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温暖化予測「日本モデル」ミッション(PDF:16.5MB)

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温暖化予測「日本モデル」ミッション(PDF:16.5MB)
高分解能大気海洋モデルを用いた地球温暖化予測に関する研究
研究代表者: 住 明正(東京大学気候システム研究センター教授)
1.5年間の成果の要約
1-7章では、共生第 1 課題東大気候センター、国立環境研究所、地球環境フロンティアグループの
成果についてまとめる。電中研への委託研究成果については8章以降に記す。
・ 高解像度大気海洋結合気候モデルを構築し、また物理過程の大幅な見直しによってその精度を向
上させることができた。とくに、日本付近では、梅雨前線、黒潮流路等従来の低解像度モデルでは再
現できなかった現象も再現できるようになった。
・ 高解像度モデルおよび中解像度モデルにより 20 世紀気候再現、21 世紀予測実験を行い、その結
果をIPCC第 4 次報告書(以下AR4)に向けた国際データセンターに提供した。
・ AR4では我々の論文、モデル結果が多数引用されている。また、報告書の執筆、査読等にあたって
も多くのプロジェクトメンバーが貢献した。
・ 高解像度モデルによる温暖化実験により、日本の夏は気温が上がって真夏日等が増えるだけでなく、
強雨頻度が増加する懸念があることが示された。
・ 中解像度モデルにより 20 世紀再現のアンサンブル実験を行い、20 世紀半ばの昇温は太陽や火山
活動などの自然要因が寄与していたが、20 世紀最後の 30 年間の昇温には人為起源の温室ガス増
加が寄与していたことがわかった。また、気候変化の地理的分布、時間変化に関して、計算に導入し
た種々の気候変化要因ごとに分けて分析を行った。
・ 高解像度モデルにより極端現象再現の精度が上がった。極端現象変化に対する熱力学的、力学的
寄与について新たな知見を与えた。
・ 我々の高解像度モデルは各国のAR4モデル中唯一黒潮が現実的に表現できるモデルである。温
暖化時、黒潮の流路、離岸緯度等に大きな変化はないが、流量が顕著に増加する結果となった。
・ 20 世紀海洋表層データセットを作成し、AR4における水位上昇見積もりに貢献した。また、高解像
度モデルによる水位上昇予測を行った。
・ モデルの気候感度(恩師効果ガス増加に対するシミュレートされた気候変化の大きさの目安)を支配
する要因について、徹底的な調査を行った。低緯度低層雲、中緯度水雲-氷雲境界等の重要性を
指摘した。今後の気候感度メカニズム解明、モデル精度向上に重要な進展である。フィードバック解
析の新手法の提案、結合モデルを用いた火山噴火による気候感度の妥当性検証実験の提案を行っ
た。
・ 温暖化実験における大気海洋結合効果について数値実験を行い、海面水温を与えた大気モデル
によるタイムスライス実験の妥当性を検証した。
・ 英国ハドレーセンターとモデル開発について活発な交流を持つことができた。とくに、高解像度化の
インパクト、雲物理等について議論を深めた。今後モデル相互比較等を通してさらに交流を進める。
・ 本課題の計算結果にもとづき、地球温暖化について社会への情報発信につとめた。そのことが、本
研究グループの 2005 年の日経科学賞受賞につながった。
2.本年度の成果概要
本年度は、これまでの計算結果の引き続く解析、論文化に加えて、さらなるモデル研究の進展に向け
ての研究を進めた。
・ 2030 年程度の近未来定量予測における極端現象変化の検出可能性に関する研究
・ 高解像度海洋モデルによる 20 世紀後半の海洋循環再現実験
・ 高解像度結合モデルにおける十年規模変動の解析
・ 20 世紀再現アンサンブル実験による地域気候変化の検証、要因分析
・ 結合モデルによる温暖化実験における海洋、海氷に関わる気候感度依存性の解析
・ モデル境界層過程の検証と改良
・ 大気海洋結合モデルによる季節予測実験
・ 結合モデルの解像度依存性に関するハドレーセンターとの共同解析
等である。その一部を以下に報告する。
-1-
3.近未来気候変動予測における極端現象変動の検出可能性
1. はじめに
人間活動の影響による将来の気候変化に関して、 気候モデルを用いた予測研究が活発に行われて
いる[Cubasch 他、 2001]。 これまでの研究のほとんどは 2100 年まで、 またはそれ以上の長期にわたる
予測に主眼を置いてきた。 これらの研究は、 異なる将来シナリオによる気候変動予測の違いを知るた
めに重要である [Cubasch 他、 2001; Prentice 他、 2001]。 一方、 最近になって 2030 年までの近未
来予測の重要性も認識されるようになってきた[Zwiers、 2002]。 近未来予測では特に次の 2,30 年の間
での極端現象の変化を詳細に記述することが求められる。 これらの近未来の極端現象の変化予測は、
政策決定者が気候変動に対する影響の軽減策や適応策を立案するためにきわめて重要な意味を持
つ。
長期気候変動予測には大きな不確実性が伴う [Cubasch 他、 2001]。 予測の不確実性をもたらす主
な要因は、 気候感度、 温室効果ガスやエアロゾルの排出シナリオ、 炭素循環などに含まれる不確実
性と内部変動である。 一方、 近未来予測では、 前の3要因の影響は小さくなる。 例えば、 全球平均
地上気温の近未来予測は、 どのような排出シナリオを予測に用いるかにあまり依存しない[Stott and
Kettleborough、 2002]。 しかしながら、 温暖化シグナルに対する内部変動の大きさの比は、 長期予測
よりも近未来予測の方が大きくなる。 そのため、 シグナルと内部変動ノイズの比の問題は、 近未来予
測ではより本質的に重要である。
内部変動による不確実性は、 積分の初期条件を変えたアンサンブル積分実験で見積もることが出来
る。 ここで、 アンサンブル平均は外部強制力に対する応答シグナルの最尤推定値であり、 アンサンブ
ルメンバー間のばらつきは内部変動による不確実性の幅を示す。 アンサンブル平均は将来もっとも起こ
りうる気候変化を表しているが、 実際の将来の気候変化は内部変動のためにアンサンブル平均予測と
逆の符号も取りうる。 そのため、 不確実性の幅の情報をアンサンブル平均予測と共に示す事は、 アン
サンブル平均予測の情報だけよりも、 政策決定者にとってより有益である[Palmer and Räisänen、
2002]。
これまでにも、 いくつかの研究で、 多メンバーのアンサンブル実験を用いて、 極端現象の変化予測
の不確実性を定量化しようという試みが行われてきた。 Selten 他 [2003] は、 内部変動に伴う将来予
測の不確実性を単一の大気海洋結合モデル(AOGCM)の初期値アンサンブル実験で調べた。 複数の
モデルの将来予測実験を用いた研究では、 気温の極端現象に温暖化に伴う変化が現れることがモデ
ル間で一致しているが、 降水の極端現象に関してはモデル間のばらつきが大きいことが示されている
[e.g., Tebaldi 他、 2006; Kharin 他 、 2006]。 Hadley Center Quantifying Uncertainty in Model
Predictions(QUMP)プロジェクトでは、 CO2 倍増に対する応答の、 内部変動と大気プロセスのパラメータ
化に伴う不確実性を見積もっている[Murphy 他、 2004; Barnett 他、 2006; Clark 他、 2006]。 Barnett
他 [2006] は、 QUMP 実験の結果を用いて、 気温と降水の極端現象に関してその発生頻度がどのよう
に変化するかを調べた。 彼らは、 暖かい気温の極端現象の変化は、 最尤推定値では増加するが、
不確実性の幅が最尤推定値と同程度の大きさがあり、 将来予測の符号は変わらないがその振幅には大
きな不確実性があることを示した。 また彼らは、 降水の極端現象の将来予測の不確実性は、 気温に対
するものより大きいことを示唆した。
これらの先行研究は全て、 長期予測の頑強性と不確実性に着目したものである。 それに対して本研
究は、 2030 年までの気温の極端現象の変化を調べる最初の研究になる。 わずか 2,30 年先において、
温暖化シグナルが内部変動より十分に大きいかどうかははっきりしない。 すなわち、 現実の将来では、
内部変動が温暖化シグナルを覆い隠してしまうかもしれない。 そのため、 ここでは初期アンサンブル実
験のアンサンブルメンバー間で、 気候変化の符号が一致するかどうかに着目する。
2. データと手法
MIROC3.2 AOGCM [K-1 model developers、 2004]を用いて、 1850-2000 年の気候変動再現実験
[Nozawa 他、 2005]と、 SRES A1B 排出シナリオ [Nakicenovic 他、 2000]に基づく 2001-2030 年の将
来予測実験を行った。 ここでは、 初期値の異なる 10 アンサンブルメンバーを積分した。 MIROC3.2 の
全球平均地上気温の 1951-1970 平均と 2021-2030 平均の差は 0.97K で、 Intergovernmental Panel on
Climate Change 第4次報告書に貢献している 21 の AOGCM の中では、 中間値にあたる (最大・最小幅
は 0.69-1.58 K)。 モデルの水平解像度は T42 である。
-2-
ここでは、 夏の日最低気温 (TN)を調べる。 ここで夏とは、 北半球の 6-8 月、 南半球の 12-2 月を示
す。 いくつかの結果は、 TN の全球観測データ HadGHCND [Caesar 他、 2006]と比較する。 観測デ
ータが 20 世紀後半からしか得られないため、 ここでは解析期間を 1951-2030 年とする。
夏の TN が 1951-1970 年の 95%値を超える日を「暑い夜」であると考え、 この敷居値を超える頻度の変
化を調べる。 2011-2030 年における頻度と 1951-1970 年における頻度の比を RF95 とする。 RF95 が 1
よりも大きい場合、 将来において「暑い夜」が増えることを示す。 1981-2000 年における RF95 も計算す
る。 同様に「暑い昼(夏の日最高気温の 95%値を超える日)」、 「寒い昼と寒い夜(冬の TX と TN の 5%
値を下回る日)」に関してもその頻度の変化を調べた。 温暖化に伴い、 暑い極端現象は頻度が増加し、
寒い極端現象は減少する(図省略)。 頻度の変化に関して、 「寒い夜」は「暑い夜」と同程度のシグナル・
ノイズ比を示すが、 「暑い昼」と「寒い昼」は幾分シグナル・ノイズ比が低くなる(図省略)。 AOGCM による
「暑い夜」の観測されたトレンドの再現性が、 他の指標より良いことが分かっている [Christidis 他 、
2005; Shiogama 他、 2006]ので、 ここでは「暑い夜」の解析結果を示す。
温暖化シグナルの頑強性を調べるため、 気候変化の符号がアンサンブルメンバー間で一致するかど
うかを調べる。 このような頑強性の評価方法だと、 その評価はアンサンブル数に依存する。 そのため、
アンサンブルメンバー間の一致度がアンサンブル数にどの程度敏感かを、 簡単な手法で評価する。 ま
ず、 10 メンバーから n メンバーをランダムに抽出する。 全 n メンバーで RF95 が1より大きいグリッドの全
陸上面積に対する割合を調べ、 それを F(n; RF95>1)とする。 アンサンブル数 n が大きくなるほど、 少
なくとも1メンバーで RF95≤1 となる確率が増えるので、 F(n; RF95>1)は減少すると予測される。 F(n;
RF95>1)をアンサンブル数 n の関数として図示する。 もし F(n; RF95>1)がアンサンブル数 n0 の近辺で急
激に減少するなら、 アンサンブル数 n0 は起こりうる気候変動の幅を定量化するのに不十分だとわかる。
もし F(n; RF95>1)がアンサンブル数が n1 より大きいときに安定なら、 アンサンブル数が n1 より大きいとき
に、 気候変化の符号がメンバー間で一致するグリッドを推定することができる。
極端現象の頻度の変化は、 気温の頻度分布の「平均の変化」と「分布形の変化」に起因する[Meehl
他、 2000]。 RF95 の「平均の変化」に伴う成分(RF95m)は、 1951-1970 年における気温の頻度分布を、
分布形を変えずに平均だけ変化させることによって得られる[Barnett 他、 2006]。 もし RF95 が RF95m と
同じなら、 極端現象の頻度の変化は、 気温の頻度分布の平均(つまり季節平均気温)の変化によって
もたらされたと考えることが出来る。 この場合、 内部変動の大きさを見積もるのに、 アンサンブルメンバ
ーの代わりに(産業革命前の状態の)コントロール実験の長期積分(3600 年)をもちいることができる。 20
年間の内部変動の影響を考える場合、 コントロール実験から 20 年間のデータを取り出して、 2011-2030
年と 1951-1970 年の季節平均気温偏差に重ねれば、 擬 RF95 を 90 サンプル計算する事ができる。 同
様に 10 年計算、 5 年計算も行え、 それぞれ 180,360 サンプルの擬 RF95 が得られる。
3. 結果
図 3-1a, 1b に、 観測とモデルにおける TN の分散を示す。 全体的に見て、 モデルは観測の分散の
分布を再現していることが分かる。 しかし、 モデルは北極圏やヒマラヤなどで過大評価であり、 また五
図 3-1: 1981-2000 年夏の TN の分散. (a)観測, (b)モデル, (c)バイアス.
大湖周辺で過小評価である(図 3-1c)。 これらの領域では、 モデルは内部変動の震幅をいくらか過大ま
たは過小評価している。
-3-
図 3-2: (a) 2011-2030 年と(b)1981-2000 年の 10 メンバー平均 RF95。(c)1981-2000 年の観測。
下図は(d)2011-2030 年と(e)1981-2000 年で、いくつのメンバーで RF95 > 1 となるかを示している。
図 3-2a, 3-2b は、 それぞれ 2011-2030 年と 1981-2000 年における RF95 の分布である。 2011-2030 年
においては、 全ての陸上で RF95 は1より大きい(図 3-2a)。 いくつかの領域(例えばアマゾン)では、 暑
い極端現象が6倍以上増える。 1981-2000 年では、 RF95 の大きさは 2011-2030 年より小さいが、 その
空間パターンはある程度似ている(図 3-2b)。 観測と比較すると、 モデルの RF95 は幾分控えめのようで
ある (図 3-2c)。 モデルの空間パターンは、 ユーラシア大陸上では観測とよく似ているが、 北アメリカで
は異なる。 北アメリカでの気温変動パターンは北太平洋での大気循環の変動に大きな影響を受ける。
しかし、 北太平洋での大気循環の温暖化による変化はモデル間のばらつきが大きく、 結果として北アメ
リカでの温暖化パターンに大きな不確実性をもたらしている[Yamaguchi and Noda、 2006]。
図 3-2d, 3-2e はいくつのアンサンブルメンバーで RF95 > 1 となるかを示している。 1981-2000 年でも、
いくつかの領域、 例えばメキシコ、 アマゾン、 サハラなどで、 全てのメンバーが RF95 > 1 で一致して
いる(図 3-2e)。 しかし他の領域では、 内部変動のために、 少なくとも一つのメンバーで極端現象の頻
図 3-3: 全 n アンサンブルメンバーで RF95 > 1
となるグリッドの全陸上に対する面積割合(F
(n; RF95>1); %)をアンサンブル数 n に対する
関数として示す. 赤と青の線は 2011-2030 年
と 1981-2000 年の F(n; RF95>1). 実線と破線
は, 10 メンバーから n メンバーを選ぶ全ての
組合せの平均と, 最大-最小幅.
度が減っている。 一方、 2011-2030 年では陸上のほとんどで、 「暑い夜」の頻度が増えることで全 10 メ
ンバーが一致している。 すなわち 2011-2030 年では、 内部変動は人間活動の影響を覆い隠すことが出
来ない (図 3-2d)。
将来予測に対する内部変動の影響の幅を見積もるのに、 アンサンブル数 10 では不十分かもしれない。
もしアンサンブル数が不十分なら、 シグナル・ノイズ比を過大評価しているかもしれない。 この問題に答
えるため、 全てのメンバーで RF95 > 1 となる領域の割合のアンサンブル数 n に対する感度を調べる(図
3-3)。 1981-2000 年では、 アンサンブル数の増加に従って、 F(n; RF95 > 1)は急速に減少する。 つま
り、 シグナルは内部変動に対して十分に大きくない。 一方、 2011-2030 年では、 F(n; RF95 > 1)は大
-4-
きく、 安定している。 これは、 内部変動がシグナルを覆い隠せない領域が広く、 アンサンブル数に
敏感でないことを示している。 アンサンブル数が大きくなるほど F(n; RF95 > 1)の減少率は小さくなるの
で、 10 以上のアンサンブル数でも 2011-2030 年の F(n; RF95 > 1)は急激に減少することはないと予測
できる。
季節平均気温の変化に伴う「暑い夜」の頻度の変化 RF95m は、 RF95 とよく似ている (図 3-4)。 つま
り、 「暑い夜」の変化は主に季節平均の変化によりもたらされる。 Barnett 他 [2006]は、 CO2 倍増実験
でも同様であることを示している。 ただし気温の頻度分布形の変化は、 極端現象の振幅の変化に関し
ては、 頻度の変化に対するよりも重要であるかもしれない [Hegerl 他、 2004; Clark 他、 2006]。
「暑い夜」の頻度の変化が主に季節平均気温の変化によるものなので、 コントロール実験を用いて擬
RF95 を見積もることができる。 90 サンプルの 20 年計算擬 RF95 の平均は、 10 アンサンブルメンバー平
均の RF95 と非常によく似ている (図省略)。 擬 RF95 を用いた場合、 サンプル数が多きいことから、 擬
RF95 が 1 より大きくなる確率を求めることが出来る (図 3-5)。 20 年計算で、 2011-2030 年に全 90 サン
プルで「暑い夜」の頻度が増えるグリッドは陸上の 83%になる (図 3-5a)。 また陸上のほとんどで、 頻度
が増える確率が 90%以上ある。 計算期間を 20 年から、 10 年、 5 年と短くすると、 10 年スケールの内
部変動の影響が大きくなり、 サンプル間の一致度は小さくなる (図 3-5b, 3-5c)。 5 年計算では、 陸上の
20%でしか全 360 サンプル の予測の符号は一致しない。 しかしながら、 「暑い夜」が 90%以上の確率
で増える領域は、 陸上の大多数の領域になる。
図 3-4: (a) 2011-2030 年と
(b) 1981-2000 年の 10 メン
バー平均 RF95m.
4. まとめ
本研究では、 「暑い夜」の頻度が、 2011-2030 年にどのよう
に変わるかを調べた。 陸上のほとんどの領域で、 全 10 アン
サンブルメンバーが、 「暑い夜」が増えることで一致する。 ま
たより大きなアンサンブル数の実験でも、 この結果はロバスト
であるだろうと示唆された。 頻度を計算する期間を 5 年に縮
めた場合でも、 ほとんどの領域で「暑い夜」が増える確率は
90%以上ある。 これらの結果から、 内部変量を考慮しても、
政策決定者は「暑い夜」が増える可能性を低く見積もるべきで
はないという事が示唆される。
本研究では、 気候感度や排出シナリオなどの不確実性を考
慮していないため、 気候変動予測の頑強性を過大評価して
いるかもしれない。 またモデルバイアスの影響も見積もらなく
てはならない。 これらの問題は、 マルチモデル・マルチシナ
リオ解析によって答える事が出来ると考えられるので、 これが
我々の次の課題になる。 将来起こりうる自然起源の外部強制
力の変動に関しても、 ここでは考慮していない。 例えば、
大規模な火山活動が起こった場合、 数年間は大気を冷却す
るので、 気温の極端現象変化のシグナル・ノイズ比を下げる
はずである。 将来の太陽活動の予測は難しく、 火山活動の
将来予測はほぼ不可能であるが、 なんらかの方法で起こりえ
る影響の大きさを見積もる事は有益であるかもしれない。
-5-
図 3-5: 何%の擬 RF95 のサンプルで擬
RF95 が 1 より大きくなるかを示す.
(a) 20 年計算の 90 サンプル, (b) 10
年計算の 180 サンプル, (c) 5 年計算
の 180 サンプル.
4.高解像度海洋大循環モデルによるハインドキャスト実験
1. はじめに
本研究課題において用いられている高分解能大気海洋結合モデルの海洋部分を使用し、観測に基
づく過去 50 年程度の海面境界条件を与え、20 世紀後半の海洋の物理的状態を再現するハインドキャス
ト実験を行った。この実験の主目的は高解像度海洋モデルのパフォーマンス検証である。ここでは、本研
究課題の海洋部分において特に着目してきた北太平洋および黒潮について、観測的に知られている十
年~数十年スケールの変動の再現性について述べる。
2. モデルと境界条件
用いた海洋大循環モデルは本研究課題における高分解能大気海洋結合モデルの海洋・海氷部分
(水平解像度約 20 km、 鉛直 48 層)であり、数値スキームやパラメータ等の設定はすべて結合実験と同
じである。海面境界条件は CORE (Coordinated Ocean Reference Experiment) に基づいている。CORE
では海面フラックスを計算するために必要な要素が 1958 年以降(2006 年末現在で 2004 年までのデータ
セットが存在し、順次追加される予定)について提供されているが、そのデータソースや時間間隔は要素
ごとに異なる。海上気温・比湿・気圧・風は NCEP/NCAR 再解析データ(Kalnay et al.、 1996)に基づいて
6 時間ごとのデータがすべての年に対して用意されている。放射は 1983 年以降については人工衛星デ
ータに基づいて 1 日ごとのデータセットが各年に対して与えられ、それ以前については日平均気候値が
与えられている。降水は Xie and Arkin (1996) と GPCP (Huffmane et al.、 1997) をブレンドした月別気
候値が、河川流出は Perry et al. (1996) に基づく年平均気候値が用意されている。これらのデータセット
から顕熱・潜熱(蒸発)・風応力といった海面フラックスを導くのに必要なバルク式も、データセットと整合
するものが同時に用意されている。CORE データセットに関する詳細は Large and Yeager (2004) に詳しく
述べられている。
本実験においては、PHC (Steele et al、 2001)の温度・塩分を初期状態とし、まず 1958 年の境界条件を
繰り返し与えるスピンアップ計算を 25 年行い、それに引き続いて年々変動する境界条件のもとでの実験
を 2001 年まで行った。また、塩分のドリフトを防ぐため、最上層(厚さ 2.5 m)の塩分を PHC 月別海面塩分
に 0.05 yr-1 で緩和している。
3. 結果
北太平洋では 1976/77 年の前後で海面水温分布や風系が顕著に異なっており、その変動は「気候レ
ジームシフト」などの呼び方でよく知られている。その特徴としては、海面水温については北太平洋中央
部から西部にかけての低温化とアメリカ大陸沿岸での高温化が見られ、気圧・風系についてはアリューシ
ャン低気圧の強化とそれに伴う偏西風の強化が見られる。観測データに基づく 150E-120W、 24N-56N
の領域における 50 m 深年平均水温の EOF 第 1 主成分の時系列(Deser et al.、 1999)と、それに対応す
るモデル結果を図 4-1 に示す。50 m 水温は混合層がこの深さまで発達する冬季の海面水温を反映して
いる。モデル結果では 1969-70 年の低下と 1989 年の上昇(それぞれ北太平洋中央部から西部にかけて
の海面水温低下・上昇に対応)の度合いが観測データに比べてやや大きいが、観測データに基づく時
系列をよく再現している。
図 4-2 にはレジームシフト前後の水温変化を示すものとして、50 m 深における水温の 1968-1976 年の
平均と 1977-1988 年の平均の間の差を、観測データ(Deser et al.、 1999)とモデル結果について示す。観
測では北太平洋中央部から西部にかけての低温化とアメリカ大陸沿岸の高温化というパターンが見られ
るが、モデルではこれに加え、低温化領域の中央部に東西に伸びる幅の狭い高温化領域が見られる。ま
た、この東西に伸びる高温化領域すぐ北側には強い低温化領域が見られる。これらの領域は黒潮続流
の流路付近に対応しており、黒潮続流の南下を表現しているものと考えられる。Deser et al. (1999) によ
る解析に
おいてはデータに対して 2~4 度の空間平滑化が施されており、このような構造を解像することはできな
い。
-6-
図 4-1:(左)Deser et al. (1999) による北太平洋(150E-120W, 24N-56N)の 50 m, 400 m
深それぞれにおける年平均水温の EOF 第 1 主成分の時系列。(右)対応するモデル結果。縦
軸は標準偏差によって規格化。
400 m 水温の変動に関しても、モデル結果は観測をよく再現している(図 4-1)。海面付近の水温とは
異なり、400 m においては水温の急激な変動が 1981/82 を境として生じている。この水温変化は主として
黒潮続流域に現れている(図 4-2)。400 m 深の水温は海面熱フラックス変化の影響を直接受けることは
ない。400 m 深の水温変化が海面水温の変化に比べて数年のタイムラグを持っていることから、Deser et
al. (1999) はこれが風系の変化に伴う北太平洋亜熱帯循環系のスピンアップの結果としての黒潮続流の
強化を反映しているものと結論付けている。モデル実験はその解釈と整合する結果を与えているが、そ
れに加えて 50 m 深と同様に黒潮続流の南下に起因すると見られる正・負偏差のペアが存在しており、観
図 4-2:(左)Deser et al. による 50 m, 400 m それぞれの深さにおける水温偏差。50 m
については 1968-1976 の年平均と 1977-1988 年の平均間の差、400 m については 1970-1980
年の平均と 1982-1990 年の平均の間の差。(右)対応するモデル結果。
-7-
測データに現れている 400 m 深の温度偏差の説明において黒潮続流の南下という要素も考慮すべきで
あることが示唆される。
黒潮に関しては、過去数十年にわたる流路・流量の直接観測データは存在しないが、潮位等のデータ
に基づいてそれらを間接的に推定することは可能である。モデル結果における黒潮について、台湾の東
側を通って東シナ海に入る流量を図 4-3 に示す。これに対応する量としては、周辺の潮位から経験式に
よって PN 線(沖永良部島北西の黒潮を横切る観測定線)の黒潮流量に換算したものが東京大学海洋研
究所 web page で閲覧可能である(http://cer.ori.u-tokyo.ac.jp/tides/)。両者の変動の位相は概ね一致し、
黒潮の経年変動に関してもモデルが妥当な結果を与えている。ただし、振幅を比較するとモデル結果の
方が顕著に大きい。これはモデルと観測の間で同一の量を比較していないこと(モデルにおいて PN 線の
黒潮流量を見積もることは、何をもって黒潮と定義するかの問題となり、単純ではない)にもよると思われ
るが、この点についてはさらに検討する必要がある
図 4-3: モデル結果における黒潮の台湾海峡通過流量の時系列(単位: Sv)。
4. まとめと今後の展望
黒潮や北太平洋中層の十年~数十年スケール変動は、風成循環系のスピンアップ・スピンダウンとい
った、風応力変動に対する海洋の力学的応答によって多くの部分が説明される。本研究課題の高解像
度海洋モデルによって再現されたそれらの様相は、観測的事実とよく整合している。気候レジームシフト
に代表される北太平洋表層~中層変動の観測的描像は Deser et al. (1999) などによって示されているが、
特に中層では時間・空間的に密な観測が存在しないため、数百 km より小さなスケールの構造を観測か
ら知ることはできない。一方、この海洋構造変化は黒潮や黒潮続流という幅が狭くて強い流れの変化を
伴い、その詳細は日本付近の局所的な気候変動において重要な意味を持つものと考えられる。高解像
度海洋モデルによるハインドキャスト実験には、観測的に知られる大局的構造の変化に加えて、黒潮続
流の移動に伴うと見られる細かい構造の変化も表現されており、気候レジームシフトなどの大規模気候変
動における局所的気候変動の様相を詳細に調べる目的に対してこうした実験結果を用いることが有用と
考えられる。潮位の観測データから推定される黒潮流量と本実験が再現したものは、その変動の極大・
極小のタイミングが概ね一致している。その意味では本研究課題で用いた高解像度海洋モデルは風応
力変動に対する黒潮の応答を現実的に再現することができると言える。これは上述の気候レジームシフト
における黒潮・黒潮続流変動を論ずる上で本モデル実験が信頼に足ることを示す検証材料であるが、同
時に、本研究課題の温暖化予測実験に基づいて Sakamoto et al. (2005) が示した温暖化時の黒潮変化
の妥当性を示す上でも重要なものでもある。
ただし、黒潮続流の変動と東シナ海での黒潮流量変動は 1 対 1 に対応するものではなく、黒潮変動の
再現性が高いことが必ずしもそのまま黒潮続流変動の再現性の高さを意味しないことには注意しなけれ
ばならない。その一方、黒潮続流の流路・流量変動については、人工衛星による海面高度観測が可能と
なった 1990 年代以降でなければ十分な検証ができない。モデルによるその十年スケール変動の再現性
検証については最新の観測データを用いたさらなる研究が必要である。
-8-
5.気候モデルを用いた 20 世紀気候再現実験に見られる中国での気候変化
1.はじめに
近年、20 世紀の後半に中国で観測された各種気候要素の長期データが解析され、顕著な経年変化
が相次いで見出されている(Kaiser、 2000; Liu et al.、 2004; Liang and Xia、 2005; Liu et al.、 2005;
Endo and Yasunari、 2006; Qian et al.、 2006 など)。長期変化が報告されている気候要素は、地表気温、
気温日較差、地表気圧、水蒸気圧、降水(量、頻度、強度)、可能蒸発量、地表日射量、雲量、晴天率な
ど多岐に渡っており、こうした長期変化の原因や個々の気候要素間の関連などに注目が集まっている。
中でも特に興味深いのは、中国のほぼ全土で顕著な地表日射量の減少傾向が観測されている一方、雲
量はやはりほぼ中国の全域で減少傾向になっている点である。雲量が減少すれば、それだけ地表日射
量は増加するのが自然に思えるのであるが、中国で観測された両者の長期変化傾向はそうした相関関
係にはなっていない。地表日射量の減少傾向を引き起こした要因としては、20 世紀後半における中国の
経済発展に伴った大気質の変化、とりわけ大気中のエアロゾル量の増加が挙げられており議論が進めら
れているが(Kaiser and Qian、 2002; Qian et al.、 2003; Rangwala et al.、 2006)、こうした大気質の変化
が雲量の減少も引き起こし得るのか、或いは雲量の減少には全く別の原因があるのかなど、20 世紀後半
に中国で観測された気候変化をより詳しく理解するために必要な研はまだ多いのが現状といえる。
さて、実際に観測された気候変化の要因を観測データそのものだけから推定し特定する事は一般に
非常に難しく、多くの場合、そうした観測データと気候モデルを用いた各種の感度実験結果などとを組み
合わせて気候変化の要因特定が行われている。こうした気候変化の要因特定に関する研究は、IPCC
(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の第 4 次報告書に向け
て、東京大学気候システム研究センター(CCSR)・国立環境研究所(NIES)・地球環境フロンティア研究
センター(FRCGC)の共同研究グループが実施した、全球気候モデルによる 20 世紀気候再現実験の結
果を用いて既に幾つか行われており、20 世紀中における地表気温の変化要因の特定などの成果を上げ
ている(Nozawa et al.、 2005; Nagashima et al.、 2006; Shiogama et al.、 2006)。本研究では、この 20 世
紀気候再現実験のデータを用いて、気候モデルで計算された中国域での気候変化を観測された気候変
化と比較し、また、気候強制の異なる幾つかの感度実験を同モデルで行い、それらの結果比較を通して
気候変化の要因を特定する事を目標としている。
2.モデルと実験設定
20 世紀気候再現実験は、CCSR/NIES/FRCGC 大気海洋結合モデル(MIROC3.2; K-1 developers、
2003)の中解像度版(大気 T42L20、 海洋 0.5~1.4°×1.4°L44)を用い、1850 年から 2000 年までの
151 年に関して行った。実験は、現状で考えうる全ての気候強制要因の時間変化を与えた”FULL”実験
のほか、幾つかの気候強制要因を固定した複数の感度実験もあわせて行った。本稿では、表 5-1 に示し
たように設定の異なる 5 実験間の比較を主に行う。各実験とも異なる初期値から始める 4 メンバーのアン
サンブル実験である。
表 5-1:20 世紀再現実験及びその感度実験の設定
実験名
FULL
NTRL
ANTH
ARSL
GHGS
自然起源
(太陽・火山)
○
○
×
×
×
人為起源
GHG
○
×
○
×
○
SO2
○
×
○
○
×
BC / OC
○
×
○
○
×
○は 1850 年-2000 年における時間変化を考慮している事を示す。×の場合は 1850 年相当の固定値を使用。
3.結果
先ずは、観測された中国域での日射量及び雲量の変化を、気候モデルがどの程度再現できたのかを
確認する。Qian et al. (2006) では、1955 年から 2000 年において地上観測サイトで取得されたデータの
解析を行い、地域的なばらつきはあるものの、中国のほぼ全土(データの無いチベット高原西部を除く)
で日射量、雲量ともに顕著な減少傾向が見られると報告されており、全ての観測サイトにおける年平均値
-9-
を平均した日射量と雲量の負トレンドの値は、それぞれ-3.1W/m2/10yr、-0.88%/10yr の大きさを持つ。図
5-1 に FULL 実験で計算された、同期間における中国全域で平均した地表日射量と雲量の年平均値の
時系列を示す。地表日射量には観測と同様な減少傾向が見られるが、雲量には明確な長期トレンドは見
られない事が分かる。地表日射量のトレンド値も約-1.0W/m2/10yr と観測された負トレンド値を大きく下回
っている。
地表日射量 [W/m2]
雲量[%]
図 5-1:FULL 実験で計算された地表日射量(左)及び雲量(右)の時系列.各点は中国全域で平均した年
平均値の全期間平均値からの偏差.
次にトレンドの空間分布を比較する。Qian et al. (2006)の図 5-1 によれば、地表日射量は中国のほぼ全
域で減少トレンドを示すが、その減少率は東北部で小さくなる傾向がある。一方雲量もほぼ中国全域で
減少しているが、東シナ海や南シナ海に面した福建省・広東省の一部では雲量の増加も認められる。図
5-2 に FULL 実験で計算された、1955 年から 2000 年における中国での地表日射量、雲量のトレンド分布
を示す。FULL 実験における日射量は、減少率は観測の半分程度ではあるものの、観測と同様中国のほ
ぼ全土で減少が見られる。一方、観測で見られた中国東北部における地表日射量減少傾向の弱化はモ
デルの計算結果には見られず、寧ろより顕著な地表日射量の減少傾向が計算された。雲量は南部で観
測と同様に減少しているが、北部や西部では逆に増加傾向を示しており、これは中国東北部において地
表日射量の減少傾向が過大評価されている事と整合的と言える。後に示すように、こうした結果は ANTH
実験でも共通しており、人為起源気候強制の変化(主に温室効果気体の増加と人為起源エアロゾルの
増加)による影響と考えられるが、人為起源エアロゾルの増加だけを考慮した ARSL 実験では、北部・中
部における雲量の増加傾向が小さくて統計的に有意ではなく、地表日射量の減少も FULL 実験に比べ
て小さい。一方、温室効果気体の増加のみを考慮した GHGS 実験では、北部・西部における雲量の増加
は見られず、地表日射量にも顕著な長期変化は見られない。FULL 実験や ANTH 実験など、温室効果
気体の増加と人為起源エアロゾルの増加が揃ったときには、中国北部・西部で鉛直積算した雲水量
(LWP)の増加が見られるが(図略)、これは雲量の増加と矛盾しない。これは、温暖化に伴う大気中水蒸
気量の増加とエアロゾルの増加による第二種の間接効果による影響と思われる。ところが、実際の大気中
では温室効果気体と人為起源エアロゾルの両者が増加していながら中国の北部・西部で雲量の増加は
見られず、逆に減少傾向を示しており、その大きさはむしろ南部よりも大きい(Kaiser 2000; Qian et al.、
2006)。こうした傾向は、我々のモデルだけでなく、IPCC 第 4 次報告書に参加した世界各機関のモデル
でも的確に表現する事が出来ていないのが現状といえる(図略)。
-10-
地表日射量トレンド[W/m2/10 年]
雲量トレンド[%/10 年]
図 5-2:FULL 実験で計算された中国における 1955 年から 2000 年にかけての地表日射量(左)と雲量
(右)年平均値の線形トレンド。 5%の有意水準で有意なトレンドには外円が付されている
FULL 実験では、中国の北部・西部において観測データに見られるような、地表日射量と雲量の同時
減少傾向は再現できなかった。一方、南部では地表日射と雲量に観測と同様の減少傾向が見られる。他
の感度実験に関しても地表日射量と雲量のトレンド分布を見たのが図 5-3 である。自然起源の気候強制
のみを考慮した NTRL 実験では、地表日射量のトレンドと雲量のトレンドがほぼ全ての領域で逆相関(つ
まり雲量の増える(減る)所では、地表日射量は減少(増加)している)になっており、観測された地表日射
量や雲量の変化を全く再現出来ていない。これに対して人為起源の気候強制のみを考慮した ANTH 実
験では、FULL 実験同様中国の南部において、地表日射量と雲量の同時減少傾向が再現された。
ANTH 実験を更に気候要素毎に分けて考えたのが図 5-4 に示した ARSL 実験と GHGS 実験である。
ANTH 実験で見られた中国南部における地表日射量の負トレンドは ARSL 実験には見られるものの、
GHGS 実験では全く見られない。これより、南部における地表日射量の減少傾向には人為起源エアロゾ
ル増加の影響が最も大きく反映していることが示唆される。一方、中国南部における雲量の減少傾向は
ARSL 実験のみならず GHGS 実験においても領域は若干異なるものの再現されており、人為起源エアロ
ゾルの増加と温室効果気体の増加の双方の影響によって雲量の減少が生じているものと考えられるが、
そのメカニズムの詳細に関しては今後の検討課題となっている。
4.まとめ
気候モデルを用いた 20 世紀気候再現実験に見られる 20 世紀後半の中国域での気候変化を観測と
比較したところ、南部では日射量と雲量の減少傾向を再現したものの、北部・西部では雲量の減少が再
現できなかった。また、南部における日射量の減少には、人為起源エアロゾルの増加が主な要因と考え
られるが、雲量の増加に関しては温室効果気体の増加と人為起源エアロゾルの増加の双方が影響を及
ぼしているものと示唆された。
-11-
地表日射量トレンド[W/m2/10 年]
FULL
ANTH
NTRL
FULL
雲量トレンド[%/10 年]
ANTH
NTRL
図 5-3:図 5-1 モデルで計算された中国における 1955 年から 2000 年にかけての地表日射量(上段)
と雲量(下段)年平均値の線形トレンド。それぞれ左側から FULL 実験、ANTH 実験、NTRL 実験。緑の
ハッチは 5%の有意水準で有意なトレンドを示す。
地表日射量トレンド[W/m2/10 年]
ARSL
GHGS
雲量トレンド[%/10 年]
ARSL
GHGS
図 5-4:図 5-3 と同様。ただし、左から ARSL 実験、GHGS 実験。
-12-
6.2つのバージョンの大気海洋結合モデルにおける二酸化炭素漸増実験における気候感度の差
異について
気候モデルを用いた研究によると、将来温室効果ガス濃度が上昇すれば温暖化が進むと予測される.
しかしその予測結果はモデルによって大きくばらつく [Intergovernmental Panel on Climate Change 2001].
将来気候予測の不確実性を低減させるためには、モデルによって予測結果が異なる原因を明らかにす
ることが重要である.
CCSR/NIES/FRCGC によって開発された AOGCM MIROC3.2 には、解像度が異なる 2 つのバージョン、
高解像度版(大気の水平解像度~ 100 km)および中解像度版( ~ 500 km)がある [K-1 model
developers 2004].高解像度版および中解像度版は、CO2 倍増平衡気候感度(ECS)は同程度である.し
かし CO2 漸増に対する過渡気候応答(TCR)は後者に比べ前者のほうが大きい.特に高解像度版は、
IPCC 第四次報告書(AR4)のために提出されたすべての研究機関のモデルの中で最も TCR が大き
い.
本研究では、ECR に差がない 2 つのバージョンで TCR に違いをもたらすメカニズムについて、
特に気候フィードバック過程に着目して調べる.気候フィードバックの解析手法としては我々が
最近開発した簡便手法 [Yokohata et al. 2005a,b] を用いる.この手法では従来の cloud forcing
method [e.g.,Cess et al. 1990] における問題(地表による短波反射の寄与を含むため雲アル
ベドフィードバックが過小評価される)が解消されている.このため雲アルベド-氷アルベドフ
ィードバックの相対的な役割を従来の方法よりも精度良く評価することが可能である.
高解像度版と中解像度版の違いは、解像度といくつかのチューニングパラメータである.チューニング
はそれぞれのバージョンにおいて現在気候の再現性を良くするために行ったものである.大気-混合層
海洋結合全球循環モデル(ASGCM)を用いた CO2 倍増平衡応答実験(2XCO2)を行うことによって ECS
を求め大気海洋結合全球大循環モデル(AOGCM)を用いた 1% CO2 漸増実験(1%CO2)を行った.
図 6-1: 二酸化炭素 1%漸増実験における全
球平均地表気温偏差の時系列.高解像度版
(赤)および中解像度版(青、太線が平均値、
細線が 3 つのアンサンブル)の結果.0 年か
ら 20 年までの平均値を基準に取り、12 ヶ月
の移動平均値で表現.
2XCO2 では、高・解像度版の全球平均地表
気温変化(ΔT)は同程度である(それぞれ 4.3 K および 4.0 K).しかしながら 1%CO2 におけるΔT の
バージョン間の違いは 2XCO2 から予想される値よりも大きい(図 6-1).1%CO2 の CO2 倍増時における
ΔT は高解像度版で 2.4 K、中解像度版 1.9 K である.高・中解像度版のΔT の差と両者の平均値の比
は、1%CO2 で 0.23(0.5/1.65)であるのに対し、2XCO2 では 0.07(0.3/4.15)である.
Winton [2006] によると、IPCC AR4 のために提出された 12 モデルにおける 1%CO2 における ΔT
の 80 年間積分平均値は 0.98 K であり、そのモデル間標準偏差は 0.20 K である.中解像度版は ΔT
が 1.05 K であるが、高解像度版は 1.42 K であり他機関のモデルに比べて特に ΔT が大きいことが分
かる.
Yokohata et al. [2005a, b] の方法を用いた気候フィードバック解析の結果を図 6-2 に示す.ここでは
CO2 増加実験での大気上端(TOA)における短波(SW)および長波(LW)放射の変化を地表(SFC)、晴
天大気(CLR)、雲(CLD)による寄与に分離し ΔT で割ることにより“応答パラメータ”γ を計算する.γ
の計算の際には放射強制の寄与は除かれる.これにより、主要なフィードバックである氷アルベドフィード
バック(SFC-SW)、水蒸気および温度減率フィードバック(CLR-LW)、雲フィードバック(CLD-SW および
-13-
CLD-LW)を評価する.Stefan-Boltzmann damping は SFC-LW によって評価する.また気候システムの
熱容量変化は TOA での正味下向き放射フラックス(ΔFTOA)の変化によって評価できる.大気および陸
面の熱容量変化は海洋のそれに比べて小さいため(モデル結果を用いて確認した)、海洋熱吸収偏差
(OHU)をΔFTOA/ΔT によって評価する.これは Gregory and Mitchell [1997] において ”ocean heat
uptake efficiency ”として定義されたものと同じである.図 6-2 に示すように、2XCO2 では高・中解像度版
で気候フィードバックに差がない.一方 1%CO2 では氷アルベドフィードバック(SFC-SW)および海洋熱
吸収偏差(OHU)で両者に差が生じる.
図 6-2: 高解像度版(赤)および中解像度版(青)の気候フィードバック解析.それぞれ a) 2XCO2 お
よび b) 1%CO2 実験の結果を示す.詳細は本文参照.
1%CO2 における SFC-SW の両バージョン間の差は、ほとんど南半球高緯度 50-70 度の南大洋で
生じる(詳細は Yokohata et al. 2007 参照).南大洋での IAF は海氷の変化によって決まるため、
1%CO2 の南大洋における海氷について調べた.1%CO2 における海氷密接度の変化(Δα)および初
期状態 (α0)を図 6-3 に示す.氷アルベドフィードバックは日射の多い時期の氷分布によって決まると
考えられるので、ここでは夏の結果を示した.従来の研究で指摘されているように、Δα は α0 に依存
する [e.g.,Bitz and Roe 2004].高解像度版は中解像度版よりα0 が大きかったために Δα が大きく、
これにより SFC-SW が大きかったと考えられる.
図 6-3 に示すように、α0 に関しては高解像度版の方が観測 [Rayner et al. 2003] によく一致している.
両バージョンの最大の違いは Weddel 海における海氷分布である.中解像度版では非現実的な深い鉛
直対流が起こっており(図 6-5、 後述)、これにより深層から熱が運ばれたことで海氷が融けてしまったの
かもしれない.ここで α0 がバージョン間で異なる理由は必ずしも解像度に依存するとはいえないことに
注意しよう.現在気候の再現性を総合的に良くするために行ったモデルチューニングの効果も大きいだ
ろう.ここで氷アルベドフィードバックを決める上で重要な要素である α0 がより現実的であることから、
必ずしも高解像度版の SFC-SW が中解像度版より非現実的であるとは言えないだろう.
-14-
a)
b)
d)
e)
c)
図 6-3: 二酸化炭素 1%漸増実験における南極域の夏季(12 月‐2 月)海氷密接度.a), b) 高、中解
像度版の初期状態(0 年から 20 年の平均値)
、c) 観測値(Rayner et al. 2003、 1981 年-2000 年の
平均値)、d)、e) 高、中解像度版の温暖化時の偏差(60 年から 80 年の平均値、初期状態からの差).
一方 2XCO2 では、海氷密接度変化は高・中解像度版で違いがない(図 6-4).高・中解像度版ともに
初期海氷密接度が(1%CO2 の場合に比べて)大きく、海氷密接度変化も大きい.これは 2XCO2 では
ASGCM を用いており、海洋の熱輸送を表現するために人工的な熱フラックスを与えていることと関係し
ていると考えられる.このように ASGCM は海洋の役割を単純化しているために、ASGCM による 2XCO2
の結果は正しい SFC-SW を与えないかもしれない.
-15-
図 6-4: 図 6-3 に同じ.ただし二酸化炭素倍増平衡実験(2XCO2)の結果.a), b) はコントロール実
験の結果、c) は 図 6-3c) と同じ図,d), e) は 2XCO2 の結果.
1%CO2 では中解像度版に比べて高解像度版の OHU は小さい(図 6-2).従来の研究では大西洋の熱
塩循環(THC)と OHU に関係があることが推測されている [e.g.,Knutti and Stocker 2000、Raper et al.
2002].Knutti and Stoker [2000] の推測では、コントロール実験の THC が大きいモデルほど大気-海洋
表層-海洋深層の結合が強く、温暖化によって生じた表層の過剰な熱をより効率的に海洋深層に運ぶ
ことができるため、OHU が大きくなると考えた.一方 Raper et al. [2002] の推測では、温暖化時に THC
が大きく減少するモデルほど海洋深層からの熱損失がより小さくなるため、OHU がより大きくなると考え
た.これらの推測は高・中解像度版の結果と整合的である.すなわち中解像度版は高解像度版よりコント
ロールの THC が大きく、THC 変化も大きく、OHU が大きい(詳細は Yokohata et al. 2007 参照).
本研究で THC と OHU に関する従来の考えを発展させ海洋混合過程と OHU の関係を全球的に調べ
た.OHU によって生じる海洋温度変化を 図 6-5a に、冬季における最大海洋混合層深度(MLD)を 図
6-5b に示す.海洋温度変化は、OHU の効率を調べるために全球平均地表気温変化で規格化してある.
またここで冬季最大混合層深度を示すのは、表層の熱は MLD の深い冬季に特に効率的に運ばれると
考えられる [Marshall et al. 1993] ためである.概して、高・中解像度版の両者とも MLD の大きい場所で
OHU が大きい.ピークの場所にはわずかな違いがあるものの、北半球のグリーンランド南太平洋西部、
南半球の 50-70 度付近などでこの傾向が見られる.また MLD および OHU の大きい上記の領域では、
高・中解像度版の違いも大きい.以上の結果は、高・中解像度版で海洋混合の強度が異なるために
MLD が異なり、その結果として OHU に違いが生じていることを示唆する.
図 6-5 に示すように、高・中解像度版の OHU に差が生じる緯度帯である北半球中緯度・南半球中高
緯度に関して言えば、高解像度版の方が中解像度版より観測 [Steele et al. 2001] に近い.高・中解像
度版の MLD の違いは、海氷分布の場合と同じように必ずしも解像度のみによるものでないことに注意し
よう.しかし MLD がより観測に近く、かつ MLD と OHU に密接な関係が見られることは、再び高解像
度版の OHU が中解像度版に比べて非現実的であるとは必ずしも言えないことを示唆する.
-16-
図 6-5: a)-c) 高・中解像度版の鉛直積算した海水温度偏差の全球分布および緯度分布(偏差の計算
方法は図 6-3d に同じ.計算の際には偏差データに対応するコントロール実験の線形トレンドを除い
た).d)-f) 月平均海洋混合層深度(MLD、地表面を基準とした場合のポテンシャル密度変化が 0.1 kg
m-3 以上になる深さと定義)年間最大値の全球分布および緯度分布.c)および f)では線の色は 図 6-1
に同じ.観測結果(1981 年から 2000 年の平均値、Rayner et al. 2003)を黒線で表す. 各緯度帯に
おける面積の重みを考慮した図.
以上の結果をまとめると、AOGCM による 1%CO2 で高解像度版の TCR が中解像度版より高い原因
は、前者は後者に比べて SFC-SW が大きく、OHU が小さいことであった.SFC-SW の違いは初期海氷分
布の違いによって、また OHU の違いは海洋表層の混合状態の違いによって生じた可能性が高い.一
方観測との比較によると、初期海氷分布および海洋表層の混合状態ともに、概して中解像度版より高解
像度版の方が現実的であった.両バージョンの TCR の違いを決める重要な要素に関して高解像度版
のほうがより現実的であるということは、他の様々なモデルに比べて大きな値を持つ高解像度版の TCR
が、他のモデルと同程度の値を持つ中解像度版の TCR に比べて非現実的であるとは、必ずしも言えな
いことを示唆する.
今後は本研究で行った解析を他のモデルの結果にも適用し、今回着目した以外のフィードバック過程
についても比較を行うことが重要である.主要な気候フィードバックに関するモデル間の違いを明らかに
し、 観測によってそれらの妥当性を検討することができれば、温暖化予測の不確実性に関する理解がさ
らに進むだろう.
-17-
7.MIROC 大気海洋結合モデルによる hindcast 実験
1. はじめに
地球温暖化実験に使用された大気・海洋・陸面結合モデル (MIROC) を、年々から十年スケールの
短期的な気候変動の再現性及び予測可能性の研究に使用できるようにすることを目的に、予備的な
hindcast 実験を行なう。
2.hindcast 実験の概要
使用したモデルは、MIROC の中解像度版で、大気モデルは T42L20、海洋モデルは約 1 度×1 度
の 44 層である。hindcast 実験では、結合モデルを積分しながら海洋側のみをデータ同化し、同化結果
から初期値を抽出して、同結合モデルによる 1 年先の予測を行なう。実際の観測データと比較すると結
合モデルの海水温の場には実質的に大きなバイアスが存在しており、その変動幅も観測に比べて小さく
なっているが、モデルの純粋な性能を把握するために、これらのモデルエラーに適応するように入力とし
ての観測データを調整したりフラックスコレクションしたりすることをしない。温暖化仕様の結合モデルのた
め二酸化炭素濃度やエアゾルが時間変化するようになっているが、本実験ではそれらを 2000 年時のも
のに固定し、変化しないようにした。
実験は 1970 年から 2002 年までを対象とし、2 種類のデータ同化実験と、対応する予測実験とで構成
した。2 種類のデータ同化実験は、海面の水温のみを同化する実験 (SST 同化) と海洋内部の水温なら
びに塩分を同化する実験 (表層 TS 同化) である。同化に使用する観測データは、海面水温の客観解
析値 (HadISST) と表層水温・塩分の客観解析値 (Ishii et al. 2006) の、既に客観解析された格子点デ
ータである。同化手法としては最も単純なナッジングを採用した。緩和時間は、SST 同化の場合は 30 日、
表層 TS 同化では、使用した表層水温データベースには解析誤差情報が含まれているので、この誤差に
比例させて緩和時間を 30 日から 90 日まで変化させるようにした。
Ishii et al. (2006) の海面水温は HadISST ではなく、COBE-SST (Ishii et al. 2005) が代入されている。
両者の SST 解析値の間には相応の違いがあるが、hindcast 実験の SST の結果にはそれ以上の顕著な
差となっているので、以下、SST の客観解析値の差は問題にならないと考える。
結合モデルには海氷モデルが導入されている。データ同化の際には、海氷の密接度などの物理量を
同化するのではなく、海氷が生成されたり消滅したりするための条件を満たすように、すなわち海氷環境
としての水温値を変化させるように、同化スキームを構成した。しかしながら、夏半球側の海氷がほとんど
消滅してしまう結果となり、海氷の再現をするには、手法を根本的に見直す必要があるという結果となっ
た。とりわけ、夏季の海氷縁では、氷が存在できる格子でも水温は数℃に達することがあり、同化に際し
て、格子内一様の水温値と取り扱うことの問題が大きいと考えている。
予報実験では、1981 年 1 月から 2000 年 10 月まで、3 ヶ月おきの初期値を用いて、1 年予報を行なう。
同化実験で、各月の月初めの 1 日の初期値と、そこから過去に遡って 3 日おきの初期値を 8 つ取り
出し、LAF (Lagged Average Forecast ) 法によるアンサンブル予報を構成する。上に述べたとおり、予測
期間中はフラックス調整を採用しなかった。予測結果を吟味する際には、各同化実験の気候値からの偏
差を使用した。
-18-
3.データ同化結果
先ず、赤道域のエルニーニョおよび南方振
動 (ENSO) の再現性を確認する。Nino-3 の
海面水温偏差を図 7-1 の上段に、南方振動イ
ンデックス (SOI) を同図下段に示したとおり、
SST 同化に比べて表層 TS 同化の結果が良
いのが一瞥して分かる。SST 同化の場合には、
振幅が小さく、位相の遅れが顕著であるのに
対 し て 、 表 層 TS 同 化 の 場 合 に は 、 観 測
(HadISST) された変動幅を概ね再現している。
図の左上に各実験での Nino-3 の海面水温
偏差の一標準偏差を比較しているが、SST 同
化の場合には観測データを与えない結合モ
デル積分 (CTRL) と同程度である。
SOI についても同様の傾向が窺える。大
気のデータを同化していないために、観測デ
ータの変動に匹敵する変動を表現することは
できないが、同位相である。標準偏差は、観
測の SST を与えて大気モデルのみを積分し
た (AMIP) 場合が 一番大きな標準偏差とな
っている。
図 7-1: Nino-3 の海面水温偏差 (上段) と南方振動
データを入れていない大気側の応答を、
インデックス (下段)。図中、各実験出力によるイン
ENSO を対象として検証してみる。Nino-3 の
デックスの一標準偏差の大きさを縦棒の長さで比較
SST 偏差 と外向き赤外放射 (OLR) の相関
している。
の地理的分布を、図 7-2 に示した。エルニー
ニョ (ラニーニャ) が発生しているとき、太平
洋の中部赤道域から東部にかけて降水量が平年より多く (少なく) なり、その周辺海域では降水が減る
(増える)、という、よく知られた事実を示す図である。おおまかなパターンとしてはどの図も類似の相関関
係を示しているが、表層 TS 同化 (右下) では観測 (左上) に見られる強いコントラストを表現し、全球の
広範囲にわたって良い対応を示している。一方、SST 同化の場合は、CTRL を若干改善するのみであ
る。
図 7-2: Nino-3 SST 偏差 (℃) と OLR の相関係数 (%)の地理的分布
-19-
4.アンサンブル予測結果
1981 年から 2000 年まで 3 月おきに
行なった一年予測 80 例のアンサンブ
ル平均に対する相関スキル (%) と根
二乗平均誤差 (RMSE;℃)スキルを図
7-3 に示した。比較に使用した観測デ
ータは HadISST である。予測時間と
初期値の季節の関数で予報のバイアス
を計算し、バイアスを取り除いたスキル
を実線で、バイアスを修正しない予測
結果についてのスキルを点線で示して
いる。同化結果の善し悪しに呼応して、
表層 TS 同化の予測結果のスキル (赤)
図 7-3: Nino-3 SST 予測スキル (詳細は本文参照)
は SST 同化の予測 (青) に比べて圧
倒的に高く、8 ヶ月先まで 60%以上の
相関、0.75℃以下の RMSE となっている。黒実線は持続予報に対するスキルである。赤の点線に見ら
れるように、表層 TS 同化に対する予測スキルは、9 ヶ月以降、急激に低下する。これは結合モデルの、太
平洋赤道域東部の顕著な低水温バイアスに起因しており、このバイアスは 7 月から 11 月にかけて季節的
に大きくなる。
大気要素の予測結果の一例として海面気圧 (SLP) を見る(図 7-4)。左列が SST 同化のもの、右列が
表層 TS 同化のものである。まず、予測結果が同化結果にどれだけ対応 (同化と予測の一貫性)している
かを見るために、同化結果と予測結果の対応を調べる。図示したのは予測 1、3、6 ヶ月目の相関係数の
分布である。1 ヶ月目の相関は全域的に高いが、後の 2 ヶ月の間に急激な相関の低下が確認される。3
ヶ月と 6 ヶ月の間の変化は小さい。このような傾向は他の要素についても同様で、気象庁の現業モデル
にも共通していた傾向である(石井 1997)。現業モデルのように、大気と海洋を別々に初期化して結合、予
測するシステムでは、予測開始 2 ヶ月目以降、中高緯度を中心にバイアスの成長が見られたが、現行モ
デルでは類似のものは認められなかった (図略)。解像度を含めてモデルの違いは大きいので比較には
ならないが、予測開始後の気候ドリフトが小さいことは結合モデル同化および予測の利点として注目して
いる。
図 7-4 では、SST 同化の予測よりも表層 TS 同化の予測の方に高相関域がやや広く現れている。一方、
予測された SST に対しては、SST 同化の方が、予測結果と同化結果との対応が良かった (図略)。この
ような予測と同化の一貫性はシステムに望まれる特性ではあるが、今回の例に限っては、SST 同化の観
測データへの拘束が弱かったために、予測された場はモデル気候状態に非常に近いところで変動して
いたと考えている。では、何故大気の方は逆の対応になっているのか?データ同化において、海面での
人為的な熱の出し入れが、SST 同化の場合の方が表層 TS 同化の場合より 2 倍以上大きかったという事
実が確認された。海面水温の修正するために与えた熱は、同時に大気側への熱供給にもなりうる。これ
が、大気モデルへのノイズとなる可能性は否定できず、結果として大気のエラーを大きくしたことの原因と
考えている。
-20-
図 7-4: 海面気圧についての予測スキル (上段:1 ヶ月予測、中段:3 ヶ月予測、下段:6 ヶ月予測)。
SST 同化 (右) と表層 TS 同化 (左) のそれぞれについて示した。
5.まとめ
表層 TS 同化の季節予報の再現や予測精度が良いことは、過去の多くの研究で指摘されてきたとおり
である (Chen et al. 1995; Rosati et al.1997 等)。海面だけを観測に近づけた場合では、海洋内部の状態
の再現は極めて貧相である。とりわけ太平洋赤道域での東進する Kelvin 波、西進する Rossby 波の現
実的再現が無ければ、一連の ENSO の周期的変動に伴なう熱の東西、南北の再配置が現実的に表現
されているとは言い難い。今回の結果は、従来の研究を支持する。しかしながら、実験設定としては SST
同化の ENSO の再現性を、ある程度まで表層 TS 同化のものに近づけてから、予測実験を行なうべきで
あったと反省している。ナッジングの緩和係数を少し大きくしたり、海上風を再解析の結果に同化する
(Rosati et al. 1997) などの工夫が必要であった。
本実験を通して MIROC モデルの ENSO の表現に多くの問題があることが再確認された。紙幅の都
合、それらを逐一紹介しないが、大気モデルならびに海洋モデルの低緯度における季節変化の再現性
を高めるためのモデル開発が必要である。とりわけ、ENSO に関連した降水分布、風の循環、海洋密度
躍層の変動に焦点を当てた改良が必要である。
6. おわりに
観測に近づければ近づける程、予測のドリフトが大きくなり、結果として予測スキルの低下をもたらす。
従来の同化・予測システムの多くは、多少なりとも、このような事情を抱えていると考えられる。このような状
況を打開するために、不断のモデル開発は不可欠であると考える。データ同化技術のみで、全てを解決
できるものではない。データ同化の結果がモデル開発に対して、示唆的な情報を多く提供できるものが
望ましい。今後ひとつのアプローチとしてアンサンブル Kalman フィルターを採用し、モデルのエラーを確
率的に表現し同化と予測プロダクトの信頼性の定量的評価が可能となるシステムの構築を計画している。
-21-
8. 共生課題 1-2:大気海洋結合モデルの高解像度化
1
丸山 康樹(電力中央研究所 環境科学研究所)
8.1 はじめに
(1) 研究体制
電中研グループ(九大、NCAR、ロスアラモス国立研究所)は、
「共生プロジェクト」の目標で
ある「日本モデルミッション」に貢献するため、東京大学気候システム研究センター(CCSR)
の研究グループ(国立環境研、地球環境フロンティア研究センター)と協力して研究を実施した。
平成 18 年度は、
「共生プロジェクト」の最終年度であり、大気海洋結合モデルの高度化に引き続
き取組むとともに、後述の温暖化問題を巡る世界の動向を踏まえ、優先的に研究を実施した。
(2) 温暖化問題とエネルギー戦略
・COP12 および COP/MOP2(ナイロビ、2006 年 11 月)
京都議定書の第1約束期間(2008~2012)以降の長期目標の議論は、エネルギー分野にとっ
て重大な関心事である。しかし、排出権取引の継続性を重視し、2013 年以降も数値目標を主張
する EU、新たな規制には絶対反対の途上国、数値目標の議論には最初から参加しない米国な
ど、各国の利害が対立し、長期目標の議論は不透明なままである。
・CO2 回収・貯留(CCS)とロンドン条約(ロンドン、2006 年 11 月)
温暖化防止のため、石炭火力等から CO2 を回収し、海底下に貯留する CCS に関しては、海
洋投棄に関するロンドン条約が改定され、実施可能になった。問題は、CCS 導入に関わるコス
ト上昇分の負担問題、漏洩に関する長期的責任の所在などで、これらは依然不透明である。
8.2 研究計画・成果の概要
計画通り、H18 年度の研究を行なった。成果(H18 年度)の概要は以下の通り。
① 気候系へ危険な人為的干渉の限界(閾値)を明らかにするため、世界経済が停滞し途上国の
化石燃料消費が増加する SRES A2 シナリオ(高排出)、その 2100 年時点の濃度で安定化(CO2
濃度=830ppm、等価 CO2 濃度(メタンなどを含む)=1235ppm)した場合の予測結果を解析
した。これほどの高濃度レベルであっても、北大西洋の熱塩循環(深層循環ともいう)は停
止せず、温暖化が生じ、寒冷化は見られなかった。H17 年度の結果と合わせると、3 種の IPCC
シナリオ(高排出 A2、中排出 A1B、低排出 B1)とも熱塩循環は停止しないことになる。
② さ ら に 、 エ ネ ル ギ ー シ ナ リ オ 分 析 等 で 引 用 度 が 高 い 熱 塩 循 環 停 止 仮 説 (Stocker and
Schmitner、1997)を検証するため、CO2 濃度の年増加率(0.25%,0.5%,1%,2%,4%)、濃度安
定化レベル(現状濃度 355ppm の 2 倍、4 倍、8 倍)を変えた長期計算(安定化後 300 年)
を行なった。いずれの場合も熱塩循環は減少するものの停止には到らず、Simple model を用
いた Stoker 仮説とは異なる結果となった。しかし、過去 40 万年の氷期・間氷期サイクルに
見られる急激な気温変化と熱塩循環の関係の解明は今後に残された課題である。一方、A2 シ
ナリオでは、北極海の海氷は濃度安定化後も減少し続けること、グリーランド周辺気温の上
昇は 21 世紀末で 5℃を超え、既往のグリーンランド氷床融解の閾値(上昇量=5℃~6℃)を
超えること等が予想された。
③ 太陽活動と温暖化の関係を検討するため、高解像度大気モデルを用いた数値実験を行い、大
要活動の 11 年周期変動は、平均的な気候にはほとんど影響しないが、北半球中・高緯度の冬
から春にかけて、季節進行や低気圧活動の変化に影響する可能性が示された。
④ IPCC ランに用いた海洋モデル(空間解像度 1 度)では、千島列島が再現できず、北海道周辺
の気候変化は不自然な結果になる。このため、地域スケールの気候変化の精度向上を目指し、
空間解像度 0.1 度の海氷モデルを新たに開発し、同じ解像度の海洋モデルに結合した。その
結果、黒潮流路、オホーツク海の海氷の北海道への接岸時期等の季節変化がより現実的に改
善された。さらに、これに中解像度大気モデルを結合し、モデルの能力評価を継続中である。
⑤ 日本海への温暖化影響の検討の一環として、過去(20 世紀半ばまで)の日本海の循環の再現
を行い、底層水の形成に関わる鉛直対流は地中海型の外洋対流ではなく、ウラジオストク沿
岸域の海氷生成に関わる鉛直対流であることがわかった。また、黒潮の数分の1の流量を持
つ巨大な海流である日本海の深層海流を現実的に再現するのに成功した(九州大学)。
なお、研究成果(論文、講演等)の概要については、本資料の最後に添付した。
-22-
8.3. 平成 18 年度の研究成果
8.3.1 途上国の石炭利用増加シナリオ A2 とその影響評価
(1) 研究のねらい
平成 16 年度では、SRES A1B シナリオと SRES B1 シナリオに基づいて、大気海洋結合モデル
CCSM3 を用いた温暖化予測計算を実施した。この結果から、A1B シナリオの濃度レベルに温室
効果ガス濃度を安定化した場合には、濃度安定化後においても海氷の漸減などの温暖化影響が継
続することが分かり、気候系に対して危険な人為的干渉を引き起こさないレベルに温室効果ガス
濃度を安定化するという気候変動枠組条約の究極目標に合致しない可能性があると指摘した(Y.
Yoshida et al.;2005)。
しかしながら、
「危険な人為的干渉」の定量的な指標が明確になっていない点は重要な課題であ
り、今後も継続して研究を行う必要がある。この一環として、平成 17 年度には、A1B シナリオ、
B1 シナリオよりも温室効果ガス濃度レベルの高い SRES A2 シナリオに基づく予測実験を行った。
A2 シナリオは高い人口増加率と途上国における化石燃料消費の増加などを仮定したシナリオで
あり、21 世紀後半における排出量増加が著しいという特徴を有する。平成 18 年度では、この温
暖化予測実験(濃度安定化シナリオ、オーバーシュートシナリオを含む)の結果について詳しく
解析した。
CO2 emission (PgC/yr)
(2) SRES A2 シナリオ
IPCC SRES シナリオ(2000)においては、環境の持続可能性、および、グローバル化の進行
度合いという二軸によって 4 つの社会像が描かれる。B1 シナリオの描く社会像は、環境の持続
可能性を重視すると同時にグローバル化が進行する社会であり、
(A1B シナリオを含む)A1 シナ
リオではグローバル化が進行する一方で環境の持続可能性が軽視される社会が描かれる。これに
対して、A2 シナリオでは、環境の持続可能性は軽視され、グローバル化は進行しないという社会
像が描かれる。地域格差が温存もしくは拡大する一方で、人口増加率は高く(人口は 2.4 倍に増
加)、経済成長は鈍化する。
一次エネルギー供給の内訳に関して特徴的な
35
点としては、アジア地域を中 心に、A1B シナ
リオの場合には再生可能エネルギー、B1 シナリ
30
A2
オの場合には原子力の導入が進む。これに対し
25
て、A2 シナリオでは石炭の占める割合が高くな
り、2100 年には世界全体で 50%以上となるの
20
が顕著な特徴である。
A1B
図 8-1 に A2、A1B、B1 シナリオにおける化
15
石燃料・工業起源の CO2 排出量を示す。B1 シ
10
ナリオの場合には 2040 年、A1B シナリオの場
B1
合には 2050 年をピークとして、それ以降の排
5
出量は減少するのに対して、A2 シナリオの場合
0
には CO2 排出量は減少せず、21 世紀末には年
2000
2020
2040
2060
2080
2100
当たり 28.9 Gt-C(Gt-C=炭素換算 10 億トン)に
year
達する。
図 8-1: SRES A2、A1B、B1 シナリオにおける化
図 8-2 に温暖化予測計算で用いた大気中 CO2 石燃料・工業起源の CO2 排出量
濃度を示す。21 世紀の値に関しては、図 8-1 に
示した SRES シナリオの排出量から簡易炭素循
環モデルを用いて計算されたものである。2100 年時点の CO2 濃度は、A2、A1B、B1 シナリオ
の場合、それぞれ、829、689、537ppm となり、A2 シナリオにおける CO2 濃度は A1B シナリ
オの場合よりも更に 140 ppm 高い。また、CO2 以外の温室効果ガスの影響が大きいことも A2 シ
ナリオの特徴である。CO2 に加えて、CH4、N2O、CFC-11、CFC-12 による温室効果を含めた等
価 CO2 濃度は、A2、A1B、B1 シナリオでそれぞれ 1235、860、638 ppm となる。すなわち、
A2 シナリオの場合、CO2 以外の温室効果ガスの効果は CO2 換算で 406 ppm に相当する。
-23-
CO2, ppmv
(3)予測実験の設定
予測計算で使用した CO2 濃度シナリ
900
オを図 8-2 に示す。この図には、平成
A2
16 年度に実施した A1B シナリオ、B1
800
A2–B1 #1
シナリオに基づく濃度安定化実験、およ
A1B
び、A1B レベルから B1 レベルまで温室
700
効果ガス濃度を減少させるオーバーシ
A2–B1 #2
ュートシナリオ実験(図中の A1B-B1)
600
B1
における CO2 濃度も併せて示した。
500
なお、予測実験の際には、CO2 以外に、
A1B–B1
CH4、N2O、CFC-11、CFC-12、黒色炭
400
素エアロゾル、オゾン、SOx 排出量に関
するデータを入力条件として使用した。
300
A2 シナリオに基づく濃度安定化実験
(図中の A2)では、2100 年以降におけ
1900
2000
2100
2200
2300
2400
る温室効果ガスの濃度が 2100 年時点の
year
値で固定されると仮定した。
図 8-2: 温暖化予測計算で用いた CO2 濃度
オーバーシュートシナリオ実験につ
いては、温室効果ガス濃度の変化量と変
化速度の両者について知見を得ることを意図して、二つのシナリオを採用した。一つは、2150
年から 2250 年までの 100 年間に温室効果ガス濃度が A2 レベルから B1 レベルまで線形に減少し、
2250 年以降は B1 レベルで安定化されると仮定したケース(図中の A2-B1#1)であり、もう一つ
は、2150 年から 2350 年までの 200 年間で温室効果ガス濃度が A2 レベルから B1 レベルまで線
形に減少し、2350 年以降は B1 レベルで安定化されると仮定したケース(図中の A2-B1#2)であ
る。
(4)使用した気候モデル
温 暖 化 予 測 計 算 に は 、 米 国 大 気 研 究 セ ン タ ー NCAR の 大 気 海 洋 結 合 モ デ ル CCSM3
(Community Climate System Model Version 3)をベースとして、多大な努力により地球シミュレ
ータ用に最適化したベクトルコードを使用した。CCSM3 は、大気要素モデル CAM3、陸面要素
モデル CLM3、海洋要素モデル POP、海氷要素モデル CSIM5、および、フラックスカプラーCPL6
から構成される。
空間解像度についてはいくつかの選択肢があるが、大気要素 CAM3 と陸面要素 CLM3 の水平
解像度は約 150km、海洋要素 POP と海氷要素 CSIM5 の水平解像度は約 100 km とした。この
中解像度 CCSM3 の気候感度は、平衡気候感度が 2.7℃、TCR(Transient Climate Response)
が 1.5℃である。
(5) 予測結果
図 8-3 に、CCSM3 によって予測された全球平均地表気温(年平均)の予測結果を示す。20 世
紀末(1990 年から 1999 年の 10 年間)に対する 21 世紀末(2090 年から 2099 年の 10 年間)に
おける気温上昇は、A1B シナリオと B1 シナリオの場合にはそれぞれ 2.53℃と 1.49℃であったが、
A2 シナリオの場合には全球平均で 3.74℃となった。濃度安定化後も数 100 年に渡って気温上昇
は緩やかに継続し、予測実験の範囲内で地表気温は完全には安定化されない。
温室効果ガスの濃度を安定化した 2100 年以降の気温上昇が最も大きいのは、A2 シナリオのレ
ベルで濃度を安定化した場合である。言い換えると、濃度レベルが高ければ高いほど気温の安定
化には長期間かかる。21 世紀末に対する 24 世紀末(2390 年から 2399 年)の気温上昇は、A1B
シナリオと B1 シナリオの場合、それぞれ、0.6℃と 0.2℃であったのに対して、A2 シナリオの場
合には 1.4℃となった。
オーバーシュートシナリオ実験に関しては、A2-B1#2 実験で B1 濃度安定化実験との差が大き
いものの、2350 年における濃度安定化の開始以降 100 年しか経過していないことを考慮すると、
全てのオーバーシュートシナリオに対して、全球平均気温はほぼ B1 濃度安定化実験のレベルま
-24-
surface air temperature, degree C
20
A2–B1 #1
A2
A2–B1 #2
18
A1B
16
B1
A1B–B1
14
12
1900
2000
2100
2200
year
2300
2400
図 8-3: 全球平均地上気温の予測結果
100
sea level change, cm
A2
80
A2–B1 #2
A2–B1 #1
60
A1B
40
B1
20
A1B–B1
0
1900
2200
2300
year
図 8-4: 熱膨張による海面上昇
2000
2100
2400
1990s
B1 2090s
2
15
A1B 2090s
6
sea ice area, x10 km
で回復し、濃度レベルが高く、非線形効
果が強いと考えられる A2 シナリオであ
っても、履歴効果はほとんど見られない
ということができる。
図 8.4 に、海水の熱膨張による海面上
昇の予測結果を示す。20 世紀末を基準と
した 21 世紀末における海面上昇は、A2
シナリオ、A1B シナリオ、B1 シナリオ
の順に、24cm、18cm、11cm となった。
また、温室効果ガスの濃度安定化によ
る海面上昇の抑止効果はわずかしか見
られず、濃度安定化後においても海面上
昇の継続は顕著である。また、24 世紀末
までに見込まれる 2000 年以降の海面上
昇は、A2 シナリオ、A1B シナリオ、B1
シナリオのレベルで温室効果ガス濃度
を安定化した場合、それぞれ、90cm、
55cm、27cm となった。
オーバーシュートシナリオ実験に関
しては、温室効果ガスの濃度を低下させ
た後においても、海面水位は B1 シナリ
オのレベルに回復せず、海面水位に関し
ては履歴効果があるという結果が得ら
れた。但し、温室効果ガスの濃度レベル
低下には一定の海面上昇抑止効果があ
り、例えば A2-B1#1 実験における海面
水位は、2200 年以降、一旦減少に転じ
ている。
図 8-5 に、20 世紀末、21 世紀末、24
世紀末における北半球の海氷面積季節
変化を示す。A2 シナリオに基づく結果
の特徴は、濃度安定化後の変化が大きい
ことである。北半球の夏季における海氷
は 21 世紀末時点でほぼ消失しているが、
24 世紀末には冬季における海氷面積も
21 世紀末の 40%程度まで減少する。
B1 シナリオの場合には 24 世紀末であ
っても海氷が完全に消失することはな
いが、A1B シナリオに基づく 21 世紀末
と 24 世紀末の予測結果では、8 月から
10 月にかけての 3 ヶ月間、北半球におけ
るほぼ全ての海氷が消失するという結
果が得られている。これに対して、A2
シナリオのレベルで温室効果ガス濃度
を安定化した場合は、24 世紀末には 9
月を中心に約 6 ヶ月間にわたって北半球
の海氷が消失することが分かる。
図 8-6 に、北大西洋における熱塩循環
流量の予測結果を示す。温室効果ガス濃
度の高い A2 シナリオの場合、A1B シナ
リオや B1 シナリオの場合よりも流量の
A1B 2390s
10
A2 2090s
5
B1 2390s
A2 2390s
0
JAN
MAR
MAY
JUL
SEP
NOV
図 8-5: 北半球海氷面積の季節変化
-25-
JAN
maximum MOC stream function, Sv
減少が著しく、22 世紀半ばには熱塩循
環流量は 14 Sv(単位 Sv=100 万 m3/s)
24
A2–B1 #2
程度まで低下する。しかし、この場合に
A2–B1 #1
おいても A1B シナリオや B1 シナリオ
22
に基づく濃度安定化実験の場合と同様
A1B–B1
に、濃度安定化後の熱塩循環流量は徐々
20
に回復するという結果が得られている。
B1
すなわち、A2 シナリオの高いレベル
18
で温室効果ガス濃度を安定化した場合
A1B
であっても、熱塩循環の停止には至らず、
16
熱塩循環の停止によって予想される劇
的な気候変動(氷河期)は生じないとい
A2
14
う予測結果が得られている。
A2 レベルから B1 レベルへ温室効果
1900
2000
2100
2200
2300
2400
ガス濃度を低下させるオーバーシュー
year
トシナリオ実験に関しては、100 年間で
図 8-6: 北大西洋熱塩循環の予測結果
濃度が B1 レベルに達する A2-B1#1 実
験 、 200 年 間 で B1 レ ベ ル に達 する
A2-B1#2 実験のいずれにおいても、温室効果ガス濃度の減少開始と同時に、熱塩循環の流量は急
激に回復を始め、A2-B1#1 実験の場合には 23 世紀半ばまでに、A2-B1#2 実験の場合には 24 世
紀初め頃までに、B1 安定化実験における流量を超過するレベルに達している。
(6) まとめ
SRES A2 シナリオに基づいて、温暖化予測計算を実施した。予測結果の概要は以下の通りであ
る。これらは、ポスト京都議定書の長期削減目標に貢献することが期待される。
・ A2 シナリオおよび A2 濃度安定化シナリオによる気候変化は、A1B シナリオの場合と空間パ
ターンなどの全体的な傾向は類似しているものの、気温、海面上昇、海氷、熱塩循環などの
変化の程度は一層深刻である。濃度安定化後においても、全球平均気温上昇は長期間に渡っ
て継続し、気候系の安定化には長い時間を要する。
・ A2 シナリオ下では、北半球における海氷の減少が著しい。A2 シナリオのレベルで温室効果
ガス濃度を安定化できたとしても、1 年のうち約半年間に渡って、北極海は海氷が消失した状
態となり、冬季における海氷の減少も著しい。
・ A2 シナリオ下における北大西洋の熱塩循環は、A1B シナリオの場合よりもさらに衰退する。
しかし、温室効果ガスの濃度安定化によって衰退には歯止めがかかり、熱塩循環の停止には
至らない。すなわち、熱塩循環の停止による大規模かつ不可逆的な気候変化は生じない。
・ オーバーシュートシナリオ実験では、海面上昇に履歴効果が見られるものの、その他の気候
要素には履歴効果が見られなかった。濃度安定化レベルの高い A2 シナリオでは、非線形性が
強くなるはずであるが、その場合であっても、A1B-B1 オーバーシュート実験の場合と同様
に、気温、降水量、海氷面積、熱塩循環強度などはほぼ回復する。今回のモデルでは、気候
変化の進行に伴う陸上植生の変化、森林の変遷や枯死といった現象を再現できず、気候-生態
系のフォードバックを完全には考慮できないので、結果の解釈には注意が必要である。
・ しかしながら、各国の利害対立により、追加削減に関する国連条約の遅れ、高効率・省エネ
技術の導入の遅れ、社会の意識の遅れなどを考慮すると、大気中濃度が上昇してしまうリス
クにも備える必要があろう。オーバーシュート実験の結果は、濃度安定化の努力を継続し、
されに排出量ゼロ社会を達成すれば、大気中の CO2 濃度は森林(植林増加)や海洋が吸収す
ることにより、ゆっくりと低下することが期待でき、気候が復元する可能性を示唆している
(仮説)。この仮説に関する検討は、今後の大きな課題のひとつである。
-26-
8.3.2 単純増加シナリオと気候応答
(1) 研究のねらい
SRES A2シナリオのような高濃度レベルであっても、北大西洋熱塩循環は停止せず、温暖化が生
じ、寒冷化の傾向は見られなかった。昨年度の結果と合わせると、3種のIPCCシナリオ(高排出
A2、中排出A1B、低排出B1)とも熱塩循環は停止しないことになる。この結果を受けて、エネル
ギーシナリオ分析等で引用度が高い熱塩循環停止仮説(Stocker and Schmitner、1997)をより直接
的に検証するため、CO2濃度の年増加率(0.25%~4%)と濃度安定化レベル(現状濃度355ppm
の2倍~8倍)を変えた長期計算(安定化後300年)を実施した。NCARのCCSM3の解像度は大気
モデル(T42=約300km)、海洋モデルは約1度(約100km)とした。
(2) 結果
図8-7、図8-8に濃度漸増時における全球平均地表面温度および熱塩循環流量とCO2濃度の関係
を示す。CO2濃度の年増加率を0.25%、0.5%とした場合については現状濃度の2倍、4倍まで計算
を行い、その他の場合については現状の8倍まで計算を実施した。CO2濃度の増加率が高い場合ほ
ど地表面温度の応答は遅くなり、CO2濃度が8倍に達した時点では、年増加率1%と4%の差は1℃
22
0.25%/year
0.5%/year
1%/year
2%/year
4%/year
20
20
maximum MOC, Sv
surface temperature, degree C
22
18
0.25%/year
0.5%/year
1%/year
2%/year
4%/year
16
14
1
2
3
4
5
6
7
CO2, x355 ppmv
8
9
18
16
14
12
1
10
図 8-7:CO2 濃度漸増時の地表面温度
2
3
4
5
6
CO2, x355 ppmv
7
8
図 8-8: CO2 漸増時の熱塩循環流量
maximum MOC, Sv
22
程度となる。熱塩循環に関しても、濃度
増加率が高い場合ほど応答が遅れる傾向
control
20
が見られるが、年増加率2%以下のケース
の差は比較的小さいのに対し、年増加率
が4%になると応答の遅れが顕著になる。
18
2xCO2
図8-9に大気中CO2 濃度を安定化した
後の熱塩循環流量を示す。濃度安定化の
16
開始直後を除いて、熱塩循環流量はCO2
4xCO2
増加率に依存しないという結果が得られ
14
ている。また、いずれの場合においても
濃度安定化後に熱塩循環の衰退傾向は見
12
られず、安定化濃度を現状の2倍もしくは
8xCO2
4倍としたケースでは、わずかではあるが
10
回復傾向が見られる。以上のように、
0
100
200
300
CCSM3モデルによる熱塩循環の応答は、
years since stabilization
Simple modelを用いたStocker仮説とは 図 8-9: 濃度安定化後の熱塩循環流量
異なる結果となった。但し、今回の数値 (青、赤、緑は濃度増加率 1%、2%、4%に対応)
実験ではグリーンランド氷床の融解によ
る淡水供給の影響が考慮されていない点
は注意を要する。また、過去40万年の氷期・間氷期サイクルに見られる急激な気温変化と熱塩循
環の関係の解明は今後に残された課題である。
-27-
8.3.3 高解像度大気モデルの開発
(1) 研究のねらい
高解像度気候モデル開発の一環として、CCSM3の大気要素モデルCAM3をベースとするThe
Whole Atmosphere Community Climate Model (WACCM)を改良し、太陽活動の11年周期変動を
対象とした数値実験を行なってきた。この数値実験の目的は、太陽活動の変化が対流圏の気候に
有意な変化をもたらすかどうか、変化をもたらすとすれば、それがどのようなメカニズムで生じ
るのかを明らかにすることである。温暖化への適用に向けた研究課題としては、近い将来の人為
的な気候変化に加え、その前提となる自然の気候変動、および人為的な温室効果気体の増加が自
然の気候変動におよぼす影響を明らかにすることも含まれる。太陽活動の変化に対する地球大気
の応答については未解明の点が多く、学問的興味だけでなく、温暖化適応研究の視点からも重要
である。
平成17年度では、重力波抵抗スキーム等の物理過程についてモデルの調整を行い、中層大気の
風速・気温場を含め、現実的なモデル気候値が得られることを確認した。さらに、太陽活動の11
年周期変動を対象とした数値実験を行い、途中段階の結果から予備的な分析を行った。
平成18年度では、数値実験を完了し、11年周期変動の気候影響に関する詳細な分析を行った。
なお、当初の予定では、高解像度大気海洋結合モデルにWACCMを採用する方針であったが、計
算機資源の制約等を考慮し、現実的な組み合わせの結合モデルとすることにした。すなわち、次
節では、IPCCランに用いた大気モデルCAM3(T85)と0.1度海洋モデル+0.1度海氷モデルを結
合した高解像度結合モデルについて報告する。
(2) 数値実験の概要
WACCMは、CAM3をベースに、オゾン等の大気化学過程を組み込み、下部熱圏までを対象領
域とするよう物理過程を拡充したモデルである。ここでの高解像度化は、従来のモデルと比べて、
より高層の大気を対象とし、より多くの化学種を扱うことを主眼とする。実験に用いたモデルは、
緯度・経度1.9x2.5度(格子数96x144)、鉛直レベル66層、大気上端150km程度、大気化学過程の
化学種56個という仕様である。
積分期間は1953年を初期年とする110年間とし、観測された太陽活動変化に基づき、11年周期
で連続的に変化する放射強度スペクトルを外力として与えた。WACCMでは、波長10.7cmの放射
強度(F10.7)が入力データとして与えられ、F10.7の関数として太陽放射スペクトルがモデル化さ
れている。F10.7は、2004年までは観測データをそのまま使用し、それ以降は、1962年から2004
年までの観測データを繰り返し使用した。その他の外力については年々変化を考慮せず、海面水
温は気候値の年サイクル、温室効果気体等の境界条件は1995年レベルで固定した。
WACCMモデルから得られた気候値は概ね現実的であるが、赤道下部成層圏の東西風が24-30
ヶ月周期で変動する現象(quasi-biennial oscillation; QBO)が表現できないという問題がある。
QBOは中層大気の平均流や波動の振舞いに影響するため、現実大気では、太陽活動に関連する変
動とQBOとの相互作用も考えられる。本研究の数値実験は、QBOの影響が含まれない、ある意味
純粋な11年周期変動のシグナルに注目するものと位置づけられる。
(3) 11年周期変動のシグナル
11 年周期変動に伴う全放射強度の変化は 0.1%程度に過ぎないが、紫外線領域の相対的に大き
な放射強度変化により、中層大気では平均的な気温場に直接的な影響が生じる(図 8-10)。各季節
とも、下部熱圏やオゾン濃度の高い成層圏界面付近を中心とする広範囲にわたり、太陽活動の極
大期と極小期で有意な変化が見られる。これに対し対流圏では、海面水温を境界条件で与えてい
ることにもよるが、有意な変化はほとんど見られない。
中層大気における 11 年周期変動の直接的影響は、大気循環や惑星波の活動の変化を介して、間
接的に対流圏の気候に影響する可能性がある。図 8-11 では、3-5 月の北半球高緯度にその徴候が
見られ、より詳細な分析から、北半球環状モードに大きなシグナルが確認された(図 8-12、図 8-13)。
環状モードは、対流圏から成層圏までほぼ同期した中緯度・高緯度間の振動現象であり、地上で
は、海面気圧が中緯度と高緯度の間でシーソーのように変動する北極振動に対応する。数値実験
では、3 月頃を中心に、太陽活動の極大期と極小期で顕著な違いを生じることが示された。この
結果は、11 年周期変動の影響として、北半球中・高緯度において、冬から春にかけての季節進行
-28-
や、この時期の低気圧活動に変化をもたらす可能性を示唆するものである。
図 8-10: 各季節の東西平均気温偏差における太陽活動の 11 年周期変動のシグナル(太陽活動極大
期の平均から極小期の平均を引いた差)。赤色および青色の領域は、有意水準 5%の正および負の差
を表す。
図 8-11: 太陽活動通常年の日平均ジオポ
テンシャル高度偏差から得られた、北半
球環状モデルの空間分布。カラーコンタ
ーは、各気圧レベルでの 20N-90N の東西
平均値から計算された第 1 主成分ベクト
ル、ラインコンターは、高度偏差の規格
化された第 1 主成分スコアに対する回帰
係数(単位: m)。
図 8-12: 太陽活動極大期(a)および極小期(b)に
おける平均的な北半球環状モード(規格化された
第 1 主成分スコア)の年変化。両者の差が 5%の水
準で有意となる領域を斜線で示す。
-29-
8.3.3 高解像度海洋・海氷モデルの開発
(1) 研究のねらい
温 暖 化 に よ る 影 響 を 予 測 す る た め 、 NCAR( 米 国 大 気 研 究 所 ) が 開 発 し た 気 候 モ デ ル
CCSM3(Community Climate System Model)を用いた検討を行っている。温暖化の予測計算では、
数100年程度の長期にわたり積分を行うため、大気モデルでは水平方向に約150km(T85)、海洋
モデルでは約100km(1度)の中程度の解像度を有するモデルを用いている。現在、温暖化予測研究
においては、全球規模の気温変化や降水量、海面水位の変化などを予測しているが、将来の適応
方策などを検討する場合には、台風や降雨、降雪など日本周辺の大気や海洋の変化について、詳
細に検討する事が必要である。図8-13に、CCSM3を用いて行った温暖化予測(IPCC、SRES A1B
シナリオ)の一例を示す。図は、100年後の日本周辺での流速や水温の変化を示している。モデル
では、解像度が粗いため千島列島が再現されておらず、オホーツク海での流速、水温の変化が非
現実的に大きくなっている。特に、北海道周辺海域では、この影響が大きい。このため、日本周
辺での温暖化予測の精度を向上させるためには、気候モデルをより高解像度化するか、中解像度
の気候モデルの計算結果を用いて、日本周辺を高解像度なモデルで再度計算する必要がある。
日本周辺での温暖化の影響 A1B (2090s) – 20thC (1990s)
流速
水温
図 8-13: 中解像度の気候モデルにより予測された日本周辺の流速、水温の変化。千島列島
の地形再現が不十分なため、オホーツク海の流動の再現性に問題がある。
(2) 温暖化予測と海洋モデルの解像度
天気図や衛星画像で見られるように、大気
中では高気圧や低気圧など1000kmスケー
ルの渦が形成され、気象に種々の影響を与え
ている。同様に、海洋中にも地球の自転の影
響により100kmスケールの渦が形成されて
いる。大気と海洋の相互現象である黒潮など
の西岸境界流による熱輸送や高緯度地域で
の温室効果ガスの吸収などを考慮する場合
には、中規模渦による輸送・混合過程を考慮
することが必要である。例えば、日本周辺で
の黒潮の流路の変化や、暖水塊や冷水塊など
の挙動は中規模渦スケールの変動である。図
8-14に、ロスビー変形半径(重力とコリオリ
力の作用が同程度になる水平スケール)と、
Rossby 変形半径 (0.1度)
(2/5 deg)
日本付近
(1/5 deg)
(1/10 deg)
図 8-14: 海洋モデルの解像度と中規模渦の空間
スケール(ロスビー変形半径)
-30-
モデルの解像度の関係を示す。日本付近において、中規模渦の効果を計算するためには、0.1度程
度の高解像度海洋モデルが必要である。
また、高緯度地域での深層水の形成は、海氷の生成や分布にも強く影響されるものと考えられ
る。特に日本近海では、流氷が到達する北海道北岸や、日本海における熱収支や海水の循環など
は、海氷の影響を強く受けると考えられ、高解像度化海氷モデルが重要である。
(3) 高解像度海洋モデルの開発
平成17年度に引き続
き、中解像度気候モデル
CCSM3 (大気:約150km、
海 洋 約 :100km) を ベ ー
スとして、高解像度海洋
モデル(空間解像度0.1
度 = 約 10km)コ ー ド の
並列化や最適化を行っ
た。
海洋モデルには、
LANL (Los Alamos
National Laboratory)
とNCAR が開発した
POP (Parallel Ocean
Pro gram)は、を使用し
た。このモデルは、同様
図 8-15: 海洋モデル(POP)と海氷モデル(CSIM)の計算メッシュ
に LANL と NCAR が 開
北半球では計算上の特異点を避けるため極は北米上に移動している。
発した海氷モデル
CSIM(Community Sea
Ice Model) と同じメッ
シュで計算を行う事ができ、フラックスカップラーCPL6(Flux Coupler Version 6)を介して容易
に結合できる。
図8-15に、計算に用いたメッシュを示す。南半球では、緯度-経度方向の座標系を用いているが、
北半球では、北極点が海上となり計算上の特異点となるため、座標変換を行い、極をハドソン湾
上に移動している。鉛直方向には、海表面付近で10m、最下層(40層)で500mの可変メッシュを用
いて、水深5500mまで計算している。モデルでは、中規模渦による混合や海洋内部の等密度面混
合を取り入れるため、水平方向の混合に、anisotropic GM やanisotropic viscosityスキームを用
いている。
図8-16に、高解像度全球海洋モデル(10km)で計算された結果のうち、日本周辺での流速や水温
を示す。左図は、比較のため、中解像度の気候モデル(海洋100km)で計算された日本周辺の様子
である。黒潮の幅は広く、流路は平滑化されている。また流軸の最大流速も小さく、黒潮続流へ
の離岸点も房総沖を過ぎてかなり北上している事がわかる。一方、高解像度モデルでは、黒潮流
軸が明確であり、しかも流軸が変動している様子が良く計算されている。また、黒潮続流や親潮
によるフロントもよく再現されている。このように、高解像度海洋モデルは、日本周辺の気候変
化を詳細に検討する場合は、非常に有効である。
(4) 高解像度海氷モデルの開発
高解像度海氷モデルには、前述したように、CSIMをベースモデルとして使用した。本モデルで
は、海氷をその厚さに基づいて5つのカテゴリーに分類し、それぞれに対して生成や融解を計算す
る熱力学方程式を解いていることが特徴である。
図8-17に、高解像度全球海氷モデル(10km)により計算されたオホーツク海の海氷分布を示す。
図は3月の計算結果である。観測結果によると、通常年の3月には、海氷は北海道北岸に達し東側
は千島列島まで広がっている。高解像度海氷モデルの結果は、北海道付近の海氷がやや少ないも
のの、中解像度気候モデル(100km)の結果に比べ、より現実的な分布を示している。
-31-
計算された黒潮の流れ (年平均 )
解像度 10km
解像度 100km
図 8-16: 計算された黒潮の流れ
高解像度モデル(右図)では、黒潮の蛇行や黒潮続流、親潮のフロントなどが
よく再現されている。
オホーツク海での海氷分布(海氷密接度) (3月)
解像度 10km
解像度 100km
図 8-17: 計算された海氷分布 (気候値:3 月)
高解像度モデル(右図)では、北海道北岸付近の海氷がやや少ないものの、
中解像度モデル(左図)に比べ、再現性が向上している。
(5) 高解像度モデルの温暖化研究への適用
上述のような高解像度モデルは、現状の地球シミュレータの能力をもってしても、地球温暖化
のような長期間の予測計算は現実的ではない。今後、計算機能力の一層の向上が期待されるとこ
ろである。
現実的な計算機資源という制約のもとでは、日本周辺域における温暖化の影響を詳細に検討す
るため、中解像度の気候モデルと組み合わせて利用する事が考えられる。海面上昇は、沿岸域で
の構造物の水没や氾濫、沿岸域での自然環境の破壊をもたらす可能性がある。海流や水温、塩分
-32-
等の変化は、水産資源の分布や海洋の一次生産量等に影響を与えるものと考えられる。さらに、
沿岸域や内湾での流動の変化や水温の上昇は、水質の悪化を引き起こす可能性がある。また、海
面水温の変化は、海面からの水蒸気の供給量を変化させるため、台風の頻度や規模、日本周辺で
は降雨量や降雪量を変化させるものと考えられる。
図8-18に、日本周辺の詳細な温暖化予測を行なう場合について、高解像度の海洋-海氷モデルと
中解像度の大気海洋結合モデルを用いる方法の概念を示す。この場合、フラックスカプラーの能
力を活用して、プラグイン・プラグアウト機能を応用する。IPCCの種々のSRESシナリオなど、
気候モデルによって計算された将来の大気を境界条件として用いて、スナップショット的に日本
周辺の気候変化を詳細に予測する手法である。
また、このようなスナップショット予測のほかに、中程度の解像度の大気モデルと結合して、
海洋・海氷部分のみが高解像度の大気・海洋結合モデルとして予測に用いることも考えられる。
大気モデル単独では、T341(解像度約40km)などの高解像度モデルの開発・利用経験も有してい
るが、大気の中規模渦スケールが海洋に比べ10倍程度大きいこと、海洋モデルに比べ大気モデル
の計算量が多いこと、現状のスパコン能力と資源制約等を考えると、T85 (約150km)程度の大気
モデルとの結合が現実的である(図8-19)。本年度の残された期間では、このモデルを引き続き開
発し、比較的短期間の予測計算等を通じて、モデルの性能評価を行なう予定である。
温暖化予測(全球規模・長期的)
気候モデル
境界条件(温暖化予測結果)
海氷 (100km)
大気
T85
Flux
Coupler
詳細な温暖化予測 (局所的・短期的)
海氷モデル
陸面
CSIM (10km)
予測結果-大気
* Air Density
* Specific Humidity
* Sea Level
Pressure
* Air Temperature
* U Wind, V Wind
* Precipitation
* Cloud Fraction
海洋 (100km)
Flux Coupler
(CPL6)
予測結果 陸面
* River Runoff
海洋モデル
POP (10km)
図 8-18: 高解像度海洋-海氷モデルを用いた温暖化予測研究の概略
(中解像度の気候モデルの計算結果に基づいて、詳細なスナップショット的な予測を行う。)
大気モデル
CAM またはWACCM T85(約150km)
大気データセット
T62 NYF data
CPL6
海洋モデル
POP ×0.1(約10km)
海氷モデル
CSIM ×0.1(約10km)
図 8-19: 高解像度気候モデルを用いた温暖化予測の概要
(大気モデルの接続については、現在開発中)
-33-
8.3.4 日本海への温暖化の影響
(1) 研究のねらい
日本海で過去約半世紀間に、底層水の形成停止に伴う水塊構造の変化が起こっていることが近
年明らかになってきた。日本海上部固有水、深層水及び底層水の境界は年々深くなっており、底
層水の形成量も年々低下し、1980 年代以降、ほとんど停止してしまった。これが深層での溶存酸
素濃度の減少及び水温の上昇をもたらしており、今後、温暖化がこのまま進行すれば、深層の構
造変化はさらに進行し、底層水は消滅すると思われる。このような日本海の温暖化は世界の海に
先駆けて起こっており、その意味では日本海は世界の海の温暖化を測るリトマス試験紙と言える。
本研究は今後の日本海の水塊構造の変化とそれに伴う水平、鉛直循環の変化を予測することを目
指すと同時に、平成 17 年度に引き続き海洋循環モデルの高精度化を目指す。
(2) 本年度の成果
日本海の温暖化予測を行うためには、まず過去の現象の高精度再現を行うことが将来予測の信
頼性を担保する。過去の循環の再現については、前年度までに海底にまで達する冬季の鉛直混合
は外洋対流では起こらず、ウラジオストク沿岸域の
海氷形成に伴う塩分排出による鉛直混合によって
起きることが示唆され、海氷モデルの組み込みが必
要であることがわかった。
一方、日本海の水塊の大部分を占める 500m 以深
の日本海固有水の流動については過去の観測から
その平均流量が 10Sv 程度であることが推定される
が、これまでの数値モデルのほとんどはこのような
深層の流量、ひいては深層の循環(図 8-20)を現実
的に再現することは出来なかった。このような黒潮
の数分の1の流量にも匹敵する深層の大海流は日
本海の水や物質循環に大きな役割を果たす筈であ
る。本年度はこのような深層循環の現実的な再現の
ためのパラメタリゼーションに焦点を当て、現時点
での最適な深層循環のためのパラメタリゼーショ
図 8-20: 日本海の深層循環(流量 10Sv 程度)
ンを提案する。
等深線に沿う反時計回りの循環が卓越
これまでの数値モデルのほとんどが深層循環の
(平均流速 2~6cm/s)
再現に失敗したのは分解能が低いために、深層
平均流を駆動する渦・海底地形相互作用を表現
出来ないためであった。 日本海に充満する中規模渦と海底地形が相互作用することによって
Topographic force
力は
∫ ( p∇ H ) d A
( p:圧力、 H :水深、 A :面積) が流体に作用する。この
p と ∇H との位相の具合で摩擦力あるいは強制力として働き、その強さは平均的な風応力を
遥かに凌ぐ場合もある。強い強制力として働く場合、さながら海底に強風が吹き荒れているのと
同じであり、強い深層平均流を励起する。この力を精度良く表現するためには、少なくとも 1/40°
程度の水平解像度、鉛直には数十層が必要であるが、それは計算機資源の制約のため、あまり現
実的ではない。そこで比較的分解能の低いモデルに、この効果をパラメタライズして組み込むこ
とが必要になる。本研究では水平格子 1/12°の日本海循環モデルに Holloway(1992)(以後
Topostress)の及び Greatbatch and Li (2000)(以後 GL)のパラメタリゼーションを組み込んで
比較実験を行い、観測データとの比較を通じて最適なパラメタリゼーションを探ってみた。
Holloway (1992) はその作用を Topostress と表現し、以下のように粘性項にそれを組み込んだ。
2
N
∇ H (u − u N ), u = − k × ∇ψ , ψ = − fL2 H ( x, y )
、
Greatbatch and Li(2000)は
∂
ut + fk × u = −∇B − fk × κ −− (R,S) のように、右辺に等密度面
∂z
-34-
の傾き ( R, S ) に比例する形でその作用を組み込んでいる。B はベルヌーイ関数である。境界条件
(
) ( )
R, S = 0,0 at z = 0 、 (R, S ) = −∇H at z = − H 。
図 8-21 は、深層における流速について観測との比較である。パラメタリゼーション無し(左)
の場合に比べ、Topostress(中)と GL(右)は比較的観測と良く一致する。Topostress(L=6km)
は
の場合は相関係数 0.71 であり、GL( κ
No-parameterization
= 10 6 cm 2 / s )の場合は 0.76 であった。
Topostress
GL
図 8-21: 深層流速の観測との比較。左:パラメタリゼーション無し、中:Topostress、右:GL
図 8-22 は、1000m以深の全流量を示している。GL の場合は Topostress の場合に比べ、流量
は 2 倍程度大きく、日本海盆の深部においても東西にまたがる反時計回りの循環が存在する。こ
の流線のパタ
ーンは渦・海
底地形相互作
用を十分表現
できる超高解
像度モデルの
結果と極めて
よく一致する。
また、2000 年
前後の大量に
日本海盆に投
入された中層
フロートの軌
跡およびそれ
から計算され
る流速とも良
く一致する。
図 8-22: 1000m以深のモデル流量。
左:Topostress、右:GL 等値線の間隔~-0.5Sv
このことから GL のパラメタイリゼションは今のところもっとも深層の平均流を現実的に表現
していると思われる。
深層の循環を GL は現実的に表現することには成功したが、500m 以浅については、海底地形の
影響が強く現れてしまう傾向があり、係数 κ の鉛直依存性を導入する必要があるように思われる。
-35-
共生課題 1-1 成果リスト(平成 18 年度)
論文(受理・印刷済み)
1.
Tsuneaki Suzuki, Yukari N. Takayabu, Seita Emori, 2005:Coupling mechanisms
between equatorial waves and cumulus convection in an AGCM, Dynamics of
Atmospheres and Oceans (2006), In Press, Corrected Proof, Available online 6
September 2006
2.
Nagashima, T., H. Shiogama, T. Yokohata, T. Takemura, S. A. Crooks, and T.Nozawa
(2006):Effect of carbonaceous aerosols on surface temperature in the mid twentieth
century, Geophysical Research Letters, Vol.33, No.4, L04702, doi:
10.1029/2005GL024887
3.
Saito Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Heinz Blatter: European Ice Sheet Modelling
Initiative (EISMINT) model intercomparison experiments with first-order
mechanics, Journal of Geophysical Research, Vol. 111, No. F2, F02012.
10.1029/2004JF000273. 02 June 2006
4.
Williams, K.D., M.A. Ringer, C.A. Senior, M.J. Webb, B.J. McAvaney, S. Bony, N.
Andronova, S. Emori, R. Gudgel, T. Knutson, B. Li, K. Lo, I. Musat, J. Wegner, A.
Slingo and J.F.B. Mitchell, 2005:Evaluation of a component of the cloud response to
climate change in an intercomparison of climate models, Climate Dynamics (2006)
Vol.26, No.2-3 : 145–165 DOI 10.1007/s00382-005-0067-7
5.
Tsushima.Y, S. Emori , T. Ogura, M. Kimoto, M.J. Webb , K.D.Williams, M.A. Ringer ,
B.J. Soden, B.Li, N. Andronova: Importance of the mixed-phase cloud distribution in
the control climate for assessing the response of clouds to carbon dioxide increase - a
multi-model study, Climate Dynamics(2006) Vol.27, No.2-3: 113-126 DOI
10.1007/s00382-006-0127-7
6.
Kageyama, M., A. Laîné・, A. Abe-Ouchi, P. Braconnot, E.Cortijo, M. Crucifix, A. de
Vernal, J. Guiot, C. D. Hewitt, A. Kitoh, M. Kucera, O. Marti, R. Ohgaito, B.
Otto-Bliesner, W. R. Peltier, A. Rosell-Mele, G. Vettoretti, S. L. Weber, and MARGO
Project Me: Last Glacial Maximum temperatures over the North Atlantic, Europe
and western Siberia: a comparison between PMIP models, MARGO sea–surface
temperatures and pollen-based reconstructions, Quaternary Science Reviews, Vol.25,
Issues 17-18, September 2006, Pages 2082-2102
7.
M.J. Webb, C.A. Senior,D.M.H. Sexton, W.J. Ingram, K.D Williams, M.A. Ringer, B.J.
McAvaney, R. Colman, B.J. Soden, R. Gudgel, T. Knutson, S. Emori, T. Ogura, Y.
Tsushima, N. Andronova, B. Li, I. Musat, S. Bony, and K.E. Taylor: On the
contribution of local feedback mechanisms to the range of climate sensitivity in two
GCM ensembles, Climate Dynamics (2006) Vol.27, No.1 17–38 DOI
10.1007/s00382-006-0111-2
8.
Masson-Delmotte, V., M. Kageyama, P. Braconnot, S. Charbit, G. Krinner, C. Ritz, E.
Guilyardi, J. Jouzel, Ayako Abe-Ouchi, M. Crucifix, R. M. Gladstone, C. D. Hewitt, A.
Kitoh, A. Legrande, O. Marti, U. Merkel, T. Motoi, R. Ohgaito, B. Otto-Bliesner, W. R:
Past and future polar amplification of climate change: climate model
intercomparisons and ice-core constraints, Climate Dynamics (2006), Vol.27, No.4
Pages 437-440 doi: 10.1007/s00382-006-0149-1
9.
Kozo Ninomiya, Teruyuki Nishimura, Tsuneaki Suzuki and Shinji Matsumura,
2006: Polar-Air Outbreak and Air-Mass Transformation over the East Coast of Asia
as Simulated by an AGCM, Journal of the Meteorological Society of Japan Vol. 84
(2006) , No. 1 pp.47-68
-36-
10. Suzuki, T., H. Hasumi, T. T. Sakamoto, T. Nishimura, A. Abe-Ouchi, T. Segawa, N.
Okada, A. Oka and S. Emori (2005): Projection of future sea level and its variability
in a high-resolution climate model: Ocean processes and Greenland and Antarctic
ice-melt contributions, Geophysical Research Letters,Vol. 32, No. 19, L19706
doi:10.1029/2005GL023677
11. Takemura, T., T. Nakajima, and T. Nozawa, 2006: Simulation of climate change by
aerosol direct and indirect effects with aerosol transport-radiation model. in IRS
2004: Current Problems in Atmospheric Radiation, H. Fischer and B.-J. Sohn, Eds.,
A. Deepak Publishing, 469-472.
12. Masayoshi Ishii, Masahide Kimoto, Kenji Sakamoto, Sin-Iti Iwasaki: Steric Sea
Level Changes Estimated from Historical Ocean Subsurface Temperature and
Salinity Analyses, Journal of Oceanography, Vol. 62, No. 2 /April,2006 155-170 doi:
10.1007/s10872-006-0041-y
13. Shiogama, H., T. Nagashima, T. Yokohata, S. A. Crooks, and T. Nozawa (2006): The
Influence of Volcanic Activity and Changes in Solar Irradiance on Surface Air
Temperatures in the Early Twentieth Century, Geophysical Research Letters, Vol. 33,
No. 9, L09702, doi:10.1029/2005GL025622
14. Inatsu, M., and B. J. Hoskins, 2006: The Seasonal and Wintertime Interannual
Variability of the Split Jet and the Storm-Track Activity Minimum near New
Zealand, Journal of the Meteorological Society of Japan Vol. 84 (2006), No. 3
pp.433-445.
15. Takemura, T., Y. Tsushima, T. Yokohata, T. Nozawa, T. Nagashima, and T. Nakajima
(2006): Time evolutions of various radiative forcings for the past 150 years estimated
by a general circulation model, Geophysical Research Letters, Vol. 33, No.19, L19705,
doi:10.1029/2006GL026666.
16. Lin, J.-L., G. N. Kiladis, B. E. Mapes, K. M. Weickmann, K. R. Sperber, W. Lin, M. C.
Wheeler, S. D. Schubert, A. Del Genio, L. J. Donner, S. Emori, J.-F. Gueremy, F.
Hourdin, P. J. Rasch, E. Roeckner and J. F. Scinocca (2006): Tropical Intraseasonal
Variability in 14 IPCC AR4 Climate Models. Part I: Convective Signals, Journal of
Climate Vol. 19, Issue 12: 2665-2690 15 JUNE 2006
17. Okamoto, H., T. Nishizawa, T. Takemura, H. Kumagai, H. Kuroiwa, N. Sugimoto, I.
Matsui, A. Shimizu, A. Kamei, S. Emori and T. Nakajima (2006): Cloud vertical
structure obtained from the shipborne radar and lidar Part (I) Mid-latitude case
study during Mirai MR01/K02 cruise, Journal of Geophysical Research, accepted.
18. Oka, A. , H. Hasumi, N. Okada, T. T. Sakamoto, and T. Suzuki (2006): Deep
convection seesaw controlled by freshwater transport through the Denmark Strait,
Ocean modelling, 15(3-4), 157-176.
19. Hideo Shiogama, Nikolaos Christidis, John Caesar, Tokuta Yokohata, Toru Nozawa,
and Seita Emori (2006): Detection of greenhouse gas and aerosol influences on
changes in temperature extremes, SOLA, 2, 152-155, doi:10.2151/sola.2006-039.
20. T. Yokohata, S. Emori, T. Nozawa, T. Ogura, N. Okada, T. Suzuki, Y. Tsushima, M.
Kawamiya, A. Abe-Ouchi, H. Hasumi, A. Sumi, M. Kimoto: Different transient
climate responses of two versions of an atmosphere-ocean coupled general circulation
model with similar climate responses, Geophysical Research Letters, in press, 2007
-37-
21. Oka, A., and H. Hasumi (2006): Effects of model resolution on salinity transport
through northern high-latitude narrow passages and the Atlantic meridional
overturning circulation, Ocean Modelling 13 (2), 126-147.
22. Imada., Y. and M. Kimoto, 2006: Improvement of thermocline structure that affect
ENSO performance in a coupled GCM, SOLA, 2, 164-167
23. R. J. Stouffer, J. Yin, J. M. Gregory, K. W. Dixon, M. J. Spelman, W. Hurlin, A. J.
Weaver, M. Eby, G. M. Flato, H. Hasumi, A. Hu, J. Jungclause, I. V. Kamenkovich, A.
Levermann, M. Montoya, S.Murakami, S. Nawrath, A. Oka, W. R. Peltier, D. Y.
Robitaille, A. Sokolov, G. Vettoretti, N. Weber (2006): Investigating the causes of the
response of the thermohaline circulation to past and future climate changes, Journal
of Climate Vol.19 Issue 8: 1365-1387 15 APR 2006, Journal of Climate Vol.19
Issue 8: 1365-1387 15 APR 2006
24. Hasegawa, A. and S. Emori (2007): The effect of air-sea coupling in the assessment of
CO2-induced intensification of tropical cyclone activity, Geophysical Research
Letters, accepted.
25. Takemura, T., Y. Tsushima, T. Yokohata, T. Nozawa, T. Nagashima, and T. Nakajima,
2006: Time evolutions of various radiative forcings for the past 150 years estimated
by a general circulation model, Geophysical Research Letters, Vol. 33, No.19, L19705,
doi:10.1029/2006GL026666.
26. Takemura, T., Yoram J. Kaufman, Lorraine A. Remer, and Teruyuki Nakajima, 2007:
Two competing pathways of aerosol effects on cloud and precipitation formation,
Geophysical Research Letters, in press, doi:10.1029/2006GL028349.
27. 稲津 將、 2006: 南半球冬季ストームトラックの東西非対称性の形成について~2005
年度山本・正野論文賞記念講演~、 天気、 53、 537-549.
論文(投稿中)
1.
Saito, K., S. Emori, M. Kimoto, and T. Zhang, 2007: Change in hydro-thermal
regimes in the soil-freezing regions under the global warming simulated by a
high-resolution climate model, J. Geophys. Res., sub judice.
2.
Ogura, T., S. Emori, Y. Tsushima, T. Yokohata, A. Abe-Ouchi, and M. Kimoto:
Climate sensitivity of a general circulation model with different cloud modeling
assumptions, Journal of the Meteorological Society of Japan, submitted.
3.
McAvaney, B. J., R. Colman, B. J. Soden, N.Andronova, S.Emori, Y.Tsusima, T.Ogura,
I.Musat, S.Bony, and K.Taylor, 2005: Conparison of radiative response mechanisms
in multi-model and parameter perturbed climate change ensembles, Climate
Dynamics, in revision.
4.
Arai, M., and M. Kimoto, 2007: Simulated interannual variation in summertime
atmospheric circulation associated with the East Asian monsoon. Climate Dyn., sub
judice.
5.
Tsuneaki Suzuki, Kozo Ninomiya, Seita Emori: The impact of cumulus suppression
on AGCM simulations of the Baiu front, Journal of the Meteorological Society of
Japan (submitted in July).
-38-
6.
Rumi Ohgaito and Ayako Abe-Ouchi: The role of ocean thermodynamics and
dynamics in Asian summer monsoon changes during the mid-Holocene, Climate
Dynamics
7.
Naosuke Okada, Hiroyasu Hasumi, Hideo Shiogama, and Toru Nozawa:
Anthropogenic and natural forcing impacts on the North Atlantic thermohaline
circulation in the 20th century, Geophysical Research Letters, submitted.
8.
Hideo Shiogama, Toru Nozawa, and Seita Emori: Robustness of climate change
signals in near term predictions up to the year 2030: Changes in the frequency of
temperature extremes, Geophysical Research Letters, submitted.
口頭発表
1.
塩竈秀夫 (2006): 20世紀後半において温室効果ガス濃度とエアロゾル排出量の増加
が気温の極値現象に及ぼした影響、 日本気象学会夏期特別セミナー、 伊勢、 2006 年
7月
2.
Takemura, T., Y. J. Kaufman, L. Remer, T. Nakajima, and K-1 Project, 2006: Aerosol
effects on climate system simulated by aerosol climate model, 2nd International
Conference on Global Warming and the Next Ice Age, Santa Fe, USA, 17-21 July.
3.
Inatsu, M., M. Kimoto, and A. Sumi: An aspect of stratospheric and tropospheric
global warming response in an atmosphere-ocean coupled GCM, Workshop on polar
and global climate modeling: connection and interplay,Fairbanks, Alaska, USA, 14
Jun 2006.
4.
横畠徳太、 江守正多、 野沢徹、 小倉知夫、 對馬洋子、 阿部彩子、 羽角博康、住明
正、 木本昌秀: CO2 増加に対する気候応答:海洋熱吸収と海氷アルベドフィードバッ
ク、 日本気象学会 2006 年春季大会、 つくば、 2006. 5.
5.
Kimoto, M., 2006: Current status and future plans of Japanese climate modeling,
Seminar presentation at the Lawrence Livermore National Laboratory, 28
September, 2006, Livermore, CA., USA.
6.
Shin, S, K. Ha, and M. Kimoto, 2006: Effects of vertical diffusion scheme on a GCM.
Eos Trans, AGU, 87(36), West. Pac. Geophys. Meet. Suppl., Abstract A11B-0013.
7.
稲津 將: GCM を用いたストームトラックの研究とその轍を乗り越えるた めの挑戦~
双方向ネスティングシステム開発に関する現況報告ととも に~、東京大学 CCSR セミ
ナー、 柏、 2006 年 4 月 21 日.
8.
木本昌秀、 2006: High-impact weather: 今後の研究の展望. 日本気象学会 2006 年春季
大会シンポジウム「異常気象に挑む-豪雨等極端な降水現象の理解と予測を目指して-」、
つくば国際会議場、 2006 年 5 月 21 日.
9.
Kimoto, M., 2006: High-resolution coupled ocean-atmosphere modeling for climate
studies, Proceedings of the University Allied Workshop 2006: Climate and
Environ-mental Studies for Global Sustainability,2006 年 7 月 18-20 日.
10. Kimoto, M., A. Sumi, and M. Inatsu: High-resolution coupled ocean-atmosphere
modeling for climate studies, Workshop on polar and global climate modeling:
connection and interplay, Fairbanks, Alaska, USA, 14 Jun 2006.
-39-
11. Ishii, M., K. Sakamoto, Y. Fukuda, S. Hirahara, T. Matsumoto, and M.Kimoto, 2006:
Historical ocean temperature and salinity analyses for climate stud-ies, EGU
General Assembly, 2006 年 4 月 3-7日.
12. Kimoto, M., 2006: Report of Japanese climate modeling activities, The 10th session
of the JSC/CLIVAR working group on coupled modelling. 25-27 September, 2006,
Victoria, Canada.
13. Takemura, T., Y. J. Kaufman, L. A. Remer, and T. Nakajima, 2006: Simulation of
aerosol effects on cloud and precipitation formation by aerosol climate model, EGU
General Assembly 2006, Vienna, Austria, 2-7 April.
14. Takemura, T., T. Nakajima, and Y. J. Kaufman, 2006: Simulation of aerosol effects
on climate system by aerosol climate model, AMS 12th Conference on Atmospheric
Radiation, Madison, USA, 10-14 July
15. Ishii, M., 2006: Steric Sea level Changes Estimated from Historical Ocean
Subsurface Temperature and Salinity Analyses, World Climate Research
Programme Workshop, "Un-derstanding Sea Level Rise and Variability",2006 年 6
月 6-9 日.
16. Inatsu, M., and M. Kimoto: The atmosphere--ocean coupled effect in the
high-resolution CCSR/NIES/FRCGC GCM, European Geosciences Union (EGU),
Vienna, Austria, 4 Apr 2006.
17. Kimoto, M., 2006: Tropical and extratropical factors affecting the East Asian climate,
Eighth AMIP/East Asian climate workshop, 31 March-1 April, 2006, Nantou,
Taiwan.
18. Chen, X., and M. Kimoto, 2006: Tropical Instability Waves Simulated by a Coupled
GCM. Eos Trans, AGU, 87(36), West. Pac. Geophys. Meet. Suppl., Abstract
OS21B-0028.
19. 竹村俊彦: アジア域におけるエアロゾル気候影響のシミュレーション、 日本気象学会
2006 年春季大会、 つくば国際会議場、 2006 年 5 月 21-24 日.
20. 荒井(野中)美紀: シベリア域の地表面状態が夏季東アジア域の気候に及ぼす影響、 北
ユーラシア気候変化・水循環変動に関する研究集会、 2006 年 7 月 4 日.
21. 稲津 將・楊 鵬・木本 昌秀・住 明正: 温暖化に対する基礎応用研究、 九州大学セミナ
ー、 福岡、 2006 年 9 月 21 日.
22. Chen、 X、 木本昌秀、 2006: 高解像度大気海洋結合モデルで表現された赤道海洋不
安定波、 日本気象学会春季大会、 つくば国際会議場、 2006 年 5 月.
23. 木本昌秀、 2006: 地球温暖化と異常気象、 東北極洋会、 2006 年 9 月 15 日、 仙台市
ホテル 仙台プラザ.
24. 木本昌秀、 2006: 地球温暖化と異常気象、 東京都高度建設技術研修 2006 年 7 月 28
日、 東京都職員研修所、 江東区、 東京.
25. 木本昌秀、 2006: 地球温暖化と異常気象、 (基調講演) ISO 友の会第 8 回総会、 2006
年 4 月 12 日、 経団連会館.
-40-
26. 木本昌秀、 2006: 地球温暖化と異常気象、 環境講演会 富士通株式会社川崎工場岡田記
念ホール、 2006 年 6 月 28 日、 川崎市.
27. 木本昌秀、 2006: 地球温暖化観測に期待する (モデル研究の視点から)、 地球温暖化
観測推進事務局設立記念セミナー、 2006 年 9 月 19 日、 国立環境研究所、 つくば.
28. 木本昌秀、2006: 地球規模の異常気象と地球温暖化、地球温暖化・ヒートアイランド 対
策講演会 2006 年 8 月 8 日高輪区民センターホール.
29. 木本昌秀、 2006: 地球規模の異常気象と地球温暖化、 トヨタ自動車セミナー 2006 年
9 月 6 日、 愛知県豊田市.
30. 横畠徳太、 江守正多、 野沢徹、 小倉知夫、 阿部彩子、 住明正、 木本昌秀: 二酸化
炭素増加に対する気候応答:海洋と海氷の役割、 日本地球惑星科学連合、2006 年大会、
幕張、 2006. 5.
31. 木本昌秀、 2006: 変化する地球環境と気象災害、第 5 回水文・水資源学会セミナー「―
気候変動と水災害・生態系―」、 東京大学農学部弥生講堂、 2006 年 5 月 25 日.
32. 安富奈津子、 木本昌秀、 江守正多、 2006: CCSR/NIES/FRCGC T106 CGCM から
得られた地球温暖化時の夏季アジアモンスーン域の主要変動モード、 2006 年日本気象
学会秋季大会講演予稿集、 B205.
33. 今田 由紀子: 「大気海洋結合大循環モデルによる ENSO の再現 -現状と課題-」、 2006
年 11 月 16 日 異常気象研究集会
34. 塩竈秀夫、 江守正多、 野沢徹: 2030 年までの確率的気候変化予測に向けて、 日本気象
学会 2006 年秋季大会、 ウィルあいち、 2006 年 10 月 25-27 日.
35. 塩竈秀夫、 Nikolaos Christidis、 John Caesar、 横畠徳太、 野沢徹、 江守正多: 20
世紀後半において温室効果ガス濃度とエアロゾル排出量の変化が気温の極端現象に及ぼ
した影響、 日本気象学会 2006 年秋季大会、 ウィルあいち、 2006 年 10 月 25-27 日.
36. Kimoto, M., 2006: A seasonal-to-interannual hindcast experiment by acoupled
ocean-atmosphere GCM, MIROC. Global Environmental Change: Regional
Challenges, An Earth System Science Partnership Global Environmental Change
Open Science Conference, 9-12 November 2006, Beijing, China.
37. Kimoto, M., 2006: Akio Arakawa symposium, lunch-time talk (invited), 87th Annual
Meeting of the American Meteorological Society, 16 January, 2007,San Antonio,
Texas, U.S.A.
38. Takemura, T., 2006: Analysis of aerosol effects on climate system with a aerosol
climate model, 5th AEROCOM Workshop, Virginia Beach, USA, 17-19 October.
39. Takemura, T., T. Nakajima, and T. Nozawa, 2006: Analysis of aerosol effects on
climate system and time evolutions of various radiative forcings with a global
climate model, Northeastern Asian Symposium 2006: Climate Change and Carbon
Cycle. Fukuoka, Japan, 6-9 November (invited).
40. Emori, S: Climate science community outlook on new global scenarios, Energy
Modeling Forum22, 2006 年 12 月, つくば.
-41-
41. Kimoto, M., 2006: Climate Variability that affects the Asian-Pacific region, Lecture
given for 2006 JICA group training course in meteorology, 28 November, 2006, Japan
Meteorological Agency, Tokyo.
42. 横畠徳太、 江守正多、 野沢徹、 小倉知夫、 岡田直資、 對馬洋子、 鈴木立郎、 河宮
未知生、 阿部彩子、 羽角博康、 住明正、 木本昌秀: CO2 漸増地球温暖化実験:様々
なモデルにおける気候フィードバック、 日本気象学会 2006 年秋季大会、 ウィルあい
ち、 2006 年 10 月 25-27 日.
43. Dmitry Kiktev, John Caesar, Lisa Alexander, Hideo Shiogama, and Mark Collier:
Comparison of observed and modeled trends in annual extremes of temperature and
precipitation, 87th American Meteorological Society Annual Meeting, San Antonio,
USA, 2007 年 1 月
44. Emori, S: Future climate change projection by high-resolution climate models and its
reliability, IR3S/ICAS 国際シンポジウム、 2006 年 11 月、 水戸.
45. Emori, S: Japan's Progress in Earth System Modelling Catalyzed by the Earth
Simulator and its Future Prospect, ESSP Open Science Conference, Nov., 2006,
Beijing, China.
46. 石井正好、 木本昌秀、 2006: MIROC 大気海洋結合モデルによる hindcast 実験、 第 4
回「異常気象と長期変動」研究集会、 2006 年 11 月 16-17 日、 京都大学防災研究所.
47. T. Yokohata, S. Emori, T. Nozawa, T. Ogura, N. Okada, T. Suzuki, Y. Tsushima, M.
Kawamiya, A. Abe-Ouchi, H. Hasumi, A. Sumi, M. Kimoto: Role of climate feedback
processes and ocean heat uptake in transient climate response to CO2 increase on
the atmosphre- ocean general circulation model, American Geophysical Union Fall
Meeting, San Francisco, 2006. 12.
48. Inatsu, M., M. Kimoto, and A. Sumi: The stratospheric sudden warming and its
global warming response in an atmosphere-ocean coupled GCM, 2nd
Korea-Japan-China Joint Conference on Meteorology, Seoul, Korea, 11 Oct 2006
49. T. Yokohata, S. Emori, T. Nozawa, T. Ogura, N. Okada, T. Suzuki, Y. Tsushima, M.
Kawamiya, A. Abe-Ouchi, H. Hasumi, A. Sumi, M. Kimoto: Transient climate
response and reproducibility of present climate states by atmosphere-ocean coupled
general circulation models, 3rd WGNE Workshop on Systematic Errors in Climate
and NWP Models, San Francisco, 2007. 2
50. Shin, S, M. Kimoto, and K. Ha, 2006: Treatment of vertical diffusion scheme in the
CCSR/NIES GCM and its effects, Second Korea-Japan-China Joint Conference on
Meteorology, 11-13 October, 2006, KINTEX, Goyang, Korea.
51. Kimoto, M., 2006: Tropical and extratropical factors affecting the interannual
variability of the East Asian climate, Second Korea-Japan-China Joint Conference
on Meteorology, 11-13 October, 2006, KINTEX, Goyang, Korea.
52. 稲津 將・楊 鵬・木本 昌秀: プロジェクト1年の取り組み~双方向ネスティングシステ
ムの開発と 中国華北の冬小麦生産高の気候変動に対する応答、 柏、 千葉、 2007 年 2
月 2 日.
53. 荒井美紀、 木本昌秀、 2006: 温暖化によるブロッキング高気圧の変化について、 第 4
回「異常気象と長期変動」研究集会、 2006 年 11 月 16-17 日、 京都大学防災研究所.
-42-
54. 稲津 將・木本 昌秀・住 明正: 温暖化気候における成層圏突然昇温、 日本気象学会 2006
年秋季大会、 ウィルあいち、 2006 年 10 月 25-27 日.
55. 稲津 將・木本 昌秀・住 明正: 温暖化気候における成層圏突然昇温、 異常気象と長期
変動の研究会、 宇治、 京都、 2006 年 11 月 17 日.日本気象学会 2006 年秋季大会、 ウ
ィルあいち、 2006 年 10 月 25-27 日.
56. 木本昌秀、 2006: 階層的モデリングによる広域水循環予測、 CREST 水の循環系モデ
リングと利用システム第 3 回領域シンポジウム、 2006 年 10 月 30-31 日、 コクヨホー
ル、 東京.
57. 木本昌秀、 2006: 気候・気象予測情報の高度化、 国家基幹技術「海洋地球観測探査シ
ステム」データ統合・解析システム キックオフ会議、 2006 年 11 月 14 日、 東京大学.
58. 木本昌秀、 2006: 気候モデルによるシミュレーションと予測、 ISM シンポジウム「地
球環境研究における統計科学の貢献」招待講演、 2007 年 1 月 24 日、 統計数理研究所.
59. 木本昌秀、 宮坂貴文、 向井真木子、 2006: 気候モデルを用いた「地球温暖化」実験に
よるアジアモンスーン変化の評価、環境省推進費「人間活動によるアジアモンスーン 変
化の定量的評価と予測に関する研究」第 1 回アドバイザリーボード会議、 2006 年 11
月 22 日、 東京大学.
60. 塩竈秀夫、 野沢徹、 江守正多: 近未来気候変動予測における極端現象変動の検出可能
性、 異常気象と長期変動研究集会、 宇治、 2006 年 11 月
61. 木本昌秀、 2006: 現在と将来の気候、 東京大学気候システム研究センター・伊藤忠商
事株式会社/共催 一般公開講座「変化する気候」、 2006 年 11 月 29 日、 東京大学安
田講堂.
62. 竹村俊彦、 對馬洋子、 横畠徳太、 野沢徹、 永島達也、 中島映至: 大気大循環モデル
による 20 世紀の放射強制力の経年変化、 日本気象学会 2006 年秋季大会、 ウィルあい
ち、 2006 年 10 月 25-27 日.
63. 稲津 將・楊 鵬・木本 昌秀・住 明正: 地球温暖化データの基礎応用利用、 北海道大学
EOAS セミナー、 札幌、 2006 年 12 月 8 日.
64. 木本昌秀、 2006: 地球温暖化と異常気象: 地球シミュレータから学ぶもの、 第 20 回寒
地土木研究所講演会特別講演、 2006 年 12 月 4 日、 札幌コンベンションセンター.
65. 安富奈津子、 木本昌秀、 2006: 地球温暖化下での夏季アジアモンスーン域の主要変動
モード、 第 4 回「異常気象と長期変動」研究集会、 2006 年 11 月 16-17 日、 京都大
学防災研究所.
-43-
共生課題 1-2(電中研、九大グループ)成果リスト(平成 18 年度)
論文
1.
仲敷憲和、 Dong-Hoon Kim, Frank O. Bryan、 吉田義勝、 津旨大輔、 丸山康樹、 北
端秀行: Recovery of thermohaline circulation under CO2 stabilization and overshoot
scenarios、 Ocean Modelling (Elsevier Ltd.)、 2006/11、 Volume 15、 Issues 3-4、 pp,
200-217 (doi:10.10.16/j.ocemod.2006)
2.
Tsutsui, J., Y. Yoshida, D.-H. Kim, H. Kitabata, K. Nishizawa, N. Nakashiki, K.
Maruyama (2007): Long-term climate response to stabilized and overshoot
anthropogenic forcings beyond the 21st century. Climate Dyn., 28, 199-214.
3.
Gent, P. R, 津旨大輔, F. O. Bryan, Gokhan Danabasoglu, Keith Lindsay,Matthew W.
Hecht, Scott Doney: Ocean chlorofluorocarbon and heat uptake during the 20th
Century in the CCSM3, J. Climate, 2006 年 6 月, 19 巻 11 号
4.
Onitsuka, G. T. Yanagi and J. H. Yoon (2006):A numerical study on nutrient sources
in the surface layer of the Japan Sea using a coupled physical-ecosystem model". J.
Geophys. Res. – Oceans, (accep).
5.
Danchenkov, M.A., V.B. Lobanov, S.C. Riser, K. Kim, M. Takematsu, and J.-H. Yoon
(2006):A History of Physical Oceanographic Research in the Japan/East Sea.
Oceanography, 19(3), 18-31.
6.
Watts, D.R., M. Wimbush, K.L. Tracey, W.J. Teague, J.-H. Park, D.A. Mitchell, J.-H.
Yoon, M.-S. Suk, and K.-I. Chang(2006):Currents, Eddies, and a “Fish Story” in the
Southwestern Japan/East Sea. Oceanography, 19(3), 64-75.
学会/Workshop
1.
仲敷憲和、 Frank O. Bryan、 吉田義勝、 朴 惠善 : Development of a high-resolution
global ocean and sea ice model、 SHOTS (Southern Hemisphere Ocean Tracer
Studies) Workshop、 2006 年 11 月 14 日、 気象研究所、 気象研究所 (共催:電中研)
2.
津旨大輔、 Frank Bryan、 Keith Lindsay、 Scott Doney、 仲敷憲和、 吉田義勝、 西
岡純: PO4 and Iron distributions in the CCSM3 POP with OCMIP’: 11th CCSM
workshop、 NCAR CCSM、 2006/06/20、 米国コロラド州 Breckenridge
3.
吉田義勝、 仲敷憲和、 朴惠善、 Frank Bryan: GHGs stabilization and overshoot
profile experiments based on the SRES A2 scenario、 11th Annual CCSM workshop、
NCAR CCSM、 2006/06/20、 米国コロラド州 Breckenridge
4.
西澤慶一、 吉田義勝、 筒井純一: Extreme value analysis of daily precipitations
calculated by NCAR CCSM3、 11th Annual CCSM workshop、 NCAR CCSM、
2006/06/20、 米国コロラド州 Breckenridge
5.
Tsutsui, J., and H. L. Tanaka (2006): Trends in large-scale circulations and
thermodynamic structures in the tropics derived from atmospheric reanalyses and
climate change experiments. 27th Conference on Hurricanes and Tropical
Meteorology, Amer. Meteor. Soc., April 24-28, Monterey, CA, 5p.
-44-
6.
筒井純一 (2006): 熱帯大気の熱力学的構造の経年変化に関する再解析データと気候モ
デル実験の比較. 日本気象学会 2006 年度春季大会、 5 月 21-24 日、 つくば、 講演予
稿集、 154.
7.
筒井純一、 吉田義勝、 仲敷憲和、 西澤慶一 (2006): 大循環モデルでシミュレートさ
れた気候変化のインパルス応答関数による近似、 日本気象学会 2006 年度秋季大会、 10
月 25-27 日、 名古屋、 講演予稿集、 144.
8.
西澤慶一、 吉田義勝、 筒井純一: NCAR CCSM3 の長期ランに基づく日降水量極値の
変化予測、 日本気象学会 2006 年度秋季大会、 10 月 25-27 日、 名古屋、 講演予稿
集
9.
津旨大輔、仲敷憲和、吉田義勝、 Frank Bryan、Keith Lindsay、青山道夫、廣瀬勝巳:
Cs-137 and CFC simulations by CCSM3 POP、CCSM Ocean Model Working Group
Meeting、2006/12/13
10. 津旨大輔、 青山道夫、 廣瀬勝巳: 137Cs as a new tracer in an Ocean General Circulation
Model、 SHOTS (Southern Hemisphere Ocean Tracer Studies) Workshop、 2006 年
11 月 14 日、気象研究所 (共催:電中研)、気象研究所
11. 津旨大輔、 Keith Lindsay、 Gokhan Danabasoglu、Scott Doney、西岡純、芳村毅、
Frank Bryan、 仲敷憲和: Phosphate and iron concentrations in an ocean carbon cycle
model、 15th PICES Annual meeting、PICES、2006/10/13、横浜
12. 津旨大輔、 Frank O. Bryan、 Keith Lindsay、 西岡純、芳村毅: 海洋炭素循環モデル
によるリン酸と鉄濃度分布の再現、日本海洋学会秋季大会、2006/09/26、 名古屋大学
13. Yoon, J.H.: The ocean circulation of the Japan/East Sea – Its past and present.
CREAMS/PICES International Workshop on Model/Data Inter-comparison for the
Japan/East Sea (invited). 2006 年 8 月
14. 尹 宗煥:日本海の海洋循環.第 3 回海洋深層水セミナー佐渡大会(基調講演)、2006
年 10 月
雑誌寄稿・書籍・報告書等
1.
丸山康樹、筒井純一、西沢慶一、津旨大輔: 地球温暖化影響評価研究の体系的整理、電
力中央研究所 調査報告:V06401、 中央電力協議会要請研究、2006 年 12 月 1
2.
丸山康樹:温室効果ガス濃度安定化と超長期温暖化予測、2007 年 3 月号、日本エネルギ
ー学会誌
3.
丸山康樹:温室効果ガス安定化のシナリオと課題、電気評論特集、2006 年 11 月号
4.
丸山康樹、筒井純一、仲敷憲和:改定新版 講座「現在エネルギー・環境論(2006 年改
訂版)」、エネルギーフォーラム社、p.94-101、2006 年 10 月 7 日.
5.
丸山康樹:地球温暖化からの脱出-ゼロエミッション社会の実現-、エレクトロヒート
147 号、2006 年 5 月
-45-
第
講演/Outreach
1. 丸山康樹: 地球温暖化影響の科学的予測、 エネルギー問題に発言する会、 我孫子運営
センター、 2006 年 11 月 6 日
2.
丸山康樹:土木学会中国支部講演会「水系環境の保全と創造をめざして-地球温暖化の
影響と今後の水管理技術-」のうち招待講演「地球温暖化予測の最前線」
、広島工業大学、
2006 年 8 月
3.
丸山康樹:濃度安定化の温暖化防止効果-地球シミュレータを用いた超長期予測-、大気
環境学会植物分科会、2006 年 6 月
4.
丸山康樹: 「濃度安定化シナリオの温暖化防止効果」-温暖化は防止できるのか?-、出前
講座講師研修会、 北陸電力 地域広報部エネルギー広報チーム統括、 2006 年 11 月 07
日
5.
丸山 康樹: 地球シミュレータを用いた最新の温暖化予測 -今、我々市民ができること-、
狛江市民まつり、 狛江運営センター、2006 年 11 月 11 日
6.
K. Maruyama: Global Warming Projection of IPCC CO2 Stabilization Scenarios:
Seeking fro Mitigation Options after Kyoto Protocol, the JGSEE - Kyoto University
Joint International Conference on Sustainable Energy and Environment: Technology
and Policy innovations (SEE 2006) JGSEE, Nov. 22 2006.
7.
吉田義勝、 丸山康樹: Global warming projections based on IPCC CO2 stabilization
scenarios、 Seminar on Public Information on Nuclear Energy、 Malaysian Nuclear
Agency、 2006/11/27、 Swiss-Garden Hotel、 Kuantan、 Malaysia
8.
西澤慶一: 地球温暖化による地域気候の変化:気温・降水量・台風の将来予測、 第 47
回全社技術研究発表会(土木部門分科会)、 九州電力(株)土木部、 2006/04/27、 九州電
力鹿児島支店
教育活動/マスコミ対応等
1.
丸山康樹: 東京大学工学部システム創成学科、 環境・エネルギーシステムコース環境調
和論、 2006 年 6 月 26 日、12 月 15 日
2.
丸山康樹: 筑波大学大学院システム情報工学研究科非常勤講師、 リスク工学特別講義 I、
2006 年 12 月 6 日~12 月 8 日
3.
丸山康樹: 日本大学大学院非常勤講師、 エネルギー環境保全論、 2006 年 12 月 13 日、
2007 年 1 月 10 日、17 日
4.
丸山康樹: 「温暖化対策待ったなし」
、 朝日新聞朝刊 15 面、2006 年 10 月 4 日
5.
丸山康樹: ここまで進む温暖化、 NHK ラジオ夕刊、 日本放送協会、 2006 年 9 月 26
日
以
-46-
上
地球環境変化予測のための地球システム統合モデルの開発
研究代表者: 松野太郎(地球環境フロンティア研究センター特任研究員)
1.研究計画の目的
本研究の目的は地球環境全体の変化、すなわち気候、大気・海洋の組成、陸・海の生態系
が相互に影響を与えつつ一体となって変化して行くのをシミュレートできる地球環境(地球
システム)の統合モデルを開発する事、およびそれを用いて炭素循環のフィードバックを含
んだ地球温暖化予測を行う事である。
これまでの地球温暖化予測では、温暖化の原因である大気中二酸化炭素(CO2)濃度の将来に
ついて、人間活動による CO2 放出シナリオをもとに簡略化したモデルを用いて、海洋と陸
域生態系(植生・土壌)への吸収量を見積もって大気 CO2 濃度の将来予測を先ず行い、そ
の結果を気候モデルに導入して温暖化と気候変化のシミュレーションを行って来た。しかし
これでは十分とは言えない。CO2 増加は温暖化・気候変化を引き起こすが、逆に気候変化は
大気中 CO2 濃度に影響を与える可能性があるのにそのフィードバック効果が取り入れられ
ていなかったからである。温暖化によって土壌有機物の分解が進んで大気中に CO2 やメタ
ン(CH4)の濃度が増加する、即ち正のフィードバックが作用する可能性があるので、これを
無視するのは危険である。
気候モデルに炭素循環プロセスを組み込んでそのフィードバック効果を取り入れたモデ
ルで予測を行わねばならない。また、温暖化・気候変化は生態系の変化を引き起こすと考え
られているが、それも CO2 や CH4 の濃度に影響する。さらに、もう一つの温室効果ガスで
ある対流圏オゾンも温暖化・気候変化の影響を受ける。そこで、大気・海洋・陸域生態系に
またがる炭素循環や大気組成変化のプロセスを気候モデルに取り入れ、(炭素循環・大気組
成・気候統合モデルを作り)、それらのフィードバックを含めて温暖化予測実験を行う必要
がある。
2.研究計画の概要
大気・海洋・陸地面の、主に物理的状態を扱う「物理的気候システムモデル」として東京
大学気候システム研究センターと国立環境研究所で開発された既存の CCSR/NIES モデル
を用い、それを基礎として、地球環境フロンティア研究センターの各研究プログラムで研究
されている、大気・海洋の化学組成変化、陸域生態系と大気の物質交換などの諸過程をそれ
ぞれに取り入れた部分統合モデルを3年目を目安に作り、その上で全体を結合した、「地球
システム統合モデル」を研究期間内に完成させる。その過程で3~4年目までに、大気・海
洋・陸域生態系にまたがる全球炭素循環モデルを作り、それと気候モデルを結合させたモデ
―47―
ルを用いて温暖化と炭素循環とのフィードバック効果を含んだ温暖化予測実験を行う。温暖
化と大気組成や陸域生態系の相互作用に関して、さらに温暖化そのものについても未解明の
プロセスが多いので共生プロジェクトの第3課題のもとに行われる野外観測やプロセス研
究によって必要なパラメータを求め、逆にモデルの結果から精度向上に必要なプロセス研究
を依頼し、モデルの確度向上を図る。
3.年次計画
研究開発1年目:全体及びサブ課題の研究戦略立案及び各サブ課題での部分統合モデル作製
に向けての個別モデルの整備。
研究開発2年目:サブ課題ごとに部分統合モデルの開発。
研究開発3年目:各サブ課題において部分統合モデルを作りあげる。この段階において地球
温暖化にかかわる数値実験着手。次年(2005年)にかけ実験を終了し
成果をできるだけ IPCC 第4次報告書に間に合うようまとめる。
研究開発4年目:部分統合モデルによる実験を終了し同時に並行して全体を統合した「地球
システム・モデル」の開発に着手。
研究開発5年目:地球システム・モデル完成。それを用いた温暖化に伴う全地球環境変化予
測の試行。
4.平成18年度の研究計画
現在地球環境フロンティア研究センターの各研究プログラムで開発が進められている個別
モデル(大気組成、陸域生態系炭素循環など)の開発をひき続き進めながらそれらひとつひ
とつを物理気候モデル(大気・海洋・陸面の“物理的”過程を中心としたモデル、CCSR/NIES
により開発された既存のものを利用)と結びつけ、「部分統合モデル」を作る作業を継続す
る。またそうした「部分統合モデル」全体を統合した「地球システムモデル」の開発に着手
する。
(1)炭素循環モデル、炭素循環・気候変化結合モデル開発
大気海洋結合炭素循環モデルを用い、感度実験も含め複数例行った温暖化実験の結果を解析
し、論文にまとめる。大気化学過程や成層圏も含んだ全球統合モデルによる温暖化実験を行
い、結果の解析を行う。また、大気大循環モデルに Sim-CYCLE を組み込んだモデルにより、
土地利用変化を含んだ 21 世紀中の陸域炭素動態と気候との関係を調べる。個体ベースの全
球植生動態モデル(SEIB-DGVM)の開発に関しては、全球スケールへの拡張が一段落した
状態である。平成 18 年度は観測結果との一致をよくするためのモデルの改良や、大気大循
―48―
環モデルへの組み込みを行う。
(2)温暖化・大気組成変化相互作用モデル開発
① 温暖化・大気組成変化相互作用モデル
平成16年度より行っている成層圏オゾン化学・オゾンホール化学の導入作業および調整作
業を完了する。その上で現在に対する診断実験を行い、対流圏・成層圏オゾン分布の計算結
果について各種観測データと比較し、詳細に評価する。同時に、炭化水素類の植物からの放
出については陸域植生モデル(SimCYCLE など)との結合を行い、統合モデル内の化学・エア
ロゾル計算過程を完成させる。さらに統合モデルによる温暖化実験の結果を解析し、気候変
動と大気化学・エアロゾルとの間の双方向のフィードバック(影響)について定量的な検討
を行う。
② 温暖化―雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価
全球雲解像モデル NICAM を用いて、現実的な海陸分布のある設定の下で SST+2K等の温
暖化を想定した気候感度実験を実施する。これにより、既存の積雲パラメタリゼーションモ
デルにはないより詳細な雲微物理過程による雲-放射フィードバックの定量的評価を行い、
次世代の気候モデルとしての原型版を完成する。また、NICAM へのエアロゾルモデルの実
装を完了し、エアロゾル-雲-放射フィードバックを総合的に評価するための実験を実施する。
(3)寒冷圏モデル開発
開発済みの気候-氷床結合モデルへさらに陸域・海洋の炭素循環過程を組み込み、大気 T42、
海洋 1.4 度程度の解像度で 300 年あるいはそれ以上の長期積分を行う。PMIP(古気候モデル
相互比較プロジェクト)の方向性にあわせ、海洋炭素循環モデルの改造も検討する。
(4)気候物理コアモデル改良
上端を成層圏まで拡張した統合モデルの、成層圏大気大循環、および化学物質の分布
に関して、年々変動や長期トレンドなども含めて、なるべく現実的になるように、気候物理
コアの改良を行っていく。大気組成グループと連携しつつ、本グループとしては、非地形性
重力波抵抗パラメタリゼーションの調整や、対流圏気候に影響する物理過程パラメタリゼー
ションの調整によって、上記の目標を達成する。重力波抵抗パラメタリゼーションの改良に
必要な高解像度大気モデルによる成層圏の波動や大循環の研究は引き続き行っていく。
―49―
(5)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)関連活動への参加と温暖化予測の比較検討
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第 4 次報告書へ寄与する為、国際モデル比較ワ
ークショップ等の活動に参加し、国内外から報告されている温暖化予測中間結果、シミュ
レーション手法、評価手法等について比較検討を行う。また、各国の温暖化研究の動向調
査を行うと共に、内外の研究者による進捗状況についての情報交換と検討を行う。
5.平成18年の研究成果
(1)炭素循環モデル、炭素循環・気候変化結合モデル・サブグループ
①
陸域炭素循環モデル
平成 18 年度は、(1) 気候-陸域炭素循環結合モデル(Sim-CYCLE+MATSIRO+AGCM)を用い
た 20 世紀の全球炭素循環シミュレーションの詳細解析、(2)結合モデルの機能のさらなる高
度化を行った。以下に、詳細を記す。
(1) 気候-陸域炭素循環結合モデルを用いて、20 世紀後半の全球炭素循環と気候のアノマリ
ー(通常の月変化データよ
環のアノマリー関係につい
て調べた。それによると、
CO2 アノマリーの変化は、
温度アノマリーの変化の 1
~2 年後に起こっていた(図
1上)。このことは、Keeling
らによる地上観測の結果と
近いものであった。また、
陸域炭素循環において、従
属 栄 養 生 物 呼 吸 (HR)ア ノ
大気 CO2 濃度 (ppmv)
の変動成分)と陸域炭素循
0.4
a)
CO2 アノマリー
1
0.2
0
0
-1
-0.2
温度アノマリー
-2
陸域炭素フラックス (Pg C yr-1)
年々変化を差し引いたあと
2
-0.4
3
2
b)
HRアノマリー
1
0
-1
NPPアノ
マリー
-2
-3
1960
1965
1970
マリーは温度アノマリーと
1975
1980
1985
NCBア
ノマリー
1990
1995
Year
同様の動きを見せ、純炭
図1: 気候-陸域炭素循環結合モデルによって再現された 20
素収支(NCB)アノマリー
世紀後半の a) 大気 CO2 濃度、全球平均 2m 気温、b) 陸域炭
の加速度の変化と CO2 ア
素フラックス(NPP, HR, NCB; NCB=NPP-HR)のアノマリー
―50―
全球平均2m気温 (oC)
り 、平 均季節 変化 と平均
ノマリーの変化は近い動きを示した(図1下) 。これらのことから、温度のアノマリーは、
陸域コンポーネントを通して、全球炭素循環の短期変動に約 1 年半のタイムラグを持って、
大きな影響を与えていることがわかった。また、それらは観測の結果と近いことから、開発
した結合モデルは全球の炭素循環をうまく表現することができたと考えられる。
(2) より現実的な将来予測シミュレーションを行うために、気候-陸域炭素循環結合モデル
の機能を高度化するべく、モデル構造の一部を変更した。主な変更点は次の通りである。①
-1. Sim-CYCLE 内で利用する土壌水分データを MATSIRO から取り入れるための一部コード
の変更、①-2. グリッド内の土地利用変化が陸面の熱・水循環過程に与える影響をより現実
的に表現するために、グリッド内に複数の土地被覆タイプを任意の割合を持って設定するこ
とのできるモザイク化機能を持つ Mozaic-MATSIRO の導入、②将来予測される植生分布の
変化を考慮するために地球フロンティア佐藤氏らによって開発された動的全球植生モデル
SEIB-DGVM の導入。これらのうち①-1、①-2 についてはすでに完了し、これらの機能を
利用したシミュレーション実験を計画中である。また、②については、MATSIRO と融合し
た形での AGCM オプションとして導入を目指しており、現在は、新たなオプションの作成
や、開発者の佐藤氏との協力関係の元、SEIB-DGVM 側のコードの大幅な変更を行っている。
② 海洋生物地球化学モデル
②−a 地球システム統合モデルの炭素循環コンポーネントについて
昨年度までで、炭素循環過程を気候モデルに組み込んで行った温暖化予測実験を行い、炭素
循環と気候変化との間に有意な正のフィードバックが存在することを示した。今年度は、そ
うしたフィードバックの空間分布に焦点を当てて解析を行い、フィードバックのメカニズム
を地域スケールで明らかにした。
用いたモデルは、東大気候センターと国立環境研究所、地球環境フロンティア研究センター
が共同で開発した MIROC の中解像度版をベースにしたものである(解像度:大気 T42L20, 海
洋 0.5-1.4 度、44 層)。陸域炭素循環モデルとしては Sim-CYCLE(Ito and Oikawa, 2002)を、
海洋炭素循環モデルとしては Oschlies and Garçon (1999)の 4 コンパートメントモデルに炭酸
系の反応式を加えたものを用いる。このモデルにより、将来の二酸化炭素濃度予測実験を、
気候変化と炭素循環の相互作用を考慮する場合としない場合について行った。2100 年時点
での二実験間における二酸化炭素濃度差は 130ppmv で、地表平均気温に換算して 1 度程度
にあたることを昨年度報告した。
―51―
今年度行った解析として、2090 年代における陸域と海洋それぞれにおける炭素貯留量の 2
実験間での差を調べた結果を図2,3に示す。陸域では、ユーラシア大陸北部や北米大陸北
東部、赤道域で大きな正のフィードバックを示すことが分かる。また、北米大陸西部やオー
ストラリア大陸南部では、他の地域と異なり負のフィードバックを示している。陸域炭素循
環の収支を調べた結果、こうしたフィードバックの空間分布に関しては地域スケールにおい
ても土壌有機物の増減が最も重要な要素になっていること、負のフィードバックを示す地域
では温暖化によりリターフォールが増加していることなどが分かった。
海洋からのフィードバックは概ね正の値をもち、温度上昇が海洋への二酸化炭素溶解度を下
げる効果が重要な要素である。フィードバックの大きさそのものは陸域のものに比べ小さい
が、北大西洋北部では陸域と匹敵する強度のフィードバックが存在する。この海域では、温
度上昇そのものが大きいわけではなく、温暖化による混合層深度の変化や深層水形成量の変
化といった物理的な海洋環境の変化が、こうした強い正のフィードバックをもたらしている
ことが解析の結果分かった。以上で述べた解析結果に感度実験の結果も含め、現在論文を執
筆中である。
図2:気候変化と炭素循環の相互作用を
図3:気候変化と炭素循環の相互作用を
考慮する場合としない場合の、2090 年
考慮する場合としない場合の、2090 年
代における陸域炭素貯留量の差。負の値
代における海洋炭素貯留量の差。負の値
(暖色系)が相互作用を考慮すると炭素
(暖色系)が相互作用を考慮すると炭素
貯留量が減る地域を示し、正のフィード
貯留量が減る地域を示し、正のフィード
バックに相当する。
バックに相当する。
②−b
プランクトン種構成を陽に表現した海洋モデルについて
「地球システム統合モデル」で得られた結果の解析の際の参考となるべく、やや複雑である
―52―
が 比 較 的 用 い ら れ て い る 全 球 3 次 元 中 程 度 複 雑 生 態 系 モ デ ル (Intermediate complexity
ecosystem model)を用いて、経年変動数値シミュレーションを行った。利用出来る長期観測
データは数少ないものの、それらと比較することによりモデルの有効性を検証することが出
来る。具体的には、NCEP の 1948 年から 2002 年までの再解析データの風応力、光、海面気
温、淡水フラックスなどを生態系モデルに与えることにより、海洋物理場の経年変動、その
変動に伴う海洋循環による栄養塩供給や生態系の変動を見ることが出来る。その成果は、
Ecological Modeling 特集号の数多くの論文として発表された。
また、本年度は、下のような鉄循環を海洋生態系に組み込んだ。鉄循環に関する予報変数
として、溶存鉄・粒子状鉄・ダストを組み込んだ。溶存鉄は、自由溶存鉄と錯体との間の化
学平衡を仮定した。ダストに関しては、大気からの供給と溶存鉄への熔解、沈降過程を組み
込み、溶存鉄に関しては、ダストからの溶解に加えて、下層との海水混合による交換、光合
成に伴う消費、再無機化に伴う供給、粒子状鉄からの溶解やダストや粒子状鉄への吸着過程、
粒子状鉄は、溶存鉄とのやりとり、下層との海水混合による交換に加えて、沈降過程を組み
込んだ(図4)。それぞれの過程に関する定式に用いるパラメータは、過去のモデリングおよ
び観測値を参考にして、妥当な範囲で、次に示す季節変動を再現するように、チューニング
して求めた値を用いた。まず、この鉄循環過程のモデルの結果の有効性を確認するために、
観測された生態系の再現が良く、鉄の各コンポーネントの値の季節変化がある程度分かって
いる西部北太平洋亜寒帯海域の代表的な観測地点 A7 において、ボックスモデルを構築し、
再現性をチェックした。具体的には、大気ダストの供給は、SPRINTARS で再現された 1996
年から 2005 年までの 10 年間を月平均化した気候値を作り、海洋下層の濃度は観測されたも
のを用いることで、海洋表層の鉄循環の境界条件を与えた。その結果を図5に示す。鉄過程
を組み込んだ場合、春季ブルームまではケイ酸塩制限だが、その後鉄制限が掛かり、生物生
産が減少、そのために6月頃の硝酸塩の減少が緩やかになる。概ね観測値と一致する結果と
なった。組み込んだ場合とそうでない場合ともに、パラメータ値をチューニングすることで
観測された生物量や栄養塩濃度などの季節変化を、概ね再現することが出来るが、生物生産
を制限する要因は、前者は鉄濃度、後者は硝酸塩濃度と大きく異なっている。これは、地球
温暖化に伴って、海洋成層化による栄養塩供給の減少や大気からのダスト供給量の変化とい
った直接的な原因に対する生態系の将来的な応答が異なる可能性を示している。現在、鉄循
環過程を3次元生態系モデルに組み込む作業を行っている。
―53―
大気からのインプット
溶存鉄Fed
0.5%溶解
ダスト
NO3
SiOH4
粒子状鉄
自由溶存鉄Fef
錯体FeL
DOM
平衡
6.0[nmol/L]
植物プランクトン
POM
動物プランクトン
0.6[nmol/L]
図4:開発した海洋鉄循環モデルの模式図。
NO3[μmol/L]
SiOH4[μmol/L]
40.0
20.0
観測値
観測値
feNEMURO
NEMURO(Vmax
10.0
×
20.0
NEMURO(Vmax
feNEMURO
NEMURO
0
1
7
12
0
1
× NEMURO
7
12
図5:西部北太平洋亜寒帯海域の代表的観測地点 A7 における鉄過程を組み込んだもの
(FeNEMURO)と組み込まなかったもの NEMURO(と最大光合成速度を半分にしたもの)の
栄養塩(硝酸塩とケイ酸塩)濃度の季節変化。点は観測値。
③ 陸域生態系変動モデル
プロジェクト期間中に、当グループは、動的全球植生モデル SEIB-DGVM を完成させた。
このモデルは、気象・土壌データを入力に用いて、植生の短期的応答(光合成量や呼吸量
など)と長期的応答(生物量や生態系の分布など)の両者を出力する(図6)。従来の同じ
ジャンルのモデルと比較して、SEIB-DGVM を特徴づけているのは、グリッドボックスごと
に幾つかの代表森林(草地)をおき、その中で個体ベースで扱われた木本が定着し、成長
し、そして死亡する点である(図7)。定着した場所から移動できない植物にとって、例え
ば多少の気温上昇よりも、隣の木が枯れて光環境が改善される事の方が、よほど大きな環
境変化であり、このような局所的に生じる個体間相互作用を無視しては過渡的な植生変化
を的確に予測する事はできない、というのがこの設計を採用した理由である。
―54―
図6:SEIB-DGVM の基本構成と、入出力
図7:SEIB-DGVM における植生動態の表現(30m×30 の温帯性混合樹
このような個体群動態の明示的な扱いによって、植生変動予測の妥当性を高めることが期
待されるだけではなく、従来のモデルでは為しえなかった感度分析が可能になる。図8は、
植生分布の変化予測を、異なる種子分散力の間で比較したものである。いずれのシミュレ
ーションにおいても、群青色で示される寒帯性常緑林の分布帯が北上し、その南端は、緑
で示される温帯性落葉林の分布帯に入れ替わっている。しかし、低い種子分散力のもとで
は、寒帯林が北上した後にも温帯林が侵入せずに、黄色で示される疎林帯となる地域が多
い。この比較は、今後 100~200 年間の植生分布の変化予測において、種子分散力が大きな
影響を持ち得ることを示している。
―55―
図8:産業革命移行からの植生分布変化を、異なる種子分散力の仮定の下で予測した。
2100 年までは、IPCC の business as usual シナリオにおける CO2 濃度変化と、同シナリオ
の元における気候変動予測とを入力に用いた。植生分布変化は気候変化に対してタイム
ラグがあるため、CO2 濃度・気候ともに 2100 年時の値で固定させシミュレーションを
100 年間行った(2100+100 年)。各色が示す植生帯については、本文を参照のこと。
また、SEIB の構造は、既存の植物個体群動態の知見やデータとの親和性が高く、パラメー
タの推定やモデルの検証が容易かつ直感的、という特長を持つ。すなわち、SEIB は、ロー
カルな森林動態研究とグローバルな物質循環研究とを連結する手段を提供する。そのよう
な可能性の一例を示すために、我々は SEIB を熱帯雨林向けにローカライズさせた。このロ
ーカライズは、SEIB の植生動態コンポーネントを、熱帯多雨林の GAP 動態モデル FORMIND
で置き換えることで実現されている。この変更は、熱帯多雨林の構成樹木のみに適用させ
ており、SEIB の全球モデルとしての枠組みは変わらない。FORMIND は現在の気候条件に
おける森林動態のみを出力するが、SEIB との結合により、気候条件を入力しながら、森林
動態に加えて炭素・水フラックスといった物質循環をも出力する森林シミュレータとなる。
これにより、例えば、将来の気候条件における熱帯雨林の植生動態や物質循環を予測する
上で、最重要な生理・生態プロセスを推定するなどといった利用が可能となり、野外生物
学者に対してのフィードバックを提供することができる。
―56―
(2)温暖化・大気組成相互作用モデル・サブグループ
① 温暖化・大気組成変化相互作用モデル
温暖化・大気組成変化相互作用サブモデルでは地球システム統合モデルの枠組みで、大気
化学過程(オゾン分布など)やエアロゾルの温暖化および海洋・陸域植生変化との相互作用
を表現・予測することを主な目的としており、CCSR/NIES AGCM を土台とした全球化学モ
デル CHASER やエアロゾルモデル SPRINTARS を用いてエアロゾル・化学のオンライン計
算を可能にすることが大きな課題である。本プロジェクトの枠組みでは、これまで主に次の
ような研究成果が得られている。
(1)CHASER モデル化学コンポーネントの高速化、
(2)
CHASER、SPRINTARS 量モデルの結合による化学・エアロゾル同時オンラインシミュレー
ション、
(3)IPCC 第4次報告書に向けた化学気候モデル実験の実施と評価、
(4)CHASER
を用いたオゾン・メタン・硫酸塩エアロゾルの将来予測実験(emission 変化、気候変動、成
層圏オゾン変動の効果をそれぞれ詳細に評価)
、(5)統合モデル中の CHASER への成層圏
化学過程の導入。本年度は、CHASER 中の光解離定数の計算手法改良を行い、CHASER/統
合モデルへの成層圏化学の導入作業を完了した。さらに、気候物理コアモデル改良サブグル
ープと連携し、本モデルを用いた試験実験を実施し、対流圏・成層圏化学の計算を詳細に評
価した。また、対流圏オゾン変動に対する気候感度を評価する実験を行い、解析した。
成層圏オゾン化学過程の導入・評価
地球システム統合モデル(KISSME)中の CHASER について成層圏化学反応の導入を完了
し、通年テスト実験を行い、計算結果についての評価を行った(気候物理コアモデル改良サ
ブグループと連携)。この際、新放射スキームの導入および改良に伴い CHASER の光解離定
数計算手法に改良を加えた。図9は本モデルによるオゾンと一酸化炭素の計算例であり、対
流圏オゾン化学だけでなく成層圏のオゾン化学も再現できていることが確認された。本モデ
ルシミュレーションは現時点ではオゾンホール過程は含まないが、極域成層圏雲スキームな
ど、オゾンホール再現に必要なモジュールの導入について、整備が進められている。
―57―
(a)オゾン(O3)
(b)一酸化炭素(CO)
図9:地球システム統合モデルにより計算された、オゾン(a)、一酸化炭素(b)の東西平均分
布(緯度-高度)。濃度は体積混合比(ppbv)。左上:DJF、右上:MAM、左下:JJA、右下:
SON。対流圏ではメタンの OH 酸化による CO 生成が、成層圏上部ではメタンの光解離に
よる CO 生成の影響が確認できる。
対流圏オゾン変動に対する気候感度の評価
産業革命以前から現在までの対流圏オゾン変動に対する気候感度実験を実施し、結果につ
いて評価を行った。本年度の研究では、化学・気候モデル CHASER によって計算されたオ
ゾン変動分布をオフラインで CCSR/NIES/FRCGC 気候モデルに与えて平衡応答実験を実行
し、気候場(地表気温・降水)への応答を定量的に解析した。この結果、1850-2000 年の対
流圏オゾン変動により、+0.5℃の気候感度(全球平均 2m 気温変化)が得られ、これはその
他の温室効果気体(CO2+CH4+N2O+CFCs)の変動に対する応答 +2.3℃(本実験)の 20%で
あり、対流圏オゾン変動が全球気候に対して無視できない影響を持つことが示された。
成層圏化学気候モデルを用いた過去のオゾン変動再現実験
はじめに
モントリオール議定書によるオゾン層破壊物質の排出規制により、その大気中濃度は減少
を始めたことが報告されている。これを受け、南極オゾンホールに代表される成層圏オゾン
層の破壊も今後回復に向かうことが予想されているが、そうした将来の見通しに使用される
成層圏化学気候モデル(Chemistry-Climate Model: CCM)にまつわる様々な不確実性から、
その回復の時期に関してはまだ議論が続いている。我々は、世界気象機関(WMO)による
次期「成層圏オゾンに関する科学アセスメント」
(2007 年刊行予定)への貢献を目的とする、
国際的な成層圏 CCM 相互比較プロジェクト (CCM Validation Activity:CCMVal)に参加し、
―58―
CCMVal の推奨する二つの長期数値実験(過去再現実験、将来見通し実験)を行った。これ
らのうち過去の成層圏オゾン層再現実験に関しては、共生第二課題で進めている地球システ
ム統合モデルに統合される予定の成層圏化学モジュールを検証するデータとしても有用な
事などから、計算の一部に共生第二課題の計算機資源を使用させていただいた。本稿ではそ
の結果のうち、特に解析の進んでいる太陽活動の成層圏オゾンへの影響評価を中心に報告す
る。
モデルと実験の概要
実験には国立環境研究所と東大気候システム研究センターが共同で開発した成層圏 CCM
を用いた。水平分解能は T42(格子間隔:約 280km)で、鉛直方向には上空約 80km までを
34 層で表現している。化学系は臭素系の反応までを含む。このモデルを用いて、過去の成
層圏オゾン層再現実験を行った。この実験は 1976 年から 2004 年を計算期間とし、その間の
オゾン層破壊物質、温室効果気体、火山性エアロゾル、太陽活動の経年変化、及び赤道準二
年周期振動(QBO)の影響を計算の境界条件として CCM に与えて行う。また、初期値の異
なる3メンバーのアンサンブル実験を行い、以下の図にはその平均値を用いている。
図10:2000-2004 年で平均
した経度平均オゾン全量の
時系列[DU].
(上)TOMS による衛星観測値
(下)CCM による計算値
図10では、計算された 2000-2004 年平均の経度平均オゾン全量の時系列を人工衛星によ
る観測結果と比較した。全ての緯度帯で季節進行が適切に表現されているのが分かる。特に、
前バージョンの CCM に見られていた南極オゾンホールが実際に比べて長引いてしまう傾向
が飛躍的に改善された。これは、水平分解能の向上に加え、大気の球面形状を考慮した光解
離計算や非地形成重力波の効果などを新たに導入した効果と考えられる。南半球の中緯度で
若干の正バイアスが存在するが、これは下部成層圏の低温バイアスに起因するものであり、
今後放射コードの変更に伴って改善することが期待されている。
―59―
研究例:太陽活動の変動に伴う成層圏オゾンの変動
太陽活動の変動に伴う成層圏オゾンの変動を抽出するため、計算された 1980-2000 年のオ
ゾン全量データを、[1]式のように、季節定常場、線形トレンドおよび太陽変動、QBO、ENSO
に対応した変動に回帰し、解析した。
O3 (t ) = α + βt + γQBO(t ) + δSOLAR(t )
+ εENSO(t ) + R(t )
[1]
ここで、SOLAR(t) は、CCM に与えている太陽 F10.7cm フラックスの変動である。α,β,
γ,δ,εは、それぞれの変動に対応した 12 ヶ月周期以下の回帰係数である。
図11は化学気候モデルの結果を用いて解析した、太陽変動に対応する回帰係数(δ)で
ある。太陽活動に対応するオゾンの変動は、全体の1~2%程度である。特徴として、中緯
度中部成層圏と熱帯下部成層圏で回帰係数が大きくなっている。これらの特徴は、人工衛星
(SBUV と SAGEII)のデータを用いて解析を行なった同様の回帰分析結果と整合的である。
図11: 太陽変動に対応する回帰係数(化学気候モデルの結果)[ppmv]
続いて、熱帯の下部成層圏(50hPa付近)に見られる回帰係数の大きな部分に注目して解
析を行なった。50hPa 面における経度平均オゾン( O3 )の収支式([2]式)を水平移流、鉛
直移流、化学生成の項に分け、各項について前節と同様に太陽変動に対応する回帰係数を
求めた。ここで、 v , ω は残差循環をあらわす。
*
*
∂O
∂O
∂O3
= −v* 3 − ω* 3 + 化学生成
∂p
∂y
∂t
[2]
―60―
水平移流
鉛直移流
化学生成
図12:50hPa 面における
太陽変動に対応した経度
平均オゾン収支の回帰係
数[ppmv/s]
図12に、太陽変動に対応した、水平移流、鉛直移流、化学生成項に関する回帰係数の時系
列を示す。これを見ると、南北両半球の緯度10度付近では7~8月を中心に水平移流が、
赤道付近では3月ごろを中心に化学生成の回帰係数が正の値でやや大きくなっているが、全
体的に鉛直移流が大きくなっており、熱帯付近では正の値となっている。すなわち、太陽変
動に対応した熱帯下部成層圏のオゾン変動は、鉛直移流項の変動を強く反映していると考え
られる。更に、この太陽変動に対応した鉛直移流について、[3]式のように2つの要素に分
解することを考える。すなわち、(A)「季節定常場([1]式のαの項に対応)のオゾン分
布」に対して「太陽変動([1]式のδの項に対応)に伴う鉛直流」がもたらす移流、と(B)
「太陽変動(δ)に伴うオゾン分布」に対して「季節定常場(α)の鉛直流」がもたらす移
流である。
− ω*
⎛ ∂O ⎞
⎛ ∂O ⎞
∂O3
≈ −ω *δ ⎜⎜ 3 ⎟⎟ − ω *α ⎜⎜ 3 ⎟⎟ [3]
∂p
⎝ ∂p ⎠α
⎝ ∂p ⎠δ
(A)
(B)
図は省略するが、下部成層圏(50hPa)で両者の大きさを比較すると、(A)の項が(B)
の項に比べて圧倒的に大きく、図12における鉛直移流の値をほぼ説明している。すなわち、
太陽変動に伴う熱帯下部成層圏オゾンの変動を説明する鉛直移流は、
「定常場のオゾン分布
に対して、太陽変動に伴う鉛直流がもたらす移流」が支配的であることがわかった。定常場
のオゾン混合比は 10hPa 付近に極大をもち、下部成層圏の 50hPa 付近では上層ほどオゾン量
―61―
が多い分布となっている。太陽変動に対応する鉛直流はこの領域で下降流となっており、こ
の下降流によって上層のオゾンが移流されてくる構造となっていた。
まとめ
WMO による次期オゾンアセスメントへの貢献を目指し、CCMVal プロジェクトが推奨す
る過去の成層圏オゾン層再現実験を、部分的に共生第二課題の計算機資源の支援を受けなが
ら行った。オゾン全量の季節変化は、成層圏 CCM の改良に伴い、前バージョンの CCM に
よる計算結果に比べて飛躍的に向上した。太陽活動に対応した成層圏オゾンの変動について
回帰分析を行なった。特に、太陽変動に対する回帰係数が比較的大きくなる熱帯下部成層圏
の領域に注目して解析を行なったところ、熱帯下部成層圏オゾンの変動は、鉛直移流の変動
に伴って起こっていることが示された。更に詳細な解析から、下部成層圏(50hPa 面付近)
では、上層ほどオゾン量が多くなっており、太陽変動に伴って生じる下降流バイアスにより、
上層のオゾンが下層に移流されてくる構造となっていることが分かった。
② 温暖化―雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価
1. これまでの活動と今年度の成果の概要
本サブグループではこれまで、地球温暖化による気候変動予測における最大の不確定要因
のひとつである雲・エアロゾル相互作用に関して、調査および研究を行ってきた。気候変動
予測に用いられる現行の大循環モデルは雲を直接解像することができないために、雲に対す
るエアロゾルの影響はサブグリッドスケールの現象としてパラメータ化によって表現され
る。これは、生成される雲粒数密度を雲核としてはたらくエアロゾルの数密度の関数として
表現するものであり、過去の研究によって様々な関数形が提案されている。その中には、観
測データに対する回帰によって単一の関係式を適用したものも多いが、一般にエアロゾルの
雲核性能は化学特性によって異なるとともに、生成される雲粒数密度は空気塊が経験する過
飽和度の最大値に大きく左右され、それは上昇流速度によって決定される。
本グループでは、このような化学組成・上昇流速度を考慮したパラメータ化のひとつであ
る Ghan et al. (1997)を CCSR/NIES/FRCGC AGCM に結合された SPRINTARS エアロゾル輸送
モデルに導入した数値実験を行い、人為起源エアロゾルによる雲・降水場の変化を調べる平
行応答実験を行った(Takemura et al., 2005)。一方、雲の粒子成長を詳細に追跡できるビン法
雲微物理モデルを用いて様々な条件下での数値実験を行い、エアロゾル数密度と雲粒数密度
の関係が上昇流速度や化学特性にどのように依存するかを記述するパラメータ化を新たに
提案した(Kuba et al., 2003, 2004)。また、エアロゾルの雲への影響を顕著に表す物理量である
雲粒有効半径と光学的厚さの間には、雲の成長レジームに関係した特徴的な相関パターンが
あることが過去の観測的研究から知られているが、ビン法雲微物理モデルを用いた数値実験
によって両者の相関パターンを再現し、観測的に知られる様々な相関パターンがエアロゾル
―62―
数密度の違いによってもたらされることを示唆した(Suzuki et al., 2006)。
これらの研究によって雲とエアロゾルの相互作用の実態とその気候影響が少しずつ明ら
かになってきたが、現行の大循環気候モデルでは雲を直接解像できないために気候モデルに
おけるエアロゾル間接効果の表現にはスケールギャップの問題が本質的に関わっている。こ
の問題を打開するための一環として今年度は、地球フロンティア研究センターで開発されて
きた全球雲解像モデル NICAM(Tomita et al., 2001; Satoh 2002, 2003; Tomita and Satoh, 2004)を
用いてエアロゾルと雲の相互作用を明らかにするための研究を本格的に始動した。具体的に
は、九州大学応用力学研究所で開発されたエアロゾル輸送モデル SPRINTARS(Takemura et al.,
2000, 2002, 2005)を NICAM に実装することによって、全球雲解像モデルにエアロゾルの生
成・輸送・沈着過程を結合したモデルを開発した。この NICAM-SPRINTARS 結合モデルで
は、地表面からの様々なエミッションによって発生した数種類のエアロゾルが乾性沈着・湿
性沈着を受けながら移流・拡散過程によって輸送されていく様子を全球雲解像モデルにおい
てオンラインで計算する。また、観測的に得られたエアロゾル数と雲粒数の関係を仮定する
ことによって、エアロゾルの場が雲の放射特性・降水生成特性に及ぼす影響(エアロゾル間
接効果)も導入されている。このように、雲とエアロゾルの相互作用を全球雲解像モデルに
導入することで、従来の大循環モデルでは表現できなかった対流雲へのエアロゾルの影響が
陽に表現されることになる。
この NICAM-SPRINTARS 結合モデルを用いて、まず、水平解像度 240km 程度で数年程度
積分する実験を行った。その結果をエアロゾル分布や雲の有効半径について見ると、
CCSR/NIES/FRCGC AGCM に結合されたオリジナル版の SPRINTARS の結果と同様の結果を
示していた。次に、このモデルを用いて全球雲解像実験を地球シミュレータ上で行った。そ
の結果を従来の GCM(オリジナル版 SPRINTARS)および衛星観測と比較すると(図13)、
雲の有効粒子半径の分布について、従来の GCM の結果に比べて、より細かい構造が再現さ
れている様子がわかる。今後の研究では、より高解像度の 7km 格子での実験を行い、鉛直
方向の雲微物理構造の比較や、それに関連して雲の鉛直方向の情報が把握できる雲レーダに
よる観測データとの比較を行っていく展望である。特に、対流雲へのエアロゾルの影響につ
いて観測データと組み合わせて理解していくことが重要であると考えられる。
―63―
図13:4月における雲の有効粒子半径の比較。上段左:NICAM-SPRINTARS モデル,上段
右:CCSR/NIES/FRCGC AGCM-SPRINTARS モデル, 下段:MODIS 衛星観測(東海大中島孝
氏提供)。
(3)寒冷圏モデル・サブグループ
寒冷圏は温暖化の影響を顕著に受けやすく、温暖化関連の観測やさらに報道に頻出する。と
くに注目されている現象は、山岳氷河後退、永久凍土融解、北極海氷縮小、グリーンランド
氷床変化、南極棚氷崩壊などにおよぶ。当課題では、これまで大気海洋結合大循環モデルや
雪氷関係のモデルを用いてこれらの現象に関わるプロセスのモデリングや、寒冷圏の温暖化
シグナルの検出に関する温暖化実験解析および氷期の気候のシミュレーションなどを行っ
てきた。グリーンランド氷床の温暖化に対する応答実験に関する主要な結果を報告する。
(1) 氷床モデル開発事項
これまでに現実再現および将来予測のための3次元氷床モデルを開発してきた。より現実を
再現するためのモデリングの課題としては、(a)数値スキームを高度にすること、(b)流動に
関してより高次の項をとりこみ近似を少なくする、(c)底面における水文学過程に関わる物理
過程をはじめ不確定な物理過程の扱いをより高度化すること、(d) 氷床と大気モデルの直接
結合を行うこと、(e)以上の改良が完成しなくてもその結果に及ぼす影響をある幅をもって評
価すること、などである。現実の氷床の再現、とくに氷床の形がまだ完全に再現できておら
ず縁辺付近の高度を過大評価していることが顕著であり、そのことは温暖化にたいする氷床
のレスポンスを遅らせることにもつながっており、研究者の間では大きな課題である。この
―64―
縁辺の課題評価を改善する数値スキームの改良を行ったことが今年度の大きな成果である。
なお、他の課題について我々もすべて取り組んでおり、(a), (b), (e) について発表等おこない、
(d) については試験は成功し、いつでも大規模な計算ができる結合システムを完成している。
(2) 数値スキームの高度化によるモデルの大幅な改善
理想的な条件下での氷床の定常状態の氷厚分布に関して、解析的に得られる解と数値モデ
ルによる解の間に誤差があることが従来より指摘されている。この誤差は氷床縁辺部で顕著
であり、数 100m に及ぶこともある。扱う課題によっては無視出来ない誤差である。例えば
温暖化時の氷床応答を考えると、融解増加に第一に応答するのは縁辺部であるため、縁辺部
のよりよい再現が不可決であると考えられる。そこで、氷床モデルの縁辺部の誤差を小さく
する数値的解法を考案し、理想的な状況化で新しい数値的解法を適用、その効果を調べて発
表した( Annals of Glaciology 受理、Saito et al, 2007)。この研究により、純粋に数値的な理
由で、従来の氷床モデルによる氷床縁辺部の再現に数百メートルの厚さの過大評価が存在す
るという可能性が示唆された。さらにグリーンランド氷床の再現にその手法を適用し、縁辺
部の誤差がいくつかの領域で同程度減少することを確認した。図14は従来スキームの観測
との誤差、および、従来スキームと今回のスキームの差を示し、改善がみられたことを表す。
図14:(左) 従来の氷床モデルと観測の高度の差。コンターは 100 と 500 meter 毎。(右)
氷床モデルの縁辺部の誤差を小さくする数値的解法の改良により改善された高度差。コンタ
ーは 50 と 200meter 毎。
―65―
(3) 氷床モデルの温暖化に対する応答実験
氷床モデルの諸課題を代表して不確実性の高いパラメタや条件などを抽出し、その可能性
の範囲で温暖化に対する応答実験をさらに多く行った。 (1-1) で行った数値スキームの
改良前と改良後のほか、底面過程に含まれる底面滑り係数(sliding coefficient)、応力と変形速
度の関係式に含まれる流動係数(Enhancement factor)、底面において熱的境界条件となる地殻
熱流量(geothermal heat flux) などが不確実性を大きくしていると考えられる。それぞれに物
理的にあり得る範囲でかつ全体の氷床観測の誤差の範囲でパラメタを変更し、それぞれに気
温上昇に対する応答を計算した。図15は、ほぼ定常になったときの体積を海面水準に換算
して示したものである。どの実験でも、小さな気温変化に対して大きく体積が変わる閾値の
ような状態を経て、気温4度以上でほぼ氷床は融け切って海面水準を6メートル以上上昇さ
せる。去年報告したように21世紀末には全球気温は3度から5度、グリーンランドなど高
緯度ではそれより高い気温上昇が予測されているので、これはほぼ確実に21世紀末に閾値
を超えるような条件である。ただし、それに達する時間は数百年から数千年かかり、その時
間についても、パラメタによって当然違い、不確定性がある。
図15:グリーンランド氷床体積の気温上昇に対する応答(縦軸、体積を海面水準(メート
ル)に換算)
。不確実な様々なパラメタの可能性のある範囲内で実験を行った。
(4)気候物理コアモデル改良サブグループ
今年度の当サブグループの課題は、1) 放射収支に重要な雲・エアロゾル等、対流圏物理
気候のチューニングを行うこと、2) 成層圏化学過程を結合した KISSME を完成させオゾン
等を正しく計算した上で、成層圏物理気候のチューニングを行うこと、だった。また、最終
年度ということで、完成した KISSME の評価実験を行うことも求められた。
プロジェクト発足以来、
AGCM の上端を中間圏界面(高度約 80 km)まで拡張するとともに、
―66―
鉛直座標系と放射コードを更新して対流圏界面付近の低温・湿潤バイアスを除去したり、成
層圏の大気大循環の季節進行を現実的にするために、Hines の非地形性重力波抵抗のパラメ
タリゼーションを導入したりと、物理過程の改良を重ねてきた。
今年度は、対流圏気候に重要な雲やエアロゾル分布の改良を第一に行った。とくにエアロ
ゾルに関しては、従来チューニングが不十分だった簡略版 SPRINTARS の各過程の調整を行
い、簡略版として可能な範囲で観測やオリジナル SPRINTARS の分布になるべく近づけるよ
うにチューニングを行った。たとえば、従来は黄砂の発生が不足していたが、ある程度改善
された。砂漠上の地表面アルベドデータに関しては、ダストによる散乱効果を考慮する形で、
従来よりも増やしたものを使うように改めた。またエアロゾルの CCN 効率を見直し、雲分
布・雲の粒径分布に関する問題点も明らかにした。陸上の雲が海上に比べて不足しがちな点
や、北極海上空の雲が旧放射コードを用いた実験に比べて不足し、次第に北極海の海氷が減
少するという問題が最後まで残ったが、これは、雲や境界層の計算スキームを更新する予定
なので、その後の改善を期待したい。
成層圏化学過程の導入に関しては、当初の予想よりも作業が難航した。導入当初は、成層
圏オゾンのピーク濃度が観測を 2-3 割程度、過小評価していた。これは、光解離係数の計算
の際に主に紫外線領域の波長解像度と放射フラックスの計算精度が不足していたことが最
初の原因であった。放射コードおよびそのパラメーターファイルの見直しを再三行い、さら
に一酸化窒素の光解離のパラメタリゼーションを成層圏化学モデルから移植することで、こ
れを解決できた。その際に、放射コードや化学計算コードのバグ取りも行った。また、成層
圏化学の初期値の作成において、対流圏化学モデルの初期値を鉛直方向に外挿したり、一定
値にしてみたり、試行錯誤を繰り返したが、最終的に、成層圏化学モデルの初期値と対流圏
化学モデルの初期値を取り混ぜて初期値を作成した。最後の問題として、主に対流圏におい
て、化学反応の計算が発散してしまう事態が生じた。これは光解離係数の計算間隔を短く取
るか、化学反応の計算間隔を短く取るかのいずれかで解決できることが分かった。光解離係
数の計算と放射過程の計算は同時に行うが、これを通常の 3 時間間隔から 1 時間間隔にして
みたところ、雲と放射の相互作用を通じて雲量が著しく減少するという副作用が生じたため、
化学反応の方の計算間隔を短くすることとした。結果、対流圏・成層圏ともに、ほぼ現実的
な化学組成の分布を得ることに成功した。
KISSME の完成直後の評価実験として、1850 年の排出量データと 1850 年想定の初期値デ
ータに基づき、二酸化炭素排出量のみを 1870 年相当量から年率 2%増加させる実験を行った。
大気中の二酸化炭素濃度は、最初の 40 年間で 285 ppmv から 320 ppmv に増加した。二酸化
炭素濃度の増加や海氷の減少に伴い、全球平均地表面気温は 40 年間で 13.1 ℃から 13.7 ℃
まで上昇した。オゾン等の大気組成やエアロゾルの濃度は産業革命以前の値として現実的で
安定しており、さらに実験を継続中である。次年度以後、詳しい解析とさらなるモデルの改
良を行う予定である。
―67―
図16:実験 35 年目の成層圏オゾン混合比分布[ppbv]。
(5)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)関連活動への参加と温暖化予測の比較検討
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の活動:第 4 次評価報告書(AR4)の完成に向けて
IPCC では、2001 年にその第 3 次評価報告書(TAR)を発表した翌年、すなわち、共生プロ
ジェクトの立ち上がった 2002 年から、AR4 作成に向けた活動を開始し、2007 年に各作業部
会の AR4 および統合報告書を完成させることになる。この間、IPCC は全体に関する審議の
ため、第 19 回総会(ジュネーブ、2002 年 4 月)から、第 27 回総会(スペイン・バレンシア、
2007 年)まで 9 回の会議を開いた。物理科学的根拠を主題とする WG1 は、第 9 回会合(ウイ
ーン、2003 年 11 月)から本格的に始動し、第 1 次原稿(2005 年9‐10 月専門家査読)、第2
次原稿(2006 年 4‐6 月専門家及び政府査読)、最終原稿(2006 年 10‐12 月政府査読)を経て、
WG1 第 10 回会合(パリ、2007 年 1‐2 月)で完成させる。
以下、AR4 及び今後の IPCC 活動などに関連した主な経過をふりかえると:
19 回総会:議長の選出など、AR4作成のための体制を構築。WG1 では、共同議
長に、S. Solomon(米国)及び D. Qin(中国)が選出された。また、AR4 を 2007 年に完成さ
せるという全般的な作成スケジュールを決めた。
20 回総会(パリ、2003 年 4 月):次の総会までに 2 回のスコーピング会合により、各作
業部会の AR4 本文の章立てについて具体的な案を作成することなど、AR4 作成に向け
た具体的な手順を決めた。
21 回総会(ウイーン、2003 年 11 月):総会の合間に各 WG で AR4 の章立てなどの骨
子案が決まり総会で受諾された。統合報告書作成は継続審議となった。
22 回総会(ニューデリー、2004 年 11 月):統合報告書は作成されることが決まった。
―68―
その作成時期に関しては、2007 年 11 月に予定の気候変動枠組条約の 13 回締約国会議
の開催時期を 1 ヶ月遅らせてもらう要請をするということで決着した。
23 回総会(エチオピア・アジスアベバ、2005 年 4 月)WG1・WG3 の合同会合が合間に
あり、オゾン層と気候システムの保護に関する特別報告書を完成させ、総会で受諾。
24 回総会(カナダ・モントリオール、2005 年 9 月):直前で開かれた WG3 の会議で完
成させた、二酸化炭素の回収・貯留に関する特別報告書が総会で受諾された。次回まで
に新排出シナリオに関しまとめるタスクグループの設置が決まった。
25 回総会(モーリシャス、2006年 9 月):排出シナリオに関し、次回(第 26 回)総会ま
でに IPCC 技術報告書作成に向けたスコーピング文書を作ることとなった。それにより、
現 IPCC ビューロー (役員)任期中に (2008 年春頃の総会までに)作成し、気候モデルグ
ループの想定される AR5 に向け遅れることなく実験が出来るよう、少数の「ベンチマ
ーク」排出シナリオを決める(見出す)。一方、推進委員会を設置し、各 WG による AR4
完成後できるだけ早く、新排出シナリオに関する IPCC 会議を開く。一方、2006 年の各
国温室効果ガス・インベントリーに関する IPCC ガイドラインも決定された。
今後 IPCC は、WG2( 4 月)、WG3(4-5 月)がそれぞれ担当する AR4 を完成させ、第 26
回総会(5 月)で受諾し、第 27 回総会(11 月)で統合報告書を完成させる予定である。
6.研究発表
(1)炭素循環モデル、炭素循環・気候変化統合モデル・サブグループ
①
陸域炭素循環モデル
学会発表
Kato, T., Ito, A. Historical influence by land ecosystem uptake and land use change emission on the
global carbon budget and climate change in the 20th century. European Geosciences Union (EGU)
General Assembly 2006, 2006 年 4 月 5 日 (ウィーン, オーストリア).
Ito, A., Evaluation of Asian carbon budget by integrated program of observation and modeling.
International Conference of Regional Carbon Budget. 2006 年 8 月 16 日 (北京, 中国).
論文発表
Kato, T., Tang, Y., Gu, S., Hirota, M., Du, M., Li, Y., Zhao, X., 2006. Temperature and biomass
influences on interannual changes in CO2 exchange in an alpine meadow on the Qinghai-Tibetan
Plateau. Global Change Biology, 12(7), 1285-1298.
―69―
Hirota, M., Tang, Y., Hu, Q., Hirata, S., Kato, T., Mo, W., Cao, G., Mariko, S., 2006. Carbon Dioxide
Dynamics and Controls in a Deep-water Wetland on the Qinghai-Tibetan Plateau. Ecosystems, 9,
673-688.
Kato, T., Kamichika, M., 2006. Determination of a crop coefficient for evapotranspiration in a sparse
sorghum field. Irrigation and Drainage, 55(2), 165-175.
②
海洋生物地球化学モデル
②−a 地球システム統合モデルの炭素循環コンポーネントについて
学会発表(口頭発表)
吉川知里・河宮未知生・加藤知道・松野太郎:「地球システム統合モデルを用いた、地球温
暖化に対する炭素循環のフィードバックの解析」,2006 年度日本海洋学会秋季大会,(9 月 25
-29 日,名古屋,口頭発表)
M. Kawamiya, C. Yoshikawa, T. Kato and T. Matsuno : C4MIP Meeting
“Geographical
distribution of climate – carbon cycle feedback” ,(10 月 4-6 日,英国・エクセター).
吉川知里・河宮未知生・加藤知道・松野太郎:「地球温暖化に対する炭素循環フィードバッ
クの地理的分布について」,2006 年度日本気象学会秋季大会,(10 月 25-27 日,名古屋,口
頭発表)
M. Kawamiya, C. Yoshikawa, T. Kato and T. Matsuno : PICES 15th Annual Meeting ,
“Significance of ocean’s response to climate warming in the global carbon cycle”,(10 月 13-22 日,
横浜,招待講演)
M. Kawamiya:“Experimental design with carbon cycle models for AR5 and interactions among
WGs1-3“、第 1 回 IR3S/ICAS 国際シンポジウム「地球環境の将来―温暖化の予測と対応策
の課題」(11 月 27-28 日,水戸).
学会発表(ポスター発表)
M. Kawamiya, C. Yoshikawa, T. Kato and T. Matsuno:“Stability of the positive feedback strength
the climate – carbon cycle”,ESSP Open Science Conference (11 月 9-12 日,北京,ポスター)
―70―
論文発表
河宮未知生,2006:
まで解明されたか
生物・化学過程を取り入れた気候モデルの開発,「地球温暖化はどこ
-日本の科学者の貢献と今後の展望 2006-」,小池勲夫
編,丸善,
128-136.
Yokohata, S. Emori, T. Nozawa, T. Ogura, N. Okada, T. Suzuki, Y. Tsushima, M. Kawamiya, A.
Abe-Ouchi, H. Hasumi, A. Sumi, and M. Kimoto, 2006: Different transient climate responses of
two versions of an atmosphere-ocean coupled general circulation model, Geophysical Research
Letters, submitted.
Kato, T., Akihiko Ito, M. Kawamiya, 2006: Multi-temporal scale variability during the 20th century
in global carbon dynamics simulated by a coupled climate-terrestrial carbon cycle model, Climate
Dynamics, submitted.
河宮未知生,2006:
②−b
地球システムモデリング,天気,投稿中.
プランクトン種構成を陽に表現した海洋モデルについて
学会発表
Hashioka, T. and Y. Yamanaka: Future projection of ecosystem change in the western North Pacific.
Global Environmental Change: Regional Challenges: An Earth System Science Partnership Global
Environmental Change Open Science Conference, Beijing, China. 9-12 November 2006.
Yoshie. N, K. Sato, Y. Yamanaka and Jun Nishioka: Introduction of iron cycles into a lower trophic
level marine ecosystem model, NEMURO. PICES XV Annual Meeting, Yokohama, Japan, October
14-22, 2006.
Rose, K. A., V. N. Agostini, L. Jacobson, C. van der Lingen, S. E. Lluch-Cota, S. Ito, B. A. Megrey,
M. J. Kishi, A. Takasuka, M. Barange, F. E. Werner, Y. Shin, L. Cubillos, Y. Yamanaka, H. Wei:
Towards coupling sardine and anchovy to the NEMURO lower trophic level model. PICES XV
Annual Meeting, Yokohama, Japan, October 14-22, 2006. [Invited]
Ito, S., A. Takasuka, Y. Oozeki, A. Yatsu, M. Noto, M. J. Kishi, Y. Yamanaka, T. Hashioka, M. N.
Aita, K. A. Rose, B. A. Megrey, F. E. Werner, C. van der Lingen, M.l Barange, Y. Shin, L. Cubillos,
L. Jacobson, V. N. Agostini, S. E. Lluch-Cota, G. Onizuka, Y. Kamezawa: A sardine growth model
coupled with lower trophic level ecosystem model NEMURO. PICES XV Annual Meeting,
―71―
Yokohama, Japan, October 14-22, 2006. [invited]
Ito, S., K. A. Rose, B. A. Megrey, F. Werner, D. Hay, M. N. Aita, Y. Yamanaka, M. J. Kishi, J.
Schweigert, M. B. Foster, D. Ware, D. Eslinger, R. Klumb and S. L. Smith: Responses of fish growth
to large-scale and long-term climate change: A comparison of herring and saury in the North Pacific
using NEMURO.FISH, a coupled fish bioenergetics and lower trophic level ecosystem model.
PICES XV Annual Meeting, Yokohama, Japan, October 14-22, 2006. [Invited]
Shido, F., Y. Yamanaka, S. Ito, T. Hashioka, D. Mukai and M. J. Kishi: A two-dimensional fish model
simulating biomass of pacific saury. PICES XV Annual Meeting, Yokohama, Japan, October 14-22,
2006.
Hashioka, T., Y. Yamanaka, F. Shido and T. Sakamoto: Ecosystem change in the western North
Pacific associated with global warming obtained by 3-D ecosystem model. PICES/GLOBEC
Symposium on Climate variability and ecosystem impacts on the North Pacific: A basin-scale
synthesis, Hawaii U.S.A., April 19-21, 2006.
Ito, S., K. A. Rose, M. N. Aita, B. A. Megrey, Y. Yamanaka, F. E. Werner and M. J. Kishi:
Interannual response of fish growth of Pacific saury to the 3-D global NEMURO output with
realistic atmospheric forcing. PICES/GLOBEC Symposium on Climate variability and ecosystem
impacts on the North Pacific: A basin-scale synthesis, Hawaii U.S.A., April 19-21, 2006.
Kishi, M. J., I. Nakajima, Y. Kamezawa, D. Mukai, M. Aita and Y. Yamanaka: Inter-annual variation
of squid, salmon and saury growth using NEMURO.FISH. PICES/GLOBEC Symposium on Climate
variability and ecosystem impacts on the North Pacific: A basin-scale synthesis, Hawaii U.S.A., April
19-21, 2006.
Rose, K. A., B. A. Megrey, S. Ito, F. E. Werner, D. Hay, M. N. Aita, Y. Yamanaka, M. J. Kishi, J.
Schweigert, M. B. Foster, D. Ware, D. Eslinger, R. Klumb and S. L. Smith: Geographic variation in
fish growth and population responses to regime shifts in the North Pacific: A comparison of herring
and saury using NEMURO.FISH, a coupled fish bioenergetics and NPZ model. PICES/GLOBEC
Symposium on Climate variability and ecosystem impacts on the North Pacific: A basin-scale
synthesis, Hawaii U.S.A., April 19-21, 2006.
5 学会等の発表(ポスター発表)
Mukai, D., M. J. Kishi, S. Ito, Y. Yamanaka and F. Shido: The Function of Spawning Season and
―72―
Interdecadal Variability on the Growth of Pacific Saury - Ecological Model-Based Study -,
International Conference on Ecological Moldelling, Yamanaguchi, Japan, August 28-September 1,
2006.
Shido, F., Y. Yamanaka, S. Ito, T. Hashioka, D. Mukai and M. J. Kishi: Migration and Distribution of
Pacific Saury Simulated by a Two-Dimensional Model Combined Fish Bioenergetics with
Population Dynamics, International Conference on Ecological Moldelling, Yamanaguchi, Japan,
August 28-September 1, 2006.
Hashioka, T. and Y. Yamanaka: Determination mechanism of seasonal and regional variations of
phytoplankton groups by top-down and bottom-up controls obtained by a 3-D ecosystem model.
PICES/GLOBEC Symposium on Climate variability and ecosystem impacts on the North Pacific: A
basin-scale synthesis, Hawaii U.S.A., April 19-21, 2006.
Aita M. N., K. Tadokoro, Y. Yamanaka and M. J. Kishi: Interdecadal variation of the lower trophic
ecosystem using a 3-D physical-biological coupled model '3D-NEMURO'. PICES/GLOBEC
Symposium on Climate variability and ecosystem impacts on the North Pacific: A basin-scale
synthesis, Hawaii U.S.A., April 19-21, 2006.
Aita, M. N., A. Ishida and Y. Yamanaka: Interannual to interdecadal variations of the lower trophic
ecosystem and air-sea CO2flux in the North Pacific using a 3-D NEMURO model, European
Geosciences Union General Assembly 2006, Vienna, Austria, April 2 – 7. 2006.
Yoshie, N., S. Takeda, P. W. Boyd and Y. Yamanaka: Modelling studies investigating the mechanisms
causing high silicic acid to nitrate uptake during SERIES: an iron-fertilization experiment in the
subarctic Pacific. 13th Ocean Science meeting 2006, Hawaii U.S.A., February 20-24, 2006.
Werner, F. E., K. Rose, B. A. Megrey, M. A. Noguchi, Y. Yamanaka: Simulated Herring Growth
Reponses in the Northeastern Pacific to Historic Temperature and Zooplankton Conditions Generated
by the 3-Dimensional NEMURO NPZ Model. 13th Ocean Science meeting 2006, Hawaii U.S.A.,
February 20-24, 2006.
Smith, S. L. and Y. Yamanaka: Examining the value of exploiting variations in bulk stoichiometry for
modeling material flows through ecosystems. 13th Ocean Science meeting 2006, Hawaii U.S.A.,
February 20-24, 2006.
―73―
Sasai, Y, H. Sasaki, K. Sasaoka, S. Kawahara, A. Ishida and Y. Yamanaka: Response of the
ecosystem to coastal upwelling in the Eastern Tropical Pacific: A global eddy-resolving coupled
physical-biological model. 13th Ocean Science meeting 2006, Hawaii U.S.A., February 20-24, 2006.
Hashioka, T., Y. Yamanaka and T. Sakamoto: Response of lower trophic level ecosystem to global
warming in the western North Pacific. 13th Ocean Science meeting 2006, Hawaii U.S.A., February
20-24, 2006.
論文発表
Megrey, B.A. , Rose, K.A., Ito, S-I., Hay, D.E., Werner, F.E., Yamanaka, Y., and Aita, M.N. North
Pacific basin-scale differences in lower and higher trophic level marine ecosystem responses to
climate impacts using a nutrient-phytoplankton-zooplankton model coupled to a fish bioenergetics
model. Ecological Modelling, DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.08.020
Kishi M. J., D. L. Eslinger , M. Kashiwai, B. A. Megrey, D. M. Ware, F. E. Werner, M. Aita-Noguchi,
T. Azumaya, M. Fujii, S. Hashimoto, H. Iizumi, Y. Ishida, S. Kang, G. A. Kantakov, H. Kim, K.
Komatsu, V. V. Navrotsky, L. S. Smith, K. Tdokoro, A. Tsuda, O. Yamamura, Y. Yamanaka, K.
Yokouchi, N. Yoshie, J. Zhang, Y. I. Zuenko, V. I. Zvalinsky: NEMURO - Introduction to a lower
trophic level model for the North Pacific marine ecosystem. Ecol. Modeling., DOI:
10.1016/j.ecolmodel.2006.08.02.
Rose, K. A., F. Werner, B. A. Megrey, M. N. Aita, Y. Yamanaka, D. Hay, J. Schweigert, M. B. Foster:
Simulated Herring Growth Reponses in the Northeastern Pacific to Historic Temperature and
Zooplankton
Conditions
Generated
by
the
3-Dimensional
NEMURO
Nutrient-Phytoplankton-Zooplankton Model. Ecol. Modeling., OI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.06.020.
Aita M. N., Y. Yamanaka, M. J. Kishi: Interdecadal Variation of the Lower Trophic Ecosystem in the
Northern Pacific between 1948 and 2002, in a 3-D implementation of the NEMURO model. Ecol.
Modeling., DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.07.045.
Ito S. , B. A. Megrey, M. J. Kishi, D. Mukai, Y. Kurita, Y. Ueno, Y. Yamanaka: On the interannual
variability of the growth of Pacific saury (Cololabis saira): a simple 3-box model using
NEMURO.FISH. Ecol. Modeling., DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.07.046.
Yoshie N., Y. Yamanaka, K. A. Rose, D. L. Eslinger, D. M. Ware and M. J. Kishi: Parameter
sensitivity study of the NEMURO lower trophic level marine ecosystem model. Ecol. Modeling.,
―74―
DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.07.043.
Fujii M., Y. Yamanaka, Y. Nojiri, M. J. Kishi, F. Chai: Comparison of seasonal characteristics in
biogeochemistry among the subarctic North Pacific stations described with a NEMURO-based
marine ecosystem model. Ecol. Modeling., DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.02.046.
Hashioka, T. and Y. Yamanaka: Ecosystem change in the western North Pacific associated with
global warming obtained by 3-D NEMURO. DOI: 10.1016/j.ecolmodel.2006.05.038.
Hashioka, T. and Y. Yamanaka: Seasonal and regional variations of phytoplankton groups by
top-down and bottom-up controls obtained by a 3-D ecosystem model. Ecol. Modeling., DOI:
10.1016/j.ecolmodel.2005.12.002.
山中康裕: 海洋科学統合モデリングの発展. J. Geoscience Letters, 2(4), 3-5, 2006.
Carr, M.-E., M. A. M. Friedrichs, M. Schmeltz, M. N. Aita, D. Antoine, K. R. Arrigo, I. Asanuma, O.
Aumont, R. Barber, M. Behrenfeld, R. Bidigare, E. T. Buitenhuis, J. Campbell, A. Ciotti, H. Dierssen,
M. Dowell, J. Dunne, W. Esaias, B. Gentili, W. Gregg, S. Groom, N. Hoepffner, J. Ishizaka, T.
Kameda, C. Le Quere, S. Lohrenz, J. Marra, F. Melin, K. Moore, A. Morel, T. E. Reddy, J. Ryan, M.
Scardi, T. Smyth, K. Turpie, G. Tilstone, K. Waters, Y. Yamanaka: A comparison of global estimates
of marine primary production from ocean color, Deep Sea Res. II, 53, 741-770, 2006.
③ 陸域生態系変動モデル
学会発表
佐藤永、伊藤明彦、甲山隆司:SEIB-DGVM: A new Dynamic Global Vegetation Model using a
spatially explicit individual-based approach ( ポ ス タ ー 発 表 ) ,ILEAPS
(Integrated Land
Ecosystem-Atmosphere Processes Study) 第一回科学会議(Boulder, USA)
佐藤永、伊藤明彦、甲山隆司:SEIB-DGVM, a Dynamic Global Vegetation Model for the Kyousei2
project,The 8th international workshop on next generation climate models for advanced high
performance computing facilities(Albuquerque, USA)
佐藤永、伊藤明彦、甲山隆司:動的全球植生モデル SEIB-DGVM による、陸面生態系の変動
予測、第 53 回日本生態学会大会(新潟)
―75―
佐藤永、伊藤明彦、甲山隆司:動的全球植生モデル SEIB-DGVM による、植生の構造と機能
の変動予測、日本地球惑星科学連合 2006 年大会(幕張)
論文発表
Sato, H, Itoh, A., Kohyama, T. (2007):Ecological Modelling 200(3-4), 279-307.,SEIB-DGVM: A
New Dynamic Global Vegetation Model using a Spatially Explicit Individual-Based Approach
佐藤永:日本生態学会誌 (投稿中)、生物地球化学モデルの現状と未来
~静的植生モデル
から動的全球植生モデルへの展開~
(2)温暖化・大気組成相互作用モデル・サブグループ
①
温暖化・大気組成変化相互作用モデル
学会発表
須藤健悟, 秋元肇, “オゾン・CO の全球分布・収支の起源と全球規模長距離輸送”, 第16
回大気化学シンポジウム, 豊川市民プラザ, 2006 年 1 月 11-13 日.
Sudo, K., Akimoto H., Hirenzaki M., K. Iwao, and Takahashi M., Source attribution of global O3 and
CO: climatology and interannual variability, Joint IGAC/CACGP/SOLAS/WMO Symposium:
Atmospheric Chemistry at the interfaces, 17-23 September 2006, Cape Town, South Africa.
須藤健悟, 高橋正明、秋元肇、“全球対流圏オゾンの変動要因:エミッション・気候・成層
圏オゾンの各変動の影響”、日本気象学会2006年度春季大会、つくば国際会議場、2006
年 5 月 21-24 日。
論文発表
V. Eyring, D. S. Stevenson, A. Lauer, F. J. Dentener, T. Butler, W. J. Collins, K. Ellingsen, M. Gauss,
D. A. Hauglustaine, I. S. A. Isaksen, M. G. Lawrence, A. Richter, J. M. Rodriguez, M. Sanderson, S.
E. Strahan, K. Sudo, S. Szopa, T. P. C. van Noije, O. Wild, Multi-model simulations of the impact of
international shipping on atmospheric chemistry and climate in 2000 and 2030
Atmospheric
Chemistry
and
Physics
Discussions,
6,
8553-8604,
2006,
SRef-ID:
1680-7375/acpd/2006-6-8553
Gauss M., G. Myhre, I. S. A. Isaksen, W. J. Collins, F. J. Dentener, K. Ellingsen, L. K. Gohar, V.
Grewe, D. A. Hauglustaine, D. Iachetti, J.-F. Lamarque, E. Mancini, L. J. Mickley, G. Pitari, M. J.
Prather, J. A. Pyle, M. G. Sanderson, K. P. Shine, D. S. Stevenson, K. Sudo, S. Szopa, O. Wild, and G.
―76―
Zeng, Radiative forcing since preindustrial times due to ozone change in the troposphere and the
lower stratosphere, Atmospheric Chemistry and Physics, 6, 575-599, 2006.
Dentener F., D.Stevenson, K.Ellingsen, T.van Noije, M.Schultz1, M.Amann, C.Atherton, N.Bell,
D.Bergmann, I.Bey, L.Bouwman, T.Butler, J.Cofala, B.Collins, J.Drevet, R.Doherty, B.Eickhout,
H.Eskes, A.Fiore, M.Gauss, D.Hauglustaine, L.Horowitz, I.Isaksen, B.Josse, M.Lawrence, M.Krol,
J.F.Lamarque, V.Montanaro, J.F.Müller, V.H.Peuch, G.Pitari, J.Pyle, S.Rast, J.Rodriguez,
M.Sanderson, N.H.Savage, D.Shindell, S.Strahan, S.Szopa, K.Sudo, R.Van Dingenen, O.Wild,
G.Zeng, The global atmospheric environment for the next generation, Environmental Science &
Technology, 40(11); 3586-3594. DOI: 10.1021/es0523845.
Dentener, F., J. Drevet, J.F. Lamarque, I. Bey, B. Eickhout, A.M. Fiore, D. Hauglustaine, L.W.
Horowitz, M. Krol, U.C. Kulshrestha, M. Lawrence, C. Galy-Lacaux, S. Rast, D. Shindell, D.
Stevenson, T. Van Noije, C. Atherton, N. Bell, D. Bergman, T. Butler, J. Cofala, B. Collins, R.
Doherty, K. Ellingsen,
J. Galloway, M. Gauss, V. Montanaro, J.F. M・ler, G. Pitari, J. Rodriguez, M.
Sanderson, S. Strahan, M. Schultz, F. Solmon, K. Sudo, S. Szopa, O. Wild, Nitrogen and Sulphur
Deposition on regional and global scales: a multi-model evaluation, Global Biogeochemical Cycles,
20, GB4003, doi:10.1029/2005GB002672, 2006.
van Noije, T.P.C, H. J. Eskes, F. J. Dentener, D. S. Stevenson, K. Ellingsen, M. G. Schultz, O. Wild,
M. Amann, C. S. Atherton, D. J. Bergmann, I. Bey, K. F. Boersma, T. Butler, J. Cofala, J. Drevet, A.
M. Fiore, M. Gauss, D. A. Hauglustaine, L. W. Horowitz, I. S. A. Isaksen, M. C. Krol, J.-F.
Lamarque, M. G. Lawrence, R. V. Martin, V. Montanaro, J.-F. Müller, G. Pitari, M. J. Prather, J. A.
Pyle, A. Richter, J. M. Rodriguez, N. H. Savage, S. E. Strahan, K. Sudo, and S. Szopa, Multi-model
ensemble simulations of tropospheric NO2 compared with GOME retrievals for the year 2000,
Atmospheric Chemistry and Physics, 6, 2943-2979, 2006.
Sudo, K. and H. Akimoto, Global source attribution of tropospheric O3 and CO: Long-range
transport from various source regions, J. Geophys. Res., submitted, 2006.
成層圏化学気候モデルを用いた過去のオゾン変動再現実験
学会発表
秋吉英治, 吉識宗佳、永島達也、L. B. Zhou、今村隆史、高橋正明、黒川純一、滝川雅之 (2006):
CCSR/NIES 化学気候モデルを用いたオゾン層の将来予測実験, 日本気象学会 2006 年春季大
会, つくば
―77―
秋吉英治, 坂本圭(2006): オゾン層将来予測実験で得られたオゾンホールの小さい年につい
ての解析,日本気象学会 2006 年秋季大会, 名古屋
秋吉英治,坂本圭,永島達也,今村隆史(2007): 2100 年までのオゾン層将来予測実験,第 17
回大気化学シンポジウム,豊川
坂本圭,秋吉英治, 永島達也,L.B.Zhou,高橋正明(2006):太陽活動に対応する熱帯下部成層
圏オゾンの変動,日本気象学会 2006 年秋季大会, 名古屋
坂本圭,秋吉英治,永島達也,L.B.Zhou,高橋正明(2007): 太陽 11 年周期に対応する熱帯下
部成層圏オゾンの変動に関する解析,第 17 回大気化学シンポジウム,豊川
L.B.Zhou,秋吉英治(2006):北半球中緯度における QBO の経度依存性,日本気象学会 2006 年
秋季大会, 名古屋
論文発表
Eyring, V., N. Butchart, D. W. Waugh, H. Akiyoshi, J. Austin, S. Bekki, G. E. Bodeker, B. A. Boville,
C. Br・l, M. P. Chipperfield, E. Cordero, M. Dameris, M. Deushi, V. E. Fioletov, S. M. Frith, R. R.
Garcia, A. Gettelman, M. A. Giorgetta, V. Grewe, L. Jourdain, D. E. Kinnison, E. Mancini, E.
Manzini, M. Marchand, D. R. Marsh, T. Nagashima, P. A. Newman, J. E. Nielsen, S. Pawson, G.
Pitari, D. A. Plummer, E. Rozanov, M. Schraner, T. G. Shepherd, K. Shibata, R. S. Stolarski, H.
Struthers, W. Tian, and M. Yoshiki (2006): Assessment of temperature, trace species, and ozone in
chemistry-climate model simulations of the recent past, J. Geophys. Res., 111, D22308,
doi:10.1029/2006JD007327
②
温暖化―雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価
学会発表(口頭発表)
Suzuki, K., T. Nakajima, T. Y. Nakajima, H. Masunaga, T. Matsui, and A. P. Khain, 2006:
Characteristics of water cloud optical property as simulated by a spectral bin microphysics cloud
model. AMS conference on atmospheric radiation and cloud physics, Madison, Wisconsin, 9-14 July.
Takemura, T., T. Nakajima, and T. Nozawa, 2006: Analysis of aerosol effects on climate system and
time evolutions of various radiative forcings with a global climate model. Northeastern Asian
Symposium 2006: Climate Change and Carbon Cycle. Fukuoka, Japan, 6-9 November (invited).
―78―
Takemura, T., 2006: Analysis of aerosol effects on climate system with a aerosol climate model. 5th
AEROCOM Workshop, Virginia Beach, USA, 17-19 October.
Takemura, T., T. Nakajima, and Y. J. Kaufman, 2006: Simulation of aerosol effects on climate system
by aerosol climate model. AMS 12th Conference on Atmospheric Radiation, Madison, USA, 10-14
July.
論文発表
Suzuki, K., T. Nakajima, T. Y. Nakajima, and A. Khain, 2006: Correlation pattern between effective
radius and optical thickness of water clouds simulated by a spectral bin microphysics cloud model.
SOLA, 2, 116-119.
Takemura, T., Yoram J. Kaufman, Lorraine A. Remer, and Teruyuki Nakajima, 2007: Two competing
pathways of aerosol effects on cloud and precipitation formation. Geophys. Res. Lett., in press,
doi:10.1029/2006GL028349.
Takemura, T., T. Nakajima, and T. Nozawa, 2006: Simulation of climate change by aerosol direct and
indirect effects with aerosol transport-radiation model. in IRS 2004: Current Problems in
Atmospheric Radiation, H. Fischer and B.-J. Sohn, Eds., A. Deepak Publishing, 469-472.
(3)寒冷圏モデル開発
学会発表
SAITO Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Tomonori Segawa., 2006, Japan Geoscience Union Meeting
2006. Response of Greenland Ice Sheet to the Global Warming Simulated by a High Resolution
AOGCM coupled by an Ice Sheet Model.口頭発表(招待講演)
齋藤冬樹、阿部彩子、瀬川朋紀, 2006, 大気海洋結合モデルおよび三次元氷床モデルを用い
たグリーンランド氷床の温暖化実験。日本気象学会 2006 年度春季大会。口頭発表
SAITO Fuyuki and Ayako Abe-Ouchi, 2006, Changes in Position and Elevation of Dome Fuji, east
Dronning Maud Land, Antarctica, during the Ice Age Cycle, Simulated by a Three-Dimensional
Numerical Ice Sheet Model. AGU Fall Meeting 2006 (San Francisco, USA).ポスター発表
SAITO Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Tomonori Segawa, 2006, Response of Greenland ice sheet to
the global warming simulated by a high resolution atmosphere-ocean GCM coupled by an ice sheet
―79―
model. International Symposium on Cryospheric Indicators of global Climate Change. International
Glaciological Society, IUGG-CCS and WCRP CliC.ポスター発表
SAITO Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Heinz Blatter, 2006, Improvement in the numerical scheme to
compute horizontal gradients at the ice-sheet margin and its effect on the simulated ice sheet
topography, International Symposium on Cryospheric Indicators of global Climate Change.
International Glaciological Society, IUGG-CCS and WCRP CliC.ポスター発表, ポスター発表
岡田裕毅、阿部彩子、奥野淳一、齋藤冬樹, 2006,北半球氷床の氷期から間氷期への移行を再
現するための三次元氷床ー粘弾性 Earth 結合モデル開発。日本雪氷学会 平成 18 年度雪氷研
究秋田大会。ポスター発表
SAITO Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Tomonori Segawa., 2006, Response of Greenland Ice Sheet to
the Global Warming Simulated by a GCM coupled by an Ice Sheet Model. Workshop on Polar and
Global Climate Modeling: Connection and Interplay. International Arctic Research Center.口頭発表
齋藤冬樹、阿部彩子, 2006,氷床モデルによる Dome Fuji の高さ、位置、温度変動についての
感度実験。南極氷床の物理・化学・生物のフロンティア 2, 国立極地研究所、口頭発表
齋藤冬樹、阿部彩子、瀬川朋紀, 2006, (氷床コアに関連した)気候モデリングの現状について
極域及び高山域における気候・環境変動に関する研究集会, 国立極地研究所
SAITO Fuyuki and Ayako Abe-Ouchi., 2006, Dome Fuji in glacial-interglacial change. ICC DRC
kick off meeting 国立極地研究所、口頭発表。
論文発表
Abe-Ouchi, A., T. Segawa, F. Saito, 2006, Climatic Conditions for modelling the Northern
Hemisphere ice sheets throughout the ice age cycle. submitted
SAITO Fuyuki and Ayako Abe-Ouchi., 2005, Sensitivity of Greenland ice sheet simulation to the
numerical procedure employed for ice sheet dynamics. Ann. Glaciol. 42, 331--336.
Yamagishi, Takateru and Abe-Ouchi, Ayako and
SAITO Fuyuki and Segawa,
Tomonori and Nishimura, Teruyuki., 2005, Re-evaluation of paleo-accumulation parameterization
over Northern Hemisphere ice sheets during the ice age examined with a high-resolution
AGCM and a 3-D ice-sheet model. Ann. Glaciol. 42, 433--440.
―80―
.
SAITO Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Heinz Blatter., An improved numerical scheme to compute
horizontal gradients at the ice-sheet margin: its effect on the simulated ice thickness and temperature,
Ann. Glaciol, 46 (in press).
SAITO Fuyuki, Ayako Abe-Ouchi and Heinz Blatter, 2006, European Ice Sheet Modelling Initiative
(EISMINT) model intercomparison experiments with first-order mechanics. J. Geophys. Res.(E) 111,
F02012.
Kageyama, M., A.Laine, A. Abe-Ouchi and 17 members, 2007, Last Glacial Maximum temperatures
over the North Atlantic, Europe and Western Siberia: A comparison between PMIP models, MARGO
sea-surface temperatures and pollen-based reconstructions, Quaternary Science Reviews, in press.
Yokohata, T.,
et al , 2007, "Different transient climate responses of two versions of an
atmosphere-ocean coupled general circulation model", Geophysical Research Letters, in press
(4)気候物理コアモデル改良・サブグループ
学会発表
Watanabe, S., K. Sato, and M. Takahashi, A GCM study of orographic gravity waves over Antarctica
excited by katabatic winds, COSPAR2006, July, Beijing China.
論文発表
Watanabe, S., K. Sato, and M. Takahashi, A GCM study of orographic gravity waves over Antarctica
excited by katabatic winds, J.Geophys. Res., 111, D18104, doi:10.1029/2005JD006851, 2006.
―81―
陸域生態系モデル作成のためのパラメタリゼーションに関する研究
研究代表者: 安岡 善文(東京大学生産技術研究所教授)
1.
研究の目的
本研究は、地球変動モデルの統合化に向けて不可欠な要素である陸域生態系サブモデル作成の
ためのパラメタリゼーション、観測手法の開発を目的とする。特に、人・自然・地球共生プロジ
ェクトの課題2(統合化モデルの構築)において使用されている陸域生態系モデル(Sim-CYCLE)
の高度化ならびに統合化に向けて、
・ 森林伐採・火災など撹乱による生態系影響に関する未知パラメータの同定と観測
・ 生態系パラメータ空間分布のスケールアップ観測
・ 収集された観測パラメータのモデルへの結合(ナッジング、同化)
を試みる。具体的には、陸域生態系における炭素循環を、地上観測、フラックスタワー観測、リ
モートセンシングの 3 つの手法により多段階観測し、局所スケールから大陸・地球スケールまで
スケールアップすることにより広域でのモデル予測を可能とするパラメータ化を行う。なお、全
球レベルでの精度の高い予測を可能とするためには、異なる気候帯、森林タイプでのパラメタリ
ゼーションの高精度化が要求されるが、本研究では、アジア域を中心とする温帯域、寒帯域に焦
点を合わせ、研究を実施する。
2.
研究の構造と概要
上記の目的を達成するため、本研究課題では、以下の 3 サブ課題のもとに研究を進める。
図 1 には研究の構造を示した。
サブ課題2
地上観測・
パラメタリゼーション
サブ課題1
温
帯
地
域
寒
帯
地
域
日本
地上観測
タワー観測
東シベリア
スケールアップ
リモートセンシング
サブ課題3
観測・モデル結合
生態系モデル(Sim-CYCLE)
図 1 研究開発体制図。
サブ課題 1:代表:福田正己(北海道大学)
サブ課題 2:代表:石塚森吉(独立行政法人森林総合研究所)・小池孝良(北海道大学)
サブ課題 3:代表:粟屋善雄(独立行政法人森林総合研究所)・安岡善文(東京大学)
―83―
(1)地上観測を中心とした東シベリア寒帯域における生態系パラメタリゼーションの研究(北海
道大学)
東シベリア寒帯域を対象として、地上観測、フラックスタワー観測により生態系撹乱影響のパ
ラメタリゼーションを行う。研究実施内容は以下の通りである。
① 攪乱強度に関わる植生指標の摘出と森林修復機構解明に関する研究
② タワーモニタリングによる二酸化炭素収支データベース構築
③ 凍土融解による温暖化効果ガス放出量の見積もり
④ 森林生態系における炭素量の収支推定と攪乱の影響評価
⑤ タイガ生態系の光合成モニタリングとストレス要因のパラメタリゼーション
⑥ 森林の攪乱にともなう菌類応答の解明に関する研究
⑦ タイガ撹乱による温暖化寄与率変動のパラメタリゼーション
⑧ 森林根圏土壌の微生物が森林による N2O 吸収に果たす役割と機能
⑨ 森林攪乱による土壌の理化学性変動に関するインベントリ
⑩ シベリアタイガにおける菌類の有機物分解機構に関する研究
⑪ 森林の反射特性についての地上観測
⑫ 東ユーラシア陸域における炭素収支観測とデータベース構築
⑬ 久凍土と森林の相互作用についての数値的研究
⑭ 永久凍土地帯における生態系と攪乱に関するデータベース構築
(2)タワー観測を中心とした温帯域における生態系パラメタリゼーションの研究
日本の温帯域を対象として、(1)と同様に、温暖化などの生態系撹乱による影響のパラメタリ
ゼーションを行う。
2-1)タワーフラックス観測による森林生態系機能の評価(独立行政法人森林総合研究所)
札幌、苫小牧における温帯林を中心としてタワーフラックス観測により、森林生態系の構造、
機能のパラメタリゼーションを行う。研究実施内容は以下の通りである。
① 冷温帯落葉広葉樹林生態系-大気間の CO2 収支の長期連続測定、変動要因の解明とデー
タベース化
② 森林土壌の放出炭素フラックスの測定とパラメタリゼーション
③ 森林林群落の吸収・放出炭素フラックスの測定とパラメタリゼーション
④ 森林群落の成長動態に伴う炭素フラックスのパラメタリゼーションと観測データの精度
検証
2-2)モジュール FACE 実験による温暖化が生態系に及ぼす影響の評価とパラメタリゼーション
に関する研究(北海道大学)
札幌・苫小牧の試験区において、モジュール FACE 実験システムを構築し、温暖化環境におけ
る陸域生態系の機能の変化を観測・評価し、そのパラメタリゼーションを行う。モジュール FACE
実験は、閉鎖されていない自由空間において樹木のシュート(枝葉)単位で CO2 を施肥し、その
樹木への影響を評価するものである。
(3)リモートセンシングによるスケールアップ・パラメタリゼーションの研究
地上観測から衛星観測までの多段階観測により生態系パラメータの空間分布を観測するととも
に、得られた空間分布パラメータをモデル(Sim-CYCLE)に結合する同化手法を開発する。
3-1)衛星観測による葉面積指数(LAI)等の生態系機能・構造分布の広域計測手法の開発(独
立行政法人森林総合研究所)
衛星からのリモートセンシングにより大陸・全球スケールでの葉面積指数(LAI)、純一次生産
量(NPP)等の生態系パラメータの分布を観測する手法を開発する。LAI は Sim-CYCLE と衛星観
測パラメータをつなぐ鍵となるパラメータであることから、精度の高い推定データを得ることを
目的とする。
3-2)広域地表面特性計測の高精度化のための衛星観測スケールアップ手法の開発(東京大学)
局所性の高い陸域生態系観測の高精度化をはかるために、広域観測衛星データを介して地上観
測データの局所情報を大陸レベルまで外挿する手法を開発する。さらに、スケールアップや衛星
観測等により得られる大陸/全球レベルのパラメータ分布を、モデルの境界条件として
Sim-CYCLE モデルに入力し、モデルによる予測精度の向上を図る。また、陸域生態系モデル検証
のために、衛星データを利用した時空間データセットを作成する。
―84―
3.年次計画
研究開発 1 年目
(1)東シベリアに試験区を設定し、既存のタワーシステムと固定調査地を利用した温暖化ガスモ
ニタリングと物質収支測定を行う。
(2)北海道札幌および苫小牧に試験区を設定し、タワーフラックス観測およびモジュール FACE
観測実験システムを構築する。
(3)上記の観測試験区において、衛星、航空機等による広域観測データセットを整備する。衛星
データによるスケーリング手法を試験区に適用し、詳細地表面特性分布を計測する。
研究開発 2 年目
(1)継続的なタワー観測を実施するとともに、地上観測による温暖化ガスモニタリングと物質収
支測定を行う。伐採あるいは人工火災による攪乱実験を試みる。
(2)タワー観測を継続するととともに、微気象観測データの蓄積、群落内構成要素の放出・吸収
CO2 フラックス変動要因の解明を行う。モジュール FACE 実験を開始する。
(3)衛星からのリモートセンシングにより大陸スケールでの生態系パラメータの分布を観測する
手法を開発する。地上観測および高解像度衛星データと中解像度衛星データを用いて、これ
らパラメータ推定のアルゴリズムを開発する。
研究開発 3 年目
(1)フィールドにおけるモニタリング・インベントリ作成を継続する。CO2 等温暖化ガスの年間
収支を見積り、温暖化ガス収支を制御する要因を推定し、検証実験計画を組む。リモートセ
ンシングデータとの照合を行い、Sim-CYCLE からの結果との比較検討を行う。
(2)観測データの変動要因を検討、素過程を解明する。群落内構成要素の放出・吸収 CO2 フラ
ックスのパラメタリゼーションを行う。モジュール FACE 実験から、シュートレベルでの CO2
施肥効果の評価を行う。
(3)上記観測の結果と衛星データを用いて、アジア地域を対象とした時系列 LAI 等の生態系パ
ラメータ分布データセットを作成する。Sim-CYCLE からの予測と比較検証を行う。
研究開発 4 年目
(1)検証実験を実施し、炭素収支パラメタリゼーションスケールアップのための解析手法につい
て検討する。Sim-CYCLE へのパラメータ入力を行う。
(2)生態系、微気象観測データベースを構築し、群落多層モデルにおけるパラメタリゼーション
を改良する。なお、森林総研札幌羊が丘のフラックスタワー等観測システムが前年度の台風
で倒壊したことから、その後の再生過程の観測を行う。さらに、モジュール FACE 実験では、
CO2 施肥効果のパラメタリゼーションを行う。
(3)観測される時系列 LAI 等の生態系パラメータ分布データを Sim-CYCLE に入力し、モデルの
調整(同化)を行うためのシステムを構築する。
研究開発 5 年目
(1)森林攪乱の影響評価と温暖化効果ガスの発生量予測を行い、Sim-CYCLE モデルの検証を行
う。タイガ修復モデルを提案する。得られたデータのデータベース化を行う。
(2)多様な森林への適用のための群落多層モデルのパラメタリゼーションを行う。得られた観測
データのデータベース化とデータとの比較による Sim-CYCLE モデルの検証を行う。
(3)LAI によるモデル同化手法を開発する。同化により得られる生態系パラメータ(SLA)分布
データを入力変数とした Sim-CYCLE モデルで全球スケールの NPP 推定および予測を行う。
4. 平成 18 年度の研究計画と実施状況
(1)東シベリアでの地上観測を中心とした生態系パラメタリゼーションの研究
前年に引き続き、夏季にロシア連邦ヤクーツク近郊のカラマツ林、伐採跡地、火災跡地におい
て、地表面熱・水・CO2 収支の長期連続観測をおこなった。攪乱の履歴が与える影響を確認する
ために、昨年と同じくアラスにおいて、地表面熱・水収支の観測をおこなった。更にアラスの形
成年代についての知見を得るために堆積物中の有機物による炭素絶対年代測定を行った。その結
果から調査地域でのアラスは 9000 年前に形成が開始したことが分かった。攪乱による森林の二酸
化炭素収支変動は以前と同じカラマツ林(サイト F)において地上 21m 設置した超音波風速計(Gill
model 1210R3)、オープンパス IRGA(Licor model 7500)のより、渦相関法によって顕熱、潜熱、
CO2 フラックスを連続観測した。乱流データを 10Hz で記録し、30 分ごとのフラックス計算時に
温度と水蒸気・CO2 密度の線形トレンド除去、WPL 補正と、定常性、標準偏差、フットプリント
―85―
によるクオリティコントロールをおこなった。比較のための伐採跡地はカラマツ林に隣接し、2000
年 11 月に 140 m×70 m の矩形に皆伐がおこなわれた。両サイトにおいて、渦相関法による熱・水
蒸気・CO2 フラックス、気象要素、土壌要素の連続観測をおこなった。2004 年と 2005 年には、
カラマツ林床でも、渦相関法によるフラックス観測をおこなった。東シベリアのカラマツ成熟林
の炭素固定に関わる生物的素過程のパラメータを実測した。また、これらパラメータの環境変動
に対する応答を日変化と年変動の時間スケールで明らかにした。これらにより、気候変動環境下
における東シベリアカラマツ林の炭素固定機能の影響評価を行い、モデルの精度向上に必要なモ
デル構造への提言を行った。現地調査による森林構成要素の分光特性に基づいて、LAIl 、FVC と
衛星データとの関係を放射伝達モデルにより検討し、LAIl 、FVC、NPP の地理的分布をランドサ
ット ETM+画像により見積もった。カラマツ(Larix gmelinii)天然林および森林中のアラス生態系
(62˚19’N, 129˚30’E)の乾燥草地、湿潤草地、沼地水面において、CH4 フラックスをクローズドチャ
ンバー法により経時的に測定した。
(2)タワー観測を中心とした温帯域における生態系パラメタリゼーションの研究
2-1)タワー観測
①冷温帯落葉広葉樹林生態系-大気間の CO2 収支の長期連続測定、変動要因の解明とデータベース
化
森林総研フラックスネット札幌森林気象試験地(羊ヶ丘)タワーにおいて、微気象観測および
CO2 フラックス観測を行った。その結果、台風被害翌年(2005 年)の観測結果同様、2006 年の観
測結果でも NEE の値は台風被害前に比べ吸収量が少なかった。また、観測データのデータベース
化に向けて作業を進めている。
②森林土壌の放出炭素フラックスの測定とパラメタリゼーション
過去 4 か年の土壌呼吸速度の結果を総括し、土壌温度および土壌水分との関係解析を行うとと
もに、室内培養法を用いて、リター層・細根・土壌有機物由来の CO2 放出量の推定を行った。
③森林群落の吸収・放出炭素フラックスの測定とパラメタリゼーション
羊が丘タワー観測サイトにおいて、林冠構成樹種の光合成特性を表すパラメータの季節変化に
ついて取りまとめをおこなった。また地下部現存量の推定、下層植生群落を構成するチシマザサ
について現存量と純生産量を推定した。これらからフラックスタワー観測、プロセスモデル、積
み上げ法による生産量推定値についてバリデーションをおこなった。
④森林群落の成長動態に伴う炭素フラックスのパラメタリゼーションと観測データの精度検証
羊ヶ丘タワー観測サイトにおける植物個体群動態モデルを用いて、過去 15 年間にわたる群落動
態のシミュレーションを行い、その結果を用いて GPP、NPP、NEE 等の変動と気象要素等の変動
との相関性を調べた。その際、変動のタイムスケールを日・月・年のように変えることによる相
関関係の変化を見ることにより、当該森林における炭素吸収量の変動要因をタイムスケール別に
抽出することを試みた。
2-2)モジュール FACE 観測
①葉面積指数(LAI)の季節変化・年次変化
LAI の季節変化を FACE システムにおいて継続調査する。また、虫害による LAI への変化を調
べるために、虫害センサスと窒素固定菌類の活性評価も継続する。
②土壌系の変化
高 CO2 環境では個葉の蒸散速度が抑制気味になると報告されている。この点を土壌のモニター
だけではなく、樹木解剖学的調査も合わせて実施する。さらに、ミニライゾトロンを用いた根系
の直接観測によって LAI と個体生産力との関連性を追跡する。土壌分解系への影響評価も行い、
土壌動物の役割の重要性を評価する。
③光合成と成長
従来の温暖化予測研究(例えば Oikawa 1986)によると、高 CO2 条件では上層木が繁茂して下
層へ到達する光量が減少し、下層の植物の成長が抑制されることが指摘された。さらに、高 CO2
では呼吸速度が抑制されるので(Akita 1982)、呼吸速度に大きく影響を受ける光補償点の変化に
及ぼす生理生化学過程を検討する。また、この 4 年間の樹木の成長を解析し、さらに木部構造と
水分生理の結果から、CO2 付加 4 年目の木部を中心に樹体形成への影響を調査する。
(3)リモートセンシングによるスケールアップ・パラメタリゼーションの研究
3-1)LAI 観測
―86―
これまでの成果に基づいて、異なるタイプの森林を対象として広域での葉面積指数(LAI)分
布図を作成するため、以下の解析を行った。
①高空間分解能データを利用した LAI マッピング
昨年度は航空機ライダ(Light Detecting And Ranging, LiDAR)のデータを用いて、ヒノキ・
スギの常緑針葉樹林を対象に LAI を推定した。今年度は四国に普遍的に生育する森林タイプとし
て、常緑広葉樹林および落葉広葉樹林を加えて LiDAR データを用いて LAI、平均樹高および林
分材積を推定するアルゴリズムを開発して分布図を作成する。
②プロットデータに基づく LAI の解析
衛星データによる広域 LAI 推定結果の妥当性を検討するため、これまでに収集した LAI のプロ
ットデータと気象要素の関係を解析して LAI のポテンシャル分布図を作成する。
③低空間分解能データを利用した広域の LAI マッピング
Monsi・Saeki が提示した相対照度と LAI の関係に基づいて、MODIS データを利用して LAI
の分布とその季節変化をマッピングする。プロットデータから得られた LAI 分布図や LAI ポテ
ンシャル図と比較して、結果の妥当性を検証する。
3-2)スケールアップ観測
①生態系モデルのアシミレーション手法の開発
植物の活性を表す指標である比葉面積(SLA)は、モデルにおいて LAI を算出するパラメータ
であり、個々の生態系の炭素動態を推定するために重要なパラメータである。ここでは、衛星か
ら観測された LAI を Sim-CYCLE に同化(アシミレーション)することにより SLA を推定する手
法を開発し、SLA のグローバルマップを作成した。さらに、IPCC SRES-A2 シナリオに従って、
2002-2100 年の純一次生産量(NPP)の将来予測を行った。
②衛星データを使ったフラックス観測データのスケールアップ手法の開発
アジア地域における炭素収支の広域評価を行うためのスケールアップ手法の検討を行った。そ
のために、高緯度寒帯域(シベリア)から中緯度温帯域(日本)、低緯度熱帯域(タイ、インドネ
シア)までの、AsiaFlux ネットワークが提供する様々な気象タイプのフラックス観測データを利
用して、衛星観測データから生態系純生産量(NEP)を推定するためのモデルを構築した。
③陸域生態系モデル検証のための時空間データセットの構築
本研究では陸域生態系モデルとの比較検証をするために、人工衛星からのリモートセンシング
による実際の植物活動の観測データセットを構築した。また、構築したデータセットから植物活
動のパラメータとして植物の開葉時期を定義し、時系列解析をすることにより 1984 年から 2004
年までの開葉時期の変動および、気象要素と開葉時期の関係を示した。
5. 5 年間の成果
(1)東シベリアでの地上観測を中心とした生態系パラメタリゼーションの研究
タイガ攪乱による二酸化炭素収支と水・熱収支の変動
永久凍土地帯における森林撹乱が地表面の熱・水・CO2 収支と永久凍土の動態に及ぼす影響を、
長期モニタリングによって明らかにすることを目的とし、タワー観測をおこなった。
観測期間は 2002 年~2006 年の 5~9 月で、研究サイトはロシア連邦ヤクーツク郊外のネレゲルの
カラマツ林と伐採跡地である。カラマツ林は Larix gmelinii の成熟林で、平均樹高は 10 m、樹冠面
の高さは 14 m、密度は 1600 ha-1 であった。両サイトにおいて、渦相関法による熱・水蒸気・CO2
フラックス、気象要素、土壌要素の連続観測をおこなった。2004 年と 2005 年には、カラマツ林
床でも、渦相関法によるフラックス観測をおこなった。
① 気象要素とカラマツ葉量の年々変動
観測サイトを含む東シベリアの気候は低温、少雨で、樹木の生育には非常に厳しい気象環境で
ある。また気温と降水量の年々変動が大きく、これが森林の成長、熱・水収支、CO2 収支の大き
な年々変動をもたらしている。図 2 に 2000~2006 年の成長期間を示す。ここで 2000 年~2001 年
は先行研究(JST CREST)による結果を加えてある。ここで成長期間は、日平均気温が 5℃以上
である日数として定義した。成長期間の平均は 127 日であったが、2001 年は低温で成長期間が短
く、2004 年と 2005 年は高温で成長期間が長かった。特に 2005 年は 5 月と 9 月の高温により、成
長期間は 139 日に達した。図 3 に、観測期間の降水量の年々変動を示す。期間降水量の平均は 150
mm 5month-1 だったが、2003 年までは乾燥化、それ以後は湿潤化のトレンドがあり、特に 2003 年
と 2006 年は 200 mm 5month-1 を超える多雨年であった。図 3 には、カラマツ葉量の相対的増減の
指標として、6 月後半の平均日射透過率(林床と樹冠上の全天日射量の比)を逆目盛りで示す。
―87―
カラマツ葉量は前年の降水量に影響を強く受け、2000 年~2002 年の降水量減少に応答して 2001
年~2003 年の葉量が減少し、その後 2003 年の多雨には 2004 年の葉量増加、2004 年の降水量減少
には 2005 年の葉量減少、2005 年の降水量増加には 2006 年の葉量増加という極めて明白な応答が
あった。
② 伐採跡地の植生回復
2000 年秋の伐採後、2001 年はコケモモなどの林床植生が残留していたが、生育環境の変化によ
って枯死または成長障害が起きた。ヤナギランなどの先駆植物の侵入は、限定的であった。その
後 2006 年にかけて、イネ科草本の繁茂、シラカンバの萌芽と幼樹群落形成(樹高約 2 m)が見ら
れ、植生回復が順調であった。
③ カラマツ林と伐採跡地の熱・水収支の特徴
着葉期のアルベドは、カラマツ林が火災跡地および伐採跡地より小さかった。これを反映して、
正味放射量はカラマツ林が火災跡地および伐採跡地より大きかった。しかし火災跡地および伐採
跡地は樹冠による被覆が失われ、土壌面が直接放射加熱されるため、地中熱流量はカラマツ林よ
り大きかった。落葉期のカラマツ林の蒸発散量は火災跡地・伐採跡地より小さいが、着葉期には
根による深層からの吸水によってカラマツ林の蒸発散量が大きかった。期間合計蒸発散量は、乾
燥年ではカラマツ林が大きく、湿潤年では伐採跡地が大きかった。期間中の降水量によって蒸発
散量は変動し、乾燥年の蒸発散量は小さかった。
④ カラマツ林と伐採跡地の CO2 収支の特徴
図 4 に、2000 年~2006 年の観測期間積算正味生態系 CO2 交換量(NEE)を示す。NEE は、正
が CO2 放出、負が吸収を表す。カラマツ林は期間積算で CO2 吸収を示し、期間 NEE の平均は-206
gC m-2 5month-1 だったが、年々変動が大きく、最小は 2003 年の 81 gC m-2 5month-1、最大は 2006
年の 509 gC m-2 5month-1 であった。この変動は気候的な要因である気温と降水量、生態的要因で
あるカラマツ葉量に依存すると考えられる。2001 年と 2002 年は乾燥年で、期間 NEE が小さかっ
た。2003 年と 2006 年はともに非常に湿潤であったが、2006 年は葉量が大きかったので NEE が最
大であったのに対し、2003 年は前年の乾燥のため葉量が最低であったため、期間 NEE は平均以
下であった。2005 年は湿潤であった上に成長期が長く、5 月中旬から 9 月中旬まで光合成が観測
され、期間 NEE は 2 番目に大きかった。伐採跡地の NEE は、伐採跡年目の 2001 年に 264 gC m-2
5month-1 最大の CO2 放出を観測したが、その後地表植生の回復によって放出が減少し、ゼロに近
づいた。しかし 2004 年に期間 NEE の最小値 3 gC m-2 5month-1 に達した後、2006 年までの 2 年間
は NEE が増加した。2004 年以後の NEE 増加は期間降水量の増加と一致するため、湿潤化によっ
て土壌有機物の微生物分解が促進された可能性も考えられるが、現時点では要因を特定できてい
ない。
⑤カラマツ林のフラックスにおける林床の寄与
カラマツ林における林床の寄与は、顕熱フラックスでは約 20%だが、潜熱フラックスでは乾燥・
湿潤によって異なり、約 30~60%を占めた。林床の CO2 フラックスは期間を通して正(放出)で
あったが、日中に放出速度が小さくなる日変動を示したことから、林床植生による光合成がみら
れ、土壌呼吸との比較から生態系光合成の 30%程度を占めると考えられる。
-1
precipitation (mm 5month )
140
130
120
110
100
NA
2000
250
0.20
200
0.25
150
0.30
100
0.35
50
0.40
0.45
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2000
図 2 日平均気温 5℃以上の日数で定義した成長
期の長さ(2001 年は先行観測結果)。
transmittance
growing season length (days)
150
2001
2002
2003
2004
2005
2006
図 3 期間(5 月~9 月)積算降水量とカラマツ葉
量の指標としての 6 月後半の日射透過率(林床と
樹冠上の日射量の比)
(2000 年-2001 年は先行研究
の結果)。
―88―
-2
-1
NEE (gC m 5month )
森林機能の変動
200
東シベリアのカラマツ成熟林の炭素固定に
NA
関わる生物的素過程のパラメータを実測した。
0
F
また、これらパラメータの環境変動に対する応
-200
C
答を日変化と年変動の時間スケールで明らか
-400
にした。これらにより、気候変動環境下におけ
る東シベリアカラマツ林の炭素固定機能の影
-600
響評価を行い、Sim-CYCLE モデルの精度向上
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
に必要なモデル構造への提言を行った。
図 4 カラマツ林(F)と伐採跡地(C)の期間(5
① 基本パラメータ(夏季)
試験地のカラマツ成熟林の最大樹高は 25m、 月~9 月)積算生態系正味 CO2 交換量
(2000 年 2001 年は先行研究の果)。
林分密度は 2200 本 ha-1、地上部の純一次生産
量(NPP)は 3.47ton ha-1 y-1 であった。林冠の葉面積指数(LAI)は 2.4 m2 m-2、林床の LAI(コケ
モモが優占)は 1.0 m2 m-2 であった。カラマツ林冠シュートの光-光合成曲線の光飽和光合成速
度(Asat、最適温度、最適飽差、CO2=350ppm)と初期勾配(AQE、CO2 固定のみかけの量子収率)、
炭酸固定能力(Vcmax)、呼吸速度(Rday)は、林冠内の異なる光環境で有意差が認められず、それ
-2 -1
-2 -1
-2 -1
ぞれ平均で Asat =12.3 µmol m s 、AQE =12.3 µmol m s 、Vcmax=34.5 µmol m s 、Rday = -1.65
-2 -1
µmol m s であった。
地上部の非同化器官(幹と枝)の表面積は土地面積あたり 0.579 m2 m-2 と 0.551 m2 m-2 であった。
枝の呼吸速度は直径サイズ依存性がないが温度依存性があり、0℃のときに 0.26 µmol m-2 s-1 で Q10
が 2.17 であった。
② 年変動
2002 年から 2006 年までの 6~8 月(生育期間)の総降水量は 13~213mm の年変動がみられ、
とくに 05 年と 06 年は過去 50 年で最も多い降水量であった。林冠シュートの光飽和光合成速度は
年変動を示さず、LAI は多雨年の翌年に 1.9 倍へ増加した。灌水による土壌水分操作実験では、LAI
は 2 年越しで 2.3 倍まで増加することを明らかにした。したがって、降水量変動に起因する土壌
水分は LAI の変化を介して林冠の炭素固定機能に影響を与えていることがわかった。
③ 日変化
林冠シュートの光合成速度は日中低下を示し、降水直後の晴天日では約半分まで低下し、無降
雨により土壌が乾燥すると約 9 割まで低下した。チャンバーを利用した葉温と葉面飽差の操作と
灌水による土壌水分操作の組み合わせ検証実験により、光合成速度の日中低下は、葉温の上昇、
葉面飽差の増大、土壌水分の乾燥の 3 つの要因が等分に作用したためであることがわかった。
④ まとめ ~降水量変動の影響評価と Sim-CYCLE モデルへの提言~
東シベリアカラマツ林の炭素固定は気象条件の影響を強く受けており、とくに降水量変動に起
因する土壌水分と大気の乾燥は当地カラマツ林の炭素固定の制限要因であることがわかった。過
去 50 年の気象データによると、当地の降水量は気温上昇とともに有意に減少していた。よって、
当地カラマツ林の炭素固定機能の制限が増大傾向にあり、大気 CO2 濃度上昇を促進する正のフィ
ードバック機能のはたらきが示唆された。降水量減少の傾向が今後も継続すれば、林木の光合成
生産量が呼吸消費量を上回れずに枯死木が増え、森林生態系の崩壊の恐れがある。他方、近年の
モデルシミュレーション研究は温暖化により当地の降水量増加を予測する例がある。もしも当地
の降水量が増加傾向に転じるようであれば、炭素固定機能の制限が緩和して、大気 CO2 濃度上昇
を抑制する負のフィードバック機能のはたらきが期待される。
永久凍土の変動
2002年7月より地中の観測を開始した未撹乱カラマツ林内に100m×150mのグリッドを作成し、
先を尖らせた鉄棒を差し込むことによって融解深の空間分布測定を行った。図5に2000年8月の未
撹乱カラマツ林内の融解深空間分布を示す。測定範囲の平均融解深は1.02m±0.12mであった。森
林の撹乱による永久凍土の状態変化を把握するため、 2000年11月に100m×70mの範囲(図6参照)
を伐採し、これをCサイトとした。また、Cサイトから北に約100m離れた未撹乱カラマツ林に
50m×50mグリッドを作成しこれをFサイトとした。これらのCサイトとFサイトはタワー観測地点
に対応している。これら2サイトにおいて2000年から2006年まで、各年最大融解期(8月下旬から9
月上旬)において融解深の空間分布測定を行った。図6に伐採から6年目、2006年のCサイトの融
解深空間分布の測定結果を示す。Cサイトの平均融解深は1.47m±0.15mであった。2006年はFサイ
トにおいても全体的な融解深の増加がみられ、1.21m±0.13mであった。これは、2005年の秋期か
―89―
ら続く降水量の増加によって地域的に融解深が増加したためであると考えられる。撹乱の激しい
場所(タワー周辺や伐採のための車道、火災実験が行われたプロット)では融解深の増加が著し
いことが確認された。このような融解深の増加が激しい場所では、含氷率の高い永久凍土上部が
融解して地盤が沈下するサーモカルスト現象が進行していることが同グリッド上のレベル測量の
結果から明らかになった。地盤の沈下量は最大で40から50cmに達した。地盤沈下が起こった場所
では地表面が冠水し、Cサイトの約20%の面積が水に覆われた。このまま融解深が増加する条件が
継続すると
本研究による実験伐採地にサーモカルスト湖が形成される可能性がある。
(cm)
140
120
100
40
80
60
20
0
(m) -80 -60 -40 -20
0
20
40
60
80
140
80
120
60
160
100
140
80
180
120
160
100
(cm)
140
180
100
40
80
20
60
0
(m) -80
100
図5 実験伐採前(2000年11月)の融解深空間分布
(2000年は先行研究の結果)。
120
60
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
100
図6 実験伐採後6年目(2006年9月)の融解深空間
分布。
Difference (m)
0
2003、2005、2006年には、未撹乱森林内でも
融解深の増加が見られた。8年間で融解深の空
0.1
間平均値は26cmの幅で変動した。これは、地表
面状態だけではなく、各年の積雪量・夏期気温
0.2
及び降水量によってその年の融解深が大きく
変動するためである。気象条件の経年変化によ
る融解深の変動と森林伐採による融解深増加
0.3
への影響を区別するために、C/F両サイトの融
解深の差の経年変化を図7に示した。 両サイト
0.4
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
の融解深の差は大きく変化する年(伐採後1年
Year
目と4年目)と前年の値とほぼ変化しない年に
図 7 未撹乱カラマツ林と実験伐採地の空間平均
分かれた。伐採後1年目の夏は乾燥し、蒸散に
融解深の差の経年変化 (2000 年-2001 年は先行
よって土壌水分を消費する植生がないために
研究の結果)
。
地中の水分が保持される一方、未撹乱カラマツ
林では極端に土壌水分が減少した。活動層の熱収支解析から土壌水分の変化に大きな変動があっ
た年の翌年には両サイトの差が広がりにくく、値は横ばいになることがわかった。2003年は比較
的夏の降水量が大きく、伐採後4年目の2004年の融解シーズンからはCサイトの大部分で顕著な冠
水が見られた。伐採後4年目の両サイトの融解深の差の増加は、地表面が冠水することによって地
表面下の熱伝導率の増加ことと地表面のアルビードの減少が主な要因となって、地中に熱を蓄積
しやすい状態になるためであることがわかった。
(2)タワー観測を中心とした温帯域における生態系パラメタリゼーションの研究
2-1)タワー観測
① 冷温帯落葉広葉樹林生態系-大気間の CO2 収支の長期連続測定、変動要因の解明とデータベー
ス化
タワーフラックス観測から得られた生態系呼吸量(RE),生態系総生産量(GPP)および生態系正味
生産量(NEP)を表に示す。表1は森林が台風被害を受けていない年の結果である。表に示すように
観測対象の林分の NEP は、2.6~4.0 MgC ha-1 year-1 であった。また、RE は 9~10 MgC ha-1 year-1 、
GPP は 12~14 MgC ha-1 year-1 と推定された。また、台風被害前の 2004 年と被害後の 2005 年の生
態系正味交換量 NEE(30 分別)を比較した結果、7~8 月の日中の最小(マイナスは森林への吸収)
の NEE は、2004 年がおおよそ-1.3~-2.0 mgCO2 m-2 s-1、2005 年がおおよそ-0.8~-1.1 mgCO2 m-2 s-1
で、台風被害後の日中の NEE は被害前の約 6 割であった。
―90―
表1 2000~2003 年の生態系呼吸量の推定値(REe),生態系総生産量の推定値(GPPe),生態系正味生産量
の推定値(NEPe)および生態系正味生産量の実測値を NEPe で補間した値(NEPoe) (単位:MgC ha-1
year-1)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
REe
GPPe
NEPe
NEPoe データ残存数 3)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2000
9.96
12.39
2.43
2.56
(7326/14317/17568)
2001
9.60
13.16
3.56
3.61
(7762/15211/17520)
2002
9.45
12.80
3.35
3.53
(7182/14251/17520)
2003
9.36
13.54
4.18
3.99
(7653/15160/17520)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*1)RE の推定式 RE = a * exp ( b * Tsoil05 ) {a,b}={0.063,0.060} Q10 = 1.82
*2)GPP の推定式 GPP = Agmax * PAR / ( (Agmax/α) + PAR ) Agmax,α;季節毎に変化
*3)データ残存数(U*>=0.4 で選択後のデータ数/QC 後のデータ数/年間データ数)
② 森林土壌の放出炭素フラックスの測定とパラメタリゼーション
土壌呼吸の自動測定(4 連 1 時間毎)を 2003 年 5 月より 2006 年 11 月(積雪期は除く)に行っ
た。また、林分代表性を明らかにするために 2004 年に 4 度、2005 年に 1 度、2006 年に 1 度、3.2ha
内 85 地点において土壌呼吸の多点測定も行った。
多点測定結果から林分内の土壌呼吸速度はどの時期においても対数分布をしており変動係数は
約 30%であった。自動測定で得られた土壌呼吸速度は林分平均値よりも常に大きかった。また、
その傾向は 2004 年の台風による風倒被害の前後で異なっており、林分平均値(Rsm)は次式のよ
うに自動測定値(Rsa)の1次式で示すことができた(Rsm=0.036+0.49×Rsa(2003~2004 年)、
Rsm=0.034+0.71×Rsa(2005~2006 年))。この関係式から得られた土壌呼吸速度は地温と指数関
数的な関係を示し、表 2 のようなパラメータで示すことが出来た。
表 2 各年次における土壌呼吸と温度との関係*
n
Year
a
b
R2
2003
0.041
0.089
0.80
3869
2004
0.056
0.072
0.82
3034
2005
0.051
0.070
0.84
3958
2006
0.050
0.070
0.86
4881
* Rsm = a ・ exp( b・Ts )
Rsm:土壌呼吸 (mgCO2m-2s-1)、Ts:地温(深さ 5cm, ℃)、a および b:パラメータ
Q10
2.44
2.05
2.02
2.01
これらの回帰式から土壌呼吸による CO2 放出量は 8.1~8.4 MgC ha-1 と見積もられた。
室内培養法を用いて表層(0-0.4m)のリター層・細根・土壌有機物からの CO2 放出速度を推定
した結果、それらの積算値と観測された土壌呼吸測定値はほぼ一致して推移した。また、表層土
壌で発生する年間積算 CO2 の内訳は、リター:細根:土壌=16:33:52 であった。
③ 森林群落の吸収・放出炭素フラックスの測定とパラメタリゼーション
羊が丘タワー観測サイトにおいて、北方系落葉広葉樹林の主要構成樹種 3 種(シラカンバ、ハ
リギリ、ミズナラ)について環境条件とフェノロジー・葉の性質・光合成特性の結果から、成長
期間を 4 期に区分し、光合成機能に関するパラメタリゼーションを行った。その結果第 1 期:開
葉開始から夏至(Day of year (DOY)173)まで、第 2 期:5℃以上の積算気温の増加量が最大にな
る 8 月上旬(DOY214)まで、第 3 期:昼の長さが短くなる秋分(DOY265)まで、第 4 期:落葉
終了までに分離できた。これら各時期に対して、単位葉面積当たりの葉内窒素量(Na)とカルボ
キシレーションの最大速度(Vcmax(25))、最大電子伝達速度(Jmax(25))、暗呼吸速度(Rd(25))
の関係、およびそれらの温度依存性をパラメタライズした。夏季における光合成の日中低下は気
孔コンダクタンスの変動で説明できる範囲のストレスであることが明らかになった。森林群落の
葉面積指数は最大で 5.91ha ha-1 であり、その垂直分布と角度分布をパラメタライズした。これら
の情報から森林群落内の光環境条件の分布を散乱光と直達光に分離してモデル化できるようにな
った。また林冠内の Na の垂直分布は比葉重量(LMA)と強く相関し、最終的に林冠内光分布の
関数として表すことができた。樹木の非同化部位(幹・枝)からの呼吸速度の温度依存性(Q10)は
季節によって明らかに異なった。また 15℃の時の呼吸速度(R15)は樹種や林冠内位置で大きく
―91―
異なった。しかし R15 は年間の単位表面積当たりの材積成長量と強く相関し、この関係では樹種
間差が小さくなった。これらのことから季節ごとの Q10 および R15 をパラメタライズし、非同化
部位の呼吸速度を推定することが可能となった。積み上げ法から森林群落を構成する樹木、およ
び林床に優占するササの現存量と純生産量(NPP)を推定した。これらの結果地下部を含めた現
存量は約 243Mg ha-1、地下部を含めた NPP は 6.3MgC ha-1yr-1(その内、細根は 1.7 MgC ha-1)と推
定された。生物体呼吸量が 8.1MgC ha-1yr-1、土壌呼吸(根除く)が 4.1Mg C ha-1yr-1、と試算され、
NEP は 2.23Mg C ha-1yr-1、GPP が 14.43MgC ha-1yr-1 と試算された。GPP の値はモデルによる計算
値(16.8MgC ha-1yr-1)より小さく、渦相関法による測定値(13.43MgC ha-1yr-1)よりも大きい。そ
れぞれ異なる手法で推定された NPP や GPP は完全には一致せず、相互検証の中から炭素収支に
大きな役割を果たすコンパートメントを探索することが残された重要な課題である。
④ 森林群落の成長動態に伴う炭素フラックスのパラメタリゼーションと観測データの精度検証
まず、植物の光合成・呼吸、熱収支、降水・降雪遮断、遮断水分の融解・凍結、積雪過程、土
壌層の熱・水移動など、北方林における CO2・熱フラックスの形成に関わるすべての過程を網羅
した群落微気候モデル(多層モデル)を開発した。また、羊ヶ丘タワー観測サイトにおける、個
葉光合成・呼吸、樹幹呼吸、群落構造、土壌呼吸、フェノロジー等の個別過程について、現地で
の実測データに基づくパラメタリゼーションを作成した。これらのパラメタリゼーションを上記
の群落多層モデルに導入し、CO2 及び熱フラックスの時間変動に関するシミュレーションを 3 年
間(2000~2002 年)にわたって行った。その結果、フラックスの季節変化パターンや growing season
の開始・終了時期の年々の違いなどはよく再現することができた。しかし、フラックスの日々変
動についてはモデルと実測が合わないこともあり、そのような個々の場合を詳細に調べた結果、
降水イベント後のフラックス観測値に問題のあるデータが含まれている可能性のあることが明ら
かになった。また、モデルによって計算された年間の NPP や NEP を実測値と比較したところ、
NEP はタワーフラックスによるものに比べ 2 MgC ha-1y-1 ほど過大であり、NPP は積み上げ法によ
る値より大幅に大きく計算された。これらの結果は、個別過程の実測値とタワーフラックスや積
み上げ法によるとの整合性が必ずしもとれていないことを意味している。そこで、この問題を解
決するために考慮すべき事項を抽出し、今後の検討課題として提示した。一方、樹木の個体群動
態を樹種別サイズ分布の時間変化によってパラメタライズする手法を用いた群落動態モデルを開
発し、上記の群落多層モデルと組み合わせることにより、当観測サイトにおける群落動態と微気
候の相互作用モデルを構築した。これを用いて、過去 15 年間の群落動態に関するシミュレーショ
ンを行い、現地調査結果との比較による検証を行ったところ、樹高分布の時間変化などが良好に
再現されることが確認された。そこで、この結果を用いて、GPP、NPP、NEP 等の変動に対する
支配要因を調べたところ、日々及び月々の変動については葉面積指数と気温が、年々変動につい
ては着葉期間の長さがそれぞれ主な支配因子であることが分かった。つまり、フラックスの長期
変動を推定するためには、年による生物季節の変動を正確に推定することが重要である。
2-2)モジュール FACE 観測
大気中 CO2 濃度の増加は、光合成機能と樹体の形成を介して樹木の成長を制御し、その集団で
ある森林は立体構造によって特徴付けられる。巨大な現存量を持つ樹木の幹は、大気中 CO2 が固
定・貯留場所として温暖化低減機能が期待されている。この特性を衛星データから直接評価する
ために、葉面積指数(LAI)をモニターし、その増減に関与する各種環境条件に注目して研究を
推進した。また、高 CO2 環境は葉の繁茂を促し、更新稚樹の生存を介して森林構造に影響を与え
ると予測されているので(Oikawa 1986)、更新稚樹や陰樹冠の光利用に直結した光補償点の変化
を調べた。
長期間かかって成長するのが樹木の特徴であるので、樹木は様々な環境への高い順化能力を示
す。特に光合成作用の基質である CO2 環境は、光合成速度を促進し樹木の成長が、少なくても一
時的には増加するということが多くの研究で報告されている。しかしながら、長期間の高 CO2 濃
度処理は、生理的な順化をもたらすことも知られている。すなわち、高 CO2 環境下で長期間生育
させると、数年後にはそれまでのような著しい成長の促進は認められなくなり、炭素固定能力は
期待するほど増加しなくなるという報告が多い。この生理的な順化の程度は、土壌栄養条件など
の生育環境や樹種によって大きく異なる。すなわち、将来予測される高 CO2 環境下での陸域の炭
素固定量を予測し、評価するためには、様々な地域・数多くの樹種で成長応答を調べることが求
められる。しかしながら、これまで自然条件での高 CO2 処理による樹木の成長応答の報告は欧米
での研究に限られており、土壌環境の大きく異なるアジアなど他地域での研究データが著しく不
足している。
―92―
―93―
9月
6月
7月
8月
9月
6月
7月
8月
9月
8月
8月
10月
7月
7月
10月
6月
6月
9月
9月
8月
10月
7月
8月
10月
6月
7月
9月
9月
6月
8月
8月
7月
6月
灰
灰灰
9月
7月
6月
LAI (m2 m-2)
褐
褐褐
そこで本研究では、アジア東北地域に焦点をあて、その中でも特に温暖化の影響が大きいとい
われている冷温帯地域(北海道)に着目した。すなわち、北海道に幅広く分布する樹木を対象に
し、それらを長期間高 CO2 環境下生育させた時の LAI を中心とした成長特性を明らかにし、将来
環境下での森林による炭素固定量を評価するための基礎情報を得ることを全期間の目的とした。
材料と方法
CO2 付加方法として、北海道大学札幌研究林に設置された Free Air CO2 Enrichment(FACE)を
用いた。FACE の大きさは直径 6m 高さ 5m である。CO2 付加 FACE を 3 基、対照区も 3 ケ所設置
した。FACE 内の CO2 濃度は、これまでの予測研究から 2040 年頃に到達すると考えられている
500ppmv とした。対照となる大気 CO2 濃度は約 370ppm である。
FACE 内の土壌を半分に区分し、半分を日本全域に広く分布する富栄養の褐色森林土、他方を
北日本特有の貧栄養の未成熟火山灰土壌とした。対象木は、北海道に広く生育する 11 種(遷移初
期種:シラカンバ、ウダイカンバ、ケヤマハンノキ、カラマツ、遷移中期種:ミズナラ、ヤチダ
モ、ハルニレ、ハリギリ、遷移後期種:ブナ、シナノキ、イタヤカエデ)とした。2003 年 5 月に
2 年生稚樹を各樹種が隣りあわないように 30cm 間隔で植栽した。半 FACE あたり各樹種を約 8
本ずつ植えた(半 FACE に約 90 本植栽)。植栽終了後、CO2 付加を開始した。なお、CO2 付加の
影響の小さい夜間(予備試験から求めた対象樹種の光補償点以下に CO2 付加を停止)、強風条件
下(3m・秒-1 以上)と冬季は CO2 付加を停止した。
成長量に関しては各生育期間の終わり(11 月)に地際直径(D)と樹高(H)を測定した。測
定は 2003 年から 2006 年まで合計 4 回行った。成長量を表すパラメータとして樹幹体積(=D2H)
を、群落全体の成長量として半 FACE あたりの群落成長量(=ΣD2H)を求めた。葉面積指数は
LAI メーター(LI-2000,LiCor 社、米国)を用いて毎月一度測定した。根系の観察はミニライゾ
トロンを利用し、CO2 交換速度の測定は携帯型光合成蒸散測定装置(LI-6400,LiCor 社、米国)
を用いた。虫害センサスはシュート単位で 2~5 日間隔で行い、被食防衛物質の定量は定法に従っ
た。ケヤマハンノキに共生する窒素固定菌の活性評価はアセチレン還元法(GC、島津)を用いた。
また、落葉落枝(リター)の分解過程評価は NC アナライザー(NC-900 島津)と生物検定(ワラ
ジムシ)を用いて行った。
結果と考察
衛星データとリンクする LAI は、CO2 付加初年度は両土壌ともに高 CO2 処理の影響は小さかっ
たが、2004 年には両土壌ともに高 CO2 処理によって有意に増加した(図 8)。
しかし、付加 3 年目になると 7 月から LAI
8
の低下が高 CO2 環境で顕著であった。4 年
対照区
7
高CO2区
6
目には 3 年目のような高 CO2 での低下はな
5
4
かった。3 年目とは異なり、対照区で 7~8
3
低下!
増加!
月に LAI が低下した。高 CO2 区で LAI が低
2
1
下しなかった理由の一つとして、虫害に遭
0
いやすいケヤマハンノキの多くが枯死して
2003年
2004年
2005年
2006年
いたことと残った樹種の耐乾性の向上が考
えられる。さらに 2006 年 7~8 月の気温が
8
7
高く降水量が異常に少なかった。現在の
6
5
CO2 濃度で育つ樹木にとって厳しい環境で
4
3
あり葉面積の低下が生じた。しかし、高 CO2
増加!
低下!
2
濃度で育つ個体では葉面積の低下はなかっ
1
0
た。高 CO2 環境下での生産性を評価するた
めには、乾燥との複合影響も考察する必要
2003年
2004年
2005年
2006年
がある。LAI を左右する虫害のセンサス結
果からは、2006 年 5 月に補植したケヤマハ 図 8 LAI の季節変化と4年間の変化 (矢印は LAI
ンノキにおいても、2005 年と同様に 7 月頃 の明瞭な低下が観察された時期)。
から高 CO2 区にて虫害が増加していた。そ
こで、ケヤマハンノキと共生する根粒菌(Frankia sp.)の活性をアセチレン還元法によって評価
した。この結果、高 CO2 環境では窒素固定活性が高くなり、葉の窒素含量が増加し、ケヤマハン
ノキの虫害は増加することが確認された。被食防衛物質は光合成の二次代謝産物から誘導される
ので高 CO2 条件では防御能力が上昇するが、ケヤマハンノキでは根系の共生微生物の働きを通じ
て他の樹種とは異なる反応を示すことを指摘したい。
実験 1 年目、2 年目には、富栄養の褐色森林土において、多くの樹種で高 CO2 処理による成長
量の増加が認められた。群落成長量も褐色森林土でのみ増加した。貧栄養の火山灰土壌では、高
CO2 処理によって成長が促進された樹種は少なかったものの、ケヤマハンノキのみは顕著な成長
増加を示した。これは、共生する窒素固定菌(Frankia spp.)の働きによって、高 CO2 環境下で不
足しがちになる窒素をケヤマハンノキのみが補給できた結果と考えられる。実験 3 年目以降は、
褐色森林土でも高 CO2 処理による成長促進効果が認められない樹種が増えた。特に実験 4 年目で
は、成長促進効果が認められた樹種は、いずれの土壌も 2 樹種のみであった。一方、3 年目、4
年目ともに群落成長量の増加は褐色森林土でのみ認められ、火山灰土壌では認められなかった。
しかし、4 年目の褐色森林土での群落成長量の増加割合は、3 年目までの増加割合比べて著しく低
下した。以上の結果から、北海道に広く生育する樹木は、土壌条件に関係なく高 CO2 処理 3 年か
ら 4 年で成長順化を起こす可能性が指摘できる。また、群落全体の成長量は火山灰土壌では促進
されなかったことから、大気中 CO2 濃度増加に伴う森林の炭素固定量の増加は、未成熟火山灰土
壌などの貧栄養条件下に生育する落葉樹では期待できないことが示唆された。しかし、細根の回
転率は高 CO2 処理でやや高く、さらなる調査が待たれる。
光合成機能は、高 CO2 環境でダウンレギュレーション(負の制御)を生じたが、その傾向は火
山灰土壌に生育させた先駆樹種で顕著であった。光補償点は全樹種で低下し、被陰環境で生育し
た冷温帯落葉広葉樹 4 樹種稚樹において高 CO2 環境下で弱光をより効率良く利用できることが解
明された。これは、高 CO2 環境では林床で生育する稚樹は、より暗い環境でも生存できることと、
高 CO2 環境による被陰環境の増加を相殺できる可能性を示唆した。これより高 CO2 環境による被
陰増加が群落構造に与える影響は小さくなると考えられる。光補償点を決定する要因は 2 つとさ
れるが、暗呼吸速度は全樹種において変化が見られず、見かけの量子収率では全樹種において有
意な上昇、又は上昇傾向が見られた。これらのことから、光補償点の低下に影響を与えるのは見
かけの量子収率の上昇であるということが明らかになった。
ここで、見かけの量子収率が上昇した原因は 2 つ考えられる。一つは、高 CO2 条件における弱
光環境での光合成速度の増加、もう一つは、高 CO2 条件での弱光環境での光呼吸速度の抑制であ
る。本研究は A/Ci(葉内 CO2 濃度-光合成)曲線から CO2 固定を律速する Rubisco の酸素化反応
(オキシゲネーション)速度 Vo を求め、Vo を光呼吸速度とした。カルボキシレーション反応速
度(Vc)は Rubisco の CO2 吸収速度、Vo 先に述べたように Rubisco に関連した光呼吸速度を表す。
Vc の結果は高 CO2 条件により、ミズナラ以外ではダウンレギュレーションが起こっていた。すな
わち Vc はダウンレギューションを生じながらも見かけの量子収率を上昇させていた。Vo は高 CO2
下で低下傾向を示し、見かけの量子収率の上昇に Vo の変化が影響していた。また、Vo/Vc の結果
も低下傾向を示し、Vo は Vc よりも相対的に低下しており、見かけの量子収率の低下に Vo の低
下が関与し、高 CO2 条件による光利用特性の変化の要因は光呼吸速度であると推察した。
光利用特性の異なる遷移前期・中期・後期の樹種に高 CO2 環境による光利用特性の変化に差が
あれば、植生の群落構造への影響も考えられた。しかし、本研究では遷移前期、中期、後期樹種
の全てにおいて 30%前後の光補償点の変化が起こることが分かり、高 CO2 条件による光利用特性
の変化には樹種による差が見られなかった。これは高 CO2 条件の光利用特性への影響は遷移段階
に関わらず、一様である可能性を示唆する。このため、特定の種に高 CO2 条件が強く影響し、そ
の樹種が優占的に成長、あるいは、その逆に枯死するといった現象は起きず、この点からも高 CO2
環境が将来の群落構造に与える影響は小さいと考えられる。
植物の栄養の吸収とそのバランスが土壌栄養条件によって大きく異なるため、CO2 の影響の植
物の成長に対する効果は植物体の栄養生理を介して現れる。CO2 濃度の増加は、リターの性質を
変化させる(N の低下、リグニン増加など)ため、リターの分解速度は低下することが予想され
た。一方、高 CO2 条件でのリター特性の変化はあるが、その程度は小さく、分解に大きな影響を
及ぼさないという指摘もある。そこで、分解系に関与する土壌動物の影響を調べることにした。
ワラジムシを一定条件で飼育し、FACE で生育した C/N 比の高い落葉を餌として与えてその成長
過程を追跡したところ、明らかにワラジムシの成長は抑制された。しかし、糞の C/N 比を調べた
ところ FACE 産の落葉と対照の C/N 比では、その差がなくなった。従って、分解系への影響が抑
えられるのは、こうした土壌動物の役割を注目する必要がある。
CO2 付加を開始して 3 年目付近から、リターを介した土壌の栄養環境等の変化が生じ、長期 CO2
付加の影響が検出され始めた。欧米と協力して進行する高 CO2 環境での地球規模での陸域生態系
の変化を予測するためには、さらなる継続研究が必要である。
―94―
(3)リモートセンシングによるスケールアップ・パラメタリゼーションの研究
3-1)LAI 観測
① 高空間分解能データを利用した LAI マッピング
四国西部精査域において、2002 年 9 月に航空機 LiDAR で幅 100m、長さ 80km の範囲を、レー
ザー密度約 1 点/1m2 で観測した。このライン上でヒノキ・スギの人工針葉樹林、常緑広葉樹林、
落葉広葉樹林について、合計 43 プロットを設定し、直径、樹高を測定した。地上調査データから
平均樹高、林分材積を計算し、さらにアロメトリ式を用いてプロットでの LAI を推定した。
LiDAR による LAI 推定方法については、昨年までのヒノキ・スギの人工針葉樹林での検討から、
Beer-Lambert 則による推定方法よりも、複数の LiDAR 算出指数からの回帰分析の方が、適用範囲
が広いことが分かったので、本年はさらに常緑広葉樹林、落葉広葉樹林についても適用した。ま
た、同様の方法を平均樹高、林分材積の推定にも用いた。算出した LiDAR 指数は、最大、平均、
最小、標準偏差、変動係数、90、75、50、25 パーセンタイルとし、最も相関の高い指数を選択し
た。この結果、LAI に関しては LiDAR 指数の平均で相関が高く(r=0.80、図 9)、林分材積につい
ても LiDAR 指数の平均で相関が高く(r=0.87、図 10)、両ケースとも針葉樹林と広葉樹林が同一
回帰直線上に分布した。これに対して、平均樹高では LiDAR 指数の 50 パーセンタイルの相関が
高かったが、針葉樹林と広葉樹林で回帰直線が分離した(図 11)。この結果と LiDAR データを用
いて、広域での LAI と林分材積推定を行い、LAI での推定結果を図 12 に示した。
y = 1.9 x + 1.3
全体: y = 0.024 x - 3.0
LiDAR index Average
LiDAR index: Average
25
20
15
10
広葉樹 針葉樹 森林無し
5
0
0
2
4
6
8
25
20
15
10
広葉樹
針葉樹
森林無し
5
0
0
10
200
400
600
Stand volume [m
LAI
図 9 LAI と LiDAR 指数平均の関係。
3
800
ha
-1
1000
]
図 10 林分材積と LiDAR 指数平均の関係。
広葉樹: y = 1.67 x - 4.02
針葉樹: y = 1.14 x - 2.78
estimated LAI using LIDAR
50 percentile
25
20
15
10
広葉樹
針葉樹
森林無し
5
0
0
6
12
18
m
100.00
North
<0.00
0.63
1.25
1.88
2.50
3.13
3.75
4.38
5.00
5.63
6.25
6.88
7.50
8.13
8.75
9.38
>=10.00
24
mean Height [m]
図 11 平均樹高と LiDAR 指数 50percentile の関
係。
図 12 LiDAR による LAI 広域推定全体(背景:
ETM B543, Quick Bird , ライン:推定 LAI) 。
プロットデータに基づく LAI の解析
これまでアロメトリ式に基づいてプロット単位で LAI を推定して、内挿によって日本列島の
LAI 分布をマッピングしたが(プロット LAI と呼ぶ、図 13a)、収集したプロットデータは 4km
間隔で測定されていたため、空間分布の推定には無理があると危惧された。そこで以下のような
手順でポテンシャルの LAI を推定した。1)林冠が閉鎖する前と考えられる平均樹高 7m 以下のプ
ロットを削除した。2)各プロットの周辺 20 点について平均値と標準偏差(SD)を求め、LAI が平
均値+1SD を越えるデータを異常値として削除した。3)地上の各点について半径 50km の範囲での
LAI の平均値と SD を求めて、平均値+1SD をそのエリアのポテンシャル LAI と考えた。4)気象要
素を説明変数として変数選択の重回帰分析を行い以下のようなポテンシャル LAI(LAIp)の推定
②
―95―
式を得て、分布図を作成した(図 13b)。
(1)
LAIp=0.068Pr+0.098Rnw -0.084Rns+4.62
R2=0.36
ここで Pr:8-9 月の降水量、Rnw:10-4 月の純放射(平均値)、Rns:6 月の純放射、である。
③ 低空間分解能データを利用した広域の LAI マッピング
昨年度までの解析ではプロット LAI と MODIS データを直接対比してモデル化することは、空
間スケールの違いから困難と判断されたので、
既存の知見に基づいて LAI 推定モデルを構築した。
Monsi と Saeki は植物群落内での相対照度が LAI の関数として、(2)式のように Beer-Lambert 則で
表せることを見いだした。
I / I0 = exp(-LAI / k)
(2)
ここで I:群落内の照度、I0:群落上での照度、k:吸光係数である。
(2)式に基づいて日射量と吸光係数が LAI に及ぼす影響について検討した。安比ブナ林での観測
結果に基づいて、成長期の日射量最大の月(305W・m-2)において相対照度 1%に相当する林内照
度が葉の生育限界と考えた。k=0.6 として LAI を算出すると、日射量の地域差によって日本列島
では LAI は 7.4~7.8 の範囲となることが分かった。これに対して k を 0.4 から 0.6 まで変化させ
ると LAI は 11.5~7.7 の範囲で変化することが分かった。このように LAI 推定においては森林タ
イプの分布を明らかにして、森林タイプごとの吸光係数に基づいて LAI を推定することが適切と
考えられた。
正規化植生指数(NDVI)は光合成有効放射(PAR)の吸収割合(fAPAR、(3)式)に比例すること
が知られている。(4)式に盛岡のブナ林について求めた NDVI と fAPAR の関係を示す。
fAPAR = (PAR0 – PARr - PARt) / PAR0
(3)
fAPAR = 0.0334 + 1.05×NDVI
R2= 0.826
(4)
ここで、PAR0:群落上での PAR の照射量、PARr:樹冠からの PAR の反射量、PARt:PAR
の樹冠透過量、である。
PARt/ PAR0 を相対照度 I/I0 と同じと見なせるので、(3)式と(4)式を組み合わせて(2)式に代入する
と次式のように NDVI を用いて LAI を推定できることが分かる。
LAI=-ln((1-PARr/ PAR0)-(0.334+1.05×NDVI))/k
(5)
ここで PARr/ PAR0 は可視域の波長における樹冠の反射率である。PARr/ PAR0 は MODIS データ
で与えることが可能だが、ノイズが多いため暫定的に 0.02 の固定値とした。日本の植生では k は
0.3~0.7 程度の値をとることが知られている。k は観測時間や季節によっても変化するため、正確
に k を決定することは難しいが、ここでは文献値に基づいて以下のように定めた。針葉樹林 0.4、
針葉-広葉樹林 0.48、広葉-針葉樹林 0.56、広葉樹林 0.64、ササ 0.45 である。昨年度作成した森
林分布図で各森林タイプの分布を定め、これらの k と MODIS データを用いて(4)式によって LAI
の分布(NDVI-LAI と呼ぶ、図 13c)とその季節変化をマッピングした。
気象要素からは森林は日本海側より太平洋側、北よりも南で高い LAI を維持できる可能性があ
ることが分かった(図 13b)。この傾向はプロット LAI(図 13a)にもわずかに現れているが、
NDVI-LAI(図 13c)では認められない。LAI の平均値はプロット LAI、ポテンシャル LAI、NDVI-LAI
の順に 3.8、4.5、6.7 だった。平均値に差は生じたが各図では LAI のレンジがかなり狭いことが現
れた。NDVI-LAI が過大な値になったのは、fAPAR を推定する(2)式の影響が大きいと思われる。
ブナ林で計測した式が、他の森林タイプには不適切なのかもしれない。NDVI による fAPAR の推
定式については様々な式が提案されているので、各森林タイプに適合した式を決定できれば、LAI
の推定精度を向上させることが可能になるだろう。
LAI (June 2002)
<1
2
3
4
5
6
7<
0
2
4
6
LAI (m2・m-2)
8
10
12
0
2
4
6
LAI (m2・m-2)
8
10
12
図 13 LAI 分布の推定結果 a)プロットデータからアロメトリ式に基づいて求めた分布図。b) (1)式を利
用して求めたポテンシャル LAI の分布図、c) (5)式を利用して MODIS-NDVI から求めた LAI の分布図。
―96―
3-2)スケールアップ観測
① 生態系モデルのアシミュレーション手法の開発
陸域生態系の炭素循環プロセスは、気象、植物、土壌、微生物等によって大きな影響を受ける。
Sim-CYCLE は、各プロセスをパラメタリゼーションすることによって炭素循環プロセスをモデル
化しているが、その中の多くのプロセスは、数少ないポイントデータに基づいているため、全球
レベルでのシミュレーションにおいて誤差を伴うことは避けられない。そこで、広域衛星観測デ
ータから得られるパラメータをモデルに代入することで予測精度の向上を試みた。ここでは、衛
星観測された LAI データを用いて、
(a)モデル出力値(LAI)を拘束したうえで、シミュレーシ
ョンする方法(ナッジング)、
(b)モデル出力値(LAI)が合致するようにモデルパラメータを調
整し、シュミレーションする方法(同化)、の 2 つを試みた。
(a)では、現況をより正確に評価す
ることはできるが、将来予測を行うことはできない。(b)では、同化により得られたパラメータ
を用い、さらに将来の気候値やシナリオ値等を用いて、将来予測を行うことが可能となる。
(a)ナッジング: 葉面積指数(LAI)は、植物の生育期間の NPP を推定するために重要なパラメー
タである。Sin-CYCLE では、気象や土壌条件から LAI が推定されるが、緒パラメータのデータ不
足から多くの誤差を含んでいる。そのため、ここでは衛星センサ MODIS から推定される LAI を
用いて Sim-CYCLE からの出力 LAI を拘束(ナッジング)し、シミュレーションを行なった。
MODIS-LAI でナッジングして推定した NPP は、従来の Sim-CYCLE のみから推定した NPP と比
較し、地上観測 GPPDI データセットからの NPP データセットと良く一致した(図 14)。図 15 に、
緯度ごとの生態系による MOD-Sim-CYCLE モデルの感度解析結果を示す。高緯度地域では気温が、
低緯度地方では雲量(日射量)が NEP の寄与に強く関係していた。
Temperature 20C higher
Precipitation and cloud cover 10 % higher
Tropics
NPP
Boreal region
Tropics
Boreal region
Respiration
図 14 GPPDI NPP と SimCYCLE NPP の関係(上)
、 図 15 NPP(上)と呼吸量推定(下)のための MODGPPDI NPP と MOD-SimCYCLE NPP の関係(下)
。 SimCYCLE による気象パラメータの感度解析。
(b)同化: Sim-CYCLE では LAI を算出する際に、葉の厚さに相当するパラメータである比葉
面積(SLA)を用いる。SLA は相対成長速度、窒素含量、光合成能などの植物の特徴と普遍的に
関係する重要なパラメータであるが、地上での実測データは極めて少ないため、Sim-CYCLE 等の
モデルシミュレーションにおいても誤差要因の一つとなっていた。ここでは、モデル出力 LAI
が MODIS-LAI に合致するようにモデル SLA を調整することにより同化を行った。
その結果、
精度の高い SLA 分布図が得られた(図 16 左)。MODIS-SLA は GLOPNET による地上実測値と
良好な関係を示した(図 16 右)。
―97―
>250 170
<5 cm2 g-1
R2 : 0.66
図 16
SLA の全球マップ
(左)。
生態系ごとに平均化された MODIS-SLA と GLOPNET-SLA の関係
(右)。
②
衛星データを使ったフラックス観測データのスケールアップ手法の開発
長期連続観測されているフラックスタワー・データは、季節変動や年々変動といった炭素フラッ
クスの動態を解明するための有効なデータである。しかし、地点観測データであるため広域評価
を行うことは難しい。そこで、フラックス観測データを衛星観測データと結合することにより、
炭素フラックスを広域に評価するための手法を開発した。
a. 日本の温帯落葉広葉樹林の生態系純生産量(NEP)の推定
フラックス観測データ(NEP)の月変動パターンを、同地点での衛星観測(MODIS)データの分
光特性により表現する指数を開発し、NEP を衛星データから推定した。ここでは、
NEP=GPP-RE
(5)
において、GPP を MODIS から得られる植生指数
(SAVI2, Soil Adjusted Vegetation Index 2)により、
また RE を熱バンド(ρtir)によってそれぞれ推定
することを試みた。いずれの変数もフラックス観
測値と衛星観測値の間に高い相関が見られた。
MODIS から推定された 2002 年における日本の温
帯落葉広葉樹林の NEP 分布を図 17 に示す。全域
での NEP は、347 ± 288 (平均値±標準偏差)gC m-2
yr-1 と推定された。また、日本の温帯落葉広葉樹
林の NEP 分布は、同一植生タイプであっても高
い不均一性を示した(図 17)。こうした森林の炭
素収支の面的評価は、環境要因による影響を正し
く理解し、地域レベルでの森林管理を行うのに役 図17 日本の温帯落葉広葉樹林におけるNEP分
立つと思われる。
布図。
b. アジア地域における生態系純生産量(NEP)
の推定
アジア地域では経済活動の発展に伴って
大規模な土地利用変化が進み、炭素収支の定
量的解明が危急な課題となっている。ここで
は、a.に示した手法を用いて、AsiaFlux ネッ
トワークが提供するフラックス観測データ
を利用して、衛星観測データ(MODIS)から
アジア地域(10°N-40°S、65-130°E)の NEP
を推定するためのモデルの構築を行った。使
用したフラックス観測データは、2002-2004
年の高緯度寒帯域(シベリア)から中緯度温
図 18 アジア域の NEP 分布図。
帯域(日本)、低緯度熱帯域(タイ、インド
ネシア)までの 5 地点で、前節で示したモデル同様、GPP は植生指数、Re は熱バンドの線形回帰
式から推定し、その差から NEP を求めた。アジア地域では、大気やエアロゾルの影響を補正した
植生指数 EVI(Enhanced Vegetation Index)を使うことによって、より高い精度で GPP を推定する
ことができた。しかし、雲の出現が多く、15 日間の雲なし合成画像を作成しても、雲の影響を完
全に除去することができなかった。そのため、アジア地域の NEP の推定分布図には、日本の温帯
―98―
落葉樹林で NEP を推定した時と比べて多くのノイズが含まれていると考えられる(図 18)。また、
植生が少なく高温な砂漠地域で過度に Re が推定されたため、砂漠地域での NEP は過小評価され
た。衛星観測データを用いた NEP 推定のためには、適切な土地被覆分類を行う必要がある。
③ 陸域生態系モデル検証のための時空間データセットの構築
本研究では陸域生態系モデルの検証データとして、人工衛星データによる実際の陸域生態系の
観測データセットを構築した。また、構築したデータセットから植物活動のパラメータとして、
植物の開葉時期を定義して時系列解析をすることにより、植物の開葉時期の変動および気象要素
の変動と開葉時期の関係を解析した。
東京大学生産技術研究所において受信した北東アジア域(北緯 30-50 度、東経 120-150 度)の
毎日の NOAA/AVHRR データに対してアジア域に適した前処理手法を適用し、10 日間合成画像を
作成した。10 日間合成画像の可視と近赤外の反射率から Normalized Difference Vegetation Index
(NDVI)を計算し、時系列 NDVI データセットを構築した。さらに、データセットに残存してい
る雲の影響、合成画像の観測日間隔が異なる問題を補正するための高品質化処理を行った。そし
て、NDVI の年変動の特徴点を春の開葉日として定義し、 1984 年から 2004 年までの各年の開葉
日を検出し、21 年分の開葉日のデータベースを作成した。図 19 は、混合林、落葉広葉樹林、耕
作地、草地における開葉日の時系列変動を示している。耕作地や草地では有意な変動の線形トレ
ンドが見られなかったが、混合林と落葉広葉樹林では開葉日が早期化する有意な線形トレンドが
見られ(それぞれ、-0.58 日/年、-0.68 日/年)、土地被覆により開葉日の変動傾向が異なることが
確かめられた。図 20 は、北東アジアにおける開葉日の変動傾向、および変動傾向の p−値の空間
分布を示している。開葉日の早期化が観測された混合林と落葉広葉樹林においても、特に北緯 35
度以北の気温の低い地域での早期化が顕著であることが確かめられた。
図 19 北東アジアにおける混合林、落葉広葉
樹林、耕作地、草地の開葉日の時系列変動と
1 月から 5 月までの平均気温の平年差。
(a)
(b)
図 20 北東アジアにおける開葉日の(a)変動傾向、 (b)
変動傾向の p−値の空間分布図。
図 21 は、北東アジアにおける混合林全体の開葉日と各気象要素の 1 月から 5 月までの平均値の
散布図を示している。気象データは CRU2.1 を使用し、気温、降水量、雲量の 3 つのパラメータ
を対象とした。それぞれの気象要素と開葉日の関係としては、気温と降水量では有意な関係が見
られたが、雲量とは有意な関係が見られなかった。また、気象要素の相互作用を確かめるために、
被説明変数を開葉日、説明変数を気温、降水量、雲量として重回帰分析を行った(式(6))
。
開葉日(DOY) = 261.4 - 3.4 * 気温(度) - 0.48 * 降水量(mm) - 2.1* 雲量(%) (R2=0.55) (6)
北東アジアの混合林全体としては、気温が高いほど、降水量が多いほど、雲量が多い(日射が
少ない)ほど開葉日が早まる傾向にあった。これは気温が高くとも、降水量が少ない、日射量が
多いと水分量が不足し、乾燥状態になるために開葉日は早まらないと解釈でき、開葉日の決定要
因として気温以外の気象要素の重要性も示された。
(c)
(b)
(a)
図 21 北東アジアにおける混合林全体の開葉日と各気象要素の 1 月から 5 月までの平均値の散布図
(a)
vs 気温(b)vs 降水量(c)vs 雲量。
―99―
6. 当該課題の成果と総括
陸域生態系は人間活動とも密接な関係を有し、且つ地球規模での気候・環境の変動と密接な関
係を有しているにも拘わらず、これまで、その観測やモデル化が大気や海洋に比較し遅れていた。
これは、陸域生態系の有する局所性や不均一性に起因しているものと思われる。しかしながら、
地球レベルでの温暖化モデルの構築において陸域生態系は重要且つ不可欠な要素であり、統合化
モデルの構築に向けて、その機構の解明、モデル化が緊急の課題となっている。
本研究では、統合化モデル(課題 2)において使用されている陸域生態系モデル(Sim-CYCLE)
を対象として、
・ 森林伐採・火災など撹乱による生態系影響に関する未知パラメータの同定と観測
・ 生態系パラメータ空間分布のスケールアップ観測(パラメタリゼーション)
・ 収集された観測パラメータのモデルへの結合(ナッジング、同化)
を試みた。この結果、
① 撹乱などに対する未知の現象の発見とパラメータの同定:シベリア、札幌における森林火
災、伐採、台風による倒伐に対するパラメータの変動計測
② 高 CO2 環境下での樹木の応答の評価とパラメータの同定:FACE 実験による樹木の生長パ
ラメータの変動計測
③ 衛星データによる生態系パラメータの広域計測:MODIS データを利用した広域・高精度葉
面積指数(LAI)の計測
④ スケールアップ観測手法の開発と生態系パラメータの広域計測:フラックス観測データ
(NEP の時系列点観測データ)からの MODIS データを用いた広域への外挿モデルの構築
と NEP 広域分布計測
⑤ 衛星観測データとモデルの結合によるモデルの高精度化:MODIS により観測された LAI
を Sim-CYCLE にナッジング、アシミレーション(同化)する手法の開発
などに成果を得ることができた。
一方で、残された課題も多い。評価においても指摘された幾つかの課題を以下に示す。
a. 本研究では、北方林、温帯林を対象としているが、生産量の視点からは熱帯・亜熱帯林を対
象としたパラメタリゼーションやモデル化を加える必要ある。
b. 全球規模に展開するに際して、多様なバイオームタイプに対してどのように対応するか戦略
を明確にする必要がある。
c. 陸域生態系のパラメタリゼーションで葉面積指数(LAI)に加えて、光合成有効放射量(PAR)
などパラメータを考慮する必要がある。また、LAI、PAR 等のパラメータについて衛星観測の
精度を検証することが必要である。
d. 今後、陸域生態系の変動評価で重要な要素となる DGVM(Dynamic Global Vegetation Model:
全球植生動態モデル)のパラメタリゼーション、モデル化を進めることが必要である。
e. 統合化モデルに早急に組み込むことにより、陸域生態系変動と、全球規模での気候・環境変
動の相互作用を評価する必要がある。
―100―
7. 研究発表(主要研究発表のみ)
論文発表
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• Sakai T., Akiyama T., Saigusa N., Yamamoto S. and Yasuoka Y. (2006) The contribution of gross
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• 小谷英司(2005)ヒノキ林の葉の傾斜角の垂直分布.日本森林学会関西支部会,2005.
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• 小池孝良 (2004) 温暖化現象と植物の生育、植物生態学(甲山隆司編著)、朝倉書店、東京、361-391
• 小池孝良 (2003) 地球環境変動と植物:高 CO2 環境への応答、光と水と植物のかたちー植物生理生態
学入門(村岡裕由・可知直毅編)、文一総合出版、東京、119-138.
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―107―
諸物理過程のパラメタリゼーションの高度化(大気・海洋分野)
研究代表者: 日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科教授)
1. 研究計画の目的
本研究は、地球温暖化予測の大きな不確定要因となっている、海洋中の乱流拡散、対流・サブ
ダクション、海氷、大気中の乱流拡散、エアロゾル・雲、さらには、海洋中の炭素収支等につい
てのパラメタリゼーションを厳密かつ詳細に行うため、以下の 3 つのサブテーマのもとに、各種
の観測・モニタリング、数値実験、室内実験等による素過程の解明を進める。得られた研究成果
を、他の研究課題で開発される予定の「大気海洋結合モデル」および「統合モデル」に組み込む
ことで、地球温暖化予測の精度向上に貢献する。
・サブテーマ 1
海洋および大気におけるサブグリッドスケールの物理過程のパラメタリゼーションの研究
・サブテーマ 2
地球温暖化にかかわる大気組成変動予測のための研究
・サブテーマ 3
太平洋における炭素循環モデルの高度化
2. 研究計画の概要
サブテーマ 1.
海洋および大気におけるサブグリッドスケールの物理過程のパラメタリゼーションの研究
本研究は、海洋の中・深層における乱流拡散、海洋表層における対流・サブダクション、海氷
の力学過程、さらに、大気対流圏および大気境界層における乱流拡散など、地球シミュレータで
実現される 10km の計算格子でも表現しきれないサブグリッドスケールの現象を対象に、最新の測
器を用いた詳細な観測、あるいは、既存の観測データの詳細な解析を行うことで、その実態を把
握する。さらに、こうして明確に定義されたサブグリッドスケールの現象を、地球シミュレータ
を用いて直接シミュレーションすることで、現象を支配する物理機構を明らかにする。最後に、
この物理機構に基づいて高精度で信頼できるパラメタリゼーションを開発し、気候変動予測モデ
ルに組み込むことで、温暖化予測の精度を格段に向上させる。研究内容は以下の通りである。
①海洋中における乱流拡散のパラメタリゼーションに関する研究
②海洋境界領域の物理過程とそのパラメタリゼーションに関する研究
③季節海氷域での海氷過程のパラメタリゼーションに関する研究
④サブグリッドスケールの自由大気乱流のパラメタリゼーションに関する研究
⑤高精度の大気・海洋境界層乱流モデルの開発
⑥領域気候モデルを用いた雲と陸面過程のパラメタリゼーションに関する研究
サブテーマ 2.
地球温暖化にかかわる大気組成変動予測のための研究
二酸化炭素については、本研究の観測から得られる二酸化炭素濃度の空間分布・季節変化など
のデータを、他の研究課題「炭素循環・気候変化結合モデル」に用いられる陸域炭素循環モデル
SimCYCLE と大気輸送モデルから得られる結果と比較して、炭素循環モデルの検証とパラメタリゼ
ーションを行う。オゾンについては、本研究の中国・ユーラシア大陸・日本での観測から得られ
るオゾン、一酸化炭素、HOx などの濃度変動データを、他の研究課題「温暖化・大気組成相互作用
―109―
モデル」から得られる計算結果と比較して、化学輸送モデルの検証とパラメタリゼーションを行
う。また、エアロゾルについては、本研究で得られる放射収支、雲・エアロゾルの微物理量、人
工衛星リモセンなどのデータに基づき、他の研究課題「温暖化・大気組成相互作用モデル」と比
較して、雲・放射モデルのパラメタリゼーションを行うとともに、理論モデルによるパラメタリ
ゼーションとの比較検証を行う。研究内容は次の通りである。
①対流圏オゾンの濃度変動プロセスの解明と温暖化影響に関する研究
②トップダウン法による二酸化炭素・メタン収支の推定に関する研究
③エアロゾルと雲の物理・化学特性のモデル化に関する研究
サブテーマ 3.
太平洋における炭素循環モデルの高度化
太平洋に供給される陸起源降下物のうち、特に、炭素を中心とする海洋中での物質循環過程を
階層毎のプロセスの解明から総合的に掌握し、温暖化シナリオに果たす役割を解明する。また、
研究船を用いた海洋観測を中心に、生態系を含めた炭素循環の素過程を支配するパラメータの構
築を行い、他の研究課題の海洋生態系モデル開発グループとの連携を通じて、地球温暖化予測統
合モデルの開発に貢献する。研究内容は次の通りである。
①アジア大陸から空輸される陸起源物質の降下量変動に関する研究
②陸起源微量元素の海洋生物ポンプに果たす役割に関する研究
③海洋表層における有機物収支に関する研究
3. 5年間の研究計画
サブテーマ 1.
海洋および大気におけるサブグリッドスケールの物理過程のパラメタリゼーションの研究
-研究開発1年目:
[大気および海洋におけるサブグリッドスケールの現象の高精度観測による実態把握]
大気の対流圏上部から大気境界層に至るまで、また、海洋表層境界域から海洋内部領域の中・
深層に至るまで、個々のサブグリッドスケールの現象ごとに最適のフィールドを定め、最新の測
器を用いた詳細な観測を実施したり、既存の観測データを詳細に解析したりすることで、現象の
実態を把握する。
-研究開発2年目:
[地球シミュレータによるサブグリッドスケールの現象の観測結果の数値シミュレーション]
1年目に観測された、大気および海洋中での個々のサブグリッドスケールの現象を、地球シミ
ュレータを用いて直接数値シミュレーション (DNS あるいは LES) し、個々の現象をコントロール
している物理機構を明らかにする。
-研究開発3年目:
[高精度観測とその数値シミュレーションで明らかにされた物理機構に基づくサブグリッドスケールの現象
のパラメタリゼーション]
個々のサブグリッドスケールの現象を支配している物理機構に基づいて、不確定性のないパラ
メタリゼーションを明らかにし、研究課題1で開発される予定の「気候変動予測モデル」にその情
報を組み込む。
―110―
-研究開発4年目:
[開発されたパラメタリゼーションの高精度観測による再検証とその手法によるサブグリッドスケールの現
象のグローバル・マッピング]
研究課題1の「気候変動予測モデル」の結果をフィードバックすることによって、研究開始3
年目までに得たパラメタリゼーションの改良を進める。こうして改良を加えたパラメタリゼーシ
ョンの有効性を、実際の観測データを用いて検証するとともに、場合によっては、地球シミュレ
ータによる高精度計算を繰り返し、その結果に基づいて適宜、修正を加える。さらに、このパラ
メタリゼーションを用いて、サブグリッドスケールの現象に関する全球的なマッピングを行う。
-研究開発5年目:
[本研究によって明らかにされたサブグリッド現象の物理過程を組み込んだ気候モデルによる本研究成
果の確認 ]
最終的に得られたサブグリッドスケールのパラメータを、研究課題1の「気候変動予測モデル」
に再度、組み込み、従来型のパラメタリゼーションを組み込んだ結果と比較することにより、本
研究の成果を確認する。こうして、大気および海洋中における個々のサブグリッドスケールの現
象に関する不確定性を解消することで、地球シミュレータの性能を最大限にまで高めた、次世代
の気候モデルの完成に寄与する。
サブテーマ 2.
地球温暖化にかかわる大気組成変動予測のための研究
-研究開発1年目:
(二酸化炭素・メタン) 小型二酸化炭素連続測定装置、二酸化炭素自動精製装置、大気試料を変質
させない採集容器を製作し、太平洋上での船舶観測、日本とロシアでの航空機観測に加え、南北
両極域や中国に地上観測ステーションを設置し予備的観測を開始するとともに、全球3次元大気
輸送モデルの高解像度化を図る。
(オゾン) 中国の複数地点においてオゾン・一酸化炭素の地上観測ステーションのサイトを決定し、
自動データ転送システムなどの観測システムを確立する。HOx ラジカル測定装置の感度を向上させ
る。また、アジアにおけるオゾン前駆体物質放出量の将来予測手法を検討する。
(エアロゾル・雲) アジアの数点および観測船「みらい」において、エアロゾルと雲の物理・化学
特性、および地表面放射収支を測定するステーションとデータ自動転送システムを確立する。ま
た、CCSR/NIES 数値大循環モデル、気象庁非静力学メソスケールモデル、ヘブライ大学雲分解モデ
ルを用いて、これらの観測点で観測されたエアロゾルと雲の特性をモデル化するための準備を行
う。NOAA/AVHRR, EOS/MODIS および ADEOS-II/GLI 衛星搭載センサーからのアジア域データの収集
を行う。
-研究開発2年目:
(二酸化炭素・メタン) 観測を継続し、二酸化炭素・メタン濃度とその炭素同位体、酸素濃度のデ
ータの蓄積を図り、取得したデータの整理と解析を実施する。また、SF6 等を用いて大気輸送モデ
ルの検証を詳細に行い、必要な改良を行うとともに、二酸化炭素・メタン濃度のみならず炭素同
位体比と酸素濃度も扱えるようにする。
(オゾン) 前年度に準備した中国における地上観測ステーションにおける通年観測を開始する。中
国西部又は中央アジアにおける地上観測ステーションのサイトを決定し、観測システムを確立す
る。また、国内において対流圏光化学モデル検証のための HOx ラジカル測定を含む集中観測を行
う。対流圏オゾンによる放射強制力の算出に必要な、将来のオゾン前駆体物質のエミッションデ
ータを整備する。
―111―
(エアロゾル・雲) 前年度に準備したステーションにおける観測を開始する。また、そこで収集し
たデータに対応するモデルシミュレーションと衛星リモートセンシング解析を開始する。
- 研究開発3年目:
(二酸化炭素・メタン) 観測の継続とデータの整理・解析を行うとともに、関連する代表的研究機
関のデータの収集と標準物質の相互検定を開始する。高度化された大気輸送モデルをもとに、二
酸化炭素・メタンの放出・吸収源強度を高空間分解能で推定するインバース解析法を開発する。
(オゾン) 中国における地上観測を継続し、取得されたデータの整理・解析を行う。また中国西部
または中央アジア、における通年観測を開始する。これまで他のプロジェクトで得られているア
ジア域における観測データと併せて、化学輸送モデルによる計算との比較検討を行う。対流圏光
化学モデル検証のための HOx ラジカル測定を含む集中観測を季節を変えて行う。
(エアロゾル・雲) 得られたエアロゾルと雲場の形成メカニズムを用いて、数値大循環モデルとメ
ソスケールモデルの精緻化を図る。得られたモデルによって地表面における放射場と降雨量、大
気上端における放射場をシミュレーションし、地表面での観測値や CERES、TOVS などの放射収支
量を得ることができる衛星観測データと比較する。この研究によってアジア域の人為起源エアロ
ゾルの直接気候影響と間接気候影響の大きさを定量的に評価する。
-研究開発4年目:
(二酸化炭素・メタン) 観測とデータの整理・解析を継続するとともに、他の研究機関のデータと
の結合を図り、グローバルデータセットを作成する。それをもとに、大気輸送モデルとインバー
ス法による人為起源の二酸化炭素・メタンの収支の評価を試みる。
(オゾン) 中国および新たに立ち上げた中央アジアにおける通年観測を継続し、データを蓄積する。
また、世界の他の地表オゾン観測とネットワークを組み、全球オゾンのマッピングを行う。化学
輸送モデルによるオゾン濃度の将来予測を行う。
(エアロゾル・雲) 得られたエアロゾルと雲場の形成メカニズムを用いて、数値大循環モデルとメ
ソスケールモデルの精緻化を図る。得られたモデルによって地表面における放射場と降雨量、大
気上端における放射場をシミュレーションし、地表面での観測値や CERES、TOVS などの放射収支
量を得ることができる衛星観測データと比較する。この研究によってアジア域の人為起源エアロ
ゾルの直接気候影響と間接気候影響の大きさを定量的に評価する。
-研究開発5年目:
(二酸化炭素・メタン) 観測データの最終的解析を行い、時間空間変動の実態を明らかにすると同
時に、二酸化炭素濃度、炭素同位体比および酸素濃度のグローバルデータセットを用いて炭素循
環モデルおよび大気輸送モデルを拘束し、近年の二酸化炭素・メタンの全球平均収支および全球
にわたった地域別の収支の評価を高精度に行う。
(オゾン) 観測データの最終的解析を行い、アジア全域におけるオゾンの時間空間変動プロセスを、
ユーラシア大陸間輸送を含めて解明する。アジアおよび全球におけるオゾンの過去及び将来にわ
たる放射強制力を評価する。
(エアロゾル・雲) 前年度の準備をもとに、アジア域におけるエアロゾルと雲の微物理特性と放射
特性をモデル計算する。その結果を衛星解析、地上観測データと比較・解析することによって、
数値大循環モデルの精緻化を図る。それによって人為起源エアロゾルの直接・間接の気候影響の
大きさを評価する。特に人為起源エアロゾルによる放射強制力と降雨量変化を求める。
―112―
サブテーマ 3.
太平洋における炭素循環モデルの高度化
-研究開発1年目:
海面直上の大気を対象としたリアルタイム微量気体分析手法の確立とエアロソルの粒径別分析
を船上で行えるシステムを構築する。5 月に米国 NSF の研究船 Melville による大阪—ハワイ研究
航海で共同観測を行う。さらに、9月に沖縄周辺海域の淡青丸航海に参加し、鉄、ケイ素、重金
属、栄養塩の観測を行う。海洋微生物群集による、難分解性溶存有機物の生成、コロイド粒子か
ら大型粒子の生成メカニズムに関して、現場海水を用いた培養実験を中心に研究を進める。
-研究開発2年目:
船舶用リアルタイムエアロソル化学分析システムを構築し、船上テスト、データ解析手法を確
立させる。白鳳丸航海に参加し、船上からの観測によって生物生産、及びその季節変動を把握す
る研究を行う。光化学反応による難分解性溶存有機物の生成、溶存→コロイド→大型粒子の物理
化学的な凝集過程の解明について研究を進める。
-研究開発3年目:
北太平洋亜寒帯域での鉄散布実験航海で,海洋表層水観測測定グループとの共同観測を展開す
る。大気から降下する鉄濃度を人為的に添加した現場海域の有機物生産の増加が、沈降粒子とし
て鉛直輸送される分、また、難分解性の溶存有機物、懸濁有機物に変化し海水中に蓄積する分を
定量的に見積もる。
-研究開発4年目:
春季の西部北太平洋において、大気化学物質輸送予測モデルに基づいた陸起源物質降下海域で、
大気下層、海洋表層の同時観測を行い、自然現象としての大気物質降下による海洋生態系の変化
を実測する。データベースを整備するとともに、溶存有機物のキャラクタリゼーションを行い、
その情報を用いて難分解溶存有機物生成の詳細なメカニズムの解明を行う。
-研究開発5年目:
陸からの物質放出過程、大気輸送過程、除去過程、降下物質による海洋生態系の反応を含めた
物質循環生態系モデルへのパラメータを取りまとめ、モデルグループとの統合的解析を行う。シ
ンポジウムを開催するとともに、成果論文の公表を行う。
―113―
4. 5年間の研究成果
サブテーマ 1.
海洋および大気におけるサブグリッドスケールの物理過程のパラメタリゼーションの研究
1-1. 海洋中における乱流拡散のパラメタリゼーションに関する研究
密度躍層内の鉛直乱流拡散は、海洋表層からの熱を深層に伝達し浮力を与えることで 30 Sv (1
Sv=106 m3s-1) に及ぶ深層水を上層に引き上げていると推察されている。従って、鉛直乱流拡散強
度の全球分布の解明は、深層海洋大循環モデルの高精度化、ひいては、気候変動の予測精度向上
に必要不可欠である。
海洋物理学に残されているこの最大の不確定要素を解消するため、我々の研究グループでは、
理論と観測の両面から、鉛直乱流拡散強度の全球分布の解明に関する研究を進めてきた。その結
果、元々は大気擾乱や潮汐から海洋に与えられたエネルギーが、強い緯度依存性をもつ parametric
subharmonic instability という内部重力波の 3 波共鳴機構によって乱流スケールまでカスケードダ
ウンしていることを数値的に明らかにし、「強い鉛直乱流拡散 (乱流ホットスポット) が緯度 30°
より低緯度側に限られる」ことを世界に先駆けて予測した(Hibiya et al., 1996, 1998, 2002; Furuichi
and Hibiya, 2005)。実際、この理論的予測は、本研究グループが数年間にわたって、北太平洋から
南太平洋、南インド洋、さらに、北大西洋に展開してきた投棄式流速計 (XCP) による鉛直シアー
観測で実証され (図 1、○印)、空間的に一様な乱流拡散パラメータを用いている現在の海洋気候
モデルへの警鐘ともいうべき事実が明らかにされた (Nagasawa et al., 2002, Hibiya and Nagasawa,
2004)。
最近、我々は、この理論/観測研究をさらに発展させ、XCP 観測の結果とグローバルな内部潮汐
波/大気起源慣性重力波のモデル (Nagasawa et al., 2000; Niwa and Hibiya, 2001a, b; Watanabe and
Hibiya, 2002; Watanabe et al., 2005)とをリンクさせることで、乱流ホットスポットのグローバルマッ
ピングを行い、著しい非一様性をもつその空間分布の解明に初めて成功した (図 2) (Hibiya et al.,
2006)。これは、内部重力波エネルギーのカスケード理論を駆使することで、乱流拡散強度の分布
を、潮汐や低気圧擾乱など、より把握しやすいその究極的なエネルギー源の情報から明らかにし
たものである。
図 1.
XCP 観測により見積もられた、鉛直乱流拡散係数(○)の緯度分布(Hibiya and Nagasawa, 2004)。
TurboMAP-D2 による乱流直接観測の結果(Nagasawa et al., 2007)を★で重ねてある。数値実験により
求めた、内部潮汐波エネルギーの各観測点における密度をカラートーンで示す。
―114―
図 2.
海洋深層における鉛直乱流拡散係数のグローバルな分布 (Hibiya et al., 2006)。
この乱流ホットスポットのグローバルマ
ップの有効性は、我々の研究グループが、我
が国初となる深海乱流計 (アレック電子(株)
製 TurboMap-D2) を導入して行った、北太平
洋の合計 37 地点 (図 3) における乱流強度の
直接観測により確認された (図 1、★印)
(Nagasawa et al., 2007)。これらの結果は、乱
流ホットスポットの空間分布というミクロ
な情報から、海洋大循環研究、ひいては、気
候変動予測研究のブレークスルーへの道を
切り拓いた成果として位置づけることがで
きる (Endoh and Hibiya, 2006, 2007)。
図 3.
海底地形の分布と TurboMAP-D2 による乱流観測
点(●) (Nagasawa et al., 2007)。
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―115―
1-2. 海洋境界領域の物理過程とそのパラメタリゼーションに関する研究
海洋表層に見られる傾圧不安定に注目して、南極周極流域(亜南極前線域 SAF)を対象とする観測
および3次元非静水圧モデルによる実験を行い、混合層内に発達する 10km スケールの傾圧不安定
が亜南極前線(SAF)を横切る海水、水温、塩分の南北輸送に深く関わっていることを明らかにした。
また、理想化された状況でのモデル実験から、同様の過程が周極流域に限らず強力な海流が流れ
る海洋表層においては、輸送、水塊形成過程に対する重要な要因の一つであることが認められた。
従来から、モデル内で解像されない傾圧不安定の輸送効果をパラメタライズするために、
Gent-McWilliams のスキーム (以下、GM スキーム)が有効な手段として用いられている。しかし、
上で述べた海洋表層(混合層)に生起する小スケールで成長の早い傾圧不安定の輸送効果は、一定
の渦輸送係数、等密度面拡散係数による GM スキームでは良好に再現されない。スキームの改良の
ため、鉛直方向に一様な水平密度勾配を持つ単純化された基本場に対して海面冷却を加えるとい
う設定でモデル実験を行った。冷却の作用によって混合層内に発達する傾圧不安定の成長率が基
本場のそれより2~4倍大きいという結果を考慮し、GM スキームの渦輸送係数、等密度面拡散係数
の値を混合層内で4倍まで大きく設定することで、一定の係数のもとでは再現ができなかった混
合層内およびその直下における水温の鉛直分布が3次元非静水圧モデル実験と同程度に再現され
ることを確認した。成長率に依存した渦輸送係数や等密度面拡散係数を用いることで、複数の傾
圧不安定の効果を GM スキームに組み込める可能性が示された。
さらに、長期の時間積分を行うことで、改良された GM スキームの渦輸送係数、等密度面拡散係
数の評価を行った。同時に、基本場の成層構造の違いにも注目して、海域に依らないパラメタラ
イズを目指した。基本場の成層強度に依らず、海面冷却下で混合層内に発生する 10km スケールの
傾圧不安定は、海水の効果的なサブダクションを引き起こすと同時に、成層化を促進するため、
混合層深の増加は抑えられる。このスケールの不安定が再現されない格子幅での実験で、GM スキ
ームを混合層内にだけ適用したところ、小スケールの傾圧不安定の効果をモデル内に再現するこ
とが可能となり、
特に基本場の成層
が強い場合には、
十分な改善が見ら
れた(図1)。また、
渦輸送係数、等密
度面拡散係数は密
度構造から見積も
られる傾圧不安定
の成長率に依存さ
せる Visbeck et al.
(1997)の方法が有
効であった。一方、
成層の弱い場合に
は、改善は必ずし
も十分とは言えな
い。この場合には、
GM スキームでは考
慮されていない非
断熱過程が卓越す 図 1. 混合層内に GM スキームを用いた場合の水温の鉛直分布の改善(成層が強い場
ることがその原因 合)。上:GM スキームを用いない場合、下:GM スキームを用いた場合。図はいずれ
と考えられ、今後 も粗格子(10km)と細格子(1km)で行われた実験結果の差を示しており、GM スキームを
の検討が必要であ 組み込むことで粗格子(10km)での結果が細格子(1km)でのそれに非常に近づいている
る。
ことがわかる。Zmix は混合層の平均的な深さを示す。
潮汐が引き起こ
す海底境界層内での乱流(混合)についても検討し、その相似性を明らかにした。
―116―
1-3 季節海氷域での海氷過程のパラメタリゼーションに関する研究
オホーツク海での、4 年間にわたる砕氷船による海氷コアサンプリング観測から、海氷の成長・
発達は、開水面でできた薄い海氷(平均約 10cm)が互いに重なり合って厚くなる過程が最も重要
であることが示された(Toyota et al.,2004,2006)。これは、今年度まで蓄積した、オホーツク海紋別
沖での氷厚計と ADCP(漂流速度計測用)の係留系長期連続データからも支持され、重なりあっ
た海氷(変形氷)の占める割合は、全海氷体積の約 80%にも及ぶことがわかった(Fukamachi et
al.,2003,2006)。以上の知見に基づいて、確率過程による氷厚発達モデル(薄い海氷がある割合で重
なり合って厚くなるというモデル)を提出した(Toyota et al.,2004)。このモデルは舷側ビデオ及び
氷厚計から得られた氷厚分布をよく説明する。係留系観測などからオホーツク海南部の平均氷厚
が約 70cm であることも示された(モデルの検証用データ:Fukamachi et al.,2006)。
上記のように、海氷の生産は開水面・薄氷域でほとんど行われる。そこで、薄氷域を衛星で検
知し、熱収支計算を行うことで海氷生産量を求めることを行った。そのためにまず、南極海での
氷厚トゥルースデータから AVHRR により海氷厚を見積もる方法を確立し(Tamura et al.,2007)、そ
の AVHRR 氷厚との比較から衛星マイクロ波放射計データ(SSM/I)から氷厚を検知するアルゴリズ
ムを開発した。この氷厚データと熱収支計算により、南極海とオホーツク海において海氷生産量
のマッピングを行った(Ohshima et al.,2003,2005)。南極海でのマッピングの例(図 1)からわかるよ
うに、海氷生産のほとんどは沿岸ポリニヤで行なわれることが定量的に示され、局所的に(サブ
グリッドスケールで)高海氷生産域となる沿岸ポリニヤをパラメタライズするための基礎データ
を得ることができた。また、同時にこれは海洋及び大気モデルの海面境界での熱塩フラックスの
条件を与えるデータセットにも使える。図 1 からは、Ross 海に次いで Darnley 岬沖での海氷生産
量が大きいことがわかり、南極底層水の第 4 のソースである可能性も指摘された。本年度は、よ
り高分解能である AMSR データの薄氷アルゴリズム開発を行い、生産量マッピングの精度を高め
た。また、2006 年 10 月に、はじめて陸の影響を受けずに衛星トゥルースができるオホーツク海の
沖合いの海域に氷厚計・ADCP を設置した。無事回収できれば、長期連続でかつ高精度の衛星海
氷トゥルースデータが得られ、衛星海氷アルゴリズムの検証に大いに役立つ。
海氷融解過程に関しては、南極海の現場・衛星観測に基づいて研究を行った。季節海氷域での
海氷融解は、ほとんどが大気より開水面を通して海洋混合層に入った熱によってなされるので、
海氷・海洋間の熱交換が重要な過程となる。本研究では、簡略化した海氷・海洋結合モデルを提
出し、このモデルから得られる海氷密接度と混合層水温の関係を観測値に fit させることで海氷・
海洋間バルク熱交換係数(Kb)を求める手法を開発した(Ohshima and Nihashi,2005)。この手法を南極
海の様々な海域で適用し(Nihashi et al.,2005)、平均して Kb=1.2×10-4 (m s-1)という値を得た。今年度
は、従来の Kb が摩擦速度(従って風速)に比例する形に対して、Kb が摩擦速度(風速)の 2 乗・
3 乗に比例する形の、新たなパラメタリゼーションを提案した。
図 1.
南極海における年積算の海氷生産量のマッピング(厚さに換算)。(Tamura et al., in prep.)
―117―
1-4. 高精度の大気・海洋境界層乱流モデルの開発
大気・海洋の境界層では乱流運動が卓越しており、大気・地表面間や海面・海洋間の熱や物質
輸送に重要な役割を果たしている。人類が活動する地表面近くの温度や湿度などの生活環境は大
気境界層の乱流に強く支配されている。大気の境界層乱流は、放射を通して気候に大きな影響を
与える境界層雲の生成・消滅に重要な役割を演ずるだけでなく、自由大気中で熱や水蒸気の鉛直
輸送を行ない、大気の鉛直構造を支配する積雲対流の励起にも関わる。海洋の境界層乱流は、海
面水温を支配するだけでなく、中層からの栄養塩の持ち上げを通して、プランクトンのブルーミ
ングなどにも寄与し、二酸化炭素の収支にも影響する。
このように、大気・海洋の境界層乱流は大気・海洋の様々なスケールの運動ひいては気候に大
きな影響を与えているが、乱流運動の空間スケールは 1km 以下と小さいため、最先端の大気・海
洋大循環でもこれを解像することは不可能であり、適切なパラメタリゼーションによりその効果
を表現せざるをえない。しかしながら、従来の境界層乱流モデルは、不安定成層時の対流混合層
の成長が不十分であること、安定成層時の乱流強度が弱くなりすぎることなどの問題点が指摘さ
れており、放射収支に大きな影響を与える低層雲の再現性も不十分であることが知られていた。
本研究では、境界層乱流を信頼できる形で再現する Large Eddy Simulation (LES)モデルを用いて、
様々な一般風と成層安定度のもとでの境界層乱流データベースを作成し、これに基づいて大気・
海洋大循環モデルに適用可能な高精度の 1 次元大気・海洋境界層乱流モデルを開発することを目
指した。1 次元モデルの基礎として取り上げたのは、Mello-Yamada (1974, 1982; 以下 MY82)の 2
次の乱流クロージャーモデルである。このモデルは、多くの大気・海洋大循環モデルで広く使わ
れているが、上記のような問題点が指摘されていた。そこで、LES により作成した境界層乱流デ
ータベースに基づき、乱流長さスケールの新しい診断式を提案すると共に、クロージャーモデル
の普遍定数の改善を行なった(Nakanishi and Niino, 2004; NN04)。霧や境界層雲に適用するため、部
分凝結を考慮している点も、本モデルの特徴である。
開発した 1 次元乱流モデル(NN04)をオランダの Cabauw で観測された放射霧の事例に適用し、
観測結果をよく再現する LES モデルの結果と比較したところ、Level-3 モデルは放射霧の発生から
日の出後の層雲・層積雲化と消滅までを LES に遜色ない形で再現することがわかった。中でも、
MY82 に見られた夜間の地表面近くの乱流強度の減衰による過剰な冷却が解消されたほか、日の
出後の対流混合層の成長が遅いという問題点も解消された。Level-2.5 モデルは、Level-3 モデルに
比べると対流混合層の成長はやや遅いが、MY82 に比べると大幅な改善が見られた。Level-3 モデ
ルは Level-2.5 モデルに比べて予報変数が3つ増えるので、いずれを用いるかは計算負荷と希望す
る予報精度との兼ね合いで選択するべきであろう。
次に、この 1 次元乱流モデルを 3 次元局地モデルに組み込んで、夏季の東北から北海道にかけ
ての「やませ」の事例に適用して見た。その結果、計算安定性に問題が生ずる場合がわかったた
め、乱流の非等方性の大きさに制限を加えることにより、計算不安定が生じないように改良する
ことができることがわかった。このように改良した 1 次元乱流モデル(Nakanishi and Niino, 2006;
NN06)を「やませ」の事例に適用したところ、「やませ」に伴う霧の発生を非常に現実的に再現
することができることがわかった(NN06)。更に、この 1 次元モデルを 1967 年にオーストリアの
ワンガラで行なわれた大気境界層の観測実験データに適用し、LES の結果と比較したところ、日
中の対流混合層に伴う気温・水蒸気の鉛直分布の変化が非常に良く再現できることがわかった。
このようにして開発した 1 次元乱流境界層モデルはサブルーティン化して、共生第1課題・第
4課題の大循環モデルや領域気候モデルのほか、NICAM、気象庁数値予報課などにソースコード
を提供した。気象庁数値予報課では、現業予報モデルとしてルーティン運用している水平格子間
隔 5km のメソスケールモデル(MSM)に NN06 を組み込み、試験を行なった結果、地上付近の気温・
風速、短波放射だけでなく、自由大気中の高度場にも大幅な改善が見られている(原ほか, 2006)。
また、原因は明確でないものの、降水域の予報、集中豪雨の再現特性にも改善が見られることが
分かっている。更に、CCSR/NIES/FRCGC の AGCM においても、NN06 を組み込むことにより、
ペルー沖の層積雲の再現性が良くなることが示されている(千喜良, 2006)。
このように NN06 モデルは大気境界層でその物理的信頼性が証明されており、海洋境界層の表現
も改善すると期待されるが、海洋に特有な表面波の砕波による乱流エネルギーの生成やラングミ
ュラー循環による混合の効果をどう付加していくかは今後研究すべき興味深い課題である。
―118―
1-5. 領域気候モデルを用いた雲と陸面過程のパラメタリゼーション
下層雲は日射をさえぎり地上気温を低下させるため、数値予報の重要な因子である。また、下
層雲はアルベドを大きく変えるため地球全体の熱収支に大きく影響する。しかしながら、大気大
循環モデルによる下層雲の再現は難しいため、地球温暖化の大きな不確定要因のひとつになって
いる。特に、大気大循環モデルや数値予報モデルなどの低解像度モデルでは 1 格子点のフラック
スの平均値には格子点内の非一様性が本質的な影響を与える。本研究ではヤマセを例に取り低解
像度モデルのための下層雲の非一様性に対するパラメタリゼーションを開発した。
数値モデルの検証データの作成のため、函館海洋気象台「高風丸」により青森~岩手県沖の海
上で集中観測を行ない、ヤマセ雲の形成過程を調査した。特に、2003 年の夏は、東北地方でヤマ
セ模様の天候が頻発し、10 年振りの深刻な冷夏にみまわれた。高風丸は,6 月 22 日夕方から 24
日の昼にかけて GPS ゾンデによる6時間毎の大気プロファイルの強化観測と雲の連続観測を実施
した.その結果,定点におけるヤマセ時の気温,湿度,風の鉛直分布とヤマセ雲の雲底高度や雲
水量の時間変化の様相を捉えることができた.積算雲水量は 20 gm-2 ~200 gm-2(平均 約 60 gm-2)
の範囲内で変動していた。
数値モデルによる再現結果は解像度に依らず同じになる必要がある。同一現象を様々な解像度
でシミュレーションするため、非静力学数値モデルの多重ネストプラットホームを構築した。高
解像度モデルでは下層雲を内部構造まで表現(雲解像)できるが、低解像度モデルでは下層雲の
効果をパラメタリゼーションによって表す必要がある。
三陸沖に典型的なヤマセ雲発生したケースに焦点を当て、格子間隔を 10km、2km、0.5km、
0.1kmとネストを繰り返し、格子内の非一様性を考慮せず、同じモデルを用いたヤマセの再現実
験を行った。その結果は著しい解像度依存性を示した。すなわち、解像度が低下するにつれ、雲
放射-雲形成フィードバックが強まり、雲水量は著しく増加した。その理由は低解像度モデルが
水平スケール 1km 程度の浅い湿潤対流の効果を表現できず、水蒸気が混合層内に溜まり、飽和に
達すると放射冷却により雲水が増加した。この結果は、低解像度モデルは浅い対流の効果を適切
にパラメータ化することの必要性を示唆している。パラメータ化すべき効果として、
混合層内の水蒸気を自由大気へ放出すること
放射計算で部分雲を考慮すること
非断熱加熱で部分凝結を考慮すること
などである。②③については、確率密度関数により整合的に扱う。格子点内の水蒸気量の分散
を適切にとれば雲放射-雲形成フィードバックを弱め、雲水量も減らすことができる。最後の問
題は確率密度関数の分散を決めることである。高解像雲解像モデルによって陽に計算された結果
と較べながら、全水量の分散, 温度の分散, 両者の共分散を整合的にパラメータ化する方法が提
案された。このパラメタリゼーションを低解像度モデルに実装し、2003 年のヤマセの事例につい
て適用した結果、過剰だった雲水量が抑制され、陸上への侵入も適切に表現された。
―119―
サブテーマ 2.
地球温暖化にかかわる大気組成変動予測のための研究
2-1. 対流圏オゾンの濃度変動プロセスの解明と温暖化影響に関する研究
中国の3山(泰山、華山、黄山)およびロシアのモンディにおけるオゾン・一酸化炭素の通年観測
を継続し、3年間にわたる同時濃度変動データを取得した。本観測研究の主目的は、対流圏オゾ
ンの放射強制力計算に用いられる世界の化学輸送・気候モデルへの検証データの提供である。さ
らに本プロジェクトとしては副次的であるが、得られたデータは東アジアにおける短寿命温暖化
物質(オゾン)の生成・輸送プロセス解明のための中国高濃度領域における初めての実証観測データ
として極めて貴重である。
図1に本プロジェクトで観測の行われた中国3山の地理的位置・高度を、図2に 2004 年-2006
年の 3 年間にわたって得られたオゾン濃度の通年同時観測データを掲げる。図2からこれら3地
点の内では華北平原中心近くの泰山が最もオゾン濃度が高く、ついで華山であり、揚子江南側の
黄山の濃度が比較的低いことが分かった。泰山、華山ではオゾン濃度は 6 月にピークを持ち、泰
山では最大月平均濃度が 80 ppb を超えていることが分かる。得られた観測データは IPCC AR4 の
ための対流圏オゾンの放射強制力計算に用いられる、世界の化学輸送・気候モデル(CTM/CCM)相
互比較プロジェクトへ提供された。図3はこの相互比較実験に参加した世界の CTM/CCM の一覧
であり、我が国からは、FRCGC/JAMSTEC から CHASER, FRSGC/UCI の二つのモデルが参加して
いる。
図4はこの相互比較プロジェクトで得られた地表オゾンのグルーバルでの地域別観測データと
モデル計算結果との比較の内、本プロジェクトの観測データが用いられた North China についての
観測データとモデル計算値との比較である。観測データとしては中国3山の値が用いられており、
エミッションデータは共通のものが用いられている。図に見られるように、世界の多くのモデル
の平均は、North China に対しては観測値を比較的良く再現していることが分かった。しかし同時
にオゾンに対する多くのモデルによって計算された値の最大と最小では、モデルによって2倍も
の差が生じていることも分かった。このことがオゾンの放射強制力計算値の誤差幅をもたらして
おり、今後短寿命大気汚染物質(オゾン・エアロゾル)の温暖化・気候影響が重視されるにつけ、モ
デルの更なる高精度化が望まれることが示唆されている。ちなみに我が国からこのモデル相互比
較実験に参加した、CHASER, FRSGC/UCI は共に世界のモデルの平均的結果を与えており、同時
に観測データとの一致も良好であることが分かった。
図 1.
本プロジェクトで地表オゾン観測の行
われた中国の泰山、華山、黄山ステーション
図 2.
泰山(●)、黄山(●)、華山(▲)におけるオゾ
ンの通年同時観測データ(2004-2006 年)。
の位置と標高。
―120―
図 3.
IPCC AR4 のための化学輸送・気候モデル相
互比較プロジェクトに参加した世界のモデル。
図 4.
本プロジェクトで得られた中国の観測データ(黒
丸)と相互比較実験に参加したモデル計算値との比較。青
は計算結果の1σ,緑は最大・最小幅を示す。
2-2. トップダウン法による二酸化炭素・メタン収支の推定に関する研究
本研究においては、南極昭和基地や北極スバルバール諸島ニーオルスン基地、中国の 7 地点で
の地上観測に加え、日本とシベリアで航空機を、太平洋と日本近海で船舶を、日本と昭和基地で
大気球を用いて観測を行い、CO2 と CH4 の濃度と同位体比の地球規模での変動の実態を明らかに
し、循環を検討した。大気中 O2 濃度も仙台や日本上空、昭和基地、ニーオルスン基地で実施し、
全球 CO2 収支を推定した。また、アメリカ NOAA/ESRL/GMD やオーストラリア CSIRO、国立環
境研究所など関連する他機関との計測法の相互比較を行い、我々自身が取得したデータと彼らの
データを結合して全球規模にわたるデータベースを作成した。さらに、全球三次元大気輸送モデ
ルを開発・改良し、前進計算法と逆計算法を用いて CO2 と CH4 の変動を解釈・検討するとともに、
全球収支の推定を行った。得られた代表的成果は以下のようにまとめることができる。
経済発展が著しい中国において CO2 と CH4 の系統的観測を展開し、全土にわたる時間空間変動
の特徴を初めて明らかにした。また、大気中の CO2 濃度の増加傾向は、化石燃料消費の増加にも
拘らず 1990 年代にはほぼ一定となっており、陸上生物圏による吸収が強まっているためと考えら
れていたが、2000 年代には再び増加傾向が強まっていることが明らかになった。CO2 の δ13C は、
北半球では濃度とほぼ逆位相の季節変化や年々変動、経年変化を示すが、南半球では海洋や大気
輸送の寄与のために両者の対応が悪くなることが判明した。一方、CH4 濃度の増加は 1980 年代末
頃から鈍化していたが、我々の観測は 2000 年頃を境に濃度増加が全球にわたって停止しているこ
とを示し、昭和基地のデータは濃度が多少減少している可能性を示唆した。また、主に化石燃料
消費よる CO2 濃度の増加に対応して、大気中 O2 濃度が年々減少していることを見いだした。
これらの観測データを基に、濃度と同位体比および CO2 と O2 に係る収支式を解くことによって、
近年の陸上生物圏は CO2 の正味吸収源として働いていることが明らかになったが、1990 年代に
1GtC/yr を超えていた吸収量が 2000 年代には 0.5GtC/yr と小さくなっており、1990 年代終わりから
の熱波や干ばつによる CO2 放出が関係していると考えられる。また、海洋による CO2 吸収量は逆
に 1990 年代より 2000 年代の方が大きくなっており、最近では 2GtC/yr あるいはそれ以上になって
いることが分かった。ニーオルスン基地での CH4 濃度の年々変動にとっては、湿地および森林火
災からの CH4 放出が重要であり、それらの寄与は年によって異なることが明らかとなった。
全球を 64 の地域に分割し、全球 3 次元大気輸送モデルとインバージョン法を用いて 1988 年 1
月〜2001 年 12 月の月別 CO2 収支の推定を行った。その結果、陸域と海洋の平均的吸収は 1.2GtC/yr
と 1.9GtC/yr であった。また、全球および半球規模ともに、CO2 フラックスの年々変動は、エルニ
ーニョ現象(や火山噴火)と強い関係があることが判明した。CH4 については、代表的な複数の
放出源シナリオと前進計算法を用いた全球大気輸送モデルによるシミュレーションを行った結果、
濃度や同位体比の変動をかなりうまく再現することに成功したが、最良のシナリオを選び出すこ
とは困難であった。中国で観測された CO2 と CH4 の変動をシミュレーションした結果、経年変動
は再現できたが、シナリオの不適切さとモデルの不完全性によって季節変化を再現できない地点
がみられた。
―121―
2-3 エアロゾルと雲の物理・化学特性のモデル化に関する研究
本年度は、これまでに開発してきたモデルを用いて、観測データと比較すべきシミュレーショ
ンをできるかぎり多くおこなって、モデルの問題点を調査した。全研究期間の成果をまとめると
次のようになる。
・共生課題1、2で使用している放射コード mstrn-8 を改良して mstrn-X を作成した。その結果、
成層圏での低温バイアスが解消した。今年度はさらに、二酸化炭素倍増による放射強制力の計算
精度を 0.1 W/m2 程度まで改良した 24 バンド 89 チャンネル版を完成した。このほか、オゾンホー
ル計算などに使用するために高高度の化学計算に対応できる版も開発した。
・共生1、2で使用している SPRINTARS モデルを改良した。エアロゾルの吸収係数を観測結果と
比較することによって、人為起源エアロゾルの吸収係数を増やし、土壌粒子の吸収係数を減らす
調整を行った。また、エアロゾルの雲凝結核に関わるパラメタリゼーションを若干、感度を落と
し、同時に上昇気流効果を取り入れた。その結果、全球大気上端での人為起源エアロゾルの直接
効果はほぼ 0、間接効果の大きさは-1 W/m2 程度であることを見いだした。これは過去 150 年程度
の間、雲が序々に明るくなる間接効果によって温室効果ガスの温室効果を3割程度相殺したこと
を意味している。さらに中国大陸上で観測されている雲量の長期減少傾向が、エアロゾルによる
地表面日射量の減少に伴う海水温低下が引き起こす地球規模の二次大循環の影響もあることが示
唆された。このような研究に必要な Skynet 地上放射観測網とデータの整備にも貢献した。
・観測船「みらい」に搭載された新型の 95GHz 雲レーダーとミーライダーの同時観測結果を解析
し、MIROC-AGCM を現実的な気象場でナッジングした計算結果においても、雲量やエアロゾル
量の鉛直分布に顕著な違いがあることを見いだした。これは格子サイズ 100km 程度の大循環モデ
ルではエアロゾルや水物質の鉛直混合が十分に良く表現できない可能性を示唆している。より良
いモデル結果の再現と混合メカニズム等を調べるために、正 20 面体全球非静力学大気モデル
(NICAM)への SPRINTARS モデルの組み込みや、気象庁領域非静力学モデル(NHM)へのビン
型エアロゾル・雲粒子成長モデルの組み込みを行って、衛星観測結果が示すエアロゾルと雲の微
物理構造の広域分布を再現することに成功した。その結果、霧雨粒子を含む場合とそうでない雲
では、エアロゾルの間接効果が大きく異なることが示された。深い対流などの場合、間接効果の
放射強制は正になることもあり得ることも示唆された。このような研究のための観測システムと
データの整備にも貢献した。
以上のような研究によって得られたエアロゾルと雲に関するモデル改良点とデータ解析システ
ムは、ポスト共生プログラムのような温暖化実験プロジェクトや、東大・名大・千葉大・東北大
が連携して行う「地球気候系の診断に関わるバーチャルラボラトリーの形成」」プロジェクトにお
いて利用する準備が始まっている。また、新しい衛星観測システムである CLOUDSAT&CALIPSO
データを全球7km の高分解能解析を、コロラド州立大学および NASA と協力して世界に先駆けて
実施する予定である。
―122―
図1. 過去の諸気候要因の大気上端での放射強制力。共生課題1との共同研究による結果。間接効
果が大きい。(Takemura et al., 2006)
図2. ヨーロッパおよび中国大陸における全天日射量、雲量(赤が観測値、青がモデル値)、およびエア
ロゾルの光学的厚さ(波長 550nm、種別モデル値)の長期変化(1991-2000 期間と 1983-1990 期間の差)。
中国大陸では日射量と雲量が供に減少しており、一見、矛盾しているように思われるが、エアロゾルの
直接効果とそれが引き起こす大気大循環の変化によって説明される。
―123―
サブテーマ 3.
太平洋における炭素循環モデルの高度化
3-1. アジア大陸から空輸される陸起源物質の降下量変動に関する研究
太平洋に降下する陸起源物質が海洋生物の消長に深く関与し、海洋中での生物による炭素循環
過程や、生態系に影響を及ぼす可能性が示唆されている。本課題では大陸から大気を通して輸送
される鉱物粒子や人為起源物質、特に海洋基礎生産に必要な栄養塩である窒素化合物の降下量の
時間的、地理的な変動や分布を明らかにする事である。研究船を用いた海洋大気観測を行い、陸
起源の化学物質輸送モデルの再現性を向上させ、降下量を算出した。また、大気からの物質降下
による生物生産への影響が海洋生態系にどれくらい影響を与えるか、海洋生態系モデルへの基礎
データを提供した。
大気化学成分は平均滞留時間が短く、時空間的濃度変動が大きい。そのために、海洋大気境界
層内を対象とした高時間分解能の船舶用リアルタイムエアロゾル・微量ガス化学分析システムを
構築した。2002 年 5 月に米国 NSF の研究船 Melville による大阪—ハワイ研究航海、白鳳丸航海
(KH-02-3:秋季の東シナ海、KH-04-1:春季の東シナ海: KH-04-3:夏季の北太平洋亜寒帯海域、
KH-05-2:夏季の太平洋南北縦断)で計測を行った。また、エアロゾルを粒径別にフィルターで連続
採取し、陸上実験室で微量金属元素を定量した。これらの航海によって、アジア大陸から放出さ
れる陸起源物質の影響を最も受ける縁辺海での化学物質の大気中濃度や降下量、外洋域での陸起
源物質の輸送・変質・降下分布の観測データが得られ、大気化学物質輸送モデルの検証と高度化
に貢献した。
アジア大陸からの主要陸起源物質である鉱物粒子は春季の黄砂として北太平洋の広範囲に輸
送、降下するが、実測値を基に西部北太平洋での降下量分布を得た。その結果、アジア大陸で大
気中に黄砂時期に放出された鉱物粒子(25.4Tg)の 22%が東経 130 度線を越えて北太平洋外洋域へ輸
送されていると推定した(図 1)。
近年、人為起源からの窒素化合物の大気への放出量が増加し、海洋への降下量も増加する事が
予想される。それに伴う栄養塩としての窒素化合物の海洋基礎生産に与える影響は生物が関わる
炭素循環過程において重要となってくる。しかし、粒子状硝酸塩粒子の生成過程やその輸送パタ
ーン、降下量は他の粒子成分に比べ、複雑で、モデルによる再現も他の成分に比べて、取り組ま
れていないのが現状である。東シナ海の観測結果を平均した値から計算した大気からの全無機態
窒素降下量は、460 Gg N yr-1 であった。大気からの降下量は乾性沈着のみで湿性沈着や窒素化合物
の 10-20%近くを占める有機態窒素を考慮していないので、見積り量は下限の値である。また、長
江から東シナ海に流入する水量とアンモニウム塩、硝酸塩の平均濃度から計算した河川からのフ
ラックスは、620 Gg N yr-1 であった。比較すると、大気からのアンモニウム塩、硝酸塩の沈着量
が、長江からの流入量に匹敵することが明らかとなり、大気が海洋の栄養塩の重要な供給経路で
あることがわかった。大気から海洋への窒素の供給は、海洋生物によって取り込まれて、海洋内
で再生産を行う循環にあらたな生物生産を付け加えることになる。この窒素源を取り込んで増加
する一次生産によって、
東シナ海では年間約 2.5 Tg
C y-1 の炭素が固定される計算になった。東シナ海
での有機態炭素の新生産は 23-270 Tg C y-1 と報告
されており、全新生産の最大 10%程度が大気から
の寄与と推定した。
北太平洋外洋域においては、鉱物粒子の降下量
推定に不可欠な粒径別濃度を季節ごとに採取・計
測を進め、突発的な気象現象も考慮し、輸送時間
の経過による物理・化学的変化を把握しながら、
平均的な濃度分布データを蓄積した。これらのデ
ータは、今後の地球規模の大気物質輸送モデル・海
洋生態系モデルが統合された形が構築される時に不 図 1. アジア大陸から西部北太平洋への黄砂の
輸送と沈着量の分布
可欠なものとなると確信する。
―124―
3-2.
陸起源微量元素の海洋生物ポンプに果たす役割に関する研究
海洋生物ポンプに対する陸起源微量元素の役割に注目が集まっているが、陸起源微量元素の海
洋での循環過程は未だ明らかではない。海洋における陸起源微量元素や炭素化合物のグローバル
な分布を明らかにし、その分布を海洋大循環モデルを用いて再現すべくデータの収集を行った。
2002 年から 2006 年までの 5 年間に、6 回の白鳳丸研究航海(KH-02-4、KH-03-1、KH-04-3、KH-04-5、
KH-05-2,KH-06-4)、3 回の淡青丸研究航海(KT-02-14、KT-04-8,KT-05-11)に参加し、海洋観測を
行った。主に鉄、マンガン、希土類元素などの陸起源微量元素のグローバルな分布を調べ、外洋
域におけるマッピングを行った。
また、大陸棚からの水平輸送過程、生
物起源粒子による除去過程,海洋-海底間
物質交換などのプロセスについて研究を
行った。特に希土類元素の Ce、Nd につい
ては、同位体比についても研究を行い、
詳細な供給過程を解明した。さらに希土
類元素については、太平洋全域の表面水
中濃度をマッピングする(図 1)などデー
タベース化を行った。平成 18 年度には、
過去 4 年間に収集した外洋域におけるデ
ータ、海洋内部での諸過程に関する知見
を提供することにより、グローバルな希
土類元素の分布を再現するモデルの構築
に寄与した。この新たなモデル構築を通
じて、海洋大循環モデルの Validation に
資すると共に、モデルの高度化に対して
図1. 太平洋表面水中のNd濃度分布
貢献した。
また、本研究では海洋生物ポンプを定量的に見積もるため、海洋における酸素消費速度を求め
る方法を確立し、様々な海域で実測を行った。まず、海水中のヘリウム同位体を分析するシステ
ムを構築し、白鳳丸と淡青丸の研究航海にて太平洋の広い範囲から深度別に採取した海水の分析
を行なった。この方法のテストフィールドとしてフィリピン海、日本海、東シナ海、スールー海、
インド洋でも試料を採取した。採水と同時に溶存酸素濃度や水温、塩分、栄養塩の観測を行った。
ヘリウム同位体の分布から深層水の流動について検討したところ、東太平洋海膨の火山列から
放出されたマントルヘリウムが深層水によって日本近海にまで到達しており、北太平洋全域に広
がっていることが確認された。また、沖縄トラフの熱水活動域から放出されたと考えられるマン
トルヘリウムの影響が南海トラフで見られた。これは日本の南岸沿いに深層水の流れがあり、そ
れが南海トラフまで到達しているが、その先は伊豆・小笠原海嶺で遮られていることを示唆して
いる。東太平洋海膨を南緯 25 度付近で横切る形で採取した海水のヘリウム同位体比のコンターマ
ップを作成した結果、高いヘリウム同位体比の分布は海膨をはさんで東西に対称的であり、深層
海水は東西方向には流れていないと解釈された。さらに、南氷洋から南太平洋にかけての観測で
は、南極底層水や南極中層水の沈み込みが確認された。このようにこれまでのトレーサーだけで
はわからなかった深層水の流れも、ヘリウム同位体を使うことによって明らかにでき、温暖化モ
デルを考える上で重要な役割を果たすと考えられる。
海水のトリチウム濃度とヘリウム同位体の分析結果から見かけのトリチウム−ヘリウム-3年代
を求めた。マントルヘリウムの影響の小さな日本海の海水では、深度と年代の間に正の相関が見
られた。その傾向は北大西洋で報告されているものと調和的であった。その結果から酸素消費速
度を求めると、北大西洋と同様に深いほど指数関数的に減少する傾向が見られた。
―125―
3-3 海洋表層における有機物収支に関する研究
本研究グループでは、海洋表層の炭素循環の中心的なプロセスである有機物の生産と分解に関
連するパラメータの観測精度を向上させるため、海洋表層における有機物、栄養塩類を中心に、
それらの分布を様々な時空間軸を対象として、且つ高感度・高精度測定法を駆使して詳細に明ら
かにすることを行ってきた。特に有機物に関して、現存量は大きいにも関わらずこれまで物質循
環の中での役割が定量的に評価されてこなかった、溶存態有機物(DOM)に焦点を当て、その炭素
(DOC)、窒素(DON)濃度の高感度・高精度測定方法を導入し、海洋表層内におけるこれらの時空
間分布の詳細を明らかにした。そして、得られた精密な観測結果を普遍的に再現し得るよう炭素
循環モデルを高度化させ、そのバリデーションに必要なデータベースの構築を目ざした。下記に 5
年間に実施してきた時空間分布観測の成果を 4 つに分けて示す。
(1) 西部北太平洋亜寒帯域の定点 KNOT における時系列観測(季節変化)
1998-2000 年に実施された西部北太平洋亜寒帯域の定点 KKOT における時系列観測で得られた試
料による解析に加え、2003 年に新たな観測を追加し、DOC と DON を中心に表層内における有機物、
栄養塩類濃度の季節変化の詳細を調べた。その結果、春~夏にかけ、ブルームによる有機物生産
と物理的な成層構造の発達により DOM が表層内に供給・蓄積し、夏~秋にかけては微生物分解に
よる消費とその後の鉛直混合の活発化により表層内の蓄積が解消されるという、生物と物理過程
を通じた DOM のダイナミックな季節変化のパターンが明らかとなった。
(2) 鉄散布実験における植物プランクトンブルームの追跡観測(日変化)
2001 年および 2004 年に、西部北太平洋亜寒帯域において鉄散布肥沃実験が行われ、肥沃化に
よって生じた表層内のブルーム水塊を追跡しながら DOC,DON 濃度の日変化を調べ、1 回のブルーム
イベントを通じた DOM の動態を調べた。その結果、ブルームの発生後に DOC、DON 濃度の明らかな
増加が認められたが、それらは生産された有機物の 10%以下程度であり、生産れた有機物の大部
分は短期的には懸濁粒子として蓄積することが示された。季節変化に見られた表層内における比
較的高濃度の DOM 蓄積は、このようなブルームが何度も繰り返された積算的な効果によるものと
推察された。また、ブルームによって供給された DOM の C:N 比(~7)は、もともと海水中にバッ
クグランド的に存在する難分解な DOM の C:N 比(16-18)よりも明らかに低く、より窒素リッチな
DOM が生物生産により供給され、それらはその後選択的に分解されるため、長期的には炭素リッチ
な DOM が難分解な成分として海洋中に残存していくメカニズムが推察された。
(3) 西部北太平洋および中部太平洋における南北トランセクト観測(緯度変化)
2003 年に西部北太平洋東経 165 度線上北緯 28~48 度、2005 年に中部太平洋西経 160 度線上南
緯 10 度~北緯 53 度、2001 年に同じく 160 度線上南緯 47 度~赤道の間にかけての南北トランセク
ト観測を実施し、その間 0.5-1 度間隔で表層水を採取し、DOC,DON 濃度の詳細な緯度変化を調べた。
DOC は基本的には、南北高緯度域および赤道域で低く、亜熱帯循環域内で高いという明瞭な緯度依
存性を示した。これは、DOM の蓄積の程度が主として表層の物理的な構造に依存し、見かけ上生物
生産の効果が見えにくくなっていることを示唆している。一方、北太平洋の亜寒帯循環域内では
高緯度にも関わらず DOM の緩やかな蓄積が認められ、
(夏季における)活発な生物生産と循環内で
の物理的な水塊の安定性の両者による効果であると推察された。また、DOM の C:N 比は高緯度域
(14-15)に比べて亜熱帯域(16-18)では明らかに高く、生物生産の活発な海域では、より窒素
リッチな DOM が供給され、生物生産の低い亜熱帯域では分解が進行したより炭素リッチな DOM が
選択的に残存、蓄積しているものと推察された。
(4) 西部北太平洋における表層混合層内の鉛直方向微細観測(鉛直分布)
2003 年に西部北太平洋における複数の研究航海において、表層混合層内を 2-5m 間隔で細かく
採水する観測を行い、DOC と DON を中心に、有機物、栄養塩類の混合層内における鉛直微細分
布を明らかにした。DOC と DON については混合層内で大きな変化は認められず、基本的には安
定して存在しているものと推察されたが、一方で分析誤差を有意に上回る微小な変動も認められ、
生物作用による効果が濃度変化に反映されている可能性が示された。
―126―
5. 研究発表(論文誌上発表のみ)
サブテーマ 1.
海洋および大気におけるサブグリッドスケールの物理過程のパラメタリゼーションの研究
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サブテーマ 2.
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サブテーマ 3.
太平洋における炭素循環モデルの高度化
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―133―
高精度・高分解能気候モデルの開発
Development of super high resolution global and regional climate models
実施機関名
財 団 法 人 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 、気 象
庁 、気 象 庁 気 象 研 究 所 、独 立 行 政 法 人 宇 宙
航空研究開発機構
研究代表者
:野田 彰
(気象研究所気候研究部長)
副課題代表者 :楠 昌司、中村 誠臣
1.研究計画の目的
(1)高精度・高分解能気候モデルの開発を目指し、台風等を世界規模で再現できる 20km メッシュ全球
気候モデル及び集中豪雨等を広域で再現する数 km メッシュ雲解像大気モデルを開発する。
(2)これらの高精 度・高 分解 能 気候 モデルを用 いて、地 球 温暖 化を予 測する数値 実験で得られた海 面
水温を境界条件とするタイムスライス実験を行うことにより、地球温暖化が台風や集中豪雨等に与える影
響を調べる。
2.研究計画の概要
地球温 暖化 が台風、集 中豪雨 等の中・小規模 現象に及ぼす影響を調べるために、物理過 程の改良
及 び計 算 スキームの高 速 化 等 により高 精 度 ・高 分 解 能 の気 候 モデルを開 発 する。本 プロジェクトでは、
台風等の大気現象を世界規模で再現できる 20km メッシュの全球気候モデル及び集中豪雨等の大気
現象を広域で再現できる数 km メッシュの雲解像大気モデルから構成される高精度・高分解能気候モデ
ルを開発する。開発に当たり、観測データによるモデルの検証及び改良を行う。また、開発したモデルを
用いて、地 球温 暖 化が台風、集 中 豪雨 等に与 える影響を温暖 化 数値 実験により調 べる。将 来 的には、
本プロジェクトの成果を踏まえ、より信頼性の高 い地球温暖 化予測 情報 を社会に提供するという実用 化
を目指す。
3.年次計画
当 初 の計 画 では、計 算スキームの高 速 化 、物 理 過 程 の改 良 、モデルの検 証 等 による開 発を進 め、第
3年度を目途に20kmメッシュ全球気候モデル及び数 km メッシュ雲解像大気モデルのプロトタイプを完
成させることになっていたが、次期 IPCC 評価報告書(AR4)へ寄与することを考慮して、開発の促進を図
り、両モデルとも第2年 度 の平 成15年 度にプロトタイプを完 成させた。当 初 計 画では、第4~5年 度 にお
いて、20kmメッシュ全球気候モデル及び数 km メッシュ雲解像大気モデル用いて温暖化数値実験を行
うことを予定していたが、第3年度からプロトタイプモデルを用いた本格的な温暖化数値実験にとりかかる
こととした。第4~5年度においては、プロトタイプモデルの改良を進め、温暖化 数値実験を行うとともに、
実験結果の解析により地球温暖化が台風や集中豪雨等に与える影響を調べ、最終年度には本計画で
得られた科学的知見をまとめる。
-135-
4.平成18年度の研究計画
(1)20km メッシュ全球気候モデル開発に関する研究
20kmメッシュ全球気候モデルのプロトタイプを用いて、昨年度までに行った現在気候再現実験(表1-1
のAT, AJ)、及び将来気候実験(表1-1のAK)の積分期間を延長し、実験結果の信頼性を高める。また、
課題間の連携研究として、東京大学気候システムセンター/国立環境研 究所/地球 環境フロンティア
研 究センターが他 課題 で開発した大 気海 洋 結 合モデルによる海 面水 温 予測 値を用いた新しい実験を
行う(表1-1のAX, AY)。一方、モデル自体の性能をさらに向上するために、時間積分のより一層の高速
化、各種物理過程の改良も引き続き行う。
(2)数 km メッシュ雲解像大気モデル開発に関する研究
5km-NHM の実験で九州での降水の集中傾向が顕著であった年、3年ずつを現在気候実験と温暖化
実験からそれぞれ選び、梅雨後期にあたる6月 30 日から7月 17 日までの 18 日間を対象とし、水平解像
度1km の NHM を5km-NHM の結果にネストした温暖化予測実験を行う。1km-NHM の結果を使って、
温暖化時に特徴的に見られる降水システムを詳しく解析するとともに、モデル解像度の降水予測への影
響を調べる。また、これまでの実験から明らかになった NHM の問題点の原因を調べる。無人気象観測
機やドップラーレーダーなど、Baiu Hunter で取得した観測データを、雲解像大気モデルに同化して、モ
デルの検証を行う。
5. 5年間(平成14∼18年度)の研究成果
本研究で得られた主要な成果は、2007 年刊行の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第 4 次
評価報告書に引用された。
5. 1.
20km メッシュ全球気候モデルの成果
平成14年度から今年度までの5年間の研究期間において、台風などの熱帯低気圧、梅雨を含む夏の
東アジアモンスーン、冬の東アジアモンスーン、極端な気温現象、極端な降水現象 、降水量の日変化、
北 半 球 の積 雪 などを対 象 として様々な研 究を行 った。まず現 在 気 候 のモデルによる再 現 性 の正 当 性 を
評価し、次に地球温暖化 時の変化について解析を行った。ここでは、梅雨 と熱帯低気圧に注目し、5年
間 の研 究 成 果 を総 括 すると共 に、今 年 度 得 られた新 たな研 究 成 果 、及 び本 課 題 のアウトリーチ活 動 の
一環として行った、世界銀行の基金で行った中南米からの研究者による解析結果の一部を示す。
5. 1. 1. タイムスライス実験による地球温暖化予測
5年間で行った全ての実験の設定を表 1-1 にまとめた。実験は現在気候再現実験と将来予測実験に
分けられる。20km 大気モデルに与える海面水温(SST)は、年々変動のあるものと、年々変動の無い 2 種
類がある。SST の将来予測に必要な大気海洋結合モデルは、気象研究所の MRI-CGCM2.3 の他に、
課 題 間 の連 携 研 究 として、東 京 大 学 気 候 システムセンター/国 立 環 境 研 究 所 /地 球 環 境 フロンティア
研究センターが開発した高分解能大気海洋結合モデル MIROC 高解像度版を使用した。MRI-CGCM
による全球平均年平均海面水温の温暖化時の昇温量は 1.6K だが、気候感度が MRI-CGCM より大き
い MIROC の昇温量は 3.2K である。しかし、両者とも熱帯太平洋での昇温の空間構造は、ともにエルニ
ーニョ型である。(図 1-1 参照)
今 年 度 新 規 分としては、2005/2006 年冬 季に起こった日 本の大 寒 冬 のモデルによる再 現 性 を調べる
ために、AMIP 型実験である AT 実験を 2006 年 2 月まで延長した。AJ, AK 実験については積分期間を
-136-
延長し、温暖化による変化の統計的信頼性を高めた。AX, AY 実験は、MIROC による現在気候 SST の
系統誤差の影響を除去することを目的としている。AS, AX, AY 実験については与えられた計算機資源
の制約から、それぞれ、10 年、5 年、5 年積分を行った。
表 1-2 は、温暖化による気候変化を評価する場合に使用する実験の組合わせを示す。例えば、将来
気候 AK 実験は、現在気候 AJ 実験からの差により、温暖化時の変化を評価する。
表 1-1 20km メッシュ全球気候モデルの実験設定
現在気候
実験名
海面 水温(SST)
種別
積分 平 成18年度
期間
年々変動
年数 新 規部分
AT
観 測値
1979年~2006年2月
あり
27
1999年以降
AJ
期 間平均観測値
1982~ 1993年の12年平均
なし
20
後 半10年
AM
CGCM
1979~1998年
あり
20
AX
MIROC期間平均値 1979~ 1998年の20年平均
なし
5
全部
CGCM:気象研究所大気海洋結合モデル MRI-CGCM2.3
MIROC:東京大学気候システムセンター/国立環境研究所/地球環境フロンティア
研究センターの大気海洋結合モデル高解像度版 MIROC3.2(hi-res)
将来気候
実験名
海面水温(SST)
種別
AK
AS
積分 平成18年度
期間
年々変動
期間平均観測値
+CGCM変化量
期間平均観測値
+MIROC変化量
AN
CGCM
2080~2099年
AY
MIROC期間平均値 2080~2099年の20年平均
年数 新規部分
なし
20
なし
10
あり
20
なし
5
後半10年
全部
将来予測のシナリオ:IPCC SRES A1B
SST 変化量:(2080~2099 年平均) - (1979~1998 年平均)
表 1-2 温暖化による気候変化を評価する実験の組合わせ
SSTを提供するモデル
対象期間
CGCM
現在
将来
MIROC
実験名
AJ
AM
AJ
AX
積分期間
20
20
20
5
実験名
AK
AN
AS
AY
積分期間
20
20
10
5
SSTの年々変動 なし あり なし なし
AJ 実験は観測された SST のみを用いている。
-137-
図 1-1 タイムスライス温暖化実験に用いた年平均海面水温の上昇量(℃)。(温暖化時:2080-2099 年の 20
年平均)-(現在:1979-1998 年の 20 年平均)。現在気候は 20 世紀再現実験。将来気候は温室効果ガス排
出シナリオ IPCC SRES A1B を使用。(左)気象研究所大気海洋結合モデル MRI-CGCM2.3 による海面水温
変化 (全球平均 1.6℃)。(右)東京大学気候システムセンター/国立環境研 究所/地球 環境フロンティア研
究 セ ン タ ー の 大 気 海 洋 結 合 モ デ ル の 高 解 像 度 版 MIROC3.2(hi-res) に よ る 海 面 水 温 変 化 ( 全 球 平 均
3.2℃)。
海面水温を与えた大気モデルの結果と、大気海洋結合モデルの結果の比較を図 1-2 に示す。
図 1-2 (左) MRI-CGCM2.3 の海面水温変化による 6-8 月平均降水量変化の空間分布(単位 mm/day)。
上 がタイムスライス温 暖 化 実 験 (上 乗 せ実 験 )における降 水 量 変 化 (AK-AJ)、中 がタイムスライス温 暖 化 実 験
(結 合 モデルの海 面 水 温 )における降 水 量 変 化 (AN-AM)、下 が元 の大 気 海 洋 結 合 モデルの実 験における降
水量変化。(右)MIROC3.2 高解像度版の海面水温変化による 6-8 月平均降水量変化の空間分布。降水量
変化(AS-AJ)。上がタイムスライス温暖化実験(上乗せ実験)における降水量変化(AS-AJ)、中がタイムスライス
温暖化実験(結合モデルの海面水温)における降水量変化(AY-AX)、下が元の大気海洋結合モデルの実験
における降水量変化。
図 1-2 上は、MRI-CGCM と MIROC 各々の海面水温変化を与えた 2 つの実験での 6-8 月の降水量変
化である。アジアモンスーン域での降水の増加は共通しており、インドから華中・日本 に至る帯状の領域
で降 水 量 が増 加 する。その一 方 で、北 大 西 洋 亜 熱 帯 域 での応 答 は逆 になっており、MRI-CGCM の海
面水温変化を上乗せした実験(AK-AJ)では降水量が増加するのに対し、MIROC 高解像度版の海面水
-138-
温変化を上乗せした実験(AS-AJ)では降水量が減少する。また熱帯西太平洋の応答 は両者で大きく異
なっている。これらを元の大気海洋結合モデルでの実験における降水量変化(図 1-2 下)と比較してみる
と、MRI-CGCM の結果を使った場合は結合モデル実験とタイムスライス実験とで変化パターンに大きな
差は見られないが、MIROC の結 果 を使った場合 結合モデルとタイムスライスで異なる変化パターンとな
っている。
海 面 水 温 変 化を上 乗せする(AS)のではなく MIROC 結 合 モデルでの現 在と将 来 の海 面 水 温 をその
まま与えた実験(AX,AY)での差を見ると(図 1-2 右中)、熱帯西太平洋での降水量の変化パターンはより
結合モデルでの結果(図 1-2 右下)に近いものとなっている。図 1-2 右上と図 1-2 右中との条件の違いは
基準となる現在の海面水温分布のみであるから、基準となる現在の海面水温分布の与え方によって、海
面水温変化に対する応答が異なったと考えられる。
(1) 梅雨
温暖化に伴う梅雨の変化の主要な特徴として降水分布の変化(図 1-3)梅雨期間の変化(図 1-4)が
明らかになった。
図 1-3 7 月 の 降 水 量 気 候 値 (mm/day) 。(a) 観 測
値 。 Global Precipitation Climatology Project
(GPCP, Adler et al. 2003)による 1979~1998 年の
20 年 間 平 均 。 水 平 分 解 能 は 2.5 度 。 黒 枠 は 図
1-2、1-3 の対象領域。(b) 現在気候 AJ 実験。(c)
現 在 気 候 AM 実 験 。 (d) 温 暖 化 に よ る 変 化 量
AK-AJ。等 値 線 は 90%有 意 水 準 。(e) AN-AM。(e)
AS-AJ。
図 1-4 半 旬 日 降 水 量 (mm/day)の南 北 分 布 の
季節進行。経度 125-142°E 平均。第 27 半旬(5
月 11-15 日)から第 46 半旬(8 月 14-18 日)まで
表示。(a)観測値。図 1-1 と同じ GPCP データ。対
象領域は図 1-1a の黒枠。(b) 現在気候 AJ 実
験。(c) 現在気候 AM 実験。(d)温暖化による変
化 量 AK-AJ 。 等 値 線 は 90% 有 意 水 準 。 (e)
AN-AM。(e) AS-AJ。
20km モデルによる現在気候の 7 月の降水量分布を図 1-3bと c、将来気候の 7 月の降水量変化分
布を図 1-3d~f に示した。(d)と(e)は与えた海面水温 SST の違いが小さいため、全般的に降水の変化分
布も似ているが、朝鮮半島では逆傾向である。MIROC の SST を用いた(f)では、(d)と(e)同様に揚子江流
-139-
域から東シナ海、日本の南海上で降水量が増加している。しかし、(f)では降水量が増加する地域が広く、
北海道でも降水量が増加しており、(d), (e)と逆傾向である。また(f)では、台湾のある緯度帯で降水量が
増加しており、(d), (e)と逆傾向である。(d)と(f)では、AJ と AK の積分期間を 20 年に延長したため、昨年
度までの 10 年積分の結果(平成 17 年度成果報告集,P.26, 図 1-9)より統計的に有意な地域が広くな
っている。
図 1-4 は日本付近での降水の緯度分布の季節進行を示している。AJ 実験(b)ではモデルは、梅雨に
相当する降雨帯の北進を良く再現しているが、5 月中旬から 6 月上旬にかけて観測より降水量が少ない。
AM 実験(c)でも、梅雨 の北 進を再 現 しているが、一 般に降 水 量が観 測より少ない。将 来 気 候の降 水 量
変化(d, e, f)を見ると、北緯 30~35 度付近で 7 月下旬から 8 月上旬にかけてどの実験でも降水量が増
えている。これは梅雨が長引き、梅雨明けが遅れることを意味する。(d)と(f)では、図 1-3 と同様に、昨年
度までの 10 年積分の結果(平成 17 年度成果報告集,P.27, 図 1-10)より統計的に有意な領域が広く
なっている。
図 1-5 は日本付近で平均した降水量の時系列である。現在気候 AJ, AM 実験(a)ではともに概ね梅雨
の季節進行を良く再現しているが、5 月中旬から 6 月上旬にかけて観測より降水量が少ない。将来気候
の降水量変化(b)を見ると、図 1-4d, e, f に対応して 7 月上旬から 8 月上旬にかけてどの実験でも降水
量が増えている。梅雨が長引き、梅雨明けが 8 月にまでずれ込む可能性がある。(b)の AK-AJ では、積
分 期 間 を倍 増 した効 果 により、昨 年 度 までの 10 年 積 分 の結 果 (平 成 17 年 度 成 果 報 告 集 ,P.28, 図
1-11)より統計的に有意な期間が多くなった。
図 1-5 日本付近(125-142°E, 25-40°E)で平均した半旬降水量(mm/day)の時系列。対象領域は図 1-3a
の黒枠。期間は図 1-4 と同じ。(a)現在気候値。黒は GPCP 観測値、赤は AJ、青は AM。AJ, AM について
は、観測値との違いが 90%有意水準を越える場合、大きい●を描いた。(b)温暖化による変化。赤は AK-AJ、
青は AN-AM、緑は AS-AJ。現在気候からの変化量が 90%有意水準を越える場合、大きい●を描いた。
(2) 熱帯低気圧
20km メッシュ全球大気モデルを用い、この 5 年間に実施してきた数値実験において、自励的に発生
した台 風 やハリケーンなど全 球 的 な熱 帯 低 気 圧 の気 候 学 的 性 質 を調 べてきた。従 来 の気 候 モデルより
もはるかに高 い分 解 能 を持 つモデルを用 いることで、台 風 の眼 、眼 を取 り囲 む壁 雲 、レインバンドといっ
た熱 帯 低 気 圧 の空 間 構 造 が表 現され、現 実 の熱 帯 低 気 圧 にかなり近いものとなることが分 かった。また、
-140-
モデルの物 理 過 程に改 善を加え、全 球 的な熱 帯 低 気 圧の地 理 的 分 布 について総 じて現 実 的 なものが
再現されるようになった。一連の地 球 温暖 化タイムスライス実 験の解 析によると、現在 気候 実 験と比べて、
全球的な熱帯低気圧の発生数は 30%程度減少するが、最大風速 45 m/s を超えるような強い勢力を持
つ熱帯低気圧の出現頻度については有意に増加する、という一貫した結果が得られた(図 1-6)。
図 1-6 全球(a, d)、北半球(b, e)、南半球(c, f) における、熱帯低気圧の強度(横軸:海上/地上の最大風
速)別に示した出現頻度分布。上段(a, b, c)は年平均出現個数、下段(d, e, f)は発生総数に対する比率(%)。
緑色は現在気候実験(AJ)、赤色は温暖化実験(AK)、を示す。各熱帯低気圧を 1 回ずつ、強度が最大になっ
た時点で数えたもの。丸印は、現在気候実験と温暖化実験の間に統計学的に有意な差があることを示す(信
頼係数 95%の両側 t 検定による)。比較のため、観測に基づくベストトラックデータ(最大風速 17.2 m/s 未満の
ものを含まない)を黒色の点線で示した。Oouchi et al. (2006, 気象集誌)
大気モデルの境界条件として与える SST の影響を詳しく調べるため、平成 17 年度から課題間連携の
一環として大気海洋結合モデル MIROC によって得られた SST を用いた実験をおこなった(AS, AX, AY
の各実験)。図 1-7 にこれらの実験を含む 5 種類の実験結果における、熱帯低気圧発生数を示した。全
球 スケール、半 球 スケールでの発 生 数 が地 球 温 暖 化 にともなって顕 著 に減 少 する傾 向 については、い
ずれの実験でも明確であった。一方、AK 温暖化実験で得られた、北西太平洋域で発生数が減少し、北
大西洋域で増加するという傾向に対して、AS 温暖化実験ではそれぞれ逆の変化傾向を示唆していた。
しかし、AS と同じ MIROC モデルの SST を用いた場合でも、境界条件としての与え方を変えた AY 温暖
化実験(観測 SST 気候値に昇温量ΔSST を上乗せするのではなく、温暖化時のモデル SST 気候値をそ
のまま使用)では、海域別の変化が AK 実験にやや似たものとなった(北西太平洋域での減少傾向及び
北 大 西 洋 域 での増 加 傾 向 )。これらの実 験 から、海 域 スケールでの熱 帯 低 気 圧 発 生 数 については、モ
デルの現在気候の再現性、大気モデルによるタイムスライス実験と大気海洋結合モデルによる温暖化予
測 実 験 の整 合 性に留 意 すれば、地 域 的な変 化 傾 向についても変 化 傾 向を予 測できる可 能 性 が示 され
たといえよう。
-141-
Global & hemispheric numbers of TCs
as simulated in the 20-km-mesh AGCM
100
Present: obs SST
(AJ)
Present: MIROC SST
(AX)
80
Future: obs SST + MRI ΔSST
(AK)
60
Future: MIROC SST
Future: obs SST + MIROC ΔSST (AS)
Regional-scale numbers of TCs
20
(AY)
15
40
10
20
5
0
0
GLOBAL
N. H.
S. H.
W.N. Pacific
N. Atlantic
図 1-7 現在気候実験 2 種類(AJ, AX)、温暖化実験 3 種類(AK, AS, AY) における全球、北半球、南半球、
北西太平洋域、北大西洋域での年平均熱帯低気圧発生数。
また、平成 18 年度は、1979 年-2006 年の観測された SST 変動を与えた AMIP 型実験(AT 実験)の
解析も行った。北西太平洋の台風活動の観測に見られる、強いエルニーニョ/ラニーニャの際にの顕著
な変 化 が、20km メッシュ全 球 大 気 モデルにおいて再 現 されているかどうかを調 べた。観 測 研 究 (Wang
and Chan 2002) により発生頻度に顕著な差があると指摘された海域(0°–17°N, 140°E–180°)では、モデ
ル実験結果 は、観測データと同様に、強いラニーニャの際に発生頻度がきわめて低くなっており、かなり
現実的なふるまいであることが分かった。
(3) 世界銀行基金による中南米の温暖化影響評価
世界銀行の基金を用いた研修の枠組で、中南米から、2005 年 8 月に、コロンビア、ベリーズ、バルバド
ス諸島から 4 名、2006 年 8 月にはメキシコから 2 名、同年 9 月にはペルー、エクアドル、ボリビアから 3
名の研究者が約1カ月間派遣され、気象研究所において各国の温暖化影響評価が行われた。20km モ
デル現在気候の検証用に、日本では入手困難な各国の地点データが用いられた(図 1-8)。
図 1-8 コロンビアの月平均気温分布(1 月)。左)観測(1961-1990)、中)モデル現在気候(AM)、右)モデル変
化予測 (2080-2099)-(1979-1998) (AN-AM)。
-142-
5. 1. 2.モデルの開発・改良
(1) モデルの最適化・高速化
《タイムスライス実験のための開発》
a.プログラムの最適化・高速化
本 研 究 で使 用 した気 候 モデルはセミラグランジュ法を採 用 しており、タイムステップを長 く取ることがで
きる。さらに、通信関数への書き換え、グローバルメモリ機能の使用、ノード内負荷バランスの改善等のプ
ログラム最適化を行い、ピーク性能比 30%以上の実効効率を達成した。
《高精度化に向けたさらなる改良》
b.リデュースド・ガウス格子
Reduced Gauss 格子とは、各緯度における東西格子点数を最適化することにより、高緯度域における
格子点の過度な集中を緩和し、計算量を削減することを目的としたものである。Legendre 陪関数の振幅
を基に、計算精度を損なうことなく削減可能な格子点数および波数成分数を見積もった結果、20km メッ
シュモデルにおいては、格子点数と波数成分数それぞれ 20-30%ずつ削減可能であることが分かった。
従来の 20km メッシュモデルでは計算領域が一次元に分割されていたため、効率的に実行することが
できる計 算 ノードの数 が二 次 元 分 割 方 式 を採 用 したものに比 べて少 なかった。この傾 向 は Reduced
Gauss 格 子 を導 入するとより顕 著 になるため、計 算 領 域 の二 次 元 分 割 化 および各 計 算 ノードへの担 当
領域の割り当て方の見直しも行った。
共生プロジェクトの成果として、計算領域が二次元に分割された Reduced Linear Gauss 格子版 20km
メッシュモデルが完 成 し、予 測 実 験 をより多 くの計 算 ノードでより効 率 的 に行 うことが可 能 となった。実 行
結 果の一 例 として、2006 年 1 月 5 日午前 9 時(日 本 時)の地 上 気 温を図 1-9 に示す。従 来 型の
Standard Linear Gauss 格子によるものと同様の気温分布を得られていることが確認できる。
図1-9 切断波数 959(20km メッシュ)モデルによる予測結果の一例。2006 年 1 月 5 日午前 9 時(日本時) の
地上気温(K)。1 月 1 日午後 9 時を初期値とした 84 時間予報。Standard Linear Gauss 格子(従来型)よ
るものを左図、Reduced Linear Gauss 格子(新型)によるものを右図に示した。
-143-
(2) 物理過程の開発・改良
《タイムスライス実験のための開発》
a.新積雲対流スキームの開発
従来の対流性下降 流 における降水再蒸発の効果に代えて、対流性 下降流におけるエントレインメント
とデトレインメントの効果を取り入れた新しい積雲対流スキームを開発した。これによって、熱帯域 での対
流圏下層の低温バイアスが相当解消し、モデルの現象再現性が向上した。
b.時間ステップ幅に依存しない雲水スキームの開発
雲 水 の生 成 量 及 び降 水 への変 換 率 が時 間 ステップ幅 に依 存 しない新 しい雲 水 スキームを開 発 した。
また、これまで簡略的に扱っていた雲氷の落 下 過程について、解析 解 を適用して厳密に扱うように変 更
した。これにより、時間ステップ幅に対する雲水量や降水量の依存性が小さくなった。
c.層積雲スキームの開発
太平洋のカリフォルニア州沿岸など亜熱帯域の大陸西岸では、海面水温の低い海域が広がっており、
大 気 境 界 層 上 端 に強 い逆 転 層 が形 成 され、層 積 雲 が発 生 する。このような層 積 雲 をパラメタライズする
スキームを開発し、全球気候モデルに導入した。
《高精度化に向けたさらなる改良》
d.新放射スキームの開発
高 分 解 能 の気 候 モデルに適 合 する、精 度 の高 い放 射 スキームを開 発 した。長 波 放 射 計 算 では、ライ
ンバイライン計算に基づく透過率テーブルと k-分布法を使 用して大気透過率の計 算を行うようにした。
短 波 放 射 計 算 においてもオゾン吸 収 係 数 の見 直 し等 を行 い、成 層 圏 の短 波 放 射 加 熱 率 をより適 切 に
見積もるようにした。
e.積雲対流スキームの改善
全球気候 モデルは、観測と比べて統計的に弱い降水を予測する頻度が多く、強い降水を予 測する頻
度が少ないことがわかっている。このバイアスの主要な原因は、積雲対流スキームにおいて、積雲活動の
強 さが大 気 の安 定 度 に関 連 する量 である雲 仕 事 関 数 によって制 御 されており、大 気 が不 安 定 になると
実 際よりも早 く、かつ広 範 囲で降 水を予 測する傾 向があることである。今年 度は降 水バイアスの対 策とし
て、Xie and Zhang(2000)に基づき、DCAPE(対流有効位置エネルギー(CAPE)の力学過程による時間変
化 傾 向)を対 流 の発 生 を判 定するトリガー関 数として積 雲 対 流スキームに組み込み、20km メッシュモデ
ルでデータ同化・予測実験を行った。2004 年 8 月についての実験から、48 時間積分の前 12 時間降水
量を閾値ごとに対 AMeDAS で検証した結果を図 1-10 に示す。積分は毎日 12UTC を初期時刻とする 31
事 例で、横 軸は降 水 量 の閾 値(mm/12h)、縦 軸 はバイアススコアである。10mm/12h より弱い降 水 につい
て、予 測する頻 度 が過 剰 であるバイアスが改 善 されている。また同じ実 験 では、バイアススコアの日 変 化
が小さくなっており、降水の日変化がより観測に近く表現できていることも確認できた。
-144-
図 1-10 48 時間積分の前 12 時間降水量を対 AMeDAS で検証した結果。横軸は降水量の閾値(mm/12h)、
縦 軸 はバイアススコアで、1に近 いほど良 い。赤 :DCAPE をトリガー関 数 として組 み込 んだモデルによる予 測 、
青:従来のモデルによる予測。
f.雲過程の開発
気候モデルにとって雲過程は、その予測精度を大きく左右する極めて重要な物理過程である。従来は
確率密度分布の概念に基づく雲スキームを用いていたが、このスキームは雲量を過小評価することが指
摘されており、また雲 量が、物 理 的な生 成 消 滅のプロセスに関 わらず、場の相 対 湿 度によってほぼ一 意
的に決まってしまうことも問 題であった。そこで、昨 年までに、物 理 的な概 念に基づき、様々なプロセスを
きちんと考慮して雲の生成消滅を計算するスキームを開発した。
しかし、新 スキームでは、熱 帯 から亜 熱 帯 にかけて、短 波 放 射 の雲 による反 射 が大 きすぎるという問 題
点があった。この問題は、場の相 対湿 度が低い場 合に積 雲対 流によって作られる雲が抑制されるよう変
更することで、改善することができた。図 1-11 に、大気上端上向き短波放射の観測値からの誤差を示す。
変更前(左図)は、観測値に比べて短波放射の反射が大きすぎるが、変更後(右図)は、この誤差が小さ
くなっていることがわかる。
変更前
変更後
図 1-11 大気上端上向き短波放射の ERBE 観測値からの誤差[W/m 2 ]。両図とも新モデルによる結果であり、
左は変更前の結果、右は変更後の結果。7 月月平均気候値(TL159L40 モデルを使用、1 か月積分 5 年
分)。
g.その他物理過程の改善
サブグリッド地形について、楕円の形を持つ山の集まりとして近似することで非等方性を考慮できる重
力波抵抗パラメタリゼーションを開発した。また、赤外放射計 算における雲の取り扱いに関して精緻化を
図 り、雲 の放 射 強 制 力 が観 測 値 に近 づくようになった。非 局 所 的 な乱 流 混 合 が表 現 可 能 である新 しい
境界層スキームを開発し、下層雲の表現が改善した。さらに、モデルの上部境界条件の取り扱いを従来
-145-
のニュートン冷 却 からレイリー摩 擦 へ変 更 することにより、成 層 圏 極 夜 の気 温 や極 夜 西 風 ジェットのバイ
アスを軽減することに成功した。
(3) 短期積分による検証
《タイムスライス実験のための開発・改良》
a.高分解能モデルのための初期値化手法の効率化
短 期 積 分 による予 測 では初 期 値 に含まれるノイズを取り除 く必 要があり、初 期 値 化 過 程は不 可 欠であ
る。従来の初期値化手法ではモデルの水平解像度を高解像度化(20km メッシュ化)すると、20GByte を
超えるメモリーが必 要 になるなど計 算 量・メモリー使 用 量が爆 発 的に増 大してしまうため、高 分 解 能モデ
ルに効率的な初期値化手法を開発した。
b.台風予測検証
20km メッシュ全球気候モデル(以下、20kmGSM)で行なったタイムスライス実験の台風予測結果の妥当
性を示すため、現 実の台風を対 象 に数日 程度 の再現 実験 を多数行い、その進路 および強度 の予測 結
果 を検 証 した。本 年 度 は昨 年 度 から引 き続 き台 風 事 例 を増 強 し、検 証 の有 意 性 を高 めた。なお、
20kmGSM の初期値は 60kmGSM 用の初期値を空間内挿することにより作成される。このように 20kmGSM で
はモデル解像度に対して初期値作成が不完全であるにもかかわらず、60kmGSM と同等以上の進路予測
可能性をもつことが確認できた。
昨年度は台風予測位置誤差を考慮せずに風速の検証を行ったが、本年度は 20kmGSM が台風強度
を適切に表現できているかどうか調べるため、シミュレーションによる台風位置と観測による台風位置との
誤差距離が 400km 以内の事例のみを検証対象とした。
図 1-12 は最大風速の対 AMeDAS 検証によるバイアススコアとスレットスコアの結果である。バイアススコ
ア(左)によると、20kmGSM は強い風を過大に表現しすぎている傾向があるものの、60kmGSM が表現できな
い 15m/s 以上の強風をある程度予測できることがわかる。スレットスコア(右)によると 20kmGSM は 60kmGSM
よりスコアが高く、高解像度化による予測精度が上がっている。
図 1-12 最大風速の対 AMeDAS スコア。スコアは1に近いほど良い。
左:バイアススコア、右:スレットスコア。
-146-
c.衛星観測データを用いたモデルの評価
衛 星 で観 測 される輝 度 温 度 と予 測 値 から推 定 される輝 度 温 度 を比 較 する手 法 の開 発 を昨 年 度 に引
き続 き行った。本 年 度は水 蒸 気 チャンネルの輝 度 温 度 について解 析を行った。観 測 値 には、静 止 衛 星
MTSAT-1R 搭載のイメージャで観測された水蒸気チャンネル輝度温度を用いた。確率密度分布の概念に
基づく現行の雲スキームと、雲水量と雲量を別々に予測する開発中の雲スキームについて、それぞれ数
日程度の予測実験を行い、得られた予測値を高速放射伝達モデル RTTOV-8(Saunders et al. 2006)
に入 力し、輝 度 温 度 を推 定 した。赤 外チャンネルと同 様 (図 省 略)、水 蒸 気チャンネルに関しても、月 平
均の輝度温度場は開発中の雲スキーム(図 1-13(c))が現行の雲スキーム(図 1-13(b))と比較して、観
測(図 1-13(a))に近付くことが確認できる。特に、ITCZ, SPCZ での改善が顕著である。輝度温度の日較
差 に関 しても、現 行 の雲 スキームでは過 小 であるが、開 発 中 の雲 スキームでは観 測 に近 付 いており、特
に熱帯 域で雲および水 蒸気の場が改善されていることが確認できた。しかしながら、海洋 大陸 付 近やオ
ーストラリア東部では、観測と比較すると平均輝度温度は高い傾向にあり、開発中の雲スキームを用いて
も雲あるいは上層の水蒸気が不足していることが推測される。
(a
(b
(c
図 1-13 MTSAT-1R 水蒸気チャンネル月平均輝度温度(K)の分布。2005 年 11 月。
(a)観測、(b)現行の雲スキーム、(c)開発中の雲スキーム
5. 2. 数 km メッシュ雲解像大気モデルの開発に関する研究の成果
5.2.1. 雲解像大気モデルによる温暖化予測実験
地球シミュレータ上で雲解像非静力学大気モデル(NHM)を開発し、温暖化予測実験を行った。まず、
高解像度全球大気モデルの結果から境界値を作成し、水平解像度5km、水平格子数 800×600 の NHM
で、現在気候と温暖化時気候のそれぞれ 10 年間の6-7月を対象として温暖化予測実験を実行した。
そして、その結果を解析し、温暖化時に現在気候と比較して降水の特徴や降水をもたらすシステムの特
徴がどのように変化するかを明らかにした。
続いて、九州での降水の集中傾向が顕著であった年、3年ずつを現在気候実験と温暖化実験からそ
れぞれ選び、梅雨後期にあたる6月 30 日から7月 17 日までの 18 日間を対象として、水平解像度1km、
水平格子数 1600×1200 の NHM を5km-NHM の結果にネストした温暖化予測実験を実施した。その結
果 を使 って、温 暖 化 時 に特 徴 的 に見 られる降 水 システムを詳 しく解 析 するとともに、モデル解 像 度 の降
水予測への影響を調べた。
当研究によって得られた具体的な成果について以下に記す。
-147-
(1) 温暖化による降水の変化
a. 梅雨期の平均降水量
地球温暖化により、梅雨前線は7月には北緯 30-32 度の南日本で停滞することが多くなり、梅雨が
明けない年が増加する。降水量の変化に注目すると、6-7 月の平均降水量は、日本全域で 10%増え
る。地 域 別 で見ると、最 も増 加率 の高い九 州では 30%の増 加、北 日 本 だけは減 少(10%)するという結
果が得られた。
b. 強雨頻度の変化
降水強度 30mm/h 以上の強雨に着目すると、温暖化により、日本全国で、そのような降水の頻度が増
加 するという結 果 が得 られた。中 でも、九 州 では、70%という大 変 高 い増 加 率 を示 した。さらに、降 水 強
度別の頻度分布の変化に着目すると、温暖化により、強い降水ほどその頻度がより大きく増加している。
すなわち、温暖化によって強雨化する傾向にあることがわかった。
c. 再現期待値の変化
豪雨の再現期待値(N 年に1回しか起きないような強い降水の降水量の期待値)を、Gumbel 分布を仮
定して求めた。その結果によると、西日本での1、2、3、6、12、24、48、72 時間の各積算降水量の再現
期待値は、温暖化時には現在気候に比べて、1.1 倍~1.2 倍増大するという結果が得られた。
(2) 温暖化による降水システムの変化
a. 梅雨前線上のメソαスケールの降水システムの変化
温 暖 化 時 には、梅 雨 前 線 上 のメソαスケールの降 水 システムの数 が増 えるという結 果 が得 られた。特
に、7月が顕著で、降水システムの数は現在気候に比べて 50%の増加を示した。また、降水量を多くもた
らす降 水 システムの増 加 率 が高 い。これらの効 果 が合 わさって、温 暖 化 時 の西 日 本 の降 水 量 の増 大を
もたらしている。さらに、降水量の増大は、擾乱の構造の特長にも影響を及ぼす。すなわち、非断熱加熱
量が大きくなることにより、上方に向かって東に傾いた軸を持つ低気圧の発生数が現在より増加する。
b. 東アジア域の雲システムの分布と構造の特性の変質
温暖化時の特徴として、高度3km 付 近に雲水の存在する低 い降水システムが九州 南西海上に形成
されて九 州 方 面 に北 東 進 する現 象 しばしば見 られた。このシステムが、中 国 大 陸 から東 進 してくる高 度
5.5-6km 付近に雲水の存在する降水システムと合流することにより、九州周辺で降水をもたらしていた。
今 年 度 は、このような東 アジア域 の雲 システムの分 布 と構 造 の特 性 の変 質 を雲 解 像 大 気 モデルの結 果
を使って調べた。
図 2-1 に、雲システムの出現数とシステム内の最大上昇気流の出現高度の平均分布図を示す。出現
数に着 目すると、現在 気 候実 験、温 暖化 実 験ともに、中 国 大 陸から九 州 を含む西日 本域にかけての帯
状の領域で、出現のピークがみられる。温暖化実験では 200 個以上の領域が中国大陸の東海上付近ま
でのび、雲システムの出現数の増加が著しい。温暖化実験では、さらに台湾から九州南西海上にかけて
の海上の、高度約 3300m 前後の領域(破線の楕円で囲まれる部分)が特徴的である。
-148-
雲頂高度が、高度 4.5km 前後以上のものを背の高いシステム、それ以下のものを背の低いシステム
(高度 2.5km 前後以下のものは除く)とすると、現在気候実験では背の低い雲システムは、北緯 30 度以
南の中国大 陸東海上から台湾北東 部にかけての雲システムや雨が少ない領域で比 較的高頻 度 で見ら
れる。一 方 、温 暖 化 実 験 では、台 湾 から九 州 南 西 にかけての広 い領 域 で分 布 する。この領 域 での背 の
低いシステムの出現頻度は 30% 前後である。
100
100
200
100
200
100
図 2-1 最大上昇気流の分布高度の平均分布図(m)。現在気候実験(左)、温暖化実験(右)。実線はグリッ
ド毎の総システム数。太線は 100, 200 個を 細線は 150 個をそれぞれ示す。なお、雲システム数が、総サン
プル数の 10%(44 カウント)に満たない領域は除いた。
北 側 グループ(図 2-1 の太い実 線 の楕 円で囲 まれた領 域 に現 れる雲システム)では、とりわけ温 暖 化
実験でほとんどが背の高い層状性システム(500hPa より下層の最大上昇気流が 0.1m/s より大きいもの
を対流性システム、0.1m/s 以下を層状性とした)が大勢である。一方、南側グループ(図 2-1 の太い破
線の楕 円 で囲 まれた領 域に現 れる雲システム)では、対 流 性システムの割 合が多 く、もたらされる雨も対
流 性 システムからの割 合 が顕 著 であった。また、背 の低 い対 流 性 システムと背 の高 い対 流 性 システムが
混 在 しており、領 域 の緯 度 が増 すに従 って背 の高 い対 流 システムの割 合 を増 していく。雲 システムに関
する上に述べたような特徴は次のように解釈できる。
東経 123-126 度で平均した温暖化時の気温-現在気候での気温の南北断面図(図略)によると、温
暖化によって、対流圏中・上層の気温が上昇し(高度 400 hPa 以上で 3~5 度)、地上付近の気温上
昇は 1.5~2 度である。このことにより、大気成層 状態がより安定化する。一方、温暖化時には、日本の
南 海 上 で下 層 の水 蒸 気 量 が増 大 し、潜 在 不 安 定 を助 長 する方 向 に働 く。これら2つの作 用 の強 弱 によ
って、北緯 32 度以南の中国大陸東海上では背の低いシステムが目立ち、その東側のより潤沢な水 蒸
気 が流 入 している台 湾 ~九 州 にかけての領 域 では、背 の高 い対 流 システムと背 の低 い対 流 システムが
混 在 する。このことにより、現 在 気 候 実 験 でもみられる北 側 グループに加 えて、南 側 グループ領 域 でも、
活 発 な対 流 活 動 が引き起 こされ、多 量 の降 水 がもたらされるようになると考 えられる。南 側 グループの雲
システムの多くは北東進しつつ九州周辺域に多量の降雨をもたらし、そのために、温暖化実験時に九州
周辺で見られた降雨の増加傾向は、北側グループに加えて、南側グループも大きく寄与している。
-149-
(3) NHM の降水量の検証
a. 1km-NHM による 5km-NHM の問題点の改善効果
5km-NHM の強 度 別 降 水 頻 度 スペクトルを描 くと、概 ね観 測 にあう降 水 頻 度 を再 現 しているものの、弱
雨の頻度が過小評価され、40mm/h 以上の強雨頻度が過大評価される傾向にある(平成 16 年度研究成
果報告書 図 2-21 参照)。今年度は、解像度を1km にすることのこの問題に対する効果を調べた。図
2-2 は、1km-NHM と 5km-NHM の降水頻度スペクトルの比較である。1km-NHM にすることで、弱雨の頻度が
増加し、強雨の頻度が減少する。積乱雲を解像できる格子サイズである 1km での実験は、より現実的な
降水頻度スペクトルを再現してくれることを示している。さらに、ある 15 日間分のデータについて、20km 格
子の 24 時間降水量の最大値の分布を調べたところ、この期間、5km-NHM は、九州西岸に 300mm/day ほ
どの豪雨をシミュレートしているが、20km-GCM の極値は 200mm/day 程度の広がった分布しか示していな
い。1km-NHM は九州の中央部に東西に帯状に分布する約 500mm/day 程度の極値域が存在する。この
極 値 をもたらした現 象 では、既 存 の積 乱 雲 が環 境 風 と関 係 して積 乱 雲 を次 々と生 成 する組 織 化 が起 こ
っていた。組織化した降水システムがしばしば豪雨災害をもたらすことはよく知られており、将来、計算機
のさらなる高 度 化 が実 現 し、このような現 象 を解 像 できる格 子 サイズ(1km)での気 候 学 的 実 験 が望 まれ
る。
図 2-2 ある 15 日 分 の積 分 データで見 積 もった 5km-NHM(緑)と 1km-NHM(赤)の降 水頻 度スペクトルの比 較 。
黒 線 は 、1km-NHM/5km-NHM。 格子 サ イズ は 5km。 計 算 領 域 は 122-135E、 27-35N。
b. 5km-NHM 再現降水量の再見積もり
平成 16 年度研究成果報告書p83 において、5km-NHM の再現降水量は、観測に対して約 30%少ない
ことが指 摘された。しかし、今 年 度の調 査でこれらの問 題は概ね解決されることが分 かった。過小 評 価の
原因は 2 つあり、ひとつは観測(レーダーアメダス解析雨量)の積算降水量が、AMeDAS の積算降水量に
対して約 14%程度過大であると評価された。この値はさらに考察すべき問題を含んでいるが、レーダーア
メダス解 析 雨 量 から見 積 もった統 計 量 は、何 らかの補 正 が必 要 であると評 価 された。もうひとつは、
5km-NHM に降水量を若干過少に評価してしまう不具合があった。図 2-3 は、20km 格子平均の補正前の
降水 量と補 正後の降 水 量を示している。5km-NHM は多少 の問題があるにせよ、概ね梅雨前 線 域の降
水を適切に再現していたことを示している。
-150-
図 2-3
右 の区 分 領 域 ごとの観 測 された降水 量 (R-A)、20km-GCM、5km-NHM で再 現された降水 量。黒線 は、降水 量
再 現 率 (5km-NHM/R-A)。上図は補 正前 。下図 は、R-A の過 大 評 価 分 と 5km-NHM の不 具 合 の影 響 がそれぞれ補 正
されている。期 間 は 5 月 22 日 から 7 月 20 日 。JP は 5 つの区 分 領 域 全 体 を意 味 する。
5. 2. 2. 雲解像大気モデルの開発・改良
(1) 最適化・高速化・安定化
本研究で利用する気象庁非静力学モデル(JMA-NHM、以下 NHM)の実行効率を向上させるために、
以下の改良を行った。
・ 雲物理過程の計算について、重要でない過程を簡略化し、霰の落下の計算に Box-Lagragian ス
キームを導入することで、高速化及び数値安定性の向上。
・ 発散抑制フィルターの導入及び非線形拡散の上限値の設定による数値安定性の向上。
・ 重力波の移流計算をスプリットし、新たに実装した低次元のフラックス中央差分スキームで計算す
ることで、大きな時間ステップを延長することによる高速化。
・ ベクトル化・自動並列化がかかるようにするなどの最適化チューニング。
これらの改良により、改良前の 30%の計算時間に抑えることに成功した。
(2) 物理過程の開発・改良
a. 湿潤過程:雲物理過程の改良
ァ)2-モーメント法の導入
雲 水 、雨 水 、雲 氷 、雪 、あられの混 合 比 と数 密 度 の二 つを変 数 とする2-モーメントのバルク法 を導 入
し、凝 結 核 の活 性 化 による雲 粒 形 成 ・雨 滴 の分 裂 など、雲 粒 や雨 滴 に関 わるいくつかの過 程 を新 たに
導入することにより、降水の再現性を向上させた。
-151-
イ) 氷晶スキームの改良
氷 過 飽 和 調 節 、および氷 晶 数 濃 度 を氷 過 飽 和 度 に応 じて決 定 する方 法 を用 いず、上 昇 流 に伴 う断
熱冷却および雲・降水粒子の拡散成長による氷過飽和度の増加を考慮した新しい氷晶スキームを開発
した。
ウ)エーロゾル(CCN)効果の導入
今年度は、次世代の雲解像気候モデル開発への萌芽的取り組
みとして、CCN 数 濃 度 を予 報 するとともに、ルックアップテーブルを
用いて CCN の活性化数を決める、新しいスキームを開発した。
ルックアップテーブル作成のために、ビン法パーセルモデルを用
いて、湿度 99%、モード半径 0.1μm、分散 1.8 の対数正規分布
型の CCN(硫酸アンモニウム)粒径分布を初期値とし、上昇流速度
0.1 ~ 10m/s 、 初 期 温 度 -30 ℃ ~ 20 ℃ 、 初 期 CCN 数 濃 度 10 ~
1000/cc の範囲の条件で、数通りの実験を行った。図 2-4 は、そ
の結果の一部である。初期 CCN 数濃度が等しい場合、上昇流速度
が大きいほど活性化する CCN の割合(活性化率)が大きくなってお
り、強い上昇流によって余剰水蒸気が増加する効果を表している。
一方、上昇流速度が等しければ、初期 CCN 数濃度が大きいほど活
図 2-4 初 期 CCN 数 濃 度 と活 性化
する粒 子 数 の割 合 の関 係 .青 は
1m/s、赤 は 0.1m/s の場合 .実線
性化率が小さくなっている。これは、CCN 粒子同士が余剰水蒸気の獲得をめぐって競合し、過飽和度の
増加が抑制 されるためである。温度依 存性については、より低温下で活性 化率が高くなっており、より低
温の方が断熱上昇による余剰水蒸気の生成が促進される効果を表している。
b. 湿潤過程:雲氷落下スキームの導入
時 間積 分が進むにしたがって上層 の雲 氷が過 剰になる問 題があった。今 年度は、この問 題を解 決す
るため、雲 氷 を落 下 させる効 果 を導 入 した。このことにより、部 分 凝 結 スキームで計 算 される雲 が実 況 に
近づき、放射過程における短波と長波の吸収や射出が改善され、気温の予測精度が向上した。変更前
と変更後の予想衛星画像と、これに対応する時刻の実況を図 2-5 に示す。
図 2-5 2004 年 7 月 13 日 12UTC の赤 外 衛 星 画像(左)と雲 氷を落 下させない場 合の予 想 衛 星 画像(中 央)、雲氷を
落 下 するように改良した場 合 の予 想衛 星 画 像 (右 )。予 想 衛 星 画 像 は、7 月 12 日 03UTC 初 期 値 の 33 時 間予 報
値 から作 成 。
c. 湿潤過程:Kain-Fritsch 積雲対流スキームの導入とトリガー関数の改良
雲解像モデルの側面境界条件として必要となる 5km 程度のシミュレーションの精度を向上させるため、
-152-
水平解像度 20~25km のモデル向けに開発された Kain-Fritsch 積雲対流スキームを導入し、5km 程度
の高 解像 度 向けにパラメータ調 整を行った。今 年 度はさらに、トリガー関 数に相 対 湿 度に依 存 する摂動
を考 慮 するように改 良することで、弱 い降 水 の表 現 が向 上し、狭い範 囲 の過 剰な降 水を抑 制 できた。従
来は困難であった不安定降水の表現が改善された(図 2-6)。
解析雨
変更
変更
図 2-6 2006 年 7 月 13 日 9UTC における 3 時間 積算 降水 量。レーダー・アメダス解析 雨 量(左)と変 更前(中 央)と変
更 後 (右 )の K-F スキームを用いた場 合の前 3 時 間 積 算 降 水 量 。初 期 時 刻 は 7 月 12 日 21UTC。
d. 放射過程:水雲と氷雲の違いを考慮する放射スキームの高度化と部分凝結スキームの導入
従来の放 射 スキームでは、長波放 射 では全ての雲を黒体として扱い、短 波放射では水雲と氷 雲 の違
いを考 慮 していなかった。これらの点 を改 善 するため、新 スキームでは、雲 水 量 、雲 氷 量 及 び雲 粒 の有
効半径を用いて水雲と氷雲を区別し、また雲量に雲の射出率を乗じた実効雲量を黒体の雲として扱うよ
うに改 良 した。今 年 度 は、暖 候 期 において地 表 面 下 向 き短 波 放 射 フラックスを地 上 観 測 と比 較 した。そ
の結果、NHM で雲物理過程により予想されている雲水・雲氷を直接利用すると、中・下層雲の雲量が実
況と比べてかなり少ないため、最大+200 W/m 2 程度過大 評 価されることがわかった。そこで、放射 過程
で用いる雲 水 雲 氷 量は可 降 水 量から推 定する方 法を採 用 した結 果、気 温の鉛 直 プロファイルが改 善さ
れることが確かめられた。
しかしながら、実 効 雲 量 を導 入 しても相 対 湿 度 から診 断 される雲 量 は過 大 で、地 表 面 への短 波 放 射
フラックスに大きな負バイアスを生じていた。この問題を解決するために今年度導入された部分凝結スキ
ームは、水 蒸 気 および温 位 の揺らぎを確 率 変 数 とした確 率 密 度 関 数 を考 え、格 子スケールで飽 和 に達
していなくてもサブグリッドの乱流などの効果によって凝結を生じさせるものである。このスキームでは、雲
量 を凝 結 する確 率 (確 率 密 度 関 数 の積 分 )として求 めることができる。このスキームによる雲 量 ・凝 結 量
(雲 水 ・雲 氷 量 )を放 射 過 程 に用 いることで地 表 面 への短 波 放 射 フラックスの負 バイアスは大 きく縮 減 さ
れ(図 2-7)、地上気温の日中の負バイアスを改善されるとともに気温の鉛直プロファイルの誤差も縮小し
た。
図 2-7 短 波 放 射 量の予 報 の平 均誤 差(左)と平 方 根 平 均 2 乗 誤 差 (右 )。統 計 期 間 は 2006 年 7 月 16 日 ~25 日。緑
-153-
色 は部 分 凝 結 導入 前、赤 色 は導入 後の予 報である。観 測 は、全 国 65 地 点 の直 接 観 測 を利 用 している。
e. 乱流過程:改良 Mellor-Yamada レベル 3 スキームの導入
乱流過程は、Klemp and Wilhelmson (1978)の定式化に従っていたが、乱流エネルギー(TKE)の計算
不安定の問題があった。このため、TKE の生成と消滅の局所平衡を仮定して TKE を診断的に求め、そ
の TKE と境界層の高さに依存する混合長から乱流拡散係数を評価するよう改良した。
しかしながら、この手 法 は診 断 スキームであるために値 が激 しく変 化 して場 に悪 影 響 を与 えること、境
界 層 の高 さに依 存 する混 合 長 によって局 所 的 に不 自 然 な境 界 層 構 造 になることがあること、境 界 層 上
部からの下層への運動量や熱の輸送量が過少で、その結果、地上の気温や風速の日変化が十分では
ないことなどの問 題 が指 摘 されている。今 年 度 は、これらの問 題 の改 善 を目 的 として、LES の結 果 を用
いて各種パラメータの調整や安定性を向上させた改良 Mellor-Yamada Level3 スキーム(Nakanishi and
Niino, 2006)を NHM に実装した。TKE などの予報変数を鉛直方向には陰的に時間積分するなどの工
夫をして安定に動作するようにした上で予報実験を行い、統計的には地上の気温や風速の日変化の拡
大 、中 層 ・下 層 における気 温 や風 速 のプロファイルの改 善 が確 認 できた。境 界 層 の構 造 の再 現 により、
顕著に降水表現が改善する例も見られた(図 2-8)。
図 2-8 レーダー・アメダス解 析 雨 量 (左 )、MY3 を組 み込 む前 の NHM による 18 時 間 予 報 (中 央 )、MY3 を組 み込 んだ
NHM による 18 時 間 予 報 (右 )の 2004 年 7 月 13 日 03UTC での 3 時 間降 水 量。
f. 地表面過程:Beljaars and Holtslag(1991)の地表面スキームの導入
初期のモデルで予測される地表面要素(気温、風、湿り)の検証の結果、日中の昇温が不十分、地上
付 近 で湿 りすぎる、気 温 ・風 ともに日 変 化 の表 現 が不 十 分 、ということが分 かった。これらの問 題 を解 決
するために、運動量の粗度長と熱と水蒸気の粗度長を別々に与えるように変更したり、気孔抵抗の効果
を導入したりした。また、バルク係数の計算方法 として様々なスキームを実装し、これらの改良により地上
気温の再現性の向上を確認した。更に地上風の予測精度を向上するために、Monin-Obukov の相似則
の長さを用いる Beljaars and Holtslag(1991)のバルク係数の計算スキームを実装し、大気が安定な場合
のバルク係数の過大な見積もりを解消し、地上風速の日中の負バイアス、夜間の正バイアスの改善につ
なげた。
g. 地中モデル:地面熱容量の調節
モデルの下部境界条件である地表面温度は、地中 4 層モデルによって予測されている。このモデルの
パラメータのひとつに地面の熱容量があり、予測結果に大きな影響があることが分かっている。夜間の地
上気温の正バイアスを改善するために、このパラメータ調節を行ってきた。
積 雪 域 においては、雪 の典 型 的 な地 表 面 パラメータ(熱 容 量 、熱 伝 導 率 など)を与 えている。しかし、
-154-
同 じ積 雪 域 でも森 林 や都 市 などでは、格 子 全 面 が雪 で覆 われているとの仮 定 には無 理 があり、実 際 に
一部の積雪域で気温が下がりすぎて精度を悪くする事例が多く見られた。そこで、今年度は、地 表面種
別が雪である格子に対しては、積雪 のない場合 のパラメータと雪のパラメータとの重み付き平均によって
その格子の地表面パラメータを与える改良を行った。なお、平均をする際の重みはその格子の植生を反
映されている。その結果、気温が大きく下がりすぎる事例が少なくなり、統計的な精度も向上した。
h. その他の改良
短波放射過 程でオゾン層での吸収を評価するためにオゾン気候値を利用するように改良することで、
成層圏での加熱が正しく再現されるようになった。
今年度は、晴天放射スキームについて、Chou et al. (2001)に基づいた藪・村井・北川(2005)を新たに
実 装 し、長 波 放 射 加 熱 率 の対 流 圏 中 層 での正 バイアス・下 層 での負 バイアス、および地 表 面 下 向 き長
波放射フラックスの過少の解消をはかった。
地表面過程に関しては、雨が止んだり降り始めたりしたときの地表面の湿りの状態を再現するために、
地表面の湿りをあらわすパラメータを Deardorff の強制復元モデルにより予測するように改良した。また、
国 土 数 値 情 報と全 球 土 地 被 覆 特 性 データ(GLCC)を用いて詳しい土 地 利 用 状 況に応じた地表 面パラ
メータの設定を行うように精緻化した。
(3) 力学過程の開発・改良
a. スペクトル境界カップリング法の導入
スペクトル境 界カップリング(SBC)法を導 入し、境 界 条 件を与 える全 球モデルの場 から大きなズレを生
じないで長時間積分ができるようにした。
b. 浮力計算の高精度化
浮力を、温位摂動からではなく、密度摂動から直接厳密に求めるように変更することにより、地上気圧
や降水量の誤差を減少させた。
c. 移流スキームの高度化
移 流項を計 算する際に、格 子点 値を参 照して移 流 量を求める有限 差 分 近 似に伴う誤 差を小さくする
ため、これまでの水平 2 次の差分法に加え、より精度の高い水平 3 次~5 次の計算スキームを開発して
取り込んだ。2 次の差分法では見られていた細かいノイズが 4 次の差分法では効率よく抑圧されているこ
とが確かめられた。
d. 鉛直ハイブリッド座標の導入
NHM に実装されていた地形に沿った鉛直 z*座標系では、地形の影響による鉛直層の起伏が高いレ
ベルにまで及ぶことが知られており、実際の大気で地形の影響が及ばない高さにおいては、シミュレーシ
ョンにおける計 算 誤 差を拡 大させる恐 れがある。新たに上 空 で鉛 直 層を等 高 度 面に平 坦 化する鉛 直ハ
イブリッド座標を開発することで上層の予測精度が向上した。今年度は、概ね 11000m で高度に従うよう
に設定した場合にのべ 1 年分の実事例(およそ 3000 初期値)について、15 時間ないし 33 時間積分を
行い、全ての事例において安定に積分できることを確認した。
-155-
(4) 短期積分による検証
a. モデルの改良による降水予測精度の影響調査(長時間積分の影響調査)
モデルの改良による降水予測への影響を定量的に評価するために、統計検証を行った。最終年度に
行った改良前後のモデルを比較評価した。主な改良は、改良 Mellor-Yamada レベル 3 スキームの導入
と部分凝結スキームの導入、KF スキームのトリガー関数の改良である。改良前を現 NHM、改良後を新
NHM とする。比較のために気象庁で現業運用されている領域モデル(RSM)の検証結果も示す。図 2-9
は、3 時間降水量の 20km 検証格子内平均による降水強度別バイアススコア及びスレットスコアである。
新 NHM は現 NHM をどの降水強度でも改善しているが、特に強度 3mm 以下の降水で改善が顕著であ
る。また、RSM との比較では、3mm 以下の弱い雨で現 NHM は RSM に負けているが、新 NHM ではほぼ
同等に改善している。
また、積分時間とともに予測精度は悪化するが、急激に変化することはない。また、バイアススコアはほ
ぼ一定に保たれ予測頻度の特性がほとんど変化しないことが確かめられた(図略)。
図 2-9 3 時 間 降水 量 の 20km 格 子 内 平 均 値 に対する降 水強 度 別のバイアススコア(左)およびスレットスコア(右)。横軸
は降水 強 度[mm/3hr]。赤 線 :新 NHM(NEW)、緑線:現 NHM(RTN)、青線 :RSM。NHM の水 平 解 像 度 は 5km、鉛直
層 は 50 層 である。検 証期 間 は 2006 年 7 月 1 日 から 7 月 31 日 までとし、検 証 対 象 は 1 日 4 回 (03,09,15,21UTC
初 期 値 )の 33 時 間 積 分 とする。RSM の水 平 解 像 度は 20km で、検証 対象は 1 日 2 回(00, 12UTC 初期値)の 33
時 間 予 報 積 分 である。
b. 降水再現特性の分解能依存性調査について
運動エネルギーのパワースペクトル解析を行い、水平解像度 10km の NHM では 50kmスケールの現
象、5km の NHM では 25km スケールの現象を再現できていることを確認し、高解像度化に伴う再現性の
改善を確認した。
今年度は、高解像度化に伴う降水の再現性についても定量的な評価を行った。水平分解能 2km と
5km の NHM の降水予測精度の統計検証を行った。2km の NHM は積雲対流スキームを用いていない
雲 解 像モデルである。実 際の降 雨のピークを水 平 分 解 能が高いモデルが低いモデルより、よく再 現して
いることを確認し、台風や豪雨雪などの予測が高分解能化により表現が改善されることを確かめた。
c. 検証格子内の降水面積を考慮した検証手法の開発
モデルの改良の効果を正しく評価するためには、適切な検証手法を用いることが重要である。今年度
は、閾 値 を越 えた観 測 とモデルの降 水 の検 証 格 子 内 に占 める面 積 比 率 の差 の平 方 根 平 均 2乗 和 で定
義 される 格 子 降 水 面 積 スコア(PAS) を導 入 し 、 検 証 手 法 と しての性 能 を調 査 した 。スレットスコアでは
-156-
NHMとRSMの弱 い雨 の予 測 精 度 はほぼ同 等 であったが、PASを通 して評 価 するとNHMの方 が明 らかに
良い結果を示し、積分時間とともに精度が劣化していく速度も小さいことが分かった。
5. 2. 2. 雲解像大気モデルの検証・改良のための機動観測
本サブ課題の機動観測は以下の目標を掲げておこなわれた。
(1)
雲解像大気モデルの検証・改良に資するため、無人小型気象観測機等を利用した大気測定を行う。
(2)
この測定により、定常観測 では捉えきれない対流圏下層の循環 場・水蒸気場 の時空間変 動を測定す
る。
(3)
得られたデータは雲解像大気モデルの検証・改良に利用する。
それぞれの達成状況は、以下のとおりである。
(1)
平成14年度 (初年 度)は、GPS ゾンデ自動 放 球 装 置を整 備した。平成15年 度(2年度)は、予備 観測
を実施した。平成16年度および17年度(3、4年度)に本観測を実施した。
(2)
平成16年度 および平成17年度に梅 雨前線帯を対象に、本観測を九州 において実施した。 無 人
気象観測機、自動放球装置(ASAP)、気象研ドップラーレーダー、気象庁海洋観測船長風丸と清風 丸
による高層観測を行い、定常観測では捉えきれない対流圏下層の循環場・水蒸気場の時空間変動を
測定することができた。特 に、平成17年度には、エアロゾンデに加えて、JAXA の無人気象観測機によ
る気象観測を実施することができた。
(3)
本 観 測 で得 られたデータを雲 解 像 大 気 モデルに同 化 し、予 報 感 度 を調 べることにより、モデルの
検証を行った( 図 2-10) 。多くの場合で、同化した場合に予報が実況により近づくことが確認された。
しかし、特別観測のデータに問題があると考えられるケースもあることがわかった。
図 2-10 事例 A(2004 年 6 月 27 日)の結果。左:レーダーアメダス合成図の雨量。中:エアロゾンデデータを
同化しない場合。右:同化した場合。
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・平 成 14年 度 :10件
・平 成 15年 度 :38件
・平 成 16年 度 :58件
・平 成 17年 度 :68件
≪報 道 ≫ 平 成 18年 度 :22件
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 教 育 テレビ, 2006 年 4 月 8 日 (土 曜 日 )19:00~19:45, サイエンス ZERO,
異 常 気 象 が世 界 を襲 う「地 球 シミュレータの警 告 」、20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 教 育 テレビ、2006 年 4 月 15 日 (土 曜 日 )19:00~19:45、サイエンス ZERO、
異 常 気 象 が世 界 を襲 う「環 境 破 壊 を回 避 せよ」、20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 総 合 テレビ, 2006 年 5 月 7 日 (日 曜 日 )21:00~21:59, NHK スペシャル
「プラネットアース」, 第 1 集 生 きている地 球 , 20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 総 合 テレビ, 2006 年 5 月 10 日 (水 曜 日 )21:00~21:59, NHK スペシャ
ル「プラネットアース」, 第 4集 乾 きの大 地 を生 き抜 く, 20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 総 合 テレビ, 2006 年 8 月 16 日 (金 曜 日 )19:00~20:43, 「ちょっと変 だぞ
日 本 の自 然 」, 20kmAGCM の四 国 襲 撃 台 風 のシミュレーション.
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 教 育 テレビ, 2006 年 9 月 9 日 (土 曜 日 )19:00~19:45, サイエンス ZERO
「ZERO スペシャル 地 球 温 暖 化 の脅 威 に迫 る」, 20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
7. 気 象 研 究 所 : 東 京 新 聞 サンデー版 2006 年 10 月 22 日 (日 曜 日 ), 「世 界 と日 本 大 図 解 シリーズ No.757」地 球 温 暖 化 と異
常 気 象 、今 世 紀 末 の日 本 .
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 総 合 テレビ, 再 放 送 , 2006 年 11 月 7 日 (火 曜 日 )00:00~00:52, NHK
スペシャル「気 候 大 異 変 」第 1 部 異 常 気 象 , 20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
気 象 研 究 所 , 気 象 庁 , 地 球 科 学 技 術 総 合 推 進 機 構 : NHK 総 合 テレビ, 再 放 送 , 2006 年 11 月 8 日 (水 曜 日 )00:00~00:52, NHK
スペシャル「気 候 大 異 変 」第 2部 環 境 の崩 壊 がとまらない, 20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
NHK「気 候 大 異 変 」取 材 班 , 江 守 正 多 編 著 , 2006: 気 候 大 異 変 「地 球 シミュレータの警 告 」, NHK 出 版 , 2006 年 11 月 30 日 発 行 ,
20kmAGCM データによるコンピュータグラフィックス.
楠 昌 司 : 読 売 新 聞 2006 年 7 月 14 日 (金 曜 日 )2面 , 地 球 温 暖 化 で梅 雨 明 けに遅 れ(気 象 研 予 測 ).
楠 昌 司 : 朝 日 新 聞 (夕 刊 ) 2006 年 7 月 21 日 (金 曜 日 )19面 , 梅 雨 が明 けない-気 象 庁 の 100 年 後 予 測 に似 る?「温 暖 化 進 めば8
月 に」.
楠 昌 司 :毎 日 新 聞 2006 年 7 月 26 日 (水 曜 日 )16面 , 長 引 く梅 雨 -温 暖 化 影 響 じわり-100 年 後 の日 本 ?.
楠 昌 司 :しんぶん赤 旗 日 曜 版 2006 年 7 月 30 日 (日 曜 日 )35面 , 豪 雨 気 象 専 門 家 の警 告 温 暖 化 が加 速 .
楠 昌 司 : 朝 日 新 聞 be on Sunday 2006 年 7 月 30 日 (日 曜 日 )1面 , 「竹 内 敬 二 のどうする」、8月 の梅 雨 .
楠 昌 司 : NHK ラジオ第 1放 送 , ラジオあさいちばん, 2006 年 8 月 3 日 (木 曜 日 )7:20 頃 から約 8分 間 、梅 雨 について.
楠 昌 司 : NHK 総 合 テレビ「おはよう日 本 」, 2006 年 9 月 18 日 (月 曜 日 )朝 7:30~7:55, 今 年 の梅 雨 が温 暖 化 時 の梅 雨 に似 ている.
野 田 彰 : 朝 日 新 聞 (夕 刊 ) 2006 年 10 月 27 日 (金 曜 日 )16面 , 「科 学 」「極 端 現 象 」を予 測 、スパコン能 力 向 上 、高 まる解 析 精 度 .
吉 村 純 : NHK 教 育 テレビ「サイエンスZERO」, 異 常 気 象 が世 界 を襲 う 地 球 シミュレータの警 告 , 2006 年 4 月 8 日 (土 ) - 午 後
07:00 ~ 午 後 07:45.
吉 村 純 : ABC 朝 日 放 送 (テレビ)「なにか変 だぞ!?地 球 」, 2006 年 5 月 3 日 午 前 10 時 ~.
吉 村 純 : 日 刊 ゲンダイ「気 象 異 常 日 本 が狂 い始 めた! 第 6 回 」, 2006 年 10 月 11 日 .
吉 村 純 : 書 籍 「気 候 大 異 変 ― 地 球 シミュレータの警 告 」、NHK 取 材 班 +江 守 正 多 著 、2006 年 11 月 , NHK 出 版 .
・平 成 14年 度 : 0件
・平 成 15年 度 : 3件
・平 成 16年 度 : 7件
・平 成 17年 度 :13件
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