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常温再生型デシカント空調システムの性能評価
I-81 常温再生型デシカント空調システムの性能評価 (第 3 報)フィールド試験による除湿性能評価 Performance Evaluation of Desiccant Air-Conditioning System with No-Heating Desorption Part3. Dehumidification Performance of Humidity Conditioner in Field Test 正会員 ○和田 一樹(竹中工務店) 正会員 左 勝旭(竹中工務店) 正会員 山田 裕明(竹中工務店) 正会員 高橋 幹雄(竹中工務店) 正会員 青柳 秦之(新 晃 工 業) 正会員 正会員 篠原 正明(ク ボ タ) 正会員 鈴木 俊介(ク ボ *1 Kazuki WADA Yasuyuki AOYAGI*2 *1 Katsuaki HIDARI *1 Takenaka Corporation *2 タ) Hiroaki YAMADA*1 Kazuki YOSHIDA*2 Mikio TAKAHASHI*1 Masaaki SHINOHARA*3 Sinko Industries,LTD 吉田 一輝(新 晃 工 業) *3 Syunsuke SUZUKI*3 Kubota Corporation In this paper, the dehumidification performance of the desiccant air-conditioning system with no-heating desorption was evaluated in the advanced tenant office building. As a result, the amount of dehumidification satisfied the design target value. The dehumidification with no-heating desorption was enough for the office building. And, it was shown to be able to reduce the energy consumed when the low humidity environment was controlled. はじめに 政府は地球温暖化防止策のひとつとして、オフィスの 設定温度を緩和する COOLBIZ&WARMBIZ を 2005 年に 提唱し、近年では日本社会に定着している状況である。 一方で、夏季に室温を高めることは知的生産性の低下に つながることが指摘されており 1)、省エネルギーと快適 性を両立させることが望ましい。 デシカント空調は、室温を 28℃としても相対湿度を低 くすることで快適性を維持することが可能な空調方式で あり、冷却除湿・再熱方式のように再熱を伴わず湿度を 維持することが可能となる。一方で、除湿剤の再生のた めに加熱エネルギーが必要であり、従来のデシカント空 調では機器排熱や太陽熱などを利用したものが主流であ った。しかしながら、排熱や太陽熱は供給に安定性を欠 くため、常温の室内空気で再生できることが望ましい。 筆者らは再生用空気に加熱を必要としない常温の室内 空気を用いたデシカント空調機の実現を目指し、ロータ 単体、モックアップ機による性能確認を行なってきた 2)。 本報では、先進的に常温再生型のデシカント空調機を 採用した事務所ビルにおいて、実運用前のフィールド試 験を行なった結果について報告する。 1.デシカント空調機を導入した建物の概要 常温再生型のデシカント空調機を全貸室に採用した事 務所ビルの外観を写真-1 に、建物概要を表-1 に示す。 評価を行なったのは 2011 年に竣工した東京都千代田区 の位置する地上 27 階建ての貸事務所ビルであり、低層部 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -2969- 表-1 建物概要 建築地 東京都千代田区 建築用途 オフィス・商業・ ホール・会議室 敷地面積 8,027.24m2 建築面積 4,642.56m2 延床面積 103,852.46m2 構 造 S・CFT・ SRC・RC 規 模 B5・F27・P2 高 さ 143.2m 写真-1 建物外観 負 荷 抑 制対策 ・建 物 へ の 負 荷 抑 制 緑 化 の 促 進 (屋 上 緑 化 な ど ) ダ ブルスキン 自然採光、昼光 利用 太陽光 発 電 パネル (将 来 対 応 ) 冷却塔 空 冷 チ ラー 発 電 機 高圧 変電 テナ ント 用 発 電 機 スペース 屋上緑化 太陽光 発 電 パネル (将 来 対 応 ) 外 気 冷 房 、 C O2制 御 ・内 部 発 熱 の 抑 制 自 然 通 風 ・ナ イトパ ー ジ LED ベ ース照 明 、 人 感 制 御 ・そ の 他 雨 水 利 用 ・雑 排 水 利 用 設 備 機 器対策 ・照 明 L E Dベ ー ス照 明 、 人 感 制 御 ・空 調 デ シ カン ト 空 調 機 放 射 空 調 (2 7階 ・ 4 階 会 議 室 ) ホール座 席 空 調 ・熱 源 高効率熱源機器 高効率型水蓄熱 空 調 ポ ン プ室 特高電気室 高圧変電室 エ ネ ル ギ ー源 対 策 ・再 生 可 能 エネル ギ ー 太 陽 光 発 電 (将 来 対 応 ) 高圧変電室 冷温水発生機 水蓄熱槽 熱交換器 雨 水 貯 留槽 高 効 率 イ ンバ ー タタ ーボ 図-1 環境配慮技術の導入 受水 槽 中水槽 再生 水槽 は商業、ホール、会議室の用途で構成されている。本建 物は常温再生型のデシカント空調機のみならず、多くの 環境配慮技術を導入している。図-1 に示すように、負荷 抑制のための全面ダブルスキンや自然通風の採用 3)、内 部発熱の抑制として全館 LED 照明の採用などを行なって いる先進的な貸事務所ビルである。 3.評価方法 常温再生型デシカント空調機の現地フィールド試験を 行なったのは 25 階の事務室である。基準階の空調ゾーニ ングと評価対象ゾーンを図-3 に示す。1 フロアにつき 6 台の空調機にてゾーニングされている。測定は⑥ゾーン の空調機を対象に行なった。評価対象とした⑥ゾーンの 空調機仕様は表-2 に示す通りである。 測定時は④ゾーンと⑤ゾーンの間の防火シャッターを 下ろし、⑤ゾーンの空調にて暖房加湿することで⑥ゾー ンの冷房除湿負荷を発生させた。撹拌ファンを分散配置 し、⑤ゾーンと⑥ゾーンの空気が循環するように配慮し 測定を行なった。 空調機廻りの温湿度測定点は空調機内の温湿度に変化 が生じる部分とし、取入外気、プレコイル出口(デシカ ント処理入口) 、デシカント処理出口、室内還気(デシカ ント再生入口) 、デシカント再生出口(排気)とし、測定 器にはヴァイサラ製の HMT333 を使用した。 定常時の除湿性能を評価するための試験では、外気風 量と空調給気風量をそれぞれ 1,900m3/h、4,200m3/h の固定 値とし、空調給気温度も一定とした。 また、空調立ち上がりからの温湿度変動を評価するた めの試験では、外気風量は 1,900m3/h の固定値としたもの の、空調給気は運用時と同様の変風量制御とした。 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -2970- 写真-2 デシカント空調機とデシカントロータ 再生側 デシカントロータ 常温再生 還 気 (常 温 ) 排気 外気側 室内側 給気 高温高湿 常温低湿 プレコイル 低温低湿空気 ア フタ ー コ イ ル 収着側 : 空 気 中 の 水 分 量を 表 す 図-2 常温再生型デシカント空調機の処理プロセス 評価対象 ① ⑥ 負荷処理 ゾーン 55 ,9 00 2.常温再生型デシカント空調機の概要 導入された常温再生型デシカント空調機と高分子収着 剤を利用したデシカントロータの外観を写真-2 に示す。 常温再生型デシカント空調機の除湿処理プロセスを図 -2 に示す。高温高湿の外気を冷却加熱兼用のプレコイル にて予冷・予除湿させた後、デシカントロータを通過さ せて更に低湿な処理外気を生成する。室内還気と混合さ せた後、冷却専用のアフターコイルにて温度のみ調整し、 室内へ給気する。室内の還気露点温度を設定値に保つよ うにプレコイルの冷却量は調節され、アフターコイルで は室内温度を設定値に保つように冷却量が調節される。 デシカントロータの再生には常温の室内排気を利用する プロセスである。 加湿時には室内排気中に含まれる水分をデシカントロ ータに収着させる。プレコイルにて加熱した外気をデシ カントロータに通過させることで収着した水分を脱着さ せて補助的な加湿に利用する。 (拡大写真) エコ ボ イド ② ⑤ 負荷発生 ゾーン シ ャ ッ ター に て 区 画 ③ ④ 57 ,2 00 図-3 空調ゾーニングと評価対象ゾーン 表-2 評価空調機仕様 評価対象機 デシカントロータ:高分子収着剤,φ800mm 3 外気風量: 1,900m /h プ レ コ イ ル : 21 .3 kW (冷 却) , 1 1.3 k W ( 加 熱 ) 3 給気風量: 9,100m /h ア フ タ ー コ イ ル (冷 却 専 用 ): 49 .3 kW ア フ タ ー コ イ ル (加 熱 専 用 ): 10 .8 kW 3 排気風量: 1,900m /h 付 属 機 器 :気 化 式 加 湿 器 ,中 性 能フ ィル タ, プレ フ ィル タ SA 60 ⑤ 80 ③④ ① 取 入 外 気 ② プ レ コ イル 出 口 ③ デ シ カン ト 処 理 出 口 ④ 混 合 点 ⑤ ア フ タ ー コ イル 出 口 ⑥ 室 内 還 気 ( デ シ カン ト 再 生 入 口 ) 0.029 ⑦ デ シ カン ト 再 生 出 口 95 ② RA 70 ① OA ⑥ 100 ⑦ 90 EA 85 90 0.028 0.027 0.026 0.025 25 0.024 80 0.023 0.022 0.021 70 0.020 20 0.019 40 0.018 60 0.017 0.016 0.015 15 50 0.014 30 0.013 40 0.012 0.011 0.010 10 20 0.009 30 0.008 0.007 20 0.006 10 50.005 0.004 0.003 2011 年 6 月 21 日 0.002 0.001 0.000 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 00 1 2 3 4 55 6 7 8 9 10 15 乾 球温 度20DB [℃ ] 25 30 35 40 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} 70 J/ [k 絶 対 湿 度 [g/kg'] 30 35 ⑦ ④ 20 25 ⑥ ⑤ ② 絶 対 湿 度 x [kg/kg(DA )] h 60 ル ピ 55 タ ン エ 50 比 40 45 ① ③ 乾 球 温 度 [℃ ] 40 60 50 エ 45 比 ① 50 40 ⑥ 30 35 30 ⑦ 40 25 30 ② ⑤ 20 ④ 20 ③ 10 2011 年 6 月 30 日 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 00 1 2 3 4 55 6 7 8 9 10 15 乾 球温 度20DB [℃ ] 25 30 35 40 絶 対 湿 度 [g/kg'] 60 50 70 65 70 ン タ ル ピ 55 h [ kJ 6 0 / kg (D A )] 75 80 0.029 0.028 0.027 0.026 0.025 25 0.024 0.023 0.022 0.021 0.020 20 0.019 0.018 0.017 0.016 15 0.015 0.014 0.013 0.012 0.011 10 0.010 0.009 0.008 0.007 0.006 50.005 0.004 0.003 0.002 0.001 00.000 乾 球 温 度 [℃ ] 図-5 空調機廻りの空気状態(28℃,40%RH) プ レ コイル ( 顕 熱 ) ア フタ ー コイル ( 顕 熱 ) 再熱(顕熱) プレ コイル ( 潜 熱 ) ア フ タ ー コ イル ( 潜 熱 ) 2011 年 6 月 21 日 冷却除湿 ( 2 6 ℃ , 5 0 % R H) デ シ カン ト ( 2 6 ℃ , 5 0 % R H) 0 5 10 15 20 処 理 熱 量 [ kW ] 25 30 35 図-6 処理熱量の比較(26℃,50%RH) プ レ コ イル( 顕 熱 ) ア フタ ー コイル( 顕 熱 ) 再 熱 ( 顕 熱) プレ コイル( 潜 熱 ) ア フタ ー コイル( 潜 熱 ) 2011 年 6 月 30 日 冷却除湿 ( 2 8 ℃ , 4 0 %R H) デ シ カン ト ( 2 8 ℃ , 4 0 %R H) -2971- 0 10 20 30 処 理 熱 量[ kW ] 40 図-7 処理熱量の比較(28℃,40%RH) 50 絶 対 湿 度 x [kg/kg(D A)] 80 10 90 80 85 90 95 70 0 図-4 空調機廻りの空気状態(26℃,50%RH) 20 4.評価結果 4.1 除湿性能評価 温湿度が安定した測定日の 15 時から 16 時における空 調機廻りの 1 分間隔データを空気線図上に示した。26℃ 条件の空気状態を図-4 に、28℃条件の空気状態を図-5 に 示す。なお、④混合点は風量比から求め、⑤アフターコ イル出口の温度は吹出温度設定値とした。 26℃条件においては、①28.4℃,14.2g/kg’の外気をプレ コイルにて冷却除湿し、②12.3℃,8.8g/kg’となる。予冷 した外気をデシカントロータに通すと水分が収着され、 ③18.1℃,6.9g/kg’(露点温度 8.6℃)と乾燥した空気が得 られる。室内還気と混合して④22.4℃,8.9g/kg’となり、 アフターコイルで冷却され⑤14.0℃,8.9g/kg’の給気が得 られた。デシカントロータの再生には⑥26.0℃,10.5g/kg’ (50%RH)の室内還気を利用し、再生出口では⑦20.5℃, 12.6g/kg’となる。ロータでの単位除湿量は 1.8g/kg’とな り、前報に示した目標値を上回る除湿量がフィールド試 験で得られた。 28℃条件は、 取入外気が①29.8℃,16.9g/kg’であり、26℃ 条件に比べて外気負荷が大きい状態である。取入外気を プレコイルにて冷却除湿し、②13.2℃,9.3g/kg’となる。 予冷した外気をデシカントロータに通すと水分が収着さ れ、③20.3℃,6.8g/kg’ (露点温度 8.2℃)と乾燥した空 気が得られる。室内還気と混合して④24.7℃,8.1g/kg’と なり、アフターコイルで冷却され⑤16.0℃,8.1g/kg’の給 気が得られる。デシカントロータの再生には⑥28.4℃, 9.2g/kg’(38%RH)の室内還気を利用し、再生出口では⑦ 20.9℃,12.0g/kg’となる。ロータでの単位除湿量は 2.5g/kg’ となり、28℃条件においても前報に示した目標値を上回 る除湿量がフィールド試験で得られた。 4.2 空調処理熱量の比較 常温再生型デシカント空調方式の処理熱量を一般的な 冷却除湿・再熱方式と比較した。常温再生型デシカント 空調方式の処理熱量は前項で示した空気状態変化と風量 から求めた。冷却除湿・再熱方式に関しては、プレコイ ルで冷却除湿後に室内還気と混合させ、アフターコイル で冷却除湿、その後、再熱というプロセスを考え算定し た。26℃条件の結果を図-6 に、28℃条件の結果を図-7 に 示す。なお、26℃条件と 28℃条件では評価日が異なるた め、負荷状況は異なる。 冷却除湿方式で冷却除湿後の再熱のために生成したエ ネルギーを利用する場合に比べ、デシカント方式の処理 熱量は 26℃条件で 8.0%、28℃条件で 33.6%削減される 結果である。冷却除湿後の再熱に自然エネルギーや室内 kg (D 65 A )] 75 50 80 いずれの試験においても室内温湿度の設定値は 26℃, 50%RH(以降、26℃条件と称す) 、28℃,40%RH(以降、 28℃条件と称す)の 2 条件とした。 ①外気 ② 予 冷 コイル 出 口 ①外気 ② 予 冷 コイル 出 口 ③ デ シ カン ト 処 理 出 口 ⑥ デ シ カン ト再 生 入 口 ( 室 内 還 気 ) ③ デ シ カン ト 処 理 出 口 ⑥ デ シ カン ト再 生 入 口 ( 室 内 還 気 ) ⑦ デ シ カン ト再 生 出 口 ( 排 気 ) 35 35 30 30 25 25 乾 球 温 度 [℃ ] 乾 球 温 度 [℃ ] ⑦ デ シ カン ト再 生 出 口 ( 排 気 ) 20 15 10 20 15 10 2011年 7月 12日 2011年 7月 13日 5 5 0 :0 0 3 :0 0 6 :0 0 9 :0 0 1 2 :0 0 1 5 :0 0 空調開始 1 8 :0 0 2 1 :0 0 0 :0 0 0 :0 0 空調停止 3 :0 0 6 :0 0 (乾球温度) 1 2 :0 0 1 5 :0 0 1 8 :0 0 2 1 :0 0 0 :0 0 空調停止 (乾球温度) 23 23 20 20 絶 対 湿 度 [ g/ kg'] 絶 対 湿 度 [ g/ kg'] 9 :0 0 空調開始 17 14 11 8 17 14 11 8 2011年 7月 12日 5 0 :0 0 3 :0 0 6 :0 0 空調開始 9 :0 0 1 2 :0 0 1 5 :0 0 (絶対湿度) 1 8 :0 0 2 1 :0 0 2011年 7月 13日 5 0 :0 0 3 :0 0 6 :0 0 0 :0 0 空調停止 空調開始 9 :0 0 1 2 :0 0 1 5 :0 0 (絶対湿度) 1 8 :0 0 2 1 :0 0 0 :0 0 空調停止 図-8 空調機廻りの温湿度推移(26℃,50%RH) 図-9 空調機廻りの温湿度推移(28℃,40%RH) 排気と交換した熱を使用する場合を考え、再熱エネルギ ーを差し引いて評価すると、26℃条件では同等であるが、 28℃条件で 13.6%削減される結果である。 以上から、室温を緩和しても快適性を維持するために 低湿度環境を形成する場合において、常温再生型デシカ ント方式の省エネルギー効果が大きいと考える。 4.3 空調機廻り及び室内の温湿度推移 空調運転開始からの室内温湿度の制御状況を確認する ため、給気風量を自動制御した状態で温湿度計測を行な った。26℃条件の結果を図-8 に、28℃条件の結果を図-9 に示す。なお、室内絶対湿度の設定値は 26℃条件で 10.5g/kg’、28℃条件で 9.4g/kg’である。 室内温度(⑥室内還気)はいずれの条件においても空 調開始後 1 時間程度で安定する結果である。 一方、室内湿度(⑥室内還気)は設定値に達するまで の時間が比較的長い結果であった。ロータでの除湿量は 再生空気の相対湿度などにも影響を受けるため、潜熱負 荷が大きい状態であると定常に達するまでの時間を要す ると考えられる。本評価では負荷を与える空調機も同時 に稼働させていたため、空調立ち上がり時の潜熱負荷が 大きい状態であったと考えられる。今後、実運用時の評 価を行なう必要がある。 5.まとめ 省エネルギーと快適性を両立するために、COOLBIZ 対応の常温再生型デシカント空調システムを先導的に導 入した貸事務所ビルにおいて、実運用前に除湿性能の評 価を行なった。その結果、以下の知見が得られた。 1)常温再生時におけるロータの単位除湿量は 26℃, 50%RH 条件で 1.8g/kg’、28℃,40%RH 条件で 2.5g/kg’ が得られ、前報で示した目標値を満足した。 2)常温再生型デシカント方式の処理熱量を冷却除湿・再 熱方式と比較した結果、室温を緩和しても快適性を維 持するために低湿度環境を形成する場合において省エ ネルギー効果が大きいことが示された。 3)空調立ち上がりからの室内温湿度の変動については、 実使用よりも室内潜熱負荷が大きい状態で評価を行な ったと考えられ、除湿の立ち上がり時間が比較的長い 結果となった。今後、実運用データを分析し、検証を 行なう計画である。 謝辞 本研究を遂行するにあたり、多大なるご支援を頂きました飯 野海運株式会社、イイノ・ビルテック株式会社をはじめ、ご協 力頂きました関係各位に深い感謝の意を表します。また、本評 価を行ないましたデシカント空調機は平成 22 年度住宅・建築物 高効率エネルギーシステム導入促進事業(独立行政法人 新エ ネルギー・産業技術総合開発機構)の補助を受けています。 参考文献 1) 多和田 他:オフィスの温熱環境が作業効率及び電力消費量に与える総合的な影響,日本建築学会環境系論文集,75(648),2010 2) 鈴木・吉田 他:常温再生型デシカント空調システムの性能評価(第 1∼2 報) ,空気調和・衛生工学会大会,2012 3) 左・菊池 他:ダブルスキンファサードによる日射遮蔽と室内自然通風の一体的な計画と実施(第 1∼2 報) ,空気調和・衛生工 学会大会,2012 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -2972-