の支援- 京都府立南山城養護学校 大森直也 ・松本 廣:障害児教育工学とユニバーサルデザイン ・各種統計 文部科学省 総務省など 【横浜市立盲ろう養護学校の情報事例】 ・ Y Y ネ ッ ト 「 横 浜 夢 ネ ッ ト 」( h t t p : / / w w w . e d u . c i t y . y o k o h a m a . j p ) 横浜市立上菅田養護学校 : http: //www.edu. city.yokohama.jp/sch /kenkyu/sclib/ss/k ami/kami.h tml 横浜市立聾学校: http: //www.edu. city.yokohama.jp/sch /kenkyu/sclib/ss/rou/routosyo.h tml 横浜市立盲学校: http://www.edu.city.yokoha ma.jp/sch/kenk yu/scli b/ss/mou/gai you.htm 横浜市立高等養護学校二ツ橋分教室 http://www.edu.c ity. yokohama.jp/s ch/ss/koto/bi nkyou2/index. htm l 【協力】 ・ 横浜市教育委員会:情報教育課・横浜市養護総合教育センター - 159 -