Comments
Description
Transcript
齋田, 菜緒子 Journal 歯科学報, 11
Title Author(s) Journal URL Relationship between gagging severity and its management in dentistry 齋田, 菜緒子 歯科学報, 113(4): 468-469 http://hdl.handle.net/10130/3199 Right Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/ 468 歯科学報 氏 名(本 Vol.113,No.4(2013) さい た 籍) 齋 田 な 士(歯 お こ 菜 緒 子 学 位 の 種 類 博 学 位 記 番 号 第 1932 号(乙第754号) (東京都) 学) 学 位 授 与 の 日 付 平成24年3月7日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項該当 学 Relationship between gagging severity and its management in 位 論 文 題 目 dentistry 掲 論 載 文 雑 審 誌 査 委 名 Journal of Oral Rehabilitation 第40巻 106−111頁 2012年10月 員 (主査) 山下秀一郎教授 (副査) 櫻井 薫教授 一戸 達也教授 松久保 隆教授 田 雅和教授 論 1.研 究 目 文 内 容 の 要 旨 的 歯科治療中の異常絞!反射は,術者による処置への障害となるのみならず,患者の歯科受診に対する意欲を 喪失させ,歯科治療を回避する原因となる可能性もある。歯科治療回避患者の約20%は,嘔吐反射の発現が原 因であることが,我々の調査から明らかとなっている。本研究の目的は,嘔吐反射の重症度の違いによって, 患者背景(年齢・性別・STAI・DAS)や管理方法が異なるか否かを検討することである。 2.研 究 方 法 本研究は,本学倫理委員会の承認(№300) を得て行われた。対象は,異常絞!反射のために歯科受診困難で あることを主訴として,初診来院した患者121名の内,同意の得られた110名を対象とした。初診時に StateTrait Anxiety Inventory (STAI) を用いて特性不安と状態不安の程度を,また Dental Anxiety Scale(DAS) に よって歯科に対する不安感の程度を測定した。2回目来院時,口腔内診察が行われ,その際に発現する異常絞 !反射の程度に応じて重症度が判定された。本重症度分類を New Classification of Gagging Problem(CGP) と し,重症度は G1∼G5の5段階にスコア化し分類した。3回目以降の歯科治療時の管理方法は,異常絞!反 射の発現時点で段階的に選択することとした。歯科治療は,異常絞!反射を克服する訓練を行いながら進めら れ,管理方法は可能な限り段階を下げるように試みられた。そして,初診から3ヶ月及び1年後の時点の管理 方法の分類と脱感作の有無をレトロスペクティブに調査した。 3.研究成績および考察 Grade 間で背景因子を比較すると,男性 CGP スコアは女性と比較して高かった(P<0. 01) 。年齢,STAI の 特性・状態不安の測定値,DAS の測定値は,grade 間に差を認めなかった。管理方法は CGP の grade が高い ほど精神鎮静法や全身麻酔法など麻酔薬剤を使用した管理法が多く,脱感作が困難であった(P<0. 01) 。CGP による分類とその後の管理方法との関連性を分析することで,麻酔薬剤を使用せずに管理できた群と麻酔薬剤 を使用して管理を行った群の2群に大別することができた。その大別は,口腔内診察の時点でのデンタルミ ラーによる臼歯部の診査の可否が,それを類推する基準になることが判明した。 ―120― 歯科学報 4.結 Vol.113,No.4(2013) 469 論 男性では女性と比較して異常絞!反射の重症度が高かった。また,早期の口腔内診査で,臼歯部の診察が可 能か否かによって,異常絞!反射の grade は大別され,臼歯部の診察が不可能な患者の多くは,麻酔薬剤の 使用が必要であり,脱感作も困難であった。 論 文 審 査 の 要 旨 まず,齋田菜緒子助教より論文内容の概要が次のように説明された。本研究の目的は,異常絞!反射の重症 度の違いによって,患者背景(年齢・性別・STAI・DAS) や管理方法が異なるか否かを検討することである。 対象は,異常絞!反射のために歯科受診が困難であることを主訴として,初診来院し同意の得られた110名と した。口腔内診察により,重症度を判定し,G1∼G5の5段階に分類した。そして,初診から3ヶ月及び1 年後の時点の管理方法と脱感作の有無をレトロスペクティブに調査した。その結果,男性は女性と比較して重 症度が高く,管理方法は重症度が高いほど精神鎮静法や全身麻酔法など麻酔薬剤を使用した管理法が多く,脱 感作が困難であった(P<0. 01) 。本研究の結果から,早期の口腔内診査で,デンタルミラーによる臼歯部の診 察が可能か否かによって,異常絞!反射の grade は大別され,診察が不可能な患者の多くは,麻酔薬剤の使 用が必要であり,脱感作も困難であることが判明した。 概要の説明後,本論文に対する質疑応答および口頭試問が行われた。本審査委員会では,1)異常絞!反射 の発現には自律神経活動が関与していると思われるが,実際にはどのような変化が起こっていると考えるか, 2)リラクゼーションとディストラクションとの違いは何か,3)異常絞!反射の発現は高齢者では減少する と考えるが,grade 間での年齢に差は認められなかったのか,などの項目について質問があった。これらの質 問に対する回答として,1)異常絞!反射の発現時には,交感神経の緊張が心拍変動解析により観察されてい るが,その関与を明確にすることは,今後の研究課題である。2)リラクゼーションは,緊張を緩和すること (深呼吸や音楽を聞くなど) であり,ディストラクションとは,気を紛らわすこと(片足を挙げた状態を維持す るなど) を意味する。3)本研究においては,grade 間における年齢に有意差は認められなかったが,今後 n 数を増やしての調査が必要である。以上,おおむね妥当な解答が得られた。さらに,論文の記述,図表の訂正 などについてご指摘頂き,修正した。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判 定した。 ―121―