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平成23年度証券ゼミナール大会 第1テーマ 「金融の証券化について」

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平成23年度証券ゼミナール大会 第1テーマ 「金融の証券化について」
平成23
平成 23年度証券
23 年度証券ゼミナール
年度証券 ゼミナール大会
ゼミナール 大会
5
第 1 テーマ
「 金融の
金融 の 証券化について
証券化 について」
について 」
目次
10
序章
序論
… P2
第1章
証券化のメリット
… P3~ 6
第1節
証券化とは
… P3
第2節
証券化のメリット
… P5
第2章
15
… P7~ 17
第1節
サブプライム危機の概要
… P7
第2節
サブプライム・ローンの問題点
… P9
第3節
証券化の問題点
… P11
第3章
20
金融危機で露見した問題点
各問題に対する解決策
… P18~ 20
第1節
住宅ローン債権担保証券
… P18
第2節
債務担保証券
… P19
第3節
複雑化した金融商品と情報の不均一
… P20
終章
結論
… P21
参考文献
… P22
25
日本大学経済学部
証券研究会
グループB
1
序章
2007 年 入 っ て か ら 表 面 化 し 始 め 、世 界 的 な 金 融 危 機 の 発 端 と な っ た の が サ ブ
プライム・ローン問題である。当初はそれほど深刻になるとは考えられていな
5
かった問題だが、夏場には、証券化商品による巨額損失の発生と信用メカニズ
ム の 収 縮 が 連 鎖 的 に 発 生 し 、米 国 市 場 は 激 震 に 見 舞 わ れ 、2008 年 に は 米 政 府 に
よ る GSE の 救 済 、 リ ー マ ン ・ シ ョ ッ ク へ と つ な が り 、 世 界 中 を 巻 き 込 む 歴 史 的
金融危機へ発展した。
10
まず最初に第1章では、サブプライム・ローン問題に大きく関わっている証
券化の定義を明確にし、証券化の流れやメリットとはどのようなものかを解説
する。
そして次に第2章で、サブプライム・ローン問題に関連する金融危機で起き
15
た問題点を明らかにしていく。ここでは、まず、サブプライム・ローン危機の
概要を述べた上で、問題点とされる、住宅価格の下落や住宅在庫に対する想定
の甘さについて触れる。さらには、リスク属性の分析を極めて困難にした典型
例 で あ る CDO 化 の 問 題 、 リ ス ク 管 理 の 複 雑 化 を 招 い た 要 因 と し て 考 え ら れ る デ
リバティブなどについて説明する。
20
最後に第3章で、サブプライム・ローン問題に対して、規制を含めた解決策
について述べるとともに、それが市場に与える影響について考察する。
本稿では、金融危機の問題点を分野ごとではなく、第2章で統括して取り扱
25
うことにする。そして、その原因を明らかにしていくとともに、解決策を考察
していく。
2
5
第1章
証券化のメリット
第1節
証券化とは
まず、証券化について述べる前に、証券化の定義を明確にしておく。現在、
証券化という言葉は多義的に用いられているが、ここでいう証券化とは「その
ままでは簡単に売買できない、すなわち流動性の乏しい不動産などの資産、あ
るいは金銭債権に何らかの金融的工夫をほどこして流動性を付与し、資本市場
で流通可能な投資商品に変えること」
( 太 田 登 茂 久( 2008 年 1 月 )
『手に取るよ
10
うに証券化がわかる本』かんき出版より)と定義する。
次に、証券化に関する用語を明確にしたうえで、証券化の流れを解説する。
まず、
「 ア レ ン ジ ャ ー 」と は 、証 券 引 き 受 け 業 者 の 意 味 で 、顧 客 の 要 望 に そ っ て
証 券 化 の 仕 組 み を 設 計 し 、当 該 証 券 化 商 品 を 引 き 受 け 、投 資 家 へ と 販 売 を す る 。
15
主に証券会社や投資銀行がこの証券発行の円滑化の役割を担う。次に「サービ
サー」である。証券の裏付けとなる資産が金銭債権の場合、それを管理し、債
務 者 資 金 を 回 収 す る こ と が 役 割 と な る 。そ し て 、
「 格 付 け 機 関 」で あ る 。証 券 化
に お い て は リ ス ク の 移 転 が 多 く 起 こ る た め 、第 三 者 に よ る 公 正 な 格 付 け に よ り 、
情報の非対称性を埋める必要がある。その役割を担うのが格付け機関である。
20
これらの言葉を確認したうえで証券化の流れを確認していきたいと思う。証券
化の流れを次ページの図1に簡潔にまとめた。まず、証券の裏付けとなるキャ
ッシュフローを生み出す資産を原保有者(オリジネーター)から特別目的事業
体( SPV)に 譲 渡 す る 。そ し て 、そ の SPV が 譲 渡 さ れ た 資 産 を 裏 付 け に 証 券 を 発
行し、アレンジャーに証券の販売を引き受けてもらい、投資家へと販売しても
25
らう。なお、この際に格付け会社により、その証券の格付けを付与される。
一般的に、証券化とはこのような流れで行われるのである。しかし、図から
も見て取れるように、証券化とは様々な段階を踏み、単純に行えるものではな
いということがわかると思う。証券化の過程において、当然ながら手間やコス
30
トがかかってくるのである。しかしながら、現在も様々な証券化商品が市場に
3
出回っている。なぜならば、証券化には、手間をかけてまで行うようなメリッ
トが存在するからである。次にそのメリットを説明していく。
図1
証券化の流れ
5
太 田 登 茂 久 ( 2008 年 1 月 )『 手 に 取 る よ う に 証 券 化 が わ か る 本 』 か ん き 出 版
より作成
4
第2節
証券化のメリット
証券化を行うメリットは様々なものがあるが、ここでは、主なものを、オリ
ジネーターと投資家の2つの視点から見たメリットを挙げていこうと思う。
5
まず、オリジネーターの視点からのメリットについて述べる。
第1に、もっとも大きなメリットである流動性の付与である。これは上での
べた定義にも関わってくるほどの、証券化のメリットの基本ともなるものであ
る。例えば、高額な不動産のように一般の投資家では投資できないような資産
10
であったとしても、証券化により小口化することが可能となり、多くの投資が
期待できるようになり、市場の活性化が期待できる。このように、証券化を行
うことで流動性の付与というメリットを得られるのである。当然であるが、こ
れは投資家から見てもメリットとなるものである。
15
第2に、価格変動のリスクを減らすことができるというメリットである。こ
れは、主に不動産に関してである。不動産は時間の経過に伴う劣化により、価
値が下がるのが一般的である。この劣化が価格変動のリスクの最たるものであ
るが、証券化をし、投資家に販売することでこのリスクを投資家へと移すこと
が可能になるのである。
20
第3に、債務不履行や賃料未納などのリスクを減らすことができるメリット
である。例えば、テナントを出している企業の倒産等のリスクがあるが、証券
化し、投資家に販売することで、こういったお金の回収リスクを投資家に移す
ことが出来るのである。
25
最後に、証券化した商品の格付けはオリジネーター自体の格付けとは異なる
ということである。これは、証券化商品がその裏付けとなるキャッシュフロー
を生み出す資産に的を絞って格付けされることにより発生する。その資産が生
み出すキャッシュフローがより確実なものであれば、たとえオリジネーター自
30
身の格付けが低くとも、高い格付けを得られるのである。このことにより、今
5
までは低い格付けの為、銀行の貸し渋りを受けていたような企業でも、よい資
産を証券化できれば、簡単に資金調達をすることができるようになり、資金調
達の多様化が可能になるのである。
5
次に、投資家の視点からのメリットについて述べる。
第1に、オリジネーターからリスクを転嫁されたぶん、高い金利を得られる
ということである。オリジネーターは上で述べたようにいくつかのリスクを投
資家に移すが、ただリスクをつけただけの証券では、当然買い手は現れない。
したがって、それに見合っただけの魅力となる高い金利をつけるのである。
10
第 2 に 、 オ リ ジ ネ ー タ ー が 証 券 の 裏 付 け と な る 資 産 を SPV に 譲 渡 す る ( 倒 産
隔離)ことによるメリットである。倒産隔離を行うと、もしオリジネーターが
倒産したとしても、証券の裏付けとなっている資産をオリジネーターの債権者
等に差し押さえられてしまうといった事がなくなるのである。よって、投資家
15
の抱えるリスクが減少するのである。
第3に、投資の多様化が可能になるということである。証券化の進行に伴い
数多くの証券化商品が市場に流通するようになり、投資家は多種多様な商品へ
の投資が可能となったのである。よって、投資家は自分のニーズにあった商品
20
の選定や、様々な分野の商品へ投資することで投資リスクを分散することがで
きるようになったのである。
6
5
第2章
金融危機で露見した問題点
第1節
サブプライム危機の概要
サブプライム・ローンとは、信用力が低いサブプライムの顧客層を対象にし
た住宅ローンであったわけだが、当初から、債務返済の延滞や自己破産の履歴
があるなど、従来の借り手に比べ信用力の低い場合や、住宅ローンを借り入れ
る に は 所 得 が 少 な す ぎ る 等 の 問 題 が あ っ た 。わ ず か 25 年 前 の ア メ リ カ で は 、サ
ブプライム層向けの住宅ローンの提供はほとんど見られず、極めて限定的であ
10
っ た 。し か し 、2003 年 頃 プ ラ イ ム 層 向 け 住 宅 ロ ー ン 市 場 の 成 熟 化 と 金 利 上 昇 を
背景としたリファイナンス・ブームの終焉という経営環境の変化を受け、住宅
ローンビジネスを手がける金融機関は、新たな市場としてサブプライム層への
住宅ローンの提供を始めた。アメリカの住宅ローンは一部の例外を除いて、期
間 30 年 、固 定 金 利 と い う の が 一 般 的 で あ っ た 。こ れ に 対 し 、サ ブ プ ラ イ ム・ロ
15
ー ン は 変 動 金 利 が ベ ー ス と な っ て お り 、借 り 入 れ 当 初 の 2、3 年 間 の み 低 い 固 定
金利が適用され、返済負担が一時的に軽減されるようになっていた。しかし、
優遇期間が終わった時点でペイメント・リセットといわれる新たな返済条件の
設定が行われ、元より高い金利が適用された。この非伝統的ローンは、続いて
いた住宅価格の上昇を前提にしており、ペイメント・リセット時の有利な住宅
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ローンへの借り換えを想定したものだった。優遇期間内の支払いを続けること
ができれば、信用履歴(クレジット・ヒストリー)の改善にも繋がるため、信
用力の低い借り手にとって、
「 信 用 力 を 回 復 す る 商 品 」と い う 側 面 も 持 っ て い た 。
そのため、住宅価格の高騰が続き、住宅が手に入りにくい環境も相まって、サ
ブプライム層に広く支持された。一方で、一部の借り手に対して、本来必要な
25
収入証明書等の書類の提出を求めずにローンを提供したり、この非伝統的ロー
ンの商品性についての十分な説明がなされない等のケースがあった。しかし、
新たな市場の開拓に迫られていた金融機関は、そのような問題をあまり重視せ
ず 、 サ ブ プ ラ イ ム ・ ロ ー ン を モ ー ゲ ー ジ 担 保 証 券 ( サ ブ プ ラ イ ム MBS) と し て
証券化し、機関投資家等に売却することで、高い手数料収入を得るとともに、
30
信用リスクを回避しようとした。
7
しかし、住宅価格が下落したことで、サブプライム・ローンは大量に焦げ付
いた。また、このローンを裏付けとした証券化商品の価格下落によって、金融
機関やその傘下の投資ビークルやヘッジファンドが巨額の損失を出してしまう
結果となった。さらには、そのような状況のもとで、多くの投資家たちが株式
5
や社債などのリスク資産を売却したため、世界的な株価急落や金融市場の混乱
を招くことになってしまった。
8
第2節
サブプライム・ローンの問題点
サブプライム・ローンの問題点として、まず挙げられるのは、住宅価格の下
落 に よ る 影 響 に 対 す る 見 通 し の 甘 さ で あ る 。先 に 触 れ た よ う に 、サ ブ プ ラ イ ム・
5
ローンの借り手にとって、ペイメント・リセット時の有利な住宅ローンへの借
り換えは、高金利を避け、負担を先延ばしにするための手段であった。もとも
と所得の低いサブプライム層にとって、高金利のローンを完済はほぼ不可能な
た め 、借 り 手 の う ち ほ と ん ど が リ セ ッ ト 時 期 以 前 で の 借 り 換 え を 想 定 し て い た 。
しかし当然、借り換えを行う際には住宅そのものの価値がある程度上昇してい
10
なければならない。そういった意味では、サブプライム・ローンそのものが、
住 宅 価 格 の 上 昇 を 前 提 に し て 支 え ら れ て い た 、脆 弱 な シ ス テ ム だ っ た の で あ る 。
そして、それまで続いていた住宅価格の上昇が止まると、サブプライム層の借
り換えは、やはり困難になった。さらに、金融機関が監視姿勢を強めたことに
よって、たとえ住宅価格が下がらなくとも、サブプライム層への借り換えその
15
ものに応じないというケースや、サブプライム・ローンの悪化に伴い、その普
及役であったモーゲージ・カンパニーが資金調達難になり、間接的に借り換え
が困難になるケースが見られた。このような状況で、借り手たちは、高くなっ
た金利を払い続ける以外に手だてを失ってしまった。住宅価格の下落が与えた
影響は、借り換えの問題だけにとどまらなかった。それまでのアメリカでは、
20
住宅ローンのリファイナンス等を通じて、住宅の正味資産を現金化し、消費支
出 や 住 宅 の 修 繕 費 用 等 に 充 て て い た 。ア メ リ カ 連 邦 準 備 理 事 会( FRB)に よ れ ば 、
2006 年 、こ の よ う な 住 宅 金 融 を 通 じ て 消 費 に 向 か っ た 資 金 は 、個 人 消 費 全 体 の
2%に の ぼ っ て い た 。 当 然 、 消 費 行 動 は 減 退 し 、 経 済 に マ イ ナ ス の 影 響 を 与 え て
しまった。このように、住宅価格の下落によってローンの借り換えが困難にな
25
り、そのことによって起こる、さまざまな面での大きな影響にも、十分な想定
がなされていなかったのである。
9
このような、サブプライム危機につながっていった、あらかじめ必要であっ
たリスク判断の甘さに加えて、以下のような、危機が起こってしまった後の社
会的な影響への想定も甘かったといえる。
5
2つ目に挙げられるのは、住宅在庫に対する想定の甘さである。アメリカの
住 宅 市 場 に つ い て は 、2007 年 初 め 頃 ま で は あ ま り 問 題 と さ れ て い な か っ た 。し
か し 、 住 宅 在 庫 数 が 増 加 し 、 新 築 戸 建 て 住 宅 の 着 工 件 数 は 、 年 率 100 万 件 を 割
り込むなど、住宅在庫問題が浮き彫りになった。住宅在庫が増加する状況で、
住宅投資の削減が景気を下押しし、住宅価格の下落、さらには雇用や消費の冷
10
え込みも招いてしまった。このことも、サブプライム危機に付随する 1 つの問
題点であり、やはり、後々までの大きな悪影響を測りきることはできなかった
のである。
10
第3節
証券化の問題点
そもそも証券化は、住宅ローンをプールして小口化することによって、その
リスクを広く薄く投資家に負担させる仕組みである。このため、金融機関に借
5
り手の信用リスク等のリスクが集中する間接金融と比べて、リスクに対して柔
軟に対処することができる頑強なシステムであると考えられてきた。中央に 1
つだけ大きな装置を用意する集中管理型システムよりも、システムを分散させ
る こ と で 頑 強 性 を 追 求 し た イ ン タ ー ネ ッ ト と 同 様 の コ ン セ プ ト で あ る 。し か し 、
システムとしてリスク耐性が強いはずの証券化市場を中核に、新しい形の金融
10
危機が生じてしまった。
まず、投資に対するリスク判断に問題があった。サブプライム・ローンの最
初 の 証 券 化 ( い わ ゆ る MBS 化 ) に 当 た っ て 、 主 に 問 題 に な っ た の は 、 エ ク イ テ
ィ債のリスクの過小評価である。格付会社はあらゆる債権に対してリスクの判
15
断や格付けを行う。もちろん、サブプライム・ローンの証券化に際して、この
証券に対する格付もなされた。金融商品の格付において、優先順位の高いもの
から、シニア、メザニン、エクイティと分類される。最初に損失を計上するエ
クイティと呼ばれる部分は無格付になることが一般的である。また、エクイテ
ィ部分は、投資家への売却が困難とされており、その資産の本来の持ち主であ
20
る オ リ ジ ネ ー タ ー が 保 有 せ ざ る を え な い も の で あ っ た 。当 然 、格 付 が な さ れ ず 、
売却が困難なエクイティ投資には、相応のリスクが伴う。しかし、それまでの
ア メ リ カ で は 、住 宅 ロ ー ン の 延 滞 率 が 歴 史 的 に 見 て 低 い 水 準 で あ っ た こ と か ら 、
エクイティ投資のリスクが実際より低く見込まれてしまった。もともと、リタ
ーンが極めて高かったエクイティだったが、この投資リスクの過小評価を信用
25
してしまった一部の投資家によって、見かけ上“ローリスク・ハイリターン”
の金融商品への投資が始まった。最初はリスク商品への投資に慎重であった投
資家たちも、このような市場の状況を受けてエクイティ投資に乗り出し、その
後 も 拡 大 し た 。し か し 、先 の サ ブ プ ラ イ ム・ロ ー ン の 延 滞 率 の 急 上 昇 に よ っ て 、
エクイティ部分に対して特に集中的にリスクが表面化した。
30
11
また、統計などのデータへの判断にも誤りがあった。格付会社は住宅ローン
の信用力の判定にさまざまな統計を利用する。その中には、ローンが提供され
る地域の分布、分散や、デフォルト(債務不履行)率等が含まれており、その
統計をもとにさまざまな想定がなされる。特に、デフォルト率については、信
5
用力の判定にとって非常に重要なものであったが、その内容は、現状を無視し
たものであった。過去の統計を用いて、さらに慎重に検討されたはずのデフォ
ル ト 率 だ っ た が 、実 際 よ り か な り 低 く 見 積 も ら れ て い た 。現 実 の 債 務 不 履 行 は 、
統計等のデータへの甘い判断をもとにした想定を大きく超えてしまい、格付会
社の統計中の実際より大幅に低いデフォルト率を信用した投資家たちは、リス
10
クを十分に把握できないままに、危険な投資を行うことになってしまったので
ある。
さ ら に 、証 券 化 が も た ら す 問 題 に 対 す る 認 識 も 低 か っ た と 言 わ ざ る を え な い 。
いわゆる不良債権問題は、預金者保護や資本の増強等、金融機関の経営の観点
15
からの対処が可能な問題であった。しかし、証券化された住宅ローンが、市場
を通じて多くの投資家に関係してしまっていたことが、問題への対処を一段と
困難にした。債権者が不特定多数になったことによって、金利減免や、借り手
との支払い条件の交渉の余地が小さくなってしまったのだ。このように、サブ
プライム・ローンの証券化は、ローンが焦げ付いた場合の対処法を極めて限定
20
的なものにした。さらに、証券化の影響はこれだけにとどまらず、証券化され
た金融商品がアメリカ国内だけでなく、世界各国の投資家に分散保有されてい
たことにより、サブプライム問題の影響が世界中に波及してしまった。金利変
動型という不安定な性格をもった住宅ローンのリスクを広く分散させることを
目的として、行われた証券化であったが、そのことによって起こる、問題の複
25
雑化と影響の拡大に対しての見通しはあまりに甘く、そのことが、事態を深刻
化させてしまったことは言うまでもない。
12
さらに、サブプライム問題では、証券化商品が複雑な商品に加工され、リス
ク属性の分析が極めて困難になったということが指摘されている。その典型例
が CDO で あ る 。
5
CDO と は 、 Collateralized Debt Obligation の 略 で 、 ひ と こ と で 言 う と 「 担
保 債 務 証 券 」に な る が 、サ ブ プ ラ イ ム の 文 脈 で は 、住 宅 ロ ー ン を 証 券 化 し た MBS
を 、さ ら に 再 証 券 化 し た 二 次 証 券 化 商 品 の こ と を 指 す 。ま た 貸 付 債 権( ロ ー ン )
や債券(公社債)等から構成される金銭債権を担保として発行される証券化商
品 で 、ABS( 資 産 担 保 証 券 )の 一 つ で あ る 。そ の 担 保 が ロ ー ン の み で 構 成 さ れ る
10
場 合 は 「 CLO( Collateralized Loan Obligation)」 と 呼 ば れ 、 ま た 債 券 、 債 券
類 似 商 品 で 構 成 さ れ る 場 合 は 「 CBO( Collateralized Bond Obligation)」 と 呼
ば れ る 。 CDO は 「 CBO」 あ る い は 「 CLO」 の い ず れ か 、 ま た は そ の 双 方 を 包 含 す
る商品となっている。
15
一 般 に CDO は 、 複 数 の ロ ー ン ま た は 公 社 債 な ど の 資 産 を 保 有 す る オ リ ジ ネ ー
タ ー が 、 そ れ ら を SPV に 譲 渡 し 、 こ の 資 産 を 裏 付 け と し て 発 行 し た 「 社 債 」 の
売出や「信託受益権」の譲渡などを行うことで、投資家から資金調達を行う仕
組 み で あ る 。1980 年 代 に 米 国 で は じ め て 発 行 さ れ 、そ の 後 、欧 州 や 日 本 な ど で
も 発 行 さ れ て 市 場 が 拡 大 し 、2000 年 代 に は 金 融 機 関 や 機 関 投 資 家 な ど の 運 用 対
20
象として人気となった。
CDO は も と も と ア メ リ カ の 任 官 MBS は な る べ く 高 い 格 付 け を 切 り 出 し て 投 資
家に販売してきたが、サブプライム・ローンの証券化ではメザニン(優先クラ
ス と 劣 後 ク ラ ス の「 中 間 」)部 分 を 中 心 に CDO に よ り 再 証 券 化 す る 手 法 が 多 用 さ
25
れ た 。 基 本 的 に は 、 優 先 劣 後 構 造 に よ り 内 部 信 用 補 完 を 行 い 、 AAA の ト ラ ン シ
ェ( 部 分 )を 切 り 出 し て い く テ ク ニ ッ ク は MBS 等 通 常 の 証 券 化 と 同 じ だ が 、CDO
組成の局面では、メザニン部分を表章する小ロットの証券化商品を個別に投資
家 に 販 売 す る の で は な く 、 CDO マ ネ ー ジ ャ ー と い わ れ る 人 々 に よ っ て 再 証 券 化
さ れ る よ う に な っ て い っ た 。 CDO に は 、 裏 付 資 産 が 主 に サ ブ プ ラ イ ム 証 券 化 の
30
う ち AA ク ラ ス 、A ク ラ ス か ら な る ハ イ グ レ ー ド ABSCDO と 言 わ れ る 商 品 が あ る 。
13
ハ イ グ レ ー ド ABSCDO で あ れ 、 メ ザ ニ ン ABSCDO で あ れ 、 こ の 再 証 券 化 に よ り さ
ら に 多 く の AAA が 切 り 出 さ れ る こ と に な っ た 。 企 業 向 け 債 権 で CLO( ロ ー ン 担
保証券)を組成する場合、各企業向け貸付けの信用力と、それらが同時にデフ
ォルトする可能性がどの程度あるかといった統計的アプローチで単体の企業へ
5
の投資より高い信用力を見込むのが証券化の基本だが、そもそも企業の社債で
用 い ら れ る も の と 同 様 の ロ ジ ッ ク を 用 い て ABSCDO の よ う な 再 証 券 化 を サ ブ プ
ラ イ ム ・ ロ ー ン に 対 し て 用 い た こ と へ の 問 題 点 の 指 摘 も 多 い 。 こ う し た CDO の
組成に際して、クレジットデリバティブ取引のような金融手法が多く用いられ
たことも、さらなるレバレッジの拡大と問題の複雑化を招くこととなった。
10
( 小 林 正 宏 /大 類 雄 司 ( 2008 年 12 月 )『 世 界 金 融 危 機 は な ぜ 起 こ っ た か 』 東 洋
経済新報社より)
2007 年 に 米 国 か ら 始 ま っ た サ ブ プ ラ イ ム・ロ ー ン 問 題 に よ り 、担 保 と な っ て
い た ロ ー ン が 数 多 く 破 綻 し た こ と か ら 、 高 格 付 け と し て 運 用 さ れ て い た CDO も
15
毀損し、世界中の多くの投資家が巨額の損失を計上する結果となった。という
の も 、 サ ブ プ ラ イ ム ・ ロ ー ン を 担 保 と し た 債 券 が 、 CDO と し て 投 資 家 に 大 量 に
販 売 さ れ た か ら だ 。サ ブ プ ラ イ ム・ロ ー ン な の で 担 保 の 質 は あ ま り よ く な い が 、
一番返済順位の高い債券は、大手銀行など低リスク資産への投資を手がける投
資家、返済順位の低い債券は、高リスクを好む(主にヘッジファンド)投資家
20
に販売された。
ここで投資家が投資リスクを判断する上で見る一番重要な指標として、主な
格 付 会 社 ( S&P、 Moody’ s、 Fitch 等 ) の 示 す 「 格 付 」 が あ る 。 格 付 会 社 は 返 済
順 位 の 高 い 債 券 に は 格 付 け を AAA( 最 も 安 全 )か ら B( 投 資 不 適 格 )な ど と 付 与
25
し 、 投 資 家 に 販 売 す る と き の 重 要 な 指 標 と な っ て い る 。 CDO を 発 行 す る 際 、 発
行会社は格付会社に手数料を払って「格付」を付与してもらう。
ま た 、CDOの 問 題 点 の 1 つ と し て 流 動 性 が 低 い こ と が 挙 げ ら れ る 。株 式 の よ う に
証券取引所を通して売買できるものではなく、売り手と買い手が1対1で取引
(相対取引)する商品で、商品購入の際、買い手は組み込まれているさまざま
30
な債権の精査に多くの時間を要する。そのため、株式などと比較し流動性が低
14
くなる。このような流動性の低さや、証券化したものをさらに証券化するとい
っ た 複 雑 な 商 品 組 成 が 、今 回 の 問 題 を 引 き 起 こ し た と 想 定 さ れ る 。 サ ブ プ ラ イ
ム・ローンの延滞率が上昇するにつれて、その債権を元手下落していく。損失
の発生は、リスクの高い「エクイティ」から起こった。延滞率の上昇が、サブ
5
プライム・ローン債権を発行した金融機関への影響だけではなく、証券化商品
への投資活動を行っていた機関投資家などへ飛び火していく中で、比較的安全
な資産と思われていた「メザニン」の価格も下落していった。さらに、民間の
格付け会社が「メザニン」の格下げを発表したことから、さらなる価格の下落
を 招 い た 。リ ス ク を 分 散 さ せ る た め に 実 施 し た 証 券 化 だ が 、幾 度 も 証 券 化 さ れ 、
10
複雑化したことによって、逆にリスクの所在の把握を困難にしてしまった。こ
う し て 格 下 げ さ れ た CDOを 保 有 し て い る 投 資 家 は 、CDOの 売 却 を 試 み た 。し か し 、
そもそもの流動性が低いことや、売り手が買い手を上回り、買い手が債権を精
査する時間が不足していたことなどから、売却したくても売却できないという
状況に陥ったのだ。
15
15
また、リスク管理の複雑化を招いた要因として考えられるのが、デリバティ
ブである。
デリバティブ(金融派生商品)とは、既存の金融商品から派生してできた取
5
引に付けられた総称である。このデリバティブは商品の仕組みによって「先物
取 引 」、「 先 渡 し 取 引 」、「 ス ワ ッ プ 取 引 」、「 オ プ シ ョ ン 取 引 」 の 4 つ に 分 類 す る
こ と が で き る 。ま ず は 、そ の 説 明 か ら 始 め る 。
「 先 物 取 引 」と は 、あ る 商 品 を あ
る期日に売買する契約を、現時点で実施するもので、契約時点で価格と量の決
定 を す る も の で あ る 。そ し て 、
「 先 渡 し 取 引 」が こ れ と 類 似 し て い る が 、取 引 方
10
法(先物が取引所取引、先渡しが店頭取引)や証拠金という、担保として預け
入 れ る お 金 の 有 無( 先 物 が 必 要 、先 渡 し が 不 要 )等 の 相 違 点 が あ る 。次 に 、
「ス
ワップ取引」である。これは、等価のキャッシュフローを交換する取引の総称
である。さらに、交換の対象となる通貨が同じか異なるかで大きく2つに分類
される。同じ通貨の場合を金利スワップ、異なる場合を通貨スワップという。
15
そして、
「 オ プ シ ョ ン 取 引 」で あ る 。こ れ は 満 期 日 、あ る い は 決 め ら れ た 期 間 内
に商品を当初に取り決めた価格で購入する権利または売却する権利を売買する
取引である。
このような商品が登場したのはリスク・ヘッジやレバレッジを利かせられる
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等のメリットがあるからである。しかし、大きなデメリットも存在するのであ
る。それは、リスク管理の複雑さである。現在の日本では、金融資産の管理に
時価会計という、期末時点の時価で再評価するという会計手法が導入され、投
資家は比較的早い段階でより正確な情報を得られるようになった。例えば、多
くの債券や株式は取引が終了した時点で終値が公表され、比較的簡単に損益を
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計 算 で き る 。し か し 、デ リ バ テ ィ ブ は そ う 単 純 に は い か な い の で あ る 。例 え ば 、
スワップ取引においては、時価ではなく金利や変動率といった参考レートが公
表されるのみで、その参考レートをもとに計算をして金融資産の評価を推定す
るしかないのである。これはほんの一例であるが、デリバティブの評価とは非
常に複雑なものなのである。さらに、仕組債という、債権の中に一部デリバテ
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ィブを組み込んだというものまで登場した。
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これを評価するには組み込まれたデリバティブの一つ一つを複雑な方法で評
価する必要があり、非常に難解なものである。このように、デリバティブとは
非常に複雑であるため、リスクの管理が非常に難しいのである。
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本章を締めくくるにあたって、以上のことを考えると、サブプライム・ロー
ン問題の発端は、金融機関の利益を考えるあまりのリスク軽視であった。その
後、幾度もの証券化を経て、リスク管理が複雑化し、正しい情報が共有されなか
ったことで、非常に大きな規模の金融危機につながってしまった。これらの要
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因は、格付会社や金融機関、あるいは投資家たち自身によってもたらされたの
である。
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第3章
各問題に対する解決策
第 1節
住宅ローン債権担保証券
世界金融危機の原因のひとつとして、本節では「サブプライム・ローンの証
券化」に焦点を当てることにする。
サ ブ プ ラ イ ム・ロ ー ン の 証 券 化 は 、サ ブ プ ラ イ ム・ロ ー ン を 販 売 し て い る 金
融 機 関 が 、リ ス ク 回 避 の た め に 、リ ス ク レ ベ ル を 段 階 別 に し た 上 で 証 券 化( 住
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宅 ロ ー ン 債 権 担 保 証 券 RMBS)し た こ と が 始 ま り で あ り 、こ の 段 階 で の 証 券 化 は
ま だ 健 全 な 範 囲 で あ っ た と い え る 。種 類 と し て は ロ ー リ ス ク ・ ロ ー リ タ ー ン で
あ る 「 シ ニ ア 債 」、 中 程 度 の リ ス ク リ タ ー ン の 「 メ ザ ニ ン 債 」、 ハ イ リ ス ク ・ ハ
イリターンである「エクイティ債」などがある。
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ま た 、「 エ ク イ テ ィ 債 」 は ハ イ リ ス ク で あ る が た め 、 当 初 は 投 資 家 に 見 向 き も
さ れ な か っ た が 、好 景 気 や 目 先 の 利 益 に 目 が 眩 み 、ハ イ リ ス ク の 点 を 無 視 さ れ
多 く の エ ク イ テ ィ 債 が 市 場 に 流 れ る こ と に な っ た 。こ れ は エ ク イ テ ィ 債 に な る
に も か か わ ら ず サ ブ プ ラ イ ム・ロ ー ン を 販 売 す る 金 融 機 関 と た と え 債 権 者 が 破
産しても原資は取り返せると甘い見通しをしていた投資家に問題があったと
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いえる。
こ の 問 題 に 対 す る 解 決 策 と し て は 、金 融 機 関 に 対 し て サ ブ プ ラ イ ム ・ ロ ー ン
の 販 売 を 一 部 制 限 す る こ と が 考 え ら れ る 。具 体 的 に は 証 券 化 し た 時 に エ ク イ テ
ィ 債 と な り う る 貸 出 先 、住 宅 ロ ー ン の 借 り 換 え を 行 う で あ ろ う 相 手 へ の ロ ー ン
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販 売 を 制 限 す る こ と で あ る 。こ れ は 金 融 機 関 に 対 し 貸 し 手 借 り 手 共 に リ ス ク の
高 い ロ ー ン の 中 で も 特 に 危 険 度 の 高 い 販 売 を さ せ な い よ う に し 、市 場 に 多 く 流
れることが危険であるエクイティ債の実数を減らすために必要な制限である
と 考 え る 。ま た 、危 険 な 証 券 の 数 が 減 る の で 証 券 化 市 場 の 健 全 化 に も つ な が る
と考えられる。
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第2節
債務担保証券
そ し て 、前 節 で 述 べ た RMBS を さ ら に 証 券 化 し た こ と で 問 題 が 起 き て い る 。再
度 の 証 券 化 は 債 務 担 保 証 券 ( CDO) に よ っ て 行 わ れ る 。 そ の 際 の ラ ン ク 付 け は
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RMBS の 様 に 金 融 機 関 で は な く 、格 付 け 機 関 が 行 う が 、RMBS で「 シ ニ ア 」や「 エ
ク イ テ ィ 」 と 判 断 さ れ た も の を 集 め 、 CDO に よ り 再 度 ラ ン ク 付 け を 行 う こ と に
よ り 、RMBS で「 シ ニ ア 」と 判 断 さ れ な か っ た 証 券 の 一 定 割 合 が「 シ ニ ア 」の 判
定 を 受 け る と い う 事 態 が 起 き て い る 。( ジ ャ ッ ク ・ ア タ リ( 2009 年 9 月 )『 金 融
危 機 後 の 世 界 』 作 品 社 265 ペ ー ジ よ り ) こ れ に よ り 、 問 題 と な っ た 格 付 機 関 へ
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の不信につながったと考えられる。
こ の 問 題 に 対 す る 解 決 策 と し て は 、 RMBS の CDO 化 を 禁 止 す る 、 も し く は CDO
化 す る 際 に つ け る ラ ン ク を RMBS の ラ ン ク の ま ま に す る べ き だ と 考 え る 。両 者 と
も CDO 化 さ れ た 時 に ラ ン ク が 変 動 す る 点 を 問 題 点 と し 、 変 動 さ せ な い
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た め で あ る が 、 前 者 は 原 因 と な る CDO 化 そ の も の を 禁 止 と す る 。 つ ま り 証 券 の
再証券化を禁ずるのである。後者ではあくまでランクの変動さえしなければ良
いとし、そのために金融機関が最初に設けたランクのみを使用することで正し
いランクのまま市場に出すことができると考える。
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第 3節
複雑化した金融商品と情報の不均一
前 節 で は 住 宅 ロ ー ン 債 権 担 保 証 券( RMBS)の 債 務 担 保 証 券( CDO)化 の み を 問
題としたが、この証券はさらにデリバティブにより分割・複雑化が進み、売り
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手が買い手に商品の情報を伝えきれない、もしくは買い手が理解しきれない事
態になっていく。売り手と買い手による情報の不均一となる。これにより、利
益が多く出るという結果だけが注目され、リスクの多い証券が多く売買された
ことも金融危機の原因の一つと考える。
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解決策としては、複雑化しすぎたことを原因として、デリバティブの制限が
上がる。ただし、デリバティブは多様に渡っており、そのなかで情報の不均一
が起こりうるものとそうでないものを分別するのは非常に困難であり、日々新
しく作られる商品を一つ一つチェックすることもまた困難であるだろう。しか
し、デリバティブの簡易化をすることで、金融市場への新規参入をしやすくす
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ることができ、金融商品の減少による市場の衰退よりも参入者増加による市場
の活性化が進むと考えられる。
別案として、売り手の情報開示の徹底化があるが、こちらも既に行われてい
たり、買い手の理解不足・好景気による目先の利益に飛びつく行為等により、
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情報開示を徹底化しても効果が必ずしもあるとは言い切れない。しかし効果が
ゼロでないのも間違いはなく、少しでも効果は見込めるため徹底化は行うべき
である。また、前案程ではないが市場への参入がしやすくなるため、市場の活
性化を進めることができると考える。
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終章
第3章第1節で述べたサブプライム・ローン販売の一部規制については、経
済活性化の面を考えてみると大幅な縮小につながると思われるため妥当な案と
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は言えないだろう。しかし、危険な証券を少なからず排除できるため、証券化
市場の健全化及び活性化につながるという面がある。
次 に 、 第 2 節 で 述 べ た CDO 化 の 廃 止 に つ い て は 前 述 と 同 じ 問 題 が あ る た め 、
問 題 と な っ た ラ ン ク の 変 動 を 解 決 す る た め に RMBS の そ の ま ま 採 用 す る こ と を
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すべきだと考える。第3節の情報開示はいくつかの問題点を前章で述べている
が、最終的には証券化市場の活性化にもつながるため、今回の解決策の中でも
即時行うべきものであると考える。
以上のことから、今回のような世界金融危機を再び起こさないために必要な
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ことは、短期間で解決できる特効薬のようなものではなく、一つ一つの問題点
を潰し、堅実な市場を生み出していくことである。
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参考文献
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藤 崎 達 哉( 2006 年 11 月 )
『 デ リ バ テ ィ ブ の 基 本 と カ ラ ク リ が よ く わ か る 本 』秀
和システム
ポ ー ル ・ ミ ュ オ ロ /マ シ ュ ー ・ パ デ ィ ラ ( 2009 年 7 月 )『 実 録 サ ブ プ ラ イ ム 危
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機』日本評論社
み ず ほ 総 合 研 究 所( 2007 年 12 月 )
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http://www.ifinance.ne.jp/( 2011/10/1 付 )
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マ ネ ー 辞 典 m-Words
http://m-words.jp/( 2011/10/1 付 )
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