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報告書(7月、8月、9月)
報告書(7月、8月、9月) 1.派遣者 小川 顕 2.派遣先 財団法人 自体国際化協会 パリ事務所 2 Place du Palais Royal 75044 PARIS CEDEX 01 Tél +33 (0)1.40.20.09.74 3.派遣期間 平成16年4月1日~平成18年3月31日 4.7月、8月、9月の主な業務内容 ①議会制度調査 地方分権の推進に伴い、地方の議会制度についても機能を見直す検討がなされており、 内閣総理大臣の諮問機関における審議項目に、「地方議会のあり方」が採り上げられ、都 道府県、市、町村の各議長会は、議会制度のあり方を探るための研究会を設置し審議を 深めている。検討に当たって、各国の地方議会制度を参考にするということから、世界 11 ヶ国内の 15 地域を対象に州、県、市町村と各階層別の調査依頼が届き、現在、我が事務 所もフランスのアルザス州、オ・ラン県、コルマール市、スイスのジュネーブ州、ジュネーブ 市、チューリッヒ州、チューリッヒ市、イタリアのエミリア=ロマーニャ州、ボローニャ県、ボロ ーニャ市、スペインのカタルーニャ州、バルセロナ県、バルセロナ市の 13 団体の調査に取 り掛かっているところである。内容としては、議員数や議会開催回数と基本的な組織の概 要から役割、機能、立法過程、選挙、身分報酬、活動状況、住民との関係と多岐にわたる ものとなっている。 私は、スイスのジュネーブ州、ジュネーブ市の担当となり調査票を作成し、各団体の担 当者探しとアポイントメント取りに取り掛かったところである。その間、文献調査も並行して 進め、締め切りは年末となっている。 ②「スイスの地方自治」第 1 回現地調査 8 月 30 日、スイスの地方自治調査執筆に向けてスタートを切った。今回はスイス連邦、ジ ュネーブ州、ジュネーブ市、フリブール大学、在スイス日本国大使館、在ジュネーブ総領事 館、ジェトロジュネーブの 7 ヶ所へ質問表を出し、表敬訪問を兼ねながらヒアリング調査を行 った。7 ヶ所も回ると、成果のあった訪問先とそうでないとこと様々ではあったが、どの団体も 親切丁寧に迎え入れてもらい、今後の調査に弾みのつく訪問となった。スイスの地方自治 のあり方で、欠かすことのできないものは、長年永世中立国を保ってきた歴史と、連邦制の 生まれた背景を理解することが重要というのがわかり、主権は州にありというという言葉の産 1 声がその国の人と話すことによってわかってきた。ここに、各訪問先の様子について報告す る。 ■訪問場所:ジェトロジュネーブ ■対応者:亀井 所長、今井 貿易及び投資アドバイザー ジュネーブの経済状況の話から始まり参考文献、資料の案内をしていただく。そのほ かにも在スイス 14 年の見地からスイスの歴史、政体の動き、レファレンダムに関する 話等多方面からの話を聞くことができ、スイスの概観をつかむことができた。また、亀 井所長からはスイスの地方自治の調査をするには、歴史性も考慮なけければ理解するこ とができないと思われるとのことであった。特有のスイスの連邦体制は、歴史的背景か ら生まれたものが大きいとのこと。歴史性を念頭におき調査進めなければ理解に苦しむ だろうとのアドバイスも頂いた。 ■訪問場所:在ジュネーブ総領事館 ■対応者:長沢 領事 在ジュネーブ領事館の領事範囲はスイスのジュネーブ州(仏)、ヴォー州(仏)、ヴァレ ー州(仏、独)、ティチーノ州(伊)の4州とのことから、この4州を中心に話を頂いた。 ジュネーブ州議員(100議席)は職業政治家がほとんどいないとのこと。多くの議員は 社会奉仕の感覚で行っており弁護士や看護婦さん、教員など職業も様々との話であった。 ジュネーブ議会は仏語で行われており、DOCUMENT も仏語が多く、次に英語となっ ており独語については少ないとのことであった。また政体の話では、ジュネーブ州は右 派が議席を伸ばしているとのこと。これは連邦レベルにでも同じ。レファレンダムにつ いては住民にとって負担を強いるようなことは通ることがほとんどないとの事であっ た。特に税率が上がることに関しては否定的。コミューンレベルの女性参政権が認めら れてないコミューンもあるとのこと。など多方面からの話を頂いた。 ■訪問場所:在スイス日本大使館 ■対応者:森 一等書記官、平井 一等書記官 森書記官より連邦の概要から政体の概要、住民投票、住民集会の話を頂く。住民投票 は連邦レベルで年に 4 回行っており、それに付随して州の住民投票、コミューンの住民 投票も行われるとのこと。コミューンレベルでは建築許可の事まで住民から一言入り、 レファレンダムへ持ち込まれる事があったなど興味深い話が聞けた。 また、平井書記官からは連邦財政や税制についての話を聞くことができた。現在、連 邦と州レベルの間で行っている RPT(連邦・州間の税財政分配適正化に関する改革) の話を聞くことができた。この改革は 11 月の国民投票に上げる予定しとのことで、現 在国民向けの説明資料を作成中とのことである。この改革が進めば、州と連邦の役割が 明確になるとのことである。 2 ■訪問場所:連邦政府 ■対応者:M.Bussmann 学術協力官、M.Baumann 学術協力官、Mme.Guy-Ecabert 学術協力官、 M.Rey 財政省副部長、M.Montangéro 税情報室長 連邦政府の職員 5 名が我々を迎え入れてくれたため、当初はヒアリングに難航し進め方に戸惑っ てしまった。ということで、今回の調査の回答は 5 割程度といったものとなったが、多くの資料を頂け たのと今後の顔つなぎができたということに関しては大きな収穫が得られた。 スイス連邦にいたるまでの歴史的な話から、スイス連邦の税制、財政の話を頂けた。 ■訪問場所:フリブール大学 ■対応者:M.Schmitt 学術協力官 今回の調査、訪問の中で一番成果あった訪問となる。我々の聞きたい質問にひとつひ とつ調べながら答えてくれて、長時間休み無く付き合っていただいた。おかげで、連邦 と州の立法権限及び執行権限について分けることができた。時間の都合上、監督権限ま では移れなかったが次回訪問の際にはこのことからスタートし、よきパートナーとして 付き合っていきたい気持ちになった。この大学には、26 州全ての法令がそろっており、 9 年前には日本からの学者も一年間研究していたとのことであった。 ■訪問場所:ジュネーブ州 ■対応者:M.Louis(儀典室長補佐) 議会が近日に迫っている忙しい時間の中、今回の訪問時間を頂いた。ジュネーブ州の 組織から議会、参事会の概要をお話頂き、さらにイニシアティブ、レファレンダムに関 することまで聞くことができた。また、各種資料の入手先や関係者等の紹介も頂けた。 しかし、大変お忙しい方で我々との対応中も電話が数回入り、今回の訪問では州とコミ ューン間の権限関係や連邦と州間の監督関係、財政、税制の話等には移れなかったので、 彼から紹介いただいた名簿を元に次回の調査へと進めていきたい。 ■訪問場所:ジュネーブ市 ■対応者:M.Erhadt(参事会事務総長)、M.Audria(学術協力官) 急なアポ取りにも関わらず、事務総長自ら業務終了後の時間を割いて対応していただいた。たく さんの資料を用意してもらい、その説明から始まり市議会、参事会の概要、組織、イニシアティブ、 レファレンダムに関するお話を頂けた。イニシアティブはこれまで 4 回しかないらしく、住民間で何か 問題意識が上がった際には議員に相談し解決してもらうか、複数名の署名による陳情書を提出し 議会で話し合うケースがほとんどで、イニシアティブまでいかないのが大半とのことであった。また、 レファレンダムに関することの一例として、ジュネーブ市の金銭的援助の元、市外にサッカー場を建 設することに対してレファレンダムにかかり、結果として建設にはいたらなかったことなどを話して頂 3 けた。後半は、ジュネーブ市と品川区の姉妹都市提携の話や、国際都市として各種会議等にも出 席しているなど、市のアピールまで話してくれた。 ③ニューズレター この報告書と同様に年 4 回の発行となっている「La letter de CLAIR」の No51 の発行を終 えた。幸いなことに 14 年前から発行しているニューズレターの 3 回目のデザイン変更を行え る機械にめぐり合うことができた。自分の描いたスケッチでフランス人デザイナーと数回打ち 合わせをし、3 案作ってもらった後、クレアパリ内で投票し、最終的には所長決定を行った。 3 案の投票により職員全てに関わってもらいデザインのブレインストーミングができたことは 大きく、また、フランス人デザイナーと意見交換を交わせたことも大きな経験となった。また、 日本人の環境に対する心をフランス人にも伝える思いで、この号から再生紙を使い発行を 行った。国土の広いフランスはゴミを埋めるところもたくさんあるし、人口密度に対して緑も豊 かなので日本人ほど環境に関心は無いように思える。ちなみにゴミの分別も目立つところは ビンだけで、そのビンもワインボトルやビール瓶がきれいなところを見ると、再使用までには 至ってないようである。(余談ではあるが、ビール大国ベルギーではビール瓶にデポジット制 がとられており、ビンを見ても再使用の形跡があった。) 次回、No53 号は世界遺産特集に沖縄の出番が回り、文化財課長古塚氏に執筆頂き、同課 石原氏から資料提供を頂いた。さらに、日本の先進的自治体の情報として「住民参加のまち づくり」のタイトルの元、那覇市のことを執筆した。情報提供を頂いた都市計画課屋比久氏、 社会教育・スポーツ課赤嶺氏、建築指導課比嘉氏、文化財課石原氏、並びに執筆いただ いた文化財課長古塚氏にお礼を申し上げたい。No53 は那覇市職員による沖縄情報盛りだく さんなので、期待して頂くとともにフランス自治体へ那覇市を発信する機会も恵まれ感嘆の 思いである。 (発行の際には http://www.clairparis.org/のサイト(クレアパリ HP)に PDF でア ップされますので一目して下さい。) 5.所感 フランス生活も半年を過ぎ、徐々に落ち着いて仕事にとりかかれる感がある。観光気分も 抜けて、土日は体を休めるといった過し方になってきた。精力的にフランスを踏査したいの だが、この時期は日本からの訪問団体が多く、事務所の繁忙期となってきている。4月から スタートする日本はどこの自治体も研修や訪問企画を上半期に組み、下半期で実行にかか るといった様子である。その関係で、訪問時期が一挙に集中する。9月は急に寒くなりだし た影響も加算して風邪をこじらせた職員も数名で、肺炎になる職員もでた。温かい地域から きた小生にとっては、厳しい季節に突入である。もうすでに一度ひいてしまい、妻にもうつし てしまったが、引きつづき気を引き締めていきたい。 この3ヶ月のメインはスイスの地方自治調査で、スイス人を肌で実感することができた。この 国の公用語はフランス語、ドイツ語、イタリア語、ロマンシュ語となっており、それぞれの州に 4 よって使われる言葉が違う。言葉が違うと文化も違い、同じ国なのに4種類の言語と文化が あるといった様子であった。レストランを例に上げるとフランス語圏は路面店が多くガラスの 履きだし窓が開放されテーブルや椅子が街なかに延伸している。いわゆるオープンカフェ のイメージだ。それに対し、ドイツ語圏のものは2階にあるものが多く、屋外に出て食べる習 慣は無いように感じた。歩行者もフランス語圏においては赤信号でも車が無ければ渡るの に対し、ドイツ語圏では車の通りが少なく短い横断歩道でも赤信号の間は止まっている。ラ テンとゲルマンの違いを多々感じた。 この所感を書いているのは10月で、7月から9月の回想をしていると、8月のセーヌ川には 興味深い風景があったのを思い出したので一言。この時期、約1ヶ月間にわたり、セーヌ川 からパリ市役所一体はビーチにはやがわりする。市役所前の広場にはビーチバレー用の砂 浜、セーヌ沿いにもヤシの木や砂浜、プールが出現した。それと同時に、街からはビキニ姿、 海パン姿の老若男女が現れ日光浴を楽しんでいる。背景は歴史的石造建築物なので、面 白い写真が撮れ歩いているだけで楽しめる。その名もパリプラージュ(パリの海岸)。HP に写 真を掲載してます。 10月、11月は秋深まりパリの風景も様変わりし美しい。さらに、ワインや野ウサギ、鳩がうま い季節になるという。次回の報告書に掲載できるよう情報収集に努めたい。また、10月某日 の休みを利用しナポリ、ローマ、フィレンチェ、ピサの格安旅行をしてきたので、次回報告書 を楽しみにしていただきたい。 7.その他 HP 開設!時期もだいぶ過ぎて記憶も遠くなってきたアテネオリンピックの開催と同時にフ ランス駐在報告のための HP を開設できました。現地の情報をさめないうちにお届けできるよ う努めます。ちなみにアテネオリンピックは日本選手の情報を得るのに必死で、日夜ネットに 釘付けでした。テレビではフランス人のフェンシングや乗馬、ハンドボールなどの映像が多く 日本人選手を見るのに一苦労。水泳の北島やヤワラちゃんは動いている姿が見れました。 あとは全て静止画と文字を追っかけた日々でした。うちの事務所にも一人アテネに向かった 者がいて、冬の長野オリンピック、夏のアテネと夏冬両方のオリンピックを体験できたと満足 げ。ただ、航空券もホテルもオリンピック価格になっており金銭的には苦労したようです。 5