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(1)共通必修コース「教育の最新事情」
(1)共通必修コース「教育の最新事情」 「教育の最新事情」では,教職について,子どもの変化,教育政策,学校内 外での連携・協力の4つの分野において,計8講座を開催し,教員としての基 本的な資質の向上を目指す。 (※下記講座の内容及び講座名等は変更する場合があります。) 1 学校を巡る状況変化・教育改革の動向 広島文教女子大学 教授 徳 本 達 夫 激動する時代と社会の中にあって子ども・学校・教育を巡る状況も大きく変化してい る。文部科学省の教育改革・政策の動向もこうした変化に対応しようとするものである。 本講では,教育における不易と流行の観点から幼児期から高校までを視野に入れて,変 化の中での変わらないもの,変えるべきもの,変えてはならないものを精査する視点か ら実態と法律の両面を検討することを通して,教育を支える専門家としての力量向上を ともにめざしたい。子どもへの責任性は教員の時代や社会への応答性でもある。 「3.11」 は,墨塗り教科書や青空教室に象徴される戦後教育に比されるだろう。主たる項目は以 下となる。 教育振興基本計画,教育支出費の対GDP比,安全教育・学校施設の耐震化の状況, 休職教員の現状,子どもや保護者との信頼関係,学力調査と体力調査,改正教育基本法, 教育三法の改訂(学校教育法,教育職員免許法,地方教育行政の組織及び運営に関する 法律) 2 専門職たる教員の役割 広島文教女子大学 教授 徳 本 達 夫 教育は人なり,と言う。教育が基本的には建物・施設・資料等ではなく,子どもと教 員との教育関係の中でこそ成り立つからである。授業研究・教師の同僚性と協働性・学 校のコミュニティ性とケア機能等,日本の義務教育の卓越性は世界的に評価されている。 その卓越性は義務教育に留まらない。この国の教師文化でもある。本講では,教育の卓 越性を担ってきた学校教員として,教育実践を省察する観点を提示することによって, さらなる質的向上をともにめざし,自他を救う教育のあり方を探りたい。 項目は,学校教員の社会的役割,社会的共通資本としての教育,個体保存と種の持続, 役割自己と本来的自己,他者理解と自己理解,地球的視野に立って行動するための資質 能力,変化の時代に生きる社会人に求められる資質能力,教員の職務から必然的に求め られる資質能力等。 3・4 子どもの発達に関する課題 広島文教女子大学 教授 田 頭 穂 積 広島文教女子大学 教授 李 木 明 徳 第3,第4講では子どもの発達にとって今後の課題になるであろう2つのテーマを扱 うこととする。一つは,子どもの学習意欲・動機づけについてであり,もう一つは,特 別支援が必要な子どもについてである。 第3講の学習への動機づけについては,従来, “外発的動機づけか内発的動機づけか” という二分法的な議論が中心であり,発達的研究はそれほど多くない。そこで,学習へ の動機づけに関する最近の理論を概説することにより,自律的な学習者になるための動 機の発達と,教育への応用を考える。 第4講の特別支援教育については,発達障がいがある子どもたちの行動と発達障がい が有する特性との関係及び具体的な支援の方法について概説する。さらに,特別支援教 育の視点を取り入れた学級づくりや授業の進め方について概説する。発達障がいがある 子どもの行動を正しく理解することは学校における支援を考えていくうえで大切であ る。ここでは,学校生活のなかで子どもが示す行動を具体的に取り上げ,教師に求めら れる理解と支援のあり方(学級づくり,授業の進め方)について合理的配慮という視点 から考察していく。 両テーマともに,子どもの個人差をとらえるモデルや指標を提供し,教育現場での応 用に資するものとなることを本講義のねらいとする。 5 学習指導要領改訂の背景ならびに改訂後の現状と課題 広島文教女子大学 教授 杉 山 浩 之 周知の通り,平成 20 年 3 月 28 日に,文部科学省から新しい幼稚園教育要領,小学 校学習指導要領及び中学校学習指導要領等が,翌年 3 月 9 日には,高等学校及び特別支 援学校の学習指導要領等が告示された。 これに基づき,本講座では,学習指導要領改訂に関わって,その背景や改訂の基本方 針,及び今後求められている指導のあり方等を中心に解説し,学習指導要領改訂後の動 向と課題を捉えていくことをねらいとする。 (1)学習指導要領改訂の背景と改訂の基本方針 (2)改訂後の動向と課題~今後求められる指導のあり方~ 6 現代生活の中にいる子どもへの適切な指導 広島文教女子大学 准教授 浴 野 雅 子 多様な価値観や自由なライフスタイルの中での現代教育は,教師が様々な場面で自分 の教育方針や対応の判断を余儀なくされている。今の教育者は知識や技術を教えるのみ ならず,子どもの個性を認めて伸ばす,あるいは様々な問題への個別対応においてもそ の能力を求められている。その一方で、学級の集団育成・運営能力も重要な機能として 要されるなど、個人と集団を常に見ていくことを求められている。 教室には人間と人間が常に関わり変容し成長していく上での強いエネルギーが充満 している。しかし,その子どもたちの心のエネルギーは常にプラスとは限らない。本講 では自発性や自信がなかったり,すぐ荒れてしまったりといった個別の対応が要される 子どもたちについて,臨床心理学の観点からその問題や適応を考えていきたい。子ども の気持ちをどう理解し,どのような言葉を用いればよいのか?これらの問いを考える方 策として精神分析理論を用い,心の根の生成や欲求や感情,知性・理性そして統制する 力について解説する。 「適切な指導」という言葉にはそれに関与する両者の存在があり,作用する側が自分 を知ることと同時に作用される側を知ることも必要である。よって,まず自分とその対 象を知るためにより深い人間理解を進めていきたいと考えている。 7 学校と保護者・地域との連携 広島文教女子大学 教授 菅 井 直 也 学校や社会をめぐる近年の状況を踏まえて,保護者や地域社会との連携をはかるため にはもちろん,児童生徒との対人関係,日常的コミュニケーションを確かなものにする ために不可欠な,連携マネジメントの前提をいくつか提供する。 校内の教職員は,拠って立つ専門分野をはじめ,年齢や生活歴など様々な背景でもの を考え,発言し行動している。校外の人々はさらに多様であり,それらを背後にして児 童生徒は登校してくる。当節では過当気味の情報メディアに圧倒されていることからも 目を離せない。この中で人々の連携を確保するにはどうしたらよいのだろうか。 今回は, 「世代(generation)の歴史」 , 「民主主義の再発見」, 「助け合いの視点」 , 「ケ ースワークの視点」を柱にして,あらためて学校を見直していきたい。 受講者が長年鍛えてきた筋肉を,一度緩めるストレッチをして,元気を取り戻す手が かりを掴むことを期待している。 8 学校の危機をどう防ぐか 広島文教女子大学 教授 今 崎 浩 今,学校は様々な危機にさらされていると言えよう。 児童生徒をめぐって,学校内では遊具による事故,校舎等からの転落事故,授業中の 熱中症等の事故が発生している。また,学校外では交通事故や通学時に児童生徒が危害 を加えられる事件が多発し,大きな社会問題となっている。さらに,いじめ,対教師あ るいは生徒間の暴力行為や施設・設備の毀損・破壊行為等の生徒指導上の問題も依然と して多発している。 教職員をめぐっては,体罰,セクハラ等の不祥事により教職員自らが学校を危機的な 状況に陥れている。 こうした状況を踏まえ,本講座では,過去の事例や裁判所の判例を教材とし,教諭と して危機を発生させないようにするためにはどうしたらよいか,発生後のダメージを最 小限にとどめるためにはどうしたらよいかについて考えていくような講義・演習を行 い,受講者の危機管理意識,危機管理能力を高めていくことをねらいとしている。 (2)選択コース(小学校コース -理科・国語・算数・書写・社会・図画工作) 学習指導要領と小学校教育の充実 本コースでは,学習指導要領改訂に伴い,新学習指導要領の趣旨に沿った理 科,国語科, 算数科,書写,社会科,図画工作科の指導法について解説し,実 践演習を行う。これらの講座を通して,小学校教員としての資質の向上を目指 すことをねらいとする。 (※下記講座の内容及び講座名等は変更する場合があります。) 1 科学的な見方や考え方を養う理科授業のあり方 広島文教女子大学 教授 高 橋 泰 道 平成 24 年度全国学力・学習状況調査において,理科を追加して実施した結果,小 学校・中学校ともに,「観察・実験の結果などを整理・分析した上で,解釈・考察し, 説明すること」などに課題が見られ,「観察・実験」を通じた理科の学習指導の改善・ 充実が求められている。 一方,科学技術振興機構(JST)が行った「平成 20 年度小学校理科教育実態調査」 から,「小学校教員は,理科に対して肯定的であるが,理科を指導するものとして意 識すると,理科を指導するための知識や技能の不足から,苦手意識が生れている」と いうことが明らかになっている。そのため,小学校理科においても,手回し発電機や コンデンサなどの新教材が導入され,さらに理科指導の苦手な小学校教員が増えるこ とが懸念される。 そこで,本講座では,講義(科学的な見方や考え方を養う小学校理科授業の在り方, 指導改善のポイント)と演習(新教材等を使った実験等)を通して,少しでも理科指 導に対する苦手意識を無くし,充実した指導ができるようになることをねらいとする。 2 「伝統的な言語文化」実践研究の現状と課題 ―小学校の場合― 広島文教女子大学 教授 岡 利 道 標記テーマに関わる本講座担当者の最近の研究 1)によれば、ある研究誌 2)を調査対象 とした時、私たちが指標とすることができる事例がある程度は揃っているという〈現状〉 は確認された。 局所的な調査研究であったにせよ、あえて〈課題〉を指摘するならば、地域に根ざし た教材開発が進んでいない面があることである。その解決を図るべく、地域の文化財的 な存在の一つである「寺社縁起」3)というものにスポットを当て、教材化の可能性を探 ることを提案する。諸事例を参照しつつ、皆さんと教材開発の第一歩が踏み出せたらと 願っている。 注 1)岡 利道.2015.「伝統的な言語文化」の授業実践における独自性とは―小学校・中学 校・高等学校の国語科の中で―.文教國文学.№59.pp.(1)-(9). 2)日本国語教育学会編「月刊国語教育研究」誌 3)小学校の場合、拡大的に捉え、それにまつわる歴史資料や紹介パンフレット(観光用 など)他を含めてよいと考える。 3 数学的な考え方を育む言語活動の進め方 広島文教女子大学 教授 今 崎 浩 現行の学習指導要領では,思考力・判断力・表現力等の能力を育むために「言語活 動の充実」が求められ,算数科の授業においても,これまで以上に自分の考えを表現 したり,説明したりする活動などが取り入れられるようになってきている。 一方で,学習指導要領全面実施から 4 年以上が過ぎ,「言語活動の充実」に関する 課題も明らかになりつつある。このことについて,笠井(2013)は「国語科で学習する ことが算数で活用されていさえすれば,算数科における数学的な考え方が身に付いて いるといった誤解がある」と述べている。 ....... そこで,本講座は,算数科における言語活動とは何かを再確認するとともに,言語 活動をよりよく進めていくためには,どのように改善していくとよいかについて講師, 受講者がともに考えていくような内容にしていきたいと考えている。 具体的には「すこしの理論とたくさんの事例」を基本とし,実際の授業を教材とし て,小集団での演習・協議を中心に講座を進めていく。 4 国語科書写の学習指導と実技 広島文教女子大学 准教授 森 哲 之 本講座では,小学校学習指導要領における国語科書写に関する指導法の解説と毛筆 書写実技による演習を通して,書写の指導技術や書写技能を高めることをねらいとす る。毛筆を使用する書写の指導では,硬筆による書写の能力の基礎を養うように指導 することになっている。そこで,毛筆書写における筆圧や用筆などに着目し,毛筆学 習を硬筆と関連づける効果的な指導法を検討する。 また,児童が文字を正しく整えて書き,書写を日常生活や学習活動に生かしていく ためには,児童の実態に即した授業展開や指導の工夫が必要となる。新たな知見を取 り上げながら,現場における授業実践上の課題に応えることによって,書写の学習指 導の充実を図る。加えて,発展的に書道文化についても言及する。 準備物として,毛筆書写用具(児童が準備する範囲)と,関心ある学年の教科書等 を一つ持参いただきたい。 5 社会的な見方や考え方を養う授業 広島文教女子大学 教授 村 上 典 章 平成 20 年度の学習指導要領の改訂における小学校社会科改善の基本方針は次の三 点である。まず,児童が社会的事象に関心をもって進んでかかわり,児童の発達の段 階に応じて,それらの意味や働きを多面的・多角的に考え,公正に判断できるように するとともに,児童生徒一人一人に社会的な見方や考え方が次第に養われるようにす ることを一層重視する。次に,児童が社会的事象に関する基礎的・基本的な知識,概 念や技能を確実に習得し,それらを活用する力や課題を探究する力を身に付けていく ために,言語活動を重視する。最後に,我が国の国土や歴史に対する愛情をはぐくみ, 日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きるとともに,持続可能な社会の 実現を目指すなど,公共的な事柄に自ら参画していく資質や能力を育成することを重 視する。 そこで,本講座では,講義と演習を通して,小学校社会科に追加された「社会的な 見方や考え方」を養う授業づくりについて考える場を提供したい。 6 再考「立体に表す」~身辺材を活用した題材開発~ 広島文教女子大学 准教授 佐 伯 育 郎 本講座では,新学習指導要領・図画工作科の A 表現(2)「絵や立体,工作」の中 から「立体に表す」内容を取り上げ,紙パック,プリンカップ,空き箱などの身辺材 を主材料に用いた演習に取り組む。身辺材を活用した造形活動を通して,A 表現(2) 「工作に表す」内容とも比較しつつ,「立体に表す」内容について再考することが主 なねらいである。造形活動を通して,新学習指導要領の内容について体験的に考察す る。 紙パック,プリンカップ,空き箱などの身辺材は,図画工作科における造形活動で 使われることが多い補助的に使用する材料の特性,加工に必要な用具の特性について も考察する。 「小学校学習指導要領解説・図画工作編」,洗浄済み紙パック(500ml 以上,1 個), プリンカップ,空き箱などの身辺材,作品を入れる袋を持参して頂きたい。ケーキを モチーフとした立体を制作する予定であるので,参考になるような画像の収集,作品 の構想をして頂きたい。身辺材を活用した造形活動に興味・関心を持って頂き,図画 工作科の授業で活かして頂ければと考えている。 (3)選択コース(中学校・高等学校 国語コース) 国語科内容学の充実に向けて 中学校・高等学校国語科コースでは,国語科で取り扱う内容について,より 深い理解と認識を得るために,日本語の領域から「言語文化を通して豊かな言 語生活を考える」,日本文学の領域から「和歌の解釈力を高める」,漢文学の 領域から「漢文の理解について及び日本人と漢詩について」と題する講義を展 開する。また,深い理解に裏打ちされた内容を授業に反映させてゆく方法につ いて,国語科教育学の領域から、「伝統的な言語文化」実践研究の現状と課題 ―中学校・高等学校の場合―、と題してそれぞれ講習を行う。 (※下記講座の内容及び講座名等は変更する場合があります。) 1 言語文化を通して豊かな言語生活を考える 広島文教女子大学 教 授 橋 村 勝 明 広島文教女子大学 准教授 黒 木 晶 子 中学校・高等学校国語科コースでは,国語科で取り扱う内容について,より深い理 解と知識を得るために,日本語学の領域から「言語文化を通して豊かな言語生活を考 える」と題して講習を行う。 従来言語事項として設定されていた内容が,この度の改訂により,「言語事項」か ら「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」と改められた。その「言語文化」 と「国語の特質」とに対する理解を深めることによって,私たちが日常使用している ことばに改めて目を向け,「豊かな言語生活」とは何かを考える切っ掛けとしたい。 その視点として,言語事項に相当すると考えられる,日本語学における文字・表記, 音声・音韻,文法の各領域を取り上げ,講義を展開して行く。 2 和歌の解釈力を高める 広島文教女子大学 教授 森 下 要 治 本講座の国文学分野については,和歌を題材として,その解釈の方法を再確認し, 教師自らの読解力・解釈力をより一層高めるための機会を提供することを主眼とした い。 具体的には,実際に中学校・高等学校国語科教科書に教材として取り上げられてい る和歌を対象として,いわゆる古注釈をはじめとする各種注釈書類を参看しながら当 該歌解釈のための要点を探り当て,それについての確かな理解を獲得するための方法 を,受講者とともに考察したい。このようにして教師自らが堅実な解釈力を養うこと によって,読むことについての豊かな学習指導を展開することが可能になると考えら れる。 実際の講習は,およそ次のような内容で進める(各項に示した時間数は目安。受講 者数等により変更する場合がある)。 ・ さまざまな注釈書類を用いた和歌の解釈について(講義,2時間) ・ 和歌解釈の実際(演習,2時間) ・ 演習結果の発表・検討(演習,2時間) 3 漢文の理解について及び日本人と漢詩について 広島文教女子大学 教授 宮 崎 洋 一 広島文教女子大学 教授 豊 後 宏 記 「漢文の理解について」担当者:宮 崎 洋 一 日本で一般に漢文と呼ばれる作品は,前近代の中国で書かれた散文や韻文の総称で す。その内容は,哲学・歴史・文学など多岐にわたり,さらに,その文体を模倣して 日本や朝鮮半島の人々が書いたものも含まれています。 漢文の原語である当時の中国語を学ぶ機会の少なかった前近代の日本人は,漢文を 日本語の音と語順に従って読む「書き下し」と呼ばれる方法をあみだし,中国の書籍 から多くの考え方を学んで,自国の文化の発展に役立ててきました。そして,この「書 き下し」によって,本来,外国の作品であった漢文は,あたかも日本の作品であるか のようにして定着するようになり,日本の文学や言葉の一部として,大きな位置を占 めています。 その一方で,日本語の音と語順に従って読む「書き下し」は,本来の中国語の音や 語順を捨象しながら読むために,特に言葉の音にも大きな重点がある韻文に対する理 解には,多くの問題を残すことになりました。そして,何よりも,日本人の好みや地 理的な環境など,様々な要因によって,日本人が多く読む漢文が,前近代の中国でか かれた作品の中の一部の時代や領域に偏っているという特徴を生み出しています。漢 文は,まさしく日本人の中国への理解を示す重要な指標の一つにもなっています。 この講義では,中学校や高等学校で扱う漢文の持つ特徴と限界を通して,前近代の 日本人の中国への理解の一端を探ると共に,現代の日本の文学や言葉における,漢文 とその基礎となる漢字の重要性について考えたいと思います。 「日本人と漢詩について」担当者:豊 後 宏 記 漢詩は,中国文学のうちでも,日本文学に最も大きな影響を与えたもののひとつで ある。日本の代表的な韻文を「詩歌(漢詩と和歌)」というように,近代以前の日本 では「詩」とは即ち漢詩のことを指した。しかも,ただ受動的に鑑賞するだけでなく, 自ら漢詩を作ることさえも,日本の知識人にとっては重要な教養であった。日本文学 において漢詩は,上代から近代に至るまで,主要な文学ジャンルのひとつであったの である。 ただし,日本語と中国語は全く異なる体系の言語であり,音韻体系も大きく違ってい る。また,日本の多くの漢詩人たちには,実際の中国語の音声を聞いたり話したりす る機会は滅多になかった。それにも関わらず,彼らは中国語の音声規則に適った漢詩 作品を数多く残してきた。なぜそうしたことが可能だったのか,明治時代の作詩作法 書を参照しつつ,律詩・絶句という最も一般的な詩形を中心に講義していく。 4 「伝統的な言語文化」実践研究の現状と課題 ―中学校・高等学校の場合― 広島文教女子大学 教授 岡 利 道 標記テーマに関わる本講座担当者の最近の研究 1)によれば、ある研究誌 2)を調査対象 とした時、私たちが指標とすることができる事例がある程度は揃っているという〈現状〉 は確認された。 局所的な調査研究であったにせよ、あえて〈課題〉を指摘するならば、地域に根ざし た教材開発が進んでいない面があることである。その解決を図るべく、地域の文化財的 な存在の一つである「寺社縁起」というものにスポットを当て、教材化の可能性を探る ことを提案する。諸事例を参照しつつ、皆さんと教材開発の第一歩が踏み出せたらと願 っている。 注 1)岡 利道.2015.「伝統的な言語文化」の授業実践における独自性とは―小学校・中学 校・高等学校の国語科の中で―.文教國文学.№59.pp.(1)-(9). 2)日本国語教育学会編「月刊国語教育研究」誌 (4)選択コース(中学校・高等学校 英語コース) コミュニケーション能力の育成を目指す 中・高等学校英語科において,英語による実践的コミュニケーション能力を どう育成するかを考えていく。1日目では,「英語を使用した授業へ向けての 動機付け方法」においては,様々な学習者のレベルに応用可能かつ学習者の動 機を向上させるような教授法やアクティビィティを取り上げ,受講者の方々に 実際に体験していただくこととする。2日目では,英語の歴史的言語事実を提 供し,どのように指導したら文法等の指導につながるかについて「英語指導に 役立つ英語史」で取り上げる。3日目では,小学校英語と中・高の連携を目指 した「小学校英語から中学へ」を扱う。また,授業の中で音声や文法・文型を どのように指導したら,より実践的なコミュニケ-ションの育成につながるか を「授業の Dos and Don’ts」と題して取り上げる。 (※下記講座の内容及び講座名等は変更する場合があります。) 1 英語を使用した授業へ向けて Topics for the Teacher License Renewal Seminar 〔 本学 BECC 講師が担当します〕 1. Student Motivation and the Importance of Reflection “How can I make my lesson more enjoyable for my students?” This is a common question posed by teachers of all contents. In this portion participants will explore the principles of motivation and how to apply them in their classrooms. Participants will also engage in setting goals and reflection techniques throughout the seminar on topics of their own teaching experiences. 2.Classroom environment This portion will discuss both the physical set up of a classroom and the importance of creating a positive atmosphere. Participants will reflect upon their own classrooms and brainstorm ways to make their safer learning spaces. 3.Teacher Language & Student Language (Process Language) Participants will learn and practice some strategies for speaking English in their classrooms. The importance of establishing routines with predictable expressions will also be addressed. 4.Diversifying Instruction for Different Learning Needs In this portion learning styles, multiple intelligences and active learning will be discussed. Participants will reflect and brainstorm ways to differentiate their classroom activities to meet their students’ diverse needs. 2 英語指導に役立つ英語史 広島文教女子大学 准教授 上 利 学 本授業の目的は,生徒が英語を学習する際に「なぜだろう」と思うような言語現象 を英語史の知見を活かして解説し,受講者に語学的な研究の価値を理解してもらった 上で,授業で活かせるようにすることである。 例えば,授業の中で,学生たちに基本的な語彙である near と next が比較級,最上 級であったことを伝えると,驚きや興味・関心を示すことが多い。また,英語が簡単 に修得できる言語ではない要因には,doubt や receipt のような綴りと発音の不一致, go-went-gone のような動詞の活用の不規則性,日本語にはない冠詞の存在などが 挙げられよう。しかし,こうした言語現象を英語史の観点から説明すると,学習者は, 歴史のプロセスの中で生じた変化や規則性を見出すことにより,英語に対する理解や 納得を少なからず得ているようである。授業では,現代英語の観点からは説明できな い言語現象を解説し,英語を教授する際に活用できる情報を提供したい。 3 小学校英語から中学へ 広島文教女子大学 講師 岩 下 康 子 時代の変化に迅速に対応し、国際的に活躍する人材を育成するため、文部科学省で は、小学校英語の教科化や高校での科目新設、日本史必修化などを検討事項として挙 げている。2016 年には答申される予定となっており、これに向けての現場での対応 が必須となる。内容に関しては、小学校では中学年から外国語活動を開始し、高学年 で学習の系統性を持たせる観点から教科として中学校へつなげ、中学校では身近な話 題を理解し、簡単な情報交換、表現ができる能力を養うこととする。さらに、高校で は発表、討論、交渉など言語活動を高度化する、としている。大学入試の在り方につ いても議論が始まり、「4技能から成るコミュニケーション能力の適切な評価」をす る方法が模索されている。英語教育を小学校の段階から系統立てて見ることが必要と なる。英語教育を通した人材育成についても言及し、グローバル人材の育成に向けて 必要な教師の役割と指導のヒントを共に話し合い、外国語活動の柱の一つである異文 化理解についても取り上げ,その指導のあり方を討議してみたい。 4 授業の Dos and Don'ts 広島文教女子大学 教授 笹 原 豊 造 実践的コミュニケーション能力の育成に焦点が当てられ、中・高等学校の英語授業 においても「文法」を前面に打ち出した授業科目が姿を消している。しかし、文法指 導が必要でなくなった訳ではない。文法や文型の指導では,中学校や高等学校の指導 において,どう指導したらよいか話題となる項目を中心に取り上げる。 文法・文型の Dos and Don'ts (1) 文型・冠詞・名詞など (2) 時制・助動詞など (3) 態・不定詞など (4) その他