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5章sspA遺 伝子破壊株の作製および表現型観察
5章sspA遺 伝 子破 壊株 の作 製 お よび表 現 型観 察 5.1序 これ ま で の 研 究 に よ りSspAの 発 現 条 件 や 細 胞 内 局 在 は 決 定 した 。しか し 、この 段 階 で は 機 能 の 一 端 を 明 らか に した に 過 ぎ な い 。そ こで 、sspA遺 伝 子 が 欠 損 す ることに よ り、 R. sphaeroidesの 生 体 内 で ど の ような 変 化 が 起 こる か を 明 らか に す る べ く、sspA遺 伝子 破 壊 株 の 作 製 を試 み ることに した 。 R. sphaeroidesに お け る遺 伝 子 破 壊 法 として は 、大 腸 菌 の 形 質 転 換 で も用 い られ る エ レ クトロポ レ ー シ ョン(Electroporation)法 い る(Scolnik and Marrs, 1987)。 と接 合 伝 達(Conjugation)法 この うち 、機 器 も 不 要 で 遺 伝 子 導 入 確 率 の 高 い 接 合 伝 達 法 を 採 用 す る こ と に し た 。簡 単 に 概 要 を 述 べ る と 、E. coli sphaeroidesの が 知 られ て 繊 毛 を 通 じて プ ラス ミドDNAを (S17-1)株 が 児 運 び 入 れ る性 質 を 利 用 す るこ とに よ り相 同 組 み 換 え を 起 こし て 、一 重 交 叉 株 と二 重 交 叉 株 を 作 製 、この うち 二 重 交 叉 株 を 薬 剤 耐 性 遺 伝 子 の 活 用 に よ りス クリー ニ ン グ して 欠 損 株 を 作 製 す る手 法 で あ る。 作 製 した破 壊 株 が どのような表 現型 を示 すか を明 らか にす るべ く、野 生 株 と比 較 解 析 す ることにより、SSpA遺 伝 子 が欠 損 した影 響 を観 察 す る事 を 目的 とした。具 体 的 に は 下記 の6項 (1)生 目に注 目して表 現 型 観 察 を行 なった。 育 の 変 化(5.3.2参 照) 菌 体 を多様 な 条件 下 で培 養 す ることにより、どのような生 育変 化 が 起こるかを液 体培 養 とプ レー ト培 養 で観 察 した。このうち、塩 ストレスを 中心 としたストレス環 境 に対 する影 響 に注 目して比 較 解 析 を行 なった。 (2)光 学 顕 微 鏡 に よ る 菌 体 形 状 観 察(5.3.3参 照) (3)電 照) 子 顕 微 鏡 に よ る菌 体 形 状 観 察(5.3.5参 NaClス トレス条 件 下の 菌 体 の変 化 に注 目して顕 微鏡 観 察 を行 なった 。光 学顕 微 鏡 により菌 体 の 大 まか な構 造 と動 態 を観 察 し、電 子 顕 微 鏡 により膜構 造 を中心 とした詳 細 な菌 体 構 造 変 化 を観 察 した。 (4)野 生 株 とSSPA1の フ ロ ー サ イ トメ ー タ(FCM)に よ る 解 析(5.3.4参 照) フロー サイトメー タは 、細 胞 の散 乱 光 と蛍 光 を検 出 す ることにより、細 胞 の相 対 的 な 大 きさ、内 部 構 造 な どの 情 報 を得 ることが 可 能 な装 置 である。この うち、前 方 散 乱 光 35 (FSC: Forward Scattered Light)は 散 乱 光 の 中 で も レー ザ ー ビ ー ム の 光 軸 に 対 して 前 方 に 検 出 され る光 で 、細 胞 の 表 面 積 ま た は 大 きさ に ほ ぼ 比 例 す る。一 方 、側 方 散 乱 光 (SSC: Side Scattered Light)は レ ー ザ ー ビ ー ム の 光 軸 に 対 して90℃ の角 度 で検 出さ れ る 光 で 、そ の 大 部 分 が 細 胞 内 の 物 質 に 光 が 当 た っ て 散 乱 した も の で あ るこ とか ら 、 細 胞 の 顆 粒 性 状 、内 部 構 造 に ほ ぼ 比 例 す ることが 知 られ て い る(Fig. イ トメー タ の 解 析 に よ り、棚 5-1)。 フ ロー サ 遺 伝 子 が 破 壊 され た 際 に 、ど の ような 細 胞 構 造 変 化 が 起 こっ た か を 類 推 す る ことが 可 能 で あ る 。 Fig. 5-1 Difference between FSC and SSC (image figure). (5)野 生 株 とSSPA1の sspA遺 タン パ ク質 レベ ル で の 比 較 解 析(5.3.6参 伝 子 が 欠 損 した とき に 、SspAが 照) 存 在 す る 外 膜 、さ らに は 細 胞 質 や ペ リプ ラズ ム で ど の ような 変 化 が 起 こっ て い るか を 解 析 す る こ とに よ り、SspAの 機 能 が 明 らか に な る 可 能 性 が 挙 げ られ る 。そ の た め 、タ ン パ ク質 発 現 レ ベ ル で 網 羅 的 な 解 析 が 可 能 で あ る 二 次 元 電 気 泳 動(Two-dimensional て 、野 生 株 とSSPA1の electrophoresis) (O'Farrel et al., 1975)を 用い 発 現 量 変 化 を 捉 え ようと考 え た 。手 法 として は 、菌 体 破 砕 液 の う ち 、水 溶 性 画 分 と外 膜 画 分 を 分 離 ・分 画 し 、そ れ ぞ れ を 分 け て 泳 動 す る ことに よ り比 較 解 析 す るこ とに した 。 二 次 元 電 気 泳 動 は 、タンパ ク質 の示 す 二種 類 の性 質 をもとに した二 段 階の 分 離 操 作 を行 なって 、タンパ ク質 を分 離 す る手 法 である。一 次 元 目の泳 動 で は等 電 点 電 気 泳 動(Isoelectric focusing: IEF)で は 、タンパ ク質 を等 電 点(pI)に 次 元 目の 泳 動 であるSDS-PAGEで よって分 離 す る。二 はタンパ ク質の 分 子 量 によって分離 す る。現 在そ の 改 良法 が次 々に 考案 され てお り、数 千 種 類 の タンパ ク質 を分 離 す ることも可能 であ る。その ため 、質 量 分 析 計 とともに近 年 のプ ロテオミクス研 究 の基 本 技 術 として細 胞 分 化 の 解 析 、疾 病 マ ー カー の検 出 、新 薬 開発 など多方 面 で応 用 され てい る効 率 的 な手 法 である。 36 (6)野 生 株 とSSPA1の 適 合 溶 質 トレハ ロー ス の 定 量(5.3.8参 照) 塩 ストレス時 にお ける最 も顕 著 かつ 重 要 な応 答 に適 合 溶 質 の蓄積 が挙 げられ る。そ の ため 、sspA遺 伝 子 の 欠 損 によって適 合 溶 質 の蓄 積 に どのような変 化 が生 じるかを知 ることは きわ めて重 要 であると考 え 、破 壊 株 にお ける適 合 溶 質 蓄 積 量 を調 べ ることとし た。R.sphaeoridesはNaClス トレス条件 下 で、二糖 類 であるトレハ ロースを主 要な適 合 溶 質 として 蓄 積 す ることに より耐 塩 応 答 して い ることが 確 認 され てい る(Xu 1998)。 そ のため 、本 研 究で はsspA遺 伝 子 を破 壊 したときの 菌 体 内 トレハ ロース蓄 積 量 の解 析 を試 み た。 5.2材 5.2.1菌 料 と方 法 株 と培 養 条 件 本 章 で 使 用 した 菌 株 とプ ラス ミドをTable Table et al., 5-1に 5-1 Bacteria 37 示す。 and plasmids used in this chapter 5.2.2sspA遺 5.2.2.1破 伝 子破 壊 株 の 作製 壊 株 作 製 用 プ ラス ミドの 調 製 本 章 にお ける遺 伝 子 工 学 的 手 法 は2章 R. sphaeroidesの ゲ ノ ムDNAを と同様 に行 なった。 鋳 型 と し て 、forward primer (SSPAKS-f: 5'-ATAGTCGACGCCTGAGACCCCATGTTGGCGGC-3')とreverse (SSPAKS-r: primer 5'-ATTCCCGGGTCCGGTCCTCGATCTGCCGCGTC-3')を と に よ りsspA遺 伝 子 の 上 流0.8kbpのDNA断 用 い るこ 片 をPCRに を プ ラ ス ミド に ラ イ ゲ ー シ ョン す る た め に 、SalIとSmaIの よ り伸 長 さ せ た 。DNA断 制 限 酵 素 認 識 部 位(下 プ ラ イ マ ー に 付 加 し た 。 電 気 泳 動 に よ り精 製 後 、同 じ くSalI-SmaIで たKmr-suicide vector pJP 5603 (Penfold et al., 1996)に 片 線)を 制 限 酵 素 処理 し ラ イ ゲ ー シ ョン し てpRSSP001 を 取 得 した 。 一 方 の 、sspA遺 ゲ 伝 子 の 下 流1.6kbpのDNA断 ノ 片 を 、 同 じ く鋳 型 とし てR. ムDNAとforward primer 5'-TAACCCGGGTAACGAGAGCCGCGCGATCCGCA-3')お (SSPAKS2-r: PCRに (SSPAKS2-f: よ びreverse primer 5'-TGTGAATTCTTGTGGATCTGGGGGTCCCCCGT-3')を よ り伸 長 さ せ た 。DNA断 EcoRIの sphaeroides 片 を プ ラ ス ミド に ラ イ ゲ ー シ ョン す る た め に 、SmaIと 制 限 酵 素 認 識 部 位(下 同 じ くSmaIとEcoRIで 用 い て 線)を プ ライ マ ー に 付 加 した 。電 気 泳 動 で 精 製 後 、 制 限 酵 素 処 理 し たpRSSP001に ラ イ ゲ ー シ ョン し てpRSSP002 を 取 得 した 。 最 後 に 薬 剤 耐 性 を 有 す る ΩSmr/SpcrcassetteをpRSSP002お Iで よ びcassette共 にSma 制 限 酵 素 処 理 し た 後 、ラ イ ゲ ー シ ョン す る こ と に よ っ て 組 み 換 え 用 プ ラ ス ミドで あ る pRSSP002Ω を 取 得 し た(Fig. lysogenized with λpir株 5-2)。 こ こ ま で の プ ラ ス ミド調 製 は 全 てE. を 使 用 して 行 な っ た 。 38 coli JM109 Genomic Fig. 5-2 Construction scheme DNA of R.sphaeroides of pRSSP002 Ω, cells. 39 which is transferred into R. sphaeroides 5.2.2.2接 合 伝 達(Conjugation)法 に よ る相 同 組 み 換 え 作 製 した 組 み 換 え 用 プ ラス ミドはE.coliS17-1 al.,1990)に lysogenized 保 持 させ た 後 、同 株 とR.sphaeroidesをLBプ ことに よ り、R.sphaeroidesの with λpir(De Lorenzo レ ー ト上 で 固 相 接 合 させ る 細 胞 内 に 導 入 した 。 この うち 、Spcr,Kmsで ある二 重 交 叉 株 が 目 的 の 遺 伝 子 破 壊 株 で あ る 可 能 性 が 高 い た め 、単 離 後 に ゲ ノムDNAを ORFの 周 辺 をDNAシ ー ケ ン サ に よる 配 列 を 読 む ことに よ りsspA遺 した 。同 時 に 野 生 株 と同 株 をNaClス et 抽 出 し、 伝 子 の 欠 損 を確 認 トレス 条 件 下 で 培 養 し、菌 体 破 砕 後 、SspA抗 よ る ウェス タン 解 析 を 行 な い 、タ ンパ ク質 レベ ル で もSspAは 体 に 誘 導 合 成 して い な い ことを 確 認 した 。 5.2.3菌 体 の培 養 SspA遺 伝 子 が欠損 した影 響 を確 認 す るべ く、野 生株 とSSPA1(sspA遺 伝 子破 壊 株) を液 体 培 養 、お よび プ レー ト培 養 す ることにより、生 育 の違 い を観 察 した。培 養 条件 は 嫌 気 光合 成 条 件 と好 気 暗 条件 の 両方 で行 なった。プ レー トにお ける嫌 気 光 合 成 培 養 はGas-Pak(Becton Dickinson)を 使 用 して、完 全 に嫌 気 が保 たれる状 態 とした。液 体 培 養 で 生 育 変 化 を観 察 す る際 に、菌 体 のOD660測 定 によって確 認 す る方 法 と重 量 測 定 によって確 認 する方 法 の 二 つ が 考 えられ るが 、い ず れ にお いても違 い が見 られ なか ったため 、OD660測 定 による結 果 のみ を示 す 。 5.2.4光 学 顕 微 鏡 に よ る観 察 光 学 顕 微 鏡 を 用 い た 菌 体 の 形 状 観 察 に は 下 記 の 装 置 を 使 用 した 。光 学 顕 微 鏡 とし てOlympus BX52(OLYMPUS)を (OLYMPUS)を contrast; 、対 物 レ ン ズ はUplanApo 100x 使 用 し て 観 察 した 。画 像 は 全 て 微 分 干 渉(differential DIC)モ ー ドで 取 り込 ん だ 。菌 体 は 培 養 開 始96h後 objective lens interference の 静 止 期 の もの を 観 察 した 。 5.2.5フ ロ ー サ イ トメ ー タ(FCM)に FACSCalibur(Becton よ る解 析 Dickinson)を 用 い て 解 析 した 。菌 体 は 塩 ス トレス(4%NaCl) を 誘 導 し て 静 止 期 ま で 培 養 させ た も の を 、前 処 理 等 を 行 な わ ず そ の ま ま 測 定 し た 。 FSCに お け る 電 圧 は 信 号 を10倍 に して 出 力 す るEO1で した 。デ ー タ の 収 集 、解 析 に はCellQuestを 使 用 した 。 40 行 い 、細 胞 数 は5,000で 解析 5.2.6電 子 顕 微 鏡 に よ る観 察 5.2.6.1菌 体 サ ンプ ル の 固 定 電 子 顕 微 鏡 に よる観 察 は 塩 ス トレス を か け た も の の み 解 析 した 。NaClス NaCl濃 度2%)を 地 か け た 状 態 で 、嫌 気 光 合 成 条 件 ま た は 好 気 条 件 で 静 止 期 ま で 培 養 した 菌 体 を 、4℃ 、18,500xg、5min遠 [Phosphate トレス(培 Buffer Powder (Wako) 心 して 集 菌 した 菌 体 を1/15MPhosphateBu伍er in 1L MilliQ water](PB), pH7.4で 洗 浄 し て 、培 地 成 分 を 完 全 に 除 い た もの を 使 用 した 。菌 体 は 使 用 す る まで ー80℃ に 保 存 した 。 菌 体 サ ン プ ル を グ ル タル ア ル デ ヒド溶 液(3%グ 浸 して4℃ 体 をPBで 、2h振 ル タル ア ル デ ヒドin 1/15MPB)に とうして 初 期 固 定 した 。溶 液 を デ カ ン テ ー シ ョン に よ り除 い た 後 、菌 洗 浄 後 、再 度PBを 加 え て4℃ 、1h振 とうす ることに よ りグ ル タル ア ル デ ヒド を 除 去 した 。溶 液 を 捨 て て 、PBで 洗 浄 後 、新 た なPBを 加 え て4℃ 、1h振 溶 液 を デ カ ン テ ー シ ョン に よ り除 い た 後 、1% OsO4溶 液 を 加 え て4℃ 溶 液 を デ カ ン テ ー シ ョン に よ り除 い た 後 、10% sucrose in PBで とうした 。 、1h振 とうした 。 洗 浄 後 、室 温 、3min計 3回 振 とうした 。膜 の 染 色 を 向 上 させ る た め に 、溶 液 を デ カ ン テ ー シ ョン に よ り除 い た 後 、 3%飽 和 酢 酸 ウ ラン 溶 液 を 加 え て 室 温 、30min振 5.2.6.2菌 とうした 。 体 サ ンプ ル の 脱 水 固 定 した 菌 体 サ ン プ ル の 溶 液 を デ カ ン テ ー シ ョン に よ り除 去 して 、70%エ 2mlを 加 え て4℃ 、5min振 タノー ル を2ml加 て 、90%エ え て4℃ タノー ル を2ml加 み 回 収 して 、95%エ タ ノー ル を とうした 。デ カ ン テ ー シ ョン に よ り菌 体 の み 回 収 して 、80%エ 、5min振 とうした 。デ カ ン テ ー シ ョン に よ り菌 体 の み 回 収 し え て4℃ 、5min振 タ ノー ル を2ml加 より菌 体 の み 回 収 して 、100%エ とうした 。デ カ ン テ ー シ ョン に よ り菌 体 の え て4℃ タノー ル を2ml加 、5min振 とうした 。デ カ ン テ ー シ ョン に え て4℃ 、15min振 とうした(計2 回)。 5.2.6.3菌 体 サ ンプ ル の 樹 脂 へ の 包 埋 サ ン プ ル と樹 脂 を な じま せ る た め に 、プ ロピ レ ン オ キ サ イ ドを1サ ず つ 加 え 、室 温 、5min計2回 Quetol-812(エ (硬 化 剤;日 ポ ン 樹 脂;日 ン プ ル あ た り2ml 振 とうした 。デ カ ン テ ー シ ョン に よ り菌 体 の み 回 収 して 新EM)19.4ml、DDSA(硬 新EM)11ml、DMP-30(加 速 剤;日 化 剤;日 新EM)0.6mlを 新EM)9.6ml, MNA 混 合 した エ ポ ン 樹 脂 混 合 液 を 加 え て 、ス ター ラ ー で よく攪 拌 した 。エ ポ ン 樹 脂 混 合 液 とプ ロピ レン オ キ サ イ ド を1:1と な るよ うに 希 釈 した 溶 液 を 作 製 し、1サ ン プ ル あ た り2mlず 41 つ 加 え て 室 温 、一 晩 静 置 した 。エ ポ ン 樹 脂 混 合 液 を1サ ン プ ル あ た り2mlず つ 加 え て 室 温 、1h静 置し た。 サ ン プ ル を 樹 脂 固 定 用 容 器 に 移 し 、45℃ 、12h静 45℃ 、12h静 置 した 後 、60℃ 、24h、 さら に は 置 す るこ とに よ り樹 脂 を 完 全 に 硬 化 した 。 この 後 の超 薄 切 片 の調 製 ・ 電 子 顕 微 鏡 観 察 の操 作 は3章 で述 べ た方 法 と同様 に行 なった. 5.2.7二 次 元 電 気 泳 動 に よる解 析 5.2.7.1サ ンプ ル 調 製 二 次 元 電 気 泳 動 に よ る 解 析 に は 塩 ス トレ ス を か け た 菌 体 サ ン プ ル の み を 使 用 し た 。 NaClス トレ ス(培 地NaCl濃 度2%)を で 静 止 期 ま で 培 養 し た 菌 体 を4℃ Phosphate Buffer[Phosphate か け た 状 態 で 、嫌 気 光 合 成 条 件 ま た は 好 気 条 件 、18,500xg、5min遠 Buffer Powder (Wako) 心 し て 集 菌 した 菌 体 を1/15M in 1L MilliQ water](PB), pH7.4 で 洗 浄 し て 、培 地 成 分 を 完 全 に 除 い た も の を 使 用 し た 。菌 体 は 使 用 す る ま で-80℃ に 保 存 し た 。外 膜 画 分 は 、4章 で 行 な っ た シ ョ糖 密 度 勾 配 法 に よ り調 製 した 。超 遠 心 後 の 溶 液 の う ち 、 外 膜 タ ン パ ク 質 を 主 に 含 ん で い る 下 層 の2mlを2-D (Amersham Biosciences)を Thiourea, 4%w/v 用 い て 濃 縮 し た 後 、Rehydration Dithiothreitol]100μlを CHAPS, 0.5% IPG Buffer solution[7M pH4-7(Amersham Urea, Biosciences) kit 2M , 40mM 加 え て 完 全 に 可 溶 化 し て 、電 気 泳 動 サ ン プ ル とし た 。 水 溶 性 画 分 に つ い て は 、4章 で 分 画 した 水 溶 性 画 分 約10mlア より濃 縮 した 。操 作 として は 、画 分 に3倍 使 用)を Clean-Up 量(30ml)の 添 加 して 、軽 く攪 拌 後 、-20℃ で2h放 セ トン 沈 殿 の 操 作 に 冷 ア セ トン(-20℃ に冷 却 後 に 置 した 。これ を2,680xg、4℃ 、5min 遠 心 し た 後 、沈 殿 を 室 温 で 風 乾 し た 。沈 殿 が 完 全 に 乾 燥 す る 前 にRehydration solution 500μlを 5.2.7.2一 加 え て 完 全 に 可 溶 化 し て 、電 気 泳 動 用 サ ン プ ル とした 。 次 元 目等 電 点 電 気 泳 動 一 次 元 目 の 分 離 シ ス テ ム としてIPGphor ス トリップ ホ ル ダ ー 、及 びImmobiline ゲ ル のpHレ ン ジ がpH3-10の (Amersham DryStrip gel(pH Bioscienc es)を 使 用 した 。IPG 4-7)は11cmの もの も検 討 した が(data not shown)、 も の を 使 用 した 。 分 離 が不 充 分 で あ っ た こと、酸 性 側 に タン パ ク質 が 集 中 して い た ことに よ り、レン ジ は 常 にpH4-7の の を 使 用 した 。サ ン プ ル はBradfbrd法 る 場 合 に は 総 タン パ ク量 が40μg、 も に よ りタ ンパ ク 質 濃 度 測 定 を 行 な い 、銀 染 色 す クマ シ ー 染 色 す る 場 合 は500μgと 製 して 添 力口した 。泳 動 条 件 は 、ゲ ル 膨 潤 を20℃ 42 、12h行 な る ように 調 な っ た 後 、500Vを1h、 1,000Vを1h、 SDS-PAGEを 5.2.7.3二 8,000Vを1h 50minで 行 な うま で-80℃ に 保 存 した 。 次 元 目SDS-PAGE -80℃ に保 存 していたゲル にSDS平 8.8), 6M blue]を 行 な っ た 。電 気 泳 動 後 の ゲ ル は 二 次 元 目 衡 化 用バ [50mM Tris-HCI(pH a trace amount of Bromophenol Urea, 30%(v/v)Glycerol, 2%(w/v)SDS, 加 え て 室 温 で15min振 とうして 平 衡 化 した 。 平 衡 化 し た ゲ ル を 二 次 元 目 ゲ ル(14.5%, ー ス 溶 液(0 ル1枚 ッフ ァ ー10ml .5% agarose, a trace 当 た り定 電 流40mAで 気 泳 動 装 置NA1119(Nihon 5.2.7.4ゲ amount 13cmx 13cm)の of Bromophenol 上 面 に 置 い て 、ア ガ ロ blue)で 泳 動 し た 。電 気 泳 動 装 置 は4連 Eido)を 封 入 固 定 し た 後 、ゲ 式 冷 却 型 スラ ブ ゲ ル 電 使 用 した 。 ル ・メ ン ブ レ ン の 染 色 銀 染 色 は2D-銀 染 色 試 薬 ・II「第 一 」(Daiichikagaku)を 染 色 は 、泳 動 の 後 の ゲ ル をSemidry et al, 1988)に よ り、Immobilon-P 色 し た 。各 サ ン プ ル は 最 低5連 blotting Transfer system 用 い て 染 色 し た 。ク マ シ ー NA-1512(Nihon Eido)(LeGendre Membrane(Millipore)に 転 写 した もの を 染 で 比 較 解 析 を 行 な い 、 目 視 し て 顕 著 に 差 異 が 認 め られ た ス ポ ッ トの み 、シ ー ケ ン サ に よ り同 定 を 行 な っ た 。 5.2.7.5タ ン パ ク質 の 同 定 誘 導 合 成 量 の 増 減 が 見 られ た タン パ ク質 は 、クマ シ ー 染 色 したMembraneを り、Edmann分 に よ りN末 解 法 を 原 理 とした 気 相 シ ー ケ ン サProcise cLC(Applied 端 を 決 定 した 。各 ス ポ ットの 同 定 ・ 解 析 は 、得 られ たN末 ノ ム 情 報 が 公 開 さ れ て い るR.sphaeroides (hLtp://mmg.uth.tmc.edu/sphaeroides/) (http://www。ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/) 2.4.1の 切 り取 Biosystems) 端 配 列 を 元 に 、ゲ 推 定 ア ミノ 酸 配 列 、BLAST に よ る ア ミノ 酸 配 列 の 相 同 性 、SignalP (http://www.cbs.dtu.dk/services/SigllalP-2.0/) によるシグナル 配列 解析 を利 用す る ことに よる 、全 ア ミノ酸 配 列 、細 胞 内 局 在 、機 能 を 推 測 した 。 5.2.8菌 体 内 トレ ハ ロ ー ス 量 測 定 本 実 験 にお けるR.sphaeroidesの NaClに 培 養 条件 に関 しては 、5朗 遺 伝 子 を破 壊 しても 対す る生 育 変 化 が 見 られ なか った嫌 気 光 合 成 条件 では培 地NaCl濃 43 度 を4% (0.68M)、NaClス トレ ス に よ り生 育 が 大 きく阻 害 され た 好 気 暗 条 件 で は 培 地NaCl濃 を2%(0.34M)と して 、菌 体 が 充 分 な 量 回 収 で きる 条 件 で ス トレス を 誘 導 した 。 ま た 、通 常 の 培 養 の 際 に 添 加 して い るYeast して い る 。そ の た め 、R.sphaeroidesは extractは 度 成 分 中 に トレハ ロー ス を 含 有 培 地 成 分 に 含 ま れ るを トレハ ロー ス を 生 体 内 に 取 り込 ん で 適 合 溶 質 として 利 用 す る ことも 可 能 で あ る。本 実 験 で は 生 体 内 で 生 合 成 し た トレ ハ ロ ー ス 量 の 違 い を 確 認 す る ことを 目 的 として い るた め 、今 回 測 定 した 菌 体 サ ン プ ル は 全 て 培 地 中 にYeast 一方 extractを 添 加 せ ず に 培 養 した 。 、菌 体湿 重 量1gあ た りに添加 す る抽 出溶 媒 量(80%ア セ トニ トリル)を 一 定 に して菌 体 内 トレハ ロー スを抽 出 した。二糖 類 であるトレハ ロースは特 徴 的 な紫 外 吸 収 波 長 を持 たないため 、HPLCに よる検 出 には光 学示 差屈 折 計 を使 用 した。以 上 の培 養 、 測 定 条件 を考 慮 した実 験 条 件 は 下記 の通 りである。 NaClス トレ ス 条 件 下 で 培 養 した 静 止 期 の 菌 体 を4℃ 菌 し た 後 、菌 体1gあ た り80%ア (IKA)で60W、30s超 min遠 音 波 破 砕 し て 、100℃ か け た も の をHPLC測 用 カ ラ ムShodex 10mm)を SUGAR 、5min加 熱 し た 後 、4℃ 、18,500xg、20 ラ ム(6mmx 直 列 に 連 結 し て 、溶 媒 の80%ア た 。サ ン プ ル 量 は 常 に10μlを monitor(JASCO)を ィル タ ー(Minisart-RC4; 定 用 サ ン プ ル とし た 。HPLCに SZ5532カ 心 して 集 加 え て 懸 濁 し た 。Ultrasonicator 心 し て タ ン パ ク 質 を 除 去 し た 。 上 清 を0.20μmフ Sartorius)に mmx セ トニ トリル5mlを 、18,500xg、5min遠 150mm)、 よる測 定 は 糖 分 析 ガ ー ドカ ラ ムSZ-G(4.6 セ トニ トリル を 流 速1ml/minで 注 入 し 、検 出 は 示 唆 屈 折 計RI 830 分 析 し refractive index 使 用 した 。 実 サ ン プ ル を 測 定 す る前 に 、市 販 の トレハ ロ ー ス 二 水 和 物(Wako)をMilliQ水 溶 解 させ た も の を 用 い て 、1mM∼50mMの に 範 囲 で トレハ ロー ス 測 定 用 検 量 線 を 作 成 し た。 5.3結 果 5.3.1 sspa遺 SspAは 伝子破壊株の作製 ア ミノ酸 配 列 中 の ど の 部 位 に 機 能 を 有 し て い る の か 分 か ら な い の で 、sspA 遺 伝 子 を 完 全 に 抜 い た 後 、ΩSmr/Spcr 形 の 破 壊 株 を 作 製 し た(Fig. 保 持 さ せ た 後 、同 株 とR. こ とに よ り、R. sphaeroidesの et al., 1996)で 組 み換 えた 5-3)。 作 製 し た 組 み 換 え 用 プ ラ ス ミド はE. al., 1990)に cassette(Penibld coliS17-1 lysogenized sphaeroidesをLBプ with λpir(De Lorenzo レ ー ト上 で 固 相 接 合 さ せ る 細 胞 内 に 導 入 し た 。 こ の うち 、Spcr, KmSで ある二 重 交 叉 株 が 、 目 的 で あ る 遺 伝 子 破 壊 株 で あ る 可 能 性 が 高 い た め 、単 離 後 に ゲ ノムDNAを 44 et 抽 出 し 、ORFの 周 辺 をDNAシ ー ケ ン サ に よる 配 列 を 読 む ことに よりsspA遺 を 確 認 した 。同 時 に 野 生 株 と同 株 をNaClス 伝 子 の欠 損 トレ ス 条 件 下 で 培 養 し、菌 体 破 砕 後 、SspA 抗 体 に よる ウ ェ スタ ン 解 析 の 結 果 、野 生 株 に はSspAの バ ン ドが 検 出 され た もの の 、欠 損 株 で は バ ン ドが 検 出 され な か っ た の で 、遺 伝 子 レ ベ ル だ け で な く、タン パ ク質 レ ベ ル で もsspAは 誘 導 合 成 し て い な い ことが 確 認 され た(Fig. 5-4)。 この 株 をSSPA1株 とし た。 Hypothetical Hypothetical Transcriptional Hypothetical N-utilization 6,7-dimethyl-8- protein protein regulator protein substance protein ribityllumazine synthase Fig. 5-3 Physical ΩSmr/Spcr and cartridge genetic map of R. sphaeroides strains. sonicated protein Cells of SSPA1 blot analysis of cell lysates from wild type and sspA-deleted were in NP-lysis (10μg) Insertion is indicated. wild-type Fig. 5-4 Western sspA regions. was cultured anaerobic buffer, loaded into condition and separated each lane. 45 in the by SDS-PAGE. NaCl-containing The SSPA1 media, same amount of 5.3.2野 生 株 とSSPA1の sspA遺 生 育 の比 較 解 析 伝 子 が 欠損 した影 響 を明 らか にす るべく、野 生株 とSSPA1(sspA遺 伝子破 壊 株)を 液 体 培 養 、お よび プ レー ト培 養 す ることにより、生 育 の違 いを観 察 した。培 養 条 件 は嫌 気 光 合 成 条件 と好 気 暗 条 件 で行 なった。プレー トにお ける嫌 気 光 合 成 培 養 はGas-Pak(Becton Dickinson)を 使 用 して、完 全 に嫌 気 が保 たれる状 態 とした。液 体 培 養 で 生 育 変化 を観 察 す る際 に 、菌 体 のOD測 定 によって確認 す る方 法 と重 量 測 定 によって確 認 す る方 法 の 二 つ が 考 えられ るが 、い ず れ にお いても違 いが 見 られなか っ たため 、OD測 定 による結 果 の み を示 す 。 そ の 結 果 、嫌 気 光 合 成 条 件 で は 野 生 株 とSSPA1(sspA遺 は 見 られ な か っ た(Fig. 5-5)。 添 加 した 時 の みSSPA1は 伝 子 破 壊 株)の 間 に違 い 一 方 、プ レ ー ト培 養 に 関 して は 、塩 ス トレス(NaCl)を 野 生 株 に 比 べ て 若 干 生 育 が 抑 制 され て い るこ とが 見 出 され た(Fig.5-7A)。 さら に 、好 気 暗 条 件 に お い て は 、両 者 の 間 に 大 きな 生 育 の 違 い が 観 察 され た 。ス ト レス の か か っ て い な い 通 常 培 地 に お い て も 、SSPA1は 大 菌 体 濁 度 が 約1.0ま で きな か っ た(Fig. れ た(Fig. 生 育 が 抑 制 され た 。野 生 株 は 最 で 到 達 す るの に 対 して 、SSPA1は 5-6A)。 で しか 到 達 様 々 な ス トレ ス を か け た 時 に そ の 違 い は さらに 顕 著 に 現 わ 5-6)。Sorbitolを 養 した 酸 性 ス トレ ス(data 最 大 で も 約0.7ま 用 い た 浸 透 圧 ス トレス(Fig. not shown)に 5-6B)、pHを6.0条 お い て は 、SSPA1は 件 で培 生 育 が し ば らく抑 制 され た 後 生 育 を 開 始 して 、最 終 的 に 野 生 株 と同 じ最 大 菌 体 濁 度 に 到 達 す る現 象 が 観 察 さ れ た 。さ ら に 、決 定 的 な 違 い は 塩 ス トレ ス 条 件 下 で 生 育 させ た 時 に 現 わ れ た 。SSPA1 はNaClやKCIを0.68M(4%)添 (Fig. 5-6C, 加 した 培 地 で は 全 く生 育 す るこ とが で き な くな っ た D)。 そ の た め 、ssPA1が す る べ く、培 地NaCl濃 どの 程 度 の 塩 耐 性 を 有 して い る の か を 明 らか に 度 を低 下 させ て い っ た 結 果 、0.34M(2%)に な って 初 め て生 育 が 可 能 に な っ た 。ま た 、好 気 に お け るす べ て の 液 体 培 養 条 件 下 で 、培 養 開 始6h程 度 か ら 肉 眼 で も 観 察 で き る菌 体 の 凝 集 が 観 察 され た 。プ レ ー ト培 養 に お い て は 野 生 株 、 SSPA1共 に 液 体 培 養 よ りも塩 耐 能 が 低 か っ た が 、培 地NaCl濃 い て 野 生 株 は 生 育 で きた も の の 、SSPA1は 度 が0.34M(2%)に お コ ロニ ー を 形 成 す る ことが で き な か っ た 。こ の 事 か ら 、プ レ ー ト培 養 に お い て も塩 耐 性 が 低 下 して い る ことが 明 らか に な っ た(Fig. 5-7B)。3章 に お い て 、SspAは 塩 ス トレス 条 件 下 で 特 異 的 に 誘 導 合 成 され ることを 明 ら か に した 。この 結 果 を 合 わ せ て 考 え ると、本 菌 は 塩 ス トレス 耐 性 を 高 め る た め にSspAを 誘 導 合 成 し 、そ れ に よ っ て 耐 塩 性 を 獲 得 して い る と考 え られ る。 46 Fig. 5-5 Growth profiles of wild-type and sspA-deleted SSPA1 under anaerobic photosynthesis conditions. Wild-type and SSPA1 in the control condition (A), in the sorbitol-containing media (B), in the NaCl-containing media (C), wild-type in the KCl-containing media (D). 47 Fig. 5-6 Growth profiles of wild-type and sspA-deleted conditions. Wild-type sorbitol-containing and SSPA1 in the control media (B), in the NaCl-containing KCl-containing media (D). 48 SSPA1 under aerobic dark condition (A), in the media (C), wild-type in the Fig. 5-7 Phenotypic change of the R. sphaeroides SSPA1 strain on plate culture under salt-stressed (with addition of 2% NaCI) anaerobic photosynthesis condition (A), and aerobic dark condition (B). 5.3.3 野 生 株 とSSPA1の 光 学 顕 微 鏡 に よる観 察 好 気 条 件 にお ける生 育の 比較 解 析 の 結 果 、SSPA1は いず れ の条 件 にお いても、野 生株 に比 べ て 菌体 が集 まって浮遊 している様 子 が肉 眼 でも観 察 できた。特 にNaC1ス ト レス条 件 下で は 、凝 集 がより顕 著 にな り沈 殿 する菌 体 も観 察 され た(Fig .5-8A)。 これ は 菌 体 に何 らか の形 状 変 化 が起 こっているので はな いか と考 え、まず は 光学 顕 微鏡 で形 状 変 化 を観 察 することにした。 そ の 結 果 、野 生 株 で は 通 常 条 件 で も 、塩 ス トレス 条 件 下 で も 菌 体 の 凝 集 体 は 観 察 さ れ な か っ た(Fige5-8B)。 shown)、 一 方 、SSPA1株 は 嫌 気 光 合 成 条 件 に お い て も(data 好 気 暗 条 件 に お い て も(Fig,5-8B)、10-20程 not 度 の 菌 体 が 凝 集 体 を形 成 し て い る 様 子 が 観 察 され た 。さら に 菌 体 の 生 育 が 大 き く抑 制 され た 好 気 塩 ス トレス 条 件 (0,68MNaCl添 (Fig.5-8B)。 加)で は 、無 数 の 菌 体 が 凝 集 体 を 形 成 して い る 現 象 が 観 察 され た 形 成 され た 凝 集 体 を 通 常 培 地 に 戻 す と、速 や か に 破 壊 株 を 通 常 培 地 に 培 養 した 時 と同 レベ ル のOD660が0.7程 度 ま で 上 昇 した 。また 、凝 集 体 の 外 側 の 菌 体 を は じめ 多 数 の 菌 体 は 動 い て い た た め 、菌 体 が 完 全 に 死 ぬ こ とに よっ て 形 成 され た 凝 集 で は な い こ とが 推 測 され た 。培 養 試 験 管 の 形 状 や 振 とう角 度(垂 直 ・水 平)、 振 とう 速 度 を 変 化 さ せ て も 同 様 の 現 象 が 観 察 され た 。この 凝 集 は 手 や ボ ル テ ックス ミキ サ ー に よ る振 とうで 容 易 に 拡 散 し 、し ば らく培 養 を 継 続 す る と再 度 凝 集 を 生 じる レベ ル の 弱 い 結 び つ きに よ るもの で あ っ た 。 49 Fig. 5-8 Wild-type and SSPA1 strains cultured under aerobic dark conditions. (A) A stationary-phase culture of wild type and SSPA1 under indicated conditions. (B) Wild type and SSPA1 strains were grown under aerobic condition in the normal (left) and NaCI-containing media (right). Cells were observed at an early-exponential arrows 5.3.4野 indicate cell' s precipitation 生 株 とSSPA1の SSPA1が formed by their フ ロ ー サ イ トメ ー タ(FCM)に cohesion. phase. Red Bars,10μm. よ る解 析 形 成 す る凝 集 体 は 菌 体の形 状 変化 によるもので はないかと考 え、フロー サ イトメー タによって嫌 気 光 合 成 、好 気 暗 条件 の 両条 件 下で 、菌 体形 状 の変 化 を観 察 し た。 解 析 の 結 果 、嫌 気 光 合 成 条 件 下 で は 塩 ス トレ スの 有 無 に 関 わ らず 、野 生 株 とSSPA1 の 間 に 変 化 は 見 られ な か っ た(data not shown)。 一 方 、好 気 暗 条 件 の サ ン プ ル に 関 して は 、塩 ス トレ ス の 有 無 に か か わ らず 、野 生 株 とSSPA1の 50 間 で 細 胞 の 表 面 積 また は 大 きさ に ほ ぼ 比 例 す る 前 方 散 乱 光(FSC)の 形 状 に 変 化 は 見 られ な か っ た(Fig.5-9 A, B)。 一 方 、細 胞 の 顆 粒 性 状 、内 部 構 造 に ほ ぼ 比 例 す る側 方 散 乱 光(SSC)に て 野 生 株 と比 べ て 、SSPA1で の こ とか ら、SSPA1は 減 少 して い ることが 明 らか に な っ た(Fige5-9C, 関し D)。 こ 野 生 株 に 比 べ て 内 部 構 造 が 希 薄 に な っ て い る ことが 示 唆 され た。 Fig. 5-9 Differential analysis of FSC (propotional to cell size) and SSC (propotional to intracellular compositions) between wild-type (Blue line) and SSPAI strain (Red line) under salt-stressed (4% NaC1) anaerobic photosynthesis and under salt-stressed condition (A; FSC, C; SSC) (4% NaC1) anaerobic photosynthesis SSC) by flow cytometry. 51 condition (B; FSC, D; 5.3.5野 生 株 とSSPA1の 電 子 顕 微 鏡 に よ る観 察 光 学 顕 微 鏡 による観 察 によって、SSPA1に は何 らか の形状 ・ 形 態 変 化 が起 こってい ることが予 測 され た。さらに詳 細 に菌 体 の 形 状 を観 察 す るべ く、電 子 顕 微 鏡 を用 い て その 変 化 を捉 えることにした。その 際 に 、SspAが 局 在 している外 膜 を中 心 とした膜 構 造 にどのような影 響 が及 ん できるのか を中心 に解 析 した。そのた め 、膜 構 造 が鮮 明 に 確 認 できるOsO4に より菌 体 を固 定 して観 察 した。 第 一 に 、野 生 株 に お い て 嫌 気 光 合 成 条 件 と好 気 暗 条 件 の 間 の 菌 体 構 造 変 化 を 観 察 した 。R.sphaeroidesを 嫌 気 条 件 で 培 養 す ると、内 膜 の 構 造 が 大 きく変 化 して 、胞 状 の 細 胞 質 内 膜(Intracytoplasmic (Zeilstra-ryalls et al., 1998;Chory membrane;ICM)が et al.,1984)。 形 成 され る こ とが 知 られ て い る 今 回 の 結 果 に お い て も小 型 の 胞 状 体 で あ る 細 胞 質 内 膜 が 多 数 見 出 され た(Fig.5-10A,B)。 ま た 、い ず れ の 条 件 に お い て も 、一 部 に 大 き な 胞 状 体 が 観 察 され る が 、これ は 代 謝 の 中 間 体 で あ るポ リヒドロキ シ 酪 酸 を 含 む 構 造 体 で あ る と考 え られ る。両 条 件 を 比 較 す る と好 気 暗 条 件 の 方 で よ り大 型 の 胞 状 体 が 形 成 され て い るこ とが 観 察 され た 。 次 に野 生株 とSSPA1の 間 の菌 体 構 造 変 化 を比 較 した。嫌 気 光 合 成 条件 にお いても、 好 気 暗 条 件 にお い ても、共 通 して胞 状 体 が 少 なくな ってい ることが 明 らか になった (Fig.5-10,5-11)。 しか し、細 胞 構 造 、特 に注 目していた膜 構 造 の変 化 は観 察され な かった。一 方 、両培 養 条件 にお けるSSPA1問 の違 い は 、嫌 気 光 合成 条件 にお いて 、 膜 周 辺 に電 子 密 度 の 高 い部 分 が複 数 形 成 されて いることである(Fig.5-10D)。 野生 株 に見 られ たような胞 状 体 のサイズ変 化 といった現 象 は観 察 されなかった. 以 上 の観 察 結 果 より、sspAの 欠損 により菌 体 内の胞 状 体 が減 少 す る、つ まり内部構 造 に何 らか の変 化 が 起きていることが示 唆 され た。 52 Fig.5-10 Electron micrographs of a thin section of wild-type(A,B)and (sspA-deletion mutant)(C,D)grown SSPA1 under anaerobic photosynthesis salt-stressed(2% NaCl in culture medium)conditions.Red arrow indicate vesicle structures bepoly-β-hydroxibutyrate.Barsindicate 0 .5 supposed to μm.OM;Outermembrane,IM;Inner membrane Fig.5-11 Electron micrographs of a thin section of wild-type(A,B)and (sspA-deletion mutant)(C,D)grown culture medium)conditions.Red poly-β-hydroxybutyrate.Bars under aerobic dark salt-stressed(2% arrows indicate vesicle structures indicate 0.5 membrane 53 μm.OM;Outer SSPA1 NaCl in supposed to be membrane,IM;Inner 5.3.6野 生 株 とSSPA1の 野 生株 とSSPA1の 二 次 元 電 気 泳 動 に よるタ ン パ ク質 レベ ル で の 比 較 解 析 間 にお い て、タンパ ク質発 現 レベ ル でどのような変 化 が起 こって い るのかを明 らか にしようと考 えた。菌 体破 砕 液 のうち 、外 膜 画 分 と水 溶 性 画 分 を二 次 元 電 気 泳 動 で分 離 す ることにより、発 現 タンパ ク質 の 変 化 を比 較 解 析 した。外 膜 画 分 に関 しては 、SspAが 外 膜 に局 在 す る事 か ら、sspA遺 伝 子 の欠 損 によって、他 の外 膜 タンパ ク質 に何 らか の影 響 が及 ん でい るので はない か と考 えて解 析 を試 み た。一 方 、 水 溶 性 画 分 は 主 に細 胞 質 とペ リプラズムの タンパ ク質 を多 く含 む ため 、生 育 に関 連 す る重要 因 子 の発 現 量 に変 化 が起 こっていることを想 定 して解 析 を試 み た。 その結 果 、一 次 元 目等 電 点 電気 泳 動 のpI範 囲 を4-7に 絞 り込 む ことにより、良好 に タンパ ク質 を分 離 す ることに成 功 した。また 、銀 染 色 す る場 合 には 総 タンパ ク量 が40 μg、クマシー 染 色 する場 合 は500 μgとなるように調 製 してサンプル 添加 す ることによ り、充 分な比 較 解 析 が できるような条件 とした。 こ の うち 、多 数 の タ ン パ ク 質 が 存 在 す る 水 溶 性 画 分 は クマ シ ー 染 色 に よ り検 出 し (Fig.5-12,5-13)、 外 膜 画 分 に つ い て は ク マ シ ー 染 色 と銀 染 色 の 両 方 で 検 出 し た (Fig.5-14,5-15,5-16)と も に 野 生 株 とSSPA1の サ ン プ ル を 各5枚 著 に 変 動 して い るこ とが 明 らか に な っ た も の の み をPVDF膜 りN末 以 上 泳 動 して 、顕 に 転 写 して シ ー ケ ン サ に よ 端 を 決 定 した 。 発 現 量 変 化 の 顕 著 で あ っ た 各 ス ポ ットの 解 析 は 、シ ー ケ ン サ で 得 られ たN末 端配列 を 元 に デ ー タベ ー ス 情 報 を 活 用 して 、全 ア ミノ酸 配 列 、細 胞 内 局 在 、機 能 を 推 測 した (Table 5-2)。 な お 、ゲ ル の 泳 動 図(Fig.5-12,5-13,5-16)で 示 した 番 号 とTable 5-1 で 示 した 番 号 は 同 じタ ンパ ク質 して 表 記 す る 。 水 溶 性 画 分 の 中で選 択 したスポット1∼9の うち、N末 端 の配 列 か ら同定 可能 であっ たタンパ ク質 の局 在 は細 胞 質 かペ リプラズム、つ まり水 溶 性 画 分 に局 在 してい ることが 推 測 され た。一 方 、外 膜 画 分 の 中で選 択 したスポ ット10∼16の うち、2種(ス ポット13, 16)の み が 外 膜 へ の局 在 が予 測 され るタンパ ク質 で あり、残 りは他 の部 位 に局 在 して いることが示 唆 され た。そのた め、これ らのタンパ ク質 は他 の部 位 か ら混入 したものと考 えられ る。 細 胞 質 由 来 で 発 現 量 が 減 少 し た タ ン パ ク 質 の うち 、ス ポ ッ ト2は ト3は 脂 質 代 謝 に 関 連 す る タ ン パ ク 質 で あ っ た 。 一 方 、発 現 量 が 増 加 し た タ ン パ ク 質 の うち 、ス ポ ッ ト5、7、8、9は 15は 糖 質 代 謝 に 関 連 す る タ ン パ ク 質 で あ り、ス ポ ッ ト10、11、13、 物 質 輸 送 に 関 連 す る タ ン パ ク 質 で あ っ た 。そ の 他 、ス ポ ッ ト6(Ribosomal S32)、 ス ポ ッ ト12(alkene ッ ト16(Probable 1,4に ア ミノ 酸 代 謝 、ス ポ ッ serine monooxygenase)、 protease)の ス ポ ッ ト14(Electron transfer protein protein)、 ス ポ 発 現 量 が 増 加 し て い る こ と が 見 出 され た 。ス ポ ッ ト 関 し て は 、一 部 の 配 列 は 決 定 で き た も の の 、ゲ ノ ム 配 列 を 元 に し た 解 析 か ら は 同 定 で き な か っ た 。菌 株 の 差 異(f.sp.denitrificansと2.4.1)に 54 由 来 す る可 能 性 が 高 いと考 察 され る。 これ らの 結 果 か ら、sspA遺 伝 子 の 欠 損 により、代 謝 全般 や 物 質 輸 送 に変 化 が生 じ て いる可能 性 が 示 唆 され た。しか し、目的 として いた外 膜 タンパ ク質 や 生 育 に 重 要な 因 子 の特 徴 的な 変化 や傾 向を捉 えることはで きなか った。そ のため 、本 法 によりSspA の 機 能 を特 定す ることは難 しい と判 断 した。 Fig.5-12 Two-dimentional sphaeroides(wild-type electrophoresis strain)grown NaCl in the medium.The analysis of soluble fractions under aerobic dark condition with addition of 2% gel was separated on pI 4-7 from left to right,stained Coomasie brilliant blue.The of R. with approximate size of bands in kDa is indicated on the right. The identities assigned are listed in Table 5-2. 55 Fig.5-13 Two-dimentional sphaeroides(SSPA1 NaCl in the Coomasie electrophoresis strain)grown medium.The gel assigned of soluble fractions of R. under aerobic dark condition with addition of 2% was senarated brilliant blue. The approximate The identities analysis on pI 4-7 from left to right. size of bands in kDa is indicated are listed in Table 5-2. 56 stained with on the right. Fig.5-14 Two-dimentional electrophoresis analysis protein-enriched fractions of R.sphaeroides(wild-type dark condition of 2% NaCl in the medium.The with addition from left to right,stained with silver.The approximate on the right. 57 of outer membrane(OM) strain)grown under aerobic gel was separated on pI 4-7 size of bands in kDa is indicated Fig.5-15 Two-dimentional protein-enriched fractions condition with addition electrophoresis analysis of R.sphaeroides(SSPA1 on the strain)grown of 2% NaCl in the medium.The from left to right, stained with silver. The approximate right. 58 of outer membrane(OM) under aerobic dark gel was separated on pI 4-7 size of bands in kDa is indicated Fig. 5-16 Differential analysis of outer membrane (OM) protein-enriched fractions between wild-type (A) and SSPA1 (B) grown under aerobic dark condition with addition of 2% NaCI in the medium, separated focused on cationic on pl 4-7 from left to right, bands in kDa is indicated stained range SspA. The gel was with silver. The approximate on the right. The identities 59 including assigned size of are listed in Table 5-2. 6 0 Table 5-2 N-terminal amino acids sequence and identification of proteins reduced or induced by the disruption of sspA gene 5.3,7野 生 株 とSSPA1の 適 合 溶 質 トレハ ロー ス の 定 量 R. sphaeoridesはNaClス トレス 条 件 下 に お い て 二 糖 類 で あ る トレハ ロ ー ス を 主 要 な 適 合 溶 質 として 蓄 積 す る ことに よ り耐 塩 応 答 して い る ことが 確 認 され て い る(Xu 1998)。 そ の た め 、表 現 型 観 察 の 一 環 として 、sspA遺 et al., 伝 子 を破 壊 した とき に 菌 体 内 トレ ハ ロー ス蓄積 量 にどの ような変 化 が起 こるのか を検 討 した 。分析 手 法 として は 、HPLC の 検 出に光 学 示 差 屈 折 計 を用 いる事 により菌 体 内 トレハ ロースを定 量 した。 5.3.7.1野 生 株 とSSPA1の 菌 体 内 トレ ハ ロ ー ス 量 測 定 本 実 験 に お け るR.sphaeroidesの NaClに 培 養 条 件 に 関 して は 、sspA遺 伝 子 を破 壊 して も 対す る生 育 変 化 が 見 られ なか った嫌 気 光合 成 条件 で は培 地NaCl濃 (0.68M)、NaClス を2%(0.34M)と 度 を4% トレス に よ り生 育 が 大 き く阻 害 され た 好 気 暗 条 件 で は 培 地NaCl濃 度 して 菌 体 が 充 分 な 量 回 収 で きる 条 件 で ス トレス を 誘 導 した 。 実 サ ン プ ル を 測 定 す る前 に 、市 販 の トレハ ロー ス2水 和 物 をMilliQ水 に 溶 解 させ た もの を 用 い て 、トレハ ロー ス 測 定 用 検 量 線 を 作 成 した 。そ の 結 果 、トレハ ロー ス は 約15 minで 溶 出 され 、1mM∼50mMの 範 囲 で良 好 な検 量線 を作 成 す ることに成 功 した (Fig.5-17)。 この 検 量 線 をも とに 野 生 株 、及 びSSPA1の 果 、NaClス 菌 体 内 トレハ ロー ス を 定 量 した 。そ の 結 トレ ス を 誘 導 して い な い 条 件 で は 、嫌 気 光 合 成 条 件 、好 気 暗 条 件 共 に 、ト レハ ロー ス は 全 く検 出 され な か っ た(data not shown) 。培 養 条 件 で 蓄 積 量 を 比 較 す る と、塩 ス トレス 強 度 が 異 な るた め 、嫌 気 塩 ス トレ ス 条 件(4%NaCl)に 条 件(2%NaCl)で は10分 の1以 比 べ て 、塩 ス トレス 下 に 減 少 して い る こ とが 明 ら か に な っ た(Fig . 5-18)。 一方 、野 生 株 とSSPA1株 の 菌 体 内 トレハ ロ ー ス 量 を 比 較 定 量 した ところ 、嫌 気 塩 ス ト レス 条 件 で は 特 に 違 い は 見 られ な か っ た(Fig も 野 生 株 とSSPA1株 5-18B)。 .5-18A)。 ま た 、好 気 塩 ス トレ ス 条 件 で の 菌 体 内 トレハ ロ ー ス 量 に は 大 きな 違 い は 見 られ な か っ た(Fig そ の た め 、sspA遺 伝 子 の 有 無 に 依 っ て 、菌 体 内 トレハ ロー ス の 合 成 量 が 変 化 す ることはないことが 明 らか になった。 61 . Fig. 5-17 Calibration curve of treha1ose standard detemlined by refractive index monitor. Fig. 5-18 Trehalose level between wild-type and SSPA1 under photosynthesiscondition(A), and under aerobic dark condition(B). 62 anaerobic 5.4 考 察 SspAの 生 体 内機i能を探 索 す るべ く、sspA遺 伝 子 破 壊 株 を作製 してその表 現 型 を 野 生株 と比 較 解 析 した。 は じ め に 、接 合 伝 達 法 を 用 い てsspA遺 cassetteで SSPA1は 伝 子 を 完 全 に 抜 い た 後 、ΩSmr/Spcr 組 み 換 え た 形 の 破 壊 株 の 作 製 を 試 み た(Fig.5-3)。 その結果取得 した 遺 伝 子 レ ベ ル だ け で な く、タン パ ク質 レ ベ ル で もSspAを 誘 導 合 成 して い な い ことが ウェ ス タ ン に よ り明 らか に な っ た(Fig.5-4)。 本 章 で はSSPA1に 関 して 、種 々 の 手 法 を 用 い て 野 生 株 との 表 現 型 の 違 い を 観 察 した 。 第 一 に 、生 育 の 変 化 を 比 較 解 析 した 。そ の 結 果 、嫌 気 光 合 成 条 件 下 で は 液 体 培 養 で は 変 化 が 見 られ な か っ た(Fig.5-5)。 一 方 、プ レ ー ト培 養 で は 塩 ス トレス を誘 導 した 条 件 で 若 干 の 生 育 抑 制 が 観 察 され た(Fig.5-7)。 で も 塩 耐 性 が 培 地NaCl濃 度2%(通 常 は4%)ま プ レ ー ト培 養 に お い て は 、野 生 株 で 低 下 して い た 。現 段 階 で は 要 因 は 明 らか に な っ て い な い 。さ らに 、好 気 暗 条 件 下 で は 、い くっ か の 顕 著 な 変 化 が 観 察 さ れ た 。最 も 大 きな 変 化 は 、破 壊 株 に 見 られ た 生 育 の 抑 制 で あ る 。液 体 培 養 で 比 較 した 結 果 、ス トレ ス の な い 条 件 で も破 壊 株 は 野 生 株 と同 レベ ル の 菌 体 濁 度 ま で 生 育 す るこ とが で きな か っ た(Fig.5-6A)。 SSPA1は さら にNaClを 生 育 が 大 き く抑 制 され た(Fig.5-6C で は 、好 気 条 件 下 でSorbitolを 培 地 に 添 加 した 塩 ス トレ ス 条 件 下 で は 、 and D)。 塩 ス トレス 以 外 の ス トレス 条 件 添 加 して 培 養 す る と、SSPAIは 培 養 開 始 か らか な り遅 れ て か ら生 育 が 始 ま り、野 生 株 と同 等 レ ベ ル まで 菌 体 濁 度 が 到 達 す る現 象 が 観 察 され た(Fig.5-6B)。 今 後 はSorbitolも 含 め 、炭 素 源 を 変 化 させ て 生 育 させ た 時 に ど の よ う な 変 化 が 起 こる か を 観 察 す る ことも 検 討 課 題 として 挙 げ られ る 。一 方 、プ レ-ト 培 養 に お い て も 、SSPA1は 5-7B)。 野 生 株 と比 べ て 耐 塩 能 が 低 下 して い る ことが 明 らか に な っ た(Fig. ま た 、嫌 気 光 合 成 条 件 と比 較 して も 、そ の 抑 制 度 合 い は 若 干 高 い こ とが 見 出 され た 。 第 二 に 、光 学 顕 微 鏡 により、培 養 中 の菌 体 の動 態 変 化 を観 察 した。その結 果 、最 も 大 きな変 化 で あったの が 、好 気 暗 条 件 で 見 られ たSSPA1の 菌 体 凝 集 である(Fig. 5-8B)。 特 に、NaClス トレス条 件 下で は大 きな凝 集 体 が観 察 され た(Fig . 5-8B)。 同 様 の凝 集 体 はKCIに よる塩 ストレスでも観 察 され た(data not shown)。 興 味深 いこと に、形 成 され た凝 集 体 を通 常 培 地 に戻 す と速 や か にOD660が0.7程 度 まで上 昇 す る。 これ は破 壊 株 を通 常 培 地 に培 養 した時 と同 レベル で あり、この凝 集 体 が 細胞 死 ではな く、生 育 抑 制 を意 味 していることが 示 唆 され る。また 、この凝 集 体 は培 養 開始 か ら数 時 間 という生育 の 初期 段 階 で形 成 され ることか ら、sspA遺 伝 子 の欠 損 がただ ちに菌 体 に 重 大 な影 響 を与 え、その結 果 生育 抑 制 が 起こっていることが予 測 される。 三 番 目として、フロー サ イトメー タを用 いて細 胞 構 造 の変 化 にっ いて比 較解 析 した。 63 そ の 結 果 、SSPA1は 塩 ス トレス 条 件 下 で 、菌 体 の 大 き さ に 変 化 は な い も の の 、内 部 構 造 が 変 化 して い るこ とが 明 らか に な っ た(Fig.5-9)。 四番 目として、電 子 顕 微 鏡 による観 察 により、膜 構 造 の変 化 を解 析 した。そ の結 果 、 FACSの 結 果 で示 され た知 見 と同様 に内部 構 造 が変 化 していることが明 らか になった (Fig.5-10,5-11)。 現 段 階 で は 代 謝 変 化 に よるの か 、菌 体 構 造 の 変 化 に よる もの な の か判 断 できな いが 、sspAの 欠 損 により細胞 内 で何 らか の変化 が生 じている可能 性 も考 え られ る。 その ため 、五 番 目として 、sspAを 欠 損 させ たときの タンパ ク質 発 現 レベ ル で の差 異 を解 析 す るべ く、二 次 元 電 気泳 動 を用 いて野 生株 とSSPA1の 比 較 解 析 を行 なった 。こ れ まで に得 られ た知 見 か ら、SSPA1で 見 られ た 内部構 造変 化 がタンパ ク質 レベ ルで評 価 で きな い か と考 えて分 画 を行 なった 後 で 比 較 解 析 す る手 法 を試 み た 。この うち 、 SspAを 含 む外 膜 画分 と代 謝 全 般 の特 徴 的 な変 化 や傾 向 を捉 えることを 目標 に 、外 膜 画 分 と水 溶 性 画 分 に注 目して解 析 を行 なった。分 離 条件 に関 して は 、外 膜 タンパ ク質 と水 溶 性 タンパ ク質 を主 に含 む 画 分 に 関 して 、一 次 元 目の泳 動 条 件 や 添 加 す る総 タ ンパ ク量 を検 討 す ることにより、充分 に比 較 解 析 が 可 能 な分 離 を得 ることに成 功 した。 そのデ ー タを元 に野 生株 とSSPA1を 比 較 解 析 した結 果 、Table5-2に 示 され るように糖 質 代謝 や 物 質 輸 送 に関 連 す るタンパ ク質 の発 現 量 が増 加 していることが 明 らか になっ た。しか し、これ らのタンパ ク質 が持 っている機 能 ドメインや 酵 素 活性 などを含 めると、 これ らがSspAの 代 替 的 な役 割 を担 っているとは考 えにくい。そ のため 、sspA遺 伝 子 の 欠 損 により何 らか の細 胞 内 変 化 が生 じたことは見 出され たものの 、SspAの 細 胞 内機能 を特 定す るの に 充分 な情 報 を取 得 することは できなかった。二 次元 電気 泳 動 を用 いた 手 法 の欠 点 として、同手 法 で は検 出され にくい微 少 量 の タンパ ク質 の 存在 が挙 げられ る。そのた め、sspAを 欠 損 させ てもタンパ ク質 レベル で特徴 的な変 化 が起 こらなかった と断 定 す ることは できな い。 最 後 に 、R.sphaeroldesが 塩 ス トレス 条 件 下 で 適 合 溶 質 として 生 合 成 す る トレハ ロ ー スの 蓄 積 量 を測 定 した 。そ の結 果 、塩 ストレス条 件 で蓄 積 量 を比 較 す ると、嫌 気 光 合 成 条 件 下 に比 べ て、好 気 暗 条件 下で は10分 なった(Fig.5-18)。 の1以 下 に減 少 していることが 明 らか に 塩 ストレス強度 が 異 なるため一 概 には 比 較 で きな い が 、酸 素 の 有 無 と塩 耐 性 に 相 関 関 係 が あ るこ とも 予 測 され 、今 後 の 検 討 課 題 として 挙 げ られ る。一 方 、野 生 株 とSSPA1の (Fig.5-18)。 間 の トレ ハ ロー ス 蓄 積 量 に は 大 き な 変 化 は 観 察 され な か っ た そ の た め 、SspAの 有 無 とトレハ ロ − ス の 蓄 積 に は 関 連 性 が 低 い ことが 示 唆 され た 。 以 上 、sspA遺 伝 子 破 壊 株(SSPAI)の 作 製 お よ び 、そ の 表 現 型 に 著 し い 変 化 を観 察 す る こ とに 成 功 した 。ま た 、い くつ か の 方 法 論 に よ りそ の 影 響 は 主 に 好 気 暗 条 件 下 で 観 察 され た 。R.sphaeroldesを 含 め た 光 合 成 細 菌 は 、酸 素 の 有 無 に よ り多 数 の 光 合 成 因 子 を 含 む 内 膜 構 造 が 大 き く変 化 す る こ とが 知 られ て い る(Cohen-Bazire 64 et al., 1957)。 酸 素 が 存 在 す る と 、bacteriochlorophyll(bch) harvesting-II(puc)な ど の 光 合 成 関 連 遺 伝 子 の 発 現 が 大 き く抑 制 さ れ る 事 が 知 ら れ て お り、ま た 、こ れ ら の 光 合 成 因 子 がRegA-RegBと る 事 も 報 告 さ れ て い る(Sganga (Elsen 、carotenoid(crt)、light et al., 2000)、nitrogen et al., 2000)、cytochrome 呼 ば れ るregulatorに et al., 1992)。RegA-RegBはhydrogen fixation (Elsen biosynthesis et al., 2000)、carbon (Swem et al., 2002)と utilization fixation (Vichivanives い った 多 様 な役 割 を果 た す こ と が 知 ら れ て い る 。 一 方 、 酸 素 が 存 在 す る 条 件 で は 、aa3-type oxidaseや 一 部 のNADH-ubiquinone superoxide dismutase (sox)、glutathione れ て い る(Garcia-Horsman 制 御 され て い et al., 1994; dehydrogenase、 peroxidaseの Pappas cytochrome さ ら に はcatalase c (cat) 、 発 現 量 が 増 加 す る こ とが 報 告 さ et al., 2004)。 そ の た め 、sspAの 欠 損 が 、酸 素 に 由 来 す る 細 胞 内 構 造 や 代 謝 系 の 変 化 と合 わ さ っ て 、生 育 変 化 や 菌 体 の 凝 集 、さ ら に は 内 部 構 造 の 変 化 を 引 き 起 こ し た 可 能 性 も 考 え ら れ る 。し か し 、今 回 解 析 し た 方 法 で はSspAの 具 体 的 な 機 能 解 明 に は 至 らな か っ た 。 以 後 の 章 で はSspAの 機 能 を 直 接 的 に 解 析 す る の で は な く、相 互 作 用 し て い る 可 能 性 の あ る タ ン パ ク 質 、関 連 し て い る 遺 伝 子 や タ ン パ ク 質 を 調 べ る こ と に よ りSspAの 内 機 能 を 探 索 す る ことに した 。 65 生 体