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要介護者の旅行に関する調査

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要介護者の旅行に関する調査
おかげさまで第一生命は、2012年9月に
創立110周年を迎えます。
2012年6月
家族を介護している 800 名に聞いた
『要介護者の旅行に関する調査』
~「要介護の親を旅行に連れて行くことは親孝行になる」と思う人は 72%。
要介護者との旅行の最大の不安は「宿泊先で入浴すること」
。~
第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所
(社長 長谷川 公敏)では、現在家族を介護している全国の男女 800 名を対象に、標記につ
いてのアンケート調査を実施いたしました。
この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。
≪調査結果のポイント≫
要介護者との旅行経験 (P.2)
● 「要介護者と旅行したことがある」人は 29%。
要介護者との旅行の実態① (P.3)
● 「個人旅行」が 92%。旅行先は「国内」が 97%。
平均宿泊数は 1.6 泊。宿泊先は「ホテル」「旅館」がともに 43%。
要介護者との旅行の実態② (P.4)
● 旅行先でおこなったことは「温泉浴」が 61%。利用した交通機関は「自家用車」が 71%。
要介護者との旅行の実態③ (P.5)
● 旅行の同行者は「配偶者」が 55%、「子ども」が 28%。
● 旅行の提案者・計画者・費用負担者は、いずれも「自分」が過半数。
旅行後の評価 (P.6)
● 要介護者の8割以上、介護者の7割以上が「旅行を楽しめた」「旅行で気分転換できた」。
要介護者と旅行したことがない理由 (P.7)
● 「要介護者が旅行するのは無理だと思うから」が 41%、「要介護者が旅行したがらないか
ら」が 32%。
要介護者との旅行に対する不安・旅行時の困難 (P.8)
● 「要介護者が宿泊先で入浴すること」が最も不安であり困難。
● 旅行前の不安ほど実際の旅行時には困らない。
要介護者が旅行することに対する考え (P.10)
● 「旅行することは要介護者の心身のためになる」と思う人は 77%、
「要介護の親を旅行に連れていくことは親孝行になる」と思う人は 72%。
要介護者の旅行環境に対する問題認識・意向 (P.11)
● 要介護者が旅行するための「設備やサービス」「情報」が不足していると思う人は8割以上。
☆本冊子は、当研究所から季刊発行している『ライフデザインレポート』Summer 2012.7を
もとに作成したものです。当該レポートは、下記のホームページにて全文公開します。
<お問い合わせ先>
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当(安部・新井)
TEL.03-5221-4771
FAX.03-3212-4470
【アドレス】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi
≪調査の実施背景≫
近年、高齢者、障害者、外国人などを含め、誰もが旅行を楽しめるようにするための取
り組みが、国や自治体、民間事業者、NPO などさまざまな主体によって進められています。
また、「バリアフリー」「ユニバーサル(デザイン)」「アクセシブル」と、「旅行」「ツーリ
ズム」「観光」とを組み合わせて、「バリアフリー旅行」「ユニバーサルツーリズム」「アク
セシブル観光」といった言葉も使われるようになっています。
また、高齢化の進行とともに、介護を必要とする人は年々増加しています。それにとも
ない、介護が必要になっても旅行したいという人や、介護が必要な親などを旅行に連れて
行って孝行したい人も増えていると予想されます。
この調査では、介護を必要とする人やその家族の旅行の実態と旅行に対する意識を明ら
かにし、彼らがより旅行しやすくなるための課題を検討することを目的に実施しました。
≪調査の実施概要、回答者の特性≫
1.調査対象
家族を現在介護している男女
800 名
2.調査地域
全国
3.調査方法
インターネット調査(株式会社クロス・マーケティングに委託)
4.実施時期
2011 年 11 月
5.回答者・要介護者の属性
(単位:%)
[回答者]
経験者(旅行時)
経験者(現在)
非経験者(現在)
性別
男性
女性
計
57.0
43.0
100.0
54.4
45.6
100.0
年齢
30歳未満
9.2
7.9
8.6
30代
21.9
15.4
12.4
40代
32.9
32.0
31.1
50代
25.9
31.1
30.4
60歳以上
10.1
13.6
17.5
計
100.0
100.0
100.0
[要介護者]
回答者からみた続柄
自分の父親 自分の母親 配偶者の父親 配偶者の母親 祖父母 配偶者 その他
経験者(現在)
21.9
32.0
3.9
11.8
10.1
12.3
7.9
非経験者(現在)
23.3
39.0
5.1
11.5
14.2
2.4
4.5
年齢
60歳
未満
経験者(旅行時) 19.7
経験者(現在)
12.7
非経験者(現在) 4.7
60代
70代
12.3
7.9
7.9
29.4
27.2
28.5
80歳
以上
38.6
52.2
58.9
計
100.0
100.0
100.0
計
100.0
100.0
要支援・要介護度
要介護 要介護 認定は受 わから
要支援
計
1~2 3~5 けていない ない
22.8
32.9
24.6
11.4
8.3
100.0
18.4
32.9
32.5
9.2
7.0
100.0
13.0
30.8
38.9
9.3
8.1
100.0
注:「経験者(旅行時)」とは旅行経験者(n=228)の旅行時の属性、「経験者(現在)」とは旅行経験者(n=228)の現
在の属性、「非経験者(現在)」とは旅行非経験者(n=572)の現在の属性。旅行経験者、旅行非経験者についての
説明は次ページ参照。
1
要介護者との旅行経験
「要介護者と旅行したことがある」人は 29%。
図表1 要介護者との旅行経験の有無
(n=800)
旅行した
ことは
ない
71.5%
旅行した
ことがある
28.5%
現在介護している家族(以下、「要介護者」)と、介護が必要になった後に一緒に一泊以
上の旅行したことがあるかたずねました(図表1)。その結果、「旅行したことがある」と
答えた人は 28.5%、「旅行したことはない」と答えた人は 71.5%でした。
以下では前者を「旅行経験者」、後者を「旅行非経験者」と表記します。
次の3~6ページでは、旅行経験者に対して直近の旅行についてたずねた結果を紹介し
ます。
2
要介護者との旅行の実態①
「個人旅行」が 92%。旅行先は「国内」が 97%。
平均宿泊数は 1.6 泊。宿泊先は「ホテル」「旅館」がともに 43%。
図表2-1 旅行の形態
図表2-2 旅行先
(n=228)
(n=228)
一般の
団体旅行
2.6%
海外
3.1%
主に
要介護者や
その家族を
対象とした
団体旅行
5.3%
同一の
都道
府県
38.2%
他の
都道
府県
58.8%
個人旅行
92.1%
国内
96.9%
図表2-3 宿泊数
図表2-4 宿泊先<複数回答>
(n=228)
(n=228)
0
4泊以上
4.8%
10
民宿
国民宿舎・休暇村などの
公共の宿泊施設
会社・官公庁の寮・保養所
40
50 (%)
43.4
旅館(和式)
11.0
知人・親戚・家族宅
1泊
65.8%
30
43.4
ホテル(洋式)
3泊
10.1%
2泊
19.3%
20
4.4
3.9
1.8
別荘・貸別荘
0.9
その他
0.9
注:いずれも旅行経験者の回答
旅行の形態(図表2-1)は「個人旅行」(92.1%)が大半です。「主に要介護者やその
家族を対象とした団体旅行」(5.3%)や「一般の団体旅行」(2.6%)に行った人はほとん
どいません。
旅行先(図表2-2)は「国内」(96.9%)が大多数であり、「海外」(3.1%)は少数で
す。国内旅行で行った都道府県は、旅行当時に要介護者が住んでいた都道府県と同一であ
る割合(38.2%)よりも他の都道府県である割合(58.8%)のほうが高いです。
宿泊数(図表2-3)は「1泊」
(65.8%)が3分の2近くを占めます。平均宿泊数は 1.60
泊です(図表省略)。
利用した宿泊施設(図表2-4)は、「ホテル」と「旅館」がともに 43.4%です。
3
要介護者との旅行の実態②
旅行先でおこなったことは「温泉浴」が 61%。
利用した交通機関は「自家用車」が 71%。
図表3-1 旅行先でおこなったこと<複数回答>
図表3-2 利用した交通機関
(n=228)
0
20
40
60
ドライブ
32.9
名所・旧跡を見る
32.0
18.0
知人・親戚・家族宅の訪問
動・植物園・水族館、博物館、
美術館、郷土資料館見物
12.3
神仏詣
11.4
墓参り・法事
11.4
12.7
7.9
飛行機
12.3
7.0
タクシー・ハイヤー
11.8
3.5
路線バス
4.8
0.4
貸切バス
3.9
2.2
4.8
1.3
船舶
1.3
-
その他
1.3
0.4
忘れた
60
80 (%)
17.1
11.0
レンタカー
14.5
季節の花見
40
70.6
67.1
鉄道
43.4
特産品等の買い物・飲食
20
自家用車
54.8
自然の風景を見る
忘れた
0
80 (%)
60.5
温泉浴
その他
(n=228)
0.4
0.4
利用した交通機関
(複数回答)
主に利用した交通機関
注:いずれも旅行経験者の回答
旅行先でおこなったこと(図表3-1)は「温泉浴」(60.5%)が最も多く、次いで「自
然の風景を見る」(54.8%)、「特産品等の買い物・飲食」(43.4%)、「ドライブ」(32.9%)、
「名所・旧跡を見る」(32.0%)となっています。
旅行で利用した交通機関(図表3-2)は、複数回答でたずねた結果では「自家用車」
(70.6%)が最も多く、2位の「鉄道」(17.1%)を大きく引き離しています。主に利用し
た交通機関(1つのみ選択)もまた「自家用車」(67.1%)が圧倒的に多いです。「レンタ
カー」(7.9%)と合わせると4人に3人は、主な交通機関として自動車を使っていること
がわかります。要介護者にとっては鉄道などの公共交通機関よりも自動車のほうが旅行し
やすいためだと考えられます。
4
要介護者との旅行の実態③
旅行の同行者は「配偶者」が 55%、「子ども」が 28%。
旅行の提案者・計画者・費用負担者は、いずれも「自分」が過半数。
図表4-1 回答者・要介護者以外の
旅行の同行者<複数回答>
図表4-2 旅行の提案者・計画者<それぞれ1つ
選択>・費用負担者<3つまで選択>
(n=228)
0
20
40
自分の母親
20
40
60
(%)
80
57.0
67.1
71.5
自分
25.9
配偶者の父親
4.4
配偶者の母親
4.4
24.1
23.2
31.6
要介護者・自分以外の
旅行の同行者
14.9
27.6
子ども
要介護者
6.6
23.7
1.3
18.4
兄弟姉妹
祖父母
2.6
孫
3.9
8.3
その他の家族・親戚
友人・知人
0
18.0
自分の父親
家族・親戚や友人・知人以外の
団体旅行の参加者
(%)
60
54.8
配偶者(夫または妻)
子どもの配偶者
(n=228)
旅行に同行しなかった
家族・親戚
2.2
1.8
2.2
旅行に同行しなかった
友人・知人
-
旅行の主催者・募集者
(旅行会社など)
0.9
2.6
-
団体旅行の添乗員・ガイド
0.4
介護スタッフ(ホームヘルパー、
ケアマネジャー、施設職員など)
0.4
医療スタッフ(医師、看護師など)
-
その他の人
-
自分と要介護者以外には
誰もいない
その他の人
1.8
1.3
0.4
わからない 0.4
8.3
旅行の提案者
(1つ選択)
旅行の計画者
(1つ選択)
旅行費用の負
担者(3つまで
選択)
注1:いずれも旅行経験者の回答
注2:続柄は回答者からみた続柄
回答者と要介護者以外の旅行の同行者(図表4-1)は、回答者の「配偶者」
(54.8%)
が過半数を占めます。その他では回答者の「子ども」(27.6%)や親(「自分の母親」25.9%、
「自分の父親」18.7%)が多いです。
旅行を主に提案した人、旅行を主に計画した人、旅行の費用を負担した人(図表4-2)
は、いずれも「自分」が半数以上であり、次が「要介護者・自分以外の旅行の同行者」、「要
介護者」となっています。
5
旅行後の評価
要介護者の8割以上、介護者の7割以上が
「旅行を楽しめた」「旅行で気分転換できた」。
図表5 要介護者・介護者の旅行後の評価
(n=228)
0
20
40
60
要介護者は
旅行を楽しめた
39.0
43.9
要介護者は旅行で
気分転換ができた
39.5
42.1
要介護者は
旅行に満足できた
36.4
自分は
旅行を楽しめた
28.5
自分は旅行で
気分転換ができた
27.6
自分は
旅行に満足できた
当てはまる
10.1 0.9 6.1
7.5 3.1 7.9
41.2
44.7
42.5
32.0
あまり当てはまらない
当てはまる
+やや
当てはまる
82.9
81.6
9.6 1.3 11.4
77.6
18.4
8.3
73.2
10.5
70.2
19.3
43.4
やや当てはまる
(%)
100
80
17.1
当てはまらない
7.5
75.4
わからない
注1:旅行経験者の回答
注2:「わからない」という選択肢は、回答者に関する質問項目(「自分は旅行を楽しめた」「自分は旅行で気分
転換ができた」「自分は旅行に満足できた」)にはない
旅行経験者に対し、要介護者、回答者自身がそれぞれ直近の旅行でどの程度楽しめたか、
気分転換ができたか、満足できたかたずねました(図表5)。
「要介護者は旅行を楽しめた」(82.9%)、「要介護者は旅行で気分転換ができた」
(81.6%)、
「要介護者は旅行に満足できた」(77.6%)に当てはまる(「当てはまる」+「や
や当てはまる」)と答えた割合はいずれも8割前後を占めています。
「自分は旅行を楽しめた」(73.2%)、「自分は旅行で気分転換ができた」(70.2%)、「自
分は旅行に満足できた」
(75.4%)に当てはまると答えた割合は、要介護者に比べると低い
ですがそれでも7割を超えています。
要介護者・介護者ともに多くの人は自分が行った旅行を評価していることがわかります。
6
要介護者と旅行したことがない理由
「要介護者が旅行するのは無理だと思うから」が 41%、
「要介護者が旅行したがらないから」が 32%。
図表6 要介護者と旅行したことがない理由<複数回答>
(n=572)
0
10
20
30
40.6
要介護者が旅行するのは無理だと思うから
要介護者が旅行したがらないから
31.5
24.7
自分に時間の余裕がないから
要介護者と旅行することに対して不安を感じるから
23.3
20.6
自分にお金の余裕がないから
要介護者を旅行中に介護できる人がいないから
9.8
何となく
9.8
要介護者にお金の余裕がないから
要介護者に介護が必要になってから間もないから
要介護者が周りの人の目を気にするから
50 (%)
40
7.5
6.1
5.2
注1:旅行非経験者の回答
注2:回答率が5.0%未満の項目、および「その他の理由」(5.8%)はグラフでは省略
旅行非経験者に対し、旅行したことがない理由を複数回答でたずねました(図表6)。
「要介護者が旅行するのは無理だと思うから」(40.6%)、「要介護者が旅行したがらない
から」(31.5%)、「自分に時間の余裕がないから」(24.7%)、「要介護者と旅行することに
対して不安を感じるから」(23.3%)、「自分にお金の余裕がないから」(20.6%)の順に多
いです。その他の項目は1割に達しません。
旅行は無理・不安という介護者側の心理的要因、旅行したがらないという要介護者側の
心理的要因、そして時間・費用の余裕がないという介護者側の時間的・経済的要因が、要
介護者の旅行を主に阻害しているといえます。
7
要介護者との旅行に対する不安・旅行時の困難
「要介護者が宿泊先で入浴すること」が最も不安であり困難。
旅行前の不安ほど実際の旅行時には困らない。
図表7 旅行に対する不安、旅行時の困難
旅行非経験者(n=572):要介護者と旅行するとしたら不安(注1)
旅行経験者(n=228):要介護者と旅行する前に不安だった(注2)
旅行経験者(n=228):要介護者と旅行した際に当てはまった(注3)
(%)
100
①
84.4
80
④
78.7
①
84.4
74.1
③
79.4
69.6
⑤
74.8
71.7
67.5
60
40
①
53.5
44.7
①
57.2
⑤
46.5
③
48.2
②
39.9
③
57.2
53.1
38.6
④
②
48.7
49.5
39.5
36.8
34.6
33.3
28.9
36.0
⑤
32.0
21.1
29.8
28.5
25.9
28.5
25.0
20
21.9
20.6
19.3
18.9
18.4
17.5
17.1
旅行のスケジュールやコースが
要介護者に合わない
要介護者の体調が悪くなる
他の旅行者・観光客に
迷惑がかかる
周りの人から嫌な思いを
させられる
食事が要介護者の体の状態に
合わない
観光地や宿泊先などの従業員に
迷惑がかかる
予算よりも旅行費用がかかる
要介護者が宿泊先で
寝起きすることが難しい
要介護者が宿泊先で
トイレに入ることが難しい
目的地(観光地・宿泊先など)
までの移動が難しい
予定よりも移動に時間がかかる
目的地(観光地・宿泊先など)
での移動が難しい
要介護者が移動中に
トイレに入ることが難しい
自分が疲れる
要介護者が宿泊先で
入浴することが難しい
0
64.7
④
46.9
39.0
43.0
72.7
注1:旅行非経験者が「不安」または「やや不安」と答えた割合
注2:旅行経験者が「不安だった」または「やや不安だった」と答えた割合
注3:旅行経験者が「当てはまった」または「やや当てはまった」と答えた割合
注4:丸数字はそれぞれ上位5項目の順位
旅行非経験者に対しては今後もし要介護者と旅行するとしたら不安なこと、旅行経験者
に対しては要介護者と旅行する前に不安だったこと、そして実際に旅行した際に当てはま
ったことをたずねました(図表7)
。
8
旅行非経験者が不安(「不安」+「やや不安」)と答えた割合は「要介護者が宿泊先で入
浴することが難しい」「目的地での移動が難しい」(それぞれ 84.4%)で8割を超えます。
その他のほとんどの項目に対しても過半数が不安と答えています。
旅行経験者が要介護者と旅行する前に不安だった(「不安だった」+「やや不安だった」)
と答えた割合は「要介護者が宿泊先で入浴することが難しい」(53.5%)、「要介護者の体調
が悪くなる」(48.7%)、「要介護者が移動中にトイレに入ることが難しい」(48.2%)の順
に高いです。旅行非経験者と同じく、宿泊先での入浴が最も大きな気がかりになっていま
す。
旅行非経験者が旅行するとした場合の不安に比べると、旅行経験者が旅行前に感じた不
安のほうがかなり小さいです。
旅行経験者が要介護者と旅行した際に当てはまった(「当てはまった」+「やや当てはま
った」)と答えた割合は「要介護者が宿泊先で入浴することが難しい」(44.7%)、「自分が
疲れる」(43.0%)、「要介護者が移動中にトイレに入ることが難しい」(39.9%)の順に高
いです。1・3・4位の項目は、旅行前に感じた不安で1・3・4位にあがった項目と同
じです。
旅行前の不安との差をみると、差が小さいのは「予算よりも旅行費用がかかる」と「予
定よりも移動に時間がかかる」です。費用や時間はおおむね予想通りだったことがわかり
ます。逆に、不安と困難の差が大きいのは「要介護者の体調が悪くなる」です。つまり、
心配したほど体調は悪くなっていません。
9
要介護者が旅行することに対する考え
「旅行することは要介護者の心身のためになる」と思う人は 77%、
「要介護の親を旅行に連れていくことは親孝行になる」と思う人は 72%。
図表8 要介護者が旅行することに対する考え(全体、旅行経験の有無別)
0
20
40
60
76.6
旅行することは
要介護者の心身のためになる
89.5
71.5
72.0
要介護の親を旅行に連れていくことは
親孝行になる
要介護者が旅行するのは
ぜいたくである
100 (%)
80
86.0
66.4
14.1
15.8
13.5
全体(n=800)
旅行経験者(n=228)
旅行非経験者(n=572)
注:「そう思う」と「ややそう思う」の合計
要介護者が旅行することに対する考えをたずねました(図表8)。
「旅行することは要介護者の心身のためになる」「要介護者の親を旅行に連れていくこと
は親孝行になる」と思う(「そう思う」+「ややそう思う」)割合はそれぞれ7割以上(76.6%、
72.0%)を占めています。逆に「要介護者が旅行するのはぜいたくである」と思う割合は
14.1%に過ぎません。多くの人は要介護者が旅行することに対して肯定的にとらえている
ことがわかります。
旅行経験の有無別にみると、「旅行することは要介護者の心身のためになる」「要介護者
の親を旅行に連れていくことは親孝行になる」と思う割合は、旅行経験者のほうがかなり
高いです。旅行経験者は要介護者が旅行することの効用をより実感しているといえます。
一方、「要介護者が旅行するのはぜいたくである」と思う割合は、旅行経験の有無による差
がほとんどありません。
10
要介護者の旅行環境に対する問題認識・意向
要介護者が旅行するための「設備やサービス」「情報」が
不足していると思う人は8割以上。
図表9 要介護者の旅行環境に対する問題認識・意向(全体、旅行経験の有無別)
0
20
40
60
100 (%)
80
< 問 題 認 識 >
85.8
85.5
85.8
要介護者が旅行するための
設備やサービスは不足している
87.5
85.5
88.3
要介護者が旅行するための
情報は不足している
72.3
66.7
74.5
要介護者が旅行するための
費用は一般の旅行より高い
76.4
76.3
76.4
要介護者が旅行することに対する
社会の理解は不足している
54.6
51.3
55.9
要介護者が旅行することに対する
世間の目は冷たい
< 意 向 >
全体(n=800)
旅行経験者
(n=228)
旅行非経験者
(n=572)
85.9
91.2
83.7
旅行を希望する要介護者が
もっと旅行できるようになるとよい
注:「そう思う」と「ややそう思う」の合計
要介護者が旅行する環境に対する問題認識と意向をたずねました(図表9)。
「要介護者が旅行するための情報は不足している」(87.5%)、「要介護者が旅行するため
の設備やサービスは不足している」
(85.8%)と思う割合は8割を超えました。要介護者が
旅行するための情報も設備・サービスも不足しているという認識が多数を占めています。
また、「要介護者が旅行することに対する社会の理解は不足している」(76.4%)、「要介護
者が旅行するための費用は一般の旅行より高い」(72.3%)という周囲の人の意識や経済的
環境に対するマイナス評価も大きいです。
「旅行を希望する要介護者がもっと旅行できるよ
うになるとよい」(85.9%)という意向を多くの人が持っています。
旅行経験の有無別にみると「要介護者が旅行するための費用は一般の旅行より高い」と
思う割合は旅行非経験者でやや高いですが、問題認識に関するその他の項目では差があま
りありません。一方、「旅行を希望する要介護者がもっと旅行できるようになるとよい」と
思う割合は、旅行非経験者(83.7%)より旅行経験者(91.2%)のほうが高いです。
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≪研究員のコメント≫
このアンケート調査では、要介護者(介護を必要とする人)およびその介護者である家
族の旅行の実態と旅行に対する意識に注目しました。
その結果、旅行非経験者(要介護者と旅行したことがない介護者)は、「要介護者が旅行
するのは無理」という意識を持っていました。また、宿泊先での入浴や目的地まで・目的
地での移動、移動中のトイレなど、さまざまな点に対する不安もあります。要介護者との
旅行は無理・不安という意識が旅行を阻害する一因になっています。
一方、旅行経験者(要介護者と旅行したことがある介護者)の多くは、旅行においてさ
まざまな困難を感じながらも、要介護者や自分自身が「旅行を楽しめた」「旅行で気分転換
ができた」「旅行に満足できた」と答えました。また、「旅行することは要介護者の心身の
ためになる」
「要介護の親を旅行に連れていくことは親孝行になる」と思っている旅行経験
者は9割近くにのぼります。旅行経験者は要介護者が旅行することの効用を実感している
といえます。
多くの介護者は「旅行を希望する要介護者がもっと旅行できるようになるとよい」と願
っている一方、要介護者と旅行するための「設備やサービス」「情報」が不足していると感
じています。要介護者が円滑に旅行できるようになるためには、身体的・経済的な負担を
軽減する設備・サービスや要介護者・介護者の不安の解消に役立つ情報などが必要でしょ
う。具体的には、入浴や移動を楽にするための設備・施設などのハード面の改善、旅行中
の介助サービスの提供、旅行先での医療機関や健康管理の方法に関する情報の周知や充実
などが重要と考えられます。
(研究開発室 上席主任研究員 水野映子)
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