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往復ピストン式内燃機関の 排気中の環境汚染物質

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往復ピストン式内燃機関の 排気中の環境汚染物質
名古屋工業大学機械工学科(エネルギプログラム) 古谷
往復ピストン式内燃機関の
排気中の環境汚染物質
名古屋工業大学機械工学科(エネルギプログラム) 古谷
火花点火機関
窒素酸化物
未燃炭化水素
一酸化炭素
名古屋工業大学機械工学科(エネルギプログラム) 古谷
Operating principle of
4-stroke-cycle spark ignition engine
Stroke
Intake
Compression
Expansion
Exhaust
Intake valve
open
close
close
close
Exhaust valve
close
close
close
open
Piston motion
downward
upward
downward
upward
火花点火機関の燃焼期間
1.遅れ期間(preliminary period)
2.主燃焼期間(period of proper burning)
3.後燃え期間(period of after burning)
クランク角
火花点火機関での火炎伝播と筒内圧力
点火プラグ
Crank Angle
火炎は点火プラグを中心に球状に伝播する.
当量比と NO 排出濃度 (火花点火機関)
当量比 0.95 付近で NO は最高値
量論近傍では燃焼温度は高くなる.
水蒸気濃度と NO 排出濃度(火花点火機関)
湿度が高いほど NO は少ない
湿度が高いほど燃焼温度は低い
点火時期,吸入負圧と NO (火花点火機関)
intake
manifold
vacuum
(mmHg)
speed
(rpm)
▲
0.97
102
2500
□
1.37
102
2500
▼
0.96
406
1500
○
1.27
406
1500
点火時期は早いほど NO は多い.
点火時期は早いほど高温維持
吸気負圧が小さい(負荷が高い)
ほど NO は多い
吸気負圧が小さいほど高温
NO を燃焼場で削減するには
1.酸素を残留させない ・・・ 内燃機にはそぐわない
2.維持時間を短く
3.燃焼温度を下げる
・・・ 内燃機にはそぐわない
・・・ 排ガス再循環 EGR
リーンバーン火花点火機関
未燃炭化水素
機関に投入された燃料の一部が二酸化炭素と水にならずに排気として
排出される.
燃料とは違う炭化水素(アルデヒド類,アルケン類,芳香族)が検出される.
燃焼反応過程が不完全で終わったことを示す.
炭化水素が排出されるのであれば,
その機関は燃焼効率は低く,熱効率は低いことになり,
なにより環境汚染の原因になる.
未燃炭化水素の発生源
1.燃焼室中の狭隘部分 (Crevice)
ピストンヘッドとシリンダーとの間(ピストンクレビス)
シリンダーとシリンダーヘッドとの間のヘッドガスケット近傍
放電電極の周辺,バルブシートの周り
最も重要な領域はピストンクレビス
圧縮行程では混合気は押し込まれるが,膨張行程では逆に放出される.
これらの領域では熱損失が多いために火炎は伝播できない.
未燃炭化水素の発生源
2.潤滑油層 (Oil layers)
燃焼室にシリンダー壁にあるべき潤滑油が侵入しており,その潤滑油
が溶かし込んだ燃料を放出する.
3.付着物 (Deposits)
炭素質の付着物がバルブ,シリンダー,ピストンクラウンにある.
これらの付着物の表面は多孔質状になっており,
火炎はそこで消炎する.
4.液相の燃料
燃料には沸点の高い成分が含まれている.特に冷間始動時には蒸発
せずに,ピストンクレビや付着物に吸収される.
5.器壁近傍消炎
付着物や潤滑油層がないとしても,
器壁面の近傍での温度は低いために消炎が起こる.
未燃炭化水素排出過程
Blowdown (排気弁が開いた直後)
燃焼ガスの排出速度は高い.このため,
付着物,潤滑油層,キャビティから炭化水素は引き出される.
排気行程中
ピストンとシリンダーとの間に形成される
大きな渦によって器壁近傍の炭化水素が排出される.
三元触媒による排気清浄
三元とは NO,CO,HC
触媒は Pt/Rh/Pd
この3種を全て分解するためには
酸化と還元の双方を行う必要がある.
CO + O
→ CO2
(酸化反応)
HC + O
→ H2O + CO2
(酸化反応)
NO
→ N2 + O2
(還元反応)
故に,
適用できる量論近傍での空燃比でしか,作動しない.
ディーゼルエンジンは希薄燃焼であるので三元触媒は適用できない.
また,例えば,酸化反応 (発熱) だけであれば触媒は過熱.耐久性が損なわれる.
圧縮着火機関
窒素酸化物
すす
Operating principle of
4-stroke-cycle compression ignition engine
燃料噴射装置で圧縮上死点近傍で燃料供給
火花点火装置はない
軽油,重油を用いる.
圧縮着火機関の燃焼期間
A - B 着火遅れ期間
物理的着火遅れ + 化学的着火遅れ
加熱時間 + 蒸発時間
B - C 爆発的燃焼期間
予混合燃焼
C – D 制御燃焼期間
拡散燃焼
実際の圧力履歴,熱発生率
A
B
C
D
噴霧の燃焼
噴霧の先端部で着火
ディーゼル燃焼場での NO , HC , Soot
予混合燃焼
拡散燃焼
圧縮着火機関での NO
負荷を上げると筒内ガス温度は高くなる.
噴射式を早くすると筒内ガス温度は高くなる.
IDI/NA – 副室式 / 自然吸気
DI/NA – 直接噴射式 / 自然吸気
圧縮着火機関でも
当量比が高くなるに従って
NO は増加する.
圧縮着火機関に特有な未燃炭化水素発生源
ボア-が小さな圧縮着火機関では噴霧は燃焼室に衝突する.
衝突噴霧は潤滑油層,付着物,クレビスに捕捉される.
噴射された燃料の移動速度はやがて落ちていく.速度が落ちれば
混合気形成は滞るために,酸素濃度が低い領域ができる.
着火遅れが長くなる環境(冷間始動)では燃料濃度が低い領域が
できやすくなる.
PM (Particulate Matter)
ディーゼル機関から排出される PM
PM の生成機構
C2H4 C2H2
C3H3 C4H6
不飽和炭化水素
多環芳香族炭化水素 (PAHs)
すす
PM 酸化
一旦は生成されても,
その後の燃焼場で酸化されるが,
酸化しきれないすすが排出される.
PM を燃焼場で削減するには
1.酸素を残留させる
2.維持時間を長く
3.燃焼温度を上げる
・・・ 希薄燃焼
・・・ 内燃機にはそぐわない
・・・ 窒素酸化物増大
まとめると
1.NO を低減するためには,燃焼温度を下げる.
2.UHC を低減するには,燃焼温度を上げる.
3.PM を低減するには,燃焼温度を上げる.
単純な燃焼温度の調整では
これらの物質を同時に低減することは難しい.
排ガス規制
大気汚染公害訴訟
1978年 4月 西淀川公害訴訟
1996 年 5 月 東京大気汚染公害訴訟(一次訴訟)
自動車メーカの責任が始めて問われた
1999 年 8 月 東京都「ディーゼルNO作戦」開始
2000 年 1 月 尼崎公害訴訟で一審判決,PM 排出差し止め
2001 年 12 月 尼崎公害訴訟で国、道路公団と和解成立、全面解決
大型車の排ガス規制値の変化
10 年間で
NOx は 8 分の 1
PM は 25 分の 1
最終目標値
NOx :0.2 g/kWh
PM :0.01 g/kWh
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
大型車の排ガス規制値の変化
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
大型ディーゼル車とガソリン車の排ガス規制値
大型ディーゼル車でのポスト新長期規制値
NOx :0.08 g/km
PM :0.005 g/km
ガソリン車(10/15モード 平均基準値)
平均基準値
CO(g/km)
HC(g/km)
NOx(g/km)
昭和48年規制
18.4
2.94
2.18
昭和50年規制
2.1
0.25
1.2
昭和51年規制
↑
↑
0.6/0.85
昭和53年規制
↑
↑
0.25
平成12年規制
0.67
0.08
0.08
平成22年規制
1.92
0.08
0.007
ディーゼル車の09年規制値(上限値)
ディーゼル車
PM (g/km)
HC(g/km)
NOx(g/km)
乗用車
0.007
0.032
0.11
軽量車
0.007
0.032
0.11
中量車
0.009
0.84
0.20
重量車
0.013 g/kWh
0.23 g/kWh
0.23
ディーゼル排気浄化の取組
後処理での対応
PM 対策 : 酸化触媒,連続再生式 DPF
NOx 対策 : 尿素 SCR,NOx 吸蔵還元
機関本体での対応
噴射系
排気再循環 EGR
過給
後処理での対応
ディーゼル排出ガス後処理技術投入年次
新短期規制
短期規制
新長期規制
ポスト
新長期規制
長期規制
酸化触媒
連続再生式 DPF
尿素 SCR
NOx 吸蔵還元
1995
2000
2005
2010
2015
PM 対策 : 酸化触媒,連続再生式 DPF
NOx 対策 : 尿素 SCR,NOx 吸蔵還元
年
窒素酸化物低減
尿素選択還元システム(尿素 SCR)
還元剤である尿素 ((NH2)2CO)の水溶液を
排ガスに噴射,加水分解でアンモニアとして,
NO を還元する.
(NH2)2CO + H2O → 2NH3 + CO2
4NH3 + 4NO + O2 → 4N2 + 6 H2O
4NH3 + 2NO2 + O2 → 3N2 + 6H2O
Ref. 下田 正敏 ら,自動車技術,vol. 60,No. 9,pp.64-69 (2006).
尿素 SCR システムの課題
1.インフラ(尿素水供給基地,品質管理)
2.低排気温度時の浄化性能
3.アンモニアの排出
4.尿素水欠水時対応
故障車扱いになる.
触媒温度の影響
Ref. 下田 正敏 ら,自動車技術,vol. 60,No. 9,pp.64-69 (2006).
NOx 吸蔵還元触媒 NOx Storage Reduction (NSR)
希薄 (リーン) 運転時:NOx を硝酸塩の形で吸蔵
ごく短い時間,燃料を多く投入 (リッチ環境) として
還元剤としての CO や HC を発生させて,硝酸塩からも
酸素を奪取 (還元) させる.
Ref. 石井 素,自動車技術,vol. 60,No. 9,pp.107-111 (2006).
NOx 吸蔵還元触媒の課題
1.燃費悪化と負荷変動
2.浄化性能
3.硫黄被毒
4.触媒の耐久性と信頼性
粒子状物質 (PM) 低減
Diesel Particulate Filter (DPF)
PM 除去率:概ね 80 % 程度
いすゞの DPD(Diesel Particulate Defuser)
http://www.isuzu.co.jp/museum/tms2004/powertrain.html
後処理での対応
PM 対策 : 酸化触媒,連続再生式 DPF
NOx 対策 : 尿素 SCR,NOx 吸蔵還元
機関本体での対応
噴射系
排気再循環 EGR
過給
ディーゼル排出ガス対策(エンジン)技術投入年次
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
噴射系での対応
噴射時期と噴射圧力が PM と NOx の排出量に及ぼす影響
噴射圧力を高くすると,
混合気形成が促進されるので,
良好な燃焼場(温度が高い)が
形成されるので,
PM は減少するが,NO は増加する.
噴射時期を遅らせると,
高温である時間が短くなるので,
NO は減少するが,過度の遅延は
PM の増加だけではなく,
燃焼自体も不安定にする.
噴射系での対応は
・ 噴射圧力を高く
・ 高精度の噴射時期制御
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
コモンレールシステム
http://www.denso.co.jp/ja/news/topics/2013/130509-01.html
インジェクターの動作
ソレノイドインジェクタよりもピエゾインジェクタの方が応答速度は高い.
コモンレールシステム (CRS) 電子制御ユニットインジェクタ(EUI)
高圧噴射
PM 低減に効果的である.昔は 160 bar 程度
現時,1 800 bar ,将来的には 2 500 bar へ
ただ,NOx は増加する傾向にある.
複数回噴射
プレ噴射,メイン噴射,ポスト噴射等
現時,3 回,将来的には 5 回
高精度燃料噴射量制御
噴霧形態,燃焼室形状の最適化が可能
噴射圧力の年次推移
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
多段噴射
パイロット噴射の例
パイロット噴射
排ガス再循環 EGR
EGR 率と酸素濃度が NOx 排出量に及ぼす影響
EGR率を高くすると NO 排出量は
減少する.
EGR 率 ≡
EGRガス量
吸入新規量 + EGRガス量
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
EGR の種類
外部 EGR と内部 EGR
排気バルブ 吸気バルブ
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
外部 EGR
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
過給の効果
過給の効果
筒内空気密度が増加 → 燃料噴霧と空気との混合が促進 →
過濃領域が縮小 → 黒煙濃度低減,NO は増加
Ref. 鈴木孝幸,ディーゼルエンジンの徹底研究,グランプリ出版
エネルギーバランス表
変換過程での損失量 = 7117 ×1015 J
変換過程での損失量
= 32.2 %
一次エネルギー国内供給
変換過程での損失量は
天然ガス,原子力,水力・地熱などよりも
大きい.
電力消費
民生家庭: 1099
民生業務: 1236
産業
: 1189
総計
運輸用消費
運輸旅客: 2133
運輸貨物: 1297
総計
: 3430
運輸用消費エネルギ量は
最終エネルギー消費量の 15.5%
電力消費は 23.5% に達する.
: 3524
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-0.html
エネルギー消費動向と自動車交通
A. CO2 排出と自動車
1.CO2 排出問題が難しい理由とは?
2.CO2 排出削減目標
3.CO2 排出はどの部門から?
4.自動車道路交通の特徴
5.自動車単体での省エネ技術動向
6.石油資源からの脱却へ
1.CO2 排出問題が難しい理由とは?
地球規模での気候変動問題
気候変動問題としては,
1.オゾン層破壊 原因物質:フロン
2.酸性雨 原因物質:窒素酸化物,硫黄酸化物
3.温暖化 原因物質:二酸化炭素排出量
フロンによるオゾン層破壊
•
オゾン層:15 ~ 30 km
•
冷凍機や熱機関で使用される冷媒で
ある,フロンガスが原因
フロン (CFC-12 CCl2F2) は紫外線を受けて
塩素ラジカル Cl を発生させる.
Cl + O3 → Cl O + O2
Cl O + O3 → Cl + 2 O2
Cl が連鎖担体となっている.
フロンよりも難しいCO2排出削減
フロンは微量でもその影響は大きい.
フロンは先進国で製造されているので,
排出をコントロールしやすい.
これに対して,
CO2排出はエネルギー消費に伴うもの
よって,全世界から排出される.
CO2 排出をコントロールすることは難しい
CO2排出削減に向けたこれまでの経緯
1973年 ローマクラブ (The Club of Rome) レポート
二酸化炭素炭素排出量低減の困難さが指摘されている.
その後の石油危機でしばらくは忘れられていた.
1988年 トロント会議
具体的な対応策が議論されたが,具体的な制約はなし.
1997年 京都会議
実際に具体的な制約を掛けたのは京都議定書から.
先進国(付属書1国)排出量の90年比,5% 削減,
ただし,途上国は制約を受けない.
CO2排出削減が難しいもう一つの理由
本質的には炭素循環の問題であるので,慣性が大きい.
*炭素循環:「水の循環」のように人間活動の有無に関わらない.
慣性が大きいとは?
一年間での全世界でのエネルギー消費量は太陽エネルギーのほぼ
0.01% 程度.
カーボンサイクルの微量な平衡条件のずれで蓄積されるので,なかなか
気付かない.実感を伴わない.
ずるずると時間だけが流れていく
2. CO2 排出削減目標
世界のエネルギー消費動向
アジア太平洋は増加
原子力・ガスは順次増加
近年,石炭消費量は増加
日本は世界平均消費量の 2 倍 合衆国は 4 倍
CO2削減の目標値
Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC) の提言
地球環境の安定化には,現在の化石燃料の消費量の三分の一程度に
途上国の人口は将来,日本の 2 倍へ
もし,途上国の消費レベルが日本並になれば,
人口 2 倍 × 日本のエネルギ消費量は全世界平均の 2 倍 =
将来の化石燃料消費量は現在の 4 倍
将来,化石燃料消費は現在の一桁下げる必要がある.
1
4
3
1
12
IPCC : WMO の研究分科会
WMO : 国際気象機関(International Meteorological Organization,
1873年設立)が前身.1950年より国連の機関としての運営
3.CO2 排出はどの部門から?
日本のエネルギー消費の部門分類
産業 (48.0% )
製造業,農林水産業,鉱業,建設業(約 9 割は製造業)
日本では 70 年代から増加していない.
石油依存体質から徐々に脱却中
民生 (28.0%)
家庭部門 (47%) :家庭消費部門でのエネルギー消費
自家用自動車等の運輸関係を除く
業務部門 (53%) :企業の管理部門等の事務所・ビル,
ホテルや百貨店,サービス業等の第三次産業
電力消費であり,火力発電が CO2 排出に関係する
運輸 (24.0%)
旅客部門 (約 6 割):乗用車やバス等
貨物部門 (約 4 割):陸運や海運、航空貨物等
なお、2003年度における運輸部門のエネルギー源の構成比は
ガソリン等の石油系燃料がほぼ全量を占め,電力は 2 % 程度
日本でのエネルギー消費の年次変化
増加:運輸部門と業務部門
飽和:産業部門
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-1.html
民生部門のエネルギー消費構成
家庭部門は、自家用自動車等の運輸関係を除く
業務部門は、企業の管理部門等の事務所・ビル、ホテルや百貨店、
サービス業等の第三次産業におけるエネルギー消費を対象
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-2.html
世帯当たりのエネルギー消費原単位と
用途別エネルギー消費の推移
動力 (冷蔵庫や洗濯機等) ・照明用のシェアが増加
エアコンの普及等により冷房用が増加
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-2.html#n15
家庭部門におけるエネルギー源の推移
電力の増加が顕著 (火力発電分は CO2 排出量に関連)
家庭における世帯当たり待機時消費電力量は、
家庭の世帯当たり全消費電力の6.0%.
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-2.html#n15
日本のエネルギー消費の部門分類
産業 (43.9% )
製造業,農林水産業,鉱業,建設業(約 9 割は製造業)
日本では 70 年代から増加していない.
石油依存体質から徐々に脱却中
民生 (33.2%)
家庭部門 (14.4%) :家庭消費部門でのエネルギー消費
自家用自動車等の運輸関係を除く
業務部門 (18.8%) :企業の管理部門等の事務所・ビル,
ホテルや百貨店,サービス業等の第三次産業
電力消費であり,火力発電が CO2 排出に関係する
運輸 (22.9%)
旅客部門 (約 6 割):乗用車やバス等
貨物部門 (約 4 割):陸運や海運、航空貨物等
なお、2003年度における運輸部門のエネルギー源の構成比は
ガソリン等の石油系燃料がほぼ全量を占め,電力は 2 % 程度
輸送部門の消費エネルギー消費構成
旅客部門は貨物部門の 1.7 倍弱
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-2.html#n15
旅客輸送でのエネルギー消費
旅客輸送でのエネルギー消費は乗用車が 86.2%
エネルギー源は石油である.
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-2.html#n15
貨物輸送でのエネルギー消費
エネルギー消費はトラックが 90.1%
ほぼ石油 (重油・軽油・ガソリン)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012energyhtml/2-1-2.html#n15
どこから CO2 は排出されるのか?
1.エネルギー消費量が増加しているのは
運輸部門
民生部門(主に電力使用,火力発電が CO2 関与)
2.規制を掛けやすいのは運輸機器メーカ
3.運輸部門の燃料は石油系燃料
4.運輸部門の主力使用機器は自動車
民生を忘れてはならないが,
「道路交通が CO2 排出量削減のターゲット」
では,CO2 排出量削減の目標値は?
4.自動車道路交通の特徴
道路交通が急増する理由
1.便利で快適
Door to Door
短距離から長距離まで万能
乗り換えがない.
2.低コスト
公共財である道路を利用
自家用であれば人件費が不必要
限界コストは燃料費
自動車の価格弾力性は極めて低い
道路交通の課題(その1)
1.古典的環境問題 (騒音,振動,交通混雑,交通事故)
2.排ガス問題
3.エネルギー安全保障と確保 (産油国の政情不安)
4.インフラ整備
途上国は言うまでもなく,
先進国でも人口密度が低い場所では整備が遅れている.
5.自動車交通はエネルギー効率は低い.
道路交通の課題(その2)
途上国では
1.高い依存度
先進国に比べて極めて高い
鉄道輸送は線路の敷設,保持,
車両購入,整備,システム管理
など,導入までに長い時間と莫大な費用
が必要
2.未整備中古車両
奥地では20年前の日本車が
タクシーなどに使われている.
もともとの性能が悪い上に,
メンテナンスも悪い.
自動車交通問題に対する枠組み
(ⅰ)自動車単体レベルでの対応
(ⅱ)交通インフラ改善
(ⅲ)自動車交通の利用形態の合理化 (輸送マネージメント)
(ⅳ)総合的な交通輸送政策
「自動車単体レベル」以外の枠組み
(ⅱ)交通インフラ改善
道路容量が飽和するまでは自動車単体での対応よりも改善効果は高い.
(ⅲ)自動車交通の利用形態の合理化 (輸送マネージメント)
(ⅳ)総合的な交通輸送政策
税制,補助金,グリーン自動車税
Road pricing,あるいはCongestion Charge(渋滞税).
環境税や炭素税
先進国の方向
合衆国:エネルギー安全保障の面から,バイオマスアルコール
欧州:CO2排出削減とエネルギー効率向上の面から,バイオ燃料と
ディーゼルを推進.
日本:脱石油依存,京都議定書,自動車産業優位性確保の面から,
ハイブリッド車技術の確立,燃料転換,燃料電池車
メーカはいずれの国々からの要求にも対応しなければならない
5.自動車単体での省エネ技術
想定されている次世代自動車技術
1.燃料電池 FCV 車(炭化水素改質,直接水素利用)
2.電気自動車 EV 車
3.ハイブリッド HV 車(ガソリンHV,ディーゼルHV)
4.クリーンディーゼル車
5.CNG ,バイオマス ICV 車
6.軽量化
総合効率 (Well to Wheel)
総合効率 = 燃料効率 × 車両効率
Well to Wheel = Well to Tank × Tank to Wheel
燃料効率:Well(油井)to Tank(クルマの燃料タンク)
燃料を採掘・製造して給油するまでの効率
車両効率:Tank to Wheel(車輪)
タンク内の燃料を消費して,クルマが車輪で走行する効率
Ref. http://www.toyota.co.jp/jp/tech/environment/fchv/kouritsu.html
燃料効率 (Well to Tank)
水素ガスの効率の幅が大きい
総合効率 (Well to Wheel)
電気自動車が最良
次善はディーゼル HV
ただ,
鉄道 (0.186 MJ/km)は
EV 車の 20 % 程度
Ref. http://www.jafmate.co.jp/mate-a/cvnews/report/rep200603fcev.html
電気自動車の紹介
1873年(明治6年)
イギリスでロバート・ダビットソンが実用電気自動車初成功。
(鉄亜鉛電池(一次電池)使用)
1909年(明治42年)
トマス・エジソンがニッケル・アルカリ蓄電池を開発、
蓄電池搭載の電気自動車を製造。
(一充電走行距離は160km)
当時、鉛電池搭載の電気自動車走行距離が80km
日本での歴史
1937年(昭和12年)
商工省より助成を受けて
中島製作所と湯浅電池が新設計の電気自動車を製作
Ref. http://www.cev-jari.jp/h18_kouhou/rekishi.html
電気自動車の近年の動向(その1)
80年代:電動車両協会設立
90年代:カリフォルニア規制への対応
(はじめての規制を伴う本格的な電気自動車の推進政策)
1996年(平成8年)電気自動車等普及整備事業開始
トヨタ自動車(株)「RAV4L V EV」販売
本田技研工業(株)「EV PLUS]発表
トヨタ自動車(株)
本田技研工業(株)
RAV4L V EV最高時速:125km/h一充電走行距離:215km
(10・15モード)
電動機:永久磁石型同期電池:ニッケル水素価格:495万円
EV PLUS最高時速:130km/h一充電走行距離:220km
(10・15モード)電動機:永久磁石型同期電池:
ニッケル水素リース料:26.5万円/月
Ref. http://www.cev-jari.jp/h18_kouhou/rekishi.html
電気自動車の近年の動向(その2)
2000年(平成12年)
自宅のコンセントで手軽に充電できる電気自動車が登場
日産自動車(株) ハイパーミニ
都市コミューターカー用として開発
アルミフレーム採用の軽自動車
最高時速:100km/h
一充電走行距離:130km(10・15モード)
電動機:永久磁石型同期
電池:リチウムイオン
価格:350万円
トヨタ自動車(株) e-com
共同利用の新しい交通システムの
実証試験用コミューターカーとして開発
最高時速:100km/h
一充電走行距離:100km(10・15モード)
電動機:永久磁石型同期
電池:ニッケル水素
Ref. http://www.cev-jari.jp/h18_kouhou/rekishi.html
電気自動車の近年の動向(その3)
三菱自動車(株) i MiEV
2006 年
一充電走行距離:180km
電動機:永久磁石型同期
47 kW
電池:リチウムイオン
価格:260万円~
日産自動車(株) リーフ
2009 年
一充電走行距離:228km
電動機:永久磁石型同期
80 kW
電池:リチウムイオン
価格:290万円~
Ref. http://ev.nissan.co.jp/LEAF/EXTERIOR/
Ref: http://www.mitsubishi-motors.co.jp/i-miev/performance/
電動力駆動の特性
優位点
・軸対象構造であり,連続的にトルクを発生.制振動要素は不要
・回生制動が可能.
・許容起動トルクが最大になるので,アイドリングが不要,スムースな発進
・強力永久磁石界磁発生による軽量化
・走行時はゼロ排出
問題点
・熱源がないので暖房時に外部エネルギーが必要.
・搭載エネルギー密度に限界,大深度放電による電池の短命化
・インフラ (充電スタンド,急速充電急速充電) 整備
・コスト面からのユーザメリットがまだ少ない
購入補助金は少額.
ユーザにとってはCO2排出策でのコストパフォーマンスは低い.
「エンジン停止」「制動エネルギー回生」も大きい.
ハイブリッド車の種類
シリーズ・ハイブリッド
駆動力は内燃機ではなく電動機から供給される.
内燃機は電動機のための発電・充電を行う.
アウディ,スズキ
パラレル・ハイブリッド
駆動力は内燃機と電動機と並行して行われる.
内燃機は電動機のための発電・充電を行う.
内燃機と電動機とは直結,クラッチのいずれかで連結されている.
トヨタ THS-M,ホンダ IMA,ニッサン S-Hybrid,スズキ ene-charge
コンバインド・ハイブリッド
パラレルハイブリッドとシリーズハイブリッドの両方の動作を行う.
遊星歯車機構で内燃機と電動機は連結されている.
トヨタ THS-II,THS-C & E-Four
シリーズ・ハイブリッド
トヨタ コースター (1997~2007年)
5E-FE 型エンジン (1500cc) で発電
Ref., 飯塚昭三,ハイブリッド車の技術とその仕組み,グランプリ出版
http://response.jp/article/img/2011/11/28/166079/383806.html
http://www.suzuki.co.jp/about/csr/environmental_technology/
パラレル・ハイブリッド
Ref., 飯塚昭三,ハイブリッド車の技術とその仕組み,グランプリ出版
パラレル・ハイブリッド
車両停止時
トヨタ THS-M
電磁クラッチでエンジンと
モータを連結
内燃機は停止
電磁クラッチは開
モータ/発電機(MG)をモータとして作動させて,
コンプレッサー等の捕機を駆動
(アイドリングストップ中でもエアコンは作動)
発進時
MGで車両を駆動しながら,
内燃機を再始動
(初回はスターターで始動)
走行時
内燃機で車両を駆動
バッテリー充電量が不足している場合には,
MGを発電機として充電する.
減速時
回生制動でバッテリーを充電
http://www.toyota.co.jp/jp/news/03/Apr/nt03_0409.html
パラレル・ハイブリッド
ホンダ IMA
内燃機とモータは直結
リーンバーン VTEC エンジン
・ 点火プラグは2本(点火時期は独立)
・ 水平方向と垂直方向の旋回流同を強化
・ 燃焼室のコンパクト化で高い圧縮比を実現
パラレル・ハイブリッド
低速はモーターアシストが強い.
これはモータが低速で効率が高いため.
ニッケル水素バッテリーを使用
パラレル・ハイブリッド
ニッサン フーガハイブリッドシステム
バッテリー
インバーター
Nissan FF Hybrid System | AutoMotoTV
https://www.youtube.com/watch?v=PlyeuOJgwi0
パラレル・ハイブリッド
スズキ
http://www.suzuki.co.jp/car/wagonr/performance_eco/?data=b#sgt_2
パラレル・ハイブリッド
ニッサン S-HYBRID
http://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/shybrid.html
コンバインド・ハイブリッド
トヨタ THS
THS では電動機/発電機
(MG)ではなく,
モータと発電機を装備している.
遊星歯車で内燃機と電動機を連結
http://ecocar.autocone.jp/special/291915/photo/0004.html
Ref., 松本廉平,自動車の環境対応技術入門,グランプリ出版
コンバインド・ハイブリッド
トヨタ THS
内燃機は燃料消費率が低い領域
で運転する.
低車速域では駆動力が足りないの
で,
内燃機→発電機→電動機
車速が高くなるに従って,
バッテリー→電動機
の駆動力も加える.
Ref., 松本廉平,自動車の環境対応技術入門,グランプリ出版
コンバインド・ハイブリッド
トヨタ THS
発進/軽負荷時
内燃機は停止,もしくは空回り
バッテリーからの電力で電動機を駆動
通常走行時
内燃機は走行駆動と発電機を駆動
発電機からの電力で電動機を駆動
これらの駆動力は動力分割機構で最適化
全開走行時
通常走行時に加えて,
バッテリーからの電力で電動機を駆動
減速時
内燃機は停止,もしくは空回り
回生制動でバッテリーを充電
Ref., 松本廉平,自動車の環境対応技術入門,グランプリ出版
コンバインド・ハイブリッド トヨタ THS-C
http://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75year
s/data/automotive_business/products_technology/t
echnology_development/hv-fc/details.html
後輪に電動機を装備する.
機構によるハイブリッドの分類
内燃機と電動機とは直結.全長は短くできる.減速回生時に内燃機も
動くので,回生効率は高くない.
内燃機と電動機との間にクラッチをつけて,①の欠点を克服.
電動機は1つなので,内燃機で蓄電池を充電しながら電動機で走行は
できない(シリーズハイブリッドにはならない).
② と機能は同じであるが,③ では電動機を変速機の後方に設置.
② では内燃機と電動機の動力が合わさって変速機に伝わる.
③ では内燃機と電動機との動力が変速機で合流する.
THS であり,独自の動力分割装置を持つ.電動機を2つもつので,
パラレル走行を含めて多彩なモードで運転できる.
低中速では内燃機は発電機を駆動し,蓄電池電力に余裕があれば,EV
走行する.高速域ではクラッチをつなぎ内燃機で走行する.内燃機は高
速域のみで駆動するので,変速機は搭載しない.
Ref., 飯塚昭三,ハイブリッド車の技術とその仕組み,グランプリ出版
ハイブリッド用エンジン
トヨタ THS 用アトキンスサイクル機関
圧縮比は従来並,膨張比は圧縮比よりも高い.
吸気バルブが閉まる時期をピストンが上昇し始めて
も開けておくと,吸気管に作動流体が逆流する.
吸気が閉まるときから圧縮は始まる.
スロットバルブ開度を大きくすることができるので,
吸気行程での絞り損失は小さくできる.
斜めスキッシュエリアをつけることで,筒内流動を強
化する.
Ref., 松本廉平,自動車の環境対応技術入門,グランプリ出版
ハイブリッド用エンジン
ホンダ リーンバーン VTEC エンジン
・ 点火プラグは2本(点火時期は独立)
・ 水平方向と垂直方向の旋回流同を強化
・ 燃焼室のコンパクト化で高い圧縮比を実現
モーター
誘導モーターはレアアースが必要ではないが非力
動悸モーターはレアアースを必要とするが強力
Ref., 飯塚昭三,ハイブリッド車の技術とその仕組み,グランプリ出版
電池
ニッケル水素電池
ハイブリッド車に搭載
リチウムイオン電池
プラグインハイブリッド車に搭載
Ref., 飯塚昭三,ハイブリッド車の技術とその仕組み,グランプリ出版
自動車単体での対応策
人的 CO2 排出 = 石油消費量
≒
エネルギー消費
CO2 排出目標値:現在値の 10 %
・CO2 排出 WtW 性能で
電気自動車(ガソリン車の 25 %)台数は半分に
電力の燃料効率と電池技術が Key Technology
・現実解決力で
ディーゼル HV 車(ガソリン車の 50 %)台数は 25 % に
排気清浄技術が Key Technology
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