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1 犬リンパ腫25例における 回顧的研究 (1999-2007)
目 的 o 動物医療センター林宝どうぶつ病院でリンパ腫 と診断した犬の傾向,治療成績,化学療法の 毒性について調査 犬リンパ腫25例における 回顧的研究 (1999-2007) o 過去の報告と比較 o 問題点や今後の課題を検証 動物医療センター 林宝どうぶつ病院 RIMPO ANIMAL HOSPITAL 材 料 と 方 法 調 査 因 子 o 1999年1月-2007年8月にかけて細胞診または 切除生検によってリンパ腫と診断した犬25頭 o 発生犬種 o 性別 o 体重 o 年齢 o 来院理由 o 解剖学的分類(多中心型VSその他) o 悪性度分類(High vs Intermediate vs Low) o 臨床病気分類 o 治療成績 o 化学療法の毒性 o 研究デザイン 回顧的研究(Historical Cohort Study) o ステージング CBC,血液生化学検査,X線検査,超音波検査, 肝臓,脾臓細胞診,骨髄検査,凝固系検査 統計処理 化学療法による毒性の評価 o 統計ソフト:JMP6 o 好発犬種の分析:カイ二乗検定 o 寛解期間,生存期間: Kaplan-meier法 o 単変量解析:Log Rank Test 好中球数 嘔吐 下痢 1 1500/µl – 正常値下 限 <3回/日 1日2回未満の排便回数の増加 2 1000/µl – 1499/µl 3 – 5回/日,<3回/日;2日以上続く<5日 24時間以上続く1日2-6回の排便回数の増加; 非経口的な輸液適応(IV or SC);日常生活に支障な し 3 500/µl – 999/µl 6 – 10回/日,4日以上続く嘔吐 24時間以上にわたる静脈点滴や高カロリー輸液適応 24時間以上続く1日6回を上回る排便回数の増加; 便失禁;静脈点滴適応;入院;日常生活に支障あり 4 <500/µl 生命を脅かす(例;虚脱を伴うなど)嘔吐 生命を脅かす(例;虚脱を伴うなど)下痢 5 ― 死亡 死亡 o P<0.05 Veterinary Co-operative Oncology Group Veterinary and Comparative Oncology, 2004 1 犬種:林宝どうぶつ病院での分布 結 果 発生犬種 N=4458 N=25 ※ゴールデンレトリバーがハイリスク犬種 P<0.001 結 果 解剖学的分類 年齢(N=15) 中央値= 7.8歳(2.9~13.3歳) 性別(N=13) 雄(去勢雄):雌(避妊雌)= 7(2):6(3) 体重(N=13) (中央値)=16.9kg 林宝どうぶつ病院 N=25 悪性度分類 過去の報告 Madewell,Vet Cancer Med 2nd ed.,1987 ステージング(詳細) 林宝どうぶつ病院 過去の報告 o Low Grade 16%(4/25) o Low Grade ~10% o Intermediate Grade 4%(1/25) o Intermediate Grade 20~30% o High Grade 80%(20/25) o High Grade 60~70% Carter,Can J Vet Res,1986 Appelbaum,Hematol Onco ,1984 Taske,Exp Hematol,1994 u 肝臓,脾臓細胞診:25頭中13頭で実施 5 o 13頭中10頭で腫瘍性リンパ球の浸潤あり o 10頭中4頭(40%)は肝腫脾腫なし u 骨 髄検査:25頭中13頭で実施 o 13頭中5頭で骨髄浸潤あり o 5頭中3頭(60%)は末梢血に腫瘍細胞なし o 3頭中1頭は好中球減少症あり,2頭はCBC異常なし 2 WHO臨床病期分類(ステージング) 林宝どうぶつ病院:N=13 サブステージ 過去の報告(UW25):N=53 林宝どうぶつ病院:N=13 過去の報告(UW25):N=53 Garrett LD,JVIM,2002 Garrett LD,JVIM,2002 治療方法 来院理由 多中心型High grade 多中心型High Grade N=15 N=15 o ステロイドと対症治療:2頭 o 化学療法 n UW-Madison25:9頭 n Cyclical Combination :4頭 ※15頭中4頭がトリミングあるいはワクチンで来院 ※4頭中2頭はグレードⅤだった 化学療法への反応(寛解期間) 化学療法への反応(寛解期間) 多中心型High grade 多中心型High grade n 反応率(%) 完全寛解 頭数 完全寛解率 (%) 寛解期間 中央値(日) UW-Madison25 9 88.9 6 66.7 597 Cyclical Combination Chemotherapy 4 100 4 100 189 過去の報告 (UW-M 1) 55 - - 91 252 過去の報告 (UW-M25 2) 53 94.2 - 92.3 282 過去の報告 (VELCAP-L 3) 98 - - 69 385 過去の報告 (VELCAP-S 4) 82 - - 68 308 1.0 N=13 0.9 UW25 = 9 Cyclical = 4 0.8 0.7 寛解率 プロトコール 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 寛解期間 UW25 Cyclical 1)Keller E.T. J Vet Intern Med, 1993 2)Garrett L.D. JVIM, 2002 3)Zemann B.I. J Vet Intern Med, 1998 4)Moore A. S. J Vet Intern Med, 2001 (p=0.1738) 3 化学療法への反応(生存期間) 多中心型High grade 化学療法への反応(生存期間) 多中心型High grade プロトコール n 生存期間 中央値(日) 1年生存率(%) 2年生存率(%) UW-Madison25 9 664 62.2 31.1 Cyclical Combination Chemotherapy 4 517 75.0 25.0 過去の報告 (UW-M 1) 55 357 52 - 過去の報告 (UW-M25 2) 53 397 - - 過去の報告 (VELCAP-L 3) 98 - 53 25 過去の報告 (VELCAP-S 4) 82 - 36 12 N=13 UW25 = 9 Cyclical =4 1)Keller E.T. J Vet Intern Med, 1993 2)Garrett L.D. JVIM, 2002 3)Zemann B.I. J Vet Intern Med, 1998 4)Moore A. S. J Vet Intern Med, 2001 (p=0.6736) 化学療法による毒性:好中球数減少 化学療法による毒性:下痢 多中心型 High Grade 多中心型 High Grade :13頭 N=13 第10-25週 第1-9週 化学療法による毒性:嘔吐 N=13 第10-25週 第10-25週 化学療法による毒性 多中心型 High Grade :13頭 第1-9週 N=13 o ビンクリスチン治療後:10/13頭(76.9%) o ドキソルビシン治療後:6/13頭(46.2%) o 血尿(サイクロフォスファマイド):2/13頭(15.4%) o 入院治療:6/13頭(46.2%) o 死亡:0頭(0%) 4 予 後 因 子(生存期間) 化学療法の有無と生存期間 多中心型 High Grade o 化学療法の有無(p=0.0019) o 解剖学的分類(p=0.0070) o 完全寛解の有無(p=0.0001) o 導入後の好中球減少症の有無?(p=0.0033) N=15 なし=2 あり=13 (p=0.0019 ) 解剖学的分類と生存期間 High grade 完全寛解の有無と生存期間 多中心型 High Grade 1.0 0.9 N=18 0.8 多中心型=15 消化器型=3 生存率 0.7 N=13 なし=3 あり=10 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 生存期間 (p=0.0001) (p=0.0339 ) 導入後好中球減少症の有無と生存期間 多中心型 High Grade 予 後 因 子 o 体重,性別,年齢は予後因子ではなかった N=13 なし=3 あり=10 o 臨床ステージやサブステージは予後因子とならなかった o 組織学的グレード (Low vs High)による生存期間にも 有意差なし (p=0.0011) 5 考 察 考 察 o 過去の報告と比較してステージVが多い理由 本研究の問題点 フルステージングを行っていないと臨床ステージを低く見積もる可能性あり 施設によりステージングの厳密さが違う 予後指標には使いにくい? o 組織学的グレード (Low vs High)による生存期間にも有意差が なかった理由 症例数が少ない 調査期間の問題:Low Grade群は生存中の犬が多い ¨ 導入後の好中球減少症が予後因子となった理由 症例数が少ない 薬剤強度が高く保てている可能性あり?? ¨ 絶対的症例数の不足 ¨ 回顧的研究であるためデーターが不完全 ※検査内容は動物の状態と飼い主の意向に依存 ¨ 調査期間の設定方法 結 論 考 察 今後の課題 ¨ 症例の蓄積 ¨ 他施設と協力して前向き研究の実施 ¨ 化学療法を積極的に行っていない施設との データーの共有 o 今回の研究ではGRが最もハイリスク? o 米国ではボクサー,バセットハウンド,セントバー ナード,スコッチテリア,エアデールテリア,ブルドッ クが報告 ↓ 明らかに母集団が違う ¨ 日本独自の調査が不可欠 結 論 ¨ 肝腫,脾腫がなくてもステージⅣである事あり 結 論 o ビンクリスチン,ドキソルビシンでの治療後に毒 性の発現が多い ¨ 末梢血に異常所見がなくてもステージⅤの事あり o 導入時の好中球減少症に要注意 ¨ 可能であればフルステージングの実施が理想 ¨ 臨床ステージはあくまでも大まかな進行度の評価 6