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校長室の窓から
校長室の窓から No.18 「私とあなた」から「あなたと私」へ 先日、米子市人権・同和教育研究集会が米子コンベンションセンターで開催 されました。今年の記念講演の講師は、児童文学者であり金子みすゞ記念館の 館長でもある矢崎節夫さんでした。演題は「みんなちがって、みんないい ~ 金子みすゞさんのやさしいまなざし~」でした。 矢崎さんは、金子みすゞさんの「大漁」という詩に出会って、それまでの自 分中心、人間中心のまなざしを一瞬にしてひっく り 返 さ れい わた と言っておられま いわし し し た 。「 大 漁 」 に 出 会 う ま で は 、 ず っ と 「 私 と 鰮 」 で 、 鰮 は 私 に 食 べ ら れ て 当たり前というまなざしだ ったそうです。 し か し 、「 大 漁 」 に 出 会 っ て み す ゞ いわし いわし さんのまなざしは「私と 鰮 」ではなく「 鰮 と私」だということに気づかされ 大きな衝撃だったそうです。 つまり、みすゞさんのまなざしは「私とあなた」でなく「あなたと私」とい うやさしいまなざしだったのです。人は生まれてきた時からずっと、両親や祖 父母、友達、先生、地域の人たちがそばにいてくれます。あなたがいないと私 は 存 在 し ま せ ん 。 だ か ら 、「 私 と あ な た 」 で は な く 、「 あ な た と 私 」 な の で す 。 「親と子」も同じです。子が生まれてくれて親にしてくれるから「子と親」な の で す 。私 た ち は ず っ と 自 分 を 中 心 に 考 え て き ま し た 。自 分 を 中 心 に 考 え る と 、 どうしても相手に対して自分が上から目線になってしまいます。相手の位置ま で 下 が ら な い 限 り 相 手 を 理 解 す る こ と は で き ま せ ん 。 だ か ら 、「 理 解 」 を 英 語 でアップスタンド(上に立つ)でなくアンダースタンド(下に立つ)と言うの です。私たちは、自分の位置をかえることで世の中はもっと豊かに見えるよう になります。 また、矢崎さんの話の中で身口意(しんくい)というお話が印象に残りまし た 。 身 口 意 と は 仏 教 用 語 で 、「 身 」 は 親 か ら も ら っ た 体 で 、「 口 」 は 言 葉 で あ り 、「 意 」 は 心 を 意 味 し て い ま す 。 人 は 心 で 思 っ て い る こ と を ( 意 )、 素 直 に 口 に し ( 口 )、 行 動 し ま す ( 身 )。 こ の 身 ・ 口 ・ 意 の 3 つ が 一 致 し て い れ ば 、 人は真に自分らしく活き活きと生活できます。しかし、時として私たちは思っ てもないことを言葉にしたり、口では格好のいいことを言っても行動が伴わな か っ た り す る こ と も あ り ま す 。自 分 の 言 う 言 葉 を 最 初 に 聞 く の は 自 分 で す 。 「馬 鹿やろ」とか「うるさい」などと汚い言葉を使って相手を傷つけているようで も、実は自分を傷つけていることになるのです。あなたの発した言葉であなた の心や体が見られているのです。 大人は、自らが言葉を大切にすると同時に、子どもたちにも一番大切な言葉 を き ち ん と 伝 え て い か な け れ ば な り ま せ ん 。「 お は よ う ご ざ い ま す 。」「 あ り が と う ご ざ い ま す 。」 な ど 、 最 後 ま で 言 葉 を 省 略 し な い で 子 ど も た ち に 呼 び か る ようにしてください。相手を尊重した言葉を発することで、相手も自分自身も 人生がかわってきます。 時間の経つのも忘れて、矢崎ワールドに引き込まれてしまいました。講演会 が終わり外に出ると、肌寒い風が吹きすさんでいましたが、心地よい感動が体 を温めてくれるようでした。 -1-