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海外への広告展開に関する国際課税上の問題について −移転価格課税と

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海外への広告展開に関する国際課税上の問題について −移転価格課税と
JTI国際課税委員会資料
海外への広告展開に関する国際課税上の問題について
−移転価格課税と寄附金税制再論−
2013年7月31日
一般社団法人日本経済団体連合会
経済基盤本部長 阿部泰久
1
経団連意見
日本の成長に資するジャパン・ブランドの強化に向けて
∼政府のクール・ジャパン戦略の推進にあたっての要望∼
2013年5月27日
経団連産業問題委員会
ジャパン・ブランド部会
4.その他政府の取り組みを急ぐべき事項
(2) 日本からグローバルに広告展開する経費の税制上の取り扱いの
明確化
現在、わが国においては、日本の企業が海外で商品広告を出稿する
際には、商品広告で便益を受けるのは海外子会社であるとの考え方に
立って、日本の本社が費用負担した場合には海外の子会社へ寄付を行
ったとみなされ、寄付金課税の対象となるおそれがあるとされている。
また、寄付ではなくグループ内取引とされた場合の移転価格税制につ
いては、取引の妥当な利益配分のあり方についての考え方が不明確で、
日本の企業が海外で広告を出稿することを躊躇する一因となっている。
海外における日系企業のイメージの一層の向上と、広告等におけ
るわが国コンテンツの活用等の促進の観点から、税制上の取り扱い
についての議論を進め、その予見可能性の向上を図るべきである。
2
問題の発端−某民法キー局よりの要望
海外でCMを流すスポンサーに対する税制優遇
現在の税制上、海外で放送される番組CMを日本法人が購入する
と、そのスポンサー企業グループ内で現地法人への贈与あるいは寄
付とみなされ、日本国内でその費用を損金算入できず課税される懸
念がある。企業CMの場合は、グローバルブランディング目的とす
れば問題ないともされるが、商品CMの場合はこの扱いとなる可能
性が高い。
スポンサーの中には、現地法人の体制や事業規模が小さいため、
現地の事業を育てるために、日本側から応援したいと考えている企
業がある。
クールジャパン戦略や、その尖兵となるわが国コンテンツ海外支
援の一環として、日本のコンテンツの発信をスポンサー提供する場
合には、上記の課税対象とならないことが明確化できれば、企業の
プロモーションと連携した、日本のプレゼンスを高めるコンテンツ
発信を拡大し、日本企業の海外展開を推進していくために有効であ
ると考える。
*韓国では、海外法人の広告宣伝費を韓国本社が負担することに対し、
一般管理費とみなして課税をしない。
(海外法人は、送金された収入
に対して現地国税法に従って納税する)
≪問題の整理≫
1.企業のプロモーションと連携した日本のプレゼンスを高めるコン
テンツ発信を拡大するための優遇策
2.海外現地法人(国外関連者)への番組CMの無償提供と寄附金課税
3
1.企業のプロモーションと連携した日本のプレゼンスを
高めるコンテンツ発信を拡大するための優遇策
4
日本再興戦略-JAPAN is BACK
三
国際展開戦略
2.海外市場の獲得のための戦略的取組
世界の膨大なインフラ需要を積極的に取り込むため、在留邦人や日系企業等
の安全対策を強化しつつ、日本の「強みのある技術・ノウハウ」を最大限に活
いかして、2020 年に「インフラシステム輸出戦略」
(本年5月 17 日「経協イン
フラ戦略会議」決定)で掲げた約 30 兆円(現状約 10 兆円)のインフラシステ
ムの受注目標を達成する。加えて、在外公館、政府関係機関などを有効に活用
しつつ、世界に通用する技術や意欲を持つ中堅・中小企業等の支援や戦略的な
クールジャパンの推進など我が国の優位性を最大限に活かし海外市場獲得を図
る。
−
略
−
③クールジャパンの推進
伝統文化・地域文化など、日本の豊かな文化を背景としたコンテンツ、日本
食・日本産酒類などの「日本の魅力」を効果的に発信し、産業育成や海外需要
の取り込みに結実させるため、クールジャパンを国家戦略と位置付け、官民一
体となって取組を強化する。
○発信力の強化
・
「クールジャパン推進会議」における提言等を踏まえ策定された「アクション
プラン」に沿って、食、日本産酒類、ファッション、ものづくり、コンテン
ツ、伝統文化等の連携により、主要な国際会議・イベント等において「日本
の魅力」を効果的に発信し、外国人の共感と参加を得て、クールジャパンを
支える優れた「人財」の育成等を推進する。
○(株)海外需要開拓支援機構を活用したクールジャパンの戦略的な推進
・「日本の魅力」を産業化に結び付けていくため、(株)海外需要開拓支援機構
(クール・ジャパン推進機構)を設立し、リスクマネーを供給することによ
り、クールジャパンを戦略的に推進していく。
○コンテンツ等の海外展開の促進
・2018 年までに放送コンテンツ関連海外市場売上高を現在の約3倍に増加させ
5
る(現在 63 億円)。
・コンテンツの権利処理を円滑化するため、映像コンテンツ権利処理機構(aRma)
の機能強化等による権利処理一元化窓口の整備、事前に海外展開も含めた許
諾を得る権利処理契約を促進するとともに、コンテンツ情報ポータルサイト
Japacon の機能強化等による権利情報管理・権利処理・情報発信を集中化す
る一元化窓口の整備、海外展開を含めた権利処理契約の促進等を図る。
・
(株)海外需要開拓支援機構や「ジャパン・コンテンツ海外展開事務局(J-LOP)」
等を中心に、コンテンツのローカライズ(字幕・吹き替え・現地規格への対
応等)支援の本格化、将来のビジネス展開を見据え現地のニーズに合わせた
海外放送局との国際共同製作支援の大規模化等海外向けコンテンツの制作支
援の強化、海外市場へのプロモーションの強化、海賊版対策の抜本的強化、
海外放送局のチャンネルや放送枠・配信サイトなどの日本コンテンツの流通
チャネルの確保等を図る。
−
略
−
6
株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン推進機構)の概要
経済産業省資料より
1.法律の趣旨
少子高齢化に伴う国内需要の減少、新興国市場の拡大・競争激化等の中で、
我が国経済の持続的な成長を図ることが必要。そのため、諸外国も官民挙げて
文化産業育成に力を入れる中、我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商
品やサービスを生かし、日本の魅力の事業展開を通じ、外需を取り込むための
措置を講ずる。
2.法律の概要
わが国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品やサービスの海外における
需要の開拓等の事業活動に対し、財投会計をかつようした資金供給等の支援を
行う、株式会社海外需要開拓支援機構を設立する。これにより、事業期間が中
長期にわたる事業でも、持続的に支援する体制を整備する。
具体的には、我が国のコンテンツの配信や、地域企業が持つ知恵や工夫を凝
らした商品等の海外展開、日本の「衣」「食」「住」関連等の商品やサービスの
効率的な提供などを行う事業活動に対し、機構が出資等や専門家派遣・助言等
の支援を行う。
(1)機構の設立等
・本機構は経済産業大臣の認可により設立。
・政府は、常時、機構の株式総数の1/2以上を保有。
(2)支援措置
・機構は、我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品・サービスの
海外における需要の開拓を行う事業活動等を支援。
(3)業務の範囲
①支援対象となる事業活動に対する出資等の支援
②①の事業者等に対する専門家の派遣、助言等の支援
(4)支援基準
・機構の出資等の実施は、収益性、波及効果等の観点から定める支援基準
に基づく
<存続期間 20 年程度、平成 25 年度予算 500 億円計上(財投特会)>
7
<海外需要開拓支援機構の概要図>
8
2.海外現地法人(国外関連者)への番組CMの無償提供
と寄附金課税
9
移転価格税制における国外関連者への寄付
<国外関連者へのCM無償提供>
移転価格課税
or
海外販売会社
寄附金課税
CMの無償提供
日本メーカー
(親会社)
(国外関連者)
製品の輸出
*製品CMではなく企業イメージCMの場合は本社の広告宣伝費の経費配賦?
<非関連者へのCM無償提供>
寄附金課税
海外販売会社
CMの無償提供
日本メーカー
(資本関係なし)
製品の輸出
*日本メーカーが、海外TV局に直接CMを出稿している場合は広告宣伝費?
10
論
点
1.国外関連者との取引は、移転価格課税に依るべきではないのか?
租税特別措置法第 66 条の4第 1 項は、
「当該法人に係る国外関連者との間で
資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引を行つた場合に、当該取引
につき、当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価
格に満たないとき、又は当該法人が当該国外関連者に支払う対価の額が独立企
業間価格を超えるときは、当該法人の当該事業年度の所得に係る同法その他法
人税に関する法令の規定の適用については、当該国外関連取引は、独立企業間
価格で行われたものとみなす。 」とする
ALP100 のものを 90 で移転
+10 の更正
ALP100 のものを 10 で移転
+90 の更正
ALP100 のものを無償で移転
+100 の更正ではなく寄附金課税?
2.そもそも立法者は、移転価格課税の優先適用を考えていたのではないか?
3.事務運営要領2−19は意味不明
4.企業のイメージCMと、製品CMで違いがあるのか?
5.明らかに「贈与」の意思がない場合は?
11
租税特別措置法第 66 条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)
1
法人が、昭和 61 年4月1日以後に開始する各事業年度において、当該法人に
係る国外関連者(外国法人で、当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の
法人の発行済株式又は出資(当該他方の法人が有する自己の株式又は出資を除
く。)の総数又は総額の百分の五十以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は
間接に保有する関係その他の政令で定める特殊の関係(次項及び第五項におい
て「特殊の関係」という。)のあるものをいう。以下この条において同じ。)と
の間で資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引を行つた場合に、当
該取引(当該国外関連者が法人税法第 141 条第一号から第三号までに掲げる外
国法人のいずれに該当するかに応じ、当該国外関連者のこれらの号に掲げる国
内源泉所得に係る取引のうち政令で定めるものを除く。以下この条において「国
外関連取引」という。)につき、当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対
価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は当該法人が当該国外関連者に支
払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、当該法人の当該事業年度の所
得に係る同法その他法人税に関する法令の規定の適用については、当該国外関
連取引は、独立企業間価格で行われたものとみなす。
3
法人が各事業年度において支出した寄附金の額(法人税法第 37 条第7項に
規定する寄附金の額をいう。以下この項及び次項において同じ。
)のうち当該法
人に係る国外関連者に対するもの(同法第 141 条第一号から第三号までに掲げ
る外国法人に該当する国外関連者に対する寄附金の額で当該国外関連者の各事
業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものを除く。)は、当該法人
の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。この場合におい
て、当該法人に対する同法第 37 条の規定の適用については、同条第1項中「次
項」とあるのは、「次項又は租税特別措置法第 66 条の4第3項(国外関連者と
の取引に係る課税の特例)」とする。
4
第1項の規定の適用がある場合における国外関連取引の対価の額と当該国
外関連取引に係る同項に規定する独立企業間価格との差額(寄附金の額に該当
するものを除く。)は、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算
入しない。
12
法人税法第37条(寄附金の損金不算入)
1
内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受
ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の
時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めると
ころにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の
所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
7
前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名
義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の
贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並
びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同
じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時
における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものと
する。
8
内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡
又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な
利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価
額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前
項の寄附金の額に含まれるものとする。
13
移転価格事務運営要領
2-19
2−19(国外関連者に対する寄附金)
調査において、次に掲げるような事実が認められた場合には、措置法第
66 条の 4 第 3 項の規定の適用があることに留意する。
イ
法人が国外関連者に対して資産の販売、金銭の貸付け、役務の提供その
他の取引(以下「資産の販売等」という。)を行い、かつ、当該資産の販売
等に係る収益の計上を行っていない場合において、当該資産の販売等が金
銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき
ロ
法人が国外関連者から資産の販売等に係る対価の支払を受ける場合にお
いて、当該法人が当該国外関連者から支払を受けるべき金額のうち当該国
外関連者に実質的に資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与をしたと認
められる金額があるとき
ハ
法人が国外関連者に資産の販売等に係る対価の支払を行う場合において、
当該法人が当該国外関連者に支払う金額のうち当該国外関連者に金銭その
他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をしたと認められる金額
があるとき
(注)
法人が国外関連者に対して財政上の支援等を行う目的で国外関連取引
に係る取引価格の設定、変更等を行っている場合において、当該支援等に
基本通達 9-4-2((子会社等を再建する場合の無利息貸付け等))の相当な理
由があるときには、措置法第 66 条の 4 第 3 項の規定の適用がないことに留
意する。
14
移転価格税制の適用に当たっての参考事例集
≪解
事例 25
説≫
法人が資本等取引以外の取引を行った場合には、別段の定めがあるものを除
き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による
資産の譲受けその他の取引に係る収益の額を益金の額に算入することとされて
いる(法第 22 条第 2 項)。このため、法人が国外関連者に対して資産の販売や
金銭の貸付け、役務の提供等を行ったにもかかわらず、収益の額とすべき金額
の計上がない場合には、措置法第 66 条の 4 第 3 項((国外関連者に対する寄附金
の損金不算入))の規定の適用を受けることとなるか、あるいは移転価格税制に
基づく課税の対象となるかについて検討し、適切に処理を行う必要がある。
すなわち、法人が国外関連者との取引に係る収益を計上していない場合にお
いて、当該取引につき「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の
供与」に該当する事実が認められるときには、当該法人が収益として計上すべ
き金額は国外関連者に対する寄附金となり、措置法第 66 条の 4 第 3 項((国外関
連者に対する寄附金の損金不算入))の規定の適用を受けることとなる(事務運
営指針 2‐19 イ)。
一方、こうした検討により、当該取引につき「金銭その他の資産又は経済的
な利益の贈与又は無償の供与」に該当する事実が認められない場合には、当該
取引は移転価格税制に基づく課税の対象として取り扱うこととなる。
15
平成 20 年 11 月 27 日(木)JTI 国際課税委員会資料より
㈱ユナイテッド・パートナーズ会計事務所代表取締役西村善朗氏作成
■ 寄附金税制(法法 37①・措法 66 の 4③④)から導き出される課税原則
1.事業関連支出・非関連支出問わず、画一的に損金算入限度額を超える場合、
損金不算入(社外流失)とされる(法法 37①)
2.寄附金税制適用取引の範囲には、
「資産又は経済的な利益の贈与又は無償の
供与」が含まれており、「経済的利益の無償の供与」には、「債権放棄」、「債
務の無償引受」、「無利子貸付」、「実態の伴わない有償経営指導」が該当する
と明示されている(法法 37⑦)
例外)経営支援損が損金と認められるのは、法基通 9-4-1・9-4-2 の許容する
状況のみ(経営状況が末期症状の会社に対する支援)
経営指導料が損金と認められるのは、便益テストに合格した実態の伴
う経営指導料である場合(比較的広範囲)
3.資産の低廉譲渡又は役務の低廉提供による低廉の金額は寄附金に含まれる
(法法 37⑧)
4.国外関連者に法法 37⑦(⑧)対する寄附金は、損金算入限度額計算を行わ
ず、全額損金不算入となる(措法 66 の 4③④)。寄附金税制、移転価格税制、
全く異なる制度であるため、国外関連者に対する支出ということで全額損金
不算入と揃えたことは意味あるか?
5.米国税制には、慈善寄附金(Charitable
Contribution)が個人所得税、法
人税において枠の大きい損金として認められている。国内関連者との資産の
損失については損金不算入(留保)とされているものの、関連者から外部売
却した場合には損金算入(留保)が認められる。また、米国では支配会社に
対する経営支援(資金提供)は、みなし出資とされて損金不算入(留保)と
なる。
16
■ 移転価格税制(措法 66 の 4)から導き出される課税原則
1.法人とその国外関連者との間の資産の売買、役務の提供その他の取引を行
って、法人が国外関連者から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満
たない(輸出)取引又は法人が国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価
格を上回る(輸入)取引である(措法 66 の 4①)。この点、高価譲渡、低廉買
取についても規制対象となる寄附金税制とは異なる。
2.国内関連者間 ALP と国外関連者間 ALP は概念、適用される税制が異なるも
のである。経営状況が末期症状にない会社に、経営支援目的で、便益テスト
に合格する、有償又は無償の経営指導を国内関連者に対して行う場合、国外
関連者に対して行う場合どうなるか?
3.国外移転所得金額は、国外関連者から返還を受けるかどうかに関わらず、
利益の社外流失と取扱う(措通 66 の 4(8)-1)が調整機能低下をもたらして
いるのではないか?中国では、企業が国内関連者及び国外関連者との間で取
引を行った場合、移転価格税制が適用されるが、日本のように利益の社外流
失として取扱う規定はない。
4.国外関連者間での取引後、国外関連者間取引を価格調整することを移転価
格税制上、許容している。寄附金課税を受けた当事者が価額修正を行う場合
には更に、寄附金・受贈益を受けるような懲罰的課税を課す寄附金税制との
整合性をどのように考えるか?移転価格の価格調整について、手続的制約、
時間制約、価格変動に与える要因の制約等各種制約条件の許容範囲とは?
17
東京地方裁判所平成 21 年7月 29 日判決(判例時報 2055 号)より
【措置法66条の4の国外関連者への資金提供の寄附金該当性】
東京地方裁判所平成 20 年(行ウ)第 116 号法人税更正処分取消等請求事件(第
1事件)、同 21 年(行ウ)第 84 号訴えの追加的併合申立事件(第2事件)(棄
却)(控訴)
国側当事者・国(日本橋税務署長)
(第1事件)、東京都(東京都都税事務所長)
(第2事件)
平成 21 年7月 29 日判決
---------------------------------------------------------------------判
1
示
事
項
第1事件は、原告が、原告の元代表者甲が全額を出資するA社等が行った
自動車レースのF1に係る事業について、原告がA社に金銭を貸し付けた後、
当該貸付を含む原告のA社に対する債権が回収不能になったとして、その回
収不能とされた額を貸倒損失として損金の額に算入した上で確定申告をした
ところ、日本橋税務署長が、上記貸付に係る金銭はA社に対する寄附金に当
たるとして、法人税等の更正処分をした事例である。
第2事件は、東京都中央都税事務所長が、原告に対し、上記の法人税の更
正処分に基づいて法人事業税及び法人都民税の更正処分等を行った事例であ
る。
2 措置法 66 条の4第3項及び旧法人税法 37 条6項に定める「寄附金」に該
当するものとしてその額の損金の額への算入が問題となるのは、法人が、現
実に金銭その他の資産又は経済的利益を給付又は供与した場合に係るもので
あるというべきである。
3
原告の本件各担保提供は、原告が所有するB社株式をA社の債務を担保す
るために金融機関に提供したにすぎず、A社に対するB社株式の保有に係る
権利の移転を伴うものではないから、これをもって、A社に対して現実に金
銭その他の資産又は経済的利益を給付又は供与した場合に当たると評価する
ことはできない。他方、本件各資金提供及び本件債権放棄は、いずれも、A
社に対して現実に給付し又は経済的利益を供与したものであるから、これら
18
に係る金銭又は経済的利益は、措置法 66 条の4第3項及び旧法人税法 37 条
6項に定める「寄附金」に該当する可能性があるものである。
4
法人税法が一定金額を超える寄附金の額の損金不算入制度を設けている趣
旨
5
一定金額を超える寄附金の額の損金不算入の制度の趣旨並びに旧法人税法
37 条6項に定める「寄附金」とは、民法上の贈与に限らず、経済的にみて贈
与と同視し得る金銭その他の資産の譲渡又は経済的利益の供与をいうものと
解するべきであり、ここにいう「経済的にみて贈与と同視し得る金銭その他
の資産の譲渡又は経済的利益の供与」とは、金銭その他の資産又は経済的利
益を対価なく他に移転する場合であって、その行為について通常の経済取引
として是認することができる合理的理由が存在しないものを指すと解するの
が相当である。
6
A社は、その事業活動に必要とされる資金の相当部分を原告の保証を受け
て調達するか又は原告から借り入れており、措置法施行令39条の12第1
項3号ハの要件を満たすから、措置法66条の4に定める「国外関連者」に
該当するところ、認定した事情を総合すると、本件各担保提供は、専らA社
においてその事業活動に必要な資金を調達する上での便宜を図ることを企図
してされたものであり、これにより原告において金銭その他の資産又は経済
的利益を実質的に得ることが期待されていたわけではないことが推認される。
7
事実関係によれば、本件各資金提供は、形式的には消費貸借契約に基づく
金銭の交付であったとしても、その実質は、A社に対して金銭を対価なく移
転するものであり、かつ、その行為について通常の経済取引として是認する
ことができる合理的理由は存在しないというべきである。よって、本件各資
金提供に係る金銭は、措置法66条の4第3項及び旧法人税法37条6項に
より損金の額に算入することができない「寄附金」に該当するというべきで
ある。
19
東京国税不服審判所平成 14 年 6 月 24 日裁決(非公開)より
【日本親会社の広告宣伝費負担が「国外関連者への寄附金」と認定された裁決事例】
<事案の概要>
食料品の製造販売業を営むA社(請求人)と中国の国営企業Bは,中国に合
弁会社Cを設立した。出資割合はA社が 51%,B社が 49%である。A社・C社
間で技術援助契約が締結され,A社はノウハウの提供やA社商標権の使用許諾
を与える代わりに,C社から一定のロイヤリティーを受けることとした(A社
は,A社製品を独自ルートで販売することはせず,C社にA社製品や原材料の
供給等も行っていない)。
その後,合弁会社Cは,中国で C 社製品の製造販売を行うとともに,C社製
品の売上を拡大するためテレビ広告,バスの車体広告,新聞や雑誌の広告等の
広告宣伝活動を行ったが(C社製品のみならずA社の登録商標も含めた広告宣
伝),この際,親会社Aは本件広告宣伝活動に係る経費を負担し広告宣伝費とし
て計上した。これに対し税務当局は,本件広告宣伝費は C 社が負担すべきもの
であり,A社負担分はC社(国外関連者)に対する寄附金であるとして平成 11
年 3 月期に係る法人税につき更正処分を行い争われた。
20
<請求人A社の主張>
①本件広告宣伝に係る経費は,A社製品の新規市場開拓のためのものであるか
ら開発費に該当する。
②本件広告宣伝は,A社が中国マスコミ各社と直接契約して実施したA社独自
の広告宣伝であり,C社の広告宣伝費を肩代わりしたものではないため,寄附
金には当たらない。
③本件広告宣伝によりC社製品の売上が増加すれば,ロイヤリティー収入も増
加することとなるため,本件広告宣伝費のA社負担は,C社への利益供与には
該当しない。
<税務当局の主張>
①法人税法上の開発費は「新たな…市場の開拓のために特別に支出する費用」
と規定され( 法令 14 ①)
,この中には,一定の計画に基づき新市場開拓のた
めに特別に支出した広告宣伝費等が含まれるが,A社が合弁会社CにA社製品
を供給していない事実や,A社が中国市場開拓に係る将来構想プランを提示し
ていないことなどを踏まえると,本件広告宣伝に係る支出は開発費に該当しな
い。
②A社は,中国でA社製品の販売等ができず,契約上はロイヤリティー収入を
得られるにも関わらず実際には収受しておらず,中国市場開拓に係る将来構想
プランも持たないなど,収益面での見返りが期待できない状況下で本件広告宣
伝費を負担しているため,これはC社の経費負担軽減のための行為としかいえ
ず,本件広告宣伝費は寄附金に当たる。
③A社はロイヤリティーを収受していないため,本件広告宣伝費のA社負担は
C社への利益供与に当たる。
<審判所の判断>
本件広告宣伝費はC社製品の広告宣伝のための支出であり,C社の資金繰り
が厳しかったためA社が費用負担したと認められると判断。そうすると,本件
では,C社が負担すべきものをA社が肩代わりすることによりA社がC社に経
21
済的利益の供与をしたと認められるため,本件広告宣伝費は,国外関連者に対
する寄附金に該当するとしてA社の主張を棄却。
主な理由として,
①本件広告宣伝費がC社製品に係るものである以上,A社の開発費には該当し
ない。
②A社がC社にA社商標の使用許諾を与えている点,C社が中国でのテレビC
Mの広告主となっている点,A社がA社製品を独自ルートで販売せず,C社に
A社製品や原材料の供給等も行っていない点などを踏まえると,本件広告宣伝
はA社独自のものとはいえない。
③本件広告宣伝費はA社製品ではなく C 社製品に係るものであり,広告宣伝費
の多寡に関わらずC社が負担すべきものであるため,A社負担により C 社が利
益を享受しているといえる。
④A社が本件広告宣伝費を負担することにより,C社の売上が増加し,結果的
にA社のロイヤリティー収入が増加する面があるとしても,それは反射的なも
のに過ぎず,これをもって,本来はC社が負担すべき本件広告宣伝費をA社が
負担することの合理的理由とはなり得ない(実際には,A社はC社からロイヤ
リティーを収受していない)。
⑤本件広告宣伝の対象製品はC社製品であり,広告宣伝の中にA社商標が含ま
れていたとしても,それは使用許諾に基づき C 社製品の広告宣伝用に使用され
ているに過ぎず,本件広告宣伝はA社製品の販売とは関係がない。
22
中里実他「国際租税訴訟の最前線」(有斐閣
第4章
Ⅵ
2
2010 年)より
移転価格税制における実務対応上の留意点(小田嶋清治)
移転価格税制と寄附金
……事務運営指針では、イ、ロ、ハと書いて、…いずれも「金銭その他の資産
又は経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき」という文言で締めら
れています。結局は、寄附金に該当するものは寄附金です。というようにトー
トロジーのようにも読めます。これだと、移転価格税制と寄附金条項の適用の
優先関係をはっきりさせたとは言い難く、なお疑問が残っているという感じが
します。
税制を作った当時は、移転価格税制はアームズ・レングスで取引を行ったも
のとみなして法人税に関する法令を適用せよという規定になっておりますので、
国外関連者との取引が高いか安い場合にはアームズ・レングスで行ったものと
みなして法人税法の適用をする、ということは、法人税法の寄附金条項につい
てもアームズ・レングスで行われたものとみなしたこれを当てはめるわけです
から、寄附金条項が適用される場面はほとんどないだろうと考えておりました。
アームズ・レングスと寄附金条項における時価には違いはありますが、両社に
大きな差がないとすればほとんどのケースは無償も含めて関連者との取引は移
転価格税制が優先適用され、例外的な場合しか寄附金条項が適用されることは
ないだろうという理解でおりました。
つまり、単純な海外子会社への資金提供を、業務委託費といった名目で支払
っていたというような場合は、最初から贈与する目的でありますので、価格の
問題を議論する必要はない。寄附金そのものであると。あるいは貸していたお
金の返済を免除すると言った単純な行為、適正な価格の測定をしなくてもよい
ようなものが寄附金として残ってくる。それ以外は移転価格税制によってカバ
ーされているという認識です。
ただ、この問題は、税当局サイドの問題というだけではなくて、企業の方も、
移転価格税制が適用されるとなると、これを担当する部署の人が来て 1 年も 2
年も調査されるとか、更正の期間も6年遡及され得るといったことで、それな
ら寄附金で処理してもらった方が早く済むといった理由で、寄附金としての処
理に同意すると言うようなこともあるようです。実際どちらの条項を根拠に処
23
分が行われたとしても、租税条約に基づく救済手段が条約の解釈の問題でもあ
りますので、寄附金条項を適用したからと言って差をつけると言うのはそうか
と思います。最初から「あげる」つもりでやったとか、そういうものは協議案
件として取り上げることはないわけですけれども、例えば、無償の役務提供が
あったとしても、それはその後の製品の輸出を促進するためのサポートだった
というような場合には、当然これは移転価格問題として処理すべきことであり
ますので、無償だから、無償提供者の人件費は寄附金である、といたように単
純に当てはめるのは適当でないと考えます。
24
志賀櫻「詳解国際租税法の理論と実務」(民事法研究会
第5章
Ⅲ
2011 年)より
5.寄付金課税
(1)二重課税の問題
日本の移転価格税制の 1 つに顕著な欠陥は。租税特別措置法第 66 条の4第3
項の規定する寄附金課税である。
移転価格税制の場合の寄附金も、法人税法第 37 条第 7 項の規定に依ることと
されている。租税特別措置法第 66 条の4第3項の規定により、国外関連者に対
する寄附金はその全額が損金に算入されない。その結果として、法人の側にお
いては、損金不算入として課税が行われ、国外関連者の側においては収益とし
て課税が行われるから、これは二重課税である。
東京地判平成 21・7・29(判例時法 2055 号 47 頁)は、この問題に関する裁
判例である。
(2)相互協議の問題
国税庁は、移転価格課税が行われた時は相互協議の対象となるが、寄附金課
税が行われた場合には、移転価格課税ではなく、法人税法第 37 条第 7 項および
8 項の国内課税問題であるから相互協議の対象にならないという立場であるの
で、相互協議による二重課税の排除の仕組みは機能しない。
(3)事務運営要領等
寄附金についてはこのように問題点が含まれるので、事務運営要領2−19(国
外関連者に対する寄附金)ほか、かなり詳細な通達レベルの規定がある。事務
運営要領2−20(価格調整金等がある場合の留意事項)
、同2−9(企業グルー
プ内における役務の提供の取扱い)の(5)などである。参考事例集・事例 25(国
外関連者に対する寄附金)の解説は、
「法人が資本等取引以外の取引を行った場合には、別段の定めがあるものを除
き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による
資産の譲受けその他の取引に係る収益の額を益金の額に算入することとされて
いる(法第 22 条第2項)。このため、法人が国外関連者に対して資産の販売や
金銭の貸付け、役務の提供等を行ったにもかかわらず、収益の額とすべき金額
の計上がない場合には、措置法第 66 条の4第3項(国外関連者に対する寄附金
の損金不算入)の規定の適用を受けることとなるか、あるいは移転価格税制に基
づく課税の対象となるかについて検討し、適切に処理を行う必要がある。
25
すなわち、法人が国外関連者との取引に係る収益を計上していない場合にお
いて、当該取引につき「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与または無償
の供与」に該当する事実が認められるときには、当該法人は収益として計上す
べき金額は国外関連者に対する寄附金となり、措置法第 66 条第3項(国外関連
者に対する寄附金の損金不算入)の規定の適用を受けることとなる(事務運営指
針 2−19 イ)。
一方、こうした規定により、当該取引につき「金銭その他の資産又は経済的
な利益の贈与または無償の提供に該当する事実が認められない場合には、当該
取引は移転価格税制に基づく課税の対象として取り扱うこととなる。」とする。
かかる基準が予見可能性のあるものとは言えないであろう。
26
遠藤克博*「移転価格税制と寄附金課税」
(税大論叢 33 号)より
*税務大学校研究部教育官
・・・昭和 61 年に『移転価格税制』が導入される前は、前述のプライスィング
の差額について、『寄附金の損金不算入』の制度(法人税法第 37 条)を適用し
て課税関係を整理してきた例が多い。これが、新税制の導入と同時に、国外関
連者との取引については、『移転価格税制』(租税特別措置法第 66 条の 4)を適
用して課税関係を整理することとなった。新税制の執行とともに新たな問題点
が指摘されることとなる。すなわち、
『移転価格税制』の適用対象取引とならな
い取引で、国外関連者に所得が移転している取引については、従来どおり『寄
附金』課税により課税関係を整理していたため、同じ国際間の所得の移転であ
るにもかかわらず、損金算入限度額の分だけ『寄附金』課税が有利となるとい
うものであった。これを受けて、平成 3 年に『国外関連者に対する寄附金の全
額損金不算入』の制度(租税特別措置法第 66 条の 4 第 3 項)が導入された
現行法では、内国法人が行う国外関連者との取引について、『移転価格税制』
による課税と『国外関連者に対する寄附金』の課税が行われている。従来より
『寄附金』概念の下で整理されてきた経済取引の一部を適用対象とする形で、
外国の租税制度として既に存在していた『移転価格税制』を日本型の制度にア
レンジして導入したことから、
『移転価格』課税の適用対象取引を明確化するこ
とにより、
『寄附金』課税の適用対象取引は明確化されるはずであった。ところ
が、いざ『移転価格税制』が執行されてみると、現実の経済取引の中に、
『移転
価格税制』を適用すべき取引であるか、あるいは『寄附金』課税を適用すべき
取引であるかが不明確なケースが散見されるようになった。これは、日本独特
の『寄附金』概念の存在に加え、日本と諸外国の『移転価格税制』の相違点に
起因するものと思われる。
第 3 章で述べたように、国外関連取引については税務調査の時点で損金処理
している支出項目について、納税者が「無償契約の意思」を認めない場合には、
寄附金課税は難しいと考えるべきである。したがって、第 3 章において例示し
た移転価格課税と寄附金課税の境界領域の取引の調査は、原則としてアームズ
レンクス・アプローチ(51∼52 頁参照)が採られ、租税特別措置法第 66 条の 4
27
第 1 項に基づいて課税処分するのが妥当であると考える。このような課税事案
については、当然のことながら、租税条約の規定に従って相互協議の申立てが
可能となる。
さて、国外関連者への寄附金として課税処分した事案について相互協議の申
立てができるか否かであるが、原則として申立てはできないと解すべきと考え
る。わが国が独自の経済風土の反映として、現在の寄附金課税制度を採用して
いる以上、寄付を行った法人については損金不算入の取扱いがあり、寄付を受
領した法人は法人税法第 22 条第 2 項に基づき益金に計上するという取扱いがあ
るわけで、国家としての租税制度の選択にほかならない。租税条約上の特殊関
連企業条項(OECD モデル条約第 9 条)との関連では、本条項を受けた具体的な
国内法として租税特別措置法第 66 条の 4 があり、同条において移転価格課税と
寄附金課税を区分して取扱いを明示しているのであるから、
「条約の規定に適合
しない課税」にはあたらないと解する。また、納税者が「無償契約の意思」を
認めた上で、相互協議を申し立てるということ自体矛盾する行為と言える。
−中略−
基本的には、営利を目的とする事業体が無償取引を行うということ自体が経済
的合理性にそぐわない行動であるから、安易に寄附金課税を行うことなく、企
業が自ら無償契約の履行であることを明確に認めている場合に限り寄附金とす
べきものと考える。
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