...

事例調査資料 - 経済産業省 九州経済産業局

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

事例調査資料 - 経済産業省 九州経済産業局
事例調査資料
88
4-2
地域ブランド事例調査
ブランドに関する様々な議論や定義づけは、多くの文献においてなされており、今日、
地域振興施策を企画・立案するにあたっては、ブランド戦略は、その大きな柱となってい
る。
ここでは、それらの学術的な議論の中で多く見られるや具体的なマーケティング戦略と
してのブランディング手法などに関する検討や考察ではなく、九州ブランドのブランド戦
略展開可能性に関する議論に資する情報を収集することを目的として、自治体や地域の商
工・業界団体等が地域を代表して行っているブランド事例等の収集を行った。
4-2-1 調査対象の選定
九州ブランドにおいて、何を先行事例として調査対象の選定を下記のように考えた。
下記の表は、ブランド論においては議論の余地のあるものであるが、九州をブランディ
ングする視点を提供する参考資料として提示された。
図表 21
ブランディングの分類
ブランディングの分類
分類
企業ブランド
地域ブランド
都市ブランド
対象
目的
販促
対象
製品・サービスなど
標的
市場・顧客
特徴的方法
プロモーション(広告・宣伝)
目的
販促
対象
(地域の)産品・サービスなど
標的
市場・顧客
特徴的方法
統一ブランド ブランド認定
目的
地域へのロイヤリティ向上 地域の認知度向上 販促
交流
対象
地域の文化、歴史、特徴、産品
標的
地域住民、地域外の市場・顧客
特徴的方法
地域のブランドコンセプト確立
統一ブランド(旗印)
ブランドコミュニケーション
まず、ブランディングは、企業等の商品に対して行われるブランドが一般的に知られて
いる。目的は販促であり、対象は製品あるいはサービスなどの商品である。対象は市場あ
89
るいは顧客であり、ブランド戦略は、マーケティング戦略の一部として、主に、広告・宣
伝などの手法がとられる。
企業の商品に対するブランド戦略は、九州ブランドにおいても参考となるが、個別の商
品に対するブランド戦略と九州ブランドのブランド戦略では、目的や対象のとらえかたが
違うものと考えられる。
次に、一定の地域を対象として、その地域の製品やサービスなどに対する地域ブランド
である。地域団体商標制度や自治体等による地域ブランドなどが事例となり得る。
地域ブランドの目的は、基本的には販促であり、企業ブランドと同様であるが、必ずし
も製造や販売を代表する団体がブランディングを行うのではない。また、製品やサービス
など、複数の異なる商品などを対象とする場合がある。
地域ブランドにおいては、対象物に応じて、ブランドを定義する必要が有り、統一ブラ
ンドやそれに伴う認定制度や認定機関といった仕組みを作る場合もある。
地域ブランドは、地域を九州ととらえれば九州ブランドのブランド戦略の雛形となり得
る。
次に、都市ブランド等と称される地域自体をブランディングする取組がある。
(必ずしも、
都市だけが対象ではなく、地域ブランドと称する場合もある。産品に対する地域ブランド
との混同を避けるために、ここでは、都市ブランドとする)
都市ブランドは、地域の産品やサービスの販促の側面だけではなく、地域住民のロイヤ
リティ向上など、自らの町の良さを再確認するような取組でもある。
地域を定義づけるブランドコンセプトの確立やブランドを象徴するロゴ・マーク等、ブ
ランドコンセプトを知らしめるブランドコミュニケーションにおいては、地域の住民にブ
ランドコンセプトを浸透させる取組があることなどが特徴である。
これも、都市を九州とすれば九州ブランドのブランド戦略の雛形となり得る。
以下に、このような分類に基づき、九州ブランドの検討において関連しそうな事例を収
集した。
90
4-2-2
九州における先進事例
事例1:
関あじ・関さば(大分県)
出願人:
大分県漁業組合
地域団体登録商標取得:
平成 18 年
既に、全国区の知名度を確立している関
あじ・関さばは、ブランディングによって
知名度を得た代表的な事例として知られ
ている。
激しい潮の流れと豊富なプランクトン、
海底の地形が相まって、特においしい魚が
獲れる地域として知られていた大分県・佐賀関のアジ、サバは、関あじ・関さばとして珍
重されて、非常に高値で取引されている。
高値で取引される関あじ・関さばは、
「にせもの」の排除と品質の維持が大きな課題であ
る。
「にせもの」の排除のために、現在は、全ての製品に上記のようなシリアルナンバー付
のタグを付している。
品質管理については、一本釣りから活け〆、出荷までの過程を厳しく管理している。
関あじ・関さばは、優れたものにブランドを付与することで、商品の差別化に成功した
事例と見ることができる。マーケティングの観点からは、漁業者の所得向上を目指す漁協
の取組とグルメブームのタイミングがあったことが関あじ・関さばの成功をもたらしたと
見られるが、関という地域名を冠することで、地域で品質を認められたものにブランドを
与えたことが差別化要因として非常に大きいと考えられる。
潜在している優れたものに、名前を付けて世に出すということは、地域のブランディン
グにおいて重要な視点と考えられる。
また、関あじ・関さばブランドの成功は、関の鯛や鰤などのブランディングにも波及効
果がある。
91
<<参考>>
地域団体商標制度の概要
地域ブランドを適切に保護することにより、事業者の信用の維持を図り、産業競争力の
強化と地域経済の活性化を支援することを目的として、地域の名称及び商品(役務)の名
称等からなる商標について、一定の範囲で周知となった場合に、事業協同組合等の団体に
よる地域団体商標の登録を認める制度である。
①
地域団体商標登録方法
「地域名+商品(役務)名」からなる商標であって以下の要件に該当するものを「地域
団体商標」として登録することができる。
(1)出願できる者(法人格を有する組合であって構成員資格者の加入の自由があること)
例:事業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、酒造組合
出願できない者:株式会社、地方自治体、商工会議所、公益法人等
(2)地域名と商品(役務)の関係が明確になっていること(商品の産地、役務の提供地等)
例:商標「東京みかん」→商品「東京都で生産されたみかん」
(3)出願人が当該商標を使用したことにより出願人の商標として一定程度(例えば隣接都道
府県に及ぶ程度)の需要者に認識されていること
(4)商標全体として商品(役務)の普通名称でないこと
普通名称と考えられる例:「さつまいも」「伊予柑」「伊勢海老」
(出典:特許庁ホームページ
2013 年 1 月 14 日現在
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/t_dantai_syouhyou.htm)
②
登録実績
登録件数(合計):542 件(平成 25 年 2 月 12 日現在)
図表 22
北海道
都道府県別登録内訳一覧表
(平成 25 年 2 月 12 日現在)
青森
岩手
宮城
秋田
山形
福島
茨城
栃木
群馬
21
5
5
5
7
9
4
2
5
9
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
長野
山梨
静岡
愛知
岐阜
5
9
16
10
11
6
4
20
14
28
三重
富山
石川
福井
滋賀
京都
大阪
兵庫
奈良
和歌山
13
9
27
16
9
61
9
32
11
12
鳥取
島根
岡山
広島
山口
香川
徳島
高知
愛媛
福岡
5
6
5
13
6
3
7
5
11
17
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
沖縄
外国
7
6
10
11
6
14
15
3
92
*複数都道府県にまたがるものはそれぞれカウントする。
(栃木、茨城:本場結城紬、東京、
埼玉:江戸木目込人形)
図表 23
産品別登録内訳一覧表(平成 24 年 11 月現在)
農水産一次産品
加工食品
菓子
麺類
酒類
工業製品
温泉
その他
195
53
9
9
12
190
41
10
特許庁ホームページ:http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/t_dantai_syouhyou.htm
③
九州管内の地域団体商標
図表 24
九州管内の地域団体商標(平成 25 年 2 月 12 日現在)
食品と工芸品がほとんどであり、観光資源は温泉地が5件登録されているのみである。
県
分類
登録商標
管理団体
福岡
工芸品 博多人形
博多人形商工業協同組合
福岡
工芸品 小石原焼
小石原焼陶器協同組合
福岡
工芸品 博多織
博多織工業組合
福岡
工芸品 上野焼
上野焼協同組合
福岡
工芸品 八女提灯
八女提灯協同組合
福岡
工芸品 八女福島仏壇
八女福島仏壇仏具協同組合
福岡
工芸品 久留米かすり
福岡
工芸品 久留米絣
佐賀
工芸品 唐津焼
唐津焼協同組合
熊本
工芸品 くまもと畳表
八代地域農業協同組合
大分
工芸品 小鹿田焼
小鹿田焼協同組合
鹿児島
工芸品 本場奄美大島紬
本場奄美大島紬協同組合
鹿児島
工芸品 薩摩焼
鹿児島県陶業協同組合
鹿児島
工芸品 本場大島紬
本場大島紬織物協同組合
鹿児島
工芸品 川辺仏壇
鹿児島県川辺仏壇協同組合
鹿児島
工芸品 川辺仏壇
鹿児島県川辺仏壇協同組合
福岡
食品
合馬たけのこ
北九東部農業協同組合
福岡
食品
八女茶
福岡
食品
福岡の八女茶
久留米絣協同組合
久留米絣縞卸商協同組合
久留米絣協同組合
久留米絣縞卸商協同組合
全国農業協同組合連合会
福岡県茶商工業協同組合
全国農業協同組合連合会
93
福岡県茶商工業協同組合
福岡
食品
博多なす
全国農業協同組合連合会
福岡
食品
博多焼酎
福岡県酒造組合
福岡
食品
博多蕾菜
全国農業協同組合連合会
福岡
食品
はかた地どり
全国農業協同組合連合会
福岡
食品
福岡のり
福岡有明海漁業協同組合連合会
佐賀
食品
神埼そうめん
神埼そうめん協同組合
佐賀
食品
佐賀のり
佐賀県有明海漁業協同組合連合会
佐賀
食品
伊万里梨
伊万里市農業協同組合
佐賀
食品
佐賀産和牛
佐賀県経済農業協同組合連合会
佐賀
食品
小城羊羹
小城羊羹協同組合
佐賀
食品
うれしの茶
長崎
食品
長崎カステラ
長崎県菓子工業組合
長崎
食品
五島うどん
五島手延うどん協同組合
長崎
食品
五島手延うどん
五島手延うどん協同組合
長崎
食品
九十九島かき
佐世保市相浦漁業協同組合
長崎
食品
小長井牡蠣
小長井町漁業協同組合
長崎
食品
五島牛
ごとう農業協同組合
熊本
食品
球磨焼酎
球磨焼酎酒造組合
熊本
食品
阿蘇たかな漬
阿蘇たかな漬協同組合
熊本
食品
熊本名産からし蓮根
熊本県辛子蓮根協同組合
熊本
食品
天草黒牛
天草畜産農業協同組合
大分
食品
関あじ
大分県漁業協同組合
大分
食品
関さば
大分県漁業協同組合
大分
食品
大分麦焼酎
大分県酒造協同組合
大分
食品
大分むぎ焼酎
大分県酒造協同組合
大分
食品
豊後別府湾ちりめん
大分県漁業協同組合
大分
食品
豊後牛
全国農業協同組合連合会
大分
食品
日田梨
全国農業協同組合連合会
大分
食品
豊後きのこカレー
大分県椎茸農業協同組合
大分
食品
岬ガザミ
大分県漁業協同組合
大分
食品
玖珠米
玖珠九重農業協同組合
宮崎
食品
宮崎牛
宮崎県経済農業協同組合連合会
宮崎
食品
宮崎ハーブ牛
宮崎県乳用牛肥育事業農業協同組合
西九州茶農業協同組合連合会
佐賀県茶商工業協同組合
94
宮崎
食品
宮崎の本格焼酎
宮崎県酒造組合
宮崎
食品
北浦灘アジ
北浦漁業協同組合
宮崎
食品
みやざき地頭鶏
みやざき地頭鶏事業協同組合
宮崎
食品
都城和牛
都城農業協同組合
鹿児島
食品
かごしま知覧茶
南さつま農業協同組合
鹿児島
食品
知覧茶
南さつま農業協同組合
鹿児島
食品
かけろまきび酢
あまみ農業協同組合
鹿児島
食品
鹿児島黒牛
鹿児島県経済農業協同組合連合会
鹿児島
食品
奄美黒糖焼酎
奄美大島酒造協同組合
鹿児島
食品
桜島小みかん
グリーン鹿児島農業協同組合
鹿児島
食品
枕崎鰹節
枕崎水産加工業協同組合
鹿児島
食品
赤鶏さつま
赤鶏農業協同組合
福岡
観光
原鶴温泉
原鶴温泉旅館協同組合
熊本
観光
黒川温泉
黒川温泉観光旅館協同組合
熊本
観光
黒川温泉
黒川温泉観光旅館協同組合
熊本
観光
菊池温泉
菊池温泉観光旅館協同組合
熊本
観光
杖立温泉
杖立温泉観光旅館協同組合
熊本
その他 小国杉
鹿児島
その他 知覧紅
小国町森林組合
阿蘇森林組合
南さつま農業協同組合
95
事例2:
おんせん県(大分県)
「日本一のおんせん県おおいた
味力(みりょく)も満載」
「おんせん県」が、商標登録出願されたことが話題となった。当初、
「おんせん県」は温
泉だけをプロモートする目的で出願されたものではなく、
「大分県ツーリズム戦略」の中で
決められた上記のキャッチフレーズの一部であった。仮に第三者によって「おんせん県」
が商標登録されれば、このキャッチフレーズを活用する上で、第三者から使用の制限を受
けることが懸念されたため、それを避けるために出願されたものである。
日本一の湧出量と源泉数を誇る大分県にとっては、日本一の「おんせん県」を称するこ
とに違和感はなく、温泉がない大分県内の 2 市にも賛同を得ている。
現在は、
「おんせん県」ロゴの作成や次年度に向けた予算要求事業の検討を進めていると
ころであり、今後、ロゴ等を県の観光や県産品のPRなどに積極的に活用していきたいと
考えている。
「おんせん県」は話題性のあるネーミングであったが、それ自体はブランド戦略ではな
く、大分県の観光戦略のキャッチフレーズの一節を自衛目的で商標登録したものであった。
大分県の担当者のヒアリングにおいては、当初、大分県の真意が伝わらずに報道された
ことがあったが、日本一の湧出量・源泉数でありながら、東日本では知名度の比較的低い
大分県の温泉が、全国的に再認識される契機にもなったとのことであった。
また、大分県に限らず九州各県は温泉資源が豊富であることから、九州一体となって取
り組めるブランド資源となるのではないかと考えられる。
96
事例3:
かごしまブランド産地認証制度
「うんめど!よかんど!かごしまブランド」
鹿児島県では、市場から信頼される産地づくりを目指し,品質のよいものを,量をま
とめて,安定的に出荷できる産地づくりを進め,県内産地のモデルとなる 16 品目 25
産地(平成 24 年 5 月末現在)を「かごしまブランド産地」として指定している。
これらの「かごしまブランド産地」では,
「かごしまの農林水産物認証(K-GAP※)」
を取得するとともに,品質基準に基づいたブランド産品の出荷を行っている。
「かごしまブランド」とは、これらの産地で生産され、一定基準以上の品質を持つ農
畜産物のことを言い、
「かごしまブランドマーク」を貼付し,出荷している。
(鹿児島ブランド確立運動推進体制)
ブランドの認定基準策定、ブランド産地指定申請に基づく審査は、鹿児島県園芸振興
協議会などの関係作目別協議会が行い、鹿児島県内各地域に設置したかごしまブランド
97
地域推進本部(7 箇所)が産地づくり作りを行う。
※
鹿児島の農林水産物に対する認証制度、生産者の安心・安全な農林水産物を生産する
取組を消費者に正確に伝え,鹿児島県産農林水産物に対する消費者の安心と信頼を確保す
るため,安心と安全に関する一定の基準に基づき審査・認証機関が認証する鹿児島県独自
の認証制度である。
鹿児島県ホームページより
http://www.pref.kagoshima.jp/kurashi-kankyo/syoku/anzen/ninsyo/index.html)
http://www.pref.kagoshima.jp/ag04/kurashi-kankyo/syoku/anzen/ninsyo/shoukai/gaiyou.html
地域のブランド戦略として、複数の産品、メーカーなどを対象とするために、ブランド
維持のために一定の基準等を設け、認証する制度を制定した事例である。
このような認定制度における要点は、認定基準の設定と審査及びブランディング効果で
ある。
認定基準はブランドを維持・管理する基準であり、認定基準及び審査が不適切であれば
ブランド自体を毀損し、ブランドを付けても効果なければブランド認定を受ける理由がな
い。
かごしまブランドでは、関係作物協議会毎に設定する品質基準などを活用して基準を設
けて運営している。
ブランディングの効果としては、消費者認知度の向上が認められ、卸売市場などに対し
ては十分な認知度が得られており、関係する産地の関係団体はかごしまブランド取得に取
り組んでいるとのことで、一定の効果が認められていると見られる。
また、かごしまブランドの場合は、それらの品質の基準に加えて産地の販売額(系統共
販額)を基準に加えている。安定供給もブランディング要素となっている。
98
事例4:
久留米市都市ブランド戦略(久留米市)
目標
①知名度の向上
②都市魅力の向上
③誇りや愛着の醸成
久留米の5つの顔(ブランディング対象)
①「四季の自然が満喫できるまち 久留米」(水と緑と花)
②「食通も大満足のグルメのまち 久留米」(食)
③「歴史が息づくまち 久留米」(文化芸術)
④「匠の技が光るまち 久留米」(ものづくり)
99
⑤「安心して暮らせるまち 久留米」(健康・医療)
(久留米都市ブランド戦略
平成 23 年 2 月より抜粋)
地域自体をブランディングする「都市ブランド」または「地域ブランド」として、地域
の特性に対する再定義とそのプロモーションなどを通じて、地域産品やサービス等の販売
促進だけではなく、地域住民のロイヤリティの向上、ひいては、地域住民の定着や転入の
増加、外部との交流促進などを図る取組が見られる。
久留米市では、平成 20 年頃から都市ブランドの検討を始め、九州新幹線開業などに向け
たシティプロモーション活動と合わせた取組を行っている。
当初、久留米市の知名度の低さ、地域住民の地域への帰属意識の希薄化、人口の減少や
資本の流出による中核都市の求心力低下などの危機感から、市民が地域に誇りや愛着を持
つことができるような取組の必要性を感じて「久留米都市ブランド戦略」を策定した。
このように、新幹線開業をにらんだシティプロモーション活動が中心であるが、「久留米
都市ブランド戦略」の策定を通じて、自らのブランディング資源を 5 つの顔に再定義した
ことは、市庁舎内においては、市の事業に対するコンセプトの基礎として浸透し、住民に
おいては愛着度の向上が見られる結果となっている。
策定における課題としては、町のイメージを石橋美術館に代表される文化芸術都市とと
らえる見方とラーメン、
焼き鳥などの B 級グルメによる食の町ととらえる見方などがあり、
結果的に 5 つの顔としてまとめることとなった。
100
事例5:
くまもとシティブランド(熊本市)
くまもとシティブランド公式サイトより
http://wakuwaku-kumamoto.com/
熊本市が作成した「熊本シティブランド戦略プラン」に見られる、熊本市のシティブラ
ンドの概要を下記に示す。
1
現状把握
・認知度及び認知特性(魅力)、都市イメージ調査
「本市の都市イメージは、現在のところ、全国的に見て認知、浸透しているとは言え
ませんが、今後、戦略的に都市イメージの向上を図る上で、発想を転換すれば、既にイメ
ージが確立した都市に比べ、新鮮な驚きや好感度の高いイメージを与えやすいとも言えま
す」
2
目的とターゲット
①目的
九州新幹線鹿児島ルート全線開業に向け、本市が今後目指す姿を創り出し、アピールす
る。
②ターゲット
ⅰ)熊本市民・・・地元住民が積極的に本市の良さをアピールできるように動機づける。
ⅱ)関西以西の新幹線沿線各都市
ⅲ)鹿児島市、福岡市をはじめとする九州各都市
ⅳ)阿蘇くまもと空港から直行便が就航している各都市
ⅴ)韓国・中国など、熊本市に近く、経済成長が著しい東アジアの国々
3
確立すべきブランドイメージ
議会決定された、「熊本市第6次総合計画」(平成 21 年度開始)に基づいて決定。
4
ブランドの構成要素
日本一の地下水都市=ブルー
森の都=グリーン
101
「もっこす」の情熱=レッド
及び以上が醸し出す本市ならではの GOODS=商品やサービス。
5
ブランド戦略
①
ブランドづくりの考え方
「熊本シティブランド」作りにあたっては、以下の6つの視点を基本として、継続的な取
組を進めることとしている。
視点 1 疑似体験してもらうブランドストーリーづくり
視点2
阿蘇パワーの活用などによる世界ブランド化
視点3
外からの視点に立った印象に残るブランド戦略の展開
視点4
「くまもと」のランドマークを明確にする
視点5
「くまもと」のまちづくりの方向をアピールするブランドづくり
視点6
ターゲットと「くまもと」との接着剤となるような人物を活用した仕掛けづくり
②
ストーリー戦略
「ブランドづくりの考え方」に掲げた6つの視点を踏まえ、
「熊本城」、
「地下水」、
「食」、
「大
きな田舎」、「こだわりの人」の5つのストーリーを形成し、継続的なブランド戦略として
展開することとしている。
③
体制
熊本シティブランド戦略の推進にあたっては、
「くまもと」を愛し、誇りに思う気持ちを
呼び起こし、結集するために、継続的な働きかけをすることが必要であり、そのためには、
市民・市民団体、経済界などが一体となった「オールくまもと」の体制が必要としている。
○ブランドを担う人づくり
・熊本ゆかりの著名人「熊本市わくわく親善大使」制度
・市民によるまちの活性化に向けたアイデア「私のわくわくアイデア」のWEB掲載
○ホームページの開設やマスメディアによる情報発信の推進
○市庁内体制
出典
熊本シティブランド戦略プラン
~ !?が、あなたを待っている! “湧々わくわく都市くまもと” ~平成21年3月
熊本市
熊本の都市ブランド事例は、認知度などの現状認識、九州新幹線開業を控えた時期にお
ける地域振興の基盤作りのなどの目的意識と方針の明確化、市民と市場に定めたターゲッ
トの選定、青・緑・赤の三色に象徴するとブランドイメージとストーリーを重視したブラ
ンディング戦略、ブランドを維持・管理する体制整備までの一連の流れとなっており、都
102
市ブランド開発のスキームとして参考になる。
熊本市では、これに基づき、ブランドロゴ・マークの積極的活用や「わくわく企画」と
して、様々なイベントや地域産品の認知度向上のための企画などを行い、効果を上げてい
る。
103
事例6:
○
「くまもとブランド」と「くまモン」(熊本県)
くまもとブランド
くまもとブランド公式サイト
http://www.kumamoto-brand.jp/
くまもとブランドは、九州新幹線開業を控えた熊本県が、関西地域を新たな市場として
捉えた「KANSAI 戦略」の中で、マーケティングの視点で開発したものである。
九州新幹線の開業により新たな観光需要等が見込まれる関西地域の生活者に熊本の魅力
を分かりやすく、充分に伝え、熊本に「行きたい」
「住んでみたい」
「熊本産品を買いたい」
と思って貰えるように、マーケティングの視点で「地域づくりブランド」
「地域産品ブラン
ド」
「観光/交流ブランド」等を包含した熊本全体イメージを表す地域ブランドとして開発
された。
ブランドコンセプトとして、
緑:九州の代表ブランドとしての「阿蘇」
青:豊かな「水」が育む食と暮らし
赤:「火と灯り」が彩る火との営み
と色彩的なイメージづくりを行い、これらに県内各地に散らばる魅力や付加価値を組み
合わせてブランド強化・拡張を図ることとした。
○
くまモン
くまモンは、九州新幹線全線開業を控え、熊本県が行った、熊本
県 PR 活動としての「くまもとサプライズ」と称する PR キャンペ
ーンの中で、生み出されたキャンペーンキャラクターである。くま
もとブランドを開発した上記の「KANSAI 戦略」のプロモーション
でも活用された。
熊本県の PR・広報を行う「くまモン隊」を組織し、熊本県内の
みならず全国のイベントに積極的に参加し、メディア露出の機会を
増やすことで、全国的な知名度を向上した。平成 23 年に「ゆるキャ
©2010熊本県くまモン
ラグランプリ2011」で第 1 位を受賞した。
県は、
「くまモン」の開発者から関連する知的財産権利を買い取るとともにキャラクター
及びロゴの商標権を登録し、商品等の「くまモン」図柄の無料利用許諾を開始、広角的な
PR につなげている。
くまモンの経済効果は非常に大きく、平成 24 年度上半期くまモン利用商品売上高 118 億
円以上、くまモンの利用許諾申請は 7800 件を越え、毎月 400 件程度の申請がある。
104
「くまもとブランド」は、新幹線によってつながれる関西圏を意識したマーケティング
ブランドとして、熊本県によって開発された。現在は、地域産品・観光などを紹介する PR
サイトとしてのくまもとブランドとして、イベント等のポスター・のぼりなどでの活用が
見られるが、それほど積極的にはロゴ活用を推進していない。
一方で、熊本県のブランディングのための意匠ではなく、本来は PR キャラクターであっ
たくまモンの認知度は極めて高くなり、その活用による効果が、当初の目的であったがく
まもとブランドを遙かに凌ぐものとなっている。
当初くまモンは、熊本県の認知度向上を図るキャラクターとしてプロデュースされたキ
ャラクターであり、くまもとブランドを開発したKANSAI戦略のイベントを中心に活
用されたが、現在は、くまモンを「熊本県営業部長」として、熊本県や熊本県の産品との
つながりを深めるために広範な取組を行っている。
くまモンのデザインは、図柄も黒赤2色(あるい黒灰の濃淡1色)の色使いもシンプル
なものであり、汎用性が高い。また、平面・静止画としての図柄だけではなく、着ぐるみ
として立体のキャラクターや、動作・表情のバリエーションを用意することで動画にも展
開できるなど優れたキャラクター素材であると言える。さらに、「職業は県庁で働く臨時職
員で、現在の役職は熊本県営業本部長」、「くまモン体操が得意で趣味」「言葉の終わりに~
モンをつけるのが口癖」などしっかりしたシナリオ付けがなされている点も特筆されよう。
さらに、商標利用に関する諸規程がしっかり整備されるとともに、民間事業者がインタ
ーネット等を通じて容易に利用許諾申請できるシステムを導入している点も、商標活用に
よる地域振興を検討する上で大いに参考になると考えられる。
105
事例7:
日本で最も美しい村連合
「日本で最も美しい村」連合
この連合は、素晴らしい地域資源を持ちながら過疎にある美しい町や村が、
「日本で最も
美しい村」を宣言することで自らの地域に誇りを持ち、将来にわたって美しい地域づくり
を行うこと、住民によるまちづくり活動を展開することで地域の活性化を図り、地域の自
立を推進すること、また、生活の営みにより作られてきた景観や環境を守り、これらを活
用することで観光的付加価値を高め、地域の資源の保護と地域経済の発展に寄与すること
を目的としている。
運営主体
NPO法人「日本で最も美しい村」連合
参加町村数
43町村6地域(2012 年 10 月 4 日現在)
・九州内の参加市町村
福岡県八女市星野村
福岡県朝倉郡東峰村
大分県由布市湯布院町塚原
宮崎県西諸県郡高原町
熊本県阿蘇郡南小国町
宮崎県東諸県郡綾町
長崎県北松浦郡小値賀町
鹿児島県大島郡
喜界町
「日本で最も美しい村」連合公式サイトより抜粋
http://www.utsukushii-mura.jp/about
この日本で最も美しい村連合や創造都市(事例10を参照)、アートプロジェクト(事例
11を参照)などの取組は、九州ブランドを考えるにあたって「アート」「地域と共に創り
出すブランド価値」「ネットワーク」といったキーワードを提示してくれる。
九州ブランドの目的を、まちづくりや地域作りととらえるならば、芸術・文化や美しい
風景といった美しいものや愛されるものなどに潜在したブランド価値があり、また、創り
出すことも可能と考えられる。
観光地として整備されていない小さな山村の風景は、一見すれば観光産業的な価値は低
いと考えられがちであるが、観光地開発されていないこと自体が価値であるという考え方
も成り立つ。例えば、日本で最も美しい村連合に参加している福岡県八女市星野村は、夜
間に光を放つ施設等が少ないことから、星など天体の観測に適しているとして「星のふる
さと」としての魅力をアピールしている。
また、現代アートが瀬戸内海の島民に受け入れられたように、地域と共に創り出す価値
や価値観を共有する地域のネットワークなどから、ブランディングに値する資源を見いだ
すこともできると考える。
106
4-2-3
他地域における先進事例
事例8:東京都墨田区「すみだブランド認証事業」
すみだブランド認証方法の流れは下記の通りである。
第三者による認証機関を設置
(認証基準)
・すみだブランド価値規定との合致度
・すみだのブランド力向上への貢献度
・独自性
・信頼性・品質
・理念・姿勢・背景
(管理団体)
すみだ地域ブランド推進協議会
〈認証マーク〉
すみだモダンホームページ(http://sumida-brand.jp/)より、抜粋。
すみだブランド認証は、「すみだモダン」のコンセプトに合致する製品を認証し、認証マ
ークの使用を許諾する取組である。
これらのブランディングは企業ブランドに地域ブランドを重ねたものである。一定の品
質や信頼性を補償すると同時に、地域のイメージ作りにもつながっている。
107
地域によるブランド認証制度の課題は、認証すること自体にあると考えられる。一定の
基準と期間を設けて認証するために、必然的に認証できるレベルに達しないものが生じる。
このため、認証基準の妥当性と認証機関の公正性が地域において認められるものでなけれ
ばならない。
また、このような制度が地域で活発に利用されるためには、認証によって販売等に対す
る公的支援が受けられる、消費者や仲買などに対する評価が上がるなどの具体的効果が明
確に打ち出されていることが重要と考えられる。
下記に、全国のブランド認証制度の一例を示す。
図表 25
全国のブランド認証制度等
地域
北海道
宮城県
制度名
道産食品独自認証制度
地域特産品認証事業
みやぎの環境にやさしい農産物認証・表示制度
茨城県
いばらきエコ農産物認証制度
栃木県
とちぎの特別栽培農産物認証・表示制度
一般社団法人とちぎ農産物マ
ーケティング協会
地域ブランド農産物認証事業
千葉県
千葉ブランド水産物認証制度
東京都
すみだブランド認証事業
長野県
長野県原産地呼称管理制度
北アルプス山麓農畜産物ブラ
ンド運営委員会
愛知県
北アルプス山麓ブランド認定制度
愛知ブランド企業認定制度
ブランド商店街認定
岐阜県
飛騨・美濃すぐれもの認定制度
三重県
三重ブランド認定制度
滋賀県
環境こだわり農産物認証制度
京都府
京のブランド産品認証制度
兵庫県
ひょうご安心ブランド認証制度
奈良県
奈良ブランド(奈良くらしくす)認定
和歌山県
広島県
和歌山県ふるさと認証食品
和歌山県特別栽培農産物認証制度
「安心!広島ブランド」認証制度
108
島根県
しまね故郷料理店認証制度
山口県
「山口海物語」製品認定
「やまぐち農山漁村女性起業統一ブランド」認定
愛媛県
「愛」あるブランド産品認定
財団法人四万十川財団
四万十ブランド認証事業
長崎県
長崎県ブランド農産加工品認証制度
福岡県
福岡県減農薬・減化学肥料栽培認証制度
佐賀県
佐賀県特別栽培農産物認証制度
大分県
「The・おおいた」ブランド
宮崎県
商品ブランド認証制度
宮崎県水産物ブランド認証制度
鹿児島県
かごしまブランド産地認証制度
109
事例9:
塩尻「地域ブランド戦略」(長野県)
都市ブランドを手がける塩尻市は、「培われた固有の地域資源(自然、歴史、人、産業、
産品)を活用し、他地域との明確な差別化を図りながら、市内外への戦略的なコミュニケ
ーションを継続的に行い、地域イメージを高め地域の付加価値を上げていくという、企業
ブランディング理論を応用した手法で塩尻市全体のブランド化を目指します」
(塩尻市ホー
ムページより抜粋)と述べている。
塩尻市ホームページに掲載されている、塩尻「地域ブランド」戦略エッセンシャル版(平
成19年
塩尻市協働企画部企画)によれば、塩尻「地域ブランド」戦略は、下記の様に
コンセプトを積み上げて具体的な取組につなげている。
①戦略の指針
②地域ブランドの定義
③ブランド戦略の目的
④ブランド・アイデンティティ(塩尻らしさ)の定義
110
(塩尻市ホームページ掲載
塩尻「地域ブランド」戦略エッセンシャル版
平成19年
塩
尻市協働企画部企画課より抜粋
(http://www.city.shiojiri.nagano.jp/tanoshimu/chiikibrand/chiikibrandseiryaku.html)
ブランディング戦略に沿った事業内容も充実しており、地域資源のブランド化や産業創
出・育成、知的資源創出などの取組と塩尻市内外に対するコミュニケーション戦略(情報
提供、PR 活動など)が展開されている。
都市ブランドは、この他にも多くの自治体で取り組まれている。
地域おこしの観点が強い場合もあるが、ここでは、ブランディング対象を地域とし、ブ
ランディングの標的に市民をすえて、地域へのロイヤリティを醸成する取組であり、九州
地域の一体感醸成が基盤となる九州ブランドにおいて、特に参考となると考えられる。
111
事例 10 金沢創造都市推進プログラム(金沢市)
(創造都市とは)
地域固有の文化が、誇りや愛着のある付加価値の高い産業を促し、そのことがさらに新
しい文化への刺激や投資にもつながって、市民の生活を豊かに暮らしの質を高めている、
いわば「創造的な文化活動と革新的な産業活動の連環によって、まちを元気にしている都
市」が創造都市である。
こうした創造都市の世界的なネットワークをユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が
2004 年に創設しており、金沢は、2009 年6月にクラフト分野で登録認定された“手仕事
のまち”である。
(ユネスコ
創造都市ネットワークとは)
グローバル化の進展により、固有文化の消失が危惧される中で、文化の多様性を保護す
るとともに、世界各地の文化産業が潜在的に有している様々な可能性を、都市間の戦略的
な連携によって、最大限に発揮させるための枠組みで、ユネスコが平成 16 年(2004 年)
に創設した。
(創造都市・金沢が目指す将来像と実践方策)
1.文化とビジネスをつなぐまち
・
金沢クラフトビジネス創造機構設立運営事業
・
おしゃれメッセ開催事業
・
加賀友禅及び金沢箔の技術振興研究事業
・
クラフトビジネス化創造都市連携事業
・
コンテンツ産業振興事業
など
2.創造の担い手を育てるまち
・
希少伝統工芸産業振興事業
・
若手工芸家海外研修支援事業(クリエイティブ・ワルツ)
・
金沢工芸子ども塾及び匠会運営事業
・
平成の百工比照収集作成事業
百工比照:5代藩主前田綱紀が収集した工芸各分野にわたる製品や技法についての集大成で、総点数は2
千点以上の資料は材質・用途・形態別に二つの箱に収められており、国の重要文化財となっている。
・
金沢の文化発見講座事業
など
3.世界を引きつけるまち
・
創造都市交流事業
・ 金沢版クラフト・ツーリズム事業
・
金沢・世界工芸トリエンナーレ開催事業
・
創造都市に関する外部研究機関等との共同研究事業
112
・
出典:
アジア・クラフト交流事業
金沢創造都市推進プログラム
など
平成 23 年改訂版(金沢市)
より抜粋
ユネスコの創造都市ネットワークには、日本国内では、神戸市(デザイン)名古屋市(デ
ザイン) 金沢市(クラフト&フォークアート)の三都市が認定され、札幌市や浜松市も認
定に取り組んでいる。
113
事例11:
現代アートをテーマとした島おこし(香川県直島)
1992 年に(株)ベネッセホールディングスによって現代アートの美術館(宿泊施設付)
であるベネッセハウスが開館したことを皮切りに、島内の旧家を改造して現代アートを恒
久展示する「家プロジェクト」、島内全域を舞台とした現代アート展等を展開し、人口 3000
人程度の島に、ピーク時には 10 万人以上の観光客が訪れている。
直島主要施設整備動向
平成4年
平成10年
平成11年
平成13年
平成14年
平成16年
平成17年
平成18年
平成21年
平成22年
ベネッセハウス開館(美術館・ホテル・レストラン)
家プロジェクト「角屋」開館
家プロジェクト「南寺」開館
家プロジェクト「きんざ」開館
家プロジェクト「護王神社」開館
地中美術館開館
海の駅「なおしま」竣工
家プロジェクト「石橋」「碁会所」「はいしゃ」開館
直島銭湯「I❤湯」開業
李禹煥美術館開館
直島町来訪者入込客数動向
(単位:人)
平成2年 平成7年 平成20年 平成23年
直島町人口
4,660
4,235
3,408
3,259
・スポーツ、レクレ客
11,400
35,000
34,000
29,300
・産業施設見学客
7,900
5,400
ベネッセハウス
11,000
99,400
91,200
地中美術館
119,500
124,900
地域いきいき観光まちづくり2011(観光庁)より三菱化学テクノリサーチ作成
直島の例は、(株)ベネッセコーポレーションの企業メセナによる美術館等の整備が基盤
となっている特別な例であるが、町作りと地域ブランドを連携させてとらえることができ
る。
また、現代アートをテーマとした町おこしの事例としては、大分県別府市で「別府現代
芸術フェスティバル2012」が開催され、内外からの訪問者を呼んでいる事例等もある。
その他にも、とらえようによってはブランディング対象となるものが潜在していること
が考えられる。
114
九州地域ブランド戦略
ワーキンググループ
資料
115
九州地域ブランド戦略ワーキンググループ
4-3
ここでは、開催された九州地域ブランド戦略ワーキンググループにおける議論をまとめ、
九州ブランドのあり方について検討する。
調査期間中に3回開催された九州地域ブランド戦略ワーキンググループの開催概要を書
きに示す。
九州地域ブランド戦略ワーキンググループ委員
4-3-1
下記のメンバーをワーキンググループに迎え、議論を行った。
■
ワーキンググループメンバー(敬称略・五十音順)
御名前
役
◎は座長
職
所属
大倉
紀子
代表取締役
香月
盛夫
部長
幸田
明男
部長
真田
高充
部長代理
塩次
喜代明◎
教授
田代
雅彦
調査研究部長
財団法人九州経済調査協会
田中
雅敏
代表幹事
弁護士知財ネット
新田
敏之
室長
橋本
孝
参事
武濤
研二郎
部長
横山
研治
教授
龍造寺
若林
健介
宗男
株式会社ジャンヌマリー
マックスバリュ九州株式会社
商品本部
水産部
日本通運株式会社
福岡支店
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
営業企画部
公立大学法人福岡女子大学
国際文理学部
弁護士
国際教養学科
九州沖縄地域会
社団法人九州経済連合会
国際ビジネス推進室
独立行政法人中小企業基盤整備機構九州本部
国際課推進室
九州観光推進機構
海外誘致推進部
学校法人立命館アジア太平洋大学
国際経営学部
代表取締役
本多機工株式会社
副会長
九州の食
116
(九州大学知的財産本部)
広実
郁郎
局長
九州経済産業局
平井
淳生
部長
九州経済産業局地域経済部
4-3-2
議事概要
ワーキンググループの目的は、「九州域外、特に海外における九州ブランドの展開可能性
及びその手法などについて議論し、課題の抽出を行う」ことから、ワーキンググループの
議論するテーマを下記のようにとらえていた。
図表 26
ワーキンググループのテーマ
ワーキンググループのテーマ
九州ブランドの可能性と課題の抽出
(ブランドへのニーズ)
・ ブランド力の補強
・ 九州連携によるブランド価値の創出など
(九州ブランドの対象と目的)
・ 顕在している観光資源・産品・サービスの組合せ
・ 潜在している九州の魅力
・ 販路拡大、誘客、誘致、投資、交流拡大 など
(九州ブランドのブランド戦略と課題)
・ ブランディングコミュニケーション(内/外)
・ 統一ブランド
・ 合同プロモーション
・ イメージ戦略
・ 九州一体のまとまり など
まず、九州一体的な取組に対する期待、ニーズあるいはウォンツを誰がどのように持っ
ているかという議論があると考えた。即ち、業界団体が海外進出の際に九州一体的なブラ
ンディングを望むといった、九州ブランドを誰が望むかという議論である。
次に、より具体的な目的と対象である。九州ブランドとして、何を対象にブランディン
グするかという議論は必須である。また、九州ブランドの対象として、観光資源やお土産
に代表される産品のように顕在化しているもの以外に、九州の中に潜在するブランド価値
を有識者の知見をもって見いだすことも重要なテーマである。
次に、ブランド戦略と課題である。対象や目的が決まった上で,具体的な方法論や体制
などに関する議論が必要となる。今回の調査では、この部分は具体的な広告・宣伝活動や
事業化検討などに深入りしないように留意しながら、想定した九州ブランドの対象に対し
117
て、効果的なブランド戦略の提案や実行における課題などを抽出することとした。
ワーキンググループは、3 回開催された。
第一回目は、調査方針と各委員の考えが伝えられ、第二回において、上記のテーマに対
する議論が深められた。第三回は、それまでの意見を踏まえて、ワーキンググループの意
見集約と提言について議論された。
(ワーキンググループ概要)
主な議事
1 回目
・
(12/17)
方針と取り進めの説明
(局長挨拶、局方針説明、事務局
・
事業概要/運営説明)
情報提供
・講演
講演1
一雑誌記者から見た<九州ブランド>雑感
(株)プロジェクト福岡 近藤 益弘氏
講演2
関アジ関サバのブランド化と維持管理
大分県漁業組合 佐賀関支店 総務課長 藤本 久士氏
・
各委員のショートスピーチ
講演
九州のブランド対象と目的
(1/25)
・
・
九州ブランドに対するニーズ
2 回目
・
情報提供
講演1「映像言語を用いた地域プロデュース」
合同会社アースボイスプロジェクト
グローカルメディアプロデューサー
榎田
竜路氏
講演2「九州観光推進機構の九州ブランディング戦略」
九州観光推進機構
海外誘致推進部長
講演3「九州ブランドに関する話題提供」
(株)三菱化学テクノリサーチ
主幹研究員
・
テーマ討議
・
座長総括
3 回目
・
情報提供
(2/15)
講演
荒川
文隆
講演1「九州ブランドに関する話題提供2」
(株)三菱化学テクノリサーチ
主幹研究員
・
テーマ討議
・
座長総括
荒川
118
文隆
武濤
研二郎
①
第一回ワーキンググループ概要
■ 主催者挨拶(九州経済産業局 局長 広実 郁郎)
九州は七つの県から構成されており、北海道のように一つのブランドとして機能するの
は難しい。通常の戦略ではなく、観光も含めた「柔らかいブランド戦略」の構築が必要と
考えている。
■
事業方針説明
(九州経済産業局 大串技術企画課長)
本ワーキンググループで、何らかの方向性は結論を出すということは考えていない。
事例・課題などを抽出、議論することにより、次年度以降の材料として繋げていきたい。
■
事業概要と今後のスケジュール
■
委員紹介
(事務局)
■
座長選出
(事務局)
(事務局)
互選により塩次委員を座長として選出。
委員一同に異議なし。
■
座長ご挨拶
九州ブランドに取り組むという今回のワーキンググループの発足は、非常に嬉しく思っ
ている。
現状では、九州全体としてのまとまりに欠けていると思っている。
グローバル化が進むほど、個では無く面の戦いになる。人・モノ・カネももちろん大事
だが、その背後にあるものとしてのシンボルをどう構築するが、ソフトパワーであり、明
確にしていくことが重要である。記憶されれば永遠に残るものである。また、増殖も容易
である。
冒頭、広実局長が言われた「柔らかい戦略」というのがキーワードとなると考えている。
119
■
講演
講演 1 「一雑誌記者から見た<九州ブランド>雑感」
(株)プロジェクト福岡 近藤 益弘
講演2
「関アジ関サバのブランド化と維持管理」
大分県漁業組合 佐賀関支店 総務課長
■
藤本 久士
各委員からのご意見(順不同)
委員①
・
弁護士知財ネットワークの活動紹介
・
日本人は善良な人が多く、情報を開示しすぎるきらいがある。
これでは諸外国に模倣されて当たり前である。
・
上海や北京の弁護士 150 人と話す機会があったが、その中で九
州のことを知っているのは上海の 3 名のみであった。
委員②
・
海外では、北海道や長崎・広島というのはよく知られている。
九州という言葉の認知度はかなり低い。
・
ネーミングは重要である。九州という言葉を打ち出すことはマ
ーケティングとして適切なのかを考える必要がある。福岡という言
葉の方がより認知されているようにも思える。
・
外需のマーケットに対して売り込む、というのであれば、明確
なビジョンのもとに情報発信を行う必要がある。
• 九州に住む人達がブランドをきちんと認識し、ブランドに対して
胸を張って売り込めるような、内側への対策も必要である。
・
個人的に、九州の出島化構想というのを考えている。メイドイ
ン九州印のようなものを作ってアピールしていこうと考えたことも
ある。
委員③
・
九州は魚の宝庫である。九州には水産加工の大企業も多く存在
する。養殖漁業では 40%のシェア、一般漁獲業では 35%のシェアを
持つ。
・
高齢化・資源枯渇に対して、ひとつの活路として養殖漁業をと
らえるべきである。
・
養殖漁業を ASEAN 含めて売り込む必要があるのではないか。
例えば中国には魚を生で食べる習慣がない。食べ方を含めた「食」
「魚の文化」をひとくくりにしてブランディングできれば有効では
ないかと考えている。
委員④
・ユニクロの事例を元に、最近のブランディング事例を紹介
・
消費者が想像もしなかった企業同士が組むというのが一つのト
120
レンドとなっている。複合化することで、すたれたビジネスを蘇ら
せることができる。
・
価格や品質ではお客様が振り向かない市場において、異業種の
組み合わせで鮮度を上げ、お客様を喜ばせる。
・
海外か、国内か、ターゲットをどこに置くのかが重要。
・
女性の購買力と時間の余裕を軽視しないこと。
・
20 代〜40 代の女性を捨てて、50 代以上のシニアを狙った商品
の開発を行うことも一案。
委員⑤
・
各県の自治体や農協がバラバラにブランド作りに取り組んでお
り、彼らが築き上げてきたブランドが確立している。それらの既存
ブランドを「九州」で再定義しろというのは困難であるように思う。
・
九州らしさを出すことが差別化に繋がる。九州を一言で表すよ
うな言葉、ロゴ・マークやキャラクターを定義する必要がある。
委員⑥
・
「九州の食」(九州の食材・食品などの活用・PR を行う任意団
体)の活動紹介
・
「九州の食」を商標出願中。
・
個別の既存ブランドに「九州の食」という傘をかけることで、
何か新しい取組ができればと思っている。
委員⑦
・
市場の目線を忘れず、セグメントをはっきりさせてターゲティ
ングする必要がある。その上でブランドが活用できる。
・
韓国市場に向けてのトレッキングの提案を行っている。チェジ
ュ島の成功例を勉強させてもらいながら、九州のトレッキングコー
スのブランディングを進めている。
委員⑧
・
施策を考えるにあたり、海外は九州をどうとらえているかをき
ちんと把握することが重要。認識されていないという評価であるな
らば、まずはアピールすることから始めなければならない。
・
物流という観点で言えば、海外からは東京と大阪しか見えてい
ない。
・
博多を記憶に残る町・港・交通の要所とするためにアジアの港
と如何に結んでいくか。立地条件の優位性を如何に活かすか。
・
海外の生活習慣をよく知っておく必要がある。違う文化を持つ
方々に何を売りたいのか、何が売れるのか。彼らが望むことを用意
しないといけない。
・
ブランディングには熱い想いが必要。戦略を立てて、それを実
行するのは誰か。熱い想いで実行する人間がいなければ成功しない。
委員⑨
・
海外進出する企業と一緒に現地へ赴き、フィージビリティース
121
タディーを行っている経験から、海外における九州の認知度は低い
と感じている。
・
九州らしさをどのようにアピールしていくか、いくつか切り口
があると思う。
「こだわり」がキーになるのでは。海外でどのように
発信していくか。アンケートや報告書を楽しみに、議論を深めてい
きたいと思う。
委員⑩
・
ビジネスマッチングの商談会などを行っている。取引先の販路
拡大が一義的ではあるが、副次的な効果として九州のブランディン
グにも繋がっていると考える。
・
國酒プロジェクト(※)など、国の政策に乗っかるというのも
一つの手段。
委員⑪
・
昔から「九州は一つ」として事業に取り組んでおり、オール九
州でまとまることが困難であることは理解している。
・
以前、第一次九州観光戦略という組織があった、総論では「九
州ブランドはあったほうが良い」ということだったが、各論では難
しい。
・
戦略をシンプルな言葉でまとめることが大事である。
・古いモノを新しい情報として発信する、伝える、というのは難し
く、創り出すことの 5 倍の力がかかる。
・
Facebook などの IT ツールも有効に使い、ニッチなニーズを地
道に広げていくことが重要。
・
シンガポールの例でいえば、マーライオンを定着させるために
大量の時間と予算をかけた。
※國酒プロジェクト:
日本酒・焼酎を日本の「國酒」として、個々の会社・関係省庁・関係機関等の取り組みの補
完として、オールジャパンで官・民が連携して、日本酒・焼酎の魅力の認知度の向上と輸出促
進とに取り組むプロジェクト。
(出典:
■
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/archive12.html)
自由討議
<時間の都合上割愛>
■
座長総括
委員全体の認識としては「九州ブランドは必要」という認識である。
ブランドは創れるのか、生まれるのか。専門家が、ブランドは創れないと言っている九
州はこうありたい、こうあるべきというブランド、ビジョン、コンセプトといったものを
122
このワーキンググループを通じて作っていければよいと思う。
熱い志を持った人達が、時間をかけて作り上げていく必要があるだろう。
②
第二回ワーキンググループ概要
■
平井地域経済部長(広実局長代理)挨拶
■
座長挨拶
第三回目の結論に繋がるような意見の収斂を計るような意見を欲しいと思っている。
一例として、くまモンの経済効果は 2011 年に 25 億円、2012 年の結果は出ていないが、
おそらく数倍になるだろう。
キャラクターであり必ずしもブランドではないが、一つの参考にはなる。
また、JR 九州が開始する高級観光列車「ななつ星」も、九州をひとつととらえた観光キ
ャンペーンであり注目したい。
■
講演
講演1「映像言語を用いた地域プロデュース」
合同会社アースボイスプロジェクト
グローカルメディアプロデューサー
榎田 竜路
榎田氏の経験に基づく地域ブランド形成における要点を下記のように示された。
・自覚
自らの優れた点、良い点を探す視点が欠けている。
・映像言語
映像、文字、音声の組合せによる表現力は、「説明」を越える共感を創り出す。
・第三者性
関係者以外が伝えることが重要。自画自賛やステークスホルダーの説得は受け入れ
られない。
上記のような指摘を、地域ブランドや地域おこしの事例を交えて説明された。
>委員⑥
価値と価格、についてどう考えるべきか。
一般的にわれわれ日本人は一億総中流の期間が長く、価格決定のメカニズムが弱い、高
級品の価格設定ができない傾向にある
>講師
・ものがたりが価値を生むと考える。
・エルメスが成功したのは、機械化の時代に手工業こそが高級であると定義したから。
123
・国内外問わず、お金持ちのニーズはある。
・消費者は明確な「ものがたり」を求めている。
技術者や技術が海外に移ったとしても、「ものがたり」
そのものはコピーできない。
>座長
ものがたりの語り部は生産者なのか。それとも消費者が連想した結果できあがるものなの
か。
>講師
当事者ではなく、第三者が作り上げるものであると考える。
>委員⑥
(座長質問に関連して)ソーシャルメディアなどでは当事者が語っているものは、あまり受
けない。第三者が語ることが重要
>講師
・当事者は思い先行で事実から離れる傾向にある。
・事実をどううまく配置することで真実を生むか、そこに映像技術が効果的に活用できる。
>委員⑫
講演のなかで地域がまとまらないと仰っていたが、「ものがたり」をどう使ってまとめてい
くのか。
>講師
阿久根氏の例でいうと、
①市役所の人達の自覚を変える
②地域企業の自覚を変える
① 供の自覚を変える(例:高校の放送部に行き、ビデオ撮影の指導)
高校生が積極的に関わっているとなると、地域で足を引っ張る人がいなくなる
復興支援のケースでも、閉鎖的な面もある。
もっとも地域がまとまるのは「子供のために」という旗を掲げたとき。
講演2「九州観光推進機構の九州ブランディング戦略」
九州観光推進機構
海外誘致推進部長
武濤 研二郎
九州観光推進機構の取組を説明された上で、一つの課題として、九州観光推進機構の
マークが、本来は九州一体のとしてのシンボルとして作成されたが、認知されないまま
に九州観光推進機構のマークとして使われているということが示された。
講演3 九州ブランドに関する話題提供
(株)三菱化学テクノリサーチ
主幹研究員
荒川 文隆
ブランディングに対する視点とアンケート、ヒアリングの中間報告があった。
124
・
九州ブランド検討の可能性と課題に対する視点
議論の方向付けを可能性(ブランディング対象)とブランディングを行うための課
題に絞った。
・
ブランディングの視点の提示
・
ブランディング対象に対する視点
ビジネス/非ビジネス、各県のバランス、
・
ブランドの使用目的
証明、イメージ、認知、象徴の用途から対象をみることが指摘された。
・
事例紹介
・産品ブランディング
かごしまブランド(農作物)、すみだモダン(他品種)
・都市ブランド
地域自体を地域住民に対してブランディングすることによって、地域に対する
ロイヤリティ向上を図る。(久留米市、熊本県、熊本市)
・その他の視点
ブランディング事例ではないが、ブランディング対象の視点を広げるために、
ブランディングに関連のあるものを紹介。
(日本で最も美しい村連合、創造都市
ネットワーク、直島と別府現代芸術フェスティバル 2012「混浴温泉世界」)
・
アンケート・ヒアリング報告
・
距離感は地理的距離感を反映
・
九州の代表的産品
・
九州のイメージカラー
・
ほとんどが、来日前から九州を知っていた
・
九州の人・自然・食べ物は好評、阿蘇・別府は中国・韓国で有名
・
九州は寒い
(九州
ラーメン
緑
vs. 北海道)
知名度
北海道>>九州
行きたい所
北海道>京都・大阪・東京>>九州
好感度
北海道=九州
個性
北海道>九州
中国自体を九州と称するため、中国で九州を強調すると中国産と勘違いされる。
海外事務所は九州でまとまりやすい。
海外市場において各県が出てくると競合となるが、サプライヤーはロットがまとまら
ない各県単位を避けて、九州産でまとめている。
125
・
九州ブランドに対するニーズ
まとまりにくいとの指摘はあるが、九州地方知事会、
(社)九州経済連合会、九州観光
推進機構を始めとして、
「九州はひとつ」をスローガンとして活動している例は少なくな
い。少なくとも九州の経済界は「九州はひとつ」に取り組んでおり、九州ブランドのニ
ーズは存在する。
■
自由討議
>委員⑬
コンテンツの力・共感をプロデュースできるのか。評価するのは第三者であるが、自然発
生に任せていては上手くいかない。積極的な仕掛けづくりが必要。
ただし、自分が前に出るのではなく、人を活用するプロデューサー的な人材が求められる。
今回の委員の方々はそういった「プロデューサー候補」になれる人材を集めている。
>講師
最終的には「人」である。地域のことも理解し、愛して、周りの人を動かしていく、そう
いったプロデューサーが必要になる。
>講師
必要最小限のイメージで最大のイマジネーションを引き出す、九州をひとつにする言語が
必要である。
>委員⑦
九州オルレの取組は韓国のブランドを借りてきたものではあるが、いろんな気づきを得る
ことができた。道というものが持つ「ものがたり性」も資源となり得る。
ミクロレベルで小さなブランドを積み重ねていくことで、やがて大きなブランドに結実す
るのではないか。
>委員⑬
昔アニメーション会社に出向していた時の経験で言うと、ヒットを飛ばす手法、型という
のはある。永遠のマンネリズム(例:サザエさん)であったり、露出を増やして浸透させ、
世代を超えて普及させるなど(例:ガンダム)
50 年代の日本映画の黄金時代も同様で、言葉とストーリーがしっかりと型に乗っている。
ヒットするための黄金の法則はある。それに乗るかどうかはまた別問題ではあるが。
>委員⑥
大事なのは、最初の上手くいかない時期に安易に辞めないこと。根性、思い入れ、信念が
ないと途中で折れてしまう。
プロデューサーの大事なことは「人を見つけてくる」こと。自分一人で全てのことができ
るわけではない。
126
チームを作る力も大事。
また、チームがチームとして成り立つためにはミッションとコンセプトが必要、それがも
のがたりと重なる。
>委員②
九州ブランドを誰に売っていくのか。明確なターゲットが決まれば、自ずと方向性が定ま
るのではないか。グローバリゼーションの中でどこに発信していくのかを見極める必要が
ある。
>委員⑤
ブランドのプロデュース、対象は誰かという議論は必要。
九経連では九州はひとつということを強くとらえており、海外からも九州をまとめてくれ
という要望を受けている。
各県バラバラに動くことは、費用対効果の面からも非常に非効率である。「これが九州だ」
と表現できるブランドがある方が、効率的に発信できるのではないか。
既に確立しているブランドの名前を変えるのは困難であるから、ブランドにブランドを重
ねる、といった形で一体化を進めていくべきである。
>座長
具体的にはどんな要望がでているのか
>委員⑤
生産量の問題で、ひとつのブランドでは限界がある。場所にこだわらないことで量が確保
できる。
>委員⑥
ロットで売ることでコストを削減できる。
>委員⑥
ブランドにブランドを重ねるというのは、「九州の食」でも課題となっている。
統一ブランドを使うことで、展示会などでも面的な場所の確保ができるのではないか。
>座長
材料はあるけれども産業にできない、上手く集まらないという地域、資源、産品はたくさ
んある。プロデューサー、まとめ役といった人材が必要。
>委員⑨
ブランドにブランドを重ねるという手法では、特徴を出すのが難しいのではないか。
「江戸の粋」のような九州全体で共有できる概念、テーマがあれば九州がまとまることが
できるのでは。
>委員⑪
九州のそれぞれの県に九州で一番輝いていた時代があるため、各県のプライドが高くまと
まらないのではないか。
仮に九州は何色ですか、と問うても、一つの色に収斂しない。北海道なら白、緑、赤など
127
であるが、九州は地味でくすんだイメージしか出ない。
各県お互いがライバル同士だから、他県の名前でも売れるなら売る、という経済優先の思
考をする人は少ないように思う。
>委員⑪
大衆向けの商品・サービスが幅をきかせる中、JR 九州の「ななつ星」に大きく期待してい
る。そこから広がる食材、工芸品などの高付加価値品、日本人でも手が届かない良い商品・
サービスがあるということで海外でも売れる突破口になるのではないか。
>講師
ブランドにブランド重ねるというのは大事だが、そこに「ことば」は必要。言い換え、見
立て、繋ぎ変えで言葉を紡ぐ。
九州を象徴するアイコンのようなものを作るべき。謎がないとブランドにならない。
詳細な説明はすべきではない。情熱が冷めてしまう。
ラグジュアリーではなく、質実剛健なものを。
本日出席の委員に女性がいないが、
「九州の女性」という観点からの検討も必要なのではな
いか。
>委員③
小売業では従来女性が圧倒的なターゲットであったが、ここ数年男性一人というターゲッ
トがパイとして増えてきている。かつてのような典型的なファミリー層だけでなく、単身
者や高齢者も考慮する必要が出てきている。
>委員⑧
中国ではマネージャーの 4 割が女性だったが、日本では男性ばかりで戸惑った。日本でも
女性視点での議論が必要。
今後大きく成長していくアジアに、日本の商品・サービスに対するあこがれを植え付けて
いく取組を行うべきではないか。
>委員⑫
九州のブランド化に関わる中で九州はひとつではないと実感している。
九州ブランドができたとして、その傘下にたとえば「あまおう」が入るかどうか、入った
としてどのようなメリットがあるかが分からない。
詳細を議論するとまとまらないので、抽象的なテーマを作って、オペレーションとして商
品を使っていく。そういう意味では、ブランドを重ねるのはできないことではない。
>委員⑩
九州のブランド戦略について、これまでの議論では海外へ向けての戦略としてイメージを
しているようだが、それが正しいのか、海外だけでなく国内に向けてやるべきなのか。
積極的に仕掛けるのも大事だが、一過性ではなく継続性のあるブランドが必要。
>座長
ブランドを責任持って作っていく主体はプロデューサーである。
128
重要なのは言語、九州はこれだというフレーズがあればまとまる。
>委員②
九州を台湾と比較すると、面積や GDP もほぼ一緒、ところが、九州の外資系企業は 100 社、
台湾は数万社になる。他にも新幹線や温泉などの共通点がある。台湾の事例・取組から学
べるところがあるのではないか。
九州の発展のため、アジアの富裕層をいかに取り込んでいくかということが我々の目指す
方向性。成長するアジアをターゲットとして九州ブランドを構築する。
九州、という発音・語感が、海外の方には難しいのかもしれない。北海道や東京と比較し
ても認知度が低い。
関西圏は境界が曖昧であるが、九州は一つの島でありまとまりやすい。ずっと言われてい
るが、アジアの玄関口でもある。
>委員⑥
結局のところ、経済的な価値というテーマでしか統一できないのではないかと思っている。
経済的な価値なら合意はできる。
ターゲットについては国内と国外は繋がっている。別々のアプローチを採用すべきではな
い。もちろん、ターゲットとしてどちらが先だという議論はある。
一貫性を持った言葉、表現でないとブランドとして通用しない。
理屈ではなく心に訴えるものが必要。ロジカルに考えることは当然だが、ある段階で何ら
かの論理の飛躍が必須。
■
座長総括
九州の個々のブランドを束ねる屋根をかける。たとえば、
「あついぜ九州」といったキャッ
チフレーズのようなものが必要なのではないか。「あつい」というのは、熱い、厚い、暑い
とも読める。やまとことばで言うと多義的であり面白い。
英語に直すと多義性がなくなるので、海外でのプロモーションが難しい。
③
第三回ワーキンググループ概要
■ 主催者挨拶 九州経済産業局 局長 広実 郁郎
今回3回目ということで、皆さんから活発な意見をもらった。ただ、最初に申し上げた
通り九州ブランドは難しい。簡単であればもうできているということであるが、今回のい
ろいろな議論を通じてブランドに対する素材やデータ、アプローチがまとまってきた。
委員会は今回で最後だが、今後も開かれた議論を続けていければと思う。
■
講演
話題提供2 (株)三菱化学テクノリサーチ 主幹研究員 荒川 文隆
今回までのワーキンググループを振り返り、「九州はひとつ」という考え方をブランデ
129
ィングするという視点を説明した。また、「九州はまとまりにくい」「ブランドにブラン
ドを重ねる」ことに対して、ビジョンの共有によるまとまり、ブランドを重ねることに拘
らずに九州ブランドの活用イメージを提示した。
また、外国人から見た九州のイメージを示すアンケート結果を説明した。
○
今回事業の振り返り
委員各位がそれぞれの理解をしている中で「九州はまとまるのか」「ブランドにブラン
ドを重ねる」意義や可能性についての示唆が出て来た。
○
九州はひとつ
「九州はひとつ」を標榜する団体などは多く、官民に九州をまとめたいというニーズは
ある。一方で九州はまとまらないとも言われている。
従って、九州がひとつになって何をやるか、どんな状況を作り出すかというビジョンの
共有によって、過去から現在までの状況に関わらず、未来はひとつになれる可能性がある
ことを提示した。
また、九州ブランドのあり方として、「まとまるためのブランド」と「まとめるための
ブランド」という概念を示し、「九州はひとつ」のビジョンの中で、九州ブランドが役割
を果たす例を想定して示した。
○
ロゴマークのイメージ
ロゴマークの詳細は、対象や目的によって検討する必要がある。
九州ブランドとしてのロゴマークにどのようなメッセージを載せる必要があるかを検討
することの必要性を示した。
○
アンケートの概要説明
留学生を中心に在九州外国人にアンケートを行った結果を報告した。
対象が留学生であったためか、九州を来日前から認知していたという回答が多かった。
九州地域に対する好感度は高く、自然や食べ物に加えて人柄が評価されていた。
九州のイメージカラーは緑が多かった。
北海道との比較においては、北海道への関心が高かった。
>委員⑭
本校(APU)の留学生は緑に囲まれた環境にあり、イメージカラーは「緑」以外を想像
しないであろうと思う。
人柄、住みやすさ、空気の美しさについては共通に持っている留学生のイメージなので、
130
これはかなり真実に近い。
>委員⑧
釜山の事務所の数人に聞いてみたところ、日本は分かるが九州は出てこない。県も出
てこない。知っていても周りの人からの情報で知っているという程度である。外国人の
九州に対するイメージはアンケートの対象者が違うため自分の印象とは少し違う。
■
自由討議
>座長
海外経験も長い委員の方々も多いので、外から九州がどう見えているかについて考えて
みたい。このアンケートを見て北海道への理解が深いことに驚いた。この辺りも含めて、
外から九州がどう見えているかについて聞きたい。
>委員⑧
釜山の港は、トランジット機能を備えた港への改造を進めている。韓国は自分の国が
小さいことを自覚していて、国の資金をつぎ込み、ウォーターフロント整備により、世
界中に対しての発信とインパクトを与えようとしている。
>委員⑤
オーストラリアから見ると、九州を知っている人は少ない。海外から見ると日本という
認識しかない。北海道は雪というイメージで、特別な認知度がある。外国から出資したス
キー場もあり特別な場所である。
世界、東南アジア全体からみると、日本、その次が北海道、あとはどこかわからない。
となるイメージ感ではないか。
>委員⑭
九州のブランディングという段階では、九州がどこにあるかとかははっきり言ってどう
でもいい。日本のイメージがはっきりしている以上は、日本の物であるということで売っ
ていけばいい。
九州の特異性は、北海道より輸送コストが低いことであり、野菜を売るのに、九州の方
が有利である。日本の農産物に対する安心・安全という明らかなイメージを九州が利用す
ればいい。安いコストで安心・安全なものを出していけばいい。
>座長
北海道が非常に有利なのは、北米・ヨーロッパ向け。アジアに対して地理的に圧倒的に
有利なのが九州の大きな命題であるが、しかし、なぜそんなに北海道が有名なのか。
>委員⑦
東南アジアで観光プロモーションをやる時には北海道、アイスクリームも北海道ブラン
ド、デパートなどでの物産展も北海道が一番多い。JTB も北海道のビデオを流している。
九州の方が近いが、シンガポールなど東南アジアでは北海道のほうが観光地として強い。
131
>委員⑥
東南アジア、特に台湾を中心に北海道の認知度が上がったのは 1995 年頃。主として台湾
ですが、中国・韓国のケーブルテレビに対し、テレビ朝日系の北海道の局が積極的に映像
コンテンツの売り込みをかけたということがある。
その映像を見たアジアの富裕層が北海道のスキー場に訪れるようになった。自然現象の
ように北海道が知られたのではなく、何かしら人為的な努力があった。
>委員④
ミャンマーでは、朝からずっと韓国のドラマが流れておりミャンマー人の楽しみになっ
ている。ASEAN でアンケートをかけると繊維の売上高はアメリカ・中国・日本の順位で韓
国は入っていないが、ファッションについてはアジアでは韓国が第1位で日本を圧倒的に
抜いている。今後、アジアの人に来てもらいたいのであれば、その辺の仕掛けも必要。
>委員⑫
アンケートのイメージに縛られる必要はない。ブランドというのは、こういうイメージ
を受けたいということでうまく PR してしまえばそれで行ける。
外の人が持っているイメージ通りの形にしてもあまり意味は無い。
どういうイメージを持ってほしいのかを考えるのが大事。
例えば、九州の天孫降臨から日本の原点九州(origin of JAPAN)として、この農産物・
ファッション・機械も日本の原点であるというように、どの業種にでも何でもくっつけら
れるようなざっくりしたものを作るほうがいいのかなと思う。
>座長
「ソフトなイメージの幅の広いブランドを考える」ということについて良いアイデアは
ないか。
>委員⑭
北海道の場合は、今のアジアの人たちが持つイメージはかつて私たちが持っていたもの
と同じであり、一貫したブランディングが行われていると言える。
九州に関しては、調査からもブランドイメージが無いことが明らか。どこにあるか知ら
ないのであれば、日本のイメージを利用すれば良い。
プラスアルファのイメージがないと長続きしないので、
「天孫降臨の地である」というよ
うなストーリー性は非常に良い。ブランドにはストーリーは重要。
ゼロからスタートではなく、日本のイメージを利用し、農産物などをアジアに出していく。
付加価値はなくても大量に安く出していくのが良い。
>委員⑤
日本の今の動きは地方分権に動いており、地方の特色を活かしていかなければならない。
九州ブランドというのは、いろいろな意義があり、一つは『九州がまとまる』という意義
がある。これまで「九州はひとつ」と言いながら、各県がバラバラに商談会に出るので効
率が悪く、また、各県がやるので九州のイメージが出ない。
132
今後、国内・海外へ売って出るために、そろそろ官民あげて「これを使おう!」という意
識を持たせるためにも九州ブランドは必要である。
>委員⑪
自分たちの幼い頃でも、外国の国と首都ぐらいしか覚えていなかったので、九州に認知
度が低いのは分かる。
まずは日本政府に日本のイメージを良くする世界戦略を打ってもらう。その中で最も歴史
があり、最もいいものを作っているのが九州であるということを売り込む。
何かしらのロゴを作り、必ず付けてもらうと良い。
>座長
台湾には 27,000 社の外資企業が来ているが、九州にはほとんど来ていない。また、海外
にプロモーションするとき難しいという意見があったが、九州にこれがあったらいいと思
うものは何か?
>委員②
海外の飛行機では、その航空会社の国のポイントなる映像を流している。そのような九
州紹介映像を作り飛行機で流したり、九州の企業が自由に使えるようにする。
海外において自社を説明する際に、九州の紹介映像を使用できれば、中小企業は大変助か
る。
共通のロゴを作り、九州経済産業局から九州の企業であるということのお墨付きをもらう。
海外に行く企業がそのロゴを使っていけば、今後の成長するアジアに対しても、
「九州はひ
とつ」であるというこれまでと違ったインパクトとなり、自ずと一体感も生まれて来る。
九州は初めてという客も多いが、一度来るとみんな気に入っている。もっと胸を張って宣
伝すると良い。
>座長
外国の人は、九州に来て何が良かったと言っているのか。
>委員②
福岡は、便利で綺麗で、安心・安全。アジアの人にとっては近い。コンパクトな町・全
てがそろった町と褒めて頂いている。
新幹線には皆さんエキサイトしている。阿蘇山や温泉、おいしい魚など、手に届く所に
何でも揃っており、接待においても網羅できるのが九州。
もっと売り込めば、もっと人が来るのだから、小さな飛行場にも LCC(格安航空)を飛
ばしてもらい、学校を誘致して英語教育をする。
以前も話した九州出島化構想であるが、日本の中にある九州という国として、人の流れを
作る仕掛けをしていけば、台湾に負けない所となる。
>座長
九州の良さ・九州らしさなどの観点から見ると、どういったことがあるか。
133
>委員⑦
観光のプロモーションを一般の企業さんにも提供して行くのはいいと思った。
重点市場は、中国・韓国・香港・台湾・ASEAN などがあるが、アプローチの仕方やキャッ
チフレーズはそれぞれ違うと思っている。
韓国に対してはヒーリングやエコツーリズム。台湾には列車の旅。香港にはグルメの旅。
>委員⑫
今回何か作ったとして、民間の企業がメリットはあると思って使って行かないと広がらな
い。経済的なメリットがあるようなものにしないと広がらない
香港では食のブランドなど、マーケットに合わせたものにする。
まず、九州のリーディングカンパニーに『九州のためだから』と言って付けてもらい。そ
こから中小企業へ広げて行く。
>委員④
企業は、ブランドに対してすごくプライドを持っている。ブランドは、継続させていくの
が難しい。「これをやれば儲かる!」利益が出るということを全面的に出して話すほうが良
い。
九州全県の花や樹木をブランディングするなど、マイナーな零細企業だけを包括して行く
ブランドがあってもいいのではないか。
水・環境・空気・医療品・病院・エネルギー関係・エコ・ボランティア関係・コンテンツ
など、全く未開発な部分のブランディングもいいのではないか。
>委員⑭
小さいところを集めながらブランディングしていく。
イタリアのフェラガモや日本のポーターは、自分のところには製造機能を持たずに、複数
の職人が作った靴やカバンを集めて販売している。
それぞれが十分に育っていなくても、サプライチェーンを共有させて、同じディストリビ
ューションチャンネルに持って行くことでコストダウンを図れるというメリットがある。
九州の農産物の場合は、第一段階でハブに集めてディストリビューションチャンネルを共
有しコストダウンを図る。第二段階で、JA などが参加したいというブランド価値が生まれ
てくる。
>委員④
ブランドはコストを下げるためではなく、ブランドは質。
イタリアがブランド化に成功したのは質を守ったから。日本は安くする技術は伸びていっ
たが質を伸ばす技術は伸びなかった。
>委員⑭
フェラガモやポーターが成功したのは、ブランド価値が十分にない頃にサプライチェーン
を共有してコストダウンができたから。質のいい物を作らなければブランド価値を見出す
ことはできないが、最初の段階はペイしないのでコストダウンが必要である。
134
>塩次座長
ブランドそのものの品質を落とすコストダウンではなく、サプライチェーンを共有するこ
とによる付加価値の中のコストダウン。
>委員⑫
九州ブランドは、うまくいけば事業体が何千、何万となる。
九州ブランドに関して言えば、質はもちろん大事であるが、質のレベルをどこに置くかは
その事業体によって千差万別となる。「九州ブランドはいいよ!」という良いイメージを与
えるためのものとして、イメージ戦略を進めていくことが必要ではないか。
>座長
ブランドそのものを作っていくためには九州でどんな努力が必要なのか?
>委員⑥
現在 facebook 上で運営している「九州の食」
(登録数 1000 人超)で商標をとろうとしてい
る。
同じ商標の下でメリットがあるような活動ができないかと模索中である。
いいものを集めて、共同でプロモーションや販売をすることを検討している。
九州ブランドの場合も、ターゲットを明確にすることが必要である。富裕層に対するア
プローチが必要。良質な食を恒常的・定量的に出せば、高付加価値も生まれる。
九州の特長的なものとして新幹線がある。「ななつ星」も富裕層向け。富裕層が求めている
列車の旅は、良い列車に乗れるだけではない。ここでは日本の中の安心・安全な食べ物が
食べることができる。という仕組みを作れば「九州の食」の利用価値もあり、九州へのリ
ピーターを増やすこともできる。
>座長
「九州の食」の商標を取り、食に安心・安全の高付加価値を付けるというイメージか。
>委員⑥
商標を取ることについては、登録者全員が承諾していることではなく、どこに基準を合わ
せるかを議論しているところだが、ターゲットを明確にする必要がある。誰でも安く安心・
安全を買えるというアプローチにはならない。ターゲットが決まれば、サプライチェーン
をターゲットに合わせて構築できるし経済的メリットも生まれてくる。
>座長
ブランドを作ってどう活用していくのが良いのか?
>委員④
ミャンマーは、対中国・対タイが主な相手先でそこに日本が入っていこうとしている。
国を開けたばかりなのに、専門家を呼んでどうやってブランドを作って売っていけばいい
かを聞いてきた。今からのレベルを高めていきたいという意欲が強い。
作るは簡単だけど、維持していくは難しいなどというノウハウを教えた。
ブランドというのは、一つの顔。質の管理が難しい。
135
>委員⑥
期待値が生まれてしまうので、それを裏切らないように維持し続けなければならない。
>座長
ただ単にブランドをかぶせればいいというものではないという厳しい指摘であった。
>委員⑮
基本的には経済的メリットがあるからお金を払ってブランドを付けるのだが、今回の議
論の出発点は、「九州はひとつでありたい。あるべきだ」ということなので、その段階では
経済的利益ではない。ただ、その賛同者を増やすためには経済的利益を付ける必要がある。
「九州の食」がヒントで、当初経済的目的で集まったわけではないが、1100 人集まった今、
一つのマークを使えば経済的メリットを生めるのではないかという段階になっている。
「九州ブランドを持ちたい」人の運動から始まり、クラスターが生まれ、経済的メリット
が求められるようになる。
>座長
九州ブランドがあれば自ずと経済的効果がでる。といったことは何か?
>委員⑭
ある程度の量の物を、コンスタントに一年を通して動かしていくということが必要。
そのためには、サプライチェーンを共有すること。九州内にハブとスポークを作る必要
があるが、当初は宅配便のシステムを利用するのも良いだろう。
マーケティング上のプレイス(流通網)の仕組みを作ることが明らかなメリットになる。
>委員⑨
国内企業から販路・スキームの相談が多いので、まとめることで小規模企業でも販売で
きメリットがある。ブランド管理をあまり厳しくすると中小企業のデメリットになるが、
ある程度の品質補償をするのであればメリットがある
>委員⑪
観光の世界は、売り買いの世界に比べて経済効果を測ることが難しい。
世界に観光を売って行くならば、各県で売るよりも九州で売るほうが、インパクトがあ
るし、知名度がある。効果がある。と納得してもらわないといけない。
>委員⑤
九州というイメージを植えつけるものがあってもいいと思う。最近は、どこで採れたか
に興味がある人が多く、現地に行きたいというニーズもある。
観光と食には結びつきがあり、バラバラのブランドではなく九州ブランドのイメージを
植え付けて行くことで経済効果が相乗的に生まれてくる。
即経済効果が出るものではないが、徐々に生まれてくる。ブランドを維持するためには、
分野毎に努力をして行くことも必要で、それが宣伝効果にもつながる。
>委員⑭
ブランドの価値は、いい物を作れば出てくる。
136
各農家のサプライチェーンを一箇所に集めることでレッテルの価値が生まれる。
>座長
九州ブランドがあればこんなことができる。といったことは何か?
>委員②
九州という一つの島の中で、まとまりができると強いチームになる。
九州のモノ作りの職人を集めて九州テクノパークを作り世界に発信する。海外のお客様
に、九州の製造業を一カ所で見せることができ、他にはないユニークな一体化した動きと
なる。その頭として、「九州ブランド」があれば、中小企業の一体化にもつながる。
>座長
資料「九州ブランド」のイメージをどう描くか? の説明。
・マーク
・なぜ CI か?
・Vision
・ビジョンの弊害
・キャッチフレーズ
九州の包括的イメージでブランドを考えて普及させる努力が必要である。
九州イメージはどういったものがあるか?
>委員⑦
一番難しいのは方向性。ブランドを作る時にはプロセスをしっかり考える。
最初は狭いエリアでモデル的なものから始めて行く。
例えば、「食」にこだわる香港やシンガポールに対して、「食」と観光を結びつけたブラ
ンド戦略を作り、成功事例を作って行くことにより九州でまとまっていく。
>委員⑥
ブランドというのは作ろうと思って作れるものではない。継続的にいったん決めたら続
ける。経済利益がありそうだと思わせ続ける仕組みと汗をかく人が得をする仕組みが必要。
ターゲットを決めることも重要。
>委員⑪
現実的じゃない話だが、日の丸の中に『くまモン』がいるので、くまモンを九州のブラ
ンドとして活用するというのがてっとり早い方法の例である。
地域イメージで封筒や発表資料の端っこに入れるなど、ちょっとしたところで使えるも
のができれば良いのではないかと思う。
九州観光としての成功例でいうと『緑と太陽の国、九州』がある。
>委員⑤
頭から何かをかぶせるというのが統一効果として良いのではないかと思う。
ロゴを作るのであれば、お金を掛けて PR することが大事。
観光宣伝をするときには、必ず九州のロゴを見せるなど、宣伝する機会を増やす。
137
いろいろな場面、各県で使うことで浸透していく。
>委員⑨
九州の統一的なイメージはない。
それぞれの地域の個性があるからこそ統一的なイメージがないのだから、それを逆手にと
って、「ななつ星」にもあるように「7」を打ち出していくのはどうか。7 つの個性が 1 つ
になっているようなイメージ、それが九州のイメージだと押していく。
>委員⑧
「JAPAN」というのは入れるべきだと思う。九州としてひとつなれる言葉を作って、そ
れにロゴを入れる。例えば「エリア9」。
ブランドを育てるために時間をかける必要があるかもしれないが、期限を決めて考えて
いかないとブランドは消えていく
日本の港は世界に知られていないが、博多湾はアジアに向かってだと非常に近い。その利
点をブランド化できないか。博多湾を大きくする必要はなく、釜山にさえつなげば世界中
につなげることができる。それが博多のメリットであり、物流のブランド価値が生まれる。
人が作ったものを利用するというのも有りである。
留学生に商売のノウハウを教えて自国に戻った後の宣伝・販売に利用できると良い。
>委員⑫
キャッチフレーズ的なものを作るとしたら、民間の人に使ってもらえるようなものを作
らなければ意味がない。ユーザー側の視点で使えるものにして、イメージだけを PR すると
経済効果も出る。
九州のさまざまな歴史的ストーリーの紹介と九州ブランドマークを外国人向けの雑誌や
コンテンツに載せたり、お店などのチラシに載せるなどをすると口コミで広がっていく。
マークに関しては公募してみるのも良い。日本だけじゃなく、香港、台湾、上海などで
公募すると PR になるのではないか。
>委員②
私もマークは公募が良いと思う。マークはシンプルがいい。
ユニークな九州ブランドを作ってもらいたい。
>委員④
ターゲットをどこにするか。
アジアを中心とした海外の場合、彼らが一番欲しがっているのは安心・安全。
「SAFETY 九州」「SAFE 九州」など、安心・安全を売りものにする。
食、医療品、病院、クリーンエネルギー・水・環境など、全てを安心・安全で切り取った
形で開発できないかと思う。
国内向けの場合、九州を想像したときに、他のところ地域と違って一つの島国。
「つながる九州」時代がつながる、地域がつながる、企業がつながる
という意味。
消えていきそうな産業を保護していくために、ブランドという冠を付けてもう一度再生し
138
て行けるようなセーフティーネットワークのようなものを作れるといい。
>委員⑭
安心・安全・高品質しかない。日本という名前も九州という名前もつけなければいけな
い。
九州としてのブランドをどう作っていくか。
これは市場に任せるしかない。市場で出てくるものを取り上げる。
当分の間は日本が持っている安心・安全・高品質のイメージで食を売っていく
■
座長総括
>座長
九州ブランドは必要である。ということは提案の通りであった。
3回のワーキンググループにおいて、これを考える時のポイントについて多々ご指摘を
いただいた。
これらをどう織り込んで九州ブランドを形にして行くのかについては局長に委ねること
として、是非、ここでの議論を形にしていただくことをお願いする。
>委員⑮
名刺に九州ブランドマークを付けるだけでも効果があり、身近なところから運動はでき
る。
生み出す人、育てる人の両方があるが、生み育てる方々の人数を増やして行く必要があ
る。そういう中で、座長にもらった宿題を具体化してより大きく広げて解決して行きたい。
<<参考資料>>
講演資料の内、公開が許されたものを以下に添付する。
講師により、一部非公開としたものもある。
139
Fly UP