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この判例 - Pizzeys

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この判例 - Pizzeys
プロダクト・バイ・プロセスクレーム
米国、ヨーロッパ、日本、およびオーストラリアにおける管轄区域別比較
ビル・ベネット&ニック・フィニー
はじめに
ほとんどの国において、製造方法クレームは、クレームされている製造方法によって製造された
物も網羅すると考えられている1。このことは、物自体に対するクレームがない場合、クレーム
にかかる製造方法が特許権の管轄区域外で実施され、得られた生産物がその特許権の管轄区域に
輸入された場合に重要な保護手段を提供するものとなっている。
さらに、クレームされた製造方法による生産物が新規である場合、いくつかの管轄区域では、い
かなる同等な生産物もこれに反する証拠がない限り、クレームにかかる製造方法によって製造さ
れたと推定される、という法律に基づく推定を行なう2。このことは、特に証拠開示(ディスカ
バリー)が制限されている管轄区域において、製造方法クレームを主張する際に特許権者に証拠
揃えの負担を低減するものとなっている。
当然、もしその製造方法による生産物が新規性かつ進歩性を有するものであれば、生産物自体を
対象としたクレームとすることが望ましい。しかし、場合によっては、特に化学および生命科学
の分野において、その物の構造または化学的特徴によって定義することが困難または不可能であ
ることがある(確かに、正確な構造または化学式はその時点では完全には分かっていないことが
多い)。
これらの状況における一つの解決策は、その物を製造するために用いた製造方法によってその物
を特徴付ける物クレームの形式を使用することである。このようなクレームは例えば、「製造方
法Yによって得られる生産物X」または「製造方法Yによって得ることができる生産物X」となる。
このようなクレームは、一般に「プロダクト・バイ・プロセス」クレームと呼ばれており、製造
方法クレームのみによってもたらされる保護を超えてさらに強力な保護をもたらすことができる。
本稿では、プロダクト・バイ・プロセスクレームに対するいくつかの主要な管轄区域の解決手法
について検討し、さらに、実務者のための明細書作成および出願手続きに関するいくつかの提案
でまとめとしたい。
米国
米国では、プロダクト・バイ・プロセスクレームの解釈が未だに確定されておらず、連邦巡回裁
判所からは2つの相反する判例が出されている。
一つ目の判例は、Scripps Clinic & Research Foundation 対 Genentech, Inc.3である。この判例
では、プロダクト・バイ・プロセスクレームが、記載された製造方法によって製造され「得た」
いずれの物も網羅するように広く解釈されるべきであるとされている。すなわち、かかるクレー
ムは、その物が実際にはどのようにして製造されたかに関する制限なしに、物自体に対するクレ
1
35 合衆国法典第 271 章(g)-欧州特許条約第 64 条(2)-日本国特許法第 2 条 3 項 3 号
日本国特許法第 104 条、カナダ国特許法第 55.1 項
3
18 米国特許審判決集(USPQ) 第 2 集 1001 (Fed. Cir. 1991)
2
ームとして扱われたのである。当然、これには物自体が従来技術に対して新しく、かつ、非自明
であることが必要となる。
もう一つの判例は、Atlantic Thermoplastics Corp. 対 Faytex Corp.4である。このケースでは、
権利侵害が成立するためには、その物が「プロダクト・バイ・プロセスクレーム」の侵害となる
ために、クレームに記載された製造方法によって製造されていなければならないとされた。この
より狭い解釈により、製造方法クレームのみによってもたらされるであろう保護に対して、「プ
ロダクト・バイ・プロセスクレーム」が何らのさらなる追加的保護ももたらさなくなることが理
解されよう。
侵害訴訟手続きにおける正しい解釈が何であれ、米国特許商標庁(USPTO)では特許性を評価
する際、上述の Scripps 判例において優先された広い解釈を採用している。この広い解釈には、
物自体が従来技術に対して新規かつ非自明でなければならない。
具体的には、米国特許審査基準(MPEP)では以下のように記載されている5。
たとえ、プロダクト・バイ・プロセスクレームが、製造方法によって限定され、定義さ
れるとしても、特許性の決定は物自体に基づくものとなる。物の特許性は、その製造方
法には左右されない。もし「プロダクト・バイ・プロセスクレーム」における物が従来
技術の物と同じであるか、それから自明であれば、たとえ従来の物が異なる製造方法に
よって製造されていたとしても、かかるクレームは特許不可となる。
幾分か矛盾してはいるが、Atlantic Thermoplastics 事件において裁判所は、米国特許商標庁が
この広い解釈を使用することを認めている。とは言え、これに続き同裁判所は権利侵害を評価す
るために、別のより狭い解釈を採用した。
米国にこのような不確実性が存在するからといって、特許権者はプロダクト・バイ・プロセスク
レームによる権利化を思いとどまるべきではない。なぜなら、より広い Scripps の解決手法が権
利侵害の検討においては最終的には主流となる可能性もあるからである。
米国では、プロダクト・バイ・プロセスクレームは多くの様々な形式を取ることができる。例え
ば、「製造方法Yから 得られる(obtained)生産物X」または「製造方法Yにより 製造される
(produced) 生産物X」または「製造方法Yから 得ることができる(obtainable) 生産物X」な
どである。3個の全ての形式は、尐なくとも出願手続きの間は同じ広い範囲を与えられているよ
うに見えるが、「得ることができる」の形式は比較的に稀であり、クレームが不明確であるとい
う米国審査官からの拒絶に対しては、恐らくより弱いであろう。しかし、米国特許商標庁は明確
であるかを評価する際に、製造方法の各工程によって示唆される構造を考慮に入れるべきである
ことは確かに認識している。
具体的には、米国特許審査基準(MPEP)では以下のように記載されている6。
特に、物がその物が製造される製造工程によってのみ定義できる場合、または製造方法
の工程が最終生産物に明確な構造的特徴を与えると考えられる場合に、製造方法の工程
によって示唆される構造は、従来技術に対してプロダクト・バイ・プロセスクレームの
4
23 USPQ 第 2 集 1481 (Fed. Cir. 1992)
第 2113 節
6
第 2113 節
5
特許性を評価する際に考慮されるべきである。例えば、In re Garnero, 412 F.2d 276,
279, 162 米国特許審判決集(USPQ)221, 223 (CCPA 1979)を参照されたい。
ヨーロッパおよび日本
ヨーロッパおよび日本では一般に、プロダクト・バイ・プロセスクレームが、その物が実際には
どのように製造されるかに関する制限なしに、物自体に対するクレームとして広く扱われている
7
。そのため、ヨーロッパおよび日本の双方における解決手法は、 Scripps 事件において米国で
採用されたより広い解決手法と類似したものとなっている。
例えば、EPOガイドラインでは以下のように明記されている8。
製造方法に関して定義される物のクレームは、物自体が特許要件を満たす場合にのみ、
すなわち、とりわけかかる物が新規かつ進歩性を有する場合にのみ、許可されることが
できる。物が、単に、新しい製造方法によって製造されたという事実のみによっては、
新規であるとはされない(T 150/82, OJ 7/1984, 309を参照)。製造方法に関して定義さ
れる物のクレームは、物自体に対するクレームとして解釈されるべきである。かかるク
レームは、例えば「製造方法Yによって得ることができる生産物X」の形式を取ることが
できる。プロダクト・バイ・プロセスクレームに使用されている用語が「得ることがで
きる(obtainable)」、「得られる(obtained)」、「直接得られる (directly
obtained)」、または類似の文言であるか否かにかかわらず、かかるクレームは、依然
として物自体に関するものであり、当該物に対して絶対的な保護を与える(T 20/94を参
照。OJ(欧州特許庁公報)では非公開)。
ガイドラインからはEPOが、用語「得られる」および「得ることができる」を同等に扱っている
ことが明らかであるが、各国の裁判所では必ずしも同じ解決手法が取られているわけではない。
例えば英国の裁判所では、過去に、用語「得られる」を実際に特定の製造方法によって製造され
た物に限定されるものとしてクレームを扱っている。これに対して、用語「得ることができる」
は、物自体に対するより広いクレームとなっている。したがって、ヨーロッパにおいては、「得
ることができる」の形式を採用することが推奨されている。
筆者の理解では、日本国特許庁は「得ることができる」の形式で書かれたクレームを許可せずに、
「得られる」の形式を物自体に対するクレームとして広く解釈している。
米国に関して上記に触れたように、ヨーロッパおよび日本で採用されているこの広い構成のクレ
ーム・タイプは、不明確および/または記載不十分/実施可能要件に関する拒絶を潜在的にもた
らし得るものである。これは、生産物Xの物理的または化学的特徴が開示の内容からは直ちに明
らかではない可能性があることに基づく。確かに、その物を構造または化学的な用語で定義する
ことが困難または不可能であるというまさにその事実が、出願人がプロダクト・バイ・プロセス
クレームを出願に含めることを選択した理由そのものとなり得るのである。
プロダクト・バイ・プロセスにおける明示的な構造上または化学的な特徴の欠如は、プロダク
ト・バイ・プロセスクレームの権利行使の困難性にもつながり得るものである。具体的には、プ
7
ヨーロッパ-T 150/82、OJ 7/1984,309、日本-F. Hoffman La Roche 対 大塚製薬(株)他(
平成 06(ネ)第 2857 号)、東京高等裁判所、1997 年 7 月 17 日
8
ヨーロッパ特許庁審査ガイドライン:C-III-4.7b
ロダクト・バイ・プロセスクレームが物自体を保護すると理解されている一方、侵害被疑品が、
クレームにかかる物と構造上または化学的に同一であるか否かがしばしば問題となる。クレーム
にかかる物は、もちろん、構造または化学的性質に関しては定義されずに、かかる物を製造する
製造方法に関して定義されている。実務的には、原告側に物の構造、または化学的な特徴/性質
の特定を要求される可能性が高い。すなわち、クレームの製造方法における1以上の工程に起因
し、および侵害被疑品に存在し、さらに、従来技術の物とは区別される、物の構造、または化学
的な特徴/性質の特定を要求される可能性が高い。このことは、プロダクト・バイ・プロセスク
レームについて権利行使する段階になって、原告にかかる困難な証拠揃えの負担として判明し得
る。しかし、同様に、潜在的な侵害者にとっても、その特許に明示された方法と異なる方法が使
用されている場合における彼らの製品が、プロダクト・バイ・プロセスの範囲内であるか否かを
決定することは困難になり得る。結果的に、このようなクレームは有効な抑止力効果を確かに有
し得るものである。
オーストラリア
興味深いことに、オーストラリアの特許法は、「得られる」および「得ることができる」の形式
の間に明確な区別を設けている。したがって、プロダクト・バイ・プロセスクレームの構成は、
選択されたクレーム形式に左右される。
主に2種のプロダクト・バイ・プロセスクレームの形式がある。
「製造方法Yによって得られる生産物X」、および
「製造方法Yによって得ることができる生産物X」
オーストラリアでは、用語「得られる」の構成に対して「ありのままの英語」の解決手法を取っ
ており、「得られる」のクレーム形式を、生産物Xに関するものとするが、製造方法Yによって
実際に製造された場合のみのものとして扱っている。上記で注目したように、法律上の定義によ
れば、クレームにかかる方法により実際に製造された物が保護される当該方法クレームの観点か
ら、このようなクレームは余分である。
一方、オーストラリアでは、物を製造するために使用される方法に関して何らの制限もなしに、
「得ることができる」クレームを生産物X自体に関するクレームとして扱っている。9そのため、
オーストラリアはヨーロッパに従っており、日本(および、恐らく米国も)では、プロダクト・
バイ・プロセスクレームが物自体を保護し得ることが認識されている。
オーストラリアでは、EPOガイドラインと同様に、オーストラリア審査官マニュアルに上記の解
決手法が組み込まれており、以下のように記載されている10。
ある限定的な状況において、ある物質は、その化学的構造または組成が未確定であるた
めに、新規性かつ進歩性は有し得ても、それが製造される方法の言及によってのみ定義
することが可能である(例えば、製造方法Yによって得ることができる化合物X)。この
ような状況において、方法に関してかかる物質を定義するクレームは、その物質自体に
関するクレームとなる。
9
Merck 対 Sankyo [1991] APO 27
10
パート 3.23.2.2
審査官マニュアルのかかる記載は、「得ることができる」のクレーム形式が物の化学的構造また
は組成が未確定である場合にのみ可能であることを示唆している。しかし、筆者の経験では、以
下に検討するように、この制限は厳格に実行されているものではなく、この規則に対する例外が
存在するように思える。
最近、オーストラリア特許庁は「得ることができる」のクレーム形式を扱う、異議決定11を下し
た。この最近の決定は、主に免疫グロブリン含有血漿粗タンパク質の断片から免疫グロブリンG
(IgG)を精製するための方法に関する特許出願に関連するものであった。
クレーム1~13は、沈殿析出、イオン交換による非IgGタンパク質除去、および、2つのウィルス
不活性化工程を含む13工程からなる方法に関するものであった。クレーム14および15は、前述
の方法クレームから「得ることができる」免疫グロブリン生産物に関するものであった。クレー
ム16乃至23は、指定された純度および含有量を有する免疫グロブリン生産物に関するものであ
った(これにより、この場合のかかる生産物の組成が未確定であったことを示唆する傾向のもの
であった)。
予想通り、オーストラリア特許庁は、「得ることができる」クレーム14および15を、精製免疫
グロブリンG自体に関するクレームとして広く解釈した。具体的には、決定書の第24段落におい
て以下のように述べられている。
Merck 対 Sankyo12を参照して、異議申立人が主張したことは、用語「によって得ること
ができる」の使用により、クレーム14および15の生産物はクレーム方法によって製造さ
れるものに限定されず、いかなる方法によって製造され得る免疫学的生産物をも包含し、
クレームされている方法によって製造が可能であるもののみに限定されるというもので
あった。私はこの結論に賛成するが、実際の文言では、クレームされている第13工程の
精製処理の実施により、明細書で説明されているように、非常に特有の純度および安定
性を備えたIgG生産物を生じることに注意されたい。その結果、この用語は、方法を開
示されたものに限定はしない一方、生産物は定義された方法の生産物に事実上は限定さ
れる。
さらに異議申立人の主張は、このような広いクレームは、精製IgGを製造するための一の方法し
か提供していない明細書の記載に「公正に基づいて」はおらず、それに対してクレームは、精製
IgGがどのようにして製造されるかに関してのいかなる限定もなしに、精製IgGを包含するもの
となっているというものであった。この主張は、他の国における記載要件/実施可能性の問題と
類似しているものであろう。しかし、口頭審査官はクレームが明細書の記載に公正に基づいては
いないという主張を退け、第29段落において以下のように述べた。
本件においては、明細書が述べるところでは、本発明は、第1の態様において、免疫グロ
ブリン精製処理を含み、第2の態様において、純度、臨床副作用および相互作用がなく、
達成純度のレベルがもたらす安定性という有利な特徴を組み合せた免疫グロブリン生産
物を含んでいる。本明細書では、明細書中において多数にわたって、かかる生産物が本
発明の製法により「得ることができる」ものとして明示的に言及されている。
11
12
Statens Serum Institute 対 Octapharma AG [2007] APO 10 (6 March 2007)
Merck 対 Sankyo [1991] APO 27
口頭審査官は第30段落で以下のように続けている。
したがって、本明細書の大部分が、IgG生産物を調製するために出願人が使用した製法
および条件に関してはいるものの、本明細書は、本発明が開示の方法によって製造され
た生産物には限定されないという明確な記載も提供している。また、本発明は、(クレ
ーム16にあるように)具体的な特性によって明示的に定義されたIgG自体、またはこれ
らの特性を有するIgGを本来的にもたらす記載の製法への言及により暗示的に定義され
たIgG自体も含んでいる。結果として、当審査官は、クレーム1乃至13(原文のまま)は
明細書に記載の発明に公正に基づいていると考える。
したがって、出願人が物自体を発明の一態様として考えることを予め示していた場合、オースト
ラリア特許庁は、このクレームタイプを、記載要件/サポート要件/実施可能性の欠如に関して
拒絶可能であるとは考えないようである。
異議手続において、異議申立人は、プロダクト・バイ・プロセスクレーム14および15が、公知
のIgG精製処理および生産物を開示する従来技術(D7)に対して、新規性および進歩性を欠いて
いることも主張した。
しかし、従来技術のIgG精製方法は、本発明の方法によって達成されることが主張されている高
レベルの純度について明示的には開示していなかった。さらに、従来技術の方法に従って製造さ
れるIgGの実際の純度に関する何らの実験的証拠も異議申立人側によって作成されなかったよう
である。したがって、この口頭審査官は第53段落で以下のようにまとめている。
したがって、当審査官は、D7に記載されている方法によって製造される生産物が、クレ
ーム1乃至13の方法の生産物の純度または安定性の特性を有するであろうとは確信して
いない。結果として、当審査官の見解は、D7は、クレーム14および15の生産物に対して
「明確かつ疑う余地のない関連性」は与えないというものである。
さらに、進歩性に関しては、なぜ当業者(以下、「PSA」)が従来技術の製造方法をクレームに
かかる製造方法のものに変更しようとするであろうかの問題について異議申立人からの何らの強
力な証拠がない中で、口頭審査官は、第83段落で以下のようにまとめている。
新規性に関して検討したように、この文献(D7)は、pH 6.0より下で行なわれる陰イオ
ン-陽イオン連続交換法を含んでおらず、生産物の純度レベルの明確な記載も含んでい
ない。ただ、生産物が「ほぼ100%純粋」であり、「凝集免疫グロブリンG、免疫グロブ
リンE、およびIgAがない」ことを述べているだけであり、IgGサブタイプの分布、また
はIgGのモノマーとダイマーとの比率に関しては何らの示唆もない。上述のとおり、当
審査官は、この文献または一般的な技術常識により、PSAが、クレームされている製造
方法により得ることができる生産物の製造を確保するために、必要とされる製造方法の
正確な変更を選択するように導くであろう何らかの教示が与えられているとは考えない。
加えて、クレーム16およびその従属クレームに定義される特徴を有する生産物を達成す
るために、PSAが開示の方法をどのように変更するのかを通常行われるものとして想到
し得ることを、異議申立人は立証していないと当審査官は考える。
口頭審査官は、クレームにかかる方法、および故に、クレームにかかる物を達成するために、
PSAが、従来技術の製造方法を、日常的に通常行われる範囲内のものとして変更したものではな
いということを根拠として、進歩性欠如に関する主張を却下したようである。しかし、敬意を払
えば、これは、プロダクト・バイ・プロセスクレームがクレームされている方法により製造され
ていることには限定されないという事実を見過ごしているように思える。それはそれとして、本
決定の観点は批判の的となり得るものであろう。そのような批判にかかわらず、新規な物である
と出願人が確信している場合であれば、出願人は、その物が進歩性に関して疑義の余地があって
も、プロダクト・バイ・プロセスクレームを含めるべきであるように思われる。
要約および提案
1.
製造方法が新規性および進歩性を有する物をもたらす場合、物クレームは、当然、常に
出願に含められるべきである。
2.
そのような物が、構造または化学的な文言で定義することが困難である場合、プロダク
ト・バイ・プロセスクレームも含められるべきである。当該物が、構造または化学的な文言で容
易に定義できる場合であっても、プロダクト・バイ・プロセスクレームも含めることによって特
許権者に利点がある可能性もある。
3.
明細書を起草する際は、「得られる」および「得ることができる」の双方の形式でプロ
ダクト・バイ・プロセスクレームを記載できるような基礎となる記載を含めることが推奨される。
「得ることができる」の形式は、可能な国であれば(例えば、ヨーロッパおよびオーストラリ
ア)使用されるべきである。「得られる」の形式は、クレームにおいて「得ることができる」の
形式が許可されない国々(例えば、日本)で使用されているが、これらの国々では「得られる」
のクレーム形式を物自体に関するものとして広く解釈されている。
4.
オーストラリア特許庁および裁判所が「得られる」と「得ることができる」とを異なっ
た取扱いとしていることに注意されたい。したがって、審査官は「得ることができる」のクレー
ム形式をサポート要件不足としてしばしば拒絶するが、審査官が頻繁に提案するクレームを「得
られる」に補正するという手段を採るよりは、むしろ、かかる拒絶に対して反論することを推奨
する。なぜなら、かかる補正によりクレームの範囲が大きく縮小されてしまうからである。
© 2007 - Bill Bennett & Nick Finnie、Pizzeys 特許商標事務所、オーストラリア
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