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2012-23-4

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2012-23-4
2012−23−4
馬の側脳室腫瘤
安全性病理 亀位徹
提出機関:ニューメキシコ農務部
獣医療診断サービス
[NMDA veterinary diagnostic services]
患畜:10歳,せん馬,ベルジャン,
馬(Equus caballus)
病歴:安楽殺。
・重度の運動失調,歩行異常,突
然バランスを崩して倒れ込むといっ
た神経症状が次第に悪化。
・8か月前に馬原虫性脊髄脳炎と
診断されて,適当な治療をしたにも
かかわらず,臨床症状が悪化した。
・当馬は被保険馬で保険会社の依
頼で剖検した。
ベルジャン
(写真の馬は本症例とは無関係)
肉眼所見(剖検時の写真なし)
・外見上正常,体重は推定2,500∼2,700ポンド(約1,100∼1,200kg)
・解剖時,環椎後頭関節で脳脊髄液が予期せぬ流出。
・大脳半球を切開したとき側脳室から大量の脳脊髄液が流出。
・脳脊髄液は黄色から淡黄褐色で,濁っているかわずかに不透明。
・卵形の塊が正中線をまたがって左右側脳室に広がり,左側脳室
の底にゆるく付着。塊の大きさは9.5×5.0×2.75cm,色は黄/象牙
色から灰色/黄褐色,左側脳室の底にゆるく付着している部分の荒
い表面を除いては,滑らかで艶やかな表面であった。割面は堅く,
色は表面と同じだった。
・両側脳室は中等度に拡張し,中等度の内水頭症になっていた。
提出者の診断
脳腫瘤:コレステリン肉芽腫,左右側脳室,大脳,ベルジャン,馬。
Brain mass: Cholesterol granuloma, right and left lateral ventricles,
cerebrum, Belgian, equine.
JPCの診断
脳室(左側脳室,提出者によれば):コレステリン肉芽腫(コレステ
リン腫)
Ventricle (left lateral, per contributor): Cholesterol granuloma
(cholesteatoma).
提出者のコメント
・馬の神経症状を示す症例は間違いやすいから注意しよう。
特に経過の長いものに注意。既に診断されていても,病理担
当としてその馬の臨床症状の変化や治療経過,安楽死に至っ
た状況をよく知るべき。
・馬で中枢神経系の症状を示す場合の剖検では,鑑別診断を
可能な限り行う。多くの場合症状が重なっている。信頼性の高
い臨床検査結果があったとしても安楽死に至った原因ではな
いかもしれない。
・除外診断をすべき場合もある。例えばボツリヌス中毒は,検
出できないような少ない量で馬が死ぬので,飼い主や臨床獣
医師からその馬の飼育状況についてよく話をきかないといけ
ない。
提出者のコメント
・コレステリン肉芽腫は高齢馬で中枢神経系の症状がある場合,類症鑑別と
して考慮すべきである。高齢馬の15∼20%がコレステリン肉芽腫というデータ
がある,ただし多くは無症状。
・高齢馬から見つかるコレステリン肉芽腫の大部分は第四脳室に発生,臨床
症状が見られるときは側脳室に見つかり,室間孔をふさぎ内水頭症になる。
・小さいコレステリン肉芽腫は無症状で偶然に見つかる。大きいコレステリン
肉芽腫は室間孔をふさいで,内水頭症や,大脳半球の進行性変性や圧迫性
萎縮をおこして,中枢神経系の症状を示す。
・コレステリン肉芽腫はコレステリン腫という呼び名もあるが区別した方がい
い。コレステリン腫は中耳の結節性の病変にも使われる用語。コレステリン肉
芽腫は高齢馬の病変。
・コレステリン肉芽腫は高齢馬で脈絡叢の繰り返しの出血や,慢性的で間欠
的な鬱血ならびに水腫に関連して起こる。赤血球がコレステリンの供給源で
あろう。細胞外やマクロファージ内に蓄積したコレステリンに対して,異物反応
や巨細胞反応がおこり,進行性の肉芽腫性炎や線維血管性の器質化となる。
大きなコレステリン肉芽腫ができるのは繰り返し起きた時だ。
会議のコメント
・脳室系の解剖学の再確認。
・髄液の流れ。
髄液は脈絡叢で生産。脈絡叢は側脳室や第3脳室,第4脳室にある。
側脳室→室間孔→第3脳室→中脳水道→第4脳室→第4脳室外側口→クモ膜下腔
終脳中隔
第3脳室
クモ膜下腔
側脳室
中脳水道
第4脳室
側脳室脈絡叢
第3脳室
中脳水道
室間孔
第3脳室
『新編家畜比較解剖図説下巻』より
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