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甘平の裂果発生と気象要因

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甘平の裂果発生と気象要因
甘平の裂果発生と気象要因
露地栽培における裂果発生と気象条件との年次間差を解析した結果、開花期から果汁増加期に
降雨量が多く、9月の気温が低い年は裂果の発生が尐なくなる。
年次別裂果率
100
H17
H18
期間別裂果率
H19
H20
H21
H22
50
H23
年次間差(10~60%)大きい
70
60
50
40
30
20
10
9/1
9/16
10/1
10/16
20
10
H22
H17
H21
H20
80
累積裂果率 %
R =- 0.81
H19
20
~20
~30
~10/10 10/11~
60
R =- 0.87
H22
H17
40
降雨量が多い
と裂果の発生
は尐ない
H21
H20
H18
H23
200
300
5月中旬から6月上旬の降雨量 ㎜
H19
60
H22
H17
気温が高いと
裂果の発生が
多い
H21
40
H20
R = 0.85
20
H18
H23
H23
0
0
夜間(早朝)の果実の膨張による
裂果発生
80
H19
20
H18
100
~9/10
100
果汁増加期
開花~細胞分裂期
60
~31
気温との関係
80
累積裂果率 %
30
~8/20
100
100
0
40
10/31
降雨量との関係
40
9月中旬の裂果割合
が最も高く全裂果数
の4割に達する
0
0
8/17
累積裂果率 %
累積裂果率 (%)
80
累積裂果率を100とした比率 (%)
90
0
0
100
200
300
8月下旬から9月中旬の降雨量 ㎜
20
22
24
26
9月の平均気温 ℃
28
30
甘平の裂果軽減のためのかん水
裂果を尐なくするためには、開花後20日から果汁増加期(6~9月)にかけて十分量のかん水を
実施して、土壌水分の急激な変化を避けることが重要である。
かん水期間
春夏かん水区 4月~9月
夏かん水区 7月~9月
20
春かん水区 4月~6月
無かん水区
累積裂果率 (%)
累積裂果率 (%)
60
かん水間隔
50
40
30
20
毎日
10ℓ/樹 かん水区
3日間隔 30ℓ/樹 かん水区
7日間隔 70ℓ/樹 かん水区
15
10
5
10
0
8/5
8/20
9/4
9/19
10/4
10/19
11/3
かん水期間の違いと裂果率の推移 (H21)
(高接樹)
10日間隔で1樹当たり100ℓのホースかん水
裂果の発生は4~9月実施の春夏かん水区でやや尐なく、
4~6月の春かん水区、無かん水区でやや多くなる。
かん水設備の導入
0
8/25
9/4
9/14
9/24
10/4
点滴チューブを
樹冠下2列に設置
電磁弁の利用で
自動化を図る
10/24
かん水間隔の違いと裂果率の推移 (H23)
かん水期間は7月下旬~10月上旬 (7年生M16A苗木)
裂果の発生は毎日かん水区で尐なくなる傾向であった。
高温乾燥が続く場合は尐量多頻度かん水が効果的。
時期別の水管理
水源の確保
10/14
 4~6月
7日間隔 20~30㎜
 梅雨明け~
5日間隔 20~30㎜
 10月上旬以降 節水管理
土壌が深い園地や、日照が不足
する園地は、9月中旬頃から増糖
のため土壌乾燥を促す。
甘平の隔年結果防止のための結実管理
着果過多樹は樹勢が低下し隔年結果を引き起こす。連年安定生産のためには、早期に樹冠上部を
摘果し、樹上選果で樹容積1m3当たり着果数12果を基準に仕上げる。
あら摘果
仕上げ摘果
6月下旬~7月上旬
8月上旬
樹上選果
9月下旬~10月上旬
翌年の生理落果後着果数(果/m3 )
60
50
40
30
20
無摘果
10
0
0
結果枝葉5枚以上の単生有葉果を残し、
3割多目に仕上げる 18果/m3
樹冠上部を摘果し新梢の発生を促す
着果部位の違いと果実品質
地上高
着色
Brix
(1月中旬収穫果)
クエン酸
果梗緑
g/100ml
%
50㎝以下
8.0
12.2
1.21
45.5
60~100
8.4
13.0
1.21
47.6
110~150
9.1
13.0
1.12
29.7
160以上
9.1
13.2
1.16
38.5
樹冠下部の内成果は、糖度が低く着色不良で果梗部の緑色果が多いので摘果する
5
10
15
20
1m3 当たり仕上げ摘果後着果数(果/m3 )
25
樹上選果で1m3当たり着果数を12果にする
甘平の摘果方法
樹冠上部摘果
夏秋梢発生
樹冠下・内部摘果
30
甘平の生理障害の発生と軽減技術
7月下旬頃から果実の黄化・落果がみられ、収穫時には果頂部の硬化とス上がり症状がみられ、
何れもホウ素欠乏と推測している。 ホウ素剤の葉面散布で軽減効果がみられる。
生理障害果の発生
症状からホウ素欠乏と推測
ホウ素は土壌乾燥が続くと吸収されにくく、多雨で土壌から流亡
欠乏すると通導組織が害され、水の吸収が悪化し生長が停止する
過剰に施用すると葉の黄化・落葉を引き起こす
軽減技術
満開50日後頃の7月中旬にホウ素剤(商品名:ソリボー)1,000倍散布
4
2
健全果
8/10
収穫時に果頂部の硬化とス上がり症状(粒化症)がみられる
火ぶくれ
硬化果
黄化
黄化
火ぶくれ
0
8/16
8
6
4
2
0
8/6
火ぶくれ
6
ホウ素散布 (H24. 7.15)
無散布
黄化
8
10
火ぶくれ
果頂部が硬い
ホウ素散布 (H23. 7.28)
無散布
発生果数/樹 (n=10)
7月下旬頃から果実の黄化・落果がみられ、無摘果や着果過多樹でとくに多い
10
黄化
黄化果
発生果数/樹 (n=10)
健全果
8/17
ホウ素剤の葉面散布で黄化果実の発生が尐なくなる。
また、果頂部の硬化症状の発生も尐なくなる傾向がみられている。
甘平の増糖技術
増糖対策には、9月中下旬以降の降雨を遮断しながら、灌水量を控えて10月以降に水分
ストレスをかける。
9月以降の降雨と糖度
10
2.0
1.5
9
1.0
13.5
13.0
2
R = 0.7261
12.5
12.0
11.5
0
0
100
200 300 400
降水量(mm)
500
図 9/上~10/中の降水量と糖度の関係
(露地甘平 H18~H23)
9月上旬~10月中旬に雨が多いと、収穫時の糖度は低い。
H18年産とH23年産を比較すると9月上旬まで糖酸ともに同程度で
あったが、H23年産は9月中旬に200mm以上の降雨があり、その後
も降雨が多かったことから収穫時の糖度に1.5程度の差が生じた。
多灌水Brix
少灌水クエン酸
多灌水クエン酸
11
2.5
10
2.0
9
1.5
8
1.0
7
0.5
6
0.0
2/1
3.0
1/1
3.5
12
12/1
13
11/1
4.0
10/1
4.5
14
図 9/中~10/中の灌水量の違いと糖酸の推移
(H23年産 無加温甘平)
クエン酸(g/100ml)
少灌水Brix
時期別糖度の目標値
15
9/1
Brix
節水管理による増糖効果
9/中~10/中の約1ヶ月の尐量灌
水で糖度が上昇。露地栽培では
マルチ被覆を行う。
14.0
50
1/20
12/20
11/20
10/20
0.0
9/20
0.5
7
8/20
8
100
11/上
2.5
10/下
11
H23
150
10/中
Birx
3.0
10/上
3.5
12
H18
9/下
4.0
9/中
13
200
9/上
4.5
降水量(mm)
14
土壌が乾かない状態が続く
250
Brix(1月30日)
H23Brix
H23クエン酸
クエン酸(g/100ml)
H18Brix
H18クエン酸
積算降水量と糖度との関係(H18~H23)
糖度
クエン酸
10/20
9.9
2.20
11/10
11.2
1.65
11/30
11.8
1.37
12/20
12.3
1.17
2月収穫時糖度13以上を目標に、9月中旬から土壌水分が
尐なくなるよう節水管理を行う。
甘平の予措・貯蔵技術
早採りを避け、8分着色以上の果実から分割採取する。品質基準に達している果実は、貯蔵性が低いため早
めに出荷するが、酸高果は、貯蔵中に減酸し、1ヶ月以上の長期貯蔵が可能である。
糖度14以上の樹で
は完着率が高い。
8分着以上の分割採取
Brix
100%
果皮色
a値
27.9a
22.2a
5.7b
*
クエン酸
16.0
90%
1.2
80%
70%
15.5
60%
50%
40%
R
2
= 0.677
30%
0.8
15.0
0.4
20%
14.5
10%
着色不良果は糖酸ともに低い。早採りを控
え、8分着以上の果実から分割採取する。摘
果を徹底するとともに、マルチ被覆などの
増糖・着色促進対策を行う。
2/28ポリ貯蔵
クエン酸(g/100ml)
クエン酸
(g/100ml)
12.7a 0.81a
11.7b 0.65ab
10.4c 0.58b
*
*
Brix
Brix
完着果の割合
着色程度と果実品質
1果重 果肉歩合
試験区
(g)
(%)
9~10分着
270
86.9a
7~8分着
274
86.0a
5分着以下
279
83.6b
有意性
*
H24年1月18日に採取、30日分析
4月中下旬には
異味、浮皮発生
酸高果の貯蔵方法
0%
10
12
14
Brix
図 樹 ご と の Brixと 完 着 果 割 合 の 関 係
(H23年 産 )
16
14.0
0
1/20
2/9
2/29
3/20
4/9
4/29
・貯蔵中の糖度の上昇はみられない。
・クエン酸は緩やかに減尐する。
ポリ個装
2週間後
貯蔵前の状態(2月8日)
約5℃
約13℃
常温の倉庫内(5℃)よりも、やや温度を高めた約13℃程度で、着色が進む
効果がみられる。しかし、高温によるしなび、ヘタ枯が発生しやすくなる
ので、更なる検討が必要である。
浮皮の発生
ポリ個装する場合、約2週間かけてやや強めの6%
程度の減量とする。予措が不十分だと、貯蔵中に
浮皮が発生する。
カキ新品種 ‘太天’の摘果方法
1.太天の摘果時期と方法
2.太天の摘果程度と果実品質
太天は奇形果(突起、溝、歪な果形)
の発生割合が高い。
摘果時期は果形の見極めが容易になる
7月下旬~8月上旬が良い。
太天は500g程度の大きな果実になるが、着果過多樹は
糖度が低く、美味しくない!
葉果比25~30枚/果程度に摘果する。
奇形果が多い
葉果比と果実重
摘果する果実
葉果比とBrix
700
18
650
591
592
605
600
ヘタの小さい果実
残す果実
14
15.9b
14.3ab
13.3a
10
500
溝の深い果実
15.0ab
16
12
550
突起がある果実
Brix(%)
果実重(g)
630
15枚区 20枚区 25枚区 30枚区
15枚区 20枚区 25枚区 30枚区
葉果比25~30枚区で糖度が高い。
着果量が多いと食味が低下する。
ふっくらと丸く、ヘタが大きい
果実を残す。
着果過多は厳禁!
果形の揃った‘太天’
カキ新品種 ‘太天’の脱渋方法
×太天に適さない脱渋方法
ポリ個装脱渋
軟化、裂皮が発生する。
アルコール、ドライアイス脱渋
軟化、黒変が生じる。
果皮の裂皮、果肉の黒変、軟化などの障害
が発生しやすい。食味、日持ちも悪い。
◎太天に適した脱渋方法
樹上脱渋
CTSD脱渋
障害果の発生なし。
太天の特徴であるサクサクした食感が残り、
食味が良い。外観もきれいで見た目も良い。
カキ新品種 ‘太天’の整枝方法
1.整枝方法の検討
2.太天に適した整枝は?
太天に適した整枝方法を検討している。
高接更新による開心自然形
平棚栽培
太天はカキの中で最大級の果実サイズとなる。
立木整枝では、枝つりの必要がある。
果実の重さで枝が折れやすい
下垂枝の枝つりが必要
☆平棚栽培のメリット
枝つりが不用になる。
果実品質が均一になる。
作業性が向上する。
農薬の散布効果が高くなる。
台風などの強風に強い。
主幹形
ポット栽培
ポット栽培は樹勢の維持が難しく試験を中止したが、
その他の樹形について、収量性、果実品質を検討中
である。
平棚栽培の結実状況
棚の設置費用はかかるが、太天の特性を考慮すると、
平棚整枝が適してると考えられる。
キウイフルーツの新品種つくります!
1.新品種の必要性
3.育種目標
雌品種
○果肉色
赤色、黄色
○1品種では労力分散が難しい。
○糖
度
18%以上
○ヘイワードの酸味、イライラ感
が苦手な人がいる。
○酸
度
0.3%以下
○ヘイワードに偏った品種構成。
○他県では食味の優れる新品種
の開発が進められている。
○開花期
愛媛県の品種構成割合(2010年)
雄品種
ヘイワードと開花期が異なる。
○開花期が早い。
○花粉量が多い。
育種材料
2.これまでの取組状況
2001年よりキウイフルーツの品種開発試験を開始。
これまでに下の写真のような系統を獲得し、品質の
優れる2系統(愛媛1号、2号)を一次選抜している。
ヘイワード系品種
中国系品種
シマサルナシ
交雑個体
センターで保存している品種を使って交雑育種を進める。
愛媛1号
愛媛2号
現地試験実施中
全国一のキウイフルーツ産地に相応しい
えひめオリジナルの新品種を開発する!
キウイフルーツにおける散水氷結法の効果
1.キウイフルーツの晩霜害
3.散水の効果
2.0
中国系キウイフルーツは、
発芽期が早く晩霜害に遭遇し
やすい。萌芽した新梢は-2℃
以下の低温により枯死する。
散水
-2.0
-4.0
-6.0
晩霜害による新梢の枯死
18:00
19:00
20:00
21:00
22:00
23:00
0:00
1:00
2:00
3:00
4:00
5:00
6:00
7:00
8:00
温度(℃)
0.0
外気温
対照区
散水区
試験日
平成24年2月13日~14日
散水水温
7.5℃
散水量【実測値】
2,167㍑/h
10a散水量【換算値】
6,748㍑/h
2.散水氷結法のしくみ
スプリンクラーなどで散水し樹体を氷結させる。水は
氷結する際に潜熱を発生するため、外気温が氷点下でも
散水が継続される間は、氷に覆われた枝の温度は0℃以
下にならず、新梢の枯死を防ぐことができる。
温度(℃)
2
1
試験樹は完全に氷結している。
水
氷+水
氷
○対照区では-5.8℃まで低下したが散水区は0℃付近で一
定となり、キウイフルーツにおいても散水氷結法の効果
が高いことが確認できた。
0
-1
水が氷結するときの温度変化
散水中は枝の温度は0℃
○10aあたりの散水量は6,748㍑であった。現在、散水量
を2,000㍑以下に節減する技術開発の検討を行っている。
キウイフルーツ根腐病抵抗性台木の開発試験
1.キウイフルーツ根腐病
3.現地実証試験
根腐病はキウイフルーツ
栽培に深刻な影響を及ぼし
ている。果樹研究センターでは
根腐病抵抗性台木として、
シマサルナシの利用を検討
している。
今治産地育成室、JA越智今治は、根腐病発生ほ場
においてシマサルナシ台木の実証試験を行っている。
実証ほ場の生育状況(今治産地育成室、JA越智今治)
ほ場
Aほ場
根腐病による立枯症状(Hort16A)
2.シマサルナシとは
Kほ場
台木
シマサルナシ
慣行
2010年
2011年
2012年
定植
定植→枯死
シマサルナシ
定植
シマサルナシ
定植
定植→枯死
定植
回復
慣行
定植→枯死
定植→衰弱
慣行
定植→衰弱
回復
注)ほ品種は ‘ヘイワード’
シマサルナシの果実
シマサルナシの分布域
シマサルナシはキウイフルーツと同じマタタビ属の植物
で、温暖な西日本の沿岸部に自生している。
シマサルナシは根腐病に強いことからキウイフルーツの
台木として期待される。
シマサルナシ台木 は順調に生育
慣行台木は3本が枯死。
シマサルナシ台木は根腐病発生ほ場でも順調に生育し
ており、実栽培上も根腐病に強いがことが明らかになり
つつある。
キウイフルーツ根腐病の発生
本病の発生は急激に多くなっており、特に本年は梅雨時期の多雨、梅雨明け後の高温により
発生が助長された。本病は土壌中にいるカビによる病気である。
発生園の状況
改植後の枯死
発症苗根部
●梅雨明け頃から、落葉が
認められ、徐々に枯死に至
る。
●改植しても再発する事例
も確認されている。
皮層組織の軟腐症状
切断面の症状
罹患境界組織の褐変症状
キウイフルーツすす斑病の発生生態と防除対策1
すす斑病は県内では平成20年に初確認され、現在では「ホート16A」 「紅妃」「レインボーレッド」および「ヘイワード」で確
認されている。 ここでは葉での発病差異から感受性について違いを検討した。
紅妃
葉・果実に発病するが、樹上での果実での発病は見られ
ないが、貯蔵(2℃)中に「凹状病斑」が認められる。
発病率 %
ホート16A
ゴールデンキング
レインボーレッド
エルムウッド
貯蔵果実の病斑を切断
すると、褐変し、スポン
ジ状になっている。
ホート16A
葉・果実に発病する。果実は樹上では「すす状病斑」・「凹
型病斑」が見られ、さらに貯蔵中も発病が増加する。
紅妃
試験1:8月22日接種、9月28日調査
試験2:11月1日接種、2月13日調査
ヘイワード
0
20
40
60
葉へのすす斑病菌接種による感受性の差異
すす斑病に対する感受性の差異を確認したところ、感受性は
「ホート16A」> 「ゴールデンキング」、 「レインボーレッド」 、「エ
ルムウッド」、「紅妃」>、「ヘイワード」の順と考えられた。
すす状病斑
凹状病斑
80
キウイフルーツすす斑病の発生生態と防除対策2
平成20年に県内で初確認して依頼、発生面積が増加し、今年度は新たに今治市で確認されるなど、今
後さらに注意が必要である。
そこで本病に対し効果のあるベンレート水和剤を用いて散布回数の確認を行った。
発病葉率 (%)
葉におけるすす状病斑(紅妃)
発病果率 (%)
3回散布
3
0
2回散布
2
0
無散布
1
0
10
20
30
葉 (9月30日調査)
40
50 0
10
20
30
貯蔵果実 (12月28日調査)
ベンレート水和剤の散布回数と防除効果
2回散布:6月23日、7月16日
3回散布:6月23日、7月16日、8月20日
「紅妃」を用いて、ベンレート水和剤(2,000倍)を6月下旬、7月中旬の2
回散布区と、8月中旬を加えた3回散布区の防除効果を検討したところ、顕
著な防除効果が認められ、特に3回散布の効果が高かった。
また、その効果は貯蔵中の果実に対しても続くことが明らかとなった。
貯蔵中に現れた凹状病斑(紅妃)
40
キウイフルーツかいよう病の防除対策は休眠期からが重要
キウイフルーツかいよう病の発生圃場は毎年拡大し、本病に弱い品種では感染後早い時期に
枯死するなど被害が拡大している。
本病の対策は発病樹の早期発見・伐採であるが、今後周辺圃場(樹)への感染拡大を抑えるた
め、主要な感染時期である収穫後からの銅水和剤の発病抑制効果を検討した。
30
発病葉率(%)
25
銅剤
20
枝への感染抑制
15
発病・感染抑制
枝から菌の漏出(3月)
10
5
0
ICボルドー66D 50倍
コサイドボルドー 500倍
無散布
ICボルド-66D(50倍)散布の発病抑制効果
(散布月日:12/1、1/14、2/15、3/11 調査:6/3)
新葉での発病(5月上旬)
ICボルドー66D(50倍)を収穫後~発芽前まで定期的に散布することにより感染抑制効果が高いので、
発病樹が認められている地域では全園で積極的な実施が必要である。(50倍はH24.7.11適用拡大)
「不知火」におけるカワラヨモギ抽出物製剤の効果的な処理法
カワラヨモギ抽出物製剤(商品名:シトラスキープ)は果実腐敗抑制効果があり、既に県内の主要産
地においても利用されている。
これまで本剤の処理方法については、「塗布」「浸漬」「吹付」の3処理を検討してきたが、今後の普
及にあたり最も効率的で、かつ腐敗抑制効果の高い処理法を検討した。
腐敗防止剤散布果実
(収穫70日後処理)
各処理での処理時間及び処理量
処理法
処理量
処理時間
浸漬
224~310ml
24分20秒~31分19秒
塗布
71~96ml
22分30秒~30分36秒
吹付け
140~160ml
2分20秒~3分56秒
注1)処理量は1区50果3反復の合計
注2)処理時間は1区3反復の合計時間(1人)
100
腐敗果率(%)
80
60
40
20
0
浸漬
塗布
吹付
無処理
①処理量は塗布処理が
最も少ない。
②処理時間は吹付処理
が最も短い。
SK-253の処理法の違いによる腐敗抑制効果
(処理14日後)
吹付処理が最も腐敗抑制効果が高く、処理時間も短く効率的であるが、処理コストは塗布処理が最も
少なかった。
カンキツ有機栽培における銅水和剤の有効活用
銅水和剤はカンキツ主要病害に対して適用登録があり、化学合成農薬ほど効果は高くないが、有機
JASで使用できる数少ない農薬の一つである。そこで、有機栽培で特に問題となるそうか病、黒点病に
対する銅水和剤(ICボルドー66D)の実用性を検討した。
100
問題点
80
60
発病度
散布月日
3月31日 5月6日 5月31日 6/23、7/27、8/24、9/26
銅水1 IC(40倍)
IC(80倍)
IC(200倍)
銅水2 IC(40倍)
IC(200倍)
銅水3 IC(40倍) IC(80倍)
IC(200倍)
銅水4
IC(80倍) IC(80倍)
IC(200倍)
イオウF
イオウF イオウF
イオウF
無散布
1)IC:ICボルドー66D 2)イオウF:400倍
2)供試品種:興津早生(そうか病多発園地)
40
20
100
90
80
新葉(6月下旬)
0
果実(9月上旬)
銅水1
発病度
70
銅水2
銅水3
銅水4
イオウF
無散布
ミカンサビダニ被害が増加
銅水和剤の体系散布による「黒点病」発病抑
制効果 (11月上旬調査)
60
50
40
30
20
10
0
銅水1
銅水2
銅水3
銅水4
イオウF
無散布
銅水和剤を発芽前から生育期にかけて継続散布した結
果、そうか病に対し効果は高かった。また、黒点病に効果
はやや低いが、総合的には外観品質は向上した。
なお、問題点として、ミカンサビダニ被害果が増加するこ
とがあり、果実に薬害(スターメラノーズ)が発生した。
銅水和剤の体系散布による「そうか病」発病抑制効果
ミカンサビダニ対策は他剤との併用必要
カンキツ主要アブラムシ類の見分け方と発生の特徴
カンキツに寄生するアブラムシは、10数種類知られている。その中で、発生量が多く、すす病被害も大きいのがこの3種であ
る。
写真1 ユキヤナギアブラムシ
写真2 ワタアブラムシ
被害で見分ける
→葉巻き被害の
有・無
葉巻き被害有
写真3 ミカンクロアブラムシ
成虫で見分ける
→光沢の有・無
葉巻き被害無
幼虫
有翅虫
光沢無
光沢有
幼虫
無翅成虫
光沢のない緑色。寄生数が増え
ると葉の先端から巻き込む被害
となる。薬剤が効きにくい場合が
ある。
無翅成虫
光沢のない黄色、緑色、濃緑色、
黒色と変化に富む。葉巻き被害
は少ない。薬剤は比較的効く。
幼虫
無翅成虫
光沢のある黒色。茎にも好んで
寄生。葉巻き被害はない。ウイル
スを伝播。薬剤は非常によく効く。
カンキツ主要アブラムシ類に対する薬剤の効果
アブラムシ類は、高接ぎや苗木の育成園では多発すると生育を阻害し、成木園では夏秋梢に多発すると、
果実にすす病を発生させるなどの被害を起こす。近年、これらに対する薬剤の効果を疑問視する声があるこ
とから、それらの効果を種類別に確認した。
表 3種アブラムシ類に対する各種薬剤の防除効果(果研セ内)
ユキヤナギアブラムシ
薬剤系統
供試薬剤
散布
1日後
(5/12)
散布
3日後
(5/14)
散布
散布
7日後 13日後
(5/18) (5/24)
散布
1日後
(5/25)
散布
4日後
(5/28)
散布
散布
7日後 12日後
(5/31) (6/5)
モスピラン水溶剤
4000
4.7
4.0
7.8
21.7
65.3
76.3
12.4
67.4
13.9
87.5
100.0
0.0
7.4
11.7
0.0
6.1
18.4
0.7
50.3
38.9
46.9
100.0
0.2
0.4
1.9
0.2
0.6
13.5
0.0
4.2
14.2
7.8
100.0
0.1
0.4
0.4
0.1
0.2
6.6
0.8
0.2
1.2
0.1
100.0
0.0
0.0
0.0
3.0
0.0
1.1
0.0
64.0
34.5
57.2
100.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.3
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
4000
4000
スタークル顆粒水溶剤 2000
アクタラ顆粒水溶剤
3000
オリオン水和剤40
合成ピレスロイド系 ロディー乳剤
他系統
ミカンクロアブラムシ
散布
散布
散布
散布
1日後 4日後 7日後 13日後
(5/25) (5/28) (5/31) (6/6)
アドマイヤーフロアブル
ネオニコチノイド系 ダントツ水溶剤
カーバメート系
ワタアブラムシ
希釈
倍数
1000
2000
ハチハチフロアブル
2000
コルト顆粒水溶剤
4000
キラップフロアブル
2000
無処理
-
※)数値は無処理を100とした時の補正密度
ユキヤナギアブラムシ
0.0
0.0
5.3
9.7
32.4
6.7
2.8
2.0
0.0
11.4
100.0
0.0
0.0
15.8
32.5
65.0
33.2
8.3
0.0
0.0
0.0
100.0
0.0
0.5
2.9
24.4
117.3
81.1
56.0
30.4
0.0
0.0
100.0
0.4
1.3
3.1
0.9
1.7
12.4
3.5
2.7
3.5
3.9
100.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
効果不足や効果の低下が懸念される
:下の2種に比べ、効果の低い薬剤が
多い。ネオニコチノイド系薬剤でも種類によって
効果差がある。
ワタアブラムシ :オリオン水和剤40以外は、高い効果。
ミカンクロアブラムシ :全ての薬剤の効果が高い。
薬剤によっては、死亡するまでに3日程度要し、即効性の低いものもあ
る。
ユキヤナギアブラムシは、難防除。
薬剤に強く、寄生葉
は葉巻し、薬剤がか
かりにくい。
ゴマダラカミキリに対する薬剤の効果
成虫に対するネオニコチノイド系薬剤の食毒効果は、他系統の剤に勝ることを明らかにしてきた。しかし、接触
毒のみの効果や、食毒・接触毒を併せた効果については不明であるため、これらについて検討した。
試験1 接触毒の効果
試験2 接触毒と食毒の併せた効果
ダントツ水溶剤 1日後
ネオニコ
チノイド
系
4000倍
ダントツ水溶剤 1日後
4000倍
3日後
ダントツ水溶剤 1日後
モスピラン水溶剤 1日後
4000倍
オリオン水和剤40 1日後
有機
リン系
スプラサイド乳剤40 1日後
1000倍
1500倍
2000倍
3日後
カーバ
メート系
3日後
3日後
モスピラン水溶剤 1日後
4000倍
3日後
3日後
モスピラン水溶剤 1日後
2000倍
3日後
正常
苦悶
死亡
無処理 1日後
3日後
3日後
接触毒と食毒を併せた条件
下では、どの剤も効果が高
い。ただし、有機リン系を除
く薬剤では、苦悶虫の割合
が高い。
オリオン水和剤40 1日後
1000倍
3日後
スプラサイド乳剤40 1日後
0
2
4
6
8
虫数
図 処理後日数と供試虫の状態(接触毒)
10
(頭)
接触毒の効果は有機リン系、カーバメート系の順に高い。
ネオニコチノイド系の効果は低く、苦悶状態から正常に戻
る個体がある。
3日後
正常
苦悶
死亡
無処理 1日後
1500倍
3日後
0
2
4
6
虫数
図 処理後日数と供試虫の状態(接触毒+食毒)
8
10
(頭)
3年間の試験結果から、
1.
2.
ネオニコチノイド系薬剤は、食毒効果は高いが、接触毒効果は低い。降雨の無い条件であれば
1週間以上の残効が望めるが、降雨があると残効は望めない。苦悶している虫に対し、降雨や
低温条件下で薬剤のかかっていない枝葉を与えたると、正常な状態に戻る場合が多い。
有機リン系やカーバメート系の薬剤は、接触毒効果は高いが、残効は短く、特に有機リン系薬剤は残
効は無い。両系の薬剤ともに、後食による枝や葉の被害程度は高い。
カンキツ園での土着天敵を利用したミカンハダニ防除技術
県下の慣行防除カンキツ園におけるミカンハダニの土着天敵の発生状況と利用方法について紹介する。
ミカンハダニ
の天敵であ
るミヤコカブ
リダニは、県
下の4割程度
の園で発生
が確認され、
県内全域に
分布している
(図1)。
写真 ミカンハダニ(上)を捕食
するミヤコカブリダニ(下)
:ミヤコカブリダニ発生園
:ミヤコカブリダニ未発生園
◎:死亡率0~30%、○:30~80%、
△:80~99%、×:100%
【宇和島市個体群薬剤試験(愛媛 2010)
及び浜村・篠田(関西病虫研報 2004)より一部引用】
1
2009
2010
5/25
6/7
6/21
7/5
7/21
7/29
8/5
8/16
8/29
9/12
9/26
10/11
5/25
6/10
7/5
7/21
8/2
8/17
8/30
9/13
9/29
10/14
10/28
0
2011
図2 ナギナタガヤ草生栽培カンキツ樹上
でのカブリダニ類発生の推移
(叩き落とし調査 センター内イヨカン)
ナギナタ区
裸地区
ネオニコチノイド系・IGR系殺虫剤や殺ダ
ニ剤の一部はミヤコカブリダニに対して悪
影響が小さいため、発生園ではそれらを
使用する。
4
2
0
2009
2010
5/25
6/7
6/21
7/5
7/21
7/29
8/5
8/16
8/29
9/12
9/26
10/11
2
6
5/25
6/10
6/23
7/5
7/21
8/2
8/17
8/30
9/13
9/29
10/14
10/28
ナギナタ区
裸地区
8
5/1
5/15
6/1
6/15
6/29
7/13
7/28
8/10
8/21
9/7
9/24
10/5
10/19
ミカンハダニ個体数(頭/葉)
3
5/15
6/1
6/15
6/29
7/13
7/28
8/11
8/21
9/7
9/24
10/5
10/19
カブリダニ類個体数(頭/枝)
図1 慣行防除カンキツ園におけるミヤコカブリダニ発生状況(2011年)
4
表 ミヤコカブリダニに対する農薬の影響一覧
系統名
薬剤名
成虫
有機リン系
ダーズバン
×
スプラサイド
×
ネオニコチノイド系
モスピラン(水)
◎
アドマイヤー(F)
◎
カーバメト系
ラービン
○
IGR系
マッチ
◎
カスケード
◎
その他
ハチハチ
×
殺菌剤
ジマンダイセン
○
エムダイファー
○
殺ダニ剤
ダニカット
×
コテツ
×
マイトクリーン
△
コロマイト
○
サンマイト
○
カネマイト
◎
マイトコーネ
◎
2011
図3 ナギナタガヤ草生栽培カンキツ樹上
でのミカンハダニ発生の推移
(見取り調査 センター内イヨカン)
ナギナタガヤなどの草生栽培園では、カ
ブリダニの発生が早く、量も多くなり
(図2)、ミカンハダニの発生量が尐な
くなる傾向がみられる(図3)。
ミカンキイロアザミウマによる愛媛果試第28号春葉被害
平成23年6月に、中予地域の愛媛果試第28号(紅まどんな)園にて、この虫の春葉被
害を初確認した。その時の現場の被害状況と再現試験の結果を紹介する。
上段の5枚:平成23年6月18日撮影
上段:現場の被害状況
園全体の樹の春葉→周縁部を中心に部分的に黄化、果実は正常
8月9日撮影
葉表
7月8日撮影
葉表
6月29日撮影
ひどい場合は、
葉全体が黄化→落葉
葉の一部分
が黄化
下草(カタバミ等)に
多数のミカンキイロ
アザミウマが寄生
新鞘をネット被覆
雌成虫10頭接種
葉表
6月18~28日
葉裏
下段:再現試験
現場と同様の黄化症状再現される
→ミカンキイロアザミウマによる被害と判断
接種状況(10日間)
キウイ・モモ・ウメに寄生するカイガラムシ類の生態と防除
キウイ・モモ・ウメ において、カイガラムシ類が発生し一部で問題となっている。合成ピレスロイド剤等の使用
によりカイガラムシ類の発生が助長されることから、カメムシ類の発生が多かった本年度は特に注意が必要であ
る。
~生態~
キウイ:クワシロカイガラムシ(以下クワシロ)
ウ メ:ウメシロカイガラムシ(以下ウメシロ)
モ モ:ウメシロ・クワシロ両種が寄生
(本年度のモモ園での調査では、松野町はウメシロ、
松山市伊台の果樹研究センター内はクワシロが優占種であった。)
左:ウメシロガラムシ雌成虫(ウメ)
右:クワシロカイガラムシ雌成虫(モモ)
両種とも雌成虫で越冬し、年3回発生(5月、7月、8~9月頃)
~防除対策~
両面テープで捕獲された
クワシロガラムシ1齢幼虫
防除適期
2、有効薬剤
アプロード水和剤 1,000倍
スプラサイド水和剤 1,500倍
冬季のマシン油乳剤
スプ ラ サイ ド水和剤
1500倍
22
日
5月
20
日
5月
18
日
5月
16
日
5月
14
日
5月
12
日
モスピ ラ ン 水溶剤
2000倍
5月
10
日
500
400
300
200
100
0
5月
両面テープ設置状況
捕獲虫数(頭/日)
1、適期の薬剤散布
防除適期
ウメシロ:5月上・中旬、7月上・中旬、8月下旬~9月上旬
クワシロ:5月中・下旬、7月中・下旬、9月上・中旬
図1 テープに捕獲されたクワシロカイガラムシ
第1世代歩行幼虫数(センター内モモ園 平成24年)
幼虫発生最盛日の数日後が防除適期となる
無散布
0
500
1000
1500
2000
次次世代雌成虫増加率(%)
図2 クワシロカイガラムシに対する薬剤の
防除効果(センター内モモ園 平成24年)
越冬世代成虫数調査後、
第1世代幼虫発生時期1回散布(5月19日)
第2世代成虫数調査(9月3日)
クワシロに対
するスプラサ
イド水和剤の
効果は高く、
モスピラン水
溶剤の防除
効果は低い。
Fly UP