...

肝臓がん∼ 第7回 肝炎・肝硬変が引き起こすがん

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

肝臓がん∼ 第7回 肝炎・肝硬変が引き起こすがん
がん対策特集
がん対策特集「がんについて知ろう」
このコーナーでは、各部位に発症する「がん」について、それぞ
れ専門医より早期発見・早期治療につながる情報を紹介します。
第7回 肝炎・肝硬変が引き起こすがん ∼肝臓がん∼
市立大森病院 院長 小 野 剛
原発性肝がんと転移性肝がん
肝臓がんには、肝臓そのものから発症した原発性肝がん
と、他の臓器のがんが肝臓に転移した転移性肝がんがあり
ます。原発性肝がんには、肝細胞から発生した肝細胞癌
と、肝臓の中の胆管から発生した肝内胆管癌があります。
原発性肝がんの約95%を肝細胞癌が占め、肝内胆管癌は約
4%です。
日本では肝臓がんで死亡する人は年間約3万人で、男性
ではがん死の第4位を、女性では第6位を占めています。
罹患率および死亡率は男性が女性の3倍です。
確定診断が困難な場合は、血管造影・血管造影下CT、
更には腫瘍生検(細い針で組織を採取して顕微鏡で診断
する)を行うこともあります。
さまざまな治療法を組み合わせる治療
肝臓がんの原因は何か
肝臓がんのほとんどが、B型またはC型肝炎ウイルス感
染後のウイルス性慢性肝炎や肝硬変を背景に発生すること
が特徴です。特にB型肝硬変、C型肝硬変状態では、きわ
めて高率に肝臓がんが発生することが明らかです。C型肝
硬変では、肝臓がんの発生率が年間6∼7%と言われてい
ます。
肝臓がんの治療法としては、(1)外科的切除術、(2)経皮的
エタノール局注療法、(3)ラジオ波焼灼術、(4)肝動脈化学塞
栓術、(5)化学療法などがあります。最近では、これらの治
療法が行えないような進行した肝がんに対して、分子標的
薬といった内服治療も知られています。肝臓がんは基礎疾
患として慢性肝疾患、とりわけ肝硬変があることが多く、
いったん根治的に治療しても、新規の発がんを起こして再
発することも少なくありません。
肝臓がんでは、この(1)多発性(1個か複数か)、(2)腫瘍
の大きさ、(3)肝機能の重症度の3点を考慮してそれに適し
た治療法が選択されます。さまざまな治療法を柔軟に組み
合わせて行うこと(集学的治療)こそが、肝臓がん患者さ
んの生活の質(QOL)を保ち、長期の生存につながると
いえます。
進行した肝硬変と同じ症状が
十分な治療を受けるためには早期受診を
肝臓がんの初期症状として特有のものはなく、発見され
にくいのが特徴です。肝臓がんでは肝硬変を併せ持つ状態
が多く、症状として進行した肝硬変の症状と同じようにな
ります。つまり、食欲不振・体重減少・全身倦怠感・疲れ
やすいなどに加え腹部膨満や黄疸が出てくることがありま
す。更に進行すると吐血・下血の他に意識障害などの症状
も出ることもあります。
肝臓は、「沈黙の臓器」と言われるように肝臓がんであ
るという特有な症状、サインはほとんどありません。健診
で肝機能異常やB型肝炎・C型肝炎ウイルス陽性を指摘さ
れた場合は、早めに医療機関を受診して肝機能の再検と腹
部超音波検査を受けることをおすすめします。そして、慢
性的な肝臓疾患があって、腹部超音波やCTで肝臓内部に
腫瘤があれば、更に詳しい検査が必要です。自覚症状のな
い早期に肝臓がんを診断することが、十分な治療を行うた
めにはどうしても必要です。
肝臓がん早期発見のための検査
食生活・生活習慣の改善で肝臓がん予防
超音波検査
CT検査
血管造影検査
(1)腫瘍マーカー:最も有名な腫瘍マーカーであるAFP
(αフェトプロテイン)は、慢性肝炎や肝硬変でも高い
数字を示すこともありますが、50∼100ng/ml以上の高
値になると肝臓がんを疑う根拠になります。第二の腫瘍
マーカーであるPIVKA‐II(ピブカ・ツー)は陽性
に出れば肝がん診断の特異性が高いと言われています。
(2)画像診断:早期に肝臓がんを発見するために腹部超音
波検査が有用です。腹部超音波検査で肝臓内に結節があ
れば次に腹部造影CT検査や、腹部MRI検査などを行
なって肝臓がんの診断を行います。これらの画像診断で
肝臓がんのほとんどはウイルス性肝炎から肝硬変になっ
たものであるため、肝臓がんを予防するには、肝硬変にな
る前に、肝炎を早期に発見し、治療を行うことが第一で
す。また、アルコールの飲み過ぎや食べ過ぎでアルコール
性肝障害や脂肪肝となり肝炎、肝硬変、ついには肝臓がん
を引き起こす可能性があるといわれています。食生活・生
活習慣を改善し、定期的に肝機能検査を受け肝臓がんを予
防しましょう。
8
プロフィール
8
小 野 剛(おの・つよし)
自治医科大学を卒業。平成8年4月に旧・大森町立大森病
院(市立大森病院)の院長に就任し、現在に至る。平日の
午後5時から7時に診察する「夕暮れ診療」や女性スタッ
フによる「女性専用外来」などを導入、地域のニーズに応
える医療の実践に取り組む。
秋田のこくほ
秋田のこくほ
7
Fly UP