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イメージ(imaege)の具現化について ~子どもの想像力

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イメージ(imaege)の具現化について ~子どもの想像力
富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
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論
文
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イメージ(imaege)の具現化について
~子どもの想像力を育てる造形刺激~
Shaping Images:
Giving a Visual Stimulus for the Development of Children's Imagination
郷
倉
GOUKURA
祀
子
Toshiko
はじめに
子どもの生活環境が激変する中で、バランス(調和)のとれた人格形成をめざす造形教育とは
どのような視点で取り組む事が必要であるか。それにはまず、個々の子どもの想像力を大切にす
ることであり、どのようにしてイメージが生み出され、それをどのように育てるかが、創造性豊
かな人間性の育成に向けてのスタートであり、創造教育の使命でもあろう。
自ら表現することは、「感じる」ことであり、この感じる体験がどのようなかたちで、展開さ
れたかにより、子どもの中に「思う心」が育ち、「考える力」を生みだす。つまり適切な外部刺
激は、個々の感性を揺り起こして、自然なかたちで子どもの中に表現意欲を発生させ、創造的想
像力を育てる。
1、 イメージの位置
人間の認知過程における内的性質への関心の高まりから、いろいろな立場でイメージに関する
研究がなされている。特にイメージと思考、創造などとの関連は、造形教育における学習効果へ
の可能性として、注目されてきた。
「イメージ」という語は視覚的に捉えられたものの「かたち」
を意味していたが、現在では、一般的には心の中に表示される視覚的な映像や記号の意味で用い
られるだけでなく、対象物についての印象・感情・理解・態度などの意味を含めて多岐にわたり
使用されている。
定義として「我々はかつて経験したが、今は現前に存在しない出来事を思い浮かべることができ
る。これを一般に『イメージ』と呼ぶ。」(乳幼児心理事典
日本ライブラリ)。イメージ=類像
を見ることは、単に、視覚=技術的文化的コードの制御を参入させるだけでなく、精神活動と想
像活動をも動員する複雑なプロセスである。(ジャン=クロード・フォサ
イメージと類以性)
心理学の立場においても、リチャ-ドソン(A.Richardson)は①準感覚的または準知覚的経
験を指し②自己意識的に気づくものであり,③それに対応した本物の感覚ないし知覚を生み出す
ような刺激条件が存在しないのに存在しているかのような経験であり、④その刺激条件に対応し
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
た感覚ないし知覚の場合とは違う結果が期待され得られるような経験である。と網羅的に規定し
ている。そして「イメージ」を残像、直感像、記憶心像、想像心像、と4分類している。特に記
憶心像と想像心像は知覚的基礎をもって成立するが、ある程度の意図的操作が可能なイメージで
あるとしている。他にピアジェ(J.Piaget)、は思考の発達とイメージとの関系に注目してい
る。イメージと創造活動との関連について、カウフマン(G.Kaufmann)は創造性にとって大
切なのは視覚的イメージの明瞭性よりも柔軟性と可変性であると指摘し、哲学的な見地からバシ
ュラ-ル(G.Bachelard)は、イメージは知覚により独自に形成され、それを変形・再構成し
て新たな像を作り出していくのが想像力であるとの見解を示している。これは、創造過程におい
てイメージの変容を促すことが重要な要素であることを示唆している。またドライスタット
(Dreistadt)は、創造性の啓発段階において、イメージが視覚的類比や類推、複雑な隠喩の形を
とることを明らかしている。
(造形教育事典 「イメージ論」)又、人類学・社会学から、カイヨ
ワ(R.Caillois)は、想像は人間と自然の圧力の間にイメージという緩衝物を置く。人間は絶え
ずさまざまな圧力と戦って生きている。これは、絶えずいろいろなイメージを作り出し、無数の
イメージに囲まれていきていることである。人間においてすべてはイメージから始まる。イメー
ジの分類の試みとして、役割や効力や変遷の明確化をめざした(「イメージと人間」)。
1)イメージの芸術的形式
イメージは思考と競合するものではなく、人々とその記憶を理解するための道具であり、イメ
ージは知的で感覚的な経験を創造的に表現することで、人間として共有可能な感性を生む道具で
もある。イメージという言葉は、子どもの絵画、ファッション写真、漫画の 1 コマなどさまざま
な生産物を示すために、大ざっぱな形で用いられている。また、モンドリアン(図1)・カンデ
ィンスキー(図2)の色の組み合わせのような形象性のない構成にも適用される。
図 1.
モンドリアン
図 2.
カンディンスキー
2、 想像と記憶・思考
想像は過去の知覚や経験が素材にされることでは記憶と同様であるが、記憶は経験をそのまま
再現しょうとする心的活動であるのに対し、想像はそれらをいろいろ組み合わせて新しく構成す
る創作活動である。また、思考は再構成・創作と似ているが、現実の中で検証しようとするのに
対し想像は現実に拘束されず、自由で融通性があり矛盾や不合理は問われないところで区別して
いる。つまり想像には記憶的、思考的側面が包含されている。
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
1)記憶と表現
発信者である幼児、児童は幼稚園・学校の行事、家庭生活、遊びなどの体験の中から、印象に
残る場面を再現(思い起こす)して表現する。従ってこの表現活動には子どもの豊かな実体験が
前提条件となる。
従来はこの再現活動は生活画・経験画として表現されてきた。しかし冒頭で述べたが子どもを取
り巻く環境が大きく変化し、画一化していることから、この身近な体験だけでは表現活動の動機
づけや導入の対象になりにくい場合があり、幼稚園や小学校の低・中学年では、いかに子どもに
豊かな体験をもたせるか、そして、いかに印象に残る場面を思い起こすことができるかなど、手
だての工夫や主題化の指導が重要になる。高学年では知的好奇心や探究心を満足させることも必
要となる。
2)想像と表現
直接観察や記憶によらないで、空想したことや想像したことを表す。①詩や物語などのイメー
ジをもとに想像して表現する。②夢や空想から発想して表現する。③意図的に秩序や関連性を崩
し、非日常的な空間を表現する。④錯視など視覚的効果を利用した、平面の二次元から異次元を
表現する。その他広い表現領域がふくまれるが、想像力を展開するにはテーマや活動の導入の技
術(子どもに対する動機づけ)が必要且つ重要になる。特に夢や空想と現実の区別がそれほど明
瞭でない幼児や児童(小学校低学年)に対し、何気ない造形的刺激は豊かなイメージを生み出す
動機づけとなる可能性を期待する。つまり具体的な形象モチーフの提供でより、子どもは活発な
想像力を発揮し、表現活動を展開すると考える。ただ、年齢が上がると概念的思考力が発達し、
これまでの形象をともなる具体的な思考方法が後退する。直感力や把握力から概念的思考を満足
させながら、形象的刺激を与えなければ、想像力を引き出すことはできない。③や④の題材を工
夫することが求められる。
3、造形的刺激と表現活動
1)実践の概要
「イメージとは何か、非現実の摸像を認知する視覚的記号なのか」の芸術的形式から子どもの
イメージ像を独自の表現活動の中で確認し、子どもの豊かな想像力を育てる手がかりを検証・考
察をする。
・
対象:
4 歳児(5名)~5歳児(25 名)
・
時間:
40分
・
方法:
『形象刺激 A』
計30名
植物の葉と動物の尾をそれぞれ5種類(図3-①・②・③・④・⑤)(図4-⑥・⑦・⑧・⑨・
⑩.⑪)を描いた画用紙(B5)を与える。描画材はパス・クレヨン・サインペンなど子どもが使
用している物。植物や動物、その他と認識するか否かは子どもの直感力や把握力に委ねることか
ら、何が描かれているかを誘発するような言葉での表現は控え、「お描きあそび」として「何に
見えるかな」の言葉がけで想像を広げる。各形象刺激は子どもが自由に選択し、一人で何枚もお
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
絵かきは出来るが、同じ形は出来ない事とした。性差の相違検証はしないことで、対象児は人数
のみとする。また部分的「ぬり絵」ではなく、具体的な形象刺激として与えるため、子どもの活
動結果が単なる「ぬり絵」として判断される場合は検証外とし、結果の把握のみに留める。
①
②
③
図 3.
⑥
⑦
⑤
動物の尾
⑧
図 4.
④
⑨
⑩
⑪
植物の葉
『形象刺激 A』の検証内容
・
①各形象のイメージの傾向
②子どものイメージの変化。
方法:『形象刺激 B』
・
目を閉じて、薄手画用紙(B5)を自由に折り、破いて画用紙の中に不定形の穴を開ける。穴の
形象から連想し表現する。具体的な色のイメージが想定されるので折り紙 20 色(金。銀含む)
はさみ、のりを準備する。全体活動を子どもが事前把握する事と興味関心を持たせるために、最
初に保育士が子どもの前で目をつぶり画用紙を折り、破いて見せる。色紙があることも知らせる。
破り取って出来た形(ネガ)の連想から色紙を貼ったり、クレヨン等で加筆してイメージ遊びをす
る。
『形象刺激 B』の検証内容
・
①形とイメージの傾向。
2)4~5歳児の見解
一般的発達では運動機能が分化し、行動は活動的、意欲的になる。空想力が発達し、盛んに質
問する。自分の意志で絵を描くようになる。幼児語が消えて、言語が思考の手段として大きな役
割を持つようになる。単純な概念や心象(心の中で思い浮かべる物の形)をもつ能力がうまれて
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
くる。物事の理解や判断の仕方は刺激の特に目立った知覚的な面に基づいてなされる。直感的思
考の段階に入ってくる年齢である。又、造形的発達では形の認識が進み、関連性のない図形を描
き並べるカタログ表現から、目的や実在のものとの関係において記憶を再生させて覚書のように
図式化する表現となる。見えるがまま描くのではなく、知っていることを描くため、成人の「視
覚的レアリズム」に対して「知的レアリズム」と区別している。幼児画の特徴(①~⑥)が明確
に表われるため、たいへん興味の持てる発達段階である。
①多視点構図 ②積み上げ式遠近法 ③転倒式描法 ④誇張表現 ⑤レントゲン描法 ⑥時間描法。
3)「ぬり絵」の見解
一言で良くないとはいえないが、子どもは、ぬり絵の経験が多いと自ら考えることや積極的に
行動する意欲を失いやすいこと。整った絵の輪郭の内側を塗るだけなので、形を描くことが苦手
になり自由な発想での創造力が育たなくなる。これは、充分な保育の体制が整っていない保育や
教育現場で子どもが静かに一人で過ごす事で保育の手間が省けることや親のはやく上手に見え
る絵を描かせたいなど、大人の都合で子どもにぬり絵を与えているのではないか。
子どもは輪郭の描かれたぬり絵に慣れると最初から描くことを嫌うようになり、本来、自由に
描く描画活動に苦手意識をもち、嫌いになることになる。しかし、落ち着きや集中力に欠ける子
どもに対して一時的体験としてぬり絵を実践させることはある程度の効果は考えられる。肝心な
ことは指導者が「ぬり絵」を子どもに与える場合、造形の重要課題である創造性を育てることに
対し、本末転倒にならないように慎重に判断をする必要があると考える。
4、検証と考察
1)『形象刺激A』検証の概要
対象児はこの活動は未体験であることで、最初は子どものたいへん戸惑っている様子がみられ
る。
「失敗したらどうするの?」
「また、貰えるの?」などの不安には、失敗はないことや先生に
何でも描いて教えて欲しいことなどを伝え、子どもが自信を持って活動できるように、個々に言
葉をかける。
図3の形象は画面(図 5-(1))に占める面積や長さが画面の1/16~2/16(図 5-(2)~(4))
以下であるのに対し、図4は4/16~9/16(図 5-(5)(6))である。子どもが自由に発想でき
る画面空間は図3①~⑤が大きいが、逆に図4-⑥~⑪は子ども自身の発想範囲を狭めてしまい、
ほとんどの子どもは形象を植物の葉と認識するため興味が薄れ、あまり刺激にはならず、知って
いる花、園庭に咲いている花や実など、知的リアリズムの範囲で加筆される。そのため図3では
出ないが図4ではぬり絵が出る。(4-4)参照)
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
(2)
(3)
(5)
(6)
(4)
(1)
図 5.
形象が画面を占める面積例
2)図3のイメージの傾向
表 1. 図3のイメージの傾向
形象図3
①
選択数(30 名)
13
描写の形式と内容
部分 12( しっぽ9・鼻2・足1)
全体1
恐竜・モグラ・わに・かば・ねずみ
②
21
部分 21(しっぽ 10・鼻1・その他 10)
草
全体0
へび・コブラ・さる・恐竜・ぞう・傘・茎
縄・とかげ・ミミズ・ハート・顔・迷路
③
11
部分8(しっぽ6・その他2)
とら・ぞう・キリン・虹・木
全体3
花火・スキー
ごぼう
④
⑤
19
6
部分 17(しっぽ 13・羽1・・その他3)
全体2
たぬき・レッサーパンダ・鯨・りす・鳥・
筆・火山の爆
きつね・たまねぎ・ねずみ・矢
発
部分6(しっぽ3・足1・ひげ1・その他1) 全体0
たぬき・パンダ・あめんぼう・顔
3)子どものイメージの変化
同じこどもが形象刺激を数回繰り返した場合の変化。子どもは自由に形象刺激を選び、1 回から
2~3回活動する。その結果からの検証。
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
1回目
2回目
3回目
・初めての体験で戸惑う
・この活動に慣れた様子
・形象Ⅱを葉と認識。
・画面をながめ「わからん!」
・文字でテーマを書いて描
・お話を始める。
・画面隅にハートの半分を描
く。
いた子どもの自信を感
じる。
図 6.
1回目
・雨・かえる・かたつむりの
空想。
A 子のイメージの変化
2回目
3回目
・すぐにイメージから描写
・画面いっぱいに堂々とした
・形象から「さる」をイメー
ジするが上手く描けない
と画面を見せる。
・自信がなさそうなので、褒
を始める。楽しい様子。
「ゾウ」。
めて励ます。
図 7.
1回目
2回目
・形象をもてあましている様
子。おもいのまま描画材を
画面に走らせる様子。
図 8.
B 男のイメージの変化
・一回目で感じた迷イメー
ジ確認しながら描く。
3回目
・さらに迷路の再現意欲が高
まる様子。体験した記憶を
思い出す。
C 男のイメージの変化(同形象で体験―テーマ「迷路」)
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
1回目
・根菜とイメージして画面
いっぱい表現。
図 9.
2回目
3回目
・たまねぎのイメージを図
・動植物の観察が好きな子ど
式期特有の表現で描か
も。イメージした虫の生態
れた。
も知っている表現。
D男のイメージの変化(しっぽとイメージをしない)
2回目
1回目
・戸惑いは全くない。
・楽しくイメージしてお絵かきをしている。
・しっぽとイメージして文字で説明。
・鼻とイメージして画面に自信を持って描
・お絵かきの得意な子ども。
かれている。
図 10.
E子のイメージの変化
4)図4のイメージの傾向
前述(A検証の概要)のとおり、図4植物の葉⑥~⑪は選択された数が少ないことから個々の
形象ではなく図4としての傾向を検証。「ぬり絵」と判断したものは 2 点で、形象のみの色塗り
で、イメージとして全く加筆されていないもの。1 点は明らかに葉と認識して緑色で着色してい
るが、これ以上のイメージが出ないもの。もう 1 点は葉とは認識されたかどうか、12 色で色面分
割されて判断できないもの。
表 2.
形象図4
選択数(30 名)
⑥~⑪
28
図4のイメージの傾向
描写の形式と内容
部分 27(葉と茎 27 )
ひまわり(図 11-(1))
・たんぽぽ・朝顔
全体1
すいか・ ⑧いるか(図
チューリップ・コスモス・さつまいも(図 11-(2)) 11-(3))
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
(1)
(2)
図 11.
(3)
描写の形式と内容
5)『形象刺激B』検証の概要
項目2-2)の異次元刺激として設定。『形象刺激A』は与えられた中での選択であるが、こ
れは個々の子どもが自身の形象を能動的行為で作ることから始まる。したがってそれぞれの子ど
もは同形象をイメージすることは無い。画用紙にできた穴(ネガ)の形からの連想の傾向を形象
数や色紙の貼付や加筆等で検証(①表参照)
表 3.形とイメージの傾向
形象数
1
2
~
3
人数(人)
形象の把握形式
加筆(本数)
1 色(6)
有(6)
リボン・ひょうたん・信号機・帽子
全体(0)
2
(2)
無(4)
とけい・ダイヤモンド・アイスクリーム
部分(10)
3
(2)
全体(3)
1
(4)
有(3) めがね・ぼうし・ロケット・おむつ
部分(2)
2
(1)
無(2) 優勝カップ(サッカー)
全体(9)
1
(2) 有(7) エプロン・海水パンツ・ビル・シャツ・
部分(5)
2
(10) 無(5) たたんだ新聞紙・ミッキーマウス・洋服
3
(2)
10/29 〈画面と形象〉
5/29
14/29
連想の内容
色数(20 色)
6
ゆびわ・いちご・エプロン・お城
ひげおやじ・電車の窓・ワンピース・水玉
※(
)内は人数
イ、形象数1は画用紙を折り 1 回破り取る。
ロ、形象数2はイを 2 回。画用紙の重なる端を 1 回破り取る。
ハ、形象数 3~6はイを形象数繰り返す。ロの重なる端を 1 回~2 回
(イの例)
(ロの例)
図 12.
(ハの例)
画用紙を折り破る
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富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
子どもが目を閉じて紙を、折り、破る、目を開く。連想あそび、色紙を切る、貼る、描く。こ
の一連の行為は能動的行為であり、それぞれの形象が決定される。またすべてが異形から、子ど
も間の影響が少なくなることと、言葉としてのテーマの模倣は可能であるが各自の形象からは、
おのおのの子ども自身の連想や発想の必然性が伴うことになる。(図 13-(1)~(3))
形象数が1では切り取ったネガの形のみが連想の対象になり、画用紙全体との視点が弱いのはネ
ガとポジの2つの形象の相関関係に興味を持ち、そこに視点が集中されたと考える。切り取られ
た形を「これどうするの?」と質問する子どもが数人みられる。形象数2は画面の端を破った場
合は全体の形を把握する傾向。単独の形象では関連性がない個々の連想と2つの形象を併せて連
想する。形象数3では画面全体の連想の傾向が多く見られる。(図 12-イ~ハの例)。
(1)
(2)
図 13.
(3)
「洋服」をテーマとした連想例
図 13-(1)~(3)は形象数とテーマ「洋服」は同じであるが、それぞれ連想や発想の形態が異なり、
独自の表現になっている。図 13-(1)の形象把握は部分であるがイメージを加筆で表現。図 13-(2)
の形象把握は全体でイメージ。図 13-(3)はテーマの一部として連想され洋服の模様として加筆。
5、まとめ
『形象刺激A』では図3とⅡの比較では、全体の空間に占める面積の相違がある。多すぎる場
合(Ⅱ)は「刺激」ではなく「誘発」になり、子ども独自の想像力には結びにくい。4-3)の検
証では形象には興味はあるが、子どもにとっては初めての活動であり1回目は充分な想像ができ
ないが2回、3回の変化でイメージの広がりを見ることができる。ここでは「適切な形象刺激」
とは画面全体に占める面積比とある程度の繰り返しの活動が必要であると考える。
『形象刺激B』は5)の検証で前述したが、「A」が受動的同形刺激であるのに対して、能動
的異形刺激である。これは連想を言葉(言語)で模倣することは可能であるが、形象としての模倣
は不可能になる。子どもが言葉として同じテーマであっても異なる形象では必然的に独自の連想
からのイメージの表現に繋がる。『形象刺激 A.・B』は新鮮な表現活動として子どもに設定され
てとき、子どもの中に豊かな想像力を育てる手だて【造形刺激】として成立する。ただ、子ども
に新鮮な造形活動として展開するためには指導者の教育力・保育力が求められることは必至であ
る。
84
富山国際大学子ども育成学部紀要 第 2 巻(2011.3)
【参考実践例】―形象刺激としての遊びの空間
『こどものにわ』(東京都現代美術館 平成22年7月~10月)
体感型・参加型の遊びの空間展。幼児の初体験「美術館」として、子どもの視点や身体感覚、
心の動きを通してとらえた美術世界を展示。
(1)
(2)
大黒板に貼られた紙を洋
穴を開けられた黒板の穴を覗
服を着た人とイメージし
いたり、穴の周りを高い密度
てチョークで足を加筆。
で加筆。
図 14.
(3)
『こどものにわ』
(東京都現代美術館 平成22年7月~10月)
【引用・参考文献】
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理、美術科教育の基礎知識
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理
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7.) 宮脇
理、造形技法(宮脇
8.) 鰺坂二夫、表現 幼児造形
理
訳)
(初版 1996)新思索社
監修)(2006)建帛社
(鰺坂二夫監修)(1979)保育出版社
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(黒川
建一
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實、造形表現(理論編)(花篤
編)(1990)ミネルヴァ書房
編)(1990)東京書籍
實ほか著)
(2008)三晃書房
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(2005)建帛社
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(1991)建帛社
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監修)(1991)三晃書房
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)(2006)教育出版
20.) 宮脇理、図画工作科教育の研究(宮脇理その他著)(2006)建帛社
協力保育園
86
黒部市
三島保育所
小矢部市
東蟹谷保育所
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