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【日本機械工業連合会会長賞】 ヒータ電力ゼロ自動販売機(ハイブリッド

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【日本機械工業連合会会長賞】 ヒータ電力ゼロ自動販売機(ハイブリッド
【日本機械工業連合会会長賞】
ヒータ電力ゼロ自動販売機(ハイブリッド ZERO)
富士電機株式会社
東京都品川区
1. 機器の概要
ヒータ電力ゼロ自動販売機(ハイブリッド
ZERO)は、従来機では電気ヒータを使用していた
使用条件下(特に温かい飲料商品の割合が多くな
る冬季)においても、効率の良いハイブリッドヒ
ートポンプによる加熱を可能とし、年間を通じて
大幅な省エネと消費電力の低減を実現した。
従来の自動販売機は、冬季など飲料商品を温め
るために必要な加熱量が多くなる一部の条件下に
おいてヒートポンプによる加熱量が不足するため、
電気ヒータにより加熱量を補っていた。
そこで本機は、以下の方策を採用した。
図 1 ヒータ電力ゼロ自動販売機
(ハイブリッド ZERO)
・圧縮機の排熱を利用する「新冷却回路」
・フィン形状により熱交換効率を向上させた「オールアルミ熱交換器」
・圧縮機メーカと共同開発した自動販売機用の「高効率圧縮機」
これらの採用により、加熱のためのヒータ電力をゼロとすることができ、大幅
な省エネと、冬季の消費電力の低減を実現した。
2. 機器の技術的特徴および効果
2.1
技術的特徴
2.1.1 新冷却回路
電気ヒータを搭載していない本機において、ヒートポンプで飲料商品を温
めるために必要な最大熱量は、従来機に比べ約 2 倍である。特に、外気温度が
低い冬季においては、圧縮機の吐出温度が低下するため、従来通りのヒートポ
ンプでは加熱量が不足する。この不足分の加熱量を確保するため、本機におい
ては図 2 に示すように、レシプロ圧縮機のサービス用プロセスポートから冷媒
を戻す構造とした。この構造では、一般的な吸込ポートから戻す場合に比べ冷
媒が圧縮機内を通りシリンダ入口に至る経路が長くなり、圧縮機の熱をより多
(a) 圧縮機外観図
(b) 縦断面図
図 2 圧縮機の外観と縦断面の模式図
く受けシリンダ入口の温度が上昇することにより圧縮後の吐出温度を上昇さ
せることが可能となっている。つまり圧縮機の排熱をより積極的に活用するこ
とができ、圧縮後の高温高圧冷媒から取れるヒートポンプ加熱量が約 20%増大
した。この効果を圧縮機回転速度の増加と併用することで、システム効率を維
持しつつ、2 室同時加熱の能力確保を可能とした。
2.1.2 オールアルミ熱交換器
新冷却回路で効果のあった加熱量の増加に対して、従来の熱交換器では放
熱量が不足しており熱交換量を増加させる必要があった。一般的には熱交換器
の伝熱面積を拡大することで、熱交換量を向上させる方法があるが、熱交換器
の寸法を大きくすることは庫内寸法の制約上限られる。そのため寸法を維持し
ながら、アルミニウムフィンを構成するフィン間隔を狭小化(フィン枚数増加)
して熱交換面積の拡大により熱伝達を向上させた(図 3)。しかしながら、ピ
ッチ狭小化、ルーバー枚数増加に伴う空気抵抗増加、着霜による流路通過断面
積減少の影響により、圧損が増大し、伝熱性能が低下する課題があった。そこ
で熱流体解析により流路の最適な形状を求めた。この解析では、熱伝達率の
32%向上の結果を得た。流体解析の結果の一例を図 4 に示す。
8mmピッチ(従来機)
8mmピッチ(従来機)
(a) 従来機アルミニウムフィン
6mmピッチ(申請機)
(b) 本機アルミニウムフィン
図 3 アルミ熱交換器のアルミニウムフィン形状
6mmピッチ(申請機)
図 4 アルミ熱交換器の熱流体解析結果
2.1.3 高効率圧縮機
本機においては、自動販売機の省エネ効果を最大化するため、圧縮機メー
カーと共同で高効率圧縮機を開発した。この高効率圧縮機は、自動販売機の使
用領域(熱負荷)に最適化した仕様とすることで、信頼性を維持しつつ効率ア
ップを実現した。例えば、自動販売機で使用しない高回転数領域を仕様外とす
る(最高回転数を 20%低減)ことで、圧縮機を高効率にチューニングが可能と
なった。また同時に、高外気温度でもヒートポンプ加熱を可能とするため、低
回転数領域を 12%拡大した。この共同開発により、全体として約 10%の高効率
化を達成した。
2.2
効果
本機においては、電気ヒータによる加熱を全て圧縮機によるヒートポンプ加熱
に代替が可能になったことより、ヒートポンプ加熱時の COP(Coefficient of
Performance)が 110%増加し、省エネ性が大幅に向上した。
この大幅な COP の改善により、本機は表 1 に示す通り従来機の同機種に対し当
社比 45%の年間消費電力量低減を達成した。弊社は年間消費電力量を独自の試験
方法で測定している。
この測定方法は試験条件をより実使用条件に近づけるため、
四季を通じた自動販売機の一般的な使われ方を想定し、外気温度やホットとコー
ルドの飲料商品数を変えながら測定するものである。
表 1 従来機と本機の消費電力量比較
従来機
本機
削減量
(FJH36M6RD9R)
年間消費電力量※1
1 台当り CO2 排出量※2
1,470 kWh
810 kWh
742 kg-CO2
409 kg-CO2
35,280 円
19,440 円
年間電気料金※3
640 kWh(▲45%)
333 kg-CO2(▲45%)
15,840 円(▲45%)
※1 当社独自規定の年間消費電力量測定方法による
※2 東京電力のCO2排出原単位(0.505kg-CO2/kWh)による
※3 1kWh 当たり電気料金 24 円で計算
また、冬季の消費電力を従来機と比較
すると、図 5 のように従来機で 60%以上
を占めていた電気ヒータの消費電力が本
機では 0 になっている。また全体の消費
電力も従来機の 45%に抑えられており、
本機は冬季の電力需給バランスの改善に
も貢献できることがわかる。
図 5 消費電力の測定結果の従来機比較
3. 用途
ヒータ電力ゼロ自動販売機(ハイブリッド ZERO)は、使用条件やメンテナンス
性などが一般的な缶・ボトル自動販売機とほぼ同じであることから、省エネ・省
電力に特化した缶・ボトル自動販売機として設置され稼働している。またその経
済性からも、旧世代の自動販売機からの置き換えが進むと考えられ、環境や電力
需給バランスの改善に対する貢献が期待されている。
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