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発達障がい児支援のあり方に関する - 岩手県県立学校一覧岩手県県立
知的障がい養護学校の特別支援教育センターにおける、 発達障がい児支援のあり方に関する−研究(4) あじさい特別支援教育センター 発達障がい児支援プロジェクト (岩手県立花巻養護学校) 平成19年度 発達障がい児支援プロジェクト Ⅰ あじっこ 研究テーマ 知的障がい養護学校の特別支援教育センターにおける発達障がい児への支援あり方をさ ぐる。 Ⅱ テーマ設定の理由(概要) 平成15年度、本校にあじさい特別支援教育センターが設置された。設置当時から発 達障がい児支援のニーズが高かったが、その対応は発達障がいに関する知識や経験を有す る特定のスタッフに頼っていた。知的障がい養護学校では発達障がい児支援のノウハウが 乏しいという現状があったためである。経験のある個人のみに頼った支援ではなく、組織 として支援のノウハウを共有・蓄積し、必要に応じて情報を発信できることが急務である と考えられた。 そこで、平成16年度、あじさい特別支援教育センター内に発達障がい児支援チーム を結成し、支援事業を立ち上げた。17年度からは、プロジェクト研究の一つと位置づけ て事業を継続・研究し、18年度は、これまでの研究で得られたノウハウを活かしながら、 本校を会場に行ってきた事業を対象地域の北上地区へ移した。活動も、金曜の夕方から土 曜の午前中に移したことで参加者が増え、児童の担任の先生も参加するなどの成果があっ た。また、年度の途中からT1・T2を輪番制で行うことにより、今まで以上にスタッフ の意識が高まり、支援のノウハウを獲得していくよい機会となった。 今年度は、個別の記録で活動を振り返り、児童を評価することで自分自身を評価し、よ り支援の方法を明確にし、スタッフのさらなる支援する力を上げていきたい。 Ⅲ 研究の目的 発達障がい児支援に関するノウハウを実践的に獲得し、それを組織の成果として共有、 蓄積し、発信できることを目指す。 Ⅳ 研究の内容・方法 1 文献研究 (1)発達障がい児の理解と支援方法について (2)発達障がい児および保護者の心理について 2 実践活動に基づく事例研究 (1)児童支援(北上教育事務所管内の児童を対象とする) 目的:ゲームなどを通して、ルールやマナー、人付き合いなどのソーシャルスキ ルを身につけることをめざした場とする。スタッフにとっては実践を通して 経験を積む場とする。 方法:「SST(ソーシャルスキルトレーニング)教室あじっこ」を開催する。内容 は、はじめの会、ゲームなどのグループ活動、おわりの会で、支援スタッフ −発達障がい 1− がマンツーマンでつく。また、スタッフは、反省会で一緒に活動した児童の 様子を記録する。その回のチーフはそれらをまとめ、次のプロジェクト研究 の日に反省をし、次回へ生かしていく。 (2)保護者支援(北上教育事務所管内の保護者を対象とする) 目的:保護者にとって悩みを打ち明けたり、相談しあったり出来る場、仲間作り の場を提供する。研究にとっては保護者のニーズや、保護者から見た児童の ニーズを把握する場とする。 方法:「談話室あじわい」と称する会合を月 1 回程度開く。スタッフが 2 人入り会 合をコーディネートする。 (3)教員支援(花巻、北上、遠野地区の小中学校、高等学校、養護学校の教職員を対 象とする) 目的:発達障がいに関する研修を行うとともに、情報交換の場とする。 方法:「夏季公開講座(サポーターズ・ミーティング)」と称するセミナーを長期 休業中に開催する。 3 研究報告書の作成・発信 支援対象地域の関係機関、必要と思われる県内外の教育関係機関及び各地のインフ ォーマルな支援グループに発信する。 Ⅴ 研究計画 1年次 養護学校における支援体制の検討。 2年次 実践の継続、検討。地域支援ネットワークの検討。 3年次 支援モデルの提起。 4年次 親の会の立ち上げ Ⅵ 結果 1 実践報告:児童支援 (1)「SST教室あじっこ」の目的 「SST教室あじっこ」の目的は、以下三点である。 ①支援対象地域の発達障がい児支援に資すること、具体的にはソーシャルスキルの向 上を図る。 ②あじさい特別支援センタースタッフの発達障がい児理解に資すること。 ③発達障がい児支援の具体的な方法を模索し、開発、蓄積すること。 (2)「SST教室あじっこ」の方法 ①「SST教室あじっこ」の対象は、北上教育事務所管内(北上市、湯田町、沢内村) の小学校在籍児童およびその兄弟である。北上教育事務所や北上市の幼児教室(療 −発達障がい 2− 育センター)を通じて参加児童を募集、他に本校が相談を受けた児童に参加を促す ことで、16年度は4名の児童が集まった。17年度はニーズや知名度が上がった ことにより倍以上の11名(昨年からの参加児童含む)の児童が参加した。11名 のうち4名は兄弟である。16・17年度は花巻養護学校内を開催場所とし、金曜 日の午後3時から5時を活動時間として実施した。 平成18年度は北上市教育委員会の協力を得て、開催場所を北上市生涯学習セン ターへと移した。開催日も土曜日の午前10時30分から12時とした。地元で、 週末開催となったことで、参加者が各開催日毎に増え、19名(うち、兄弟は6名) の児童が参加した。 平成19年度は19名で、参加児童のプロフィールは、(表1 参加児童の概要) に記した。 表1 対象児 参加児童の概要 学年 主訴、保護者の願い 診断または臨床的判断 A児 小学3年 軽度自閉症 B児 小学4年 広汎性発達障害 C児 小学2年 高機能自閉症 D児 小学2年 ******* E児 小学2年 1年程度の遅れ F児 小学2年 先天性による両下 肢・両上肢機能障害 G児 小学4年 (自閉症) H児 小学6年 ヌーナン症候群 I児 小学 1 年 自閉症 J児 小学 5 年 ADHD ・自分や相手の様子を感じたり、伝えたりするこ とを正しく体験させたい。 ・自分なりのペースで友達をつくってほしい。 ・運動面で頑張って欲しい。 ・集団の中で協調性や社会性を学び人と関わるこ とを学んでほしい。 ・自分の力で考えて発言したり、行動したりでき るように、また、自分の思いをコントロールでき て、我慢する力を身につけて欲しい。 (B 児弟)******** ・友達と遊ぶときに、運動能力、ルールの理解面 であきらめてしまう。何とか頑張れる子どもにな って欲しい。 ・みんなと関わりあいながら、遊びのルールを学 んでほしい。 ・人とのかかわりを学んでほしい。 ・自分が人とは違うことに気付きはじめている。 告知をどうしたらよいか。 ・友達と遊ばせてルールを理解させてほしい。 ・人との関わり方を学んで欲しい。 ・遊びのルールなどを学んで欲しい。 ・自己評価が下がりやすい。 ・相手のことを十分に考えて行動できるようにな って欲しい。 ・嫌な気分になったときの対処法を身につけて欲 しい。 ・思う存分のびのび遊んで欲しい。 −発達障がい 3− ・自己肯定感を持たせてあげたい。 ・集団のルールや関わり方を教えて欲しい。 ・人の話や一つのことに集中できない。 K児 小学 3 年 L児 小学 3 年 M児 小学 2 年 ADHD O児 小学 4 年 脳の萎縮 ・人との付き合い方を学んで欲しい。 ・友達ができると良い。 ・常識的なことを当たり前にできるようになって 欲しい。 ・同年代の子どもたちと関わって欲しい。 ・遊びや生活のルールを学んで欲しい。 ・いろいろなことに興味を持って欲しい。 てんかん P児 幼稚園年長 ******* (C 児弟) Q児 小学4年 ******* (E 児姉) R児 小学2年 ******* (G 児弟) S児 保育園 ******* (O 児妹) T児 小学 1 年 ******* (K 児弟) ******** ******** ******** ******** ******** ②支援の構造 ア)開催日程と内容 表2 開催内容の概要 通算回数 日程 14 5月13日(土) ウォークラリー 「友達の顔」 15 6月10日(土) ウォークラリー 「干支」 16 7月14日(土) 相性占いゲーム 17 8月19日(土) 旗揚げゲーム 18 10月14日(土) 19 12月9日(土) ロープでボールリレー 20 1月13日(土) 風船でポンポンゲーム 表3 内容(グループ活動) 場所 北上市 生涯学習センター 新聞リレー タイムテーブル 時間 活動内容 備考 10:30 集合・はじめの会(点呼、スケジュールの確認等) 10:40 グループ活動 11:20 ふりかえりカードの記入 11:30 おやつ 11:50 おわりの会 12:00 解散 保護者は別室で談話 室「あじわい」に参加、 あるいは活動見学。 −発達障がい 4− イ)支援の体制 「SST教室あじっこ」では、支援体制としてスタッフの役割分担を行った。 役割は進行役のスタッフ(以下、「T1」と記す)、参加児童とペアで活動するスタ ッフ(以下、「担当スタッフ」と記す)、担当スタッフのスーパーバイザー役であり、 依頼があった場合に訪問支援を行うスタッフ(「ケースワーカー」と記す)である。 平成16年度はケースワーカーの担当する児童数が 1 名であったが、平成17年度に は2∼3名となった。18年度は児童数の増加に対応するだけのスタッフ確保が難し いことから、担当スタッフを優先し、ケースワーカーを設けないこととした。今年度 はさらにT2・T3を設け3人チームで持ち回りとし、各回の企画・運営を担当した。 ウ)支援内容 支援内容の中核は、ソーシャルスキルである。ソーシャルスキルの定義は様々だが、 本研究では「対人関係及び適応に資する知識・技能」として操作的に定義する。例えば、 対人関係に資するものでは、アイコンタクト、挨拶スキル、傾聴スキル、感情表現ス キルなどを活動に盛り込んでいる。適応に資するものでは、集団参加、ルールの理解と 遵守などである。 平成16・17年度は具体的な支援内容を活動場面に対応する形で一覧にし児童の 活動記録・評価用紙として毎回の実践終了後に作成し、次の開催時に保護者への報告資 料として配布した。 18・19年度は地域ボランティアによる活動への移行を考慮し、詳細な活動記録・ 評価を廃止し、児童の振り返りカードにスタッフ欄を設けて、活動の時間内に簡単に 記載することとした。振り返りカードはポイントシートとともに当日持ち帰ることと し、コピーをとって記録とすることとした。 ③支援の方針 「SST教室あじっこ」における支援は、平成16年度から同様の方針にそって行われ た。(資料1を参照) 初めて参加するボランティアには、活動前に簡単に支援の方針について説明し、体験 的に支援の方法を獲得できるようにした。 (3)結果 ①実践の経過 「SST教室あじっこ」の活動は、表2に示した(開催内容の概要)、表3に示した(タ イムテーブル)に基づいて実践された。その詳細は、毎月の活動計画(資料2参照)とし て文書化された。また、中心活動の設定理由と展開を表5に示した。さらに、活動の要 素の分析を要素一覧(資料3参照)に示した。 −発達障がい 5− 表5 中心活動の設定理由と展開 主なねらい ウォークラリー 動物探し ・ルールの理解 ・スタッフの名前 を覚える。 ( ) ウォークラリー 友達探し ・ルールの理解 ・友達の顔と名前 を覚える ・仲間意識を高め る。 ( ) 相性占いゲーム ・ルールの理解 ・仲間探し ・感情表現 ・対人意識・仲間 意識を高める 設定理由と展開 〈設定理由〉 年度初めの活動。スタッフか入れ替わったことから、顔合わせ的な活動とし て設定。活動場所に慣れる。 〈展開〉 ①十二支の動物の絵をフロアに貼り出す。 ②スタッフとペアになり自己紹介をして一緒に活動することを確認する。 ③館内を一緒に動物の絵を探してウォークラリーする。 ④動物の絵を見つけたら、その名前を用紙に記入する。 (12問) ⑤これらの動物は“干支(えと)”であることを確認し、最後の解答欄に記入 する。 ⑥全員で答え合わせをする。 〈設定理由〉 前回の活動で一緒に活動する友達を知り、ウォークラリーのルールを理解す ることができたが、まだ友達全員の名前や顔を覚えるまでにはいたらなかっ た。そこでゲームを通して友達の顔や名前を覚えられるようにした。 〈展開〉 ①児童同士ペアになる。 ②館内を一緒に顔写真カードを探してウォークラリーする。 ③顔写真カードを見つけたら、その友達の名前を用紙に記入する。 (15問) ④最後にペアになった友達の名前を記入する。 ⑤顔写真と名前が書かれたヒントカードをスタッフが持ち、名前がわからない 時は見て記入する。 ⑥全員集まったら答え合わせをする。 <設定理由> 前回までの活動で、一緒に活動する仲間がわかってきたようである。そこで、 さらに仲間意識を高めるため、この課題を設定した。また、「相性ぴったし」 の時の気持ち、 「残念」だった時の気持ちを表現することで自分の感情を言語 化できると考えた。 <展開> ①声がけに応じ、床に裏返してあるカードを拾う。 ②同じカードを持った相手を探しペアをつくる。 ③ペアの順番に前に出て合図に合わせてカードをめくる。 ④カードのマークが同じだったら「相性ぴったし」でハイタッチ、違ったら「残 念」で握手をする。 ⑤この時、どういう気持ちになったかを発表する。 −発達障がい 6− 旗揚げゲーム ・ルールの理解 ・感情表現 ・感情の共有 ・注意理解 新聞リレー ・ルールの理解 ・チームで協力す る ・自分・他者の体 の意識を高める ロープでボールリレー ・ルールの理解 ・感情表現 ・感情の共有 ・社会性 風船ポンポンゲーム ・ルールの理解 ・指示理解 ・順番の理解 ・仲間意識の育成 ・数唱、数の理解 <設定理由> 新しい児童も活動に慣れ、積極的に参加できるようになってきた。一方自分 本位の活動も増えてきたため、スタッフやいろいろな人の話を聞く姿勢を身に つける必要があると考えこの課題を設定した。 <展開> ウオーミングアップ…児童数がほぼ同じくなるように3チーム編成し、チーム キャプテンとゲームへの参加順、旗揚げの指示役をきめる。 ①各チーム1名の児童とスタッフ(計6名)が並んで前に立ち、指示役のスタ ッフ(2回目は児童)のかけ声にあわせて、旗揚げゲームを行う。 ②1回ずつ確認しながら、10回旗揚げを行う。 ③間違えたときはその場に座る。 ④最後まで間違えずに児童が残ったら、そのチームに1ポイントを加える。 ⑤見学者が審判を行う。 ⑥チームの得点を考慮しながら、スタッフは間違えるなどする。 〈設定理由〉 穴を開けた新聞紙の中に二人組で入り、リレーをする。ルールを守りながら 友達やスタッフと協力してゲームを楽しめるように設定した。 〈展開〉 ①スタッフが手本を見せる。(わざと失敗例を見せる) ②2チームに分かれ、チームの名前と順番を決める。 ③順番に並ぶ。(スタッフは児童の間に入るように調整する) ④リレーをする。(次の人は新聞紙の穴に入れて待つ、途中で新聞紙が破けた らスタッフが交換してくれるのをその場で待つ) <設定理由> 協力して何かをするということが難しいので、友達と協力してゲームを楽し むことをねらいとした。お互いに協力して取り組むことによって、楽しく満足 したゲームとなり、社会性を養うことができると考えた。 <展開> ①スタッフが手本を見せる。 ②2チームに分かれ、それぞれチームの名前を決める。 ③チームで話し合って、リレーの順番を決める。 ④各チーム2列で順番に並ぶ。(スタッフも一緒に入っても可とする。) ⑤笛の合図でリレーをする。次走者は後ろで待つ。自分のチームの応援をする。 ⑥どちらのチームが勝ったのかを知らせる。時間を見て2回行う。 <設定理由> 寒い季節、冬季休業中でもあり、運動不足がちな児童が室内で楽しめるゲー ムを設定した。また、楽しみながら、指示を聞く、順番を守る、役割分担をす るなどの課題に取り組める内容とした。 <展開> ①スタッフが手本を見せる。 《T1・T2》 ※失敗例を示す。[約束]足は使わない。20回できたら座る。 ②2チーム(赤・青)に分ける。(くじ引き) ③練習タイム(3分間):担当スタッフと。 ④ゲームの順番決定(チームの代表者でジャンケン) ⑤【チャレンジタイム1】:一人で何回続けられるか。 ・取り組んでいるチームの回数を相手チームが数える。 ・結果発表 ⑥ゲームの順番決定 ⑦【チャレンジタイム2】:目標(20回)にチャレンジ ※良ければ「円陣パス」に挑戦。(手本) [約束]同じ人だけで続けない ・結果発表 ⑧頑張りシール(各チームのスタッフからもらう) −発達障がい 7− 「SST 教室あじっこ」では、活動直後のミーティングで、活動場面におけるいろいろ なエピソードの情報交換を行い、児童個々について、おおまかな様子を記録した。 その後、話し合いの概要を研究プロジェクト内スタッフで確認しながら、活動の 反省を行った。支援内容や方法について改善すべき点についてはその場で可能な方 法を考え、次回に改善した方法で支援を行った。 全体反省で話題になった事柄を表6に記した。 表6 活動の実績と反省 年月日 1集合・自由遊び 2オリエンテーリ 1 5 月 13 日 (土) 活動の様子及び反省事項 活動内容 ング 3ウォークラリー 4終わりの会 ・ウォークラリーでは、終わる時間がバラバラで待ち時間が長い児童が いた。→あらかじめ終わる時間を予告する。 ・ホワイトボードへのお絵かきが多かった。→お絵かき用の紙を準備す る。 ・スムーズに進行するように、はじめや終わりの会をする場と振り返り カード書く場を分けた方がよい。 1集合・自由遊び 2 6 月 10 日 (土) 2ウォークラリー 3終わりの会 ・「走らないこと」「騒がないこと」を事前に確認しなかったので騒々し かった。→活動の前に約束として全体に確認する。 ・二人ペアでの活動だが、ばらばらになったところがあった。→今後の 活動では対応策を考える。 3 7月8日 (土) 1集合・自由あそび 2相性占いゲーム 8 月 19 日 (土) 気持ちを発表することができた。 3終わりの会 ・参加児童も多く、次回からは、一人一役できるように係を増やしたい。 1集合・自由あそび ・ボランティア講座の受講生が初めて参加したが、特に問題なく参加・ 2旗揚げゲーム 4 ・同時にカードをめくり、その絵柄が同じかそうでないかで、その時の 3終わりの会 実施できた。 ・C と P や B と D、K と T など兄弟は一緒だと親密な関わりになってしま う。→チーム分けの時は分ける方向で編成する。 ・A と C はお互いの動きが気になるため、活動には配慮が必要である。 ・ポイントシートにこだわる様子が見られる。→基本的には使用しない が必要な児童に使用することにする。 −発達障がい 8− 5 10 月 14 日 1集合・自由あそび ・自分達でペアを決めることができるようになってきた。 2新聞紙リレー ・チームの勝ち負けよりも、それぞれが新聞紙を破かずにゴールできた 3終わりの会 ことに拍手をしていた。 ・新聞紙が足りなくなりそうなことをスタッフが告げると、より破かな (土) いように気をつける様子が見られた。 ・K と L はくっついて離れず、押したりわざと新聞を破いたりした。ペア を変えるとわりとスムーズにできた。 1集合・読み聞かせ 2ロープでボール リレー 6 12 月 9 日 3終わりの会 (土) ・導入の始まりがスムーズにいった。また、ボールリレーの練習もした のでやり方、力の加減の仕方も理解できたようだ。 ・K と Y は同じ学校のために、トイレに駆け込むなどべったりの状態のた め、ゲームが滞ったこともあるので注意してみていかなければならな い。 ・N と T は兄弟であるが、違うチームになったことで、N はパニックに陥 り、また、弟のTは兄のチームを勝たそうとする動きが見られたので、 スタッフの方で配慮した指導が望まれる。 1集合・自由あそび ・話を聞く時間が多かったが、みんな話をよく聞いていた。 2風船でポンポン ・Aは数え方を勘違いしており結果発表に違う数字を言われて気持ちが ゲーム 3終わりの会 7 1 月 13 日 (土) 落ちた。 ・B はおやつの準備でお茶を入れたかったようだが、早く終わった児童が 準備していてそれが気になって泣いてしまった。 ・J は気づいてほしくて隠れるなどしていた。振り返りカードの発表では、 文章に書いていなかったが、自分で考えて感想を発表していた。 ・K がLと話をしたことをきっかけに「トイレ」というようになったが、 Lは最初の約束を守り「ついてくるな」という。 ・Lに話かけると反抗的で、Kの隣に座れなかったことですねた。1人 にするとKのほうへ行ってしまう。 今年度は平成 16 年度、17 年度の実践から開発、蓄積された支援方法や支援内容を 用いて実践を継続してきたが、地域への移行を踏まえて新たに改善した点について 以下に記した。 ア)活動の記録について 児童の増加に伴い、スタッフの確保(児童一人一人に担当スタッフを配するこ と)が難しくなってきている。さらには、地域人材のポテンシャルの向上が必要 とされてきているため、本校以外のスタッフが活動の記録を即座に記入できるよ うな様式が必要と考えた。そこで二種類の様式を考えた。 一つ目は、振り返りカードに「スタッフからの欄」を設けた。(資料4参照)本 校以外のスタッフや担当以外のスタッフでも短時間で記入することができた。ま た、児童に寄り添って記入することで、活動を賞賛する場ともなり、児童はスタ ッフからのコメントを楽しみにするようになった。 二つ目は、前年度まで用いていた児童個々の詳細な活動記録は本校以外のスタ ッフには過重負担になると考え、活動記録を一覧表のみにした。活動ごとの児童 −発達障がい 9− の様子がすぐに分かり、次回の活動計画を立てる上で役立つ資料となった。 昨年度までの活動の記録は、実践終了後に行うミーティング時の情報交換を経 て担当スタッフが記入し、ケースワーカーが作成し、次回に保護者に配布してき た。そのため、保護者が児童の活動の様子を知るのは1∼2ヶ月後となっていた。 今年度は、保護者に活動の様子を早く知らせることができるように、「振り返りカ ード」を持ち帰ることとした。(記録用にコピーを残した) また、担当したスタッフが活動終了後に活動の様子について直接保護者に伝え ることとした。保護者と直接話すことにより、児童の家庭や学校での様子等も聞 くことができ、今後の活動をするにあたって有効な情報交換ができた。 イ)役割分担について スタッフの人数が回によって変わったため、担当スタッフを固定することがで きなかった。また、全員の児童に担当スタッフを付けられないこともあった。担 当スタッフがつかないと、よい行動ができてもシールがもらえない等の問題もあ ったが、同じ班になったスタッフや T2 から T5 が対応することとした。しかし、 児童自身が自分からシールをもらいに来ることができたため大きな問題にはなら なかった。 ボランティア養成講座の受講生もボランティアとして活動に二度参加した。担 当スタッフと受講生がペアになり担当の児童と活動に取り組んだ。児童は受講生 に慣れ、一緒に活動を楽しむ様子が見られた。養成講座終了後、継続して受講生 の参加がなかったのが残念だった。 後半からは、発達障がい児支援のノウハウの獲得を目的とし、企画・運営(活 動内容の検討、必要物品の準備、T1、T2の役割等)を交代で行った。その結 果、活動について活発な意見交換ができるようになった。また、これまで、あま り経験のなかったスタッフが企画・運営を経験することで、児童一人一人の活動 がよく分かり、指示の出し方やタイミング、様々な問題行動への支援の仕方につ いて考え、学ぶことができた。スタッフ一人一人が支援のノウハウを獲得するた めに経験を積む良い場となった。 (4)小考察 ・ 活動内容を分析して見ると、平成 16 年度は簡単なルールの活動の中で、その時々の 自分の気持ちを表現すること、人の気持ちを知ることを重視していた。それは、児童の 参加人数が少ない中で、きめ細やかな支援によって成り立っていた。 平成 17 年度からは増加した参加児童それぞれの実態に配慮し、各児童がルールを理 解して取り組めるよう内容を易しくし、分かりやすくするための教材を用いた活動であ った。視覚的注意や聴覚的注意、役割分担や順番などが重視された活動であった。 平成 18 年度は、活動の場が養護学校を離れ、北上市生涯学習センターの学習室(児 −発達障がい 10− 童にとっては刺激の少ない環境)となった。さらに参加児童数は増加し、活動時間は短 くなったことで、多くの児童が短時間で満足できる内容が求められた。前半は 17 年度 と同様の活動内容であったが、後半は、二組に分かれて競い合う活動で、運動能力や社 会性が求められる内容であった。児童らにとっては苦手分野で支援が難しいケースもあ ったが、経験を通して成長していく様子も見られた。 ・ 児童に「SST教室」とは「すごく、すごく、楽しい教室」であると伝えている通り、 楽しい活動であること、活動を通して満足感や充実感が得られ、自己肯定感を高めら れることを大切に、実践を重ねることができた。 ・ 今年度のスタッフ構成は平成 16 年度からの経験者が 2 名(談話室担当者と運営のた めの全体掌握を常任で担当した者) 、平成 17 年度からの経験者が 5 名、その他のスタッ フは今年度からの新規参加者であった。そのため、前半の 4 回の活動は経験者が T1、 T2∼T5 を務め、新規参加のスタッフには担当スタッフとして経験しながら支援のノウ ハウを獲得してもらう体態で実践した。後半に入って、T1 を交代で務め、スタッフと しての経験を広げてもらうことが出来た。 ・ スタッフの入れ替えが多く、経験者が継続できない状況の中で、支援の方針や具体 的な支援の方法についてスタッフが理解して取り組むために、研究グループ内で学習を 行ってきた。しかし、本校内のボランティアスタッフや地域ボランティアに支援に関す る学習の機会を設けることは難しく、児童の実態や支援の方法について活動中に口頭で 伝える程度であった。今後、経験のあるスタッフを出来るだけ確保し、ケースワーカー 的な役割を果たしてもらうことが、活動の充実には必須である。 ・ 今年度も参加児童数が増加した。地域での週休日開催となったこと、保護者の談話 室と同時開催になったことなどが参加者増加の要因であると思われる。しかし、児童 数に対応するだけのスタッフの確保が難しく、加えて、児童個々のニーズをとらえて きめ細かな活動をするには負担の大きな児童数となっている。今後は「SST 教室」の活 動を継続していくものの、児童にとってより有意義な活動となる工夫改善(形態、回 数、内容等)が必要であると思われる。 ・ 今年度は地域への移行をめざして取り組んだが、実際に地域ボランティアの参加は 前半のみで、一回のみの参加であった。継続参加者がなかったことについては、ボラ ンティアへの連絡や依頼が少なかったことが反省点である。今後、運営側にもボラン ティアにも負担にならない連絡方法等を検討するとともに、ボランティア参加者の開 拓が必要である。 ・ 今年度特筆すべきは、参加児童の担任が見学に訪れるケースがあったことである。延 べ 4 名の担任教諭が見学した。(内 1 名は担当スタッフとしてボランティア参加)「SST 教室」での児童の様子、スタッフの支援の様子を見学し、簡単に情報交換する程度であ ったが、担任教諭からは「参考になった」との感想が聞かれた。今回児童の担任教諭の みならず、発達障がい児支援について学ぶことのできる場としての機能も果した −発達障がい 11− ・ 「SST 教室あじっこ」の目的に掲げた三点については、①対象とした地域の発達障が い児支援に大きく貢献できたと評価できる。②これまで経験のなかった発達障がい児支 援を体験的に理解することができた。さらに継続参加することで発達障がい児の理解が 図られ、ポテンシャル向上につながった。③支援の具体的な方法の開発、蓄積について は活動ごとに改善を重ねることができ、研究の成果としてまとめ、情報発信することが できた。 B 実践報告:保護者支援 (1)目的と実施方法 「談話室あじわい」は、昨年度同様、北上市を中心とする地域の発達障がい児の保護 者を対象に、相談し合える場、仲間作りの場を提供すること、また、発達障がい児の保 護者のニーズを把握することに加え、今年度は学習会的な内容を盛り込み、発達障がい に関する保護者の理解の向上と対応の改善を図りながら実施した。 昨年度までは、本校または北上市こども療育センターを会場として、「あじっこ」とは 別の実施日で行っていた。今年度、 「あじっこ」の活動場所を北上市中心部に確保できた ことから、保護者の参加しやすさを考慮し「あじっこ」の隣室にて並行して実施するこ ととした。 実施内容として、特別支援教育に対する国の動向やペアレントトレーニングなどにふ れ、これに保護者からの相談や子どもの様子などの話題提供を織り交ぜて進めた。 (2)実施状況 回 月 日 参加者数 内 容 1 5月13日 9 年間計画 2 6月10日 9 国の動向、制度の概要 3 7月 4 8月19日 7 情報交換、コーディネーターの役割等 5 10月14日 6 ペアレントトレーニング② 6 12月 7 8日 9日 1月13日 10 10 9 ペアレントトレーニング① 親の会について 保護者中心に親の会結成に向けた話し合い (3)成果と課題 「あじっこ」と並行して実施したことにより、参加保護者の増加が図られた。学習 会的に取り上げたペアレントトレーニングでは、各保護者が実践課題を持ち帰り、家 庭での取り組みや成果について報告し合うなど、意識の高まりが感じられた。また、 「あ じわい」への相談を契機に在籍校担任へ働きかけ、状況の改善に成果が認められた事 −発達障がい 12− 例もあった。このような取り組みの中、数名の保護者から親の会についての相談が持 ちかけられ、結成に向けた準備会(仮称)が組織されたことは大きな前進である。今 後は、親の会設立に向けた協力や設立後の連携が一つの課題となる。 このように、「あじわい」へ参加する保護者には、子どもや国の情勢に対する意識の 高まりが感じられるが、対象地域には未だに、子どもの実態に悩み、情報を得られな いまま孤立化している保護者の存在も憂慮されるため、今後も本活動の周知や啓発を 図ることが重要な課題である。 Ⅶ まとめと今後の課題 知的養護学校の特別支援教育センターにおける発達障がい児支援のあり方を検討すると いう目的で3年間取り組んできた。児童支援事業である「SST 教室あじっこ」、保護者支援 事業である「談話室あじわい」ともに着実に実践を重ねることができた。また、この研究 では触れていないが、「夏季公開講座(サポーターズミーティング)」と「あじさい特別支 援教育センターの教育相談」で学校・教員の支援を行ってきた。 これらの実践を通して、児童支援、保護者支援、学校・教員支援という 3 本柱での支援 スタイルを確立することができたことは、大きな成果である。 平成 19 年度からは、特別支援学校として、これまでの 3 年間の研究の成果を活かして支 援を継続することになる。 「SST 教室あじっこ」 「談話室あじわい」が地域の中でどのような 役割が果たせるか、また、児童支援・保護者支援としてより機能するあり方について、今 後も実践を継続しながら探っていきたい。 −発達障がい 13− 資料3 活動の要素の分析 要素 分類A 分類B 音への気づき 聴覚 活動名 オリエンテー リング 内容 聴覚的弁別 音がしているか否かに気づく 音がどの方向から聞こえてきているか分 かる 音の種類を区別できる 言語理解 言葉の意味を理解する 音源定位 表現力 かず ○ 数の概念 順序数 順番と数を対応できる ○ 計算 視覚的注意 四則演算ができる 目の前にないものを視覚的にイメージす る 空間の中での自分と対象物の位置関係 を理解する 自分の見ている視点ではなく、相手から どのように見えてるかなど、違う方向から どのような形か分かる 背景(地)から見るべきもの(図)を選び出し てみる 注意を向けてみる=視る 聴覚的注意 注意を向けて聞く=聴く 視覚的記憶 見たものを覚える 視覚イメージ 空間位置関係 視点の変換 形の理解 視覚 図と地 社会性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 自分が他人にどう見えているかが分かる 実行機能 処理速度 ○ ○ 聞いたことを覚える 様々な動作を調節して目的に応じた動作 巧緻性 を行う ボディーイメージ 自分の体の部位や大きさ、動きが分かる ゲーム中の自分の役割を理解して、それ 役割 を遂行する また必要に応じて交替でき ゲーム中の自分の出番を理解し、それを 順番 守る ゲームの結果である勝敗を受容し、感情 感情抑制 をコントロールすることができる 自分の感情を言語化できる 自己開示 相手の表情や動作から、その社会的な 表情・動作の読み意味を読みとることができる 現在の自分の理解度を自覚し、課題達 成のために、どのような情報が必要かが メタ認知的知識 自分の行動による相手の反応を予測す ることができる メタ認知 風船ポンポン ゲーム ○ ○ 聴覚的記憶 運動 ボール リレー ○ いくつかの事柄に共通の要素をあげるこ とができる 単語がどのような音から成り立っている か分かる 数を数えるなど、数の意味が分かる 音韻操作 新聞 リレー ○ ○ ○ 言語を用いて表現する 文字の読み書き 文字を読んだり書いたりする 抽象能力 旗揚げ ゲーム ○ ○ ○ 語彙力・語想起力単語を知っている ことば 相性占い ゲーム 自分の作業能力を鑑み、課題達成にか かる時間を予測することができる 課題において、自分のできる範囲を分か る 課題をこなすために必要な時間、反応す るまでにかかる時間の長さ −発達障がい 14− ○ ○