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第六十二回:上海百貨店・モール事情

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第六十二回:上海百貨店・モール事情
第六十二
六十二回:
回:上海百貨店・モール事情
∼商業激戦区、拡散する商圏∼
常陽銀行上海駐在員事務所
1.上海は商業激戦区、「中国全国百貨店売上ランキング」
中国の百貨店売上ランキングトップ10と聞くと、上海の百貨店が上位を占めるだろう、と想像するこ
とと思いますが、意外にも実はそうではないのです。下表をご覧ください。上海の百貨店は、旧ヤオハ
ンと地場名店の2店舗のみです。
【中国全国百貨店売上ランキング推移】
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
1位
杭州大厦
杭州大厦
杭州大厦
北京新光天地
2位
上海第一ヤオハン
北京新光天地
北京新光天地
杭州大厦
3位
南京金鷹
上海第一ヤオハン
上海第一ヤオハン
上海第一ヤオハン
4位
武漢広場
南京金鷹
南京金鷹
南京金鷹
5位
上海新世界城
成都王府井
成都王府井
成都王府井
6位
成都王府井百貨
上海新世界城
ハルビン遠大
上海新世界城
7位
杭州銀泰
長春欧亜商都
武漢広場
武漢広場
8位
北京翠微
北京翠微
瀋陽中興
ハルビン遠大
9位
石家庄北国商城
武漢広場
西安開元商城
北京翠微
10位
上海久光百貨
瀋陽中興
北京翠微
長春欧亜商都
トップ10の顔ぶれはあまり変化がなく、順位が微妙に入れ替わっているだけです。
上海以外の百貨店は、いずれも沿海部及び中部の省の省都にある歴史を持った名店です。購買力平均
では上海・北京に及ばないものの、各地に富裕層が存在し、その人たちは古くから知名度や信用力のあ
る名店に足を運んでいる、という状況が窺えます。
上海に目を向けてみると、上海市の2012年一人あたりの可処分所得は40千元(約640千円、1元=16円)
、
同消費支出は26千元(約416千円)と全国トップですが、トップ10に上海の百貨店が名を連ねないのは、
上海が商業激戦区であることを示していると思われます。
上海には香港、台湾、タイ、マレーシア等、アジアや欧米の世界各地の資本が参入し、それぞれ百貨店、
モール、スーパー等を展開しています。その中に出店している高級ブランドも然り。また、ZARAや
H&M、GAP、UNIQLOといったSPAも独自にそれぞれのブランドの旗艦店といえる大型店を出す等、さ
ながら“ワールドカップ”の様相を呈しています。
かつての上海は中心部に商圏が集中しており、その中心は百貨店でした。最近では郊外に大規模で魅
力的なモールができたために、商圏は拡散しているように思われます。以下では、激戦区の上海の状況
を見てみましょう。
2.新規出店でホットな人気のモール
最近上海に出張でいらっしゃったお客様が、「上海はだんだん中国らしさが薄れてきましたね」とおっ
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しゃっていました。確かにかつての上海は、幹線道路のおしゃれな路面店から一歩裏道に入れば地元の
人々の様子が窺えました。その頃とは違い、面開発で大規模な商業施設が建っている現在の上海は、な
んとなく無機質な感じがします。
最近のモールの特徴は、複合施設化です。13本ある地下鉄に直結し、オフィス及びホテルとの複合施
設も多くなっています。また、ごく最近できた大規模なショッピングモールは、美術品を展示するスペー
スや習い事ができるスペースなど、文化的要素を含んだ商業施設となっており、人気を博しています。
そのような、最近出店したショッピングモールをご紹介します。
○『iapm(上海環貿広場)』
香港大手ディベロッパー新鴻基(サンフンカイ)が、淮海
地区に開発した地上6階、地下2階12万㎡の高級モールです。
11時まで営業しており(一部のレストランは朝まで)
、
「大人
向け夜型SC」というコンセプトです。高級ブランド店のほか、
映画館、屋外レストラン、スーパー等複合娯楽施設となって
iapmモール
います。
○『Ifc モール(上海国際金融中心)』
同じく香港新鴻基(サンフンカイ)が浦東地区に開発した
高級モールです。2010年4月開業、総面積10万㎡、オフィス
棟とホテル(リッツカールトン)を併設しています。
高級ブランドのほか、アップルストア上海第2号旗艦店、
香港系スーパー「シティスーパー」が目玉となっています。
○『グローバルハーバー(月星環球港)』
地場資本中国月星集団が2013年7月にオープンさせた面積
約32万㎡の上海最大のショッピングモールです。オフィス棟
と五星級ホテル、美術館、上海近代史やチャイナドレスの博
物館等を併設しています。外観は巨大な船のイメージで、内
装はヨーロッパ風となっています。とにかく広いという印象
で、お目当てのお店にたどり着くのが大変なほどです。
ifcモール(下:店内)
○『ルイ・ヴィトンビル(尚嘉中心)』
仏LVMHグループが開発、2012年オープンした高級モール
です。建築の意匠が奇抜で、エレガントなスカートをイメー
ジしたとのことですが、遠くから見るとオフィス棟との連結
で、まるでブーツのような外観が目を引きます。ルイ・ヴィ
トン等高級ブランドのほか、地下には日系スーパー(久光)
が入っており、さながら日本の「デパ地下」の様相です。
ルイ・ヴィトンビル
3.拡散する商圏
最近出店したショッピングモールの代表的なものを見てきましたが、以前はやはり市の中心部が買い
物の中心でした。最近では、郊外の商圏にも魅力的な商業施設ができており、自宅の近くでも買えるよ
うになってきました。各地の商圏をご紹介します。
(1)伝統的な中心部の商圏
(ア)人民広場・南京路商圏(地図❶)
人民広場はその名の通り、人々の憩いの場です。公園の南側には市政府、博物館、上海大劇院等の施
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設があり、まさに中心部の商圏です。伝統的な地元資本の百貨店が出店しており、地下鉄が3本交差し
ている人民広場の地下は、小規模店舗で形成された広大なショッピングモールとなっています。
南京路は、上海市中心部を東西に延びる道で、上海一の目抜き通りです。東側の歩行者天国は、旅行
者等で連日賑わっています。西側には、日系の百貨店や高層ビルの低層部分に高級ブランドショップが
並んでいます。H&M、GAP、UNIQLOが、軒を並べています。
○百貨店 地場系「新世界城」、「第一百貨」、日系「伊勢丹」「久光」
*「伊勢丹」は1993年に進出し、当時は伊勢丹の買い物袋がステータスとなるほどでした。南京西
路の梅龍鎮伊勢丹は1997年にオープン。
「久光」は香港そごうと上海九百集団の合弁により2004年
9月にオープンし、地下のスーパーが人気です。
(イ)淮海路商圏(地図❷)
上海の中心部の南側を東西に延びる道で、戦前のフランス租界(外国人居留地)は主にこの通り沿い
に作られました。このため、洋館の一軒家が数多くみられ、異国情緒あふれる街並みとなっています。
有名ブランドの路面店も多く、ZARAやH&M、UNIQLOといったSPAも軒を連ねています。
「gu」の上海
一号店もここのUNIQLOの中に入っています。代表的な商業施設は以下の通りです。
○百貨店 「パークソン(百盛)」、「太平洋」、「新世界」
*「パークソン」はマレーシア資本、1994年進出、中国18省34都市で百貨店を経営。「太平洋」は台
湾資本、1993年進出、中国で14店舗。
「新世界」は、香港資本、1993年から中国20都市、上海10店舗。
○モール 「iapm」(前出)
(ウ)虹橋・古北商圏(地図❸)
1986年から開発されたサービス業をメインとする国家級開発区。主に日本人が多く住む場所です。北
側の虹橋地区には在上海日本国総領事館があり、日系のオフィスビル・マンションが点在しています。
○百貨店 「パークソン」、「高島屋」
*「高島屋」は2012年12月にソフトオープン、2013年9月末にグランドオープンしました。日本人
が 多 く 住 む 虹 橋・
古 北 地 区 は、 今 後
の立ち上がりが期
7
待されています。
○モール 「ルイ・ヴィ
トンビル」
(前出)
5
(エ)徐家匯商圏(地図❹)
上海市中心部南西南部
8
1
の交通の要所です。
○百貨店 「太平洋」
「匯
6
2
金(地場資本)」
○モール 「港匯広場」
*香 港 コ ン グ ロ マ
リット「長江グルー
プ」傘下の恒隆地
3
4
❶人民広場・南京路商圏 ❷淮海路商圏 ❸虹橋・古北商圏 ❹徐家匯商圏 ❺虹口商
圏 ❻中山公園商圏 ❼五角場商圏 ❽陸家嘴商圏
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産が、1999年12月にオープンさせた高級モール。約7万㎡、地上6階、地下1階、オフィス棟併設。
(オ)虹口商圏(地図❺)
戦前には日本租界が、その東側には工場群があった場所です。古くから立ち上がっている商圏ですが、
最近では他の地区に押され気味です。
○百貨店 「新世界」
○モール 「龍之夢」
(カ)中山公園商圏(地図❻)
地下鉄が3本交差する中心部西北部の交通の要所です。
○モール 「龍之夢」
(2)新しく立ち上がってきた商圏
(ア)五角場商圏(地図❼)
上海市中心部東北側の交通の要所で、大学が多く若い購入層が多い地区です。
○百貨店 新世界百貨
○モール 万達広場
*中国流通最大手の百聯集団の開発。
(イ)陸家嘴商圏(地図❽)
国家級の開発区として90年代から本格的に開発が始まった上海の金融街で、比較的新しい商圏といえ
ます。開発当初、中心部は広大な公園等広々とした空間であったため、金融街で働く「白襟(ホワイト
カラー)」は昼食にも困ったほどでした。現在は、高層ビルが立ち並ぶ摩天楼です。私も5年ぶりに行っ
てみたところ、文字通り見知らぬ街になっており、その変貌ぶりに驚かされました。
○モール 「正大広場」
*タイの正大集団、約243千㎡、地上10階、地下3階、2002年10月開業。
2005年から家庭娯楽消費中心に方向転換し、2006年4月からはZara、H&M、UNIQLO等や、トイ
ザらス等の有名ファストファッションや玩具を誘致しています。特にZaraとH&Mが1Fに隣合わ
せで出店することになり、これは世界初ということで当時話題となりました。現在の来店客は、
平日が1日平均延べ18万人、週末は26万人という賑わいようです。
4.終わりに
以前は、自宅付近に大きな商業施設がなく、中心部の商業施設(百貨店)に大きな集客力がありまし
たが、最近では、郊外に大きなショッピングモールができ、自宅付近でも買い物ができるようになって
きました。ネットショッピングの成長等もあり、中心部の百貨店の集客力は落ちてきているのではない
でしょうか。
一方、最近のモールも、知名度や信用力がつき安定した集客力を有するまでになるには、オープン後
2∼3年はかかるとみられます。
香港、台湾、タイ、マレーシアといった国の資本の商業施設が人気の上海。
“ワールドカップ”での日
系商業施設の健闘に期待しましょう。
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