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997
学会抄録
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第48回東日本学術大会(昭和59年11月10∼11日,グランドふテル浜松)
プレジデンシャルアドレス 山田瑞穂(浜松医大)
皮膚免疫病理学においてモノクローナル抗体が使用
本学会では「皮膚科学の発展を目指して」をシソポ
されるようになってきた.我々は,①ケラチソ線維,
ルテーマとして掲げ,「皮膚科のルネッサンス」とした
②表皮細胞,③主にリンパ球,の各々に反応するモノ
いと念じた.特別講演には,できるだけ皮膚科以外の
クローナル抗体を作製してきた.また方法としては,
方にお願いした.教育講演は皮膚科と他科との接点,
螢光抗体法,酵素抗体法,コロイド金染色を用いた.
ないしは境界・周辺領域に狙いを定めた.シソポジウ
抗ケラチソモノクローナル抗体のKL
ムには医療の2本の柱,「診断」と「治療」の進歩を特
トノフィラメソトと反応し,抗原はそれぞれ55∼57
集し,ワークショップとして,①「皮膚の水分を測定
kd,
する器械」を私どもが開発したこともあり,
表皮細胞膜に対するモノクローナル抗体には,デス
cosmetic
1,KL4は共に
50∼67kdのペプチドであった.
dermatologyを,また②「教育」の問題を検討した.
モソームのみに反応するもの(KM
公募演題は「セミナー」と「スライド供覧」とし,セ
モソームの両者に結合するもの(KL3)があった.リ
ミナーは「皮膚のリソフォーマ」「皮膚の免疫学的研究」
ンパ球のように皮膚構成成分でない細胞に対するモノ
「皮膚科研究一般」の3つを計画した.この他,会員の
48)や,膜とデス
クp−ナル抗体と皮膚成分が反応することがある.こ
音楽会や芸術展示なども行った.
れを我々は,
特別講演1:創造性について 広中平祐(京大数理
付けた.例えばD47はヒト胸腺細胞に対する抗体であ
解析研究所)
るが,エックリソ汗腺とも反応する,モノクローナル
来る21世紀は,高度の科学技術に支えられた技術社
抗体を用いて,腫瘍の起原の同定,リソフォーマのタ
会が予想されており,創造性ということが大きな課題
イピソダなどを行い,研究のみならず日常診療に役立
unexpected
skin antigens (USAs)と名
となってくる.この創造性について考えてみたい.
てている.
過去の先覚者たちによれば,創造的発想は,意志と
特別講演3:ホメオスタシスと臨床 吉利 和(浜
は関係なく,仕事から離れている時に突然湧いてくる
松医大)
と言‰また創造には,真剣にものを考えることとと
生物が,その機能とか能力などについて異常に偏っ
もに,常識が大切な要素であるとも言われる.一方で
た態度を示さず,安定している状態をホメオスタシス
は,創造的天才を顧みると,彼らは矛盾に満ちた存在
という.
でもあった.このように創造に関して様々に述べられ
れとしてとらえ,自由で独立な生命を定めるのは,
ているが,少なくとも画一的なものからは,創造性は
milieu int6rieur であり,これの恒常性が中心課題であ
生まれてこないと言えるだろう.古代ギリシアがすば
るとした.生物がホメオスタシスを維持するためには,
らしい文化圏を築いたのは,複数の先進文明に接触し
備わった独特の機構が十分にその機能を発揮すること
たこと,他国と商業活動を行うために,予想もできな
が必要であり,
い変動に柔軟に対処する必要があったこと,中央集権
電解質をとりあげた.病気では,この機構が失なわれ,
Claud
Bernard
(1878)は,病気を平衡の乱
Cannonはこの機構として血糖,体温,
国家ではなかったことによるであろう.この例にみら
ホメオスタシスが乱れてしまうと考えられるが,一方,
れるように,創造性は決して画一的な教育からは生ま
生体が新らしい平衡状態を維持しようと努力し,別の
れはせず,多様なものを許す自由な環境から生まれる
形のホメオスタシスが生じる.
のである.
教育講演1:薬物の代謝と薬疹 加藤隆一(慶大薬
特別講演2
: advances
applied to derma
research J.
所)
in immunohistochemistry
topathology
and dermatological
Thivolet (フランス国立医学衛生研究
理)
生体内では,投与された薬物はペニシリソやセフア
ロスポリン系のように不安定で分解するもの以外は,
皮膚を含む肝や他の臓器で代謝されるものが薬疹に関
998
学 会 抄 録
係している.この代謝産物のうち反応性に富む中間体
皮膚疾患で精神障害を合併するものには,全身性エ
(reactive intermediate)が生体高分子と共有結合し,
リテマトーデス,ベーチェット病,強皮症など,精神
抗原性を獲得する.薬疹のうちのかなりの部分はアレ
遅滞を合併するものには,結節性硬化症,レックリン
ルギー性のものであろうと考えられているが,どのよ
グハウゼソ病,スタージ・ウェバー病,魚鱗獣色素
うな薬疹が皮膚に好発するかについては不明である.
性乾皮症などがある.このうちベーチェット病では,
教育講演2:皮膚の生化学入門 小川秀興(順天大)
CMI
生化学は,形態学に端を発した皮膚科学者にとって,
のものはMAS
一般的には苦手な領域である.しかし,視点を変えれ
度も高い.抜毛癖の要因には,家庭の問題,緊張,不
ば莫大な臨床的,形態学的知識の集積が他例に先駆け
安などの情緒的な問題が根底にある.
てなされており,疾患の臨床形態学的動態に合わせた
シンポジウム1:皮膚科診断法の進歩
試料採取の容易さからも,研究上極めて有利である.
光線過敏症の検査法 松尾幸朗
生化学的基本手技を簡単に解説し,感染症における
光線過敏が存在するかどうかを知る検査法の基本
host・parasite relationship, 角化異常症における分子
は,非病変部への光照射と皮疹の誘導である.光源に
異常,水庖症における各酵素の役割などの研究例をあ
はスペクトラムの広いものから狭いものの順に用い
げて説明した.
て,作用波長を知る.皮膚培養線維芽細胞に光照射し,
教育講演3:検査データの読み方 菅野剛史(浜松
生残曲線から光線過敏の存在を知るin
医大検査部)
ある.ポルフィリン体,薬物などが光増感剤となる.
検査データの評価には,検査の効率,正および負の
光毒性反応か光アレルギー性反応かを知ることは,光
(Cornell medical index)で神経症領域(IH,IV)
(manifest
anxiety scale)による不安
予測値,特異性の概念が重要である.検査を組合せる
線過敏症の発現機序解明の第一歩である.
vitro の方法も
ことは,効率,予測値を上げることになるか,次の2
皮表組織の検査法 田上八朗(東北大)
点が重要である.1つはスクリーニングという観点で
角層を従来のように,他の皮膚組織と同じような形
の組合せで,もう1つは組合せたデータ間の関連性を
態的立場からとらえようとして,なかなかっかみえな
定量的に把握しておくことである.分離分析プロファ
かった変化も,機能的な立場から解析してゆくと容易
イルの評価は,専門医のコタソトがより適切な場合で
に把握できる.これは皮表角層水分含有量測定法の開
も,一定程度可能であることが必要である.
発により,短時間で検査が可能となった.一方,肉眼
教育講演4:皮膚の外科 大浦武彦(北大形成外科)
的に同じようにみえる角層も,病的な状態では経表皮
skin surgery はofficeで行えるminor
水分喪失に変化があらわれる.診療の場で短時間に行
surgery と,
皮膚のみの変化に対する植皮術と定義する.皮膚科医
えるこれら2つの検査方法を紹介する.
すべてに,外科的知識と技術の修得を義務づけること
皮膚軟部組織の検査法 井上邦雄(浜松医大)
はできないが,
ゼロラジオグラフィーは,従来のχ線写真に比べて
skin surgery を皮膚科の中でどのよう
に位置づけ,義務づけるか考えたい.主として,
wound
軟部組織の微妙なコントラストの違いを良い解像力で
healing, skin graft,napの三点から考察したい.
抽出できる.CTは腫瘍の拡がり,下床との関係を断面
教育講演5:漢方医学の考え方 寺沢捷年(富山医
図として把握できるため,術前検査として大きなタ
薬大和漢診療部)
リットがある.超音波診断法は無侵襲で,嚢腫性病変
以下の3点について私見を述べたい.①東洋医学と
の検出に有用である.また,サーモグラフィーは皮膚
西洋医学の違いは,東洋医学は非特異的治療の体系で
血流量の指標となり得る.これらは適宜組合せて実施
あり,特定の病因を求めない.生体の有機的結合に注
することにより,皮膚軟部組織腫瘍の優れた補助診断
目し,整体性の快復により治癒を計る.②気血水のバ
法となる.
ランスを補正し,陰陽論的にみた生体の歪みを快復す
皮膚血流検査法 木花 光(慶大)
るために,多数の生薬を必要とする.③血がスムーズ
ある種の皮膚疾患の診断,治療効果の客観的な判定
に流れない状態力い`悳血″であり,いろいろな皮膚症
法として,皮膚血流量測定は重要な意義を持っている.
状が生じる.駆磨血剤について述べる.
しかし,皮膚血流は環境の影響を受け易く,また測定
教育講演6:皮膚疾患への精神医学的アプローチ
法によってはそれ自体が血流を変化させるなど,必ず
十東支朗(山形大精神科)
しも容易なことではない.最近開発されたlaser
Dop-
第48回東日本学術大会
pier flowmetry
はレーザー光を利用したドップラー効
999
コルヒチンは好中球遊走能を含む各種機能を障害す
果の原理に基づく方法で,無侵襲に連続測定か可能で
ることにより,膿庖形成を抑制すると考えられる.掌
あり,現在,最も優れた方法であると考えられる.
脈膿庖症,スウィート病,膿庖性乾癖などで,症状に
酵素を中心とした疾患の検査法 高森建二,古池高
応じて1日量0.5∼2mgを内服,膿庖新生が減少して
志,小川秀興(順天大)
ゆけば漸減していった.掌鱈膿庖症28人中,著効13人,
酵素異常に起因することが明らかな疾患群は,皮膚
有効14人,無効1人であった.スウィート病について
科領域だけでも約50種に及んでいる.今回は,これら
は4例中全例に軽快をみた.膿庖性乾癖1例ではメソ
のうち,白皮症,色素性乾皮症などの発症機構を簡単
トレキセートとの併用により軽快した.副作用として
に述べ,次いで,伴性遺伝性魚鱗癖(XLI)について,
下痢,悪心が5例にみられた.
酵素学的診断の有用性等について述べる.本症と尋常
免疫療法 小川秀興(順天大)
性魚鱗癖はしばしば鑑別困難であるが,
免疫療法とは,種々の手段・方法を用いて免疫機能
steroid sul-
fataseの活性測定により,本酵素が本症の発症に関与
を操作することにより,免疫応答を変化させ,それに
していることが明らかとなり,診断的意義はきわめて
より疾患の治療を行う方法である.特異的免疫応答の
大きい.
増強には,特異的ワクチソ療法が有名であり,抑制に
皮膚組織化学検査法 玉置邦彦(東大)
は脱感作,自己免疫疾患に対する特異抗体の除去など
最近,モノクロナール抗体などが容易に入手できる
がある.非特異的に免疫抑制を計るものとして,ステ
ようになった.ペルオキシダーゼ,
ロイド,イムランなどの制癌剤,X線照射,抗リンパ
FITC,ローダミソ
などを使ってこれらの抗体と反応する抗原の局在を検
討することも可能である.今回は,S・100蛋白,
球抗体,プラズマ・リンパ・フォレーシスがある.増
CEA,
強を計るものとして,ピシバユールなど生物由来の薬
HNK-1の各抗体による正常皮膚,各種皮膚腫瘍などに
剤,合成化学物質があげられる.
おける反応の結果を示すとともに,レクチソの結合部
抗腫瘍療法‐悪性黒色腫の化学療法の現状と展望一
位の局在様式についても報告する.また,
CEAとレク
チソ結合部位の局在との関連についても述べる.
神保孝一,高橋博之,前田和男,三浦俊祐,伊東佳子
(札医大)
好中球の機能検査 加藤泰三(東北大)
我々の過去5年間のDAV療法(DTIC,ACNU,
以前より行なわれている貪食能,殺菌能検査に加え
VCR)の予後は,
stage lb∼IIでは,加療,非加療群
て,好中球の遊走能の検査,活性化に伴って生じる代
の間に差がないが,
謝変化を指標とする機能検査が開発されている.遊走
ヵ月まで良好であった.PAV療法(pepleomycin,
能については,
ACNU,VCR)では症例が少なく,統計的検討が行な
Boyden法によって走化性因子の解析
stageⅢ∼IVでは加療群の方で23
が可能となった.また,好中球は種々の刺激によって
えなかった.DTIC十cisplatinの併用療法は未だ実験
活性酸素を発生し,光を発するが,それを経時的に測
段階である.
定することは,好中球の一連の代謝を全体的に把握で
が予後が良かった.実験的黒色腫治療薬としては,4・S−
DAV療法では免疫療法を加えた群の方
きる点で有用である.
システィニールフェノールと4・S・システィアミニール
リンパ球機能検査法 林 良一(新潟大)
フェノールがDTICに比してより著明な抗腫瘍効果
モノクロナール抗体を使用した検査法の1つとし
を示した.
て,われわれは自動化されたレーザーフローサイトメ
抗真菌療法 高橋伸也(秋田犬)
トリーを使用して,螢光抗体法で,末梢血リンパ球の
イミダゾール系内用抗真菌剤であるケトコナソール
モノクロナール抗体に対する陽性率を測定した.その
は広い抗菌スペクトラムを有し,糸状菌,酵母菌,二
結果,
形性真菌に高い抗菌力を示し,
OKT3陽性細胞は末梢血Tリンパ球を示すこ
と,また,
0KT4,
8, Leu7,
12, HLA-DRに対する
Sporothrix
schenckii,
病原性黒色真菌などにも有効である.本剤は1日1回,
陽性率を測定することにより,さらに詳しく分類でき
食事直後に成人で200mg/日(3mg/kg相当)内服する
ることがわかった.
が,胃液分泌抑制剤(抗コリソ剤,制酸剤,H2遮断剤
2,
3の皮膚疾患について検討し
た結果も述べた.
など)の併用をさける.
シンポジウム2:皮膚科治療法の進歩
80%以上に有効で,
open study では真菌症のほぼ
抗炎症療法 滝川雅浩(浜松医大)
studyにてグリセオフルビンと同等の効果を示した.
well-controlled comparative
1000
学 会 抄 録
副作用として約10%に肝機能異常がみられた.
序論 須貝哲郎(大阪回生)
外用療法 本田光芳(日医大)
保湿剤には化粧品保湿剤と皮膚保湿剤とがあり,前
皮膚疾患の治療法の主体をなすものは,外用療法で
者にはpropylene
あることは論をまたない.しかし,他の分野に比較し
lactate,
て外用療法の進歩はおそく,また,その評価も個人的
ronic acid,
好みにより著しく相違する.今回は,臨床的立場から,
polypeptides, lecithin, ureaなどがある.
外用剤の有用性について再評価する.
NMFの代表として関心がもたれているが,低湿度環
特別発言:家庭用スキン・ケア用品 山本一哉(国
境では期待した程の保湿能をもたないことが判った.
立小児)
酸性ムコ多糖類,特にhyaluronic
今日の皮膚科学では,スキソ・ケアに関する知識は不
ゲソおよびレシチンを含む化粧品製剤が,医薬外用剤
glycol, glycerol, PCA-Na,
sodium
sorbitolなどの低分子が,後者にはhyaluwater soluble collagen,
heparinoid,
PCA-Naは
acid. 水溶性コラー
可欠となっている.しかしながら,頭髪から全身各所の
として用いられる尿素やheparinoid製剤より優れた
皮膚,さらには爪に到るまでのスキソ・ケアに,一体い
皮膚保湿能を有することが判ってきた.
かなるものが,どの様に使用され,その評価は,という
皮膚保湿と保湿剤の役割 尾沢達也(資生堂研究所)
点になると,決して明確な状況にあるとは考えられな
油性成分による種々な段階での閉塞性保湿剤による
い.それにも拘らず,日常診療では医師側はスキソ・
吸湿性・保湿性を調べ,更にその相互関係について考
ケアを指導し,患者側からはスキソ・ケアに関する相
察した.又,保湿剤は,吸収性の高い乳酸塩やPCA-Na
談が持出される.ここでは,皮膚科医としては丿健康な
のような分子量の低い有機酸塩,中分子のグリセロー
皮膚はどのように手入れすれば良いか」を考えたい.
ル等のポリオール類,吸湿力は小さいが保湿力にすぐ
イオントフォレーシスー帯状癒疹後持続性神経痛に
れたヒアルロソ酸等の糖類や水溶性高分子を含む高分
対して一 小渾 明(東海大)
子保湿剤に分けることができる.これに無機塩の保湿
治療方法:①使用機器:electro-applicator
(Dental Corporation,
lidocaine十epinephrine,
GA,
system
USA),②薬剤:
methyl prednisolone sodium
succinate (Solu Medrol),
③イオソトフォレーシス:
上記薬剤をそれぞれ用い,範囲は10×10cm大,通電時
間は1.0mA,
10分間.治療成績:1ヵ月後,
性にも着目し,それぞれの特性を考慮し,皮膚生理の
恒常性維持を目的としてその合理的応用について提唱
を試みた.
皮膚保湿能とその測定 吉国好道(浜松医大)
3.5MHz高周波伝導度測定装置を用いて,1)角層
70%軽減
水分保持能を客観的に評価するための,いくつかの数
12/13例,3ヵ月後70%軽減6/6例.特徴:効果は持続
式について,2)外用剤が角層の水分含有量,水分吸収
的,持続性神経痛に有効,手軽で簡便に行える.
能,水分保持能にどのように影響するか,また外用剤
追 加
の種類によってどのような差異があるか,3)外用剤は
石田 均(神戸市立中央市民):帯状庖疹後神経痛の
角層のどの深さまで影響するか,それは外用剤の種類
原因が発疹局所の皮膚にあるのではないかと考え,外
によってどのように違うか等について報告した.
科的療法を試み,その結果を第83回日本皮膚科学会総
ヒアルロン酸ナトリウム(HA)の保湿性 外岡憲明
会で発表した.方法は,疼痛の著明な皮疹部にyスで
(ポーラ研究所)
小切開を加え,ピソセットとメスでその切開部位より
HAは従来の低分子humectantにみられない保
皮疹部の皮膚を真皮深層で剥離したものである.その
湿・保護膜を形成する可能性を考え,本研究を行った.
治療成績は,例数:19例.年齢:46∼83歳(平均67歳).
1.吸湿量はglycerinよりやや劣るが,吸湿平衡に達
性:男8例,女11例.発症後日数:10日∼8年(平均
する時間は早い.水分を含有した試料を低湿度下に放
9.6ヵ月).観察期間:1ヵ月17日∼1年11ヵ月.結果:
置した場合,HAは秀れた保湿性を示した.
完全寛解∼9例,ほとんど寛解∼3例,軽快∼4例,
vinyl alcohol, carboxyl
一部軽快他不変∼2例,不変∼1例.ほとんど寛解以
浸漬,乾燥した後,引張試験機にて比較した.HA試験
上が約63%であった.これはイオソトフォレーシスの
片が最も強固でかつ弾力性があった.
結果とよく似ており非常に興味深い.
lagen, sodium
ワークショプ1 cosmetic dermatology
turization
(スキン・ケア)
: mois-
methyl
chondroitin
2. poly-
dextran等を和紙に
3. soluble col・
sulfate等に比べ,HA含
有化粧水は明らかなすべり抵抗の低下を示した.4.皮
表に高分子膜を形成し,水分蒸発量を測定したところ,
1001
第48回東日本学術大会
HAは完全な閉塞膜を形成せず,水分の通過があり,
5∼6年次になり,臨床の現場を可能な限り見せてい
皮膚呼吸を妨げない被膜を形成していた.
る.
手部慢性型刺激性接触皮膚炎と保湿剤一水溶性コ
2)卒直後教育研修医(2年間),レジデント(3年
ラーゲン,尿素など 本田光芳(日医大)
間)制度が定着している.救急部と総合診療部との関
手部慢性型刺激性接触皮膚炎の治療には,現在のと
係,皮膚科での研修内容等紹介してみた.
ころステロイドホルモソ外用剤を主体として,また,
診療病院における卒後教育 船橋俊行(虎の門)
皮膚の脱脂・乾燥,粗粗化をふせぐために旧剤型の油
皮膚科が臨床科である以上,その教育は日常診療を
脂性軟膏基剤,さらに角層の水分保持を目的とした保
通じての修練が不可欠であり,これをはなれては成り
湿外用剤である尿素,水溶性コラーゲンなどが使用さ
立たないことは当然である.その意味で診療病院が卒
れている.今回,これら各種の外用剤,とくに,保湿
後教育の場として好適であるとする考えもある.しか
外用剤を本症に使用し,その臨床的有用性,使用感な
し現実には診療病院が教育の場をかねることについて
どについて述べた.
は,病院それぞれの性格に応じて種々の制約がっきま
化粧品原料の保湿剤について 戸田 浄(東京逓信)
とうのも止むを得まい.またそれぞれの勤務医の教育
可溶性コラーゲソ,可溶性エラスチソ,ヒアルロン
に関する意識もまちまちであって当然であろう.アン
酸などに代表される真皮の基質成分に由来したものか
ケート調査を行ったので,その結果にもとづいて教育
保湿剤として効能効果がすぐれていることから化粧品
に関しての問題点を整理し,今後とるべき対応につい
原料として使用され注目されている.在来の医薬品と
て触れた.
して使われている保湿剤と最近登場した化粧品原料と
研修病院における卒後教育,研修の現状と問題点
して使われている保湿剤とを魚鱗癖様皮膚疾患を対象
萩野篤彦(国立京都)
とした臨床実験と角質を剥離して行ったin
研修教育に熱心な病院では,多数の研修希望者,意
vivoの実
験に使用した結果,化粧品原料の保湿剤が尿素軟膏よ
欲的な指導医がいて,厳しい研修体制の下で,救命救
りすぐれていることが明,らかであった.魚鱗癖様皮膚
急が必須で満足すべき給与と宿舎か与えられている.
疾患に化粧品原料の保湿剤が有効であるという結果
一方,ほとんどの病院は,研修医を医師不定の穴うめ
は,経済的な制約はあるとしても,医薬品としての開
に利用し,特にローテイトはせず専攻科のみ診療活動
発を考えなければならない時期が来ていると考える.
をさせている,皮膚科専攻の研修医は最低1年間,内
ワークショップ2:皮膚科学の教育(卒前,卒後)
科,麻酔科,
皮膚科卒前教育の目標と問題点 森 俊二(岐阜大)
し,そのような科に行きたくなかったから皮膚科を専
皮膚科の立場からみた卒前教育の現状は,その方法
攻したという医師が多いようなら,皮膚科医が卒後研
について各大学間で違いがあり,さらに最近の医学の
修について発言しても,他科の医師は熱心に聞いてく
進歩は,覚えるべき知識量の激増を招き,時間的に皮
れないかも知れない.
膚科学の全般を教育することが不可能となって来てい
開業医の立場から 宮本正光(東京都)
る.これらの点を踏まえて,今後皮膚科の卒前教育は
開業医の側から皮膚科教育を考えるとき,その最大
いかにあるべきかが考えられねばならず,またどのよ
の関心事はもとより自己の生涯教育にある.ここにい
ICUを経験しておく必要があろう.しか
うな教育が皮膚科の重要性をアピールするかの配慮も
う生涯教育には2つの面があるが,1つは能動的ある
大切となろ侃今回のワークショップに当り,カリキュ
いは自律的な学習であり,他は学会・医会・医師会等
ラムについてこの私案を述べ,討論の資料とした.
の機能として与えられる教育である.開業医自身が強
新しい大学での試み一卒前,卒後の教育一 植木宏
い学習の意欲を持ち,各種の学術団体がこれに対し最
明(川崎医大)
大限の便宜を供与することが望ましい.今回アソヶ−
私共の医科大学は14年前に設立され,さまざまな卒
ト調査を行い,現状を分析し将来のあり方について言
前,卒後教育が試みられてきた.それらを中心に紹介
及した.一方開業医が大学における教育に,与える立
し,新しい環境の中で皮膚科医がどのように育ってゆ
場として関与する機会は極めて少なかった.しかし開
くかを考えてみた.1)卒前教育,6年間の一貫教育で,
業医の中には教育者としての適任者も多く,豊富な臨
臨床系教育は3年次より始まる.基礎系を混じえて協
床経験を活用し学生教育にあてることができれば,大
力的に,又,系統的に講義を行っている.臨床実習は
学・開業の両者にとって有益なことと思われる.
1002
学 会 抄 録
開業医の立場から 加藤吉策(新潟市)
65歳男.4ヵ月前より誘因なく右耳前部に無痛性の
卒後教育はその目的から前期と後期の2つにわけて
皮下硬結が出現.最初の病理診断にてfollicular
考えたい.前期は,医師免許交付から,診療に充分な
lymphomaとされたが,モノクローナル及びポリク
知識,技術を修得するまでの期間で,大学病院の医局
ローナル抗体を用いた免疫組織化学的検索,臨床検査
に,あるいは大病院の研修に在籍する期間に行われる.
所見より,組織に浸潤している細胞は,反応性変化で
問題は修了の時点が明確にしにくいことで,個人が自
あることを確認し,木村氏病と診断した.
分自身の皮膚科学をまがりなりにも作り上げた時点が
討 論
この期間の終了であり,これを目標に研修することが
竹崎伸一郎(北里大):リンパ濾胞構造であれば当然
望ましいと考える.後期の教育は,教育というより自
各種の細胞か存在する.酵素抗体法でheterogeneous
分自身のための,プロとしてより高い完成を目指す修
な染色パターンを取ったとのことであるか,腫瘍細胞
業というべきであろう.自己の皮膚科学を改訂し,補
においてはどうであったか?
充し続けてゆく努力の継続の期間であろう.
前田和男(札医大):follicular
mantle及びcenter
早期臨床体験学習early
の細胞がT
cellの浸潤であり,
clinical exposure 山田瑞
cell.B cell, plasma
穂(浜松医大)
mantleにはIgG,
IgM両者が混在し,それらがx,λ
教育に最も重要なことはmotivationであると言わ
と同程度に染まっている.
malignant
lymphoma
れるが,医学生にとっては患者に接することであろ凱
れば, IgGのみ,あるいはlgMのみであったり,x,
しかし,現在の医学教育は,まず系統的な知識を覚え
λも単一の所見であるはずだが,本症例はmalignant
させてから,患者に接する実験が始まるシステムと
changeでなくreactiveなものであった.どれを腫瘍
なっている.幸い皮膚科学では,あまり迷惑をかける
細胞と考えて染色しているかとのことであるが,B
ことなく患者に接することができるので,早期に臨床
cell, T
実習を組み込むことが可能である.現在用いられてい
malignantの細胞ではないと判断した.
る教科書は大同小異で,何も知らない学生が目の前に
西川武二(慶大):木村氏病の組織所見の特徴の1つ
いる患者の皮疹をどう解釈したらよいかの助けにはな
として例えばWilson
らない.症状から疾患を探ることのできる手引書も必
調するものがあるが,木例での血管め変化および,こ
であ
cell, x,λ, immunoglobulin等の所見より
Jonesのように血管の増生を強
要であろう.自分自身の判断で診断を下し,治療を考
の考えについて演者の考えをお教え下さい.
えるトレーニングが,問題意識を持ち,自力で解釈で
前田和男(札医大):angiolymphoid hyperplasia
きる医師を養成するものであり,卒後研修においても,
with eosinophilia の場合血管病変を強調されるが,本
早期の体験が重要であると思われる.
症例では血管増生は強かったが,
セミナー1:皮膚のリンフォーマと周辺疾患
うな変化はなかった.
皮膚に限局していると考えられる形質細胞腫の1例
稲田修一(県立広島):木村氏病の腫瘤を摘出し,組
遠藤顕子,西渾波子,堀口裕治,尾崎元昭,今村貞夫
(京大),加納 正(同第1内科)
AHEにみられるよ
織学的に検索すると部位によって好酸球の浸潤の多
寡,血管増生の程度の差かある.従って1回の生検で
74歳男.3年前左頬部に径1Cmの扁平な硬結に気付
好酸球浸潤,血管増生がないからと言って本症を否定
く.半年前より急に拡大.昭58年11月17日受診.腫瘤
することは出来ない.
は5. 2cm X 4.6cmの正常皮膚色,隆起性で硬く触知す
lymphomatoid
る.生検にて,真皮に異型性の強い形質細胞の密な浸
林真司,大熊真治,藤田秀人(岩手医大),笹生俊一(同
papulosisの1例 堀 恵二,東海
潤を認めた.細胞はピロニン好性であり,電顕的に形
臨床病理)
質細胞であった.血清中y−グロブリンはやや上昇,血
62歳男.4年来原因不明の紅皮症.3年前から全身
清および尿中のM蛋白を認めた.
Bence-Jones蛋白は
に直径0.5∼4cmの暗紅色丘疹,結節が出没.皮疹は
陰性,PAP法によりlgGおよびλ-L鎖の陽性細胞が
中心が壊死となり4∼8週で自然消槌,白色萎縮性巌
多数検出.局所の6oCO照射により腫瘤は消失し,血清
痕を残す.慢性腎炎,高血圧症あり.ツ反5×4mm.末
および尿中のM蛋白も消失.
梢血,血液化学等に異常なく,肝,牌,リンパ節の腫
木村氏病の1例 前田和男,神保孝一(札医大),古
大(一入組織:2型あり.①浸潤細胞は主としてクロ
口健一(金谷外科)
マチンに富むconvolutedな核を有する細胞.組織球
1003
第48回東日本学術大会
様細胞,形質細胞が混在.核分裂像あり.②核小体の
投与後,皮疹,末梢血所見とも改善したが,耳下腺腫
明らかな異型単核大型細胞と小,中リンパ球が混在.
脹と白血球増多のため再入院.58年3月末より発熱,
初回の生検像は①の所見,以後全て2の所見.②の電
DICをおこし,5月死亡.剖検所見は,1)セザリー症
顕像では,細胞内小器官の豊富な大型単核細胞が主体.
ABC法では,
陽性,
Leu 1, Leu 3a に強陽性,
Leu
候群:皮膚,肺,リンパ節,耳下腺,肝,牌にセザリー
2a に弱
HLA-DRは陰性.
細胞が浸潤.2)肺炎.3)脂肪肝.全経過は約7年.
死因はDICと考える.
皮膚に原発した小児悪性リンパ腫のl例 広川政
ポイキロデルマ型菌状息肉症について 山下典子
己,大熊憲崇,大河原 章(旭川医大).佐久間 進(同
(東女医大)
小児)
症例1,
62歳女.42歳時右肢高に小紅斑,54歳時ポ
4ヵ月女児.1ヵ月前,左下肢に赤褐色腫瘤が出現
イキロデルマ.62歳時plaque,リンパ節触知.65歳時
し,他の部位にも出現.初診時,左下腿,右季肋部,
棄爛,70歳時縁膿菌性膿庸を多発し死亡(stage
左大陰唇に直径約2cmまで赤褐色腫瘤を,左下眼険に
NiMoBo).症例2,
直径0.5cmの皮下腫瘤を認めた.組織:悪性リンパ腫
歳時上行性に拡大.60歳時ポイキロデルマ.61歳時飯
(LSG分類に従うとdiffuse
medium
sized cell type)
と診断.末梢血中の腫瘍細胞の免疫学的検索上.
(十),
la
surface Ig (−),E-rosette(−),0KT3(−)
であった.以上の所見から腫瘍細胞はnon
T. non B
Ill; T4
60歳男.45歳時四肢に小紅斑,54
高・鼠径リンパ節腫大.62歳時浮腫,廉爛傾向,糖尿
病性腎不全にて死亡.足底角化,足底に虎贅様∼乳頭
腫状plaque∼tumorを伴う(IV A : T4N3MOBoλ症
例3,
67歳男.51歳時服高,鼠径に小紅斑.60歳時ポ
typeと考えた.皮疹は化学療法に反応し,治療開始3
イキロデルマとなり全身に拡大.66歳時丘疹・腫瘤出
週後に消失した.その後,白血化,髄膜浸潤をきたし
現(II B : TsNoMoBo).
たが,化学療法,放射線療法によく反応し現在経過観
身のポイキロデルマを主体としたMFであり,ポイキ
3例とも小紅斑で始まり,全
察中.
ロデルマ型MFと総括した.
PUVA療法が奏効した局面性類乾癖様皮疹より移
討 論
行した紅皮症例 宮崎知子,松岡芳隆,斉藤文雄(東
城野昌義(熊本大):昭58年日皮総会にて当教室の古
邦大大橋)
城が,
78歳男.約2ヵ月前,不明熱と全身に落屑を伴う紅
2a陽性とLeu
斑局面を形成.癈蜂感(十).生検により局面性類乾癖
く, Leu 3a 陽性細胞の単クローソ性増生とは言えない
が疑われ,受診.全身が紅皮症の状態となり,発熱が
と報告している.先生の示されたhelper/inducerの単
持続し,鼠径部のリンパ節を多数触知した.白血球
12,000
1U/ml以上.
Leu
Leu
4 89.3%,
Leu 3a/Leu
Leu
2a, 2.34.
3a 62.6%,
fungoidesのpoikilodermaではLeu
3a陽性細胞の比が末血比と比べ著変な
クローソ性増生はpoikiloderma部にみられたか.
10,500,好酸球46%,セザリー細胞(−),lgE
26.8%,
mycosis
2a
PUVA療法施行し,
山下典子:紅色丘疹周囲のpoikilodermaの皮疹部
でもOKT
4陽性に染まる異型リンパ球を認める.
0KT8については染まるけれども多くはない.
約2ヵ月で治癒状態となり,以後8ヵ月治療継続し,
中枢神経系に広範な浸潤をみた菌状息肉症の1例
再発はない.菌状息肉症(Besnier-Hallopeau型)と考
大河内享子,田上八朗(東北大),海法恒男(同病理)
元すこ.
48歳男.昭52年頃より四肢,腎部に頑癖様皮疹が生
セザリー症候群の剖検例 平井さと子,伊藤まゆみ
じ拡大をみた.昭57年10月第1回入院.全身に胡桃大
(名大),近藤隆男(名城)
までの中心部が潰瘍化した腫瘤が多発,
58歳男.昭51年3月脱毛と全身の紅斑を生じ,紅皮
クールにて色素沈着を残して消槌.外来で内服PUVA
VEMP療法1
症として加療.54年S6zary症候群と診断.56年10月静
療法施行するも3月には紅色丘疹出現し以後増加,昭
岡厚生病院受診.紅皮症,脱毛,色素沈着,脱失,結
58年5月6日再入院となる.12月に入り右眼散瞳,喀
節,腫瘤,潰瘍が汎発.皮膚生検で真皮上層から表皮
痰喀出不全,嘸下困難を生じ死亡.剖検:漫漫性に腫
内への異型細胞浸潤がみられ,白血球数30,300/mm^
瘍細胞の浸潤が認められた.又,経過中,手掌・足底
異型リンパ球18%.異型リンパ球は脳回転状の入り組
に腫瘍細胞の浸潤による黄色米粒大充実性丘疹を認め
んだ核をもち,表面抗原検索でLeu
ATLA抗体陰性. Betamethasone,
1十,
Leu
3十.
cyclophosphamide
た.腫瘍細胞はOKT8陽性であった.
菌状息肉症における浸潤細胞の動態について 岩原
学 会 抄 録
1004
邦夫,清原 明,水口聡子,小川秀興(順天大),石田
皮膚T細胞リンパ腫の長期観察例 加藤文明,鷲見
康生(同病理)
烈,福嶋信夫,柳原 誠,森 俊二(岐阜大)社本幹
菌状息肉症の皮疹部に浸潤する細胞を各種モノク
博(名保大病理)
ローナル抗体を用いて分類同定し,かつ電顕的に酵素
58歳男.以前よりアミロイド苔癖にて治療を行って
抗体法を用いてT細胞系のnuclear contour index
いた.昭56年夏頃より小豆大丘疹が多発.昭57年6月,
(NCI)を測定し,病期との関連を検討した.その結果,
生検でmycosis
菌状息肉症ではサプレッサー/ヘルパーT細胞比が病
経過観察.昭58年4月頃より末血に異型リンパ球出現.
期の進行に伴って減少し,一方T細胞系のNCIは病
同8月,全身に紅斑を伴う苔癖化を認め,四肢には
期の進行に伴って増加する傾向が認められた.また菌
prurigo様結節多数存在,両鼠径リンパ節を触知,皮膚
状息肉症の例にACNUの外用およびイソターフェロ
生検にて皮膚T細胞リンパ腫と診断,末梢血電顕像で
ソαの局注を行い,その治療前後における浸潤細胞の
Sezary様リンパ球を認めた.現在,外来でIFN(β)
動態を観察した.
の局注を行っている.
黄色腫様病変がみられたmycosis
fungoidesの1
cutaneous
fungoidesと診断.
predonineにより
T cell lymphomaの浸潤T細胞の表面
例 山崎雙次,馬場安紀子,折原俊夫,古谷達孝(独
マーカーおよび機能的な検索 山口茂光,田中正明,
協医大)
松原三希子,林 良一,佐藤良夫(新潟大)
33歳女.昭51年4月頃より躯幹,四肢に湿疹様皮疹,
cutaneous
昭52年6月頃より局面状皮疹出現.以後皮疹は軽快,
motropic
増悪をくりかえしていた.昭56年11月全身に腫瘍性皮
浸潤T細胞の表面マーカーとin
疹多発し,全身状態も不良/りレス療法変法を計5クー
を検索した.CTCLの浸潤T細胞はOKT4+細胞が主
ル,ペプレオマイシソなどの治療により皮疹は顕著に
体であるが,0KT8+細胞もかなりみられ,
軽快.昭56年に12月より頭部,顔面に黄色腫様皮疹出
motropic
現,徐々に増加.組織:xanthoma
陽性であり,特にepidermotropic
cell (十).昭57年
T
cell lymphoma
(CTCL)をepider-
typeとnon-epidermotropic
typeにわけ,
vitroにおける機能
epider-
typeで多くみられた.浸潤細胞の多くかla
typeに著明であっ
6月頃より腫瘍性皮疹も再燃し,同年3月死亡.
た. in vitro における機能的検索ではepidermotropic
悪性リンパ腫に併発した黄色腫 古城八寿子,城野
typeの浸潤T細胞は明らかなhelper活性を有した
昌義,小野友道(熊本大)
が, non-epidermotropic
セザリー症候群2例,菌状息肉症1例,T細胞リン
活性は低い傾向にあった.これらの差異は腫瘍細胞の
パ腫(cytotoxic
分化度およびそれに対する生体側の反応(防禦機構)
T 細胞由来)1例に併発した黄色腫に
type の浸潤T細胞のhelper
ついて,光顕・電顕・単クローソ抗体を用いた免疫組
がepidermotropic
織化学的方法にて検索した.いずれの症例もその経過
で異なるためと推測された.
中,血清脂質には異常を認めなかった.電顕:多数の
討 論
腫瘍細胞とマクロファージの密接した像を認めた.マ
藤井初美(名大):epidermotropic
クロファージ内は,豊富な脂肪滴を有し,いわゆる
浸潤した異型リンパ球の表面マーカーはどうか.
xanthoma
山口茂光(新潟大):表皮内浸潤T細胞はOKT4も
cellの所見を呈していた.一方,腫瘍細胞
にも脂肪滴を認めた.これらのxanthoma
cell の形成
OKT8もあったが,
type とnon-epidermotropic
type の表皮内へ
microabscessを作っているのは
機序に関して,2・3の検討を加えた.
OKT4であった.
討 論
皮膚T細胞リンパ腫患者の血中異型リンパ球に及
山崎雙次(猫協医大):これまでの報告をみるとMF
の皮疹のなかにxanthomaが混在していたり,
type
ぼす温熱効果 中山樹一郎,安元慎一郎,今山修平,
PUVA
壁村まゆみ,占部治邦(九大)
によってxanthomaまで消槌したというものもあり,
CTCL患者の血液リンパ球を分離し(80%以上が異
また我々の症例もそうであったが,治療によりtumor
型リンパ球),
が消失したのちにそのscar様の部にxanthomaが出
生存率およびPHAあるいはCon
現したりしている.これらのことからMFにおける
球化能について検討した.細胞の生存率では,死細胞
xanthomaの併発は原因が1つではなく,いくっかの
の全リンパ球に対する比率は43℃,5時間では対照に
原因によって惹起されたものと考えたい.
比し2%以下から14.5%と上昇した.43℃加熱後37℃,
in vitro で種々の温度下でのリンパ球の
Aによるリンパ芽
1005
第48回東日本学術大会
4日間の培養により死細胞の比率は56.3%に上昇し
は治療によく反応している.
た.患者リンパ球を種々の温度で加熱後,
adult T-cell leukemia 松村治和,高田 実,広根
PHAあるい
はConAを添加し,3H−チミジンの取り込みを測定し
孝衛(金沢大),中尾真二(同第3内科)
たところ,43℃1,1時間ですでに対照に比し50%の低
76歳女.約2ヵ月前大腿内側に癈禄性皮疹が出現し,
下,さらに3時間では90%以上の低下がみられた.43℃
以後上肢,体幹,顔面に拡大した.旅寓・鼠径リンパ
加熱後37℃,4日間の培養により取り込み能の回復が
節は腫脹.皮膚の生検像は表皮内Pautrier微小膿瘍と
みられた.さらに異型リンパ球の温熱による形態学的
真皮に異型リンパ球の密な浸潤を示した.白血球数
変化を電顕的に検討した.
93,200/m
CTCLと考えられる1例 原 紀正,山本俊比古,
球は大型で,核の異型性が強く,分葉していた.単ク
「,そのうち異型リンパ球93%,異型リンパ
麻上千鳥,藤田英輔(山口大),末富淑子(小野田市)
ローン抗体異型リンパ球はhelper/inducer
52歳女.初診の1ヵ月前,前額部に自覚症状のない
phenotypeを示した.抗ATLA抗体価1
扁平隆起性の指頭大紅色局面が出現.表在リンパ節は
細胞へのATLV
触知しない.末梢血液像に異常はないが,骨髄像では
叱
異型細胞2.6%.組織:真皮網状層の血管ないし毛包周
討 論
囲に小リンパ球および組織球の他に異型性に富む中細
城野昌義(熊本大):我々の教室のATLでは.
胞型リンパ球の浸潤が島状にみられるが,濾胞様構造
高値は約20例中1例も認めていない.
は認められない.浸潤巣内の膠原線維および弾性線維
高値を2例認めている.ATL細胞はhelper/inducer
proviral DNAのintegrationは陽
のマーカーを持ち,機能的検査を考慮し,
中.
ducer T cells と考えられる.
diseaseの1例−T細胞リンパ
IgE
SezaryではIgE
は消失.異型細胞は電顕ならびに免疫組織学的に検索
Woringer・Kolopp
T細胞の
: 40,白血病
super in-
成人T細胞白血病の1例 青山文代,北村清隆(国
腫? 杉浦 丹(清水市立),西川武二(慶大),三方淳
立金沢),清水史郎(金沢医大血液免疫内科)
男(同病理),高月正宏(清水市)
57歳女.昭59年2月初診.58年10月両肢寓リンパ節
10歳男児.昭58年3月25日初診.約7年前より,右
腫火.同n月全身皮膚に胡桃大までの紅斑,結節.表
大腿外側に皮疹出現,漸時拡大し,30×30mm大の紅
在リンパ節腫大.肝牌腫.末梢白血球17,100.異常リ
斑性落屑性角化局面となる.組織:表皮内に多数の
ンパ球は末血で39%,骨髄で32.4%.
Pautrier's microabscess
Cal5.2mg/dl.ツ反陰性.抗ATLA抗体陽性(3人の
様細胞浸潤がみられ,浸潤細
LDH950U.
胞は,胞体の明るい大型のPaget様細胞で,核は
息子もすべて陽性).異常細胞はE・rosette陽性,
convolutionが著明.真皮内には,表皮内と同様の異型
3・4陽性.組織:混合型.入院後,上行結腸に全周
細胞と,それより小型の核の異型性を示す細胞がみら
性腫瘤.経管栄養下,VEPA療法開始.下血は止まり,
れる.
Woringer-Kolopp
disease と診断,表皮内の異
OKT
リンパ節の縮小,皮疹の消槌傾向をみたが,肺炎を併
型細胞は,電顕および,酵素の免疫組織化学的検索に
発.59年4月死亡.
より,T細胞由来と考えた.
成人T細胞白血病 佐藤昭彦(いわき共立),飛内賢
皮膚病変を初発症状とした悪性リンパ腫の1例 吉
正(同内科)
野 裕,安藤知子,加藤律子,徳橋 至,下田祥由(聖
ATL
マリ医大),高桑俊文(同第2病理)
た.ATLA抗体は5例に陽性.皮膚症状は5例にみら
6例を福島県太平洋沿岸いわき地区で経験し
61歳男.熊本県出身.昭59年3月頃より躯幹に爪甲
れ,丘疹,扁平局面,神経皮膚炎様皮疹と症例により
大から鶏卵大の浸潤性紅斑局面が多発.左鼠径部に小
異なり不定であった.組織ぐ多形腫瘍細胞の涜漫性浸
指頭大のリンパ節触知.皮膚並びにリンパ節の生検に
潤,あるいは限局性浸潤である.末梢血,淋巴節,腹
よりdiffuse lymphoma,
水より採取した腫瘍細胞は,Eロゼット形成,
mixed
type と診断され,T
細胞由来と考えられる.血清検査はAI・phの軽度上昇
OKTll,
がある以外異常なし.リンパ管造影,腹部CTにて傍
ducer/helperT-cellのphenotypeを示した.4例は死
腹大動脈リンパ節の腫大が疑われる.
DNCB感作不成
OKT
3, OKT
Leu-1,
4,Tac抗原陽性で全例in-
亡.平均生存期間は5.1ヵ月で予後不良であった.
立,皮内反応:PPD,PHA陽性,カンジダ陰性.リン
討 論
パ球幼弱化能低下.5月7日よりVP療法開始.皮疹
金蔵拓郎(鹿児島大):endemic
areaである鹿児島
1006
学 会 抄 録
では, 20%の陽性率があり,ATLA陽性が即ちATL
の大多数を占め,ATLA抗体陽性,腫瘍細胞内pro-
と言い得ず,診断に苦慮している.先生のATLの診断
virus DNA陽性.リンパ節の浸潤,肝牌腫,白血化も
根拠は?
認めなかった.CHOP療法施行.皮疹は急速に消槌し
佐藤昭彦:ATL-Aが関与した,末梢T細胞の腫瘍
たが,無穎粒球症,肺炎を併発し,死亡.
というconsensusが現在もたれているので,それに従
特異な皮膚症状を呈したATLの1例 村松千鶴
えば,第4例はATLから除外した方が良いかも知れ
子,田辺恵美子(千大)高林克児小池隆夫(同2内)
ない.しかし,臨床血液学的には,ATLであった.
40歳男.
当科で経験したATLについて 上里 博,佐野幸
趾に紅色結節と血庖,耳介に皮下結節出現.皮膚生検
仁,真栄平房裕,伊集 操,昭屋 智,宮里 肇,名
にて壊死性血管炎の組織像.末梢血に異型リンパ球出
嘉真武男(琉球大),新里 脩,荒木弘一(同第2内科),
現.12月,粟粒大紅色丘疹が播種状に多発.組織:表
1983年10月より多発関節痛,n月末より指
斎藤義雄(日立総合)
皮の一部にホートリエ微小膿瘍.
昭57年10月より59年6月まで当科外来を受診した
に結節,血庖が多発.全身に紅色丘疹,躯幹,上肢に
ATL
多形紅斑様皮疹新生.組織:表皮下水庖と真皮の桐密
4例について検査結果及び臨床所見,特に皮疹
の性状を報告する.症例1,
なリンパ球浸潤.数日後水庖形成,廉爛潰瘍面を残し
61歳男.全身に小結節丘
た.表在リンパ節腫大と末梢白血球数増加.末梢血表
疹散在.体部白癖を合併.ATLA抗体10倍.症例2,
71歳男.全身に小結節・丘疹散在.ATLA抗体640倍.
症例3,
57歳女.全身に丘疹,浸潤性紅斑散在.
抗体320倍.糞線虫症合併.症例4,
1984年1月より四肢
面マーカーはE.RFC65%,
ATLA
65歳男.両肘頭部
(−),10(十),
la
OKT
3 (十)4(十),8
1 (−),TaC(十).抗ATLA抗
体陽性.ATLの診断にてCHOP-BLEO施行するも,
に皮下腫留,前腕・下腿に黒褐色小結節・丘疹散在.
大量の下血,髄液中腫瘍細胞出現.肺炎にて死亡.
足趾・爪白鮮合併.全例とも末血に花弁状細胞(十),
凍廉様皮疹を呈した成人T細胞白血病,リンパ腫の
1例 林 健,武田康子,宮崎和広(東医歯大),神
培養細胞にATL抗原(十).組織:表皮内ホートリェ
微小膿瘍(十).
山隆一(同病理),広沢信作(同1内)
くすぷり型成人T細胞白血病の1例 宮本秀明,池
42歳女.昭58年12月足関節および両足趾の皮疹のた
滓善郎,中嶋 弘,永井隆吉(横市大),下山正徳(国
め治療を受けるも悪化するため受診.生検の結果
立がんセンター内科)
lymphomatoid
41歳主婦.島根県出身.昭58年n月,上肢,背部に
半米粒大から小指頭大までの紅色丘疹と鱗屑を付着す
papulosis
と診断.両上下肢と腰警部に
癈捺性皮疹.同12月発熱し,関節痛,筋痛,全身倦怠
る暗赤紫色丘疹が密に散在する融合せず.大きいもの
感,体重減少など出現.昭59年2月,皮疹多発し,当
は中心部潰瘍化し,陥凹する.指趾の関節では暗紫色
科に紹介.初診時皮疹は,上腕,下腹部などに,5∼10
腫脹をきたした.リンパ節は両側鼠径部に小指頭大ま
mm大の捺疹様結節あり.
WBC9,500Aty.
70.6%,
OKT
4 79.4%,
0KT8
9.1%,
でのものを数個触れる.組織:皮膚およびリンパ節と
Lym.
12.0%,末血のモノクローナル抗体検索にてOKT
3,
Bl
4.1%で
も禰漫性リンパ腫,多形細胞型で表皮には微小膿瘍を
認めた.0KTシリーズにてATLパターソ.抗ATLA
あった.組織:異型リンパ球の浸潤あり.頚部リンパ
抗体320倍陽性.
節大豆大2個触知.抗ATLA抗体80倍陽性.現在ステ
討 論
ロイド外用のみで経過観察中.
城野昌義(熊本大):我々の教室のATL
皮膚腫瘤を初発症状としたadult
T celllymphoma
は, verrucae
tinea,
furunculosis,
7 例で
fistules等が治り難
の1例 藤本 亘,赤木芳文,安富 弘,多田譲治,
く,又ATLに非特異的なerythrodermaが,皮疹と
小玉 肇,野原 望(岡山大),平木祥夫(同放射線科),
してみられだした.未だvasculitisを認めたものは1
元井 信(同病理),三好勇夫(高知医大第3内科)
例もない.
43歳女.宮崎県出身.昭58年12月初め,左側背部に
川田陽弘(聖路加):この症例に極めて類似した症例
硬い紅色丘疹が出現,以後徐々に増大し小児手拳大の
を経験しているし(第1回皮膚リンフォーマ研究会記
腫瘤を形成.胸腹部,飯高などにも同様疹出現.皮膚
録,50頁,
生検にてDL,
返したが,後になって固定化して潰瘍化せる腫瘍を示
medium-sized
マーカー検索ではinducer/helper
cell type と診断.表面
T細胞が浸潤細胞
IX).私共の症例では,はじめ自然消退を繰
し,後に悪性化して死亡した.
1007
第48回東日本学術大会
悪性リンパ腫の2例 生野重明,井村 夏,太田み
り左側額,左上眼険が腫脹.左側額部に7×4cmの皮
どり,小野 敏,鶴切一三,戸田 浄(東京逓信),伊
下腫瘤を触れ,左上眼険は腫脹.心高部には手挙大弾
藤博夫,川村光信,林 洋(同内科)
性硬の皮下腫瘤を触れる.
症例1,
認め,全身Ga,骨シソチでmultiple
54歳女.昭58年6月より軽度の貧血,微熱
LDH,血沈.
CH50の異常を
uptake,
CTに
と全身に多数の皮下結節を生じた.LDH高値,高IgG,
て眼度にmassがあったため側頭筋生検を行い悪性リ
ツ反(十).組織:漫漫性リンパ腫,大細胞型.モノク
ンパ腫の確診.治療はCHOP行い,眼険腫脹,腹部腫
ローナル抗体で一部の細胞が,0KT一恥4_6J
瘤,筋肉痛は消失し,
OKIa-1
の著明な縮小とGaシソチでのabnormal
_であった.症例2,
58歳男.昭58年5月頃よ
LDH,血沈,
CHsoの正常化,
り,顔面に座唐様丘疹を生じ,次第に拡大.治療に反
消失をみた.その後,間質性肺炎をおこし,
応せず,皮下結節も生じてきた.低lg,ツ反(廿).骨
phosphamideを除き化学療法を続け,現在経過観察中
髄に異型リンパ球(十).組織:濾胞性リンパ腫混合型.
である.
モノクローナル抗体でB-U,,
診断確定が困難であった悪性リンパ腫の1例 利谷
J・5+,
HLA・DR+o2症
cyclo・
例とも,リンパ節の侵襲はなかった.
昭治,林 紀孝,森 奈津子,中島秀喜,三井徹次,
皮下結節では発症したB
内田 博(福岡大)
cen由来悪性リンパ腫の
mass
uptakeの
2例 戸村敦子,佐藤勇一,高橋伸也(秋田犬),石河
53歳男,農業.昭54年から紅皮症を生じ難治,細網
知之(仙北総合)
症として入院.ATLA抗体陰性.末血の白血化なし,
症例1,
84歳女.昭58年5月,右眉毛部に米粒大の
2度異常リンパ球浸潤あり悪性リンパ腫が疑われ,ス
皮下結節出現.10月,右側頭及び右耳後部に弾性硬の
テロイド3錠,エソドキサソ3錠で寛解退院した.1
皮下結節か生じ増大.組織:類円形の核をもつ中ない
ヵ月後,全身衰弱と肺開放性結核で結核病院に1年3
し大型の腫瘍細胞が漫漫性に増殖,その細胞質はピロ
ヵ月間入院.初診後約3年で左耳下部に腫瘍が出現し,
ニソ好性であった(Burkitt型).腫瘤は右側頭及び右
2ヵ月後CTスキャンで同部に黒化度の高い所見が得
耳下部の皮下に限局,電子線照射にて治療.症例2,
られ,耳下腺下部の深部に及ぶ生検により禰漫性中型
76歳女.昭58年9月,下腹部に大豆大の硬い小結節が
多形細胞型悪性リンパ腫と決定され,昭59年1月6日
出現.その後急速に増大し,数も増加,組織では切れ
より2月21日までにコバルト60を55GV照射したとこ
込みのある核をもった大型の腫瘍細胞が漏漫性に増
ろ縮小した.鼠径部リンパ節の腫大,下腹部,肩甲骨
殖, cytoplasmic
下のそれぞれに転移がみられた.
marker
はcig
(M,λ)゛であった.
腫瘤は下腹部と背部の皮下に限局,電子線照射にて治
最近経験した皮膚初発悪性リンパ腫8例,特に電顕
療.
的観察について 長谷川文雄,石原和之(国立がんセ
討 論
ンター),佐藤雄一,渡辺 昌(同病理),下山正徳(同
中嶋 弘(横市大):皮膚のリソフォーマにLSG
内科)
分類を用いるのは,
モノクロナール抗体を利用して検討したadult T
LSG分類がリンパ節のリソフ
ォーマをもって作られ,事実,同一患者で皮膚とリン
cell lymphoma(ATL)2例, cutaneous T cell
パ節病変で異なることがあり(皮膚の方が一般には小
lymphoma(菌状息肉症,CTL)4例,B celllymphoma
型となる),用いるべきでないとの考えもあるが,現
(BCL)2例を報告する.ATLはATLA抗体が陽性で
在のところ,それに代るよい分類がないので,代用して
モノクp−ナル抗体としてはhelper/inducer
いるということだと思う.なお本例は大細胞型なので,
(H/D及びsuppressor/cytotoxic
もしリンパ節病変があっても恐らく大細胞型であり,
に陽性を示し,また,CTLはH/Iが,
もし中細胞型だとしても予後の悪い所をとるのが原則
antigenが陽性を呈した.これらの電顕像としてはあ
cell
T cell (S/C)が共
BCLはla・like
なので大細胞型でよいと思う.
る程度共通所見があり,観察した構造物はmyelin
眼球突出と筋肉痛を主訴とした悪性リンパ腫の1例
figure, clustered dense body
森美智留,月永一郎,村本文男(北大),桜田恵右(同
セミナー2:皮膚科学研究の進歩
第3内科),斎藤博哉(同放射線),大屋隆介(札幌
lipid peroxides
市)
PUVA
34歳女.昭58年9月より疼痛が出現し,同年11月よ
域戸宗男(東海大),兵頭昌雄(同分子生物)
and
T
などである.
epidermal
cell kinetics on
therapy 小渾 明,吉野和廣,松尾車朗,大
1008
学 会 抄 録
PUVA療法により生成される過酸化脂質が,その治
が認められた.10J/cm2以下では変化は(−).減弱は
療効果発現の一部に関与しているか否かを検討した.
照射時の活性酸素のquencher(SOD,NaN3)を添加で
スクワレソ過酸化物外用ウサギ皮膚では,①labeled
キャンセル.大線量のPUVAは酸素依存性に細胞膜
indexが低下,②mitotic
indexが増加,③ls/lmは
一定値を示さず,④有錬細胞層の厚さ,層数とも増加.
傷害をもたす.
全身性ヒアリノーシスの細胞遺伝学的検討 平本道
以上より,スクワレソ過酸化物は,表皮細胞周期に影
昭(倉敷中央形成外科),井階幸一(同皮膚科),高橋
響をおよぼすことが判明した.さらに,その機序とし
司(同細胞遺伝検査室),林 研(京大産婦人科)
て,①DNA合成阻害十M期の延長,②G2
19歳女にみられた仝身性ヒアリノーシスの皮膚腫瘤
epidermal
blocked
cellが存在するとすればDNA合成阻害十
G2 blocked
epidermal
cellのM期への進行促進,が
の細胞遺伝学的検討を行った.染色体の核型は46,
XX,
t(5
; 9)
(pl4
; ql2)であった.末梢リンパ細
考えられた.
胞の核型には異常は認められなかった.染色体の異常
ヘアレスマウスにおける実験的ポルフィリン症の誘
は癌の発生と増殖に密接に関係している.全身性ヒア
発 吉田和徳,入船弘子,大神太郎,村山史男(長崎
リノーシスの悪性化の報告は未だみられず,われわれ
大),三好 紀(長崎労災),野中薫雄(国立長崎中央)
の報告例も悪性化の徴候は現在のところ認められな
HR/De系ヘアレスマウスを用いてグリセオフルビ
い.われわれの報告は腫瘍と染色異常との関係を示唆
ン(GF)を投与し,光線過敏実験に用いることかでき
するものと思われる.
るか否か検討した.材料と方法:Hos
E-5166の熱傷病変における治癒効果 浅野伍朗,間
De系及びD-D系マウス.
R Hairless HR/
0.5%GF含有飼育.光線照
武雄(日医大第2病理),佐藤俊次,新井克志(防衛医
射にはメタルハライドラソプ(MHL).結果:D-D系
大),神田佳和,古野芳夫(日医大第2生化)
及びHR/De系マウスともに肝臓及び血液中p.p.が著
E5166の熱傷病巣の影響を病理組織学的に検討.
増し, protoporphyriaの状態を示した.また,
vitamin
MHL照
A欠乏群では熱傷後の熱傷深部病巣は著明な
射によって急性炎症を惹起せしめることができた.
好中球浸潤と軽度の線維芽細胞の増生とcollagen線
HR/De系ヘアレスマウスも実験的ポルフィリン症を
維をわずかに認めるがE5166投与群では好中球等小円
作製でき,皮膚病変の観察に便利な実験モデルである
形細胞浸潤は著しく少なく組織球,線維芽細胞,毛細
と思われた.
血管の増生とcollagen線維の増生も強い.またvita・
皮膚基底膜におけるヘパラン硫酸プロテオグリカン
min
の役割について 真鍋 求,池EH志享,小川秀興(順
死巣を残し,
天人)
日目に比し毛細血管,線維芽細胞の増生がややめだち
陽荷電物質であるpolyethyleneimine
(PEI)を用い
A 欠乏群では,熱傷後7日目では病巣部は変性壊
fibrinの惨出と好中球の浸潤も残存し,3
膠原縁維の増加がみられ,間質には浮腫性変化を残す.
て,皮膚基底膜における陰荷電部位の電顕的局在を観
E5166投与群では惨出壊死病巣は残すもののその周囲
察した.
の肉芽増殖は顕著で線維芽細胞,毛細血管,膠原線維
PEI粒子はlamina
densaの表皮側及び真皮
側に平行して配列しているのが認められた.また酵素
の増生が明瞭で熱傷病巣の治癒機転が増強.
消化法による検討では,陰荷電部位が主にヘパラソ硫
与群ではvitamin
酸プロラオグリカソにより構成されていることが示唆
lagen線維に増生の促進がみられた.
された.この結果より,同部位において腎糸球体基底
培養表皮細胞におけるkeratin-type
膜と同様のcharge-selective
filamentとmicrofilamentおよびmicrotubulesとの
filtrationか行われてい
E5166投
A欠乏群に比して線維芽細胞,
intermediate
るものと推定される.
機能的関連性 井上俊一郎,北島康雄,矢尾板英夫(自
PUVA照射の表皮細胞膜糖蛋白への影響 段野貴
治医大),米田和史,森 俊二(岐阜大)
一郎,戸田憲一,堀尾 武(京大)
cytochalasin
PUVA照射モルモット皮膚クリオスタット切片に
細胞におけるkeratin-type intermediate filament
in vitro でPUVA照射.膜マーカーとして各種レクチ
(KIF)とmicrofilament
Bとcolchicineとを用いて培養表皮
(MF)およびmicrotubules
ソ,天庖癒,類天庖癒血清を用いて螢光染色を行い,
(MT)との関連性を螢光抗体法によって検討.アクチ
照射後の変化を観察.20μg/mL 8-MOP+20∼30J/
ソ線維束はcytochalasin
cm2UV-Aの大線量照射でマーカー螢光の顕著な減弱
col-
B処理で消失,一部でKIF
は隣接細胞のKIFとの接合の離開を生ずる.MTは
1009
第48回東日本学術大会
colchicine処理により線維構造が消失するがKIFは
HCl bufferで抽出.等電点は4.7,分子量は14.500.ア
保たれる。KIFの細胞内配列はMFとMTによって
ミノ酸組成はHiSが1.9%でGly(15%),
Glu (13%)
直接的に制禦されているのでなく独立しているが,
Ser (11%),
MFの構築とは細胞形態保持において互いに関係して
表皮膜透過性に及ぼす温度,湿度の影響 細野久美
いると思われる.
子,神保有光,石原 勝(東邦大)
protein
試験試料は14C標識ethanol,
A-gold法によるケラチン抗原の局在 小
Met(trace),
Cys(0.7%).
methanol,
幡正明,相場節也,六郷正和,田上八朗(東北大)
propylene glycoKPG),
正常ヒト皮膚methacrylate系樹脂包埋標本を超薄
(DNFB).
切片上postembedding
部皮膚よりBaumberger法の変法により表皮膜を採
stainingによりケラチン抗原
の局在を検討した.一次抗体は抗total
(糸田川),
行った.
protein
A-gold
keratin血清
により標識後,電子染色を
gold粒子はトノフィラメソト上に局在し,そ
propanol,
1・fluoro-2,4-dinitrobenzene
specific activity 10μCi/mlに調製.ヒト腹
取,グラスチェソバーに装置.真皮側に生理食塩水を
注入,角層側に各試料0.2ml宛滴下,所定条件の恒温恒
湿器内に24時間静置後,生食中への移行量,表皮膜内
の分布密度は表皮上層にいくにしたがって増加し,特
量,表皮膜上の残留量を液体シンチレーションカウン
に角層では密に分布していた.一次血清10倍希釈使用
ターで測定,表皮膜透過率を算出.湿度40%,温度20℃
時の細胞質単位面積(1μ
cell 57.35,
homy
spinous
「)当りの分布密度はbasal
cell 147 .42, granular
の場会methanolの透過率が24.3%と最も大,
cell 187 .63,
ethanol
がこれに次ぎ,その他はかなり小であった.同一湿度
で30℃に上げる,あるいは温度20℃でも湿度の増加に
cell 308.86.
ヒト表皮および粘膜上皮におけるSH基,SS結合の
伴い透過率が増大した.
分布の多様性 鈴木 恵,伊藤雅章,佐藤良夫(新潟
ヒト外毛根鞘腫細胞におけるadenylate
大)
の検討 井筒真人,飯塚 一,大河原章(旭川医大),
ヒト表皮,粘膜上皮のSH,
SSの分布をDACM染
色により検索した.①手掌足底では,角層の上層まで
cyclase系
安達健二(マイアミ大),神崎 保(北里大)
神崎らにより株化されたヒト外毛根鞘腫細胞を用い
SH膜パターンが残存.粘膜上皮ではSHは,下層より
て,β-adrenergic-,histamine
膜に辺在し,中層よりSSが膜に出現.②表皮細胞核で
glandinの4種類のreceptor系につき検討した.1)
は,核小体にのみSHが存在,粘膜上皮細胞核では全
epinephrineC
体にSH,
adenosine
SSが存在.③手掌足底のSS染色で,穎粒
H2-, adenosine-, prosta-
5×10-5M),histamine(10-4M),
(10
^M),
prostaglandin E, (3×10-6M)
細胞の主に核の周囲に環状に並ぶ穎粒状螢光が存在す
を培養液中に添加するとcAMP濃度の上昇があり.2)
る.これは同切片のHE染色と比較するとkerato-
epinephrine,
hyalin穎粒の一部と一致する.SH染色では同様の螢
receptor antagonistsであるpropranolol,
光はない.他部表皮ではSH,
SSとも穎粒状螢光はな
histamine, adenosineに対し,それぞれ
cimetidine, theophyllineの添加によりcAMP濃度の
い.皮膚粘膜移行部では,上層の上皮細胞細胞質の
上昇抑制.
keratohyalin穎粒に一致して,
cubate後,再度同濃度のepinephrineで刺激を加えて
SH,
SSの両者に螢光
3) epinephrineC
を認める.結論:正常ヒト表皮,粘膜上皮における
も, cAMP濃度の上昇はないが,
SH,
による刺激では,
SSを有する細胞性蛋白の分布は,解剖学的部位
5×10-5M)でpre・in-
histamine(lO-'M)
cAMPの上昇がみられた.
汗腺および陰部Paget病におけるCEAとレクチ
により特異である.
ヘマトキシリン陽性タンパク質の性状について 高
ンの2重染色について 古江増隆,玉置邦彦(東大)
橋昌江,手塚 正(近畿大)
RITC-WGA,
生後2−3日のラット皮膚をNH4C1にて表皮剥
離.凍結乾燥後Willy millで粉砕,
後,等電点電気泳動,
poly(u)
RITC-DBAとCEA
(FITC)との2重染色を行い①Ec,
50mMTris-HCl
(pH7.3)および8M ureaを含む50mMTris-HCl
(pH9.0)で抽出.
RITC-PNA,
-sepharose
無を組織化学的に検討した.
4B で核酸除去
hematoxylin染色.陽性バンド
Ap,
P病における
CEAと各lectinの染色態度,②各P病間の差違の有
Ec, Ap, P病ではCEAと
3種lectinの染色態度に差はない.
WGA強陽性,
CEA陽性部位は,
PNAのごく一部で陽性,DBAはほぼ
をSDS-PAGEで精製.単一バンドをアミノ酸分析.
陰性.各P病間でも差を認めない.
hematoxylin染色陽性タンパク質はほとんどがTris・
現されるCEAは少くとも糖鎖構造上は互いに近似
Ec, Ap,
P病に表
1010
学 会 抄 録
し,P病は汗腺系への分化をしめす腫瘍ではないかと
通の構造は有芯穎粒,デスモソームとトノフィラメソ
考えた.
トである.しかし,基底膜,管腔構造,
悪性黒色腫のスタンプ螢光法による術中迅速診断法
tureと層板小体はMerkel
に関する研究 長島典安,兼松秀一,深田栄俊,花輪
かった.以上,両腫瘍は電顕的に鑑別可能である.
滋,森嶋隆文(日大駿河台)
当教室における皮膚悪性腫瘍の統計的観察,第3報,
悪性黒色腫11例(SSM
4例,
NM
4例, ALM
3例)
と対照23例(色素細胞母斑12例,色素性基底細胞上皮
cilialike struc-
cell tumorにはみられな
悪性黒色腫 近藤靖児,川田 暁,折田正人,僊田 晃
(東医歯大)
腫3例,黒色上皮性良性腫瘍8例).腫瘤部割面スタン
25年間に経験した悪性黒色腫28例.原発巣に対して
プ・スメア標本を,フォルムアルデヒド・ガスで10∼20
前治(−)20例,前治(十)3例,来院時転移(十)
分間処理し,直ちに螢光顕微鏡下に観察.時間は30分
4例,不明1例.性別:男13例,女15例.年齢:25歳
以内.黒色腫例は螢光性黒色腫細胞(十),特異螢光は
∼81歳.平均年齢,男57.3歳,女48.1歳,全体では52.4
その細胞質に限局.原発巣病型により螢光性黒色腫細
歳.初発部位:肢端部15例(上肢端部8例でそのうち
胞の形態にある程度の共通点あり.
2例は爪甲下,下肢端部7例),肢端部以外の四肢8例,
Hutchinson's
粘膜部2例(球結膜,硬口蓋),顔面・脛部各1例,不
melanotic
freckleの前駆病変一若
年者XP患者における観察一 堀川達弥,長谷川和
明1例.病型:PSM15例,
NM
5例, LMM
3例, SSM
義,市橋正光,三島 豊(神戸大)
2例.前駆病変または誘因:黒子13例,脱肛3例,外
Hutchinson's
傷3例.臨床的にはDayのT分類,組織:Breslowの
melanotic
freckleの前駆症として,
我々はpre・Hutchinson's melanotic
freckleを報告し
厚さを測定,
Clarkのレベル分類を行い,
pTNM分類
た.今回,露出部にkeratinocyte系悪性腫瘍を多発し
を行った.
たXP患者の12歳小児例の上口唇に臨床的並びに病理
二重絶縁針による電気外科(第2報)小林敏男(浜
学的に本症の特徴を有する病巣を見い出した.高齢者
松美容形成外科)
にのみ通常発生する本症が小児に見い出されたもので
表皮,真皮最上層を可能な限り温存させたまま,真
あるが,本例はXP,
皮上・中層中の拡張血管を電気凝固破壊させる絶縁針
A群(unassigned)であり,紫外
線照射によるfibroblastの生存率曲線にて明らかな修
を開発した.2年間に単純性血管腫患者10名に対して
復能障害を示した.
電気外科的手術を試みた.縦1.5mm毎,横5mm毎に
IFN・α局注療法を行ったkeratoacanthomaの2
直径0.5mmのポイソト数百個をもつスタンプを患部
例 堀内早苗,馬場 徹,上野賢一(筑波大)
に押し,印された点から針を判人し,真皮内で皮膚面
症例1,
に平行に押しこんでゆく.針基部の絶縁部までが皮膚
68歳男.5ヵ月前右頬部に半米粒大の丘疹
出現.症例2,
36歳男.2週間前上口唇左側を電気カ
内に刺人,通電時間1/8秒,通電出力5∼6(IME・
ミソリにて切傷後出現.ともに急速に増大し臨床的,
HR5000手術器),拡張血管を電気凝固(乾固)破壊さ
組織学的にkeratoacanthomaと診断.治療:IFN-α
せる.結果は,術後色素沈着が1∼6ヵ月程みられた
週2回3×1061U局注.2回以後6×10?IU局注.症例
者がいたが,癩痕を形成することはほとんどなく,赤
1は計6×1071U,症例2は計12×1061U投与し,とも
みが消退,減弱し,良好な結果を得た.
に腫瘤は徐々に扁平化し,中央の角化塊が脱落し,投
Bs- 8 の効果よりみた扁平疵贅の治癒のありかたに
与中止後1ヵ月半にて一部豪痕を残して,ほぼ消退し
ついての一考察 森岡 衛(東京都)
た.
3 oxygermyl
肺小細胞癌の皮膚転移の1例(Merkel
cell tumor
propionic acid の低分子重合体(以下
Bs-8と略)を扁平抱贅0患者に経口投与.26例中完治
との比較検討)大見 尚,星野 稔,佐久間満里子,
13例,著効1例,やや有効3例,無効3例,
高橋秀東,上野賢一(筑波大),佐藤浩昭,菅野千秋,
6例.発病から投与開始までの日数(病口)に無関係
渡辺 宏,長谷川鎮雄(同呼吸器内科)
に2週間以内に治癒するものと,この病日に正比例す
皮膚原発腫瘍Merkel
cell tumor
との鑑別診断に重
drop
るものとの2種類あり.さらに①Bs-8投与時の臨床症
要なものに肺小細胞癌の皮膚転移がある,両疾患の形
状による分類.②治癒に至るまでのBs-8投与日数.以
態学的な検索を試みた.64歳男.肺小細胞癌の治療中,
上2つの観点から分類した.個々の治癒の状態か今ま
右上腕の骨様硬,皮下腫瘤を材料とした.両腫瘍に共
で臨床的に記載されている自然治癒の際の状態と全く
out
10n
第48回東日本学術大会
同じと考えられた.
連続標識した.表皮細胞はoutgrowthよりの辺縁で活
表皮plasminogen
activator
inhibitorの酵素阻害
発に標識され,中心にむかって徐々に標識細胞はなく
様式 日比野利彦,伊崎誠一,瀬川郁雄(岩手医大)
なっていた.辺縁部の細胞のみの標識率は年齢,採取
ヒト表皮から分子量66,000
部位,培養期間に影響されず,2時間28.8±8.8%,
(I,)および45,000(12)
6
の2種類のPA inhibitorをPharmacia高速液体
時間31.3±8.2%,
chromatography
system
8.8%で従来の報告よりも高値であった.これらのこと
12は,
active
urokinase
存性に,
を用いて精製した.11および
heavy
chain(UK)を時間依
noncompetitiveに阻害.
24時間53.5±7.3%,
から年齢,部位,培養期間の違いによって増殖細胞の
比率,増殖分布が変化していると考えられた.
SDS電気泳動でUK
とのcomplex形成を調べた結果,11と12とは分子レベ
糖尿病患者におけるHbA,値と皮膚病変(1)
ルでの酵素との結合様式に違いのある事が示された.
mented
11とUKは,共有結合を含まないE-I
し,このcomplexは,
48時間80.7±
complex
を形成
pig・
pretibial patches(Bauer)について 末木博
彦,藤渾龍一(昭和大),永野聖司(同第1内科),柳
沢美光(同第2内科)
SDS存在下で解離する.12(分
子量45,000)とUK(33,000)は,新たに分子量66,000
糖尿病155名(男70,女85)のHbAI値とPigmented
の共同結合を含むcomplexを形成し,その際,分子量
pretibial patches(PPP)との関係を検討.
約13,000のreaction
peptideを遊離する.
(なし),I群(単発),
血中高CEA値が認められ病変部表皮内にもCEA
II群(散在),
pppをO群
III群(5個以上),
IV群(線状配列),V群(局面)の6群に分類.
ppp
が認められた乾癖性紅皮症の2例 井上成史,臼田明
の合併率は77/155(49.7%)∼男,
美,折原俊夫,古谷達孝(濁協医大)
各群のHbA,値の平均値には有意差なし.各群の糖尿
49歳男と38歳男.臨床は紅皮症,組織:定型的尋常
病歴の平均値では,0群とI,
性乾癖.両例の血中carcinoembryonic
値はそれぞれ18ng/ml,
antigen
13ng/ml
(CE
(正常値5ng/ml以
A)
61.4%女,
II, IV,
V群の間に有意
差あり.PPP合併率は9.40%以上で66.7%,
9.45%,
10年未満では37.0%で,コントロール不良の群に好発
下).治療により皮疹が改善するとともに血中CEA値
する.
は正常上限値近くまで低下.
後天性亜鉛欠乏症における多核白血球のsuperox-
10%ホルマリン固定パラ
40.0‰
フィソ包埋標本を型の如くにして切片を作製し,これ
ide産生能 花田勝美,田崎理子(弘前大),熊坂義裕
にDAKO社PAPキットを使用しCEAの有無を検
(同第3内科)
索.2例とも不全角化層の一部とこれに接続する辣細
非特異的防禦機構とくに多核白血球のsuperoxide
胞層上部の表皮細胞間にCEA陽性.不全角化の顕著
(Of)産生能の検討を3例の低亜鉛血症患者について
な部位ほど陽性度が高い傾向が認められた.
試みた.白血球の02-産生能はTonsonの方法に準じ,
乾癖病巣の器官培養 近藤慈夫,穂積 豊,麻生和
phorbol
雄(山形大)
02-を,10分,30分後にcytochrome
乾癖患者皮膚はケラトトームでinvolvedは
0.5∼0.
7mm,
acetateの刺激により産生される
C の還元により測
定.患者白血球の02-産生能は10分値21.74土10.38,30
uninvolvedは0.1∼0.2mmの厚さで採
皮.ミリポアフィルターのdiffusion
myristate
chamber内に組
分値30.93±16.39n
31.81±8.011,
m01/
4 ×105cellS(健常人各
71.00±12.9nmol/4×105Ce11S)と低
織片を封入,MEM+20%牛胎児血清で培養.気相は
値.亜鉛製剤の投与により血清亜鉛が回復した後の
50%ないし95%02+5%C02にし,15∼20rpinで回転
02-産生能は2例で正常に復していた.亜鉛欠乏が
培養.
02-産生能の低下をもたらし,易感染性の原因となり
uninvolvedよりもinvolvedの表皮に,より多い
取り込み.チミジソー3Hによるオートラジオグラフィ
得る.
で, uninvolvedの願粒層および完全角化状態は10日以
セミナー3:皮膚科免疫学の進歩
上保たれた.
ENA抗体と臨床症状 秋月正史(慶大内科)
isoproterenol剌激によるcAMP量,およ
びplasminogenの値を比べて有意の差を得た.
explant
cultureにおける表皮細胞の増殖動態 奥
自己免疫疾患とくに膠原病患者血清には臨床像と密
接に関連する多種類の抗核抗体が証明される.特異性
知三,松本吉郎,吉沢直人,滝川雅浩,山田瑞穂(浜
を明確にした抗核抗体の測定は膠原病の診断,予後推
松医大)
定さらに治療反応性の評価など臨床的に重要である.
正常皮膚12例のexplant
cultureを3H−チミジンで
抗核抗体のうち細胞核の等張緩衝液抽出分画に含まれ
1012
学 会 抄 録
る物質と反応するものをENACextractable nuclear
成長期毛包の各層のhair
antigens)抗体という.この分画の抗原物質は等電点の
特異性を知るために,抗毛ケラチソ単クローソ抗体
低いこと,またヒストンでないことより,
(HKN-2,
それぞれNAPACnuclear
ENAの他に
acidic protein antigens)お
HKN・5,
fibrous protein(HFP)の
HKN-7)を作製した.抗体は,い
ずれも角化前の毛皮質,毛小皮,内毛根鞘と反応する
よび非ヒストソ核蛋白(NHP,non-histon proteins)
が,次のような差を認める.
の名称も用いられる.
狭部までのヘレソ層に接する一層の外毛根鞘最内層細
れた抗RNP,
B(La),
ENA抗体には研究当初見出さ
Sm抗体に加え,近年抗SS-A(Ro),
SS-
Ki, Ku抗体など新しい抗体が見出され,そ
胞(IMC)とのみ反応するか,その他の外毛根鞘細胞
とは反応しない.
の臨床意義,対応抗原の性状が追及されている.かか
HKN-5は,毛球部から毛
HKN-2は,毛球部でHKN-5と同様
である(第83回日本皮膚科学会)にて報告.
る観点より,①ENA抗体の種類,②測定法の要点,③
HKN-7は,
IMCを含む外毛根鞘全体,表皮に全く反応しない.電
臨床意義,について述べる.
顕的にはIMCは,毛球部ではtrichohyalinをもたな
マクロファージの分泌するplasminogen
activator
い扁平な細胞で,その形態は周囲の細胞と明らかに異
とその炎症における役割 伊崎誠一,下田 肇,許 培
る毛皮質∼内毛根鞘のケラチソ線維の分化は極めて類
断,丹治 修,東海林真司,大熊真治(岩手医大)
似している. IMCはケラチンの発現上および形態学的
C57BL/6Nマウスは免疫遺伝学的に鼠らい菌に対
に特異な一層の細胞と考えられる.
し抵抗性を有し,菌の皮下接種の4週後にリンパ球,
類天癒癒における浸潤細胞の同定とその役割 池田
マクロファージの浸潤と,マクロファージの鼠らい菌
志峯,内藤勝一,今井龍介,神野公孝,小川秀興(順
の貪食と,分泌型への細胞分化を惹起し,
天火)
hypersen-
cryostatにて調製して薄切皮膚切片に,抗体源の患
sitivity granulomaを生成.この時組織中に高レベル
のplasminogen
activatorが産生される.組織内の線
者血清,補体源としての正常人血清を反応させた後,
維性蛋白の回転と炎症組織の再構築が有機的な関連を
更にそれぞれ分離した好中球,好酸球,リンパ球,肥
示しなからくり返される.このactivatorは従来よく
満細胞を添加培養し,如何なる種類の細胞が基底膜部
知られているurokinase型あるいはtissue型のplas-
に結合し得るか検討した.その結果,好中球及び好酸
minogen
activatorと異なる性質を示した.同じ性質
球が結合し得たが,好中球がより結合し易い傾向に
の酵素が,
C57BL/6Nの活性化腹腔マクロファージよ
あった.この事は,類天庖厨発症に多核白血球,特に
り得られた.マクロファージの活性化と,これに伴う
好中球が重要である事を示していると思われる.
蛋白分解酵素の分泌は,免疫学的反応や炎症の種々相
新生児マウスヘの類天地蟻病変誘発 三橋善比古,
を制禦する役割を担うと思われる.
高橋正明,沢村大輔,山谷真吾,橋本 功(弘前大)
円形脱毛症における毛球部浸潤リンパ球サブセット
85歳男の水庖性類天庖厨(BP)患者血清(BMZ-Ab,
の解析 桑名隆一郎,岩瀬悦子,辻 麻里,山崎 悟,
1 :2,560),血清lgG分画(同,1
浦田喜子,安積輝夫(国立名古屋)
水庖内容液(BF,同,1
円形脱毛症病毛毛球部へのリンパ球浸潤,各種遅延
腔内に注射した.血清注射群は4匹中3匹に病変を誘
型皮膚反応の減弱などの事実より自己免疫疾患ではな
発, IgG分画(8匹)とBF
いかと言われている.そこで本症を①強制脱毛(十),
病変は光顕的に表皮下水庖,螢光抗体法でBMZにヒ
再生毛(−)の急性期.②強制脱毛(−),再生毛(十)
トIgG,
の回復期.①2群に分け,毛球部への浸潤リンパ球サ
注射群は,
ブセットを酵素抗体法にて解析した.連続凍結切片に
ウスC3は共に陰性,組織学的にも水庖形成はみられな
用いたモノクp−ナル抗体はLeu
かった.補体結合能に関しては,血清はヒト補体に対
a, Leu 7及びCoulter
4, Leu 2a, Leu 3
BIである.浸潤リンパ球数,免
疫調節機能のパラターターであるLeu
3a/Leu
2a比
: 10,240)および
:2,560)を,新生児マウス腹
(9匹)は誘発されない.
C3の沈着,マウスC3は陰性.
IgG分画とBF
BMZにヒトlgGのみ陽性で,ヒトC3,マ
して160倍の結合能(十),
BFは結合能(−),3者共マ
ウス補体には結合能はなし.
などについて正常頭毛と比較しながら検討を加えた.
乾癖における補体アナフィラトキシンの動態につい
抗毛ケラチン単クローン抗体による成長期毛組織の
て 大河内亨子,竹松英明,酉抜和喜夫,田上八朗(東
免疫学的研究 田沢敏男,伊藤雅章,清水直也,伊藤
北大)
薫,佐藤良夫(新潟大)
乾癖における補体活性化機序を探るため,患者血清
1013
第48回東日本学術大会
についてC3aならびにC4aの定量を行った.1251を用
発薬診も約10−24時間をピークとした遅延型経時的変
いたradioimmunoassay
化.④PC系とCS系薬剤間の明らかな交叉反応はみ
kitによった.患者血清では
健常者血清に比べ,統計学的に有意にC3aならびに
られなかった.以上より,これらPC系とCS系の抗生
C4a値の上昇がみられ,これらは皮疹の範囲および病
剤による発疹症型薬疹は,既に我々が確立したモル
勢による差はない.このことから乾癖患者では全般的
モットのPC疹やCS疹と同様に薬剤に対するDTH
な補体系の異常が考えられる.
の全身的な皮膚表現である.交叉反応の成績より,
'"I-labeled
SpA
antibody
binding assay 法による
疹患者ではその代りにCS系薬剤の投与が,またその
抗メラノーム抗体の検索 森 憲彦,島田耕司,佐藤
逆も可能である.
紀夫,長尾貞紀,飯島 進(福島医大),神崎 保(北
尋常性天癒庸における難治性口腔内潰瘍の治療 井
里大)
上勝平,阪口 英,川名修徳,武富功雄(宮崎医大)
目的:悪性黒色腫,尋常性白斑の患者および正常人
症例1,
血清中の培養melanoma細胞(KHM-1/4,
に対する抗体の有無を,
Staphylococcus
HMY-1)
'"I-labeled SpACprotein
aureus)
antibody
binding
56歳女.初診1年半前に口腔内潰瘍.歯科
金属系列貼布試験にて6種類に陽性.補填金属をすべ
A of
assay法
て除去したところ口腔内潰瘍は完治し,コルチコステ
ロイド(コ)内服中止後8ヵ月を経て再燃なし.症例
にて検索.方法:プラスチックチューブに2×105の
2,
melanoma
は治癒せず.全歯に歯根炎,歯周炎を認めたため,す
cellを入れPBSで80倍に希釈した被検血
清を加え,その後10万cpm/50μ1の125T・labeled
SpA
を
加え, r-counterにて測定,結果:KHM-1/4にて正常
人(240cpm,
n=14)と悪性黒色腫(566cpm,
尋常性白斑(352.8cpm,
0.05)あり,
melanoma
(273cpm,
n=18)は各々有意差(p<
vitiligo (468.5cpm,
(879cpm,
65歳男.昭53年以来,コ内服するも,口腔内潰瘍
べてを抜去したところ略治.歯科金属冠,アマルガム
などの過敏症や歯周炎,歯根炎などが本症の惹起因子
nニ6),
や遷延因子となっている症例がある.
アトピー性皮膚炎における減感作療法(中和法)権
generalized vitiligo,Sutton(419cpin,
2 ),segmental
PC
n=
n = 2 ),vitiligo十
n = l)が高値.小範囲のvitiligo
n = 3)は低値.
東 明,宮野径彰,山本恵理子,平林 徹,徳田安章
(東京医大)
対象は経過3年以上で,即時型皮膚反応及び,
IgE
RASTでmiteに陽性を示し,かつ血清lgE高値ある
討 論
いはlgE免疫複合体高値の成人型アトピー性皮膚炎
金丸哲山(北里大):①radioactivityの値がかなり
低いが, % boundingはどのくらいか? target
患者30例.減感作療法はMiller neutralization
cell と
methodによるneutralizing
dose で行い,その経過中
してpigmentを持っている.あるいは作ってくる様な
のlgE抗体,免疫複合体,遮断抗体,0KT4/8比,遅
celllineを選択しないと良い値はでてこない.②また,
延型皮膚反応を測定した.その結果,臨床症状の改善
polyendocrine disorderを伴う患者あるいは
率は80%の好成績が得られ,これと並行して各種免疫,
mucocutaneous
candidiasisを伴う患者とそうでない
アレルギー検査値の改善も得られた.
vitiligoの患者の血清で違いを検索されているか?
ナフトールASのモルモットによる感作試験 岡田
森 憲彦(福島医大):①bound数は1%以下.②
富雄(名大第1病理),松永佳世子,早川律子(同分
chronic mucocutaneous
candidiasis, 内分泌異常のpt
院)
はいない.
2例のネル寝まきによるpigmented
contact
ペニシリン系とセフアロスポリン系抗生剤による遅
matitisでは,ネル寝まき布地as
延型過敏反応性薬疹の12例 池渾善郎,川口博史,永
性,メタノール抽出後は陰性化.ネル寝まき布地の染
井隆吉(横市大)
色に用いられるナフトールASを原因物質として推
半合成のペニシリン(PC)系とセフアロスポリソ
定.ナフトールASによるguinea
(CS)系の抗生剤による薬疹のうち,皮内試験によって
testでは,6匹中3匹に陽性反応.組織:表皮毛孔周囲
遅延型過敏反応(DTH)が確認された12例について検
のspongiosis,
討.①臨床型は全例が播種状紅斑丘疹型,麻疹型,狸
トールASは感作性物質であると判定.
紅熱型および湿疹型を一括した発疹症型中毒疹.②薬
マウス光接触過敏症における活性酸素の関与 宮地
剤投与期間はほとんどが1∼2週前後.③皮内反応誘
良樹,今村貞夫(京大),滝川雅浩(浜松医大),丹羽
der-
isでパッチテスト陽
pig maximization
exocytosis,真皮の単核細胞浸潤.ナフ
1014
学 会 抄 録
靭負(丹羽免疫研)
ヘテロIla型高脂血症の1例 谷井 司,潰田稔夫
光励起から抗原形成過程に対する活性酵素の関与
(大阪市大),宮沢邦彦(清水市)
を, liposomal
36歳男.30歳頃より両膝蓋,両肘頭,腎部に結節状
superoxide
dismutase (L-SOD)を用い
て検索.L-SODの半減期は約7.5時間.
L-SOD前処置
群では,光接触感作が成立しなかったが,
DNFBによ
る接触過敏症は影響をうけなかった,これらのことか
ら,光完全抗原成過程に活性酸素が関与し,
L-SODが
の黄色腫が発生.軽度の肥満と血清総コレステ9−ル,
TG,LDL,VLDLの上昇がみられた.組織学的に真皮
全層に多数の泡沫細胞の集族を認めた.食事療法とし
てコレステロール,炭水化物,脂肪の制限を行い,
TG,
02-の除去あるいは他の酸素中間代謝物質に影響する
VLDLは正常化した.薬物療法としてclofibrate,
ことで光接触感作が成立しない可能性か示唆された.
clinofibrate,nicotinic acid, 低分子デキストラソ硫酸
mite
の内服療法を試みたが,総コレステロール,LDLは正
antigenの高速液体クロマトグラフイーによ
る分析とその抗原性 平林 徹,権東 明,山本恵理
常化していない.
子,徳田安章(東京医大)
蛇行性穿孔性弾力線維症を伴った弾力線維性仮性黄
dermatophagoides
器miniconB15
farinae凍結乾燥末を簡易濃縮
(分画分子量15,000)
A25
(25,000)
色腫の1例 桜岡浩一,木花 光,多島新吾,原田敬
之(慶大)
B125 (125,000)によりそれぞれ分離,更に高速液体ク
40歳女.主訴:頚部の皮疹.初診昭59年2月20日.
ロマトグラフィーにより蛋白分析を行った.分取した
現病歴:2歳頃より頚部に扁平丘疹出現.のち間擦部
抗原成分を用いて,アトピー性皮膚炎(即時型皮膚反
中心に同様の皮疹出現.家族内同症なし.初診時皮膚
応でダエ抗原に陽性を示す)に皮膚テスト,或いは誘
所見:頚部,両肢高部,両鼠径部,胸腹部などに自覚
発試験を行い,その抗原性の差異について検討した結
症状を欠く淡黄色扁平丘疹が密集し一部融合し敷石状
果を報告.
を呈する.また毛嚢炎様皮疹も散見される.組織:表
アクリルモノマー及びエポキシン化合物のマウスに
皮に著変なく,真皮中層から深層にかけて膠原線維間
よる接触皮膚アレルギー性検出の試み 山本敏幸,中
にbasophilicな糸屑状物質を認めた.
川まみ,小林一郎,上山真史,酒井佳子(日東電気)
lichen myxoedematosiis
BALB/cマウスに200mg/kgのシクロホスファミ
章,久木田 淳(東大)
ドを腹腔内投与,3日後に剃毛背部に被験液0.1mlを
46歳男.初診昭58年10月14日.家族歴:特記すべき
塗布も,1週おきに塗布を2回,最後の塗布日から3
ことなし.既往歴:特記すべきことなし.現病歴:昭
∼6日後耳翼に被験液を塗布し誘発.誘発後の耳翼厚
53年項部に腫脹,発赤,嫁みを生じた.他院で加療す
みの差をアレルギー反応の指標とした.
るも,初診2年前頃より指の硬化著明となり,当科受
DNCB,
の1例 尹 弘一,大原国
DNFBは強い陽性反応.アクリルモノマー及びエポキ
診.現症:顔面,項部に癈探を伴う半米粒大までの紅
シ化合物にも陽性反応を示すものあり.この試験法は
色丘疹が多発,融合(十入指,趾では皮膚の肥厚,硬
定量的データが得られることより,興味ある試験法と
化(十).組織:ほぼ真皮全層にかけムチソの沈着を認
考えられる.
める.アルシアンブルーで青く,トルイジソブルーに
マウス接触光過敏症に関与するサプレッサー因子に
て異染性を示す.
ついて 戸倉新樹,滝川雅浩,山田瑞穂(浜松医大),
SLEに合併した尿酸沈着症の1例 坪井良治,木村
宮地良樹(京大)
大紀,種田明生,小川秀興(順天大),津田裕士(同内科)
UVB前照射部位にTCSA光感作したマウスの牌
25歳女.
細胞より,凍結融解によって可溶性因子を抽出した.
ロイドの内服治療.昭55年2月頃よりSLE腎症による
この因子を注入しながら,同系レシピエントマウスに
慢性腎不全に陥り利尿剤の投与.昭57年5月頃より自
TCSA光感作と光惹起を行うと接触光過敏症は抑制
覚症を伴わない皮下小結節が出現し.昭58年2月当科
され,これは抗原特異的,接触光過敏症特異的におこ
受診.両側の手指,足趾,肘頭膝蓋に米粒大までの硬
ることを示した.この可溶性抑制因子は,光ハプテソ
い淡黄色の皮下小結節が多発.血清尿酸値は12.2mg/
特異的サプレッサーT細胞に由来することが示唆さ
dl.沈着物はX-Pで描出されず.組織検査及び結石の
れた.
分析により尿酸ナトリウムの沈着と判明した.
スライド供覧
高カロリー輸液療法中にみられた続発性亜鉛欠乏症
SLEは昭51年7月頃発症.本院内科でステ
1015
第48回東日本学術大会
の1例 真栄平房裕,佐野幸仁,上里 博,伊集 操,
ンスクリーン剤を使用.顔面に色素斑が認められるの
宮里 肇,名嘉真武男(琉大),照嘉名重順,金城福則
みで,悪性腫瘍なし.眼症状(一入臨床的には神経症
(同内科)
状は認められないが,検査上境界域を示すものあり,
28歳女.昭58年5月来,クローソ病にて内科入院中,
UVB域における単色光照射では,紅斑反応は72時間
昭59年5月21日より高カロリー輸液療法開始.約10日
後にピークを示し,そのMEDは健常人の約一3SDで
後より顔面の座唐様皮疹,手指および足趾の水庖様皮
あった.不定期DNA合成は25∼35%,相補性テストに
疹,外陰部肛囲,腎部に痴皮を伴う境界鮮明な暗褐色
よりD群と診断した.
局面が出現し,漸次増悪.当科初診.昭59年6月7日.
phenytoin症候群の1例 山本明男(信州大)
Hb7.8g/dl,血清Zn27μg/dl.手指背皮疹の組織像では
41歳男.7年前より,てんかんにてphenytoin
有錬細胞変性,壊死,表皮内浮腫,水庖形成著明.亜
mg/day)投与.初診約2週間前より,発熱,全身に落
鉛5.75mg連日静注.3日後より皮疹の改善がみられ
屑性浮腫性紅斑,粘膜に発赤,案爛,潰瘍.全身表在
(150
た.
リンパ節の有痛性腫脹.貧血,白血球増多,好酸球増
pellagraの1例 高田和代,清水育子,宮内東光,
多,肝機能障害,腎機能障害,
渡辺昌平(滋賀医大)
透圧の低下.末梢血中に貪食細胞,
46歳無職男.嵐痩.6ヵ月前より腹痛,下痢をくり
裂像.リンパ節生検では,
かえし,2ヵ月前より顔面,頚部,手背に境界明瞭な
血中phenytoin濃度は,通常の有効濃度を下回ってい
暗紫色紅斑と多数の膿庖が出現.無表情,味覚異常,
た. predonine
手指振戦,下肢のしびれ,歩行障害がある.各種血清
ピロキシカムによるアレルギー性光線過敏症 河辺
ビタミソ値は正常,ニコチソ酸のみやや低下,ニコチ
葉子,榊原 茂,吉川邦彦,水野信行(名市大)
ソ酸40∼lOOmg/日静注と総合ビタミソ剤内服治療を
62歳女.フェルデソlOmg/日内服8日後に露出部に
行い,1週間後,皮疹は急速に軽快し,1ヵ月後,随
急性湿疹出現.内服中止2週間で消槌.異常紅斑(48
伴症状も改善し,独りで歩行可能となった.
時間)の作用波長は320∼410mn,ピークは330nm,パッ
porphyria
チテスト(PT)陰性,光パッチテスト(PPT)陽性.
cutanea
tarda
の1例伊藤靖彦,佐野
CRP高値,血漿・尿浸
blast様細胞,核分
necrotizing lymphadenitis.
60mg/dayにて症状の軽快.
勉(静岡県立総合)
類似構造の薬剤のPTとPPTは陰性.再現テストは2
64歳男.1年前より,両上肢に癈捺を伴う皮疹が出
mg/日内服4日後に陽性.組織:前腕の丘疹とPPT
現しはじめた.両手背から前腕にかけて軽度陥凹した
部の共通所見は真皮上中層の大小の単核細胞浸潤.
癩痕と,色素斑,脱色素斑の混在した皮疹を認める.
vitroで本剤と人血清アルブミンとの結合を示唆する
飲酒歴は20歳頃よりあり,5年前からは1日1∼2合
結果が得られた.
を飲んでいる.血液生化学では軽度の肝機能障害が認
水泳用眼鏡によるアレルギー性接触皮膚炎 奥野冨
められ,尿中のポルフィリン定量にて,ウロポルフィ
起子,須貝哲郎(大阪回生)
リソ,コプロポルフィリソの高値が確認された.
39歳主婦.水泳クラブに所属し,温水プールで週2
種痘様水癒症の治験例 渡辺貞夫(名古屋市)
∼3回泳ぐ,新しい水泳用眼鏡を購入2週後から着用
9歳女児.4歳から,毎年2月末から7月にかけ顔
のたびに眼鏡の黒色ゴム枠のあたる下眼嵩部に癈蝉性
面,手背,前腕伸側等に同症を繰り返している.自覚
皮疹が発生するようになった.初診時,両下眼嵩外側
症はない.ひどいと1ヵ月以上かかる.単純性庖疹に
にそって紅斑状浮腫状斑を認めた.使用眼鏡の黒色ゴ
有効なSSMと漢方薬を併用したところ,今年が一番
ム枠,ゴム加工剤,合成樹脂原料および硬化剤など30
ひどかったが,とてもよく治ったと母親が喜んでくれ
種の48時間パッチテストをICDRG基準で施行.72時
た.
間後に,ゴム枠および酸化防止剤p-aminodi-
SSMは初回BI筒皮下,以後SSMA0.2CCを週1
回4∼5回皮内注,漢方薬は,ツムラ桂枝湯2.5gと小
phenylamineに陽性を認めた.
太郎の越婢加求湯1.5gの合方を用いた.
プロピレングリコールおよびクロタミトンによる接
D群色素性乾皮症の兄妹例 御藤良裕,小林美咲,
佐藤吉昭(東医歯大),藤原美定(神戸大放基医)
兄(58TO)8歳,妹(59TO)6歳.血族結婚(−).
両例とも乳児期より日光過敏を認めたため,市販のサ
触皮膚炎 東 萬彦(市立堺)
47歳男.初診昭59年3月26日.1ヵ月前から左下腿
比癈探性皮疹あり,医治を受けていた.3日前皮疹は
増悪.外用薬剤はシマロソゲルおよびフロリードDで
in
1016
学 会 抄 録
あった.2%プロピレングリコール(ワセリン基剤),
手掌大までの紅斑を認め,一部中央に色素沈着あり,
2%クロタミトン(ワセリン基剤)およびフロリード
融合傾向あり,癈禅感著明,粘膜疹なし.好酸球増多,
Dが貼布試験で陽性を示した,シマロソゲル中のプロ
低蛋白血症,IgG低値および鉄欠乏性貧血を認む.表皮
ピレングリコール:クロタミトソおよびフロリードD
下水庖,主に真皮浅層の小円形細胞および好酸球浸潤,
による接触皮膚炎と診断した.
表皮細胞間浮腫.螢光抗体直接法で表皮真皮接合部に
マムシ草(Arum
C3の線状沈着.ステロイド外用に反応した.
maculatum)による口唇口内炎
江上三義(静岡市)
再発性環状紅斑様乾癖の1例 小幡仁子,山口千賀
36歳男.マムシ草(サトイモ科)の実をひと噛みに
子,今村 明,麻生和雄(山形大),小川俊一(山形県
したところ,強い苦みと,びりびりしびれる様な激し
立中央)
い疼痛を感じ,直ちに吐き出したが,疼痛としびれ感
28歳女.妊娠6ヵ月,躯幹を中心に四肢,顔面に拡
は去らず,約30分後には,口唇,舌の腫脹,粘膜白濁
大する環状紅斑.辺縁に粟粒大膿庖と薄い膜様鱗屑を
を来たし,著しい流唾のため会話困難となり,摂食も
えりかざり様に認める.6歳頃より再発を繰り返し,
不能となった.デスパこJ−ワ塗布,セレスタミソ内服
妊娠を契機に増悪傾向にあるように思われる.組織学
等で,第4病日に摂食可能になった.診療に当り,〔ディ
的には角層下膿庖を認め,海綿様膿庖は明らかでない.
フェソバキアによる激烈な口腔病変〕皮膚病診療:
胸肋鎖骨間部に膿庖の集族をみた急性汎発性膿癒性
3(8)(西脇,財満,杉下)を参考にした.
細菌疹の1例 出光俊郎(公立佐沼)
口腔内金属除去にて初めて治癒したlichen
planus
69歳女.1週間前に上気道炎,前胸部痛が出現.3
の1例 鈴木明宏,中山秀夫,佐藤則子,松尾閑乃(済
日前より手,足をはじめ全身に膿庖多発,左胸肋鎖骨
生会中央)
間部に骨性腫脹が存在し周囲に膿庖の集族を認める.
38歳女.初診の約3年前より肛囲に癈腺感を伴う中
WBC
心紫紅色,周囲褐色の斑を認める.組織像にて角質増
1肋骨骨硬化像,組織:角層下膿庖,IF陰性.抗生剤,
殖,穎粒層の部分的肥厚,真皮上層の帯状細胞浸潤を
ステロイド内服により2週間で略治した.
認めlichen
ライター病 徳田安章,大井綱郎,水島義光(東京
planus と診断した.
steroid外用にて難治
7,800,
ASO250,
ASK
5,120,骨レ線像:左第
性を示したが,口内に水銀アマルガムを認め,かつ
医大)
Patch
52歳男.約1年前,陰茎亀頭部に紅斑性皮疹を生じ
test にて水銀に陽性,口内電流測定(粘膜対口
内金属)にて300mV,
4μAの電圧,電流を示したため
た.半年前から両手,左肩,両大腿,両膝の多発性関
原因として口内金属を考えその除去を施行した所,急
節炎と共に右足底にkeratosis
blennorrhagica
様皮疹
速に改善し以後再発を認めず.
を生じ,趾背,爪床に拡大して爪の変形,爪甲剥離を
つたうるし(Rhus orientalis Shmeid,)による
きたした.胸・腰椎に強直性脊椎肥厚症(十).3ヵ月
systemic contact dermatitis
前にbalanitis
の1例 金沢日英,山口
circinata 出現.外尿道口の発赤および
文雄,斉藤文雄(東邦大大橋)
無菌性尿道炎を生じた.組織学的に足底のkeratosis
48歳男.初診昭59年6月13日.山中散策にて名不明
blennorrhagicaにKogojのspongiform
植物採集約48時間間後,両手背,左前鱒に水庖より成
(十),HLAはAW
る急性皮膚炎発生.さらに24時間後,右前陣,顔面,
eosinophilic pustular folliculitis 相馬照代,久志
耳介,頚部に浮腫性紅斑出現.持参原因植物ばった
木東,政田佳子(大阪警察)
うるじであることを硬認.パッチテスト:葉(asis),
36歳男.教員.3年前より顔面に癈諦性赤色丘疹を
葉と茎抽出液,
生じ,軽快再発,昭58年9月頃より,躯幹上肢にも赤
urushiol組成,ぎんなん果肉抽出液強
24, B27,
40, CW
pustule
3.
陽性.組織所見:陽性反応部典型的湿疹反応.浮腫性
色丘疹が環状に並び,色素沈着を残し拡大.前額,頬
紅斑部は主に真皮炎症性反応.”つたうるじによる
部,頚部では赤色丘疹,膿庖.好酸球よりなる毛孔一
systemic contact dermatitis と診断.
致性膿庖形成あり,外毛根鞘の細胞間浮腫と細胞浸潤,
妊娠性癒疹 斎藤昭雄,清水直也,松崎照樹,五十
脂腺組織内および毛嚢周囲,血管周囲性に好酸球小円
嵐美保,竹内誠司,伊藤雅章(新潟大)
形細胞浸潤が見られた.
WBC9700(Eo7%)CRPl十.
26歳女.初回妊娠は正常.2回目の妊娠7ヵ月頃前
イソドメサシソ25mgX
3/日内服で治療開始,2週間
駆症なく発症,ほぼ全身に大小の緊満性の水庖を伴う
で著効,4ヵ月再発なし.
1017
第48回東日本学術大会
廠痕性類天癒療? 小林博人,田辺俊英(金沢医大),
異常所見なし,
大沼秀行(同耳鼻咽喉科),井上久美子(市立砺波総合)
改善.
53歳女.昭59年3月23日初診.58年8月頃,口唇に
展性腎症を合併した痘疹状皮膚炎? 小野田 進,
水庖初発,以後口腔内に水庖出没.口腔内以外に水庖
増谷 衛(東邦大),佐藤幸文(大田内科)
を生じたことはない.現症:歯肉,口唇・頬・咽頭・
86歳男.約2年半前より躯幹,四肢に皮疹出現,約
喉頭の粘膜に水庖・廉爛・発赤あり.他の部位の皮膚
1年前より顔面,下腿の浮腫,蛋白尿.初診時,躯幹,
および粘膜に病変はない.組織:粘膜上皮下の水庖形
四肢に激岸の小水庖が環状に配列する浮腫性紅斑局面
成.蛍光抗体直接法:表皮真皮結合部にIgG,
IgAの線
DDSに著効.小麦粉欠乏食にて皮疹の
が多発.尿蛋白1日5∼8gr,TP4.9g/dl,Tcho
591mg/
状沈着(十).同間接法:(−).プレドユソロソ(30
dl, BUN
mg/日)16日間内服後と水庖新生あり,
基底膜直下に水庖.真皮上層に好中球主体,好酸球,
DDS(125mg/
mg/
ョ,クレアチュソ2.1mg/dl,
IgA高値.
日)追加によって軽快.
リンパ球を混ずる細胞浸潤.螢光抗体:皮膚では陽性
小児のbuUous
所見なし.腎はIgG,
pemphigoid 築藤玲子,藤田 優
A. Qの係蹄壁に沿ったgranular
(千大)
patternを示す膜性腎症であった.
1歳6ヵ月男児.初診4ヵ月前,顔面に小水庖出現
Dowling-Meara型痘疹状表皮水癒症の1例 相場
し,頭部,躯幹へと広がる,皮疹には,強い癈蜂感が
節也(東北大),高橋正昭(東北労災)
ある.初診時,ほぼ全身に鳩卵大までの紅斑と棄爛面
19歳男.家族に類症はなく,血族結婚なし.生後2
散在,一部融合した紅斑の辺縁に,小指頭大の緊張性
週目から水庖が生じた.高校入学時から症状の改善あ
水庖が認められる.組織:表皮下水庖の再生像.蛍光
り.初診時,手足と旅寓に色素沈着.手足では,一部
抗体直接法で,基底膜部にIgG,C3線状沈着.
で環状配列を呈する大豆大までの水庖,廉爛が多発.
IgAも弱
く線状沈着.蛍光抗体間接法で,IgG抗基底膜抗体価が
廠痕,稗粒腫はない.一部の爪は変形.一般検査成績
40倍. DDS25mg内服し,3ヵ月経過するも,著変な
に異常なし.水庖部の組織像では表皮直下に水庖.
し.
PAS染色にて基底膜は水庖底に認む.電顕:表皮基底
linear IgA
bullous dermatosis
of childhoodの1
層に裂隙が形成.その周囲の基底細胞にはトノフィラ
例 田中 信(静岡赤十字),長島正治(杏林大)
メソトの凝集所見.ヘミデストソーム,アソカリソダ
12歳女児.初診昭59年3月5日.主訴:顔面,体幹,
フィブリルなどは睡ぼ正常.現在,ビタミソE内服に
四肢の癈蜂性皮疹.2月24日に顔面に水庖が出現し,
て経過観察中.
3月1日には体幹,四肢に紅斑.現症:顔面,体幹,
先天性表皮水癒症(Dowling-Meara型) 松村和
四肢に手挙大から爪甲大の不正形,環状の紅斑および
子,橋本 功,三橋善比古,野村和夫(弘前大),谷 淳
じんま疹様紅斑.中心部に小水庖がみられるものがあ
二郎(岩手県立久慈)
り.下痢(−).組織学的には,表皮下水庖および乳頭
2歳女児.家系に同症なし.出生時より全身に水庖
層の微小膿瘍.蛍光抗体直接法ではIgA,
Mの線状沈
が多発し,その一部は環状配列を示す.組織:水庖の
着. IgG, C3は陰性.血中抗体(−).DDS
50mg/日に
一部は表皮内,一部は表皮下に位置し,
て,4日目には皮疹は消失し,
50nig/日にて経過観察中
PAS陽性基底
膜は水庖底に存在する.螢光抗体直接法では,免疫グ
である.
ロブリン,補体の沈着を認めなかった.電顕的にケラ
DUhring癒疹状皮膚炎 鈴木久美子,木下茂美,平
チノサイトの融解を認めたが,その程度は基底層より
野京子(東女子医大第2)
もその直上の層において,より著しかった.またトノ
55歳女.約10年前より,ほぽ全身に癈摩を伴う浮腫
フィラメソトの凝集も認めた.本例は本邦5例目と思
性紅斑.小水庖.軽快増悪.昭55年11月当科入院.躯
われる.
幹及び四肢に,浮腫性紅斑.棄爛,大豆大迄の環状配
膀胱腫瘍を伴った天癒療 禾 紀子,増田光喜,倉
列小水庖が多発した.粘膜疹なし.組織:表皮下水庖.
持正雄,木村俊次(共済立川)
真皮乳頭層に好中球及び好酸球よりなる微小膿瘍.螢
74歳女.初診昭58年12月6日.58年1月頃より全身
光抗体間接法では,抗上皮抗体,抗基底膜抗体陰法.
に時に小水庖を伴う癈捺性皮疹出現.8月頃より排尿
直接法では,表皮真皮接合部にlgAの線状沈着を認
痛.血尿.膀胱腫瘍を指摘.現症:略全身に鳩卵大ま
む.抗レチクリン抗体,抗核抗体陰性.消化管造影に
での攬爛.痴皮,斑状色素斑.粘膜疹(−),ニコルス
1018
学 会 抄 録
キー現象(−).表皮細胞間浮腫と表皮内水庖,真皮上
昭59年1月中旬,顔面・躯幹にも皮疹が拡大したため
層の浮腫と好酸球を混ずる小円形細胞浸潤.
当科受診.
lgA(十), ICS・Ab,
ICSに
40倍(十入抗ヒスタミソ剤内服
ANA
40倍(speckled
type),抗SS-A抗体.
抗SS-B抗体共陽性.組織:表皮には軽度の過角化,萎
ステロイド剤外用,膀胱全摘,CO照射にて軽快.昭59
縮,液状変性(十).真皮の血管・附属器周囲性にはリ
年4月より皮疹再燃,
ンパ球・組織球浸潤(十).
DDSに内服変更にて軽快する.
lupus band
test陰性.全
縦隔腫瘍を合併した尋常性天癒懐の1例 佐々木順
経過を通じて発熱・倦怠感・関節痛などの全身症状は
子,星野 学,柳川 茂,溝口昌子,高橋 久(帝京
認めず,皮疹はステロイド外用に反応.
大)
乳癌根治術後に発症した皮膚筋炎の1例 平井昭
63歳女.現病歴:昭51年12月より躯幹,ロ腔粘膜に
男,加茂紘一郎(市立川崎)
水庖,廉爛出現し尋常性天庖膚と診断され入退院をく
39歳女.昭58年7月8日右乳癌根治術施行.10月上
り返す.初診時現症:前胸部,腹部に大小種々の水庖,
旬より,顔面,躯幹,四肢に暗紫紅色,浮腫性紅斑多
口腔粘膜,外陰部に腐爛あり,組織:表皮内に辣融解
発.癈蝉(升).四肢近位筋肉痛(+)10月24日当科受
を伴う水庖形成,真皮上層に炎症性細胞浸潤.初診時
診,皮膚筋炎と診断.検査上血沈九進,筋系酵素上昇
検査所見:ツ反(−).抗核抗体(−).昭59年6月14
あり.癌転移,再発(−).皮膚・筋生検にて確診を得,
日入院時胸部X線にて前縦隔中央に境界明瞭な手挙
PSL
大の異常陰影を認め,奇形腫もしくは胸腺腫の凝いが
で漸減中の59年1月中旬より,肝系酵素の急上昇,乳
あり現在検索中
癌の肝転移が疑われた.皮膚と筋症状悪化,肺不全の
カプトプリル服用により誘発されたと思われる
ため死亡.
pemphigusの1例 三上英樹,三橋善比古,佐藤静生
水癒を伴った皮膚筋炎の1例 栗田修子,小林衣手,
(弘前大)
高島 巌(札幌鉄道)
53歳女.昭58年10月から,高血圧症に対してカプト
34歳女.初診昭59年1月4日.数力月前から,全身
プリル内服.59年3月.胸部に癈蜂性皮疹出現,漸時
倦怠感,四肢の脱力,筋肉痛,両前腕の腫脹が出現
拡大.59年6月13日,当科初診時,胸腹部及び背部に
皮膚では顔面,頚部,大腿に紫紅色∼鮮紅色の浮腫性
栂指頭大までの一部環状を呈する紅斑が散在,小水庖
紅斑があり,大腿の紅斑上に一部水庖形成を認めた.
もみられる.癈蜂が強い.ロ腔内に異常はない.組織:
筋原性酵素高値.筋電図でmyogenic
eosinophilic spongiosls,
検では基底層の液状変性.真皮上層の浮腫,表皮下水
表皮細胞間に1gG・C3の沈着
60mg/ロ内服開始,皮疹と筋症状の改善をみたの
pattern. 皮膚生
あり,抗表皮細胞抗体160倍陽性.カプトプりレ内服を
庖を認めた.筋生検陽生.水庖を伴った皮膚筋炎の報
中止して経過観察中,軽快をみた.
告は極めてまれである.
著明なdermal mucinosisを伴ったgeneralized
抗核抗体陽性の母親より生れた新生児の環状紅斑
DLEの1例 久保美代子,五十嵐 稔,田上八朗(東
本間 真(国立姫路)
北大)
生後27日目女児.初診昭59年2月17日,生後20日目,
44歳女.顔面,躯幹,上肢のdiscoid発疹.
ANF陽
性.抗SS-DNA抗体陽性,抗SS-A抗体陽生WBC
3,400,血沈促進などの所見よりgeneralized
背部に3つ,腹部に2つ大豆大の環状紅斑が発生.自
然消樋傾向を示していたが,生後38日左足底に3つ,
DLEと
生後2ヵ月左前腕と胸部に1つづつ環状紅斑の新生を
診断.背部の生検組織標本で典型的なLEの所見の他
みる.その後発生はなく,生後3ヵ月には皮疹は厳痕
に真皮中下層の結合組織の著明な離開,断裂,空疎化
をのこさず消失,組織:真皮上層のリンパ球を主とす
を認めた.同部はalcian
る禰漫性浸潤.母親は20歳.
blue 染色陽性,
toluidine blue
SLEの既往は全くない.
染色に異染性でhyaluronidase及びchondroitinase
y-Gl. 25.5%,抗核抗体320×,
消化試験によりヒアルロソ酸,コソドロイチソ4硫酸,
いわゆるauto-immune
コソドロイチソ6硫酸の沈着と判明.
健一朗,朝比奈義仁,溝口昌子(帝京大),尾立冬樹,
subacute
金子佳世子(東女医大)
cutaneous
lupus
erythematosusの1例
RA
annular
(十).
erythema 近兼
高橋慎一,清水 宏,原田敬之,西川武二(慶大),田
38歳女.約4年来のダリェー遠心性環状紅斑様の皮
久保 浩(東京都)
疹が再発寛解を繰り返す.組織:一部に軽度基底層の
37歳.昭58年8月,海水浴後左上腕に環状紅斑出現.
変性,真皮上層の血管周囲のリンパ球を主体とした細
1019
第48回東日本学術大会
胞浸潤,一部の浸潤細胞の核の異型,
nuclear dust様
血清エストロン高値.血清中に,少量のIgG-λ型M-
のクロマチン物質,軽度の出血あり.螢光抗体直接法
proteinを認めた.以上より,多発性神経炎,内分泌症
(−),抗核抗体陽性(speckled
状を伴うplasma
type),
LE細胞(−),
cell dyscrasia
(高月病),あるいは
白血球減少.皮疹の出没は続くが検査所見に著変はな
井形らの提唱したPEP
い.シェーグレソ症候群との関連検索中.
皮膚サルコイドーシス? 佐藤徳枝,川崎 了(都
syndrome
と診断した.
著明な腎石灰症を生じたSjogren症候群 長田浩
立大久保)
行,植木宏明(川崎医大)
76歳男.初診の3ヵ月前より四肢,体幹に自覚症状
18歳女.3∼4年前より,口唇,口腔内の乾燥症状
のない小豆大紅色丘疹と爪甲大までの境界明瞭,中心
が出現.ロ唇腺生検,唾液腺シンチグラフィー耳下腺
やや陥凹性の表面に軽度の鱗屑を付着せる紅斑多数.
造影,眼科的検査で異常をみとめた.また血液検査で
組織:真皮中下層の類上皮細胞性肉芽腫.組織の好酸
抗核抗体,y−グロブリン,
菌染色陰性.鼻汁好酸菌染色陰性.BHL(−),眼病変
IgGの高値,抗RNP抗体,
抗SS・A抗体,RA陽性を呈した.四肢の関節痛,腫脹
(−),ツ反強陽性,血清リゾチーム24.2μg/ml,血清Ca
をみとめ慢性関節リウマチを合併,さらに腎尿細管ア
8.4mg/dl,ACE
シドーシスを伴い,腹部X・Pにて,両腎に禰漫性の著
IgG
19.3mu/ml,
T cell76%,
B cell 8 %,
2,164ing/dl, Kveim反応施行中.
明な石灰沈着をみとめた.
scar
RAに伴った血管炎 浅井俊弥,加藤一郎,斉藤隆三
民),石原享介(同呼吸器内科)
(北里大)
24歳男.肺アスペルギルス症の既往あり.約8ヵ月
41歳女.慢性関節リウマチstage
IV
class 2.1週
sarcoidosisの1例 土井 顕(神戸中央市
前から高校時代の交通外傷の癩痕に一致して顔面に粟
間前より上気道炎および下肢に出血斑が出現.腹痛,
粒大∼大豆大の紅色丘疹を生ず.組織:巨細胞に伴っ
関節痛の悪化なし.初診時両下肢に径kmまでの一部
たepithelioid granuloma.
浸潤をふれる点状出血斑が多数散在.検査:検尿正常.
(十),ツ反陰性,
WBC
で皮疹は約2ヵ月で消失す.
12,000 (neutro 80%, lymph
12%,),血小板43.3
万. T.P. 7.8g/dl (y-gl. 16.8%). IgG l,945mg/dl.
561mg/dl, IgM
219mg/dl.
IgA
CRP4十.真皮上層主体の
細小血管炎.免疫グロブリン沈着(−).皮疹は約1ヵ
IgA分画41.5μg/dl,
ACE81Uであった.ステロイド内服
faciale の1例 友野 仁,井階幸一(倉
敷中央)
の癈埠を伴う紅斑が出現し,掻破して硬結を伴うに至
1ヵ月
る.現症:両頬部に硬結を伴う浸潤ある紅斑性局面が
後にlgG分画116μg/dl.
みられ,周囲に禰漫性毛細血管拡張が著明.末梢血中
大動脈炎症候群を伴った壊疸性膿皮症 永田陽子,
の好酸球増多なし.組織:表皮に著変なく,真皮全層
宮内 恵,徳田安章(東京医大)
にリンパ球,好酸球を主体とした密な細胞浸潤よりな
32歳女.昭55年頃より,両下腿に潰瘍が多発.受診
る肉芽腫様変化がみられ,毛包周囲にはGrenz-zone
時,両側大腿から下腿に,散在性の結節を認め,多く
が認められる.
は中心に類円形の潰瘍を有する.右僥骨動脈を触知せ
vulvitis granulomatosa
ず. RI angiography
十字)
にて,大動脈弓分岐部に狭窄所見
の1例 平井義雄(横浜赤
あり.大動脈炎症候群と診断.組織:真皮に好中球,
28歳主婦.出産後5ヵ月頃より両側大陰唇の腫脹お
単核球主体の著しい細胞浸潤,血管壁の肥厚がみられ
よび鼠径部リンパ節の腫大に気付く.陰唇腫脹は消長
る. DDSにて略治.
をくり返し,持久性の淡紅色,弾性硬の腫脹となる.
PEP
ropathy
syndrome
(pigmentation,
edema,
BHL
67歳男.現病歴:初診の1ヵ月前より両頬部に強度
月で消槌.再発はない.流血中免疫複合体が初診5日
後にlgG分画220μg/dl,
granuloma
眼科診で虹彩炎あり.
polyneu-
syndrome)の1例 小林衣子,粟田修子,高
臨床検査で血沈中等度宜進,y−グロブリソの増量の他
著変なし.組織:表皮は肥厚し,真皮上層では涜漫性
島 巌(札幌鉄道),田代邦夫(北大脳神経外科)
の小円形細胞の浸潤,リンパ毛細管の拡張,真皮中層
71歳女.初診昭51年6月18日.半年前より両下肢,
では巣状のリンパ球様細胞の浸潤,類上皮細胞,多核
胸部,上肢に漫漫性の浮腫,硬化が出現.全身の色素
巨細胞よりなる肉芽腫形成をみる.
沈着を伴う.同時に,脱力感,両下肢のしびれ感も出
paraffinoma 笠井達也,六郷正和(国立仙台),秋
現し,歩行困難となる.皮膚生検では,強皮症様変化,
葉 弘(仙台市)
1020
学 会 抄 録
36歳女.10年前両下眼険に美容整形の目的で液状物
時に左手に比贅出現し徐々に全身に多発し,各種治療
質の注入を受けた.2年前左下眼険に小硬結を生じた
に抵抗す.32歳時に心膜切開術施行.術後3ヵ月頃よ
が自然消梗,1ヵ月前から左下眼険下方に2個の硬結
り収縮性心膜炎の症状の軽快と共に把贅が消槌し始め
を生じた.初診時左下眼険内下方に小指頭大,左眼険
約1年で比贅はほぼ消失.免疫学的検査では,術前,
縁外方に碗豆大の皮内から皮下に不規則な凹凸のある
T細胞数の低下,
骨様硬の腫瘤を触知.被覆表皮は健常色で僅かに隆起,
下,ツ反陰性.
鼻側の腫瘤を摘除.組織:ほぼ定型像に近いか,異物
下,術後,
PHAによるリンパ球幼若化反応低
DNCB感作不成立,免疫グロブリン低
PHA正常,
DNCB感作成立,免疫グロブリ
型巨細胞を欠く,結合織の増生は多い.物質は同定不
ン正常.
能.
大腿部に生じたmyrmeciaの1例 馬野詠子,伊藤
春先に多発した小児の多形潅出性紅斑の12例 桜井
祐成,永島敬士(中央鉄道)
みち代,金内日出男,青島敏行(大津赤十字)
30歳女.初診の数力月前より右大腿に径6mmの輪切
症状:上下肢,手足,頬部,耳介に丸い小紅斑を生
りにした南瓜を伏せたような形の,やや光沢のある硬
じ,中央に水庖を認む.一部融合.皮疹は左右対称的.
い灰白色小腫瘤を自覚.臨床診断:伝染性軟属腫?
癈埠が激しい.ステ9イド外用は無効で,かえって増
組織:病変部表皮は乳頭腫症を呈し,顕著な過角化な
強.非ステロイド系抗炎症剤内服が著効.4例に頭部
らびに有練層に濃く染まる封人体が多くみられ,真皮‘
リンパ腫.凍癒に続発したものが4例.数種のウイル
浅層には禰密な小円形細胞浸潤を認める.上記封人体
ス抗体価を調べたが異常なし.いずれの患者も再発例
は, PAP法により褐色穎粒状を呈した.以上より,本
はなし.
腫瘤を病理組織学的にtnyrmeciaと診断した.
post-herpetic
erythema
multiformeの1例 大
皮下膿瘍を呈した黒色真菌症 奥富信博,内田博子
場進一郎,林 至,田村晋也,長島正治(杏林大)
(相模原協同),小柴礼子(同検査室)
47歳男.初診昭58年7月12日.7ヵ月前,多形紅斑
51歳女.相模原市在住.約5ヵ月前より,左第5指
の診断で某内科に入院,ステロイド内服で軽快,以後
指腹に大豆大の淡紅色の皮下硬結出現.自覚症状なし.
数度,皮疹の再燃をみるため当科を紹介され受診.水
野草採取で,時々トゲなどの刺傷があった.組織:肉
庖症を疑い入院精査を行ったが異常所見(一).外来通
芽腫形成,中央は膿瘍状.
発症.詳細な現病歴聴取により,いずれも単純性庖疹
の先行を認め,
post-herpetic erythema
診断,庖疹出現時のDDS
multiforme
PAS染色で,組織内菌要素
(十).培養:表面灰白色,短毛密生する黒色集落形嵐
院中,脊部に単純性庖疹出現後,四肢・口腔に紅斑が
Phialophora
と
100mg/日投与にて多形紅斑
gougerotii が疑われた.全摘後,
5 FC投
与.1日4,000mgにて5週間投与し,再発なし.
腰部に発症したSporotrichosisの1例 加藤卓朗,
の出現は減少.
佐野隆夫(取手協同),比留間政太郎(東医歯大)
成人の水痘肺炎の1例 山本 泉,佐野隆夫,加藤
64歳女.農業.茨城県藤代町在住.約6年前より腰
卓朗(取手協同)
にコルセットを巻いていた.約2年前特に外傷の既往
31歳男.本年3月16日初診.既往歴に特記事項なし.
なく,右腰に丘疹を生じ,しだいに拡大,湿潤してき
家族歴は2月に4歳娘,3月上旬に3歳息子が水痘罹
た.15×24mm,中央に痴皮を付着する,易出血性の肉
鼠初診の2日前発症.初診時,全身に紅量ある米粒
芽腫様紅色結節(固定型),ス反陽性.真皮内に菌要素
大水庖散在,咽頭に粘膜疹多数.入院後y−グロブリン
を認める.痴皮および生検皮膚片よりSporothrix
静注するも高熱と発疹新生が続き,第5病日に軽い咳
schenckii分離,パッキンカイロ朝晩各30分間の温熱
瞰と意識混濁出現.胸部WPは全肺野に那漫性に径
3∼4mmの粒状影散在.Pa02は64.5に低下.
GOT82,
GPT48,
LDH
1,930, Ara-A
療法で著明に改善.
CRP4十,
600mg/day
静
カンジダ性痙播・口唇炎 中村 恵,飯泉陽子,楠
俊雄(日医大第2)
注が著効.
72歳女.顔面の接触皮膚炎の軽快後,口唇に痛みの
収縮性心膜炎に合併した汎発性疵贅症 斎藤英二,
ある発赤腫脹を生じた.既往歴:昭51年,カンジダ性
飯島 進(福島医大),山崎啓二(竹田総合),青木孝
座唐に罹患.現症:ロ唇は浮腫状となり,一部に粟爛,
直(同心臓科)
鱗屑を認めた.口囲には膿庖を混在する紅色丘疹の多
33歳男.9歳時より収縮性心膜炎として加療.14歳
発をみる.病巣の直接鏡検で多数の菌要素を認め,培
1021
第48回東日本学術大会
養でCandida
a】bicansを分離した.組織では角層およ
40歳男.臨床検査技師,初診の約10年前,結核菌培
び毛包内にグロコット陽性の菌要素を認めた.一般臨
養中の試験管を割り左手に刺した.約1年後に同部に
床検査は正常,空腹時血糖84mg/dl,治療:クロトリマ
皮疹を生じ,拡大して左栂指背から栂指縁,手背にか
ゾールクリーム外用1週間で病巣は治癒した.
け30×47mmの境界鮮明な暗紅色凹凸不平な硬結を有
足誼の紅色陰癖 牧野 好夫(イ山台市)
する角質増殖性紅斑となった.ツ反115×6/15×
36歳男,事務員.初診の3∼4ヵ月前(秋)足の悪
16 (45×65)・B,組織所見:ほぼ典型,ヒト型結核菌
臭に,のち発赤,鱗屑に気付く.足の悪臭を主訴とし
を分離. SM,
て来院.両足脈に鶏卵大境界鮮明,角質増殖性病巣.
CS, SFTに耐性.
直接的な鱗屑の切れ目が特徴的.趾間に紅斑,鱗屑,
糸状菌鏡検培養ともに陰性.
PAS, INHなど8種に感受性,
REP,
PASによりショック様となりRFP,
INHにより経過良好.
Wood灯によりサンゴ紅
Mycobacterium
fortuitum感染症の1例 佐野
色螢光陽性,エリスロマイシン内服と外用5日で皮疹
勉,伊藤葉子,伊藤靖彦(静岡県立総合),大石恒夫(静
と悪臭は著しく消槌.1ヵ月で中止.(牧野好夫,皮膚
岡市外科胃腸科)
病診療,4:556,
47歳男.昭59年1月12日初診.昭和58年7月,右下
necrotizine
1982)
fasciisis 徳田安基,宮野径彰(市立岡
腿を机にうち内出血.開放創(−).その後発赤腫脹し,
谷)
8月近医で切開,排膿.
65歳女.初診の1週前右大陰唇に虫刺症.局所潰瘍
治しないため紹介された.現症:右下腿外側に46×40
化,ついで同部より腹部にかけて熱感を伴う板状硬の
mmの3ヵ所に痩孔をもつ膿瘍あり.膿より
発赤腫脹を生ずる.右下腹及び右大陰唇部のプローベ
Mycobacterium
部は壊死化,皮下にて交通.強い悪臭を伴う排出物と
膿瘍,組織球,巨細胞,形質細胞,リンパ球よりなる
ガスを認める.両側腹部にも壊死創発生し,同様症状
肉芽腫,治療:ミノサイクリソ1日lOOmgを4ヵ月間
を呈する.病巣部より多数のクレブジェラニュモニェ
投与し,略治となる.
検出.腹部XPにて羽毛状ガス陰影を認める.壊死巣
Yersinia
拡大し,肺炎併発にて死亡.
斑の1例 中山坦子,小林美咲(都立墨東),村田三紗
尋常性狼座の2例 横井映子,畑 三恵子,服部怜
子(同感染症),福留 厚(同外科),深見トシヱ(同
美,本田光芳(日本医大)
検査)
症例1,8歳女児.初診の3ヵ月前より鼻背に不整
7歳女児.40℃の発熱.苗舌.抗生剤を投与し一旦
形の紅斑,丘疹が出現.
狼盾と診断.
PPD
: 陽性.生検にて尋常性
IHMS内服10ヵ月にて治癒.症例2,
INH投与でやや改善するも完
fortuitum を分離.組織:好中球の小
pseudotuberculosis感染による結節性紅
軽快.2週後に再び発熱,関節痛,回盲部痛,数日後
41
歳女.30年前発症.24年前1ヵ月間治療し以後放置,
に両下腿伸側に径1∼4cm大の境界やや不鮮明な潮紅
を伴う有痛性結節が出現.水様性下痢.有痛性結節は,
初診時顔面,下顎,頚部,右上腕に浸潤性紅斑を認め
る. PPD:陽性.生検にて尋常性狼庸と診断.
真皮に血管周囲性軽度の小円形細胞浸潤と浮腫.皮下
IHMS,
脂肪織には結合織を中心とした好中球,類上皮細胞,
RFP内服3ヵ月目の現在皮疹は退縮傾向.症例1,2
小円形細胞.少数の異物型巨細胞,好酸球などの浸潤.
とも結核菌の鏡検,培養は陰性.胸部X・P:異常なし.
Y・ptbc. IIAに対する血中抗体価は1:2,560と上昇.感
尋常性狼療ならびに骨結核(風較)を併発した小児
染源として飼犬が疑われた.
例 池内伸一郎(足利赤十字),古谷達孝(濁協医大)
溶連菌の2次感染後糸球体腎炎を伴った痴癖の1例
生後1歳5ヵ月女児.離別した母親を除く同居人に
滝口好彦,草間恭子,伊藤信夫,長尾貞紀,飯島 進
同症なし.生後1歳頃右第II指基節骨部.右第V指中
(福島医大)
手骨部腫脹し,徐々に増大.その約1ヵ月後右頬部,
21歳男.初診昭58年10月23日.家族歴に同症なし.
右下腿に紅色丘疹出現し漸次遠心性に拡大.右手の骨
現病歴:昭58年9月より躯幹,四肢に癈蝉性紅色丘疹
X-Pで軟部組織腫脹,骨幹部骨破壊,骨吸収像あり.
出現.著明な痴皮形成を伴う.10月初めより全身倦怠
皮膚・骨生検にて巨細胞,リンパ球を混ずる類上皮細
胞肉芽腫.組織片よりの結核菌培養陽性.
INH,
TH,
感,10月17日頃より顔面浮腫を来たす.検査成績では
RFP
皮疹より疹癖虫体を証明.高血圧,乏尿,蛋白尿,顕
投与にて軽快中.
微鏡的血尿,
皮膚疵状結核 牧野好夫(仙台市)
A群β溶連菌を分離.セファレキシソ等の投与により
BUN
25mg/dl,
ASK
5,120,膿庖より
1022
学 会 抄 録
皮疹の軽快と腎炎症状も軽快.
腎透析患者にみられたKyrle病 小渾雅邦,田中
30数年間,無治療で経過した晩発性先天梅毒の1例
栄,上出良一(慈医大)
宇佐神治子(袋井市民)大橋 勝(名大),浅野昌彦(袋
42歳男.昭51年腎不全指摘.昭56年より腎透析開始.
井市民外科),川島弘三(同整形外科),三浦克敏(浜
昭58年より背部に褐色色素沈着を伴った直径2∼5mm
松医大第2病理)
のドーム状癈緑性丘疹が散在.頂点やや陥凹し,銀白
42歳女.6歳頃より数年間右眼周囲の皮疹.7∼8
色角栓を有す.組織:過角化および限局性アカソトー
歳頃無痛性に鞍鼻と硬口蓋穿孔(鼻中隔の部分欠損).
ゼを示し,陥凹する中央部の角層内,表皮下に好塩基
8歳頃より数年間顔面と頚に皮疹.10歳頃右下腿と左
性物質を認める.真皮上中層には,異物肉芽腫性病変
前腕に有痛性潰瘍(脛骨の発育障害,尺骨一部欠損).
あり. BUN,クレアチニソ,血清アルミニウムは上昇.
15∼16歳頃から左大腿に皮疹を生じ,次第に下降し40
長期血液透析患者にみられたKyrle病様病変なら
歳頃には足先に至り内反足と左下肢の著明な変形を来
びに較状苔癖について 花田裕子,桧垣美奈子,森嶋
した(下肢全体の発育障害と関節の形成不全).この左
隆文(日大駿河台)
下肢切断の術前検査でガラス板320倍,
43歳女.ネフローゼ症候群にて13年間,血液透析中.
倍,母親ガラス板4倍,
Rothman-Makai
TPHA
syndrome
TPHA204,800
1,280倍.
透析開始時よりアルミゲルを服用.半年前より,背部
と思われる1例 常
に癈緑を伴う角化性皮疹が生じ,次第に体幹全体に拡
田順子,鷲見 烈(岐阜大)
大.現症:背部から腰部にかけて全体に錬状苔癖を認
37歳主婦.家族歴,既往歴に特記すべきことなし.
め,これに角性疎をもつ緑疹様小結節が混在.組織:
現病歴:昭54年秋に左耳前部に癈蝉感を覚え,ついで
(緑疹様小結節)角質塊が毛包内に嵌頓し,一部真皮に
同部に紅斑性硬結を生じた.その後毎年秋に左右上腕,
穿孔,軽度の肉芽腫様病変をみ,角栓内に弾力線維,
両肩,左頬部に同様の硬結の新生をみるようになった.
膠原線維の混入はない.なお,血清A1は高値.
硬結は軽い圧痛あり,躯幹,上肢は4年目以降,顔面
etretinate内服により著効を示したDarier病の1
は5年目以降新生をみず,徐々に消槌しはじめ,跡に
例 伊藤祐成,馬野詠子,永島敬士(中央鉄道)
陥凹を形成.組織:皮下脂肪織炎と葉間結合織の増生.
54歳元看護婦.約30年前より,前額髪際部,両耳後
持久性隆起性紅斑 宇田川 晃,長谷川正次,高山
部,頚部,項部に癈緑性角化皮疹出現.前胸・乳房下
修身,中林康青,堀 嘉昭(山梨医大)
部,腹部,両肢高などに拡大.
・58歳男.初診昭59年1月10日,4年前より躯幹,四
により巌痕治癒の部位もあるが,再発もみられる.約
肢に紅色丘疹が出現,やがて膿汁分泌を伴う隆起性浸
2年前より,腰部,両鼠径部から外陰部にかけても同
skin abrasion, CO, laser
潤性紅斑となる.皮疹は2∼3ヵ月で癩痕治癒するが
様皮疹が出現.
他部位に出没を繰り返す.隆起性皮疹の病理組織は,
的にcorps
真皮全層に核破壊を伴う好中球浸潤とフィブリン様物
し,基底層の色素増強のみに改善.現在,
質の析出を認め,血管壁は軽度に膨化,線維芽細胞の
mg隔日内服にて維持.
増多を認める.
カポジ水痘様発疹症を合併したダリエ病の1例 瀬
DDS
50mg/ 日にて治療を開始,皮疹の
etretinate 50mg/day
ronds, grains, lacunae,
より内服.組織学
villiなども消失
etretinate10
新生はなく,隆起性皮疹も豪痕様となる.
野寿理,狩野俊幸,平本 力,藤條善彦,北島康雄,
心身症シリーズ(その4)登校拒否を伴ったアトピー
矢尾板英夫(自治医大)
性皮膚炎 岡部俊一,鈴木長男(平鹿総合)
52歳男.38歳より癈緑を伴う褐色の角化性丘疹が,
15歳女.2人兄弟.3歳頃からアトピー性皮膚炎,
背部中央,被髪頭部,両耳後部,胸部中央,側胸部,
中学1年の夏より登校拒否(その頃兄は東京の大学
四肢に出現した.昭50年当科でダリエ病と診断.昭58
へ).肥満と口囲をなめる癖あり.登校拒否の原因とし
年11月,39℃台の発熱あり,8日後主として胸背部に
て夫婦仲の余りよくないことと放任(父出かせぎで不
疼痛を伴う臍嵩を有する小水庖が多発した.ペア血清
在,母看護婦.日中1人のこと多し),両親から充分ス
で単純ヘルペス1型ウイルス抗体価(中和反応)が64
トロークを得ていない,母親の子離れが出来てないな
倍に上昇したことが示された.水庖消槌とともにダリ
ど. IgE 1,900.箱庭療法,漢方温清飲合抑肝散などで
エ病の皮疹も寛解がみられた.
皮疹軽快.アトピー性皮膚炎には心身症的アプローチ
Noonan
が必要.
元千寿,大滝倫子(東医歯大),佐藤裕子,岩佐俊明(同
syndrome
に合併した毛孔性角化異常 宮
第48回東日本学術大会
1023
第2口腔外科),田苗綾子(国立小児内分泌代謝科),
包茎.包皮の内側は萎縮して板状硬となり,外側から
山本一哉(国立小児)
皮下結節として触れ,巾着様に亀頭を隠す.病変は輪
12歳男.国立小児病院でNoonan
syndrome
と診断.
状に全摘.肉眼的には,白色で肥厚した部分と廉爛面
低身長,両眼隔離症,眼内角贅皮,眼瞼下垂,外反肘,
が混在.組織:表皮は肥厚部分・非薄部分・慶爛・潰
包茎がある.乳児期にボタp氏管開存を指摘される.
瘍がみられ,液状変性か存在.表皮直下から真皮中層
1歳頃より口角部の白色変化に気付き,口唇に拡大.
にかけて小円形細胞中心の帯状細胞浸潤.一部で表皮
同じ頃に顔面,耳介,肘,膝,大腿屈側に毛孔性角化
内走人.
性丘疹が出現した.口唇の生検では角層の乳頭状増殖.
播種状表在型汗孔角化症の1例 吉沢直人,戸倉新
膝の丘疹の生検は毛孔性苔癖の組織に一致した.
樹(浜松医大)
Noonan
52歳男.現病歴:約1年前より,両側前腕部に自覚
syndromeの皮膚症状としての毛孔性角化異
balanitis xerotica obliterans と診断した.
常と診断した.
症状のない褐色斑がみられた.4ヵ月前より同様の皮
食道癌を伴った悪性型掌踏角化症の1例 鈴木長
疹が全身に拡大した.現症:躯幹・四肢に,環状ない
男,岡部俊一(平鹿総合)
し不整形をした多数の褐色の皮疹がみられた.個疹は,
71歳男.昭55年より慢性肝炎で治療中,嘩下困難あ
平滑・萎縮性であり,辺縁にわずかに隆起した角質が
り,内視鏡にて食道癌を発見され当院入院.両手が黄
みられた.組織:特徴的なcornoid
色くてっるつるすべることに気づき,昭59年1月24日
れ,臨床経過,皮疹分布とあわせ,播種状表在型汗孔
当科紹介.初診時,四肢に後天性魚鱗癖.手掌と足底
角化症と診断した.
は両側に禰漫性に潮紅の伴わない角化局面.癈捺はな
著明な色素斑を認めたparapsoriasis
い.足底の組織は一部錯角化を伴う著明な角質増殖.
1例 金蔵拓郎,田代正昭(鹿児島大)
治療は10%SV塗布にて軽快.掌鱈角化症悪性型は食
64歳女.5年前,左下腿に,癈坪を伴う紅斑が出現
道癌合併率高く,優性遺伝形成のため家系調査施行.
し,徐々に暗褐色∼黒灰色調色素斑に変化.同様の皮
全身に汎発した扁平苔癖の1例 梅村厚志,米田和
疹が,躯幹,下肢を中心に増加拡大した.右鼠径部に
史,桑原まゆみ,常田順子(岐阜大),井奈波こと,(岐
碗豆大の表在リンパ節を1個触知する.組織:真皮上
阜市民)
層に異型リンパ球の浸潤を認め,表皮内浸潤も見られ
61歳男.家族歴:特記すべき事なし.既往歴:26歳
る.また,真皮内担色細胞が増加している.
頃聶麻疹,昭50年頃肝炎,糖尿病.現病歴:昭50年頃
congenital
より四肢に紫紅色の扁平丘疹が出現,寛解,悪化を繰
maの1例 斎藤幸雄,山本一哉(国立小児)
り返し,昭58年当科入院となる.入院時,四肢伸側,
1歳2ヵ月女児.初診昭56年9月30日.家族内に血
手掌,足胆に類円形で一部癒合し地図状を呈する紅斑
族結婚および同症なし.出生時左側の躯幹と上下肢に
を認め,口腔粘膜には蘭爛,白苔を認めた.入院後の
コロジオソ膜様の変化.次第に鱗屑を被る紅斑局面を
一般検査,生検などより扁平苔癖と診断し,治療はエ
形成.1ヵ月後には一見正常皮膚.1歳頃より左側の
トレチネートの内服がある程度の有効性を示した.
躯幹と上下肢に比較的境界明確な厚い鱗屑を被る紅
悪性例を含む皮角の5例 今泉 孝,山本雅章,福
斑.一般諸検査成績に著変なく全身状態も良好.左上
士 尭(青森県立中央)
下肢に軽度の発育不全.
臨床的に皮角を呈した症例5例について,その臨床
膏と尿素軟膏の外用で軽減傾向.
スライドを示すとともに,組織の明らかな3例のうち,
先天性異型魚鱗症の粉ミルク療法 渡辺貞夫(名古
ボーエソ病型老人性角化症と思われた症例の組織も示
屋市)
した.症例5,
36歳男.生後半年頃から,膝関節部より皮疹を生じ,
84歳男.2年前左手背に直径2cmの角
lamellaが認めら
unilateral ichthyosiform
en plaqueの
erythroder・
retinoidの内服,ステロイド軟
化性局面出現.さらにその中に直径1cmの腫瘍もみら
次第に全身に及ぶ.輝裂部に疼痛を生ずることあり,
れる.治療:切除後植皮.組織:ボーエソ病型老人性
大学病院その他で,あらゆる治療を試みるも,一時的
角化症.
な軽快のみ.最近,自宅で,粉ミルク,酵素及び五健
陰茎に生じた閉塞性乾燥性亀頭炎 深水秀一(島田
草を食餌の代りにして以来,ほぼ正常皮膚に回復し,
市民),奥 知三,滝川雅浩(浜松医大)
夏季の発汗も良好となる.米食にもどすと再発すると
77歳男.1年前から包皮に「ただれ」.初診時外観は
いう.同類の疾患に試みてもよい方法と思い発表した.
学 会 抄 録
1024
当例は,
浸潤性癌病変を伴ったBowen病の2例 真木登喜
38, 60, 88回東海地方会発表例.
祷療の硫酸亜鉛による治療経験について 田崎理
世,鈴木 薫,柳沢宏美,末木博彦,安木良博,藤渾
子,花田勝美,帷子康雄(弘前大),祖父尼 哲(国立
龍一(昭和大)
弘前),木田和幸(同公衆衛生)
症例1,
祷盾患者53例の血清亜鉛濃度を測定し,うち35例に
局面,その一部に4.5×3.3×1Cmの半球状腫瘍.右股
硫酸亜鉛による治療を試みた.①獅庸患者の血清亜鉛
腺腫大(+).切除∼植皮およびリンパ節廓嵐局面は
濃度は71.0±16.8μgl/dlと健常人のそれに比して低
Bowen病の組織像.腫瘍の真皮内胞巣とリンパ節病巣
値を示した(健常人88.7±13.8μg/dl).②硫酸亜鉛を
は,表皮内のBowen病に類似した組織像.症例2,
投与した35例のうち完治例5例(14.3%),軽快例14例
歳女.頭頂部に5×4Cmの紅斑局面,その病変内に
(40.0%)であった.③有効例では無効例に比して血清
3.3×2×1cmの半球状腫瘍.リンパ節腫大(−).骨
亜鉛濃度の速かな上昇をみた.以上より低亜鉛を示す
X-P異常なし.生検所見:紅斑部はBo
例では亜鉛投与は試みる価値のある治療法と思われ
は浸潤性癌病変の組織像.EMでneurosecretory
た.
granule (一入6oCO照射療法で完治.
凍傷の1例 松田三千雄,前田和男,小野寺英夫,
32P及び雪状炭酸圧抵療法後発生した有較細胞癌
高橋 誠(札医大),金子正光(同救急部)
林 泉,米元康蔵,衛藤 光(北里大)
22歳男.昭58年12月26日利尻山頂付近で転落.28日
29歳女.右顔面に太田母斑あり,生後1ヵ月頃より
74歳男.右足背に7.5×5.5cmの扁平隆起性
86
wen病,腫瘍部
入院となる.入院時両手足に著明な血性水庖,知覚消
1年半アイソトープ(32P貼布)療法を,更にその後9
失が見られた.検査上,低蛋白血症,
年闇雪状炭酸圧抵療法を受けた.以降放置していたが,
GOT,
GPT,
LDH,
CPK,BUNの上昇が見られた.高圧酸素療法,胸部硬
昭58年12月,右額部に癈楳感出現.掻肥をくり返すう
膜外ブロック,低分子デキストラソ,プロスタンジソ
ちに昭59年1月下旬には同部の潰瘍化を来たし,徐々
点滴などで治療した.
に拡大.初診時,大きな癩痕面の中にφ7.6×3cm大の
一部にintraepidermal
epitheliomaの所見を呈し
鮮紅色,易出血性の潰瘍を認める.その辺縁部の生検
にて有煉細胞癌と診断し,仝切除十中間層植皮術を施
たBowen病の1例 木花いづみ,山崎雄一郎,籐野
倫(国立東京第2)
行した.
75歳.約2年前より腹部に,22×27mm,褐色の境界
浸潤のない浅い潰瘍のみの足底(腫)有糠細胞癌2
明瞭な角化性局面を認める.組織学的には,
例 石井敏直,鈴木 弓,宮城悦子(国立高崎)
Bowen病
に典型的な組織を示す部分の他に,正常表皮内に多数
症例1,
の胞巣を認め,いわゆるititraepidermal
染を来し銀痕治癒.過去15年間麿爛を繰返す.47歳初
epithelioma
50歳男.6歳頃,左足鱈腫部切創に二次感
の所見を呈する.胞巣を形成する細胞は,主に基底細
診時該部に限局した浅い潰瘍を認む.
胞様細胞で,核の大小不同,分裂像を認める他,異常
し分層植皮.組織:真皮深層に及ぶ有無細胞癌.術後
角化細胞,集塊細胞も存在する.以上より一部に
照射3年経過後も再発なし.症例2,
intraepidermal
期湯タンポで左足脈腫部に熱傷.初診8月前に該癩痕
epitheliomaの所見を呈したBowen
en block に剔除
30歳主婦.乳児
病と診断した.
中心部の角質剥離し麿爛形成.組織診断後来院.剔除
爪床に生じたボーエン病 演松輝美,柳滓啓子(国
分層植皮.2例とも難治性だが浸潤のない浅い潰瘍の
立立川),内藤全之輔(八王子市)
みであった点が注目された.
47歳男,歯科技工士.3年前左第1趾爪下に幅3mm
pseudoglandular
の淡紅褐色め混濁を生じ,軽度圧痛あり,爪下尖端に
谷田泰男,末武茂樹,大越久美子,五十嵐 稔,細川
淡紅褐色の肉芽様組織を認め,他医にて二回抜爪術を
倫子(東北大)
squamous
受けたが,爪が伸びるとともにその都度再発し,当科
pseudoglandular
を受診.抜爪後爪床に認めた淡紅褐色肉芽様病巣を充
時に受傷した熱傷の癩痕部に出現した難治性潰瘍.症
分に切除す.組織:表皮肥厚し,表皮突起延長,表皮
例2,約20年の経過で増大した右足背の有痛性,半球
細胞の配列は乱れ,
状に隆起する暗紅色弾性硬の腫瘤.一部潰瘍形成.組
clumping
であった.
individual cell keratinization,
cell, 核分裂像を認め,ボーエソ病の典型像
sec
cell carcinoma
の2例
の2例を報告.症例1,6歳
織:2例ともpseudoglandular
SCCの像を認めた.
熱傷廠痕部に再発をくりかえした腫瘤 武田克之,
1025
第48回東日本学術大会
内田尚之,榊 哲彦(徳島大)
発症は2年前で徐々に増大.切除,再発なし.なお躯
58歳男.約50年前,左大腿内側に火傷を受け癩痕形
幹に2個の粉瘤合併.また2年前耳前部の粉瘤摘出の
成.33年後,同部生検で腫瘍を形成,分化型扁平上皮
既往あり.組織:真皮内に集族する大小の表皮嚢腫.
癌と診断され切除術,デルモパソ照射を受けた.境界
内腔に角質と軟毛を含む.壁にグリコーゲン含有.嚢
比較的明瞭な弾性硬,胡桃大腫瘍を2個生じた.リン
腫を取り巻く結合織は比較的少い.被覆表皮に著変は
パ節廓清を含む広範囲切除術を施行したが,本年1月
ないが,一部に付着した小嚢腫の外側面は消失し,残
頃から同部に腫瘤が再発.現症:第2回の植皮部のほ
る部の表皮移行をみる.
ぼ中央に10.5×9.5cm径の潰瘍を伴う弾性軟の半球
proliferating
状腫瘤を認め,血管造影で大腿動脈の圧排像をみた.
美,荒 政明,渡辺 信,大河原 章(旭川医大)
組織像は肉腫様の扁平上皮癌であった.
77歳女.
oral floridpapillomatosis
には栂指頭大の淡紅色ないし正常皮膚色の半球状に隆
の1例 稲田修一,功野
6,
trichilemmal
cystの1例 石田明
7年前に後頭部に皮疹出現し,初診時
泰三,酒井伊勢子,島本順子(県立広島)
起した弾性軟の結節を認める.組織:真皮全層にわた
75歳女.現病歴:昭58年11月頃頬粘膜に小丘疹が多
り角質塊を入れた嚢腫様構造があり,最外層は柵状配
発.12月頃下口唇に乳頭腫様丘疹出現,次第に腫大.
列を示す小型・立方形細胞で,内腔に向うにっれ毛鞘
昭59年2月16日当科初診.なお20年来総入歯.現症:
角化を呈するが,壁の一部は不規則に増殖し,
下口唇に1.3×1cm大乳頭腫様腫瘤,両頬粘膜に多発
cell,配列の乱れ, squamous
の灰白色米粒大丘疹密集.頚部リンパ節腫大(−).組
核の異型,
織:口唇,頬粘膜病変を生検.両者とも被覆上皮内に
proliferating
異型性を示す有無細胞が乳頭様に増殖.治療,経過:
三,松井千尋,宮入宏之,諸橋正昭(富山医薬大),西
ベプレオ総量35mg筋注後両病変とも消失,現在まで
鴬美和春,岡 イ中央(同脳神経外科)
再発はない.
70歳女.25年の経過で10Cmx10cmx5Cmのカリフ
基底細胞母斑症候群の2例 高山紀子,増田哲夫,
ラワー様外観を呈する有茎性の腫瘤が右後頭部に生ず
田嶋公子,川村太郎,池田重雄(埼玉医大),桜井由美
る.腫瘤は,正常表皮に覆われている部分や腫瘍塊が
子(青梅市立総合)
皮表に露出している部分がある.一部は正常表皮と連
症例1,
絡をもっ所がある.大小多数の嚢腫様構造が癒合拡大
45歳男.頭部に鶏卵大黒色腫瘤.顔面,背
clear
eddy 様構造,個細胞角化,
mitosisを認める.グリコーゲン穎粒あり.
trichilemmal
cystの1例 高橋省
部,下肢に半米粒大∼貨幣大の結節および色素斑が8
し,真皮内に巨大な腫瘍塊を形成.嚢腫壁はtrichilem-
個.いずれもBCEで,様々なtypeを呈し,2個は皮
mal
下型. pits,稗粒腫,類表皮嚢腫,顎骨嚢胞,粘膜下口
個角化,
蓋裂,大脳鎌石灰沈着,手指骨嚢腫様病変,脊椎側育
を含む.術後1年腫瘍の再発なし.
あり.症例2,
trichilemmocarcinoma 島田耕司,飯島 進(福島
39歳女.顔面に半米粒大のBCEが1個.
keratinizatinの像を示し,
squamous
eddy細胞
clear cell はジアスターゼ消化PAS陽性物質
pits,稗粒腫,類表皮嚢腫,多発性顎骨嚢胞,大脳鎌石
医大)
灰沈着,脊椎側育,頚椎の奇形,中手手根関節亜脱臼
42歳女.1年前より,徐々に増大する左耳介腫瘍.
あり.
27×27×18min.血痴付着,血管拡張を伴う硬い充実性
謄寓にみられた基底細胞上皮腫の2例 斎藤義雄
腫瘍.組織:表皮に連続するclear cellとbasaloid
(日立総合)
cellからなる乳頭状増殖が,耳介軟骨に至る.
63歳女の左脹嵩にみられた0.
5cm X lcmの黒褐色小
性, diastase消化.脂肪染色陰性.
PAS陽
CEA(PAP).電顕:
結節,および71歳男の左肢席にみられた小豆大黒褐色
細胞質はglycogenに富み,細胞小器官に乏しく,少数
小結節にっき報告.いずれも組織像は基底細胞上皮腫
の張原線維をみる.また,
の所見で前者は腺様型,後者は充実型であった.比較
っ.切除後,再発,転移なし.
的まれな部位に認められたので報告した.
嚢腫状毛母腫の1例 古屋和彦,安居千賀子,安田
軟毛嚢腫の集族からなる小結節の1例 滝野長平,
秀美,熊切正信(北大)
車地祐子(九段坂)
62歳男.右頬部に生じ,急激に増大した紅色丘疹を
56歳男.右外眼角部の7×3mm大,楕円形,扁平隆
発症約3週間後に切除した.組織:単房性嚢腫状毛母
起,軽度に凹凸,弾性軟の黄色調結節.自覚症なし.
腫で,壁細胞は好塩基性上皮細胞,内容は好酸性無構
desmosome,
microvilliをも
1026
学 会 抄 録
造物質である.電顕で毛小皮,ハクスレ層,外毛根鞘
た.リンパ節にも転移あり.術後23ロで脳転移にて死
への分化が観察され,毛母のみならず,外毛根鞘下部
亡.
への分化をも含む母斑的性格の強い腫瘍で,時間の経
膀胱癌に外陰部Paget病を合併した1例 林原義
過につれ分裂の激しい毛母の部分が,次第嚢腫全体を
明,高山紀子,増田哲夫,鈴木 正,斉藤公子,池田
占めて特徴的な毛母腫の組織像になると推測された.
重雄(埼玉医大),岡田耕市,荒木重人(同泌尿器科)
desmoplastic
41歳女.初診昭58年n月28日.5年前膀胱癌(移行
trichoepitheliomaの1例 原田玲
子(東電),荒木由紀夫(警友),中村絹代(北里研付
上皮癌Grade
属)
設術.昭58年5月両鼠径リンパ節転移.同時期より外
III)にて膀胱全摘術,両側尿管皮膚痩造
55歳女.昭58年10月12日初診.主訴,右頬部の局面.
陰部に紅色皮疹出現.初診時,陰核より肛門の一部に
現病歴:10年前,右頬部下方にニキビ様丘疹出現,徐々
かけて10×5cm境界明瞭,類円形,扁平な浸潤性紅色
に拡大.初診時,7×8mm大,弾性硬の楕円形局面あ
局面あり.同年12月13日外陰部広範囲切除,分層植皮
り,辺縁には淡黄白色の小丘疹が環状に配列.組織:
術施行.組織:表皮内に,
真皮全層にわたり,大小の角質嚢腫と細い索状の基底
CEA染色(PAP法)陽性の,典型的なPaget細胞を
細胞様細胞の配列あり.周囲に豊富な線維性間質が存
見るも真皮内浸潤なし.
在.辺縁には石灰沈着および異物反応を認める.切除
血中CEA高値であったextra・mammary
後約8ヵ月経過するも再発を認めない.
diseaseの1例 木内一佳志,三橋善比古,河村葉志
脂腺増殖を示したPringle病のadenoma
sebaceum
PAS染色alcian-blue染色.
Paget's
子,橋本 功,帷子康雄(弘前大)
八丁目直寛,田上八朗(東北大)
65歳男.昭47年頃左鼠径部に皮疹出現.57年n月,
24歳女.4歳時より意識障害発作出現.臨床的に
当科初診時には,左鼠径部に鷲卵大の廉爛局面をみ,
Pringle病に異型的なadenoma
sebaceum.
patches, white leaf-shaped macules
shagreen
を認める.
IQ68,
CTscanにて側脳室壁に多数の石灰化,虹彩毛様体網
膜腫瘤,
EEG
わゆるadenoma
: spike and wave
complexes.
左大腿には小豆大までの皮下結節散在.組織:両者と
もPaget細胞の増殖をみる.入院時血中CEAの異常
高値(670ng/ml)を示し,病巣の拡大とともに上昇
顔面のい
sebaceumの組織学的検索では一般
(1079ng/ml)し,治療による病巣の縮小に伴って低下
(500ng/ml)した.
PAP法により腫瘍細胞における
的にみられる血管の増殖拡張や結合識の変化など
CEA,α-fetoprotein,
S 100蛋白,
keratinおよび
Nickelらのいうangiofibromaの像はみられず,脂腺
lysozymeの有無を検索した.
の増殖が主体であり,組織学的にはadenoma
外陰部に生じたsyringomaの1例 笠井美知子,
sebaceumの本来の命名に近いものであった.
重本圭子(東京警察)
sebaceomaの1例 三原一郎,坂本哲也(慈医大)
27歳女.約7ヵ月前より,両側の大陰唇に,粟粒大
56歳女.5年来の頭頂部5∼6mm大,境界明瞭な,
の褐色丘疹が多数発生してきた.弾性硬で,疼痛,癈
ドーム状隆起,檀黄色丘疹.組織:弱拡大にて左右ほ
蜂は伴わない.眼囲,躯幹には,類似の皮疹は存在し
ぼ対称.辺縁平滑,境界明瞭な構築パターンを呈し,
ない.組織:2層の上皮細胞よりなり,内容に無構造
被覆表皮と多連続性,房状の基底細胞様細胞の集塊よ
物を入れる嚢腫が真皮に散在し,一部はコンマ状を呈
り構成される新生物.集塊内には脂肪染色にて陽性を
する.本邦における外陰部のsyringomaの症例はあま
示す細胞が集族性に,また管腔様嚢腫様構造も散見さ
り多くない.
れる.
特異な臨床,組織像を呈したeccrine
脂腺癌の1例 巻渕秀夫,名取純子,廻神輝家(藤
例 佐藤昌三,実川久美子,柳沢宏実,佐々木 聡,
沢市民)
安西 喬(日赤医療センター)
64歳女.昭58年10月,左耳後部に腫瘤出現.急激に
53歳男.3ヵ月前から左側頚部の乳頭腫先端部が発
増大し小児手拳大のカリフラワー状の案爛ある腫瘤と
赤,腫大して3mm径の球状腫瘍.
なる.左顔面神経麻庫の状態.腫瘤切除後,植皮.組
から懸垂,弾性硬に触知される.茎部の基部で腫瘍を
織では真皮から皮下組織にかけて大小種々の不規則な
切断した.組織:球状部表皮には正常角化細胞と区別
形の細胞よりなる集塊あり.また深部では脂腺様構造
される汗孔腫瘍細胞が増殖し,幅広く舌状に真皮側へ
を示しており,浸潤性発育もみられ,脂腺癌と診断し
突出する.球状部乳頭層には血液を容れるが内皮細胞
poromaの1
2mmの茎部で皮膚
1027
第48回東日本学術大会
の被覆が不完全な小血管増生像.茎部には大小の毛細
generalized
血管様構造の血管が多数認められる.
藤雅章,佐藤信輔,佐藤良夫(新潟大)
eccrine
24歳男.顔,躯幹,四肢に米粒大の紅色∼暗赤色の
poroepitheliomaの1例 落合豊子,野原
eruptive histiocytoma 清水直也,伊
正,山口全一(日大板橋)
丘疹が多発性に生じた.光顕的にH-E染色で,表皮直
60歳男.約10年前左手掌に釘を刺し,その部位に一,
下から真皮中層に著明な細胞浸潤があり,浸潤細胞の
致して皮疹が出現し,拡大してきた.左小指球部に11×
主体は,大小不整な核を有する胞体の豊富な組織球性
16×2mmの類円形,扁平台状に隆起する淡紅色浸潤性
細胞であった.電顕的に組織球性細胞は,大きな胞体
局面を認める.その中央は線状の慶爛を呈し,一部痴
を有する細胞で,核の切れ込みが強いものが多かった.
皮を付着する.組織:表皮から連続して,あるいは一
皮疹は徐々に消槌し,初診より1年後には,色素沈着
見非連続性に大小の腫瘍塊が真皮に浸潤し,その中に
を残し消失した.
管腔様構造を認める.一部の腫瘍細胞は大型・不正形
皮膚症状を伴った多発性骨髄腫の1例 月永一郎,
の核を持つ.酵素組織化学,電顕的検索も併せて行っ
金子忠男(北大),小田 淳,森岡正信(同第3内科)
た.
65歳男.初診昭59年1月20日.4∼5年前から腰痛,
papillary
eccrine adenomaの1例 杉 俊之,北
肩関節痛があったが,昭58年7月25日急に腰痛が出現
村啓次郎(慶大)
した.同年8月4日北大第3内科で骨髄腫の診断で入
43歳男.主訴:左下腿の腫瘤.5年程前に腫瘤の存
院した.赤い丘疹,結節が頭部,躯幹,肢などに12月
在に気づくも放置.徐々に増大.自覚症状(−).腫瘤
下旬から出現してきた.既往歴に心筋梗塞,肺梗塞.
は直径1cmで半球状に隆起し表面平滑でほぼ正常皮
皮疹の生検で真皮全層に桐密な形質細胞類似の腫瘍細
膚色.周囲に褐色帯状の縁どりを認める.組織:真皮
胞の浸潤をみた.螢光抗体法でlgG陽性細胞もみられ
に大きなfibrotic mass
た.血清蛋白10.4g/dl,
があり,中に大小種々の汗器官
IgG 7700mg/dl, IgGx型であっ
由来と思われる管腔構造および少数の角質嚢胞様構造
た.
を認めた.以上の所見より本例は1977年Rulonらが報
巨大なcarcinosis
告したpapillary
男,田上八朗(東北大) ,._
eccrine adenomaに近いものと思わ
cutisの1例 相沢晴美,谷田泰
れた.
55歳女.初診昭59年4月27日.現病歴:同年1月下
基底細胞癌に類似性を示した転移性皮膚癌の1例
旬,左腰部の皮下腫瘤に気付く.自覚症状はなく,同
内山光明,小松 平,鈴木朝美(横市大)
部に外傷の既往はない.現症:左腰部左大転手上方に,
72歳男.昭57年3月某院で左頬部皮下腫瘤の切除,
手拳大の弾性硬ないし骨様の皮下腫瘤があり,下床と
癌とのことでその後照射をうけた.同年8月末頭蓋内
可動性で一部皮膚と癒着している.表面に浮腫性の紅
血腫のため本学脳外科へ入院.9月左口角に小結節,
斑を認める.
10月生検し,基底細胞癌様の組織を認める.その頃か
し,石灰化上皮腫の疑いのもとに全摘.摘出腫瘤割面
ら肺,左眼高部に転移を思わせる腫瘤を生じた.左口
からはチョーク様物質を排出.組織:真皮下層から皮
角部の腫瘤は切除,イソターフェロソ局注を行ったが
下脂肪織にかけて多胞性の巨大な石灰沈着巣があり,
再発をくり返し58年4月末死亡.剖検により,肺,脳
その周囲には結合織の増生,組織球,異物巨細胞,リ
などの腫瘍は皮膚と同様であり,頬粘膜原発を考えた.
ンパ球の浸潤がみられた.血清Ca,
転移性臍腺癌の1例 小泉雄一郎,柳田真理子(水
現在,合併症の検索中である.
戸協同)
血管平滑筋腫の1例 赤松 徹,吉田秀史(千大),
56歳家婦.4ヵ月前よりの出血性臍腫瘤(示指爪甲
菅原 宏(八千代市)
大)を主訴に1984年2月初診.術前諸検査と手術所見
72歳女.約6年前より右足底に小豆大の皮膚色腫瘤
は一致し,S状腸原発と考えられる大腫瘤,臍剔出のみ
あり,5ヵ月前より紅色調を帯び疼痛が出現.腫瘍は
で終る.組織:試切時を含めての臍,原発部,腹腔な
真皮中層から皮下脂肪織にかけて存在し,薄い結合織
ど転移リンパ節などの所見は全て腺癌.本邦の転移性
性被膜におおわれている.腫瘍細胞は主に紡錘形の核
臍癌の統計を報告.また転移形式であるが,術中所見
を持つ線維状の細胞で,一部では血管を囲み同心円状
などより,本症の場合は山口,
に増殖している.腫瘍上方で小動脈と連続している像
Samitらの云う,肝転
移→肝円靭帯転移→リソ八行性を考えた.
xero-graphyで多胞性の石灰化像を確認
P値は正常範囲内.
が観察される.腫瘍細胞はワンギーソソ染色で黄染,
1028
学 会 抄 録
アザソ染色で赤染.電顕的に平滑筋細胞の特徴を有す
6歳男児.家系に血族結婚あり.妊娠分娩経過は正
る.
常.発育,発達は特に異常はない.出生時より右上腕
口唇に認められた血管平滑筋腫の1例 照井 正,
から右体幹,右大腿にかけ線状の色素沈着あり,2歳
高橋正昭(東北労災)
頃より後頭部右側に数個の血管腫様赤色小腫瘤出現し
34歳男.家族胤既往歴に特記することなし.現病
漸次増大.また右鼻翼部,右舌下部,右手掌,右足底
歴:約8年前特に誘因なく,下口唇に自覚症状のない
にも同様な腫瘤出現.昭58年n月当科初診時には上記
皮疹に気づく.以後放置していたところ徐々に盛り上
病変以外に右側顔面の軽度肥大,右脂趾の変形を認め
がり,運動時など一過性に増大したが,疼痛や圧痛な
る.骨X-Pでは右上腕骨,右肩甲骨,右大腿骨,右誹
し.現症:下口唇に約1cm大の半球状隆起の腫瘤が1
骨,右指趾骨に内軟骨腫を認める.後頭部の小腫瘤の
つ.表面は半透光性で僅かに白色調を帯び,弾性欲の
生検組織像はcapillary
境界明瞭な皮下結節であった.病理組織所見より診断
には特に異常は認められず,血算,尿,便も正常であ
した.
る.
原発性皮膚骨腫 服部泰子,池谷敏彦(愛知医大),
副腎皮質ホルモン剤の単独療法により著効をみた巨
玉田康彦(名古屋市),稲垣 浩(名市大小児科)
大毎状血管腫の1例 小島博子,馬場安紀子,山崎雙
生後5ヵ月女児.生下時より左膝関節部に境界不明
次,古谷達孝(濁協医大)
瞭な3cm大の紅斑が存在し,その中に米粒大の黄白色
生後6ヵ月女児.生下時より顔面左側部に約18×12
丘疹が散在.組織:真皮中∼深層にかけて骨梁様構造
cm大の菌状血管腫あり.生後1ヵ月より徐々に増大,
が認められた.PTHの上昇と円形顔貌がみられるこ
隆起し,生後4ヵ月より開眼不能となった.血小板数
とよりAlbright's
減少なし.入院時より副腎皮質ホルモソ剤内服及び病
hereditary
osteodystrophyへの移
hemangiomaである.消化管
行が示唆された.
変部内注射開始.約1週間後には皮疹の著しい縮小・
左II,
槌色化か認められ軽度の開眼が可能となり,3週間後
in足指合指症を伴った先天性示指爪甲形成
不全症の1例 内山光明(横市大),赤尾明俊,片倉仁
にはほとんど槌色し,開眼もほぼ正常となった.治療
志(市立小田原)
中止約2ヵ月後の現在も再燃傾向は全く認められてい
2歳男児.家族歴に同症なく既往歴にも特記すべき
ない.
ことなし.第1子,妊娠中も異常なく満期正常分娩.
大動脈炎症候群に合併した異型血管腫 益田俊樹,
出生時から左指示指爪甲が僥骨側に欠損しており,楼
池田政身,荒田次郎(高知医大)
爪型を思わせたが,椀骨側に残存爪を思わせる溝があ
52歳男.30歳頃に前頚部右に半爪甲大紅斑出現,徐々
り分裂型とした.出生時から左II,
に拡大し105×60mmとなる.中心部に60×27niinの不
III足指の合指症が
みられた.左示指末節骨のXPでは,末節骨々端の掌
規則楕円形の範囲に暗紫紅色の塊状∼索状の隆起,皺
背側方向へ2分している像が認められた.
壁あり,軟かく表面萎縮.底部に拍動のある索状物あ
rudimentary
り.血管造影にて淡い血管網に右上甲状腺動脈の分枝
polydactyly
の1例 渡辺富美子,岩
津都希雄(成田赤十字),小林まさ子(千大)
が交通.左総頚動脈と椎骨動脈の閉塞,腎動脈の狭窄
1歳5ヵ月男児.生来,右小指尺側基部に小腫瘤.
など大動脈炎症候群の所見あり.組織:真皮中層∼脂
初診時2.5×2×2inin,常色,弾性硬で圧痛なし.双生
肪織内に,拡張し壁の肥厚した静脈の増生をみる.
児の弟に両側小指尺側に過剰指があり切離術を施行.
pregnant
母親の左小指尺側基部に,少なくとも小学生の頃には
(関東中央)
tumor 日野治子,北島拓弥,西脇宗一
存在していた自覚症状のない3×2×0.5mmの小腫瘤
症例1,
あり.組織:真皮乳頭層から真皮上層に多数のMeis-
と舌の小丘疹に気づく.初診時,舌中央に米粒大淡紅
sner小体を認め,その下方に血管と大小の神経束の増
色小丘疹,前頭部に直径9mm,暗赤色小丘疹が各1個
殖をみる.
みられた.妊娠週齢と共に,舌の丘疹は径7mmとなり,
Luxol fast blue染色にて神経線維に
31歳.初診時妊娠36週.2週間前に前頭部
Ranvierの絞輪を認める.
妊娠38週で切除.前頭部の丘疹も徐々に拡大,分娩直
片側のみに病変が生じたMaffucci症候群の1例
前に15×17nim有茎性暗赤色,易出血性結節となるも
松本和彦,伊藤 隆,御子柴 甫(信州大),中田和義
分娩後急速に縮小し産後4ヵ月で7×6mm,
(同整形外科)
に切除.組織:両者とも血管拡張性肉芽腫.症例2,
5ヵ月目
1029
第48回東日本学術大会
29歳.初診時妊娠30週.半年前に頭部の腫瘤に気づき,
malignant “Triton"
近医で電気凝固をうけた.最近同部に再発.初診時,
レックリングハウゼン病に生じた肉腫の1例 鈴木
右後頭部に15×17mm有茎性,易出血性暗赤色の小結
真理子,野村和夫,山谷真吾(弘前大),佐野 豊(同
節がみられた.その後,患者が来院せず,問い合せた
形成外科),成田竹雄(同第2病理)
ところ,栂指頭大まで拡大したため,分娩前に産科主
41歳女.生来レックリングハウゼソ病あり.初診5
治医により切除する予定という.
ヵ月前より左背部に腫瘤出現し,急速に増大してきた.
acquired
初診時,手拳大,弾性硬,暗赤色の半球状腫瘤で,疼
lymphangiomaの1例 岩崎光順(旭中
tumorに類する腫瘍と考えた.
央),押尾好浩,桑島斉三(同産婦人科)
痛,癈岸を伴う.外科的に切除.組織学的にmalignant
73歳女.初診昭56年9月24日.現病歴:昭45年子宮
schwannona,
癌で子宮全剔,術後放射線療法施行.昭56年4月頃よ
えられる.
り外陰部に丘疹が出現,徐々に増数,増大.現症:両
“solitary”pigmented
側大陰唇に米粒大の半透明の丘疹多発,一部集無性に
斎田俊明(東大分院),大原国章(虎の門)
存在し症状外観を呈する.組織:真皮上層に拡張した
6歳男児.既往歴,家族歴に特記すべきことなし.
1層の内皮細胞で囲まれた空隙が多数存在.治療は単
生後数力月頃,左背部に青色調皮疹が生じ,徐々に増
純切除縫縮術.
大してきた.初診時,45×32mm,一部青色調を帯びた
多発性グロムス腫瘍の1例 八木英一,正橋寿子,
境界明瞭な不整方形紅斑を認め,柔軟に触知された.
高橋伸也(秋田犬)
圧痛(十入組織:真皮上層から皮下組織にかけ,紡錘
16歳女.家族内に同症なし.n歳頃より両大腿,左
形の腫瘍細胞が線維性間質を伴って増殖している.一
前腕,右腰部に,栂指頭大までの弾性軟な紫青色結節
部に柵状配列や細胞密度の高い部分を認め,またder-
が4個,青色斑が5個生ずる.2個の結節に圧痛あり.
mal
組織:真皮中・下層に不規則に拡張した管腔がみられ,
胞も多数認められた.
管腔壁は1∼散層のダロムス細胞よりなる.被膜はな
lentigo
い.電頭:グロムス細胞は厚い基底膜,細胞膜直下の
野真理子,橋本 謙(帝京大溝口)
pinocytotic vesicle,細胞管内に多数のfilamentと
73歳女.10数年前より左頬部に徐々に拡大してきた,
dense body を有する.
およそ境界明瞭な5×5cmの辺縁不規則地図状,濃淡
子宮全摘出術後の下肢浮腫部に生じたangiosar-
不規則な淡褐色∼黒褐色の色素斑が認められた.浸潤,
comaの1例 赤城久美子,清野和子,北郷 修(都立
隆起性変化(一入 自覚症状(一入所属リンパ節腫脹
駒込),高 弘毅(同整形外科),深山正久(同病理)
(−).組織:褐色斑部では基底層に異型メラノサイト
70歳女.49歳時,子宮頚癌にて広汎子宮全摘出術施
の増殖.黒褐色斑部では有鯨層に至る異型メラノサイ
行.放射線照射はしていない.術後3年より左下肢全
トの増殖と胞巣形成傾向あり.全域にsolar
体に浮腫性腫脹出現.昭58年1月,左下腿前面に紅色
tion著明.本人の希望にて放置,現在経過観察中.
小結節出現.9月初診時,径30mmの紅色腫瘤と小豆
superficial spreading' melamoma 佐藤昭彦(いわ
大のsatellite lesionあり.
CEA
61.1.生検後左大腿
切断術施行.腫瘍細胞は静脈内に浸潤し,
factor VIII
malignant
fibrous histiocytoma
neurofibroma 石井晶子,
melanocyte及びmetanophageと考えられる細
malignaの1例 古田寛子,滝田清水,小
degenera-
き共立),里見孝弘,渡辺秀一(同外科)
50歳女.23歳のとき上背部左側に黒色,半米粒大の
弱陽性.59年1月,左大腿局所再発.2月,血性胸水
色素斑を発見.最近,急に増大し形態,色調が変った
貯留.3月,呼吸不全で死去.電顕,剖検所見も供覧.
として50歳のとき来院.上記部位に栂指爪甲大,辺縁
横紋筋肉腫を合併したvon
不規則,褐色と黒色の混在した,僅かに隆起した色素
Recklinghausen病
等が考
高橋博之,阿久津 裕,堀越貴志,竹田勇士(札医大),
斑がみられる.組織:SSM,
水無瀬 昂,今 信一郎(同第1病理),草島勝之(同
周囲健常皮膚を広汎深達に切除し,左側肢高リンパ節,
胸部外科)
鎖骨下リンパ節を廓清.
35歳女.神経線維腫部に外傷を受けた後急激に増大
amelanotic
する腫瘍が出現.組織:良性神経線維腫内に横紋筋肉
潔,三神 寛,中村進一,宗像 醇(ロ医大第一),千
malignant
level Ill, 深度0.75mm.
melanomaの1例 西原
腫を認める.原発巣は検索した限りでは発見できず神
賀博文(同病理学診療科),山本泰−(同老人病研究所)
経線維腫内に発生したものと考えられた.いわゆる
52歳男,右栂指爪甲下外傷後の皮疹.淡紅色で表面
1030
学 会 抄 録
棄爛を呈する9×12mniの半球状腫瘤.組織:表皮直
腫脹(−).周辺5mm離して単純切除し,中間層植皮.
下に腫瘍細胞の胞巣状増殖を認める.小円形細胞が主
組織:索状に配列するリンパ球様母斑細胞を主体とす
体,一部に紡錘形細胞を認める.メラニソ穎粒は一部
る複合母斑.異型細胞を認めず.
に見られる.
境界母斑由来の悪性黒色腫 赤間紅美子,高橋秀東,
dopa反応陽性.電顕でメラノゾーム(I
∼IV)を認める.
amelanotic
melanoma
(level IV,
内藤誘一,上野賢一(筑波大),坂井重信(同形成外科)
stage lb)と診断,近位指節骨で切断,DAV療法2クー
42歳女.
ル施行.
初診4年前よりその増大に気付き,10日前に出血を見
BCG
80mg/週,経口投与にて経過観察中.
2,
3歳頃から左大腿部に“ほくろ"存在,
悪性黒色腫を疑われた巨大母斑細胞母斑 藤広満智
たため来院.腫瘤は,16×12nimの黒色半球状,中央
子,鹿野由紀子(岐阜大),兼松・勲(大垣市民)
は黒色痴皮を被り易出血性.周囲に1∼5mm幅で黒色
27歳男.初診昭56年7月24日.生下時より右後頭部
斑を有する.組織:境界母斑から悪性黒色腫に移行す
に表面粗造な青黒色斑.9ヵ月前頃から中央に赤色小
る所見が認められ,境界母斑由来の悪性黒色腫と考え
結節を生じ急速に増大,67×50×23minのドーム状,
た.治療は,腫瘍広範囲切除及び,リンパ節廓清を施
弾性軟の黒色の痴皮に被われた腫瘤.腫瘤に接して数
行.当科で経験した悪性黒色腫の発生母地をあわせて
個の小豆大∼帽針頭大の常色小結節.頭頚部リンパ節
報告する.
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