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ゲ ー ム を 始めるにあたっ て

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ゲ ー ム を 始めるにあたっ て
この世界の怪物との戦いかた
ゲームを始めるにあたって
ようこそ、ゲームブックの世界へ。この冒険は楽しく、刺激に満ち、時に死と
いう残酷な結果に彩られるでしょう。万能ではありませんが、君は強く、冒険心
に満ちています。冒険を始める前に、まずは君自身の実力と弱点をきめ、冒険の
ためのルールを把握しておかなくてはなりません。
サイコロを用意して原 技 術 点 と原体力点と原運点を決めてください。冒険記録
紙は、一つ一つの冒険の細かい点を書きとめておくのに使います。冒険記録紙には、
君の技術点と体力点と運点を記入する欄があります。
冒険記録紙に書きこむときは、鉛筆を使うようおすすめします。また、再度の
挑戦のために本書の中に挟みこんである冒険記録紙のコピーを取ることをおすす
原点数のきめかた
めします 。
まず、サイコロ一つを一回ふります。出た目に六を足した合計が君の原技術点
です。この数字を、冒険記録紙の原技術点欄に記入します。
つぎに、サイコロ二つを同時にふります。出た目の合計に一二をたした数が君
の原体力点です。この数字を、冒険記録紙の原体力点欄に記入します。
また、サイコロ一つをふって、出た目に六を足した合計が原運点です。おなじ
ように、冒険記録紙に記入します。
こ れ か ら 説 明 す る 理 由 に よ って、君の技術点、体力 点、 運点は、 冒険のあ いだ
絶えず変化します。それらを正確に記録していかなくてはなりません。冒険記録
紙に点数を記入するときには、小さく書くか消しゴムを使ってください。ただし、
原点数だけはけっして消さないように。技術点、体力点、運点に新しく点があた
えられることがありますが、そこまでの点数とあたらしくもらった点数との合計
がそれぞれの原点数をこえてはいけないからです。
君の原技術点は、剣士としての腕前と戦い全般における熟練ぶりを示し、高け
れば高いほどよいのです。原体力点は、総合的な体力、生きのびようとする意志、
やり抜く決意、適応性の度合いを示し、高ければ高いほど、長く持ちこたえるこ
と が で き ま す。原 運 点が 示 す のは、生まれながらの 運の強 さで す。運 は、君が こ
れから冒険するファンタジーの世界では、大きくものを言うのです。
戦闘の方法
この本のなかで君は、いろいろな生き物と戦え、という指示に出会います。
「逃
げる」ことを選べる場合もありますが、そうでなければ、また、たとえ「逃げ道」
があっても、君自身が「戦う」ほうを選ぶなら、
つぎのような方法で決着をつけます。
まず、冒険記録紙の怪物対戦表の空欄に、戦闘する相手の技術点と体力点を記
入します。相手の点数は、そのつど本文に記されています。
さて、一騎打ちの手順は、つぎのとおりです。
(一)相手の攻撃力=サイコロ二つを一回ふり、出た目に相手の技術点を加えます。
その合計が相手の攻撃力となります(記録紙の怪物対戦表にメモしておく)。
(二)君の攻撃力=サイコロ二つを一回ふり、出た目にその時点での君の技術点を
加えます。その合計が君の攻撃力となります。
ここまでが一回の戦闘で、戦闘結果の判定方法は、つぎのとおりです。
( 三 ) 戦 闘 の 判 定 = 君 の 攻 撃 力 が 相 手 の 攻 撃 力 よ り 上 な ら ば、 相 手 に 傷 を 負 わ せ た
ことになります。その場合は、つぎの(四)を見てください。
相手の攻撃力が君の攻撃力よりも上ならば、君が傷を負わされたことになりま
す。その場合は(五)を見てください。
君と相手の攻撃力が同じ場合は、おたがいが攻撃をかわしたことになりますの
で、もう一度(一)から順にやりなおしてください。
(四)相手の減点の方法=相手の体力点から二点引きます。さらに相手にダメージ
を与えたければ、ここで君の運を活用することもできます(後述の「運だめしの
方法」を見てください)。
(五)君の減点の方法=君の体力点から二点引きます。君のダメージを少なくする
ために、ここで君は運を活用することもできます(後述の「運だめしの方法」を
見てください)。
(六)冒険記録紙への記入=対戦相手または君の体力点を訂正して記入します(運
を活用した場合は運の点数も訂正します。後述の「運だめしの方法」を見てくだ
さい)。
(七)つぎの戦闘=君か相手かどちらかの体力点がゼロになるまで(一)から(六)
までを繰り返します(ゼロは死を意味し、君の体力点がゼロになれば、ゲームは
逃亡する場合
そこでおしまいです)。
君の形勢が不利ならば、戦いを放りだして逃げてもかまいません。ただし、そ
の場合は、逃げる君に相手が追い撃ちをかけるので、自動的に手傷を負わされる
こ と に な り ま す( 君 の 体 力 点 か ら 二 点 引 き ま す )
。臆病風は高くつくのです。しか
しこの傷にも運だめしができます(後述の「運だめしの方法」を見てください)。
逃亡できるのは、その選択があたえられたときだけです。たとえ逃亡するにしても、
戦闘相手の記録は残しておくように。あとで同じ場所にもどり、再びその相手と
盗賊剣士のたしなみ
出くわすことがあるからです。そして、今度は逃げられないかもしれません。
盗賊剣士として生きる君には、他者よりも長じた素質がひとつあります。以下
の四つの型から、自分の得意とする素質をひとつ選んでください。
武闘型……戦いに長じたタイプです。先に振った技術点を無視して、原技術点
一二点で冒険をスタートできます。また、技術点が高いので、技術
を要する盗賊ごと全般に長じています。初心者向き。
幸運型……特別に運がいいタイプです。先に振った運点を無視して、原運点一二
点で冒険をスタートできます。また、項目番号の一の位が〇の項目
に進むたびに、運点を一点回復できます。中級者向き。
演 技 型 …… 特 別 に 演 技 が う まく、容姿も端麗です。 本文中 におい て、演 技を 用
いたさまざまなメリットがもたらされることでしょう。上級者向き。
知略型……特別に頭がよく、目の前の可能性を逃しません。本文中において 、
機転の利いた選択肢を選べるでしょう。上級者向き。
ゲーム中、このように傾いた太字の文章が出てくることがあります。これは盗
賊剣士の中でも知略型を選んでいなければ選択できない、機転の利いた選択肢で
強烈な盗賊剣士
す。知略型を選んでいない場合、これを選ぶことはできませんので、注意してく
ださい。
【盗賊剣士】は、それなりの難易度で作られた作品です。何度もやり直し、挑戦
することがこの作品の楽しみです。
並みの【盗賊剣士】で満足できない人は、さらなる難易度の【盗賊剣士】に挑
戦することができます。【盗賊剣士】の冒険は、昼の部と夜の部に分かれています。
昼 の 部 で は、 主 人 公 は 街 の い ず れ か 三 箇 所 を め ぐ り、 情 報 や 道 具 を 獲 得 し ま す。
これを二箇所にしてください。
この「二箇所」ルールは、【盗賊剣士】に精通した人向けに作られています。ク
リアは可能ですが、非常に難しく、死にやすい冒険となっております。間違って
も通の冒険者ぶって、最初から「二箇所」ルールで挑まないでください。街はそ
複数の相手との戦いかた
れほど甘くはありません。ここは傲慢な者から死ぬ世界です。
ときどき、複数の敵と遭遇することがあります。それらをまとめて一体の敵と
みなす場合や、一体ずつ順番に戦うこともありますが、それぞれの敵が同時に襲
いかかってくるときもあります。複数の敵を一体とみなして戦う場合、通常の戦
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闘で決着をつけてください。敵と順に戦う場合は、一体倒した後に、次の敵に戦
うといった具合に、順番に決着をつけてください。同時に襲いかかってきた場合は、
一回の戦闘ラウンドでそれぞれの敵が同時に攻撃してきます。あなたが攻撃でき
る相手は、一体だけです。まず攻撃する相手を決めて普通に戦闘を行います。続
いて別の敵とも攻撃力を比較してください。ただし、あなたはサイコロを二度振
る必要はありません。一度振って出た目を、両方の敵に対する攻撃力として適用
してください。二体目以降の敵に対しては、あなたの攻撃力の方が高くてもダメー
ジを与えることはできません。攻撃をかわしただけとみなされるのです。あなた
の攻撃力が低かった場合は、通常どおりにダメージを受けます。
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運だめしの方法
戦闘中や、運不運に左右されそうな場面(細かいことはそれぞれの場所に記され
ている)では、状況を有利にするため、運だめしができます。とはいえ、ご用心を!
運だめしの結果が凶と出れば、君はおそらくたいへんな目にあうことでしょう。
運だめしをせよ、と指示があったら、つぎのようにしてください。サイコロを
二つふって、出た目の合計が、そのときの運点と同じかそれ以下の場合は成功と
なります。反対に、出た目の合計が、そのときの運点より上の場合は失敗となり
ます。
この手順は運だめしと呼ばれ、運だめしを一回するたびに、その時点で君の運の
点数から一点引きます(冒険記録紙に記入します)
。つまり、運に頼れば頼るほど、
危険は大きくなるのです。
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戦闘のさいの運だめしの方法
場所によっては運だめしをするよう指示があり、吉と凶の結果が記されていま
す。しかし戦闘のさいは運だめしをするかしないかは君がきめるのです。相手に
負わせた傷をもっと深くしたり、君が負った傷を軽くしたりするのに使います。
たった今、相手に傷を負わせたところなら、前項に記した方法で運だめしができ
ます。吉と出れば重傷を負わせたことになり、相手の体力点からさらに二点引き
ます。しかし、凶ならばかすり傷程度ということになり、相手の体力点に一点返
さなくてはならないのです(つまり、ふつうなら二点ぶんのダメージをあたえら
れるのに、一点ぶんにしかなりません)
。
また、君が傷を負ったところなら、運だめしによって痛手を最小限にくいとめる
ことができます。運だめしをして吉と出れば体をかわしたことになり、体力点を
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一点返してもらえます(二点ぶんのダメージを受けるはずなのに、一点でくいと
めらえるわけです)。凶と出れば相手の一撃をまともに食らったことになり、体力
点からさらに一点引きます。
運だめしをするたびに君自身の運の点数から一点ずつ引くのを忘れないでくだ
技術、体力、運点の回復
さい(冒険記録紙に記録する)
。
技術点の回復
君が冒険に乗りだしているあいだ、技術点はあまり変化しません。たまに技術
点を増やしたりけずったりするように指示があたえられることもあります。
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体力点の回復
怪物と戦ったり、厳しい試練に出あったりするたびに、体力点は大幅に変わり
ます。目的をとげる直前には、体力点がひどく減ってしまい、ことのほか戦闘の
危険が増すかもしれません。気をつけてください!また、体力点は原点数をこえ
てはなりません。食料を食べれば体力点は四点回復します。食料は戦闘中には食
べられません。それ以外のタイミングでは、いつでも食べられます。
運点の回復
運点への追加点は、特別の幸運に見舞われたときにあたえられます。詳しくは
それぞれの場所に記されています。技術点や体力点と同様に、運点も原点数をこ
えてはな り ま せ ん 。
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装備
遊びかたのこつ
君は冒険のはじめ、物を入れる袋、金貨一〇枚と二食分の食料、剣を持ってい
ます。
この本は番号順に読んでも意味をなしません。必ず指示された順番にしたがっ
て、指示された部分だけを読むようにしてください。君が真の道筋をたどるなら、
危険は最小限ですむはずです。原点数がどんなに低くても、正しい道を見つけさ
えすれば、かなり楽に切り抜けられるでしょう。
君の冒険に神々の加護があらんことを!
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さあ、ページをめくりたまえ。
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プロローグ
社会への反抗心、そして、盗賊としての天分の才。すべてを兼ね備えていた君は、ほとんど何の
生まれつき盗賊な者などいない。だが、盗賊になるしかない者はいる。生まれながらの境遇、
疑問もなく盗賊として生きてきた。優秀なのは確かだが、ここネグラレーナ市には来たばかり。
第二の人生をスタートさせつつある新参者だ。腕はあっても不案内なのだ。
ネグラレーナの【奇妙な猫の瞳】亭は、ネグラレーナ市でもまあまあ大きな宿屋である。宿屋
の主人アレハンドロは、その飼い猫である【高貴なエストレージャ】の互い違いの瞳(右目がル
ビーのように赤く、左目が深い海のように青い)に恋し、自分の宿の名前にも互い違いの猫の瞳
を表す名前をつけようとした。ところがどうだ、互い違いを「奇妙な」などと表現したがために、
ストレージャ様にとってはたいへん不名誉な宿の名前となってしまった。
猫そのものが奇妙なようにも取られるし、正しく読み取ってもらっても「奇妙な瞳」という、エ
ルドが存在し、盗賊の仕事を助けている。ギルドメンバー(通常はギルメンと呼ばれる)は拠点
こんな【奇妙な猫の瞳】亭だが、街の人々の知らない夜の顔がある。ネグラレーナには盗賊ギ
としている宿屋ごとにチームに分かれている。ここ【奇妙な猫の瞳】亭はもっとも大きなチーム
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である「夜の猫」が拠点としている場所なのだ。
生き方の結果として、あるいは代償として、君はこの世界で生きてきた。何も後悔はないし、
二度人生があったとしても、この生き方をもう一度選ぶだろう。夜の匂い。ギリギリのスリル。
とき、自分は最高の存在なのだと心から思える。
隠された秘密を自分だけが知る、その瞬間。そして、金。人を手玉に取り、強烈な稼ぎをあげた
行くあてを失った君を、この古くて新しい街に招いてくれた女エルフ。
ネグラレーナは自由な都市だ。ニナの言うとおりだ。懐かしいエルフの盗賊の顔を思い出す。
「この街はきっと、あなたにぴったりよ」
家と、対照的に真っ白な新しい街並みに少し驚いた。だが今は、その様もこの街にふさわしく思
そう言って笑う、ほころんだ彼女の顔を思い出す。来たばかりの頃は、旧市街の黒っぽい壁の
える。光と闇の混ざり合う、このネグラレーナに。
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盗賊の都市ネグラレーナの話
めて街を出ていきました。川と川が交差する土地で、交易による利益で暮らす人々が作った駐屯
宗教都市ロング・ナリクの堅苦しい宗教政治に飽き飽きした人々は、活力ある自由な生活を求
地が、都市ネグラレーナの原型と言われています。
の中で商売を知る者たちが現われ、駐屯地と関わりを持つようになってから、ネグラレーナはそ
その駐屯地のそばには、雑多な種族がゴソゴソと暮らしている、汚い集落がありました。彼ら
の規模を拡大し始めました。今から八〇〇年ほど前の話です。北や南、それに海の向こうとの貿
易を続け、港ができ、徐々に活気づいていったといいます。この地の内陸に住むドワーフたちは、
ため、ネグラレーナの存在を歓迎し、歴史的に見ても長い同盟関係が続きました。それは今でも
外海からもたらされる富を歓迎していましたが、自分たちが直接沿岸部に居を構えるのを嫌った
続いていて、戦いが起こるたびに彼らは力を合わせます。
とも大きな理由は、この街の自由な風土にあるでしょう。さまざまな出自の者たちがいちどに暮
雑多で汚らしく落ち着きのない街ですが、ネグラレーナが気に入る人々は多くいます。そのもっ
らしているせいで、貴族も宗教も幅を利かせられないのです。八〇〇年余りの歴史の中で、特定
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の種族や信仰がこの街を支配したことはありません。小知恵を利かせて街を手中に収めようとし
た者は皆、その計画がまだ萌芽したばかりの段階で殺され、死体となって街道の側溝に捨てられ
てきました。
の境目に位置しています。水路と陸路の両方で交易が行われ、活気のある港町として知られてい
大陸東部に位置する代表的自治都市ネグラレーナは、マドレーン海域沿岸部と氷樹海域沿岸部
ます。
ネグラレーナつまり「黒い砂」の名は、この土地の名産品である黒いガラスや石材に由来する
わけではありません。多くの人が勘違いしていますが、実際にはこの街のもうひとつの名物、歴
この街の名の由来とされています。闘技場は現在、かつてほどの盛んさを保っていません。街を
史ある闘技場から来ています。傷ついた闘士が地面に血を落とし、砂が黒く変色して見えたことが、
統治する領主マキシミリアン公爵は、ネグラレーナの犯罪率の高さをどうにかするため、さまざ
まな政策を取りました。その一つが「街中への怪物や猛獣の持ち込み禁止」であり、別の一つが
街のイメージを一新するために「新市街地では黒い素材を使わないこと」というわけです。
君はこの街で、盗賊としてうろつきます。何をするかは、完全に君自身に委ねられています。
それでは、一へ進んでください。
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一
昼間から人々が酒を飲みながら盛り上がっている。年取った者、若い者、人間、小鬼めいた生
き物たち、ずんぐりむっくりのドワーフ、鳥人。若さも種族も男も女も関係なく、食べ、甲高い
声で笑い、叫び声をあげ、飲んでいる。ここは居酒屋なのだ。
人々の間を通り抜け、奥へと進む。壁や柱のところどころに刀傷があるのが、君の目を引く。
かないものの、それほど大変とも言えないようなものばかりだ。
壁には木製のボードがあって、単発の仕事の求人が書き込まれている。一般人の仕事とまではい
ナとは古い馴染みだ。彼女はエルフという長寿の種族の生き物だから、彼女からしたら「最近知
歩きながら君は、待ち合わせの相手を目で探す。君をこの宿に紹介してくれた「夜の妖精」ニ
り合ったばかり」なんて思っているかも知れないわけだが……とにかく君をこのギルドに紹介し
てくれた。
だが、そのニナが今、見当たらない。ニナから話に聞いていた、痩せたハンサムな宿の主人ア
レ ハ ン ド ロ も 探 し て み る。 い な い。 カ ウ ン タ ー に い る の は、 六 〇 歳 を 越 え た 老 人 だ。 お か し い。
彼女は確かに、次の一時にここに来るように言ったはずだ。
黒ずんだテーブルに案内されて座るころ、君は思い違いに気づく。彼女は「次の一時」と言った。
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「夜の妖精」と呼ばれている彼女のことだから、それは夜中の一時なのだ。
君は舌打ちして、一二時間後までどうやって時間を潰すか考える。ニナの言葉が頭をよぎる。
「あなたの仕事は街の中が中心になるわ。ネグラレーナに早く慣れることね」
こうか。ニナは確か、最初の仕事は「下水道」か「医院」か「教会」絡みのものになる、と言っ
そうだな、と君は思う。そして立ち上がって、街をぶらついてみようと決める。どこをぶらつ
ていた。
大通りでは領主マキシミリアンが、パレードを行っている。六年前に世代交代したばかりの女
領主ヘレーナ・マキシミリアンは、驚くべき手腕でこの街の経済を発展させているという。
楽隊のファンファーレが華やかに鳴り響き、人々が歓声をあげる。馬にまたがった貴族たちの
一団に、人々が熱狂しているのだ。民衆が熱烈に支持するこの指導者は、アランチャの世界では
珍しいタイプの君主だと聞いている。経済の急成長に加え、人々に安い住居を用意しているらしい。
ネグラレーナの古い建物はみな黒い。その印象の悪さを払拭するため、ドワーフたちから白い石
材を仕入れ、貧しい人々のために新しい建物をつくっているらしい。そうとうな変人だ。
さ て、 行 こ う。一 〇 〇 番と い う 番 号 を メ モ し て お く こ と。 本 日、 街 を う ろ つ き 終 え た と き に、
君が進むべき番号だ。目下のところは二へ進み、街をぶらつく。
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二 *
昼間の街をうろつく。どこへ向かおうか?
・武具店
五一へ進め。
・公衆浴場
一〇一へ進め。
・大学
一五一へ進め。
・博物館
二〇一へ進め。
・教会または墓地
二五一へ進め。
・闘技場
三〇一へ進め。
・賭博塔
三五一へ進め。
・処刑場
一四へ進め。
・造船所
七五へ進め。
・牧場
一二五へ進め。
・医院
一七五へ進め。
・幸運の泉
三三〇へ進め。
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・魔法の道具店
八〇へ進め。
・人の多い表通り
三四三へ進め。
・スラム
二六八へ進め。
・ここにいる
二七五へ進め。
三
君の心臓に鋭い刃が突き刺さる。
死にざまを注視している。ホッとした顔のヨーゼフが、視界の隅に見える。
心臓の鼓動に合わせて、噴水のように血がピュッピュッと溢れ出る。紅潮した顔で観客が君の
冒険はあっけなく幕を閉じた。
四
変装をして、貴族地区へと潜入する。ニセ貴族とバレたら、吊るし首だ!
伯爵夫人の邸宅は、汚い格好では向かえない場所だ。そこで【奇妙な猫の瞳】亭にある貴族の
この作戦はリスクが高いと判断するなら、違う方法を選ぶこと。
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・演技型として誘惑するなら三七九へ進め。
・拉致を計画するなら六四へ進め。
・屋敷に雇われる方法を考えるなら二四九へ進め。
この作戦に挑戦するなら一一八へ進め。
五
まだ。あと一歩のところで、怪物商人を取り逃がしてしまった。
その名は虚しく地下下水道に響いた。怪物商人は姿を消し、ギルドは壊滅的な打撃を受けたま
本を閉じること。
六
録紙に加えること。
任務を達成した君に、アレハンドロが金貨袋を渡す。中には金貨一〇枚が入っている。冒険記
「ご苦労だったね。次の任務まで、それで骨を休めてちょうだい」
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りと休む。体力点を二点回復せよ。
ミッション「取引」を達成したことを、冒険記録紙にチェックしておくこと。君は一日ぐっす
「次の任務は公衆浴場よ」
が終わったら、「指定された番号へ進むこと」という記述が現われる(そのとき君は二一五番にい
翌日、君は昼の町に繰り出す。昼のうちに見て回れる場所は、せいぜい二、三箇所だろう。それ
るだろう)。そのときは、八へ進め。
八という項目番号をメモしたら、二へ進め。
七
盾または木製の楯は、今回の戦いでも多少役立つ。うまく用いれば、あの黒い稲妻の剣を受け
流すことができるかも知れない。
毎ラウンドの開始時、サイコロ一個を振ることができる。五か六が出たら、怪物商人の攻撃力
をそのラウンド一点下げることができる。もし君が武闘型なら、四か五か六が出たら、でいい。
七七へ戻り、続きを読め。
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八
アレハンドロはニナと君を別室に招き、重々しい態度で口を開く。
「今度の仕事は、前回ほど簡単じゃない。心してかかって欲しい」
「この街には『公衆浴場』があって、貴族にも平民にも親しまれているわ。体を洗うだけでなく、
コクリとうなずく君たち。詳細を話し始めるアレハンドロ。
男女の ――
人によっては男どうし、女どうしでも ――
お楽しみの場所、軽い賭博の場としても使
われているの。娼婦もいれば、賭博塔から来た人間たちもいる。それらすべてを仕切っているのが、
フィゲロという名の浴場管理人よ。彼を捕まえて連れてくるか、殺害して」
アレハンドロは木のテーブルの上に、人物の描かれた羊皮紙を広げる。背の高い男の絵が描か
れている。
うでもいいけれど、こいつは太り過ぎたわ。ギルドの脅威となる前に、取り除かなければならな
「これがフィゲロ。公衆浴場を夜間使うことで、違法な稼ぎを出しているわ。多少の小銭稼ぎはど
くなった、というわけ」
夜間の公衆浴場で何が行われているかは、想像に難くない。もともと公衆浴場は、賭博や売春
が行われる場所でもあるのだ。
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な大理石の浴槽と、簡素な木の屋根。だが、周囲に張り巡らされた木々のため、中の様子は判然
ニナと君は夜の街を音もなく歩き、湯浴み通りを抜ける。すぐに公衆浴場が見えてくる。豪華
としない。明かりの松明だろう、生垣の向こうで何かが燃えているのが分かる。
三人、裏口には二人。
ニナと君は公衆浴場をぐるりと周回する。表口にも裏口にも、見張りが立っている。表口には
き回る人の気配は表口のほうが頻繁だ。あるいは、表口の男を騙して中に入る手もある。それとも、
忍び込むのであれば、見張りの少ない裏口から侵入するのがいいだろう。見えはしないが、動
リスクを承知でここに留まり、状況が変化するのを待ってみるか。
・裏口からの侵入を試みるなら一五四へ進め。
・表口の男を騙してみたいなら二七七へ進め。
・ここに留まるなら三二三へ進め。
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九
この二つの武器は、この狭い屋内では上手に取りまわすことができない。戦いの間、攻撃力を
一点減らさなければならない。
とができる。どちらの武器も、攻撃力に一点を加えて戦うこと。
ただし、君がもし知略型で、隣の肉切り部屋に移動しているなら、十分に武器を振りまわすこ
三九〇に戻り、続きを読め。
一〇
その名は虚しく地下下水道に響いた。怪物商人は姿を消し、ギルドは壊滅的な打撃を受けたま
まだ。あと一歩のところで、怪物商人を取り逃がしてしまった。
本を閉じること。
一一
その場に倒れ込む剣士。アレハンドロに手を貸して、助け起こす。そのそばには、せっかく捕
らえた怪物商人のナドラーの姿が転がっている。死んでいる……。
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「ナドラーは、銀の鎧の剣士に殺されたわ。凄腕の剣士だった。あいつには気をつけて」
アレハンドロを安全なところまで運ぶ。火の手は少しずつ、強まっている。
会所までは見ていないから、出られなくなっている可能性はあるわ」
「ニナもアビゲイルも見当たらないわ。うまく逃げおおせているとは思うんだけど……。地下の集
再び火の中に身を投じるかどうか、すぐに決めなければならない。
・地下への秘密の階段を降りるなら三三五へ進め。
・アレハンドロとともに退去するなら三七六へ進め。
一二
一点減らさなければならない。
この二つの武器は、この狭い屋内では上手に取りまわすことができない。戦いの間、攻撃力を
とができる。重槍を使うなら攻撃力に二点を加えて戦うこと。薙刀であれば、攻撃力に一点を加え、
ただし、君がもし知略型で、隣の肉切り部屋に移動しているなら、十分に武器を振りまわすこ
攻撃が成功した際に与えるダメージにも一点を加えることができる。
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二三〇に戻り、続きを読め。
一三
威力は低い。
命中した矢一本につき、一点の体力点を失う。あれだけ立て続けに撃てる代わり、一本一本の
の場にひざをつくハメになる。口から泡を出し、下水道の汚らしい床に顔をつけ、倒れ込む。
だが、次の瞬間、自分の考えの甘さを思い知らされた。足が意思に反してガクガクと笑い、そ
でもなく、ただただ強い意志の力を感じさせる、静かな光に溢れている。
ほんの少しもためらうことなく、マキシミリアンは君にとどめを刺す。その瞳は残虐でも冷酷
本を閉じること。
一四
処刑台では首吊り死体がぶらさがっている。見せしめのためなのだろう。
処刑通りには人影がほとんどない。屋台が数台出ているが、誰も使っておらず、寂しいかぎりだ。
要するにここは、誰かが処刑されるとき以外に使われることがない場所なのだ。処刑台は市の
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所有物だから、むやみに近づいて官憲と揉めるのも損なのだろう。
・敢えて処刑台に近づくなら三三六へ進め。
・そのまま帰るなら二一五へ進め。
一五
男は苦笑する。
「ああ……あの人も節操ねえな。誰でも紹介するんだな」
運だめしをすること。
・成功したら一七六へ進め。
・失敗したら四三八へ進め。
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一六
狼男は暴れるが、籠の中の鳥も同じ。いささかの手傷も負うことなく、命を奪う。
高に彼女を脅しつけるが、聞く耳を持たない。怪物を飼っていたことをバラされたくなければ、
気配がして振り返る。真っ青な顔をしたセエラ伯爵夫人が、毛布一枚の姿で立っている。居丈
などと言う間にも、果物ナイフをテーブルから拾い、青ざめた顔で突進を繰り出す!
セエラ伯爵夫人
技術点三
体力点五
逃げ出すなら四三九へ進め。戦闘に勝利したなら二七八へ進め。
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一七
ピーンと小気味良い音を立てて、コインが宙を舞う。出たのは表、君の先攻だ。
戦い方はいくつかある。相手をギブアップさせるために、自らの危険を顧みずに危険な場所を
には関わらない場所を指定する方法。
指定する方法。足などの安全な場所を指定する方法。それから、目のような、危険ではあるが命
いずれが有利だろうか?
・足
九六へ進め。
・目
一五七へ進め。
・心臓
二六一へ進め。
つけ、まだ使っていないナイフと区別する。そして、次にサイコロを振った際、すでに使ったナ
※ここから先、冒険記録紙の「リスキー・エッジ 」の欄を使用する。すでに使ったナイフは二
度使わないことになっているので、ナイフを決めるサイコロを振った際、出た目のナイフに印を
イフの目が出たら振り直す。
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一八
なるべく時間をかけ、軽い拷問で済ます。コビット(小人)はよく痛みに耐え、ほとんど声も
あげない。
今後ともごひいきに……。」
「ご満足なさいましたか。次回からのご料金は金貨五〇枚となっております。お気に召しましたら、
拷問館をあとにする。四四〇へ進め。
一九
もし君が「アイアン・ハンマー」のコネクションを持っているなら、この番号にそのコネクショ
ン番号を足した項目に進むこと。そうでなければ、読み続けよ。
アイアン・スティングとの一騎打ちがはじまる。決着を着けよ。
アイアン・スティング
技術点一二
体力点八
戦闘が始まる前に、君は好きなだけ投擲槍を投げることができる。一本を投げるごとに技術点
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チェックを行い、成功したら命中だ。命中した本数だけサイコロを振り、出た目のぶんだけアイ
アン・スティングの体力点を減らすこと。投げた投擲槍は冒険記録紙から減らさなければならない。
けた場合、減らす体力点を一点軽減してくれる。
盾または木製の楯は、少し身を守ってくれる。攻撃力の差が一点でアイアン・スティングに負
コネクションを持っていなくても、君自身が攻撃力の二点増加するハンマーを持っているなら、
アイアン・スティングの攻撃力を二点減らして戦うことができる。
逃げられない。勝利したら二四三へ進め。
二〇
アイアン・スティングはにんまりと笑い、自信満々にケースを開く。そこに入っていたのは、
刃渡りの長い短剣だ。その刃はうねるような波状の模様がついていて、光を返して虹色に輝いて
いる。
一二回も鍛えなおした逸品『岩切り』だ」
「このナイフは、ただのナイフじゃない。ドラッツェンの高名なドワーフの鍛冶屋、老ゼネロフが
まがい物を掴まされるわけにはいかないので、ナイフを手に取り、窓ぎわに置かれた石ころに
39
当ててみる。ズッという独特の音を立てて石が二つに切れてしまったので、君は息を呑む。
戦う際、攻撃力を一点増やして戦闘を行うことができる。岩切りは短剣なので、そのこともメ
モしておくこと。
岩切りを冒険記録紙に記入し、二一五へ進め。
二一
警備兵隊長はしつこく追いすがってくる。だが、ニナの機転で小路地に入り込むと、隅々まで
町並みを知り尽くした君たちの勝ちだ。四二〇へ進め。
二二
はニセモノだ。
サイコロ一個を振れ。出た目が一から三なら、君は体力点を二点失う。四から六なら、ナイフ
れでヨーゼフが受けたダメージが六点以上になったら、ヨーゼフはのたうち回って死ぬ。三六〇
最後に、残ったナイフをチェックせよ。それが当たりなら、ヨーゼフは体力点を二点失う。こ
へ進め。それ以外なら、ヨーゼフも生き残る。勝負は引き分けだ。五九へ進め。
40
二三
技術点チェックを行うこと。ただし、君が武闘型なら、ここでは必ず成功する。失敗したら投
行ってしまうので、冒険記録紙から消しておくこと。
擲槍は外れる。大ドブネズミが押し寄せてくる!
戦うために二八一へ進め。投擲槍はどこかへ
命中したら、首領ネズミは甲高い声を上げて逃げ出す!
すぐにきびすを返し、君はロックウェ
ルを連れて逃げる。冒険記録紙から投擲槍を消しておくこと。二七一へ進め。
二四
てゆくのが見えた。
どこをどう進んだものか……そのとき、月明かりに照らされて、小さな建物に背の高い男が入っ
「フィゲロね、たぶん間違いないわ」
抜きんでた視力をもつニナが、目を細めてそう言う。追いつくために月明かりの下、誰もいな
い屋外の浴場を横切る。そして公衆浴場の外れに建つ建造物の、鉄製の扉の前までやってくる。
カギがかかっているので、小さな鉄製のピンを使ってそれを開ける。開いた!
小さな部屋は散らかっていて、獣じみた臭いで満たされている。端にある下り階段を降りると、
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檻の並んだ部屋へと導かれる。
大型の怪物たちが、檻の中に入っている。頭の二つある犬や、雄牛の頭をした怪物ミノタウロス。
飼い葉桶に水を張り、人魚を浮かべている檻もある。
その奥にある扉のない入り口から、松明の明かりが漏れている。誰かいる。
・真っ直ぐに歩いてフィゲロを捕らえにかかるなら一八三へ進め。
・周囲の怪物たちの息の根を先に止めたいなら三三一へ進め。
二五
こうなのですが、色々ありまして、今日のところは決して殺さないでくださいね。お楽しみは後
「ははあ、趣味ですな。ちょうど今、うってつけの対象が入っていますよ。お楽しみいただいてけっ
にとっておくと約束してくださるなら、お連れいたしましょう」
テンの向こうから、悲鳴やすすり泣きが聞こえる。
コクリとうなずくと、案内人は君を導き、細く暗い廊下を案内してくれる。途中にある黒いカー
その黒いカーテンのひとつをくぐり、石の壁の部屋に連れていかれる。そこは狭い部屋で、地
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下室特有のカビの臭いに満ちている。部屋の中央には、トロールのギルメン、セーリヌスがいる。
椅子に座らされ、黒い袋をかぶせられ、上半身を裸にされて。その緑色の体には、傷ひとつない。
高い戦闘力の証だろう。
「ごゆっくり」
二人きりにされると、すぐにその袋を外してやる。猿ぐつわを外し、大丈夫かと問う。セーリ
ヌスは咳込んで、手短に話す。
「ナドラーは怪物商人じゃなかった。本物の怪物商人は、鎧の女だ。明日の夜にも地下下水道を通っ
てこの『拷問館』に現われる」
軽く刺す。それだけでセーリヌスは大げさ過ぎるほどの声をあげ、全身にびっしょりと汗をかく。
背後で人の気配がしたので、形だけ鋭利なナイフを手にする。トロールの指先に少しあてがい、
「なあ、新入り、あの鎧の女は恐ろしい奴だ。顔は見られなかったが、周りの奴らも心底彼女を恐
気配が遠ざかる。セーリヌスの様子が真に迫っていたからだろう。
れていた。俺も怖い。これから先、どうなっちまうんだって思うと」
巨体をかついで外には出られないし、真の怪物商人の居所をつかむためにも、彼を連れていくわ
冷酷な考えが頭に浮かぶ。セーリヌスの口を、今すぐ封じるべきなのではないだろうか。この
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けにはいかない。ギルドの情報をしゃべられては、都合が悪いのだ。
しかし、たとえ必要であっても、古参のギルメンを殺すのはさすがにためらわれる。それに、
先ほど釘を刺されたのだ。「今日のところは、殺さないでくださいね」と。
「おい、なんで急に黙るんだよ?」
不安に感じたらしく、哀れっぽい声でセーリヌスが話しかける。
・形だけ彼をいたぶって去るなら一四二へ進め。
・拷問死させるなら四一一へ進め。
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45
二六
兵士たちの第一陣を切り払い、鎧の女に近づく。女は勝ち誇り、割れ鐘のような声で叫ぶ。
な罪のない生き物がほとんどだが、一匹とんでもないのがいるぞ……出てこい、ウォードレイク!」
「愚か者たちが!
我々が『拷問館』に荷物を運んできたことを忘れたか!
人魚や小妖精のよう
ウォードレイク!
アランツァ大陸を代表する魔物の一つ!
一二〇年前にネグラレーナで起
こった戦争で、何十人も殺したという銀の怪物……!
女が巨大な箱の錠めがけてハンマーを叩きおろし、天井まで届きそうなその鉄箱の側面の壁が
はがれ落ちる。ウォードレイクが、その恐ろしい巨体をさらけ出す。
銀色に輝くウロコ。長いかぎ爪。大きく美しい翼。鋭い牙。何もかもが規格外だ。凶暴な赤い
瞳を輝かせ、君たちを見ている。まるで、活きのいいエサを見るかのように。
「ふざけた襲撃をくわだておって……覚悟しておけよ、お前らの家族まで皆殺しだ」
コネクション「樽」を獲得しているなら、この番号にそのコネクション番号を足した番号へ進め。
獲得していないなら二五六へ進め。
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「そんなはずない。ポドスはたしかに、金貨三〇枚と言ったわ」
二七
気が普段にもましてない。イヤな予感がして中を覗き込むが、案の定空っぽだ。
アレハンドロはそう言い、君たちは医院に戻る。だが、荷車通りから見える粗末な医院には人
「やられたわね」
ドスと会ったとしても、とぼけられて終わりだろう。そういう世界なのだ。あきらめるしかない。
苦い顔をして、ニナがつぶやく。金貨三〇枚を騙し取られ、君たちは任務に失敗した。次にポ
一六一へ進め。
二八
ボグシャットから巻き上げた金が金貨一〇〇枚に達していたら三二四へ進め。
これで「水晶ダイス」を終えるなら二一六へ戻れ。そうでなければ、続きを読むこと。ただし、
うべダイスを振る。その場合は一二〇へ進め。
まずサイコロを一個振り、一から三が出たら君が水晶ダイスを振り、ボグシャットがしゃれこ
四 か ら 六 が 出 た ら、 君 が し ゃ れ こ う べ ダ イ ス を 振 り、 ボ グ シ ャ ッ ト が 水 晶 ダ イ ス を 振 る。
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二五七へ進め。
二九
で笑い、
客だと告げたにもかかわらず、君の姿を上から下までジロジロと眺める。受付係はフンッと鼻
「おまえはダメだ、帰れ」
と告げる。どうも、あまり上品な格好でないのが気に入らなかったらしい。
入場料の金貨三枚は別に支払わなければならない。
君はここで受付係に心づけとして金貨三枚を渡し、中に入れてもらうこともできる。もちろん、
・金を握らせるなら三八六へ進め。
・やはり侵入するなら一九四へ進め。
三〇
アマンダが正面を向いた瞬間、隠し持っていた武器で殴りつける。攻撃は顔面を直撃し、顔が
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割れて血が噴き出る。
「この……たわけ……!」
とどめを刺そうとした瞬間、足もとにピンク色の何かが絡まる。粘り気のあるその舌は、巨大
がるいとまを与えず、殺生鳥が体の上にのしかかってくる。
なカメレオンから発せられたものだ。思いきり引き倒され、頭をしたたかに打ちつける。立ち上
あっという間に死んだ。君も、アマンダも。
三一
いたのか。何をしていたのか。仲間の存在の有無。しかし、君は一切、口を開かない。
君は連行され、拷問とまではいかないものの、厳しい取調べを受ける。なぜ墓場をうろついて
ひどい目にあいはしたが、任務は達成された。仲間は無事で、君の時間稼ぎのおかげで危機は回
痛めつけられたので、技術点一点、体力点二点、運点一点を減らすこと。数日後、君は釈放される。
避されたのだ。運点に一点を加えること。
二六四へ進め。
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三二
順番が進み、やがて君の出番がやってくる。砂地を踏みしめて、闘技場に出る。人々の熱気が
すごい!
の握り拳ほどもある鉄球がジャラジャラついたフレイルを片手に、殺気立った顔であらわれた。
反対側の出入り口から、巨大な怪物が姿を現わす。オウガ兵士が大きな楯と鎧で身を固め、君
都合でカードを変えたのだろう。あのいけすかないツラの口ひげ男め、次に会ったら……!
初戦の相手は狼のはずだ!
ついさっきそう言っていたではないか!
きっと、闘士が逃げた
なければ、次もへったくれもないのだ。決着を着けよ。
オウガ兵士が近づいてくる。次に会ったら、などと考えているときではない。ここを切り抜け
オウガ兵士
技術点八
体力点一三
逃げられない。オウガ兵士を倒したら二四六へ進め。
50
三三
もしリスキーナイフ(ニセモノ) を持っているなら、イカサマ勝負を仕掛けることもできる。
そうするなら一三八へ進め。真正面から勝負するなら三二六へ進め。
出た場合、新しい目が出るまでサイコロを振りなおすこと。
ここから先、冒険記録紙の「リスキー・エッジ」の項を使う。いちど出たサイコロの目がまた
三四
とする。決着をつけよ。
ミノタウロスは鼻から蒸気を噴出させながら、その馬鹿でかい角で君を引っかけて押し倒そう
ミノタウロス
技術点九
体力点一一
逃げ場はない。勝利したなら二一四へ進め。
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三五
ニナは冷たい表情で、死んだ護衛の耳を切り取る。そしてスタスタと今きた道を引き返す。ど
こに行くつもりか尋ねると、「医院よ」と彼女は短く答える。
らわないと」
「今ならまだ、同じところにいる可能性が高いわ。私たちを襲った落とし前を、きちんとつけても
りにのっとり、ニナが裏切り者の遣わした者の耳を突きつけると、ポドスの態度が一変する。
君たちは薄汚れた扉を開き、驚くポドスを引き倒して剣先を突きつける。古式ゆかしいしきた
ない小路を急ぐ。
謝罪と命乞いを繰り返すポドスを縛りつけ、容赦なく引っ立てる。夜が明ける前にと、目立た
れるらしい。
アレハンドロは上機嫌だ。意外なことに、ポドスは殺されることなくこれまでと同じ生活を送
「きっちりと制裁金を支払わせたわ」
「街中で会うことがあっても、お互いに知らぬふりをすること。それが、ネグラレーナのルールよ」
アレハンドロは言う。
君たちにはボーナスとして金貨一五枚ずつと、クカ麻薬一回分が渡される。これは戦いの直前
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に吸い込めば、戦いの間じゅう攻撃力が三点上昇する。任務達成だ。六へ進め。
三六
穴から飛び出した君を待っていたかのように、ニナが入れ替わりに動く遺体に矢を射かける。ほ
逃げ出す際に負う傷にも、通常の体力点のほかに技術点一点がダメージとして追加される。墓
どなくして、墓穴で……ーク卿は息絶える。
「怖いわね」
平然とした表情でそう言って、彼女は君の肩をポンと叩いた。
かき集める。二二二へ進め。
それから君はおそるおそる墓穴に入り、今度はもう動かない……ーク卿の遺体の横で、遺品を
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三七
クシャンはつまらなさそうに酒を飲む。
てちゃんとしてる。妙な話だよ!
ネグラレーナ唯一の良心みたいな顔をしてるけど、やっぱり
「あのオッサンは、真面目っちゃ真面目な司祭だよ。真面目に盗掘もしてるし、表の顔の活動だっ
骨の髄までこの街の人間なのさ!」
二一五へ進め。
三八
ナイフの刃が太ももに突き刺さる!
体力点を二点失う。
ゼフが受けたダメージをメモしておくこと。
次に、ヨーゼフの分のサイコロを振る。一から三が出たら、ヨーゼフは体力点を二点失う。ヨー
第二ラウンドだ。七〇へ進め。
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三九
塔の外壁にしがみつき、登っていく。大胆な行為だが、今夜のように月明かりのささない曇り
空ならば、気づかれる心配はほとんどない。
二階の扉に手をかけ、押す。音もなく扉が開く。すぐに三階に登り、四階を目指す。
盗賊の勘で、君は足を止める。三階には「準備室」と書かれた扉がある。押してみると、中に
は木箱が山積みにされている。
・準備室に入ってみるなら五三へ進め。
・ぐずぐずせずに上の階へ行くなら三九六へ進め。
四〇
セエラの部屋は、頭がぼうっとする煙の匂いが充満している。その匂いを嗅いでいるだけで、
自分の奥にある、知らない自分が目を覚ましそうだ!
理性がマヒしてきそうだ。いつの間にかセエラを押し倒し、背中の紐をほどいて服を脱がしている。
一昼夜をともにした後、好機が訪れる。真夜中にもなるとさすがにセエラも疲れ果て、グッタ
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リと眠ってしまう。君はちょっと散歩にでも出るような体で、屋敷をうろつき回ってみる。弱み
を握れれば、言うことはない。
の奥にあるのだ。死体の臭いではない。獣の臭いだ。扉に耳をつけてみる。向こう側から動物の
屋敷をちょっとうろつくだけで、すぐに気づいたことがある。異様な臭いのする部屋が、二階
うめき声が聞こえる。彼女のような金持ちが、わざわざ部屋の中で動物を飼う理由はひとつ。外
に見せられない生き物なのだ。怪物に違いない。
・部屋に突入して怪物を確かめるなら一九九へ進め。
・セエラの部屋に戻り、親密な関係を続けるなら三二二へ進め。
四一
任務失敗だ!
運点一点を失う。落胆して帰る君とニナを、アレハンドロが迎える。
えてくれたわ。ほら」
「残念だったわね。でも、別働隊として動いていたピドロとエルガが、うまいことフィゲロを捕ま
袋を被せられたフィゲロを連れて、カエル人のエルガと、目つきの鋭いコビット(小人)のピ
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ドロが、君たちの横を通り過ぎる。ニナが二人のことを教えてくれる。
「あの二人はいい盗賊剣士よ。特にピドロは凄いわね。【ホークウィングス】との対立が今よりずっ
と厳しい時期に、向こうのギルドの拷問官に捕まったとき、一〇日間の拷問にも屈せずひと言も
話さなかったというわ」
話している間にも、フィゲロはアレハンドロのもとへと引っ立てられる。アレハンドロは宿屋
の地下で待っていた。そこには緑色の肌をした巨躯の男 ――
トロール族に違いない ――
が一緒に
いて、無表情のまま哀れな浴場管理人を奥の部屋へと連れていく。アレハンドロが紅茶を入れて
くれる。
いればいいだけ」
「レゴルバは尋問のプロだから、必要なことはすべて聞きだしてくれるわ。私たちはここで待って
レハンドロに一分近く耳打ちし続けて、それから去っていく。上品なお菓子をつまみあげて食べ
数時間後、血まみれの革手袋を外しながら、ギルドメンバーのレゴルバが奥から出てくる。ア
ながら、アレハンドロが説明してくれる。
て、夜間に怪物を戦わせる『夜間闘技場』が存在すること。フィゲロの所属するグループが、同
「フィゲロから話を聞き出せたわ。彼は二つの情報を持っていた。ひとつは、闘技場を違法に使っ
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金銭的にサポートし、フィゲロを怪物商人と引き合わせたのはセエラ・フォン・グレゴリア伯爵
じように取り仕切っているらしいわ。もうひとつは、彼のスポンサーね。変態じみた公衆浴場を
夫人だそうよ。伯爵夫人が関わっているなんて、えらいことだわ」
「次はうまくやりなさい。いつまでも失敗は許されないわ」
アレハンドロは君の顔に触れ、ほほを軽く撫でながら言う。
が終わったら、「指定された番号へ進むこと」という記述が現われる(そのとき君は二一五番にい
翌日、君は昼の町に繰り出す。昼のうちに見て回れる場所は、せいぜい二、三箇所だろう。それ
るだろう)。そのときは、一〇六へ進め。
一〇六という項目番号をメモしたら、二へ進め。
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四二
奇妙な声をあげて、グリフォンが悶える。
グリフォン
技術点一〇
体力点一一
の攻撃力から毎ラウンド五点を引くこと。
逃げられない。グリフォンはなぜか、調子が非常に悪い。技術点は一〇点あるが、グリフォン
勝利したら二九一へ進め。
四三
たら賭けた金額を失う。冒険記録紙を書き換えること。
コトンと静かな音を立てて、赤いマスに玉が落ちる。当たりなら賭けた金額を二倍にし、負け
さらに続けるなら三三三へ戻り、決められた範囲内で賭けた後にサイコロを振ること。
赤黒円盤をやめるなら二七六へ進め。
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四四
コビット(小人)が帰って来る前に、君は逃げ出す。冒険記録紙にアイアン・ハンマーを記入
えられる。
しておくこと。これはハンマーの一種だ。このハンマーを用いて戦う際、君は攻撃力に二点を加
今後、武具店に入ることはできない。二一五へ進め。
四五
なことに狼男が、セエラを守るように立ち上がり、牙をむいてうなり声をあげる。
夢中になっていたセエラはよほど驚いたのだろう、大声をあげてベッドの上で後ずさる。意外
君は手もとにあった椅子を拾い上げ、狼男の顔面を思い切り殴りつける!
一九六へ進め。
四六
られている。鎧や剣の中には単なる歴史的な価値だけでなく、今でも使える素晴らしいものが混
博物館の展示物は多く、この街が出来た頃、数百年前からの歴史的遺物が、順番に沿って並べ
じっている。腕防具(ガントレット)は一二〇年前にマキシミリアン公爵の先祖が使っていたも
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ので、魔術師レムレスによって祝福された、強靭な防具であると解説されている。
足防具は逆に、呪われたものだと書かれている。二〇〇年前にマドレーン諸島と小規模な戦争
が起こった際、これを着けていたロング・ナリクの伯爵が転倒死した。それ以来、戦でこれを着
けた者が次々に転倒死や転落死を遂げているという。
また、展示場の中央には見事なトルマリン製のサイコロが飾られている。亡国レラヴィリアの
国宝のひとつ。逸品だ。
展示物も後半に入り、城の地下で過去に使われた拷問具のコーナーに差しかかる。恐ろしげな
器具を眺めるにつけ、その品のうちいくつかには比較的新しく見える血痕があることに君は気づ
く。
ぞっとして君は博物館の館員を探す。いない。しばらく館内をうろつき回るが、どこにも館員
の姿が見えないのだ。コネクション「博物館」を獲得する。コネクション番号は一二九だ。
あるいは、せっかく館員がいないのだ。簡単に開きそうなケースでも開けて、役立ちそうな品
物でも持って帰ろうか。客は少しいるが、堂々とやれば疑問には思われないものだ。
・館員をなおも探すなら二九二へ進め。
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・帰るなら二一五へ進め。
・手ごろなものをくすねるなら三八四へ進め。
四七
にわかにアイアン・スティングの顔が曇りだす。
「あの色狂いの姉妹の仲間か!
あの二人が俺を見る目を、思い出すだけでいら立ってくるわ!
『私たちは醜いものなど見たくありません』ってあの視線が、どれだけワシを傷つけてきたこと
か!」
ドワーフの周りにいる、媚びへつらう者どもがとりなす。そんなことはない、勇猛で知恵のあ
る男は、それだけで魅力的なのだ、それが分からないのは分別のない愚かな人間である証だ、と。
どうも、使った名前があまり良くなかったらしい。取り入る作戦は失敗だ。一〇七へ進め。
四八
アレハンドロに言われたとおり、処刑通りを南に折れて汚らしい小路を進む。粗末な身なりを
した人々が、何人か窓のすき間からこちらを伺っている。ここはスラムなのだ。
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初老の男が扉を開き、ニナと君を中に招き入れる。男はロックウェルと名乗る。
汚らしいスラム街にしては大きく立派な家が、指定された住所に建っている。ノックに応じて
回る。だが、今日うろつく場所は安全ではない。君たちは私について、危険から守ってくれ。よ
「夜の猫さんには事前に話したとおり、私の護衛をお願いしたい。これから私は地下下水道を歩き
ろしく頼む」
い下水道を、スタスタと歩いてゆく。なんだってこんなところをうろつくのだ?
だが、詮索は
「下水道管理人」ロックウェルはマンホールの蓋を外し、刻み目をつたって下に降りる。臭く暗
禁物だ。
うずくまる二匹の大ドブネズミの姿を映し出す。飢えた彼らは凶暴で、甲高い鳴き声をあげて走っ
ひどい臭いのする下水川の側道を歩き続ける。ランタンのかすかな明かりが、やがて道の先に
てくる。ロックウェルを後ろにかくまい、ニナと君は剣を抜く。
大ドブネズミ
技術点
七
体力点六
大ドブネズミ
技術点
六
体力点七
63
片方のドブネズミを選んで戦うこと。残ったほうはニナが片づける。
逃げられない。勝利したら三三四へ進め。
四九
アマンダも生き残った。次のラウンドだ。アマンダが一本を選び、君も選ぶ。
ンダも外れを引いてしまった。正面から勝負をしたくない君は、何か道がないか考える。
さて、困った。イカサマをしたことで多少は有利になったかと思ったが、運のいいことにアマ
逆に、アマンダのリスキー・ナイフが本物なら万事休すだ。そうだとしたら、このまま勝負を続
リスキー・ナイフに本物が混じっているなら、このままアマンダに襲いかかればいいだろう。
けるべきだろう。
・勝負を続けるなら八二へ進め。
・アマンダに襲いかかるなら一四四へ進め。
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五〇
敵の兵士たちが去った後、夜の闇に紛れて宿の外に出る。アレハンドロが向かいの家と家のす
き間に隠れていて、声をかけてくれる。その腕には、いつもの猫が戻っている。
があるの。汚い場所だけど、来てちょうだい」
「やられたわね。新入りのあなたはまだ知らないでしょうけど、こういうときに備えて集まる場所
アレハンドロはそう言って、闇の中を走るように進んでいく。
黒砂通りを抜け、スラムへとやってくる。その隅にある汚い家の扉を開け、アレハンドロは中
に招待してくれる。
「私の自宅よ。汚いけど。仕方ないわね。今日からここが【奇妙な猫の瞳】亭よ」
部屋の中は質素で、汚いというよりは何もない。椅子に座り、起こったことについて考える。
あれは、街の警備兵だった。アレハンドロは言う。
「心あたりを挙げればキリがないけど、怪物商人がらみでしょうね。ナドラーには拷問を含めた尋
問をしたけど、何も知らなかった。たぶん、背後に黒幕がいるんでしょうね」
「アジトは燃えて、メンバーは相当数死亡。あなたのおかげで私は生き残ったけれど、何ができる
ナー、と猫が鳴く。
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のかしら」
意気消沈するアレハンドロに、あいつらは何者なんだ?
と問いかける。
「警察よ。ネグラレーナの警察を、誰かが動かしたんだわ。でも、誰がやったか分かっても、どう
に鞍替えしたりするでしょうし。ニナも捕まった。あいつら、ニナを引っ立てて連れていったわ。
しようもないかも知れないわ。死ななかったメンバーも、怖気づいて抜けたり【ホークウィングス】
大声で、『明日の夕方に処刑する』って……宣言していたわ」
最後のほうは消え入りそうな声で、アレハンドロはしくしくと泣いていた。ニナが死ぬ?
な
んとかしなければ!
頭をめぐらせ、策を練る。コネクション「ニナ」を獲得する。コネクション番号は二一八だ。
衛兵を懐柔するか?
意味がない。衛兵たちは何らかの権力で動かされたのだ。目先の金につら
明日一日、ニナを救うために全力を尽くさなければ。どんな手段がある?
皆目見当がつかない。
れはしないだろう。牢獄に忍び込むか?
それこそ不可能だ。
ぜい二、三箇所だろう。それが終わったら、「指定された番号へ進むこと」という記述が現われる(そ
答えが見つからないまま、朝が来る。君は町に繰り出す。昼のうちに見て回れる場所は、せい
のとき君は二一五番にいるだろう)。そのときは、一九五へ進め。
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一九五という項目番号をメモしたら、二へ進め。
五一(次ページイラスト参照)
白い漆喰の壁の間にあるボロっちい木製の扉を押して、薄暗い店内へと入る。
湯浴み通りを歩くとすぐにこの街の武具店が見えてくる。都市の武具店にしては規模が小さい。
店主が横柄な態度で、すばしこいコビット(小人)に雑用を言いつけている。重い荷物を持って、
店内は狭いが、取り扱っている物は多い。所狭しとばかりに武具が並べられている。無愛想な
コビット(小人)はヨロヨロと出ていく。君はその横で武器や防具を眺めている。
・武器や防具を買いたいなら一八一へ進め。
・冷やかしに過ぎないなら二一五へ進め。
・コビット(小人)に話しかけてみたいなら一二二へ進め。
67
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五二
アマンダの両手の間をすり抜け、喉もとに最期の一撃を加える。かっ切るのはまずい。突き刺
せば、「リスキー・エッジ」の結果として死んだと言い張れる。
る様子で、動じもせずただコクリとうなずく。
すべてを見ていたナドラーに、誰にも何も言わないのが賢明だ、と告げる。さすがに心得てい
三〇〇へ進め。
五三
の日付が、ひとつひとつに振られている。いちばん手前の箱には明日の日付、その次の箱には明
部屋の中はいささか埃くさい。薄暗いなかに、木箱が横並びにされている。そこには明日以降
後日の日付。箱のひとつを開けると、そこにはあの狂ったギャンブル、「リスキー・エッジ」に用
いるナイフが入っている。
・ナイフを一本くすねるなら六七へ進め。
・ナイフの重さや仕組みを調べるなら三八一へ進め。
69
・もう上に行くなら三九六へ進め。
・ナイフに特徴を与えるなら二六〇へ進め。
五四
番兵たちは顔を見合わせ、奥にひと声かける。
「私、知らないわ。そんな人たち」
奥からひょっこりと、美しい婦人が顔を出す。婦人はそのまま、不安げな表情で番兵をつつく。
番兵はハッとした顔をして、君たちを捕らえに近づきはじめる。
電光石火の素早さで、ニナは目の前の見張りに飛びかかる。ことが露見する前に、目の前の敵
を片づけようというのだ。君も、やるしかない。
見張り
技術点
七
体力点
七
別の見張り
技術点
八
体力点
八
順番に戦え。逃げ出すなら四一へ進め。七ラウンド以内に二人の見張りを倒すことができれば
70
二八二へ進め。
七ラウンドより倒すのにかかる場合、事態は手に負えなくなる。騒ぎを聞きつけた他の見張り
たちが、殺到するからだ。そうなれば、その場を逃げ出すしかなくなる。四一へ進め。
五五
為に夢中になっている人々の姿がチラチラを見える。だが、扉がひとつある。そこを開けると、
案内人の気配が遠のくのと同時に、カーテンを抜けて他の部屋を見てまわる。胸の悪くなる行
何もない部屋に男が二人。でこぼこ。トロールのセーリヌスと、コビットのピドロだ。
「ナドラーは怪物商人じゃなかった。鎧の女だ。あいつが怪物商人だった。この耳で聞いた、明日
部屋に飛び込み、二人の猿ぐつわを外す。ピドロが告げる。
の夜、地下下水道を通ってこの『拷問館』に現われる」
ありがたい情報だ!
礼を言い、もとの部屋に戻ろうとして、気づく。
近の警備は厳重だった。ギルドの命運がかかっている今、危険をおかして彼らを救うのは、間違っ
ギルドの安全を守るためには、この二人を助けるか、殺すかしなければならない。だが、扉付
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ているのかも知れない。
・二人の縄をほどき、脱出するなら一二四へ進め。
・二人を殺して立ち去るなら三三七へ進め。
・もといた部屋に戻るなら四四六へ進め。
五六
二人を相手にして、やる気がかき立てられる。なんという幸運だ!
運点を二点増やせ。
ひと段落する頃、疲れ果てているはずなのに、まったく疲れを感じない。いつの間にかまどろみ、
目を覚ます。姉妹の姿はない。荷物は?
大丈夫だ。君の荷物はなくなっていない。姉妹はその
ような輩ではないのだ。
サイドテーブルを見やると、革の小袋が置いてある。開けると金貨一〇枚が入っている。彼女
たちも満足したらしい!
なによりだ。冒険記録紙に記入しておくこと。
二一五へ進め。
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五七
次々と大ドブネズミが押し寄せる。きりがないとはこのことだ。
大ドブネズミ
技術点
六
体力点
六
大ドブネズミ
技術点
五
体力点
四
交互に戦え。逃げられない。さらに大ドブネズミが君を襲う。勝利したら一五三へ進め。
五八
樽のフタを閉め終わると同時に、女が隣の部屋に入る音がした。倉庫だ。音を立てぬよう、神
経を研ぎ澄まして部屋を出る。視界に甲冑の背が入ってくる。視野が狭いからだろう、兜の前を
開け、油断なく周囲を見渡している。
・背後から襲いかかるなら一九八へ進め。
・これ以上彼女を見ないなら三七五へ進め。
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五九
過酷な勝負に生き残った!
一九二へ進め。
六〇
運だめしのためのサイコロを振らず、運だめしを成功したことにできるという力だ。運だめしの
冒険記録紙から金貨八枚を減らすこと。祝福されたお守りは、二つの効果がある。ひとつは、
際に行う運点の減少も、この力を発揮したときにはしないでいい。この力は一度使うと消耗して
しまうが、下記のもうひとつの力によって復活することがある。
れる。運だめしのために振った二つのサイコロの目がもし同じ目(ゾロ目)だったら、運だめし
そのもうひとつの力とは、この最初の力を使って以降、別の機会に運だめしを行う際に発揮さ
の成功失敗にかかわらず、最初の力(運だめしを一度だけ、好きなときに成功したことにできる
能力)が復活する、というものだ。
つまり、このお守りは運さえ良ければ何度でも使える優れものというわけだ。
三五八に戻って買い物を続けるか、二一五へ進んで帰ろう。
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「ノーフォーク卿が流行り病にかかって亡くなってから、まだ喪も明けておりやせんから……」
六一
はないか。近づいて確認すると、確かにそのとおりだ。その話を赤毛の侍従に伝えると、身震い
不吉な言葉が脳裏をかすめる。昼間聞いた言葉だ。そうだ。この墓はノーフォーク卿のもので
しながら首を横に振る。
「うええ。じゃあ、その墓はやめよう。命あってのものだねだから、な」
運点に一点を加えること。他の墓から手際よく金目のものを抜く作業を繰り返し、夜は更けて
ゆく。二二二へ進め。
六二
これで両目とも失ったなら八一へ進め。そうでなければ読み続けよ。
右側の視界が、一瞬で真っ赤に染まった。柔らかい感触が、ナイフづたいに両手に伝わってくる。
二点、体力点を四点失う。
目にナイフを突き立てたまま、下手に動くこともできず君はうめいている。技術点を原点ごと
最後に、残ったナイフをチェックせよ。それが当たりなら、ヨーゼフも技術点二点と体力点四
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点を失う。ヨーゼフが受けた ダメージが六点以上になったら、ヨーゼフはのたうち回って死ぬ。
三六〇へ進め。それ以外なら、勝負は引き分けで終わりとなる。五九へ進め。
六三
フィゲロは袋をかぶせられ、アレハンドロのもとへと引っ立てられる。アレハンドロは宿屋の
地下で待っていた。そこには緑色の肌をした巨躯の男 ――
トロール族に違いない ――
が一緒にい
て、無表情のまま哀れな浴場管理人を奥の部屋へと連れていく。アレハンドロが紅茶を入れてく
れる。
「レゴルバは尋問のプロだから、必要なことはすべて聞きだしてくれるわ。私たちはここで待って
いればいいだけ」
レハンドロに一分近く耳打ちし続けて、それから去っていく。上品なお菓子をつまみあげて食べ
数時間後、血まみれの革手袋を外しながら、ギルドメンバーのレゴルバが奥から出てくる。ア
ながら、アレハンドロが説明してくれる。
「フィゲロから話を聞き出せたわ。彼は二つの情報を持っていた。ひとつは、闘技場を違法に使っ
て、夜間に怪物を戦わせる『夜間闘技場』が存在すること。フィゲロの所属するグループが、同
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金銭的にサポートし、フィゲロを怪物商人と引き合わせたのはセエラ・フォン・グレゴリア伯爵
じように取り仕切っているらしいわ。もうひとつは、彼のスポンサーね。変態じみた公衆浴場を
夫人だそうよ。伯爵夫人が関わっているなんて、えらいことだわ」
険記録紙に記入しておくこと。
ミッション「公衆浴場」をクリアした。アレハンドロは報酬として、金貨一〇枚をくれる。冒
れが終わったら、「指定された番号へ進むこと」という記述が現われる(そのとき君は二一五番に
翌日、君は昼の町に繰り出す。昼のうちに見て回れる場所は、せいぜい二、三箇所だろう。そ
いるだろう)。そのときは、一〇六へ進め。
一〇六という項目番号をメモしたら、二へ進め。
六四
セエラが定期的に訪れる場所は、ミステロというサロンしか存在しない。かつては夜の公衆浴
場に頻繁に通い詰めていたらしいが、君の所属するギルド【オッド・アイ】がフィゲロにアプロー
チした関係で、今は閉鎖されてしまった。
サロンのミステロは、金持ちと貴族のための場所だ。とても人さらいのできる場所ではない。
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要するに、彼女の行動範囲はどこも上流階級のための場所で、拉致など到底不可能なのだ。その
事実に気づき、無駄な労力を払ったことにがっかりする。運点を一点減らせ。
・演技型として誘惑するなら三七九へ進め。
・屋敷に忍び込みたいなら四へ進め。
・屋敷に雇われる方法を考えるなら二四九へ進め。
六五
金貨一〇〇枚を示し、二階へと通してもらう。特別室にいる面々が、いっせいに振り返る。
「刺激に飢えた皆さん、これなるは新しい特別室へのチャレンジャー。歓迎の拍手をお願いします」
連れてきた男が、好奇心の目に応える。
パチパチと響く拍手の音。男が君の肩に手を置いて告げる。
のギャンブル、命をかけた『リスキー・エッジ』に挑戦してもらうことです!
命をかけるほど
「さて、この部屋に入室するには、金のほかにもうひとつ条件があります。それはこの特別室特有
酔狂でないなら、尻尾を巻いて一階の『平和な』ギャンブルに戻る権利も、もちろんあなたは有
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