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SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/ GSMセルラー標準対応

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SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/ GSMセルラー標準対応
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/
GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
SAW-less Transceiver LSI for LTE/W-CDMA/GSM Cellular Standards
● Patrick Rakers ● Daniel B. Schwartz ● Mahib Rahman
● James Mittel
あらまし
4G移動体通信向けのマルチモード,マルチバンド対応シングルチップCMOSトラン
シーバLSIを開発した。本LSIは,LTE
(FDD/TDD両方)に加え,同じ内部回路で3Gの
W-CDMAおよび2GのGSM/EGPRSの動作モードにも対応する。帯域としては,FDD
バンド1 ∼ 21,TDDバンド33 ∼ 40,W-CDMAバンドⅠ∼ⅥとⅧ∼Ⅺ,EGPRSバンド
Cell850,EGSM,DCS,PCSをサポートする。受信部にはプライマリ入力ポート九つ,
ダイバシティ入力ポート五つを備え,
外付けLNAと段間SAWフィルタが不要である。オー
トゲインコントロールは自律的に動作する。送信部には出力ポートを八つ備え,こちら
も段間SAWフィルタが不要である。内蔵した送信プリディストーション回路により,オ
フセット変調の影響を低減できる。ARM7コアをシーケンス制御に用い,APIを提供する
ことにより開発期間の短縮に貢献できる。業界標準の二つのデジタルインタフェースは,
2G/3GベースバンドだけでなくLTEベースバンドとの互換性も持っている。本LSIには
90 nm CMOS技術を用いた。
Abstract
A single-chip multi-mode multi-band CMOS transceiver was designed and
implemented for 4G mobile platform. The transceiver supports both LTE FDD and
TDD operation modes. It also supports 3G W-CDMA and 2G GSM/EGPRS operation
with the same signal paths. The hardware supports FDD bands 1-21, TDD bands 3340, W-CDMA bands Ⅰ-Ⅵ and Ⅷ-Ⅺ, and EGPRS bands Cell850, EGSM, DCS and PCS.
The receiver has 9 primary and 5 diversity input ports that do not require external
LNAs or interstage SAW filters. The automatic gain control system is fully autonomous.
The transmitter has 8 output ports that do not require interstage SAW filters. An
integrated transmit predistortion path reduces the impact of offset modulations. An
integrated ARM7 core controls transceiver sequencing and enables a high level API
that greatly reduces radio development time. Two industry standard digital interfaces
provide compatibility to LTE basebands as well as 2G/3G basebands. It is fabricated
in 90 nm CMOS technology.
FUJITSU. 62, 4, p. 425-434(07, 2011)
425
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
レームの長さは,1 msである。各ユーザに割り当
ま え が き
てられるRBの数は動的に管理され,スループット要
LTE(Long Term Evolution) は, 携 帯 電 話 市
求の変化に応じてサブフレームごとに変化する。
場における最新のセルラー標準であり,進化を続
このようなLTEの特性により,トランシーバに
け る3GPP標 準 の2G,3G規 格GSM,W-CDMAに
は独特な要求が課せられる。必要な受信データが,
続く通信規格である。LTEはIPパケットを用いる
ダイレクトコンバージョン受信機にとってのDC近
通信で,当初から,データ伝送ネットワークとし
傍や帯域端にある可能性があるため,受信部は,
て開発されている。GSMおよびW-CDMAは,音声
チャネル帯域幅全体のすべてのRBにおいて良好な
ネットワークとして開発され,データに対応する
性能で受信しなければならない。この要件により,
ために技術改善を積み上げてきたものである。
位相直交性およびIIP2(2次入力インターセプトポ
LTEで は, 無 線 信 号 をOFDM(Orthogonal
イント)は厳しい制約を受ける。送信部には,オ
Frequency-Division Multiplexing: 直 交 周 波 数
フセット周波数に関連したスプリアス信号を生成
分割多重)変調する。OFDMでは,無線信号は単
することなく,単側波帯変調信号またはオフセッ
一変調の無線周波数ではなく,狭い間隔で直交す
ト変調信号を生成する能力が求められる。
LTE規 格 で は, 動 作 モ ー ド と し てFDD
る多数の副搬送波から成る。LTEでは,隣接する
副搬送波の間隔を15 kHzにしている。規格では,
(Frequency Division Duplexing:周波数分割複信)
1.4 MHz,3 MHz,5 MHz,10 MHz,15 MHz,
およびTDD(Time Division Duplexing:時分割複
20 MHzのチャネル帯域幅を規定している。帯域
信)をサポートする。FDDでは,上りリンクと下
幅の90%を副搬送波が使用する。各副搬送波は,
りリンクのデータ経路に別々の周波数を割り当て,
QPSK,16値QAM,または64値QAMで変調される。
送信と受信を同時に行う。TDDでは,上りリンク
副搬送波に分割することにより,パワースペクト
と下りリンクのデータ経路に単一の周波数を割り
ル密度を無線チャネル全体に一様に分布させるこ
当て,データ経路間の干渉を回避するために,送
とができ,データスループット効率が改善される。
信と受信を時間で切り替えて行う。
図-1に示すように,通信チャネル帯域幅は,リ
LSIの概要
ソースブロック(RB)に更に分割される。一つの
RBの幅は180 kHzである。一方タイムドメインで
LSIのブロック図を図-2に示す。本LSIは,高集
は,通信はサブフレームにも分割される。サブフ
積のシングルチップCMOSトランシーバであり,
1 resource block =
180 kHz = 12 subcarriers
サブキャリア間隔=15 kHz
周波数
1 slot = 0.5 ms =
7 OFDM symbols
UE1
1 subframe =
1 ms = 1 TTI =
1 resource block pair
UE4
時間
UE3
UE2
UE5 UE6
QPSK,16QAM or 64QAM変調
図-1 LTE通信チャネル
Fig.1-LTE communication channel.
426
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
図-2 LSIブロック図
Fig.2-LSI block diagram.
その構成は次のとおりである。段間SAWフィルタ
Cell850,EGSM,DCS,PCSをサポートし,LTE
不要の高性能・低雑音の送信変調器,外付けLNA
のすべてのチャネル帯域幅がサポートされている。
と段間SAWフィルタ不要の,MIMOおよびダイバ
受 信 部
シティ動作可能なデュアル受信部,受信ADCおよ
び受信デジタル信号処理ハードウェア,送信DAC
および関連の送信デジタル信号処理,ベースバン
本LSIの受信部は以下に示す三つの特徴を持って
いる。
ドLSIとの完全デジタル通信に対応したD4Gおよび
(1)SAWフィルタ不要の動作
D3Gデジタルインタフェース,
(2)LTE/3G/2GでRF信号経路を共有
(1)
,
(2)
シーケンス/ハー
ドウェア制御のためのARM7マイクロプロセッサ,
(3)自律的なAGC(Automatic Gain Control:オー
さらに無線プラットフォーム開発期間の短縮を支
トゲインコントロール)
援する高レベルAPI(アプリケーションプログラム
受信部のブロック図を図-3に示す。
インタフェース)を持っている。
段間SAWフィルタを受信部に置く主目的は,送
本LSIは,LTEのFDDとTDDの 両 方 式 に 対 応
信信号が感度の高い受信入力部に達する前に伝送
する。また,同じ信号経路での,3G W-CDMAと
信号を減衰させることである。アンテナ部分で
2G GSM/EGPRSの動作もサポートする。帯域とし
+24 dBmの送信信号が出ている中で,-106.7 dBm
て は,FDDバ ン ド1 ∼ 21,TDDバ ン ド33 ∼ 40,
にも満たない信号を受信できる感度が受信部には
W-CDMAバンドⅠ∼ⅥとⅧ∼Ⅺ,EGPRSバンド
要求される。無線デュプレクサはこの送信信号を
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
427
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
3GおよびLTEモードではDCR mode,EGPRSモードではVLIF offset
LNM
Biquad
BBA
TCA
フロント
エンド
Sigma
Delta
A/D
Decimation
Filters
Fine
DCOC
Sigma
Delta
A/D
Decimation
Filters
Fine
DCOC
LO
Complex Mixers
(for EGPRS only)
Wideband
Detector
Frequency Dependent
Equalizer
RF/IF
AGC
Matched/Selectivity
Filtering
Bandwidth
Tuning
DCOC
D/A
Coarse
DCOC
IP2
D/A
IP2
Control
I/Q
Equalization
On-Channel
Power
Detector
Linearity
Control
RSSI
RX_GAIN
Digital
AGC
Fractional
Resampling
DIGRF4G/DIGRF3G
External Interface
図-3 受信部ブロック図
Fig.3-Receiver block diagram.
最大48 dB程度減衰させるが,それでも送信信号は
すために電流モード回路として設計されている。
受信部にとって最大の妨害信号である。この変調
デバイスのサイジングを入念に行い,電流バイア
された妨害信号の存在により,受信部には四つの
スを巧みに利用することにより,要件どおりの位
原理上の制約が生まれる。その一つとして,LNA
相雑音性能を可能にしている。自律的なAGCと,
(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)は,デュ
フィルタ帯域幅を調整することにより,ダイナミッ
プレクス周波数間隔の0.5倍と2倍離れた周波数の
クレンジの最大化を図っている。トランシーバ電
狭帯域ブロッカーによる不要RF生成物を防止する
源投入時に性能を調整することにより,ミキサの
ために高い3次インターセプトポイント(IIP3)を
(3)
IIP2性能を非常に高くしている。
この調整では,
持つ必要がある。つぎに,ミキサは,送信信号の
まず,送信部で生成される2トーン信号は受信部を
セルフミキシングによるダイレクトコンバージョ
通過する。受信側デジタル信号処理により,非線
ン受信機での干渉の発生を抑えるために,優れた
形生成物を監視し,DAコンバータのペアを使って
2次インターセプトポイント(IIP2)を持つ必要が
ミキサの動作点を再バイアスすることにより非線
ある。また,受信シンセサイザおよび直交局部発
形性を最小限にする。探索型アルゴリズムにより,
振器では,デュプレクス周波数間隔における位相
ピーク性能の達成が可能となっている。
雑音を非常に低く抑える必要がある。さらに,信
LTE規格では,受信部には更に三つの要件が課
号経路での送信信号によるクリッピングを抑止し
せられる。第1に,2.7 GHzでのバンド7の追加であ
ながら,受信部のフィルタおよびゲイン特性によ
る。この高い周波数で雑音指数性能を満たすには,
りダイナミックレンジを最大化する必要がある。
入念な設計が必要とされる。第2に,TDD動作では,
本LSIのLNAは,上記の厳しいIIP3要件を満た
428
送信モードから受信モードに迅速に切り替えるた
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
めに,シンセサイザのセトリング時間を改善する
(1)バンド7
必要がある。第3に,LTEで導入される帯域幅設定
(2)可変帯域幅
のレンジにより,新規の帯域幅やより広い帯域幅
(3)TDD動作
以 上 の 要 件 に つ い て は, 受 信 部 と 同 様 の 方 法
を数多くアナログフィルタに追加する必要がある。
広帯域幅での消費電流量を削減するために,電流
で実現される。4番目は,独特で困難な要件であ
モードフィルタを利用して重要なフィルタの極を
る。ダイレクトローンチトランスミッタは,チャ
実現している。電流モードフィルタでは,電圧モー
ネル中心からオフセットした一つまたは少数のRB
ドフィルタが持つような一定の利得帯域幅積によ
の場合もサポートすることになるため,GSMや
る制限はない。
W-CDMAでは発生しない新たな相互変調信号に対
LTE動作においては,ゲインコントロールはす
処する必要がある。
べてトランシーバチップが行う。トランシーバは
オ フ セ ッ トRBを 持 つ 送 信 周 波 数 ス ペ ク ト
受信信号強度(RSSI)のレベルを判断して,受信
ル を 図-5に 示 す。 オ フ セ ッ トRBは, あ るIF
部に適したゲインを設定する。ベースバンドLSIに
(Intermediate Frequency:中間周波数)で変調さ
唯一要求されるのは,正確なタイミングのストロー
れた信号に相当する。チャネル中心がRF周波数と
ブによってサブフレームの開始をトランシーバに
すると,出力スペクトルのRF+IFの位置に所望の
伝えることである。
信号が現れる。直交位相変調が非理想的であるた
めに,RF-IFの位置にイメージ成分が現れる。RF
送 信 部
の位置には,搬送波フィードスルー信号が現れる。
ダイレクトローンチトランスミッタのブロック
ス ペ ク ト ル のRF-3IF(C-IMR3) お よ びRF+5IF
図を図-4に示す。受信部と同様,SAWフィルタの
(C-IMR5)の位置には追加の成分がそれぞれ現れ
不要化およびLTE動作により新しい要件が生じて
る。これは主にミキサの非線形性に起因する。
いる。送信部の段間SAWフィルタは,受信部に対
ベ ー ス バ ン ド 処 理 ま た はRF処 理 と は 異 な り,
する送信部の影響を抑止するために主に使用され,
ベースバンドからRFへのアップミキシング処理は
受信周波数への送信部からの雑音が抑止される。
複雑な歪みを生じさせる。これはインタリーブス
送信シンセサイザおよび直交局部発振器では,デュ
(4)
このミ
イッチングミキサを使用する影響である。
プレクス周波数分だけ離れた周波数での位相雑音
キサは,設計上シンプル,低雑音で,本質的に線
をきわめて低く抑える必要がある(>-160 dBc)。
形かつ広帯域である。シーケンシャルに選択され
ここでも,設計を工夫し,電流を巧みに利用する
た入力電圧(+I,-Q,-I,+Q)および瞬間出力RF
ことにより,要件を満たすことができている。
電圧の両方から導出される応答を持つTゲートス
LTE動作実現のために,送信部には別の新たな
イッチコンポーネントの抵抗の非線形性の結果,
四つの要件が課せられる。そのうち次の三つは,
I(t)/Q(t)変調の現在と過去の値に依存する負
受信部と共通である。
荷容量のRC充電の挙動が示される。この非線形の
VCO
QG
[Ii,Qi]
Mod
Tx
DAC
Transceiver Front End
ejwt
SVGA
I
±(I+jQ)ejwt
Q
Digital
Baseband
RF
図-4 送信部ブロック図
Fig.4-Transmitter block diagram.
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
429
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
挙動の結果,I信号とQ信号の複素過渡ミキシング
シスフィルタは,アナログベースバンドフィルタ
が起こり,図-6に示すように,I/Q信号の異常な混
の振幅および位相応答を補償する。プリエンファ
合である相互変調信号ができる。この非線形性はI
シスフィルタは,FIRフィルタ構成で最大15タッ
成分とQ成分の3次関数で記述できることが経験上
プを使用し,対応する遅延およびゲインを持つ回
分かっている。
路を通るようにバイパスすることも可能である。
日本のバンド1,米国のバンド13などの特定のア
これで,受信部でのゲインまたは遅延の異常なし
プリケーションでは,この複素非線形成分のため
にプリディストーションの有効化/無効化が可能に
に規格上の課題が生じており,対策が必要である。
なる。
本LSIはデジタルプリディストーション経路を備え
アプリケーションプログラミングインタフェース
ている。図-7で示すデジタルプリディストーショ
ンでは,不要な非線形成分に対して同振幅かつ逆
本LSIはARM7コアマイクロプロセッサを集積し
位相の信号が生成される。これにより,3次プリ
ている。このマイクロプロセッサは,周辺ブロッ
ディストーション成分(I成分はα・Q I ,Q成
クと協調してトランシーバの動作を制御する。シー
分はβ・I Q )のどちらかを利用する,あるいは
ケンスとタイミングはファームウェアの制御下に
MUX回路によりプリディストリビューション回路
ある。共通アプリケーションプログラミングイン
をバイパスすることが可能である。プリエンファ
タフェースを備えるトランシーバLSIとして4世代
n 3-n
n
3-n
目の製品となる。
内蔵プロセッサとファームウェア制御により,
3次非線形
IF
0
IF
携帯電話メーカの手間が大幅に低減される。また,
成分
3IF
共通のアプリケーションプログラミングインタ
フェースにより,トランシーバの世代間の移行も
C-IMR5
C-IMR3
Image
変調信号
LO Leakage
Image
C-IMR3
C-IMR5
Image
成分
-3IF
トランシーバを無線プラットフォームに組み込む
5次非線形
容易に実行できる。このファームウェアとアプリ
ケーションプログラミングインタフェースの組合
5IF
せにより,セルラー通信機器のリリースまでの期
キャリア周波数からのオフセット
間を短縮できる。
図-5 オフセット送信スペクトル
Fig.5-Offset transmit spectrum.
Vbb
Rds(Vbb, Vrf )·c(Vgs(eff))
+I
Rds(Vbb, Vrf)
Vrf
RL
+RF
24
22
-I
20
18
CL
Q
-Q
16
14
-RF
Vgs(eff)
LO
QG
-0.6 -0.4
-0.2
Vrf
0
0
-0.2
-0.4
0.2 0.4
-0.6
0.6
12
0.6
0.4
0.2
Vbb
図-6 インタリーブスイッチングミキサと非線形抵抗
Fig.6-Interleaved switching mixer and non-linear resistance.
430
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
α,β,n pred_byp
I
D4G
Interface
Upsample
Q & Filter
{ai} pree_byp dig_atten
IQ
Upsample
Gain/
& Filter
Phase
Preemphasis
(15 tap FIR)
Cubic
Pre-D
dcoc
+
+
Tx DAC s
Delay/Gain
Transmitter
Bandgap Reference and
Analog support circuits
図-7 送信プリディストーションシステム
Fig.7-Transmit predistortion system.
Primary Receiver
Receive
PLL
Receive
ADC
Transmit
PLL
Digital Circuitry
(ARM core,memory,DSP,etc.)
TCXO
Dist
Secondary
Clock
PLL
D4G
Interface
D3G
Interface
Secondary
Receive
ADC
(Diversity)
Receiver
図-8 チップ写真
Fig.8-Die photo.
デジタルインタフェース
が可能である。トランシーバ上でD3GとD4Gの両
インタフェースが共存していることから,各ベー
本LSIには,二つの業界標準のデジタルインタ
スバンドLSIが対応するインタフェースを使うこと
フェースが組み込まれている。D3Gインタフェー
により市場投入までの期間短縮の面で有利である。
スは,312 Mbpsのデータ速度をサポートする。こ
れは,HSPA+をはじめ,GSMやW-CDMA信号の
評 価 結 果
どのバージョンでも処理可能な十分なスループッ
主要ブロックを記載した本LSIのチップ写真を
トである。D4Gインタフェースは,MIPIのDigRF
図-8に示す。また,表-1 ~ 4は本LSIのRF性能の
v4規格に準拠している。DigRF v4は,1レーンあ
測定結果を示しており,良好な結果が得られてい
たり1248 Mbpsのビットレートをサポートする。
ることが分かる。RFサブシステム(本LSIとパワー
下りリンクには二つのレーンを備え,データスルー
アンプを含む)について,RFパワー出力および温
プットは最高2496 Mbpsとなる。D4Gインタフェー
度に対するC-IMR3性能を図-9に示す。プリディ
ス は,GSM,W-CDMA, お よ びLTE信 号 の コ マ
ストーションをしないとき,パワーレンジの上側
ンドおよびデータを処理できる。
の12 dBでC-IMR3の仕様範囲外に出ていることが
本LSIでは,二つのベースバンドLSIのサポート
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
分かる。プリディストーションを有効にした場合,
431
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
C-IMR3(dBm/6.25 kHz)
-40
+25C,PreD OFF
-45
+25C,PreD ON
+85C,PreD ON
-50
-30C,PreD ON
-55
-60
-65
-70
-75
1
3
5
7
9
11
13
15
17
19
21
23
25
Pout(dBm)
図-9 C-IMR3性能
Fig.9-C-IMR3 performance.
表-1 LTE/W-CDMA受信特性
LTE(20 MHz mode)
受信特性
W-CDMA
Units
B1
B4
B7
B17
B1
B5
B9
Center Frequency
2140.0
2132.5
2655.0
740.0
2140.0
881.5
1862.4
MHz
NF
2.9
3.0
2.9
2.1
2.7
2.6
2.6
dB
Sensitivity
-100.3
-100.3
-99.7
-100.7
-114.1
-113.6
-113.4
dBm
EVM
2.7
2.8
2.5
2.9
2.8
2.9
2.6
% RMS
Duplex IIP2
73.3
72.9
71.9
70.0
76.7
70.9
71.2
dBm
Half Duplex IIP3
1.1
5.2
-1.2
0.1
1.1
-0.3
-0.8
dBm
Full Duplex IIP3
4.9
6.4
2.7
3.2
4.9
1.8
1.5
dBm
In-band IIP3
-5.7
-5.6
-4.4
-4.0
-5.1
-4.8
-6.2
dBm
表-2 LTE/W-CDMA送信特性
LTE
送信特性
W-CDMA
Units
B1
B4
B7
B17
B1
B5
B9
Center Frequency
1950.0
1727.5
2535.0
710.0
1950.0
836.5
1767.4
MHz
Pout
2.0
2.0
2.0
2.0
3.0
3.0
3.0
dBm
EVM
1.3
1.3
1.7
1.1
1.9
1.8
1.6
% RMS
ACLR
-48.8
-49.2
-53.6
-52.4
-44.8
-46.7
-48.6
dBc
ACLR2
-50.9
-51.4
-55.6
-57.5
-73.5
-74.2
-73.3
dBc
RX Band Noise
-160.0
-161.0
-158.0
-154.0
-160.0
-160.0
-159.5
dBc
表-3 GSM受信特性
432
受信特性
GSM
EGSM
DCS
PCS
Units
Center Frequency
881.5
942.5
1842.5
1960.0
MHz
NF
2.8
3.1
3.0
3.0
dB
Sensitivity
-111.8
-111.9
-111.4
-111.6
dBm
Image Rejection
-76.3
-74.5
-53.3
-51.0
dBc
IIP2
58.0
57.9
56.1
53.0
dBm
In-band IIP3
-13.8
-14.0
-13.9
-14.1
dBm
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
表-4 GSM送信特性
送信特性
GSM
EGSM
DCS
PCS
Units
Center Frequency
836.5
897.5
1747.5
1880.0
MHz
5.2
5.1
4.9
4.7
dBm
Pout
GMSK
GPE
1.0
1.0
1.0
1.1
% RMS
MODORFS@200 kHz
-34.5
-34.5
-34.6
-34.7
dBc
MODORFS@400 kHz
-70.9
-70.8
-68.2
-67.2
dBc
Pout(EDGE)
1.7
1.7
-0.7
-0.8
dBm
EVM(EDGE)
1.4
1.4
1.8
1.4
% RMS
8PSK
表-5 チップ諸元
び13の厳しい非線形性の要件には,送信プリディ
Technology
90 nm triple well CMOS
6 metals(1 ultra-thick)+AP cap
MIM capacitors
ストーション回路の導入によって対応することを
Package
6.5 mm×9.0 mm 4 layer LGA
フェースにより,無線通信機器の開発期間が大幅
Supply Voltage
Ports
RF:2.7 V,1.85 V
Digital:1.8 V,1.2 V
9 Differential Primary Receive
5 Differential Secondary Receive
8 single-ended Transmit
EGPRS bands
Cell850,EGSM,DCS,PCS
W-CDMA bands
Ⅰ-Ⅵ,Ⅷ-Ⅺ
LTE bands
1-21,33-40
LTE bandwidths
Interfaces
1.4 MHz,3 MHz,5 MHz,10 MHz,
15 MHz,20 MHz
DigRF 4G
DigRF 3G
示した。アプリケーションプログラミングインタ
に短縮可能となる。また,評価の結果,本LSIが商
用として現実的なLTEソリューションであること
を実証した。
参考文献
(1) MIPI Alliance Specification for DigRFSM v4,
Version 0.64.00 4-September-2008.
(2) MIPI Alliance Specification for DigRF 3G,Version
0.02 7-December-2009.
(3) D. Kaczman et al.:A Single-Chip 10-Band
サブシステムは余裕を持って仕様を満たしている。
本LSIの諸元を表-5に示した。
む す び
WCDMA/HSDPA 4-Band GSM/EDGE SAW-less
CMOS Receiver With DigRF3G Interface and
+90 dBm IIP2.IEEE J. Solid State Circuit,
Vol:44,Issue:3,p.718-739 (2009).
世界初のシングルチップLTE/W-CDMA/GSM対
(4) K. Hausmann et al.:A SAW-less CMOS TX for
応CMOSトランシーバLSIを紹介した。これは,同
EGPRS and WCDMA.IEEE Radio Frequency
時に,SAWフィルタなしでLTE動作をサポートす
Integrated Circuits Symposium (RFIC),p.25-28,
る世界初のトランシーバ製品でもある。LTE信号
May 2010.
に固有の,オフセット変調に起因するバンド1およ
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
433
SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー標準対応トランシーバLSI
著者紹介
434
Patrick Rakers
Mahib Rahman
Fujitsu Semiconductor Wireless
Products 所属
現在,RFおよびセルラー製品のアナロ
グICの開発に従事。
Fujitsu Semiconductor Wireless
Products 所属
現在,セルラー製品のトランシーバシ
ステ ム お よ び ア ー キ テ ク チ ャ の 開 発
に従事。
Daniel B. Schwartz
James Mittel
Fujitsu Semiconductor Wireless
Products 所属
現在,セルラー製品のトランシーバアー
キテクチャの開発に従事。
Fujitsu Semiconductor Wireless
Products 所属
現在,セルラー製品のトランシーバIC
の開発に従事。
FUJITSU. 62, 4(07, 2011)
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