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まとめプリント 中間
臨床化学 総論 1.1 臨床化学とは 分析対象としては ①疾患の結果として、血中で変動するもの(ex:グルコース) ②疾患の原因に直接関係を持つもの(ex:ホルモン、ビタミン) 1.3.1 検査材料の種類 血液・・・①体内代謝を総合的に反映している →1回限りの検査では絶えず変動している体内代謝の流れを一断面しかとらえられていない。 つまり、検査は同時に何項目かを組み合わせ、何回か繰り返さないと患者の病態を正確に 掴むことは困難である。 ②全血よりも血清を →【血漿】・・・固めずにそのまま使う。フィブリノーゲンを含む。 【血清】・・・固まったもの。フィブリノーゲンは析出している。 つまり【血漿】=【血清】+フィブリノーゲン 血漿を得るためには、何らかの凝固阻止剤を入れなければならず、凝固阻止剤は不安定な 物質を測るときに用いる。 ・赤血球と血漿(血清)の化学成分濃度 成分 赤血球 カリウム 100 乳酸デヒドロゲナーゼ 32000 AST 1200 ALT 167 酸性ホスファターゼ 200 〈一例〉 血漿(血清) 4.4 200 30 25 3 赤血球/血清比 【22.7】 【160】 【40】 【6.7】 【6.7】 AST↑・ALT↑・K-⇒肝臓悪い、AST↑・ALT→・K→⇒?、AST↑・ALT→・K↑⇒溶血か? 1.3.2 検査材料としての血液 採血条件・・・早朝空腹時が原則。食事によって腸から吸収される。CK(クレアチンキナーゼ)のように 運動後上昇するものもあるためである。 変化・変質しやすいこと・・・大気の酸素によって酸化・失活されるもの(アスコルビン酸・CK など)や、光 により分解されるもの(ビリルビンなど)がある。カリウムは室温で放置すると 上昇し、グルコースは室温で放置すると下降する。 1.7 国際単位系 SI 基本単位 長さ m 質量 kg 時間 s 電流 A 熱力学温度 K 光度 cd 物質の量 mol SI 誘導単位 面積 m2 表面張力 kg・s-2 体積 速度 3 m m・s-1 電気抵抗 周波数 2 -3 -2 kg・m ・s ・A s-1 密度 kg・m-3 エネルギー kg・m2・s-2 濃度 mol・m-3 力 kg・m・s-2 圧力 kg・m-1・s-2 臨床化学 1.8 基準範囲 基準範囲・・・健常とみなされ、生活習慣の共通する母集団の計測値であり、その中央値を含む95%の 個体が占める上限値と下限値の範囲のこと 正常範囲・・・検査結果が正常範囲に入れば正常、入らなければ異常(=病気)とされ、誤解を与える。 ・基準範囲設定に影響を与える因子 性差 男性>女性 【尿酸】、【クレアチニン】、【ヘモグロビン】、【TG】、【GGT】 女性>男性 【HDL-コレステロール】 年齢 小児>成人 【ALP】 生活習慣 飲酒で上昇 【GGT】、【TG】、【尿酸】 喫煙で上昇 【白血球数】、【CEA】 ・血液成分の分布型 ①正規分布型 酵素・・・LD、CK、CHE 糖・脂質・・・グルコース・総コレステロール・LDL-コレステロール・HDL-コレステロール・HbA1c 窒素化合物・・・血清総蛋白・尿酸 無機物・・・Na、Cl、Ca、P、Fe ②対数正規分布 酵素・・・AST、ALT、GGT、ALP 糖・脂質・・・中性脂肪・リン脂質 窒素化合物・・・グロブリン・尿素窒素・クレアチニン 無機物・・・K ※血液ガスについて pH:【7.35】~【7.45】 PaO2:【80】~【100】mmHg PaCO2:【35】~【45】mmHg BaseExcess:【-2】~【+2】mGg/L anion gap :【Na-(Cl+HCO3)mEq/L】 正常値は【12±2mEq/L】である。 アニオンギャップとは:細胞外液中の陽イオン(ナトリウムおよびカリウム)と測定された陰イオン(クロライ ドおよび重炭酸イオン)との差のこと。血漿中の未測定の陰イオン濃度の推定に用いられる。代謝性アシ ド-シスの際に確認される項目である。 〈異常値の場合の原因〉 ・AG が少ない場合 血漿蛋白質の減少、低ナトリウム血症、測定されていない陽イオンの増大 など ・AG が多い場合 ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、腎不全 など 臨床化学 各論 無機物 1.1 無機物の概要 水は体重の【50~70】%を占め、【3分の2】が細胞内液、【3分の1】が細胞外液に存在する。細胞外液 の【4分の1】は【血漿】で残りは組織間液である。血漿は血液中でみると【8】%含まれる。 ◎細胞外液・組織内液について 【組織外液】で血漿・組織間液に含まれる主な陽イオンは【ナトリウムイオン】で、主な陰イオンは【カリ ウムイオン】である。【組織内液】には【カリウム】が多く含まれる。 1.2 ナトリウム・カリウム ①体内代謝と臨床診断的意義 ナトリウム代謝の調節は腎臓で行われ、【副腎皮質】から分泌される【ミネラルコルチコイド】(特に【アル ドステロン】)が関係している。 ②基準範囲と生理的変動 ・血清 Na、血清 K 値に変動を示す疾患 高 Na 血症 低 Na 血症 水分欠乏・【原発性アルドステロン症】 胃腸障害・激しい下痢や嘔吐 慢性腎不全・【クッシング症候群】 慢性/急性腎不全・心不全・肝硬変 高 K 血症 低カリウム血症 腎不全・アジソン病・低アルドステロン症 下痢・嘔吐・【原発性アルドステロン症】 *アルドステロン症が起こると、【K 】が下がって【Na】が上がる 基準範囲 血清 Na 【140】mEq 前後 血清 K 【4】mEq 前後 ③検体取り扱い上の注意 凝固阻止剤として Na を含むものを用いると、血清 Na 値に影響を及ぼす ④測定法 【イオン選択電極法】・・・Na の選択のためには、ガラス電極 or クラウンエーテル電極を用いられる。K の 選択のためには、通常バリノマイシン電極 or クラウンエーテル電極が最もよく 使用される。 1.3 クロール(Cl) ①体内代謝と臨床診断的意義 血漿中の CO2 が放出されて CO2 圧が変化すると、陰イオンの不足を補うために赤血球中の Cl-が血漿 中に移動する。 Cl-の測定目的は【長期の嘔吐・下痢】である。また、利尿剤などの投与により、【低クロールアシドーシ ス】をきたすことがある。 ②基準範囲と生理的変動 基準範囲 血清 Cl 【100】mEq 前後 臨床化学 ③測定法 【イオン選択電極法】・・・イオン選択のための電極として、【Ag/AgCl 個体膜型電極】と【第4級アンモニウ ム塩液体膜電極】がある。 ※アシドーシス・アルカローシスについて アシドーシス・・・体内の pH を【下げる】。すなわち体内に HCO3を下げる(代謝性)異常なプロセス、ある いは pCO2 を上げる(呼吸性)異常なプロセスが存在している病態。 ☛CO2 を出せない状態!! アルカローシス・・・体内の pH を【上げる】。すなわち体内に HCO3を上げる(代謝性)異常なプロセス、あ るいは pCO2 を下げる(呼吸性)異常なプロセスが存在している病態。 代謝性アシドーシス 呼吸性アシドーシス 代謝性アルカローシス 呼吸性アルカローシス 腎不全 肺炎 肺炎など 過呼吸 糖尿病性ケトアシドーシス 呼吸筋麻痺 胃酸を出す 1.4 重炭酸イオンと炭酸ガス分圧 HCO3-は Cl-と合わせて体液中の総陰イオンの約85%を占める。 1.5 カルシウム ①体内代謝と臨床診断的意義 Ca は生体内にある無機物のうち、最も多量に含まれる。Ca の吸収は腸管上部で行われ、ビタミン D〈副 甲状腺ホルモン〉によって調節されている。また、血液中の Ca は透析型と非透析型に分けられ、透析型 はイオン型の他に有機酸と結合した可溶性 Ca 塩を含み、全 Ca の 60%を含む。非透析型はタンパク質結 合型 Ca である。結合しているタンパク質のほとんどがアルブミンである。生理作用としては、代表的なも のとして【神経】や【筋肉】の【興奮性の調節】があげられる。 ②基準範囲と生理的変動 基準範囲 血清 Ca 【4.4】~【5.1】mEq ③測定法 【原子吸光法】、 【 o-クレゾールフタレインコンプレクソン (o-CPC 法)】、 【メチルキシリノールブルー(MXB 法)】 がある。 Ca はアルカリ性になるとタンパク質と結合しやすく、酸性になると遊離する。 1.6 マグネシウム ①体内代謝と臨床診断的意義 低マグネシウム血症にみられる神経症状、神経筋症状、消化器疾患、高マグネシウム血症にみられる 筋力低下、血圧低下、精神症状が問題になったら測定する必要がある。 ②測定法 日常検査に用いられている方法としては【比色法】と【酵素法】である。比色法としてチタンイエローおよび キシリジルブルーⅠを用いる方法がある。 臨床化学 1.7 無機リン ①体内代謝と臨床診断的意義 【急性/慢性腎不全】、【副甲状腺機能低下症】、【甲状腺機能亢進】などで高い値を示す。 ②測定法 【還元(モリブデン酸)法】がある。 1.8 血清鉄 ①体内代謝と臨床診断的意義 生体内には約4g の Fe が存在し、65%はヘモグロビンに使われ、約9%がミオグロビン、約1%がその 他のヘム酵素に使われる。ヘム鉄以外にはフェチリンやへモジデリンに各10%ずつ存在する。 ・【肝臓】や【脾臓】にはフェチリンとして約 700mg の Fe が貯蔵されている。 ・【TIBC】=【UIBC】+【血清鉄】 ↑トランスフェリン ↑不飽和鉄結合能 ・血清鉄が増加する疾患には、【溶血性貧血】、【悪性貧血】、【再生不良性貧血】、【急性肝炎】があり、減 少する疾患には【鉄欠乏性貧血】、出血性貧血がある。 各種疾患の血清鉄と鉄結合能の関係 血清鉄 再生不良性貧血 変化の具合 【著名に上昇】 ②基準範囲と生理的変動 基準範囲 TIBC 【400】μg/dL 前後 鉄欠乏性貧血 【著名に低下】 急性肝炎 【上昇】 UIBC 【80】μg/dL 前後 ③測定法 【バスフェナントロリンによる化学的測定法】や【総鉄結合能の測定】がある。後者はトランスフェリンのうち、 3分の2は鉄と結合していないアポトランスフェリンであるため、過剰の Fe3+を加えると、UIBC は添加した Fe と結合し、飽和された状態の血清飽和トランスフェリン(TIBC)となる事を利用している。 血清鉄の測定原理 血清鉄、不飽和鉄結合能 鉄結合能の関係 臨床化学 1.9 銅 ①体内代謝と臨床診断的意義 血清中の Cu は、アルブミン結合 Cu として約5%、セルロプラスミンとして約95%分布しているため、通 常は血清銅の増減とセルロプラスミンの増減は並行関係にある。 遺伝的な銅代謝異常の【ウィルソン病】では、血清銅値は低値を示し、尿中排泄量は増加する。高値を 示す疾患には、鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、胆道疾患、感染症があり、また悪性腫瘍、感染症、慢 性関節リウマチでは血清セルロプラスミン値が上昇するため、血清銅の増加が認められる。 ②測定法 【バソクプロイン(BCP)】と4座配位子結合によるキレート発色させる方法がよく用いられる。 1.10 その他 ・亜鉛・・・数多くの酵素の活性中心として重要な役割を果たす。亜鉛の生理作用としては、味覚・嗅覚の 維持などがある。亜鉛が不足すると、味覚・嗅覚に異常が起こる。 各論 糖質 2.1 糖質の代謝と病気 ①体内代謝と臨床診断的意義 血糖はネズミのように小さな動物からヒト・ウシのように大きな動物まで約 90mg/dL(5mmol/L)の濃度 に保たれている。 血糖の調節に関与するホルモンのうち、血糖を下げるのは【インスリン】ただ1つで、上げるものには 【グルカゴン】、【カテコールアミン】の他に成長ホルモン、グルココルチコイド、甲状腺ホルモンがある。 糸球体におけるグルコースの再吸収はグルコース濃度が【175】mg/dL を超えると完全に出来なくなり、 元にも戻らない。この濃度のことを【腎閾値】と呼ぶ。 高血糖によって発症する糖尿病には大きく分けて 2 種類ある。1つは1型糖尿病である。これは絶対的 にインスリンの量が不足して高血糖になるもので、自己免疫疾患である。2つ目は2型糖尿病である。こ れは太ったり生活習慣の悪化によっておこる。 糖尿病の診断基準と しては、①空腹時血糖値が 126mg/dL 以上であること、②随時血糖値が 200mg/dL 以上であること、③75gOGTT の2時間後血糖値が 200mg/dL であること、④HbA1c が6.5%以 上であることである。 ②正常範囲と生理的変動 早朝空腹時 【110】mg/dL 食後2時間後 【140】mg/dL 早朝空腹時の血糖値には性差や年齢差はないが、長時間空腹時は小児が最も下がりやすく、次に成 人女性、成人男性の順である。採血部位では動脈血>毛細血管血>静脈血である。 また、重度の肝疾患などで低血糖になる。 75g 経口グルコース負荷実験では静脈血漿グルコースの濃度が、開始0分で【126】mg/dL 以上なら糖 尿病と診断され、【110】mg/dL 未満なら正常と診断される。また、2時間後の濃度が【200】mg/dL 以上なら 糖尿病と診断される。 ③検体取り扱い上での注意 全血採血の検体を放置すると、グルコースは速やかに代謝されるので、それを防ぐために NaF、KF のよ うな解糖系の阻害剤を添加する必要がある。 臨床化学 ④測定法 ・【グルコースオキシダーゼ(GOD)】を用いる方法・・・特異度高い・感度低い 十分に【グルコースオキシダーゼ】を作用させるためには【ムタロターゼ】を添加して反応を促進させ る。 ・【グルコースオキシダーゼ(GOD)】と【ペルオキシダーゼ(POD)】による定量 ・【へキソキナーゼ】を用いる方法が標準測定法である。これは特異度が低く、感度が高い。 2.2 尿糖 〈尿糖の測定法〉 【半定量試験】・・・これに用いられる GOD-POD 法は、ビタミン C などの還元剤の影響を強く受けるので、 偽陰性を示すことになる。そのため注意が必要である。正確度は別の定量試験の方 が高いが、実用的な面(煩雑さが増す等)で GOD、POD 系の発色による方法が使わ れる。 2.3 糖尿病関連物質 ・【グリコアルブミン(GA)】 過去2週間の血糖のコントロール状態を反映している ・【グリコヘモグロビン(HbA1c)】 過去1ヶ月間の血糖のコントロール状態を反映している ・【1,5-アンヒドログルシトール(1,5AG)】 過去3日間の血糖のコントロール状態を反映している この物質は現在、食物から摂取していると考えられている。また、高血糖になると、1,5AG は尿中に排泄 される。血糖のコントロール状態が悪いと、血中濃度が低下する。 各論 タンパク質 3.1 血清タンパク質とその異常 血清タンパクの分布は、その半分をアルブミンが占め、IgG、トランスフェリンなど約20種類のタンパク質 で全体の99%を占めている。残りの1%に病態を把握できる重要なタンパク質が分布している。 50%飽和濃度の硫酸アンモニウムで沈殿されやすい血清タンパクをグロブリンと総称する。また、糖鎖 を含まない単一のタンパク質であるアルブミンはグロブリンよりも水に溶けやすく、50%飽和濃度の硫酸 アンモニウムでは沈殿しない。 臨床化学 3.2 総タンパク ①体内代謝と臨床診断的意義 血漿タンパク成分の特性と機能 画分 およその% アルブミン 【66】% α1グロブリン 3% α2グロブリン βグロブリン φ γグロブリン 8% 8% ――― 【15】% タンパク質 【プレアルブミン】 【α1リボ蛋白(HDL)】 【α1アンチトリプシン】 【レチノール結合蛋白】 【α2リボ蛋白(VLDL)】 【βリボ蛋白(LDL)】 【トランスフェリン】 β2ミクログロブリン フィブリノーゲン 【CRP】 機能 これが無いと肺気腫になる 腎臓の評価に用いる アルブミンと IgG の生物学的半減期はおよそ20日で他のタンパク質と比較して長い。 (ⅰ)栄養源として 近年、栄養状態の指標の1つとしてアルブミンの他に半減期の比較的短いタンパクであるプレアルブミ ン、レチノール結合タンパク、トランスフェリンなどがある。 (ⅱ)輸送タンパク質 トランスフェリン、セルロプラスミンなどは鉄イオン、銅イオンを、またリポ蛋白は特定の脂質成分を結 合する。また、カルシウムイオンなどの多くの疎水性物質の輸送を担うアルブミン等多くのタンパク質が 血清には存在する。 (ⅲ)浸透圧の維持 アルブミンは血漿タンパクのうちで分子量が小さくその上最も多量に存在し、等電点が pH4.9付近に あり、血液の pH が7付近なので、イオン解離度が大きく、血漿浸透圧の80%がアルブミンによる。 高タンパク血症は【高度脱水症】、【多発性骨髄腫】、原発性マクログロブリン血症のようなタンパク質合 成能亢進時にみられる。また、慢性感染症や自己免疫疾患でも合成が促進される。 低タンパク血症は【栄養不良】、【ネフローゼ症候群】、【潰瘍性大腸炎】や【重度の肝障害】などで起こる。 【5】g/dL 以下では血液の浸透圧低下をきたす。また、尿中への排泄が1日あたり【150】mg 以上を蛋白尿 という。 ②正常範囲と生理的変動 正常範囲 【7】~【8】g/dL 新生児でかなり低く、老齢期に低い傾向がある。立位は臥位に比べ約【10】%ほど高い。 ③測定法 【紫外部吸収法】・・・タンパク質が 280nm 付近の光を強く吸収する性質を利用。 【屈折率法】・・・血清の屈折率は総タンパク濃度に比例する。 【ビウレット法】、【ローリー法】、【沈殿法】もある。今使われているのは【色素結合法】である。 臨床化学 3.3 アルブミンならびに A/G 比 ①正常範囲と生理的変動 正常範囲 【BCG 法(ブロモクレゾールグリーン法)】で【3.8】~【5.3】g/dL である。乳幼児の場合、アルブ ミンは成人に比べ低値であるが、γグロブリンが成人に比べて低いため、A/G 比は高い。 *尿中アルブミンについて ~【30】mg/日:正常 【30】~【300】mg/日:微量アルブミン尿 ②測定法 BCG、BCP(ブロモクレゾールパープル)を用いる。 3.4 タンパク分画 〈測定法〉 【セルロースアセテート膜電気泳動法】がある。 【300】mg/日以上:顕性アルブミン尿 臨床化学 3.7 免疫グロブリン ①種類と臨床診断的意義 免疫電気泳動法により、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE の5クラスに分かれる。IgG は血清中の主要なクラスで γ区分の90%を占める。 免疫系が慢性に刺激された状態では、全てのクラスの免疫グロブリンがポリクローナル性に増加する 代表例として、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患などがある。モノクローナル性の代表例としては、多発性 骨髄腫、マクログロブリン血症、良性モノクローナル性γグロブリン血症などがある。 ②測定法 【レーザーネフェロメトリー】による自動化装置がある。 3.8 その他のタンパク質 A.【血清ヘモグロビン】 遊離ヘモグロビンはハプトグロビンと結合し、網膜系で直ちに処理される。 B.【フィブリノーゲン】 血液凝固因子であるだけでなく、急性炎症時に増加する急性相反応物質の1つである。また、【加齢】 や【妊娠中】に経時的に上昇する。 C.【補体成分】 臨床検査で主として測定されるのは C3 および C4 である。C3、C4 の両方が低下する代表的な疾患 としては全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クリオグロブリン血症、自己免疫性溶血性貧血、肝硬 変、DIC がある。また、C3、C4 が高値を示す疾患としては各種炎症性疾患、悪性腫瘍などが考えられ る。 D.【α1およびβ2ミクログロブリン】 初期の腎炎でアルブミンが尿中に出現する以前に、この2つのタンパク質は認められる。特に糖尿 病などでは腎症の発症が危惧される時などは、とても有用な検査である。尿中の測定に、わが国では β2M が一般的に利用されている。 E.【ベンズ・ジョーンズ蛋白】 免疫グロブリンの L 鎖からのみなる単一クローン由来のタンパク質は、ベンズ・ジョーンズ蛋白と名付 けられた。60℃程度に加熱すると沈殿物を形成するが、さらに高温にすると再溶解する、という特異な 性質を示す。 スルホサリチル酸法でタンパク質を検出したら尿タンパク電気泳動法を実施し、BJP が疑われれば 免疫電気泳動法か免疫固定法で確定診断をする。 臨床化学 各論 含窒素成分 4.1 窒素代謝と病気 血清中に含まれる窒素成分にはいろんな物質があるが、最も多い成分はタンパク質である。血清に除 タンパク液を加えると、上清ができ、その上清の含窒素成分のことを NPN(非タンパク質性窒素)と呼ぶ。 この NPN のうち、尿素が占める割合は最も多く、ほかにはアミノ酸、尿酸、クレアチン、クレアチニン、アン モニアがある。 4.2 アミノ酸 ①体内代謝と臨床診断的意義 ・特異アミノ酸の代謝異常 【フェニルケトン尿症】が一例である。これは【新生児マススクリーニング】(先天性代謝異常検査)の対 象の1つである。この検査が行われているのは、他に【メープルシロップ尿症】、【ガラクトース血症】、【先 天性副腎過形成症】、【ホモシスチン尿症】、【先天性甲状腺機能低下症】がある。 ・臨床診断的意義 アミノ酸検査として頻度の高い【芳香族アミノ酸】と【分岐鎖アミノ酸】は【肝疾患】の際に、特異的動態を 示す。この症状の際、患者の血漿アミノ酸濃度に関して、前者は上がり、後者は下がる。分岐鎖アミノ酸 は筋肉によく取り込まれ、エネルギー源として利用される。 フィッシャーは、総分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)とトリプトファンを除く芳香族アミノ酸 (チロシン・フェニルアラニン)の【モル比(フィッシャー比)】が肝臓の代謝能力、予備能および肝臓障害の 重症度の判定に重要であると示唆した。 ②測定法 昔までは【ニンヒドリン反応】が用いられていた。現在では【HPLC(高圧クロマトグラフィー)】による【アミ ノ酸】の【自動分析法】が用いられている。 4.3 アンモニア ①体内代謝と臨床診断的意義 分泌液中に含まれる尿素が腸内細菌により分解されアンモニアを発生し、これが門脈に入る。正常時で は、肝臓に存在する尿素回路によって、アンモニアを完全に尿素に変換するので、肝臓から出る血液に アンモニアはほとんど含まれない。 しかし、肝臓が高度に障害されると、尿素回路の機能も著しく低下し、体内で生成されたアンモニアの 完全な除去が困難になり、血中における濃度が増加し、強い中枢神経毒性が現れる。この時、血中のア ンモニア濃度が高くなり、【2mg/dL】以上になった時のことを【肝性昏睡】と呼ぶ。 臨床化学 ②安定性と検体取り扱い上の注意 血中アンモニア値は、採血後全血を室温で放置すると経時的に著しく増加するので、採血と同時に氷冷 して少なくとも 30 分以内に測定するか、比色法で測定する場合は全血に除タンパク液を加えて、よく混ぜ、 遠心して上清を2℃~10℃で保存すれば、10 数時間は変化しない。 ☛とにかく冷やさなければならない! ③定量法 【酵素法(紫外部吸収法)】が用いられる。 4.4 尿素・血中尿素窒素 ①体内代謝と臨床診断的意義 【アンモニア】 【カルバモイルリン酸】 【オルニチン】 【シトルリン】 【オルニチン】 【シトルリン】 【尿素】 【アルギニノ コハク酸】 ☚ほとんどが腎疾患である。 BUN=【血中尿素窒素】である。高血中尿素窒素血症の場合には、【BUN/クレアチニン比】を求めること は、病態把握に有用である。 ②基準範囲と生理的変動 BUN 値の変動であるが、年齢とともに増え、男性の方が大きい。 ③測定法 【BUN】の【紫外部吸収法】が用いられることもある。 臨床化学 4.5 クレアチン・クレアチニン ①体内代謝と臨床診断的意義 【 クレアチン 】は腎糸球体からろ過されるが、尿細管で再吸収される。 【クレアチニン】は腎糸球体でろ過された後は、クレアチンとは異なり、尿細管では全く再吸収されること なく尿中に排泄される。 〈尿中・血清中クレアチン・クレアチニンの変動を示す疾患〉 高値を示す疾患 低値を示す疾患 クレアチン 筋疾患 肝硬変 クレアチニン 【GFR の低下】、腎不全 尿崩症、肝障害 *血清クレアチニン値が3mg/dL 以上ならば、GFR 値(糸球体ろ過値)は 30%以下に低下している。ま た、10mg/dL 以上になると高度の腎不全で血液透析が必要となる。血清クレアチニン値は腎機能のよ い指標となる。 〈一例〉 BUN↑・クレアチニン↑:腎障害 BUN↑・クレアチニン→:消化管の大量出血 ②測定法 【ヤッフェ法】は今でも用いられている。【酵素法】も用いられているが、これは主に自動分析装置に利用 されている。 4.6 尿酸 ①体内代謝と臨床診断的意義 ヒトでは食事から摂取された核酸中のプリン体の大部分は、組織の核酸に組み込まれることなく、直接 代謝されて排泄される。ヒトには尿酸の分解酵素が存在しないため、プリン体は尿酸として尿中に排泄さ れる。 本酵素が先天的に欠損すると、尿酸への代謝が促進し、先天性高尿酸血症であるレッシュ・ナイハン症 候群となる(下図参照)。 ②基準範囲と生理的変動 血清尿酸値には明確な性差があり、【男性】>【女性】である。 ③安定性と検体取り扱い上の注意 尿検体は冷蔵保存すると尿酸の結晶が析出することがあり、この場合はややアルカリ性にして加温して 溶解させてから測定を行う。 ④測定法 酵素である【ウリカーゼ】を用いた【酵素法】が主に使われる。 臨床化学 4.7 ビリルビン ①体内代謝と臨床診断的意義 ビリルビンは【ヘモグロビン】に【70】~【80】%由来し、約【20】%を構成するのは【ヘムタンパク質】に由 来する【シャントビリルビン】である。 ビリルビンの内訳としては、ヘモグロビンが【70】~【80】%、筋ミオグロビンが【15】%、【カタラーゼ】、【チ トクローム】が【10】%である。 ビリルビンがアルブミンと共有結合したものを【δ-ビリルビン】という。 間接型ビリルビンと直接型ビリルビンがあるが、代表的な疾患としては、前者には【溶血性黄疸】、後者 には【閉塞性黄疸】、【胆汁うっ滞性黄疸】がある。 〈ビリルビン代謝〉 ③安定性と検体取り扱い上の注意 光に対しては、直接型・間接型のうち、間接型の方が不安定である。 ④定量法 よく使われる順に【酵素法】、【直接比色法】、【ジアゾ法】である。 【酵素法】に関しては、ビリルビンにビリルビンオキシダーゼを加えてビリベルジンへと酸化分解する反 応を利用している。 *黄疸:ビリルビンが上昇する病態。ビリルビンの過剰産生、排泄障害等によって起こる。 臨床化学 臨床化学 補足 (1)アニオンギャップが意味するものは[① ]イオンの mEq/l (2)血清分離せずに放置すると[② ]と[③ ]は増加し、[④ ]は減少する。 食後に[⑤ ]と[⑥ ]は増加し、運動後に[⑦ ]と[⑧ ]は増加し、 立位で[⑨ ]と[⑩ ]は増加し、朝に[⑪ ]と[⑫ ]は増加する。 男性よりも女性の方が高い値をとるのは[⑬ ]と[⑭ ]であり、低い値をとるのは [⑮ ]である。子供が大人より高いのは骨の形成に関わる酵素である[⑯ ]である。 飲酒で増加するのは[⑰ ]と[⑱ ]で、喫煙で増加するのは[⑲ ]である。 (3)呼吸性アシドーシスを引き起こす代表的な病気は? (4)呼吸性アルカローシスを引き起こす代表的な病気は? (5)代謝性アシドーシスを引き起こす代表的な病気は? (6)代謝性アルカローシスを引き起こす代表的な病気は? (7) pH 7.30 PaCO2 25mmHg PaO2 100mmHg Base excess -15mEq/l で考えられるのは[⑳ ]。 《アミノ酸について》 アミノ酸にはアルデヒド型とケトン型があり、アルデヒド型のD-アルドースの中には[㉑ と[㉒ ]、[㉓ ]がある。ケトン型のD-ケトースには[㉔ ]がある。 ] 《糖について》 グルコース + グルコース →マルトース ガラクトース+ グルコース →ラクトース グルコース +フルクトース→スクロース 分岐鎖アミノ酸:バリン・ロイシン・イソロイシン 含硫アミノ酸:システイン・メチオニン 塩基性アミノ酸:ヒスチジン・リジン・アルギニン 必須アミノ酸:バリン・ロイシン・イソロイシン・トレオニン・メチオニン・リジン・ヒスチジン・ フェニルアラニン 《解答》 (1)・(2)・(7) ①不揮発性 ②カリウム ③アンモニア ④グルコース ⑤グルコース ⑥中性脂肪 ⑧乳酸 ⑨血清タンパク ⑩赤血球 ⑪鉄 ⑫コルチゾル ⑬尿酸 ⑭クレアチニン ⑮コレステロール ⑯ASP ⑰中性脂肪 ⑱尿酸 ⑲CEA ⑳代謝性アシドーシス ㉑グルコース ㉒マンノース ㉓ガラクトース ㉔フルクトース (3)肺炎 (4)過呼吸 (5)腎不全・糖尿病性ケトアシドーシス (6)嘔吐・下痢 ⑦CK