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東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動
災害情報調査研究レポート Disaster-Information Management Vol.16 ISSN 1881-4247 2012 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 -陸前高田市・南三陸町・仙台市・名取市・山元町住民調査をもとにして- The Information Dissemination and Behaviors of the Inhabitants in the 2011 Tohoku Earthquake -From a Questionary Survey- 東日本大震災における津波避難 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 2011 Tohoku Earthquake and Evacuation Behaviors -From the Interview Survey- 中村 功 (東洋大学) 中森 広道 (日本大学) 福田 充 (日本大学) 災害情報調査研究レポート Vol.16 Disaster-Information Management 目 次 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1 -陸前高田市・南三陸町・仙台市・名取市・山元町住民調査をもとにして- The Information Dissemination and Behaviors of the Inhabitants in the 2011 Tohoku Earthquake -From a Questionary Survey- 中村 功 (東洋大学) 中森 広道 (日本大学) 福田 充 (日本大学) 東日本大震災における津波避難‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 127 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 2011 Tohoku Earthquake and Evacuation Behaviors -From the Interview Survey- 中村 功 (東洋大学) 中森 広道 (日本大学) 災害情報調査研究レポート Disaster-Information Management Vol.16 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 -陸前高田市・南三陸町・仙台市・名取市・山元町住民調査をもとにして- The Information Dissemination and Behaviors of the Inhabitants in the 2011 Tohoku Earthquake -From a Questionary Survey- 中村 功 (東洋大学) 中森 広道 (日本大学) 福田 充 (日本大学) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 -陸前高田市・南三陸町・仙台市・名取市・山元町住民調査をもとにして- The Information Dissemination and Behaviors of the Inhabitants in the 2011 Tohoku Earthquake -From a Questionary Survey- 要 旨 ・この地震で最も大きな被害をもたらしたのは、地震による津波である。 ・全壊住家数に対する犠牲者の割合で死者率をみると、最も高かったのは陸前高田市で 58.4%、 次いで相馬市が 45.8%、大槌町が 41.6%、釜石市が 35.4%、名取市が 34.4%となっている。こ れらの地域では避難がうまくいかなかったと考えられる。 ・住民の避難行動や情報伝達の問題点について明らかにすることを目的に訪問面接法による住民 アンケート調査を行った。対象地域は陸前高田市、南三陸町、仙台市(宮城野区・若林区)、山元 町、名取市の5か所で、合計 642 名から回答を得た。 ・地域への津波襲来の予測は、津波避難の引き金となった。 ・「東北地方太平洋沖地震」による津波被害が生じる前に、住民は、居住している地域のどのあ たりまで津波で浸水すると考えていたのかを尋ねた。その結果、明確な理由のないまま津波によ る浸水地域の境界をイメージする人がいた。また、災害前にハザードマップを見ていた人の中に も、ハザードマップに示された浸水の境界よりも海側に浸水の境界をイメージする人も少なくな かった。 ・ハザードマップを見たことがある人は全体では 42.4%しかいなかった。 ・ハザードマップによって危険を認知した場合は、津波来襲の予測が促進されている。 ・マップを見て「津波の危険がないことが分かった」とする人の津波来襲予測は、マップを見て いない人と変わらず、マイナスの効果はなかった。 ・自宅が海から離れるにつれて、津波が来襲すると予測する人が少なくなってくる。 ・調査全体では 52.3%の人が津波警報を聞いていた。 ・大津波警報を聞いた 手段として最も多いの は「防災無線の屋外拡 声器から」 (聞いた人の 50.9%)であった。 ・津波警報を聞いた人では 52.7%が「津波が必ず来る」と思ったのに対して、聞かないかい人 は 28.8%しかいなかった。津波警報は、津波来襲の予測を促進していた。 ・地震直後に津波避難した人は津波警報を聞かない人では 19.6%なのに対して、聞いた人では 37.5%であったことから、津波警報は避難を促進していると考えられる。 ・大津波が来る前に避難したかを尋ねたところ、全体では 86.8%が避難していた。 ・避難した理由は「地震の強さや長さがいつもと違ったから」が、50.3%と最も多く、ついで、 「近所の人が避難するように言ったから」 (20.8%)や「家族が避難するように言ったから」 (20.6%) 「大津波警報を聞いたから」(19.4%)が多くなっている。 ・避難のタイプでは、「大きな地震を感じたら何も考えずに避難する」が 46.7%と最も多く、つ 2 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 いで「津波警報などの情報を考慮して避難を決める」が 20.1%、「避難しようか迷い情報や周囲 の人に背を押されて避難する」が 11.8%、「避難しようか迷っているうちに逃げ遅れる」が 5.6%、「津波のことは思い浮かばないで、逃げ遅れる」が 6.7%、「ここは大丈夫だと確信して逃 げ遅れるタイプ」が 7.0%だった。 ・三陸沿岸部と平野部とでは津波に対する意識に差が見られ、三陸沿岸部よりも平野部の方で 「居住する地域では津波被害は生じない」と考えていた人が多かった。他の災害でも指摘されて いた「警報慣れ」や「正常化の偏見」の傾向も見られた。ただし「自分の住んでいる地域は大丈 夫」という回答は、全てが「正常化の偏見」とは言い切れず、居住地域は「対象外」と考えて対 応した人々も多く含まれる。 ・地震発生から数日間は安否情報へのニーズが高く、地震発生から 1 か月後は生活に関する情 報へのニーズが高くなるという傾向が見られる。情報ニーズについては、概ねこれまでの災害と 同じような傾向となった。 ・他の調査や見解でも指摘されているように、役に立ったメディアとしてラジオを挙げる人が多 かった。また、これまでの災害と同じく、地震から数日間は口コミや避難所の啓二・チラシを挙 げる人が多く、時間が経過するとこれらに加えて新聞への評価が高いという傾向も見られた。ま た、今回の調査ではテレビの L 字画面を評価する意見が多かったのも、一つの特徴である。 ・報道の不公平感ならびに対象の偏りについての回答が多い。このたびの調査の対象となった 4 地域の中でも、特に山元町で報道の不公平感を問題視する傾向が顕著だった。 ・地震当日は東日本全体が激しい通信困難に見舞われていた。仙台・名取を除く 3 地域では、 設備面の被害から、あらゆる通信メディアがつながりにくくなっていたと考えられる。 ・地震発生から数日の間に知りたかったことをたずねると、全体で 69.5%と、最も多くの人が 挙げたのが「家族や知人の安否について」であった。 ・全体では災害用伝言ダイヤルを使った人は 3.0%、災害用伝言板が 4.8%であった。仙台・名 取では災害用伝言板利用者が 10%、災害用伝言ダイヤルが 6.5%に達していた。 ・この調査においては、この震災を引き起こした地震の緊急地震速報を見たり聞いたりした人は 多くはなかった。それは、平日の日中に地震が発生したためテレビ・ラジオの接触が少ない時間 帯であったことや、回答者の中で高齢者が占める割合が多いことなど、緊急地震速報を受け取る 設定をした携帯電話を所持している回答者が少なかったことなどが理由として挙げられる。 3 目 第1章 次 災害および調査の概要 1.1 災害の概要 1.2 調査概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 第2章 地震時の住民行動 第3章 津波襲来の予測 3.1 津波の可能性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 功 中森 広道 中村 功 中村 功 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 福田 充 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 福田 充 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 福田 充 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 福田 充 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中森 広道 中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中森 広道 3.3 ハザードマップ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4.2 避難勧告と防災無線 4.3 避難の有無とその理由 4.4 早期避難を促した要因(多変量解析の結果) 津波避難の実態と被害 5.1 津波による被害の実態 5.2 住民の津波避難行動 5.3 津波避難行動の問題点 第6章 津波の教訓 6.1 津波の知識 6.2 住民の得た教訓 6.3 行政への要望 第7章 情報ニーズとメディアへの評価 7.1 情報ニーズ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7.2 役に立ったメディア 7.3 災害報道 第8章 災害時の通信 8.1 疎通状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 8.2 安否情報 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功 中森 広道 中森 広道 第9章 緊急地震速報について 9.1 緊急地震速報への接触 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9.2 緊急地震速報に対する評価 付属資料 4 ‥‥‥‥ 津波情報と避難行動 4.1 津波警報 第5章 充 中村 3.2「想像上の安全基準線」住民が考えていた津波の浸水地域 第4章 福田 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ アンケート調査票(単純集計・自由回答) 第1章 災害および調査の概要 第1章 災害および調査の概要 1.1 災害の概要 2011 年 3 月 11 日午後 2 時 46 分、「平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震」(The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake) が発生した。震源は男鹿半島の東南東(三陸 沖)約 130km、深さ約 24km で、マグニチュード(Mw)は 9.0 であった。断層の大きさは長さ約 450Km 幅約 200Km にもおよぶ大きなもので、マグニチュード 9.0 は気象庁観測史上、最大の地 震であった。この地震による災害が「東日本大震災」である。 この地震の最大震度は宮城県栗原市で観測した震度 7 で、震度 6 強を宮城県南部・中部(涌 谷町、登米市、美里町 大崎市、名取市、蔵王町、川崎町、山元町、仙台市宮城野区、石巻市、 塩竈市、東松島市、大衡村)、福島県浜通り・中通り(白河市、須賀川市、国見町、鏡石町、天 栄村、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、新地町)、茨城県北部・南部(鉾田市、日立 市、高萩市、小美玉市、那珂市、笠間市、筑西市、常陸大宮市)、栃木県北部・南部(大田原市、 宇都宮市、真岡市、市貝町、高根沢町)で観測した。 また震度 6 弱を観測したのは、岩手県沿岸南部・内陸北部・内陸南部(大船渡市、釜石市、 滝沢村、矢巾町、花巻市、一関市、奥州市、藤沢町)、宮城県(気仙沼市、南三陸町、白石市、 角田市、岩沼市、大河原町、亘理町、松島町、利府町、大和町、大郷町、富谷町) 福島県 (福 島市、郡山市、二本松市、桑折町、川俣町、西郷村、中島村、矢吹町、棚倉町、玉川村、浅川 町、小野町、田村市、福島伊達市、本宮市、いわき市、相馬市、広野町、川内村、飯舘村、南 相馬市、猪苗代町)、茨城県(水戸市、土浦市、石岡市、常総市、常陸太田市、北茨城市、取手 6 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 市、つくば市、ひたちなか市、鹿嶋市、潮来市、坂東市、稲敷市、かすみがうら市、桜川市、 行方市、つくばみらい市、茨城町、城里町、東海村、美浦村)、栃木県(那須町、那須塩原市、 芳賀町、那須烏山市、那珂川町) 、群馬県南部(桐生市、)埼玉県南部(宮代町)、千葉県北西部 (成田市、印西市)である。 しかしこの地震で最も大きな被害をもたらしたのは、地震による津波である。最大の津波遡 上高は大船渡市綾里湾の 40.1m(津波合同調査チーム)とも、宮古市重茂姉吉の 40.4m(津波合同 調査チーム)とも、宮城県女川町笠貝島の 43m(東京大学地震研究所の都司嘉宣准教授)ともい われ、いずれにしても我が国で最大級の津波となった。 各地の津波の高さについては公的には検潮所のデータが発表されている。しかし検潮所のあ る場所は限られているし、多くの場所では津波が検潮所の測定可能範囲を越えたために、実際 の高さは津波の痕跡などから推定する必要がある。これについては「東北地方太平洋沖地震津 波合同調査グループ」が詳細なデータを公表している。日本気象協会ではその速報値のデータ をもとに海外付近の津波波高をまとめている(表 1.1.1)。表中の「浸水高」は合同調査グルー プによるもので、津波到達時の潮位から津波の痕跡までの高さである。また「津波高」は検潮 所で測定した値である。これによれば、宮古市田老で 15.9m、釜石市両石で 18.3m、陸前高田 市で 15.8m、南三陸町志津川で 15.9m、女川漁港で 14.8m、石巻市雄勝で 15.5m を記録し、そ のほか久慈市小袖、野田村十府ケ浦、宮古湾、大槌湾、大船渡市、気仙沼市、などでも 10m を 超す大津波が来襲していることがわかる。 この地震による人的被害は死者・行方不明者が 1 万 9 千人近く(18,914 人;2012 年 4 月 24 日 現在警察庁調べ)に達した。犠牲者は、北は北海道から南は神奈川県まで広範囲に及ぶが、中 でも被害が甚大だったのは宮城県、岩手県、福島県の 3 県であった(表 1.1.2)。警察庁が 2011 年 4 月 11 日の段階でこの 3 県で検視が行われた 13,135 人について、死因を調べたところ、 「溺死」が 92.4%、「圧死・損壊死・その他」が 4.4%、「焼死が」1.1%、「不明」が 2.0%であっ た。この震災では大津波による溺死が犠牲者のほとんどを占めていることがわかる。「圧死・ 損壊死」の理由は定かではないが、津波による家屋の流失や倒壊によるもの、地震動による家 屋の倒壊や内装の落下によるもの、家具の転倒などによるもの、土砂崩れによるものなどが考 えられる。国土交通省によると、内装材の落下については、全国 2000 施設以上でつり天井が 落下し、東京の九段会館で 2 人が亡くなったのをはじめ、少なくとも 5 人が亡くなっているこ とがわかっている (毎日新聞 JP 2012 年 04 月 18 日)。また土砂災害については、地すべりで 16 人、がけ崩れで 3 人が亡くなっている(国土交通省資料「東日本大震災(第 108 報)平成 24 年 4 月 9 日)。中でも白河市葉ノ木平では大規模な地滑りが発生し、死者 13 名、全壊家屋 10 戸の被害を出している。 7 表 1.1.1 各地の津波波高 「東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ」の調査より日本気象協会まとめ (2011 年 4 月 22 日) 日本気象協会「平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震津波の概要(第 3 報) 青森県~福島県の津波高・浸水高および 青森県~千葉県の浸水状況」http://www.jwa.or.jp/static/topics/20110422/tsunamigaiyou3.pdf 表 1.1.2 都道府県別人的被害(2012 年 4 月 25 日 死者 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 東京都 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 神奈川県 新潟県 山梨県 長野県 静岡県 三重県 高知県 合計 8 行方不明 負傷者 1 3 4671 9515 2 1605 7 24 4 1 1 1223 1616 214 1 20 4 2 15,857 3,057 3 61 200 4133 12 29 182 90 709 134 38 42 251 134 3 2 1 3 1 1 6,027 警察庁調べ) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 次に死者率(犠牲者/全壊住家数)、浸水域人口に占める犠牲者の割合および津波波高をみて おこう。死者数、行方不明数、全壊住家数は総務省消防庁 2012 年 2 月 14 日発表資料より作成 したもので、浸水域人口に占める犠牲者の割合は牛山・横幕(2012)より転載したものである。 また津波の波高は上記表 1.1.1 の日本気象協会のまとめより、街の中心部または被害の大きか った地区(宮古市田老地区および釜石市両石地区)を選んだものである。但しいわき市と旭市の 波高については合同調査団の速報データを朝日新聞(2011 年 4 月 10 日)がまとめたものである。 浸水域人口に占める犠牲者の割合および犠牲者を全壊住家数で割った死亡率は、ともに当該 地域の被害の甚大さの度合いを示すものであるが、前者は津波の浸水深が低い場所でも死者率 を計算しているので浸水深が低く家屋が密集しているところでは犠牲者率が低くなる傾向があ る。一方後者は甚大な家屋被害を母数としているので、避難の成否の指標となりうる点が少し 異なっている。図 1.1.1 では死亡率が高い地区を上から 5 つ挙げて四角で囲ってみたが、陸前 高田、大槌、釜石、名取の死亡率が高点で両数値は一致していた。ただ相馬と女川は両者にか い離がみられる。女川は比較よく逃げられたのか、逆に相馬はうまく逃げられなかった可能性 がある。 死者率(全壊住家数に対する犠牲者の割合)で見ると、最も死者率が高かったのは陸前高田市 で 58.4%、次いで相馬市が 45.8%、大槌町が 41.6%、釜石市が 35.4%、名取市が 34.4%となって いる。これらの地域では避難がうまくいかなかったと考えられる。避難が失敗したのには様々 な理由が考えられるが、まず考えられるのが津波の波高である。波高が高ければ 2 階や 3 階に 避難してもだめだし、より速く、より高所まで逃げなくてはならない。たとえば陸前高田では 波高が 15.8m なので、海に近いビルでは5階にいても被災することになる。全体的にみると津 波の波高が高いと死者率が高くなり、低ければ死者率も高くなっている。ごく大雑把にいえば、 津波の波高が 10m を越えると死者率も 3 割程度以上に急に高くなるようである。この点につい てはある程度予想がつく傾向である。 しかしこの図からはそのほかに興味深い点がいくつか見られる。第一は岩手県や宮城県の北 部といった北の地域では津波の波高が 10m を超えたにもかかわらず、全壊住家あたりの死者率 および浸水人口当たりの死者率が低い地点があり、逆に宮城県南部や福島県といった南の地域 では波高が 10m を下回まわるのに死者率が高い地点が見られることである。たとえば宮古、大 船渡、気仙沼などでは波高は 10m を越えているが、死者率(全壊住家に対する)は 10%台にとど まっている。その一方で相馬では波高が 8.9m なのに死者率は 45.8%と、陸前高田について2 番目に高く、名取も波高が 7.96m なのに死者率は 34.4%ときわめて高い。そのほか隣接の岩 沼、山元、新地、浪江などでも3割前後の高い死亡率となっている。北部では避難が比較的 う まくいったところがある反面、宮城県南部以南の地域ではうまくいかなかったところが多いと いう傾向がうかがえる。 一方同じような地域でも死者率に差があるところがある。たとえばもっとも死者率が高い陸 前高田と南三陸は波高が 15.8m と 15.9m とほぼ同じで、地域的にも三陸地域の南部で近い地域 で あ る 。 そ れ に も か か わ ら ず 陸 前 高 田 の 死 者 率 は 58.4% と 最 悪 な の に 対 し て 南 三 陸 で は 31.2%と、数字自体は低くはないが陸前高田の約半分となっている。 9 こうした避難の成否はなぜ生じたのであろうか。都市構造の差、住民意識の差、情報の 差、 行政対策の差など様々な原因が考えられるところである。いずれにしてもその差を解明するこ とは今後の津波対策を考えるうえで重要である。 東日本大震災では津波の被害のほかにも多くの問題が発生している。すなわち福島の原子力 発電所の事故、放射能汚染についての問題、首都圏における帰宅困難、広域避難、計画停電、 広域にわたる燃料や日用品の品不足、がれき処理、復興の難しさ等々である。 図 1.1.1 死者率(犠牲者/全壊住家数)、浸水域人口に占める犠牲者の割合*および津波波高 死者行方不明数全壊住家は総務省消防庁 2012 年 2 月 14 日発表資料より作成 *牛山・横幕 2012 より作成 波高は合同調査団調査データ 日本気象協会まとめより主要地点をえらんだもの。但しいわき市と旭市については 朝日新聞 2011 年 4 月 10 日まとめもの。 (中村 10 功) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 1.2 調査概要 本調査は津波被害を中心に、住民の避難行動や情報伝達の問題点について明らかにすること を目指している。 調査の方法は訪問面接法で、調査期間は 2011 年 12 月から1月である。 対象地域は当初、津波の被害が著しかった陸前高田、南三陸、仙台、山元の 4 地区を選定し た。調査地区選定の理由は、これまでにも津波の経験がある三陸地方と、深刻な津波被害がこ れまでなかった宮城県南部以南の地域から2か所ずつ選ぶこととし、三陸からは最も死者率の かかった陸前高田市と同様の津波校の南三陸町を選んだ。一方南側の地域としては仙台平野の 典型的な地形である仙台市と死者率が高い山元町を選定した。調査数は各地区 150 人、合計 600 人をめざした。しかし仙台市ではすでに各種調査が行われ、調査拒否にあい対象者を確保 できなかったために、隣市で地形が似ている名取市で残りの対象者を選ぶことにした。その結 果、調査対象地域は陸前高田市、南三陸町、仙台市(宮城野区・若林区)、山元町、名取市の5 か所となった。 調査対象は仮設住宅居住者で、市内の地域的に分散するように複数の仮設住宅で行った。各 戸を訪問し、各市町の人口比率にできるだけ近づけるように性別年齢を考慮して対象者を決定 した。但し名取市においては仙台市同様調査環境が悪いのではないかと考え、これまで調査が 行われていない「みなし仮設」と呼ばれる、公共または民間の賃貸住宅で市が費用を負担して いる住宅の住民を対象とした。住民に義捐物資配給する機会をとらえ、配布場のわきに仮設の テントを設け、調査承諾者をつのり面接法でアンケートを行った(図 1.2.1)。これまで調査が 行われていなかったためか、この方法による承諾率は高かった。 その結果、陸前高田市で 157 人、南三陸町で 164 人、仙台市で 62 人、名取市で 108 人、山 元町で 151 人、合計 642 名から回答を得た。各市町内の回答者の元の居住地域は表 1.2.1 のよ うになった。これをみると、各市町で地域的にかなり網羅的に被災地をとらえているといえる。 11 図 1.2.1 名取市におけるアンケート調査実施の様子 表 1.2.1 1.陸前高田市 地区名 票数 高田町 気仙町 広田町 米崎町 小友町 竹駒町 矢作町 小計 2.南三陸町 地区名 票数 76 志津川 33 歌津 15 戸倉 13 13 5 2 157 小計 79 50 35 164 調査対象者の元居住地域 3.仙台市 地区名 票数 宮城野区 蒲生 岡田 蒲生2丁目 蒲生1丁目 港2丁目 出花3丁目 中野 宮城野区計 若林区 荒浜 荒浜新2丁目 荒井 藤塚 二木 三本塚 飯田 若林区計 小計 4.山元町 地区名 票数 山寺 28 坂元 9 高瀬 2 浅生原 1 1 1 1 43 5 4 3 3 2 1 1 19 62 小計 73 44 30 4 5.名取市 地区名 票数 閖上6丁目 閖上7丁目 閖上2丁目 閖上4丁目 閖上5丁目 下増田 小塚原 閖上1丁目 閖上 閖上3丁目 飯野坂 牛野 151 小計 17 16 15 13 11 10 9 7 5 3 1 1 108 合計 642 (中村 12 功) 第2章 地震時の住民行動 第2章 地震時の住民行動 2011 年3月 11 日午後2時 46 分頃、マグニチュード 9.0 に達する東北地方太平洋沖地震が 発生した。このとき、本調査対象地域である岩手県陸前高田市と南三陸町では震度6弱、宮城 県仙台市宮城野区や名取市、山元町では震度6強を記録している。この地震が発生したとき、 住民はどのような行動をとったか、調査結果から考察する。 図 2.1 大地震発生時にいた場所(N=642) この東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震が発生したとき、どこにいたかを示し たのが図 2.1 である。調査対象地域の特性を比較するため、調査対象地域全体の結果(N=642) と、陸前高田市の結果(N=157)、南三陸町の結果(N=164)、仙台市(若林区・宮城野区)・ 名取市の結果(N=170)、山元町の結果(N=151)を区別してグラフ化している。 14 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 全体でみると 63.9%の回答者が地震発生時に「自宅」にいたことがわかる。仙台市・名取 市で自宅にいた割合が 71.2%と高く、陸前高田市で自宅にいいた割合が 56.7%と相対的に低 い傾向があるが、全体的に見るとよく似た傾向を示している。全体で見ると「自宅のある、市 /区(仙台市の場合)/町の中」にいた回答者は 33.2%、「自宅のある、市/区(仙台市の場 合)/町の周辺地域」にいた回答者は 3.0%と少数であった。この調査回答者の全体の 97.1% が大地震発生時に地元の市区町の中にいたことがわかる。 次に、この大地震を経験してそのときどのように感じたかを複数回答で示したのが図 2.2 で ある。全体で見ると、「今まで経験したことのない長い揺れだった」と回答した住民が 78.7%、 「今まで経験したことのない、(上下の揺れが)激しい揺れだった」と回答した住民が 74.3%、 「今まで経験したことのない、(揺れ幅の)大きな揺れだった」と回答した住民が 62.1%と、 地震の長さ、上下動、水平動ともに今まで経験したことがない規模の地震だと感じた住民が多 いことが明らかになった。この傾向は全ての自治体でほぼ同じ傾向を示している。また、「2 回、3回に分けて揺れた」という回答は 23.8%であった。この傾向に、男女差や年齢性はほ とんど見られなかった。 図 2.2 大地震を経験した直後の印象(N=642) 複数回答 15 続いて、地震がおさまってからどのような行動をとったかを複数回答でたずねた結果を示し たのが図 2.3 である。全体でみると、最も多かった回答が「屋外に出た(揺れている最中に屋 外に出た、を含む)」の 57.9%で、全ての地域でこの回答が最も多い傾向が見られた。最も高 い数値は陸前高田市の 66.2%であった。次に多かったのは「津波が来るかもしれないと思い すぐに避難した」の 29.0%であるが、これは地域差が大きいことがわかる。津波のことを考 えてすぐに避難した住民は、南三陸町で 42.1%と最も高く、続いて仙台市・名取市の 32.9%、 陸前高田市の 26.1%と続き、山元町で 13.2%と最も低いことが明らかになった。ここに住民 の津波に対する意識の差が現れているといえる。南三陸町の住民の中に津波に対する意識が非 常に高く、山元町の住民には津波に対する意識が低いことが明らかとなった。次いで多かった のが全体で「出先から自宅に向かった」の 20.2%で、これは先ほどの地域差とは逆の傾向が みられた。つまり、津波に対する意識の低い山元町で出先から自宅に戻る行動が多く見られ (27.8%)、反対に南三陸町ではこのような行動は低い傾向(13.4%)が明らかとなった。 図 2.3 16 地震の揺れがおさまった後にとった行動(N=642) 複数回答 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 また、「津波から避難する準備をした」の 14.0%についても、地域差を見ると南三陸町で高 く(18.9%)、山元町で低い(6.6%)という傾向が見られた。続いて高かったのは「自宅の中 や外のかたづけを始めた」という回答の 11.8%で、これは仙台市・名取市で 17.6%、山元町 で 16.6%と高い傾向が見られた。「家族などの安否を確かめるために電話をした」という回答 は 11.5%であったが、仙台市・名取市で 15.9%という比較的高い割合を示し、「地震に関する 情報を得ようとラジオを聞いた」という行動は 11.1%であったが、これも仙台市・名取市で 21.2%という高い割合を示したことがわかる。このように、家族の安否を確かめる安否確認の 通信行動や、災害情報をメディアで得ようとする情報行動は都市部の仙台市・名取市で多く発 生していることが明らかとなった。 また地震が発生した場合の問題行動である「海の様子を見に行った」(2.2%)、「川の様子を 見に行った」(0.9%)といった行動は非常に少ないことがわかった。地震の発生後、津波の発 生を確かめるために海や川の様子を見に行くことは危険であり、慎むべき行動である。また、 「幼稚園や学校などに子どもを迎えに行った」という住民が全体で 7.5%、「近くに住む親や 親戚などの様子を見に行った」という住民が 7.0%いたことがわかるが、大地震の発生の後、 大津波が来る可能性を考えたとき、「津波てんでんこ」の伝承からわかるように、離れた場所 にいる家族や知人を迎えに行ったり、待ったりする行動が避難の遅れにつながるため、津波の 発生時には本来各個人の個別の避難行動が望ましい。 (福田 充) 17 18 第3章 津波襲来の予測 第3章 津波襲来の予測 3.1 津波の可能性 揺れを感じた段階で、住んでいる地域に津波が来ると思ったかをたずねた。その結果、全体 では「津波が必ず来ると思った」人は 41.3%で「もしかすると来るかもしれないと思った」人 が 20.4%と、合わせて約6割の人しか津波が来ると思っていなかったことがわかる。地域別に みると、南三陸では 69.5%の人が「必ず来る」と思っており、「地震=津波」という意識が浸透 していることがわかる。次いで意識が高かったのは「必ず来る」とした人が 52.2 の%陸前高田 のである。一方、仙台・名取や山元では、「必ず来る」とした人はそれぞれ 24.1%、18.5%しか おらず、まさか津波が来るとは思っていなかったようだ。特に山元では「津波のことは考えた こともなかった」と言う人が 40.1%に達していた。 20 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 津波が必ず来ると思った もしかしたら津波が来るかもしれないと思った 津波は来ないだろうと思った 津波のことはほとんど考えなかった 全体 41.3 陸前高田 52.2 南三陸 仙台 ・名取 山元 20.4 15.9 24.8 69.5 24.1 18.5 図 3.1.1 8.9 14.0 12.8 10.4 7.3 26.5 17.2 22.4 21.2 23.2 28.2 41.1 地域別津波の可能性(全体) 津波が来るかどうかの予測は避難につながっている。津波来週の予測と地震直後に津波が来る かもしれないとして避難した人の割合をみると、「津波が必ず来ると思った」人は 67.2%が避 難しているのに対し、「もしかしたら来るかもしれないと思った」人は 22.0%、「津波は来な いだろうと思った」人は 7.0%、「津波のことはほとんど考えなかった」という人は 3.8%しか 避難していなかった。このように地域への津波襲来の予測は、津波避難を引き起こす要因とい える。 津波が必ず来ると思った 67.2 もしかしたら津波が来る かもしれないと思った 津波は来ないだろうと 思った 津波のことはほとんど考 えなかった 図 3.1.2 22.0 7.0 3.8 津波の危険認識と直後の避難率 しかし津波来襲の予測は、他の要因によって引き起こされるもので、避難につながる媒介変 数となっているともいえる。たとえば、ハザードマップを見て「自宅に津波被害の危険がある」 と思った人は、地震の後「津波が来る」と思うに違いない。問 27 ではハザードマップの閲覧 経験の有無と、見た時の感想を聞いているが、それを整理して、①ハザードマップを見て危険 性を認識した人②はサードマップを見ても危険性がわからなかった人およびハザードマップを 見たことがない人③ハザードマップを見て危険性はないと思った人の 3 つに分け、津波襲来の 予測を集計すると、図 3.1.3 のようになった。これを見ると、①ハザードマップを見て危険性 を認識した人は 60.7%が「津波が必ず来る」と思っている一方、②マップを見たが危険性が 21 わからなかった人+マップを見ていない人は 37.1%、③マップを見て危険性なしと認識した人 は 35.7%しか「津波が必ず来る」と認識していなかった。この図からは、ハザードマップに よって危険を認知した場合は、津波来襲の予測が促進されているようにみえる。 図 3.1.3 ハザードマップと津波襲来の予想 図 3.1.4 海からの距離別津波可能性(全体) 一方、津波来襲の予測には自宅の海からの距離も関係していると考えられる。すなわち自宅 が海から近い人ほど、津波が襲うと思うのではないだろうか。図 3.1.4 は海からの距離と津波 来襲の予測との関係を示したものである。これによると家から海が歩いて 10 分以内の人の 55.6%は「必ず津波が来る」と思っており、「必ず津波が来る」と主多人の割合は、「歩いて 20 分以内」の人で 33.7%、「歩いて 30 分以内」の人で 20.3%、「歩いて 30 分以上」の人で 17.3%と、自宅が海から離れるにつれて、津波が来襲すると予測する人が少なくなってくる。 22 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 津波が必ず来ると思った 津波が必ず来ると思った もしかしたら津波が来るかもしれないと思った もしかしたら津波が来るかもしれないと思った 津波は来ないだろうと思った 津波は来ないだろうと思った 津波のことはほとんど考えなかった 津波のことはほとんど考えなかった 歩いて10分以内 歩いて20分以内 44.9 歩いて30分以内 歩いて30分以上 図 3.1.5 18.3 8.58.5 歩いて10分以内 8.2 14.3 歩いて20分以内 17.6 17.6 11.8 歩いて30分以内 64.8 32.7 52.9 25.0 35.0 5.0 35.0 海からの距離別津波可能性(陸前高田) 歩いて30分以上 図 3.1.6 75.6 9.8 8.16.5 72.0 25.0 0 12.5 24.0 04.0 37.5 37.5 37.5 50.0 海からの距離別津波可能性(南三陸) 津波が必ず来ると思った 津波が必ず来ると思った もしかしたら津波が来るかもしれないと思った もしかしたら津波が来るかもしれないと思った 津波は来ないだろうと思った 津波は来ないだろうと思った 津波のことはほとんど考えなかった 津波のことはほとんど考えなかった 歩いて10分以内 歩いて20分以内 38.9 20.0 歩いて30分以内 7.1 歩いて30分以上 10.0 20.0 図 3.1.7 歩いて10分以内 31.1 15.0 20.0 歩いて20分以内 14.0 18.6 35.7 歩いて30分以内 11.1 22.2 45.0 28.6 28.6 30.0 27.8 40.0 海からの距離別津波可能性(仙台・名取) 歩いて30分以上 図 3.1.8 0 0 9.1 23.0 11.5 32.6 27.3 12.08.0 34.4 34.9 63.6 32.0 48.0 海からの距離別津波可能性(山元) 図 3.1.5 から図 3.1.8 までの 4 つの図は海からの距離と津波来週の可能性を地域別に集計し たものである。いずれの場所でも海から離れるほど津波来襲を予測する人が減っているのがわ かる。ここで注目されるのは、南三陸(図 3.1.6)で「歩いて 20 分以内」とやや海から離れた 場所の人でも 72%と多くの人が「津波が必ず来る」と予測していることである。南三陸での 意識の高さがうかがえる。 一方、問 4 で「地震後に津波のことを少しでも考えた」という人に、予想される被害の程度 と、津波が来るまでのどのくらい時間的余裕があると思ったかをたずねた。図 3.1.9 は地域別 に予想された津波被害の程度を表している。これをみると、全体では 22.5%の人しか「自宅が 壊れたり流されるほどの被害が出る」とは思っておらず、津波は来てもせいぜい浸水する程度 の軽い被害であろうと予測していたことがわかる。地域的にはやはり南三陸で大きな被害を予 想した人が多く仙台・名取や山元で大きな被害を予測した人が少なかったが、他の項目と比べ ると地域差は多くなかった。いずれにしても、今回の対象者は全員が津波による被害で仮設暮 らしている人なので、実際の被害は、予想外の大きさであったということがいえるだろう。 他方、図 3.1.10 は津波が来るまでの時間的余裕を予測したものである。全体としては「す 23 ぐに逃げないと間に合わないくらい早く来ると思った」という人が 38.9%、「津波は早く来る が荷物を持って逃げるくらいの余裕はあると思った」とした人が 28.3%いた。両者を足すと 約 2/3 の人が比較的早く津波が来ると考えたようだ。実際に大きな津波に襲われるのは 25 分 から1時間程度後のことであったし、想定された宮城県沖地震でも 20 分程度の余裕はあった から、避難場所の距離にもよるが、荷物をもって逃げるくらいの余裕はあったかもしれない。 そう考えると、今回の場合、時間的余裕に関しては、予想の範囲だった人が多いのではないだ ろうか。 図 3.1.9 図 3.1.10 予想された津波被害 津波が来るまでどのくらい時間の余裕があると思ったか (中村 24 功) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 3.2 「想像上の安全基準線」住民が考えていた津波の浸水地域 「東北地方太平洋沖地震」による津波が来襲する以前、人々は、居住している地域のどのあ たりまで津波によって浸水すると考えていたのであろうか。調査対象とした地域ごとに、それ ぞれの特性を踏まえて人々が一般に目安とする鉄道・道路・河川などを示した質問を設けた (問 17)。 (1) 陸前高田市 今泉街道 JR 大船渡線 国道 45 号線 図 3.2.1 陸前高田市 http://maps.google.co.jp/maps 2012.5.20 参照 陸前高田市は、「国道 45 号線」「JR 大船渡線」「今泉街道」を挙げて、「東北地方太平洋沖地 震」発生以前は、津波がどのあたりまで来ると考えていたのかについて尋ねた。その結果が表 3.2.1 である。最も多かったのが「津波は国道 45 号線を越えることはない」の 41.4%、「津波 は大船渡線の線路を越えることはない」が 25.5%、「津波は今泉街道を越えることはない」が 17.8%であった。 25 表 3.2.1 1. 2. 3. 4. 5. 「東北地方太平洋沖地震」以前に考えていた津波浸水地域(陸前高田市)(%) N=157 津波は国道45号線を越えることはないと思った 津波は大船渡線の線路を越えることはないと思っていた 津波は今泉街道を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った その他(わからない・選択肢外など) S.A. 41.4 25.5 17.8 8.9 6.4 「東北地方太平洋沖地震」以前は、1896 年の「明治三陸地震津波」の浸水被害地域をもと に浸水地域の予想が提示されていた。これによれば、陸前高田市の市街地の大半が浸水すると 予想されていた(陸前高田市津波防災マップ)。また、1960 年の「チリ地震津波」では、津波 による浸水は大船渡線を越えていた。つまり、陸前高田市の多くの住民は、ハザードマップ (津波防災マップ)の予想や過去の津波による浸水事例がありながら、海岸から最も近い場所 を通る「国道 45 号線」を津波は越えないと考えていたことになる。 (2) 南三陸町 国道 45 号線 県道 221 号線 JR 気仙沼線 図 3.2.2 南三陸町 http://maps.google.co.jp/maps 2012.5.20 参照 南三陸町は、「国道 45 号線」「県道 221 号線」「JR 気仙沼線」を挙げて尋ねた。その結果が、 表 3.2.2 である。 26 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 3.2.2 1. 2. 3. 4. 5. 「東北地方太平洋沖地震」以前に考えていた津波浸水地域(南三陸町)(%) N=164 津波は国道45号線を越えることはないと思った 津波は県道221号線(清水浜志津川港線)を越えることはないと思っていた 津波は気仙沼線の線路を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った その他(わからない・選択肢外など) S.A. 36.0 1.8 48.8 7.9 5.5 最も回答数が多かったものが「気仙沼線の線路を超えることはない」の 48.8%で、次いで 「国道 45 号線を越えることがない」の 36.0%、「県道 221 号線を越えることはない」は、わ ずかに 1.8%だった。 (3) 仙台市・名取市 国道 6 号線(仙台東部道路) 貞山堀 県道 10 号線 図 3.2.3 仙台市・名取市 http://maps.google.co.jp/maps 2012.5.20 参照 仙台市・名取市では、「貞山(ていざん)堀」「県道 10 号線」「国道 6 号線(仙台東部道路)」 を挙げて尋ねた。その結果が、表 3.2.3 である。 27 表 3.2.3 1. 2. 3. 4. 5. 「東北地方太平洋沖地震」以前に考えていた津波浸水地域(仙台市・名取市)(%)N=170 津波は貞山堀を越えることはないと思った 津波は県道10号線を越えることはないと思っていた 津波は国道6号線(仙台東部道路)を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った その他(わからない・選択肢外など) S.A. 71.2 12.4 10.0 4.7 1.8 回答を見ると、「貞山堀を越えることはない」が圧倒的に多く、71.2%を占めていた。次い で、「県道 10 号線を越えることはない」が 12.4%、「国道 6 号線(仙台東部道路)を越えるこ とはない」が 10.0%の順であった。「東北地方太平洋沖地震」以前の仙台市ならびに名取市の ハザードマップでは、国道 6 号線(仙台東部道路)まで津波による浸水があるという予想はさ れていなかったものの、県道 10 号線については、その周辺までは浸水の予想が示されている 地域や、中には越えることが予想されている地域もあった。また、貞山堀は、仙台市でも名取 市でもほとんどの地域で津波が越えると予想されていた。つまり、多くの住民が、ハザードマ ップよりでは浸水地域の中にある貞山堀を、津波により浸水するか否かの一つの境界線と考え ていたようである。 (4) 山元町 県道 38 号線 JR 常磐線 国道 6 号線 図 3.2.4 山元町 http://maps.google.co.jp/maps 2012.5.20 参照 山元町では、「県道 38 号線」「JR 常磐線」「国道 6 号線」を挙げて尋ねた。その結果が、表 3.2.4 である。 28 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 3.2.4 1. 2. 3. 4. 5. 「東北地方太平洋沖地震」以前に考えていた津波浸水地域(山元町)(%) N=151 津波は県道38号線を越えることはないと思った 津波は常磐線の線路を越えることはないと思っていた 津波は国道6号線(陸前浜街道)を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った その他(わからない・選択肢外など) S.A. 27.8 52.3 11.9 0.7 7.3 回答数が最も多かったのが「常磐線の線路を越えることはない」で、過半数の 52.3%を占 めていた。次いで「県道 38 号線を越えることがない」が 27.8%、「国道 6 号線を越えること はない」が 11.9%の順であった。 「東北地方太平洋沖地震」以前の山元町のハザードマップでは、今回調査を行った他の市町 に比べて津波による浸水が予想された地域が限られており、予想された浸水地域のほとんどが 海岸沿いである。しかし、山元町南部の坂元地区の JR 坂元駅周辺ついては、常磐線の線路を 越える地域まで津波の浸水が予想されている。 (5)震災前の津波浸水地域のイメージとハザードマップとの関係 ここで、住民のハザードマップへの接触が、津波浸水地域のイメージにどのように影響して いたのかを考えてみたい。 問 27 で、震災以前にハザードマップを見たことがあったかどうかについて質問をしている。 そこで、住民が震災以前にイメージしていた津波浸水する地域に関する質問をしたこの問 17 と問 27 をクロス集計して検討した。 表 3.2.5 ハザードマップの接触と人々の津波浸水地域のイメージ(陸前高田市) 上段の数値は回答者数 下段の数値は% 全 体 津波は国道45号線を越えることはないと思った 津波は大船渡線の線路を越えることはないと思っていた 津波は今泉街道を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った 157 100.0 65 100.0 40 100.0 28 100.0 14 100.0 ハザード マップを 見たこと がある 90 57.3 31 47.7 26 65.0 19 67.9 10 71.4 ハザード マップを 見たこと がない 67 42.7 34 52.3 14 35.0 9 32.1 4 28.6 表 3.2.5 は、陸前高田市の結果である。陸前高田市の対象者のうち、震災以前に「ハザード マップを見たことがある」と回答した人は 57.3%にあたる 90 名であった。「津波は国道45 号線を越えることはないと思った」と回答した人の中で「ハザードマップを見たことがある」 29 と回答した人は 47.7%にあたる 31 名、「津波は大船渡線の線路を越えることはないと思って いた」と回答した人の中で「ハザードマップを見たことがある」と回答した人は 65.0%にあ たる 26 名であった。陸前高田市の市域が広いため回答者の居住していた場所がどこであるか によって評価が変わることではあるが、陸前高田市の市街地において、事前のハザードマップ では、津波は国道 45 号線も JR 大船渡線の線路も越えて浸水する予測が示されていた。また、 1960(昭和 35)年の「チリ地震津波」では、津波は大船渡線を越えて浸水していた。そのよう な状況の中で、ハザードマップを震災以前に見たことがあると回答した人の 63.3%にあたる 57 名が、津波は国道 45 号線や JR 大船渡線を越えることはないと考えていたのである。 表 3.2.6 ハザードマップの接触と人々の津波浸水地域のイメージ(南三陸町) 上段の数値は回答者数 下段の数値は% 全 体 津波は国道45号線を越えることはないと思った 津波は県道221号線(清水浜志津川港線)を越えることはないと思っていた 津波は気仙沼線の線路を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った 164 100.0 59 100.0 3 100.0 80 100.0 13 100.0 ハザード マップを 見たこと がある 72 43.9 20 33.9 1 33.3 41 51.3 7 53.8 ハザード マップを 見たこと がない 92 56.1 39 66.1 2 66.7 39 48.8 6 46.2 次に、表 3.2.6 は、南三陸町の回答結果である。南三陸町の対象者のうち、震災以前に「ハ ザードマップを見たことがある」と回答した人は 43.9%にあたる 72 名であった。「津波は国 道45号線を越えることはないと思った」と回答した人の中で「ハザードマップを見たことが ある」と回答した人は 33.9%にあたる 20 名、「津波は県道 221 号線を越えることはないと思 っていた」と回答した人の中で「ハザードマップを見たことがある」と回答した人は 33.1% にあたる 1 名であった。南三陸町も陸前高田市と同じく町域が広いために、ここでも回答者の 居住していた場所による評価の違いも生じるものの、ハザードマップを震災前に見ていた人の 中の 29.2%にあたる 21 名が、津波が国道 45 号線または県道 221 号線を越えることがないと 考えていたのである。 このような津波浸水地域の見方は、平野部の市町になるとさらにはっきりと表れる。 表 3.2.7 は山元町の結果である。震災前の山元町のハザードマップでは、津波の浸水地域は 町の北部では海岸沿いと予測されていたが、町の南部の坂元地域(中浜・磯など)では、津波 が県道 38 号線や JR 常磐線の線路を越えるという予測が示されていた。つまり、町の一部では あるが、津波が JR 常磐線を越えて浸水する可能性が示されていたのである。この調査で震災 以前にハザードマップを見たことがあると回答した人は、対象者の 35.8%にあたる 54 名であ ったが、「津波は県道38号線を越えることはないと思った」と回答した人の中で震災以前に 30 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 ハザードマップを見たことがあると回答した人は 26.2%にあたる 11 名、「津波は常磐線の線 路を越えることはないと思っていた」と回答した人の中で、震災以前にハザードマップを見た ことがあると回答した人は 38.0%にあたる 30 名であった。この結果も、回答者の居住場所に よって評価が変わるものの、震災前にハザードマップを見ていた人の 75.9%にあたる 41 名が、 津波が県道 38 号線や JR 常磐線を越えることがないと考えていたことがわかる。 表 3.2.7 ハザードマップの接触と人々の津波浸水地域のイメージ(山元町) 上段の数値は回答者数 下段の数値は% 全 体 151 100.0 42 100.0 79 100.0 18 100.0 1 100.0 津波は県道38号線を越えることはないと思った 津波は常磐線の線路を越えることはないと思っていた 津波は国道6号線(陸前浜街道)を越えるとは思って 今回のような津波になるのではないかと思った 図 3.2.5 JR 常磐線・坂元駅(山元町) (2011 年 5 月 図 3.2.6 ハザード マップを 見たこと がある 54 35.8 11 26.2 30 38.0 9 50.0 - ハザード マップを 見たこと がない 97 64.2 31 73.8 49 62.0 9 50.0 1 100.0 貞山堀(仙台市若林区) 中森撮影) そして、震災前のハザードマップで示された津波による浸水予測地域を過小評価していた (津波の来襲する地域を、より海側に考えていた)という傾向が非常に顕著だったのが、仙台 市ならびに名取市の回答であった。 震災前の仙台市と名取市のハザードマップでは、津波により県道 10 号線周辺まで浸水する 可能性が示されている。貞山堀は県道 10 号線よりも海側に。つまり、ハザードマップ上でも 津波が貞山堀を越える予測が示されていたのである。 31 表 3.2.8 ハザードマップの接触と人々の津波浸水地域のイメージ(仙台市・名取市) 上段の数値は回答者数 下段の数値は% 全 体 津波は貞山堀を越えることはないと思った 津波は県道10号線を越えることはないと思っていた 津波は国道6号線(仙台東部道路)を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った 170 100.0 121 100.0 21 100.0 17 100.0 8 100.0 ハザード マップを 見たこと がある 56 32.9 46 38.0 4 19.0 4 23.5 2 25.0 ハザード マップを 見たこと がない 114 67.1 75 62.0 17 81.0 13 76.5 6 75.0 表 3.2.8 は、仙台市と名取市の結果である。「津波は貞山堀を越えることはないと思った」 と回答した人 121 名の中で、震災以前にハザードマップを見たことがあると回答した人は 38.0%にあたる 46 名だった。ハザードマップにおいて「貞山堀を津波が越える」という予測 が明示されていたものの、震災以前にハザードマップを見ていた人の 4 割近くが、津波は貞山 堀を越えないと考えていたことになる。 このような結果から、ハザードマップで津波浸水地域の予測が示されていても、また、その ハザードマップを人々が見ていたとしても、中には、津波の浸水地域をそこで示された予測で はなく、それぞれがイメージしたものを信じてしまう人がいるということである。つまり、精 度の高い予測をもとにハザードマップを作成して住民に公開・配布等をしても、住民の避難に 結びつくような効果が十分には見られない可能性があることを、この回答結果が示しているの ではないだろうか。 (6)考察 「想像上の安全基準線」 以上のようなことから、次のような点が指摘できるであろう。まず、被災地域の住民は、ハ ザードマップなどに示された自治体が予測した浸水地域よりも狭く(より海岸に近い地域に) 津波の浸水地域をイメージしている人が多いことである。次に、多くの人々にとって、このた びの震災を引き起こした津波が、それまで考えてもいなかった規模であることが、この結果か らもあらためて窺えることである。そして、本来、津波の浸水地域を区分けしたものではない 道路・鉄道・河川などを、明確な理由のないまま(見た目のイメージなどから)津波による浸 水地域の境界の目安として考えている人が少なくないのではないかということである。どのあ たりまで被害が生じるのか、危険なのかということをそれぞれがイメージし、被害が生じる地 域の境界線として、必ずしも被害が生じる地域の境界線ではない鉄道・道路・河川などをある 種の基準としているように思える。このような言わば「想像上の安全基準線」を、人々がそれ ぞれ持っているようだ。津波以外の災害についても、また他の地域においても、このような傾 向がある可能性が考えられ、今後の災害対策において留意しなければならない問題ではないだ ろうか。 (中森 32 広道) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 3.3 ハザードマップ 今回津波に襲われた沿岸の市町では、津波災害に備えて、ハザードマップを作り、住民に配 布していた。ハザードマップの浸水予測は、実際の被害に比べると低く見積もられていたとこ ろが多かった。そのずれは大槌町、山田町、宮古市など三陸北部ではそれほど大きくなかった が、岩手県南部以南の地域ではそのずれは大きくなっていった。三陸北部では当該地に大きな 被害をもたらした明治三陸津波を想定基準としており、今回の津波の被害もそれとはあまり異 ならなかった。しかし南部では明治三陸津波の被害はそれほどではなかったし、想定宮城県沖 地震の津波も今回の被害ほど大きなものではなかったのである。 こうしたハザードマップを見たことがあるかをたずねたところ、全体では 42.4%の人しか見 たことがないという(図 3.3.1)。閲覧率が最も高かった陸前高田でも 57.3%であった。全戸に 配布しても実際に見たのは半分から 1/3 程度と低かったのである。 見たことがある 全体 42.4 陸前高田 山元 57.6 57.3 南三陸 仙台 ・名取 見たことがない 43.9 32.9 35.8 図 3.3.1 42.7 56.1 67.1 64.2 ハザードマップ閲覧経験の有無 さらに閲覧した人に、それを見て自宅の危険性がわかったかをたずねた。その結果、自宅に 津波の危険性があることが分かったのは、閲覧者のうち 43.0%であった(図 3.3.2)。一方「津 波の被害の危険性がないことが分かった」という人は 20.6%であった。ハザードマップによ る低い浸水の予測が避難を阻害した可能性が考えられるが、その可能性があるのは閲覧者の2 割程度、閲覧していない全住民で言えば、1割程度の少数者であると言える。他方、マップを 見たことはあるが、自宅の危険性は「よくわからなかった」とか「覚えていない」などとし た 33 人が 36%もいた。これらの人にとっては、ハザードマップはほとんど見ていないのと同じで、 プラス面もマイナス面も両方とも効果がない、ということになるだろう。 すでに図 3.1.3 で ハザードマップと津波襲来の予想の関係を示したが、ハザードマップを 見ていて、自宅に被害の危険性があると理解していれば、津波が来ると予測できたと考えられ る。その意味でハザードマップは意味があると言える。その一方で図 3.1.3 によると「津波の 危険がないことが分かった」とする人の津波来襲予測はマップを見ていない人とほとんど同じ である。すなわち今回マップで予測浸水心を過小評価し、それを見て自宅の危険性がないと思 っても、それによって津波は来ないだろうと思わせる、マイナスの効果はみられなかったので ある。ハザードマップの予想浸水深が低かった誤りはもちろん訂正していかなければならない。 しかしそれのことは直接の被害にはつながっていない。それよりももっと重要なことは、①ハ ザードマップは、配布しただけでは、見ない人が多いので効果が少ない。②閲覧しても 1/3 以 上の人はそこから自宅の危険性を読み取ることができていない、ということである。ハザード マップは推定を正確にしたうえで、自宅の危険性を分かりやすくしたり、戸別の説明をするな ど、全員に自宅の危険性を理解させる方策が必要であろう。 自宅に津波被害の危険があることがわかった 自宅には津波被害の危険性がないことがわかった 自宅に津波被害の危険があるかどうかよくわからなかった 覚えていない その他(わからない・選択肢外など) 全体 43.0 陸前高田 43.3 南三陸 図 3.3.2 16.1 20.4 13.6 0.7 15.6 16.7 41.1 29.6 22.1 26.7 54.2 仙台 ・名取 山元 20.6 14.4 18.1 11.1 0 30.4 29.6 0 12.5 0 16.7 3.7 マップを見て自宅の危険性がわかったか (中村 34 功) 第4章 津波情報と避難行動 第4章 津波情報と避難行動 4.1 津波警報 気象庁では地震発生 3 分後の 14 時 49 分に津波警報を発表した。その内容は、岩手県、宮城 県、福島県へ津波警報(大津波)、北海道太平洋沿岸中部、青森県太平洋沿岸、茨城県、千葉 県九十九里・外房、伊豆諸島へ津波警報(津波)というものだった。引き続き 14 時 50 分には 岩手 3m,宮城 6m,福島 3m(大津波)青森県太平洋沿岸 1m(津波)と予想される波高を発表して いる。しかしこの第 1 報による津波波高の予想は、実際の津波の高さを大きく下回るものであ り、その後問題となった。気象庁資料によると、当初は想定されていた宮城県沖・三陸沖 南部 海溝寄り連動型(M8.0 前後)が発生したものと考えていたようだ。しかし 15 時 10 分頃から 岩手釜石沖などの GPS 波浪計において潮位の急激な上昇が観測されたため、15 時 14 分に津 波警報の第2報を発表し、予想される津波の高さを宮城県 10m以上、岩手県・福島県6mな どに引き上げたのである。 今回のアンケートでは、大津波が襲う前に、この津波警報を聞いたかどうかをたずねた。調 査全体では 52.3%の人が津波警報を聞いていた。地域別にみると、南三陸町の聴取率が 77.4% と最も高く、その一方で山元町では 29.1%ときわめて低かった。 36 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 図 4.1.1 津波警報を聞いたか 大津波警報を聞いた手段をたずねたところ、最も多いのは「防災無線の屋外拡声器から」で あった。警報を聴取した人全体では 50.9%の人が同報無線の屋外拡声器から聞いており、特 に南三陸町では 79.5%と高率で同報無線から聞いていた。また陸前高田でも 55.8%の人が同 報無線の屋外拡声器から聞いていた。南三陸や陸前高田で津波警報を聞いた人が多かったのは、 防災無線から聞いた人が多かったからである。逆に津波警報の聴取率が 29.1%と低い山元町 では、防災無線から聞いた人が 18.1%と低かった。次いで、民放ラジオが 16.7%、防災無線 の戸別受信機が 11.0%、NHK ラジオ 7.4%(いずれも数字は全体)から聞いた人が多かった。い ずれにせよ、津波警報の伝達は同報無線がかぎとなっている。同報無線について次節で詳しく 述べる。 図 4.1.2 津波警報を聞いたメディア (津波警報を聞いた人のうち) 37 津波前に大津波警報を聞いた人に、聞いた時刻をたずねたところ、地震直後に聞いた人が最 も多く 51.2%おり、ついで地震から 15 分以内という人が 33.9%となっていた。伝達された時 刻については、問題のない早さであったといえるだろう。 表 4.1.1 大津波警報をいつ聞いたか 1. 地震発生の直後に(午後2時49分ごろ) 2.地震発生から15分後以内に(午後3時ごろまで) 3. 地震発生から30分後以内に(午後3時15分ごろまで) 4. 地震発生から45分後以内に(午後3時30分ごろまで) 5. それ以上の時間の後に( 時 分 ごろ) 6. その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 51.2 54.7 57.5 39.2 33.9 33.7 35.4 35.4 11.3 9.3 5.5 17.7 1.2 0 0 3.8 0.3 0 0 1.3 2.1 2.3 1.6 2.5 山元 47.7 27.3 20.5 2.3 0 2.3 次に、津波警報の効果である。津波警報を聞いたときにどう思ったかを聞いたところ、 43.2%がすぐに逃げないと間に合わないくらい早く来ると考え、23.5%が「津波は早く来るが 荷物をもって逃げるくらいの余裕はあると」思っている(表 4.1.2)。全体としては 2/3 程度の 人には津波が来ると思わせたようだ。一方津波が来襲するか否かの予測と津波警報を聞いたか どうかをクロス集計してみると、「津波が必ず来る」と思ったのは、津波警報を聞いた人では 52.7%いたのに対し、聞かないかった人は 28.8%しかいなかった。逆に「津波のことは考え なかった」という人は津波警報を聞いた人では 11.9%しかいなかったのに対して、聞かなか った人では 34.0%に上っている(図 4.1.3)。カイ二乗検定の結果でも 0.1%の有意水準で差が 見られた。津波警報は、たしかに津波来襲の予測を促進することに効果を発揮したといえる。 表 4.1.2 大津波の警報を聞いた時、どのように思ったか 1. すぐ逃げないと間に合わないくらい早く来ると思った 2. 津波は早く来るが、荷物を持って逃げるくらいの余裕はあ ると思った 3. 津波は早く来るが、子どもを迎えに行ったり、近所に住ん でいる親の様子を見に行くくらいの余裕はあると思った 4. 津波が来るまでには、かなりの余裕があると思った 5.津波が来るとは思わなかった 6. その他(わからない・選択肢外など) 図 4.1.3 38 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 43.2 31.4 53.5 45.6 山元 31.8 23.5 31.4 24.4 17.7 15.9 6.8 5.8 4.7 10.1 9.1 11.0 13.4 2.1 7.0 22.1 2.3 8.7 7.1 1.6 15.2 8.9 2.5 18.2 22.7 2.3 大津波警報聴取の有無と津波来襲の予測(χ2; p<.001) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 図 4.1.4 大津波警報の調子の有無と避難率(いずれも χ2; p<.001) さらに津波警報が避難行動に影響しているかを調べるために、津波警報聴取の有無と「地震 直後に避難した」(問 2-11)および「津波前に避難した」(問 11)についてクロス集計した。そ の結果「地震直後に津波避難した」人は津波警報を聞かない人では 19.6%なのに対して、聞 いた人では 37.5%と増加していた。また「津波が来る前に避難した」人も津波警報を聞かな いことでは 81.4%なのに対し津波警報を聞いた人では 91.7%に増えている。カイ二乗検定を すると、両集計とも 0.1%水準で有意だった。ここから、津波警報は津波避難を促進している と考えられる。 (中村 功) 4.2 避難勧告と防災無線 地震の後、市や町では「大津波が来るので避難するように」という避難の勧告を呼びかけた。 これを聞いたかどうかたずねると、全体で 43.0%の人が聞いていた。南三陸では 73.8%の人が 聞いていた一方、仙台・名取では 22.4%、山元では 24.5%しか聞いていなかった。 図 4.2.1 避難の呼びかけを聞いたか 39 この避難の呼びかけと実際に避難行動をしたかをクロス集計すると、図 4.2.2 のようになっ た。避難勧告を聞いた人では、聞かない人よりも 10%程度避難した割合が高くなっている。 この傾向は津波警報と似ているが、津波警報の方が、聞いた人と聞かない人の差が大きくなっ ている。 図 4.2.2 避難勧告の聴取の有無と避難行動 津波警報や避難勧告の伝達に重要な役割を果たしたのが同報無線である。同報無線が聞こえ たかを尋ねると全体では 28.5%が、よく聞こえ内容が理解できたと答え、11.1%が放送は聞 こえたが内容はわからなかったと答えている。内容まで理解できたという人を場所別にみると、 南三陸では 63.4%とよく聞こえていたようだが、仙台・名取では 7.6%、山元では 7.3%と低 くなっている(図 4.2.3)。 図 4.2.3 同報無線を聞いたか 同報無線は場所によってうまく放送できたところもあったが、不具合が生じていたところも あるようである。たとえば山元町では役場にあった防災無線の送信アンテナが倒れ、さらにス チール机が倒れ親局の操作室の扉があかず、余震の危険もあったために操作室に入れなくなっ てしまった。そこで緊急時の協定を結んでいる亘理消防署から放送したという (総務省資料 2011)。名取市でも市役所屋上の送受信装置に原因不明の不具合が生じた。しかし職員は故障 に気づかず午後 7 時過ぎまで放送を繰り返したという(河北新報 20114 月 24 日)。あるいは仙 台市では市内に 49 基の「津波情報伝達システム」と呼ばれる同報無線の子局があったが、シ ミュレーションで浸水被害が想定された海沿いと川沿いの地域だけに拡声子局を置いていたた 40 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 め、多くの被災住民に放送が届かなかったと思われる(図 4.2.4)。 図 4.2.4 仙台市津波情報伝達システム(同報無線)子機設置場所 仙台市ホームページより http://www.city.sendai.jp/syoubou/bousai/tunami/system/pdf/ichiran.pdf (中村 功) 4.3 避難の有無とその理由 大津波が来る前に避難したかを尋ねたところ、全体では 86.8%が避難していた。地域別で は陸前高田では 94.9%、南三陸では 89.6%、仙台・名取では 90%、山元では 71.5%だった。山 元ではやや低いが、他では 9 割程度が避難していた。意外なことに、大きな被害のわりには全 体として避難率は高かったといえる。 41 全体 86.8 陸前高田 94.9 南三陸 89.6 仙台 ・名取 90.0 山元 71.5 図 4.3.1 大津波が来る前に避難したか 調査は無事だった人だけを対象としているので、津波で亡くなった人を含めた全員の避難率 は測定することはできないが、内閣府が東北 3 県の避難者 870 人に対して行った調査でも似た ような数字が出ている。すなわち地震直後に避難した人が 57.0%、何らかの行動を終えて避難 した人が 30.7%、何らかの行動をしている最中に津波が迫ってきた(切迫避難)が 10.8%、避難 していない人が 1.5%だった。切迫避難は津波が迫ってきているので、津波の前に避難したと はいえないので、事前避難から除くと、避難者率は 87.7%(直後避難+用事後避難)と約 9 割と なる。 直後避難 用事後避難 切迫避難 避難せず 1.5 57.0 図 4.3.2 避難率(東北 3 県 30.7 10.8 内閣府調査 2011) 内閣府の同資料によれば浸水範囲内人口が約 50 万人である。避難率が約 9 割だとすると、 ごく単純に計算すれば、浸水域で事前に避難しなかった人は 1 割の約 5 万人ということになる。 内閣府の調査では切迫避難のうち 23%が流され、21%が水に浸かったとし、合わせると約 4 割が水に浸かっている。5 万人の 4 割であれば 2 万人ということになり、ほぼ犠牲者の数とあ っている。こうしたことを考えると約 9 割の避難率というのは現実に近い数字であるといえる のではないだろうか。 次に本人が自覚している避難の理由、避難しなかった理由をたずねた。避難した理由として 最も多く挙げられたのは、「地震の強さや長さがいつもと違ったから」で全体では 50.3%であ る。これは揺れを察知して自ら津波を判断して逃げたのであるから、最も理想的な形と言える。 中でも南三陸では 63.9%、陸前高田で 60.4%と割合が高くなっている。それに対して仙台・ 名取では 37.3%、山元では 36.1%と半数近くに下がっている。すでに述べたように、揺れ自 体はこれらの地域の方が強かったにもかかわらず、である。次に挙げられたのは「近所の人が 避難するように言ったから」(20.8%)や「家族が避難するように言ったから」(20.6%)といっ 42 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 た周囲の人の勧めがある。しかし周囲の人の勧めで逃げるというのは、教訓として生かすのは 必ずしも容易ではない。第 1 に家族や近所の人の勧めを促すと言っても、そもそも周囲の人に 避難を進める側の住民自身が避難の必要性を感じなくてはならない。したがって「周囲の人の 勧め」とは避難の原動力というよりも住民の避難行動への意思の媒介的変数に過ぎないのでは ないだろうか。第 2 に、表 4.3.1 の数字をみると、揺れで避難した人が少ない、仙台・名取や 山元の方が、南三陸や陸前高田より、他人の勧めで避難した人が多くなっている。周囲の人の 勧めで逃げるということは自ら避難を判断できない人が多いことの裏返しともいえる。第 3 に、 他人の勧めで避難するということは、他人のことを考えず自らすぐに逃げろという「津波てん でんこ」の言い伝えに反した行動ともいえる。周りの人への避難の声かけは成功すればよいが、 失敗すると共倒れになって一転して悲劇になってしまう可能性すらある。そして避難した理由 としては、ほぼ同じ数字で「大津波警報を聞いたから」(19.4%)が続いている。 表 4.3.1 1. 以前に津波を経験したので 2. 地震の揺れの強さや長さがいつもとは違ったから 3. 4. 5. 6. 海や川の水が大きく引いたから 家族が避難しようと言ったから 近所の人が避難するように言ったから 市・町が避難を呼びかけたから 7. 大津波警報を聞いたから 8. 役場や消防団の人が来て説得されたから 9. 実際に津波が来ているという話を聞いたから 10. 実際に津波が来るのが見えたから 11. 避難訓練などで、いつも避難していたから 12. その他 避難した理由 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 9.9 13.4 19.0 3.9 山元 0.9 50.3 7.7 20.6 20.8 60.4 6.0 18.8 15.4 63.9 12.9 17.0 15.6 37.3 5.9 21.6 28.1 36.1 5.6 26.9 25.0 11.8 19.4 5.4 5.6 15.1 5.0 12.2 9.4 14.8 5.4 5.4 14.1 6.0 10.1 21.1 25.9 5.4 6.1 17.0 8.8 11.6 9.2 22.2 4.6 3.9 16.3 3.3 15.7 6.5 13.0 6.5 7.4 12.0 0.9 11.1 避難した理由として「その他」の回答の具体例としては、松原の黄色いけむりを見た。 /地 震が恐かった。/家族を避難させたかった。/上司から避難指示があったから。/津波がくると は考えづらかったが、一応避難した。/周りの人たちが逃げていたので一緒に逃げた。/若い人 に(孫に)せかされた。/小学生が役場に避難しているから/揺れで家が全壊だったので避難し た。/消防署員であったから/車内の TV の情報を確認した/ラジオの情報、6m/ラジオで津波 が来るという情報を聞いたから/子供のいる学校に迎えに行く感覚で避難したかたち、たまた ま助かった、などがあった。 一方避難しなかった理由としては、「津波のことは考えつかなかったので」が 42.4%と最も 多くなっていた。これはとくに仙台・名取や山元といった南の方の地域で多くなっている。こ うした地域では津波に対する警戒心がもともと低かったのであろう。一方陸前高田や南三陸で は「その他」の理由が多くあげられている。具体的には、子供を迎えに行って、目的地に向か う途中で巻き込まれた。/仕事があった。/職場が老人ホームで、置いて動けない。/看護師の ため、患者の誘導で間に合わず。/消防のため、呼びかけに回っていた。/仕事先が高台だった ため避難しなかった。/その場の責任者の指示。居た場所が(高野会館)、避難指定場所だった 43 から。/病院内にて仕事中/場所が海のそばで逃げられる所がなかったので、屋上しかなかった。 /などが挙げられていた。ここで気になるのは職務関係上避難できなかった人である。消防関 係者の被災が多いことはしばしば取り上げられている。総務省消防庁のまとめでは、消防団員 の死者・行方不明者は東北 3 県で 254 人にも達している(「東日本大震災を踏まえた大規模災 害時における消防団活動のあり方等に関する検討会」第 1 回資料 2011.11 月 24 日)。一方、 病院や老人福祉施設などの職員も職務遂行上犠牲になりやすい人たちである。厚生労働省老健 局の資料(2011 年 6 月)によると、岩手、宮城、福島 2 県の老人福祉施設での死者・行方不明 者は、入所者が 485 人、職員は 173 人になっている。たとえば山元町の養護老人ホーム「梅香 園」では、入所者 34 人と職員 20 人が死亡し、12 人が行方不明になっている。(朝日新聞 2011 年 5 月 26 日)。これら避難援助者の被災は難しい問題である。全員を避難させようとすれば避 難援助者が犠牲になる可能性が高まり、避難援助者を救おうとすれば助けを必要とする人たち の犠牲が増えるからである。要援護者のいる施設では、避難には限界があり、施設の立地や構 造から対策をしていかなくてはならないのではないだろうか。 表 4.3.2 避難しなかった理由 全体 陸前高田南三陸 仙台 ・ 名取 山元 1 . 津波のことは考え つかな かったので 2 . 津波が来な いと思われた、 高台や内陸にいたので 42.4 25.0 5.9 58.8 53.5 24.7 37.5 58.8 0 18.6 0 17.6 11.8 4.7 0 0 0 0 3 . 昭和3 5 ( 1 9 6 0 ) 年のチリ 地震津波や明治・ 昭和の三陸地 震津波な ど、 これま で の津波で 被害のな かった場所にいた8 . 2 ので 4 . 市や町が作った防災マ ッ プ( ハザードマ ッ プ) に津波が来 0 な いと示されて いたので 5 . 市や町から避難の呼びかけを聞かな かったので 9.4 0 5.9 23.5 7.0 6 . 津波警報を聞かな かったので 10.6 0 5.9 29.4 7.0 7 . 海の水が大きく 引く な どの前兆がな かったので 2.4 0 5.9 0 2.3 0 5.9 5.9 7.0 0 5.9 11.8 2.3 0 0 0 0 1 1 . 昨年2月のチリ の地震( チリ 中部沿岸の地震) で 大津波 警報が出されたが、 実際は大きな 津波が来な かったので 3 . 5 0 5.9 11.8 0 1 2 . 防波堤や防潮堤で 海の様子がわからな かったので 1.2 0 0 5.9 0 1 3 . 家族に、 小さい子ども、 高齢者、 体が不自由な 人な ど自 4.7 力で の避難がむずかしい人がいたので 0 0.0 17.6 2.3 1.2 0 0 0 2.3 0.0 0 0 0 0 0 17.6 23.5 4.7 62.5 29.4 17.6 34.9 8 . 防波堤や防潮堤を超え るような 大きな 津波は来な いと 5.9 思ったので 9 . 津波の高さが3mとか6m程度と聞き、 危険とは思わな 4.7 かったので 1 0 . 津波が来ると言われて いた時間にな って も大きな 津波 0 が来な かったので 1 4 . 外出して いて 自宅の様子を見に行こうとしたので 1 5 . 車な ど避難する手段がな かったので 1 6 . いざとな ったら二階以上に逃げればよいと思って いたの 10.6 で 1 7 . その他 32.9 次に避難した人に、避難できた理由をたずねたところ、「すぐに避難したから」が 56.9%と 最も多くなっていた。注目されるのは「車で避難したから」である。全体では 31.4%で、仙 44 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 台・名取では 43.8%に達した。また山が近くにある南三陸でも 32.7%であった。避難の原則は 徒歩ということになっているが、地方では車が足代わりのこともあり、車での避難は避けられ ない。しかし今回、逃げ遅れや渋滞により車内で被災した人も少なくない。車による避難は危 険と裏腹であること、渋滞しない避難経路をあらかじめ想定しておくこと、渋滞したら躊躇な く車を捨てて徒歩避難すること、などを徹底することが、まずは重要であろう。 表 4.3.3 避難できた理由 1. すぐに避難したから 2. 家族から昔の津波や地震の話を聞いていたから 3. 防災訓練をしていたから 4. 学校等で教わっていたから 5. 自分や家族のとっさの判断がよかったから 6. 避難の呼びかけがあったから 7. 歩いて避難したから 8. 車で避難したから 9. 車で避難しなかったから 10. いったん自宅に戻ったりしなかったから 11. その他 12. わからない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 56.9 56.4 68.0 50.3 10.1 16.1 17.7 3.3 5.9 7.4 10.2 4.6 2.0 1.3 4.8 0.7 26.2 26.2 21.1 26.8 19.0 15.4 19.0 21.6 8.3 6.7 15.0 9.2 31.4 13.4 32.7 43.8 1.1 0 2.0 2.0 5.7 2.7 11.6 6.5 9.2 6.7 10.9 11.1 1.1 1.3 2.0 0 山元 51.9 0.9 0 0.9 32.4 20.4 0 37.0 0 0.9 7.4 0.9 最後に今回の地震での自らの避難のタイプをたずねた。最も多いのは、「大きな地震を感じ たら何も考えずに避難する」タイプで、全体の 46.7%だった。中でも南三陸は 59.1%と数字が 高く、山元では 29.8%と南三陸の半数だった。三陸地方では津波の意識が高くことの表れであ るが、啓発活動により津波避難意識を高くしてこうしたタイプを増やすことが重要である。次 に多いのは「津波警報などの情報を考慮して避難を決める」タイプである。全体では 20.1%を 占め、地域による差はみられなかった。「避難しようか迷い情報や周囲の人に背を押されて避 難する」タイプは全体の 11.8%だが、山元で多く、南三陸で少なくなっている。「避難しよう か迷っているうちに逃げ遅れる」タイプは全体の 5.6%とあまり多くなったが、南三陸では 1.8%と特に少なくなっている。また山元や仙台・名取では「津波のことは思い浮かばないで、 逃げ遅れる」タイプも 1 割以上見られた。これらは津波避難意識と逆の関係がある。一方ここ は大丈夫だと確信して逃げ遅れるタイプは全体の 7.0%と比較的少数だった。 表 4.3.4 津波避難のタイプ 1. 大きな地震を感じたら、何も考えず、すぐに避難するタイプ 2. 津波警報や避難勧告など、情報を考慮して、避難するか どうか決めるタイプ 3. 避難しようか迷っているうちに、津波警報や近所の人の 勧めなどに背を押されて、避難するタイプ 4. 避難しようか迷っているうちに、逃げ遅れるタイプ 5. 津波のことは思い浮かばないで、逃げ遅れるタイプ 6. ここは大丈夫だと確信して、逃げ遅れるタイプ 7. その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 46.7 48.4 59.1 48.2 山元 29.8 20.1 21.0 18.9 19.4 21.2 11.8 12.1 7.9 11.8 15.9 5.6 6.7 7.0 2.0 5.7 3.8 5.1 3.8 1.8 1.2 7.3 3.7 7.1 10.0 2.9 0.6 7.9 11.9 13.2 0 45 避難のタイプを性・年齢別にクロス集計すると、男女別では有意な差はみられなかったが、 年齢別では差がみられた(表 4.3.5)。すなわち、「大きな地震を感じたら何も考えずに避難す る」タイプでは 50 代以上の高年齢層で高くなっていた。一方「津波警報などの情報を考慮し て避難を決める」タイプは 20 代から 50 代までの比較的若い層で多くなっていた。高年齢層で はとっさの判断で避難を決める人が少ない代わりに、これまでの経験をもとにパタン化した避 難行動をとる傾向があることがわかる。逆に若年層ではその時の判断を優先させる傾向がみて 取れる。これは高齢層は柔軟な情報処理能力が低下する代わりに、ある程度の用心深さをもっ て決まりきった行動をとる傾向があると理解できる。そうであるならば、高齢者には自発性よ りもパタン化を定着させるような啓発活動の方が向いているのかもしれない。 表 4.3.5 全体 大きな地震を感じたら、何も考えず、すぐ に避難するタイプ 津波警報や避難勧告など、情報を考慮 して、避難するかどうか決めるタイプ 避難しようか迷っているうちに、津波警 報や近所の人の勧めなどに背を押され て、避難するタイプ 避難しようか迷っているうちに、逃げ遅 れるタイプ 津波のことは思い浮かばないで、逃げ 遅れるタイプ 性・年齢別避難のタイプ 性別 n.s 男 女 20歳代 30歳代 年齢 40歳代 p<0.01 50歳代 60歳代 70歳代以上 46.7 48.4 45.5 43.3 34.7 33.3 47.3 51.3 55.3 20.1 20.9 19.5 30.0 25.3 33.3 25.5 14.7 8.8 11.8 8.1 14.6 13.3 13.3 12.6 9.2 12.7 11.9 5.6 5.9 5.4 0.0 9.3 4.6 5.7 6.7 4.4 6.7 5.9 7.3 10.0 6.7 3.4 6.4 6.7 8.2 ここは大丈夫だと確信して、逃げ遅れる タイプ 7.0 9.2 5.4 3.3 5.3 9.2 5.7 6.7 8.8 その他 2.0 1.8 2.2 0.0 5.3 3.4 0.0 1.3 2.5 大きな地震を感じたら、何も考えず、すぐに避難するタイプ 津波警報や避難勧告など、情報を考慮して、避難するかどう か決めるタイプ 避難しようか迷っているうちに、津波警報や近所の人の勧め などに背を押されて、避難するタイプ 聞かない 聞いた 図 4.3.3 37.1 51.4 20.4 12.9 7.5 13.4 7.51.1 20.1 10.9 4.83.86.62.5 体験談を聞いたかと津波避難タイプ では「大きな地震を感じたら何も考えずすぐに避難する」タイプを増やすにはどうしたらよ いのであろうか。その中で、「ハザードマップを見た」と言うのはタイプと関連性がなかった が、「家族や地域の人から津波のことを聞いたことがある」とした人では有意に高くなってい 46 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 た。すなわち「大きな地震を感じたら何も考えずすぐに避難する」タイプは、話を聞いたこと がない人では 37.1%、聞いたことがあるという人は 51.4%であった。こうしたことから、地 震の揺れで避難するタイプを増やすには、近所や家族で津波のことを話し合う機会を促進する ことが重要だといえよう。 (中村 功) 資料 気象庁「東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた津波警報の改善の方向性について」 平成 23 年 9 月 12 日 http://www.jma.go.jp/jma/press/1109/12a/torimatome.pdf 消防庁国民保護・防災部防災課「地域防災計画における地震・津波対策の充実・強化に関す る検討会報告書」(平成 23 年 12 月) http://www.fdma.go.jp/disaster/chiikibousai_kento/houkokusyo/index.pdf 内閣府 「平成 23 年東日本大震災における避難行動等に関する面接調査(住民)分析結果」 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会(第7回)23 年 8 月 16 日 資料 http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/higashinihon/7/1.pdf 厚生労働省老健局「東日本大震災への対応【介護保険・高齢者福祉関係】」第3回災害医療 等のあり方に関する検討会資料1 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001q8my-att/2r9852000001q8of.pdf 4.4 早期避難を促した要因(多変量解析の結果) どのような要因が避難を促すのか、多変量解析をもとにその要因を探る。被説明変数として は避難をしたかどうか(問 11)ではなく、地震後の行動として「津波が来るかもしれないと思い すぐに避難した」(問 3-11)を使用することにする。これは、問 11 ではほとんどの人が避難し ているためにその要因を区別することが難しいことと、問 11 では必ずしも津波を念頭に置い た避難ではなく、避難のきっかけなどをみると、揺れによる避難も含まれている可能性が考え られるためである。 まず津波避難に関係すると思われる変数について整理し、そのすべてについて相関関係をみ た。変数は以下のように整理した。「大津波警報を聞いたか」(問 7)については「聞いた」を 1 「聞かなかった」と「覚えていない」を 0 に、避難の呼びかけを聞いたか(問 8)は「聞いた」 が 1 で「聞いていない」が 0、「これまで家族や地域の人から津波のことを聞いたことがある 47 か」(問 26)は「聞いたことがなかった」と「その他」を 0 それ以外を 1 に、ハザードマップ は閲覧の有無(問 27)は「見たことがある」を 1「見たことがない」を 0 に、ハザードマップを 見た感想(問 27-1)は「危険がないことが分かった」を 0「よくわからなかった」「覚えていな い」「ハザードマップを見なかった」を 1 に「危険があることが分かった」を 2 とした。 表 4.4.1 津波が来る かもしれな いと思いす ぐに避難し た 津波が来る かもしれな いと思いす ぐに避難し た 警報を聞い た 体験談を聞 いた ハザード マップを見 た Mapを見た危 険度認知 避難勧告を 聞いた 自宅から海 までの距離 調査地区 1 「津波を考えすぐに避難した」(問 3-11)と諸変数との相関関係 警報を聞い た .197 ** .111 1 .243 .197 ** .111 ** .243 ** 0.057 .174 ** .117 ** .132 ** -.207** ** 性別 -.113 0.001 年齢 0.407 ハザード Mapを見た危 避難勧告を マップを見 険度認知 聞いた た 体験談を聞 いた ** 0.057 ** .174 ** 1 .236 ** ** 1 .236 性別 ** .132 ** -.207 ** -.113 ** .086 * .476 ** -.117 ** -.238 ** -.102 .102 * .208 ** -.180 ** -.439 ** .147 ** -.115 ** -.170 .116 ** -.206 ** -.113 ** .117 .217 年齢 0.001 0.033 ** -0.056 ** -0.078 0.052 ** -.079 * -0.016 -0.058 -0.007 0.026 ** * -0.052 ** 1 .208 .147 ** ** 1 -.117** -.180** -.115** -.206** -.113** 1 .120** 0.044 0.024 ** ** -0.058 -.296 ** ** 0.051 -.079* -0.007 -.080* .120 0.044 1 -.102** -.439 -0.078 0.051 1 .118 -0.064 0.154 0.191 0.677 0.512 0.186 0.537 0.003 0.106 .476 -.238 .102 ** * 調査地区 .217 .086 * 自宅から海 までの距離 ** ** -.170 .116 -.296 -.080 ** **. 相関係数は 1% 水準で有意 (両側) *. 相関係数は 5% 水準で有意 (両側) これらの相関係数をとったところ、「津波を考えすぐに避難した」には「警報を聞いた」「体 験談を聞いた」「ハザードマップを見た危険度認知」「自宅から海までの距離」「調査地区」な どの変数間と相関関係がみられた。また要因となるべき変数間、たとえば「避難勧告を聞いた」 と「津波警報を聞いた」の間や「体験談を聞いた」と「調査地区」や「津波警報を聞いた」の 間などにも相関関係がみられた。 次に「津波を考え避難した」を従属変数として上記の関係ありそうな諸変数を独立変数とし て重回帰分析を行った。その結果、「警報を聞いた」と「自宅から海までの距離」で有意な関 係性があった。ただこれらの諸変数はカテゴリカルな変数なために単なる重回帰分析には適さ ない。ここで重回帰分析をした理由は、相関係数で各変数間に相関関係が見られたために、そ の後の多変量解析を行うにあたって独立変数間の多重共線性がないかを確認するためである。 表 4.4.2 はその結果を示したものだが、多重共線性を確認するために、”VIF”の値を見ると すべて 1 程度であった。この数値は 5 を超えると多重共線性への注意が必要で 10 を超えると 問題があるとされる数値なので、多重共線性の問題はないと確認することができる。 48 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 4.4.2 重回帰分析の結果と多重共線性の確認 標準化されていない係数 標準化係数 モデル 1 (定数) 警報聞いた B .217 標準誤差 .115 ベータ 共線性の統計量 t 値 1.888 有意確率 .059 許容度 VIF .143 .041 .157 3.483 .001 .735 1.360 -.011 .038 -.012 -.302 .762 .885 1.131 体験談を聞いた .016 .045 .016 .354 .723 .743 1.347 避難勧告聞いた .017 .041 .019 .415 .679 .732 1.366 Mapを見た危険度認知 .058 .036 .065 1.616 .107 .912 1.097 -.019 .018 -.046 -1.019 .309 .746 1.340 性別 .025 .036 .027 .702 .483 .974 1.026 年齢 .015 .012 .049 1.237 .216 .964 1.037 -.072 .018 -.162 -4.042 .000 .926 1.080 ハザードマップを見た 調査地区 自宅から海までの距離 a. 従属変数 津波が来るかもしれないと思いすぐに避難した そして最後にカテゴリカルなデータの関係性をみるものとして、ロジスティック回帰分析を 行った。この分析は、地震後すぐに避難したか-しないかを判別するモデルを、多数のカテゴ リカルなデータを用いて作り、それによって各変数の重要性をみようとするものである。従属 変数は地震後津波を考えすぐに避難したか-しないかの 0-1 である。各独立変数は質的データ の指定をし、最初の数値を基準にしてダミー変数化したうえでロジッティック回帰分析を行っ た。その結果、作られたモデルによる予測の正解率は 70.4%で、「モデル係数のオムニバス検 定」のモデルの有意水準は 0.000 と有効で、さらに「Hosmer と Lemeshow の検定」の有意 水準も 0.806 と 0.05 以上であり、帰無仮説(モデルは適合している)を棄却する水準ではない ために、「モデルが適合していないとはいえない」すなわち「モデルは適合している」という ことが確認された。ロジスティック回帰分析の結果は表 4.4.3 のとおりである。 この表でまず注目すべき項目は「有意確率」である。「警報を聞いたか」(問 7)及び「自宅か ら海までの距離」(F7)及び「調査地域」で 1%以下の高い有意水準が得られた。また「ハザー ドマップ危険度認知(2)」では 28.2%と若干の傾向性が見られた(ロジスティック回帰分析では 有意確率が 20%前後から有意性が期待されると言われている;内田 2011)。「警報を聞いた」で は表中”B”の係数が 0.691 とプラスなので、警報を聞いた人ほど逃げた人が多くなることがわ かる。またオッズ比をみると 1.996 倍になっている。オッズ比とは独立変数が1単位増加す ると従属変数が一方(この場合は 1=避難した)になる確率がどれだけ高くなるかを示すもので ある。ここでは、投入したすべての要因の影響を考慮しても、大津波警報を聞いた人は聞かな い人に比べて約 2 倍の確率で地震直後に逃げているということを意味している。他の変数の 影響を考慮しても大津波警報の認知が津波避難に役立っていることがここではっきりと確認さ れた。 次に自宅の「自宅から海までの距離」(F7)だが、0.002 という有意確率は変数全体として高 い有意水準を示し、係数はマイナスなので距離が離れるほど避難しなくなるというマイナスの 相関関係を示している。表中の「F7(1)」「F7(2)」「F7(3)」は初めの項目である「歩いて 10 分 以内)」を基準にしたときの有意確率およびオッズ比である。すなわち、「 歩いて 20 分以内」 F7(2)は「歩いて 10 分以内」を選択した人に対して 0.859 倍の確率で避難しているが、その 49 有意水準は 0.495 なので有意とはいえない。一方「歩いて 30 分以内」F7(2)を選択した人は、 10 分以内の人に比べて 0.37 倍の確率でしか避難していない。この時の有意水準は1%でこの 数字は十分な確からしさがある。また「歩いて 30 分以上」F7(3)の人は「10 分以内」の人に 比べて 0.29 倍の確率でしか避難していない。この時の有意水準も1%である。ということは、 自宅から海までの距離が 20 分まではそれほど避難率が下がらないが、20 分以上になると、地 震後すぐに避難する確率は、海に近い人の 1/3 程度になってしまうということである。 表 4.4.3 ス テ ッ プ a 1 警報を聞いたかQ7X(1) ハザードマップを見たか Q27X(1) ハザードマップ危険度認 知 ハザードマップ危険度認 知(1) ハザードマップ危険度認 知(2) 体験談を聞いたか Q26X(1) 自宅から海までの距離F7 F7(1) F7(2) F7(3) 性別F1(1) 年齢F2 F2(1) F2(2) F2(3) F2(4) F2(5) 調査地域CHIKU3 CHIKU3(1) CHIKU3(2) CHIKU3(3) 定数 B(係数) .691 -.132 ロジスティック回帰分析の結果 標準誤差 .206 .282 Wald 11.264 .220 自由度 1 1 有意確率 .001 .639 2.533 2 .282 Exp(B)オッ ズ比 1.996 .876 .004 .421 .000 1 .992 1.004 .453 .394 1.325 1 .250 1.574 .054 .252 .046 1 .830 1.056 -.152 -.995 -1.238 .223 .368 .413 14.508 .465 7.308 8.976 3 1 1 1 .002 .495 .007 .003 .859 .370 .290 .101 .194 .515 .499 .462 .463 .463 .370 .485 .262 .277 1 5 1 1 1 1 1 3 1 1 .605 .327 .537 .521 .500 .992 .701 .001 .157 .080 1.106 -.319 -.320 .312 .005 .178 .268 5.790 .382 .411 .455 .000 .148 15.530 2.002 3.058 -.654 -1.334 .332 .667 3.871 4.006 1 1 .049 .045 .520 .263 .727 .726 1.365 1.005 1.195 1.448 1.625 第三に有意なのは「調査地域」である。ここにおけるオッズ比は初めの項目である「陸前高 田」を基準にしている。2項目目は南三陸なので、CHIKU3(1)をみると、南三陸は陸前高田 に比べて 1.448 倍の確率で避難しており、CHIKU3(2)をみると3項目目の仙台・名取は陸前 高田の 1.625 倍で避難しており、CHIKU3(3)を見ると4項目目の山元町は陸前高田の 0.52 倍 しか避難していないことがわかる。しかし南三陸と仙台・名取については有意確率がそれぞれ 15.7%と 8.0%と、確からしさは低くなっている。ここで南三陸が陸前高田より高く、山元が 低いというのは、津波に対する地域の特性として理解できる。たとえば地震後に津波が来ると 50 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 考えた人の割合をみると、南三陸は高く、山元は低くなっている。津波に対する地域的考 え方 の違いが背景にあるようである。しかし陸前高田に比べて仙台・名取の避難率が高い理由はは っきりしない。実数を確認すると地震直後の津波避難率は陸前高田が 29.1%に対して仙台・ 名取は 32.9%になっている。しかし他の変数をみても仙台・名取の避難率が高くなる要素は 見あたらない。唯一言えるのは、陸前高田より仙台・名取は揺れが激しかったらしいことであ る。陸前高田の震度は気象庁では欠測値となっていて不明であるが、隣接する大船渡市や気仙 沼市が「震度 6 弱」であることを考えると、陸前高田も「震度 6 弱」であったと考えられる。 一方、仙台市宮城野区や名取市は「震度 6 強」である。今回の調査では、「今までに経験した ことのない揺れ幅の大きな揺れだった」と回答した率は陸前高田で 58.6%なのに対し仙台・ 名取では 67.1%であった。このあたりが地域別の避難率と関係しているのかもしれない。 第四に有意性があるのはハザードマップを見て危険性を感じたかという項目である。オッズ 比は一項目目の「自宅に津波被害の危険がないことがわかった」が基準で、「危険性がよくわ からない」+「マップを見ていない」を2項目目、そして「危険があることが分かった」を 3 項目目として算出している。「危険がないことが分かった」と「わからなかった」 +「マップ を見ていない」はオッズ比がほぼ 1 なので影響がないことがわかる。それに対して「危険が あることがわかった」人は 1.574 倍となっている。ハザードマップで「危険がない」と認知 することは必ずしも避難にマイナスとはならないが、危険があることがわかれば避難の促進に なることが示唆されている。 他方、興味深いのは、変数として投入したものの、影響が見られなかった諸項目である。年 齢、性別による差がないことはとくに注目に値しないが、「ハザードマップを見たか」や「家 族や地域の人から津波のことを聞いたか」が避難と関係性がみられなかった点は興味深い。す なわちハザードマップは、ただ見ただけでは意味がなく、自宅が危険であるということが認知 されなくては意味がないということである。また津波について家族や地域の人の話を聞くこと は、津波教育として重要であるが、今回の分析では避難の促進要因とはなっていなかったので ある。 (中村 功) 資料 内田治『SPSS によるロジスティック回帰分析』2011 オーム社 51 52 第5章 津波避難の実態と被害 第5章 津波避難の実態と被害 5.1 津波による被害の実態 この5章では、実際の津波避難がどのように行われたか、回答者の住民の避難行動の実態に ついて考察したい。そのために、この 1 節ではまず回答者の住民が津波によってどのような 被害を受けたか、被害実態から概観することとする。 回答者自身の津波体験について示したのが図 5.1.1 である。全体を見ると、実際に「津波に 巻き込まれた」回答者は 10.0%、「津波に巻き込まれる寸前だった」回答者が 25.1%、「安全 な場所から津波を見た」回答者が最も多く 44.7%、「津波は見ていない」回答者が 20.2%であ った。当然、津波の被害から生存した住民に対してアンケート調査を行っているため、地震発 生後、津波から避難をした結果、安全な場所から津波を見たり、津波から巻き込まれる寸前に 助かったり、津波そのものを見ていない回答者が 90.0%と回答者のほとんどを占めている。 当然ながら、このアンケート調査は、地震発生後に津波から避難をして助かった住民の意識や 行動を明らかにするためのものであり、そのことを前提として調査結果を解釈する必要がある。 54 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 図 5.1.1 自分自身の津波体験(N=642) 地域差も見られるが、津波により街全体が壊滅的被害を受けた陸前高田市や南三陸町の住民 の調査回答者は、素早い行動で避難できた住民であり、その結果、「安全な場所から津波を見 た」(陸前高田市:61.1%、南三陸町:53.7% )という回答が多く、「津波に巻き込まれた」 (陸前高田市:5.1%、南三陸町:3.7%)という回答は低いことがわかる。反対に、仙台市・ 名取市や山元町では、「津波に巻き込まれた」(仙台市・名取市: 12.9%、山元町:18.5%)、 「津波を見ていない」(仙台市・名取市:27.1%、山元町:25.8%)という回答がと相対的に 高い傾向を示していることがわかる。 図 5.1.2 地震と津波による自宅の被害(N=642) 55 続いて、地震と津波による自宅の被害についてたずねたところ、図 5.1.2 のような結果が得 られた。このグラフをみてわかるように、全体で見ると「津波によって全壊・全焼した」とい う回答が 96.1%、「津波によって半壊・一部損壊した」という回答が 3.0%、「地震の揺れによ って全・半壊した」という回答が 0.8%であった。地域差はほとんどなく、このアンケート調 査の対象者の住民の 96%が津波によって自宅が全壊・全焼した住民であることがわかる。 このような形で津波を経験し、自宅の被害を受けた住民が実際にどのような津波の避難行動 をとったか、次の節で考察する。 (福田 充) 5.2 住民の津波避難行動 地震の発生後、津波から生存した住民がどのような避難行動をとっていたか、その実態をこ の節で明らかにしたい。地震の発生から、津波が陸地に到達するまでの間の時間は、その地震 の規模や、震源地から陸地までの距離によって異なる。つまり、情報の限られた被災者にとっ て客観的な津波到達時刻を正確に予測ことは極めて困難である。そのいつ到達するかわからな い津波が、陸地に到達するまでの間に避難を完了しなければ、津波から生き残ることはできな い。津波から生き残るためには、いかに素早く避難を開始し、安全な避難場所に避難できるか が重要な鍵となるのである。ここで、住民の①避難開始時間、②避難方法、③避難場所の3点 について順番に考察したい。 そこで、地震発生後に住民が津波の避難を始めた時間を示したのが図 5.2.1 である。このグ ラフを見ると、生き残った住民が成功した避難行動の実態がわかる。全体的に見ると、 7.4% の回答者が「揺れている間」に避難を開始し、31.1%の回答者が「揺れが収まった直後」に避 難を開始していることがわかる。このように、揺れている間や、揺れが収まった直後に避難を 開始した住民の割合は、陸前高田市(間:10.1%、直後:36.2%)や南三陸町(間:12.9、直 後:37.4%)で高く、仙台市・名取市(間:2.6%、直後:26.1%)や山元町(間:2.8%、直 後:22.2%)と低いことがわかる。これも地震と津波に対する意識の差が現れた結果である。 男女差や年齢差はあまり見られなかったが、30 代だけ避難開始時間が早い傾向が見られた。 全体的に見ると、23.2%の回答者が「揺れが収まってから 10 分くらいまでの間」に避難を 開始し、16.7%が「揺れが収まってから 20 分くらいまでの間」に避難を開始、12.9%が「揺 れが収まってから 30 分くらいまでの間」に避難を開始し、「揺れが収まってから 30 分以上後」 に避難を開始した回答者は 6.8%であった。グラフからわかるように、全体的に陸前高田市や 56 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 南三陸町の回答者ほど早い段階で避難を開始している傾向があり、仙台市・名取市や山元町の 住民ほど避難の開始時間が遅い傾向にあることがわかる。 図 5.2.1 地震発生後の避難開始までの時間(N=642) また、避難の際に非常に重要なのが避難の手段である。どのような手段を用いて避難したか、 用いたものを複数回答で全て示したのが図 5.2.2 で、最初に用いた避難の手段を1つだけ示し たのが図 5.2.3 である。図 5.2.2 をみると、地域差が非常に大きいことがわかる。全体では 「 歩 い て 避 難 し た 」 回 答 者 の 割 合 は 33.0% で あ る が 、 陸 前 高 田 市 で 47.7% 、 南 三 陸 町 で 42.9%と高い割合を示している反面、仙台市・名取市で 25.5%、山元町では 10.2%と非常に 低い傾向が明らかになった。 図 5.2.2 避難で用いた手段(N=642) 複数回答 57 図 5.2.3 最初の避難方法(N=642) その反面、「車で避難した」住民の割合も地域差が大きく、全体で 67.5%の回答者が車で避 難しているが、陸前高田市では 53.7%、南三陸町では 55.1%であったものの、仙台市・名取 市では 76.5%、山元町では 90.7%の回答者が車で避難しているという実態が明らかとなった。 「走って避難した」回答者は全体で 10.2%、「その他」が 4.7%であった。東日本大震災では、 車で避難中に道路で渋滞が発生し、車ごと津波に流される事例も発生し、車による津波避難の 是非が議論されているが、この調査結果を見る限り、東日本大震災において生存した住民の中 には車で避難した人が 67.5%と非常に多いことが明らかになった。 図 5.2.3 の最初の避難手段をみても、全体で 63.2%の回答者が車で避難を開始しており、 27.8%の回答者が歩いて避難を開始している。その地域差の傾向も図 5.2.2 と同様の傾向を示 している。この避難の方法についても、男女差や年齢差はほとんど見られなかった。ほとんど の層で同じ傾向が見られた。 次に重要なのが津波の避難場所である。今回の東日本大震災では、自治体によって指定され た避難場所自体が津波で流され多くの命が失われた事例が発生した。地震発生後、津波から逃 れるためにどこに避難したかが非常に重要な鍵となったのである。地震発生後、津波からの避 難先の場所について示したのが図 5.2.4 である。このグラフを見ると、全体では「指定された 避難場所」に避難した回答者が 41.8%、「指定されていた避難場所ではない、近くの高い建物」 に避難した回答者が 8.4%、「指定されていた避難場所ではない、近くの高台や山などの高い 場所」に避難した回答者が 27.1%、「安全そうな場所にある近くの知人、親戚などの家」に避 難した回答者が 11.3%であった。この結果を見ると、指定された避難場所に避難した回答者 は 41.8%、指定されていないそれ以外の場所に避難した回答者が 58.2%いることが明らかに なった。この傾向は地域差が非常に大きく、陸前高田市では、「指定されていた避難場所では ない、近くの高台や山などの高い場所」に避難した回答者が 48.3%と最も高くなっている。 これは、陸前高田市の低地市街地はほぼ全域が津波で流され、市が指定した避難場所も安全で はなく、それ以外の高台や山の高い場所に避難できた住民だけが生き残ったという結果を示し たものであると考えられる。 58 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 図 5.2.4 避難先の場所(N=642) これまで、住民の①避難開始時間、②避難方法、③避難場所について考察してきたが、これ らの避難行動の結果、津波がどのタイミングで来襲したかを示したのが図 5.2.5 である。全体 で見ると、最も多かったのが「避難をしてある程度時間がたってから、津波が来襲した」とい う回答が 35.9%、次に多いのが「避難をしてから数分もしないうちに、津波が来襲した」の 25.8%で、「避難の途中に、津波が来襲した」という回答も 19.7%、「避難をせず自宅にいた ところに津波が来襲した」住民も 11.1%いたことがわかる。地域差を見ると、南三陸町だけ 「避難をしてある程度時間がたってから、津波が来襲した」という回答が 51.8%と突出して おり、素早い避難行動により、避難に時間的余裕があったということがわかる。また反対に、 「避難をせず自宅にいたところに津波が来襲した」という割合が多かったのが、山元町の 25.9%、仙台市・名取市の 14.5%である。ここは津波避難の意識が低く、津波の避難をせず に津波に巻き込まれた住民が多いことがわかる。 59 図 5.2.5 自分自身に津波が来襲したタイミング(N=642) (福田 充) 5.3 津波避難行動の問題点 東日本大震災における津波の避難行動で具体的にどのような問題が発生したか、被災者の声 を聞き取り、今後の津波対策に活かすことは極めて重要である。そこで、津波の避難行動でど のような問題が発生したかをたずねた結果を示したのが図 5.3.1 である。 このグラフをみると、最も多かった回答は「特にない」の 55.3%であった。つまり、素早 く避難を行い、無事に避難場所に到達できた住民には避難時に問題は特に発生していないこと がわかる。では、それ以外に具体的にどのような問題が発生しているだろうか。全体で見ると 最も多かったのは、「避難する道路が車や人で混雑していて早く移動できなかった」という回 答 の 18.1% で あ る 。 こ れ は 車 に よ る 避 難 の 多 か っ た 仙 台 市 ・ 名 取 市 で 26.8% 、 山 元 町 で 23.1%と高い傾向を示している。やはり、車避難をした多くの住民が道路の混雑を経験して、 60 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 避難に時間がかかったという実態が明らかになった。この車による避難の問題は検討が必要で ある。次に多かったのが「最初に避難した場所が津波で危険だったので、さらに安全な避難場 所に避難した」という回答の 10.2%である。今回の東日本大震災では、地震や津波による1 次避難だけで安全が確保できず、次々と避難先を移動する2次避難、3次避難の問題が発生し た。このように、避難先を次々と移動することなく、初期の段階で安全な場所に避難ができる 体制、避難場所の指定を今後の地域防災計画で検討する必要がある。他には、「地震で家屋や 土砂が崩れて避難路がふさがれていて通れなかった」という回答が 6.1%、「避難するときに、 家族や近所の人を待ったために避難が遅れた」という回答は 2.0%、「避難所が遠かったので、 たどりつけなかった」という回答は 1.4%と、津波の避難で非常に重要な問題であるこの3つ の項目については、比較的低い値であった。これらの問題を経験しなかった人が避難に成功し、 津波の被害から免れたと考えることもできる。つまり、これらの項目の数値が低いからといっ て、津波の避難行動において重要な問題でないというわけではないことを考慮しなくてはなら ない。自宅から避難所までの距離、避難路の安全は極めて重要であり、各個人が別々に避難行 動をする「津波てんでんこ」の教えは非常に重要である。 図 5.3.1 津波避難時の問題点(N=642) 複数回答 (福田 充) 61 62 第6章 津波の教訓 第6章 津波の教訓 6.1 津波の知識 この震災を経験しての津波に関する知識や評価について尋ねた(表 6.1.1 複数回答)。 全体の結果を見ると、「津波が、このように高いものとは思っていなかった」(78.0%)、「津波 が、このように強い力があるとは思わなかった」(77.1%)「津波が、このように速いものとは思 っていなかった」(66.5%)の順で回答が多かった。これらの結果は、地域別の回答をみると数 値の差はあるものの傾向は大きく変わっておらず、津波の「高さ」「強さ」「速さ」についての回 答は、どの地域でも顕著であったことがわかる。 東北地方の太平洋沿岸は、日本でも津波警報・注意報の発表回数が多い地域である。この震災 の 1 年前(2010 年 2 月)の「チリ中部沿岸の地震」でも大津波警報・津波警報が発表されてい たが、人的被害はなかった。また、震災の 2 日前(3 月 9 日)の三陸沖の地震(M=7.3)でも 津波注意報が発表されていた。このようなことから、この震災の被災地域において、津波警報に 対するある種の「警報慣れ(『オオカミ少年効果』)」が生じていたのではないかという疑問があ った。この点に関する設問(「近年、津波〔大津波〕警報が発表されても、大きな被害になった ことがないので、今回もたいした被害になるとは思わなかった」)の回答を見ると、全体では 39.6%、仙台・名取では 48.8%、南三陸で 42.1%を占めていた。つまり、津波警報に関する 「警報慣れ」が、被災地域である程度生じていたということである。 また、津波の被害が生じても、自分の住んでいる場所はたいした被害にならないという意識を 持っている人も少なくなかった。「大きな被害になるかもしれないが、正直に言って、自分自身 64 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 や自分の住んでいた場所は大丈夫だろう、たいしたことはないだろうと思っていた」という設問 の回答を見ると、全体で 42.1%、仙台・名取で 46.5%、陸前高田で 43.9%を占めていた。この 数値をそのまま、以前から指摘されている「正常化の偏見」の傾向と言い切ることはできない。 近年、「正常化の偏見」は、単に「まさか自分が被害に遭うとは思わなかった」「どうせたいした ことはないだろう」などの意味として扱われることが少なくないが、これは正確な捉え方ではな い。「正常化の偏見」とは、もともとは、警報や避難を呼びかける情報が伝えられる中で、避難 が必要な場所にいる人が、それらの情報を聞いても「自分は大丈夫」「たいしたことはない」と 楽観視したり危険や異常を認めない信念のことである。この設問を選択した全体の 42.1%の回 答者の中には、「正常化の偏見」に該当する人もいるだろう。しかし、この震災の津波被災地は、 これまで津波が来襲すると考えられていなかった場所や、津波が来襲するとしてもここまでの被 害が生じるとは考えられていなかった場所もある。そのような場所にいた人々にとっては、津波 警報が発表されても、津波による被害が生じる場所ではないという認識が強かったようだ。つま り、「正常化の偏見」ではなく「対象外」と考えていた人も多かったということである。 表 6.1.1 震災体験を踏まえての津波に関する意識・評価(%) N=642(陸前高田:157 南三陸:164 仙台・名取:170 全体 M.A. 山元:151) 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 1. 津波が、このように高いものとは思っていなかった 78.0 79.6 83.5 77.6 70.9 2. 津波が、このように速いものとは思っていなかった 66.5 70.1 64.6 64.1 67.5 3. 津波が、このように強い力があるとは思わなかった 77.1 76.4 74.4 80.0 77.5 4. 津波と台風などの高波との違いがわかっていなかった 15.0 7.6 14.0 20.6 17.2 5. 更新される津波警報の波の高さの内容がわかりにくい 17.4 13.4 28.7 17.6 9.3 6. 津波の到達予想時間があると、かえって的確な避難の判断ができない と思う 14.5 14.0 19.5 13.5 10.6 7. 津波の「浸水」という言葉は、建物が壊れたり流されたりするイメージが わきにくい 22.1 13.4 26.8 28.8 18.5 8. 近年、津波(大津波)警報が発表されても、大きな被害になったことがな いので、今回もたいした被害になるとは思わなかった 39.6 36.3 42.1 48.8 29.8 9. 大きな被害になるかもしれないが、正直に言って、自分自身や自分の 住んでいた場所は大丈夫だろう、たいしたことはないだろうと思っていた 42.1 43.9 41.5 46.5 35.8 10. この地域では、津波被害は起こらないと考えていた 26.3 14.6 15.9 33.5 41.7 0.6 0.6 1.2 11. その他(わからない・選択肢外など) - 0.7 さらに、地域によっては、ある種の津波に関する「安全神話」が存在したことも伺える。「こ の地域では、津波被害は起こらないと考えていた」という設問について回答した人は、全体の 26.3%であるが、この回答については三陸地域と宮城県の平野部とでは大きな差が見られ、三陸 地域の陸前高田が 14.6%、南三陸が 15.9%に対し、宮城県の平野部の仙台・名取は 33.5%、山 元は 41.7%だった。1983 年に津波により甚大な被害が生じた「日本海中部地震」における調査 でも、被害の大きかった秋田県の住民の中に「津波はない」「東北地方で津波が来襲するのは太 65 平洋側で、日本海側には来ない」といった誤った認識があった。秋田県にしばらく津波被害がな かったことから秋田県の住民が共通して「津波には安全」という、ある種の「安全神話」(災害 文化の非適応的機能)が生じていたことが指摘されたが、この震災でも、宮城県の平野部にある 仙台、名取、山元の市町で「被害が生じるような津波はない」という「安全神話」が生じていた のではないかと考えられる。 その他にも、「津波と台風などの高波との違いがわかっていなかった」という人が全体で 15.0%だったことや、「津波の『浸水』という言葉は、建物が壊れたり流されたりするイメージ がわきにくい」が 22.1%、「更新される津波警報の波の高さの内容がわかりにくい」が 17.4%、 「津波の到達予想時間があると、かえって的確な避難の判断ができないと思う」が 14.5%など と、津波の知識が不十分であったり、津波対策ならびに津波警報の文言・表現などのわかりにく さを問題視する人も少なくなかった。 (中森 広道) 6.2 住民の得た教訓 東日本大震災において発生した津波を経験して、住民はどのような教訓を得たのだろうか。特 に津波の避難に関する教訓についてまとめたのが、図 6.2.1 である。 まず全体の傾向を見ると、最も多かったのは「これからは大きな地震が発生したらすぐに避難し ようと思う」という回答の 83.0%であった。これはどの地域でも同じく最も高い結果を示した 項目であった。 次に多かったのが「津波警報が発表されたらすぐに避難しようと思う」という回答の 45.8% で、約半数の住民がそう回答している。これは陸前高田市の回答だけが 25.5%と低い傾向があ ったが、これは津波警報の発表に頼らず、地震が発生したらすぐに津波の避難をすべきだという 前向きな態度として解釈することもできる。続いて多かったのは「津波に安全な場所や方向を知 っておくべきだ」という回答の 42.1%、「一度避難をはじめたら、何があっても家には戻らない」 という回答の 34.0%である。この2つの項目は、南三陸町の住民の中で最も高い傾向があった。 また、「津波警報で予想された高さがそれほど高くなくても避難しようと思う」という回答は 32.9%で、これも南三陸町で 50.6%と最も高い値を示した。さらに「離れている家族などが心 配でも会いに行ったり迎えに行ったりせず、それぞれが避難するべきだ」という回答は 26.5% で、ここでも南三陸町で 45.7%と最も高い数値を示している。これは、東北地方に伝わる「津 波てんでんこ」の教えが、この東日本大震災でも再認識されたことの結果であろう。このように、 津波警報が発表されたら、予想された津波の高さがそれほど高くなくてもすぐに避難を開始し、 66 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 離れている家族が心配でも各自が個別に避難し、何があっても家に戻らない、ということが多く の住民にとって得られた教訓であったことがわかる。 また、住民自身がこうした大津波による被害を想定していなかったことの表れとして、「津波 により、地域が孤立したり、長い間避難所にいなければならなくなるとは思わなかった」という 回答は 26.9%に上り、これも南三陸町で高く(34.8%)、陸前高田市で低い(17.2%)傾向が見 られた。さらに「国や自治体の想定や防災マップ(ハザードマップ)などはあてにしない」とい う回答も 11.7%あった。こうした反省をもとに、25.5%の住民が「津波に対する避難訓練をも っと行うべきだ」回答し、11.7%の住民が「津波についてもっと学習したいと思う」と回答して いる。この2つの項目については、仙台市・名取市の住民で高い値を示した。 津波からの避難方法については、「車で避難しようと思う」という回答が 16.0%、「自転車や オートバイで避難しようと思う」という回答が 2.5%と低く、実際に津波を経験して、乗り物に よる避難については住民が慎重になっている傾向が明らかになったといえる。 こうした津波に関する実体験者の教訓は重く、これらの教訓は今後の津波防災対策のために幅 広く活かされなくてはならない。 図 6.2.1 津波避難に関する教訓(N=642) 複数回答 (福田 充) 67 6.3 行政への要望 この震災における津波被害を経験した住民は、津波からの避難対策として、行政にどのような ことを望んでいるのだろうか。 表 6.3.1 は、行政に望む津波対策について尋ねた回答である(M.A.)。回答者数の多い順に見 る と ( 全 体 )、「 避 難所に あ ら か じ め 、 食 料 ・衣 料 ・ 薬 な ど の 物 資 を備 え て お い て ほ し い 」 (62.0%)、「近くに避難できる場所を設けてほしい」(44.9%)、「避難所で情報を得るため の備えをしてほしい」(39.1%)、「渋滞が起こらないように道路の幅を広くしてほしい」 (33.6%)、 「避難所に駐車スペースを広く設けてほしい」 (16.8%)という結果であった。 この震災では、災害発生後から長い時間にわたり避難した場所が孤立するなどして救援物資が 届かないケースも多数あった。「避難所の物資の備蓄」を求める回答が最も多かった理由は、こ のような経験が背景にあるだろう。 また、三陸においては、この震災の津波がこれまで想定されていた津波浸水地域よりも広い範 囲に来襲した地域も多く、その被害も予想を超えるものになった。一方、宮城県の平野部では、 近くに津波に対して安全な高台や建物が少なかったことから、かなり遠くまで避難をせざるを得 なかった。そのようなことにより「近くに避難できる場所を設けてほしい」と回答する人が多く なったと考えられる。 その他については、高台に避難所を設ける要望、高台移転に関する要望、寒さ対策に関する要 望、情報・通信に関する要望、ペットの避難に関する要望など、幅広く様々な回答があった。 表 6.3.1 津波対策・避難に関する要望(%)〔M.A.〕 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 (642) (157) (164) (170) (151) 62.0 50.3 72.0 68.2 56.3 2. 渋滞が起こらないように道路の幅を広くしてほしい 33.6 36.9 32.3 36.5 28.5 3. 近くに避難できる場所を設けてほしい 44.9 41.4 50.6 54.1 31.8 4. 避難所で情報を得るための備えをしてほしい 39.1 33.1 51.8 40.0 30.5 5. 避難所に駐車スペースを広く設けてほしい 16.8 17.8 22.6 11.2 15.9 6. その他 19.0 22.9 15.2 11.8 27.2 1. 避難所にあらかじめ、食料・衣料・薬などの物資を 備えておいてほしい (中森 68 広道) 第7章 情報ニーズとメディアへの評価 第7章 情報ニーズとメディアへの評価 7.1 情報ニーズ 震災発生から数日間と一か月後の情報ニーズについて 19 の選択肢を設けて尋ねた(複数回 答)。表 7.1.1 は、その結果である。 表 7.1.1 震災発生から数日間と一か月後の情報ニーズ(%) 1. 今回の地震についての震源地、規模について 2. 今後の余震の可能性や、規模の見通しについて 3. 津波の状況や今後の津波の可能性について 4. 地震や津波の被害状況について 5. 家族や知人の安否について 6. 水道・ ガス・電気・電話の復旧の見通しについて 7. 交通機関・道路について 8. 自家用車について 9. ガソリン・灯油について 10. 水・食料や生活物資について 11. 病院、医療、衛生について 12. トイレ・風呂について 13. 避難生活について 14. 原子力発電所の状況について 15. 仕事・学校・求人について 16. 仮設住宅について 17. 国や自治体の対応について 18. その他 19. 特にない 70 南三陸 (164) 仙台 ・名取 M.A. 全体 (642) 陸前高田 (157) (170) 山元 (151) 数日間 一か月後 数日間 一か月後 数日間 一か月後 数日間 一か月後 数日間 一か月後 19.0 21.2 25.1 34.3 69.5 29.1 14.0 7.6 28.2 36.8 18.5 20.2 18.5 8.3 7.8 9.0 14.5 6.5 5.5 10.1 24.3 20.2 22.6 30.7 35.7 18.8 8.1 30.1 41.1 25.9 22.9 35.7 11.4 15.7 38.6 28.8 5.6 5.3 11.5 13.4 18.5 28.0 71.3 21.7 10.2 5.7 19.1 25.5 13.4 14.0 17.2 3.8 4.5 7.6 12.7 7.6 7.0 5.7 17.8 16.6 16.6 28.0 36.9 9.6 6.4 19.1 36.9 22.9 18.5 41.4 7.0 14.0 42.0 28.0 5.1 5.7 29.3 29.9 32.3 40.9 74.4 38.4 25.6 14.6 32.9 52.4 28.7 31.7 24.4 14.0 14.0 14.0 20.1 2.4 3.7 16.5 27.4 25.0 25.0 31.1 44.5 29.3 13.4 36.0 53.0 34.8 32.9 35.4 11.0 23.2 41.5 25.6 2.4 6.7 22.9 30.6 35.9 43.5 70.6 27.1 13.5 8.2 31.8 40.6 20.6 21.8 18.2 8.8 8.8 9.4 13.5 5.9 4.7 12.9 35.3 25.3 27.6 34.1 30.6 20.0 5.9 38.2 38.8 24.7 20.0 26.5 17.1 12.4 32.4 34.1 5.3 5.3 11.3 9.3 11.9 23.2 60.9 29.1 6.0 1.3 28.5 27.2 10.6 12.6 13.9 6.0 3.3 4.6 11.3 10.6 6.6 4.6 15.2 13.2 20.5 29.1 30.5 15.9 6.6 25.8 35.1 20.5 19.9 40.4 9.9 13.2 39.1 27.2 9.9 3.3 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 震災発生から数日間の情報ニーズを見ると、全体で最も回答が多かったものが「家族や知人 の安否について」(69.5%)で、これまでの規模の大きな災害と同様、安否情報のニーズが非 常に大きかったことがわかる。次いで「水・食料や生活物資について」(36.8%)、以下「地震 や津波の被害状況について」(34.3%)、「水道・ ガス・電気・電話の復旧の見通し」(29.1%) について「ガソリン・灯油について」(28.2%)、「津波の状況や今後の津波の可能性について」 (25.1%)の順であった。「今後の余震の可能性や、規模の見通しについて」(21.2%)、「トイ レ・風呂について」(20.2%)の順であった。 表 7.1.2 は、震災発生から数日間の情報ニーズの上位5番目までを地域別に見たものである。 どの地域も「家族や知人の安否について」を回答した人が一番多く、また、順位に違いはある ものの、どの地域も、情報ニーズの高さは、ほぼ同じような傾向にある。ただし、仙台・名取 では、他の地域では上位5番目までに入らなかった「津波の状況や今後の津波の可能性につい て」が 35.9%で4番目に入っているのが特徴である。 表 7.1.2 地域別に見た震災発生から数日間の情報ニーズ(上位5番目まで)〔%〕 全体 N=642 1 陸前高田 N=157 南三陸 N=164 家族や知人の安否について (69.5) 家族や知人の安否について (71.3) 水・食料や生活物資について 地震や津波の被害状況について 水・食料や生活物資について (28.0) (52.4) 2 (36.8) 家族や知人の安否について (74.4) 家族や知人の安否について (70.6) 山元 N=151 家族や知人の安否について (60.9) 地震や津波の被害状況について 水道・ ガス・電気・電話の復旧の (43.5) 見通しについて(29.1) 3 地震や津波の被害状況について 水・食料や生活物資について (34.3) (25.0) 4 水道・ ガス・電気・電話の復旧の 水道・ ガス・電気・電話の復旧の 水道・ ガス・電気・電話の復旧の 津波の状況や今後の津波の可能 水・食料や生活物資について 見通しについて(29.1) 見通しについて(21.7) 見通しについて(38.4) 性について(35.9) (27.2) 5 ガソリン・灯油について(28.2) ガソリン・灯油について(19.1) 地震や津波の被害状況につい て(40.9) 仙台 ・名取 N=170 M.A. ガソリン・灯油について(32.9) 水・食料や生活物資について (40.6) ガソリン・灯油について(31.8) ガソリン・灯油について(28.5) 地震や津波の被害状況につい て(23.2) 次に、震災発生後1ヶ月の情報ニーズについて見ると、全体で最も多かったものが「水・食 料や生活物資について」(41.1%)であった。以下、「仮設住宅について」(38.6%)、「水道・ ガス・電気・電話の復旧の見通しについて」(35.7%)、「避難生活について」(35.7%)、「家族 や 知 人 の 安 否 に つ い て 」( 30.7% )、「 国 や 自 治 体 の 対 応 に つ い て 」( 28.8% ) の 順 で あ っ た (「水道・ ガス・電気・電話の復旧の見通しについて」と「避難生活について」は同率)。「避 難生活について」と「仮設住宅について」の回答者が大きく増えている。生活に関する情報ニ ーズが多いという傾向は、震災発生から数日間の段階でも見られたが、震災発生から1ヶ月経 過して、その傾向がより強くなったと言えよう。また、「家族や知人の安否について」が、震 災発生から1か月経っても回答者が3割を超えて上位5番目にあることは、この震災の人的被 害の大きさを表している。 表 7.1.3 は、震災発生から1ヶ月後の情報ニーズの上位5番目までを地域別に見たものであ る。ここでも地域によって順位に違いが見られるが、仙台・名取では「今後の余震の可能性や、 規模の見通しについて」が、他の地域に比べて回答者が多く(35.3%)、上位3番目にある。 71 表 7.1.3 地域別に見た震災発生から1か月後の情報ニーズ(上位5番目まで)〔%〕 全体 N=642 1 陸前高田 N=157 水・食料や生活物資について (41.1) 2 仮設住宅について(38.6) ※水道・ ガス・電気・電話の復旧 3 の見通しについて(35.7) ※避難生活について(35.7) 南三陸 N=164 仮設住宅について(42.0) 水・食料や生活物資について (53.0) 避難生活について(41.4) 水道・ ガス・電気・電話の復旧の 見通しについて(44.5) ※水道・ ガス・電気・電話の復旧 の見通しについて(36.9) 仮設住宅について(41.5) ※水・食料や生活物資について (36.9) 4 ガソリン・灯油について(36.0) ◎家族や知人の安否について (28.0) ◎国や自治体の対応について (28.0) 家族や知人の安否について 5 (30.7) 仙台 ・名取 N=170 M.A. 山元 N=151 水・食料や生活物資について (38.8) 避難生活について(40.4) ガソリン・灯油について(38.2) 仮設住宅について(39.1) 今後の余震の可能性や、規模の 水・食料や生活物資について 見通しについて(35.3) (35.1) △家族や知人の安否について (34.1) △国や自治体の対応について (34.1) 避難生活について(35.4) 水道・ ガス・電気・電話の復旧の 見通しについて(30.5) 家族や知人の安否について (29.1) ※同率3位 △同率4位 ◎同率5位 (中森 広道) 7.2 役に立ったメディア 被災地の人々は、必要な情報をどのような手段で得ようとしたのだろうか。そして、どのよ うな手段が役になったのであろうか。 人 々 が 情 報 を 得 る た め に 役 に 立 っ た 手 段 に つ い て 尋 ね た 結 果 が 、 図 7.2.1( 全 体 ) と 表 7.2.1(地域別)である。 図 7.2.1 72 情報を得るために役に立った手段〔全体〕〔%〕M.A. N=642 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 7.2.1 情報を得るために役に立った手段(地域別)〔%〕M.A. 1. テレビ 2. ワンセグテレビ・携帯電話のワンセグ放送 3. ラジオ(NHK ・TBC ・IBC ・FM仙台・FM岩手) 4. コミュニティFM・災害FM 5. 新聞 6. 携帯電話の通話 7. 携帯メール 8. 市や町の防災(同報)無線 9. 携帯・パソコンのウェブページ 10. パソコンのメール 11. SNS(ミクシーやツイッター) 12. 口コミ 13. 役場、警察、消防署などからの情報 14. 避難所にある掲示やチラシ 15. その他 16. 特にない 全体 (642) 陸前高田 (157) 数日間 一か月後 数日間 一か月後 9.3 6.2 54.7 1.4 15.4 5.3 4.0 1.7 1.2 0.5 22.4 12.5 14.3 2.6 13.7 59.5 3.7 42.7 3.7 51.4 15.1 7.8 0.8 5.9 0.8 1.6 19.5 15.9 23.4 1.9 4.7 6.4 5.7 54.1 10.8 1.3 0.6 0.6 28.0 10.8 13.4 4.5 18.5 63.7 4.5 36.9 2.5 52.2 12.1 4.5 5.1 0.6 1.9 19.7 14.6 24.8 1.9 5.7 南三陸 地域名右の( )は回答者数 (164) 仙台 ・名取 (170) 山元 (151) 数日間 一か月後 数日間 一か月後 数日間 一か月後 4.9 3.7 51.8 9.8 2.4 3.0 4.3 0.6 22.0 12.8 18.3 2.4 14.6 45.1 2.4 47.0 0.6 42.7 20.7 11.0 1.2 4.9 1.2 0.6 19.5 18.9 28.0 0.6 5.5 18.8 10.0 62.4 27.1 10.6 8.8 1.2 2.4 0.6 14.7 8.8 10.0 1.8 10.0 71.8 5.9 42.9 1.8 53.5 14.7 8.8 1.8 7.6 1.2 1.2 17.1 14.1 15.3 0.6 4.7 6.6 5.3 49.7 6.0 13.2 6.6 3.3 1.3 2.0 0.7 25.8 17.9 15.9 2.0 11.9 57.0 2.0 43.7 10.6 57.6 12.6 6.6 6.0 2.6 21.9 15.9 25.8 4.6 2.6 まず、震災発生から数日間についての回答を見ると、 全体で最も多かったものが「ラジオ」の 54.7%だった。次いで「口コミ」の 22.4%、以下、「新聞」の 15.4%、「避難所にある掲示や チラシ」の 14.3%、「特にない」の 13.7%、「役場、警察、消防署などからの情報」の 12.5% の順であった。大規模な災害の場合は、これまでの調査においても停電時でも活用できる「ラ ジオ」が有効な手段として挙げる人が多いが、このたびの震災の調査では、この傾向が極めて 顕著である。 また、「口コミ」、「避難所にある掲示やチラシ」、「特にない」、「役場、警察、消防署などか らの情報」などが、マス・メディアよりも評価が高いという結果も、これまでの災害時におい ても同じような傾向が見られる。マス・メディアからの情報は、当然のことではあるが報道機 関が得ていない情報は伝えられない。報道機関にも人員、機材、手段などに限りがある。その 限られた人員、機材、手段によって得ることのできることにもまた限りがある。特に災害発生 直後は、広い場所で生じている様々な問題を全て把握することは容易ではない。まして、この 震災のように、被災範囲が非常に広い上に津波による甚大な被害を受けた地域との連絡手段や 交通が断たれている状況では、情報収集が非常に困難である。そのため、マス・メディアから は、それぞれの地域の細かい状況に関する情報が報じられるのが難しいため、「口コミ」や 「チラシ」など、それぞれの地域の住民間のやりとりやその地域独自の情報発信によるものに、 ある程度の評価が認められるのである。 なお、「新聞」が役に立ったという評価が全体の第 3 位にあるが(表 7.2.2)、地域別にみ ると、仙台・名取では 27.1%を占め、ラジオに次いで第 2 位である。これは、仙台市や名取 市は、新聞社の本社からの距離が近く、紙面の運送も他の地域よりも比較 的容易であったこと が関係していると考えられる。 73 表 7.2.2 震災から数日間の情報を得るために役に立った手段の上位5番目までの比較 全体 N=642 1 南三陸 N=164 仙台 ・名取 N=170 ( )内は% 山元 N=151 ラジオ(54.1) ラジオ(51.8) ラジオ(62.4) ラジオ(49.7) 2 口コミ(22.4) 口コミ(28.0) 口コミ(22.0) 新聞(27.1) 口コミ(25.8) 3 新聞(15.4) 特にない(18.5) 避難所にある掲示やチラシ (18.3) テレビ(18.8) 4 ラジオ(54.7) 陸前高田 N=157 M.A. 避難所にある掲示やチラシ (14.3) 5 特にない(13.7) 避難所にある掲示やチラシ 特にない(14.6) 口コミ(14.7) (13.4) ※新聞(10.8) 役場、警察、消防署などから ※役場、警察、消防署などか 携帯電話の通話(10.6) の情報(12.8) らの情報(10.8) 役場、警察、消防署などから の情報(17.9) 避難所にある掲示やチラシ (15.9) 新聞(13.2) ※ 同率5位 次に、震災発生から 1 ヶ月後の評価である。全体の結果を見ると、「テレビ」(59.5%)、「新 聞」(51.4%)、「ラジオ」(42.7%)、「避難所にある掲示やチラシ」(23.4%)、「口コミ」 (19.5%)の順である。これも、これまでの災害と似た傾向にあると言えるだろう。表 7.2.3. は、地域ごとの回答を多い順(5 番目まで)に比較したものである。震災から数日間に比べて 「テレビ」を回答した人が増えた最も大きな理由は、当然のことながら電気の復旧とテレビ受 像機の確保・設置にあるだろう。次に、「新聞」がテレビに次いで評価が高い理由は、テレ ビ・ラジオなどの放送による情報は一過性のものであり、視聴・聴取の偶然性に左右されるも のであることが大きいだろう。つまり、放送は、見逃したり聞き逃したりすると情報を得られ なかったり確認ができないということである。それに対して新聞は、文書であるため、それぞ れの都合や状況にあわせて、いつでも読むことができる上に、各自のペースで読むことができ るので確認も容易である。また、持ち運びや保存も簡単にできるため、被災地域では非常に有 効なメディアとして常に評価されている。 そして、「ラジオ」が役に立つと回答した人も、震災から数日間における結果に比べて数が 少なくはなっているものの多くの人が評価している。被災地域においても、住民は終日テレビ を観ているわけではなく、仕事やかたづけなど、やるべきことが多くある。そのような中で、 作業をしながら、運転をしながら聞くといった「ながら聴取」のできるラジオが情報を得るた めに有効なものとなる。 さらに、「避難所にある掲示やチラシ」、「口コミ」も上位を占めている。これは、震災発生 から 1 ヶ月が経ち、報道機関の取材体制が整い、道路等もある程度回復して被災地での取材が 比較的やりやすくなっても、全ての被災地の隅々まで取材をすることは難しく、また様々なニ ーズに対応した細かい情報を取材することにも限界があり、さらに限られた時間・限られて紙 面で全ての情報を扱うことも困難なため、地域の細かい情報は、依然としてチラシや口コミを 評価する人が少なくないと考えられる。 74 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 7.2.3 震災から 1 か月後の情報を得るために役に立った手段の上位5番目までの比較 陸前高田 N=157 南三陸 N=164 1 テレビ(59.5) 2 新聞(51.4) 3 ラジオ(42.7) 避難所にある掲示やチラシ 4 (23.4) 全体 N=642 テレビ(63.7) 新聞(52.2) ラジオ(36.9) 避難所にある掲示やチラシ (24.8) ラジオ(47.0) テレビ(45.1) 新聞(42.7) 避難所にある掲示やチラシ (28.0) 5 口コミ(19.5) 口コミ(19.7) 口コミ(19.5) M.A. ( 仙台 ・名取 N=170 テレビ(71.8) 新聞(53.5) ラジオ(42.9) )内は% 山元 N=151 新聞(57.6) テレビ(57.0) ラジオ(43.7) 避難所にある掲示やチラシ (25.8) 口コミ(17.1) 避難所にある掲示やチラシ (15.3) 口コミ(21.9) さて、地震発生から数日間において情報を得るために役に立ったと回答した人が最も多かっ た手段は「ラジオ」であったが、では、ラジオから得た情報でどのようなものが役に立ったの であろうか。 表 7.2.4 は、「地震発生から数日間、災害に関する情報を得るために役に立ったものは何か」 という設問で、「ラジオ」を選択した人に、「ラジオのどのような情報が役に立ったか」につい て尋ねた結果である(複数回答)。 全体で最も多かったものが「被害の状況」(57.0%)で、以下、「余震の状況」(46.2%)、 「津波の状況」(37.3%)、「地震の震源や各地の震度」(31.9%)、「自分の住んでいる地域の状 況」(29.1%)の順であった。地域や生活の情報よりも被害や地震・津波の状況といった一般 的な情報について評価する回答が比較的多かったことがわかる。しかし、「自分の住んでいる 地域の情報」や「生活情報」を回答した人も全体で 3 割弱を占めていることから、地域や生活 の情報に対する評価も決して小さかったわけではないのである。 表 7.2.4 地震から数日間においてラジオでの情報で役に立ったもの(%) 全体 (351) 1. 大津波警報 2. 予想される津波の高さや時間 3. 津波の状況 4. 地震の震源や各地の震度 5. 余震の状況 6. 被害の状況 7. 自分の住んでいる地域の情報 8. 生活情報 9. 多くの人々が応援していることがわかったことや安心感を得たこと 10.その他 26.5 21.4 37.3 31.9 46.2 57.0 29.1 26.8 13.1 7.7 M.A. 地域名の下にある( 陸前高田 (85) 27.1 20.0 43.5 30.6 42.4 57.6 28.2 18.8 14.1 10.6 南三陸 (85) 22.4 16.5 40.0 25.9 42.4 62.4 27.1 23.5 12.9 10.6 )は回答者数 仙台 ・名取 (106) 山元 (75) 31.1 22.6 35.8 35.8 52.8 57.5 32.1 35.8 16.0 0.9 24.0 26.7 29.3 34.7 45.3 49.3 28.0 26.7 8.0 10.7 そして、「地震発生から 1 か月後、災害に関する情報を得るために役に立ったものは何か」 の設問で、「テレビ」「ワンセグテレビ」を選択した人に、テレビの L 字情報が役に立ったかど うかについて尋ねた結果が表 7.2.5 である。この結果を見ると、全体で「非常に役に立った」 「ある程度役に立った」の合計が 70%以上を占めており、テレビの L 字情報の評価が高かっ たことがわかる。 75 表 7.2.5 震災から 1 か月後のテレビの L 字情報への評価(%) 全体 1. 2. 3. 4. 5. 非常に役に立った ある程度役立った 役に立たなかった 見ていない その他(わからない・選択肢外など) M.A. 陸前高田 地域名の下にある( 南三陸 )は回答者数 仙台 ・名取 山元 (386) (102) (74) (124) (86) 38.6 32.9 7.0 21.2 0.3 33.3 20.6 9.8 36.3 - 43.2 37.8 4.1 13.5 1.4 43.5 38.7 3.2 14.5 - 33.7 34.9 11.6 19.8 - (中森 広道) 7.3 災害報道の評価 このたびの震災の報道を、人々はどのように評価しているのであろうか。表 7.3.1 は、「今 回の震災報道で次のような問題があったと思うか」という設問についての回答の結果である (複数回答)。全体でみると、最も多かったものが「報道が少ない地域では、支援や対応に影 響が出たと思う」(35.0%)で、以下、「取材の対象になっている地域が偏っているように思う」 (27.6%)、「自分の住んでいる地域の取材や報道が少なくて不公平感を覚えた」(26.9%)、 「被害の報道ばかりでなく、生活に関する情報をもっと放送してほしかった」(22.0%)、「特 に問題はないと思う」(20.7%)の順であった。全体的にみて、報道に対する「不公平感・偏 り」を問題視する人が多いことがわかる。 表 7.3.1 震災の報道に対する評価(%) 全体 1. 自分の住んでいる地域の取材や報道が少なくて不公平感を覚えた 2. 取材の対象になっている地域が偏っているように思う 3. 報道が少ない地域では、支援や対応に影響が出たと思う 4. 震災の全体像がわかりにくいと思う 5. 津波の映像が繰り返し放送され、見るのがいやになった 6. 被害の報道ばかりでなく、生活に関する情報をもっと放送してほしかった 7. いい加減であったり、実際のことを誇張したりした報道も多かった 8. 原子力発電所の事故の報道が多くなり、地震・津波に関する報道が少なく なっているのは問題だと思う 9. 不安ばかりをあおって、安心する報道が不十分ではないかと思う 10. 政府や電力会社の責任ばかりを報道しているが、報道各社自身のこれまで の報道や姿勢についてももっと責任を感じてほしい 11. 被災者への配慮が足りないと思う 12. 津波の予想される高さや時間などの細かい情報ではなく、もっと避難の呼 びかけをした方が良かったと思う 13. その他 14. 特に問題はないと思う 76 陸前高田 M.A 仙台 ・名取 山元 N=642 N=157 南三陸 N=164 N=170 N=151 26.9 27.6 35.0 19.8 16.7 22.0 5.6 10.2 17.2 27.4 21.0 10.2 15.9 7.6 9.8 13.4 32.9 17.1 21.3 28.0 7.9 33.5 33.5 40.0 16.5 21.2 25.3 1.8 55.6 47.0 39.7 25.2 13.2 17.9 5.3 14.2 14.0 15.9 13.5 13.2 11.1 10.8 12.8 10.0 10.6 9.5 5.1 9.8 14.7 7.9 13.6 10.8 14.0 18.8 9.9 15.9 9.6 21.3 21.2 10.6 3.4 5.1 3.0 1.8 4.0 20.7 23.6 26.2 17.1 15.9 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 この、報道の不公平感・偏りに関する回答について地域別に結果を見ていくと、地域によっ て差が生じていることがわかる。 図 7.3.1 は「報道が少ない地域では、支援や対応に影響が出たと思う」、図 3.7.2 は「取材 の対象になっている地域が偏っているように思う」、図 7.3.3 は「自分の住んでいる地域の取 材や報道が少なくて不公平感を覚えた」の回答結果の地域ごとの比較である。 まず、「報道が少ない地域では、支援や対応に影響が出たと思う」の回答数を見てみると、 仙台市・名取市 が 40.0%、山元町が 39.7%に 対して、南三陸 町が 32.9%、陸前高田 市が 27.4%と、宮城県の平野部にある仙台市・名取市、山元町の方が比較的多いことがわかる。次 に、「取材の対象になっている地域が偏っているように思う」の回答数は、山元町が 47.0%、 仙台市・名取市が 33.5%に対して、陸前高田市が 17.2%、南三陸町が 13.4%と、ここでも、 三陸沿岸の 2 市町に比べ、宮城県の平野部にある仙台市・名取市、山元町の方が多く、「報道 が少ない地域では、支援や対応に影響が出たと思う」に比べて地域の差がより大きいことがわ かる。そして、「自分の住んでいる地域の取材や報道が少なくて不公平感を覚えた」の回答数 を見ると、山元町が 55.6%、仙台市・名取市が 33.5%、陸前高田市が 10.2%、南三陸町が 9.8%と、三陸沿岸の 2 市町と宮城県の平野部にある仙台市・名取市、山元町との差がさらに 大きく、そして山元町での回答者数は半数を超えていることもわかる。総じて、三陸沿岸の 2 市町よりも、仙台市・名取市、山元町の方で報道の不公平感・偏りを問題視することが多いと 言える。 図 7.3.1 「報道が少ない地域では支援や対応に影響が出たと思う」の地域別回答結果の比較(%) 図 7.3.2 「取材の対象になっている地域が偏っているように思う」の地域別回答結果の比較(%) 77 図 7.3.3 「自分の住んでいる地域の取材や報道が少なくて不公平感を覚えた」(% ) (中森 78 広道) 第8章 災害時の通信 第8章 災害時の通信 8.1 疎通状況 東日本大震災では、地震後、電話や携帯電話などの通信メディアがつながらなくなり、災害 対応の困難性を増した。 通信がつながらない原因は機器の不具合といったハード的なものと、多くの利用者が殺到す るためにつながりにくくなる輻輳といったソフト的なものがある。ハード的なものには、ケー ブルの切断や装置の損傷など地震や津波による直接的ものと、その後の停電によって引き起こ されたものがある。直接的な損傷は地震直後から発生するが、停電によるものは予備電源が切 れた少し後から発生する。 ハード面の被害としては次のようなことがあった。まず、固定電話についてだが、NTT東 日本では、385 のビルが機能停を止し、架空ケーブルは 630Km が流出し、中継伝送路は 90 ル ートが切断された。電柱の被害は 65000 本に及ぶという。この結果、利用者につながる回線 (アクセス回線)では 150 万回線が停止した。さらにKDDI、ソフトバンクテレコムでも約 40 万回線が被災している。阪神大震災の時に被災した加入者回線は 48 万 8 千回線(交換機故 障によるものが 28 万 5 千回線、加入者ケーブルの損傷が 19 万 3 千)であったから、その 3 倍 以上の被害だったわけである。携帯電話やPHSでも基地局と交換機の間をつないでいる伝送 路(エントランス回線)が被災した。 しかし広範囲に影響したのは停電による被害である。NTT東日本では、機能停止した通信 ビルの約 80%、NTTドコモでは、サービス停止局の 85%は停電によるものだった。携帯電 話・PHS の基地局はあわせて約2万9千局が機能停止した。その内訳は NTT ドコモが 6720 局、 KDDI が 3680 局、ソフトバンクが 3786 局、イー・モバイルが 878 局、そして PHS のウィルコ 80 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 ムが約 1 万 4 千である(総務省資料及び各社ホームページによる)。 表 8.1.1 東日本大震災時の通信障害 NTT 携帯電話 固定電話 インターネット KDDI ソフトバンク 停波基地局 6720 3680 3786 通話通信規制 80-90% 95% 70% メール通信規制 30% なし なし 通信規制 90% なし なし 回線障害 898,000 回線障害 513,000 390,000 310,000 145,000 放送研究と調査 2011 年6月号より 一方、通信集中による輻輳も激しかった、固定電話では NTT 東日本で 90%、KDDI で 90%、 ソフトバンクで 80%の規制がかかった。一方携帯電話音声は、NTT ドコモで 90%、KDDI で 95%、ソフトバンクで 70%の規制がかかった。イー・モバイルでは規制はかからなかった。 また携帯メール(パケット)は NTT ドコモのみで行われ 30%の規制がかかった(通信情報白書平 成 23 年による)。NTT ドコモは、東北地方では、最大で発信が約 60 倍、着信が約 40 倍の通信 が発生したと予想している(総務省資料)。 NTT ドコモでメールに通信規制がかかったのは、メールサーバ(i モードサーバ)が不調とな り、輻輳が発生したためである。その結果メールはサーバまで届くが、サーバから受信者まで 達しなかったのである。通常 90%のメールは即時に到達しているが、震災直後は 15%しか即 時に到達していなかったという。i モードサーバは、2111 年から 2012 年にかけて繰り返し大 規模な通信障害を起こしているが、ソフト面の問題があったのではないかと考えられる。一方 KDDI やソフトバンクではサーバの輻輳はなかったが、受信者にメールが受信したことを伝え る引き金として音声網(SMS)を利用しているために、音声の輻輳にひきずられて着信が遅れて しまったという。KDDI の LTE では SIP という通信方式を使うために、新方式ではこのような 問題がなくなるかもしれない。 本調査では、被災当日各通信メディアを利用しようとしたか、利用しようとした場合どのく らいつながったかをたずねた。各地とも「利用しようとしなかった/利用できなかった」人が 多かったが、利用しようとした人だけにしぼって各メディアの疎通度を地域別に集計すると表 8.1.2 から表 8.1.5 のようになった。また表 8.1.6 から表 8.1.8 までは我々が別のグループで 行った仙台市内(津波被災地を除く)、盛岡市、関東の各調査のデータを示す。 これらを見て気づくのは、第 1 に地震当日は東日本全体が激しい通信困難に見舞われていた、 ということである。利用者の多い携帯音声に注目して「全く利用できなかった」の人の割合を みると関東から盛岡にかけて、いずれも 5 割から 6 割程度となっている。第 2 にその中でも陸 前高田では疎通が困難で、携帯音声は 95.8%とほとんどの人が「全く利用できなかった」と 81 している。陸前高田では他のメディアも通じず、通信孤立状態になったと考えられる。そして 第 3 に陸前高田、南三陸、山元などでは、これまでの災害時と異なるパタンになっている。す なわち中越沖地震以降の災害では、ちょうど表 8.1.8 の関東地域のようなパタンをとるからで ある。そこでは携帯メールが最も通じやすく、固定電話よりも公衆電話の方が通じやすい傾向 がある。これは不通の主原因が輻輳にある場合の典型例である。公衆電話は災害時有線電話で 通信規制がかからず、また携帯メールも音声と別制御をするようになり、通信規制がかからな くなったからである。しかし上記 3 地域では携帯メールも携帯音声と同程度つながりにくく、 公衆電話も固定電話度同様につながりにくい。これは、これらの地域の疎通困難が輻輳ではな く、通信設備そのものの被害によって引き起こされていることを物語っている。 表 8.1.2 通信疎通度(陸前高田) 表 8.1.3 つながりに くく、全く 利用できな かった つながりに くかった が、利用で きた すぐにつな がり、問題 なく利用で きた 固定電話(7) 公衆他電話(2) 携帯音声(72) 携帯メール(69) 71.4 100 95.8 97.1 14.3 0 4.2 0 14.3 0 0 2.9 パソコンメール(1) パソコンウェブ(1) IP電話(0) 100 100 0 0 0 0 0 0 0 表 8.1.4 固定電話(5) 公衆電話(13) 携帯音声(111) 携帯メール(79) パソコンメール(0) パソコンウェブ(0) IP電話(1) 82 通信疎通度(仙台・名取) 固定電話(2) 公衆他電話(2) 携帯音声(54) 携帯メール(41) パソコンメール(1) パソコンウェブ(0) IP電話(1) 表 8.1.5 つながりに くく、全く 利用できな かった つながりに くかった が、利用で きた すぐにつな がり、問題 なく利用で きた 60.0 38.5 47.7 32.9 0 0 100 0 23.1 45.9 55.7 0 0 0 40.0 38.5 6.3 11.4 0 0 0 固定電話(15) 公衆電話(14) 携帯音声(87) 携帯メール(80) パソコンメール(6) パソコンウェブ(7) IP電話(6) 通信疎通度(南三陸) つながりに くく、全く 利用できな かった つながりに くかった が、利用で きた すぐにつな がり、問題 なく利用で きた 50.0 50.0 59.3 56.1 0 0 100 0 50.0 35.2 39.0 100 0 0 50.0 0 5.6 4.9 0 0 0 通信疎通度(山元) つながりに くく、全く 利用できな かった つながりに くかった が、利用で きた すぐにつな がり、問題 なく利用で きた 93.3 85.7 65.5 60.0 100 85.7 100 0 14.3 28.7 28.8 0 0 0 6.7 0 5.7 11.3 0 14.3 0 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 8.1.6 通信疎通度(仙台市内)(1) (1)固定電話(83) (2)公衆電話(23) (3)携帯(音声)(186) (4)携帯メール(160) (5)携帯ウェブ(43) (6)パソコンメール(13) (7)パソコンウェブ(12) 表 8.1.8 表 8.1.7 使おうとしたが 使おうとして 使おうとして 全くつながらな 時々つな 全部つな かった がった がった 88.0 7.2 4.8 (1)固定電話(89) 65.2 21.7 13.0 (2)公衆電話'10) 53.8 44.6 1.6 (3)携帯(音声)(173) 35.0 63.1 1.9 (4)携帯メール(162) 53.5 32.6 14.0 (5)携帯ウェブ(32) 61.5 7.7 30.8 (6)パソコンメール(15) 58.3 16.7 25.0 (7)パソコンウェブ(13) 通信疎通度(盛岡市内)(1) 使おうとしたが 使おうとして 使おうとして 全くつながらな 時々つな 全部つな かった がった がった 84.3 70.0 13.5 20.0 2.2 10.0 56.1 41.6 2.3 29.0 40.6 60.0 53.8 61.1 43.8 0.0 15.4 9.9 15.6 40.0 30.8 通信疎通度(関東 web 調査)(1) (1)固定電話(879) (2)公衆電話(247) (3)携帯(音声)(1565) 使おうとしたが 使おうとして 使おうとして 全くつながらな 時々つな 全部つな かった がった がった 55.1 31.6 13.3 36.0 27.1 36.8 65.4 29.8 4.9 (4)携帯メール(1528) (5)携帯ウェブ(582) 37.0 32.0 50.5 38.8 12.4 29.2 (6)パソコンメール(416) (7)パソコンウェブ(692) 22.1 11.3 2.6 18.2 75.2 70.5 (中村 功) 8.2 安否情報 通信の障害で最も多くの人が困るのが、安否確認である。地震後の数日間で最も求められた のは家族や知人の安否情報であった。地震発生から数日の間に知りたかったことをたずねると、 全 体 で 69.5% と 、 最 も 多 く の 人 が 挙 げ た の が 「 家 族 や 知 人 の 安 否 に つ い て 」 で あ っ た (表 8.2.1)。 しかし上記のような激しい通信障害のもとでは家族の安否もままならなかったはずである。 本調査では、家族全員の安否がわかるまでどれくらいかかったか、をたずねた。それによると、 翌日いっぱいかかっても家族の安否がわかった人は全体で 6 割に達せず、安否確認が遅々とし て進まなかった状況がわかる。特に通信障害が激しかった陸前高田では、当日安否がわかった 83 のは 19.7%、翌日までにわかった人は累積で 40.7%、3 日目までにわかった人は 59.2%、4 日目が終わっても 66.8%にしか達しなかった。 表 8.2.1 地震発生から数日間に知りたかったこと 1. 今回の地震についての震源地、規 模について 2. 今後の余震の可能性や、規模の見 通しについて 3. 津波の状況や今後の津波の可能 性について 4. 地震や津波の被害状況について 5. 家族や知人の安否について 6. 水道・ ガス・電気・電話の復旧の見 通しについて 7. 交通機関・道路について 8. 自家用車について 9. ガソリン・灯油について 10. 水・食料や生活物資について 11. 病院、医療、衛生について 12. トイレ・風呂について 13. 避難生活について 14. 原子力発電所の状況について 15. 仕事・学校・求人について 16. 仮設住宅について 17. 国や自治体の対応について 18. その他 19. 特にない 南三陸 山元 19.0 11.5 29.3 22.9 11.3 21.2 13.4 29.9 30.6 9.3 25.1 18.5 32.3 35.9 11.9 34.3 69.5 28.0 71.3 40.9 74.4 43.5 70.6 23.2 60.9 29.1 21.7 38.4 27.1 29.1 14.0 7.6 28.2 36.8 18.5 20.2 18.5 8.3 7.8 9.0 14.5 6.5 5.5 10.2 5.7 19.1 25.5 13.4 14.0 17.2 3.8 4.5 7.6 12.7 7.6 7.0 25.6 14.6 32.9 52.4 28.7 31.7 24.4 14.0 14.0 14.0 20.1 2.4 3.7 13.5 8.2 31.8 40.6 20.6 21.8 18.2 8.8 8.8 9.4 13.5 5.9 4.7 6.0 1.3 28.5 27.2 10.6 12.6 13.9 6.0 3.3 4.6 11.3 10.6 6.6 1. 地震発生の当日 2. 翌日 3. 3日目 4. 4日目 5. 5日以上経ってから 6. 現在もわかっていない 全体 陸前高田 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 32.4 24.5 19.7 21.0 28.0 仙台 ・名取 43.0 図 8.2.1 18.5 6.1 7.6 22.0 38.8 山元 17.1 17.7 27.1 27.8 18.4 30.6 11.0 17.6 1.6 2.5 20.1 1.2 2.9 12.4 1.2 14.6 2.6 10.6 1.3 家族全員の安否がわかるまでの日数 そのような状況で安否確認のために用意されているのが、災害用伝言ダイヤル等の安否確認 システムである。総務省の資料によると、固定電話の災害用伝言ダイヤルの利用は約 346 万件、 84 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 災害用伝言板は 5 社合計で約 1362 万件、災害用ブロードバンド伝言板(web171)は約 33 万件 の利用があった(2011 年 8 月 24 日まで)。災害用伝言ダイヤル過去の利用実績をみると、中越 地震時の 35 万 4 千件が最大であるから、今回はその 10 倍に達する利用者数であった。災害の 規模の大きさと安否確認の困難さがうかがえる。 表 8.2.2 震災時に利用された各種安否確認メディア メディア 利用者数 運営主体(その他) 災害用伝言ダイヤル 346 万 NTT 東日本 災害用伝言板 1362 万 携帯 5 社合計 災害用ブロードバンド伝言板 33 万 NTT 東日本 パーソン・ファインダー 60 万 グーグル 避難所名簿共有サービス 不明 グーグル ハッシュタグ「#anpi」 (8000 件)(2) ツイッター その他、安否情報システムとしては約 60 万の登録があった(村上 2011)、グーグルの「パー ソン・ファインダー」がある。これはウェブ上で、個人の安否情報を入力し、それを検索でき るシステムである。NTT の「web171」や赤十字の「ファミリーリンク」も同様のシステムで、 同様のシステムは、阪神大震災以降からあった(web171 や IAA など)。パーソン・ファインダ ーに登録された情報には、各個人が入力したもののほか、NHK が安否放送用に集めた情報や、 朝日新聞、毎日新聞、警察庁の提供した情報もあった。ただ実際に使ってみると、なかなかヒ ットせず、登録数が十分だったとはいえないようだ。やはり被災者自身が自分の安全情報をな かなか入力しないという問題がある。そこで注目されるのが、グーグルの「避難所名簿共有サ ービス」である。これは、避難所の避難者名簿を携帯のカメラで撮影したり、ファックスで送 り、それをグーグルの写真共有サービス Picasa で公開することで、ネット経由で名簿の画像 を見られるものだ。これなら避難所のうち、一人でもその作業をすれば、避難所全員の無事情 報を発出できる。パーソン・ファインダーにもこの情報を人力で入力している。 その他、ツイッターでハッシュタグをつけた伝達もあった。これは「#anpi」などの文字を 入れてつぶやき、他方、検索者が同文字で検索すると、安否に関する情報が出でくるというも のだ。しかしこれも被災地からの登録はあまり多くなかったようだ(2)。 本調査ではどれだけの人が災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板を使ったかをたずねた。全体 では災害用伝言ダイヤルを使った人は 3.0%、災害用伝言板が 4.8%であった。仙台・名取で は災害用伝言板利用者が 10%、災害用伝言ダイヤルが 6.5%に達しているが、その他の 3 地域 ではそれほど伸びていない。これら 3 地域では、通信設備そのものが被害を被ったことが影響 しているのかもしれない。 85 災害用伝言ダイヤル 3.0 4.8 全体 3.2 2.5 陸前高田 南三陸 0 2.4 6.5 仙台 ・名取 山元 図 8.2.2 災害用伝言板 2.0 10.0 4.0 災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板の利用率 (中村 功) 注 (1)東京大学・東洋大学・NTT 情報流通プラットフォーム研究所の共同研究による。 詳しくは東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究・調査研究編 No.28(2012 年 03 月) http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/blog/media/7/rsrNo28_1.pdf 「被災地住民の震災時情報行動と通信不安 - 仙台・盛岡訪問留置調査 -」pp1-64 「東日本大震災における首都圏住民の震災時の情報行動」pp65-114 「Twitter 利用を中心とする震災時の情報行動と通信不安 - 関東 Twitter 利用者ウェブ調 査」pp115-160 を参照。 (2)たとえば anpi レポート(http://anpi.tv/)によると#anpi による登録は約 8000 件で、その ほとんどが安否を問い合わせるツイートであった。 文献 総務省資料 大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会「大規模災害等 緊急事態における通信確保の在り方について」最終とりまとめ 2011 年 12 月、総務省総合通信 基盤局電気通信事業部 http://www.soumu.go.jp/main_content/000141084.pdf 村上圭子「東日本大震災・安否情報システムの展開とその課題」『放送研究と調査』2011 年 6 月 86 第9章 緊急地震速報について 第9章 緊急地震速報について 9.1 緊急地震速報への接触 「東日本大震災」を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」において、警報の緊急地震速報 が発表された。 地震が発生したのは、2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分 18.1 秒。気象庁が地震波を検知したの は 14 時 46 分 40.2 秒、同庁が緊急地震速報の第 1 報を発表したのは 14 時 46 分 45.6 秒(予 報)、警報の緊急地震速報である第 4 報を発表したのが 14 時 46 分 48.8 秒である。この警報で 予測された地震の規模はマグニチュード 7.2、警報対象地域(震度 4 以上の揺れなると予測さ れた地点のある地域)は、岩手・宮城・福島・秋田・山形の 5 県であった(表 9.1.1)。 この調査の対象となった市町も警報の緊急地震速報の対象地域であり、 テレビ、ラジオ、一 部の携帯電話などで緊急地震速報が伝えられた。では、どのくらいの人が、どのような方法で 緊急地震速報を受け取ったのであろうか。 この緊急地震速報を見たり聞いたりしたのかについて質問をした(複数回答)。図 9.1.1 は、 緊急地震速報を見たり聞いたりしたかどうかについての回答を地域ごとに比較したものである。 「緊急地震速報」を「見たり聞いたりしていない」と回答した人は全体で 66.8%であった。 つまり、「緊急地震速報」を見たり聞いたりした人は全体の 3 割強であったということである。 「緊急地震速報」を見たり聞いたりした人が最も多かった地域は仙台市・名取市で、最も少な かったのは山元町であった。 88 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 表 9.1.1 「東北地方太平洋沖地震」(2011 年 3 月 11 日)における「緊急地震速報」の発表状況 気象庁 HP(http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/joho/) 提供時刻等 地震波 検知時刻 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 地震波検知から の経過時間(秒) 2012.5.19 参照 震源要素等 震源要素 北緯 東経 深さ マグニチュード 14時46分40.2秒 ― ― ― ― ― 14時46分45.6秒 14時46分46.7秒 14時46分47.7秒 14時46分48.8秒 14時46分49.8秒 14時46分50.9秒 14時46分51.2秒 14時46分56.1秒 14時47分02.4秒 14時47分10.2秒 14時47分25.2秒 14時47分45.3秒 14時48分05.2秒 14時48分25.2秒 14時48分37.0秒 5.4 6.5 7.5 8.6 9.6 10.7 11 15.9 22.2 30 45 65.1 85 105 116.8 38.2 38.2 38.2 38.2 38.2 38.2 38.2 38.1 38.1 38.1 38.1 38.1 38.1 38.1 38.1 142.7 142.7 142.7 142.7 142.7 142.7 142.7 142.9 142.9 142.9 142.9 142.9 142.9 142.9 142.9 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 10km 4.3 5.9 6.8 7.2 6.3 6.6 6.6 7.2 7.6 7.7 7.7 7.9 8 8.1 8.1 ※警報〔第 4 報〕(灰色の部分)発表時における震度予測 震度4から5弱程度:宮城県中部、震度4程度:宮城県北部、岩手県沿岸南部、岩手県内陸南部、岩手県 沿岸北部、宮城県南部、福島県浜通り、福島県中通り、震度3から4程度:山形県最上、岩手県内陸北部、 秋田県内陸南部、山形県村山。 図 9.1.1 「緊急地震速報」への接触(%) N=642(陸前高田:157 南三陸:164 仙台・名取:170 山元:151) ※「見たり聞いたりした・その他」は、「見たり聞いたりしていない」と回答した人以外の合計。 89 表 9.1.2 は、「緊急地震速報」を見たり聞いたりした手段についての回答である(複数回答)。 緊急地震速報を得た手段として最も多かったものが、「携帯電話のメールやアプリ」で全体の 17.1 % を 占 め て い た 。 ま た 、 地 域 別 で は 、 陸 前 高 田 市 で は 25.5 % 、 仙 台 市 と 名 取 市 で は 21.2%であった。テレビによって得た人は全体の 7.8%(NHK、民間放送、BS の合計)、ラジオ によって得た人は全体の 9.0%(NHK、民間放送の合計)という結果が出ている。地震の発生 が平日の日中ということで、テレビ・ラジオを見聞きしている人があまり 多くない時間帯でも あったことや、場所を選ばず緊急地震速報が受信できる携帯電話の普及が、このような結果の 背景にあると考えられる。 表 9.1.2 「緊急地震速報」を見たり聞いたりした手段(%) M.A. 市町名の下の()は回答者数 1. NHK 地上波テレビ 2. NHK ラジオ 3. 民間放送地上波テレビ 4. 民間放送ラジオ 5. BSテレビ 6. 携帯電話のメールやアプリ 7. 建物の館内放送 8. 同報(防災)無線 9. 専用受信機や専用受信サービス 10. インターネットの受信サービス 11. 職員・従業員などの肉声による指示 12. その他 13. 見たり聞いたりしていない 全体 陸前高田 N=642 N=157 2.3 0.6 4.0 0.6 5.3 2.5 5.0 4.5 0.2 17.1 25.5 0.3 2.2 2.5 0.2 0.6 0.8 0.6 66.8 65.0 南三陸仙台 ・名取 N=164 N=170 5.5 1.8 4.3 7.6 3.0 7.1 3.0 8.2 12.2 21.2 0.6 4.3 1.8 0.6 1.2 0.6 0.6 1.2 70.1 57.1 山元 N=151 1.3 3.3 8.6 4.0 0.7 9.3 0.7 0.7 0.7 76.2 表 9.1.3 は、「緊急地震速報」を受け取って、どのような対応をしたのかについて質問をし た結果である。 表 9.1.3 「緊急地震速報」を受け取った際の対応(%) M.A. 市町名の下の()は回答者数 全体 (213) 1. テレビやラジオで地震の情報を知ろうとした 2. 身の安全をはかった 3. 火の始末をした 4. 家族や周りの人に地震が来ることを知らせた 5. 小さい子どもや老人・病人などを守ろうとした 6. 戸や窓を開けた 7. 家や建物の外に出た 8. 車・バイクを止めた 9. 様子を見た 10. その他 11. 何をしてよいのかわからず、何もできなかった 12. 自分には関係ないと思い、何もしなかった 90 19.7 41.8 19.2 13.6 12.7 10.3 21.1 2.3 14.1 8.9 14.1 1.9 陸前高田 (55) 7.3 36.4 9.1 10.9 9.1 1.8 7.3 10.9 14.5 16.4 1.8 南三陸 (49) 28.6 36.7 24.5 10.2 8.2 16.3 28.6 6.1 8.2 6.1 14.3 4.1 仙台 ・名取 山元 (73) (36) 23.3 50.7 24.7 20.5 19.2 9.6 28.8 2.7 21.9 4.1 11.0 - 19.4 38.9 16.7 8.3 11.1 16.7 16.7 11.1 13.9 16.7 2.8 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 全体で最も回答が多かったものが、「身の安全をはかった」(41.8%)で、以下、「家や建物 の外に出た」(21.1%)、「テレビやラジオで地震の情報を知ろうとした」(19.7%)、「火の始末 をした」(19.2%)の順であった。適切な対応である「身の安全をはかった」の回答が 4 割を 超えているのは、これまでの「緊急地震速報」発表時と比較しても多い方であるが、これは、 「緊急地震速報」という情報だけでなく、速報発表直後に襲った強く、そして長い実際の揺れ により身を守ろうとした人が増えたように思える。同様の理由(特に長い揺れ)から、必ずし も望ましい対応とは言えない「家や建物の外に出た」を回答した人が多くなったのではないか と考えられる。 (中森 広道) 9.2 緊急地震速報に対する評価 「東北地方太平洋沖地震」の発生以降、非常に多くの緊急地震速報が発表されるようになっ た。その中には、結果的に予想されたように強い揺れが観測されないような、いわゆる「適切 ではない緊急地震速報」も多くあり、緊急地震速報に関する批判的な報道や評価も少なくなか った。 表 9.2.1 は、このような中で、緊急地震速報をどのように感じているのかについて質問した 結果である(複数回答)。 表 9.2.1「適切ではない緊急地震速報」が何度か発表されたことに関する評価(%) 全体 陸前高田 1. 仕方がないことだと思う 2. 「緊急地震速報」は、はじめから信用していない 3. それまで「緊急地震速報」を信用していたが、今回のことで信用しなくなった 4. 「緊急地震速報」が発表されても、特に気にならなくなった 5. 「緊急地震速報」に慣れてしまい、(オオカミ少年の話のように)本当に大きな揺れが 来る際に活かされないのではないかと思う 6. 「緊急地震速報」が発表されたら、もっと人々の間にパニックや大混乱が起こると 思っていたが、意外とパニックや混乱が起こらないものだと思った 7. 適切な「緊急地震速報」が発表できるようになるまで、「緊急地震速報」の発表をや めてほしい 8. 結果的にはずれてもかまわないので、引き続き「緊急地震速報」を発表してほしい 9. その他 10. わからない 南三陸 仙台 ・名取 M.A. 山元 N=642 N=157 N=164 N=170 N=151 55.0 1.2 48.4 - 60.4 4.3 58.8 0.6 51.7 - 3.4 8.7 3.8 5.1 3.7 9.1 4.7 9.4 1.3 11.3 15.6 17.8 15.2 14.1 15.2 7.8 6.4 6.7 9.4 8.6 3.4 1.9 4.9 2.9 4.0 53.3 3.3 40.8 0.6 54.9 3.0 64.7 4.1 51.7 5.3 9.8 15.3 12.8 4.1 7.3 91 まず、「適切ではない緊急地震速報」が何度も発表されたことについて、「仕方がないことだ と思う」と回答した人が全体で 55.0%を占めており、緊急地震速報を「信用していない」ま たは「信用しなくなった」の回答数よりもはるかに多かった。 次に、多くの緊急地震速報が発表されたことについて、いわゆる「オオカミ少年効果」を挙 げた人が全体の 15.6%を占めており、適切ではない緊急地震速報によって警報慣れが生じる ことについて懸念している人が少なくないようである。 そして、緊急地震速報の発表について、「適切な『緊急地震速報』が発表できるようになる まで、『緊急地震速報』の発表をやめてほしい」と回答した人が 7.8%に対し、「結果的にはず れてもかまわないので、引き続き『緊急地震速報』を発表してほしい」が 53.3%と、緊急地 震速報の積極的な発表を望む人が多いことがわかる。このような結果から、緊急地震速報に関 する問題点の指摘はあるものの、緊急地震速報の発表自体を否定的にとらえる人は少ないこと がわかる。 表 9.2.2 は、「緊急地震速報」が役に立つかどうかについて尋ねた結果である。この結果を 見ると、「役に立つと思う」(「非常に役に立つ」と「ある程度役に立つ」との合計)と考えて いる人は全体の 91.5%を占めており、非常に多くの人が、緊急地震速報が有効な情報である と評価しているようだ。 表 9.2.2 緊急地震速報に対する評価(%) 全体 1. 非常に役に立つと思う 2. ある程度役立つと思う 3. あまり役に立たないと思う 4. まったく役に立たないと思う 5. その他(わからない・選択肢外など) 陸前高田 S.A. 南三陸 仙台 ・名取 N=157 N=164 N=170 N=151 34.6 56.9 5.8 1.9 0.9 42.7 45.9 7.6 3.8 - 32.3 61.6 2.4 3.0 0.6 40.0 49.4 8.8 0.6 1.2 22.5 71.5 4.0 2.0 (中森 92 山元 N=642 広道) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 付属資料 アンケート調査票(単純集計) 平成23(2011)年 3 月 11 日 「東日本大震災」における津波被災地アンケート調査 岩手県陸前高田市・宮城県本吉郡南三陸町・宮城県仙台市・宮城県名取市・宮城県亘理郡山元町 この調査は、今年3月11日に発生した「東日本大震災」で津波の被害に遭われた方々に、当日の 状況や避難、情報への対応などについてお尋ねするものです。 私たちは、これまで長い間、人々の意識や対応という面から、地震や津波の被害に遭われた方々に お話を伺い、災害時の問題点を検証してまいりました。この震災でも、ぜひとも皆さんにお話を伺い、 この震災における課題を明らかにするとともに、皆さんがこの震災で体験されたことや皆さんの思い を記録に残したいと思っております。 この調査によって、皆さんのお名前や個人の情報が表に出ることは絶対にありません。 お忙しい中恐縮ですが、何とぞ、ご協力をお願いいたします。 日本大学文理学部 中森研究室 東洋大学社会学部 中村研究室 日本大学法学部 福田研究室 (注意)この調査は、3月 11 日の本震(14時46分)のときに、出張や旅行など で自宅から遠く離れた場所にいた方は対象としません。 問0 地震時、お住まいのあった地域はどこですか。 陸前高田 調査数 構成比 問1 642 100.0 南三陸 157 24.5 仙台 164 25.5 山元 62 9.7 名取 151 23.5 その他⇒調 査対象外 108 16.8 - 大震災が起きた瞬間(3 月 11 日午後 2 時 46 分頃) 、あなたはどこにいましたか。 (○は1つだけ) 1. 自宅 2. 自宅のある、市/区(仙台市の場合)/町の中 3. 自宅のある、市/区(仙台市の場合)/町の周辺地域 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 63.9 56.7 64.0 71.2 山元 62.9 33.2 42.7 34.8 25.9 29.8 3.0 0.6 1.2 2.9 7.3 問 2 この地震(午後 2 時 46 分頃)を、あなたはどう感じましたか。 (あてはまるもの全てに○) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 1. 今まで経験したことのない、(上下の揺れが)激しい揺れだった 74.3 71.3 78.7 74.7 72.2 2. 3. 4. 5. 6. 78.7 62.1 23.8 0.9 0.2 79.0 58.6 24.2 0.6 0.6 75.0 60.4 16.5 1.8 - 80.6 67.1 25.3 - 80.1 62.3 29.8 1.3 - 94 今まで経験したことのない長い揺れだった 今まで経験したことのない、(揺れ幅の)大きな揺れだった 2回、3回に分けて揺れた 今までと特に変わった揺れではなかった その他(わからない・選択肢外など) 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 問 3 揺れがおさまってから、あなたはどうしましたか。(あてはまるもの全てに○) 全体 1. 屋外に出た(揺れている最中に屋外に出た、を含む) 2. 自宅の中や外のかたづけを始めた 3. 地震に関する情報を得ようとラジオを聞いた 4. 幼稚園や学校などに子どもを迎えに行った 5. 近くに住む親や親戚などの様子を見に行った 6. 出先から自宅に向かった 7. 海の様子を見に行った 8. 川の様子を見に行った 9. 船の沖出しのために港へ向かった 10. 家族などの安否を確かめるために電話をした 11. 津波が来るかもしれないと思いすぐに避難した 12. 津波から避難する準備をした 13. 津波のことは考えなかったが、いつでも避難できるように荷 物や貴重品をまとめた 14. その他 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 57.9 11.8 11.1 66.2 5.7 6.4 54.9 7.3 6.7 55.9 17.6 21.2 55.0 16.6 9.3 7.5 7.0 20.2 2.2 0.9 0.5 11.5 29.0 14.0 8.9 4.5 20.4 1.3 0.6 9.6 26.1 12.7 3.7 8.5 13.4 4.3 0.6 1.2 13.4 42.1 18.9 6.5 10.0 20.0 0.6 2.4 15.9 32.9 17.1 11.3 4.6 27.8 2.6 0.7 6.6 13.2 6.6 4.5 1.9 3.7 6.5 6.0 9.3 7.0 10.4 8.2 11.9 - 問 4 あなたは、地震の揺れを感じた段階で、お住まいの地域に津波が来ると思いましたか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 津波が必ず来ると思った もしかしたら津波が来るかもしれないと思った 津波は来ないだろうと思った 津波のことはほとんど考えなかった 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 41.3 52.2 69.5 24.1 20.4 24.8 12.8 26.5 15.9 8.9 10.4 21.2 22.4 14.0 7.3 28.2 山元 18.5 17.2 23.2 41.1 ⇒選択肢4を選んだ方は問7へ 問5 あなたは、津波によってご自宅にどのくらいの被害が出ると思いましたか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 自宅が壊れたり流されたりするほどの被害が出ると思った 自宅が水に浸かるほどの被害がでると思った 自宅にはあまり影響がないと思った その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 22.5 24.8 30.4 11.6 45.2 32.2 45.9 60.5 30.1 43.0 20.0 26.7 2.3 3.7 1.2 山元 14.8 48.1 31.5 5.6 問 6 津波は、地震の直後、お住まいの地域にどのくらいで来ると思いましたか。 (○は1つだけ) 1. すぐ逃げないと間に合わないくらい早く来ると思った 2. 津波は早く来るが、荷物を持って逃げるくらいの余裕はあると 思った 3. 津波は早く来るが、子どもを迎えに行ったり、近所に住んでいる 親の様子を見に行くくらいの余裕はあると思った 4.津波が来るまでには、かなりの余裕があると思った 5. その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 38.9 25.6 51.9 37.2 山元 38.9 28.3 41.3 27.4 20.9 13.0 12.1 12.4 8.1 17.4 13.0 18.4 2.3 19.0 1.7 9.6 3.0 23.3 1.2 31.5 3.7 95 再び全ての方に伺います。 問 7 あなたは大津波が襲う前に、大津波警報を聞きましたか。 (○は1つだけ) 1. 聞いた 2. 聞かなかった 3. 覚えていない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 52.3 54.8 77.4 46.5 41.0 34.4 19.5 48.8 6.7 10.8 3.0 4.7 山元 29.1 62.3 8.6 問7で「1.聞いた」と答えた方におたずねします 付問 7-1 あなたは、その大津波の警報をどのようにして知りましたか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 民放テレビから 2. NHKテレビから 3. 民放ラジオから 4. NHKラジオから 5. 防災無線の戸別受信機から 6. 防災無線の屋外拡声器から 7. 携帯電話のメールから 8. インターネット・WEBから 9. 市町村の広報車から 10. 家族や近所の人から 11. 警察・消防の人から 12. その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 6.5 3.5 0.8 11.4 5.4 4.7 1.6 8.9 16.7 14.0 8.7 29.1 7.4 4.7 3.1 16.5 11.0 15.1 17.3 2.5 50.9 55.8 79.5 17.7 2.4 3.5 3.8 1.5 0.8 3.8 6.0 11.6 2.4 6.3 2.7 2.4 6.3 5.4 2.3 3.1 8.9 2.7 1.6 5.1 山元 20.5 11.4 22.7 9.1 18.2 4.5 2.3 4.5 2.3 11.4 6.8 付問 7-2 あなたは、その大津波の警報をいつごろ知りましたか。(○は1つだけ) 1. 地震発生の直後に(午後2時49分ごろ) 2.地震発生から15分後以内に(午後3時ごろまで) 3. 地震発生から30分後以内に(午後3時15分ごろまで) 4. 地震発生から45分後以内に(午後3時30分ごろまで) 5. それ以上の時間の後に( 時 分 ごろ) 6. その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 51.2 54.7 57.5 39.2 33.9 33.7 35.4 35.4 11.3 9.3 5.5 17.7 1.2 3.8 0.3 1.3 2.1 2.3 1.6 2.5 山元 47.7 27.3 20.5 2.3 2.3 付問 7-3 あなたは、この大津波の警報を聞いた時、どのように思いましたか。 (○は1つだけ) 1. すぐ逃げないと間に合わないくらい早く来ると思った 2. 津波は早く来るが、荷物を持って逃げるくらいの余裕はあ ると思った 3. 津波は早く来るが、子どもを迎えに行ったり、近所に住ん でいる親の様子を見に行くくらいの余裕はあると思った 4. 津波が来るまでには、かなりの余裕があると思った 5.津波が来るとは思わなかった 6. その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 43.2 31.4 53.5 45.6 山元 31.8 23.5 31.4 24.4 17.7 15.9 6.8 5.8 4.7 10.1 9.1 11.0 13.4 2.1 7.0 22.1 2.3 8.7 7.1 1.6 15.2 8.9 2.5 18.2 22.7 2.3 再び全ての方にお聞きします 問 8 地震のあと、市や町から「大津波が来るので避難するように」という呼びかけを聞きまし たか。 (○は1つだけ) 1. 聞いた 2. 聞いていない 96 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 43.0 51.0 73.8 22.4 57.0 49.0 26.2 77.6 山元 24.5 75.5 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 問 9 あなたは、津波が来るときに、市や町が放送する防災無線(同報無線)を聞きましたか。 (○は 1 つだけ) 1. 2. 3. 4. 放送が聞こえ、内容が理解できた 放送は聞こえたが、内容はよくわからなかった 放送は聞こえなかった 覚えていない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 28.5 35.0 63.4 7.6 11.1 19.1 14.0 5.3 50.0 30.6 17.7 78.8 10.4 15.3 4.9 8.2 山元 7.3 6.0 72.8 13.9 問 10 地震時、あなたがいた場所には、結果的に、津波は来ましたか。(○は1つだけ) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 91.9 93.6 92.1 96.5 7.8 5.7 7.9 3.5 0.3 0.6 - 1. 津波が来た 2. 津波は来なかった 3. わからない 山元 84.8 14.6 0.7 問 11 あなたは、大津波が来る前に、避難しましたか。(○は1つだけ) 1. 避難した 2. 避難しなかった 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 86.8 94.9 89.6 90.0 13.2 5.1 10.4 10.0 山元 71.5 28.5 問 11 で「2.避難しなかった」と回答した人だけお答えください 付問 11-1 あなたはなぜ避難しなかったのですか。(○はいくつでも) 1. 津波のことは考えつかなかったので 2. 津波が来ないと思われた、高台や内陸にいたので 3. 昭和35(1960)年のチリ地震津波や明治・昭和の三陸地震 津波など、これまでの津波で被害のなかった場所にいたので 4. 市や町が作った防災マップ(ハザードマップ)に津波が来ない と示されていたので 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 42.4 25.0 5.9 58.8 53.5 24.7 37.5 58.8 - 18.6 - 17.6 11.8 - - - 8.2 - 4.7 - 5. 市や町から避難の呼びかけを聞かなかったので 9.4 - 5.9 23.5 7.0 6. 津波警報を聞かなかったので 10.6 - 5.9 29.4 7.0 7. 海の水が大きく引くなどの前兆がなかったので 2.4 - 5.9 - 2.3 5.9 - 5.9 5.9 7.0 4.7 - 5.9 11.8 2.3 8. 防波堤や防潮堤を超えるような大きな津波は来ないと思った ので 9. 津波の高さが3mとか6m程度と聞き、危険とは思わなかっ たので 10. 津波が来ると言われていた時間になっても大きな津波が来 なかったので - - - - - 11.8 - 11. 昨年2月のチリの地震(チリ中部沿岸の地震)で大津波警 報が出されたが、実際は大きな津波が来なかったので 3.5 - 12. 防波堤や防潮堤で海の様子がわからなかったので 1.2 - - 5.9 13. 家族に、小さい子ども、高齢者、体が不自由な人など自力 での避難がむずかしい人がいたので 4.7 - - 17.6 2.3 1.2 - - - 2.3 14. 外出していて自宅の様子を見に行こうとしたので 15. 車など避難する手段がなかったので 5.9 - - - - 16. いざとなったら二階以上に逃げればよいと思っていたので - 10.6 - 17.6 23.5 4.7 17. その他 32.9 62.5 29.4 17.6 34.9 97 付問 11-2 から 11-4 は 問 11 で「1.避難した」と回答した人だけお答えください 付問 11-2 あなたが避難した理由は何ですか。(あてはまるもの全てに○) 1. 以前に津波を経験したので 9.9 13.4 19.0 3.9 0.9 2. 地震の揺れの強さや長さがいつもとは違ったから 50.3 7.7 20.6 60.4 6.0 18.8 63.9 12.9 17.0 37.3 5.9 21.6 36.1 5.6 26.9 20.8 15.4 15.6 28.1 25.0 11.8 19.4 5.4 5.6 15.1 5.0 12.2 9.4 14.8 5.4 5.4 14.1 6.0 10.1 21.1 25.9 5.4 6.1 17.0 8.8 11.6 9.2 22.2 4.6 3.9 16.3 3.3 15.7 6.5 13.0 6.5 7.4 12.0 0.9 11.1 3. 海や川の水が大きく引いたから 4. 家族が避難しようと言ったから 5. 近所の人が避難するように言ったから 6. 市・町が避難を呼びかけたから 7. 大津波警報を聞いたから 8. 役場や消防団の人が来て説得されたから 9. 実際に津波が来ているという話を聞いたから 10. 実際に津波が来るのが見えたから 11. 避難訓練などで、いつも避難していたから 12. その他 付問 11-3 あなたが津波から避難できた理由は何だと思いますか。 (あてはまるもの全てに○) 1. すぐに避難したから 2. 家族から昔の津波や地震の話を聞いていたから 3. 防災訓練をしていたから 4. 学校等で教わっていたから 5. 自分や家族のとっさの判断がよかったから 6. 避難の呼びかけがあったから 7. 歩いて避難したから 8. 車で避難したから 9. 車で避難しなかったから 10. いったん自宅に戻ったりしなかったから 11. その他 12. わからない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 56.9 56.4 68.0 50.3 10.1 16.1 17.7 3.3 5.9 7.4 10.2 4.6 2.0 1.3 4.8 0.7 26.2 26.2 21.1 26.8 19.0 15.4 19.0 21.6 8.3 6.7 15.0 9.2 31.4 13.4 32.7 43.8 1.1 2.0 2.0 5.7 2.7 11.6 6.5 9.2 6.7 10.9 11.1 1.1 1.3 2.0 - 山元 51.9 0.9 0.9 32.4 20.4 37.0 0.9 7.4 0.9 付問 11-4 あなたが避難をはじめたのは、地震の発生からどのくらい経ってからですか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 揺れている間 揺れが収まった直後 揺れが収まってから10分くらいまでの間 揺れが収まってから20分くらいまでの間 揺れが収まってから30分くらいまでの間 揺れが収まってから30分以上後 よく覚えていない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 7.4 10.1 12.9 2.6 31.1 36.2 37.4 26.1 23.2 24.2 21.8 25.5 16.7 14.8 11.6 19.6 12.9 10.7 9.5 13.1 6.8 3.4 3.4 11.8 2.0 0.7 3.4 1.3 問 12 A)あなたはどのような手段で避難をしましたか。(あてはまるもの全てに○) 1. 2. 3. 4. 98 歩いて避難した 走って避難した 車で避難した その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 33.0 47.7 42.9 25.5 10.2 14.8 13.6 6.5 67.5 53.7 55.1 76.5 4.7 4.7 3.4 7.2 山元 10.2 4.6 90.7 2.8 山元 2.8 22.2 20.4 22.2 20.4 9.3 2.8 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 B)そのうち初めに使った手段は何ですか。(○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 歩いて避難した 走って避難した 車で避難した その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 27.8 37.6 37.4 22.2 4.8 6.0 10.2 1.3 63.2 52.3 49.0 70.6 4.1 4.0 3.4 5.9 山元 9.3 0.9 87.0 2.8 問 13 あなたが避難した場所はどこですか。 (○は1つだけ) 1. 指定されていた避難場所 2. 指定されていた避難場所では ない、近くの高い建物 3. 指定されていた避難場所では ない、近くの高台や山などの高い 場所 4. 安全そうな場所にある近くの知 人、親戚などの家 5. その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 41.8 30.9 44.9 45.8 山元 47.2 8.4 2.7 12.9 9.2 9.3 27.1 48.3 26.5 7.2 26.9 11.3 9.4 10.9 13.1 12.0 11.3 8.7 4.8 24.8 4.6 問 14 あなたが避難したときに、どのような問題が発生しましたか。 (あてはまるもの全てに○) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 1. 避難場所を知らなかったので、どこに避難したら よいかわからなかった 2. 地震で家屋や土砂が崩れて避難路がふさがれて いて通れなかった 3. 避難する道路が車や人で混雑していて早く移動 できなかった 4. 避難するときに、家族や近所の人を待ったために 避難が遅れた 5. 避難所が遠かったので、たどりつけなかった 山元 3.2 1.3 0.7 6.5 4.6 6.1 3.4 2.7 4.6 16.7 18.1 12.1 11.6 26.8 23.1 2.0 0.7 2.0 3.3 1.9 1.4 2.7 1.4 0.7 0.9 6. 最初に避難した場所が津波で危険だったので、さ らに安全な避難場所に避難した 10.2 9.4 16.3 8.5 5.6 7. その他 8. 特にない 12.2 55.3 7.4 69.1 10.2 59.9 10.5 48.4 24.1 39.8 問 15 あなたご自身はどのような津波体験をしましたか。(○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 津波に巻き込まれた 津波に巻き込まれる寸前だった 安全な場所から津波を見た 津波は見ていない 全 体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 10.0 5.1 3.7 12.9 18.5 25.1 22.3 26.2 25.9 25.8 44.7 61.1 53.7 34.1 29.8 20.2 11.5 16.5 27.1 25.8 99 問 15 で1~3 と回答した人のみお答えください 付問 15-1 あなたに津波が来襲したのはいつでしたか。 (○は1つだけ) 1. 避難をしてある程度時間がたってから、津波が来 襲した 2. 避難をしてから数分もしないうちに、津波が来襲し た 3. 避難の途中に、津波が来襲した 4. 外出先から帰宅の途中に、津波が来襲した 5. 子どもを迎えに行ったり、親や家族の様子を見に 行く途中に、津波が来襲した 6. 避難をせず自宅周辺にいたところに津波が来襲し た 7. 避難をせず自宅にいたところに津波が来襲した 8. その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 35.9 36.7 51.8 30.6 21.4 25.8 31.7 28.5 25.8 15.2 19.7 2.1 22.3 2.2 13.9 - 20.2 3.2 23.2 3.6 1.4 1.4 - 2.4 1.8 2.5 2.9 - 0.8 7.1 11.1 1.4 2.9 - 14.5 2.4 25.9 1.8 4.4 1.5 問 16 この地震や津波で、あなたのご自宅はどのような被害を受けましたか。(○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 津波によって全壊・全焼した 津波によって半壊・一部損壊した 地震の揺れによって全・ 半壊した その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 96.1 99.4 97.6 97.1 3.0 0.6 2.4 1.8 0.8 1.2 0.2 - 山元 90.1 7.3 2.0 0.7 問 17 は調査地によって設問が違います 問 17 あなたは、3月11日の津波被害の前までは、あなたの住んでいる地域に津波が来ると すれば、どのあたりまで津波が来ると思っていましたか。(○は1つだけ) (陸前高田市) 1. 津波は国道45号線を越えることはないと思った 2. 津波は大船渡線の線路を越えることはないと思っていた 41.4 25.5 17.8 8.9 6.4 3. 津波は今泉街道を越えるとは思っていなかった 4. 今回のような津波になるのではないかと思った 5. その他(わからない・選択肢外など) (南三陸町) 1. 津波は国道45号線を越えることはないと思った 2. 津波は県道221号線(清水浜志津川港線)を越えること はないと思っていた 3. 津波は気仙沼線の線路を越えるとは思っていなかった 4. 今回のような津波になるのではないかと思った 5. その他(わからない・選択肢外など) 36 1.8 48.8 7.9 5.5 (仙台市・名取市) 1. 2. 3. 4. 5. 津波は貞山堀を越えることはないと思った 津波は県道10号線を越えることはないと思っていた 津波は国道6号線(仙台東部道路)を越えるとは思っていなかった 今回のような津波になるのではないかと思った その他(わからない・選択肢外など) (山元町) 100 71.2 12.4 10 4.7 1.8 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 問 18 今回のあなたの津波避難は、次のどれに当てはまると思いますか。 (○は1つだけ) 1. 大きな地震を感じたら、何も考えず、すぐに避難するタイプ 2. 津波警報や避難勧告など、情報を考慮して、避難するかどうか決め るタイプ 3. 避難しようか迷っているうちに、津波警報や近所の人の勧めなどに 背を押されて、避難するタイプ 4. 避難しようか迷っているうちに、逃げ遅れるタイプ 5. 津波のことは思い浮かばないで、逃げ遅れるタイプ 6. ここは大丈夫だと確信して、逃げ遅れるタイプ 7. その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 46.7 48.4 59.1 48.2 山元 29.8 20.1 21.0 18.9 19.4 21.2 11.8 12.1 7.9 11.8 15.9 5.6 6.7 7.0 2.0 5.7 3.8 5.1 3.8 1.8 1.2 7.3 3.7 7.1 10.0 2.9 0.6 7.9 11.9 13.2 - 問 19 地震発生から数日間、あなたはどのようなことが知りたかったですか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 今回の地震についての震源地、規模について 2. 今後の余震の可能性や、規模の見通しについて 3. 津波の状況や今後の津波の可能性について 4. 地震や津波の被害状況について 5. 家族や知人の安否について 6. 水道・ ガス・電気・電話の復旧の見通しについて 7. 交通機関・道路について 8. 自家用車について 9. ガソリン・灯油について 10. 水・食料や生活物資について 11. 病院、医療、衛生について 12. トイレ・風呂について 13. 避難生活について 14. 原子力発電所の状況について 15. 仕事・学校・求人について 16. 仮設住宅について 17. 国や自治体の対応について 18. その他 19. 特にない 全体 19.0 21.2 25.1 34.3 69.5 29.1 14.0 7.6 28.2 36.8 18.5 20.2 18.5 8.3 7.8 9.0 14.5 6.5 5.5 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 11.5 29.3 22.9 13.4 29.9 30.6 18.5 32.3 35.9 28.0 40.9 43.5 71.3 74.4 70.6 21.7 38.4 27.1 10.2 25.6 13.5 5.7 14.6 8.2 19.1 32.9 31.8 25.5 52.4 40.6 13.4 28.7 20.6 14.0 31.7 21.8 17.2 24.4 18.2 3.8 14.0 8.8 4.5 14.0 8.8 7.6 14.0 9.4 12.7 20.1 13.5 7.6 2.4 5.9 7.0 3.7 4.7 山元 11.3 9.3 11.9 23.2 60.9 29.1 6.0 1.3 28.5 27.2 10.6 12.6 13.9 6.0 3.3 4.6 11.3 10.6 6.6 問 20 地震発生から数日間、災害に関する情報を得るために役に立ったものは何ですか。 (あてはまるもの全てに○) 1. テレビ 2. ワンセグテレビ・携帯電話のワンセグ放送 3. ラジオ(NHK ・TBC ・IBC ・FM仙台・FM岩手) 4. コミュニティFM・災害FM 5. 新聞 6. 携帯電話の通話 7. 携帯メール 8. 市や町の防災(同報)無線 9. 携帯・パソコンのウェブページ 10. パソコンのメール 11. SNS(ミクシーやツイッター) 12. 口コミ 13. 役場、警察、消防署などからの情報 14. 避難所にある掲示やチラシ 15. その他 16. 特にない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 9.3 6.4 4.9 18.8 6.2 5.7 3.7 10.0 54.7 54.1 51.8 62.4 1.4 15.4 10.8 9.8 27.1 5.3 1.3 2.4 10.6 4.0 0.6 3.0 8.8 1.7 4.3 1.2 1.2 0.6 2.4 0.5 0.6 0.6 22.4 28.0 22.0 14.7 12.5 10.8 12.8 8.8 14.3 13.4 18.3 10.0 2.6 4.5 2.4 1.8 13.7 18.5 14.6 10.0 山元 6.6 5.3 49.7 6.0 13.2 6.6 3.3 1.3 2.0 0.7 25.8 17.9 15.9 2.0 11.9 101 問 20 で「3.ラジオ」とお答えの方のみお答えください 付問 20-1 ラジオのどのような情報が役に立ちましたか。(あてはまるもの全てに○) 1. 大津波警報 2. 予想される津波の高さや時間 3. 津波の状況 4. 地震の震源や各地の震度 5. 余震の状況 6. 被害の状況 7. 自分の住んでいる地域の情報 8. 生活情報 9. 多くの人々が応援していることがわかったことや安心感を得たこと 10.その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 26.5 27.1 22.4 31.1 21.4 20.0 16.5 22.6 37.3 43.5 40.0 35.8 31.9 30.6 25.9 35.8 46.2 42.4 42.4 52.8 57.0 57.6 62.4 57.5 29.1 28.2 27.1 32.1 26.8 18.8 23.5 35.8 13.1 14.1 12.9 16.0 7.7 10.6 10.6 0.9 山元 24.0 26.7 29.3 34.7 45.3 49.3 28.0 26.7 8.0 10.7 問 21 この地震当日(3 月 11 日)に、あなたは次のような通信手段を利用しようとしましたか。ま た、利用しようとした通信手段はどのくらいつながりましたか。次のA~Gの通信手段に ついて、どのくらい利用できたか教えてください。(それぞれ○はひとつ) 陸前高田 利用しようと したが利用で すぐにつなが つながりにく つながりにく きなかった/ り、問題なく かったが、利 く、全く利用 利用しようと 利用できた 用できた できなかった しなかった/ 持っていな かった 固定電話 公衆電話 携帯電話・PHSの音声通話 携帯メール パソコンのメール パソコンのウェブ検索 ひかり電話などのIP電話 0.6 1.3 - 0.6 1.9 - 3.2 1.3 43.9 42.7 0.6 0.6 - 95.5 98.7 54.1 56.1 99.4 99.4 100.0 南三陸 利用しようと したが利用で すぐにつなが つながりにく つながりにく きなかった/ り、問題なく かったが、利 く、全く利用 利用しようと 利用できた 用できた できなかった しなかった/ 持っていな かった 固定電話 公衆電話 携帯電話・PHSの音声通話 携帯メール パソコンのメール パソコンのウェブ検索 ひかり電話などのIP電話 102 0.6 1.8 1.2 - 0.6 11.6 9.8 0.6 - 0.6 0.6 19.5 14.0 0.6 98.8 98.8 67.1 75.0 99.4 100.0 99.4 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 仙台・名取 利用しようと したが利用で すぐにつなが つながりにく つながりにく きなかった/ り、問題なく かったが、利 く、全く利用 利用しようと 利用できた 用できた できなかった しなかった/ 持っていな かった 固定電話 公衆電話 携帯電話・PHSの音声通話 携帯メール パソコンのメール パソコンのウェブ検索 ひかり電話などのIP電話 1.2 2.9 4.1 5.3 - 1.8 30.0 25.9 - 1.8 2.9 31.2 15.3 0.6 97.1 92.4 34.7 53.5 100.0 100.0 99.4 山元 利用しようと したが利用で すぐにつなが つながりにく つながりにく きなかった/ り、問題なく かったが、利 く、全く利用 利用しようと 利用できた 用できた できなかった しなかった/ 持っていな かった 固定電話 公衆電話 携帯電話・PHSの音声通話 携帯メール パソコンのメール パソコンのウェブ検索 ひかり電話などのIP電話 0.7 3.3 6.0 0.7 - 1.3 16.6 15.2 - 9.3 7.9 37.7 31.8 4.0 4.0 4.0 90.1 90.7 42.4 47.0 96.0 95.4 96.0 問22 災害時に電話が混線して使えない時、自分の安否を家族に伝えることができる仕組みに、 電話の「災害用伝言ダイヤル(171) 」や携帯電話の「災害用伝言板」があります。あなた は今回これらを使いましたか。 (それぞれ○はひとつ) 1. 使った 2. 使わなかった 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 4.8 2.5 2.4 10.0 95.2 97.5 97.6 90.0 山元 4.0 96.0 問 23 ご家族全員の安否がわかったのは、地震当日からどのくらい経ってからですか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 地震発生の当日 翌日 3日目 4日目 5日以上経ってから 現在もわかっていない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 32.4 19.7 28.0 38.8 24.5 21.0 22.0 27.1 17.1 18.5 17.7 17.6 6.1 7.6 11.0 2.9 18.4 30.6 20.1 12.4 1.6 2.5 1.2 1.2 山元 43.0 27.8 14.6 2.6 10.6 1.3 103 問 24 あなたは、地震発生から1か月後、どのようなことが知りたかったですか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 今回の地震についての震源地、規模について 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 10.1 5.7 16.5 12.9 山元 4.6 2. 今後の余震の可能性や、規模の見通しについて 24.3 17.8 27.4 35.3 15.2 3. 津波の状況や今後の津波の可能性について 20.2 16.6 25.0 25.3 13.2 4. 地震や津波の被害状況について 22.6 16.6 25.0 27.6 20.5 5. 家族や知人の安否について 6. 水道・ ガス・電気・電話の復旧の見通しについて 30.7 28.0 31.1 34.1 29.1 35.7 36.9 44.5 30.6 30.5 7. 交通機関・道路について 8. 自家用車について 9. ガソリン・灯油について 10. 水・食料や生活物資について 11. 病院、医療、衛生について 12. トイレ・風呂について 13. 避難生活について 14. 原子力発電所の状況について 15. 仕事・学校・求人について 16. 仮設住宅について 17. 国や自治体の対応について 18. その他 19. 特にない 18.8 8.1 30.1 41.1 25.9 22.9 35.7 11.4 15.7 38.6 28.8 5.6 5.3 9.6 6.4 19.1 36.9 22.9 18.5 41.4 7.0 14.0 42.0 28.0 5.1 5.7 29.3 13.4 36.0 53.0 34.8 32.9 35.4 11.0 23.2 41.5 25.6 2.4 6.7 20.0 5.9 38.2 38.8 24.7 20.0 26.5 17.1 12.4 32.4 34.1 5.3 5.3 15.9 6.6 25.8 35.1 20.5 19.9 40.4 9.9 13.2 39.1 27.2 9.9 3.3 問 25 地震発生から1か月後、災害に関する情報を得るために役に立ったものは何ですか。 (あてはまるもの全てに○) 1. テレビ 2. ワンセグテレビ・携帯電話のワンセグ放送 3. ラジオ(NHK ・TBC ・IBC ・FM仙台・FM岩手) 4. コミュニティFM・災害FM 5. 新聞 6. 携帯電話の通話 7. 携帯メール 8. 市や町の防災(同報)無線 9. 携帯・パソコンのウェブページ 10. パソコンのメール 11. SNS(ミクシーやツイッター) 12. 口コミ 13. 役場、警察、消防署などからの情報 14. 避難所にある掲示やチラシ 15. その他 16. 特にない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 59.5 63.7 45.1 71.8 3.7 4.5 2.4 5.9 42.7 36.9 47.0 42.9 3.7 2.5 0.6 1.8 51.4 52.2 42.7 53.5 15.1 12.1 20.7 14.7 7.8 4.5 11.0 8.8 0.8 1.2 1.8 5.9 5.1 4.9 7.6 0.8 0.6 1.2 1.2 1.6 1.9 0.6 1.2 19.5 19.7 19.5 17.1 15.9 14.6 18.9 14.1 23.4 24.8 28.0 15.3 1.9 1.9 0.6 0.6 4.7 5.7 5.5 4.7 山元 57.0 2.0 43.7 10.6 57.6 12.6 6.6 6.0 2.6 21.9 15.9 25.8 4.6 2.6 問 25 で「1.テレビ」 「2.ワンセグテレビ・携帯電話のワンセグ放送」とお答えの方のみお答えく ださい 付問 25-1 テレビのL字情報は役に立ちましたか(○は1つだけ)。 1. 2. 3. 4. 5. 非常に役に立った ある程度役立った 役に立たなかった 見ていない その他(わからない・選択肢外など) 104 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 38.6 33.3 43.2 43.5 32.9 20.6 37.8 38.7 7.0 9.8 4.1 3.2 21.2 36.3 13.5 14.5 0.3 1.4 - 山元 33.7 34.9 11.6 19.8 - 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 問 26 あなたは、家族や地域の人から、これまでの津波のことを聞いたことがありますか。ま た、聞いていたことにより、今回の津波への対応にどんな影響がありましたか (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 聞いたことがあったので、避難に非常に役に立った 聞いたことがあったので、避難にある程度役に立った 聞いたことが、かえって迅速な避難ができなかった 聞いたことが、かえって避難する必要がないと判断してしまった 5. 聞いたことがなかった 6. その他(わからない・選択肢外など) 問 27 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 26.8 43.3 46.3 10.0 24.1 28.0 36.0 21.8 7.5 8.3 2.4 10.0 10.4 8.3 9.1 10.0 29.0 10.8 5.5 44.1 2.2 1.3 0.6 4.1 山元 7.3 9.9 9.3 14.6 56.3 2.6 地震前あなたは、お住まいの地域の津波防災マップ(ハザードマップ)を見たことがあ りますか。 (○は1つだけ) 1. 見たことがある 2. 見たことがない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 42.4 57.3 43.9 32.9 57.6 42.7 56.1 67.1 山元 35.8 64.2 問 27 で「1.見たことがある」と回答した人におたずねします 付問 27-1 津波防災マップ(ハザードマップ)を見てあなたはどう思いましたか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 全 体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 43.0 43.3 54.2 41.1 29.6 20.6 26.7 16.7 16.1 20.4 22.1 15.6 18.1 30.4 29.6 13.6 14.4 11.1 12.5 16.7 0.7 3.7 自宅に津波被害の危険があることがわかった 自宅には津波被害の危険性がないことがわかった 自宅に津波被害の危険があるかどうかよくわからなかった 覚えていない その他(わからない・選択肢外など) 問 28 あなたは、今回の津波を体験して、「津波」についてどう思いますか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 津波が、このように高いものとは思っていなかった 2. 津波が、このように速いものとは思っていなかった 3. 津波が、このように強い力があるとは思わなかった 4. 津波と台風などの高波との違いがわかっていなかった 5. 更新される津波警報の波の高さの内容がわかりにくい 6. 津波の到達予想時間があると、かえって的確な避難の判断がで きないと思う 7. 津波の「浸水」という言葉は、建物が壊れたり流されたりするイ メージがわきにくい 8. 近年、津波(大津波)警報が発表されても、大きな被害になったこ とがないので、今回もたいした被害になるとは思わなかった 9. 大きな被害になるかもしれないが、正直に言って、自分自身や自 分の住んでいた場所は大丈夫だろう、たいしたことはないだろうと 思っていた 10. この地域では、津波被害は起こらないと考えていた 11. その他(わからない・選択肢外など) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 78.0 79.6 83.5 77.6 66.5 70.1 64.6 64.1 77.1 76.4 74.4 80.0 15.0 7.6 14.0 20.6 17.4 13.4 28.7 17.6 山元 70.9 67.5 77.5 17.2 9.3 14.5 14.0 19.5 13.5 10.6 22.1 13.4 26.8 28.8 18.5 39.6 36.3 42.1 48.8 29.8 42.1 43.9 41.5 46.5 35.8 26.3 0.6 14.6 0.6 15.9 1.2 33.5 - 41.7 0.7 105 問 29 今回の津波被害を経験して、避難や避難のための心構えとして、あなたはどのように考 えますか。 1. これからは大きな地震が発生したらすぐに避難しようと思う 2. 津波警報が発表されたらすぐに避難しようと思う 3. 津波警報で予想された高さがそれほど高くなくても避難しようと思 う 4. 津波についてもっと学習したいと思う 5. 津波に対する避難訓練をもっと行うべきだ 6. 津波に安全な場所や方向を知っておくべきだ 7. 国や自治体の想定や防災マップ(ハザードマップ)などはあてにし ない 8. 一度避難をはじめたら、何があっても家には戻らない 9. 車では避難しない 10. 車で避難しようと思う 11. 自転車やオートバイで避難しようと思う 12. 離れている家族などが心配でも会いに行ったり迎えに行ったりせ ず、それぞれが避難するべきだ 13. 津波により、地域が孤立したり、長い間避難所にいなければなら なくなるとは思わなかった 14. その他(わからない・選択肢外など) (あてはまるもの全てに○) 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 83.0 87.9 87.2 78.2 45.8 25.5 54.9 55.9 山元 78.8 45.7 32.9 21.0 50.6 35.3 23.2 11.7 25.5 42.1 6.4 19.7 35.0 13.4 26.2 48.8 16.5 32.9 45.3 9.9 22.5 38.4 11.7 10.8 14.6 12.9 7.9 34.0 11.8 16.0 2.5 23.6 12.1 3.8 0.6 55.5 21.3 18.3 1.8 31.8 10.0 27.1 5.3 23.8 3.3 13.9 2.0 26.5 18.5 45.7 26.5 13.9 26.9 17.2 34.8 28.2 27.2 0.6 - 1.2 - 1.3 問 30 あなたは行政にどのような津波対策を望みますか。(あてはまるもの全てに○) 1. 避難所にあらかじめ、食料・衣料・薬などの物資を備えておいてほ しい 2. 渋滞が起こらないように道路の幅を広くしてほしい 3. 近くに避難できる場所を設けてほしい 4. 避難所で情報を得るための備えをしてほしい 5. 避難所に駐車スペースを広く設けてほしい 106 62.0 50.3 72.0 68.2 56.3 33.6 44.9 39.1 16.8 36.9 41.4 33.1 17.8 32.3 50.6 51.8 22.6 36.5 54.1 40.0 11.2 28.5 31.8 30.5 15.9 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 続いて、 「緊急地震速報」についてお尋ねします (参考)地震が発生するとP波とS波という 2 つの波が発生して揺れが伝わります。P波はスピードが速いも のの揺れは弱く、S波はP波よりもスピードは遅いのですが揺れが強いという特徴があります。多くの人々が 体感し、被害を起こすような揺れはS波によるものです。「緊急地震速報」は、P波をどこかの地震観測点で感 知した段階で、被害などを起こすS波が到達する時間と震度を予測して発表するものです。 問 31 あなたは、3 月 11 日の地震(午後2時 46 分)で「緊急地震速報」を見たり聞いたりしま したか。また、 「緊急地震速報」を、何から見たり聞いたりしましたか。 (あてはまるもの全てに○) 1. NHK 地上波テレビ 2. NHK ラジオ 3. 民間放送地上波テレビ 4. 民間放送ラジオ 5. BSテレビ 6. 携帯電話のメールやアプリ 7. 建物の館内放送 8. 同報(防災)無線 9. 専用受信機や専用受信サービス 10. インターネットの受信サービス 11. 職員・従業員などの肉声による指示 12. その他 13. 見たり聞いたりしていない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 2.3 0.6 5.5 1.8 4.0 0.6 4.3 7.6 5.3 2.5 3.0 7.1 5.0 4.5 3.0 8.2 0.2 17.1 25.5 12.2 21.2 0.3 0.6 2.2 2.5 4.3 1.8 0.2 0.6 0.6 1.2 0.6 0.8 0.6 0.6 1.2 66.8 65.0 70.1 57.1 山元 1.3 3.3 8.6 4.0 0.7 9.3 0.7 0.7 0.7 76.2 問 31 で見たり聞いたりしたと回答した方にお聞きします。 付問 31-1「緊急地震速報」を知って、どんな対応をしましたか。 (あてはまるもの全てに○) 1. テレビやラジオで地震の情報を知ろうとした 2. 身の安全をはかった 3. 火の始末をした 4. 家族や周りの人に地震が来ることを知らせた 5. 小さい子どもや老人・病人などを守ろうとした 6. 戸や窓を開けた 7. 家や建物の外に出た 8. 車・バイクを止めた 9. 様子を見た 10. その他 11. 何をしてよいのかわからず、何もできなかった 12. 自分には関係ないと思い、何もしなかった 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 19.7 7.3 28.6 23.3 41.8 36.4 36.7 50.7 19.2 9.1 24.5 24.7 13.6 10.9 10.2 20.5 12.7 9.1 8.2 19.2 10.3 1.8 16.3 9.6 21.1 7.3 28.6 28.8 2.3 6.1 2.7 14.1 10.9 8.2 21.9 8.9 14.5 6.1 4.1 14.1 16.4 14.3 11.0 1.9 1.8 4.1 - 107 山元 19.4 38.9 16.7 8.3 11.1 16.7 16.7 11.1 13.9 16.7 2.8 問 32 3 月 11 日の地震のあと、何度も「緊急地震速報」の「警報」が発表されましたが、結果 的に予測されていたような大きな揺れが観測されなかったことが何度かありました。あなたは、 どのように感じていますか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 仕方がないことだと思う 2. 「緊急地震速報」は、はじめから信用していない 3. それまで「緊急地震速報」を信用していたが、今回のことで信用し なくなった 4. 「緊急地震速報」が発表されても、特に気にならなくなった 5. 「緊急地震速報」に慣れてしまい、(オオカミ少年の話のように)本 当に大きな揺れが来る際に活かされないのではないかと思う 6. 「緊急地震速報」が発表されたら、もっと人々の間にパニックや大 混乱が起こると思っていたが、意外とパニックや混乱が起こらないも のだと思った 7. 適切な「緊急地震速報」が発表できるようになるまで、「緊急地震 速報」の発表をやめてほしい 8. 結果的にはずれてもかまわないので、引き続き「緊急地震速報」 を発表してほしい 9. その他 10. わからない 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 55.0 48.4 60.4 58.8 1.2 4.3 0.6 3.4 3.8 3.7 4.7 1.3 8.7 5.1 9.1 9.4 11.3 15.6 17.8 15.2 14.1 15.2 7.8 6.4 6.7 9.4 8.6 3.4 1.9 4.9 2.9 4.0 53.3 40.8 54.9 64.7 51.7 3.3 9.8 0.6 15.3 3.0 12.8 4.1 4.1 5.3 7.3 問 33 あなたは、 「緊急地震速報」は、役に立つと思いますか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 非常に役に立つと思う ある程度役立つと思う あまり役に立たないと思う まったく役に立たないと思う その他(わからない・選択肢外など) 108 山元 51.7 - 全体 陸前高田南三陸 仙台 ・名取 34.6 42.7 32.3 40.0 56.9 45.9 61.6 49.4 5.8 7.6 2.4 8.8 1.9 3.8 3.0 0.6 0.9 0.6 1.2 山元 22.5 71.5 4.0 2.0 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 災害報道についてお尋ねします 問 34 あなたは、今回の震災報道で次のような問題があったと思いますか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 自分の住んでいる地域の取材や報道が少なくて不公平 感を覚えた 2. 取材の対象になっている地域が偏っているように思う 3. 報道が少ない地域では、支援や対応に影響が出たと思う 4. 震災の全体像がわかりにくいと思う 5. 津波の映像が繰り返し放送され、見るのがいやになった 6. 被害の報道ばかりでなく、生活に関する情報をもっと放送 してほしかった 7. いい加減であったり、実際のことを誇張したりした報道も 多かった 8. 原子力発電所の事故の報道が多くなり、地震・津波に関 する報道が少なくなっているのは問題だと思う 9. 不安ばかりをあおって、安心する報道が不十分ではない かと思う 10. 政府や電力会社の責任ばかりを報道しているが、報道 各社自身のこれまでの報道や姿勢についてももっと責任を 感じてほしい 11. 被災者への配慮が足りないと思う 12. 津波の予想される高さや時間などの細かい情報ではな く、もっと避難の呼びかけをした方が良かったと思う 13. その他 14. 特に問題はないと思う 問 35 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 山元 26.9 10.2 9.8 33.5 55.6 27.6 35.0 19.8 16.7 17.2 27.4 21.0 10.2 13.4 32.9 17.1 21.3 33.5 40.0 16.5 21.2 47.0 39.7 25.2 13.2 22.0 15.9 28.0 25.3 17.9 5.6 7.6 7.9 1.8 5.3 14.2 14.0 15.9 13.5 13.2 11.1 10.8 12.8 10.0 10.6 9.5 5.1 9.8 14.7 7.9 13.6 10.8 14.0 18.8 9.9 15.9 9.6 21.3 21.2 10.6 3.4 20.7 5.1 23.6 3.0 26.2 1.8 17.1 4.0 15.9 最後に、このたびの震災における、テレビ・ラジオ・新聞などの報道で、よかった点・ 悪かった点などがありましたら、自由にお答えください。 あなたご自身のことについてお聞きします F1 性別 1. 男性 2. 女性 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 42.5 49.0 43.3 33.5 57.5 51.0 56.7 66.5 山元 45.0 55.0 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 4.7 3.8 5.5 4.7 11.7 17.2 10.4 9.4 13.6 17.8 15.9 12.4 22.0 19.7 25.6 21.8 23.4 17.2 21.3 32.4 24.8 24.2 21.3 19.4 山元 4.6 9.9 7.9 20.5 21.9 35.1 F2 年齢 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代以上 109 F3 職業 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 漁業従事者 農業従事者 自営業 旅館・民宿 勤め人(パートタイム含む) 主婦 学生 無職 その他 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 5.8 8.3 12.8 1.2 4.4 1.3 1.2 4.7 6.7 7.6 10.4 6.5 0.2 0.6 30.2 34.4 25.0 34.1 22.6 19.7 22.0 25.9 1.1 3.0 27.7 27.4 23.2 25.9 1.4 0.6 2.4 1.8 山元 0.7 10.6 2.0 27.2 22.5 1.3 35.1 0.7 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 87.7 89.2 87.8 83.5 5.1 5.1 4.3 6.5 3.0 2.5 2.4 5.3 3.1 2.5 5.5 2.9 1.1 0.6 1.8 山元 90.7 4.6 1.3 1.3 2.0 F4 震災時の居住形態(○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 5. 木造一戸建て 鉄筋一戸建て 木造の集合集宅 鉄筋の集合住宅 その他 F5 震災時にあなたと同居していたご家族はどなたでしたか。(あてはまるもの全てに○) 1. 夫または妻 2. あなたの子ども 3. 親 4. 兄弟姉妹 5. 孫 6. その他 7 居していない、もしくは不明 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 67.8 65.6 67.1 70.0 58.1 58.6 60.4 57.6 34.1 31.8 37.8 34.7 5.8 3.2 8.5 8.2 15.3 12.7 12.8 17.6 5.5 2.5 7.9 7.1 7.9 8.9 6.7 5.9 山元 68.2 55.6 31.8 2.6 17.9 4.0 10.6 F6 震災時、次のような方は同居していましたか。 (あてはまるもの全てに○) 1. 2. 3. 4. 5. 小学生以下の子ども 65歳以上の高齢者 病気で介護の必要な方 足の不自由な方 同居していない、もしくは不明 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 19.8 21.0 22.6 17.1 46.6 43.3 54.3 51.2 7.5 5.1 8.5 8.8 7.5 0.6 12.2 6.5 40.7 43.3 31.1 37.6 山元 18.5 36.4 7.3 10.6 51.7 F7 自宅から海までの距離はどのくらいでしたか。 (○は1つだけ) 1. 2. 3. 4. 歩いて10分以内 歩いて20分以内 歩いて30分以内 歩いて30分以上 全体 陸前高田 南三陸 仙台 ・名取 50.5 45.2 75.0 40.6 26.3 31.2 15.2 30.6 11.5 10.8 4.9 15.9 11.7 12.7 4.9 12.9 長い間ご協力いただき、本当にありがとうございました。 110 山元 40.4 28.5 14.6 16.6 付属資料 アンケート調査票(自由回答) 問 31 あなたは、3 月 11 日の地震(午後2時 46 分)で「緊急地震速報」を見たり聞いたりしま したか。また、 「緊急地震速報」を、何から見たり聞いたりしましたか。 「その他」 息子さんから携帯で教えられた。/携帯電話のメールやアプリはバックの中にあり聞こえなかった。/車のテレビ/覚えて いない。/鳴らないタイプ。/車のテレビ、ラジオ/鳴らなかった/散歩中で携帯持たず。/システムなし/車の中のテレビ/ 付問 31-1 「緊急地震速報」を知って、どんな対応をしましたか。 「その他」 特になにも/避難をしていた。/家にすぐ携帯で連絡した。/なりだしたころには、揺れていた。/コンセントを抜いた。 物をよけた。/聞こえなかった。/すぐ自宅に戻った。/あっという間だった。/介護必要な夫を車に乗せた。/一気に高台 へ走った(車内だったので)。/隣近所に逃げる声掛けしようとした。/すでに揺れている時に速報が鳴った。/揺れと速 報がほぼ同時だったので、何も出来なかった。/よくわからなかった。地震速報って気付くころには揺れてた。/覚えて いない/おばあちゃんのところに行った。地震の話をするヒマはなかった。/地震と同時だった。/大事な物だけは肌身は なさずいた。/自宅に戻った。/見てすぐ揺れた/ 親戚の家に行くことで頭がいっぱいだった。/携帯から鳴る緊急地震速 報の音が何なのか分からなかった。/ 問 32 3 月 11 日の地震のあと、何度も「緊急地震速報」の「警報」が発表されましたが、結果的 に予測されていたような大きな揺れが観測されなかったことが何度かありました。あなたは、 どのように感じていますか。 「その他」 情報がなかったので、地震が来て初めて知る様な感じだった。/存在を知らなかった。/見てない。/大きな地震がなくて 良かったと思う。/もっと精度を高める。/悪いことは何もない。/もう少し精度を上げてほしい。来ないのに毎回だとま いってくる。/地震速報が流れるたび、いやだった。/パニックになるので、震度4位から鳴ってほしいと思った。/やめ てほしいと思う。/信用できるものにしてほしい。/鳴らないタイプかと思ったら、時々鳴る。/正確でなくても自分とし ては心がまえとして頭に入れておく/あまりあてにならない。/何とも思わない。/鳴るたびに恐怖を感じた。/気になっ ていない。/当りはずれは気にならなかった。/ドキドキしてダメです。パニックになる。/正確な情報がほしい/怖いの でいらない、思い出してしまう。/レベル別にしてほしい、段階に分けて/ 問 34 あなたは、今回の震災報道で次のような問題があったと思いますか。 「その他」 TVを見ることができなかった。/特に感じてない。/あまり頑張ってばかり言わないでほしい。/正しい情報がない。/ 避難所にあまりにも来られてもこまる。/支援物資やもろもろの対応にバラツキがあった。/わからない/地元の情報がま ったく伝わって来なかった。/何が起こっているかわからなかった。/観光地のようにあつかわれていたので、いい思い はしなかった。/各報道関係者は、良くぞここまで取材できたと思う。記者は歩いて記事を書き、ベストをつくしたと 思う。/嘘な情報が多かった。/繰り返し同じことを報道されいるのを見ているのは辛い/避難所ばかりとりあげず、仮設 のこともとりあげてもらえたらよかった。早い時期に仮設所もとりあげてもらえていたら、みんな避難所と往復したり しなかったかも。/新聞は役に立たなかった/山元町はあまり報道されなかった。/情報を得る手段が失われていた。/大 き目の津波が来ると報道した方がいい。小さ目だと逃げなくても大丈夫と考えてしまう。/①TVを観ることができな かった。②メガネが流され、新聞を読むこともあまりなかった。/行政が情報を出さなかったから。/何とも言えない。/ 原子力報道について正確に早く/原発の問題への危機感や女川原発の安全性を含めて報道が必要だと思う。/気仙沼や石 巻とかメインで報道されていて、地元や小さい地域も情報を流して欲しかった。/空からの映像だけでなく、緊急の 時、空から避難を呼びかけて欲しい。/ 112 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 問 35 このたびの震災における、テレビ・ラジオ・新聞などの報道で、よかった点・悪かった点 などがありましたら、自由にお答えください。 良かった所。仮設に子供優先で入れたので物資は十分頂けたが、最後には余ってしまった。悪かった所。報道関係(T V)の人達が勝手にカメラを回して子供たちを撮ろうとしたり、無断で入ってきたりと迷惑だった。もう少し気遣いが ほしかった。/TVで他の地域の様子を見て、高田だけじゃなく大変なんだと思った。/津波の映像を流しすぎ。/○支援 がたくさん来てくれた。×何度も津波の映像を流しすぎ。/特になし。情報は特に気にしていない。/今後のために津波 の情報を放送してくれてよかった。/・情報多すぎて混乱(いろいろな地域のことを言ってたから仕方ないけど)。・応 援メッセージは嬉しかった。/・マスコミのインタビューなどで知人の安否を知れた。・テレビラジオ新聞などで、自分 たちの無事を知った人たちが石川や九州など遠くから連絡をくれたり、支援物資を送ってくれた。・不安をあおる不確 かな情報が多い。/ラジオでの安否確認が出来た。取材しながら探している人の情報をリストにして持ち歩いていたの でとても助かった。/テレビ出演での安否確認が出来た。元気な姿を見せて欲しい。避難所の人々の顔が見れて安心し たと言われた。/・L字や新聞の情報はかなり役にたった。・避難所に長くいなかったが、テレビ、新聞などでの情報は 役にたった。/・東日本の地震があったこと、困っていることを忘れられることなく復興されるまで、いつまでもしっ かりと報道してほしい。 ・もう少し政治家には被災地のことをわかってほしい。・ボランティアの人にはほんとに助けら れた。・今でも新聞で地震のことが報道され、うれしい。/自分自身として立ち直ることで精一杯で、報道まで気がまわ らない。/様々な角度から報道しているが、見るタイミングによって感じ方は違う。各社総合的に見て判断するのがい いと思った。数値(α線、ガンマ線、β線)測定器報道されていない。すべて測定可能なのか?/安否情報の確認がで きて役立った。福島の人たちの方が大変だと思った。/15 日くらい経過して、避難所に各社新聞が届いたのが助かった (安否等)。TVはしばらく見ることができなかった。近所でたくさんの方が亡くなり、身元確認でそれどころではな かった。自衛隊の方には感謝している。/(親戚宅にいたため)避難所にしか物資が届かないし、もらうこともできな かった。避難所優先。物資は平等に分けてほしい。/・震災直後は報道陣がたくさん来てインタビュー等とても困っ た。直後は状況も分からず何も答えられない。迷惑に感じた。他に手伝えることがあるのでは?と思った。・自分は親 類宅に行ったが、陸前高田は物資や食料等、他の場所と比べてひどい方だったと聞いているとのこと。冷めたポロポロ の味のないおにぎりが1日に1個だけとか。/避難所に報道陣がたくさん集まり嫌だった。インタビューに答えている わけでもないのに、振り向くとカメラが自分に向いていて知らない間に映っていることがあった。避難所で、ただでさ えプライバシーがない中でカメラを気にしたり、ストレスにもなり、本当に疲れた。配慮が足りない。見世物じゃな い。必要なことだけ流せばいい。/3日間毛布一枚だけ。下にダンボール一枚。TV、新聞を見れる環境じゃなかった のでわからない。津波報道は地域名(例えば「高田全町村、避難して下さい」とか、はっきり分かりやすく地域名で報 道してほしい。)場所を特定せず、あいまいな報道、警報だと、油断して逃げない人が増える。/これから先の生活、保 障等どうなるのか早い段階で知りたい。TV等の報道は、しばらく見ることができなかったから、結局被災地の人には 役立たない。他に早く情報を伝達できる手段があればいいと思う。/なぜ、同じ特定の場所ばかり報道するのか?行政 や国、自治体がしっかりと事前に対策をとっていれば困ることはないと思う。食料、水、電話や自家発電等、毛布など の確保。/色々と皆さんにして頂いて有難いです。自分自身元気なので他の方の世話をしている。/特にはない。/映像を 見ていないので、そしてTVが映る頃には原子力の事ばかりが多かった。/取材は多かったが、ありがたいけど迷惑な 面もあって。/地震時外に出て異様な感じを受けた。避難誘導はなかった。私の身内が盛岡から来て、各避難所に伝言 ノートを置いて持ち帰って色んな人に連絡を取ってくれた。/・津波の報道ばかりで不安になった。 ・報道のおかげ で支援を受けれたことには感謝。/陸前高田はたくさん報道してもらってありがたかった。特に不満はない。/1カ月く らいでNHKがテレビを設置してくれて助かった。その時にはじめて被害の大きさを知った。/取材のおかげで全国か らたくさんの支援があったことに感謝。/津波の映像ばかりのイメージ/・新聞の情報が特に役に立った。避難場所にテ レビ、電気も3日目には整えられた。・避難所に食料がたくさんあり、また周りの人にも助けられてよかった。(避難所 やはぎ公民館)/・高田市は多く報道され助けてもらえるが、報道が少ない地域は物資等差があった。・避難生活など今 の現状ももっともっと報道していくべきだと思う。/・初めの頃は食べ物、水がまったくなく、できるだけ早い対応を してほしかった。/仮設によって物資なども行きわたらない所があったりしていた。/想定外だったので、まさかと言う 思いの方が強く、しばらくはぼう然とした日々だった。/ラジオなど停電になっても使用出来たので便利だと思った。/ 防災無線は途中は切れた。/報道はいいかげんだと思った。/自分で海を見て様子を見ていた。自宅周辺を高くしてい 113 た。/報道関係の人達が自分達の考えを付け加えたりして報道していた。/この場所(仮設)は割と生活しやすいです。/ 今だにNHKで津波の映像を流しているがやめてほしい。その時を思い出して切なくなる。近所の人も同じことを言っ ている。/仮設住宅について、体が不自由な人は優先的に入れるようにするという話を聞いたけどうそだった。/嫌だと いうわけではないが、津波の映像を見ると、その時を思い出してしまう。今でも夢だったのではないかと思う。/テレ ビのおかげで息子に安否を知らせることができた。/津波の映像が多いということは感じた。/はじめのうちは自分の地 域の情報が少ないと思ったけど、少しずつ増えて良かった。/・ラジオがすごく役に立った。・テレビは電気がダメでは じめは役に立たず。/仕方のないことだけど、避難の呼びかけの有り方が、今回無事避難できた人もいれば、せかさ れ、車で逃げて混雑してダメだった人もいる。道路の状況とか避難場所の広さが問題。報道の有り方は仕方ない。津波 の映像ばかりだったけど。/原発など『不安なニュースが多く感じた。でも今はそんなにニュースになっていない。大 丈夫なのか心配。/・避難の呼びかけはもっともっと必要。経験したことない若い人たちは昔の話をきいてもピンとは こないだろうから。 ・いろいろな地域の人が応援してくれていること、他の被災地の人たちもがんばっていることがわ かって良かった。/ラジオ 安否情報が助かった。細かい日常の情報がもっと知りたかった。復旧のめどが知りたかっ た。あらゆる情報を流して欲しい。/・ラジオ 電波が入らない所もあって途中で切れてしまう。あった事だけ放送し ていて、その後の状況は流れず。新しい情報もまじえながら。・新聞 一部ずつでもいいからものを配布して欲しい。 各地区の写真けいさいされて、物資も届かない小さな避難所も映して欲しかった。かたより。/・ワンセグ等に緊急チ ャンネルが一定の期間あれば、どこにいても情報がキャッチできる。・電気ではなくソーラー等の自然を使った物でテ レビ、ラジオ等を警報に使えるようにして欲しい。選挙の時のように全放送が同じ物が流れるように。・また、車のソ ーラーで警報が受信できるものをそうびして欲しい。/同じ地区に取材の人々が同じ事を何度も聞く。/段々と報道が少 なくなって来ているが、まだまだ大変な人達がいるので支援すべきだ。ここの仮設の建ってる所は自分の所有の土地で 近くの年老達を早く避難生活から解放してやりたくて市に申し出たが、中々許可が出なかった。/とにかく早く行動 (避難した)ので助かった。/特にはないけれど、今後の生活などが心配だ。ここは仮設を出るときにはたたみなども 表がえをしたりと自分達でメンテナンスをして出なければならないので大変だ。親の年金を頼りに暮らしているので。 /もっと伝えてほしい事がちゃんとされていたのかが?!新聞記者で親身に取材してくれている人もいた。/津波などの 映像は被災者にとっては意味がないと思う。 /あまり見なかったのでわからない。/思いつかない。/3mの津波が来る という報道があったらしい(友人から聞いた)。実際は 10m以上の津波が来た。間違った情報で余計パニックが起き た。息子に以前から地震が来たら高台へ行けという指示をしていたから家族は助かった。/たくさん取材された割には 津波の映像ばかりで利益があまりない。/・ウソの情報が多い。もっと正しい情報を!!・報道がもっと伝わるように テレビ、ラジオなどの情報網をもっと整備。・仮設住宅をもっとしっかりと整備してほしい。・仮設住宅の人数に対して の部屋の大きさをもっと考えてほしい。4人まで2K、5人~3K。/・もっと隠さず、すべてを報道してほしい。・自 衛隊ももっと早く来てほしい(一週間後)。・すべての対応が国はおそい。/・直後のラジオの報道はあまり被害の少な い地域のものがあり、被害をもっとも受けてる地域の報道をもっとしてほしかった。/・避難場所をもっと高い所に作 ってほしい。・まず、テレビ、ラジオが見れない。しかし、持っている人に見せていただいたり、いい点もあった。/・ もっと報道してほしい。・広田地区は報道に関しても支援も高田市中心部に比べて少なく差を感じた。/・正確な情報が あれば助かった人が多かったはず。・高台への安全な避難所。 ・国、行政の対応。・とにかく対応早く。 ・今後の生活、ど うなるのか不安。/当時はTVも新聞もないし、何を信じていいのか分からなかった。原発についても全く知らず2週 間経ってから知った。とにかく情報がほとんど入らなかった。/自分が体験した津波がどのようなものだったかを知り たかったから、放送してくれてよかったと感じている。/テレビ局が来たけど、そんなに嫌ではなかった。テレビのお かげで安否を知らせることができたから感謝している。/全国からの支援は助かった。/亡くなった人もたくさんいるの に、津波の映像を放送するのはよくない。気の毒に思った。・3.11 の特別番組とかあって良い。録画している。・いろ いろな情報が混乱をまねいたが、今回の地震を教訓にしてほしい。/地震が大きかったからだけど、全体像が本当にわ かりにくかった。目の前で街がなくなるのをみて、日本はどうなってしまうのかと思った。だからこそ、的確な情報を 素早く送ってほしい。/・もっと避難をうながせたらよかった。・自分も含め、大きな津波を経験したことのない人は甘 くみてしまっている部分があった。もっとテレビ番組で今後のためにも震災の特番などしてほしい。/精一杯報道して くれていたと思います。はじめは不公平だと思ったが、あとあと陸前高田も流れるようになったから良かった。 / ラジオに助けられた。生活情報とかも。/いろいろな情報が入ってきて良かった部分もあるが、入りすぎて本当にほし 114 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 い情報が得にくかった。/自分の住んでいる地域の状況をいちはやく知りたかった。/原発だって地元の人は家に帰れず 大変な思いをしている。こちらをもっととか、そういう話ではない。みな同じくつらい思いをしている。/被害の大き さを報じるのも大切。でも前を向いて今を生きていかなければならない。/・マスコミ来たのは随分あと。・山に避難し てたからよくヒッチハイクした。マスコミの車に乗せてもらうことが多く、県境の山あいにも来てくれといったが、ほ とんど来なかった。みんなが注目しているところ(高田一中のあたり。実際被害は大きいし、人も多かったけど)にば かりいって。/偏ってしまうのは仕方ない。市や町の役所の機能が失われたところは、どうしても情報が正確につたわ らないだろうし、これから今回のことをどういかしていくか。/・多くの励まし、良かった。・テレビや新聞に近所の人 や知人の名をみつけ嬉しくなった。・一時話題になったが、子どもたちへのインタビューなどは本当に気にかけてほし い。/・ラジオ 遠くの親戚や子供等に無事を知らせる事が出来た。・新聞 避難場所の掲載で、近い場所から探しに来 てくれた。/デジタル化、衛星で波を計測し、速報できるシステムは作れないものか。/原発の風評被害が出たので慎重 にして欲しい。今後も継続して地元への応援をして欲しい。/3mという放送が判断をくるわせた。8mと聞いても、 その後の放送も聞き流したのではないか。街に住む人達が多く波にのみこまれたのは、その放送を聞いていたが、今ま でもたいした事がなかったので家も無事だったから、かたづけを始めたり海の様子を見に行ったりした人がいたのでは ないか。/電気が来ないと機器類は使えない。不便がないようにソーラー光を利用した一般家庭用品の発明が不可欠。/ 被災地の本が何冊も出ていて様子がわかる。/・安否情報をとにかく知りたかったから、新聞がよかった。・テレビだと 見逃してしまう。/津波を経験していない人は津波の映像をみたいかもしれないけど、経験した方はもっと生活に役立 つ情報がほしかった。/・どういう情報を発すればいいのか見極めて流してほしい。不安をあおるものばかりみても気 がめいる。・おきてしまったことはしかたない。/娘のところにいたから(東京)、津波のばかり。まわりにはそれみて 気を病んだ人もいる。/ほぼラジオだったし、テレビはそんなに見れなかったからうちは大丈夫だったけど、子どもと か津波の映像を何度もみせるのは良くないと思う。被災している子はもちろんだが、していない子でも。/・はじめの うちの混乱の中は仕方ない。・責任はもちろんだが、今もなお苦しんでいる人、みつかっていない人もいる。そういっ た部分を理解してほしい。/継続して報道して欲しい。/情報を自参。/ビデオレターは良かった。/チェック機能が出来 ていない。/200 人以上並んでいる死体はすべてお岩さん(ご本人の言葉です)のようで判別できず、大変傷ついてい るそうです。それを毎日続けて探さなければならず、心がめいっている様子でした。時々話す目から殺気すら感じる 程、するどい目をされながら話しています。/指定避難場所以外に避難した人たちには物資が届きにくかった。/・報道 が大ざっぱ過ぎる。もっと細かく詳しい報道が必要。・最近仮設にボランティアの数が多いと感じる。多過ぎて少し迷 惑。/TVを見たのは2ヶ月後、道路状況も悪かったため新聞も来なかった。/毎年、まじめに避難訓練に参加していた 人たちが素直に体育館に逃げて流された。避難訓練に参加していなかった人たちは他の高台に逃げて助かった。指定避 難場所の体育館が海と同じ高さだった。毎年避難訓練で使っていて(屋上もない)、そこに逃げた人たちがたくさん亡 くなった。津波からの高台避難所が必要。/新聞の情報はとても良かった。民放よりもNHKの内容が良かった。TV は停電のため1ヶ月近く見ていない。/・遺体確認 実の母親の遺体が 3/27 に上がって安置されていたのに、遺体の状 態が悪く全く気づかず見落としてしまった。毎日安置所に通ったが、結局母に気づくことができず、つい最近DNA鑑 定で判明した。安置所での身元(遺体)確認は本当にひどく辛い。・報道が集中し、TV等に出たのは高田一中だけだ った。他の避難所には一切取材なし。物資も偏り、芸能人が来たのも高田一中だけだった。全体を報道してほしい。不 公平を感じる。/陸前高田地区の情報が最初の頃は全くなかった。支援物資が避難者には支援がなかった。自宅に残っ て不自由している人たちも多かった。かえって家が流されず、残った人たちの方が不便だった。避難所の人たちからは 家が残っただけいいと言われる。/今回津波に巻き込まれ、助けられなかった患者さんもいる。詳しいことは、あまり 話したくない。/陸前高田市は良かったが、他のエリアはかわいそうと思う。/その土地の人が求めている情報を早く正 確に伝えてほしい。/停電でTVを見ることできなかった。地元の情報がほしかったが、知ることができなかった。何 か対策を。/高田地域は物資が早かった。/ラジオ…取材の人がリストを作成して伝言伝達をしながら仕事をされてい た。 テレビ…地元のテレビ局(ごきげんテレビ)が毎日安否確認のビデオレターのような番組があり、無事を確認で きて、安心している人達がたくさんいた。/周りの地域の様子を知りたかった。新しい情報が欲しかったが、報道規制 があったのでしょうか?/テレビ、ラジオの放映を見た人達が、それぞれ口伝えに映っていた人達の話をしていた。/ラ ジオで3mと言っていたので安心してしまった。/・高田一中がテレビに映ったとき、たまたま家族の安否を確認でき た。・娘さんがテレビでの○○を受けて、全国の様々な方からおくりものがあり、大変うれしかった。/何度も避難所な 115 どで同じようなことを聞かれることがありこまった。報道陣や避難所にきている様々な方から。/・マスコミがしつこ すぎた。避難所に何度も聞きに来てたためしつこい。また、もっとおちついてから来てもいいのでは?・岩手のボラン ティアがおそい。・孤立した地域が多くあった。 ・お年よりへの対応をもっとしっかり安心な居場所。・物資の配分の不 平等。/・避難所生活での食事が大変だった。また、病気があるため苦労した。・報道に関しては満足。・通信もあまり 苦には感じませんでした。・トイレ、食事などの整備をもっとしてほしい。/・テレビなどで報道されたことで、支援物 資や食べ物が送られてきて大変助かりうれしかった。・テレビで今一番必要とされている物資が報道され、そのおかげ でクツなどが送られてきて助かった。・タイコやイベントなどで元気づけられた。/・報道されて悪かったことはない。 間違った情報もあったがしょうがなく、報道はたくさんされるべきだと思った。・震災に対する行政やボランティアな どの対応をもっとスピーディーに。/2ヶ月間テレビを見れなくて、様々な報道があるなかでも見たいと思った。/・あ まり震災の報道がされすぎていやに思う人もいるが、知る権利も含めて多く報道されるべき。・被災者への配慮。 ・ 仮設のあり方-家族がもっと一緒になれるように。/・もっと明確な今後の生活のビジョンがほしい。仮設はいつまで いられるかわからない。・だいたい生活は戻ってきている。とりあえず家。/・報道で話したことと違うニュアンスで報 道されることが多く、もっとしっかりと報道してほしい。・実質的に被害を受けた方の声が届いていないし、手の差し のべ方も、もっと考えるべき。/・高田は報道が少ないと思った。・新聞の取材が多く大変だった。また、人をもっと選 んでほしい。/・特に不満な点は報道はなかった。・仮設の部屋に対する人数の調整をもっとしてほしい。3DK→8人 に今住んでいる。/・個人情報を聞かれ、うまく話せない。・話したいことを報道陣に話すことができなかった。・避難 所生活が多く報道され、支援などにつながったと思うのでよかったと思う。/報道の記者、カメラマンも大変な思いを していると思い、悪かった点はなく、よくやってくれたなと思う。/地元では実際にTVを観ることができなかった。 防災無線等で警報を出してほしい。各自責任持って避難してほしい。指定避難場所は津波の避難には役立たなかった。 まじめに素直に避難した人が皆亡くなった。/報道でよかった点・悪かった点、特になし。食料、毛布。体が不自由な ので大変だった。/TVがない所に避難したので見ていない。特にない。若い人たちにしっかりやってもらいたい。/・ 正確な情報を報道してほしい。・情報がほしい。震災時、今後。・仮設から出たあとのことが心配。・将来のことが不 安。/早く自立するための手段を考えてほしい。仮設住宅に住ませてもらったり、たくさんの支援もあり感謝している が、これ以上世話になることはできないので、早く自立したい。自分たちの力で生活できるようになりたい。/防災無 線が3mと言っていたので、皆安心した。それで避難せずに亡くなった人も多くいた。正確な情報を早く確実に伝える 手段がないとダメだ。/指定避難所のお寺まで津波が来た。駐車場に止めていた自分の車が流されてフェンスの上に乗 っかった。ご主人が寝たきり、車いす。オムツの交換があるが、避難所は仕切りやプライバシーがないため、避難所に いることができなかった。仕切りやカーテンスペースなど、あらかじめ備えがあればよい。/取材先で「どう思っ た?」などと聞かれるが、答えられる気持ちではないので、あまり深く入りこんでほしくなかった。/テレビから少な からず情報が入ったので良かった。悪かったこととしては、特に目立っては無かった。/・震災直後は情報が正しいも のから誤っているものまで取りあげられ困った。・安否確認ができるのは非常に良いと思う(亡くなった方に関しての 情報でも)。・避難所に新聞をもってきてほしかった。/(良)南三陸はTVなど報道は多く、支援、ボランティアは多 く頂いた。※旦那さんは未だに不明の状態。見つからないことでの悲しみが強い。自宅?2階で?/悪いことは感じな い。支援はありがたい。/早い段階で物資をもらえたので良かった。鳴子温泉に一時避難させてもらったが、TV、新 聞の情報も入り良かったと思う。分からない情報も得られた。/初めの頃、TVカメラがきて兄弟が安否確認できた。 一部の人クローズアップするのもいいけど、広範囲にみんなの顔を映してほしい。TEL連絡取れなかったので(関東 の姉)、TVを通じて姉に元気で生きている姿を見てもらえた。/障害者用に大きな声を出さないでほしい。報道は人を 傷つけると思う。テレビ、ラジオは電気がないと使えないし、新聞は字が見えない人には不便だからいらない。/メデ ィアは全然役に立たない。行政、自衛隊が協力してくれて良かった。/同じ津波映像ばかりで嫌になる時もあるが、他 県の人達に被害の状況が伝えられて良い面もあったと思う。/少々誤報があっても、津波情報は出すべき。/特にない。 11 日だけはラジオをみていたけれど、12 日 22 人だけのこされたときは怖かった。@会館。となりの病院には看護師 さんの灯りがみえた。ほしいときに何の情報もなかったし、みれる状態じゃなかった。その後●●→利府なので、本当 に必要なタイミングではみれてない。みてたのは大抵新聞。/他の地域での被害状況を知れたのは良かった。悪いこと は特にない。/新聞を見る気が無くなり、TVのありがたさが分かった。/同じような映像ばかり流して、本当に流して ほしい映像や情報が流されなかった。被災者が最もメディアに頼っているのだから、生活情報だとか食料の情報を流し 116 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 てほしかった。/報道的確と感じた。報道陣が多数、ヒガイ。ボランティアがきた。映像が多かった。支援物資。報道 メディアのおかげと感じた。自衛隊、早い対応→もっと早く対応(政府)出来ていたら助かった者も多かったと思う。 /良→新聞地方版、ことこまかく取材してあってよかった。TVニュースはさっと情報流すだけ。 悪→誤報。正体不 明の人物がニセモノ腕章、自衛隊の服装であやしい人物多く居た。空家狙い??/ラジオ、テレビから情報を多く知る ことができて良かった。/小学校に避難していた時、安否をつたえるテレビ→電話通じず電気通じずだったので、元気 なのを伝えられてよかった。けんちく板金やさん→仕入れ先の方が(一関)みててくれた。/テレビ見てない。復旧し てないし、新聞も配達人にいったらもらえた位。/ずっとTVを観るわけにはいかない状況で、河北新報の生活欄や現 状の記事はとても役に立った。芸能人が度々来るようになり、子ども達の暇つぶしになった。そういう意味ではメディ アは役立った。/テレビをみて思うところがあった。取材にきた人たち。/良・被災地の状況がTVなどで報道されたこ とにより、ボランティアの方がきたりしたこと(世間の目が被災地に向いた)。悪・被害の大きいところはよく報道さ れたのに、小さい被害のとこは何もされず孤立したと思う(支援の手が届かなかった小さい集落が多くあったはず)。/ 良・町長さんTV出演、全国注目で支援があったと思う。 悪・自衛隊風呂の支援の取材で(TV)、 「風呂に入ってい るけど自衛隊の人入ってないの知っている?」発言の真意は何に悪意を感じる質問。支援されている側の感情を無視。 逆なでするような感じを受けた。 怒・「毎日お風呂入れさせてもらっている」、 「自衛隊の人は全然入ってないの知っ てますか?」、「知らなかったけど」←この質問の真意は。もしくは聞き方がよくない。何と言えば良いのか?/取材を 受けたとしても2週間位時間がかかるので迅速に。自分達の現在の状況がテレビを通して全国に報道されたのが良かっ た。高校生がぬれた洋服をぬがせて、かわいた洋服を着せてくれて助かった。自衛隊のヘリが足のケガをした人の所に 来てくれて、ケガ、病気の人達を助けてくれた。一刻をあらそう人が助かった。/情報がおくれている。安否がわから ない。一週間しないとわからなかった。/特になし/・全国の人に助けられた。 ・友達も出来た。 ・物資を他県の人が送っ てくれた。・人とのつながりができた。・家は流されたけど新しいものを得られたものもある。失ったものばかりではな い。・ボランティアに来てくれ、本当に助かった。/・見る機会なかった→TVは1ヶ月電気がこなかったため1ヶ月み れなかった。・物資で自家発電のラジオいただいた。それを聞いていた。・日中はソーラー電気、それまで2~3週間は ろうそくで生活。小学校の避難所で仮設に入るまで生活していた。 ・暗くなれば寝て、明るくなったら起きるのくり返 し。・寒かった。ストーブは1ヶ月以上たってやっと1台、また1台ときた。・ガソリンもなく不便だった。/・物資を 呼びかけてもらったこと(何も失ってしまって大変だけど)。 ・カキ、ワカメ、養殖施設も家も全て失ってしまって(体 一つ)いろいろ援助してもらい助かった。/ヘリ自衛隊がすぐに来てくれて助かった。対応がすごく良かった。ライフ ラインをもっと早く復活させるべき。/報道は役に立たず、自衛隊が探していた物を見つけてくれて良かった。テレビ 局の取材が来ても何かしてくれた訳ではない。/報道そのものが1ヶ月たってもラジオだけしか使えない。なので、テ レビ、新聞はあまり役立っていなかった。テレビも買えない。今回の報道関係者は、非常に努力したと思う。特に記者 さん。日本や世界にこの状況を伝えたのはすばらしい。拍手を送りたい。一番苦労したと思う。電車、新幹線がダメな 時、車や徒歩で取材してくれたのは感謝している。/津波の当日、”連絡下さい”とラジオで流れていたが、電話やメー ルの手段がないので意味がない。/特になし/特になし/最初のうちにもっと早く原発の情報がほしかった。放射能の問題 を早く知りたかった。/南三陸はTVや報道でフューチャーされたのでありがたかった。/南三陸の町長がTVに出たこ とにより、支援が頂けたし、世間に訴えることができてよかったと思う。/テレビでどの局をかけても同じ情報しか流 れてなかったのが悪い点であり、他の情報もほしい。/TVによって実際の被災地の状況を知らせることができて良か った。しかし、誇張がすごかったという点も否めない。/ラジオや新聞でいち早く情報が流れて良かったと思う。/南三 陸町と気仙沼が明るい復興のはなしちょくちょくとりあげられてるのがよい。/報道による情報で、どのようなことが 起きているか把握できるので良いと思う。/特になし/テレビは見ないので、報道の意味がない。特に震災時、電力がな かったので報道情報が何もなかった。/テレビの報道は、良くも悪くも人によってちがう。流される場面ばかりは良く ないが、助けあいの場面は良いと思う。/今のまま放送すれば良い。/震災の報道、津波の画面を今までどのようにして なったのかを見たかったので、見れて良かった。ガガガーという音がすごかった。恐かった。/報道のお陰で、ボラン ティアさんが薬をくれたり、食べ物をくれたりしたので良かったと思う。/報道関係者に野菜、米を頂いて助かった。 物資もすぐに来て、報道に関しては良いイメージ。/今までの報道でよい。/新聞はあまり役に立たなかった。どこに誰 がいるかもわからなかった。/何回も津波の映像をみて、嫌になる。やめてほしい。/南三陸町は行政機関が機能しなか ったので、実際の状況が良く解からなかった。/新聞が一番役に立った。TVやラジオは上っ面だけの報道で、見るの 117 が嫌になった。どこをつけても見たくない映像が流れてブルーになった。/だんな様が消防団員で情報はよく入ってき た。ラジオからの情報は早く良かった。TVはあってもラジオがない家があるので、ラジオは必要だと感じた。/他の 地域の情報が分かったことが良かった。生活情報が分かって良かった。/TV を観ていて、津波の映像が目に入ると恐怖 で震えるときがあった。観たくないものを観せられるのが辛い。/テレビ、新聞がない中で、ラジオの情報がとても役 に立ったし安心した。/今後、避難しやすいように津波が起きたら避難すべき場所を TV やラジオで報道しておいてほ しい。/実際学校に取材にきたが、いざ報道を観ると、言ってたことが婉曲されたり、ニュアンスが変わってたりする ことがあった。/生活情報がラジオで流れるだけじゃ足りなかった。その分、新聞でカバーできていたと思う。/悪・や りかたがわからない。安否つたわらない。電話もつながるようにしてほしい。/被災者に安心感を持たせるために「何 ヶ月後には復興する。」と報道してはいるが、本当にそうなのか心配になる。/すぐに震災に関しての情報を聞きだせて 良かった。/TV のドキュメント→悪質な印象・筋書通りのコメントの強要(番組ストーリー)・行政批判につながる質 問。新聞記者→産経新聞、こちらが伝えた情報を正確に伝えてくれた。/良・状況(津波、社会の状況)の多くの情報 を得たテレビ。/志津川ばかり。志津川地区、歌津地区と同じ町でも地区毎に報道があれば。/救援物資→避難所に居る 人だけってどうなの?在宅避難、何もない。被災、被害の状況は同じなのに、差別的に思った。食品、毛布。/良・テ レビ、新聞役に立った.。情報源と役立った。現金→自宅に保管→流失→保証なし。預金(銀行)にしておけばよかっ た。仮設住宅、2年と言っているが場所によっては3年、5年(グラウンド)。過保護ではないか?必要以上の物資が ありすぎる。天災なのだから。/避難所の状況を聞けて良かった。→(人数・施設等)/その時の放送が安否情報だけで (だれさがしています…等)不安だった。自分もどうしていいのか、どこで物資もらえる等、これからの生活の情報が 欲しかった(ガソリン等の)。/ラジオだと映像ないので実際の情報をみたかった。TVは電気通じないのでみれなかっ たので、車で自分で見に行った。(子供用のオムツ、ミルク等すぐなくなり)/ラジオは数日経ってから聴いて世の中の 情報得られて良かった。それまで情報得られなかった。歌津地区の情報がもっとほしかった。/考える余裕なかった。 見ていない、聞いていないので分からない。/歌津地区の報道が少なかった。志津川=南三陸町の報道の偏向。救援物 資もすぐこなかった。少なかった。/悪・地域によりかたより報道。繰り返しのニュース、情報、場面何回もありす ぎ。同じことだけでなく、ちがう地域の事や情報をもっと。/暗いニュースばかりでなく、明るいニュースも。しかし 現実を見れない。ショック。/報道で南三陸→志津川だけで歌津のことがない。/・親戚は各地にいるので安否の確認で き。・1ヶ月位に電気通じて見える情報が得られた。/被害の状況を伝えてもらえたのが良かった。そのおかげで支援も らえた。/南三陸の報道、最初の方少なく支援少なかった。けど後に報道でいろいろな物資いただけた。町、市ごとの 支援いただけてよかった。/南三陸の取材があまり来ないと思った。おちついてからは来るようになったので、最初の 方も来てほしかった。惨状が見えるし、物資もほしかった。また、物資にかたよりがあり、紙オムツも多くきていたの で、いらない物資も多くきた。/しばらく情報得られなかった。電気通じていないので(テレビ)。同じところの情報が 多く報道されたので広範囲にわたって報道してほしかった。情報もっとほしかった。ラジオも電池なくあまり聞けなか った。/・情報を伝えてくれてよかったと思う。・聞くだけで実際の被害の状況が見られなかった(TV等、電気通じな かったため)。/メディアを通じて歌津のことを全国の人に知ってもらえてよかったと思う。/・TV通して全国の方々 から物資をいただけたので良かった。・報道がかたよっていたので、幅広く伝えてほしかった。/見たい情報があった が、TVは電気が通じず見られなかったので、すぐにでも見られる状態になってほしかった。情報がほしかった。3ヶ 月後、自分の状態がわかった(電気が復旧して)。全国の人に自分達の情報を知ってもらえて、物資もいただけたので よかった。/他人事のように何度も同じ事を放送されると嫌になる。/考える余裕がなかった。/特になし/特になし/様々 な地域のことを報道してもらって良かったと感じる。/南三陸町は町長がTVに出てくれたおかげで支援が多かったと 思うので良いと感じる。悪いところは特に思いつかない。/テレビの報道で同じことをやりすぎだと思う。津波の映像 だけでなく、もっと被災地の状況を映してほしかった。/実際に人が流れているのを見てるので、TVでそれに近いも のが流れているのは嫌だった。子どもに見せたくない。/被害状況をただ耳で聞くのではなく、活字で見ることができ たことに対しては新聞は良かったと思う。被害のひどさが字におこすことでより感じれたから。/ラジオで津波が「3 m、6m、10m」とただ放送するのに問題を感じる。場所により波の高さというものは変わってくるのだから、 「ただ 場所によっては波の高さは3倍~5倍になります」という言葉を付け加えてほしい。ただ地名を言っても、危険感が伝 わるのか疑問。/あれ以来、テレビ、ラジオ、新聞はみないようにしているのでわからない。/他の被災地の状況を知り たいと思っても、津波の映像ばかりで嫌になった。/報道されることにより、全国の方から支援が頂けたことは良かっ 118 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 た。/こまめに地震速報が出たのは良かった。ラジオの報道が一番役に立った。/報道によって支援をいただいているの で良かった。/福島の核爆発を映像で流さないのはおかしい。世界中で流しているのに日本で流さないのはダメ。福島 中央テレビだけが流した。すぐに消えた。きのこ雲のように真っ黒。暗号名ポダム/当初はラジオ(音楽)でいやされ た。/特になし/特になし/特になし/カメラマンが、寒い日の撮影の時に、2日後にふとんをもらったり、おふろに入れ た。新聞記者に希望を聞かれ、困っていた時に助けてもらったりしたので感謝している。報道によって支援がたくさん 来たので良かった。/南三陸町は割と早く物資が届いたが、何が必要、不必要かという事を早めに報道してほしい。/津 波の映像が流されて多くの物資をいただきました。ありがたいです。被災しない家の人でも被災者のように物資をもら っているのが気に入らないです。入谷地区です。/報道関係者は精一杯やってくれた。/正確な情報を伝達されず、逃げ 遅れる人達がいたので、ちゃんとした情報を報道してほしい。チリ津波を経験したせいで、想像していたものより大き な津波が来るとは誰も思っていなかった事が原因。/今回の被害は想定街だから対応早い遅いとかは問題でない。新聞 の志望者の記事→あると確認できるからよい/1ヶ月経って佐沼。/(良)・被害状況、物資について・支援金、義援金 について遅れてた事 取材で取りあげられて良かった。(悪) ・取材、全国、世界が多数。報道の取材の際、窓口みたい にして混乱しないように工夫があってもよかった。/報道 支援物資のニュース、来てる所はいいけど、来てない所は それ見ても…。※防寒、コタツなど別な所にきたのに。世帯数多い所ばかり→支援もニュースも。それ見て全部の仮設 に物資がとどいてると思われてしまう。/テレビのL字情報で情報を得られてよかったと思う。/あまりみてないので、 特になし。/・同じことをくり返し報道されていたのを見ているのが辛かった。・広い地域のことを取り上げてほしかっ た。/原子力についての情報を多く知りたかった。不安だけいっぱいになった。/テレビを通して安否をつたえれたので よかった。1週間以内。撮ったその日に迎えで娘さんが「見たよー」と、電話番号代理してもらえるようたのんだり。 /南三陸はテレビに報道される回数が多かったので、支援は本当にありがたかったです。皆様に助けられました。/避難 所ばかりとりあげず、仮設のこともとりあげてもらえたらよかった。早い時期に仮設所もとりあげてもらえていたら、 みんな避難所と往復したりしなかった。/遠くの親戚がテレビをみて安否確認してた。埼玉の姪ごさんがインターネッ トで住所を調べて安否確認して物資おくってくれた。/知人の安否が分かり良かった(情報もらえて)。/TVで言って いても伝わっていないこともある。TV=行動ではない。/各地の被害状況を知れたのでよかった。/TVの報道で遠く にいる人の安否を知れたことがよかった。/報道、取材が無かった。一ヶ所に集中。小さな→無。大きな所ばかり。/南 三陸、志津川ばかりニュース。自衛隊、ボランティア、ありがたいけど、今は一部だけに集中しているかも。/がんば っている姿を見ると元気をもらう。自分だけではない。あきらめなければいいと!!自分だけの時間になるとあきらめ の気持ち。/ラジオの情報が早く、ある程度正確だったことが良かった。ただし、同じ情報を流すのはいいが、「死者何 百人です」といった情報を聞いて、気がめいった。/ラジオの報道の中で(緊急時だから仕方ないことだが)、正確性に 欠ける情報が流れていたことが悪いこととして挙げられる。良かったことは、TV、新聞がない状態で、ラジオからの 情報だけが唯一外部から入ってくる情報だったこと。/復興に関する、前向きで明るいニュースを多く取り上げすぎて いる感がある。実際の現地の人間からすると、確かに着実に復興への歩みは始まっているのだけれど、報道されて感じ る印象と比べると現実との差は激しい。/・蒲生地区のことが全くメディアに取り上げられない。→荒浜、閖上地区は 盛んに報道されている反面、蒲生だけが無視されている感がある。取り残されている感がある。→蒲生に義援金を送っ ても、それがどうなったかも分からない。→支援物資もほとんど届かない。ボランティアもなかなか集まらない。→蒲 生地区の現状と今後について知りたいが、全く分からない。・今後、メディアで取り上げられるとしたら→蒲生の過去 の記憶を後世に残してほしい。・被災地の実際の現場を多くの人に見てもらいたい(学習の場として)。/TVに出る 「L字情報」は役に立った。/特になし/連日、被害状況や生活情報を報道し続けたのは良かった。/・テレビでの報道 で、南三陸などの地域のことばかり映され、自分たちの地域の支援が少なかったように感じた。被害が甚大なのは理解 できるが、そのような報道がされる度に「(自分たちも被災者なのに、この差は何だろう)」という気持ちになった。・ このような災害の中で、すぐに報道に移れたラジオは役立つものだと感じた。だからこそ、ラジオの報道は正確性が求 められる。/特になし/テレビにより、他の地域の被害状況が分かったので役に立った。/詳細な被害状況が報道されてい たので良かった。/荒浜で死者 200~300 人と聞いたとき、絶望感におそわれたが、正確な情報が流れることは良いこ とだと思う。/支援物資等が送られてくるのも、報道によって、被害状況が映されたことも要因としてあると思うの で、テレビなどの報道は良かったと思う。/応援メッセージなどは役に立ったと思う。/震災地域への対応がもっと取り 入れてほしかった。後々、原子力に力を入れすぎていて、震災地域と偏りがありすぎた。/L字報道で今後の支援情報 119 が入ってきてよかった。ラジオでも報道があり良かった。そのことにより役所に行けたりしたので助かった。/友人の 安否を知れてよかった。/避難所等の救援物資、避難先での不公平もあり報道は偏ってたと思う。また報道をみて、自 分達だけ不幸なわけではなく、様々な方々をみて頑張っていこうと思った。/ボランティアのきっかけ→報道/良・ラジ オ。子供向けのうた、童話があって、TVのない状況だったので、気持ち的によかった。TV-CMの繰り返しが少し 気になった。/親戚の家(泉区)から自宅周辺の情報が手に入って良かった。/現状を把握できる点が良かった。/テレビ のL字情報が良かった。新聞の号外も役に立った。/電気が止まり、生の情報が遮断されてしまうのがすごく怖かっ た。/報道のおかげで、着の身着のままが、洋服をもらえてよかった。/マスコミの取材はあまり来ないので、別に困っ た事、悪かった事はない。お年よりの1人ぐらしが多いのでかえって報道された方が良いと思う。/自衛隊の人達にた すけられ、たすかりました。/石巻とかよりも被害の報道がされていない/いつもラジオを聴いて地震や津波の情報を得 て、近所への声掛けや誘導を行うことができ、早々と避難することができたので、ラジオを聴いていなかったら命はな かったので、とても感謝しています。/様々な情報を得られてよかった。/配慮が足りない→言葉づかい。「がんばろ う」の言葉。立場のちがい。/避難生活のこと→自治会長、役場だけ意見で決まってしまい、地域の皆様の意見が反映 されていない。実情に合ってないケース多にあり。/いろいろな地域の被災場所を報道してほしい。/被害のひどい所し か報道されてなく、もっと地元周辺の所も報道してほしかった。国の対応がよくなかった。規則に縛られすぎてたの で、こういう非常事態には規則を緩和していいと思う。/全然状況が分からなかった。/とくに悪い事はなかったので、 いつもどおりに報道してほしい。/被害がひどかった地域の放送が多かった。もう少し、私たちの住んでいる地域の放 送もしてほしかった。/L字は役立った。/報道は良かったと思う。行政の対応が被災者をバカにしている。/特になし /・新聞が入ってこなく必要な情報を得られなかった。避難所でみんな必要とするので、自分の手に入らないこと多か った。・電気通じるのが時間かかったので、TVを見るのに時間がかかった。/支援の方法が伝わってこない。(食料や 避難所の設備、暖房等)/無我夢中で考えられなかった。/特に感じない。生きているのに無中で報道を観る余裕がな い。/自分のいた地区は報道されることが少なく、物資もあまり届かなかったので、不公平だと感じていた。もっと平 等に報道し、物資も支援してほしかった。/特に感じない。/・TVでは同じ映像が繰り返し流されていて、見ていてい やになった。・亡くなったことが美徳という風に報道されるのはどうかと思った。 (南三陸で放送していて亡くなった若 い女性のこと)/良いとも悪いとも言えない。/テレビはあったが、将来の見通しを考えていたので、見る気はなかっ た。/3月の風が冷たい時に、もくもくとたきだしをしてくれたのが良かった。感謝しています。支援物資が来た時 に、われ先にうばうのは良くないと思う。/河北新報を見て、自分の状況が分かって良かった。/津波の状況が分かって 良かった。荒浜地区はあまり写らなかった。石巻地区が多かったと思う。/防災無線で全く流れなかった。(今、すごく 問題になっている。)ラジオ(地元の民間)が 24 時間放送をしていたのには感心した。/すべてのメディアの対応はあ りがたかった。しかし、報道される地域は偏っていた。取材は来るが、全国から来ていたので、対応が大変だった。/ テレビで津波が来る前に飛行機の中継ワンセグでみた。ワンセグがあったから避難できたので、ワンセグがあって良か ったと思う。/報道には関係なく支援物資に差があった。これは問題だと思う。AC(広告機構)のCMがうるさかっ た。/もっと安心するニュースを流してほしい。/・指定避難所とそうでない所では、支援物資の届く量が全く違った。 →その是正をマスコミが担うべきではなかったか。・細かい地区の状況をバランスよく報道してほしかった。 ・NHKの 報道は1人ひとりの声を発信しており、共感できたり、元気もらったりなどできて良いと思う。・今現在の自分の地域 の状況や今後の見通しがどうなるのかが一番知りたいので、報道してほしい。/蒲生のことが取り上げられることが少 ない。/・蒲生のことをもっと多く取り上げてほしい。・原発事故の報道が大げさすぎだ。/なし/・避難した場所によっ て情報量が大きく異なった。→避難所で役に立った情報源は、市役所や消防の人からのものだった。・奥山市長があま りメディアに出てこなかった。→首長として考えや見解をもっと市民に発信すべき。/●●は姪がPCで見た。TEL で教えてくれた。スカイズでもやった。新聞がけっこう良かった。ゆっくり見れた。亡くなった人のことが書いてあ る。写真も出ている。/・今後、使える通信手段を整備してほしい。・地域の助け合いがあり、食事などとても良かっ た。(まにあ会館←山のほうだった←2ヶ月くらい避難) (昔は分校だった)・後からは支援が多くあった。 (オフロ、食 事)/・山元町は報道が少なく、何もなかったかのように扱われた気がする。・新聞は悪いことばかりでなく、がんばっ てる様子も書かれてていいと思った。・今でも津波の放送がされると怖いが、忘れるといけないから続けてほしい。/・ テレビは山元町の報道が少なかった。また引き続き震災の報道を行ってほしい。・地域の情報がもっとほしい。・インタ ーネット等で山元の情報を見ていた。・もっと報道の整備。/・近くにお店もないし、その生活情報が入ってこない。・ 120 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 山元町は仮設がペットOKになってるが、飼ってる人と飼ってない人で場所を分けてほしい。/千年に一度の大きな地 震だったから、報道、行政には不満はないが、今後の生活、住む場所等をしっかりと決め、できるだけ早く実行してほ しい。/・山元町だけに限らず、間違ってる情報や、まだ行政が発表していない情報を報道するのはやめてほしい。/山 元町の情報が少なく、もっと報道してほしいと思った。/・多くの情報が報道されることはいいことだと思う。・報道、 ボランティア、国に対して、不満に思うようなことはなかった。/生活すること精一杯。不安な気持ちが強く、報道に 関心が持てなかった。被害が想定をはるかに越えた状態で、それどころではなかった。自宅、仕事、まわりなど。/ 悪・震災の特集の雑誌。雑誌で被害の写真(遺体) 。遺族の心情は考えてないのでは?良・救助の報道などは良かった と感じた。/報道の偏り。スピード。山元町/震災直後の生活面(衛生の不備)の報道がもっとあれば、もっと早く改善 になったのではないか?(トイレなど)/報道の内容(テレビ、新聞)で細かい事柄(個人のことなど)をしていたこ とがよいと感じた。/被害が甚大な地区だったが、テレビの報道が一部だけだったのが悲しくつらい。もっとできたの では。/悪・この地区の報道が初期の段階で無く、もっと。国の対応の情報が少なかった。良・応援、はげましの報道 は心の支え、はげみになった。/良・テレビ、ニュースで被災地の報道があったから支援などにつながったとは思う。 悪・山元町の報道が遅かった。少なかった。/3日位は陸の孤島、助けに来なかった。情報がないから死んだと思われ た。連絡も取れないからよけい。三陸の方しか出来なかった。TVこわくて見れない。1ヶ月位は波が見れない。こわ い。ここまで来ないと言うけど、海の方はダメ。海沿いのバスにものれなかった。/仮設からすぐ家たてられない。公 営の住宅を作って欲しい。家族全員が無事だった。/こんなもんだろうな。行方不明者の記事は良かった。夫、消防団 に 25 年つとめていた。近所にも声かけた。海が近かったので、あぶないと思った。夜になると海の方は暗い。やだな と思う。/役場は幼稚園の子どもに待機するように言った。裁判になっている。原発事故の影響で復旧が遅れている。 危険性分からないで作っていたのか?/情報が遅かった。東京の姪がマスコミに山元の情報を伝えてくれた。うちの町 長は対応が遅い。町長が支援物資を断っているうわさがある。/海の画像見るのがいや。町外に避難していたので、役 場に来れなかったので、地元の情報が入らない。物資も届かない。他県の人が分からない・被害がないと思った。支援 も届きにくい。/希望のもてる報道をしてほしい。/三陸の方ばかり報道があり、こちらは全然なかった。/・情報がもっ とほしい。行方不明者の数ばかり。・山元は大丈夫だったと思われた。報道がないから。・土地勘ある人は航空写真とか で山元も大変ってわかるけど。・偏り。・無線とんでないから、ここまで来れないのもわかるけど。/何度も津波のシー ン。いまでも鮮明に覚えているから、余計につらい。/報道の偏り。子どもたちは山元の情報が少なすぎて、もうダメ だと思っていたらしい。/・仮設住居の防寒対策と隣近所との音等の今後の対策。・これからも震災の報道、地震、津波 予想をしっかりと報道してほしい。/・山元町の方が被害が大きかったのに全然報道されなかった。・仮設住居の設備 (防寒、家電)等の設置がおそい。早め早めの対応。・避難所にいた方と自力でアパート等を借りて生活していた方へ の支援に差があった。(物資の配り、たきだし) ・全員に正しい情報提供を!!お金の面も含めて。今後の生活、支援の あり方を考えろ!!/・南三陸町の報道ばかり。津波から助かった南三陸の町長のアピールが一番大きい。佐藤町長が 連日、TV出演、支援を呼び掛けることで、南三陸町宛にたくさんの義援金が集まった。義援金→南三陸町は6億円。 山元町は1億円。 ・数年前の栗原の地震では、義援金の他に生活費まで支給され、新しく家を建てても通帳にお金が残 ったらしい。山元町は県内で二番目に被害が大きかったのに、すべての対応が遅い。12/4 現在支給された義援金は1 人 200 万円だけ。とても悔しい。同じ山元町民でも6号線を挟んで(津波被害の有無で)住民の意識は異なり、被災 しなかった山元町民にとって、津波はもう過去のものになっている。・坂元地区は宮城と福島からの2つの津波がかぶ さった。福島から来た津波の影響が大きい。電柱が見えなくなる程の高さだった。・福島の原発も、今まで原発で恩恵 を受けた人たちが支給対象。様々なことに不公平を感じる。/連絡手段なく困った。車の中で1ヶ月間家族で過ごし た。情報は一切なし。雪の中 12 時間並んで冷たい味のない小さなおにぎり1個だけ。毛布、テントの中3ヶ月。土の 上にビニール一枚。仕事道具も全部流された。今後の生活が心配。/特になし/特になし/特になし/山元町のことを取り 上げてくれた時は嬉しかったし、ホッとした。/海の近くの人達が数多く亡くなっている。/仕事から帰宅途中に対向車 の人達が手で合図をしてくれたので、津波が来たのが分かった。/たき出しなど、かなりの時間ならんだ。/家の中を片 づけたりしているうちに津波が来ていたにもかかわらず、けっこうあぶない思いをした。妻は気が動転していた。夜、 身寄りのない人の世話を頼まれ病院に連れて行ったり、付き添ったりと大変だった。/一週間位通信手段がなく大変だ った。会社から自宅に戻っていたら津波が来た様子なので、急いで二階にかけ登って助かりました。/TVで実際に呼 びかけできて、友人知人に連絡がとれたのでよかった。/特になし/息子さんから記事をもらって読んで、詳しくわかっ 121 た。/特になし/特にない/特になし/・山元町の報道は一番少なくて、遠方の知り合いは、報道がないので山元町は被害 がなく大丈夫だと思ったらしい。 ・今後の生活場所を早く決めてほしい。/非常持出袋(¥3600)は絶対必要。各自が用 意していれば困ることはない。せっかく自分が用意していても、他の人が持っていなければ分けてあげないといけな い。大勢の人がいたため、全員に分けるほどの量がなく、トラブルになると思い、結局持出袋の中に入っていたペット ボトルの水を出す(飲む)ことはできなかった。全国の支援には本当に感謝していて、思い出すだけで涙が出る。近所 の奥さんが、ガレキにつかまりながら目の前を「助けてー、助けてー」と叫びながら流されてしまった。助けることが できず、生きていることが申し訳ない。たくさんの知人が死んだ。/町の対応 避難中、議員さんや町長は避難所に一 度も顔を見せなかった。今は仮設に入れてもらってありがたいが、今後の生活(お金)とても不安だ。/山元町は被害 のわりに報道が少なかった。亡くなった人もたくさんいたのに。女川、石巻、三陸、この3ヶ所ばかり毎日 TV に映っ ていた。早く集団移転先決めてほしい。土地を買って建てるのはムリ(お金の問題) 。でも一戸建に住みたい。今の生 活、いつまで続くのか不安。フクダ、カミダイラ、福島のフクダ、角田、たいようの村、この5ヶ所(避難所)を転々 とした人が多い。/民主党が嫌い。早く政権交代してほしい。あとは自己責任で頑張るしかない。◎問34について。 山元町は報道が少なかったと言われているが、震災翌日から大勢のマスコミ、報道が現地入りしていたが、状況があま りにも悲惨(遺体があちこちに転がっていた)だったため映すことができずに引き返して行った。/気仙沼、石巻、被 害。仮設のお風呂、追い焚きにしてほしい。今回の震災で津波を見た人は帰りたくないし、見ていない人は帰りたいと 言っている。高値で買い。見た人は住んだ。体調。バリバリ。白黒のしぶき。農機具。大きな石。4畳くらいの大き さ。/新聞は役に立たなかった。意見や要望はたくさんあるが、行政がすることなので無理なのはわかっている。土地 を買い取ってほしい。集団移転先を早く決めてほしい。今後の生活、二重ローン不安だらけ。/避難訓練時に用意して いたリュックが役に立った。懐中電灯や毛布等が入れてあったが、さらにパンやくだものなど家にあるものをつめこ み、お金3万円持ったが、もう少し持って逃げれば良かった。しかし3万でも役に立った。家に戻れると思っていたの で、犬をつれてこなかった。流されて今も見つからない。仙台に娘がいたので、しばらく仙台にいたが、リンゴラジオ を聞きながら地元の情報を聞いていた。/報道されたのは最後だった。被害がこれだけあるのになぜ放送されないの か。今もそうだ。風評被害。責任のおしつけあいでみにくい。/ガソリンがなくなるとは思わず、一晩中車で暖をとっ ていた。/特になし/五木ひろし、都はるみ、和田せいじともう1人(名前忘れたが)4人で来てくれて元気が出た。作 家長ともとトクラシュンイチも来た。孫は I ポットをラジオに切り替えて聞いていた。次の日、結婚式だったが、電車 が止まり出席出来なかった。町長が柴田町に避難所をかりてくれた。仮設住宅も二世帯家族は個々に玄関があり、中で ドアでつながっている所は使いやすい。押入れ等を作って欲しい。/特になし/津波が来るとは思っていないので。黒い 水も津波とは思っていなかった。この世の物とは思えない光景を目の前で見た。/今後の生活について不安がつきな い。JR が通らなくなったので、息子の進路について心配。放射能の問題について。/安否確認が遅れていた(他の地域 はやっていたが)。/震災後、娘の所へ行ってたので生活面では不便はなかったけど、同じ地区の人達は角田に避難して いて色々と物資を頂いたり何やかやと優遇されていて不公平感はある。自分だけのけ者にされている様にも感じられる 事は多々ある。同じ被災者なのに…。/自宅近くに出掛けていて、地震後戻ろうとしたが途中で声掛けられて車に乗せ て一緒に避難所に行ったので、結果的に自分は助けられたのだと思う。/会社の窓から津波が来るのを見ていた(見え た)。高台に職場があるので安全だったので避難はしませんでした。/防災無線をちゃんと機能させてほしい。/特にな し/・TV で(大地震が来ます)と何回も聞いた。天気予報の人が言ったのか、NHK が言ったか分からない。 ・リンゴ FM あまり聞いたことない。避難所で新聞回し読みした。いろいろのっているのが良い。妻、七北田小学校に入院。泉 中央の病院に通っていた。/波が重なって波が高かった。ひどかったのでもっと報道して欲しかった。ここも映して欲 しい。ヨコハマの娘さんが知りたくても知りようがなかった。三陸ばかり取り上げられて、支援物資も届かなかった。 小さい町でも被害が大きかったのだから、取り上げて欲しかった。差別されている実感がある。/・石巻、女川がほと んどで山元は報道され・新聞はすごく役に立った。自分で見れる。新聞屋が沢山持って来てくれ。TV 設置場所が入口 でみづらい。自分とダブってしまう。見ないようにしていた。NHK「被災地からの声」に出て、本当の気持ちと逆の ことを言ってしまった。 「がんばります」本音じゃない。カメラ向けられる。外に言葉がない。当りさわりのない言葉 しか出ない。/・気仙沼や三陸は報道がたくさん来ていたが、山元町も被害が大きかったのだから報道をしてほしい。・ 地元の新聞社などが来て、困ってること等を聞いてほしかった。・河北新報は来ないで、朝日は来た。/・今後の生活の 不安(お金も心配)。 ・確立した情報というのは何もない=「このような方向です。予定です。 」ばかりで、今後の生活 122 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 が見えてない。確立した情報がほしい。早い行政の方向性を明確に。/・携帯などの通信手段がまったく使えなく、今 後整備してほしい。・県北の地域の報道ばかりが多く、もっと山元町のことを報道してほしかった。/・仮設住居の部屋 が小さくて、きゅうくつな思い。・1人暮らしの人が4~5人まとめて仮設に入れられる例もあり、不平等と感じた。 /・もっと山元町を報道してほしかった。忘れられてると感じた。・もう少しはっきりとした情報を伝えてほしかっ た。・津波の予想高さ等もできるだけ早く伝わるようにしてほしい。・これからもこの災害であったことを、しっかりと 後世に伝えていくべきだと思う。/・堤防をしっかりと高い物を作ってほしい。・津波が来たときの対策、対応のしかた をもっと考えるべきだ。/南三陸の報道が目立つ。ライフラインが切れた。なんで山元町が出ないんだ。亘理は TV に 映ったが、山元は出なかった。遅かった。遠くの人、心配した。/山元が一番遅れた。外の人は報道されないから大丈 夫と思っていた。防災無線がこわれてはなんにもならない。/津波のシーンを何度も、そんなに強い人ばかりではない って。/・被害の映像みても、これから私たちが生活していくのには役に立たない。・ツイッター:みんなが何をツイー ト、リツイートしていいのかよくわかっていなかった様に思う。/・気仙沼など他の地域の津波の映像をみるたびに涙 が出てくる。 ・やはり報道の偏りにより、山元や亘理がとりあげられることは大分長い間なかった。でも、テレビで山 元のことをいってくれた人がいたらしく、そこから支援物資やたきだしがではじめたので、メディアの力はすごい。/ 特になし/国の対応をもっと詳しく知らせて欲しい。(被災者への対応も)/これからも忘れずに続けて報道してほし い。/特になし/地元の報道をしてほしい。/特になし/○mの津波が来ると具体的に伝えてくれたのが良かった。/雅子様 がいらした後、たくさんの報道の方が見えて、たくさん報道されて、みんなに山元町の実態が知ってもらえて良かっ た。/ラジオが大変役に立ったと聞く。(自分はあまり聞けなかったが)/山元町は他の場所に比べて、支援等すべて遅 れている。福島に近いから?と思ったりした。冬物もアンケートを取って1ヶ月以上経つのに、まだ毛布も届かない。 /①防災無線が使えなかったこと。②駅前、保育所、幼稚園等、消防団の方たちがもう少し避難の呼び掛けがあれば、 助かったと思う。③津波の避難訓練は一切なかった。④高台避難場所。/・山元町の報道が少なかった。←県外の親戚 が情報が入らず心配していた。 ・三陸の方が多くて不公平。・防災無線が倒れて聞こえなかったので、呼び掛けがあれば たくさんの人が助かったと思う。/山元町の報道はとても少なく、他の被災地の報道を TV 等で見て、ずいぶんと支援 に差があるなと感じた。同じ被災者なのに。なぜ偏りが出たのか?不満に感じるし、山元町はすべてにおいて対応が遅 い。/①山元町の報道はほとんどなかった。なぜ石巻ばかりなのか?②ボランティアには感謝しているが、震災時の話 を聞かれると嫌になってしまう。③山下駅は絶対に越えないと思った。売店の人が流された。④自衛隊は本当にありが たい。/・屋根の上で報道ヘリに助けを求める人たちが大勢いたが亡くなった人もいる。報道以外にできることがない のか。・寒い。支援物資で毛布等、1ヶ月以上前に頼んだが、まだ届かなくて困っている。/2日目から役場に避難した が、役場の人達、ボランティアがとても不親切で、目の前にある毛布をもらうことができなかった。3日間毛布なしで 風邪をひき、近くの薬局で毛布と下着をもらった。/2日目に炊き出しがあり食物が手に入ったが、身体が不自由で並 べずに食べることができない人たちもいた(最後は具のない汁だけ)。車の中で過ごしている人たちへの呼び掛けもな く配慮が必要。数日して、毎日毎日消費期間ギリギリのクリームパンばかりが続いて、気持ち悪くなった。/今は思い つかない。/情報が出なくて友人が心配していた。こんなにひどいのに、報道していないから支援がおそい。南三陸、 石巻の情報しかいきとどかないので、そんなにひどいと思わなかったといわれた。/三陸では放送されたが、山元町は 遅かったし、少なかった。何か月後に物が来たが遅かった。/全く報道されなかった。たまたま TV 局が来た。なぜ流 さないと言ってから流すようになった。被災地全体的を見て欲しかった。山元は4日ぐらい孤立した。ヘリは飛んでい た。下へおりて来て見てみろ。/・マスコミは偏りがある。・ローカル局とか1つでも地元をうつしてくれるところがあ れば。/想定外とさわがれる中、よくいろいろ流してくれていたと思う。/津波、地震の影響で入れない現場もあったと 思うが、どんな情報でもいいから地元のことを知りたいという人はたくさんいたはず。かといって不確かな情報で被災 者を不安にさせたりふりまわしてはいけない。様々かっとうがあると思うが、なるべく的確に素早く報道してほしい。 /いまでもラジオきいている。/避難の呼びかけは本当に大切。このあたりの人は、まさか津波が来るなんて思っていな い。/全体像は確かにわかりにくかった。/大まかな情報しか入らなかったが、何もないより大分良かった。目の前で津 波を見て地元が水びたしになっている様をみたから、テレビで他の地域の映像をみてさらにつらくなった。/特になし/ あまり出なかった。TV 見る機会がなかったに等しい。/早く逃げるようはっきり言って欲しい。逃げなさいが一番。こ ういう報道をして欲しい。/・原子炉について、マスコミも責任を感じて欲しい。・良いところを報道したがる。/・震 源の位置、深さ、エネルギーの量を正確に、津波が来るか来ないか分かるように。・現在分かっている情報をかくさな 123 いで早く報道して欲しい。・測定の仕方を工夫する。山元町/ない。/・情報としてはラジオを一番よかったかもしれな いと思った。・同じ報道ばかりがされ、津波の情報が少ないと感じた。・山元町の報道はまったくなかった、すごく地域 差を感じた。/・今後どのように生活していくかをもっと考え、早く説明してもらい報道してほしい。/・生活情報をも っともっと報道してほしいと思った。生活情報が少し流れても、ガソリンがなく何も手に入れられなかったのが現 状。・津波情報の予想ももっとしっかりしてほしい。/・テレビ、ラジオは山元町ではまったく役に立たなかった。地域 ごとの情報がもっとほしかった。 ・生活に関する情報(ガソリン、食料)がまったくなく、生活に困った。・遠くまでス ーパーに行っても、やっているかやっていないかわからない。確かな病院、スーパー等の生活の情報がほしい。被害の 情報ばっかりだった。役場の対応ももっとしっかり。たきだしの配りも制限あり。オフロは 10 日後くらい。/山元町の 報道はまったくなかったが、様々な報道がされ役に立った面もあった。/・高齢者世帯に対しての、もっと手厚い支 援、または報道が必要だと感じた。・子供が優先され、高齢者に対しての配慮がもっと必要(移動のオフロ等)。/避難 所での食事の配り方が不平等と感じた。/・もっと本当の情報を報道してほしい。・今後の生活、進む道を報道してほし い。・信頼のおける報道。/岩沼、名取、地元の情報少なくて気になった。仮設の結露がひどく、カビが生える。車がな いとどこにも行けず、買物等不便。/元の場所にはもうこわくて住めない。自宅のローンがあと 15 年残っている。2重 ローンになるため、仮設を出たら町営住宅にでも住みたい。/ここの仮設では車を一家で数台所有しているが、駐車ス ペースがなく困っている。山元町には有料駐車場というものがないし、駐車場を作る場所もない。家族構成を考えた仮 設(部屋作り、部屋割り)が必要。(父親と年頃の娘で一部屋は、いくら親子でもキツイ。子供が夜勤のため、日中子 供の寝室用として一部屋必要。)/石巻、仙台の報道が多かった。有名人が来るのも石巻ばかり。山元町は予算少ないか ら仕方がない。対応遅い。 (応急災害住宅建て替え)12 月末〆切り、どうしたらいいのか悩んでいる。老後をのんびり 過ごそうと、仙台から子どもたちの反対を押し切って、去年山元町に越して来た。もう子供のところには戻れない。/ 山元避難所には行かず、自宅2Fで過ごした。食料や物資等の支援を受けることはできなかった。自宅避難の人たちに も対応してほしい。情報がまったくなかった。/山元町長は県庁上がり。勝手に自分の判断で決める。山元町の町長が 悪い。町会議員も。線路問題他すべて勝手に決める。町長をリコールさせるという話が地元で出ている。とりあえず任 期だけはやってもらう。今の部落ごとに移転したい。山寺は平で安全な場所があるので、山寺辺りに移転したい。/特 になし/特になし/避難所(山下小)に皇太子ご夫妻が来られて直接お話できた。わずかな時間でも嬉しかったし、河北 新報に載せてもらってありがたいし感激した。/行政の方も大変だったと思うが、情報がほしかった。/特になし/特にな し/何もする気になれずボーッとしていた。/役所に対応も悪かったと思う。/震災後、仙台市内の妹宅に身を寄せていた ので大分生活面では不自由はなかった。/特になし/災害に備えて用意していた食料などが一階玄関付近に置いていた が、何も持たずに避難したので残念だった。/行政に対してはかなり不満はある。情報開示はするべきだ!!風評被害 を気にしすぎている様子だった。/誰もこんな事になるとは思わなかったので、何とも言えない。言ったらキリが無く なるし。/次の日、家に行ったけど何も無かった。今後について心配はつきない。仕事はしたいがめどが無い。/特にな し/・消防車は山元町駅前近くには行っていなかったらしく、放送を聞いていない人達が避難が遅れて亡くなっている そうです。・この地域は舟つき場はないので1つの6m位の堤防であったので、もっとたくさん堤防を作って欲しい。 絶対的に足りない。普段見た目には6mは高く感じるが、安全性に欠ける。/避難中、心臓の薬がなくて大変であっ た。○年前の宮城沖震度6の時もすごい揺れ。/足が悪い人の為に避難所の作り方をもっと考えて欲しい。トイレは新 聞紙でゴミ袋を作って、とてもすてやすくて役に立った。/週2回、1回 300 円で集会所で食事を出してくれる。12/2 (金)・1人暮らしなので、病気した時が心配。 ・年寄り用の押し車があれば(簡単な物)があればつえより利用しやす い。・移動スーパーが役にたっている。パン、くだもの、野菜。 ・週末は息子夫婦が来てくれるが、車がないと不便。電 車は亘理までで亘理からバスしか交通手段がない。/地域担当者がこまめに巡回するなど、情報伝達が必要。/岩手高 田、南三陸方面、仙台、名取の次に福島が、放送が亘理、山元が放送されず、遠くの親戚はこんなにかいめつ的被害と は思わなかったと言われた。情報もなく、自分達も何があったのかわからなかった。被害地域は全国的にまんべんなく 放送してほしい。/みんなきちんと報道(ラジオ、テレビ)が情報がされて役に立ったことが多くてよかったと思う、/ 思い浮かばない/新聞で報道されたことによって、色々な方々から支援してもらうことができたので良かったと思いま す。亡くなった方の情報も新聞を通して知ることができて良かったです。/ラジオの情報が良かった/メディアで避難所 のトイレの情報がほしかった。緊急地震速報が正しく発信されるのはよかった。/良い点震災情報あらゆる面から捉え て他地域生活など把握おおむねできた。その他名取市の対応最悪。防災無線でサイレン無し。防災サイレン鳴っていた 124 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 ら多くの死者が出なかったと思う。/テレビでいろいろな避難所が映されたり、様々な手続きをするための情報が流 れ、生活に役立った。/河北新報社の報道がとてもわかりやすくとても良かった。/テレビやラジオで各地の被害状況が 明らかになったのが良かった。報道地域の偏りがあった。/繰り返し同じ映像が流され見たくなくなったし、流される 映像それだけが被害じゃないのでもっと多面的に報道してほしかった。/支援物資の報道をもっとしてほしかった。情 報を判っている人と判っていない人が分かれていて知らない分苦労した。/灯油の売っている場所の情報を得られて良 かった。ガソリン、食料も手に入るきっかけを作ってもらえた。/三日目の朝から避難所に新聞配布され情報が得られ て良かった。/報道された通りでよい/すぐにマグニチュード8.9、大津波発生が良かった。/避難先の情報等をもっと 報道してほしかった。物資等の情報をもっとほしかった。/ケータイラジオで聞いていたが地元の情報が入ってこなか ったのでどうなっているのか不安だった。/ラジオがあってよかったです。自宅の2階に逃げ、何とか助かりました が、その夜次の日もどこにも避難できず、全ての情報はラジオのみでした。携帯電話のテレビは電池の残量が心配で見 れなかったので。/安否確認取れやすかったこと/節目にインタビューとかするのが信じられない。平然としてくるなん て。偏りがひどい。自衛隊の方々の活動をもっと取り上げてほしかった。すごくがんばられてました。感謝以外に表現 できません。/被災者への気配り/L字が役に立った。不公平があって大変だった。/ラジオが助かった/被災者は仮設に いる人だけじゃない。報道はもっと公平にすべき。/報道を見て自分たちの地域を見て、どのように感じたのか見たか った。/町内の方々のリストがあれば、安心感が違う。連絡が取れるが作成されず。/市や国からのはがきが届かず知人 を通じての情報で、もっと個人宅への配慮をして欲しかった。借り上げアパートの住まいの方/海に囲まれている日本 だから、各地に警告としてこれからも報道を続けてほし。/この地域ではビデオレター的なものなどあれば良かった。/ 責任の押し付けで決定が先送りになっているのがとても腹ただしく、もっと迅速に対応して欲しい。/仮設には支援物 資が届いているが、個人の貸借の人には支援物資が届きづらい。早めの支援、対策。/様々な報道がされて、とても良 かったと思う。テレビだけが情報源だった。病院などの情報をもっと欲しかった。/新聞報道が一番良かった。テレ ビ、ラジオはなく情報が入ってこなかった。生活情報がほしい。/テレビのテロップで支援や色々な情報が流され、大 変助かりました。/現場への必要品等を訴える声を全国に発信してもらえたこと、地域ごとの不公平感が若干あっても 報道の方向性は正しかったと思った。原発事故の原因と原発の危険性の有無が報道されなかったと思う。/①避難の呼 びかけの改善。②せめて行政機関の設備ぐらいは停電でも作動するようにしてほしい。③支援してくださる機関(自衛 隊、日赤、その他)の方々には心から感謝している。/特に悪いと思ったことはなかったが、良かった点もそれほどな いと思った。/震災の情報や生活の情報が少ないと感じ、もっともっと様々な情報を報道して欲しかった。/地域の情報 が少なかったため、もっと地域の情報を報道してほしかった。地域によって報道の偏りがあり、これから正して欲し い。/特に新聞はこまめに情報を出してくれて助かった。/何もなし/良かったのは生活のこととか、報道が役にたったこ と。心のケアについては報道するべきではない。落ち込むメカニズムを解明したり伝えたりせず、後からこっそり支え てほしい、複雑な気持ちになってくる。/不公平になっても仕方ないと思う。辛いのはどこも同じ。/ありのままの報道 だったので良いも悪いもない。/ラジオは停電でも使えるので緊急で情報を得るのに大変役に立った。/震災に遭って何 もない状態になったが、今回炊き出しをしてくれた議員さん(毎日物資の調達に駆けずり回りながらいやな顔をせず 人々のため動いてくれていた太田議員)やたくさんのボランティアの方々に助けられ、新しい出会いがあったと思って る。アメリカのBBCの取材を受けたが日本のマイクを向けてインタビューするのとは違い、逃げることができたルー トをたどりながら車を走らせ、インタビューなしに自然に風景を見ながら自分が思ったこと、感じたことを話すまでじ っと待つといった取材であった(これからも3ヵ月ごとに取材されるそうです) 。直後は報道する方もされる方も一生 懸命やっていたと思う。逃げたルートも導きがあったように思うので、これからも伝えていきたい。/テレビや新聞で 閖上地域の報道が少なくて不公平に感じた。/他の地域の情報を知りたかった。市役所で安否分からない人の情報が TV 等でわかったことがあり良かった。/ボランティアさんや自衛隊の方に親切にしてもらった事が心に残っている。これ らのことを報道を通じて様々な方に伝えてほしいと思った。/仙台より名取のほうがひどいのに大きな都市の方がどう しても多く報道されがち。一日同じ報道は2回もいらない(被災体験)。/テレビで安否情報(元気にしてるよーとか、 ○○にいるよーとか)は良かった。/行政から水や食料の配給が無く地域で1件残った家でたくさんの人々が寝食をと もにしていた。取り残された気分であったが、みんなで炊き出しをして生き延びた。テレビのテロップをもっとゆっく り画面の半分くらいでわかりやすくしてほしかった。/家は直して住むつもりでいたので早く行政対策を知らせてほし い。漁師の父が舟があれば沖に出たいといっている。原子力で住む家があっても戻れない方々も大変であろう。/原発 125 問題で小さな子供たちを守るための番組等をもっとあれば良かった。/地域の報道がもっと多くほしい/生活情報を報じ るべき/生活情報など確認でき良かった/道が悪くて行方不明の娘を探しにいけず未だにわからない。/テロップ/今でも 石巻とか塩釜とかはメディアに取り上げられているが、閖上はあまり対象になっていなかったのが悪いように感じた。 新聞で支援状況がわかったのは良かったと思う。/交通生活情報が常に放送してあったので良かったと思う。孫たちと 一緒に生活していたので、津波の映像が多かったので自分自身も怖かったし、何度も見たくはなく、見せないようにし た。/報道される地域に偏りがあり、ある程度均等に報道してほしかった。/将来の子供たちのために何を注意すべき か、はっきりした報道をしてほしい。/被災者を考えて。/閖上の情報がほとんど流れていなかったことが悪いと感じ た。支援のメッセージが放送されると励みになった。震災当初はテレビなどメディアは見たくないと思ったが、このよ うなメッセージ支援情報があり、見ることも多くなった。/特に役立つことはなかった。/テレビで何度も見たくない津 波を見せられるのは辛かった。避難所で何箇所にもテレビが欲しかった。/テレビで緊急地震速報が流れると本当に必 要な情報が得られなかった(他局へチャンネルを変えても同様なので)。小さな地域の取材や特集をして情報を流して 欲しかった。/今回の震災ではラジオと新聞の情報しか得られることができませんでしたが、とても役に立ちました。 /L 字情報など生活情報をもっとほしい/津波が来ているのをヘリコプターで見ているのだから、早く情報を伝えて欲し かった。何も分からず、大変だった。/特に報道は見ていなかった。/今までは助ける側、今回ぐらい助けられたという 気持ちは初めて。人命救助してくれる方(富山のレスキュー隊)の姿を見て自分の弱さを知った、顔も覚えている。/ 支援物資を送ってくれる人の言葉等を聞けたのは良かった。新聞に被害状況を載せてくれている人がいたので意見を参 考にできた。/あまり情報がなかった(避難所で)ので見れる環境にあれば良かった。もっと閖上など地域の情報が欲 しかった。/視覚障害なのでラジオやテレビの音で情報を得ていたが、情報が偏っているように思われた。もっと被災 者に向けた情報を伝えてほしかったと思う。/情報を得る為にテレビ、ラジオがとても良かった。実家に戻ることが出 来ず、どんな状況かがすぐ知りたかった。/被害が大きい三陸の方の報道ばかりで、他の地方の方々の東日本大震災の イメージが実際もひどいが、よりひどいものになっていると思う。原子力の映像ばかりが流され、震災の情報が流され ることが少なくなり復興が遅れるのではないか。テレビを観てると、被災地の商業施設にお金を落とすことが復興とさ れているように感じるが、実際は仮設とかに住んでいる方はもっと苦労しているのではないか⇒募金の方がよいと私は 思う。/当初はなおの事、限られた場所しか報道されていなくて自分の住んでいる地域のことが分からなくて困った。/ 仮設住宅の方だけ重視され、アパート等に住んでいる人の対応の違いを報道してほしい(物資の配給、義援金など仮設 の人だけ優遇されている) 。地域限定されて報道されていたので、地域まんべんなくテレビ等で報道してほしかった。 /L 字情報が良かった。津波映像見たい気持ちともう見たくない気持ち。/ 126 災害情報調査研究レポート Disaster-Information Management Vol.16 東日本大震災における津波避難 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 2011 Tohoku Earthquake and Evacuation Behaviors -From the Interview Survey- 中村 功 (東洋大学) 中森 広道 (日本大学) 東日本大震災における津波避難 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 2011 Tohoku Earthquake and Evacuation Behaviors -From the Interview Survey- 目 第1章 東日本大震災における津波避難-聞き取り調査から避難成否の要因を探る- (日本災害情報学会 128 次 第13回研究発表大会2011年 1.1 避難失敗率の高さ 1.2 まさかここに津波が来るとは思わなかった 1.3 「北高南低」・「海高陸低」の津波意識 1.4 助けに行ってやられた 1.5 車避難 1.6 いつものこと 1.7 その他の失敗要因 1.8 避難成功の要因 1.9 「正常化の偏見」ではない 予稿集 pp267-272より転載) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 功・中森 広道 功・中森 広道 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 中村 第1章 東日本大震災における津波避難 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 第1章 東日本大震災における津波避難 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 1.1 避難失敗率の高さ 東日本大震災では、死者・行方不明者が約2万人(8/13 日現在 20319 人)という、大きな人 的被害が生じたが、そのほとんどは津波による被害だった。大津波まで 30 分程度の時間的余 裕があり、大きな揺れという明確な前兆があり、大津波警報が出され、しかも昼間という、避 難のための好条件がそろっていたにもかかわらず、なぜこれだけ大きな被害となったのであろ うか。 大きな被害を出した市町ごとに、死者行方不明者数を全壊住宅数で割り、全壊 1 棟あたりの 死者率を出したところ、陸前高田の 67.0%を筆頭に、相馬、大槌、釜石、名取、女川、南三陸、 山田などで、3割を超える高率となっていた(図 1.1.1)。ここでは、津波の波高が高い所では 死者率が高くなり、逆に大都市では、全壊住戸数が多くなるために死者率が低くなる、という 傾向がみられた。 しかしこれだけでは、避難成否の原因ははっきりしない。そこで筆者らは、津波時の心理や 避難行動について、被災地住民に聞き取り調査を行った。聞き取りを行ったのは、北は岩手県 宮古市田老地区から南は千葉県旭市にいたるまでの 12 市町(宮古市・山田町・大槻町・釜石 市・陸前高田市・気仙沼市・南三陸町・塩釜市・仙台市・山元町・いわき市・旭市)の、計 50 人である。調査は 1 人あたり 30 分から1時間程度で、本人及び家族や近隣の人の状況につい て聞いた。一般のアンケート調査では、避難が成功し、助かった人の声が主に拾われるが、本 人のみならず周りの人の状況も聞き取りすることによって、避難失敗の原因も見えてくる。 130 東日本大震災における津波避難 死者率 宮古 14.8 8.5 30.6 山田 大槌 37.0 9.0 12.4 9.5 大船渡 陸前高田 気仙沼 7.7 17.6 20.3 5.8 東松島 亘理 31.2 15.9 女川 名取 67.0 15.0 16.6 南三陸 仙台 39.4 12.6 釜石 石巻 3.7 9.5 35.6 9.1 10.5 7.7 31.5 14.3 5.3 6.8 20.1 新地 旭 図 1.1.1 43.8 6.9 南相馬 いわき 32.3 25.0 10.4 山元 相馬 波高 4.5 6.0 死者率(死者・行方不明者/全壊住宅数)と波高 1.2 まさかここに津波が来るとは思わなかった まず、避難失敗の要因について考える。避難しなかった理由には実に多様なものがある。そ の中で、最もよく聞いたのは、まさかここに津波が来るとは思わなかった、ということである。 たとえは陸前高田市竹駒地区の住民は次のように言う(例 1)。 例 1 自分はヘルパーで(高田町)大石にいた。私は自宅に帰った。渋滞で 10 分待って、家について 花を直していた。消防が津波だと言ってきた。眺めようと思って2階に上がった。山がかかってく るような感じだった。まさか来るとは思っていなかった。チリ地震の時はこんなに来るとは。 (竹駒 町)大畑の人は車で見物していた。「あれなんだべ」といっているうちに、流された。竹駒の人は地 震→津波とは考えていたが、距離的にここまで来るとは思わなかった。(陸前高田市 女性 60 代) 131 あるいは同市高田町の別の人は次のように言う(例 2,3)。 例 2 近所が逃げたか見て回った。「早くにげっぺ」と言って回った。町の人は津波を甘く見てい た。誘ったけど大丈夫だと言って。「いいから」と言って。そのほか、物を取りに帰った人、老人 を助けようとしてだめだった人もいた。渋滞で波にのまれた人もいた。大石沖まで流されて九死に 一生を得た人は、周りの人は誰も逃げなかったと言っていた。140-150 軒ある森の前地区で、生き 残った人は少ない。(陸前高田市 70 代女性) 例 3 大きい地震の時に津波が来るかな、とは思った。近所の人に言ったら「逃げるの ?」と聞かれ た。大丈夫、という安心感があったのではないか。1960 年のチリ地震の時には自宅まで来なかっ た。逃げれば助かったのに。(陸前高田市 女性 30 代 ) 津波が来ないと思った理由として、チリ地震など、これまで来たことがなかったから、とい う人が多い。これは、過去の経験が避難の障害となる、「経験の逆機能」結果といえる。 また宮古市田老地区や山田町など、堤防が整備されているところでは、まさか堤防を越える とは思わなかった、という人が多い(例 4,5)。 例 4 堤防を越える津波は来ないと思っていた人が多かった。「まさか」というのが、みんなの本音 ではないか。(宮古市田老地区 70 代 女性) 例 5 こんな大きな堤防を越えるまで来るとは思わなかった。(山田町 80 代 男性) 1.3 「北高南低」・「海高陸低」の津波意識 揺れや片付けで頭がいっぱいで、津波のことなど考えもしなかった人もいた(例 6,7)。 例 6 地震の時の揺れで、自宅を心配して帰宅した。大した被害がなくホッとしていたら水が来 た。(仙台市男性 60 代) 例 7 地震で家族を心配して、ビニールハウスに避難した。水道が壊れたので見に行った。そうし たら真黒な壁が見えた。一瞬それが何なのか、わからなかった。津波だとは気が付かなかった。水 があっという間に一階を破壊した。(仙台市男性 60 代) 「大きな地震があったら、津波が来る恐れがあるので、避難しなければならない」という意 識を津波避難意識とするならば、そもそもこれが欠如している例である。被災地域を広く聞き 取りしていくと、これには 2 つの傾向があるようである。第一が岩手県三陸海岸や宮城県北部 など、津波を経験したことがある北部では津波意識が高く、宮城県南部、福島県、千葉県など、 南に下がるほど津波意識が低くなるという「北高南低」の傾向である。 たとえば例 1 から例 3 の陸前高田では避難意識が高かった。また田老のような津波常襲地域 では「津波てんでんこ」ならぬ「命てんでんこ」という言葉も聞かれ、意識が高かった(例 8)。 132 東日本大震災における津波避難 例 8 明治、昭和のとき、大変だったという話は聞いていた。物を取りに戻ってやられた人がいた から物を取りに戻ってはだめだとか。「命はてんでんこ」だから、高いところにバラバラに逃げて も、あとで何とかなると。(宮古市田老 女性 70 代) その一方、例 6 や例 7 の仙台では低く、さらに南のいわき市や旭市では次のように低い。 例 9 地震後は、隣のブロック塀が崩れたので、外に出て、隣の奥さんとそのことについてしゃべ っていた。(中略)周りの人は津波のことは考えなかったのではないか。一般の人は安心していたの ではないか。実際、向かいの奥さんは地震後いわき病院に出勤しようとしていた。「津波だ逃げ ろ」、と言って初めて逃げた。消防団に入っている甥が地震後訪ねてきたが、「地震で大丈夫だった か?」と尋ねただけで、そのまま帰って行った。(いわき市 男性 60 代 ) 例 10 地震後、まさか津波が来るとは思わなかった。海に行って、岸壁に登り、屋根瓦が落ちてい る家を見て通報した。そのとき海は平穏だった。津波を見て逃げた。(旭市 90 代男性) 例 11 地震後、家から外に避難した。津波が来るとは思わなかった。放送で言ったらしいが、バカ にしていた。来てもちょろちょろかな、と思った。どぶにちょろと水が来た。海に見に行ったら、 いつも通り平穏だったので一安心した。(旭市 女性 70 代) 第二の傾向は、海の近くに住む人は津波避難意識が高く、内陸部では低いという、「海高陸 低」だ。海に近ければ自宅の危険を直観しやすいが、海から離れたところでは、これまでも来 たことがないし、大丈夫だと思っていた。この心理から今回、内陸よりの人が多く犠牲になっ たと、いろいろな所で聞いた。 例 12 海に近い町の中心地は津波の意識があったが、(県合同庁舎のあるあたりの)奥の方の住民が 多く亡くなっているようだ。「ここまでは津波は来ないだろう」と避難しなかったようだ。それで 津波が来てから逃げたようだ。それに対して、町や海岸沿いの人は避難意識も高かった。(南三陸 町 女性 30 代) 例 13 気仙町の長部漁港そば海から1,2分のところに住んでいた。地震の1回目で外に出た。お さまったので家の中に入って、大事なものをもって、車で逃げると渋滞で危険だと思って、歩いて 高台の民家に逃げた。近所の人も避難した。8,9 軒の近所の人は皆避難して、無事だった。(内陸 の)上長部の人は流されてしまった人が多かった。今まで津波が来たことがないから、来ないだろ うと思って。(陸前高田市 女性 60 代) 例 14 海沿いより、山のほうの乙部の部落の人が亡くなっている。油断したのかもしれない。(宮 古市田老 女性 70 代) 陸前高田と南三陸は、波高や都市規模で似たような条件にあるが、死者率は前者が2倍以上 と高くなっていた(図 1.1.1)。その原因の一つがこの「海高陸低」にあったのではないだろう か。というのは、陸前高田は市の中心部が海から1キロ以上離れた内陸にあり、そこで大きな 被害が発生したからである。 こうした「北高南低」や「海高陸低」の原因には、津波が想定外の大きさだったことがある。 明治三陸津波を想定した陸中海岸(宮古・山田・大槌)では想定と実際のずれが少ないが、そこ から南になると、想定より津波が大きくなっていった。 133 1.4 助けに行ってやられた 例 2 にもあるが、老人や子供などを助けに行って被災した人も少なくない。 例 15 犠牲者が出たのは、今までにこういうことがなかったということと、助けに行って被災した ということがあるのではないか。中浜の区長さんはいったん中学校まで人を運んで、戻って行って やられた。あるいは勤め人で残っている人は老人が多い。若い人も犠牲になっているが、家に年寄 りがいるというので助けに行ってやられた人が多い。この辺りでは亘理や岩沼に勤めに行っている ことが多かった。(山元町 男性 70 代) 例 16 亡くなった高校生には次のようなケースがあった。①自宅にいて、母は 2 階にいて助かった が、本人は一階にいて流された。②おばあさんが自宅に残っていると、いったん避難したのに戻っ て流された。警察に就職が決まっている生徒だった。③地震の後、山形の姉とメールをやってい て、逃げ遅れたのではないか。(大槌町 男性 50 代 ) 地震が昼間の活動時間帯だったので、自宅が避難のスタート地点とは限らなかった。安全な 場所からわざわざ危険な場所に行き、遭難した人もいた。しかし「津波てんでんこ」とはいえ、 年老いた親や子供を危険な自宅や幼稚園に残したまま避難することは、困難であろう。自宅や 学校を安全な場所に作ることがまずは必要である。 1.5 車避難 避難や救出に向かう途中で、車に乗っていて津波に襲われた人も少なくなかった。以下は車 移動の危険性を示すエピソードである。 例 17 車で逃げたが水で動けなくなって車を捨てて逃げ出した人もいた。逃げ遅れて車の中で発見 された人もいる。小学校の裏の車の中では 6,7 人が発見された。(石巻 女性 70 代) 例 18 夫と娘が孫の幼稚園に迎えに行こうとしていた。気仙沼大橋の手前(左岸)で車が津波に襲わ れた。娘は、近いから、というので車を離れて別の橋を渡ろうとして助かったが、夫は4月になっ て車の中で発見された。まさか川から津波が来るとは思わなかった。(気仙沼 女性 60 代) しかしその一方で、車で逃げたから助かった、と車避難の有効性を述べる被災者もいる (例 19)。車は津波に襲われると脆弱だし、渋滞の危険があるので、できれば車避難は避けるべき である。しかし平野部で避難所が遠いとか、足が不自由である場合には、車が選択され がちで 134 東日本大震災における津波避難 ある。渋滞の恐れのない過疎地域なら車避難も仕方がないが、そうでないところでは、近所に 避難ビルなどを作り、車避難を不必要にする取り組みが重要だろう。 例 19 車で逃げる際中、知らない人が 5,6 人走っていた。その人たちはやられた。車に乗せて逃げ なかったことを後悔している。自分たちは車で逃げたから助かった。走っていた人は助からなかっ た。ただし一回目の地震で逃げた人は助かっている。車でも何台か後ろの人は津波に追いつかれて だめだった。(陸前高田 女性 70 代) 1.6 いつものこと 東北地方では、宮城県北部地震(2003 年)、十勝沖地震(2003 年)、宮城県沖地震(2005 年)、 岩手宮城内陸地震(2008 年) さらに 2 日前の3月9日には三陸沖で M7.3 の地震など、近年地 震が頻発していた。また前年の 2010 年 2 月 28 日にはチリ大地震に伴い 17 年ぶりに大津波警 報が三陸沿岸に出されたが、大きな被害はなかった。こうしたことから、津波が来ても、いつ ものように、たいしたことはないのではないか、という感覚はあったようだ(例 20,21)。ただ 今回は、揺れがかつてなく激しかったので、この理由だけで避難をしなかった、という例は見 られなかった。 例 20 これまで津波は来ていたが、50cm 位で、「またか」という感じだった。ただゆれが大きかっ たので、「なにか違うぞ」と思った。(宮古市 女性 20 代) 例 21 去年のチリ津波の時には高台(大平)にある妹の家に避難した。あの時はみんな避難したが、 実害がなかった。このあいだ大丈夫だったから今回も大丈夫というような気は、あったかもしれな い。(山元町 男性 70 代) 1.7 その他の失敗要因 避難が失敗した原因にはそのほかにも多様なものがある。たとえば「足が悪くて避難できな かった」(例 22)、「避難場所に津波が来た」(例 23)、「津波を見物に行った」(例 24)「物を取 りに戻って」(例 25)などである。また今回は出会わなかったが、漁師の「沖出し」の失敗例 もあったと報道されている(河北新報 2011.5.14)。 135 例 22 ちょうどこのあたりまで津波が来た。このあたりで7,8人は亡くなっている。隣の老人は 子供を高台に逃がして、自分は死を覚悟して残った。足が悪かったので。 (宮古市田老 男性 40 代) 例 23 津波の時には昔から江岸寺に行くと言われていた。そこより 15m も高い津波が来た。流れも 速く、30 人ほどの人がその寺で死亡した。こんな大きい津波は来ないと思った。(大槌町 男性 80 代) 例 24 津波の高さが 6m というのが伝わっていなかったので、養殖いかだもあるし、堤防に見に行 った人が多かった。家の前でうろうろしていた人もいたし、逃げるのが遅い人がいた。 (山田町 男性 20 代) 例 25 付近の人は 20 名くらい流されている。JR の近くの人は家の中で流された。向かいの人はた ばこを吸っていた。奥さんは買ったばかりの TV を取りに戻って。2人とも流された。(山田町 男 性 80 代) 1.8 避難成功の要因 では逆に、避難が成功した要因には何があるのだろうか。第一に挙げられるのが、地震の揺 れが大きかったので、津波が来ると思った、という回答である。これは特に津波避難意識が高 い三陸地方では、よく聞かれた。 例 26 揺れが強いから津波だという頭はあった。チリ津波は経験したことがある。水があふれてき たが、床上くらいまでだった。今回は特別強い揺れだったから。(石巻 女性 70 代) 例 27 地震の時、津波が来ると思った。地震の揺れが大きかったから。避難訓練もしていたし。訓 練は毎年やっていた。(陸前高田 女性 60 代) 例 28 地震の時に大きな津波が来るぞ、と思った。2度も立っていられないほどの大きな地震だっ たから。(陸前高田 男性 70 代) 例 29 あれくらい地震が大きいので、津波が来ると思った。(宮古市 男性 60 代) 第二に挙げられるのが、津波警報を聞いたから、というものである。揺れの大きさに加えて 津波警報を聞いたから避難した、という人もいるし、津波警報が決め手だったという人もいた。 聞いた手段としては、防災無線、ラジオ、テレビなどさまざまであった。 例 30 揺れの最中に車のラジオをつけたので、そこから津波警報が流れた。三陸や福島で津波の高 さが 7~8 メートルと言っていた。津波警報を聞いて、すぐに逃げなくてはと思い、家内とおじい さんと近所の年寄りを連れて車で、この坂元中学校まで逃げてきた。ラジオがなかったら逃げなか った。(山元町 男性 70 代) 例 31 地震後、防災無線が「津波が来るから避難してください」と言っているのを聞いたので、す ぐに隣の人の車で、知り合いの家に逃げた。(旭市 女性 60 代) 例 32 放送(防災無線)があって、津波警報が流れたので、逃げなければならないと思った。 (宮古 市 女性 60 代) 例 33 有線で、津波だから逃げろ、といわれた。それで薬も持たずに逃げた。もし有線で大津波、 と言われなかったら、逃げなかったと思う。(宮古市 女性 70 代) 例 34 地震の直前に携帯電話に緊急地震速報が入った。その後普通のテレビを見て、大津波警報が 出ているというので、逃げた。地震後しばらくは停電していなかった。(山田町 男性 20 代) 136 東日本大震災における津波避難 第三に挙げられるのが、津波警報の時にはいつも逃げているとか、防災訓練をしていたので など、習慣として逃げたというものだ。これは三陸沿岸で見られる回答である。津波意識の高 さから当たり前のように逃げるという場合もあるが、危ないという感覚がないままに、習慣と して逃げているケースも見られた(例 35)。 例 35 車で気仙小まで行った。津波が来るとは思わなかったが、避難訓練でいつも小学校に行って いるから。(陸前高田 女性) 例 36 小さい時から、地震の時には逃げるというのが当たり前だった。これまでも逃げていた。 (宮古市田老 女性 60 代) 第四に、消防団や周りの人に言われて避難したという回答もあった。これは、危険性を感じ て自ら避難したというよりも、避難に消極的で、受動的に避難させられた、という感が強い。 例 37 地震で津波とは思ったが、逃げなかった。「抜けていた」(気が動転していた)まさかと思っ た。周りの人がみんな避難の準備をしていて、津波で逃げろ、と言っていた。消防の人が来て、引 っ張られていって、逃げた。車も出さないで。(陸前高田市 女性 70 代) 例 38 そんな大きな津波が来るとは思わなかった。周りの人が逃げろというんで、逃げた。防波堤 があるので大丈夫だと思った。(山田町 女性 30 代) 最後に、たいした津波は来ないと予測して、その結果として、逆に迅速に避難したというケ ースもあった。ここには、すぐに家に帰れると思い、何も物を持たずに逃げたとか、とりあえ ず車を避難させようと思ったなどのケースがあった。いずれも逆説的で、偶然のことといえよ う。 例 39 はじめ 3m と聞いていたから、戻れると思って、何も持たずに逃げた。10m と聞いていた ら、物をもって、津波にのまれたと思う。(山田町 男性 20 代) 例 40 もし来ても道路が水没する程度だと思っていた。車を避難させようという気持ちだった。ま さか二度と家に戻れないとは思わなかった。(陸前高田 女性 60 代) 1.9 「正常化の偏見」ではない 避難のための好条件がそろっていたのにもかかわらず、多くの犠牲者が出たのはなぜか。 そこには、様々な要因があるが、その一つに、まさかこれほど大きな津波は来ないだろう、 たいしたことはないだろう、という危機意識の低さが挙げられる。上述の「まさかここに津 波が来るとは思わなかった」という点や「北高南低」「海高陸低」の避難意識などがそれで ある。 危機意識の低さというと「正常化の偏見」という言葉が思い出されるが、今回の現象は、 正確には「正常化の偏見」ではないと思う。というのは、正常化の偏見とは、「危険を告げ 137 る情報をあえて無視して、『たいしたことにはなるまい』とか、『自分だけは大丈夫だろう』 などと考える」1)ことだからである。「たいしたことにはなるまい」という点は共通するが、 危険を告げる情報をあえて無視していたか、というと、その点が疑問だからだ。 第一に、今回の浸水は、多くの場所で想定を大幅に上回っていた。たとえば陸前高田では、 駅前から市役所に至る中心部は、これまで最大のチリ津波でも浸水しておらず、県の想定で も 50cm-1m の浸水であった。しかし実際は市役所の4階まで浸水した。あるいは海から4キ ロほど内陸の竹駒地区ではそもそも住戸の浸水は想定されていなかった。 津波警報発表時刻と予想波高 2) 第二に大津波警報が出たといっても、当初の予想 14:49 15:14 15:30 波高は実際より低く、それほど内陸まで高い津波が 岩手県 3m 6m 10m 以上 来るとは思えなかった。 宮城県 6m 10m 以上 10m 以上 福島県 3m 6m 10m 以上 これらの状況から、住民に危険を告げる情報が十 分伝わっていたとはいえないのではないだろうか。 危機意識が低調だったのは、月並みな言い方だが、やはり想定外の大津波に襲われたことが、 根本にあると思う。したがって、その対策としては、まずは被害想定を見直して、想定外をな くすこと、そしてその想定にしたがって住民に危険性を理解してもらうこと、というのが基本 的な方策ということになるのではないだろうか。 参考文献 1) 廣井脩 1988『うわさと誤報の社会心理』日本放送出版協会 2) 気象庁“東北地方太平洋沖地震の概要”(東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調 査会資料) (中村 138 功・中森 広道) 災害情報調査研究レポート 16 号 東日本大震災時の災害情報の伝達と住民の行動 -陸前高田市・南三陸町・仙台市・名取市・山元町住民調査をもとにして- 東日本大震災における津波避難 -聞き取り調査から避難成否の要因を探る- 平成 24 年(2012 年)9 月 30 日 著作・発行―災害情報研究会 〒112-8606 東京都文京区白山 5-28-20 東洋大学社会学部 編 集―東洋大学 装 幀―宮部浩司 中村功研究室内 印刷・製本―株式会社創志企画 Disaster-Information Management Vol.16 The Information Dissemination and Behaviors of the Inhabitants in the 2011 Tohoku Earthquake -From a Questionary Survey2011 Tohoku Earthquake and Evacuation Behaviors -From the Interview SurveyISSN1881-4247 Printed in Japan