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参考資料1 リサイクルの現状と課題 (PDF形式, 440.04KB)

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参考資料1 リサイクルの現状と課題 (PDF形式, 440.04KB)
参考資料 Ⅰ
リサイクルの現状と課題
「ごみ減量先進都市なごや」検討委員会からの提言(H19.9)より
67
●金 属 資 源
都市は地上資源の宝庫
金属資源は有限だが、廃棄しても地球上から消えるわけではない。散逸させずに
回収すれば、再生利用が可能である。都市は、地下資源に代わる地上資源の鉱脈を
豊富に抱えている。
また、リサイクルによって鉄の場合は 75%、アルミの場合は 97%のエネルギー
節約が可能とされている。CO2排出削減の視点からも、金属資源のリサイクルは有
効である。
ごみの中からも金属回収
現在、ごみとして出された金属類は破砕施設で砕いた後に磁石で選別し回収して
いる。しかし回収しきれず埋め立てられるものもある。鳴海工場の稼働後は、破砕
処理の後さらに溶融処理を行うこととなる。このため、従来は回収しきれなかった
金属分も溶融メタルとして回収される(敗者復活戦が 2 度になると考えればよい)。
単なる量としての金属回収という点では、このように自治体の処理施設でもかな
りのカバーが可能となりつつある。
しかし自治体の破砕施設では、粗大ごみや不燃ごみを一括処理する。このため、
家電メーカーが設置するリサイクル施設ほどの精度で金属回収を行えるわけでは
ない。特に、希少金属類の回収はできない。また溶融メタルの純度は低く、良質な
材料としては利用できない(リサイクルというよりも埋立削減の意味合いが強い)。
今後の課題(メーカー引き取りの対象拡大)
今後は、再生品の質的向上と再生に要するエネルギーの削減が必要である。その
ためには、下記が必要である。
① 拡大生産者責任に基づくメーカー引き取り(図表Ⅰ-1 のA)の対象を拡大する。
② 再生ビジネスをメーカーの基幹業務の一環として組み込む。
68
[図表Ⅰ-1] 金属の流れ(名古屋)
(平成 18 年度)
A.メーカー等の引き取り
家電・パソコン等
空 き 缶
家庭系 6 千㌧
店頭回収等
拡大生産者責任に基づく引き取り
分解して、種類ごとに選別
B.市場で流通(有価物)
金属再生施設
分別回収
事業系 7 千㌧
C.自治体処理
金属回収 5 千㌧
粗大ごみ・不燃ごみ
破砕
施設
69
破砕不燃物
現在は埋立
溶融メタル 5千㌧(見込み)
溶融施設
鳴海工場、'09 年~
●紙
資
源
廃棄物の 5 割を占める紙
紙の原料である木材は、太陽光と生態系の働きによって毎年再生産されている。
金属とは異なり、消費量を再生産のペース内に抑えれば枯渇することはない。一方、
紙を自然界に放置すれば、太陽光と生態系の働きによって再びCO2や水蒸気、土壌
成分などに分解される(人が燃やさなくても、自然に酸化する)。
このため廃棄後の使途としては、紙へのリサイクルだけでなく、エネルギー資源
としての活用も選択肢の一つとなりうる。
しかし、一般廃棄物の 5 割を占めるという消費量の多さを考えると、第一義的に
は紙へのリサイクルを追求し、木材資源の新規採取量を減らすことが望ましい。な
お新聞紙のリサイクルの場合、43%のエネルギー節約になるとされている。
二つのルートとカスケード利用
紙のリサイクルには、現在、①従来からの市場流通ルート(図表Ⅰ-2 のB)、②容
器包装リサイクル法ルート(図表Ⅰ-2 のA)という二つのルートがある。
紙製容器包装は、一般の古紙と別ルートとなっているが、処理方法が異なるわけ
ではない(紙製容器包装が市場取引される場合には「雑がみ」扱いとなる)。①再生経費の
一部を容器包装の製造・販売事業者が負担することにより、②流通価格の低さ=市
場流通ルートに乗せにくいという障害を克服する、この 2 点が、法律によって別ル
ートが設けられた理由である。
紙の場合、
「新聞紙→新聞紙、OA 用紙→OA 用紙」という水平リサイクルだけでな
く、「新聞・OA 用紙→雑誌・板紙→段ボール」という多段階利用(カスケード利用)の
仕組みが出来上がっている。こうした仕組みと市民による分別精度の高さによって、
日本の古紙リサイクルは 3 高(高回収率・高利用率・高品質)を実現している。
今後の課題(
「汚れ物」以外は古紙回収へ)
高回収率にもかかわらずなお、紙ごみは焼却ごみ中で最大の割合を占める。
したがって今後は、下記の取り組みが必要である。
① 名古屋方式(市民・古紙業者・新聞販売店の協働による古紙回収の仕組み)の輪
を一層広げる。
② 事業者から排出されるシュレッダー古紙をリサイクルできる仕組みや、
中小事業者の古紙リサイクル促進策を検討する。
③ また、ダイレクトメール発送者等にも拡大生産者責任を適用し、不要
な紙ごみの発生を抑制するよう、法整備を働きかける。
70
[図表Ⅰ-2] 紙の流れ(名古屋)
(平成 18 年度)
A.容器包装リサイクル協会の引き取り
紙製容器包装
家庭系
古
1.4 万㌧
2.6 万㌧
分別収集
B.市場で流通
(有価物)
紙 (新聞、雑誌、段ボール、
32 万㌧
OA 用紙、雑がみ)
家庭系 20 万㌧ / 事業系 25 万㌧
集団回収等
1.2 万㌧ C.自治体処理
リサイクル困難な紙(汚れ物など)
13 万㌧
家庭系 4 万㌧ / 事業系 3 万㌧
7 万㌧
71
市の焼却施設
拡大生産者責任
に基づく引き取り
古 紙
再生施設
●プラスチック
プラスチックは石油の塊
プラスチック 1 ㌧の生産には、石油 2 ㌧(原料で 1 ㌧、燃料で 1 ㌧)が必要であり、
プラスチックは石油の塊と言える(ちなみに鉄や紙の場合は、燃料としてそれぞれ 0.6 ㌧、
0.3 ㌧の化石資源を消費する)。
プラスチックは軽くて加工しやすく、量産が容易で経済性にもすぐれているため
多くの商品に使用されている。とりわけ、薄肉・軽量化しても耐湿性・耐久性・柔
軟性があって透明度も高いことから、容器包装材料として多く使われている。
[図表Ⅰ-3] 材料リサイクルと化学リサイクル
石
油
精製
(分溜)
石油化学
原
料
重合
(ポリマー化)
プラスチック
材
料
プラスチック
製
品
加熱溶融
成 形
ポリ エチレン
ポリ プロピレン
ポリ スチレン
・・・
エチレン
プロピレン
スチレン
・・・
化学リサイクル
材料リサイクル
(熱などによる分解)
(粉砕=ペレット化・フレーク化)
[図表Ⅰ-4] プラスチックの流れ(名古屋)
(平成 18 年度)
プラスチック製容器包装
ペットボトル
A.容器包装リサイクル協会の引き取り
4 万㌧
分別収集
家庭系 6 万㌧
拡大生産者責任
に基づく引き取り
B.逆有償による民間処理
事業系プラスチック
1 万㌧
事業系の
自主回収
2 万㌧
C.自治体処理
事業系 3 万㌧
プラスチック製品
(容器包装以外のもの)
家庭系 2 万㌧
2 万㌧
2 万㌧
72
焼却・埋立
プラスチック
処理施設
材料リサイクル、化学リサイクル、熱回収
プラスチックの材料リサイクル(粉砕・溶融して再成形)は、石油の状態からプラス
チック材料を合成するよりも簡便で、消費エネルギーもわずかである。このため、
ペットボトルや発泡スチロール(廃プラの中でも素材を判別しやすく量がまとまりやす
い)を手始めに、容器包装の材料リサイクルが始まった。
しかしプラスチック全体では、熱可塑性のもの(PET、PE、PP、PS など)、熱硬化性
のもの(PF、EP、MF など)ともに種類が多く、しかも複合素材として用いられること
が多い。こうした異種素材が混在する家庭系廃プラスチックにおいては純度の高い
材料リサイクルが難しく、残渣率も高くなる。このためプラスチック製容器包装の
本格的リサイクル開始以後は、化学リサイクル(プラスチックになる前の、石油化学原
料の状態にもどして利用する方法)が主力となった。
しかし近年、回収量の増大にともなって総量でも割合でも材料リサイクルが急増
している('00 年度 5 千㌧=12%から'05 年度 9 万㌧=25%へ*)。その結果、再生樹脂製
品の余剰感が強まると同時に、材料リサイクルが相対的に割高なことも問題視され
つつある(化学リサイクル 7 万円/㌧に対して材料リサイクル 10 万円/㌧*。高コストの一因
は、残渣率の高さ=産廃処理経費の高さ)。 *:容器包装リサイクル協会入札実績。
今回の容器包装リサイクル法の改正では、再商品化手法に燃料化が追加され、固
形燃料等の原材料としても利用できることとなった。
また、法定リサイクルの対象を容器包装に限らず、分かりやすい素材別リサイク
ルに改善すべきだとの主張も、自治体や市民団体側からなされている。
無価物(逆有償)から有価物へ・・・廃ペットボトル
廃ペットボトルも、かつては他のプラスチック廃棄物と同様に逆有償でリサイク
ルされていた(排出者が処理料金を支払っていた)。しかし近年、廃ペットボトルは有
価物に転じた(古紙やアルミ缶と同様に売れるようになった)。中国における需要急増が
原因である(中国ではプラスチック需要の急増に石油化学原料の生産能力が追いつかないた
め、再生資源=廃ペットボトルへの需要が急増している)。このため平成 18('06)年度分か
ら、自治体にも売却代金の一部が還元されることになった。
ペットボトルの逆有償リサイクルが始まった頃、「リサイクルにコストがかかる
のは、エネルギーを大量に消費しているからだ。古紙のように有価物として取引さ
れるものはリサイクルしてもよいが、逆有償のリサイクルは環境によくないので行
うべきではない。」という議論があった。
しかし数年で、ペットボトルも有価物に変化した。なぜか?
リサイクルコストの多くは、収集・選別など人手に依存する作業に費やされてい
る(リサイクルが割高になりがちなのは、エネルギー消費ではなく人件費率の高さが原因)。
しかも、有償か逆有償かの分かれ道は、再生資源の需給関係にある(再生資源は相場
商品で、コストの変動以上に乱高下する)。このため、リサイクルコストとエネルギー
73
消費の相関関係は低く、先の主張はあたらないというのが実態である。
廃ペットボトルが有価物となったため、容器包装リサイクル法ルート(容器包装
リサイクル協会への引渡し)を使わず、市場での売却(中国への輸出)を選択する自治
体も出てきた。
しかし名古屋市は、法ルートを引き続き活用するとの立場を取っている。それは、
下記のような見解からである。
① 拡大生産者責任に基づいて再生経費の一部を飲料メーカー等が負担する
という枠組みは、持続可能な資源循環のための社会システムとして堅持す
る必要がある。
② 安易な輸出依存は国内の再生ルートを弱体化させる。
③ 国内ルートの弱体化は、輸出先の状況変化(石油化学原料の生産能力増強に
よる廃プラスチック相場の低落など)への対応を困難にする。
今後の課題①(拡大生産者責任の徹底)
プラスチックリサイクルの今後のあり方は、廃棄されたものの処理という技術論
の枠内で議論する限り、本質的な解決には至らない。基本的には、金属や紙とは異
なる人工的な合成物であるというプラスチックの特性に起因している。
したがって、下記のような「拡大生産者責任」の視点から解決を図るべきである。
① 発生抑制優先の原則・・・自ら処理に責任を持ちうる量的限度内で、生産・販
売すべきであること。
② 使用後責任の原則・・・廃棄後の処理方法については、生産者が適切な方式を
開発・選択し、情報公開・情報共有によって説明責任を果たすべきこと。
③ 環境配慮設計の原則・・・異種プラスチックの混用や他素材との複合使用の回
避、後処理の容易な非プラスチック素材への転換など、製品のライフサイク
ル全体を通して「環境負荷の排出」と「資源・エネルギーの投入」を削減し
うるよう、製品設計を行うべきこと。
今後の課題②(素材別リサイクル)
家庭系プラスチックの処理には、二つのルートがある。容器包装リサイクル協会
による引き取り(容器包装の資源化処理)と、自治体処理(容器包装以外のプラスチック
製品の焼却・埋立)である。
容器包装とその他のプラスチック製品との間に、再生技術の難易差があるわけで
はない。にもかかわらず二つのルートがあるのは、容器包装についてのみ拡大生産
者責任が適用されているからにすぎない(再生処理経費の一部負担を製造・販売事業者
に義務づけ)
。
74
「同じ素材、同じような形なのに、アレは資源、コレはごみというのはなぜ?」
という市民の疑問は、全く正当である。容器包装に限らず、大半のプラスチック製
品が技術的には循環処理が可能である。
容器包装に限らず、すべてのプラスチック製廃棄物に対して、課題①で指摘した
原則を適用すべきである。そのための法改正(分かりやすい素材別リサイクルへの改善)
を、粘り強く働きかける必要がある。
なお、平成 17 年 5 月に「最近の熱回収技術や排ガス処理技術の進展、最終処分
場のひっ迫状況等を踏まえ、直接埋立は行わず、一定以上の熱回収率を確保しつつ
熱回収を行うことが適当である。
」という廃棄物処理法に基づく環境大臣の基本方
針が出されている。したがって非容器包装プラスチックについては、その素材別リ
サイクルが図られるまでの間、焼却・熱回収により埋立を回避することが望ましい。
今後の課題③(非石油系素材への素材転換)
地球温暖化防止のためには、化石資源の使用抑制が不可欠である。恐竜の時代の
高濃度CO2を地中深く封印したものが、化石資源だからである。
したがって、
① 第一義的には、省エネルギーとエネルギー転換が重要である(わが国石
油消費の 94%はエネルギー利用)。
② しかし同時に、低エネルギーで生産可能な素材(紙など)で代替できる
場合には、そちらを優先使用すること。
③ プラスチック原料を、次第に石油から生物資源へ転換することも必要で
ある。
なお、現在開発されているバイオプラスチックはトウモロコシのでんぷんを主原
料としているが、食糧との競合やトウモロコシ栽培の持続可能性への懸念(水資源
の多消費・森林伐採など)も存在する。でんぷん依存ではなく、農作物残渣・間伐材・
有機性廃棄物など未利用バイオマスを活用する技術開発が期待される。
バイオプラスチックの生産能力はいまだ 2~3 万㌧(国内プラスチック需要の 0.1~
0.2%)にすぎず、家庭系用途での活用を本格的に議論するには今しばらく時間を要
する。しかしながら今後、技術開発の動向をたえず注視してゆく必要がある。
75
●生
ご
み
炭素が 5 割を占める生ごみ
生ごみは、紙とともに廃棄物系バイオマスの主要な要素である。
バイオマス(生物資源)を構成する物質の中で最も多いのは炭素で、45%を占める
(乾燥重量中の標準的な構成比、以下同様)。炭素とともに炭水化物や脂肪、たんぱく
質を構成する水素(6%)、酸素(35%)、窒素(3%)をあわせると約 9 割を占める。
以下、石灰(3%)、リン(2%弱)、硫黄(同)、カリウム(1%弱)などの多様な灰分(無
機物)が微量に含まれる。*
* 都市ごみの組成変化に応じた中間処理・再資源化システム検討(廃棄物学会論文誌 2006)
生ごみの循環利用には、大きく分けて三つの方法がある。①栄養源としての活用
(飼料化、堆肥化)、②エネルギー源としての活用(メタンガス化など)、③バイオプラ
スチックの原料としての活用(ポリ乳酸化など)である。
飼 料 化(鮮度と分別精度が命・・・事業系向き)
飼料化は、生ごみ中の成分の大半を活用できる有効な手法である。滅菌と水分蒸
発を目的に熱処理(てんぷら化、ボイル化など)を行うため、外部エネルギーを消費
する。最近では、乾燥工程を伴わないリキッドフィーディング(液状飼料を使った給
餌システム)による省エネルギー、低コストな手法が注目されている。
鮮度(保冷車による多頻度回収)と分別精度(異物混入の忌避、トレーサビリティ)が命
であり、「事業系生ごみ」向きの手法である。
堆 肥 化(最大の課題は堆肥の利用先確保・・・事業系・地域協働向き)
誤解しがちであるが、生ごみの有機物が農作物の栄養となるわけではない。有機
物は微生物の餌となり(分解されてCO2や水蒸気となる)、残った微量の灰分等が農作物
の栄養となる。また、増殖した微生物も、土壌の中で有用な働きをする。
堆肥化は、必要設備も相対的に軽易だが、最大の課題は、堆肥の利用先確保であ
る。国の中央環境審議会による意見具申(「食品リサイクル制度の見直しについて」平成
19 年 2 月)においても、次のように指摘されている。
「食品循環資源の肥料化を検討するにあたっては、・・・利用先の確保を前提
とした上での実行が図られるよう政策誘導を行うべきである。」
大きくは食糧自給率の壁があり、競合相手として畜ふん堆肥がある。投入可能性
のある堆肥をすべて投入すると日本の農地に必要な窒素量を大幅に超えると言わ
れている(生ごみ等の3R・処理に関する検討会:環境省)。
したがって、農地還元を期待しうるのは、市内の生ごみの一部にとどまらざるを
えない。事業系や地域での協働など、質の担保が可能な「顔の見える関係」に対し
て適用すべき手法である。
76
[図表Ⅰ-5] 生ごみ・バイオマス処理の物質収支・エネルギー収支(モデル試算)
有機物/ 水 分 /灰分
17
3
80
生ごみ
バイオマス*
生成物
35
反応温度・反応時間
残渣等の処理
6
59
エネルギー(電力)収支
(投入1㌧あたり)
8
堆 肥 化(生ごみ)
堆
*バイオマス…生ごみ・紙などの
混合物を想定。
7
肥
~70℃、30~50 日
3
水分蒸発 55
大気
放出
10
排水処理(BOD)
▲97kwh(電力購入)
脱臭処理(アンモニア)
排 水 17
*堆肥化とメタン化では、使うものと捨てるものが正反対。
メタン化(生ごみ)
バイオガス(発電等)
14
(BOD、アンモニア)
~60℃、16 日程度
残渣の水分 18 3
3
メタン化(バイオマス)
バイオガス(発電等)
23
排 水
34
12
残渣水分
25
大気
放出
水分蒸発 80
~60℃、15~30 日
焼
残
渣
(焼却 or 堆肥化)
同
上
+115kwh(売電)
6
却(生ごみ)
850℃~、3 時間
焼
+ 5kwh(売電)
排水処理
排 水 62
(NOX など)
17
3
焼却灰
却(バイオマス)
同
上
▲29kwh(電力購入)
排ガス処理
+48kwh(売電)
大気
放出
水分蒸発
35
59
同
上
6
*焼却も堆肥化も、ともに有機物を酸化によって分解。
堆肥化
メタン化
焼
却
長
所
○設備投資が比較的小額。
○エネルギー効率が良い。
○迅速・確実な衛生処理。
短
所
●堆肥の使途に量的限界。
●残渣の処理が必要。
●エネルギー効率が悪い。
●設備面積が大(焼却の 2~4 倍必要)。
77
(生ごみ焼却の場合)
◆事業系生ごみ
堆肥化事業者と食品関連事業者の「協働意識」が不可欠である。
①「農家の喜ぶ堆肥と消費者の喜ぶ食材」の好循環づくり、②環境データの公開・
共有による競争と相互レベルアップ、③「ともかく資源化」の時代から「質と環境
効率追求」の時代へ。
◆学校生ごみ
校内で堆肥化している学校も堆肥化事業者処理を行っている学校も、「食育」の
契機として活用することが望まれる。
◆地域での協働
集合住宅や有志グループの自主的な取り組みへの支援が必要である(その際、ハ
ード面もさることながら、地域での堆肥利用、農家との連携など「循環の環づくり」を重視す
ることが必要である)。
「循環の環」の形成にあたっては、自主的な地域の協働の取り組みを前提に、行
政による支援のあり方も検討すべきである。また、現在行っている「生ごみ堆肥化
容器等購入助成」についても、地域協働の取り組みとの整合性や環境負荷への影響
なども総合的に検証し、効果的な制度とするべきである。
なお、家庭ごみが無料収集であるため、「ごみなら無料で手間いらず、資源化す
れば手間と自己負担あり」とならざるをえない現状をどう考えるべきか、市民的な
議論も必要である。
メタン化(焼却施設との併設による総合効率追求が鍵・・・自治体処理向き)
◆生ごみ焼却の評価
焼却は高温処理なので汚物の分解能力(減量率)が高く、反応時間も短い(堆肥化
やメタン化の 100~400 分の 1)。紙や木材等については、この高温を利用して発電等の
エネルギー回収も可能である。
しかし生ごみの場合には、8 割を占める水分の蒸発に多くのエネルギーを消費す
るため、生ごみ焼却のエネルギー収支はマイナスである(他の焼却物のエネルギーを
奪い、発電効率を低下させている)
。したがって生ごみ焼却は、エネルギーを消費して
「迅速・確実な衛生処理」を行う行為と言える。
*ちなみに堆肥化の場合には、生ごみの保有熱量が発酵熱となり、水分量の約 7 割が
蒸発する(残り 3 割は、排水および堆肥の中に残留)。
◆生ごみメタン化の評価
生ごみ中の炭素を酸化(CO2として放出)する焼却や堆肥化(好気性発酵)とは逆に、
メタン化(嫌気性発酵)の場合には、炭素・水素・酸素の化合物から酸素を奪いメタ
ンガス(CH4)を合成する。水分蒸発をともなわないため、生ごみの保有熱量はほぼ
そのまま温存され、活用することができる。
78
しかし生ごみの保有熱量は、紙やプラスチックなど他の炭素化合物ほどには高く
ない(脂肪やたんぱく質は比較的高いが、炭水化物は低い)。このため、プラント操作や
公害防止に必要なエネルギーを差し引くと、回収可能なエネルギーはほとんど残ら
ない。したがって、エネルギー回収の手法というよりは、「省エネ型=投入エネル
ギー不要のごみ処理手法」の一つと考えるほうが適切である。
ただし、生ごみだけでなくバイオマスとして(紙などと混合して)メタン化処理を
行えば、回収エネルギーを増やすことができる。
◆焼却施設とメタン化施設の併設(総合効率の追求)
生ごみの持つエネルギーを十分に活用し、省エネ型のごみ処理を行っていくため
には、メタン発酵処理を導入することが望ましい。高水分量の生ごみの焼却回避は、
焼却施設におけるエネルギー回収効率を高めるという副次的な効果も持つ。また、
メタン発酵槽の加温や脱臭処理に焼却余熱を利用したり、発酵残渣を焼却するなど、
焼却施設とメタン化施設の連携も可能である。
このように、メタン化施設単体では少ないメリットを焼却施設との併設によって
拡大し、総合効率を高めることが望ましい。この点は、焼却施設を有する自治体ゆ
えの利点でもある(民間ではメタン化施設単体の運営となるため、総合効率の追求がむずか
しい)。
したがって、焼却施設の設備更新時期をとらえて、技術的動向に留意しながら導
入を図ることが望ましい。
◆留 意 点
これまでは、「資源化の推進=焼却量の減少=処理施設の縮小」という連鎖が成
立した。しかし、自治体処理によって生ごみ資源化を進める場合には、焼却量が減
少しても処理施設が縮小できるわけではない。したがって、下記に留意する必要が
ある。
① 焼却工場の設備更新時期をとらえた効率的な施設整備。
② 資源化施設の面積は、焼却施設よりも増大すること。
(既存の工場敷地を前提にする限り、展開しうる規模がごく限定される)
③ 小規模でまず着手し、経験を積みながら拡大しつつ、長期的な方向を見
定めること。
このようにメタン化施設の併設は、焼却工場の設備更新に合わせて経験を積みな
がら進めることとなるため、一気には進まない。したがって、家庭や事業所での水
切りなど、焼却水分を減らす工夫も併せて検討すべきである。
79
その他の手法
上記のほかにも、エネルギー回収を目的としたバイオエタノール化(アルコール
発酵)や、バイオプラスチックの合成を目的としたポリ乳酸化(乳酸発酵)などの手
法がある。いずれも開発途上で実用化には時間を要する。
しかし、更新手法の検討時期が迫る南陽工場には間に合わないにしても、他の 3
工場、あるいは現在更新中の鳴海工場の再更新の際には、選択肢となりうるかもし
れない。したがって、新技術とりわけバイオマス発酵技術の動向には、たえず注視
が必要である。
なお、すでに実用化されているものに廃食用油のバイオディーゼル燃料化がある。
その最大のネックは、回収効率の低さである(車輌燃料を消費して、少量ずつ分散する
車輌燃料の原料を回収)
。現段階では行政回収に乗り出すメリットは乏しい。
しかし、廃油は下水処理場では分解しにくいため、伊勢湾の富栄養化を回避する
上で、事業系廃油を中心とした民間回収・民間精製の促進が望ましい。
今後の課題
生ごみの資源化については、「再生資源利用としての飼料化や堆肥化」と「エネ
ルギー回収のメタン化やその他の方法」に大別される。
◆飼料化・堆肥化
自主的な好循環の追求をいかに構築していくかの視点に立ち、再生資源の利用先
の確保に留意しながら、地域の状況を踏まえた「顔の見える関係づくり」を支援し
ていくことが必要である。
◆エネルギー回収
標準・一括処理におけるエネルギー回収率向上を効率的に実現できるかの視点に
立ち、多くの水分を含む生ごみの特性に応じた処理方法と最新の技術的動向に留意
しながら、施設の高効率化について検討していくことが望ましい。
80
●ま と め(第 2 ステップのリサイクル)
リサイクル効率を左右する「設計段階での環境配慮」
物づくりは、①原料の採取(例:鉱山から鉱石を採掘)、②原料から有用物を抽出・
分離(例:純度の低い鉱石から高純度の金属材料を製造=精錬・製鉄、石油から石油化学原料
を製造=精製・分溜)、③材料を成形・加工し製品化という流れをたどる。
リサイクルは、廃棄物を回収・選別して③の段階(成形のための加熱・溶融を含む)
から再スタートする。①②を省略できるため、原理的には、原料および①②の過程
で必要なエネルギーを節約できる。ただし、「①原料の採取」の代わりに「①’再生
資源の回収」が、
「②有用物の抽出・分離」の代わりに「②’再生資源の分別・選別」
が必要となる。
「①’廃棄物の回収」については、再生資源中の有用物の濃度(純度)と、再生資
源の発生密度がリサイクル効率(物質収支、エネルギー収支、経済収支)を左右する。
多くの場合、濃度は天然資源と比べて遜色はない。発生密度については、人口も経
済活動も高密度のわが国においては、適切な回収システムさえ構築できれば世界で
最も高い効率が可能である。
「②’再生資源の分別・選別」については、分離困難な異種素材の混入が問題と
なる。通常、製品には多様な素材が混用され、複合素材も多い。したがって、天然
資源からの生産に比べて、再生材料の純度は低くなる。
A 分別しやすい設計・表示、○
B解
その克服には、
「市民の分別協力」はもとより、○
C 異種素材の混用や複合素材の使用抑制、○
D 材料規格の標
体・選別しやすい設計、○
準化(メーカーごとの微妙な材料組成の差異の解消)など、
「設計段階からの環境配慮」
が不可欠である。
現状のリサイクルとあるべきリサイクル
わが国が本格的な資源循環に取り組み始めてから、いまだ 10 年に満たない。し
たがって、リサイクル技術も社会システムも発展途上であり、当然、問題点も抱え
ている。
しかし確実なことは、下記である。
① 金属資源は有限(循環利用せずに散逸させれば枯渇)。
② 化石燃料も有限(使い切れば再生されない、枯渇する日は必ず来る)。
③ 生物資源は地球の再生産能力の範囲内でしか利用できない。
(生態系を破壊すれば、再生が困難)
④ 人間を含めた地球上のすべての生物は、地球誕生以来の元素量と日々降
り注ぐ太陽エネルギーの範囲内でしか活動ができない。
81
したがって、技術的・社会的な障害を克服して下記を追求する以外に、人類の持
続は保障されない。危ぶまれているのは地球ではなく、人類の持続可能性である。
①
②
③
④
物質資源の循環(しかも、エネルギー消費の少ない循環)。
化石燃料依存の脱却。
再生可能エネルギーの活用。
生物資源の持続可能な生産と利用。
リサイクルにおいて重要なことは、現状のリサイクルが抱える問題点を克服し、
あるべきリサイクルに近づけることである。
そのためには、①リサイクル技術の向上とともに、②設計段階からの環境配慮(材
料削減・材料種削減、易分別・易解体、異種素材の混用や複合素材の使用回避、素材規格の標
準化、低環境負荷素材への転換など)が不可欠である。
「ごみか、資源か?」から「ごみも、資源も!」へ
リサイクルは万能ではない。3Rの原則(まず発生抑制=リデュース、次に再使用=
リユース、3 番目に再生利用=リサイクル)が示すように、めざすべきなのは大量リサ
イクル社会ではない。「循環といえばリサイクル」という感があるのは、現在はま
だ、循環型社会のほんの入口に立ったばかりだからである。
長期的には、第 1 に、リサイクルの必要量自体を減らすことが必要である(省資
源設計=投入量削減、長寿命・易修繕・易再使用設計=排出量削減、販売からリースやレンタ
ルへの移行=モノの所有からサービスの利用への価値転換など、第2章の付表参照)。
第 2 に、リサイクル時の環境負荷を減らすことが必要である(前項参照)。
これらのためには、
「第 3 章 環境首都への七つの挑戦」でふれたように、新しい
挑戦が必要である。
①
②
③
④
生産者による環境配慮設計(拡大生産者責任=つくる人・売る人の役割)
消費者による環境配慮商品の選択(排出者責任=買う人・捨てる人の役割)
環境コストの価格への反映(循環促進型の経済システム)
環境情報の共有(環境負荷・環境コストの「見える化」)
名古屋のごみ問題は、新しい段階に入ろうとしている。「ごみか、資源か?」と
いう第 1 ステップは、優秀な成績で終えることができた。
次は、
「ごみも、資源も!(減らす、生かす)」という第 2 ステップに挑戦しなくて
はならない。それは、消費者、生産・流通事業者、再生事業者、行政が協働する新
しい社会像への挑戦でもある。
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