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情報ファイル 教えたいのは、知識・マナー・楽しさ・感謝など色々
情報ファイル No.79 2005 年 秋号 お母さんの「食育」 教えたいのは、知識・マナー・楽しさ・感謝など色々 ――気負いすぎて「自分の知識に自信がない」という声も―― 食育基本法が施行されて 2 ヶ月あまり。 お母さんたちの食に関する教育はどのようなものでしょう。 子供たちの食生活の実態と合わせて聞いてみたところ、 「食」を通して伝えたいことがいっぱいのお母さんの思いが浮き彫りになりました。 ★情報あ・ら・か・る・と★ ・食育の原点は五感体験にあり/食育・料理研究家 坂本廣子 ・家庭における子供の食の教育についてのお母さんの声∼フリーアンサーから∼ 2005 年 9 月発行 調 査 概 要 栄養バランスの悪化、孤食など、子供の食生活が乱れていると言われていますが、子供の食生活に 大きな影響を与えるお母さんの意識はどのようなものでしょうか。 ミツカンでは、わが子の食事の実態や気になるあれこれを「子供の食生活に関するアンケート」とし て首都圏のお母さんたち 342 人に聞いてみました。 ◆調 査 名:子供の食生活に関する調査 ◆調 査 方 法:FAXによるアンケート調査 ◆調 査 時 期: 2005 年 8 月 24 日(水)∼8 月 29 日(月) ◆調 査 対 象:首都圏在住で夫・小学生の子供と同居している 30∼49 歳の既婚女性 ◆有効回収数:342 票(回収率 79.2%) 親の年代 合計 30 代 40 代 342 173 169 小学校低学年 116 59 57 小学校中学年 124 65 59 小学校高学年 102 49 53 子供の学年 合計 ※小学生の子供が二人以上いる場合には、どちらか特定の子供についての回答としました。 調査結果のポイント ★ 平日、朝ごはんを「必ず食べる」子供は全体の 9 割以上。大部分(87.5%)の子供たちはおやつを食 べており、その約 8 割は自宅で食べている。子供の夕食開始時刻は平均「6 時 49 分」でお母さん とほぼ一緒だが、お父さんとは 2 時間近くズレがあり、夕食は父親不在が多い。 ★ 毎日の食事作りでお母さんたちが心がけていることは「栄養バランス」「おいしさ」「手早さ」。そん なお母さんに子供からは、 「カレー」「からあげ」「ハンバーグ」のリクエストも。 ★ お母さんが子供によく言う言葉は「ごはんできたよ」「お行儀よく」「今日、何食べたい?」がベスト 3。逆に子供が言う言葉は「いただきます」 「ごちそうさま」に次いで、 「今日のおかずなに?」 「お なかぺこぺこ」などで、母と子の楽しげなコミュニケーションが目に浮かぶ。 ★ 子供の食生活で気になることは「同じものばかり食べる」「野菜を食べない」 「TV に夢中」など。高 学年では「塾で食事時間がずれる」という気がかりも増えてくる。 ★ 食に関してお母さんが教えたいこととしては①食べ物を無駄にしない(94.7%) ②食事の作法 (83.6%)③食事の前後の挨拶(81.6%)のほか「お手伝い」や「味の体験」「食べる楽しさ」など実に さまざま。子供に教えたいことがいっぱいのお母さん像が浮き彫りに。 ★ 「食育」という言葉は大部分のお母さんに浸透している様子。「親子料理教室」「農場、牧場体験」な ど体験型イベントを希望する声は多い。 ★ 家庭での食の教育についての自由回答では、食事の楽しさ、大切さ、有り難さ、感謝の気持ちを教 えたいという声が多く、その回答率の高さからもお母さんたちの熱意がうかがえる。 2 ≪家庭での子供の食生活実態≫ ◆朝食は必ず食べ、おやつは自宅で ■子供の朝食摂取状況 SA (%) 飲み物だけ 1.2 ふだん(平日)子供たちは家でどのよう な食生活をしているのでしょう。 朝ごはんを「必ず食べる」子供は全体の 9 全体N=342 時々食べる 5.3 必ず食べる 93.5 割以上で、「時々食べる」「飲み物だけ」はわ ずか 6.5 ポイントでした。ただし、高学年 では男子、女子とも「時々食べる」が増えて 高学年 男子=46 6.5 91.3 2.2 います。学年が上がるにしたがって、ギリ ギリまで寝ていたり、出かける前の身支度 に時間をかけたりして、食事の時間がけず 高学年 女子N=56 85.7 14.3 られてしまうのかもしれません。 おやつはほとんど(87.5%)の子供たちが食べています。 「決まった時間に自宅で与える」「家にある ものを子供が自由に食べる」という答えが多く、おやつを食べる子供の約 8 割は自宅で食べているよう です。 ■子供のおやつの習慣 N=342 SA (%) ■おやつの食べ方 N=299 SA (%) わからない 2.3 家から持たせ たものを友達 の家等で食べ る 4.7 ない 10.2 わからない 0.3 子供が自由に 外で購入して 食べる 0.3 その他 3.7 不明 1.7 ある 87.5 学童保育や 友達の家など で食べる 5.7 家にあるもの を子供が自由 に食べる 32.8 最近の子供は塾や習いごとに忙しいといわれていますが、夕食は何時に食 べているのでしょうか。平日の夕食開始時刻を聞いてみたところ、子供は平 均「6時 49 分」スタートで、母親の平均「6 時 54 分」とほぼ一緒です。し かし父親とは2時間近くズレがあり、ふだんの夕食はお父さん不在の家庭が 決まった時間 に自宅で与え る 50.8 ■夕食開始平均時刻 N=342 子供 6時 49分 母親 6時 54分 父親 8時 40分 多いようです。 ◆「昼食メニュー」は学校にお任せ では、おやつも含め、母親はわが子が一日に ■子供の食事内容の把握状況 N=342 SA (%) 何を食べたか、どの程度把握しているのでしょ うか。朝食、夕食がほぼ 100%なのに対し、昼 食は 68.7%で、おやつより把握率が低いという 朝食 結果でした。お昼は学校給食にお任せというこ 昼食 とのようです。 夕食 おやつ 3 把握している 99.4 68.7 把握していな い 0.6 31.3 100.0 88.0 12.0 ◆子供がリクエストするおかずトップ3 毎日の食事作りで、母親たちが心がけていることは①「栄養バランス」②「おいしいといわれること」 ③「手早く」④「旬の素材を使う」などで「特にない」はわずか 1.8 ポイントでした。 「栄養とおいしさを考 えてスピーディに・・」と子供のために台所で奮闘するお母さんの姿が浮かびます。 そんなお母さんに対して、子供からはおかず 「時々ある」をあわせると9割近くの子供が「お 母さん、○○作って」とおねだりしているよう です。 ■おかずのリクエストの有無 N=342 SA (%) 時々ある 68.1 ⋮ よくある 20.2 あまりない 11.7 66.7 43.9 30.4 29.2 24.0 19.9 14.9 14.6 ⋮ ■子供の食事を作る際の重視点 N=342 上位3項目選択 (%) 1 栄養バランスを考える 2 おいしいといわれるよう努力する 3 手早く作って食卓に出す 4 旬の素材を使う 5 嫌いなものでも食べられるように工夫する 6 できるだけ安全な食材を使う 7 子供の好きなものをおかずに出す 8 なるべく薄味にし素材の味を生かす のリクエストの声が上がります。「よくある」 特にない 1.8 具体的には「カレー」「からあげ」「ハンバーグ」がリクエストのベスト3。これは男子女子ともに変 わらず、子供に人気の定番メニューです。次いで男子では「焼肉」 「すし」「ラーメン」、女子では「ギョ ウザ」「パスタ」「すし」があ げられています。 子供が好きといわれている メニューが多い中、目につ くのが 10 位の「納豆」です。 とくに男子では8位にラン クされており、納豆人気は 子供にも浸透しているよう です。 子供も健康を意識する時代 ということなのでしょうか。 ■子供に人気のおかず ベストテン MA (%) 全体 N=302 男子 N=163 女子 N=139 1 カレー 2 からあげ 3 ハンバーグ 4 ギョウザ 5 すし(五目・いなり等) 6 ラーメン 7 焼肉 8 パスタ 9 シチュー 10 納豆 52.3 カレー 46.7 からあげ 42.1 ハンバーグ 37.1 焼肉 36.4 すし(五目・いなり等) 33.4 ラーメン 31.5 ギョウザ 28.8 納豆 21.9 パスタ 20.5 シチュー 57.7 カレー 47.2 からあげ ハンバーグ 39.3 ギョウザ パスタ 37.4 すし(五目・いなり等) 34.4 ラーメン 25.2 シチュー 23.9 焼肉 20.2 肉じゃが 46.0 45.3 40.3 34.5 33.1 28.8 23.7 22.3 18.7 ◆今も昔も「ごはんできたよ」、「おかずなに?」 お母さんが子供によく言う食に関する言 葉は、「ごはんできたよ」「お行儀よく」「今 日、何食べたい?」がベスト3。逆に子供 がお母さんによく言う言葉は「いただきま す」「ごちそうさま」に次いで、「今日のお かずなに?」 「おなかぺこぺこ」などで、母 と子の微笑ましいやり取りが目に浮かびま す。子供の言葉には食への楽しみが溢れ、 お母さんの言葉には食を通して、きちんと 子供をしつけようという気持ちが感じられ ■食に関してよく言う言葉 N=342 MA (%) <母→子供> <子供→母> 1 ごはんできたよ 67.3 いただきます 2 お行儀よく 46.2 ごちそうさま 3 今日、 何食べたい? 42.7 今日のおかずなに? 4 こぼさないように 40.4 おなかぺこぺこ 5 しょうゆ等をかけすぎないで 39.2 おいしい 6 早く食べなさい 38.9 ごはんまだ? 7 テレビを見ながら食べないで 35.1 やった!好きなおかずだ 8 よく噛んで 31.9 おかわり 9 おいしかった? 31.3 たべた∼!(おなかいっぱい) 10 残さずに 31.0 このおかず嫌い ます。 4 88.3 85.7 79.2 57.9 57.6 52.6 49.1 41.8 31.6 14.0 ≪子供の食生活で気になること≫ ◆ 偏食、マナー…気がかり尽きず 特に気になることはない 間がずれる」という気がかりが増えて 5.6 中学年 N=124 ① 37.9 ① 37.9 ③ 37.1 ④ 36.3 ⑤ 32.3 ⑥ 24.2 ⑥ 24.2 ⑨ 19.4 ⑫ 15.3 ⑧ 23.4 ⑩ 18.5 高学年 N=102 ① 34.3 ② 29.4 ③ 27.5 ⑦ 20.6 ⑦ 20.6 ⑤ 22.5 ⑪ 16.7 ⑨ 18.6 ⑤ 22.5 ⑭ 13.7 ④ 26.5 6.9 4.8 4.9 ⋮ また、高学年になると「塾等で食事時 ⋮ ⋮ ■子供の食生活で気になること MA (%) 低学年 全体 N=116 N=342 お母さんたちから見て、子供の食生 1 同じものばかり集中的に食べる 38.0 ① 41.4 活で気になることは何でしょう。 2 野菜をあまり食べない 35.1 ② 37.1 3 TVに夢中で食事に集中しない 32.2 ③ 31.0 「同じものばかり食べる」「野菜を食 4 お箸の持ち方が下手 28.9 ⑥ 28.4 べない」 「TV に夢中」は、低学年から 5 好き嫌いが多い 28.4 ③ 31.0 6 食べるのが遅い 25.4 ⑤ 29.3 高学年までの親たちの共通の悩みで 7 食が細い 22.8 ⑦ 26.7 す。このほかマナーに関することや好 8 スナックやお菓子を食べ過ぎる 19.6 ⑧ 20.7 き嫌いなど、気になることは尽きない 9 よく噛まない 18.4 ⑨ 18.1 10 家族揃って食べることが少ない 17.5 ⑩ 14.7 ようで、「特にない」はごく少数でした。 11 塾等で食事時間がずれる 17.3 ⑯ 7.8 きます。 そんな気がかりのひとつである「好き嫌い」や「食べ残し」についてお母さんたちはどう思っているの でしょう。好き嫌いは「たくさんある」「少しある」を合わせて6割以上の子供に見られます。好き嫌いに ついて全体の7割以上は「偏食のないように育って欲しい」と答えており、「仕方がない」「当然」という声 は少数派でした。 ■子供の好き嫌いについて N=342 SA (%) ■子供の好き嫌いの有無 N=342 SA (%) たくさんある 18.4 ほとんどな い 22.5 あまりない 15.8 親に好き嫌い があるので仕 方がない 3.8 少しある 43.3 嫌いなものが あるのは当然 2.6 その他 1.2 偏食のないよ うに育って欲 しい 74.3 大きくなれ ば、好き嫌い はなくなる 18.1 「食べ残し」は、学年が上がると共に減少しています。食事を残すことに対して「もったいない」「行 儀が悪い」のほか、「無理に食べなくても良い」「食べすぎよりは良い」など、お母さんたちの意見が分か れました。子供の肥満が心配されるこの時代、バランスよく食べて欲しいけれど、食べ過ぎは良くない という意識もあるのでしょう。飽食の時代ならではの意見ではないでしょうか。 ■食事を残す頻度 SA (%) いつも残す 1.8 全体 N=342 低学年 N=116 わからない 0.3 残すことが多い 16.7 あまり残さない 51.1 ■食事を残すことについて N=342 SA (%) いつも残さない 30.1 食べ過ぎるよ りは残すほう が良い 9.1 2.6 23.3 54.3 19.8 残さないので わからない 無理に食べな 9.6 くても良い 14.3 0.8 中学年 N=124 16.9 53.3 28.2 0.8 2.0 高学年 N=102 8.8 45.1 特に何も思わ ない 0.6 44.1 5 その他 7.9 もったいない と思う 41.5 行儀が悪いと 思う 17.0 ≪お母さんの「食育」意識と実践度≫ ◆教えたいこといっぱいのお母さんたち そんな子供たちに食に関して親として「教え ■食に関して教えるべきこととその実践度 N=342 MA 教えるべきこと るべきこと」と思っているのは①食べ物を無 駄にしない(94.7%) ②食事の作法(83.6%)③ 食事の前後の挨拶(81.6%)のほか、 「お手伝 い」や「味の体験」「食べる楽しさ」など、さ まざまなことが高ポイントであげられ、 「教え るべきことはない」という声はゼロ。子供に 教えたいことがいっぱいの母親像が浮き彫り になりました。 上位3項目は実際に教えている割合も高く、 特に「食べ物を無駄にしない」は 8 割以上の お母さんが日頃から教えています。また、「お ⋮ 手伝い」や「手洗いの実行」「好き嫌いの解消」 1 食べ物を無駄にしないこと 2 お箸の持ち方や姿勢など食事の作法 3 食事の前後に挨拶すること 4 1日3食規則正しく食べること 5 色々な食べ物の味を体験させること 6 後かたづけのお手伝いをすること 7 茶碗を並べるなどのお手伝いをすること 8 旬の食べ物を体験させること 9 食事の前に手を洗うこと 10 好き嫌いをなくすこと 11 家族や友人と食事を楽しむこと 12 野菜をきちんと食べること 13 お百姓さんへの感謝の気持ち 14 よく噛んで食べること 15 口に食べ物を入れたまま話をしないこと 94.7 83.6 81.6 75.7 69.3 68.4 67.5 67.3 65.2 63.7 61.7 59.9 57.3 54.7 54.4 順位の 実践度 変動 順位 (%) 1 82.7 2 71.6 3 71.1 6 54.1 10 45.0 4 57.0 5 54.4 12 43.0 7 53.2 9 47.1 14 40.4 8 47.7 15 38.9 13 41.8 11 44.2 0.0 0.3 (%) など日常的な事柄は実践度が高いのに比べ、 特にない 「いろいろな食べ物の体験」「旬の味の体験」な ど体験的なことの実践はややむずかしいのか、 順位は下がっています。 教える上で困っていることは「特にない」が最も多く、 次いで「忙しくて時間がない」「自分の知識に自信がない」 の順。「何を教えたらよいか分からない」お母さんはわず かでした。上記の実践度で「規則正しい食事」や「家族 や友人と食事を楽しむこと」が下がっているのも「忙し ■食の教育上で困っていること N=342 MA (%) 1 2 3 4 5 特にない 忙しくて時間がない 自分の知識に自信がない 子供が興味を持たない 何を教えたらよいか分からない 38.6 26.0 24.0 17.8 3.5 くて時間がない」ことのあらわれかもしれません。 ◆「食育」という言葉の認知度 9 割以上 今、話題の「食育」という言葉を知っているお母さんは、「言葉も内容もよく知っている」(14.6%)、 「言葉は知っている、内容も何となく知っている」(53.5%)、「言葉は知っているが内容は知らない」 (23.4%)を合わせて9割を超えました。 「食育」という言葉はすっかり浸透しているようです。 「食育」のイメージとしては「栄養の知識」「味覚教育」「食材の知識」など、上記の「親として教えるべ きこと」で上位にランクしている内容とは異なるものがあげられています。「食育」という言葉からは「知 識」や「文化」という、日々の行動より学問的なことをイメージするのかもしれません。 ■「食育」という言葉の認知度 N=342 SA (%) 言葉も内容も 知らない8.5 言葉を認知、 内容は知らな い 23.4 ■「食育」のイメージ N=342 MA (%) 1 栄養の知識 59.9 2 味覚教育 52.0 3 食材の知識 50.9 4 食文化 47.1 5 子供の健康 46.8 6 食の安全性 44.7 7 食事のマナー 37.1 8 農業体験、収穫体験 26.6 言葉も内容も よく知ってい る 14.6 言葉を認知、 内容も何とな く認知53.5 6 さらに「食育」のためにあると良いものとしては「親子料 理教室」「農場、牧場体験」など、親子で体験できるイベン ト的なものが人気です。 「食に関して教えるべきこととそ の実践度」 (P.5 参照)でも「いろいろな味の体験」や「お 百姓さんへの感謝の気持ち」などは、実践しにくいことと されており、 「親子で一緒に体験する」食育イベントは今 後、お母さんたちの支持を獲得しそうです。 ■「食育」のためにあると良いもの N=342 MA (%) 1 親子料理教室 50.0 2 農場、牧場体験的なイベント 46.2 3 子供向け栄養知識の本 42.4 4 食材本来の味を楽しめる施設 37.4 5 子供料理教室 37.1 5 子供向けマナーブック 37.1 7 学校栄養士おすすめの夕食メニュー 29.2 情報あ・ら・か・る・と ★家庭における子供の食の教育についてのお母さんの声∼フリーアンサーから∼ わが子に食に関する教育をすることについて思うことを書いてもらったところ、342 人中 320 人 ものお母さんから回答がありました。回答率の高さからもお母さんたちの熱意がうかがえます。 「食育」の言葉をよく知っているお母さんも、全く知らないお母さんも、子供に伝えたいことがい ろいろあるのは一緒です。食事の楽しさ、大切さ、有り難さ、感謝の気持ちを教えたいという声 が多く聞かれましたが、その一方で時間がないと、残念がる声もありました。 以下、いくつかの声を紹介します。 ●「食べ物に困っている人もいるので、大切に無駄なく食べるように教えたい」 (30 代後半・専 業主婦・小4女子の母) ●「我が家の必須科目。大人になるために必要なこと。特別なこととは思わない。 」 (30 代前半・ フルタイム勤務・小 1 女子の母) ●「教えなければならないことが多いが、時間がとれない。 」(40 代前半・フルタイム勤務・小 6 男子の母) ●「余裕がなく、一緒に調理したりする機会がないが、そういう機会を増やしたい。」(30 代後 半・専業主婦・小2男子の母) ●「マナーや栄養は勿論ですが、何よりもまずは楽しく食事をすることが大切ではないかと考え ています。 」 (30 代後半・パート・アルバイト・小 1 男子の母) ●「食育は、教えようと言うのではなく、日常の生活や会話の中で自然に身につけてくれればと 思う。 」 (40 代前半・専業主婦・小 3 男子の母) ●「物があふれている時代なので、食べ物を大事に扱いなさいと教えることは難しいです。 」 (30 代後半・パート・アルバイト・小 5 女子の母) ●「正しい食生活、環境から精神的・肉体的にバランスのとれた成長につながると思う。家族で 食卓を囲むことで、お互いの心が満たされる。」 (40 代前半・専業主婦・小 4 女子の母) ●子供に教える前に親がしっかりとした食育についての知識を持たなくては、自信を持って子供 に対応できないと思います。 」(30 代後半・専業主婦・小 3 男子の母) 7 情報あ・ら・か・る・と <食育の原点は五感体験にあり> 食育・料理研究家 坂本廣子 最近、「食育」が知られるようになってきました。私が、「食育」という言葉に出会ったのは、30 年前になりま す。私の場合は、特別に「食育」を始めようとスタートしたわけではありませんでした。自分が子育てをする中 で、1 歳に満たない息子が包丁を持ちたがり、大根の皮などを切らせてみたところ、きちんと切ることができま した。「ちいさくてもできる」と思ったのがきっかけで、子供だけの子供のための料理教室を幼稚園から実施す ることにしました。教育は、親から子供にと考えられがちですが、子供に直接語りかけ、子供自身が体験して 考えることが重要だと考え活動していました。その教育の考え方は、体験を目的とした子供博物館を中心とし て、アメリカでは「hands on」として、すでに実践されている基本的なものと同じだったというわけです。 「食育」は、子供が体験の中から自分で発見し、覚えることが重要です。色々なことを教えなければと、言 葉でどんどんつめこんでいくことを「食育」と勘違いしてしまうのは心配なことです。大人は、言葉だけで教えこ む、したがわせるのではなく、子供に『体験させる仕掛け』を作ってあげればよいのです。 例えば、「もったいない」と怒っても、子供が「もったいない」を体験していなければ、理解できないのです。そ ういう意味で、「食育」は、世代間の異文化コミュニケーションでもあると思います。私が幼稚園で「料理教室」 を実施していたとき、新しい色紙を刻んで散らすお子さんがいました。「もったいないでしょ」と言っても、「また、 買えばいいじゃない」と言って聞かなかったのです。ある時、その教室で生地からパンを作りました。自分の手 で作り上げた自分のパンを、熱くて床に落としてしまいました。パンを拾い上げて、汚れを手ではらっている様 子をみて、「先生の分と代えてあげようか」と言うと、「いやだ、もったいないもん」と答えたのです。いくら言って も分からなかった「もったいない」が、自分で時間と手間をかけて、一生懸命自分のパンを作り、それが手元 からなくなることで「もったいない」が初めてわかったのです。 最近は、お母さんも子供も何かと忙しい時代になっています。そんな中で、子供に「食育」をするコツは、お 手伝いではなく子供に任せることです。1 品でも子供に任せます。忙しければ、作り方を教えるのは、時々でも、 お休みの日に集中してでもよいのです。子供が最初から最後まで自分が責任を持って作る体験をし、「あなた が作ってくれて美味しいね。ありがとう」と言ってあげれば子供はかけがえのない「自分」を発見し、自分の素 晴らしさ「自尊感情」が出てきます。火や包丁を使わせるのは一見危険に思えます。しかし、危険のさけ方、上 手な使い方を教えてあげれば、あとは、子ども自身で安全な使い方を身体で見つけていくので、逆にとても安 全なのです。 五感を使って体験できるのは、「食」だけです。「食育」とは、食を通じて本物の五感体験させることだと思い ます。すべてを大人に手伝ってもらうことなく自分の力で体験させることで、「達成感」を味わい、「できた」で、 もっと知りたい知識欲も生まれます。「あれはダメ、これは悪い」と強制的にしたがわせるのではなく、「食」を 通して、子供が自分で発見し考え、自信を持つ機会を作ってあげてほしいと思います。 ∼坂本廣子さんプロフィール∼ 神戸生まれの神戸育ち。「サカモトキッチンスタジオ」をベースに幼児の調理実習など実践的活動を 行っている。NHK 教育テレビ「ひとりでできるもん」の指導など、メディアにおける活動に加え、 商品開発、企画及び講演など多方面で活動中。キッズキッチン協会副会長も務めている。 著書に、「五感と食の絵本1 め・みみ・はな・くち・ゆびで感じる食べもの絵本」、他多数。 8