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加 須 市
【湿地】 以前は、各地に湿地が点在していましたが、宅地の造 成や新田開発・農地改 良等により、その数は 減少しています。 湿地の環境は、水に 恵まれ、ヨシなどが生 育するなど、多様な生 物の生育・生息場所と して重要な場所となっ ています。 【水田】 県内一の作付面積があり、市域の多くを占めます。 稲作に伴い、春・夏 には、浅く栄養に富ん だ水域が広がり、秋冬 には、水の少ない乾田 が多くなりますが、水 田特有の環境に適応し た多様な動植物が生息 する空間となっていま す。 【屋敷林・雑木林】 冬の季節風から家等を守るため、家の北西側に常緑樹 を中心とした木々を植 えて林にしています。 田園景観の象徴的な資 源であるとともに、多 種の鳥類、昆虫類など の生態系を支える重要 な生息空間となってい ます。 【水田周辺の生物】 生物と共生する豊かな自然を守り育てていきましょう 加須市は、関東平野のほぼ中央部で、利根川の中流域 に位置します。利根川の二度の本流移築や、河川の氾濫 等による堆積により形成された加須低地といわれる平坦 な地形です。 市内には、利根川水系の中 小河川や農業用排水路、池沼、 調整池、湿地、水田、屋敷林、 雑木林など、長年にわたり形 成された自然と、人が作り出 し、人が利用することで維持 されてきた自然が数多く見ら れます。 また、古くから、豊かな水と肥沃な大地を活かした農 耕が盛んで、人々の暮らしと農耕が密接につながった文 化が形成されてきました。 市内の農村地域には、農耕文化とともに培われてきた 豊かな自然が数多く残っており、「里地」としての景観 が広がっています。そして、生物の生息空間としての環 境が存在し、多様で豊かな生態系が築かれてきています。 これらの自然環境及び生物を「自然資源」と捉え、多く の方に関心を持ってもらうとともに、保全し活用してい く必要があります。 昔から里地の自然として受け 継がれてきた自然資源を、有機 的につなげ、エコミュージアム (※1)の理念を取り入れなが ら、多くの方と保全・活用を図 る活動を推進し、さらには生物 多様性(※2)に配慮すること により、生物と共生する豊かな 自然を守り育てていきましょう。 市内の自然環境と身近な生物 市内の自然環境は、大別すると「河川・水路」「池沼・ 調整池」「湿地」「水田」「屋敷林・雑木林」の5つの タイプに分類できます。 これらの自然環境が、豊かな水などによって有機的な つながりをもつことにより、数多くの種類の生物が育ま れ、多様な生態系が形成されています。 市内の自然環境タイプ ー貴重な水辺と緑と生物ー 【池沼・調整池】 自然に形成した池沼や、農業用や雨水排水調整として の人工の池沼・調整池 が市内に点在します。 農業用の池沼や調整 池は、一定の水量があ り、流れも無いため、 ※1:エコミュージアムとは・・・ エコロジー(生態学)とミュージアム(博物館)とをつなぎ 合わせた造語で、その地域で受け継がれてきた自然や文化、 生活などを、研究・保全・継承・活用していく取り組みです。 冬季には渡り鳥の越冬 地となっています。 ※2:生物多様性とは・・・ 生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりの ことであり、生態系の多様性・種の多様性・遺伝子の多様性 という3つのレベルで多様性があるとしています。 ドジョウ トウキョウダルマガエル コサギ 【雑木林周辺の生物】 アキアカネ ◆協力◆ 埼玉県環境科学国際センター 埼玉県農林総合研究センター水産研究所 (財)埼玉県生態系保護協会加須支部 カブトムシ コゲラ 身近な生物たち 【水辺の生物】 加須市 オイカワ ギンブナ アメンボ 加須市 環境安全部 環境政策課 〒347-8501 埼玉県加須市下三俣290番地 電話 0480−62−1111㈹ 市ホームページ http://www.city.kazo.lg.jp E-mail [email protected] カナヘビ 【河川・水路】 利根川・渡良瀬川などの一級河川から、市内を東西に 流れる中小河川や、農 業用排水路など様々な 形態の河川・水路があ り多様な生物の生息空 間となっています。特 に、春から夏の農繁期 には、水量が増え、豊 かな水辺環境となりま す。 【『加須市の自然資源』:平成 24 年 3 月発行 】 カルガモ モツゴ ハグロトンボ 市内の貴重な自然資源 自然資源である主要な自然環境と希少生物を紹介します。 主要な自然環境 主要な自然環境 案 内 図 渡良 瀬川 麦倉 川俣 柳生駅 線 新古河駅 羽生外野栗橋 12 線 国 道 12 2号 国道1 25号 2 騎西鴻巣線 5 1 加須駅 9 4 14 10 砂原 北大 桑線 礼羽 騎西 線 国道125号 加須 北川 辺線 羽生栗橋線 花崎駅 3 加 須 鴻 巣 線 6 8 11 7 ⑪ お花が池 青毛堀川下流の氾濫を防止する調 整池と公園があり、隣接する加須は なさき公園とともに、多くの野鳥や 水生生物の重要な生息空間となって います。 1786年の河川の決壊口跡とい われ、水深が深く地下水脈と通じて います。環境省の絶滅危惧種に指定 されている、「オオモノサシトンボ」 や「サンショウモ」が生息・生育して おり、貴重な自然環境となっています。 ⑤ 大沼 渡良瀬遊水地 13 ④ 花崎多目的遊水地 栗橋駅 後背湿地とも呼ばれ、自然堤防に 囲まれた低地で排水の良くない場所 に水がたまった自然の沼です。市内 には、このような池沼が各地に点在 していますが、大沼は、その規模か ら市内を代表するものとなっていま す。冬期にも一定の水位があり、水 鳥の生息場所となっています。 ⑥ 北辻沼 古くから農業用として地元で管理 されてきた沼です。浮野の里の田掘 と同様、後背湿地に溝を掘り、堀り 上げた土で周囲を嵩上げし乾田化し た開拓時の溝の名残です。以前は、 沼の数も多く、また、水深も深く、 魚や貝も豊富に獲れました。 ⑦ 中川 ① 浮野(うきや)の里 武蔵国 (むさしのくに) の昔ながらの 田園風景を残す場所です。 「メダカ」 (絶滅危惧Ⅱ類)やトウダイクサ科の 「ノウルシ」 ( 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 )群 落 (写真下) など、 貴重な生物が生息する 自然環境とともに、 江戸時代の新田開 発の名残をとどめる田堀やクヌギ並木、 屋敷林、 茅葺屋根等の生活資材に利用 したヨシ原 (ちりじ野) 等の農村文化の 歴史的資源が点在し美しい景観を形成 しています。 ② 志多見砂丘 古利根川流域(現:会の川南岸) に発達した河畔砂丘で、俗称「赤城 おろし」といわれる季節風により運 ばれてきた砂が堆積した内陸砂丘で す。周囲と比べると4∼5メートルほ ど高くなっています。 利根川水系の支流として、都内ま で通じている一級河川です。大利根 地域で他の河川と合流し、市内下流 部の川口地区では、市内上流部の倍 以上の川幅となっており、豊かな水 辺環境となっています。 川口地区内には、河川環境に配慮 した、親水性の高い美しい水辺空間 が再生されています。 ⑧ 種足ふれあいの森 埼玉県環境科学国際センターの開 設に合わせ、周囲の環境と生態を調 査し、この地域に生息する生態系を 基に、ビオトープとして整備した公 園です。センターの生態園とともに、 自然豊かな環境となっており、様々 な生き物が観察されています。 ⑨ 玉敷神社の社叢 周辺に森林が少ないエリアの中で、 樹齢約500年のイチョウをはじめ、 スダジイやシラカシなど様々な樹木 により形成された鎮守の森です。 多くの野鳥の繁殖場所になってい ます。 ③ 加須はなさき公園 ⑩ 利根川 田園的風景に囲まれ、夏季のプー ルや、芝生広場、自然観察園、ボー ト池などがある県営公園です。自然 観察園やボート池には、多くの野鳥 が集まり、観察会も開催しています。 市内の北部を東西に流れる一級河 川であり、多くの生物が生息する豊 かな自然環境が広がっています。 また、利根川強化堤防を活用した 新たな緑の拠点づくりを行っています。 ⑫ オニバス自生地 オニバスは、スイレン科の一年草 で、絶滅危惧ⅠA類(県指定)の希 少植物です。以前あった越中沼に自 生しており水田開発による埋め立て により絶滅したと思われていました が、周辺の水路改修により、地中に 眠っていたオニバスが復活しました。 県内唯一の自生地であり、市の天然 記念物として保護しています。 ここには、オニバスの他に、アサザ やトチカガミなどの貴重な水生植物 も自生しています。 ⑬ 渡良瀬遊水地 総面積33 ,0 0ヘクタールの日本を代 表する湿地で、この7割以上を占め るヨシ原と、樹林、池沼など、豊か な低湿地の自然環境が広がっていま す。ここには、植物で約1,000種、 鳥類約260種、昆虫類(陸上、水中) 約17 , 00種、魚類約40種など、多くの 野生生物が生息・生育しており、 生物多様性の保全において重要な 場所となっています。 この環境を活用し、植物観察会や バードウォッチングなどの自然学習 が盛んにおこなわれています。 ⑭ 旧川 渡良瀬川の旧本流であり、堤防の 改修により、現在の三日月の形態に なりました。北川辺地域内の水路の 水が、ほぼすべて流下してくるとこ ろで、多くの水生生物が生息してい ます。隣接して、水辺を活かした旧川 ふるさと公園が整備されています。 市内で見られる希少生物 オオタカ(タカ科) 《 》内、レッドデータカテゴリー カラス大の里山に暮らす代表的な タカです。古くからタカといえば概 ねこのオオタカを指します。山地か ら平地にかけ広い範囲で暮らしてい ますが、特に冬場は低地にも頻繁に 現れます。 《県:絶滅危惧Ⅱ類、国:準絶滅危惧》 チュウサギ(サギ科) いわゆるシラサギの一種で夏鳥と して主に東南アジアから渡ってきま す。水田などにいるドジョウやカエ ルなどを食べて暮らしています。 繁殖期には竹林などに「サギ山」と 呼ばれる集団繁殖地を形成します。 《県:絶滅危惧Ⅱ類、国:準絶滅危惧》 カワセミ(カワセミ科) 上部は光沢のある青、下部は明る いオレンジ色の大変美しい鳥です。 川や池に住む小魚を食べて暮らして います。農業用水路などでも観察さ れます。 《県:絶滅のおそれのある地域個体群》 オオモノサシトンボ(モノサシトンボ科) 大型のイトトンボで、まるで体に 物差しの目盛りがついているように 見えます。お花が池のヨシの中で、 ひっそりと暮らしている姿を観察で きます。 《県:絶滅危惧Ⅰ類、国:絶滅危惧Ⅰ類》 コムラサキ(タテハチョウ科) 河川や池沼、湿地に生えるヤナギの 林などに生息します。成虫はクヌギ やヤナギなどの樹液を吸い、幼虫は、 ヤナギの葉を食べて育ちます。 《県:準絶滅危惧》 メダカ(メダカ科) サンショウモ(サンショウモ科) サンショウの葉のような形からそ の名がつきましたが、シダの仲間の 浮草です。晩夏にはお花が池の水面 を覆いつくします。 《県:絶滅危惧ⅠB類、国:準絶滅危惧》 トキソウ(ラン科) 低温の地下水脈に泥炭が重なる 湿原 (浮野) に自生しています。高原 性植物であり、関東平野では他に 自生地がなく、県天然記念物に指定 されています。6月頃開花する花の 色が、朱鷺の羽の色に似ています。 《県:絶滅危惧ⅠA類、国:準絶滅危惧》 オニバス(スイレン科)※「⑫オニバス自生地」参照 《県:絶滅危惧ⅠA類、国:絶滅危惧Ⅱ類》 水田や池沼、中小河川など、流れ のゆるい小川や水路などに生息し、 動物プランクトンなどを食べます。 水田の減少や、河川の三面護岸など、 生息条件の悪化により、県内の産地 が激減しており、わずかに加須低地 一帯に多産地を残しています。 《県:絶滅危惧Ⅱ類、国:絶滅危惧Ⅱ類》 ノウルシ(トウダイクサ科) 湿地に生える多年草で、 4月上中旬 に茎の先端付近の葉や花序の苞葉が 鮮やかな黄色に色づきます。 茎や枝を 折ると白い液が出て、 触れるとかぶれ ることから、 ノウルシの名前が付いて います。 《県:絶滅危惧Ⅱ類、国:準絶滅危惧》