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(電波と私) スパイダー・コイル
私 と 電波 電波受験界 ア管という超小型の真空管が神戸通信工業(後にTEN)から発売され、それを使っ て携帯ラジオも組み立てた。トランジスターも東京通信工業1現在のソニー)で製造 スパイダー・コイル 私は、郵政省で電気通信行政に携わり、またITU(国際電気通信連合)で世界の 電波の調整にも当たった。いわば一生を電波と共に歩いたわけである0その私が電波 の存在を知ったのは、小学3年か、4年生の時だったと思う0 5歳年上の姉の中学の理科の教科書に鉱石ラジオのことが載っていた0その教科書 は、中学1年生から3年生までで15冊もあるシリーズもので、今から考えると生物か ら物理まで相当詳しい内容のものであった0戦後間もない当時は、子供用の書籍など 1−11日JHHっlHHL・・。・H﹂・号・HHHHHlHHHlllHHつHH・−1IllHH=H−..り一HH・H﹂‖㍉上・.−. もなく、この中学教科書を夜、布団のなかで眺めるのが楽しみであった0今の子供で 言えば、科学圃鑑に相当することになるのではなかろうか○電波に関しては、ヘルツ の火花送信機の実験から始まって、鉱石ラジオ、そして同調や検波の原理まで書いて あ芸忘:我が家にラジオがあったが、それが電波を使って 虎嚢麺.芦.謹 鑑監迦曲消lロ いるということは、この教科書を読んで初めて知ったので 芸==≡≡雲 ある。自分でも組み立てられそうだと、よく遊びに行って いた模型屋で鉱石ラジオの部品を買って組み立てた0今で、・..WuI 蕊・ロロロ 、 \..._.′ は見かけることがない、エナメル線でハニカム・コイル 写共馴=㈱科学教材祉 (スパイダー・コイル)を巻いた。それが、小学3、4年ごろだったと思う0 初めてクリスタル・イヤホンからNHKの放送が聞こえた時の感動は、今も忘れら れない。その鉱石ラジオは、よく聞こえなくなった0鉱石の接点を調整すると良いら しいが、自分でトライしてもうまくいかなかった0鉱石を新しく買い換えるとまた良 く聞こえるというしろものであった0 それから、並3、並4、5球スーパー、ステレオと学年が大きくなるに従い、複雑 なラジオやアンプを組み立てることに夢中になった0中学生の時には、サブミニチュ 10 雄 善 株式会社トヨタ工丁開発センター 重商顧問 前国際電気通信連合(王TU)司哺総局長 内 海 l i l l l i l 璽 i 星 i 孟 ! 1 − − ⋮ 謂 計 ⋮ ⋮ ! 霊 ⋮ 報 ⋮ ! ヨ ・ − − 一 − . 星 1 − − ! ! 貞 − 蔓 呂 1 1 − 弓 1 ど 1 識 語 1 1 1 1 乾 遠 望 ユ 咋 遥 1 1 1 − − l t 意 1 号 已 一電波 されていることが雑誌などに掲載されていたが、まだまだアマチュアの遊びの対象に はなっていなかった。電波関係の月刊誌が、ちょうど現在のパソコン雑誌のように書 店に並んでおり、その立ち読みをするのが楽しみであった。 高校に進学してからは、勉強やクラブ活動が忙しくなり、残念ながらラジオ少年は 卒業せざるを得なかった。 当時は、ラジオは家に一台、家族みんなで聴くものであった。しかし、私は自分で 組み立てた自分専用のラジオを持っていたため、このラジオのおかげで現在の私があ るのではないかと思う。自分のラジオで、自分の好きな番組を聴け、知識を得ること ができたからだ。ニュース、音楽番組はもとより、NHKで夕方放送していた分かり 易い英語ニュース「カレント・トピックス」は、中学生の時から毎日聞いた。たった 5分の番組で最初はチンプンカンプンであったが、だんだんと何のことを話している か分かるようになってうれしかった。 高校時代は、夏休みのNHK高等学校講座で古文や英語の講座を聴いた。一流の講 師による番組は、南榎の授業よりはよほど面白く勉強になった。夏休みが終わってみ ると、英語や国語は、苦労もせずに学校中でトップの成績になっていた。現代に置き 換えると、有名予備校の高名な離師の授業を受けたのと同じことではなかろうか。私 の高校は、香川県の高松高校で、地元では有名な受験校であるが、その授業よりもラ ジオ講座がよほど有益であったのである。 そんな訳で、いつの間にか勉強は友人よりも先に進んでいて、模擬試験では国語と 英語だけは2年生の時にすでに3年生のトップレベルに到達していた。そして首尾よ く希望大学に進学して法律を勉強した。 しかし、ラジオ少年が忘れられず、マツダ真空管を製造していた東芝に就職、そし て電波を監理する郵政省に転職して30致年間、通信行政に携わった。また、国際選挙 に立候補し、電波の聴元締めであるITUの事務総局長にまでなった。これらの重要 な職務に従事することができたのは、小学校から高校まで、自分専用のラジオで基礎 学習ができたおかげであると思う。 現代は、テレビ、携帯、Wi丘と一瞬たりとも電波の恩恵を受けずにおれない毎日 である。この目に見えない電磁波の不思議な魅力に魅せられた人たちがいなければ、 現代の科学文明は存在しない。そして、私もその一端に居るのだと思うと、電波が共 振するように不思議に心が高鳴るのを覚えるのである。電波を愛する人たちは、電波 と共振するなにかを持っているのではないかと思う。 11