Comments
Description
Transcript
国家試験対策「生化学」実践正誤問題 解答・解説
国家試験対策「生化学」実践正誤問題 解答・解説 ver. 11(2018 年 10 月 24 日版) 1. 細胞 □□1. 細胞膜を構成する成分はタンパク質で、その中にリン脂質が混在する。( × ) 【正解】リン脂質で、その中にタンパク質が混在する □□2. 核内には染色体と核小体(仁)があり、染色体の約 40%は DNA である。( ○ ) 【ポイント】DNA は、①4 つの有機塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)、②単糖類(デ オキシリボース)、③リン酸から構成されている(図 1)。①〜③のセットのことをヌ クレオチドといい、ヌクレオチドからリン酸を除いたものをヌクレオシドという。 □□3. ミトコンドリアの構造は二重膜よりなり、内膜のクリステ上でエネルギー産生を行う。( ○ ) 【ポイント】ミトコンドリアの内謨は、マトリックス(可溶性分画)とクリステ(突出したひだ 状構造)からなる。前者には、TCA 回路(Tricarboxylic Acid Cycle、クエン酸回路)、 脂肪酸β酸化系が存在し、内膜の電子伝達系によって、エネルギーが産生される。 (表 1) □□4. リボソームは多くの加水分解酵素を含み、細胞内外の不要な物質を分解する作用がある。 ( × ) 【正解】リソソーム □□5. 粗面小胞体は、タンパク質を細胞外に運送する機能がある。( ○ ) 【ポイント】タンパク質分泌細胞でよく発達する粗面小胞体は、その表面に付着している リボソームで合成されたタンパク質を細胞外に運ぶ。 2. タンパク質・代謝 □□ 1. アミノ酸の基本構造は炭素、酸素、窒素の 3 種である。( × ) 【正解】炭素、酸素、窒素、水素の 4 種 【ポイント】基本構造とは主鎖の構造である。側鎖まで含めると硫黄も含まれて 5 種となる。硫 黄を含む代表的なアミノ酸はシステインとメチオニンである。 □□ 2. アミノ酸は両性電解質である。( ○ ) 【正解】アミノ酸は、分子中に塩基性のアミノ基(-NH2)と、酸性カルボキシル基(-COOH)をも っていて、両性電解質と呼ばれる。 □□ 3. アラニンは中性アミノ酸に属する。( ○ ) 【ポイント】アミノ酸は、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸に分けられる。(表 2)。 □□ 4. ヒスチジン、トリプトファン、メチオニンは必須アミノ酸である。( ○ ) 【ポイント】アミノ酸は、必須アミノ酸(食物から取り入れる必要があるアミノ酸)と、 非必須アミノ酸(必要量を体内でつくることができるアミノ酸)にも分けられる。 必須アミノ酸には、成人ではバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、スレ オニン、トリプトファン、リジン、フェニルアラニンの 8 種類がある。小児では、 さらにヒスチジンが加わり、9 種類である。 □□ 5. リジンが欠乏すると、精液中の精子の減少がみられる。( × ) 【正解】月経障害がみとめられる 【ポイント】精子の減少は、アルギニンの欠乏による。 □□ 6. タンパク質は、多数のアミノ酸がグリコシド結合をすることでつくられている。( × ) 【正解】ペプチド結合 【ポイント】グリコシド結合は、2 つの単糖間の結合である。 □□ 7. タンパク質は通常 1 万以上の分子量をもつものをいう。( ○ ) 【正解】分子量が数千以下のものをペブチド(またはポリペプチド)という。 □□ 8.タンパク質の三次構造は、イオン結合、疎水結合、S-S 結合の 3 つにより保たれている。( × ) 【正解】水素結合、イオン結合、疎水結合、ファンデルワールスカ、S-S 結合の 5 つ 【ポイント】S-S 結合は、ジスルファイド結合とも呼ばれる。 □□ 9. ミオグロビンは、1 本のポリペプチド鎖と 1 個のヘムから構成されている。( ○ ) 【ポイント】ヘモグロビンは 4 本のポリペブチド鎖(サブユニット)と 4 個のヘムから構成され ている。 □□ 10. タンパク質は平均 16%の窒素を含み、熱、強酸性、アルカリ性などにより、簡単に分解されて しまう。( × ) 【正解】変性を起こす 【ポイント】分解とは別の組成をもつ物質に変わることである。変性とは組成は変わらないが、 高次構造(立体構造)が変わる(崩れる)ことである。 □□ 11. 牛乳に含まれているカゼインの等電点は 4.6 である。( ○ ) 【ポイント】物質には、荷電量の(十)と(一)とが等しくなる点がある。これを等電点という。 血清アルプミンの等電点は 4.9、血清グロプリンは 5.4〜5.5 である。 □□ 12. ヘモグロビンは、単純タンパク質である。( × ) 【正解】複合タンパク質 【ポイント】ヘモグロビンはαサブユニット 2 個とβサブユニット 2 個の計 4 個のサブユニット からなる複合タンパク質である。タンパク質を組成から分類すると、アミノ酸だけ で構成される単純タンパク質と、アミノ酸以外の物質も構成成分となる複合タンパ ク質に分けられる。ヘモグロピンは鉄を含む色素タンパク質でもある(表 3) □□ 13. タンパク質の分子量は、ヘモグロビン>アルブミン>γグロブリン>フィブリノーゲンの順に 大きい。( × ) 【正解】ヘモグロビン<アルプミン<グロブリン<フブリノーゲンの順に小さい。 【ポイント】タンパク質の分子量は、ヘモグロビン 68,000、アルフミン 69,000、γグロブリン 90,000〜156,000、フィブリノーゲン 400,000 である。タンパク質の分子量は、1 を 1 Da(Da はダルトンと読む),1,000 を 1 kDa(kDa はキロダルトンと読む)と表記 してある場合がある。ヘモグロビンでは 68 kDa となる。 □□ 14. タンパク質はペプシンにより、アミノ酸に加水分解される。( × ) 【正解】ポリペプチド(ペプチド) 【ポイント】タンパク質は、タンパク質→ボリベプチド→ペブチド→アミノ酸の順に分解される。 ※ポリペプチドはアミノ酸が数十個から数百個のもの、ペプチドはアミノ酸が数個 から十数個のものをいう。 □□ 15.(ペプシン−タンパク賢−胃液)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】ペプシンは胃液中に含まれるタンパク質分解酵素で、前駆体であるペプシノーゲンが 胃液中の塩酸によって活性化させて活性型のペプシンになる。 □□ 16.(タンパク質−胆汁−トリプシン)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】膵液 【ポイント】トリプシンは、膵臓で前駆体であるトリプシノーゲンとして合成され、十二指腸か ら分泌される際に、十二指腸の膜にあるエンテロペプチダーゼによって活性化され て活性型のトリプシンとなる。活性化されたトリプシンは、トリプシノーゲンに作 用して相乗的に活性化させる。 □□ 17. 膵液から分泌されるトリプシンは、エキソペプチターゼと呼ばれている。( × ) 【正解】エンドペプチターゼ 【ポイント】トリプシンはタンパク質をポリペプチドにしたり、ポリペブチドをさらに小さなペ プチドにしたりするタンパク質分解酵素である。エンド(endo)とは「内部」を表 す言葉であり、よってエンドペプチターゼとはポリペプチド鎖の内部のペプチド結 合を加水分解する酵素のことである。また、エンド(exo)とは「外部」を表す言 葉であり、エキソペプチターゼはペプチド鎖の末端(N 末端あるいは C 末端)側の ペプチド結合からアミノ酸を 1 つずつ(または数個ずつ)切断する酵素である。 □□ 18. タンパク質は、最終的に腸液のジペプチターゼによりアミノ酸に加水分解され、吸収される。 ( ○ ) 【ポイント】ペブチターゼは、ポリペブチド→ペブチド→アミノ酸の順に分解する。 □□ 19. 成長期にある幼児や妊婦では、窒素平衡は負に傾いている。( × ) 【正解】正 【ポイント】窒素平衡とは、窒素の摂取量と排出量の関係のことである。窒素は動植物の成長に 必要な物質であり、人間の場合、幼児や妊婦などでは、窒素の摂取量が排出量より がん も大きい(摂取量>排出量)。これを正の窒素平衡という。一方、進行癌や熱性疾患 の患者や、タンパク質摂取量の少ない人では、摂取量は排出量よりも少ない(摂取 量<排出量)。これを負の窒素平衡という。 □□ 20. タンパク質の窒素は最終的に肝臓で尿素に合成され、血中に放出される。( ○ ) 【ポイント】尿素は窒素代謝の最終産物である。尿中窒素の 80〜90%は尿素である。 □□ 21. 肝臓は吸収されたアミノ酸を合成して、タンパク質をつくる。( ○ ) 【ポイント】遺伝子(DNA)の情報を伝令 RNA(mRNA)に転写し、その情報をもとに運搬 RNA(tRNA) がアミノ酸を運び、タンパク質がつくられる。 □□ 22. クレアチニンの尿中排泄量は筋肉組織量に比例する。( ○ ) 【ポイント】クレアチニンは筋肉組織と関係が深く、その前駆体であるクレアチンは、リン酸と 結合して、クレアチンリン酸として存在している。クレアチニンは、筋肉組織量に ほぼ比例して、尿中に排出される。クレアチニン係数は、成人男子では 20〜26、 女子では 14〜22 である(血中クレアチニン濃度は、成人男子で 0.7〜1.2mg/100mL、 女子では 0.5〜0.9mg/100mL である。) □□ 23. アンモニアは肝臓で分解されてクレアチンとなる。( × ) 【正解】尿素 【ポイント】アンモニアは肝臓で尿素回路による代謝を経て、尿素となる(図 2)。重度肝疾患で は、尿素回路が円滑に回らないので、尿素は減少し、その原料であるアンモニアは 増加し、肝性昏睡を起こす。 □□ 24. 尿酸は正常尿の窒素成分の大部分を占める。( × ) 【正解】わずかにすぎない 【ポイント】窒素成分で多い順に、尿素>クレアチニン>アンモニア>尿酸である。 □□ 25. 尿素は核酸の代謝産物として、尿中に排泄される。( × ) 【正解】タンパク質の代謝産物 □□ 26. タンパク質の分解産物は尿素である。( ○ ) 【ポイント】タンパク質の成分であるアミノ酸の一部が代謝されてアンモニアとなる。 アンモニアは尿素回路を経て尿素となる。 □□ 27. 尿素回路は、オルニチンとカルバモイルリン酸が結合してはじまる。( ○ ) 【ポイント】カルバモイルリン酸は、アンモニアと二酸化炭素とリン酸が結合したものである。 カルバモイルリン酸 □□ 28. フェニルアラニンやトリプトファンは、糖原性・ケト原性アミノ酸である。( ○ ) 【ポイント】糖原性アミノ酸は糖になるアミノ酸であり、ケト原性アミノ酸は脂肪酸やケトン体 になるアミノ酸である。両者の性質を有するアミノ酸は、フェニルアラニンやトリ プトファン以外にチロシンやイソロイシンなどがある。 □□ 29. グルタミン酸のアミノ基(-NH2)がピルビン酸と反応すると、ピルビン酸はアラニンとなる。 ( ○ ) 【ポイント】このような反応をアミノ基転移反応(アミノ酸のアミノ基の除去)という。この反 応には、アラニンアミノトランスフェラーセ、ALT)という転位酵素が働く。同様に、 グルタミン酸のアミノ基がオキサロ酢酸と反応すると、アスパラキン酸となる。そ の際の転移酵素はアスパラギン酸アミノトランスフェラ一ゼ(AST)である。かつて は、ALT はグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、AST はグルタミン酸 オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)と言われていたが、現在ではあまり使われ ない。 □□ 30. トリプトファンは、脱炭酸反応によりヒスタミンになる。( × ) 【正解】セロトニン 【ポイント】アミノ酸のカルボキシル基(-COOH)がはずれて、アミンが生成される反応を脱炭酸 反応という。同様の反応によって、チロシンはドーパミン、エピネフリンとなり、 ヒスチジンはヒスタミンになる。 □□ 31. γ-アミノ酪酸(GABA)はグリシンからの脱炭酸反応により生成されたものである。( × ) 【正解】グルタミン酸 【ポイント】グリシンの脱炭酸反応では、ヘムやプリンなどが生成される。 ヘムは 2 価の鉄原子とポルフィリンから成る錯体であ る。通常、2 価の鉄と IX 型プロトポルフィリンからな るプロトヘムであるフェロヘムのことをさすことが多 い。ヘモグロビン、ミオグロビン、ミトコンドリアの 電子伝達系(シトクロム)、薬物代謝酵素(P450)、カ タラーゼ、一酸化窒素合成酵素、ペルオキシダーゼな どのヘムタンパク質の補欠分子族として構成する。ヘ モグロビンは、ヘムとグロビンから成る。ヘムの鉄原 子が酸素分子と結合することで、ヘモグロビンは酸素 ヘム b の構造 を運搬している。 □□ 32. アルカプトン尿症は、フェニルアラニン代謝異常により発生する。( × ) 【正解】チロシン代謝異常 【ポイント】フェニルアラニン代謝異常により、フェニルアラニンの代謝物であるフェニルケトン 体が尿中排泄される(フェニルケトン尿症)。アルカプトン尿症はチロシン代謝異常で、 ホモゲンチジン酸が尿中排泄される。 □□ 33. 生体内では、1日に体重 l kg あたり約 l g のタンパク質を合成している。( ○ ) 【ポイント】成人男子のタンパク質の合成量は、1日当たり 60〜70 g になる。 □□ 34. タンパク質の合成は、身体の各組織のうち、筋肉で最もさかんに行われている。( × ) 【正解】小腸粘膜 【ポイント】タンパク質の合成活発度は、小腸粘膜>膵臓>肝臓>精巣>心臓>脳>筋肉の順で ある。ただし、量的には肝臓で最も多く合成される。 □□ 35. 溶血性黄疸は、血中に遊離したヘモグロビンからつくられたビリルビンに対する肝臓処理能の低 下によって起こる。( × ) 【正解】過剰のヘモグロビンからつくられたビリルビン量が肝臓処理能を上回ることによって 【ポイント】溶血性黄疸は、肝臓処理能が低下することが原因ではない。ヘモグロピンはヘムと グロビンに分離されてそれぞれ分解されていき、ヘムが分解されてビリルビンにな る。ビリルビンは、抗酸化作用など生体防御にかかわる化合物である。 □□ 36. ビリルビンの 80〜85%はヘモグロビンに由来する。( ○ ) 【ポイント】ビリルビンはヘムの代謝産物である。したがって、ヘムをもつタンパク質が分解さ れることでビリルビンが産生される。ヘムをもつタンバク質として、ヘモグロビン、 ミオグロビン、チトクロムなどがあるが、ヘムタンパク質のうち、80〜85%はヘモ グロビンである。 □□ 37. 新生児生理的黄疸は、直接型ビリルビンが増加する。( × ) 【正解】間接型ビリルビン 【ポイント】ビリルビンは、ジアゾ反応により、直接型と間接型とに分けられる。また、水溶性 の抱合型ビリルビンと、難溶性の遊離型ビリルビンにも分けられ、直接型が抱合型 に、間接型が遊離型にほぼ相当する。遊離型より抱合型の方が胆汁成分として排泄 されやすい性質がある。黄疸は血清ビリルビン値が高くなることで生じる。新生児 では肝機能が十分でないので、抱合型(直接型)の生成が少ない。 □□ 38.(ビリルビンの過剰生成−直接ビリルビンの増加−新生児黄疸)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】間接ビリルビンの増加−溶血性黄疸 □□ 39.(ビリルビンの抱合異常−問接ビリルビンの増加−溶血性黄疸)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】新生児黄疸 【ポイント】ビリルビンは、肝臓内で UDP グルクロン酸と反応してグルクロン酸抱合を起こす。 新生児黄疸は、このグルクロン酸抱合が低下することが主たる原因である。 □□ 40.(肝外胆管の閉塞−問接ビリルビンの増加−胆管癌)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】直接ビリルビンの増加 【ポイント】肝外胆管の閉塞により、排泄されるべき直接ビリルビンが体内に増加してしまう。 □□ 41. 母乳に含まれるタンパク質のカゼインの割合は乳精タンパク質より少ない。( ○ ) 【ポイント】母乳および牛乳に含まれるタンパク質から、カゼインを差し引いた残りのタンパク 質を乳精タンパク質という。ラクトアルブミン、ラクトフェリン、IgA などがそれに あたる。牛乳ではカゼインの方が多いが、母乳では乳精タンパク質の方が多い。 □□ 42. 初乳は高濃度の lgG を含む。( × ) 【正解】IgA 【ポイント】IgG は胎盤通適性で、出生時に母体から引き継がれている。母乳に含まれる免疫グ ロブリンは、分泌性の IgA である。 しょう □□ 43. 血清からフィブリノーゲンを除いたものが血 漿 である。( × ) 【正解】血漿からフィブリノーゲンを除いたものが血清である 【ポイント】全血を放置すると、フィブリノーゲンはフィブリンとなり、血球成分と血餅をつく る。その残りの液体成分を血清という。抗凝固剤を添加した全血では、血球成分は 血餅とならないので、液体成分にはフィブリノーゲンが含まれる。 □□ 44. 血清タンパク電気泳動で、抗体はγ分画に存在する。( ○ ) 【ポイント】電気泳動で血清タンバウは 5 つの分画に分離され、抗体(免疫グロブリン)は移動 度の最も遅いγ分画に存在する。 □□ 45. 血清タンパクのうちではアルプミンが最も多い。( ○ ) 【ポイント】血清タンパクの 80%以上は肝臓で合成され、血中に分泌されるタンパク質である。 そのうちのほとんどがアルブミンであり、膠質浸透圧の維持などに役立っている。 □□ 46. 血清中の逸脱酵素の測定は臨床検査に用いられる。( ○ ) 【ポイント】細胞内に存在する酵素で、細胞が壊死して細胞外に漏れ出てくる酵素を逸脱酵素と いう。代表的な逸脱酵素に、乳酸脱水素酵素(LDH)、アスパラギン酸アミノトラン スフェラーゼ(AST)、クレアチンキナーゼ(CK)などがあり、各種病態の指標とな っている。 3. 糖質・代謝 □□ 1. 糖質は炭素、酸素、水素からなる化合物で、エネルギー代謝の主役を果たしている。( ○ ) 【ポイント】糖質の一般式は CnH2nOn、すなわち Cn(H2O)n と表わされることからも、炭素と水から なる化合物であり、このことから糖質は炭水化物とも呼ばれる。 □□ 2. ブドウ糖(グルコース)は単糖類で、炭素数から五炭糖に属する。( × ) 【正解】六炭糖 【ポイント】単糖の炭素原子の数は 3〜6 であり、それぞれ、トリオース(三炭糖)、テトロース (四炭糖)、ペントース(五炭糖)、ヘキソース(六炭糖)と呼ばれる。五炭糖類に はリボース、アラビノース、キシロースなどがある。 □□ 3. ブドウ糖と果糖は、単糖類である。( ○ ) 【ポイント】糖質は、①単糖類、②二糖類、③複数の単糖が縮合したオリゴ糖類、④多数の単糖 が縮合した多糖類に分けられる。単糖類(六炭糖)にはブドウ糖(グルコース)、果 糖(フルクトース)、脳糖(ガラクトース)などがある。 □□ 4. ブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に貯蔵され、必要に応じてブドウ糖となり、組織に補給 される。( ○ ) 【ポイント】血糖値が低下すると、グリコーゲンはグルカゴンやアドレナリンなどのホルモンの 作用によりブドウ糖に分解され、結果として血糖が上昇する。 □□ 5. マンノースは卵アルブミンを構成する単糖類である。( ○ ) 【ポイント】マンノースはマンナンという多糖類のかたちで植物の種子の中にある。また、卵ア ルブミンや乳アルブミンなどの糖タンパク質の糖鎖の構成成分でもある。 □□ 6. ブドウ糖は構造中にアルデヒド基をもち、果糖はケト基をもっている。( ○ ) 【ポイント】アルデヒド基(-CHO)をもつ単糖類をアルドース、ケト基(-C=O)をもつものをケ トースという。 □□ 7. 光学的異性体で天然に存在する糖の多くは D 型である。( ○ ) 【ポイント】異性体とは、同じ分子式で表わされるが構造の異なる物質のことである。ある物質 に対して、鍍に写した構造をもつ異性体を、光学的異性体(鏡像異性体もしくは体 掌体)という。異性体のうち、アルデヒド基あるいはケト基から遠いほうの端の立 体構造が、D-グリセルアルデヒドと一致するものを D 型といい、L-グリセルアルデ ヒドと一致するのを L 型という。 □□ 8. ブドウ糖、果糖、ガラクトースなどは、酵母の作用によりアルコールとなる。( × ) 【正解】マンノース 【ポイント】ブドウ糖、果糖、マンノースは、エタノール発酵により、アルコールと CO2 となる。 ガラクトースは、酵母では発酵作用を受けにくい。 □□ 9. デキストリンは、デンプンをアミラーゼで部分的に加水分解した二糖類である。( × ) 【正解】多糖類 □□ 10. ショ糖は二糖類である。( ○ ) 【ポイント】二糖類は、2 つの単糖がグリコシド結合で結合した糖類である。ショ糖はスクラー ゼにより、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解される。 □□ 11. 麦芽糖は、ブドウ糖と果糖からなる二糖類である。( × ) 【正解】2 分子のブドウ糖 【ポイント】このほかに、代表的な二糖類にはショ糖(ブドウ糖と果糖)および乳糖(ブドウ糖 とガラクトース)がある。 □□ 12. ショ糖、麦芽糖、乳糖などはオリゴ糖である。( ○ ) 【ポイント】オリゴ糖は 2〜10 の単糖がグリコシド結合した物質である。また、オリゴ糖は還元 基(アルデヒド基)の有無により、還元性と非還元性に大別される。麦芽糖や乳糖 は還元性オリゴ糖に属し、ショ糖は非還元性オリゴ糖に属する。 □□ 13. 乳糖は牛乳には 4.9%含まれているが、母乳には含まれていない。( × ) 【正解】母乳には乳糖が 7.5%含まれている。 □□ 14. 乳糖は乳酸菌の作用により乳酸になる。( ○ ) 【ポイント】乳酸菌による乳酸発酵によって乳糖(ラクトース)は乳酸となる。 □□ 15. デンブンは構造上、枝鎖のないアミロペクチンと、枝鎖の多いアミロースからなっている。 ( × ) 【正解】枝鎖のないアミロースと、枝鎖の多いアミロペクチンからなっている □□ 16. グリコーゲンは、単糖がペプチド結合で連なった多糖類である。( × ) 【正解】グリコシド結合 【ポイント】ペブチド結合はタンパク質中のアミノ酸同士の結合である。 □□ 17. グリコーゲンは、筋肉中や肝臓に貯蔵される多糖類である。( ○ ) 【ポイント】成人の身体のグリコーゲン量は、筋肉では約 1%、肝臓では 5〜6%である。 □□ 18. グリコーゲンの分解産物はグリセリンである。( × ) 【正解】グルコース 【ポイント】グルコースは解糖系、TCA 回路などを経て、最終的に CO2 と H2O となる。中間物質で あるピルビン酸は、酸素が十分であれば、TCA 回路を介して CO2 と H2O に分解される。 酸素が不+分であれば、解糖系により乳酸に分解される。 □□ 19. 筋肉中のグリコーゲンは、血糖の維持に用いられる。( × ) 【正解】には利用されない 【ポイント】筋肉中には、グリコーゲンからグルコースを産生させる酵素がないので、グリコー ゲンはエネルギー産生にのみ利用される。 □□ 20. セルロースはブドウ糖から構成されていて、消化酵素により分解され、吸収される。( × ) 【正解】消化酵素の作用は受けず、吸収もされない 【ポイント】セルロースは植物細胞壁の構成成分であり、食物繊維の多くを占める。人間はセル ロースを消化する酵素(セルラーゼ)をもたないが、草食動物は腸内細菌のもつセ ルラーゼによってセルロースを分解し、ブドウ糖として吸収することができる。 □□ 21. ペクチンは肝臓に多く存在する多糖類である。( × ) 【正解】ヘパリン 【ポイント】ヘパリンは肝臓、肺、脾臓などに存在し、血液の凝固を阻止する作用がある。ペク チンは植物の根茎や果実に多<存在する多糖類である。ペクチンもセルロースと同 様に人間の体内で消化されないので、食物繊維として注目されている。 □□ 22. デンプンは唾液や膵液のアミラーゼによってグリコーゲンに変えられて、腸から吸収される。 ( × ) 【正解】麦芽糖に加水分解され、さらにマルターゼの作用によってブドウ糖にまで分解されて 【ポイント】アミラーゼはテンブンを麦芽糖(マルトース)に分解する酵素である。マルターゼ は麦芽糖をブドウ糖に分解する酵素である。 □□ 23.(マルターゼ−デンプン−唾液)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】麦芽糖-腸液 【ポイント】アミラーゼはテンブンを麦芽糖に分解する酵素である。マルターゼは麦芽糖をブド ウ糖に分解する酵素である。 □□ 24.(唾液−ジアスターゼ)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】ジアスターゼはアミラーゼの俗称だが、麦芽から調製したアミラーゼの意味もある。 唾液でのアミラーゼはプチアリンとも呼ばれる。 □□ 25. 麦芽糖、乳糖、ショ糖は単糖類であるので、そのままの形で腸から吸収される。( × ) 【正解】二糖類であるので、そのままの形では吸収されない 【ポイント】二糖類は単糖に分解され、小腸から吸収される。 □□ 26. 糖質は胃から吸収される。( × ) 【正解】小腸から 【ポイント】栄養素の大部分は、小腸で吸収される。 □□ 27. 解糖とは、ブドウ糖がピルビン酸あるいは乳酸になる過程のことで、ミトコンドリア内で行 われる。( × ) 【正解】細胞質内 □□ 28.(炭水化物−胃液−プチアリン)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】唾液 □□ 29.(ブドウ糖−胃液−ペプシン)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】タンパク質 □□ 30. 糖質の消化・吸収には胆汁が必要である。( × ) 【正解】脂質 【ポイント】胆汁は脂肪の消化を助け、吸収を促進する。食餌性脂質という油と消化液という水 とをなじませてくれるのが、胆汁に含まれる胆汁酸である。 □□ 31. 糖質の消化酵素はアミラーゼである。( ○ ) 【ポイント】アミラーゼは、テンプンやグリコーゲンを麦芽糖まで分解する酵素である。 □□ 32. 嫌気性の解糖では、1 分子のブドウ糖から 1 分子の乳酸ができる。( × ) 【正解】2分子の乳酸 □□ 33. 嫌気性の解糖では、好気性の解糖よりもエネルギー産生の効率がよい。( × ) 【正解】悪い 【ポイント】嫌気性の解糖では、エネルギーの産生量は少ない。嫌気性の解糖とは、酸素を使わ ずにエネルギーを産生することで、ブドウ糖からピルビン酸を経て乳酸を生成する経路 がそれである。好気性の解糖とは、酸素を使ってエネルギーを産生することで、ピルビ ン酸か入る TCA 回路がそれである。(図 3) ※クエン酸回路の覚え方 アセチル CoA→クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→スクシニル CoA→コハク酸→フマル酸 →リンゴ酸→オキサロ酢酸 【完全版】 焦って食え!急いで食え!けどすぐには怖くて踏まれたリンゴ置き去ろう 【簡易版(ポイントのみ)】 おくいあさこ 不倫♪ □□ 34. ペントースリン酸回路は、肝臓、副腎髄質、卵巣などで活発に行われている。( ○ ) 【ポイント】ペントースリン酸回路は、解糖系の途中から分かれて、リボース5リン酸や NADPH をつくり、再び解糖系に戻る過程のことをいう。この反応は精巣、赤血球でも活発に行 なわれている。(表 4) □□ 35. 好気性の解糖では、ブドウ糖は炭酸ガスと水とに分解される。( ○ ) 【ポイント】好気性では、ピルピン酸は TCA 回路に入り、CO2 と H2O に分解される。 □□ 36. TCA 回路はミトコンドリア内に存在する。( ○ ) 【ポイント】TCA 回路(クエン酸回路)は酸素を必要とする反応で、アセチル CoA とオキサロ酢 酸が反応し、クエン酸→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸などを経て、再びオキサロ酢酸 となる回路である。その過程で補酵素(NADH と FADH2)や H20、CO2 が生じる。 □□ 37. TCA 回路で生成された FADH2 は、電子伝達系を介し、3 分子の ATP をつくる。( × ) 【正解】2 分子の ATP 【ポイント】NADH からは 3 分子の ATP が生じる。 □□ 38. 身体のなかで酸素の供給が十分に行われると、ブドウ糖は直接 TCA 回路に入り、ATP が生成 される。( × ) 【正解】ブドウ糖は細胞質内の解糖系でピルビン酸に分解されてからミトコンドリア内の TCA 回路に入り □□ 39. 糖原性アミノ酸はクエン酸回路(TCA 回路)に入る。( ○ ) 【ポイント】糖原性アミノ酸とは糖になりうるアミノ酸のことで、主に TCA 回路の中間で生じて いるアミノ酸である。フマル酸、コハク酸、リンゴ酸などがある。 □□ 40. 1 分子の NADH が電子伝達系で酸化されると、2 分子の ATP が生成される。( × ) 【正解】3 分子の ATP 【ポイント】FADH2 からは 2 分子の ATP が生成される。 □□ 41. 臓器によってブドウ糖から ATP が生成される量は異なる。( ○ ) 【ポイント】1 分子のブドウ糖から脳・筋肉では 36 分子の ATP が、心臓・肝臓・腎臓では 38 分 子の ATP が生成される。 □□ 42. エタノールはアルコール脱水素酵素により、ホルムアルデヒドとなる。( × ) 【正解】アセトアルデヒド 【ポイント】体内では、エタノールはアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドとなり、ア セトアルテヒドはアルデヒド脱水酵素により酢酸になる。アセトアルデヒドは、細胞障 害や組織障害を起こす猛毒の物質である。 □□ 43. アドレナリンは肝臓での糖新生を促進する。( × ) 【正解】糖質コルチコイド(コルチゾン) 【ポイント】糖新生とは、乳酸、ビルビン酸、アミノ酸などからブドウ糖ができる反応である。 この経路の大部分は、解糖系と同じ酵素が触媒する逆反応過程である。肝臓や腎臓で活 発に行われる。 □□ 44. 肝臓は蓄積したグリコーゲンを必要に応じて分解し、ブドウ糖をつくる。( ○ ) 【ポイント】ブドウ糖への分解には、グルカゴンやアドレナリンなどのホルモンが関与する。 □□ 45. 肝臓はグリコーゲンの合成、貯蔵、分解を行う。( ○ ) 【ポイント】グリコーゲンの合成は、インスリンにより促進される。 □□ 46. インスリンやグルカゴンは肝臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる。( × ) 【正解】肝臓から分泌されるホルモンで、インスリンは血糖値を下げ、グルカゴンは上げる作 用がある。 【ポイント】グルカゴンは筋肉内のグリコーゲンの分解を促進し、血糖値を上昇させる働きがあ る。 □□ 47. グルカゴンは筋肉内のグリコーゲンの分解を促進し、血糖値を上昇させる働きをする。( × ) 【正解】肝臓内の □□ 48. インスリンは、肝臓におけるタンパク質からの糖新生を抑制する作用がある。( ○ ) 【ポイント】インスリンは、筋肉・脂肪組織へのブドウ糖の取り込み、肝臓でのブドウ糖の分解、 グリコーゲン合成を促進する。このことによって、血糖値が下がる。 □□ 49. 血糖値を上昇させるホルモンに、サイロキシン、成長ホルモン、ノルアドレナリンなどがある。 ( ○ ) 【ポイント】ノルアドレナリンにも血糖上昇作用がある。しかし、アドレナリンと比べるとその 作用は小さい。 □□ 50. ブドウ糖は体内で燃焼するとき、1 g につき l kcal の熱を発生する。( × ) 【正解】4 kcal 【ポイント】食品のエネルギーは三大栄養素(タンパク質、脂質、糖質)から発生し、タンパ ク質および糖質は 1 g で約 4 kcal、脂質は 1 g で約 9 kcal のエネルギーが発生する。 この数値をアトウォーター係数という。 □□ 51. 空腹時の血糖値の正常値は、約 180〜200 mg/dL である。( × ) 【正解】約 80〜200 mg/dL □□ 52. インスリン依存性糖尿病は、40 歳以上で発病する。( × ) 【正解】若年者に多い 【ポイント】糖尿病にはインスリン依存性糖尿病(IDDM、1 型)と非依存性糖尿病(MIDDM、2 型)がある。前者は小児期あるいは 10 歳代に発症することから、若年発症型糖尿病と もいわれる。 □□ 53. 糖尿病では、自律神経障害は少ない。( × ) 【正解】自律神経障害がある 【ポイント】糖尿病の自律神経障害として、起立性低血圧、便通障害、膀胱機能障害、インポ テンツなどがある。 けいれん □□ 54. 低血糖陛昏睡では、痙攣はまれである。( × ) 【正解】自律神経障害があるしばしば痙攣を生じる 【ポイント】そのほかに、意識障害や昏睡などかある。 □□ 55. 糖尿病性ケトアシドーシスでは、脱水を伴う。( ○ ) 【ポイント】血液中のケトン体濃度が高くなる状態をケトーシスという。また、血液が酸性に 傾く状態をアシドーシスといい、両者が同時に起こる状態をケトアシドーシスという。 ケトアシドーシスでは、脱水により意識障害や昏睡をきたすことがある。糖尿病では、 インスリン不足のためブドウ糖の分解ができず、脂肪を過剰に分解してしまう。これ により、陰イオンであるケトン体を多量に生成し、アシドーシスを起こす。血液がア ルカリ性に傾く状態のことはアルカローシスという。 □□ 56. 糖尿病でケトン体が著しく増加すると、代謝性アシドーシスになる。( ○ ) 【ポイント】糖尿病の場合、アセチル CoA からケトン体が著しく生成され、血液が酸性に傾い てアシドーシスになる。このような代謝異常が原因で引き起こされるアシドーシスを 代謝性アシドーシスといい、呼吸異常によるアシドーシスを呼吸性アシドーシスとい う。 □□ 57. 食事摂取が不十分なときは、筋肉から糖が放出される。( × ) 【正解】肝臓 【ポイント】肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが分解される。 □□ 58. 母乳に含まれる糖質の主成分は乳糖である。( ○ ) 【ポイント】乳糖は二糖類で、小腸で加水分解を受けてグルコース(ブドウ糖)とガラクトース (脳糖)となって吸収される。 □□ 59. 糖質は大部分がエネルギー源として利用されるが、一部肝臓で脂肪に変換される。( ○ ) 【ポイント】余剰の糖質は、まずグリコーゲンとして肝臓や筋組織に貯蔵される。それ以上の 余剰の糖質は、解糖系を介してトリグリセリドの合成に使用される。これが脂肪肝の 成因である。 □□ 60. 食物中の糖質は、80〜90%がデンプンである。( ○ ) 【ポイント】食物中の糖質には各種あり、穀類として摂取する糖質は主に多糖類であるデンプ ンである。それ以外に消化できない糖質として、繊維質や調味料に含まれる合成糖な どがある。 4. 脂質・代謝 □□ 1. 脂肪の基本的な構造は、脂肪酸とアルコールがエステル結合したものである。( ○ ) 【ポイント】一般的な脂肪酸の構造は R-COOH(R:アルキル基、COOH:カルボキシル基)で表さ れる。脂質の主なアルコールはグリセロールで、アルコールの-OH と脂肪酸の-COOH か ら水が取れて(脱水反応によって)できた結合をエステル結合( C O )という。 O □□ 2. 中性脂肪はグリセロールと脂肪酸との化合物である。( ○ ) 【ポイント】中性脂肪は、グリセロールと脂肪酸が 1:3 の分子比で結合している。よって、 脂肪酸は別名をトリグリセリド(“トリ”はラテン語で“3”を表す)という。 □□ 3. オレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸などは、不飽和脂肪酸である。( ○ ) 【ポイント】脂肪酸には、飽和脂肪酸(脂肪酸の炭素鎖中に二重結合をもたない)と不飽和脂肪 酸(二重結合をもつ)がある。飽和脂肪酸は動物性脂肪(バターやラード等)に多く含 まれ、不飽和脂肪酸は植物性脂肪(植物油等)に多く含まれる。 □□ 4. リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸は不飽和脂肪酸である。( ○ ) 【ポイント】これらの脂肪酸はビタミン F ともよばれ、食事で摂取しなければならない必須 脂肪酸である。 □□ 5. リノール酸とリノレン酸は、生体内で互いに変換する。( × ) 【正解】変換しない 【ポイント】リノレン酸はリノール酸から合成される。 □□ 6. 天然に存在する脂肪のほとんどは、モノアシルグリセロールとして存在する。( × ) 【正解】トリアシルグリセロール 【ポイント】中性脂肪であるトリアシルグリセロールはトリグリセリドともいう。トリアシルグ リセロールとは、グリセロールにアシル基(-O-C0-、エステル結合ともいう)を介して 脂肪酸が 3 個結合した化合物のことである。なお、モノ(mono-)とはラテン語で「1」 を、ジ(di-)は「2」を、トリ(tri-)は「3」を、ポリ(poly-)は「多数」を表わす。 □□ 7. 動物性脂肪にはリノール酸などの必須脂肪酸などが多く、血清コレステロールを減少する。 ( × ) 【正解】植物性脂肪 □□ 8. 貯蔵脂肪は主として中性脂肪からなっている。( ○ ) 【ポイント】中性脂肪は、哺乳動物にとってエネルギー源としての貯蔵体である。 □□ 9. リン脂質は細胞膜の主な構成成分である。( ○ ) 【ポイント】細胞膜の主要な構成成分はリン脂質である。リン脂質のリン酸と塩基の部分は親 な じ 水性(水と馴染む性質)、脂肪酸の部分は疎水基(水をはじく性質)であり、細胞膜は リン脂質が細胞膜の外側に、脂肪酸の部分が内側に配置する“脂質二重膜”を形成し ている。その細胞膜上にタンパク質があり(膜タンパク質とよばれる)、それぞれのタ ンパク質事に受容体やポンプ等の機能をもっている。(表 5) 細胞膜の構造 □□10. 脳や神経組織に多いリン脂質は、複合脂質に属する。( ○ ) 【ポイント】リン脂質とは、分子内にリン酸基(-PO3)をもつ脂質のことである。よって、リン 脂質は複合脂質に属する。複合脂質には分子内に糖をもつ糖脂質もある。(表 5) リン脂質のひとつ、レシチン(ホスファチジルコリン)の構造式。 2 種類の脂肪酸(オレイン酸・パルミチン酸)、グリセロール、リン酸・ コリン(塩基成分)が複合的に結合した構造をもつ。 □□ 11. 三大栄養素のうち、胃から十二指腸に移送され る時間の最も長いものは脂肪である。( ○ ) 【ポイント】脂肪は水に溶けないため、体内での輸送には時間がかかる。胃から十二指腸へ運 ばれる速さは、糖質>タンパク質>脂肪の順である。 □□ 12. 脂肪は酸化に先立ち、脂肪酸とグリセリンに分解される。( ○ ) 【ポイント】中性脂肪は、脂肪酸とグリセリンに分解され、脂肪酸はβ酸化によってエネルギ ーに変換される。 □□ 13. ステアプシンによる脂肪の分解は、胆汁中の胆汁酸の作用によって促進される。( ○ ) 【ポイント】胆汁酸は脂肪を乳化し、ステアプシン(膵臓リパーセ)によって消化を助ける作用 がある。 □□ 14. 食物中のコレステロールは、そのままの形で腸管から吸収され血中へ入る。( ○ ) 【ポイント】食物から摂取したコレステロールはほとんどが遊離型(他のものが結合していない) であるため、多くの場合でそのまま小腸から吸収される。 □□ 15. 中性脂肪(トリグリセリド)は膵液のリパーゼなどにより、モノグリセリドや脂肪酸に分解さ れて腸から吸収される。( ○ ) 【ポイント】1 分子のグリセロールに 1 分子の脂肪酸が結合したものをモノグリセリドという。 □□ 16. 小腸で吸収された脂肪の大部分は、門脈を経て肝臓に運ばれる。( × ) 【正解】毛細リンパ管 【ポイント】脂質は水に溶けないため、脂質はタンパク質と結合し、リポタンパク質として血 中に入る。リポタンパク質は巨大な粒子であるので、毛細血管である門脈には入れな い。その結果、リポタンパク質はリンパ管→胸管→鎖骨下静脈を経て肝臓に運ばれる。 □□ 17.(リパーゼ−脂肪−膵液)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】リパーゼは脂肪中のエステル結合を加水分解する酵素である。膵リパーゼはステア プシンとも呼ばれる。 □□ 18. 脂肪は胃液の分泌と胃の運動を増強する。( × ) 【正解】低下させる 【ポイント】脂肪を摂取すると小腸粘膜から消化管ホルモンであるセクレチン(ペプチドホ ルモン)が分泌される。セクレチンの作用のひとつに胃液の分泌抑制がある。 □□ 19. リパーゼはタンパク質の消化吸収を促進する。( × ) 【正解】脂肪 【ポイント】リパーゼは膵液中の脂肪分解酵素である。タンパク質の消化吸収はプロテアーゼ によって促進される。 □□ 20. 細胞内で脂肪酸は、TCA 回路によりアセチル CoA に代謝されて利用される。( × ) 【正解】β酸化 【ポイント】β酸化によって脂肪酸から炭素が 2 個ずつ切断されてアセチル CoA が生じる。β 酸化によって生じるアセチル CoA の数は脂肪酸の炭素鎖の長さによる。 □□ 21. ケトン体は肝臓で生成され、筋肉で利用される。( ○ ) 【ポイント】ケトン体とはβ酸化の過程で生じるアセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン等 の総称で、主に肝臓や腎臓で生じる。ケトン体が血中や尿中に過剰に生じる症状をケ トン症(ケト-シス)という。ケトン体は酸性物質なので、さらに量が多くなると血液 が酸性になる重篤なケトアシドーシスを引き起こす。 □□ 22. 脂肪の酸化が不完全なとき、ケトン体を生じ、アシドーシスとなることがある。( ○ ) 【ポイント】糖尿病患者は糖の摂取が制限されるため、活動のエネルギーを脂肪酸に依存する ことになる。よって重症の糖尿病になると、脂肪酸のβ酸化によってつくられたアセ チル CoA からケトン体が異常に合成されることになり、代謝性アシドーシスとなる。 図. β酸化の概略図(左)と脂肪酸の構造変化(右) (どちらの図も同じことを説明している) □□ 23. 脂肪の不完全酸化物であるアセト酢酸、アセトン、3-ヒドロキシ酪酸が体内に増加した状態をケ トン症という。( ○ ) 【ポイント】血中でケトン体が増加する原因は、TCA 回路に必要な糖質の供給が不足すること による。 □□ 24. アドレナリンは、脂肪の合成を増加させるホルモンである。( × ) 【正解】分解 【ポイント】脂肪の合成を増加させるホルモンはインスリンである。分解を促進するホルモンは アドレナリン、グルカゴン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモン等である。 □□ 25. 生体内で、脂肪酸はブドウ糖からも合成される。( ○ ) 【ポイント】脂肪酸は糖質代謝の中間代謝物でもあるアセチル CoA から合成される。 □□ 26. 肝臓は脂肪酸の分解やコレステロールの生成を行う。( ○ ) 【ポイント】肝臓には多くの重要な機能があるが、脂肪酸の分解とコレステロールの合成は特 に重要である。 □□ 27. 体内におけるコレステロールの代謝産物の主なものとしては、ステロイドホルモンや胆汁酸が ある。( ○ ) 【ポイント】ステロイドホルモンには、性ホルモンのプロゲステロン、副腎皮質ホルモンのコ ルチゾールやアルドステロン等がある。ビタミン D(エルゴカルしフェロールやコレ カルシフェロール)もコレステロールから合成される。 □□ 28. 血漿中に存在する脂質は、コレステロール、中性脂肪、リン脂質の 3 つである。( × ) 【正解】分解コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の 4 つ けっしょう 【ポイント】 血 漿 とは、血液から赤血球、白血球、血小板の有形成分を除いた液体成分をいう。 血液の約半分(55%)の容積を占める。 □□ 29. コレステロールは、大腸から吸収されて血中に入る。( × ) 【正解】小腸 □□ 30. 脂肪酸、コレステロール、ステロイドなどは誘導脂質である。( ○ ) 【ポイント】誘導脂質とは、単純脂質や複合脂質が酵素等による加水分解を受けて生じる脂 質のことである。 □□ 31. コレステロールは神経組織に多く含まれるが、そのなかでも脳、血液、胆汁、肝臓に多く含まれ ている。( ○ ) 【ポイント】コレステロールは、脳に約 30g、血液中に約 10g、肝臓および胆汁に約 5g 程度 含まれる。 □□ 32. コレステロールは肝臓に蓄積して、脂肪肝の原因となる。( × ) 【正解】中性脂肪(トリグリセリド) 【ポイント】脂肪肝では、グリセロールが補酵素である NADH により最終的にトリグリセリド となり、肝臓に蓄積することによって起こる。また、コリンやシノシットなどのビタ ミン B 群、アミノ酸であるメチオニンが不足した場合や、ビタミン B 群であるリボフ ラビンやビオチン(ビタミン H とよばれることもある)を過剰摂取した場合にも脂肪 肝は起こる。 □□ 33. 胆汁中には脂肪分解酵素(リパーゼ)が多く含まれている。( × ) 【正解】膵液 【ポイント】膵液中には多くの消化酵素(トリプシン、キモトリプシン、アミラーゼ、リ パーゼ等)が含まれる。 □□ 34. 胆汁酸塩は脂肪をグリセロールと脂肪酸とに分解する。( × ) 【正解】リパーゼ 【ポイント】胆汁酸塩は、脂肪の消化・吸収を間接的に促進する。 □□ 35. 胆汁酸は、肝臓でコレステロールから生成される。( ○ ) 【ポイント】胆汁には、胆汁酸、コレステロール、脂肪酸、ビリルビン(胆汁色素)の成分が含 おうだん まれる。高ビリルビン血症では、ビリルビンが眼球や皮膚等の組織に沈着して黄疸の所 見が得られる。 □□ 36. コレステロールは水によく溶ける。( × ) 【正解】溶けにくい 【ポイント】コレステロールは疎水性の化合物であり、血液等を移動する際にはタンパク質と結 合してリポタンパク質となる必要がある。 □□ 37. コレステロールは中性脂肪に含まれる。( × ) 【正解】誘導脂質 【ポイント】脂質には、単純脂質(中性脂肪など)、複合脂質(リン脂質、糖脂質など)、誘導 脂質(コレステロール、胆汁酸、性ホルモンなど)がある。 □□ 38. コレステロールは胆汁中に排泄される。( ○ ) たんのう 【ポイント】胆汁の中のコレステロールは胆汁酸により分散安定化されているが、胆嚢で胆汁 が濃縮される際に何らかの原因で遊離しコレステロールの結晶が成長すると、胆嚢あ るいは胆管においてコレステロール胆石症の原因となる場合もある。 □□ 39. コレステロールはステロイドホルモンの合成に用いられる。( ○ ) 【ポイント】コレステロールは、ステロイドホルモン(性ホルモン)、副腎皮質ホルモン、ビ タミン D を合成するための材料になる。 □□ 40. 中性脂肪の分解産物はコレステロールである。( × ) 【正解】脂肪酸とグリセロール 【ポイント】中性脂肪(トリアシルグリセロール)は 1 個のグリセロールに 3 個の脂肪酸が結 合してできている。細胞内では、脂肪酸はβ酸化を経て TCA 回路に入り、最終的には CO2 と H2O にまで分解される。 □□ 41. コレステロールの生体内での合成の中心は肝臓である。( ○ ) 【ポイント】コレステロールは、主に肝臓でアセチル CoA から合成される。また、肝臓以外に も副腎、卵巣、精巣でも合成される。 □□ 42. 吸収された長鎖脂肪酸は、腸壁で中性脂肪に再合成され、タンパク質やコレステロールなどと 結合して、カイロミクロン(キロミクロン)となる。( ○ ) 【ポイント】カイロミクロンは中性脂肪が約 90%で、それ以外にもリン脂質、タンパク質、コ レステロールを含んでいる。 □□ 43. 腸壁でつくられたカイロミクロンの大部分は、腸間膜の血管から門脈を経て、肝臓へ運ばれる。 ( × ) 【正解】小腸柔突起のリンパ管に吸収され、胸管を経て心臓に入る。 □□ 44. コレステロール、中性脂肪などは、血中でタンパク質と結合して、リポタンパク質として存在 する。( ○ ) 【ポイント】リポタンパク質は、タンパク質にコレステロールや中性脂肪が結合したもので、 水に溶けにくい脂質が血中で運搬されるのに不可欠である。リポタンパク質は比重(水 に対する重量比)が小さい順に、カイロミクロン、VLDL、LDL、HDL と分類され、LDL は動脈硬化を促進することから“悪玉コレステロール”、HDL は動脈硬化を抑制するこ とから“善玉コレステロール”とよばれる。(表 6) □□ 45. 食後一定時間経過した血漿の白濁は、カイロミクロンの増加による。( ○ ) 【ポイント】カイロミクロン中の中性脂肪(トリグリセリド)の一部は、血中でリパーゼによ って脂肪酸とグリセロールに分解され肝臓に取り込まれる。 □□ 46. カイロミクロンはリポタンパク質である。( ○ ) 【ポイント】カイロミクロンは食物中に含まれている脂肪が吸収されて生成したもので、外因性 のトリグリセリドを肝臓へ運搬する働きがある。 □□ 47. カイロミクロンは小腸上皮細胞で生成される。( ○ ) 【ポイント】カイロミクロン以外のリポタンパク質では、VLDL は肝臓および小腸で、LDL は血 中で VLDL から、HDL は肝臓でそれぞれ生成される。 □□ 48. 低密度リポタンパク質(LDL)は、コレステロールを動脈壁の細胞へ運搬し、動脈硬化の要因 となる。( ○ ) 【ポイント】LDL は肝臓や小腸から末梢へコレステロールを運搬する。その過程で血中に LDL が増加すると動脈にコレステロールを沈着させ、動脈硬化を引き起こす一因となる。 そのため LDL は“悪玉コレステロール”とよばれる。 □□ 49. 高密度リポタンパク質(HDL)はコレステロールを末梢組織から肝臓へ運び、抗動脈硬化因子と 考えられている。( ○ ) 【ポイント】HDL は血管壁に沈着したコレステロール体の不必要なコレステロールなど不必要 なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがある。これは動脈硬化の予防に役立つ。 そのため HDL は“悪玉コレステロール”とよばれる。 □□ 50. 高密度リポタンパク質(HDL)は動脈硬化促進因子である。( × ) 【正解】動脈硬化抑制因子 □□ 51. 高脂血症とは、コレステロール、トリグリセリド、リン脂質などの血漿脂質が増加した状態を いう。( ○ )※高脂血症は、現在では「脂質異常症」と変更された。 【ポイント】高脂血症とは、空腹時の血中コレステロールが 220mg/dL 以上、あるいは中性脂 肪(トリグリセリド)が 150mg/dL のいずれか、もしくはその両方の場合をいう。 □□ 52. 高脂血症では、皮膚および眼瞼に黄色腫を認めることがある。( ○ ) 【ポイント】高脂血症(脂質異常症)の状態が長く続くと、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒 中が引き起こされるリスクが高まる。 □□ 53. 高脂血症の治療には、飽和脂肪酸の多い食事が勧められる。( × ) 【正解】不飽和脂肪酸 【ポイント】高脂血症の患者には、脂質に含まれる飽和脂肪酸の摂取を制限する必要がある。 不飽和脂肪酸を摂取することで、コレステロール値は低下する。 □□ 54. プロスタグランジンは、必須脂肪酸のリノール酸やアラキドン酸から生成される。( ○ ) 【ポイント】プロスタグランジン類は、脂肪酸であるエイコサトリエン酸、アラキドン酸、エ イコサペンタエン酸から合成される生理活性物質である。プロスタグランジンの作用 のひとつに炎症(発赤、疼痛、腫脹、発熱)を引き起こすことがある。プロスタグラ ンジン類はエイコサノイドともよばれ、オータコイド(生理活性物質のうち、ホルモ ンおよび神経伝達物質以外のものの総称)の一種である。 □□ 55. エイコサペンタエン酸(EPA)は必須脂肪酸のα-リノレン酸から生成される。( ○ ) 【ポイント】エイコサペンタエン酸は魚脂に多く含まれる不飽和脂肪酸のひとつである。脳梗 塞や心筋梗塞の予防作用がある。 □□ 56. 植物油は多量の飽和脂肪酸を含み、血中総コレステロールを増加させる。( × ) 【正解】動物油 【ポイント】植物油は不飽和脂肪酸を含み、不飽和脂肪酸は血中総コレステロールを低下させ る働きがある。 5. 核酸・代謝 □□ 1. 核酸はリン酸と糖と塩基の 3 つの成分からなり、この 3 つが結合したものをヌクレオシドという。 ( × ) 【正解】ヌクレオチド 【ポイント】核酸はリン酸、糖、塩基が結合したもので、この 3 つが結合したものをヌクレオ チド(nucleotide)という。塩基と糖が結合した部分のことはヌクレオシド(nucleoside) という。 □□ 2. 核酸は、遺伝やタンパク質合成と密接な関係がある。( ○ ) 【ポイント】核酸である DNA や RNA は、遺伝やタンパク質合成に関係している。 □□ 3. DNA は 2 本のポリヌクレオチドからなっていて、その鎖の間は水素結合によって互いに結合 している。( ○ ) 【ポイント】細胞中の DNA 分子は二重らせん構造をしている。一方の鎖と他方の鎖は互いに相 補的で、アデニン(A)とチミン(T)、シトシン(C)とグアニン(G)が水素結合で結 合して二重らせんを形成している。 □□ 4. DNA の合成は、DNA リガーゼにより行われ、合成された小断片はさらに DNA ポリメラーゼ によって互いに結合される。( × ) 【正解】DNA ポリメラーゼにより行われ、合成された小断片はさらに DNA リガーゼによって互 いに結合される。 【ポイント】ポリメラーゼとは「高分子(ポリマー)化する酵素」という意味で、リガーゼと は「つなぐ酵素」という意味である。 □□ 5. DNA の有機塩基には、ピリミジン塩基として、ウラシル、シトシンがある。( × ) 【正解】チミン 【ポイント】ウラシルは RNA だけに含まれる塩基である。核酸の塩基はプリン塩基とピリミジ ン塩基に分けられる。プリン塩基はアデニンとグアニン、ピリミジン塩基はシトシン、 チミン、ウラシルである(表 7)。 □□ 6. RNA は細胞核内と細胞質の双方にある。( ○ ) 【ポイント】RNA には mRNA (伝令 RNA)、rRNA(リボソーム RNA)、tRNA(運搬 RNA)の 3 つが ある。mRNA は核内で DNA 上の遺伝子の遺伝情報をもとに合成され、核外の細胞質に出 ると rRNA が主成分のリボソームと結合し、そこで tRNA が運んできたアミノ酸を遺伝 情報通りにつなげてペプチド結合が形成されタンパク質ができる。よって、rRNA と tRNA は核外で働く。細胞内の RNA のほとんどは rRNA である。 □□ 7. RNA の糖成分はリボースである。( ○ ) 【ポイント】RNA は糖(リボース)、有機塩基(アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル)、 リン酸からなる(表 7)。この構成単位をヌクレオチドという。 □□ 8. RNA の種類は、mRNA、tRNA の 2 つだけである。( × ) 【正解】mRNA、rRNA、tRNA の 3 つがある。 【ポイント】mRNA は DNA から遺伝情報を写しとったもの、rRNA はリボソームの主成分、tRNA リボソームに指定されたアミノ酸を運ぶ働きがある。 □□ 9. DNA の遺伝情報は、はじめに tRNA により転写される。( × ) 【正解】mRNA □□ 10. mRNA の合成は転写と呼ばれる。( ○ ) 【ポイント】DNA から mRNA に遺伝情報が写しとられることを「転写(transcription)」という。 また、mRNA の情報をもとにタンパク質がつくられることを「翻訳(translation)」と いう。 □□ 11. tRNA は遺伝情報をアミノ酸配列に読み換える。( ○ ) 【ポイント】tRNA には、mRNA のコドンに対応するアミノ酸が結合している。よって、tRNA が mRNA のコドンに対応するアミノ酸を運搬することで、遺伝情報に従ったタンパク質を 合成することができる。 □□ 12. ポリペブチド(タンパク質)は細胞の核内で合成される。( × ) 【正解】核外 【ポイント】mRNA は核外に出てリボソームと結合し、リボソーム上でタンパク質は合成される。 □□ 13. 核内の DNA は、通常二重らせん構造をとっている。( ○ ) 【ポイント】DNA が二重らせん構造であるのに対し、mRNA をはじめ RNA は単鎖構造である。 □□ 14. 3 個のヌクレオチドの組み合わせによって 1 個のアミノ酸が決定される。( ○ ) 【ポイント】DNA や RNA 中の「糖+塩基+リン酸」の構造をヌクレオチドという。塩基配列と は DNA や RNA 中の塩基の並ぶ順番のことで、3 つの塩基で 1 つのアミノ酸が決定され る。3 つの塩基の順番のセットをコドンという。ヌクレオチドからリン酸を取り除い たものをヌクレオシドという。 □□ 15. リボソームでポリペプチドが合成される。( ○ ) 【ポイント】リボソームは主に rRNA とタンパク質で構成されている。 □□ 16. タンパク質を鋳型にして、DNA が合成される。( × ) 【正解】DNA 【ポイント】DNA は 2 本鎖であり、DNA が複製されるときには DNA の 2 本鎖がほどけ、それぞ れの DNA 鎖に対して相補的な新しい DNA 鎖が合成される。これを「相補的複製」とい う。よって、DNA の複製で鋳型になるのは DNA である。 □□ 17. DNA の傷害を修復する機構がある。( ○ ) 【ポイント】DNA は DNA ポリメラーゼによる校正機構などによって DNA の障害を修復し、もと の塩基配列を維持している。このような機構がなければ、生物は遺伝子が書き換わっ てしまい突然変異を起こしやすくなる。 □□ 18. RNA は一般に二重らせん構造である。( × ) 【正解】一本鎖構造 【ポイント】すべての RNA が一本鎖構造である。tRNA は特徴的な逆 L 字型の構造をもつ。 □□ 19. RNA は細胞分裂の際に修復される。( × ) 【正解】DNA □□ 20. 伝令 RNA(mRNA)の合成はリボソームで行われる。( × ) 【正解】核内 【ポイント】DNA の情報を写しとったものが mRNA であり、DNA は核内にある。 □□ 21. DNA には遺伝子の発現を調節する部分がある。( ○ ) 【ポイント】遺伝子が働いてタンパク質が合成されるまでの過程を発現という。DNA の情報を mRNA に写しとることを転写といい、この転写調節が遺伝子発現には重要である。この ような転写調節の機能を担うタンパク質を「転写因子」という。 □□ 22. DNA は 1 本のポリヌクレオチド鎖である。( × ) 【正解】2 本 【ポイント】二重らせん構造である。 □□ 23. DNA の遺伝子間報から mRNA がつくられることを翻訳という。( × ) 【正解】転写 □□ 24. mRNA の塩基配列に基づきアミノ酸がつながることを転写という。( × ) 【正解】翻訳 □□ 25. リボソーム RNA は、全 RNA のおよそ 80%を占める。( ○ ) 【ポイント】全 RNA のほとんどがリボソームをつくるリボソーム RNA(rRNA)である。 □□ 26. DNA の遺伝情報の中で、タンパク質に翻訳されない部分をエクソンといい、翻訳される部分を イントロンという。( × ) 【正解】タンパク質に翻訳されない部分をイントロンといい、翻訳される部分をエクソンとい う。 【ポイント】通常の真核生物の遺伝子では、タンパク質の情報として翻訳されるエクソンと翻 訳されないイントロンが交互に配置されている。mRNA が出来上がるとき、不要なイン トロン部分が切り出される。このことを「選択的スプライシング」という。 さん □□ 27. アデノシン三リン酸(ATP)のアデノシンは、アデニンとリン酸からなっている。( × ) 【正解】リボース 【ポイント】アデノシン三リン酸(ATP)は、真核生物の活動のエネルギーとして共通の化合 物である。ATP はアデニンがリボースに結合したアデノシンに 3 つのリン酸が結合し ている。リン酸の結合が切れるときのエネルギーが生命活動に用いられ、この結合を に 「高エネルギーリン酸結合」という。ATP からリン酸が 1 個取れるとアデノシン二リ いち ン酸(ADP)、さらにもう 1 個取れるとアデノシン一リン酸(ADP)となる。 □□ 28. 核酸の分解産物は酢酸である。( × ) 【正解】尿酸 【ポイント】核酸は窒素(N)を含んでおり、尿酸は窒素を含んだ酸の代表である。 □□ 29. 核酸の構成成分であるピリミジン塩基は、最終的には尿酸となる。( × ) 【正解】アンモニアと二酸化炭素と水 【ポイント】アンモニアは最終的には尿素回路に入って尿素となって排泄される。 □□ 30. 核酸の構成成分であるプリン塩基は、最終的にはアンモニアと二酸化炭素と水となって排泄さ れる。( × ) 【正解】尿酸 【ポイント】尿酸は水に難溶であるため、生じすぎると関節等に蓄積して痛風の原因となる。 □□ 31. 血中の尿酸の正常値は 10.0 mg/dL である。( × ) 【正解】2.3〜6.6 mg/dL 【ポイント】男性の方が高い値を示す傾向にある。よって、男性の方が痛風になりやすい。 □□ 32. 高尿酸血症の患者に、アルコール摂取は制限したほうがよい。( ○ ) 【ポイント】アルコール摂取の結果生じた乳酸が、尿酸の腎臓からの排泄を抑制し、気中尿酸 値を上昇させ痛風の原因になる。よって、血中尿酸値の高い人はアルコールの摂取を 控えた方がよい。 □□ 33. 高尿酸血症は痛風になりやすい。( ○ ) 【ポイント】尿酸は血中濃度が高いと関節等に析出しやすくなり、痛風の原因となる。 6. 酵素 □□ 1. 酵素は基本的には糖質からなり、細胞内で合成される。( × ) 【正解】タンパク質 □□ 2. 補酵素は酵素のタンパク質部分と結合し、酵素の活性発現を促す。( ○ ) 【ポイント】酵素には活性発現のために補酵素や金属イオンなどの補因子を必要とするものが ある。酵素のタンパク質部分のことをアポ酵素といい、アポ酵素は活性を持たない。 アポ酵素に補因子が結合して活性を持つようになった酵素をホロ酵素という。 □□ 3. 消化酵素の多くは、酵素前駆体として不活性な状態で合成される。( ○ ) 【ポイント】酵素が特定の場所で活性を発現するために、活性が不必要な場所では不活性な酵 素前駆体として存在することがある。タンパク質分解酵素であるトリプシンの前駆体 はトリプシノーゲン、ペプシンの前駆体はペプシノーゲンと呼ばれ、いずれも前駆体 は不活性である。 □□ 4. 酵素は特定の基質としか反応しない性質がある。( ○ ) 【ポイント】基質とは酵素が作用する相手のことであり、酵素が特定の基質とのみ反応する性 質を「酵素の基質特異性」という。 □□ 5. 酵素は、細胞内で常に一定の構造を維持している。( × ) 【正解】構造が変化する酵素がある。 【ポイント】このような酵素を「アロステリック酵素」という。ある特定の条件で構造が変化 するため、酵素活性が急激に変化する。 □□ 6. 人体でつくられる酵素の至適温度は臓器により異なる。( × ) 【正解】一定で、体温付近である。 【ポイント】酵素が最も働きやすい温度のことを「至適温度(または最適温度)」という。 □□ 7. 酵素反応速度の至適 pH は 7.4 で、常に一定である。( × ) 【正解】酵素の種類によって異なる。 【ポイント】酵素が最も働きやすい pH のことを「至適 pH(または最適 pH)」という。至適 pH は酵素ごとに異なり、胃液中のペプシンの至適 pH は 1〜2、膵液中のトリプシンは pH7.5 〜8.0 である。 □□ 8. ミカエリス定数(Michaelis 定数 : Km)値が小さいことは、酵素の基質に対する親和性が小さ いことを意味する。( × ) 【正解】大きい 【ポイント】ミカエリス定数は酵素と基質の親和性を表す値で、その値が小さいほど親和性は 大きい。ミカエリス定数は酵素ごとに特有の値である。 □□9. 酵素阻害剤で、競合型の例としてフィードバック機構があげられる。( × ) 【正解】非競合型 【ポイント】阻害剤による酵素の阻害様式には不可逆的阻害と可逆的阻害がある。ル可逆的阻 害は、阻害剤が酵素の活性部位に一度結合すると外れなくなって酵素活性を阻害する ので、一度阻害が起こると酵素活性は回復することはない。一方、可逆的阻害では、 阻害剤は酵素の活性部位と付いたり離れたりしているので、阻害剤を取り除けば酵素 活性は回復する。さらに、可逆的阻害には、競合阻害と非競合阻害がある。競合阻害 は、酵素の活性部位を基質と阻害剤が奪い合うことによって起こる。一方、非競合阻 害は、阻害剤が酵素の活性部位以外の部位に結合することで活性部位の構造を変化さ せ、基質が酵素に結合できなくなることで起こる。フィードバック機構は非競合阻害 の一例である。競合阻害は拮抗阻害とも呼ばれる(同様に、非競合阻害は非拮抗阻害 とも呼ばれる)。 □□ 10. エステラーゼ、グルコシダーゼ、ペプシンなどは、酸化還元酵素に属する。( × ) 【正解】加水分解 【ポイント】エステラーゼはエステル結合( 糖類のグリコシド結合( 結合( C N O H C O )を、グルコシダーゼはオリゴ糖や多 O O )を、ペプシンはタンパク質やペプチドのペプチド )結合を加水分解する酵素である。 □□ 11. 心筋梗塞時では、AST、ALT、LDH の上昇を認める。( × ) 【正解】CK(クレアチンキナーゼ) 【ポイント】CK や AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)は 心筋細胞の壊死によって血中に出てくる逸脱酵素である。ALT(アラニンアミノトラン スフェラーゼ)は肝臓の細胞の中にだけにあるので、肝臓の炎症等の肝機能障害で高値 となる。 ※心筋梗塞時には、血中の AST、CK、LDH が、肝障害時には AST、ALT が増加する。 ※ AST は GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスフェラーゼ)ともいう。 ※ ALT は GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスフェラーゼ)ともいう。 ※ トランスフェラーゼとは「転移酵素」のことである。 ※ キナーゼとは「リン酸化酵素(リン酸基転移酵素)」のことである。 ※ トランスフェラーゼとキナーゼは「転移酵素」に属する。 ※ LDH(乳酸脱水素酵素)は「酸化還元酵素」に属する。 □□ 12. アルコール性肝炎では、とくに血清γGTP(γGT と表記される場合もある)の低下を認める。 ( × ) 【正解】上昇 【ポイント】γGTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ) (γGT(γグルタミルトランスフェ ラーゼともいう)は腎臓に多量に存在するが、腎疾患では血中γGTP の変化は認めら れない。γGTP は閉塞性胆道疾患や肝炎等で上昇する。 □ □ 13. 胆石、骨疾患、肝障害時では、クレアチンキナーゼ(CK)の上昇を認める。( × ) 【正解】アルカリホスファターゼ(ALP) 【ポイント】アルカリホスファターゼ(ALP)は、閉塞性黄疸、肝がん、骨腫瘍等で上昇する。 □□ 14. 筋炎、筋疾患などは、クレアチンキナーゼ(CK)の上昇を認める。( ○ ) 【ポイント】CK は心筋梗塞や脳梗塞でも上昇する。 7. ビタミン □□ 1. 脂溶性ビタミンはアルカリに弱く酸に強い。( × ) 【正解】酸に弱くアルカリに強い 【ポイント】ビタミンは脂溶性ビタミン(A,D,E,K)と水溶性ビタミン(B 群,C)に分けら れる。(表 8) □□ 2 .ビタミン A は脂溶性ビタミンで、緑黄野菜に含まれるカロチンとして摂取される。( ○ ) 【ポイント】ビタミン A 欠乏症には夜盲症、角膜乾燥症、表皮の角化などがある。 □□ 3. ビタミン A とビタミン D は脂溶性のビタミンであり、過剰に摂取すると体内に蓄積されて、 障害をきたすことがある。( ○ ) らくせつ 【ポイント】ビタミン A 過剰症には、慢性中毒症の場合、皮膚の落屑、食欲不振、四肢の疼痛 しゅちょう 性 腫 脹 などが、急性症状の場合、脳圧亢進による頭痛や嘔吐などがある。ビタミン D 過剰症には食欲不振、吐乳、便秘、皮膚乾燥、口渇、筋緊張低下などがある。 □□ 4. 植物性食品にビタミン A そのものは含まれず、ブロビタミン A(カロチン)として存在する。 ( ○ ) 【ポイント】プロビタミン(ビタミン前駆体)A は体内に入ってビタミン A に変わり、主に肝臓 に蓄えられる。 □□ 5. 抗生物質の連用により腸内細菌叢が変化すると、ビタミン B 群の合成が阻害される。 ( ○ ) 【ポイント】ビタミン B6(ピリドキサン、ピリドキサル、ピリドキサミン)は普通の食事に十 分含まれており、一部の腸内細菌も産生しているため欠乏が発生することは少ない。 しかし、抗生物質の長期投与や抗結核剤の投与で欠乏症を生じることがある。 □□ 6. アノイリナーゼ菌の保有者は、通常必要とされるビタミン B1 の摂取量では欠乏症となりやすい。 ( ○ ) 【ポイント】アノイリナーゼ菌はビタミン B1 を破壊する酵素をもっているので、保菌者ではビ タミン B1 が不足してしまう。ビタミン B1 はチアミンピロリン酸という補酵素に変換さ れ糖質代謝(脱炭酸反応や C-C 結合開裂反応)に関与する。 □□ 7. ビタミン B2 は直射日光にあたると破壊されやすく、効力が低下する。( ○ ) 【ポイント】ビタミン B2 はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)などの補酵素に変換され、 脂質や糖質の代謝や生体酸化に関与する。 □□ 8. ビタミン B2 の欠乏症としては、口内炎、顔面の局所性脂漏性皮膚炎などがある。( ○ ) 【ポイント】その他の症状として、口角炎や口唇炎がある。 □□ 9. ビタミン B6 は血液の凝固に関係があり、肝臓でのプロトロンビン生成に必要である。( × ) 【正解】ビタミン K □□ 10. ビタミン B12 と葉酸が欠乏すると、赤芽球の成熟障害が起こる。( ○ ) 【ポイント】ビタミン B12(コバラミン)や葉酸が欠乏して生じる貧血を巨赤芽球性貧血(悪性 貧血)という。 □□ 11. ビタミン B12 は血液凝固に関係が深い。( × ) 【正解】ビタミン K 【ポイント】ビタミン B12 は赤血球の生成に関係する。 □□ 12. ビタミン B12 は、胃粘膜から分泌される内因子がないと吸収されない。( ○ ) 【ポイント】ビタミン B12 の欠乏で生じる悪性貧血は、内因子(IF;intrinsic factor)の欠 乏に基づく。内因子・コバラミン複合体は小腸粘膜の受容体に結合して小腸粘膜細胞 に吸収され、血中に入って骨髄や肝臓の細胞に取り込まれる。 □□ 13. 胃の全摘出後にビタミン B12 の吸収障害が起こる。( ○ ) 【ポイント】ビタミン B12 の吸収には、胃から分泌される内因子(IF)と結合することが必要 である。 □□ 14. ニコチン酸が水足すると皮膚炎やペラグラが発症する。( ○ ) 【ポイント】ニコチン酸はナイアシンともいい、不足するとペラグラ(皮膚炎、下痢、痴呆が 三主要症状)などが起きる。 □□ 15. ビタミン C は、組織のコラーゲン合成、支持組織の合成と維持に関与し、ステロイドの生成に も役立っている。( ○ ) 【ポイント】ビタミン C はアスコルビン酸ともよばれ、レモンやイチゴ、緑黄色野菜などに多 く含まれている。強い抗酸化作用があり、コラーゲン合成には必須である。ビタミン C が欠乏するとコラーゲンの合成ができなくなり、壊血病を引き起こす。 □□ 16. ビタミシ C は肝臓に貯蔵され、活性化されて、カルシウム代謝に重要な役割をもっている。 ( × ) 【正解】ビタミン D □□ 17. ビタミン C は酸化されやすく、強化しない限り、保存食中の含有量は少ない。( ○ ) 【ポイント】ビタミン C は酸化されやすい成分であり、熱や長時間の放置によってその作用を 失う。 □□ 18. ビタミン D の過剰摂取で、剛気、食欲不振、頭痛、多尿、倦怠感、下痢などがみられることが ある。( ○ ) 【ポイント】ビタミン D は脂溶性のビタミンであり、尿中に排泄されにくいことから、蓄積し て過剰症を引き起こすことがある。ビタミン D の過剰摂取は高カルシウム血症などを 引き起こす。 □□ 19. ビタミン D は腸管からのカルシウムの吸収を促進する。( ○ ) 【ポイント】カルシウムを吸収するためには、ビタミン D も一緒に摂取する必要がある。 □□ 20. 日照量の少ない地方でくる病がみられるのは、紫外線によるプロビタミン D からのビタミン D 生成が不足するためである。( ○ ) 【ポイント】人はビタミン D を食物から摂取すると同時に、体内で合成することができる。コ レステロールは肝臓でプロビタミン D(D3 は 7-デヒドロコレステロール)に変換され、 紫外線が当たることでビタミン D となる。くる病はカルシウム不足による骨形成不全 であり、ビタミン D の欠乏でカルシウムの吸収が抑制されることでも起こる。 □□ 21. ビタミン D は、乳幼児では成人よりも多く摂取する必要がある。( ○ ) 【ポイント】ビタミン D は骨形成に重要であるので、特に成長期に多く摂取する必要がある。 □□ 22. ビタミン E は、リノール酸などの不飽和脂肪酸が過酸化物となるのを防ぐ作用がある。( ○ ) 【ポイント】ビタミン E は、ビタミン C とともに抗酸化作用で不飽和脂肪酸の過酸化を防ぎ、動脈 硬化を予防する。ビタミン C は多くの物質に対して抗酸化作用を示すが、ビタミン E は 主に不飽和脂肪酸とビタミン A の酸化を防止する。 □□ 23. ビタミン K は血液凝固と関係があり、成人では腸内細菌の働きによってつくられる。( ○ ) 【ポイント】ビタミン K はトマト、納豆、海藻などに多く含まれているが、腸内細菌によって も合成されるので、ビタミン K の顕著な欠乏は起こらない。血液凝固因子であるプロ トロンビンの生成にはビタミン K が必要である。抗血液凝固剤としてワーファリンを 服用している場合に、ビタミン K を摂りすぎると薬効が出なくなる場合がある。 □□ 24. ビタミン K は腸内細菌によって破壊されるため、食餌性欠乏症をきたしやすい。( × ) 【正解】合成されるので、食事性欠乏はない □□ 25. 血液の凝固過程で、ビタミン K によって促進されるのは、フィブリノーゲンの生成である。 ( × ) 【正解】プロトロンビン 【ポイント】プロトロンビンは第 X 因子によって活性化されてトロンビンになり、トロンビンは フィブリノーゲンに作用して血栓の主成分であるフィブリンを生成させる。 たんのう □□ 26. 胆嚢摘出術後にビタミン B12 欠乏症が生じる。( × ) 【正解】胃全摘出後 【ポイント】ビタミン B12 は胃粘膜から分泌される内因子(IF)と結合して吸収されるため、胃 全摘によって IF の分泌がなくなればビタミン B12 は吸収されなくなり欠乏症が生じる。 また、ビタミン B12 は肝臓に多く貯蔵されるが、肝臓は部分切除であれば欠乏には至ら ない。 □□ 27.(ビタミン K 欠乏症−出血傾向)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】ビタミン K が欠乏すると血液凝固因子が生成されにくくなるため、血液凝固が起き にくくなる。 □□ 28.(ビタミン D 欠乏症−壊血病)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】くる病 【ポイント】壊血病はビタミン C が不足することで起こる。 □□ 29.(ビタミン B2 欠乏症−口角炎)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】ビタミン B2 欠乏症には、この他に口角炎や口唇炎、脂漏性皮膚炎などがある。 □□ 30.(ビタミン B12 欠乏症−巨赤芽球性貧血)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】この貧血には内因子の欠乏が関与している。 □□ 31.(ビタミン A 欠乏症−夜盲症)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】ビタミン A 欠乏症には、この他に角膜乾燥症、粘膜や表皮の角化、乾燥化などが ある。 □□ 32.(ビタミン B1 欠乏症−脚気)の組み合わせは正しい。( ○ ) 【ポイント】ビタミン B1 欠乏症には、この他に多発性神経炎、ウェルニッケ脳症などがある。 □□ 33.(ビタミン B2 欠乏症−悪性貧血)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】ビタミン B12 【ポイント】ビタミン B12 欠乏症=悪性貧血と覚える。 □□ 34.(ビタミン C 欠乏症−くる病)の組み合わせは正しい。( × ) 【正解】壊血病 【ポイント】コラーゲンはヒドロキシプロリンによって三本鎖らせん構造を安定化している。 ビタミン C が不足すると、プロリルヒドロキシラーゼが働かなくなり、コラーゲンに ヒドロキシプロリンができない。 8. ホルモン □□ 1. 成長ホルモンやインスリンは、ペプチドホルモンである。( ○ ) 【ポイント】ホルモンはその構造から、ペプチドホルモン、アミンホルモン、ステロイドホル モンに大別される。ペプチドホルモンにはその他にグルカゴン、副腎皮質刺激ホルモ ン(ACTH)、抗利尿ホルモン(ADH)、セクレチンなどがある。 □□ 2. アルドステロンは、ペプチドホルモンである。( × ) 【正解】ステロイドホルモン □□ 3. アミンホルモンにアドレナリン、チロキシン(サイロキシン)がある。( ○ ) 【ポイント】アミンホルモンはアミノ基(−NH2)を有している。 □□ 4. 抗利尿ホルモンはステロイドホルモンである。( × ) 【正解】ペプチドホルモン 【ポイント】下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンとオキシトシンはペプチドホルモンで ある。 □□ 5. 副腎皮質ホルモン、エストロゲンはステロイドホルモンである。( ○ ) 【ポイント】ステロイドホルモンはステロイド骨格をもつホルモンで、副腎皮質ホルモンや 性腺ホルモンなどがある。 □□ 6. ほとんどのホルモンは食物から摂取することができる。( × ) 【正解】体内でつくられる □□ 7. ホルモンは特定の標的器官や標的細胞に直接結合して、その作用を発揮する。( × ) 【正解】受容体に結合して 【ポイント】ホルモンが結合する部位を受容体(レセプター)のいい、特定の細胞表面にある。 □□ 8.ペプチドホルモン、アミンホルモンは細胞膜に存在する受容体に作用する。( ○ ) 【ポイント】分子量が大きいペプチドホルモンや水溶性のアミンホルモンは細胞膜を通過でき ない。これらのホルモンは細胞膜上の受容体に結合して細胞内に作用する。一般に、 物質は細胞膜を直接通過できない。細胞膜は不透性であり、通過する場合には特異的 なチャネル等を介して輸送される。 □□ 9. 細胞膜の受容体に結合したホルモンは、cAMP を ATP に作用することにより、作用を発揮する。 ( × ) □□ 10. ステロイドホルモンは細胞膜を通過し直接核内に入り、ホルモン作用を行う。( × ) □□ 11. 視床下部から分泌される放出ホルモンは、すべてペプチドホルモンである。( ○ ) □□ 12. 成長ホルモンは、タンパク同化作用を促進するホルモンである。( ○ ) □□ 13. 間質細胞刺激ホルモンは、男性・女性いずれに対しても作用する。( ○ ) □□ 14. プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)は、乳汁分泌の促進と黄体ホルモン分泌の抑制を行う。 ( × ) □□ 15. 下垂体前葉ホルモンであるオキシトシンは、子宮筋収縮作用と乳汁分泌作用がある。( × ) □□ 16. 血液の浸透圧が高まると、バソプレッシンの分節は冗進し、逆の場合は減少する。( ○ ) □□ 17. 甲状腺から分泌されるサイロキシンは、肝臓での脂質の分解を促進し、血中のコレステロールの 濃度を低下させる。( × ) □□ 18. 副甲状腺(上皮小体)はカルシウム代謝に関係し、血中カルシウムとリン濃度を増加させる。 ( × ) □□ 19. インスリンは、亜鉛を含む分子量 5,700 のタンパク質からなるホルモンである。( ○ ) □□ 20. インスリンは経口投与で有効に働く。( × ) □□ 21. インスリンは注射が有効ではない。( × ) □□ 22. インスリンは主に、筋肉、肝臓、脂肪組織に働く。( ○ ) □□ 23. 高血糖では、インスリンの分泌は低下する。( × ) □□ 24. グルカゴンは両臓のα細胞から分泌され、筋肉でのグリコーゲンの分解を促進する。( × ) □□ 25. 血糖上昇作用は、アドレナリンよりもノルアドレナリンの方が強い。( × ) □□ 26. 糖質コルチコイドはグリコーゲンの分解を促進し、血糖を上昇させる。( × ) □□ 27. テストステロンは主に精巣から分泌されるホルモンである。( ○ ) □□ 28. 卵胞から分泌される代表的なホルモンは、プロゲステロンである。( × ) □□ 29. 成長を促進するホルモンは、下垂体前葉から分泌される成長ホルモンだけである。( × ) □□ 30. グルカゴン、サイロキシン、アドレナリンなどは、血糖を上昇させるホルモンである。( ○ ) □□ 31. 血圧を上昇させるホルモンにコルチゾンがある。( × ) □□ 32. 血圧を低下させるホルモンにバソプレッシンがある。( × ) □□ 33. 血中のカルシウム濃度は、カルシトニンにより上昇し、パラソルモンにより低下する。( × ) □□ 34.血中ナトリウム濃度が高くなると、アルドステロンの分泌量が増える。( × ) □□ 35. プロラクチンは、排卵を抑制するホルモンである。( × ) □□ 36. エストロゲン、黄体形成ホルモンは、月経周期に関係するホルモンである。( ○ ) □□ 37. 代謝を促進するホルモンに、甲状腺ホルモンがある。( ○ ) □□ 38. 末端肥大症は、幼児期における下垂体前葉ホルモンの機能亢進によりみられる。( × ) □□ 39. バソプレッシンが欠乏すると、尿崩症がみられる。( ○ ) □□ 40. バセドウ病は甲状腺ホルモンの機能亢進によりみられる。( ○ ) □□ 41. クレチン病は甲状腺ホルモンの機能亢進によりみられる。( × ) □□ 42. 上皮小体ホルモンの機能低下は、テタニー症を発症させる。( ○ ) □□ 43. 副腎皮質ホルモンの過剰により、アジソン病が起こる。( × ) □□ 44. 副腎皮質ホルモンの低下により、クッシング症候群が認められる。( × ) 9. 体液・pH □□ 1. 新生児の細胞内水分量と細胞外水分量との比は、およそ 1:1 である。( ○ ) □□ 2. 生後 3 か月児では、体内の水分量は体重の約 60%である。( × ) □□ 3. 0.9%の食塩水は、体液の浸透圧と同じ浸透圧をもつ液体である。( ○ ) □□ 4. 汗の塩化ナトリウム濃度は、尿のナトリウム濃度より高い。( × ) □□ 5. 細胞外液で主な陽イオンは Na+、陰イオンは Cl-である。( ○ ) □□ 6. ナトリウムはその摂取量の多少とは無関係に糸球体でろ過されたものが近位尿細管で完全に再 吸収される。( × ) □□ 7. 血液に存在する電解質のうち、ナトリウムは赤血球内にカリウムは血漿に多く含まれている。 ( × ) □□ 8. ブドウ糖とインスリンとを同じに静脈注射すると、血清カリウムは増加する。( × ) □□ 9. 普通食だけではカリウムの摂取量は不足する。( × ) □□ 10. カリウムイオンは細胞内外に同等に分布している。( × ) □□ 11. リングル液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウムから組成されている。( ○ ) □□ 12. 血液の pH の正常値は、7.0 で中性を保っている。( × ) □□ 13. 動脈血と静脈血の pH は異なる。( × ) □□ 14. pH の調節は主として膵臓と肝臓とで行われている。( × ) □□ 15. 体液の酸塩基平衡の恒常性を保つために、血液緩衝作用系、肺、腎臓の 3 つが働く。( ○ ) □□ 16. 過換気症候群は呼吸性アルカローシスに陥る。( ○ ) □□ 17. 過換気により空気中の二酸化炭素が体内に取り込まれると、アルカローシスになる。( × ) □□ 18. 窒息の場合、アルカローシスに傾く。( × ) □□ 19. 代謝性アシドーシスは激しい順吐でみられる( × ) □□ 20. 代謝性アシドーシスは重炭酸イオンの減少によることが多い。( ○ ) □□ 21. 激しい下痢が続くと、ナトリウムイオンを含んだ腸液が大量に消失して、代謝性アルカローシ スが起こる。( × ) □□ 22. 腎不全や重症糖尿病では、代謝性アシドーシスが起こる。( ○ ) □□ 23. 高張性脱水とは、水そのものが欠乏した状態をいう。( ○ ) □□ 24. 低張性脱水では、血漿タンパクやヘマトクリット値の低下を認める。( × ) □□ 25. 脱水は同じ発生条件の下でも、男女間に著しい発生率がみられる。( × ) □□ 26. 浮腫とは、細胞外液である間質液が異常に貯留した状態をいう。( ○ ) □□ 27. 心臓の機能が低下すると、静脈圧が減少し、浮腫を発生する。( × ) □□ 28. ネフローゼ症候群では、血漿タンパクが過剰に上昇することにより浮腫をきたす。( × ) 出典:「看護学生のための生化学ドリル」より改変