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ビルの空調機器付随センサの ドリフト異常検知技術

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ビルの空調機器付随センサの ドリフト異常検知技術
入力
保守担当者による選定
ビルの空調機器付随センサの
ドリフト異常検知技術
計測値ログ
ログ
正常期間
推定期間
データに基づいて
デ
センサの
セ
ドリフト
異常を検知
異
機器データ
の作成
初期設定
機械学習でセンサ異常を遠隔
自動検知し省人化を実現
発生すると,省エネ性や快適性の低下につながります。
正常期間
モデルの構築
専門知識を持つ
保守担当者による
評価指標の設計
現場点検優先度
1 位:機器 W の付随センサ群
2 位:機器 X の付随センサ群
3 位:機器 Y の付随センサ群
計測値ドリフト
推定値分布の比較
次に,この技術により機器付随セン
サ群の点検優先順位付けした結果と,
実際に現場点検を行ってセンサの状態
を確認した結果との比較を図 3 に示し
ます。ドリフト異常が強く疑われた機
・基本は既存の評価指標を再利用
・必要に応じて新たな評価指標を設計
器付随センサ群ほど,現場点検でドリ
フト異常のセンサが多く発見される傾
向が認められ,ドリフト異常検知技術と
して有効であることを確認できました。
ビル空調機器のセンサ群
:温度センサ
ンジニアリング作業を必要とし,省人化が課題でした。そ
図1.サービスコンセプト ̶ ドリフト異常が強く疑われるセンサ群を優先的
に点検修理することで,異常に伴う損失を抑制します。
1
れる一方で,労働人口は減少しているこ
B-1
D-1
D-6
D-4
D-5
B-3
C-4
A-1
D-7
C-8
D-8
B-5
D-3
C-7
C-6
0
A-7
これまでは,専門知識のある保守担当者による煩雑なエ
伴ってセンサの遍在化が進むと予想さ
2
C-3
C
B-7
に点検することで損失を抑制する技術を開発しています。
加熱
コイル
A-4
ファン
C
IoT(Internet of Things)の普及に
3
C-1
くつかのセンサの集まり)を自動検知し,それらを優先的
4
C-5
H
A-6
冷却
コイル
A-3
C
A-8
疑いが強い機器付随センサ群(一つの機器に付随するい
今後の展望
5
B-8
使って,計測値が定常的に真値からずれるドリフト異常の
A-5
現場点検でドリフト異常が
発見されたセンサの数(個)
電磁弁
東芝は,遠隔収集した機器データや点検修理の履歴を
ドリフト異常検知技術を目指しています。
計測値ドリフト
の推定
図 2.機械学習の手法を取り入れたドリフト異常検知システムの構成 ̶ 専門知識を持つ保守担当
者によるエンジニアリング作業を減らします。
ビルの空調機器に付随するセンサの計測値に異常が
こで,機械学習によりエンジニアリング作業を省人化する
できるという試算結果を得ました。
出力
ビル空調機器の
データを遠隔収集
ドリフト異常が強く疑われる
センサ群を優先的に点検修理
アリング工数をこれまでの1/8 に削減
動作状態ログ
ドリフト異常の疑い:強
ドリフト異常の疑い:弱
ドリフト異常が強く疑われた順に並べた機器付随センサ群の名称
図 3.実験結果の一例 ̶ ドリフト異常が強く疑われた機器付随センサ群ほど,現場点検でドリフト
異常のセンサが多く発見される傾向が認められました。
とから,センサ保守業務の省人化につ
ながる技術のニーズは,今後ますます
高まっていきます。ビルの空調機器を
はじめとする様々なターゲットへの展
開を目指し,この技術の深耕を進めて
背景
センサのドリフト異常は,計 測 値 が
計測対象の真値に対して定常的なずれ
(以下,計測値ドリフトと呼ぶ)を持つよ
92
て,ドリフト異常の疑いが強い機器付
随センサ群を早期検知する技術開発に
取り組んでいます(図1)。
課題
リフトを推定する期間(以下,推定期間
選定は大まかであっても,正常期間モデ
そこで今回,機械学習手法を導入し
と呼ぶ)の機器データを使って,計測値
ルを構築するときの機械学習がその影
て,エンジニアリング作業の省人化を図
ドリフトを推定します。この際,一つの
響を緩和する仕組みになっているため,
りました。
機器付随センサ群に対して条件を変え
専門知識のない保守担当者でも実施で
ながら計測値ドリフトの推定を複数回
きます。評価指標の設計に関しては専
行い,計測値ドリフト推定値の分布情
門知識が必要になりますが,一度設計
報を獲得します。
した評価指標は再利用可能なため,こ
ていました。
システム構成
うになる現象です。例えば,ある場所
機器付随センサ群は,同種の機器で
の水温を計測する温度センサの計測値
も,ビルごと,メーカーごとに,数や,種
が,真の水温に対して定常的に+1 ℃ず
類,配置などの構成が異なります。更に
れているといった異常です。
計測値は,夏期の冷房や冬期の暖房な
まず,ドリフト異常検知の対象である
きいほどドリフト異常の疑いが強いと
評価指標の設計に掛かる工数は次第に
ビル用の空調機器に付随するセンサ
どの機器の動作モードや,外気温や在
機器付随センサ群の計測値ログや対応
いう仮定の下で,分布情報を機器付随
減っていくと考えられます。
のドリフト異常は,省エネ性や快適性の
室人数などの動作環境に応じて大きく
する機器の動作状態ログを,各ログに
センサ群 単位で比 較することにより,
低下につながるため早期の点検修理が
変化します。このため,遠隔収 集した
付された名称(例えば,
“外気調和機 A
相対的な点検優先順位を算出します。
望ましいのですが,校正用センサと比
データに基づいてドリフト異常を検知する
− 給気温度”)や計装図を参考に選定
較するなどの時間や手間の掛かる点検
には,機器付随センサ群ごとに検知方
し,機器データとしてまとめます。
手段しかなく,ドリフト異常が長期化す
法の指定やそのパラメータ調整などの
ることが問題になっています。
エンジニアリング作 業が必 要です。こ
計測値ドリフトがほぼゼロとみなせる期
間の選定と初期設定に相当する評価指
まず,保 守担当者によるエンジニア
東芝はこれを解決するために,機器
れまでは,このエンジニアリング作業の
間(以下,正常期間と呼ぶ)を選定し,
標の設計です。評価指標は,計測値ド
リング作業に関しては,計測値ログなど
付随センサ群の計測値ログや機器の動
全てを専門知識のある保 守担当者が
その期間の機器データを使って機械学
リフト推定値の分布情報を機器付随セ
の必要なデータは準備済みで,評価指
作状態ログなどの機器データを遠隔収
行っており,図1のサービスを広く展開
習により正常期間モデルを構築します。
ンサ群単位で比較する際の基準となり
標は新規設計なしという条件下であれ
集し,更に点検修理の履歴情報も使っ
しようとするときのボトルネックとなっ
そして,正常期間モデルと,計測値ド
ます。ログ,正常期間,及び推定期間の
ば,同種の機器 26 台に対するエンジニ
この技術のシステム構成を図 2に示
します。
次に,点検修理の履歴を参考にして,
東芝レビュー Vol.71 No.5(2016)
最後に,計測値ドリフト推定値が大
いきます。
の技術の導入案件が増えるにつれて,
実験
この技術での保守担当者によるエン
実用化に向けてこの技術を検証する
ジニアリング作業は,システムへの入力
ために,実際のオフィスビルで適用実験
に相当するログ,正常期間,及び推定期
を行っています。
ビルの空調機器付随センサのドリフト異常検知技術
森山 拓郎
技術統括部
研究開発センター
システム技術ラボラトリー
93
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