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再生医療等製品に関連してどのような業務を行なっていますか アカデミア

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再生医療等製品に関連してどのような業務を行なっていますか アカデミア
グローバルな視 点に立ち、
日本からの再生医療産業化を促進
TO P
ME S SAG E
FIRM 代表理事・会長
戸田 雄三 氏
再生医療の研究分野で日本は世界トップクラスにあります。しかし、その成果
がそのまま社会に実装されるわけではありません。一般社団法人再生医療イノベー
ションフォーラム(FIRM)の使命は、再生医療という新しいサイエンスから生ま
れてくる成果を社会につなげることです。
日本では 2014 年に再生医療の実現を促進する 2 つの法律が施行され、世界で最
も再生医療の産業化が行ないやすい環境が整いつつあります。一方で、再生医療は
従来の薬とは異なる新しいサイエンスに基づいており、これまでの規制ではカバー
できない課題も存在します。この壁を超えて再生医療の可能性を最大限引き出すに
は、アカデミアだけでなく、細胞を生産、加工して患者様の手元に届けるまでの一
連のプロセスに関わる人々が知恵を出しあうことが必要です。
そこで、FIRM では 4 つの作業部会を立ち上げ、必要な時に製品を手に入れられ
る生産・流通、品質保証、適正な価格や保険制度、国際標準化技術など、企業1社
では解決が難しい課題に対して、多くの参加企業の知恵を集めて新しい枠組みを構
築していく体制を整えています。
確立した技術を日本国内企業で独占してしまうのではなく、世界標準にするこ
とで日本発の成果を患者様の元にいち早く届けることも重要です。そこで、欧米で
再生医療業界を取りまとめている The Alliance for Regenerative Medicine と
提携するなど、海外との連携を積極的に進めています。さらに、日本の先進的な
承認プロセスを知り、日本で再生医療の産業化に挑戦したいという海外企業が増
えていることに対応するため、FIRM 内に再生医療産業化拠点実証タスクフォース
(Regenerative Medicine Industrialization Task Force; RMIT)を立ち上げまし
た。RMIT を活用いただくことで、日本の制度を理解し、ビジネスパートナーを見
つけることがより進むと自信を持っております。
FIRM はこれからも再生医療の実現を目指している全てのアカデミア、産業界の
みなさまが活躍できる基盤づくりを進めてまいります。みなさまが日本での再生医
療の産業化に挑戦してくださることをお待ちしております。
1
F I R Mの紹 介
一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム
が戦略的に進めている産業化のプロセスを広め、より
(FIRM)は 2011 年に設立されました。2015 年 12
多くの患者様に再生医療を提供するために、国際的な
月現在の会員企業は 183 社に上ります。
連携も進めています。具体的には、以下の 5 つを中
再生医療という新しいサイエンスに基づく産業が社
心に活動しています。
会に浸透していくためには、多くのハードルが存在し
1)国際的視点に立った再生医療の産業化戦略及び
課題に関する提言
ます。国内では再生医療に関連する新しい法律が制定
2)国内外の再生医療に関わる関係者との交流並びに
され、規制は整えられつつありますが、その実装のた
提携
めには産業界、行政、アカデミアが協力してどのよう
な基準や規格が適正なのかといったことも定めていく
3)再生医療に関する調査及び統計の実施と公表
必要があります。また、再生医療を受ける側の人々が
4)再生医療に関する研究会、公開講座等の開催、
運営
この新しいサイエンスの概念についての理解を深め、
5)前各号に掲げる事業に附帯又は関連する事業
適切な治療が受けられるようにコンセンサスを形成し
ていく必要もあります。
そこで我々は、産業界、アカデミア、行政、市民の
こうした取り組みを円滑に行なうために、6 つの委
間にある再生医療に対する認識のギャップや、規制の
員会、4 つの作業部会および再生医療産業化拠点実証
ギャップなどを埋め、再生医療を実現するための具体
タスクフォース(RMIT)を設置し、会員企業による
的な道筋を示す活動を行なっています。さらに、日本
活動が進められています(図 1)。
【 図1】FI R M 組織図
社員総会
監 事
理事会
運営委員会
運営企画会議
事務局
コンプライアンス委員会
サポーティング
インダストリー部会
事業・広報委員会
標準化部会
レギュラトリー委員会
規制制度部会
国際委員会
医療経済部会
再生医療産業化拠点
実証タスクフォース
R MIT
受託委員会等
I SO / TC
276国内委員会
教育委員会
出版委員会
2
T OPIC
〈 再 生 医療等製品の 開発上市に 関する法 規 制の先 進国 、日本 〉
2014年11月、日本では再生医療に関する規制を変える2つの法律、
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性
の確保等に関する法律(以下、医薬品医療機器等法)」
と
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下、再生医
療等安全性確保法)」が施行されました。そのポイントは以下のとおりです。
1. 医薬品医療機器等法
(1)
「再生医療等製品」という新たなカテゴリーが定義された
従来の「医薬品」「医療機器」に加えて、「再生医療等製品」が定義されたことにより、その特性を踏まえた評価の体制が整えら
れました。
(2)再生医療等製品において疾患の希少性など、少数症例で評価せざるを得ない対象に関しては、早期に医療として上市可能な「条
件及び期限付き承認」が得られるようになった
医薬品医療機器等法では、再生医療等製品について、一定数の限られた患者の治験による安全性が確認され、有効性が推定され
れば、条件と期限を設定した製造販売承認を受けられるようになりました(図 2)
。
【 図2 】
〈 再生医療等製品に従来の承認制度を適用する場合の問題点〉
人の細胞を用いることから、個人差を反映して品質が不均一となるため、有効性を確認するためのデータの収集・評価に長時間を要する。
【従来の承認までの道筋】
治 験
(有効性、安全性の確認)
臨床研究
治 験
(有効性の推定、
安全性の確認)
期限内に再度
承認申請
患者のアクセスをより早く
【再生医療等製品の早期の実用化に対応した承認制度】
臨床研究
承 認
市 販
市販後に有効性、
さらなる安全性を検証
条件・期限を
付して承認
・有効性については、一定数の限られた症例から、従来より短期間で有効性を推定。
・安全性については、急性期の副作用等は短期間で評価を行なうことが可能。
第8回厚生科学審議会科学技術部会再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会資料より改変
市 販
承認又は
条件・期限付
承認の失効
引き続き
市販
患者にリスクを説明し同意を得、市販後の安全性対策を講じる。
2. 再生医療等安全性確保法
(1) 医療機関から細胞の製造・加工の外部委託が可能になった
従来、医師主導の臨床研究・自由診療等に用いるヒト細胞等を使用した再生医療用細胞、組織の培養・加工は、臨床研究を主導
する医師の監督の下、医療機関の中だけで実施が認められていました。それが、再生医療等安全性確保法の施行により、適合性調
査に基づき、厚生労働大臣から許可を受けた外部細胞加工業者にも委託が可能になりました(図 3 )
。
【 図3 】
臨床研究・自由診療
再生医療等 製品
再生医療等安全性確保法
医薬品医療機器等法
医療として提供される再生医療等について、採取等の実施手続き、
再生医療等を提供する医療機関の基準、細胞を培養・加工する施設
の基準等を規定し、安全性等を確保
再生医療等製品の製造所の基準等を規定し、再生医療製品の
有効性、安全性を確保
医療機関
企業の工場等
※許可を受けた施設
企業の工場等
※届出した施設
委託
加工・保存
※再生医療等安全性確保法に基づき医師の責任の下で実施させている細胞の
培養・加工の委託については、医薬品医療機器等法の適応外。
細胞の入手
※許可を受けた施設
採 取
加工・保存
加工・保存
実施
(移植)
承認された
製品の購入
第 9 回厚生科学審議会科学技術部会再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会資料より改変
対象範囲
再生医療等安全性確保法
医薬品医療機器等法
(2) リスクレベルに応じた審査・承認制度が確立された
一方、再生医療等安全性確保法の下では、医師主導の臨床研究・自由診療等についても規制当局での手続きが必要になりました。
医療機関で医療を提供する前に、使用する細胞の3段階のリスクレベル(体細胞、体性幹細胞、ES/iPS 細胞)に応じた認定委員会で
の審査や提供計画の提出などの手続きが必要です。
3
I N T E RV I E W
薬事戦略相談サービスで
製品化までの道のりを最適化する
独立行政法人医薬品医療機器総合機構
Pharmaceuticals and Medical Devices Agency(PMDA)
再生医療製品等審査部長
佐藤 大作 氏
Q
再生医療等製品に関連してどのような業務を行なっていますか
私たち PMDA は、医薬品や再生医療等製品の副作
ます。米国でいえば米国食品医薬品局(FDA)、EU
用や感染等による健康被害を救済すること、製品の品
であれば欧州医薬品庁(EMA)が同様の役割を担っ
質、有効性および安全性について審査すること、そし
ています。2014 年に施行された法律改正にともなっ
て市販後における安全性に関する情報の収集、分析、
て、法律上も再生医療等製品の区分が制定され、相談・
提供することの3つの業務を主に行なっています。
審査の業務の中で、これまでよりも、一層、再生医療
再生医療等製品に関連しては、治験前からの承認審
等製品の特性にあわせた品質、有効性や安全性の評価
査まで一貫した相談業務、承認審査の業務を担ってい
が行なえるようになりました。
Q アカデミアやベンチャー企業が受けられるサービスはありますか
特徴的なサービスに、再生医療等製品を含め、優れ
た製品シーズの実用化を支援するために設けられた薬
事戦略相談(※ 1)があります。
アカデミア発の技術に基づくものが多い再生医療分
野では、開発のプロセスに関連する規制への対応を経
験したことのないアカデミアやベンチャー企業の方も
開発に参画する機会が多くあります。薬事戦略相談を
活用していただくことで、技術を製品化するまでの道
筋にある開発の課題やどのようなデータを収集すべき
か等を議論することができます。製品化するまでの道
のりは決して平坦なものではないですが、より効率的
に、最適な道筋を選んでいくことの手助けをさせてい
ただいています。ぜひこの薬事戦略相談を活用してほ
しいと思います。
※ 1 アカデミア、ベンチャー企業は手数料 90% 割引
4
再生医療産業化に向けた
日本国内の取り組み
速やかな再生医療の普及と実現に向けて、日本では法的な整備に加え、
政府や自治体、業界団体等が様々な取り組みを行なっています。
再生医療等製品は前例が少なく、有効性や安全性を審
評 価 方 法の
確立
査する規制当局の審査手法も確立を目指して今まさに
動き始めたところです。まだまだ現状では、審査への
対応に多大なコストと時間がかかってしまいがちで
す。そこで、国立研究開発法人日本医療研究開発機構
(AMED)を通じて個々の再生医療等製品に特有とな
る安全性、有効性に関する試験項目を明確にし、必要
な評価手法を開発する事業が始まっています。
羽田国際空港の対岸にあたる神奈川県川崎市の臨海部
産 業 化に必 要な
機能の集積
に、神奈川県により「再生医療産業化拠点」が新設さ
れようとしています。経済産業省も支援しているこの
事業を通じて、細胞の加工・培養、さらには臨床試験
に至るまで、多数の関連機関・企業が集積する拠点が
できることとなります。これにより、再生医療等製品
の研究開発から産業化までをワンストップで実施でき
る環境が整いつつあります。
FIRM は 2014 年に海外企業に向けた相談窓口を設
国 際 連 携の
強化
けました。案件により、日本貿易振興機構(以下、
JETRO)とも連携しながら対応しています。JETRO
は無料レンタルオフィスの提供、登記等の支援、税制・
事業環境等の情報提供を通じて海外企業の日本市場へ
の参入を支援します。FIRM は再生医療関連情報の提
供や日本企業の中から適切なパートナーを紹介するこ
とで、海外企業と日本企業との連携を支援します。
これらの取り組みにより、海外企業にとっても
日本は再生医療等製品の研究開発や商品化を行ないやすく、
参入しやすい市場となっています。
5
I N T E RV I E W
世界で最も速く上市ができる
産業界の環境づくり
経済産業省 生物化学産業課長
西村 秀隆 氏
Q 日本の再生医療ビジネス環境はどのようになっているのでしょうか
日本は世界に先駆けて、再生医療に関する製品開発
や、医療機関に提供する細胞を製造するための法的な
枠組みを整えました。このことによって再生医療目的
の細胞製品、組織加工品を開発するうえで、世界の最
先端を走る状況にあると感じています。
国内では、再生医療・製薬企業のみならず、機械・
装置、化学・材料、物流・サービスなど多くの企業が
この分野に参入してきています。2011 年には 14 社
しかなかった再生医療分野の事業者団体である FIRM
の会員数が、年を追って増加し、2015 年 12 月には
183 社にのぼっていることからもその期待の大きさ
がうかがえます。
Q
経済産業省は再生医療に対してどのような取り組みをしていますか
日本から優れた再生医療等製品が迅速に生み出され
ター設立があります。2020 年までには、川を挟んで
るよう、経済産業省では、研究開発支援、産業基盤整
隣接する羽田国際空港と連結する橋が整備され、空港
備、事業環境整備、国際連携に力を入れています。具
から車で約 5 分の国際的にも開かれた拠点となる予
体的には、製造の低コスト化のための製造機器や消
定です。このエリア内に再生医療等製品開発企業やベ
耗品の研究開発支援、再生医療等製品の評価技術の開
ンチャー企業、支援機関等が集積した産業のハブを形
発支援、関連企業が集積する産業拠点整備の支援、周
成することで、世界で最も速く、再生医療等製品の開
辺産業が国際標準を獲得する活動の支援などを行なっ
発を進められるイノベーション拠点として発展させる
ています。海外に対しても、海外イベントでの日本の
ことを目指しています。
新たな法制度の説明や、外国企業との提携を支援する
再生医療分野に関わるみなさまには、より良い製品
コーディネーターの配置などを通して国際連携に努め
をより早く患者に届けるという夢を共有し、このよう
ています。
に日本で整備されつつある再生医療等製品の研究開発
力を入れている取り組みのひとつに、神奈川県と連
環境の優位性を最大限利用して産業化に取り組んでほ
携した川崎市殿町地区でのライフイノベーションセン
しいと思います。
6
再 生 医 療 を 支 える、周 辺 産 業
再生医療産業の普及・発展には、再生医療等製品そのものだけでなく、その製品開発や
利用のための装置や消耗品、細胞加工・検査・輸送などのサービスを含む様々な種類の
周辺産業(サポーティングインダストリー)が必要不可欠です。再生医療の世界における
将来市場は2050年時点で38兆円と見積もられていますが、周辺産業も15兆円と非常に
大きい市場を形成すると考えられています。
ここでは主な周辺産業を紹介します。
【CPC】 細胞を培養・加工するた
めに必要な清浄度が保たれてい
る専用のクリーンルームです。再
生医療等製品の無菌性、交叉汚
染 防 止 、清 浄 度の確 保のあり方
などの管理方法や清浄度の基準
は、製品ごとに適切に定めて運用
する必要があります。
【自動培養装置】手作業が中心と
CPC
(細胞加工施設)
なる細胞培養工程の一部もしくは
再生 医
全てを自動化する装置です。世界・
日本ともに多くの企業が参入し、
開発・実証・試作販売段階にありま
す。再生医療での臨床を目指す装
置は、接着系細胞
(例えば、軟骨細
胞や間葉系幹細胞)
向け、細胞シー
ト作製向け、iPS細胞向け、浮遊系
細胞
(例えば、がん免疫細胞)
向け
など、培養対象に応じて様々なタ
イプが開発されており、産業化の
発展に標準化が望まれています。
自動培養
装置
【試薬・培地】 再生医療に用いる
試薬・培地は、現状ではISO、JIS
規格、EN規格に基づいて開発が
行なわれていますが、再生医療用
の規 格 、基 準が 現 状では明 確に
定められていないという課題があ
ります。2050年に15兆円にもな
る世界市場の約半分は、試薬・培
地などの再生医療材料の市場だ
といわれています。
7
試薬
・
培地
【保険】再生医療等製品を購入す
る患者の経済的負担を軽減するた
め、保険診療や保険外併用療養の
適用について考慮する必要があり
保険
ます。保険収載された場合は高額
療養費の適用対象となり患者の自
己負担額は比較的小さくなります
が、保険外併用療養の適用とされ
た場合には高額な自己負担が必要
となるケースも想定され、民間保険
等による対応が求められています。
輸送
【輸送】細胞・組織等の原料や再生
医療等製品を、製造施設や医療機
関等に輸送するサービスです。細
胞・組織等の性状に合わせ、採取
施設から製造施設、製造施設から
医療機関へと輸送時間や温度など
の輸送条件を遵守して搬送する必
要があります。
生 医療
【検査機器】細胞の受入から出荷
に至る品質管理に使用される各
検査機器
種検査機器です。現状では海外製
品が数多く使われていますが、細
胞評価に求められる要件を明確化
した業界基準を日本国内で構築
する試みが進められており、今後
日本製品のシェアが世界で拡大す
ることが期待されています。
【細胞加工・検査・保険等のサービス】
2014年より施行されている
「再生
医療等安全性確保法」
では医療機
細胞加工・
検査・保管等の
サービス
関以外の施設においても細胞加工
を受託することが認められるなど、
細胞加工・品質検査・細胞保管を始
めとする各種受託サービスが発展
することが期待されています。
【器材・材料】プラスチック製培養
ディッシュなどの消耗品をさしま
器材
・
材料
す。現在、再生医療に用いる場合
に使用する製品グレードなど、品
質・衛生・安全性の合理的な基準
が定められていないことが課題で
す。また、大容量プラスチック製培
養容器は海外製品のシェアが高い
ため、国内での開発を業界で推進
させることが求められています。
8
F I R M サポーティングインダストリー 部 会
各ワー キンググル ープの活 動 紹 介
FIRMサポーティングインダストリー部会では、
「 Cell Processing Center( 以下、CPC )
」
「自動培養装置」
「試薬・培地」
「 輸送」
「 器材・材料」の 5つのワーキンググループを設置しました 。再生医療に用いられる
それぞれの製品・サービスのあり方についてグループに分かれて検討をしています。
CPC
ワーキング
グループ
自動培養装置
ワーキング
グループ
試薬・培地
ワーキング
グループ
輸送
ワーキング
グループ
器材・材料
ワーキング
グループ
9
再生医療等安全性確保法第42条
「構造設備の基準」
に関するFIRM事例集を作成していま
す。規制当局への許可・認定の取得、又は届出を行なう事業者の一助となることを目的とし、
構造設備基準の解説や、設備・機器などのハードの事例、及び運用手順の規定によるソフト
的な事例などを示しています。細胞を安全に培養して品質を確保するための施設や機器・
サービスを提供することで、再生医療の普及に貢献することを目指しています。参加企業は
22社
(2015年12月現在)
です。
日本国内の主要な自動培養装置関連メーカーやユーザーが25社
(2015年12月現在)
集ま
り、再生医療における自動培養装置の産業利用の促進や、国際的なリーダーシップを発揮
することを目的とし、FIRMガイドの作成や情報発信を行なっています。また、本グループの
参加メンバーからテーマを募集し、勉強会を1~2か月に一度実施して、
メンバー全体の知識
の底上げと最新の情報交換を推進しています。
再生医療用試薬、培地製品に関する標準化検討、事例研究、勉強会などを行なっています。
再生医療では、細胞の培養工程が必須であるため、原材料となる試薬・培地に関するこの種
の活動は有意義な活動と考えています。現在、参加企業数は34社
(2015年12月現在)
で国
内の主要な関連企業の大半が参加しています。再生医療分野への原材料供給が円滑に行な
われ、関連産業が発展することを目指しています。
現在、本グループは①再生医療分野の輸送に関する知識・情報の共有・発信、②同分野の輸
送における各種課題の解決を目指し活動しています。2015年度には、再生医療分野におけ
る輸送ガイドの作成や、それに関連する輸送実験、海外の関連規制・ガイドラインの分析、国
際標準化に関する検討等を行ない、成果を参加メンバーで共有しました。定例会は1.5~2
か月に1回行なっており、参加企業も増加傾向
(22社)
です。
27社
(2015年12月現在)
が集まり、再生医療の細胞培養加工に用いられる培養器材等の
消耗品が満たすべき基準について、ユーザーとサプライヤー双方の視点から議論していま
す。第1弾として、ユーザーが器材を選定する際の留意点をまとめたFIRMガイドを作成中
です。これらの活動を通じて、器材・材料の品質向上、安定供給ならびにコストの適正化を図
り、再生医療の産業化推進に貢献していきます。
I N T E RV I E W
世 界 共 通 の 標 準 を 作り
再 生 医 療 に 貢 献 する
サポーティングインダストリー部会長
土屋 勝則 氏
Q
サポーティング
インダストリー部会の
役割は
準の整備です。例えば、自動培養装置は再生医療
になって初めて必要になった製造装置です。これ
までに前例がないため、誰かが製品の標準を作っ
ていく必要があります。また、試薬・培地、器材・
材料などはライフサイエンスビジネスでの実績が
サポーティングインダストリー部会には CPC 、
ありますが、同じ標準が再生医療に適応できるか
自動培養装置、試薬・培地、輸送、器材・材料といっ
どうかについては確認が必要で、新たな標準が必
た再生医療等製品の製造を支える周辺産業のメー
要であれば作らなければなりません。産業界とし
カーやベンチャー企業など 80 社を超える企業が
て自信を持って製品、サービスを世の中に出すた
参加しています。目指しているのは、再生医療等
めに、一連の標準の整備にサポーティングインダ
製品を製造する上で適正だと考えられる製品の標
ストリー部会は取り組んでいます。
Q
外部とどのようなコラボレーションを
目指していますか
標準はメーカー側が一方的に定めても意味があ
自動培養装置や輸送の標準は手応えを感じられ
りません。まだ正解がわからない分野なので、様々
るところまで来ています。他の標準についても日
なユーザーからフィードバックをもらえることが
夜ワーキンググループで議論が重ねられていま
より汎用性のある標準の確立にもつながります。
す。いち早く世の中に標準を広げるために、実証
例えば、大学や研究機関に協力いただいて、サポー
試験に参加してくださる企業、研究機関もお待ち
ティングインダストリー部会提案の標準で作られ
しております。
た製品に関する実証試験ができれば、周辺産業の
製品・サービスの標準化が後押しされると考えて
います。
10
日本における相談窓口
RMITとは
2014年11月に再生医療に関する法律が施行され、再生医療領域の産業化推進の環境が
整備されました。RMITは、急速に拡大する再生医療領域の国内における本格的な産業化
を加速するため、2015年4月にFIRM内に開設されました。
R M I Tの取り組み
再生医 療 産 業 化の相 談 窓口
日本橋ライフサイエンスビルディング内に開設されたビジネス拠点にて、再生医療産業化に関わる各種相談・
問い合わせに対応し、種々のボトルネック解消を支援しています。また、国内外企業・ベンチャー・アカデミ
アと FIRM 会員企業(2015 年 12 月現在 183 社)とのパートナリング支援を実施しています。
再生医療産業化拠点実証タスクフォース
(RMIT)
産業化のお問い合わせ・依頼
適切な企業へ連絡・
マッチング
お問い合わせへ回答
FIRM会員企業を
ご紹介
連携・提携
産業化を検討している国内外の
関連企業、ベンチャー、アカデミア等
FIRM会員企業
再生医療産 業 化 拠 点 整 備 構 想
国内外の再生医療等製品のパイプラインの迅速な製品化を目指し、ワンストップで研究開発から臨床治験まで
実施するため、各種研究支援やサービス、相談・依頼への対応等を整備したシステムの構築を神奈川県の国際
戦略総合特区である川崎市殿町で進めています。
国内外から
ビジネス拠 点 殿 町ライフイノベーションセンター
羽田空港
首都圏
J a pa n Qua lity
FIRM国際連携
シーズ・パイプ
ラインの導入
国内製薬・
バイオ
関連企業等
マッチング
人材育成
ショーケース型 販売ネットワーク
機器・装置
プラント
試薬・
培地
細胞培養・加工製剤化
検査・
解析システム
細胞品質検査
細胞保管
次世代CPC
研究用
製品用
細胞
運搬・輸送
国内外ベンチャー集積
公的・民間ベンチャーキャピタル ベンチャーファンド
海外ベンチャー
国内外大学
国内中小企業
11
◎ 創業・ベンチャー設立の支援
◎ 規模・レベルに合わせた運営支援
◎ 研究・開発支援/オープンラボ
CPC
CMO
臨床開発
INTERVIEW
再生医療の産業化を
世界とつなげる橋渡し役
一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム 再生医療産業化拠点実証タスクフォース
Regenerative Medicine Industrialization Task Force(RMIT)
RMIT事務局長
森 冬比古 氏
Q
R M I Tの役 割は?
RMIT は再生医療の産業化を加速する目的で 2015
年に FIRM の中に作られた組織です。再生医療の産業
化に関わる各種相談の窓口、依頼者と FIRM 会員企業
の相乗効果のあるパートナリング支援などの役割を
担っています。再生医療ビジネスは技術要素が多いた
め、研究開発から製品販売までの全てを自社開発する
のは困難で、種々の企業とうまくパートナーシップを
築いていくことが重要です。日本の再生医療関連分野
で新たにビジネスを興そうとする方々にとって、最適
なパートナー選びや、法規制対応は想像以上にハード
ルの高い課題です。私たちはこれらのハードル克服を
お手伝いするサポート役です。
Q
Q
サポート対象は
国内だけでしょうか
再生医 療ビジネスの
拠点づくりの構 想も
進行しているそうですね
いいえ、サポート対象は国内、国外の両方です。
はい。現在、羽田国際空港からのアクセスのよい神
現在は主に国外企業が開発中の細胞製品、細胞治
奈川県川崎市の殿町地区に設立されるライフサイエン
療などのパイプラインを日本企業とつなぐところ
スセンター内に再生医療の関連産業が集積する研究開
に力を入れています。RMIT は米国、欧州、アジ
発インキュベーション拠点を立ち上げ、活動拠点とし
アなど世界各地の再生医療関連企業で高まる日本
てもらう構想の実現に向けても活動しています。ここ
企業とのパートナリング要請に対してポイントオ
には国内外のベンチャー企業が、研究所やオフィスを
ブコンタクトの機能を提供し、FIRM 会員企業と
構えられる施設を設ける計画も進行しています。日本
の適切なマッチングをサポートしています。今後
には今後多くの新規開発案件が国内外から集まってく
は、製品の規制や販売承認に関する法律、材料・
ることが予想されます。その中で、私たちが橋渡し役
資材の調達から製造や品質管理、臨床研究や治験
となり、日本が世界に先駆けて、再生医療事業化の迅
などのあらゆるご相談に対応していきたいと考え
速で効率的な実現が可能な、再生医療産業化最先進国
ています。
となることを目指して活動を進めていきます。
12
Entreprenour’s View
経 営 者 に 訊く 日 本 で の
プラットフォーム技術で、業界の基盤となる
株式会社セルシード 代表取締役社長 橋本 せつ子 氏
現在注力するパイプラインは食道再生上皮シートと軟骨
再生シートです。食道再生上皮シートについては、2016
年には日本国内で治験を開始できる見通しです。また
2015 年にスウェーデン法人を立ちあげ、EU 市場も狙っ
て動き出しています。
また、この培養器材を大学や企業の研究機関に提供し、
細胞シートによる再生医療研究を支援しています。これに
より創薬ベンチャーとしては珍しく治療薬以外で売上を作
ることができます。
M E S S AG E
今後の再生医療の実現に向け、細胞培養施設の建設も始
セルシードのコア技術は温度応答性ポリマーを用いた培
まりました。一日も早く、日本発の細胞シート工学を基盤
養器材です。様々な種類の細胞を培養して、多様な ” 細胞
とした治療法を患者さんへ届けられるように取り組んでま
シート ” を作製できるプラットフォーム技術である「細胞
いります。日本発の再生医療産業を世界展開し、その実現
シート工学」を活用し、再生医療の実現を目指しています。
と成長を加速していく決意です。
モーメンタムを得て、実用化を目指す
株式会社ヘリオス 代表取締役社長 鍵本 忠尚 氏
M E S S AG E
私は眼科医時代、当時の医療技術では目の前の患者さん
を治療することができないという悔しい経験をしました。
「このままでいいのか」と憤りを感じ、新しい医療技術を
事業化するためにベンチャー経営の道に入りました。
再生医療の実用化は自社だけで達成することは難しく、
研究開発から製造、臨床試験、販売といったバリューチェー
ンの中で異なる専門性を持つ企業と連携する必要がありま
す。自らの強みを活かしていち早く再生医療分野に新規参
入を決定した様々な企業と、手を取り合って実用化を進め
ています。
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実用化に必要な人、資金、技術を得るにはモーメンタム、
さんからの期待も寄せられています。
すなわち勢いをつかむことも重要と考えています。2014
今後、再生医療市場は間違いなく大きく成長します。ベ
年 9 月には理化学研究所の高橋政代氏らが、iPS 細胞由
ンチャー、大企業という規模や業種を問わず、異なる専門
来組織を使った世界初の臨床研究を実施し、2015 年には
性を持つ多数の企業がこの市場に参入し、業界全体が一丸
実施一年後の経過も順調、と発表されました。多くの患者
となって実用化の道を切り開いていきましょう。
再
の
再 生 医 療 ビ ジネス の 面 白 さ
ベンチャーの役割は、進歩や変化を生み出すこと
iHeart Japan 株式会社 代表取締役社長 角田 健治 氏
用化して、この課題を解決しようと取り組んでいます。
私たちのもつ技術は、iPS 細胞から心筋細胞だけでなく、
壁細胞、内皮細胞、間葉系幹細胞などを高い効率で分化誘
導できること、また、細胞の壊死を防ぎながら、これらの
細胞から成るシートを積層して立体的にした多層体を作れ
ることです。この技術を武器に高い生着率をもつ細胞医薬
を開発しています。
今後は、資金調達と人材の獲得に力を入れ、前臨床試験
を進めていきたいと考えています。3年後には治験を開始
し、6~7年後には細胞医薬を発売することが目標ですが、
M E S S AG E
そのためにはもっと多くの仲間が必要です。
日本では、心臓移植が必要なほど重症の心不全患者が
ベンチャーの役割は、変化を生み出し、社会を進歩させ
20 万人以上いると推計されているのに対し、心臓移植の
ることです。今、日本の iPS 細胞技術は世界から注目されて
実施件数はわずか年間 35 件程度に留まっています。私た
います。海外からの資金流入もあり、ベンチャー企業の立ち
ちは、京都大学 iPS 細胞研究所の山下潤教授の研究成果
上げに挑戦しやすい環境が整いつつあります。我こそはと思
である、ヒト iPS 細胞由来心血管系細胞シート多層体を実
うみなさんはぜひこの流れに飛び込んでみてほしいですね。
臓器再生を目標に、技術とノウハウを蓄積する
レジエンス株式会社 代表取締役社長 村山 正憲 氏
M E S S AG E
多くの再生医療ベンチャーが大学発の技術を元に立ち上
がっているのとは対照的に、レジエンスはマーケット、す
なわち対象疾患の決定からスタートしています。対象疾患
を治療しうる技術を持つ研究者を探索し、共同研究によっ
て実用化を後押しするという流れです。
再生医療はまだ黎明期であり、どの技術が実用化できる
か全くわかりません。そこで仮承認までにかかるコスト
を大幅に低減できる早期承認制度を活用し、単一技術に
フォーカスせず、最終的に 20〜 30 のパイプラインを維
持していく戦略を考えています。
移植用臓器を待つ患者さんの数が増え続ける中、移植可
なお、臓器再生のためには細胞培養の技術だけでは足り
能な臓器の製造を究極の目標としており、10 年程度を目
ません。ブタ体内でヒト肝臓を作る技術、製造の自動化、
処に実現したいと思います。そのために私たちが蓄積しつ
品質管理のためにロボットや画像処理技術の研究も進めて
つある技術シーズの事業化ノウハウや各種技術を活用し、
います。さらには、遺伝子医療、担体、手術法まで、再生
パートナーシップを組んで共に臓器移植の実現を目指しま
医療に関連するあらゆる技術を活用していく必要があります。
しょう。
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