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小児泌尿器科 ② 尿路の発生とその異常 総排泄腔外反症 腎の発生 腎の
2014/3/5 小児泌尿器科 ② 尿路の発生とその異常 総排泄腔外反症 北海道立こども総合医療センター 小児泌尿器科 西中一幸 1 2 腎の発生 腎の発生 発生第5週末 前腎:第4週はじめに出現するが、 4週末に退化 中腎:第4週終わり頃、前腎退行中にその 尾方に出現。中腎管(Wolff管)を 形成し、後に生殖管の一部となる 後腎:第5週終わりに出現する永久腎 2つの中胚葉系原基より生じる 発生第8週末 ・ 排泄腔が尿直腸中隔により 原始尿生殖洞と肛門直腸管に分離 (7週目) ・ 排泄腔膜が尿生殖膜と肛門膜に分離 ・ 尿管芽が中腎管から独立、 単独で原始尿生殖洞の膀胱尿道管に開口 (8週目) 発生第7週 尿管芽:集合管、乳頭管、腎杯、腎盂、尿管 後腎芽組織:すべての排泄系(ネフロン系) 第9週頃尿を産生し始める 3 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:37) 5-7週 4 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:43) 腎の発生 (ネフロン) -12週 ・ 糸球体:大動脈からの毛細管球 ・ 糸球体包(Bowman嚢): 糸球体と合わせて腎小体という ・ 尿細管: 近位尿細管、Henleループ、 遠位尿細管 ・ ネフロンの遠位端は集合管と接着する 第16週頃までに皮質(腎小体、近位・ 遠位尿細管)、髄質(Henleループ、 集合管)に区別される ・ 1腎あたり約100万のネフロンが存在 し、出生後は新たに形成されない (標準泌尿器科 第8版 2010:26) 5 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:40) 6 1 2014/3/5 腎の発生 (ネフロン) 後腎原基 (後腎組織帽) 後腎包 腎の発生と移動 ネフロン 骨盤内 胎生 516週 糸球体 ボーマン嚢 近位曲細管 ・尿管芽が後腎間質に作用し 後腎帽を誘導 ・後腎帽はコイル状になりS字状の 管腔を形成しボウマン嚢、 尿細管と発達して行く 上昇後 集合管 • 腎は内方に回転しつつ 骨盤内から腹腔内を頭方へ 上昇する • 骨盤腎:上昇に失敗し、 骨盤内にとどまるもの • 馬蹄腎:腎下端が癒合し、 下腸間膜動脈で上昇が 妨げられる 遠位曲細管 ヘンレのループ 7 (Campbell-Walsh Urology, 2011, 2979) 8 腎の先天性異常疾患 ・ 発生異常 無形成(尿管芽の早期退行) 形成不全(造後腎芽体の発生障害) ・ 回転・位置の異常 回転異常 変位腎:骨盤腎、胸部腎 融合腎:馬蹄腎 ・ 血管の異常 腎動脈瘤 腎動静脈奇形 10 9 正常および馬蹄腎の排泄性尿路造影所見 正常 馬蹄(鉄)腎: horseshoe kidney 馬蹄腎 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11 左右の腎下極が融合したもの 融合異常のなかで最も頻度が高い 人口の0.25%、男女比は2:1と男子に多い 融合部(峡部)前面を尿管が走行するため、 尿通過障害(水腎症)を合併することが多い 多くは保存的に観察する 外科的治療としては峡部離断術 12 2 2014/3/5 腎嚢胞性疾患 常染色体優性(多発性)嚢胞腎 1.遺伝性嚢胞性腎疾患 -腎嚢胞を主体とする疾患 ・常染色体優性(多発性)嚢胞腎 ・常染色体劣性(多発性)嚢胞腎 -腎嚢胞をともなう疾患 ・結節性硬化症 ・von Hippel-Lindau病 2.非遺伝性嚢胞性腎疾患 -先天性腎嚢胞 ・多嚢腎 ・多房性腎嚢胞 ・海綿腎 -先天性?/後天性? ・単純性腎嚢胞 ・傍腎盂嚢胞 -後天性 ・後天性嚢胞性腎疾患 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:210) 13 ・成人型 (成人以降に症状が出現、60歳前後で腎不全となる) ・11-12/100,000人の頻度 ・原因遺伝子が特定 第16番染色体短腕 (PKD1遺伝子) ・第4番染色体長腕 (PKD2遺伝子) ・肝、脾、肺、精巣上体にも嚢胞形成あり ・脳動脈瘤、高血圧の合併が多い 結節性硬化症 常染色体劣性(多発性)嚢胞腎 (割面) (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:210) 14 ・原因遺伝子:6p21.1-p12 ・4万人に1人 ・腎集合管の嚢状の拡張のため、 皮質と髄質に放射状に並んだ多数の 1-2mmの小嚢胞が見られる ・胎児型(60%):75%は生後24時間以内 に死亡 ・新生児型 ・幼児型:3-6ヶ月で発症 ・若年型:1-5歳で発症、肝線維化症が 問題となる ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 原因遺伝子:9p34 (TSC1), 16p13.3 (TSC2) 腎血管筋脂肪腫が40-80%に発生する 腎嚢胞の頻度は不明 皮膚(脱色素斑、顔面血管線維腫、顔面線維斑) 脳(皮質結節、痙攣、精神遅滞・発達遅滞) 心臓(横紋肉腫、不整脈) 中枢神経系腫瘍が死亡原因の主要因子 腎疾患は早期死亡の第2の原因 16 15 腎血管筋脂肪腫のCT像 単純 造影剤で増強 顔面血管線維腫 17 18 3 2014/3/5 von Hippel-Lindau病 海綿腎: medullary sponge kidney ・ 原因遺伝子は3p25 (VHL遺伝子:がん抑制遺伝子) ・ 腎嚢胞:70-80% ・ 腎細胞癌:30-40% -両側性かつ多発性 -若年発生 -進行が比較的遅いため、 3cm以上の腫瘍を摘除する ・ 褐色細胞腫:10-20% -両側が多い -同時発生は少ない。 ・発症頻度:0.5% ・腎乳頭/集合管先端に 小嚢胞が発生 ・拡張した嚢胞内に小結石を 生じることがある ・血尿、尿路感染症の 精査中に発見されることが多い (割面) (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:210) 19 海綿腎の排泄性尿路造影 20 単純性腎嚢胞 造影40分後 単純 ・腎実質の嚢胞 ・加齢とともに頻度増加 60歳代で20%、70歳代で30% ・悪性腫瘍の合併もあり ・出血 (1-10%)、感染 (2-3%)の合併もあり ・通常無症状 症状が強い(背部痛など)場合 →外科的(腹腔鏡下)切除 →吸引エタノール固定 21 単純性腎嚢胞 22 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:210) 後天性嚢胞性腎疾患 acquired cystic disease of the kidney: ACDK 単純嚢胞 出血性嚢胞 ・ 透析患者の萎縮腎に発生する ・ 透析後1-3年で10-20%、3-5年で 40-60%、5-10年で90%以上に発生 ・ 半数以上で出血が見られる ・ 腎癌の発症は通常の数十倍 ・ 透析患者では腎細胞癌の定期的な スクリーニングCT /USが必要 ・ 腎移植が成功すると消失する 23 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:210) 24 4 2014/3/5 腎盂・尿管・膀胱の先天性異常疾患 後天性嚢胞性腎疾患 acquired cystic disease of the kidney: ACDK 肉眼所見 ・ 重複腎盂・尿管 不完全 完全 ・ 異所開口尿管 ・ 尿管瘤 ・ 下大静脈後尿管 ・ 巨大尿管 ・ 尿膜管の奇形 MRI所見 25 (標準泌尿器科学 2010:359) 26 尿管の発生 不完全重複尿管 不完全重複(腎盂)尿管 尿管芽が途中で分岐したもの 分岐部は尿管下1/3に多い 通常はY型 (新図解泌尿器科学講座 第1巻 1999:41-42) 27 28 Weigert-Meyerの法則 完全重複尿管 (新図解泌尿器科学講座 第1巻 1999:45) (新図解泌尿器科学講座 第1巻 1999:44) 29 30 5 2014/3/5 異所開口尿管の発生過程 重複(腎盂)尿管 duplication of (renal pelvis and) ureter 完全重複(腎盂)尿管 尿管芽が2本発生 上半腎尿管は下半腎尿管の下内側に開口する 上半腎尿管は逆流、異所開口を起こしやすい 不完全重複(腎盂)尿管 尿管芽が正常より近位で発生(②の位置)するため、 尿管口が膀胱に吸収されず、中腎管由来器官などに 尿管が開口する 31 (新図解泌尿器科学講座 第6巻 1999:21) 32 (新図解泌尿器科学講座 第6巻 1999:20) 異所開口尿管 異所開口尿管: ectopic ureter 尿管 ・女性に多い ・男性での開口部位は前立腺部尿 道、精嚢の順に多い ・女性では子宮、卵管、膣、膣前庭 など外尿道括約筋より遠位に 開口した場合、持続的尿失禁を 示す ・女児の尿失禁では必ず疑う ・治療は尿管膀胱新吻合(腎機能 の程度によっては腎摘除術) 5歳女児、主訴:昼間尿失禁、夜尿症 膣 (ベッドサイド泌尿器科学 診断・治療編 2000:195) 33 異所開口尿管: ectopic ureter 34 異所開口尿管: ectopic ureter 腹腔鏡下手術 35 摘出された右腎臓と尿管 36 6 2014/3/5 尿管瘤 下大静脈後尿管 ・尿管下端が嚢状に拡張したもの ・拡張の程度は小さいものから膀胱を 充満する大きなものまでさまざま ・尿路感染症、排尿障害で発見される ・女性に多い ・上半腎尿管、異所性尿管が多い ・治療:内視鏡的切開、 尿管膀胱新吻合術 ・静脈の発生異常である ・下大静脈は右の主上静脈から形成され るが、主下静脈が萎縮せず下大静脈と なると右尿管が下大静脈の背側を走行 する ・男性に多い ・水腎症、尿路感染症などで発見される ・尿管を切断後、下大静脈前面で 再吻合する 37 38 (新図解泌尿器科学講座 第1巻 1999:36) 尿膜管の奇形 尿膜管の奇形 ・ 膀胱は尿膜に続いているが、胎生4-5ヶ月で小径の管となり 臍との交通は途絶する ・ 胎児では50%に膀胱と尿膜管との連続性がみられるが、 出生後閉鎖する 17歳男児、主訴は下腹部痛と発熱 尿膜管膿瘍 尿膜管開存症 尿膜管嚢胞 尿膜管憩室 (感染の可能性あり) 圧迫された膀胱 (Campbell-Walsh Urology, 2011, 3383) 尿膜管洞(臍嚢腫) 39 40 練習問題 練習問題 重複(腎盂)尿管について正しいのはどれか。2つ選べ 重複(腎盂)尿管について正しいのはどれか。2つ選べ 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 中腎が完全に退化しない場合、後腎と合わせて完全型となる 完全型で上腎由来の尿管は下腎由来の尿管の上方に開口する 不完全型では尿管開口位置により合併症の頻度が異なる 完全型では尿管異所開口、尿管瘤などを合併しやすい 女児の尿失禁では完全型の膣への尿管開口を疑う 41 中腎が完全に退化しない場合、後腎と合わせて完全型となる 完全型で上腎由来の尿管は下腎由来の尿管の上方に開口する 不完全型では尿管開口位置により合併症の頻度が異なる 完全型では尿管異所開口、尿管瘤などを合併しやすい 女児の尿失禁では完全型の膣への尿管開口を疑う 42 7 2014/3/5 練習問題 練習問題 腎の嚢胞性疾患で正しいものはどれか。2つ選べ。 腎の嚢胞性疾患で正しいものはどれか。2つ選べ。 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 成人型嚢胞腎は中年以降慢性腎不全となりやすい 後天性嚢胞性腎疾患は抗癌剤治療後に発症しやすい 幼児型嚢胞腎の遺伝形式は常染色体優性である 結節性硬化症では腎血管筋脂肪腫を合併しやすい 単純性腎嚢胞では30%の患者で腎細胞癌を合併する 43 成人型嚢胞腎は中年以降慢性腎不全となりやすい 後天性嚢胞性腎疾患は抗癌剤治療後に発症しやすい 幼児型嚢胞腎の遺伝形式は常染色体優性である 結節性硬化症では腎血管筋脂肪腫を合併しやすい 単純性腎嚢胞では30%の患者で腎細胞癌を合併する 44 8