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CDM・JIの運用に係る国際的枠組に関する調査 報 告 書

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CDM・JIの運用に係る国際的枠組に関する調査 報 告 書
平成 26 年度二国間クレジット取得等インフラ整備調査事業
CDM・JIの運用に係る国際的枠組に関する調査
報
告
書
平成27年3月
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
はじめに
2012 年に京都議定書第 1 約束期間は終了したが、我が国は引き続きカンクン合意に基づ
き温暖化対策に取組むことが求められている。途上国における温暖化対策の取組みを支援
する上で、京都メカニズムは、今後も重要な位置を占めるとともに、我が国の優れた技術
の国際的な普及の観点においても、CDM(クリーン開発メカニズム)及び JI(共同実施)
を積極的に推進することは極めて重要な政策的課題である。
一方で、我が国は、世界に誇る低炭素技術や製品の普及等を積極的に推進し、世界規模
での地球温暖化対策を進めていくため、CDM を補完し低炭素技術(省エネ技術、新エネ技
術、石炭火力等)の普及等による温室効果ガスの排出削減を適切に評価する新たな仕組み
である「二国間オフセット・クレジット制度(以下、JCM)」の推進のため、積極的な取り
組みを実施している。
国際的なクレジット制度として、先行して設けられた CDM においては、様々な国際ルー
ル・手続きが策定されており、運営の実績も重ねられてきている。その一方で、現行の審
議プロセスの透明性、策定されたルールや手続きの実用性などの面での課題も数多く指摘
されている。また、JI についても、CDM 理事会と同様の機能・役割を担う JI 監督委員会
において、独立機関の認定、PDD に関する決定等が進められているが、実質的に CDM と
同一のルールである独自性や柔軟性に欠けるといった指摘も多くなされている。こうした
状況から、我が国としては、CDM/JI に関する経験を踏まえて、今後の JCM の制度運営の
透明性を確保し、より効率的なものとする必要がある。同時に、国内の事業者が、CDM/JI
を、より容易に利用することができるように CDM/JI の制度の改善を図ることも求められ
ている。
そこで本調査では、CDM 理事会及び JI 監督委員会における実際の議論内容に関してレ
ビューを行いつつ、CDM 理事会及び JI 監督委員会で行われている議論の内容、そして議
論の進め方の在り方について、現状の課題を抽出しつつ、分析・評価を行うとともに、国
内事業者が CDM/JI 事業を実施する際に有益となるような情報の整理・分析と、その情報
伝達体制の構築・運用を行った。
本報告が、CDM・JI の運用に係る国際的枠組の検討と、これらメカニズムの有効活用に
向け貢献するとともに、JCM における制度運用の参考となれば幸甚である。
2015年3月
(一財)日本エネルギー経済研究所
目次
第 1 章 CDM 事業審議に関する調査・分析、課題の抽出、今後の在り方についての検討 .......... 1
1.2014 年度の CDM 運営動向の概観 ................................................................................ 3
2.プロジェクト .................................................................................................................. 5
3.プログラム CDM ............................................................................................................ 9
4.方法論 .......................................................................................................................... 10
5.2014 年の京都クレジット市場動向 .............................................................................. 16
6.CDM 理事会の審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性 .................... 19
7. 第 10 回締約国会合(CMP10)における京メカに関連する論点をめぐる議論 .......... 21
付録:2014 年度の CDM 理事会報告.............................................................................. 24
第 78 回 CDM 理事会報告 ............................................................................................ 24
第 79 回 CDM 理事会報告 ............................................................................................ 30
第 80 回 CDM 理事会報告 ............................................................................................ 38
第 81 回 CDM 理事会報告 ............................................................................................ 43
第 82 回 CDM 理事会報告 ............................................................................................ 54
COP20/CMP10 CDMEB
Q&A セッション .............................................................. 60
第 2 章 JI 事業審議に関する調査・分析、課題の抽出、今後の在り方についての検討 ............ 63
1.
2014 年度の JI 関連の状況分析と JI 監督委員会の検討動向 ................................... 65
2. 各 JI 監督委員会での主なポイント .......................................................................... 69
付録:2013 年度の JI 監督委員会報告 ............................................................................ 71
第 34 回 JI(共同実施)監督委員会
報告 ..................................................................... 71
第 35 回 JI(共同実施)監督委員会 報告 ..................................................................... 76
COP20/CMP10 JISC
Q&A セッション ....................................................................... 80
第 3 章 CDM/JI に関する各国の動向の調査・分析................................................................ 83
はじめに .......................................................................................................................... 85
1.
中国 .......................................................................................................................... 86
2.
インド ...................................................................................................................... 96
3.
タイ ........................................................................................................................ 109
4.
チリ ........................................................................................................................ 116
5.
サウジアラビア ...................................................................................................... 124
第 4 章 CDM/JI 事業実施者に向けた情報提供体制の構築および運営 ............................... 131
1.
DOE の現状・専門性 ............................................................................................. 133
2.
AIE の現状・専門性 .............................................................................................. 140
3.
CDM プロジェクト集計 ........................................................................................ 144
4.
JI プロジェクト集計 .............................................................................................. 167
5.
方法論リスト ......................................................................................................... 175
6.
横断的課題、重要方法論の論点・経緯................................................................... 176
7.
CDM レファレンスルール...................................................................................... 198
8.
JI レファレンス・ルール ....................................................................................... 206
9.
関連リンク ............................................................................................................. 210
用語集 ........................................................................................................................... 212
補足資料 ........................................................................................................................... 215
調査制度:カリフォルニア州キャップアンドトレード ................................................ 217
調査制度:ケベック州
キャップアンドトレード ....................................................... 226
調査制度:中国試行排出量取引制度 ............................................................................. 229
調査制度:韓国
キャップアンドトレード .................................................................. 237
調査制度:Regional Greenhouse Gas Initiative ......................................................... 242
調査制度:ニュージーランド ....................................................................................... 250
調査制度:Emission Reduction Fund の動向 .............................................................. 257
調査制度:ノルウェー
国内 ETS と EU・ETS との連携 .......................................... 261
調査制度:カザフスタン排出量取引制度...................................................................... 265
調査制度:ボランタリーマーケット ............................................................................. 269
第 1 章 CDM 事業審議に関する調査・分析、課題の抽出、
今後の在り方についての検討
- 1 -
- 2 -
1.2014 年度の CDM 運営動向の概観
京都議定書のもとに設けられた京都メカニズムの一つ、クリーン開発メカニズム(CDM)
は、京都議定書締約国会合(CMP)において、その運営方針は決定されるが、実際の運営
は CDM 理事会によってなされている。CDM 理事会では CDM プロジェクトサイクル全般
の規則を決定するとともに、CDM プロジェクトの登録、認証排出削減量(CER)の発行など
を行い、京都議定書のもとで CDM を実施する中心的な役割を担っている。CDM 理事会は、
毎年、複数回の会合が開催されるが、2014 年度においては第 78 回(2014 年 4 月)から第
82 回(2015 年 2 月)まで計 5 回開催された。はじめに CDM 理事会における 2014 年度の
CDM 運営動向を概観する。
2013 年 12 月の第 9 回京都議定書締約国会合(CMP9)では、小規模プロジェクト及び
マイクロスケールプロジェクトのモニタリング方法論の有効化審査を第 1 回目のモニタリ
ング実施までに行うことを認めること、PoA を構成するプロジェクト活動の中でマイクロ
スケールプロジェクトと見做されるプロジェクトの閾値について検討すること、複数の国
で実施される PoA についての手続きの簡素化、開発が進んでいない国における取引費用の
軽減のための手続きの迅速化及び簡素化、自動的に追加性が認められるプロジェクトに関
する有効化審査手続きの簡素化など、CDM 理事会に対して、2014 年以降に取組むべき幾
つかの検討課題が示された。また、前年(2013 年)から引き続き検討課題となっている論
点についても検討作業が行われ、2014 年において検討作業の対象となった主要な論点は以
下のようになっている。
① 小規模プロジェクト及びマイクロスケールプロジェクトのモニタリング方法論の有効
化審査の実施時期の柔軟性についての検討
② PoA を構成するプロジェクトにおいてマイクロスケールプロジェクトとして認められ
るプロジェクトの閾値の検討
③ 複数の国にまたがる PoA に関する手続きの簡素化の検討
④ 自動的に追加性が認められるプロジェクトに関する有効化審査手続きの簡素化につい
ての検討
⑤ E+/E-政策と追加性の関係についての再検討を継続して実施1。
1 E+/E-政策とは、
GHG 排出量に影響を与えるホスト国の環境、エネルギー政策のこと。E+(emission plus)
政策とは GHG 排出量が増加するような化石燃料への補助金などの政策であるのに対して、E-(emission
minus)政策は GHG 排出量が削減されるような低炭素技術の支援策(例えば再エネ導入のための補助金)
のことである。CDM プロジェクトのベースライン排出量に影響を及ぼすことから、ベースライン排出量に
あたって、どのように考慮するかが大きな問題となった。CDM 理事会における検討の結果、第 22 回理事
会において、E+政策については、
京都議定書採択(1997 年 12 月 11 日)、E-政策については、CDM Modality
& Procedure (CDM M&P) 採択(2001 年 11 月 11 日)以降に導入された政策については考慮しないこと
とされた。2013 年から再検討作業が開始されたが協議は難航し、2014 年も引き続き、再検討作業が実施
されている。
- 3 -
以下、プロジェクト、プログラム CDM、方法論、認定、クレジット市場分析の順に CDM
理事会における議論の要点についてまとめるとともに、CDM 理事会の審査体制のあり方、
審査手続きの効率化、改善の方向性等について課題を抽出し、考えられる改善の方向性に
ついての検討結果をまとめる。
- 4 -
2.プロジェクト
(1). 集計
(有効化審査)
2014 年に有効化審査のために提出された CDM プロジェクトは 122 件、年予想排出削減
量は 2,233 万 tCO2e となった。件数については 2011 年以降から減少し、年予想排出削減
量については 2012 年以降、減少傾向にある。
国別では、インドのプロジェクトの割合が高く、2014 年末の時点で、提出されたプロジ
ェクト件数のうち 50%を占めている。一方で、予想排出削減量では、ブータンが最も大き
い削減量(540 万トン)となっている。提案されているプロジェクトは、規模も大きく、さ
らにインド国内にも電力を供給する送電網に接続する予定の水力発電プロジェクトとなっ
ており、排出削減量の算定にあたってはインド国内の削減量も含まれていることなども影
響しているものと考えられる。
表 1:有効化審査のためのパブリックコメントが行われたプロジェクト
プロジェクト数 (件)
予想排出削減量 (万 CO2 換算トン)
2003
4
214
2004
59
516
2005
506
10,646
2006
959
18,011
2007
1,671
21,524
2008
1,884
20,173
2009
1,331
16,162
2010
1,432
18,181
2011
2,149
28,095
2012
1,946
32,260
2013
212
3,528
2014
122
2,233
累計
12,275
171,543
(登録)
2014 年に登録された CDM プロジェクトは 134 件、年予想排出削減量は 769 万 tCO2e
となった。これらは、2013 年と比較すると有効化審査と同様に、大きく下回る件数、削減
量である。国別では、2014 年末の時点で 60 件のプロジェクトが登録されたインドが、プ
ロジェクト件数全体の 44%が占め、昨年まで首位の座を独占してきた中国はインドに次い
で 14%となっている。一方、年予想削減量で見ると、昨年までと同様に中国が最も多い予
- 5 -
想排出削減量となっているものの、全体に占める割合は昨年の 61%から大きく下がり、23%
とないる。インドは中国に次いで 16%を占め、この二カ国を合わせて全体の約 40%を占め
ることになる。また、登録済みプロジェクトにおける中国の占める割合が件数、予想排出
削減量ともに小さくなってきている。2014 年には、ブルンジ、マラウィ、アンゴラ、ベリ
ーズの CDM プロジェクトが初めて登録された。
表 2:登録プロジェクト
プロジェクト数 (件)
登録排出削減量 (万 CO2 換算トン)
2003
0
0
2004
1
67
2005
62
2,786
2006
409
7,931
2007
426
8,162
2008
431
5,726
2009
684
9,308
2010
812
10,158
2011
1,107
13,310
2012
3,230
36,291
2013
272
3,147
2014
134
769
累計
7,568
97,655
(CER 発行)
2013 年に CER の発行を受けた件数は 577 件、発行量は 10,159 万 tCO2e となり、発行
件数、発行量は 2013 年から大きく減少した。累計では、8,167 件、15 億 2,197 万 tCO2e
と発行件数が 8,000 件の大台を超えたが、発行量については増加の伸び率が次第に小さく
なってきていることが分かる。国別では、2013 年末の時点で中国が発行件数の 173 件で全
体の 31%を占め最も多く、次いでインドの 133 件(全体の 23%)となっており、この二カ
国で全ての CER 発行件数の半分を占めている。
発行量で見ても、中国の 4,135 万 tCO2e(全体の 41%)、インドが 1,126 万 tCO2e(全
体の 11%)となっており、中国における発行量が突出して多いが、この二カ国で全体の半
分を占めている。
- 6 -
表 3:CER が発行された件数
プロジェクト数 (件)
CER 発行量 (万 CO2 換算トン)
2003
0
0
2004
0
0
2005
4
10
2006
126
2,569
2007
314
7,669
2008
472
13,787
2009
522
12,343
2010
618
13,240
2011
1,534
31,952
2012
1,976
33,937
2013
2,024
26,531
2014
577
10,159
累計
8,167
152,197
(2). 主なプロジェクトの動向
(大規模プロジェクトの登録)
2013 年は、年予想排出削減量が 100 万 tCO2e/年を越えるプロジェクトがある程度は見
られたが、2014 年 1 月から 2014 年 12 月までに登録されたプロジェクトにおいて削減量
100 万 tCO2e/年以上のプロジェクトはなかった。2014 年に登録されたプロジェクトの中で、
年間の予想排出削減量の大きいもの上位 5 つのプロジェクトをまとめた。
表 4:主要な登録されたプロジェクト(2014 年 1 月から 2014 年 12 月)
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
- 7 -
この表から分かるように、登録件数が減少しているだけではなく、登録されるプロジェ
クトの規模も小規模なものへと変わってきていることが分かる。また、この表のように、
これまでは上位に位置していた中国、インドではなく、イラン、チリ、ベトナム、シンガ
ポールなどの国で実施されるプロジェクトが上位に位置している。年予想排出削減量で見
ても、上記のように、これらのプロジェクトの規模は、予想排出削減量 100 万 tCO2e/年を
下回り、最大でも 70 万 tCO2e/年となっている。
(プロジェクト登録と CER 発行の棄却)
その一方で、2014 年には 4 件のプロジェクト登録申請が CDM 理事会により却下された
(2013 年は 39 件)。その概要は次のとおりである。
ホスト国:ブラジル 2 件、グルジア 1 件、エチオピア 1 件など
投資国:全てユニラテラルプロジェクト(投資国なし)のプロジェクトであった
方法論:AM0104、ACM0002、ACM0005、ACM-I.D 各 1 件
なお、CER 発行については、2014 年には 2 件が棄却された。
(今後のプロジェクトの動向)
今後のプロジェクトの動向をみるために、2014 年 1 月から 2014 年 12 月までに有効化審
査のためパブリックコメントに付された主なプロジェクトを一覧にしたのが表 5 である。
表 5:有効化審査のためパブリックコメントに付された主要なプロジェクト
(2014 年 1 月から 2014 年 12 月)
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
*削減量 100 万 tCO2e/年以上
- 8 -
3.プログラム CDM
プログラム CDM(programme of activities:PoA)とは、企業又は公的主体が自主的か
つ調整して実施する政策・措置又は目標設定による活動である 2 。PoA は CPA(CDM
programme activity)と呼ばれる個別に実施される活動の集合体によって構成される。各
PoA において CPA の個数には制限がない。
2014 年 12 月までの PoA の登録状況は 278 件である。2009 年 7 月に 1 件目の登録が成
されて以降、2012 年まで毎年件数が増加した(2009 年に 2 件、2010 年に 3 件、2011 年に
12 件であった登録件数が、2012 年に 195 件に急増)。しかし、2013 年には 34 件と激減し、
2014 年も 2013 年を下回る 29 件の登録となった。登録内容を概観してみると以下のように
なっている。
ホスト国:
中国 43 件、南アフリカ 31 件、インド 28 件など
投資国
:
イギリス 36 件、オランダ 28 件、スイス 21 件など
方法論
:
ACM0002. 44 件 AMS-II .G. 42 件 AMS-I.D 38 件
具体的には、一般家庭における電球を LED 電球に交換プログラムを実施するようなプロジェクトなどが
あげられる。
2
- 9 -
4.方法論
(1). 個別方法論の状況
(新規方法論)
第 78 回CDM理事会から第 82 回CDM理事会に承認された方法論は以下の方法論である。
表 6:EB78 から EB82 までに承認された新規方法論
承認
方法論番号
EB79
AM0114
EB81
AM0115
方法論名
イソシアネート工場での電解質から触媒へのシフトによる塩化水素ガス
から塩素回収処理
コークス炉起源の LNG 製造に係るコークス炉ガス回収および利用
(出典)各種資料より日本エネルギー経済研究所作成
表 7:EB78 から EB82 までに承認された新規小規模方法論
承認
方法論番号
EB79
AMS-Ⅲ.BK
EB81
AMS-II.S
方法論名
小規模酪農家における戦略的な飼料供給による牛乳生産の増加
電動モーターシステムにおけるエネルギー効率化
(出典)各種資料より日本エネルギー経済研究所作成
2014 年度中(2014 年 4 月~2015 年 3 月末)に開催された CDM 理事会において承認され
た方法論は、合計で 4 件となっており、そのうち大規模方法論(large scale)が 2 件、小
規模方法論(small scale)が 2 件となっている。その他、2 件の新方法論が、既存の方法
論に統合する形で承認されている。
このように 2014 年度においても、僅かではあるが、新規方法論が承認されたが、昨年の
新規承認方法論9件に比較すると減少している。さらに、それ以前と比較しても大きく減
少している(2012 年は 19 件、2011 年は 25 件、2010 年は 20 件)。
これは、後述するような市場の低迷と縮小を受けて、新規プロジェクトの開発が停滞し
ていることを示しているとも考えられるが、これまでの承認方法論によって現時点で実施
されうる大半の排出削減技術が対象とされ新しい排出削減技術を見つけることが困難にな
ってきていることを示しているのかも知れない。
(改訂方法論)
第 78 回理事会から第 82 理事会の間で幾つかの方法論が改訂されたが、改訂された方法
論には、再生可能エネルギーの利用に関する方法論 ACM0002 も含まれている(現在、登録
されているプロジェクトの中で、最も多く利用されている方法論)。第 81 回理事会におい
- 10 -
て改訂された ACM0002 においては以下のような修正がなされた。
追加性の要件を修正し以下の技術的なポジティブリストを含めることを承認3。
①簡素化された追加性証明ツールの利用が認められる技術のポジティブリスト:
-太陽光
-太陽熱発電
-洋上風力
-波力発電
-潮力発電
②自動的に追加性が証明される技術のポジティブリスト:
-ホスト国の総グリッド電源の2%以下の技術
-ホスト国で導入された供給能力が50MW以下の再生可能エネルギー技術
①に挙げられた技術を利用するプロジェクトについては、小規模プロジェクトに適用さ
れる簡素化された追加性証明ツールの利用が認められる。これにより、通常の大規模方法
論を適用する場合に比較すると追加性の証明に関する負担が軽減されることになるととも
に、②に分類される技術については、自動的に追加性が証明されることになる。
①に分類される技術は、現時点では小規模方法論での開発が多いもの(太陽光、太陽熱
発電)や、開発が進んでいないもの(洋上風力、波力発電、潮力発電)が多いが、この改
訂により追加性の証明の負担が軽減されことで、これらの技術を利用するプロジェクト開
発を促進することを狙ったものであると考えられる。一方で、②に分類される技術につい
ては国によって異なるものの、この基準を満たす技術については、自動的に追加性が認め
られることから、プロジェクト登録の際の負担は大きく軽減されるものと考えられる。
(方法論のプロジェクトへの適用状況)
登録済みプロジェクトにおける方法論の適用状況をまとめたグラフは以下のとおりであ
る。全体としては、ACM0002 の再生可能エネルギーを導入する方法論が最も多く使われてお
り、3218 件となっている。次いで登録件数の多い、AMS-Ⅰ.D(2,105 件)は小規模方法論
における再生可能エネルギーの導入を図る方法論である。この二つの方法論を合わせると、
合計で 5,323 件のプロジェクトに適用され、全体の約 65%を占める。この傾向は 2013 年と
同様で大きな変動は見られない。
2014 年のみで見た場合でも、同様に再生可能エネルギーが登録プロジェクトの太宗を占め
ている状況に大きな変化は見られない。2014 年も 2013 年と同様に、小規模方法論の再生可
能エネルギーの導入を図る AMS-Ⅰ.D が最も適用されている方法論となっている。
3
今回、改正されたポジティブリストは 3 年間有効。3 年後に理事会が改めて見直しを行うこととされて
いる。ACM0002(ver16.0) para 32 参照。
- 11 -
図 1:登録済みプロジェクトで適用されている方法論(件数)
(出典)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
図 2:2014 年に登録されたプロジェクトの方法論
(出典)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
- 12 -
(2). CDM 方法論の横断的課題及び進展
(E-政策に関する動向)
①背景
2013 年に開催された第 73 回 CDM 理事会において、追加性の証明の観点から E-ガイド
ライン(ホスト国に関する環境政策の影響を追加性の証明の際に判断するためのガイドラ
イン)の適用について、改めて議論することが合意された4。しかし、再び検討されること
になったものの、E-政策をどのように評価するのか難しい部分が多く残っており、また、
環境十全性を重視し、E-政策による影響を厳密に考慮しようとする欧州と、プロジェクト
開発への影響を最小限にしようとする途上国の間の対立もあり、検討作業は難航している。
第 73 回理事会における議論では E-政策が効力を発揮した日から 7 年間は、プロジェク
ト参加者による投資分析を通じた追加性の証明の際に、E-政策からの補填部分を検討しな
いアプローチをとることで同意し、第 77 回理事会まで断続的に検討作業が行われていた。
②議論の進捗状況
第78回理事会において、それまでの検討成果を踏まえて作成された「追加性の立証およびベースラ
インシナリオの選択に係る投資分析におけるE‐政策の適用ガイドライン」草案、「追加性の立証および
証明ツール」改訂、「ベースラインシナリオおよび追加性の評価認定に係る複合ツール」改訂に係る議
論を行った。その結果、提案されていた「E‐政策の便益が受けられる期間」についてさらに絞り込むこと
で合意した。その上で事務局に対して、上記ガイドライン草案ならびにツールについて、以下の論点を
踏まえて、第79回理事会において検討するために修正を加えるよう要請した。
a)第75回理事会に提案された「E‐政策の便益が受けられる期間」の縮小パターンの選択肢につい
て、さらに分析すること
b) E‐政策の実施日の定義について改めて検討すること
第79回理事会においては、追加性の立証およびベースラインシナリオの選択に係る投資分析におけ
るE‐政策効果に関して検討を行った。その結果、理事会は事務局に対して、更に多くの具体例に基づ
いたオプション2Aと4Bの分析を実施するよう要請した。
4第
22 回 CDM 理事会において、ホスト国における環境政策、特に GHG 排出量の削減に貢献する政策に
ついて、CDM の Modality & Procedures(M&P)が COP で採択された 2001 年以降に導入された政策につ
いては考慮しないこと(ベースラインの検討の際には、それらの政策はないものと見なして検討がすすめ
られること)が決められた。CDM の M&P では、CDM プロジェクトの有効化審査手続き、登録手続き、
発行手続きなど、CDM を実施するために必要な規則が定められている。2001 年のマラケシュで開催され
た国連気候変動枠組み条約第 7 回締約国会議において、マラケシュ合意の一部として策定された(2005 年
に京都議定書第 1 回締約国会合決議 3/CMP.1 annex として第 1 回締約国会合において正式に採択)
。
- 13 -
Option 2A: ホスト国においてE-政策の効力が発生して以降あるいは2014年1月1日以降のうちいず
れか遅い日を起点として、7年間は、E-政策によってプロジェクトが享受する利益を考慮
しない。
Option4B:
ホスト国においてE-政策が実施されてから、あるいは2014年1月1日以降のうちいずれ
か遅い日を起点として、7年間に登録申請されたプロジェクトについて、投資分析の対象
となる全プロジェクト期間(最大21年)、E-政策によってプロジェクトが享受する利益を考
慮しない。
第 80 回理事会以降も、E-政策について検討作業は継続されているが、上記のように欧
州出身の理事と途上国出身の理事に間での対立は解消せず、合意には至っていない。
(標準化ベースライン設定における CDM プロジェクトの考慮方法)
第 79 回理事会においては、第 75 回理事会(2013 年 9 月 28 日から 10 月 4 日に開催)に
おける合意を踏まえて検討作業を続けてきた標準化ベースライン設定における CDM プロ
ジェクトの考慮方法について検討した。
第 75 回理事会では、2011 年に策定された標準化ベースライン開発ガイドラインについて、
それまでのガイドラインの実施経験を踏まえて検討した。その結果、「すでに CDM プロジ
ェクト登録されている施設のデータを、特定の分野の標準化方法論の開発の際に含めるか
否か」について「更なる分析が必要である点で合意」した。この合意で必要とされるのは
「特定の分野における標準化ベースラインの開発時」において、「登録 CDM プロジェクト
の施設による産出物が、どの程度の割合(閾値)に達すれば、それらの登録 CDM プロジェ
クトを標準化ベースラインの算定時を含めるか」についての分析である。この合意を踏ま
えて事務局に対して、今後の理事会における検討のために分析を行い、コンセプトノート
を作成するよう求めた。
第 79 回理事会においては、この第 75 回理事会における合意を踏まえて事務局が準備した
コンセプトノートを踏まえて検討が行われた。このコンセプトノートでは、既存の承認済
み方法論における登録済み CDM プロジェクトの考慮方法を分析した上で、標準化ベースラ
インの策定において登録済み CDM プロジェクトを考慮する方法として 6 つのオプション
を示していた。
理事会では、検討の結果、コンセプトノートに記載されたオプション 5 の考慮方法を採用
することを合意した。これは、コンセプトノートの中に示された六つのオプションのうち、
環境十全性を担保しつつ、手続きを簡素化できる対応策であるとして事務局が採用を勧告
していたものである。

標準化ベースラインの設定に当っては、登録済み CDM プロジェクトを全て含めて考
慮しなければならない。もし国家指定機関(DNA)が登録済み CDM プロジェクトに
- 14 -
おいて利用されている燃料・原料・技術の費用がその産業分野の生産量の 3 割を占め
るものよりも高いことを証明した場合は、除外することが認められる。
このガイドラインはあくまで標準化ベースライン方法論における既存の CDM プロジェ
クトの考慮方法であり、既に承認されている方法論を利用する際には、このガイドライン
は適用されない。また、事務局が準備したコンセプトノートの中で示されているように、
現状の承認済み方法論においては、登録済み CDM プロジェクトの考慮方法は多様なものと
なっている。
- 15 -
5.2014 年の京都クレジット市場動向
(1). CER 取引と EUETS 取引動向
CER の取引は、計画段階(PDD 作成段階)に途上国の事業者と直接、交渉して将来、
発行が予想される CER の取引を行う先渡し取引(1 次 CER)と、先進国の CDM 開発業者が、
EUETS 規制対象企業に転売する取引(2 次 CER)の大きく二つに分けられる。1 次 CER
の価格については、契約の当事者となっている事業者以外には公開されないが、2 次 CER
については欧州や米国においてエネルギー関連の商品取引が行われている取引所
Intercontinental Exchange(ICE)においても取引され、この取引所から公表されるデー
タによって価格動向を知ることができる。ここでは、公開されている 2 次 CER 取引価格を
踏まえて京都クレジット市場の動向を分析する。
(2). ゼロに限りなく近づいた 2 次 CER 取引価格
2014 年、2 次 CER の取引価格には大きな値動きは見られなかった。2012 年末に€1を
下回る価格になってから、€1 を下回ったままであり、大きな値動きは見られない。EUETS
において膨大な余剰 EUA を抱えたまま第 3 フェーズが開始されるとともに、第 3 フェーズ
においては、第 2 フェーズ以上に厳しい CER の利用規制が設けられていることや、EUETS
以外の需要、日本の企業などが CER の購入を取りやめたことなどを受けて、需要が大きく
減少したことによる。
このような価格低迷の状況については、2013 年とほぼ変わらない状況となっており、今
後も、この状況が続くものと予想されている。このような市場価格の低迷は、民間企業の
動向に影響を与え、CDM 事業から撤退する企業も現れている。CDM プロジェクトを実際
に開発し、実施する主体は民間企業であるため、このような民間企業の CDM 事業からの撤
退は、CDM プロジェクトの開発が停滞する要因となり、今後の CDM の制度としての存続
にも大きな影響を及ぼす可能性もある。
そのため、CDM 理事会においても、市場価格の低迷に対応するために様々な取組みが
検討されるようになってきているが、それらの取組みは市場の回復につながっていないの
が現状である。
(3). CDM 理事会のもとでの CDM 開発を促進するための取組み
CDM 理事会の中では、需要喚起策として大きく二つの方策が検討されている。自主的取
消しの促進と、成果主義型資金拠出(RBF, Result Based Financing)の二つである。
自主的取消しは、例えば企業が政府の規制とは別途、自社で発生する CO2 排出量を相殺
(オフセット)するために、CER などのクレジットを取消すものである。これ以外にも、
CDM 理事会の議論では、注目度の高いイベントでの CER によるオフセットを推奨するた
めにキャンペーンを行うことが合意されており、実際に 2014 年にブラジルで開催されたワ
- 16 -
ールドカップでは、大会の開催・運営に伴って発生する CO2 排出量を相殺するために CER
が活用されている。ただ、このような企業や団体などによる自主的なオフセットについて
は、数量が限定的なものに留まり、市場に活性化につながるかは疑問が残る。
もう一つは、国際金融機関などが実施する RBF の対象とすることである。2010 年のカ
ンクンにおいて設立が正式に決定された Green Climate Fund(GCF)においては、様々な
方法での資金提供が議論されていた。議論されていた手法には、RBF が含まれており、こ
の RBF のもとでは、一定の成果(排出削減量など)が確認された後に資金が提供されるた
め、排出削減量の計測、検証方法が重要な位置を占める。2013 年にワルシャワで開催され
た COP19 において、GCF で RBF を踏まえた資金提供を行うことが決定されており、RBF
のもとでの具体的な資金提供の実施方法が今後の課題となっている。
CDM 理事会は、このような状況を踏まえて GCF と協力関係を構築するために、協議す
る機会を持とうとしているが、GCF との協議は実現していない。そのため、今後、GCF の
もとで CDM プロジェクトが、どのような位置づけとなるのかは現時点では不明であるもの
の、CDM 理事会においては、国際金融機関を登録済み CDM プロジェクトの活性化のため
に活用する方法が検討されている。
第 82 回理事会においては、登録済み CDM プロジェクトの中で、CER 発行申請などがな
されていない“休眠状態”のプロジェクトへの対策として、国際金融機関からの融資など
を活用することが検討されている。まだ、どのように活用するのか、理事会の中でも合意
がなされていないものの、“休眠状態”の登録済み CDM プロジェクトの活性化に国際金融
機関の資金が活用される先例が出来れば、新規の CDM プロジェクト開発にも国際金融機関
が活用される道を開くことになるかもしれない。
(4). 世界銀行における取組み
世界銀行が 2015 年 9 月 15 日に設立を発表した Pilot Auction Facility(PAF)は、GHG 削
減プロジェクトへの投資インセンティブが失われている状況を新たな手法によって打開す
るために設けられたが、ここで導入されている手法は、CER 取引価格の下支えするための
手法として、今後、活用されていく可能性もある。また、この取組みは、同時に、新規の
CDM プロジェクト開発への国際金融機関の新たな関わり方の先例となるかも知れない。
世銀が PAF のもとで導入する新たな手法とは、CDM プロジェクトなどの GHG 排出削
減プロジェクトを開発する事業者に対して、PAF が一定の金額でクレジットを買取ること
を約束するプットオプション(売り付け選択権)を入札によって売却することである。こ
れにより、CDM プロジェクトを開発する事業者は、将来、取得が見込まれる CER に対し
て最低限の利益を確保することができる。PAF のプットオプションを取得した事業者は、
CER の取引価格が上昇した場合は、プットオプションを行使せずに、世銀以外の買手に
CER を売却することも可能である一方で、CER の取引価格が下落しプットオプションの権
利行使価格よりも下回った場合は、プットオプションを行使することで、一定の売却益を
- 17 -
確保することができるためである。このようにプットオプションを世界銀行が売却し、一
定の買取り価格を保証することは、結果として、プットオプションの権利行使価格が CER
取引市場における下限価格を設定することになるかも知れない。
ただし、現状では、PAF は全ての GHG 排出削減事業を対象としておらず、GHG の中で
もメタンの排出を削減する LFG プロジェクトに対象が限定(天然ガスフレアリング、炭鉱
メタンなどは、当初は除外)されるとともに、購入されるクレジットは、CDM に由来する
CER がまず挙げられているが、それ以外にも Verified Carbon Standard(VCS)5, Climate
Action Reserve(CAR) 6などの民間の団体が定める基準や方法論にのっとり、排出削減量の
計測、検証が行われるプロジェクトに由来するクレジットあるいは排出削減量も、資金提
供の対象となる。このように様々な制限が課せられているために、現状では PAF による
CER 取引市場への影響は限定的なものに留まるものと思われる。
PAF における買取り資金の規模は各国からの拠出金、US$1 億とされており、ドイツ、
スウェーデン、スイス、そして米国がこの基金への拠出に関心を示しているとの報道もあ
る。例えばドイツ政府は US$1900 万程度の拠出を検討しているとの報道もあり、世銀の担
当者は目標額の半分までの拠出については目途がついた、とコメントしている。
PAF で実施が予定されている資金提供方法は、RBF の一つとも言える。もし PAF が成
功すれば、今後の GCF などの議論にも影響を及ぼす可能性がある。同時に、PAF における
実績は、今後の国際的な資金援助において CDM の新たな役割を示すものとなるかも知れな
い。
VCS は自主的なオフセットプロジェクトの基準を設け、基準に適合したプロジェクトを登録し、クレジ
ットを発行している団体である。設立にあたっては持続可能な開発のための世界経済人会議(World
Business Council Sustainable Development (WBCSD)、国際排出量取引協会(International Emissions
Trading Association (IETA))などが関わった。基本的には、発行されるクレジットは、企業が自社で発生
する排出量を自主的にオフセットする際に活用されて来たが、2014 年 8 月から、カリフォルニア州で実施
されている排出量取引制度の規制遵守の活用が認められることになった。
6 CAR はカリフォルニア州における様々な企業や団体の排出量の計測などを行うために設立され、
その後、
独自にオフセットプロジェクトの基準を設け、基準に適合したプロジェクトを登録簿に登録し、クレジッ
トを発行している団体である。CAR に登録されたオフセットプロジェクトはカリフォルニア州で実施され
ている排出量取引制度の規制遵守にも活用できる。
5
- 18 -
6.CDM 理事会の審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性
以下では、CDM プロジェクトの登録および CER クレジット発行申請の提出状況につい
てまとめる。
登録・発行提出件数の推移について、2006 年以降の年間の件数の推移、2014 年の毎月の
推移を下記の図のようにまとめた。この図のように登録件数及び発行件数ともに 2012 年を
ピークとして、下落傾向が続いている。2012 年 12 月に京都議定書第一約束期間が終了し
たため、駆け込みで 2012 年の登録・発行申請が急増したと考えられるが、2013 年は急減
し、2014 年においても登録申請数・発行申請数ともに依然として減少傾向が続いている。
登録申請と発行申請の割合で見ると、2009 年までは登録申請のほうが大きな割合を占め
ていたが、2010 年以降は発行申請数の方が大きな割合を占め、2012 年に一時的に登録申請
数が上回ったものの、それ以外については、発行申請が登録申請を上回る傾向が続いてい
る。新規のプロジェクト開発が停滞している現状を反映したものと言えるだろう。
図 3:CDM 登録・CER 発行申請数の推移
(出所)UNFCCC 発表資料を踏まえてエネ研作成7
UNFCCC 事務局が登録申請から登録決定(あるいは却下)までに要する時間の推移を年
毎にまとめたデータ(2015 年 2 月 28 日発表)によれば、直近の過去 12 カ月に登録(ある
いは却下)されたプロジェクトの登録申請から決定までに要する時間の中央値は 2.8 カ月と
全体の中央値 3.3 カ月より短くなってきている。
ただし、上記のように全体として登録申請数が大きくしている現状を踏まえると、この
ような登録手続きに要する時間の短縮化は、事務局における事務処理能力の改善によるも
のではなく、処理する申請数自体が減少したことが影響しているとも言えるだろう。
7
CDM insights で公表データを踏まえて作成。以下のウェブ参照
https://cdm.unfccc.int/Statistics/Public/CDMinsights/index.html#ptimes
- 19 -
既に、昨年から、登録・発行申請数の減少傾向は見られているが、このような登録申請
数の減少は登録手数料収入の減収につながり CDM 理事会の財源の縮小につながる。このよ
うな財源の縮小は、結果として、担当職員の削減と事務局における事務処理能力の低下に
つながる恐れがある。今後も登録手数料収入の大幅な増加が見込めない中で、どのように
必要な財源を確保し、経験を積んだ職員を維持していくのかが、大きな課題と言えるだろ
う。
- 20 -
7. 第 10 回締約国会合(CMP10)における京メカに関連する論点をめぐる議論
(1). 京都メカニズムに関連する議題
2014 年 12 月にペルーのリマで開催された京都議定書の第 10 回締約国会合(CMP10)に
おいて京都メカニズムに関して、幾つかの論点が議論された。交渉された論点は以下の通
りである。
○CMP における議題
議題 4
:クリーン開発メカニズム(CDM)に関する事項
議題 5
:共同実施(JI)に関する事項
○実施に関する補助機関(SBI)における議題
議題 6(a) :CDM のモダリティと手続きのレビュー
議題 6(b) :JI ガイドラインのレビュー
議題 6(c) :JI 排出削減ユニットの継続的発行,移行,獲得の迅速化のためのモダリティ
議題 6(d) :CDM 理事会の決定に対する上訴のための手続,メカニズム及び組織的事項
○科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)
議題 11(a) :京都議定書第 5,7 及び 8 条関係を含む京都議定書の方法論に関する決定 2
~5/CMP.7 の実施の影響
(2). 交渉の経緯
①CMP における議題
CMP における議題 4、議題 5 については第 1 週後半から協議が開始され、第 2 週前半に
集中的に交渉された。様々な論点で各国の見解が対立し、交渉は難航した。
CDM や JI に関する多岐に亘る論点について議論がなされ、それぞれの論点で各国の見
解が対立したが、特に目立ったのは、環境十全性を重視する立場をとる EU や AOSIS と、
プロジェクトの開発促進や既存の CDM の維持を狙う途上国の間の対立である。
例えば、EU や AOSIS は CDM における環境十全性を担保するために、Net mitigation
や Net atmosphere benefit への取組みの必要性を指摘したが、途上国(中国、ブラジル等)
を中心に日本などの多くの国が、定義が不明であるとして取組む必要性がないと主張して、
EU や AOSIS と対立した。それ以外にも、環境十全性を重視する立場から、スイスからは
特定の技術(再エネ等)を優遇することで石炭火力発電プロジェクトの厳格な審査を行う
ことや、産業系ガス(HFC 等)の CDM プロジェクトからの除外などが提案されたものの、
途上国(中国、ブラジル、エジプト(アフリカグループ)
)が強く反発した。
最終的には、合意に至らなかった部分については全て削除し、合意され部分のみ決議と
して採択されることで各国とも合意し、12 月 11 日の CMP の全体会合において CDM のガ
イダンス、JI のガイダンスとして合意された文書が決議として採択された。
- 21 -
②SBI 及び SBSTA における議題
SBI における議題(議題 6(a)~(d))については会議前半の第 1 週において集中的に
議論された。これらの議題について、12 月 1 日に最初のコンタクトグループが開催された
後、非公式に協議が続けられた。しかし、全ての議題について、CMP では合意がなされず、
2015 年以降も協議が継続されることで合意された。SBSTA における議題についても、第 1
週から第 2 週後半まで断続的に協議が行われたが、合意に達せず、今後も協議が継続され
ることとなった。
このように CMP 以外の議題、SBI や SBSTA のもとで交渉された議題について合意が
得られなかったことについて、一部の国からは不満の声も上がった。特に、CDM モダリテ
ィと手続きのレビューや JI ガイドラインのレビューについては、12 月 5 日に開催された
SBI の全体会合において、小島嶼国連合(AOSIS)を代表してナウルが、交渉に進展が見
られない状況に対して不満の意を表明するとともに、クレディッティング期間の短縮、保
守的なベースラインの設定などで純削減に取組む必要性を指摘した。同様に、JI ガイドラ
インのレビューにおいても、環境十全性について、さらに協議する必要性がナウルからは
指摘された。
また、SBI に関連する議題として、2014 年 6 月にボンで開催された補助機関会合におい
て合意された CDM のもとで有効化審査を行う DOE と、JI のもとで有効化審査を行う AIE
を統一の手続きで認定を行うために CDM 理事会と JISC に検討作業を始めるよう求める決
議については、12 月 11 日の CMP 全体会合において、ブラジルから修正案が提案され、文
言が修正された上で、採択された。
(3). CDM に関する事項及び JI に関する事項の結果
CDM に関して、この CMP において合意された主要な決定事項は以下の事項である。

新規植林/再植林プロジェクトにおける検証手続きの実施時期に柔軟性を認めるこ
と(tCER については第 2 約束期間(8 年間)の何れかに実施することが認められ
る)

モニタリング方法論の承認申請時期に柔軟性を認めること(登録申請時に限定せず、
登録後、最初の CER 発行時までの間のいずれかの時期に承認申請することを認め
る)

複数の国で実施されている PoA の CER 発行申請において、審査請求がなされた場
合、審査されるのは、審査請求がなされた国で実施されている CPA からの CER 発
行申請に限定すること

自主的な登録取消手続きを認めること。
また、その他、CDM 理事会に対して、幾つかの作業の実施が要請されている。具体的
- 22 -
には、登録手続き、検証手続きの簡素化のために、全ての規模のプロジェクトにおいて同
一の DoE が有効化審査、検証手続きを実施することについて検討すること、自動的に追加
性を認めるプロジェクトについて更に手続きを簡素化すること、PoA における重大な欠陥
(significant deficiency)による影響を考慮しながら、環境十全性を踏まえて PoA の開発
促進のために、PoA の規則についての修正を検討することなどである。
- 23 -
付録:2014 年度の CDM 理事会報告
第 78 回 CDM 理事会報告
第 78 回 CDM 理事会(EB78)が 2014 年 3 月 31 日から 4 月 4 日にドイツのボンで開催
され、主に以下の内容が決議された。
1.統治と管理
1.1 戦略的計画と方向性
・
CDMによる純削減ポテンシャル、特にどのように純削減ポテンシャルを分析するのか
選択肢に関して検討し、同時に、さらに純削減ポテンシャルをさらにCDMに組み込む
ことを検討したが、今後も、2015年の事業計画を準備する中で引続き議論を行うこと
とした。
・
CDMの需要と利用の増加に向け最初の議論を行った。具体的には、規制の遵守のため、
あるいは(CSRなどの企業の)自主的な排出削減への取組みへのためCERの引き受け
を促すことであり、事務局に対しては次回、理事会において検討するために、様々な
見解を踏まえて検討された具体的な取組みの提案を報告するように求めた。
1.2 パフォーマンス管理
・
CDM認定基準(バージョン5.1)により、DOEに資格試験制度を行うこととした。
・
段階的な試験実施の可否について、事務局とDOEからなるタスクフォースにて議論し、
信任パネルに報告するよう要請するとともに、信任パネルについては、将来の理事会
において議論するために、この件について報告するよう求めた。
・
「CDM認定基準改訂の実施に向けた移行対策」の改訂を行う。
2.個別案件
2.1 プログラム活動(PoA)
・
2014年4月4日までに250件のPoAが登録(CPAは全1,646件)。
・
2014年4月4日までにPoAに係るCERが140,610トン発行された。
2.2 登録
・
適用可能な規則に従い、理事会は一つの登録申請に対して、事務局とRITの間で異なっ
た結論に至った場合、あるいは事務局とRITは同様の結論に至ったが、理事から異議が
示された場合について検討した。
- 24 -
・
2014年4月4日までに7,476件のCDMプロジェクトが登録された。
2.3 発行
・
2014年4月4日までに14億4,393万2,632トンのCERが発行された。
・
プロジェクト#2667の発行要請を承認。
・
プロジェクト#0363の発行要請再提出を許可。
3.規制事項
3.1 基準/ツール
・
持続可能性に関する自主的な報告ツールの運用が開始を歓迎。理事会は、さらに事務
局がツールの利便性を分析し、理事会がCMP10に提出する報告書に分析結果を含める
ためEB81に報告書を提供することを留意した。
・
セクター別の標準化ベースライン策定における登録済みCDMプロジェクトについての
検討に関するするコンセプトノートについて、理事の受け取った見解と共に、方法論
パネルに対して送付し、将来の理事会において検討するため、セクター別標準化ベー
スライン方法論の改定について検討し、方法論パネルと事務局から勧告することを要
請。
3.2 手順
・
CCSプロジェクトに関して、以下の項目を採択。
a) 「CDMプロジェクト基準(PS)」、「CDM有効化審査と検証に係る基準(VVS)」、
「CDMプロジェクトサイクル手順(PCP)」の改訂
b)CCS事業の承認レターに関するガイドラインの作成
c)DNAによるCCS事業における合意表明の形成
・
PoAあるいはCDMが他の排出削減プログラムに登録される「二重発行問題」について
検討した。理事会は、各国のDNAに、管轄下のPoAとCDMのプロジェクト参加者が他
の排出削減プログラム(国・地方政府のプログラム、民間のプログラム)での発行も
視野に入れている場合には宣言するような取り決めを整備するよう促した。さらに、
この議論を踏まえてCERの取消しも奨励することにも合意した。
・
「追加性の立証およびベースラインシナリオの選択に係る投資分析におけるE‐政策
の適用ガイドライン」草案、「追加性の立証および証明ツール」改訂、「ベースライ
ンシナリオおよび追加性の評価認定に係る複合ツール」改訂に係る議論を行った。そ
の結果、提案されていた「E‐政策の便益が受けられる期間」についてさらに絞り込む
ことで合意した。その上で事務局に対して、上記ガイドライン草案ならびにツールに
ついて、以下の論点を踏まえて、第79回理事会において検討するために修正を加える
- 25 -
よう要請した。
(a) 第75回理事会に提案された「E‐政策の便益が受けられる期間」の縮
小パターンの選択肢(第74回理事会議題の附属書16参照)について、
さらに分析すること
(b) E‐政策の実施日の定義について改めて検討すること
・
PoAについて以下の事項を検討した。

事務局が作成したPoAからのCER発行申請手続きをより柔軟な手続きとするた
めの対応策についてまとめたコンセプトノート(第78回理事会会議資料附属書
11)を踏まえて協議し、以下の事項を事務局、方法論パネル、小規模WGに要請
した。
(a) 事務局に対して、以下の二つの要請を行った。
−
コンセプトノートのオプション1で示されたように、PoAに関する
規制文書の修正を提案するよう更に作業を行うこと。
−
一連の修正についてCMPにおいて確認を得るための勧告を検討す
ることを要請するとともに、さらに簡素化する余地が残っている
のか評価し、将来の理事会において検討するために提案を作成す
ること。
(b) 同時にMathパネルと小規模WGに規制関係文書および関連する方法
論について、オプション1で示されたようなネガティブ排出削減(排
出増)についての対応するため適切な修正を求めた8。
(背景説明)
 現行のPCPにおいて、PoAのCER発行申請手続きは、PoAに含まれる全ての
CPAのモニタリング結果に対する発行申請を前提としており、PoAに含まれる
一部のCPAのモニタリング結果に対する発行申請には条件(二つのCPAのグル
ープからのモニタリング結果に対するCER発行がなされた場合、このCER発行
申請手続きが終了するまでは、継続して行われたモニタリング結果に対する
CER発行申請を行うことが出来ない)が付されている。
 これはネガティブ排出削減への懸念に対応するものであったが、その一方で、
利害関係者からPoA実施の障害となっているとのコメントがあったため、第75
回理事会において事務局に対して柔軟な手続きとするための対応策を検討する
ことを要請していた。
 事務局は、コンセプトノートにおいてPCPや関連方法論を分析し、二つの対応
事務局は、第 75 回理事会からの要請に基づき、PoA のプロジェクト排出量がベースライン排出量を上回
った場合(ネガティブ排出削減、negative emission reductions)、PoA の CER 発行申請の際にどのように
対応すべきか検討した。検討結果は、Concept note “Futher work on batched issuance requests for PoAs”
(CDM EB 78-AA-A11)としてまとめられ理事会における検討の際の参考とされた。
8
- 26 -
策(オプション)を示した。理事会はコンセプトノートに示されたオプション1
を踏まえて対応策を示すように事務局に要請した。
 理事会が選択したオプション1は、ネガティブ排出削減が生じることのない方法
論or生じるリスクの小さい方法論についてのみ、柔軟なCER発行申請を認め、
その他のネガティブ排出削減が生じる可能性もあるものについては、従前通り
に対応をするもの。

PoAにおけるマイクロスケールCPAに関するコンセプトノートについて検討
し、今後の小規模ワーキンググループの作業のマイクロスケールCPAの閾値
に関する勧告作成作業において考慮することが求められる点を以下のように
示した。
(a) 閾値の分析は、マイクロスケールプロジェクトだけではなく、自動的
に追加的と見做される技術のポジティブリストの基準を満たす小規
模プロジェクトも対象とすること
(b) 閾値の分析には、変更された結果、潜在的にプロジェクト規模の閾値
となりうる数値(CPAの合計と個別のCPA)を含めること、また、
もし適切であれば、時間的な変化あるいは技術的な考慮(関連する
方法論の技術に関する特定の規定を通じたもの)も視野に入れて検
討すること

複数の国で実施されるPoAの規則の改善に関するコンセプトノートについて検
討し、関連する規則について、次のように修正することを合意した。
CMEは、PoAに含まれるCPAで実施される技術/措置が同一であったと
しても、以下の手続きにおいてそれぞれのホスト国における特定
CPA-DDをを提出する。
−
PoAの登録申請時 あるいは
−
追加的なホスト国を加えるためにPoAを拡大する時
4.1 フォーラムと関係者
・
DOE/AIEのフォーラム議長であるWerner Betzenbichler氏とビデオ会議を行った。
Betzenbichler氏はCDMの認定基準の実施およびCDM市場動向に関してコメントする
とともに、CDM認定基準に関連して、DOEにおける資格試験制度の効果的な意味を確
認するため、DOEならびに事務局員から成るタスクフォースの仕事(DOEの職員の資
格試験を実施するための実際的な手法を明らかにするもの)の進捗について報告した。
この報告においては、さらに協力が有益であることに言及したものの、特に現在の市
場の状況を踏まえ、実施スケジュールや関連する費用などの基準の実施に必須の事項
を考慮に入れると、理事会からのさらなるガイダンスが必要とされる制約が存在する
- 27 -
ことを報告された。現行の認定基準を実施するための準備状況に関連したDOEの調査
結果を報告した。
・
(DOEならびに事務局からなる)タスクフォースの進捗およびDOEの調査結果に基づ
き、Betzenbichler氏は理事会に以下の事項を提案した。
a)DOE と(事務局の)評価チームとの間での解釈の違いを回避するために、認定基
準の実施にあたってのガイダンス/解釈の提供
b)過渡期において資格を有する全職員の試験の免除
c)専門技術者のための資格試験を不要とする措置
d) 2014 年 7 月 1 日までの間に、資格の有する全職員や能力試験に関連する認定基
準の実施を公開するという DOE/AIE フォーラムの提案について考慮
- 28 -
<参考>
表:第 78 回 CDM 理事会参加メンバー
地域区分
欧州他
アフリカ
アジア
東欧
中南米
AOSIS
非附属書Ⅰ国
理事
理事代理
Mr. Martin Enderlin
Mr. Olivier Kassi
スイス
欧州委員会
Mr. Tosi Mpanu-Mpanu
Mr. Kadio Ahossane
コンゴ民主共和国
コートジボアール
Ms. Laksmi Dhewanthi
Mr. Hussein Badarin
インドネシア
ヨルダン
Ms. Natalie Kushko
Ms. Diana Harutyunyan
ウクライナ
アルメニア
Mr. Daniel Ortega-Pacheco
Mr. Eduardo Calvo
メキシコ
ペルー
●Mr. Hugh Sealy
Mr. Amjad Abdulla
バルバドス
モルディブ
Mr. Washington Zhakata
Mr. Qazi Kholiquzzaman Ahmad
ジンバブエ
バングラディシュ
Mr. Jose Miguez
Mr. Maosheng Duan
ブラジル
中国
Mr. Frank Wolke
附属書Ⅰ国
ドイツ
空席
○Mr. Lambert Schneider
Mr. Kazunari Kainou
ドイツ
日本
注)
・ ●議長、○副議長。1年ごとに、附属書Ⅰ国・非附属書Ⅰ国からの理事が交替で務める。
・ 網掛けのメンバーは今次会合欠席。
・ 任期は、改選の翌年の最初の CDM 理事会まで。理事は連続最大 2 期まで、理事代理は任期の制限は
ない。
・ 理事メンバーは国連定義の 5 地域から 5 名、附属書Ⅰ国から 2 名、非附属書Ⅰ国から 2 名、島嶼国か
ら 1 名の代表として就任。
- 29 -
第 79 回 CDM 理事会報告
第 79 回 CDM 理事会(EB79)が 2014 年 5 月 28 日から 6 月 1 日にドイツのボンで開催
され、主に以下の内容が決議された。
1.統治と管理
1.1 戦略的計画と方向性
・
CDMの利用とCERの需要拡大に向け、コンプライアンスや自主的取組での利用を促す
ための幾つかの対策を検討し、幾つかの取組みの実施を合意した。合意された取組み
は、自主的な取消しの促進、広報活動、潜在的なCERの需要となっている三つの分野、
公的機関、民間、そして他のツールや制度の支援、におけるCDMとCERの活用を促す
ことなどである。さらに理事会は、以下の取組みについて更に検討を続けていくこと
を合意した。
a.
広報活動を強化するとともに、需要側の利害関係者の状況を十分に考慮した広報
活動資料の改善を図り、広報活動の手段を強化し、潜在的な需要となっている分
野を対象とした広報活動の計画。
b.
CERの自主的取消を確認するための手続き・プロセスの策定。
c.
CDM登録簿において自主的取消が可能なCERについての情報提供プラットフォ
ームの設立。
d.
簡素なオンライン上でのCERの自主的取消の様々な手法の開発についての手法と
問題に関する検討。
e.
CERの需要に影響を与える政府の政策の決定の根拠として、CDMとCERについて
正確かつ最新の情報が活用されることを原則として支持。
f.
COP決定1/CP.19が、CERの自主的取消を2020年までの更なる排出削減量の達成
への活用を各国に促したことについての啓蒙普及活動の実施。
g.
注目度の高いイベントを対象として、それらのイベントでCERをオフセットとし
て活用を促すキャンペーンの実施。
h.
国際機関や国際制度の間での、CDMとCERを成果主義型資金拠出(Results-based
financing) 、GHG排出削減活動の検証、そして民間からの気候関連の資金提供を
促す可能性があることについて認識を共有されるように支援。
・
EU、中国、南アフリカ、オーストラリア、韓国、メキシコ、イランと世界銀行におけ
る炭素市場と政策の策定状況について、特に炭素に関連する政策の最新動向について
注目した報告書について留意し、事務局に対して、引続き国際的な市場と政策動向に
関する最新の情勢について調査・報告することを求めた。
- 30 -
1.2 パフォーマンス管理
・
DOEのパフォーマンスの監視に関して、2010年1月1日~2013年8月31日までの期間に
おいて実施した6回目の分析レポートでは、前回に続いて改善しているとの結果が得ら
れた。その上で、理事会は登録および発行の提出数が減少した結果、パフォーマンス
分析に利用できるデータ数も減少したことを指摘。この観点から、理事会は事務局に
対して、現在の市場状況下でのパフォーマンス監視方法の見直しを求めた。
1.3 理事会の業務を補助するための組織・機関
・
パネルとワーキンググループの役割に関する再検討結果をまとめたコンセプトノート
について検討し、事務局に対して、将来の理事会における議論のために、新たなコン
セプトノートの作成を要請した。この新たなコンセプトノートでは、以下の点に着目
する。
a.
今後、戦略的に発展させる必要のある方法論の分野を特定し、成果主義型資金拠
出(Results-based financing)の実施にあたって求められるモニタリング、報告
そして検証において、CDMが担いうる可能性のある新たな役割を視野に入れなが
ら、既存の方法論に関連するパネルやワーキンググループの最善の活用方法につ
いて明らかにすること。
b.
パネルやワーキンググループの会合においてIT活用方法を改善するための対応策
を検討すること。
・
第34回JI監督委員会において採択された、認定に関する共通の決定及び短期的には
CDMにおける認定システムを活用することについて合意を得るためにCDM理事会と
の対話を開始することを求める決議を留意し、この件について、次回会合において、
第40回実施補助機関会合における認定に関する最新の交渉結果を踏まえ、検討するこ
とを合意した。
1.4 パネルとワーキンググループの施行
・
CDM‐APからの要請に基づき、認定基準(バージョン5.2)の期限を2015年1月1日ま
で延期することとした。
・
理事会は「DOE職員の資格試験制度をめぐるタスクフォース」に対して、DOEによる
DOE職員の資格試験制度の自主的な使用のためのガイダンス策定に対して支援を続け
るよう求めた。ガイダンスは改訂されたCDM認定基準と一致するとともに、CDM-
APが前回会合で示した解釈を踏まえて実用的な試験の実施方法を示さなければならな
い。専門知識を共有するため、理事会はCDM‐APに対して2人の委員がタスクフォー
スに参加するよう求めた。
- 31 -
2.個別案件
2.1 認定
・
一般財団法人日本品質保証機構より届け出のあった、部門領域11「ハロカーボンと六
フッ化硫黄における生産と消費からの漏えい」認定資格の自主的な取り下げを承認し
た。
2.2 プログラム活動(PoA)
・
2014年6月1日までに252件のPoAが登録(CPAは全1,674件)。
・
2014年6月1日までにPoAに係るCERが140,610トン発行された。
2.3 登録
・
2014年6月1日までに7,516件のCDMプロジェクトが登録された。
2.4 発行
・
2014年4月4日までに14億5841万6551トンのCERが発行された。
・
プロジェクト#0171、#1406の発行要請再提出について発行許可。
3.規制事項
3.1 基準/ツール
(a)CDMプロジェクトおよびPoA基準
・
標準化ベースラインの要素を含む以下の改正を採択した。これらの改正は2014年6月25
日から効力が発生する。
a)「CDMプロジェクト基準(PS)」
b)「CDM有効化審査と検証に係る基準(VVS)」
c)「CDMプロジェクトサイクル手順(PCP)」
d)提案された新しいベースラインとモニタリング方法論様式ガイドライン
・
改訂版「標準化ベースライン設定に関する品質管理および品質保証のためのガイドラ
イン」を採択した。
・
標準化ベースライン設定におけるCDMプロジェクトの考慮方法について検討し、コン
セプトノートに記載されたオプション5の考慮方法を採用することを合意した。オプシ
ョン5では、以下のような方法が示されている。

標準化ベースラインの設定に当っては、登録済みCDMプロジェクトを全て
含めて考慮しなければならない。もし国家指定機関(DNA)が登録済み
CDMプロジェクトにおいて利用されている燃料・原料・技術の費用がその
- 32 -
産業分野の生産量の3割を占めるものよりも高いことを証明した場合は、除
外することが認められる。
・
追加性の立証およびベースラインシナリオの選択に係る投資分析におけるE‐政策効
果に関して検討を行った。その結果、理事会は事務局に対して、更に多くの具体例に
基づいたオプション2Aと4Bの分析を実施するよう要請した。分析の対象となるオプシ
ョン2Aと4Bは以下の通り。
Option 2A:ホスト国においてE-政策の効力が発生して以降あるいは2014年1月1日
以降のうちいずれか遅い日を起点として、7年間は、E-政策によってプロ
ジェクトが享受する利益を考慮しない。
Option4B:ホスト国においてE-政策が実施されてから、あるいは2014年1月1日以降
のうちいずれか遅い日を起点として、7年間に登録申請されたプロジェク
トについて、投資分析の対象となる全プロジェクト期間(最大21年)、
E-政策によってプロジェクトが享受する利益を考慮しない。
(b)大規模方法論基準
[新規方法論]
・
“AM0114 イソシアネート工場での電解質から触媒へのシフトによる塩化水素ガスか
ら塩素回収処理”:この方法論は、(ポリウレタン樹脂の原料となる)イソシアート
製造工場において、塩化水素ガスを塩素として再利用する際に、電気分解過程ではな
く触媒を利用することで電力由来のCO2排出量を削減する事業に適用される。
[新規ツール]
・
都市間貨物輸送のモーダルシフトによる排出量ベースライン計測ツール
・
旅客輸送の同計測ツール
[方法論改訂]
・
ACM0002“系統接続する再生可能エネルギー発電”について以下の点を改訂。
i. 方法論の適用範囲を、総合的な水力発電プロジェクトにおいて新たな貯水池の建
設を伴う新規発電所建設により発電能力を増強するものに拡大。
ii. “改修”の定義及び改修された発電施設におけるベースライン排出量の算定手続
きを追加。
iii. 化石燃料を利用する発電機をバックアップ電源としている場合の排出量のカウン
ト方法についての明確化。
iv. 水力発電所における貯水池と導入された発電施設に関するモニタリング項目およ
び地熱発電所における水蒸気に含まれるCO2とCH4の質量分率についての明確化。
・
ACM0015“クリンカー製造における原材料の転換による排出削減”について、新規セ
メント工場建設を適用範囲とすること及び名称を“セメントキルンのクリンカー製造
における炭酸塩を含まない代替的な原材料を利用するプロジェクトにおける統合され
- 33 -
たベースラインとモニタリング方法論”から、上記の“クリンカー製造における原材
料の転換による排出削減”と名称を変更した。
(c)小規模方法論基準
[新規方法論]
AMS-Ⅲ.BK“小規模酪農家における戦略的な飼料供給による牛乳生産の増加”:この方
・
法論では、小規模な乳牛事業者における牛乳生産性の向上を目的とした大型反芻動物
(乳牛など)への戦略的な飼料供給により、牛乳生産時のメタン排出量原単位を削減
する事業に適用される。
SSC-NM092“送電網に接続されていない地域における再生可能エネルギーを活用した
・
電化”について検討し、その結果、既存の方法論(AMS-Ⅰ.L)を改訂し統合することを
決定した。
[方法論改訂]
・
AMS-Ⅰ.C” 電気の有無に関わらない熱エネルギー生産”
・
AMS-Ⅰ.L“再生可能エネルギーによる農村地域の電化”
・
AMS-Ⅲ.BG“持続可能な木炭生産と消費を通じた一般家庭の小型ガス化ストーブによ
る木炭生産における排出削減”
・
AMS-Ⅲ.AQ”バイオ圧縮天然ガス(CNG)の改造ディーゼル車両への活用と既存の天
然ガス供給ネットワークと最終利用者への提供を通じた交通機関へのバイオCNGの導
入”
・
AMS-Ⅲ.Z“レンガ製造における燃料転換、工程の改善、エネルギー効率化”
3.2 手続き
PS,VVSそしてPCPに関する事務局からの修正案を、特に以下の9つの主要な論点(第75回
CDM理事会においてガイダンスを示した論点)について注目して検討した結果、次回、理
事会において理事会メンバーから更に見解が示される可能性があることを指摘しつつ、以
下の見解を事務局に示した。
・
“事前検討”についてチェック:理事会は提案された修正の方向性を支持。
・
登録前の公開されたプロジェクト計画書(PDD)の変更について:理事会は、提案さ
れたプロジェクト参加者とDOEに関連する修正案を支持した一方で、理事会はプロジ
ェクトの計画に関する修正については支持しなかった。理事会は“主要な”(major)
なプロジェクトの計画の修正について、世界的な利害関係者との協議(global
stakeholder consultation)のために新たなPDDをもとめるべきか否か、また実施する
場合は実施方法について、更に検討する必要性があると判断した。
・
特定の場合における直接的なコミュニケーション:登録却下された場合に、プロジェ
クト参加者とDOEが事務局に対して詳細な説明を求める機会を新たに設ける修正の方
- 34 -
向性については理事会は支持するが、具体的な実施方法について電話以外の手段まで
含めることを検討した。
・
実施段階における方法論の適用条件のチェック:理事会は、この修正の方向性につい
て支持した。
・
登録後の修正に関する承認手続き:理事会は、この修正の方向性について支持した。
・
モニタリング報告書の取下げ:理事会は修正の方向性を支持したが、取下げられたモ
ニタリング報告書について、UNFCCCのCDMウェブサイトにおいて取消”との表示を
付けた上で継続して公開する必要性があること(登録申請の取消や発行申請と同様に)、
更にモニタリング取消申請に関する事務局における処理手続きに要する時間を短縮化
する必要性があることを検討した。
・
発行申請の再申請の取消:理事会は提案された修正の方向性を支持した。
・
クレディッティング期間の更新:理事会は提案された修正の方向性を支持したが、提
案された新しい手続きの中で、登録後の変更手続きも同時に行うことを認める提案に
おいて、理事会が部分的に変更を承認するオプションについて削除する必要性がある
ことを検討した。
・
プロジェクトの登録取消/終了:理事会は提案されたオプション2による修正の方向性を
支持した(プロジェクト登録取消を認める手続きを設けること)。
3.3 政策課題
・
小規模プロジェクト、マイクロプロジェクト、そしてPoAにおいて、最初の検証の前に
モニタリング計画の有効化審査を認めることについて分析したコンセプトノート(京
都議定書締約国会合において採択された決議3/CMP 9パラ10における要請に対応する
ための準備されたもの)について検討した。この結果、、理事会は、規模に関係なく
全てのプロジェクトとPoAについて、モニタリング計画の有効化審査の時期を柔軟に設
定することに同意した。これにより、モニタリング計画についてのDOEによる有効化
審査とCDM理事会による承認は、(a)登録時、(b)最初の発行申請以前のいずれかのタイ
ミング、あるいは(c)最初の発行申請時のいずれかで行うことが可能となった。今後の
理事会において検討するために、このような柔軟性を踏まえた全ての規制文書の改訂
を、事務局に要請した。
・
プロジェクトやPoAを自動的に追加性ありと見做すことで、有効化審査手続きを簡素化
を図ることについてまとめたコンセプトノート(京都議定書締約国会合において採択
された決議3/CMP 9パラ18における要請に対応するための準備されたもの)、特定の
PDD様式における簡素化された方法論の活用は、コンセプトノートで示されたプロジ
ェクト活動に利益をもたらすと合意した。その上で理事会は、3つの方法論でのPDD特
定様式の策定に着手することを決定した。さらに、有効化審査において、既存の手続
きとは別途、新たに自動的に追加性を認める場合の手続きを設けることについては、
- 35 -
更に検討しないことを合意し、有効化審査における時間の短縮化は、手続きの改正で
はなく既存の手続きの中での評価を通じて取組むことを合意した。
・
A/Rプロジェクトにおける柔軟な検証のタイミング設定に関するコンセプトノートを
検討した結果、理事会は草案についてA/Rワーキンググループの協議することをを事務
局に要請した。さらに、A/Rワーキンググループに対しては、第72回理事会報告書パラ
グラフ71に含まれている記述が、短期期限付きCER、長期期限付きCERに適用可能か
どうか協議することを要請した。その上で、事務局に対して、(コンセプトノートに
含まれていた)勧告案について、将来の理事会において検討するために、A/Rワーキン
ググループのコメントを踏まえて修正することを要請した。
- 36 -
<参考>
表:第 79 回 CDM 理事会参加メンバー
地域区分
欧州他
アフリカ
アジア
東欧
中南米
AOSIS
非附属書Ⅰ国
理事
理事代理
Mr. Martin Enderlin
Mr. Olivier Kassi
スイス
欧州委員会
Mr. Tosi Mpanu-Mpanu
Mr. Kadio Ahossane
コンゴ民主共和国
コートジボアール
Ms. Laksmi Dhewanthi
Mr. Hussein Badarin
インドネシア
ヨルダン
Ms. Natalie Kushko
Ms. Diana Harutyunyan
ウクライナ
アルメニア
Mr. Daniel Ortega-Pacheco
Mr. Eduardo Calvo
エクアドル
ペルー
●Mr. Hugh Sealy
Mr. Amjad Abdulla
グラナダ
モルディブ
Mr. Washington Zhakata
Mr. Qazi Kholiquzzaman Ahmad
ジンバブエ
バングラディシュ
Mr. Jose Miguez
Mr. Maosheng Duan
ブラジル
中国
Mr. Frank Wolke
附属書Ⅰ国
ドイツ
空席
○Mr. Lambert Schneider
Mr. Kazunari Kainou
ドイツ
日本
注)
・ ●議長、○副議長。1年ごとに、附属書Ⅰ国・非附属書Ⅰ国からの理事が交替で務める。
・ 網掛けのメンバーは今次会合欠席。
・ 任期は、改選の翌年の最初の CDM 理事会まで。理事は連続最大 2 期まで、理事代理は任期の制限は
ない。
・ 理事メンバーは国連定義の 5 地域から 5 名、附属書Ⅰ国から 2 名、非附属書Ⅰ国から 2 名、島嶼国か
ら 1 名の代表として就任。
- 37 -
第 80 回 CDM 理事会報告
第 80 回 CDM 理事会(EB80)が 2014 年 7 月 14 日から 7 月 18 日にドイツのボンで開
催され、主に以下の内容が決議された。
1.統治と管理
1.1 パフォーマンス管理
・
CMP(京都議定書締約国会議)に向けた年間報告書について議論を開始し、次回EBに
て主要メッセージを含んだ草案について検討することを合意した。
1.2 理事会の業務を補助するための組織・機関
・
CDM名簿に含まれる専門家の人選および評価に関する手順の草案とともに新しい提案
について検討した。適切であれば、今後の理事会において、新たな提案に基づいた手
順を採択することに合意とした。
・
SBSTA40およびSBI40、特にCDMのModalities and Procedures(M&P)にの再検討に
おいて論点となった、CDMとJIにおける資格認定システムの相互連携と、「強化され
た行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」の下で策定され
る新たな市場メカニズムと、ADPと新たな市場メカニズムとの関係について留意した
・
SB40において、CDMとJISCそれぞれの議長、副議長による以下の論点について見解
について非公式の意見交換を行った。
a)炭素市場の状況
b)二つの制度の構成機関からなる認定システム
c)2020年以降のCDMおよびJISCの役割
・
理事会はJISC議長であるPiotr Dombrowicki氏とJISCの認定に関連する決定について
意見交換を行い、次回理事会にて検討するために、勧告を提供するようにCDM-AP
に要請した。
・
SBI40におけるCDMおよびJISCの二つの制度の構成機関からなる認定システムの相
互連携に関する議論の成果を踏まえ、理事会はCMPへの勧告を作成することも視野に
入れ、この事案について次回の理事会においても継続し審議することを合意した
・
オンライン上でのCER購入ツールの開発に向けた取り組みについて検討し、事務局に
対して、この事案について引き続き検討を続け、次回以降の理事会で検討するために
対応策と解決策に関する報告をするよう要請した。
- 38 -
2.個別案件
2.1 認定
・
一般社団法人日本プラント協会より届け出のあった、2014年9月30日付での全ての認定
資格の自主的取り下げを承認した。
・ Korea Environment Corporation(KECO)より届け出のあった、部門領域
2,4-7,9,10,14,15認定資格の自主的な取り下げを承認した。
2.2 プログラム活動(PoA)
・
2014年7月18日までに259件のPoAが登録(CPAは全1,686件)。
・
2014年7月18日までにPoAに係るCERが140,610トン発行された。
2.3 登録
・
2014年7月18日までに7,534件のCDMプロジェクトが登録された。
2.4 発行
・
2014年7月18日までに14億7145万5970トンのCERが発行された。
3.規制事項
3.1 基準/ツール
・
「CDM認定基準改正の実施に向けた経過措置規定」および「CDM認定基準」の改正を
採択した。
・
上記改訂について検討する中で、理事会はDOE/AIEフォーラムから示された「CDM認
定手順(version11.0)」の115および117パラグラフの規定についての見解について検
討し、事務局に対し、現行の慣行を維持し、さらにCDM-APと協議の上で、DOEの
コストに与える影響を現状の市場状況を考慮した環境十全性を確保する認定プロセス
において求められるDOEの評価の頻度およびタイミングに関する選択肢を示したコン
セプトノートを、次回以降の理事会で議論するために準備することを要請した。
3.2 手続き
PS、VVSそしてPCPに関する事務局からの修正案を、特に以下の4つの主要な論点(第79
回CDM理事会において、さらに議論するためにガイダンスを示した論点)と残りの6つの
論点について注目して検討した結果、以下の見解を事務局に示した。
・
登録前の公開されたプロジェクト計画書(PDD)の変更について:理事会は、事務局
から提案された利害関係者との協議(global stakeholder consultation)におけるPDD
- 39 -
を再発行のためにプロジェクト計画の変更のための手続きと基準を明確化する規定草
案を削除する方向性を支持した。一方で有効化審査中のプロジェクトにおいて、特定
のプロジェクトのプロジェクト計画が変更された際に、利害関係者との協議のために
新たなPDDの発行を必要とするかどうか、DOEが理事会に明確化を求める手続きの導
入を事務局に要請した。
・
モニタリング報告書の取下げ:理事会は提案された修正の方向性を支持したが、プロ
ジェクト参加者あるいは調整/管理主体による取下げへの同意についての証拠提出に関
する手続きについて、文言上の修正を事務局に求めた。
・
クレディッティング期間の更新:理事会は提案された修正の方向性を支持したが、関
連するPCPのセクションの構成を改善することを事務局に要請した。
・
プロジェクトの登録取消/終了:理事会は、前回会合において提案され合意されたオプ
ション2による修正(プロジェクト登録取消を認める手続きを設けること)について、
理事会による再検討プロセスを削除するとともに、再登録における審査を導入するこ
と(理事会が個別に判断)を事務局に要請した。
・
特定の利害関係者との協議:理事会は提案された修正の方向性を支持したが、PoAや構
成するプロジェクト活動において、「Glossary:CDM terms(CDM期間に関する用語
解説)」の規定、地元の利害関係者との協議はプロジェクト活動の「開始日」前に完
了することを踏まえて草案の修正を事務局に要請した。関連する利害関係者は、地元
の利害関係者との協議後に生じたプロジェクト計画の重大な変更がなされた場合など
に協議に招かれ、これらの協議については、関連する国内法規制に従い、規定通りに
実施される。
・
重要性基準:理事会は提案された修正の方向性を支持した。
・
同一DOEによる有効化審査と検証:理事会は提案された修正の方向性を支持した。
・
プロジェクト計画書(PDD)内のプロジェクト活動の説明:理事会は提案された修正
の方向性を支持した。
・
小規模プロジェクトのためのCER発行上限の設定:理事会は提案された修正の方向性
を支持した。
・
有効とされる登録日:理事会は提案されたオプション2の修正の方向性を支持した。実
際の登録日は、(i)発行保証金が事務局に支払われた時、(ii) コンプリートネスチェック
によって不足しているとされた情報がDOEから提出された時、のいずれかである。
・
理事会は、PS、VVS、PCP改訂草案について、引き続き検討することに合意し、事務
局に対して、今回の会合で指摘された上記の見解を反映するとともに、修正履歴が明
示された新たなバージョンのPS、VVS、PCP改訂草案の準備を要請した。
- 40 -
3.3 政策課題
・
A/Rプロジェクトにおける柔軟な検証のタイミング設定に関して、理事会はCMPへの
勧告(Annex10)に同意した。
・
理事会はDNAによる持続可能な発展による便益についてのモニタリングを支援するた
めのガイディングツール(利用についてはDNAの自主的な判断に委ねられる)の策定
について、コンセプトノートに示されたアプローチについて合意するとともに、事務
局に対して、実施計画の準備および、実施状況について、今後、情報を提供すること
を要請した。
a) CMPの要望を情報提供することと、持続可能な発展による便益のモニタリングにつ
いての支援に関するDNAの関心を探るためにDNAへの連絡(すでに行われたステ
ップ)
b)持続可能な発展の便益についてのモニタリングについて用いる指標を含めてDNAの
間での慣行を共有するよう依頼すること
c)DNAからの情報提供を踏まえて、もし、その他の情報源、他の条約や国際的な取決
め、から情報提供された場合、それらも踏まえ、事務局は、DNAフォーラムを通し
て持続可能な発展の便益についてのモニタリングについてのグッドプラクティスガ
イダンスツール(利用については各DNAの判断に委ねられる)の開発を促進する
d)DNAからの要請がある場合、彼らの国の状況や特定のニーズに応じたグッドプラク
ティスガイダンスツールを調整して支援を提供する。支援の提供にあたっては、
DNAからの要望に応じて、オンライン・コミュニケーションおよび電話会議あるい
は現地視察を通しての援助を実施することもできる
e)
DNAからの要望に応じて提供された支援については、開発されたガイダンスツー
ルの関連性および効率性についての評価
f)
可能な限りの全てのフォーラムおよびイベントや、可能な場合は電子手段によって
DNAにとって支援を得られる機会があることを継続的に情報提供すること
4.1 フォーラムと関係者
・
DOE/AIEのフォーラム議長であるWerner Betzenbichler氏とビデオ会議を行った。
・
彼は現在の市場状況に関して、多くのDOEが市場に残るか認定を取消して撤退するか
を判断するため、2015年にパリで開催されるUNFCCC会合の結果を待っていると述べ
た。また、彼は理事会に対して、認定期間が変更になることで、いくつかのDOEが対
象となる現行の手続きで規定されている2回の監査評価ではなく、3回監査評価が実施
される対象となっていることについて、その影響を評価するよう求めた。また、どの
評価であってもDOEのコストになり、いくつかのDOEにとって競争力に大きな影響を
及ぼす、指摘した。
- 41 -
<参考>
表:第 80 回 CDM 理事会参加メンバー
地域区分
欧州他
アフリカ
アジア
東欧
中南米
AOSIS
非附属書Ⅰ国
理事
理事代理
Mr. Martin Enderlin
Mr. Olivier Kassi
スイス
欧州委員会
Mr. Tosi Mpanu-Mpanu
Mr. Kadio Ahossane
コンゴ民主共和国
コートジボアール
Ms. Laksmi Dhewanthi
Mr. Hussein Badarin
インドネシア
ヨルダン
Ms. Natalie Kushko
Ms. Diana Harutyunyan
ウクライナ
アルメニア
Mr. Daniel Ortega-Pacheco
Mr. Eduardo Calvo
エクアドル
ペルー
●Mr. Hugh Sealy
Mr. Amjad Abdulla
グラナダ
モルディブ
Mr. Washington Zhakata
Mr. Qazi Kholiquzzaman Ahmad
ジンバブエ
バングラディシュ
Mr. Jose Miguez
Mr. Maosheng Duan
ブラジル
中国
Mr. Frank Wolke
附属書Ⅰ国
ドイツ
空席
○Mr. Lambert Schneider
Mr. Kazunari Kainou
ドイツ
日本
注)
・ ●議長、○副議長。1年ごとに、附属書Ⅰ国・非附属書Ⅰ国からの理事が交替で務める。
・ 網掛けのメンバーは今次会合欠席。
・ 任期は、改選の翌年の最初の CDM 理事会まで。理事は連続最大 2 期まで、理事代理は任期の制限は
ない。
・ 理事メンバーは国連定義の 5 地域から 5 名、附属書Ⅰ国から 2 名、非附属書Ⅰ国から 2 名、島嶼国か
ら 1 名の代表として就任。
- 42 -
第 81 回 CDM 理事会報告
第 81 回 CDM 理事会(EB81)が 2014 年 11 月 24 日から 11 月 28 日にペルーのリマで
開催された。
1.統治と管理
1.1 戦略的計画と方向性
・
CERの自主的取消のためのオンライン上のプラットフォームの開発について同意する
とともに、開発作業とそのための調達作業を進めるよう事務局に要請した。理事会は、
同時に、開発されたプラットフォームを一般に公開する前に、理事会がプラットフォ
ームを確認する機会を設けるように求めた。
・
理事会は、民間セクターにおける取組みについての作業の更新結果について検討を行
い、以下のようなガイダンスを示した。
(a)C4C(Caring for Climate)イニシアティブによるCER利用促進に関して、
CER需要拡大への努力は事務局が直接管理すること。
(b) CERの自主的取り消しは、企業および他の事業者にとって、CERの消去の事
実のみを示し、それらの企業自身における気候ニュートラル(カーボンニュー
トラル)としては認識されない。
(c)個々の企業、他の事業者あるいは個人が、CERの自主的取り消しを促進する
取組むことも認められるが、事務局は特定の企業や事業者、個人によるCERの
自主的取り消し促進への努力を推薦することは避ける必要がある。その代わり、
一般的には、そのような推進努力は企業や事業者のグループが行うべきである。
・
第75回理事会において採択された2014年から2015年にかけての2年間のCDM理事会
事業計画を踏まえて、理事会は2015年事業計画を採択した。予算を14.7%削減する提
案に関して、その意図について、気候変動を緩和し持続可能な発展に貢献する制度で
あるCDMを長期間、持続させるためであることが強調された。
・
CDMのインフラストラクチャー、CDMプロジェクトサイクル全体または一部の手続き、
を個別のサービスとして、他の分野に(例えば成果主義型資金拠出(results-based
finance)など)、どのように適用することが可能であるのか、事務局にコンセプトノ
ートを作成するよう要請した。
・
これまで取り組んできたCDMの純削減効果に関して、これ以上の検討を行わないこと
に同意した。
- 43 -
1.2 理事会の業務を補助するための組織・機関
・
DOEによる監査の回数・頻度・タイミングにおけるコンセプトノートについて検討し、
事務局に対して以下の点を要請した。
(a)CDM認証手続き(version 11.0)パラグラフ75 (a)に含まれるRisk-based
approach適用後、最低限20カ月毎に1回行われるパフォーマンス評価に関する
規定に変更すること。この変更は暫定的なものとし、今後2年間のみ有効とする。
また、2年間の有効期間内にDOEのパフォーマンスの変化および評価に関わる
コストの影響についての分析の準備すること。
(b)定期的な評価の回数・頻度・タイミングに関するCDM認証手続き(version
11.0)の規定を維持する。
(c)DOEにおける移動コスト負担削減のため、可能であれば審査場所の近くに位
置する専門家をこのCDMの審査チームに選ぶ。この際、「専門家のCDM認定
名簿における専門家の選択とパフォーマンス評価(Selection and performance
evaluation of experts on the CDM accreditation roster of experts)」(version
1.0)手続きのパラグラフ37に記載されている他の側面とバランスを取る必要が
ある。
(d)今後、理事会において検討するために、CDM-APと協議し、評価活動におけ
る固定報酬の導入に関するコンセプトノートについて準備すること。
・
CDM認証基準(バージョン6.0)によって求められるDOE職員の資格試験の実施のた
め、DOEにおける効果的手段の明確化に関するタスクフォースによる作業報告につい
て、第68回CDM-APにおいて明確にされた点を含めて留意した。特に、理事会はタス
クフォースによる、試験実施の効果的実施のための十分なガイダンスがDOEに提供さ
れ、理事会によって与えられた任務を果たすという結論について留意した。
2.個別案件
2.1 認定
・
理事会は、CDM-APからの勧告のあった、E-0065「China Building Material Test and
Certification Group Co.Ltd.」において、5年間の部門領域1-4,6,9,10,13に関する認定
に同意した。
・
理事会は、CDMAPからの推薦のあった以下の事業者の5年間の再認定に同意した。
(a) E-0046 「China Classification Society Certification Company (CCSC)」
部門領域1-10,13
(b) E-0051 「KBS Certification Services Pvt. Ltd(KBS)」
部門領域1,3–5,7,9,10,12,13,15
- 44 -
・
理事会は、CDM-APによる以下の事業者に係る定期的なオンサイト調査の評価が、成
功裏に完了したことを示す通知を留意した。
(a) E-0001 「一般財団法人日本品質保証機構 (JQA)」 東京本社
(b) E-0010 「SGS United Kingdom Limited (SGS)」 central office (Camberley,
United Kingdom)
(c) E-0016 「ERM Certification and Verification Services Limited (ERM CVS)」
central office (London, United Kingdom)
(d) E-0023 「Lloyd’s Register Quality Assurance Ltd. (LRQA)」 non-central office
(Mumbai, India)
(e) E-0025 「Korean Foundation for Quality (KFQ)」 central office (Seoul, Republic
of Korea)
(f) E-0039「Korean Standards Association (KSA),」central office (Seoul, Republic of
Korea);
(g) E-0041 「日本能率協会 (JMA)」 東京本社
(h) E-0042 「Germanischer Lloyd Certification GmbH (GLC)」 central
office(Hamburg, Germany)
(i) E-0044 「China Quality Certification Center (CQC),」central office (Beijing,
China)
・
理事会は、CDM-APによる以下の事業者に係るパフォーマンス評価が成功裏に完了し
たことを示す通知を留意した。
(a) E-0001 「一般財団法人日本品質保証機構 (JQA)」
(b) E-0005 「TÜV SÜD South Asia Private Limited (TÜV SÜD)」
(c) E-0050 「Hong Kong Quality Assurance Agency (HKQAA)」
(d) E-0051 「KBS Certification Services Pvt. Ltd (KBS)」
(e) E-0055 「URS Verification Private Limited (URS)」
(f) E-0056 「Korea Testing & Research Institute (KTR)」
(g) E-0061 「Shenzhen CTI International Certification Co., Ltd (CTI)」
・
理事会は、CDM-APによる勧告を検討し、全ての部門領域において以下の事業者を観
察下に置くことに合意した。
(a) E-0002 「JACO CDM Ltd (JACO)」
(b) E-0045 「Ernst & Young Associés (France) (EYG)」
(c) E-0049 「Indian Council of Forestry Research and Education (ICFRE)」
(d) E-0058 「Foundation for Industrial Development (MASCI)」
・
理事会はさらに、上記4事業者に関して、以下のことに合意した。
(a) DOEは、定期的な調査評価のためのCDM認証手続き規定に従うことができな
かった。
- 45 -
(b) DOEは、3か月以内の定期的な調査評価訪問の対象とする。訪問の正確な日
付は、DOEと評価チーム間で1ヶ月以内に合意しなければならない。
(c) DOEは、このような不履行の再発に対処すべく予防措置を講じ、定期的な調
査評価の間に評価チームによるレビューを受けることとする。
(d) 定められた期限に間に合わない場合、理事会は期限の切れた後の会合で、
DOEの認定を中断または取り消しに関する判断をする。
・
理事会は、以下の事業者より届け出のあった全ての認定資格の自主的取り下げを承認
した。
(a) E-0060 「Korean Register of Shipping (KR)」
(b) E-0064 「BRTUV Avaliações da Qualidade S.A. (BRTUV)」
2.2 プログラム活動(PoA)
・
2014年11月28日までに271件のPoAが登録(CPAは全1,785件)。
・ 2014年11月28日までにPoAに係るCERが1,481,248トン発行された。
2.3 登録
・
2014年11月28日までに7,579件のCDMプロジェクトが登録された。
2.4 発行
・
2014年11月28日までに15億1341万4111トンのCERが発行された。
3.規制事項
3.1 基準/ツール
・
理事会は、PoA 関連の規制文書の改訂について検討を行い、下記項目に同意した。
(a)
PoAにおける単一モニタリング期間に最大10件までのCPAの発行申請を許可(現行2
件まで)。
(b)
一つのモニタリング期間において全てのCPAの検証を同一のDOEとする制限を削除。
(c)
複数のCPAを用いる際、CPAのレベルにおいてサンプリングと調査を実施すること。
(d)
特定のケースについて、CPAにおいて、PoA登録の提出時とともに登録後のPoA変更
申請におけるCPA-DD数の制限を廃止。
(e)
PoAへの適用の際に生じる必要性に応じて、大規模方法論の組み合わせること(小規
模方法論を含めて)を、理事会による事前承認無しで行うことを認める。その際は下
記の事項を満たす必要がある。
(i)技術/追加性証明が共通の方針またはPoAの目標の実現のために実施されること。
(ii)各々のCPAは1つの方法論を適用すること
- 46 -
(iii)異なるCPA間での相互作用がないこと
上記の改正はVVS、PS、PCPに含まれており、改訂されたPoAの基準にも適用されてい
る。理事会は、また、上に掲げる(a)の措置について、事務局からの通知された、現在、進
行中である関連情報システムの作業の完了が見込める場合、2015年の第1あるいは第2四半
期においての実施が可能となることについて留意した。また、システムの完了日を公表す
るとともに、公表日を理事会にも連絡するよう、事務局に要請した。さらに、方法論パネ
ルに対して、優先的に取組むべき課題として、理事会の事前承認を必要としないその他の
方法論の組み合わせを明確化し勧告するとともに、相互対話の実施が求められる場合と、
その実施方法について検討することを要請した。
・
理事会は、「セクター特定の標準化ベースラインの改正ガイドライン」について検討
し、事務局と方法論パネルに対して、「標準化ベースラインの策定のための基準」草
案について、以下の項目について更なる作業を行うよう要請した。
(a) 異なるプロジェクトタイプとセクターに関する提案された枠組みの適用可能性
について、市場占有率、性能、費用/障壁の三つのアプローチが、どのプロジェク
トタイプとセクターに利用可能であるのか検討しながら評価すること。
(b)さらに、文献調査を踏まえてその他の標準化のアプローチを検討すること、この
際には、特に性能基準の策定のようなプロセス指向のアプローチに限定せずに検
討する。
(c) 現行の閾値をデフォルト値として活用しながら、それ以外の閾値が、特定のプロ
ジェクトタイプにより適切であるかどうか検討する。
・
理事会は、改正された「CDMプロジェクト基準(PS)」および「CDM有効化審査と
検証に係る基準(VVS)」を採択した。
大規模方法論基準
理事会は、方法論パネルに対して航空分野及びその他の交通分野における方法論上のニー
ズを明らかにするためのギャップ分析を行うことと、ギャップ分析の結論を踏まえたトッ
プダウンでの方法論策定を要請した。理事会は、さらに方法論パネルに、バイオディーゼ
ルに関する方法論について、これらの方法論の適用範囲拡大と更なる簡素化の観点から、
レビューすることを求めた。
[新規方法論]
・
AM0115 「コークス炉起源のLNG製造に係るコークス炉ガス回収および利用」:承認
された方法論は、LNGを製造する際に既存のコークス炉から排出されるコークス炉ガ
スを回収する、新しいLNG製造プラントを取り付けるプロジェクト活動に適用される。
・
理事会は方法論パネルから勧告のあった新たな統合方法論「ACM00XX :天然ガス焚
き発電施設の新規建設」の承認の検討を行い、その後、承認済みの「AM0029 :グリ
- 47 -
ッド接続する天然ガス発電プラントのための方法論」および「AM0087 :電力グリッ
ドまたは単一消費者に電力を供給する天然ガス焚き発電施設の新規建設」を取り消し
た。また、理事会は方法論パネルに対して、プロジェクトプラントによってグリッド
に対して電力供給が行われる状況下でのベースラインにおける上流の漏洩排出量算定
方法の規定を設けることを要請した。
[方法論改訂]
・
理事会は以下の方法論の改訂について検討をおこない承認した。
ACM0022「 代替的廃棄物処理」における以下の修正を承認。

追加性の証明における標準化アプローチの導入

PoAにおけるACM0022の利用に関する規定の改善

廃棄物における化石燃料含有量のパラメーター決定方法の追加的なオプション
(FCCj(廃棄物タイプjにおける総炭素含有量の割合)とFFCj(廃棄物タイプj”に
おける総成分における化石炭素の割合)についてバランスのとれた計測方法)の
導入
AM0014「 特定の化石燃料をベースにしたコージェネレーション利用施設」における
以下の修正を承認。

ベースラインシナリオの特定、追加性の証明及びベースライン排出量の算定手
続きの簡素化および合理化、適用対象の拡大(新設の消費者施設を追加)、タ
イトルを旧来の「天然ガスのパッケージ・コージェネレーション」より変更す
ることを承認。
AM0048 「複数の消費者に電力および熱を供給する新規コージェネレーションプロジ
ェクト活動」におけるベースラインシナリオの特定、追加性の証明及びベースライン
排出量の算定手続きの簡素化および合理化することを承認。
ACM0002 「電力網に接続する再生可能エネルギー利用発電」における追加性の要件
を修正し技術的なポジティブリストを含めることを承認。挿入されたポジティブリス
トは以下の通り9。(以下、改訂されたACM0002(ver16.0)より引用)

簡素化された追加性証明ツールの利用が認められる技術のポジティブリスト:
-太陽光
-太陽熱発電
-洋上風力
9
今回、改正されたポジティブリストは 3 年間有効。3 年後に理事会が改めて見直しを行うこととされて
いる。ACM0002(ver16.0) para 32 参照。
- 48 -
-波力発電
-潮力発電
 自動的に追加性が証明される技術のポジティブリスト:
-ホスト国の総グリッド電源の2%以下の技術
-ホスト国で導入された供給能力が50MW以下の再生可能エネルギー技術
ACM0009 「石炭・石油から天然ガスへの産業燃料転換」においても主に以下の修正
を承認。

“上流部分での化石燃料利用に関わるリーケージ排出量”ツールならびに“当
初/現行のベースライン及びクレディッティング期間更新の際に更新されたベー
スラインの有効性の評価”ツールを参照すること

負のリーケージ排出量が生じた場合にはリーケージ排出量をゼロと見做すこと

ベースライン排出量の過大な算定につながる算定方法を修正すること
ACM0011 「既存発電所における石炭・石油から天然ガスへの発電用燃料転換」にお
いて、ACM9と同様に、“上流部分での化石燃料利用に関わるリーケージ排出量”ツー
ルならびに“当初/現行のベースライン及びクレディッティング期間更新の際に更新さ
れたベースラインの有効性の評価”ツール及び負のリーケージ排出量のリーケージ排
出量をゼロと見做す修正が承認された。
・
理事会は主に以下の方法論の修正について検討した。
ACM0002 「電力網に接続する再生可能エネルギー利用発電」において、海洋熱技術
をポジティブリストに含める可能性評価を方法論パネルに要請し、その結果を、今後
の理事会における検討のために勧告を作成するよう要請した。
ACM0012「廃エネルギー回収プロジェクト」の修正を検討し、方法論パネルに対して
ベースラインにおけるエネルギー回収の施設における慣行の水準を決定するための係
数算定において用いられるリストに含まれる施設の割合に関する要件の評価を行うよ
うに要請した。
[ツール改訂]
・
理事会は主に以下のツールの改訂を承認した。
方法論ツール「化石燃料利用に伴うリーケージの上流排出量」について、負のリーケ
ージ排出量が生じた場合はリーケージ排出量をゼロと見なすよう改訂された。
- 49 -
小規模方法論基準
[新規方法論]
・
理事会は以下の方法論を承認した。
AMS-II.S「 電動モーターシステムにおけるエネルギー効率化」この方法論は、高効率
のモーター、ポンプ、ファンの交換や更新によってエネルギーの効率化がもたらされ
るプロジェクト活動に適用される。
[方法論改訂]
・
理事会は以下の方法論の改訂を承認した(改訂内容は省略)。
AMS-I.G 固定式設備におけるエネルギー生成のための植物油の製造および利用
AMS-I.H 固定式設備におけるエネルギー生成のためのバイオディーゼルの製造およ
び使用
AMS-III.AK 運輸用途のバイオディーゼルの製造および利用
AMS-III.T 運輸用途の植物油製造および利用
AMS-III.C 電気またはハイブリッド自動車による排出削減
AMS-III.BB グリッド延伸または新規ミニグリッド建設による地域の電化
AMS-I.L 再生可能エネルギーを利用した地域の電化
AMS-III.AU 稲作における調整型水管理によるメタン排出量削減
AMS-I.B 電気の有無に関わらない利用者のための機械的エネルギー
AMS-I.D グリッド接続の再生可能発電
AMS-I.E 利用者による熱利用のための非再生可能バイオマス利用からの転換
AMS-I.F 受け手側使用およびミニグリッド向けの再生可能発電
AMS-III.A 既存耕作地の酸性土壌における大豆・とうもろこし輪作への根粒菌体接種
による尿素の相殺
AMS-III.AS 非エネルギー設備のための既存工場設備における化石燃料からバイオマ
スへの燃料転換
AMS-III.BF 化学肥料の利用が少なくて済む窒素利用効率(NUE)の高い種子の利用
によるN2O排出削減
AMS-II.J 需要側での高効率照明技術のための活動
AMS-III.AR 化石燃料を用いた電灯からLED/CFL電灯システムへの転換
AMS-III.G 埋立て処分場のメタン回収
AMS-III.E 管理燃焼、ガス化または機械処理・熱処理によるバイオマスの腐敗からの
メタン生成回避
AMS-III.H 排水処理でのメタン回収
- 50 -
3.2 手続き
・
理事会は、事務局に対して「直接対話のための様式および手続き」草案に関する一般
からの意見募集を求めるとともに、次回の会合における検討のため、意見募集の結果
を踏まえて、必要であれば改訂された草案を準備するよう事務局に要請した。
・
理事会は、改正された「CDMプロジェクトサイクル基準(PCP)」を採択した。
・
理事会は、改訂したPS、VVSおよびPCPにおける実施計画に同意した。実施計画は2015
年4月1日より施行され、本会合にて提案された経過措置が含まれている。また、PS、
VVSおよびPCPのさらなる改訂に関して、文章の改訂頻度を可能な限り年に1回までと
することに同意した。
・
理事会は、環境十全性および関係者の協議を確保しつつ、プロジェクト参加者による
CDMプロジェクト活動の自主的取り消しを許可する手続きの策定を進め、CMP11に対
してその結果を報告する必要性を指摘した議長の口頭報告を踏まえ、CMPに対して、
CDMプロジェクト活動の自主的取り消し手続きの策定作業の必要性を勧告することを
同意した。また、登録解除プロジェクトによる再登録の要求を受取った際、それが可
能となる手続きを検討することに同意した。
3.3 政策課題
・
理事会は、事務局による「追加性の立証およびベースラインの選択のためのE - 政策分
析の適用」に関係する作業結果について検討し、継続して審議していくことに同意し
た。また、事務局に対して、E - 便益年数をパラメーターとして設定した場合に、実際
のプロジェクト活動における追加性が認められる範囲について説明する分析の準備を
要請した。さらに、この分析の終了後、E - 問題と分析、適切であれば関連する有益な
情報に関する適切な説明を網羅した統合文書を準備し理事会会合に提出するよう求め
た。理事会は、複雑な論点をわかりやすく説明するこの統合文書を公表すること、そ
して、さらに議論を促していくことに同意した。
4.1 フォーラムと関係者
・
理事会はDNAフォーラムとビデオ会議を行い、DNAフォーラム委員長であるMalin
Ahlberg氏より報告された以下の意見を受けた。
(a) DNAは、CERへの需要が低い水準に留まっている状況について非常に懸念してお
り、野心的なGHG排出削減目標によって今後2年以内に炭素市場が活性化するこ
とに期待している。
(b) DNAは、CDMが2020年以前と同時に2020年以降における緩和への取組みにおい
て重要な役割を果たし、過去10年間に得られた知識・知見は将来のメカニズムに
おいても活用されるものであると信じている。
- 51 -
(c) DNAは、自主的約束草案(INDC)の目標達成に向けた各国の取組みを支援する
上で果たしうる役割や、国や地域内における可能な利用法などに関して理事会に
おいて検討することを提案した10。
(d) RCC (Regional Collaboration Centres)は重要な役割を果たしており、その活動は
他の排出削減行動に対しても拡大していくべきである。
(e) DNA 間の意見交換のためプラットフォームとして、CMP と並行して開催される
地域的・国際的なDNA会合の重要である。
(f) DNAは自国の領域内のCDMプロジェクトによる持続可能な発展への便益に関す
るモニタリングについて支援を受けることに関心が有するとともに、理事会に対
してトップダウンによる標準化ベースラインのさらなる開発を求めた。
・
上記のAhlberg氏の報告に対して理事会メンバーとの質疑応答が行われた。この中で、
Ahlberg氏は、RCCの役割の拡大によってCDMの精神が維持され、市場とDNAに自信
をもたらし、これ以上の制度上の知識の損失が回避されるだろうとの考え方を明らか
にした。同氏は、さらにRCCは、各国の緩和戦略においてCDMが適用される分野を特
定することでCDMを促進し続けることができる点も指摘した。DNAフォーラムの共同
議長もまた、いくつかのDNAはNAMAsや、その他の国内の緩和に向けた取組みに、現
時点までにいまだに実施に至っていないCDMプロジェクトを組み込んでいる現状を報
告した。これらコメントに対して、議長は、DNAには、いまだに持続可能な開発便益
のモニタリングのための自主的ガイダンスツールの開発の際しての支援のニーズがあ
ることから、そのような支援について、より積極的に公式な要請を行うよう提案した。
・
DOE/AIEのフォーラム議長であるWerner Betzenbichler氏とビデオ会議を行い、以下
の意見を受けた。
(a) 費用効果確保のために初めてビデオ会議にて開催された直近のDOE/AIEフォー
ラム会議について、肯定的な見解が示された
(b)第70回CDM-AP会合において実施された直接対話の有用性と、特に使用頻度の低
い部門領域の認定を維持や認定費用など、幾つかの主要な論点が指摘された。
(c)本会合の議題についても幾つかのコメントが示された。特に、CDM監査チームの
任命、DOEの審査の頻度・タイミング・回数、様々な規制や文書の改訂、利害関
係者との直接対話の様式と手続き、PS、VVS、PCPについてコメントがなされた。
(d)DOE/AIEフォーラム2015には不確実性があることが強調された。CDM市場の低
迷、特にCDMやPoAプロジェクト数の停滞の観点から、継続した支援が求められ
た。
10
2020 年以降の国際的な枠組みにおいて各国が示す温暖化対策の目標。
- 52 -
<参考>
表:第 81 回 CDM 理事会参加メンバー
地域区分
欧州他
アフリカ
アジア
東欧
中南米
AOSIS
非附属書Ⅰ国
理事
理事代理
Mr. Martin Enderlin
Mr. Olivier Kassi
スイス
欧州委員会
Mr. Tosi Mpanu-Mpanu
Mr. Kadio Ahossane
コンゴ民主共和国
コートジボアール
Ms. Laksmi Dhewanthi
Mr. Hussein Badarin
インドネシア
ヨルダン
Ms. Natalie Kushko
Ms. Diana Harutyunyan
ウクライナ
アルメニア
Mr. Daniel Ortega-Pacheco
Mr. Eduardo Calvo
エクアドル
ペルー
●Mr. Hugh Sealy
Mr. Amjad Abdulla
グラナダ
モルディブ
Mr. Washington Zhakata
Mr. Qazi Kholiquzzaman Ahmad
ジンバブエ
バングラディシュ
Mr. Jose Miguez
Mr. Maosheng Duan
ブラジル
中国
Mr. Frank Wolke
附属書Ⅰ国
ドイツ
空席
○Mr. Lambert Schneider
Mr. Kazunari Kainou
ドイツ
日本
注)
・ ●議長、○副議長。1年ごとに、附属書Ⅰ国・非附属書Ⅰ国からの理事が交替で務める。
・ 網掛けのメンバーは今次会合欠席。
・ 任期は、改選の翌年の最初の CDM 理事会まで。理事は連続最大 2 期まで、理事代理は任期の制限は
ない。
・ 理事メンバーは国連定義の 5 地域から 5 名、附属書Ⅰ国から 2 名、非附属書Ⅰ国から 2 名、島嶼国か
ら 1 名の代表として就任。
- 53 -
第 82 回 CDM 理事会報告
第 82 回 CDM 理事会(EB82)が 2015 年 2 月 16 日から 2 月 20 日にスイスのジュネー
ブで開催された。
1.統治と管理
1.1 戦略的計画と方向性
・
理事会は、2014年12月にペルーで開催されたCMP10において採択されたCDMと、
CDMに関連する議題、特に、CMPによる決定事項について留意した。2015年2月にジ
ュネーブで開催された「強化された行動のためのダーバンプラットフォーム特別作業
部会」の下での新たな交渉文書についても留意した。
・
理事会は、Hugh Sealy氏による各国政府代表とTEM(Technical Expert Meeting)関係
者との情報交換について、最新情報の提供を受けた。この情報交換は、2015年2月10
日にジュネーブで開催されたWorkstream 2 の検討作業の一部として実施された。理
事会は、CDMが2020年以前の更なる排出削減に向けた取組みにおいて確固とした役割
を担っていること、特に自主的なCERの取消しによる貢献と、GCFが融資対象とする
プロジェクトのポートフォリオ候補となりうることを指摘したHugh Sealy氏のメッセ
ージを留意した。今後、重要となる課題としては、2014年のTEMの活動の中で、既に
明確化された対応が求められている領域に焦点を絞ること、UNFCCCの様々な機関や
技術的審査手続き(Technical Examination Process)における協力・相乗効果をめざ
すことなどが挙げられた。理事会は事務局が議長と協議の上でADPとのさらなる情報
交換を行うための最良の方法を模索することに合意した。
・
理事会は、CMP10で決定された京都メカニズムの下での認定手続きの相乗効果に関す
る検討を行った。その上で、理事会は合同認定委員会の設置を、この問題において相
乗効果を発揮する最も適切な方法ではないとの見解を示した。CMPとJISCの要望に対
して、理事会はJISCに対してCMP10の決定事項を考慮した実施可能な協力の在り方を
さらに検討するよう要請した。この点に関して、議長と副議長に、JISCと協議を行う
ことを認めた。
・
理事会は世界の炭素価格メカニズムの最新動向と、その中でのCDMの果たしうる役割
についての検討結果を含んだ炭素市場と政策の最新動向に関する報告を検討した。理
事会は、これに関するさらなる調査と報告を行うよう事務局に要請した。また、この
際には、最近の政策動向だけではなく、CDMに関連するトピックも分析に含めるよう
求めた。
・
理事会はプロジェクトの提出、登録および発行プロセスの簡素化とCDMプロセスの更
なる迅速化の可能性に関するコンセプトノートを検討し、理事会のガイダンスに従う
- 54 -
ことを条件に、コンセプトノートに含まれていた提案について合意した。理事会は、
プロジェクトサイクルを優先順位においた包括的なアプローチが必要であることを確
認し、事務局に対して本会合の後に対処の必要があるCDMの規制と運用について、一
般からの見解を募集するよう求めた。提案された対処が求められる課題および修正に
関する幾つかのアイデアをまとめたコンセプトノートをEB84(2015年5月開催予定)
までに準備するよう要請した。さらに、提案されたCDMの簡素化および迅速化に関す
る利害関係者との協議のためのワークショップ開催の必要性も踏まえ、EB84において
簡素化と迅速化について決定を下すことを合意した。同時に、理事会は、今年は個別
の規制についての検討を行う一方で、2016年には、他の論点、例えばCDMプロジェク
ト基準(PS)、CDM有効化審査と検証に係る基準(VVS)、CDMプロジェクトサイ
クル基準(PCP)の完全改訂などを検討する意向を示した。
・
理事会は主要パフォーマンス指標(KPIs)に関するプロジェクトコンセプトノートの
検討を行い、その結果、事務局に対して、理事の小規模グループによる協議を行った
後、KPIに関するコンセプトノートを作成するよう要請した。この指標は理事会による
制度のパフォーマンスの効率的・効果的な評価を支援し、その中でも特に事務局によ
る制度の運用に係る効率的・効果的なパフォーマンスの影響に焦点を当てる。この作
業において他の民間の機関あるいは公的機関において用いられたKPIsの実績について
も考慮を払うものとする。
・
理事会は「休眠プロジェクト」に対して支援を行うプロジェクトコンセプトノートに
関して検討した。そして、この問題に関して、プロジェクトの分類を行うべきではな
いこと、および提案された統計モデルの開発については作業を継続しないことを合意
した。この作業による予想される成果には以下の項目が含まれる。
(a) 事実情報:例えばCDM登録プロジェクトにおいて少なくとも1年以上発行
の要求がない活動リスト
(b)中立的な調査結果:登録された全てのCDMプロジェクト開発事業者に送付
される質問票への回答について、仮定、解釈、分類を除いた中立的な処理を
行った結果。
理事会は、プロジェクト開発事業者のニーズに応じた金融機関からの支援につなげる
ためにコンセプトノートの作成を事務局に要請した。このコンセプトノートには、質
問内容と調査結果を公表する際のフォーマット等を含んだプロジェクト開発事業者へ
の調査計画も含まれる。
- 55 -
1.2 理事会の業務を補助するための組織・機関
・
本会合において、以下の通り人事を決定した。
・
信認パネル 議長
・
方法論パネル 議長 Mr. Hugh Sealy 、副議長 Mr. Frank Wolke
・
小規模CDM WG 議長 Ms. Diana Harutyunyan 、副議長 Mr. Washington Zhakata
・
植林再植林WG 議長Mr. Joseph Amougou 、副議長 Mr. Olivier Kassi
・
CCSWG 議長Mr. José Miguez 、副議長 Mr. Kazunari Kainou
・
予算委員会共同議長 Mr. Balisi Gopolang
・
予算委員会委員 (今回より発足)
Mr. Martin Enderlin 、副議長 Mr. Arthur Rolle
Mr. Kazunari Kainou
Mr. José Miguez 、Mr.Daegyun Oh 、 Mr. Martin Enderlin 、Mr. Olivier Kassi
2.個別案件
2.1 認定
・
理事会は、以下の事業者に係る自主的取消しに関する通知を了承した(パラ31)
(a) E-0002 「株式会社 JACO CDM(JACO)」全領域の認定取消し
(b) E-0003 「DNV Climate Change Services AS (DNV)」 部門領域2,4,6-12,15
(c) E-0040 「Korea Environment Corporation (KECO)」全領域の認定取消し
(d) E-0045 「Ernst & Young Associés (France) (EYG)」全領域の認定取消し
(e) E-0049 「Indian Council of Forestry Research and Education (I.C.F.R.E) 全領域
の認定取消し
・
理事会は、監察下にある E-0058 「Foundation for Industrial Development (MASCI)」
について検討し、遅延した定期的な監視評価の完了を保留し、現在の状況を継続する
ことで合意した。また、定期的な監視評価の期限を2015年4月末までとすることに合意
した。
2.2 プログラム活動(PoA)
・
2015年2月20日までに277件のPoAが登録(CPAは全1,840件)。
・
2015年2月20日までにPoAに係るCERが2,468,146トン発行された。
2.3 登録
・
2015年2月20日までに7,579件のCDMプロジェクトが登録された。
2.4 発行
・
2015年2月20日までに15億3960万8782トンのCERが発行された。
- 56 -
3.規制事項
3.1 基準/ツール
・
理事会は、標準化ベースラインの枠組みのさらなる開発のためのプロジェクトコンセ
プトノートを検討し、Annex 6に含まれる作業計画を採択した。標準化方法論で採用さ
れる技術の費用と効率に関するデータベース開発はDNAの意向を重視したものとし、
各DNAの要望は、関連するアプローチと費用に関する情報とともに、理事会によって
検討されるべきであることを強調した。さらに、事務局に対して、技術の費用と効率
に係るデータベースに関する情報ノートを準備するよう要請した。この情報ノートで
は、標準化ベースラインの承認のためにDNAによって現在、提出されているデータと
異なるデータが必要とされている理由について説明することが求められている。
・
理事会はCDMの適用拡大のため、新たな方法論の開発に関するプロジェクトコンセプ
トノートの検討を行い、Annex 7 に記載されるプロジェクトの作業計画を採択した。
理事会は航空、再生可能エネルギー、電化と家庭向けのエネルギー供給の領域におけ
る方法論の開発に合意した。都市、交通、バイオ燃料および農業に関しては、理事会
は、方法論開発の前に、より明確な領域について検討するためにコンセプトノートを
入念に準備するよう事務局に要請した。

理事会は、取引費用削減のためのデジタル化を含んだ方法論の簡素化に関するプロジ
ェクトコンセプトノートの検討を行い、Annex 8 に記載されるプロジェクトの作業計
画を採択した。同時に、すでに実施された作業や方法論に組み込まれたアプローチ、
教訓、知見、今後、実施可能な代替可能なアプローチを含め、総合的に追加性を精査
するためのコンセプトノートの準備を事務局に要請した(可能であれば、特定の方法
論の修正例も示す)。このプロセスの中で、事務局にDOEやプロジェクト参加者およ
び外部専門家などの利害関係者から聞き取り・情報交換を行うよう指示した。
3.2 手続き
・
理事会は、利害関係者との直接的なコミュニケーションに関する手続きの改正を
Annex9のように採択した。
・
理事会は、CDMプロジェクトおよびPoAの持続可能な発展のコベネフィットの自主的
モニタリングに関するコンセプトノートを検討し、プロジェクト参加者と調整管理主
体は、自主的な判断に基づいて自発的に実施を希望することができることを確認した。
プロジェクト参加者もしくは調整管理主体は、モニタリング結果の報告頻度や個別の
モニタリングについて第三者検証を実施するかを含め、持続可能な発展とコベネフィ
ットに関するモニタリングの実施計画を示す文書を提出することができる。同時に、
理事会は、もし、持続可能な発展とコベネフィットに関するモニタリング検証結果に
ついて何らかのコメントがなされた場合でも、これらはCERの発行に関するDOEによ
- 57 -
る最終的な検証意見あるいは理事会の最終判断と影響しないことを確認した。理事会
はさらにPS、VVS、PCPの次回改訂において上記内容を反映させることに合意した。
・
理事会はPS、VVS、PCPの改訂に関して、Annex 13~15の通り、それぞれ採択した。
この改訂は、CDMプロジェクトの登録取消手続きの導入およびCDMの新規植林/再植
林プロジェクトにおける検証のタイミングの柔軟性に係るCMP10の決定事項を反映し
ている。理事会は、さらに、改訂したバージョン9.0のPS、VVS、PCPは2015年4月1
日より適用され、それまでは経過措置としてEB81で合意されたバージョン8.0を適用す
ることに合意した。
・
理事会は、事務局に(登録取消手続きを行ったCDMプロジェクトについての)再登録
手続きについてコンセプトノートを、将来の理事会において検討するために準備する
よう要請した。
- 58 -
<参考>
表:第 82 回 CDM 理事会参加メンバー
地域区分
欧州他
アフリカ
アジア
東欧
中南米
AOSIS
理事
理事代理
Mr. Martin Enderlin
Mr. Olivier Kassi
スイス
欧州委員会
Mr. Balisi Gopolang
Mr. Joseph Amougou
ボツワナ
カメルーン
Mr. Muhammad Tariq
Mr. Daegyun Oh
パキスタン
韓国
Ms. Natalie Kushko
Ms. Diana Harutyunyan
ウクライナ
アルメニア
○Mr. Eduardo Calvo
Mr. Arthur Rolle
ペルー
バハマ
Mr. Hugh Sealy
Mr. Amjad Abdulla
グラナダ
モルディブ
Mr. Washington Zhakata
非附属書Ⅰ国
附属書Ⅰ国
ジンバブエ
暫定空席
Mr. Jose Miguez
Mr. Maosheng Duan
ブラジル
中国
Mr. Frank Wolke
Mr. Piotr Dombrowicki
ドイツ
ポーランド
●Mr. Lambert Schneider
Mr. Kazunari Kainou
ドイツ
日本
注)
・ ●議長、○副議長。1年ごとに、附属書Ⅰ国・非附属書Ⅰ国からの理事が交替で務める。
・ 網掛けのメンバーは今次会合欠席。
・ 任期は、改選の翌年の最初の CDM 理事会まで。理事は連続最大 2 期まで、理事代理は任期の制限は
ない。
・ 理事メンバーは国連定義の 5 地域から 5 名、附属書Ⅰ国から 2 名、非附属書Ⅰ国から 2 名、島嶼国か
ら 1 名の代表として就任。
- 59 -
COP20/CMP10 CDMEB Q&A セッション
CMP10 が開催されたリマにおいて、2014 年 12 月 1 日に CDMEB の Q&A セッションが
開催された。例年、CDM 理事会の今年の活動報告と参加者との質疑応答を行ってきたが、
今回は、質疑応答ではなく、CDM 理事会の活動報告の後、議長以外の EB メンバーや、CDM
に知見を有する専門家を交えてのパネルディスカッションを行った。内容については、以
下の通り。
(1)2014 年の CDM 理事会の活動について
CDM 理事会議長から、2014 年の理事会の活動報告がなされる。その中では、ニューヨ
ークで開催された国連の温暖化サミットに合わせて理事会を開催するとともに、合わせて
政府や民間の関係者との協議を行うなど対外的に活発な活動を展開し、CDM の新たな活用
方法(CDM の途上国国内での利用や、自主的取消しの活用など)についても検討したこと
が報告された。
さらに、これまで実施してきた、規則の制定・改正(自主的な持続可能な発展ツールの
作成、A/R プロジェクトの検証手続き改正など)や新たな方法論や標準化方法論の承認も行
ったものの需要の減少が CDM 開発の拡大を阻害していることが、今後の大きな課題である
ことが指摘された(予算を大幅に削減する要因となっている)。
このような課題を有するものの、議長は CDM について、国際的な機関のもとで、合意
された基準、手続きを実施してきた経験を有する稀有な制度であり、今後も国際社会にお
いて、温暖化対策を実施する上での重要な役割を担うことができるとの見解を示した。
(2)パネル
業界団体(IETA)、民間企業、GCF の理事、世銀のスタッフなど、CDM について深い
知見を有する専門家と理事(議長、ミゲス理事、シュナイダー理事)がパネルディスカッ
ションを行った。
パネルディスカッションの議論の中では、市場メカニズムが費用対効果の高い排出削減
を促し、社会全体での排出削減費用を抑えることを可能にするとともに、CDM は国際的に
確立した制度となっており、今後も様々な国(途上国を含む)における温暖化対策に大き
な影響を与える可能性が指摘された。そして、将来的には Green Climate Fund (GCF)
のような国際的な金融機関による RBF(Result Based Finance)を実施する際での活用や、
途上国・新興国内での活用などの可能性があることも指摘された。
新たな活用に関連して、京都議定書で規定されている CDM の目的を踏まえて新たな活
用法を検討するべきとの見解も示された。京都議定書では CDM について、先進国の削減目
標の達成を一つの目的とされるとともに、途上国における持続可能な発展に貢献すること
- 60 -
も目的に掲げられいる一方で、これまでは先進国の目標達成が重視されてきた。参加者か
らは、今後、ホスト国(途上国)の持続可能な発展に貢献する観点から、CDM の新たな活
用法を検討することもありうるのではないかとのの質問がなされた。これに対して、パネ
ルからは、企業が積極的に持続可能な発展に取り組んでいる事例が紹介されるとともに、
買手による選択(どのような種類のクレジットを購入するか)が大きな影響を与えうるこ
とが指摘された。一方、持続可能性については各国の国内状況が異なるために、国際的に
共通な基準などを策定することが難しいことも指摘された。
このように新たな活用方法の可能性があることが指摘されている一報で、現状では、価
格が暴落し一向に回復する兆しが見えないためにプロジェクト開発を断念する事業者も多
いことが指摘された。特に、アフリカでは、これまで様々な形で能力開発支援を行い人材
が育ってきたが、実際のプロジェクトの開発の段階に至って、プロジェクトの買手がいな
い事態に直面していることが指摘された。また、依然として、今後の市場動向について強
い懸念があることから、DOE の市場からの撤退などの事態に陥っており、新たな需要を生
み出す必要性が指摘された。新たな需要の一つとして、途上国の NAMA で示された目標達
成のためにも CDM の利用を認めるべきではないか、との参加者の声もあがった。
- 61 -
- 62 -
第 2 章 JI 事業審議に関する調査・分析、課題の抽出、
今後の在り方についての検討
- 63 -
- 64 -
1.
2014 年度の JI 関連の状況分析と JI 監督委員会の検討動向
(1). プロジェクト動向分析
JI プロジェクトについては、2015 年 2 月 1 日時点において、トラック 1 で 555 件、ト
ラック 2 で 49 件のプロジェクトが登録済みとなっている 。また JI のクレジット(ERU)
の発行数をみると、第一約束期間が終了する 2012 年末前後に、ホスト国がクレジットを発
行できるスキームであるトラック 1 から大量の発行があり、6 億 tCO2e 程度にまで急激に
上昇した。その後、2013 年以降は発行数が大幅に減少し、さらに 2014 年 5 月以降は発行
されていない。
これは、ERU の価格が 1 ユーロ/tCO2e 以下にまで低下したこと、第二約束期間の AAU
が発行されるまでの移行期間は第二約束期間に有効な ERU が発行できないことなどが要
因である。2015 年 2 月末時点での発行数は約 8.6 億 tCO2e で、このうち約 98%がトラッ
ク 1 によるものとなっている。
国別の発行数を見ると、ウクライナが 59%、ロシアが 32%を発行しており、この 2 カ国
で 9 割強を占めている。
また、発行済み ERU の種類を見ると、
メタン排出削減関連が 55.0%
と最も多く、省エネルギー関連が 24.0%、産業ガスが 14.8%となっている。
図 4:ERU 発行数
900.0
800.0
700.0
MERUs
600.0
500.0
Total
400.0
Track 1
300.0
Track 2
200.0
100.0
Jan-09
Apr-09
Jul-09
Oct-09
Jan-10
Apr-10
Jul-10
Oct-10
Jan-11
Apr-11
Jul-11
Oct-11
Jan-12
Apr-12
Jul-12
Oct-12
Jan-13
Apr-13
Jul-13
Oct-13
Jan-14
Apr-14
Jul-14
Oct-14
Jan-15
0.0
(出典)UNEP RISOE center の JI pipeline より
- 65 -
図 5:国別の ERU 発行量
フランス
9.2MtCO2(1.1%)
ルーマニア
8.9MtCO2(1.0%)
ドイツ
13.5MtCO2(1.6%)
その他
(リトアニア、ハンガリー、
ブルガリア、ニュージー
ランド、スウェーデン、
フィンランド、エストニア、
チェコ、ベルギー)
ポーランド
20.0MtCO2(2.3%)
ロシア
265.2MtCO2(30.7%)
ウクライナ
516.7MtCO2(59.8%)
(出典)UNEP RISOE center の JI pipeline
図 6:発行済み ERU の種類
Fuel switch
2.88%
Energy efficiency
23.97%
Renewables
2.70%
Afforestation, Reforestation & Avoided deforestation
HFCs, PFCs & 0.59%
N2O reduction
14.81%
CH4 reduction & Cement & Coal mine/bed & Fugitive
55.05%
(出典)UNEP RISOE center の JI pipeline
- 66 -
図 7 新規 JI プロジェクト数の推移
(出典)UNEP RISO の JI pipeline
(2).
第 10 回京都議定書締約国会合(CMP10)における決定
①CMP における決定
JI に関しては、今回の CMP においては、新たな決定はなされず、CMP から JISC 及び
事務局に対して幾つかの作業の要請がなされるに留まった。JISC に対しては SBI のもとで
行われている JI ガイドラインのレビューについて、JISC として見解をまとめるように要
請されるとともに、京都議定書の第 2 約束期間の追加期間が終了するまで目標達成に加盟
国による利用を可能とするように十分なインフラと能力を維持するように求められている。
事務局に対しては費用削減や効率化に関するテクニカルペーパーの作成を要請している。
また、各国に対して JI プロジェクトをホスト国における目標達成にどのように利用したの
か具体的な例を、3 月までに事務局に対して提出することが招請されている。
②認定手続きの統合に関する決定
2014 年の 6 月に開催された第 40 回補助機関会合(SBI40)においては、CDM 理事会
と JI 監督委員会に対して二つの制度の下での民間の第三者検証機関の認定手続きを統一す
るための検討作業を行う合同認定委員会を設けることを検討することが要請され、この検
討作業では特に、合同認定委員会の権限、規制の枠組について検討し、その結果を 2015 年
に開催される CMP11 に報告することが求められていた。
当初は、この SBI40 における合意内容が、そのまま CMP10 においても採択されるもの
と予想されていたが、上記のように 12 月 11 日の CMP の全体会合において採択直前に、
ブラジルから修正案が提出された。非公式な協議の結果、合同認定委員会を設けることを
検討することのみが CDM 理事会及び JI 監督委員会に求められ、SBI40 で合意されていた
具体的な検討項目や検討結果の報告時期などに関する文言は削除された。
- 67 -
(3). JI の審査体制のあり方、審査手続きの効率化、改善の方向性
JI については、前述の通り、クレジットである ERU の価格低下と第二約束期間の初期
割当量(AAU)が未発行であることから 2013 年に入り新規プロジェクトは激減し、2014
年以降新規プロジェクトは無いため、審査手続きについて、課題は指摘されていない。
JI の審査手続きにおいては、二つの手続きが併存している JI の審査手続きを統合するこ
と、あるいは CDM との手続きとの統合が現在、課題となっている。CDM では CDM がプ
ロジェクトの登録、CER の発行を一元的に管理しているが、JI の審査手続きにはトラック
1 とトラック 2 の 2 種類があり、ホスト国が京都メカニズム参加資格を有している場合は、
クレジットである ERU の発行をホスト国が決定するトラック 1 を適用できる。これに対し、
トラック 2 では JI の審査機関である AIE がプロジェクトの有効性決定や排出削減量の検証
を行う。
審査の所掌
・JI(トラック 1):
ホスト国
・JI(トラック 2):
認定独立組織(AIE)
JI の審査手続きに対しては、(a)トラック 2 の規模に対して独立した審査手続きおよび審
査機関を維持することで効率性が悪く高コストとなること、(b)トラック 1 ではホスト国が
審査するため透明性が確保できないこと、といった課題が挙げられており、解決策として
以下のような方法が検討されている。
・(a)の課題に対しては、審査手続きを CDM と共通化または統一化する。
・(b)の課題に対しては、トラック 1 とトラック 2 の共通化または統一化を図る。
(a)の審査手続きの CDM との共通化または統一化については、CDM の認定手続きを採用
しする方向で JISC において合意がなされた。ただし、現在審査業務を行っている AIE や
DOE への影響が非常に大きいこと、また変更には CMP の決定が必要とされるが、2013 年
11 月に開催された第 9 回京都議定書締約国会合(CMP9)では決定されず、さらに 2014 年の
CMP10 においても上記の通り決定されなかったため、今後引き続き検討が継続される。
(b)については、現在プロジェクト提出がゼロであり、変更には相当なコストも予想され
るため、決定については JISC で先延ばしとなっている。
- 68 -
2.各 JI 監督委員会での主なポイント
<JISC34>
○ 審査機関の認定手続き
JISC において、AIE の認定制度と CDM の DOE 認定制度の統合に向けた議論の末、
以下の通り SBI へ提言がなされた。

現在、JI と CDM の制度に差異はあるものの、JI における AIE の認定と CDM に
おける DOE の認定は基本的に同じ原則で行われている。

また、両者の認定制度を一元化することで、規模の経済の効果で効率性を挙げるこ
とができる。このため、JI の制度の特徴を鑑みた修正を加えつつ、基本的に CDM
の認定制度を JI に認定する形で両者の統合をはかるべきである。

このために、合同認定委員会(joint accreditation committee)を設置することを提
案する。形式的な認定権限は CDMEB と JISC のそれぞれに帰属するが、実際的な
認定業務は合同認定員会で行うものとする。
○ 管理計画の採択
2014 年の JISC の管理計画を採択した。
○ JI 市場について
事務局及び DOE/AIE フォーラムの代表から JI 市場について以下の通り説明があった。

2013 年は PDD は 4 件のみ審査され、2014 年にに至っては 1 件も審査が行われて
いない。

2016 年まで京都議定書第二約束期間の AAU が発行されないため、ERU も発行さ
れない。

2020 年までの ERU の需要は供給量の 3 分の 1 程度となる見込みである。
現在の ERU の価格は 0.11 ユーロ程度、CER の価格は 0.24 ユーロ程度となって
おり、極めて低水準で推移している。
<JISC35>
○
AIE の自主的撤退
以下の AIE が審査から自主的に撤退した。

E-0002 Japan Quality Assurance Organization (JQA);

E-0004 Lloyd's Register Quality Assurance Ltd. (LRQA);

E-0005 JACO CDM., LTD (JACO);

E-0007 Bureau Veritas Certification Holding SAS (BVC Holding SAS);
- 69 -

E-0008 TÜV SÜD Industrie Service GmbH (TÜV-SÜD);

E-0014 KPMG Advisory N.V. (KPMG).
○ JIプロジェクトサイクルの改善について
JIのトラック1とトラック2の統合を含むJIプロジェクトサイクルの改善について議論が
なされた。しかしながら、現在のプロジェクト関連の提出物の少なさや予想されるコス
トに鑑みて、変更を延期することとし、引き続き議論していくこととなった。
○ CMP への提案
改訂 JI ガイドラインへの移行を円滑にするため CMP に以下の提言をおこなった。

改訂 JI ガイドライン採択後 12 ヶ月間の移行期間を設定

改訂 JI ガイドラインへの関係国の協力の要請

移行に伴い既存プロジェクト等が円滑に移行できるようにするプロセスの提供

改訂時の既存 AIE の自動的移行

改訂後の JISC の業務の効率化

改訂後の運営資金の確保
- 70 -
付録:2013 年度の JI 監督委員会報告
第 34 回 JI(共同実施)監督委員会
報告
第 34 回 JI 監督委員会(Joint Implementation Supervisory Committee:JISC)会合
が、ボン(ドイツ)の UN Campus を会場として 3 月 17 日(月)~18 日(火)に開催さ
れた。本会合では、今後の JI 審査機関の認定システムのあり方について検討を行い、部分
的に CDM の認定システムを使用することで合意した。また、このために CDM 理事会との
対話を開始することにも合意している。
1.アジェンダの採択[アジェンダ 1]
JISC は予定されていたアジェンダを採択した。
2.メンバーシップ[アジェンダ 2]
JISC は、CMP9 で選出された新しい委員および代理委員を受け入れた上で、Mr. Piotr
Dombrowicki を議長、Ms. Julia Justo Soto を副議長に選出した。期間は 2015 年の第 1 回
JISC 会合までとなる。
議長は出席者が規定の定足数11に達していることを確認し、出席している各委員/委員
代理は、今回の議題と利害関係を有さないことを宣誓した。
また JISC はこの報告書の附属書 1『JISC の下でのパネルおよび作業グループの一般ガ
イドライン(General guidelines for panels and working groups under the Joint Implementation
Supervisory Committee)』12および附属書 2『JI 認定パネル設置に関する委託事項(Terms
of reference for the establishment of the Joint Implementation Accreditation Panel)』13を修正版と
して採択し、代理委員が JI 認定パネルの議長を行うことを承認した。
JISC は、Mr. Benoît Leguet を JI 認定パネルの議長として、Mr.Carlos Fuller を副議長
として選出した。また議長と副議長は、附属書 I 国の委員または代理委員と、非附属書 I 国
の委員または代理委員の間で 1 年毎に交代することで合意した。
3.業務実施計画(ワークプラン)
[アジェンダ 3]
3.1 審査機関(Independent Entity)の認定
JISCは、JIの審査機関の認定システムの将来的な開発に関するコンセプトノート(議事
資料の附属書1)について検討を行い、部分的にCDMの認定システムを使用するオプショ
11
JI ガイドライン第 14 条
JISC 34 Annex 1, General terms of reference of panels and working groups under the Joint
Implementation Supervisory Committee.
13 JISC 34 Annex 2, Terms of reference of the establishment of the Joint Implementation
Accreditation Panel.
12
- 71 -
ン2およびその実行計画に合意した。また、認定に関して共通した決定を行うためにCDM
理事会との対話を開始することに合意し、事務局に対して、この対話に向けた進捗を次回
会合で説明するよう要請した。
JIの認定システムをCDMに合わせることに関して、2014年6月の第40回SBI(実施に関
する補助機関会合)で検討するための提言とすることで合意した。
(この報告書の附属書314)
事務局からは、SBIに向けた公式文書を準備することをJISCに報告した。
JISCは、JI認定パネルの委員の事務所の期間を1年延長することで合意した。
3.2 有効性決定および検証報告書
JI トラック 2 は、開始以来 332 件の PDD(プロジェクト設計書)と 1 件の PoA-DD(プ
ログラム活動による CDM の設計書)が提出され、UNFCCC の JI ウェブサイトで公開さ
れている。全部で 52 件の決定が同じく UNFCCC のウェブサイトで公開されている。
(a) 51 件が完了
(b) 1 件は拒絶
また、129 件の検証結果が UNFCCC の JI ウェブサイトに掲載されており、そのうち 128
件は JI ガイドラインに沿って検証が完了し、1 件が取り下げられている。
指定フォーカルポイント(DFPs)および各国の JI プロジェクトの認可に対するガイド
ラインと手順書の状況を確認した。37 の附属書 I 国15がそれぞれの指定フォーカルポイン
トを申告し、このうち 32 カ国16は、JI プロジェクトの認可のためのガイドラインと手順書
を提出済である。
JI トラック1については、597 件のプロジェクトが UNFCCC のウェブサイトに掲載さ
れ、そのうち 548 件はプロジェクト認定書を受領し、国際取引ログに提出されている。
3.3 JI の作業のための管理計画と資金
JISC は、2014 年から 2022 年の期間に対する資金戦略について、コスト削減策と最低限
の運営レベル、予防的対策に関する分析に基づいて検討した。2014-2015 の業務計画およ
び管理計画に基づいて検討を継続するとともに、今後も外部環境の変化に応じて毎年資金
14
JISC 34 Annex 3, Elaborated recommendation to the SBI on the accreditation system for JI aligned
with that of the CDM.
15 オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、
デンマーク、エストニア、EC、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、
日本、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノ
ルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェ
ーデン、スイス、ウクライナ、イギリス
16 オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、エストニ
ア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リヒテ
ンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ポーランド、ポルトガル、
ルーマニア、ロシア、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、ウクライナ、イギリス
- 72 -
戦略を見直して採択することで合意した。
JISC はそのビジョンと 3 つの目標を再確認した上で、この報告書の附属書 4 として
2014-2015 の業務計画および管理計画を採択した17。
JISC は 2014 年の作業計画を承認した。また、今後の JISC で新しく対応が求められる
問題が生じた場合は更新していくよう事務局に要請した18。
4.その他の事項[アジェンダ 4]
4.1 CMP によるガイダンス
JISCは、『京都議定書第6条の実施に関するガイダンス』に関する第9回CMPの決定と、
COPおよびCMPにおける市場アプローチに関するその他の決定および議論の進展につい
て留意した。特に、JIの認定システムをCDMと統一化することに関して具体化した提案を
提出するよう要請された点について留意した。
4.2 利害関係者、政府間および非政府組織との関係
DOE/AIE フォーラムの共同議長である Werner Betzenbichler 氏からビデオ会議を通じ
て、最近の市場動向について、現在、認定審査機関における JI に関する活動がみられない
ことが報告された。フォーラム議長は JI と CDM の認定システムの共通化に賛成の意向を
示し、共通の基準や手順を用いることによるコスト削減をもたらすものであることを強調
した。また認定審査機関の認定は有効性審査/決定または検証、技術分野、規制枠組みの 3
層マトリックスとすることを提案した。
JISC は登録オブザーバーとの非公式での意見交換を行った。JI ガイドラインの改定に対
して、JISC では既に全ての作業を実施して提案したにもかかわらず CMP では未だに採択
されない理由に関する質問が出された。この質問に対して JISC からは、時間的な制約のあ
る中で、SBI において JISC からの提案に基づいて、これまでに多くのガイドライン修正が
行われた。ただし、いまだに幾つかの論点で合意が得られていないものが残されており、
CMP10 において改正 JI ガイドラインが採択されることをめざして、2014 年 6 月のドイツ、
ボンでの SBI、12 月のペルー、リマにおいて議論が続けられるとの説明がなされた。今後
もこうした意見交換を継続する。第 35 回 JISC へのオブザーバー登録は 2014 年 9 月 2 日
までに行うこと。
4.3 その他
JISC は、2013 年 11 月のワルシャワでの会期中に、JISC と CDM 理事会の議長および
副議長による非公式対話が行われたことに留意し、今後も引き続き非公式対話を継続する
17
18
JISC 34 Annex 4, Joint implementation two-year business plan and management plan 2014–2015.
JISC 34 Annex 5, Joint Implementation Supervisory Committee workplan for 2014.
- 73 -
よう要請した。
JISC は、過去数カ月の炭素市場と各国の政策動向について留意した。2013 年 11 月のワ
ルシャワでの交渉成果、メキシコや南アフリカ、韓国などの炭素価格制度の開発進展、中
国での排出権取引市場の開始に加えて、欧州の取引市場の状況や豪州、ニュージーランド
における関連政策の動向についても留意した。
JISC は、電子的意思決定システムの活用に関する事務局の報告を検討し、既存のウェブ
システムではなく、電子メールを通じたシステム構築を事務局に要請した。
JISC は 2014 年の会議日程について合意し、次回会合は 2014 年 9 月 16-17 日にボンで
開催することとした19。また JI 認定パネルは 2014 年 8 月 25 日に CDM の認定パネルと合
わせて行う予定である。
5.閉会[アジェンダ 6]
議長が本会合の主な結論を要約して閉会した。
以上
19
JISC 34 Annex 6, Joint Implementation Supervisory Committee thirty-fifth meeting.
- 74 -
表:第 34 回 JI 監督委員会出席者(委員アルファベット順:20 名中 14 名出席)
委 員
委員代理
非附属書Ⅰ国
市場経済へ移行
中の附属書Ⅰ国
非附属書Ⅰ国
市場経済へ移行
中の附属書Ⅰ国
非附属書Ⅰ国
附属書Ⅰ国
附属書Ⅰ国
附属書Ⅰ国
市場経済へ移行
中の附属書Ⅰ国
小島開発途上国
Mr. Guoqiang Qian
中国
Mr. Mykhailo Chyzhenko
ウクライナ
Ms. Carola Borja
エクアドル(欠席)
Mr. Piotr Dombrowicki
ポーランド【議長】
Ms. Julia Justo Soto
Mr. Chebet Maikut
ウガンダ
Ms. Milya Dimitrova
ブルガリア
Mr.Carlos Fuller
ベリーズ
Mr. Yury Fedorov
ロシア(欠席)
ペルー【副議長】
Mr.Evans Njewa
マラウイ
Ms. Gertraud Wollansky
オーストリア
Mr. Konrad Raeschke-Kessler
ドイツ
Mr. Evgeny Sokolov
ロシア
Ms. Irina Voitekhovitch
ベラルーシ(欠席)
Mr. Derrick Oderson
バルバドス
Mr. Benoît Leguet
フランス(欠席)
Mr. Marko Berglund
フィンランド
Mr. Hiroki Kudo
日本(欠席)
Ms.Mihaela Smarandache
ルーマニア
Mr. Albert Williams
バヌアツ(欠席)
- 75 -
第 35 回 JI(共同実施)監督委員会
報告
概要
第 35 回共同実施監督委員会(Joint Implementation Supervisory Committee、以下 JISC)会
合が、ドイツ・ボンの UN Office を会場として 2014 年 9 月 16 日~17 日に開催された。
アジェンダ 1:アジェンダの採択と会議の構成
JISC はアジェンダを採択した。
アジェンダ 2
ガバナンスと管理事項
各委員及び委員代理は、自身と JISC の議題が利害関係を持つ可能性のある点に関する情
報を提出し、JISC はそれらを検討した。
アジェンダ 3
業務実施計画(ワークプラン)
[アジェンダ 3]
3.1 審査機関の認定
JISC は、第 31 回 JI 認定パネル(以下、JI-AP)が延期されてきた点と、JI-AP が複数の電
子媒体による認定評価の方法について検討した点を留意した。JISC は、JI-AP の経済的効率
性についてコメントした。
JISC は、下記の独立審査機関による認定の自主的撤退要請に関する JI-AP の通知に留意
した。
(a) E-0002 Japan Quality Assurance Organization (JQA);
(b) E-0004 Lloyd's Register Quality Assurance Ltd. (LRQA);
(c) E-0005 JACO CDM., LTD (JACO);
(d) E-0007 Bureau Veritas Certification Holding SAS (BVC Holding SAS);
(e) E-0008 TÜV SÜD Industrie Service GmbH (TÜV-SÜD);
(f) E-0014 KPMG Advisory N.V. (KPMG).
JISC は CDM 理事会と JISC の対話の進展状況を含む CDM 認定制度の利用についての報
告書について留意した。JISC は SBI 第 40 回会合の成果についても留意した。
アジェンダ 3.2 有効性決定と検証報告書
JISC は 2014 年 9 月 15 日付のトラック 2 のプロジェクト提出状況、有効性決定、そして
検証の状況について議論した。CMP 決定 9/CMP.1 の附属書(以下、JI ガイドライン)第 32
パラグラフに則り、トラック 2 手続きの開始以来、322 件のプロジェクト設計所(以下 PDD)
と 1 件のプログラム活動設計書(以下 PoA-DD)が提出され、UNFCCC の JI ウェブサイト
- 76 -
において公開されてきた。JI ガイドライン第 34 パラグラフに則り、合計 52 件の PDD が
UNFCCC の JI ウェブサイトにおいて公開された。そのうち 51 件が完了され、1 件が却下さ
れた。
JISC は、JI ガイドライン第 38 パラグラフ にに則り 130 の検証報告書が UNFCCC の JI
ウェブサイトにおいて公開され、JI ガイドライン第 39 パラグラフに基づいて、そのうちの
129 件が完了とされ、1 件が撤回されたことに留意した。
JISC は、JI ガイドライン第 20 パラグラフの (a)及び (b)に基づいて締約国から提出され
た指定担当機関(以下、DFP)と JI プロジェクトの承認に係る国内ガイドラインの現状に
関する報告書について留意した。これまで合計 37 の附属書 I 加盟国が DFP について事務局
に通知をした。このうち、32 カ国が JI プロジェクトの承認に関する国内ガイドライン及び
手続きを提出した。
JISC は、597 件のトラック 1 プロジェクトが UNFCCC の JI ウェブサイトにおいて公開さ
れ、そのうち 548 件がプロジェクト識別子を受領し、国際取引ログに提出されていること
を留意した。
JISC は、JI プロジェクトサイクルの改善に関するコンセプトノートについて議論した。
これには以下の二点も含まれる。
・現在の JI プロジェクトサイクルへの考えうる変更に関する包括的分析。
・改正 JI ガイドラインにおいて現在検討中の単一 JI トラックの開始の準備の概要。
JISC は、現在の JI プロジェクト関連の提出物の少なさもあり、予想されるコストに踏ま
えて、決定された変更の実施を延期する決定をした。JISC は、段階的な JI プロジェクトサ
イクルの単一トラック化の準備のアセスメントを含む、現在の JI プロジェクトサイクルの
変更のアセスメントを継続することと、それを JISC 管理計画(MAP)と 2015 年の業務実
施計画に含めることを事務局に要請した。
アジェンダ 3.3
JI の作業のための管理計画と資金
JISC は、2014 年の業務実施計画の変更点に留意しつつ、JISC の業務の現状に留意した。
アジェンダ 4
その他の事項
アジェンダ 4.1 CMP によるガイダンス
JISC は、本報告書の付属書 I の通り、第 10 回 CMP に提出する JI ガイドラインの現状か
ら改訂版への移行に関する勧告について合意した。JISC はこれらの勧告が CMP に提出する
JISC の年次報告書に含めるよう事務局に要請した。この報告書は後述パラグラフ 16 にある
ように、JISC の議長と副議長と協議を経て最終化される。
JISC は CMP10 に提出される JISC の年次報告書について合意した。JISC は本報告書を年
- 77 -
次報告書に含め、報告書を JISC の議長と副議長と協議の上最終化するよう要請した。
アジェンダ 4.2 ステークホルダー、政府間機関及び非政府組織との関係
JISC は DOE/AIE Coordination Forum の議長である Mr. Werner Betzenbichler と電話会議に
よるやり取りを行った。フォーラムの議長は、現在の炭素市場の状況について詳細な説明
を行い、現在認定独立機関(AIE)の JI 活動が全く見られないことを報告した。今回の会合
の検討事項に関連して、フォーラム議長は JI プロジェクトサイクルの改善を歓迎する意向
を示すとともに、特に、インターネット上のツールによる有効性決定と検証及びレビュー
の迅速化を支持した。また、JI と CDM の認定制度の提携の重要性を強調し、指定運営機関
(DOE)と AIE の認定手続きを統合するにあたっては、適宜、協議を行うことを提案した。
その上で、CDM と JI の認定制度の提携のための追加的なアセスメントは避けるべきだと述
べた。
JISC は Mr. Betzenbichler に謝意を表明するとともに、フォーラムが JISC に検討を続ける
ことを奨励した。PD Forum から本会合にインプットは無かった。
登録済みのオブザーバーから JISC との非公式のやり取りの申し込みは無かった。第 35
回会合のオブザーバーは 2015 年 2 月 26 日までに登録が必要である。
アジェンダ 4.3 その他の事項
JISC は第 40 回科学技術上の助言に関する補助組織(SBSTA)及び SBI で議論された京都
メカニズムと UNFCCC のメカニズム(複数のアプローチのメカニズム、新しい市場メカニ
ズム及び非市場メカニズム)について検討し、JISC は第 41 回 SBSTA 及び SBI 会合とペル
ー・リマで開催される第 10 回 CMP において予想される議論と成果について議論した。
その上で、JISC は、第 40 回の SB 会期中の JISC と CDM 理事会の議長及び副議長の間で
行われた非公式のやり取りについて議論した。特に、以下の事項について言及がなされた。
・炭素市場の状況
・両制度の認定制度
・2020 年以降の JISC と CDM 理事会の役割
JISC は、各国の炭素価格制度に状況を含む過去数カ月の炭素市場と政策動向に関する報
告書の内容、特に EU-ETS 及びオーストリアとニュージーランドの制度について検討した。
JISC は、次回会合を 2015 年 3 月 12 日と 13 日にドイツ・ボンで開催することを合意した。
さらに、JISC は、この会合において JI の将来に関する戦略と計画に関する幾つかの事項に
ついて検討することに合意し、事務局に対して、この検討作業の土台となるペーパーを JISC
の議長と副議長と協議の上で用意するよう要請した。JISC は、本報告書の附属書 2 の通り、
第 36 回会合の暫定的なアジェンダについて合意した。
- 78 -
アジェンダ 5
閉会
議長は主な結論についてまとめ、第 35 回 JISC 会合を閉会した。
表:第 34 回 JI 監督委員会出席者(委員アルファベット順:20 名中 14 名出席)
加盟国区分
委員
委員代理
Ms. Carola Borja
Mr. Carlos Fuller
エクアドル
ベリーズ
Mr. Mykhailo Chyzhenko
Ms. Milya Dimitrova
ウクライナ
ブルガリア
附属書 I 国
Mr. Piotr Dombrowicki
Mr. Yury Fedorov
(市場経済移行国)
(議長)ポーランド
ロシア
Ms. Julia Justo Soto
Mr. Evans Njewa
(副議長)ペルー
マラウイ
Mr. Derrick Oderson
Mr. Albert Williams
バルバドス
バヌアツ
Mr. Guoqiang Qian
Mr. Chebet Maikut
中国
ウガンダ
附属書 I 国
Mr. Konrad Raeschke-Kessler
Mr. Marko Berglund
(その他)
ドイツ
フィンランド
附属書 I 国
Mr. Evgeny Sokolov
Mr. Hiroki Kudo
(その他)
ロシア
日本
附属書 I 国
Ms. Irina Voitekhovitch
Ms. Mihaela Smarandache
ベラルーシ
ルーマニア
附属書 I 国
Ms. Gertraud Wollansky
Mr. Benoît Leguet
(その他)
オーストリア
フランス
非附属書 I 国
附属書 I 国
(市場経済移行国)
非附属書 I 国
小島開発途上国
非附属書 I 国
(市場経済移行国)
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COP20/CMP10
JISCQ&A セッション
CMP10 が開催されたリマにおいて、2014 年 12 月 2 日に JISC の Q&A セッションが開催
された。例年、CDM 理事会と同様に、JISC においても、その年の活動報告を行うととも
に、参加者との質疑応答を行ってきた。今回は、CDM と同様に、JISC 議長からの活動報
告の後、専門家を交えてのパネルディスカッションを行った。内容については、以下の通
り。
(1)議長からの活動報告
議長からは、2014 年の JISC においては、ドーハ合意やワルシャワ合意で求められた取り
組みが行われ、中でも CDM の認定手続きとの Synergy を目指す決議案を作成したこと、
JI ガイドラインのレビューについて SBI の議論を支援したこと、CMP に対して CDM、
JI、さらに New Market Mechanism(NMM)
を含めた形で Synergy を行うように勧告を出したことなどの成果が報告された。さらに、
クレディッティングメカニズムの利点として義務の履行に際して柔軟性が与えられること
が指摘されるとともに制度の信頼性の確保が重要であり、確固とした基準や MRV などが必
要であると強調された。
(2)パネル
スウェーデン政府、欧州復興開発銀行(EBRD)、CDMEB 議長、国際排出量取引協会(IETA)、
UNFCCC 事務局などの様々な専門家を交えてパネルディスカッションが行われた。ここで
議論された主要な論点は以下の通り。
クレジットメカニズムの信頼性の確保の重要性が多くのパネリストから指摘された。信頼
性確保がクレジットの価値の維持に必要であり、そのために確固とした MRV、アカウンテ
ィングなどの必要性が指摘された。さらに、このような信頼性が市場での価格にも影響を
与え、投資の促進につながるため、信頼性の確保が投資促進の観点からも重要であること
も指摘された。また、将来、導入されるクレジットメカニズムについても、その制度の実
効性を確保するためには MRV が必要であることが指摘された。このように、信頼性の確保
の重要性が指摘される一方で、簡素な手続きの必要性を指摘する声もあった。
複数の制度(CDM、JI など)が併存する現状については非効率であるとの声があり、多様
な制度が併存する状況の中でも、削減量 1 トンは、全て 1 トンとしてカウントすることが
可能な制度を構築する必要性も指摘された。このような共通のカウント方法は、各国が設
定する INDC の水準によって大きな影響を受けることが指摘された。各国が異なる形で目
- 80 -
標を設定させていく中で、国際的に統一の基準のもとで発行されるクレジットは、国によ
って異なる価値となり、地域によって歪みが生じる可能性があるためである。
現状では、CDM と JI の二つの制度が併存しているものの、将来的にはこの二つの制度は
合併されるだろうとの見解も示された(CDM と JI とも、本質的には同じ制度であるとの
見解もあった)。既に認定プロセスの synergy にむけて議論が進められており、今後、方法
論などでも synergy が進む可能性もあると指摘された。また、パリ合意においても、クレ
ジットメカニズムは重要な役割を担うとの見解が示されるとともに、その際には CDM と
JI を一つの制度に合併する必要性があるとの指摘もあった。
それ以外にも、価格を維持するためには需要が必要であること、特に投資を促進する要因
として重要な位置を占めることが指摘され、現在、JI が直面している最大の課題は、需要
の不足であるとの見方を示す参加者もいた。
会場の参加者からは、AAU が発行されていない中で、JI が存続することが可能なのか質問
がなされたが、それに対して AAU が未発行の状況では ERU の発行は困難であるとの認識
が示されるとともに、排出削減量の価値を担保するために、今後は、全てのオフセットメ
カニズムにおいて、国際的に共通の一つのユニットをベースにして、クレジットを発行す
るべきであるとの見解が示された。会場の参加者からは、今後の JI では厳しい削減目標を
持った国に JI 参加資格を限定するべきであるとのコメントもあった。
- 81 -
- 82 -
第 3 章 CDM/JI に関する各国の動向の調査・分析
- 83 -
- 84 -
はじめに
カントリーレポートの調査調査対象国として、中国、インド、タイ、チリ、サウジアラ
ビアの 5 カ国を選定した。CDM プロジェクトの最大のホスト国である中国では、CDM を
踏まえた独自のベースラインクレジット型の排出量取引制度を構築するなど、様々な動き
が見られる。この制度は、あくまでも中国国内に限定した制度であるが、途上国において
実施するベースラインクレジット制度としては JCM と重なる部分も多く、JCM の今後の
取組みを考える上で、参考となることが期待できる。
また、インド、タイ、チリ、サウジアラビアについては、今後の有力な二国間クレジッ
ト制度(以下、JCM)実施国候補として注目を集めている。これらの国における CDM に
関連する制度(政府承認手続き)や CDM 開発動向については、今後、これらの国において
JCM を実施することが決まった場合に有益な情報となるものと期待される。
このような状況を踏まえて以下、まず各国の CDM 開発状況について調査結果を報告する
とともに、チリ、サウジアラビアの二カ国の、今年度の調査で初めて調査対象国となった
国については、CDM に関連する制度(政府承認手続き)について調査した結果を報告する。
その上で、今後、JCM のホスト国として期待されるインド、タイ、チリ、サウジアラビ
アについては、もし JCM のホスト国となった場合に、どのようなプロジェクトが開発され
うるのか検討した結果についても報告する。ここでは、主に、各国の排出量の動向、温暖
化政策・エネルギー政策の動向など国全体の動向とともに、
過去の JCM の FS 事業の実績、
民間団体が設立・運営しているオフセットメカニズム、Verified Carbon Standard(VCS)の
開発実績などの具体的なプロジェクトの FS 実績や開発実績を踏まえて、どのような JCM
プロジェクトが開発されるうるのか検討した(VCS については補足資料、ボランタリーカ
ーボンマーケットの項を参照)。
なお、中国については、特に内外から注目を集めている国内のキャップアンドトレード
型の排出量取引制度(試行的排出量取引制度)と中国独自のベースラインクレジット型の
排出量取引制度(自主的排出削減プロジェクト制度)の二つに注目して報告する。
中国、インド、タイについては、昨年までの本事業において人口、GDP などの基本的な
情報を示していたことから、本報告書では、それらの国の基本的な情報については提供せ
ず、今年度の事業で初めて調査対象となったチリ、サウジアラビアのみ国の基本情報を掲
載する。
- 85 -
1. 中国
(1). 中国における CDM の承認動向
2014 年 12 月末まで、中国は 5, 059 の CDM プロジェクトを承認し、その内 3,763 のプ
ロジェクトが CDM 理事会に承認された。
図 8 に示すように、政府承認されたプロジェクトの件数のセクター別には、再生可能エ
ネルギーのプロジェクトが 75%、省エネルギーが 12%、メタンの再利用が 9%、を占めて
いる。これに対し、年間の予想排出削減量を見ると、新・再生可能エネルギーが 61%、省
エネルギーが 12%、メタンの再利用が 10%となっている。HFC-23 分解と N2O 分解の承
認件数は割合として少ないが、排出削減量はそれぞれ 9%と 3%を占めている。この傾向は
2012 年までの傾向と同様であり、大きな変化は見られない。
また、2014 年に中国政府 DNA により承認されたプロジェクトは 57 件(2014 年 1 月から
12 月まで)と 2013 年の 2012 年の 127 件を下回った。減少傾向は、2012 年第 4 四半期から
見られ、2012 年の 1250 件、2013 年の 127 件と 2012 年以降、政府承認プロジェクトの件
数が大きく減少している。
これは EUETS における CER 利用規制(2013 年以降、後発開発途上国(LDC)以外の
国をホスト国とするプロジェクトについては 2012 年までに登録されたプロジェクトに由来
する CER のみの利用を認める)や、EU 以外の先進国企業からの買手が見当たらないこと
も影響しているものと思われる。
後述するように、国レベルでの排出量取引制度の導入が決定され、CDM をベースとした
中国独自のオフセットメカニズム制度、自主的排出削減プロジェクト制度から得られる
CCER の利用が認められている。この自主的排出削減プロジェクト制度では、CDM プロジ
ェクトとして登録されたプロジェクトを、一定の条件のもとで、当該制度の排出削減プロ
ジェクトとして登録することが可能である。また、現在、地方レベルでの試行的な排出量
取引制度が導入されており、一部の制度では CCER の利用が認められている。この CCER
の利用も視野に入れて CDM における登録手続きなされている可能性もある。
図 8:中国における政府承認プロジェクトの現状
(出所)各種資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成20
20中国
CDM ネット http://cdm.ccchina.gov.cn
- 86 -
図 9:承認プロジェクト数の推移
(出所)各種資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成21
(2). 中国における CDM の開発動向
既に述べたように、中国において、2014 年末までで 4136 件のプロジェクトが登録され、
登録済みプロジェクト総数、7603 件の約 50%を占めている。これらの CDM 登録済みプロ
ジェクトに対して 2014 年末までに発行された排出削減量は、9 億トン tCO2e になり、2014
年末までに発行された CER の総発行量(15 億 tCO2e)の 59%を占めている。登録件数及
び予想排出削減量ともに中国が最も多い傾向は、2009 年以降、一貫して続いてきた傾向で
ある。
図 10:2014 年における CDM 登録プロジェクト(件数及び年間予想排出削減量)の動向
(出典)UNFCCC データを踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
21中国
CDM ネット http://cdm.ccchina.gov.cn
- 87 -
ただし、2013 年以降だけの傾向を見ると状況は変わってきている。上記のように 2013
年以降、政府承認件数が大きく減少しているが、これは同時に登録件数の減少にもつなが
っており、2013 年以降、中国をホスト国とするプロジェクトの登録件数は大きく減少して
いる。2014 年に登録されたプロジェクトは、僅か 19 件に留まり、結果として 2014 年だけ
見ると、登録件数については 60 件の登録があったインドに首位を明け渡すことになった。
一方、年予想排出削減量については、中国におけるプロジェクトが最も多く 177 万 tCO2e
の削減量が予想されている。このことは、中国には大きな排出削減の余地がいまだに残っ
ていることを示唆しているとも言える。
全国レベルでの排出量取引制度の導入が確定し、CCER の利用が認められていることか
ら今後、CCER の需要が高まり、CDM 登録手続きを経ることが、より自主的排出削減プロ
ジェクトにおける登録手続きにおいて有利なものになると中国国内の事業者が考えるよう
になれば、また、中国国内からの CDM 登録手続きが増加に転ずる可能性もある。
(3). 中国における温暖化政策の動向
CDM 政府承認手続きなどに大きな変化は見られなかったものの、中国政府は温暖化対策
に関連して新たな取組みを始めている。2010 年のカンクン合意を踏まえて提出された中国
の 2020 年の削減目標は原単位(2020 年までに GDP 一単位当たり CO2 排出量を 2005 年
比で 40~45%の排出削減)に基づくもので、総量での削減目標では設定されていなかった。
その後も、総量での削減目標の設定については拒み続けていた。しかし、中国は 2014 年 11
月に北京で開催されている APEC 会議の期間中に、アメリカとの共同発表において、初め
て、CO2 総量削減目標を公表した。従来では GDP 排出原単位として目標を掲げていたが、
今回の発表の主要なポイントは以下の点である。

2030 年ごろに CO2 排出量をピークアウトさせ、それの早期実現に努力すること。

2030 年に一次エネルギーに占める非化石燃料の比率を 20%程度に引き上げること。
また、これと相前後して、中国国務院は 2014 年 10 月 19 日に 2020 年までの中国の温暖
化対策の具体的な取組みをまとめた「国家の気候変動対応計画(2014~2020 年)」を公表
した 。「人民日報」は、この計画で示された目標を次のように報じている 。

CO2 削減目標:GDP 排出原単位 40~45%低減

公共交通利用率を 30%に

低炭素ライフスタイルとして、エコ交通手段の「135」 を提唱

1000 カ所程度の低炭素社会の試験コミュニティ

7つの分野 における価格制度を改定する
このように中国全体の温暖化対策の方向性が示されるとともに、中国・国家発展改革委
- 88 -
員は 2014 年 1 月に重点企業を対象に温室ガス排出量報告に関する通知(「国務院が重点企
業温室ガス排出量報告に関する通知」)を公表した。今回発表された排出量報告制度の概要
は以下のようになっている。
表 8:排出量報告制度の概要
目的
対象企業
対象ガス
報告期限
重点企業の排出量の管理とコントロール、温室ガス排出量総量コントロールの目
標の設定、排出量取引制度の構築。
2010 年温室ガス排出量が 13000tCO2e(CO2 換算)、または 2010 年総合エネル
ギー消費量が 5000 トン(標準石炭換算)の企業。
二酸化炭素(CO2)、メタン (CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボ
ン (HFCs)、パーフルオロカーボン(Pfc)と六弗化硫黄(SF6 )
毎年の 6 月 30 日までに地方政府により発展改革委員会にまとめて報告。
(出典)各種資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
(4). 排出量取引制度の動向
①全国レベルでの排出量取引制度の導入が確定
中国国務院が 2014 年 12 月 30 日に、「炭素排出権取引管理暫定弁法」を公表した。後述
するように、2012 年に全国レベルでの排出量取引制度の導入を目指して試行的な排出量取
引制度の導入が決定され、既に中国国内の 6 つの省・都市で地方レベルでの試行的な排出
量取引制度が、実施されているが、同「弁法」の制定によって、こ今後、中国国内で全国
レベルでの排出量取引制度の導入が確定することとなった。同法においては、導入が予定
されている全国レベルでの排出量取引制度の運営に関する原則・規制の枠組みを示してい
る。
規制の枠組みの概要としては、国家発展改革委員会が制度の中央管理者、地方改革委員
会は地方管理者として位置づけられ、中央管理者は対象企業の基準、規制対象事業者への
割当量の配分方法、取引所の運営者等を定める役割を果たし、地方管理者は中央管理者の
管理下で各地域における対象企業を管理・監督し、その結果を中央管理者に報告する仕組
みとなっている。割当量は無償配分を主として、将来的には、徐々に有償配分の比率を引
き上げることも定められるとともに、中国独自に発行した CCER が取引に参加できること
も定められた。ただし、制度の詳細については、今後、制定・発表される見通しである。
- 89 -
表 9:炭素排出権取引管理暫定弁法の概要
制度の運営管理責任者
総量の決定方法
配分方法
登録簿の管理
排出量の報告及び遵守
違反への対応
発展改革委員会
−
国の発展改革委員会
−
地方(省、自治区、直轄都市)の発展改革委員会)
−
国の発展改革委員会は選定された規制対象事業者(重点排出事業
者基準)に対する割当量を、国全体の削減目標、各地の GHG 排出
量、経済・産業・エネルギー構造などを踏まえて、国及び各省・
自治区・直轄市の割当量の総量を決定。
−
重点排出事業者確定基準を踏まえて、地方の発展改革委員会が管
轄内の規制対象事業者を選定。
−
当初は無償配分で配分。制度実施後、段階的に有償配分の比率を
拡大。
−
無償配分の方法については、国の発展改革委員会が今後、決定。
−
地方の発展改革委員会は、国が決定した無償配分の方法に則り、
各規制対象事業者の無償配分量を決定。
−
総割当量の一部を規制対象事業者に配分せずに政府が留保。
−
国の発展改革委員会が構築・管理を担当
−
GHG 排出量の計測・モニタリング、報告、検査(MRV)方法に
ついて国が指針を定める。
−
規制対象事業者は国の指針に従い排出量を計測し、第三者の検証
を受けた後に、所在地(省・自治区・直轄市)の地方の発展改革
委員会に報告。
−
規制対象事業者は毎年、前年度の排出量以上の割当量を所在地の
地方の発展改革委員会に提出。規制の遵守の際には一部、CCER
の利用も可能。
−
地方の発展改革委員会は規制対象事業者の違反(虚偽の報告、報
告の隠ぺい、報告書の未提出、割当量の未提出)に対して行政処
罰を課す
−
場合によっては刑事責任を追及。
(出典)各種資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
②試行的な排出量取引制度の動向
全国レベルでの排出量取引制度導入を目指す試行的な排出量取引制度が実施される省及
び都市が 2012 年 1 月に国家発展改革委員会から承認された。承認されたのは北京、天津、
上海、重慶、および深センの 5 市、ならびに湖北と広東の 2 省である。2013 年 1 月から排
出量取引制度を開始することとなっていたが、実際の制度開始は当初の予定から半年遅れ
て、まず深セン市での運用が始まった後に、広東省、上海市、北京市で制度が開始され、
その後、2014 年には湖北省、天津市の制度の運用が開始された(試行的排出量取引制度の
動向に関しては、補足資料“中国”を参照)。
制度開始後、1 年以上、経過した制度もあり、幾つかの課題が明らかになってきている。
まず挙げられるのは、規制対象企業の意識の問題である。一部の制度では規制対象企業が、
規制当局の地方政府の指示に従わない場合があったとの報道もなされている。試行的排出
量取引制度の規制対象企業には国営企業も含まれているが、中国では国営企業が地方政府
- 90 -
よりも強い影響力を有する場合も多く、地方政府の指示が徹底されない場合も多いこ22。そ
れ以外にも、規制対象企業への周知が十分になされておらず、規制の遵守にむけた日程を
十分に把握できていない場合も多く見られた。結果として、地方政府が遵守のために求め
られる割当量の提出日の延期を決定した場合もある。
また、低調な市場での取引も課題に挙げられる。取引は行われ取引価格も公開され、遵
守期限間際には取引量が急激に増加するものの、取引は全体として低調なものとなってお
り、取引可能な割当量の全体の数量に比較すると、取引される割当量の数量は限定的なも
のに留まっている23。このような低調な取引の背景には、取引に関する規制が不明確である
ことや、規制対象事業に排出量取引の経験がないことなどがあるようである24。その他にも、
割当量の発行量、排出量のデータなどが取引の前提となるデータ・情報が公開されていな
いことも取引の障害となっていることが指摘されている25。
表 10:試行的な排出量取引制度のもとでの取引動向
(出典)UNDP China Climate Change Newsletter Feb 12, 2015 を踏まえて
日本エネルギー経済研究所作成
③自主的排出削減プロジェクトの動向
国家発展改革委員会は、2012 年 6 月 13 日、温室効果ガス自主的排出削減量取引管理暫
定措置(以下、自主的排出削減プロジェクト制度)を発表した。これは試行的な排出量取
引制度が目指す、キャップ&トレード型の排出量取引ではなく、CDM のようなベースライ
ンクレジット型の排出量取引制度の導入を目指すものである。この制度の特徴は、中国が
独自に実施する制度でありながら、既に CDM プロジェクトとして登録されたものであって
も、CER の未発行のプロジェクトについては、登録が認められるという点である。そのた
め、CDM 登録した上で、改めて国内での登録手続きを行うことで、自主的削減プロジェク
トとして登録されることも可能となる。
既に述べたように、今後、導入が予定されている全国レベルでの排出量取引制度や、現
在、実施されている試行的排出量取引制度のもとで、この自主的排出削減プロジェクトに
由来するクレジット(CCER)の利用を認められている。
“Beijing emitters ignore carbon scheme, question government authority: media”June 13 2014
Reuter
23 C Munnings et al. “Assessing the Design of Three Pilot Programs for Carbon Trading in China”
Resources for the Future 2014 p.30 参照
24 “Chinese CO2 permits to trade below $5-consultant”Nov 7 2013 Reuter
25 “The ‘black hole’of Chinese carbon trading” May 13 2014 Financial Times
22
- 91 -
2013 年に自主的排出削減プロジェクト制度の下で利用が認められる方法論も公表された
が、大半が CDM 方法論を踏まえたものとなっている。2014 年末までに、さらに方法論が
承認され、CDM 方法論を、そのまま方法論として認める形で、大規模プロジェクトの方法
論で 95 件、小規模で 78 件の方法論が承認され、
CDM 方法論にはない中国独自の方法論が、
植林方法論が 4 件、通常の削減プロジェクトの方法論が 1 件、承認されている。また、第 3
者の審査機関についても 2014 年に、新たな機関が追加されており、プロジェクト開発の基
盤は整備されてきている。
2013 年の段階では、報道されるに留まっていたが、2015 年になって初めて、政府のウェ
ブページで自主的排出削減プロジェクトが公表されるようになった。このウェブのデータ
では、2014 年末までに 86 件のプロジェクトが登録されていた。
このように制度が整備され、プロジェクトの登録されてきているものの、この制度のも
とで発行されるクレジット CCER の取引は低調なものとなっている。一つの理由としては、
北京と上海が、明確に、2013 年以前の目標達成に CCER の利用を禁止することを正式な規
則として制定したことが挙げられる。市場関係者によれば、現状では、CCER は試行的な
排出量取引制度で利用される通常の割当量の 3 分の一程度の価格で取引されており、事業
者のプロジェクト開発が困難になっているとコメントしている。
表 11:自主的排出削減プロジェクト制度の第三者検証機関
(出典)各種資料から日本エネルギー経済研究所作成
- 92 -
表 12:自主的排出削減プロジェクト制度における大規模承認方法論(2014 年末まで)
(出典)各種資料から日本エネルギー経済研究所作成
- 93 -
表 13:自主的排出削減プロジェクト制度における小規模承認方法論(2014 年末まで)
(出典)各種資料から日本エネルギー経済研究所作成
表 14:自主的排出削減プロジェクト制度における中国独自の承認方法論(2014 年末まで)
(出典)各種資料から日本エネルギー経済研究所作成
- 94 -
表 15:自主的排出削減プロジェクト制度での承認プロジェクト(2014 年末まで)
(出典)各種資料から日本エネルギー経済研究所作成
- 95 -
2. インド
(1). CDM の開発動向(政府承認、有効化審査、登録動向)
インドは中国に次いで多くのプロジェクトが実施されており、2013 年以降も、インド国
内では、様々なプロジェクトが開発されており、以下にインドにおける CDM の開発動向を
まとめた。政府承認の件数の開発動向については、表 16 にまとめたのが、2013 年の 68
件と件数では大きな違いは見られないが、年間の予想排出削減量の合計では、昨年の約 300
万 tCO2e/y から 200 万 tCO2e/y へと減少している。
表 16:インド政府によるセクター別 CDM 承認(2014 年の承認プロジェクト)
(出所)CDM India ホームページを踏まえ日本エネルギー経済研究所作成26,
UNFCCC データベース(2015 年 2 月現在)によると、インド国内の有効化審査段階に
あるプロジェクトが 72 件(237 万-tCO2/y)ある。
このなかで、
エネルギー関連の事業(scope1)
が 91%に相当する 216 万-tCO2/y を占める。
図 11:インドにおける有効化審査の件数の推移
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
26
http://cdmindia.gov.in
- 96 -
図 12:インドにおける登録プロジェクトのセクター別シェア(2014 年)
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
図 13:インドにおける登録プロジェクト件数の推移
700
13: 廃棄物処理・処分
600
500
400
5: 化学工業
4: 製造業
44
3: エネルギー需要
1: エネルギー産業
300
501
200
100
6
6
96
4
129
10
2
73
5
67
171
4
114
3
107
54
15
0
0
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
また、系統に接続された化石燃料火力発電の効率向上方法論 が、2011 年 11 月から使用
停止 suspend されていたが、2012 年 9 月に再開された。これまで 6 案件が承認されている
が、このうちの 1 つ Adani Power では、200 万トンの CER が市場に供給された27。しか
し、このプロジェクトには大気汚染に関してグジャラート州の規制当局(Gujarat Pollution
Control Board :GPCB)から指摘された大気汚染の管理体制の不備の問題があり、2013 年
10 月には 30 の NPO 団体がフランス政府に、このプロジェクトの承認を取り下げるように
27 Reference No. 2716 : Grid connected energy efficient power generation。先進国のプロジェクト参加
者にはフランスの電力会社、EDF の子会社の名前が記載されている。
- 97 -
要請を行っている。
(2). JCM プロジェクトの開発が期待されるセクター・プロジェクトタイプの検討
①CO2 排出量・GHG 排出量の動向
OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”をもとに
排出量の推移を確認する。1990 年から 2012 年にかけて年率 15%余りで増加している。な
かでも、石炭火力を太宗とする発電部門においては、工業化や、電化を背景に年率 19.8%
で推移している。インドでは、3億人が電力のアクセスを持たずにいることから、電力需
要は今後も急伸する物と考えられる。
図 14: 部門別 CO2 排出量の推移
(単位:百万t‐CO2)
2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1990
1995
発電部門
2000
産業部門(製造・建設業)
2005
運輸部門
家庭部門
2012
その他
注:化石燃料燃焼による CO2 排出量のみが対象
(出所)
: OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
図 15: 1990 年の部門別 CO2 排出量の割合
家庭部門, 43.54, 7%
その他, 61.49, 11%
発電部門, 239.26, 41%
運輸部門, 64.54, 11%
産業部門(製
造・建設業), 171.63, 30%
(単位:百万t‐CO2,%)
(出所) OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
- 98 -
図 16: 2012 年の部門別 CO2 排出量の割合
家庭部門, 80.58, 4%
その他, 139.73, 7%
運輸部門, 216.23, 11%
発電部門, 1044.24, 54%
産業部門(製
造・建設業), 473.23, 24%
(単位:百万t‐CO2,%)
(出所) OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
UNFCCC 第二次国別報告書において、2000 年時に 15 億 2,380 万 tCO2e の GHG 排出
量が報告されている。エネルギー由来の排出量は、GHG 排出量の 67%を占める(土地利
用の変化を除く)。ガス種別では、CO2 は全体の 92.9%を占める。
図 17: 2000 年の用途別 GHG 排出量
(出所) Second national communication to the UNFCCC
- 99 -
図 18: 2000 年のガス別排出量
(出所) Second national communication to the UNFCCC
図 19: 2000 年における用途別・ガス別排出量
(出所) Second national communication to the UNFCCC
②インド国内の温暖化政策、エネルギー政策の動向
ⅰインド国内の全般的な政治状況
インドは、コペンハーゲン合意において、2020 年までに 2005 年比 20-25%の GDP 原単
位改善を NAMAs:Nationally Appropriate Mitigation Actions として登録している28。
また、2014 年の総選挙で政権についたモディ首相は就任後、前政権と比較して気候変動
問題への対応に積極的な姿勢を見せている。気候変動対策を管轄する省庁として、環境・
森林省を環境・森林・気候変動省に改組し、太陽光発電の導入目標を引き上げる一方、気
28http://unfccc.int/files/meetings/cop_15/copenhagen_accord/application/pdf/indiacphaccord_app2.pdf
- 100 -
候変動評議会のメンバーを一部入れ替え 3 年ぶりに会合を開催するとともに、2015 年 12
月の COP21 に向けた検討を行っている29。
一方で、モディ政権はグリーンピースなど国際環境保護団体に流れる資金を引き締める
ことを決めた。首相官邸を含む複数の政府機関に提出された情報局のリポートによると、
こうした団体が、原子力発電や炭鉱開発、遺伝子組み換え作物などあらゆる事業を妨害す
る運動を後押ししており、これらの抗議活動がインドの国内総生産(GDP)成長率を 2-3%
押し下げている可能性が指摘されているためである30。
さらに、インド政府は、2015 年 1 月 1 日、65 年にわたり経済政策の司令塔役を担ってき
た「計画委員会」を廃止すると発表した。これにより社会主義的経済体制の象徴である中
央主導型の組織を廃止し、今後は地方や市場の実情に合わせた市場経済重視の政策運営に
改革される。計画委員会は社会主義経済を志向していたネール初代首相の下、ソ連の経済
運営方式に倣って 1950 年に設立されたもので、議長は首相が兼任するとともに、国の5カ
年計画を策定し、これまで州政府への連邦予算の配分にも強力な影響力を持っていた。モ
ディ首相は昨年 8 月に計画委員会の廃止案を演説で公表していたが、グジャラート州の首
相時代から、地方の実情にそぐわない中央からの政策の押しつけに強い反発を持っていた
とされる31。グジャラートモデル32といわれるモディ首相の成功体験が、今後インド大でど
のように展開されるのか、動向が注視される。
2015 年 1 月 25 日、米国のオバマ大統領とモディ首相が、共同声明を発表した。声明で
は、インドへの原子力発電所の輸出推進、気候変動対策などの協力が確認された。2014 年
12 月のインド国内の報道では、「1 月のオバマの訪印時に、太陽光の野心的なターゲット、
および、排出量のピーク年を含む実効的な新目標を公表するだろう。
」とされていた。しか
しながら、報じられた新目標の提示には至らず、パリで開催される次期締約国会議での合
意に向けて両国が協力すると記載されるにとどまった。
今般の米印の共同宣言33では、気候変動の適応策、技術革新、クリーンエネルギーと効率
化技術の普及に関する 2 国間の協力が確認された。また、モントリオール議定書に基づく
フロンの排出削減に関して、2015 年中に具体的な成果を出すことも盛り込まれた。
6 月には、INDC を国連に提出するという報道もみられ、今後もインド国内の議論が注目
される34。
http://www.jepic.or.jp/data/ele/ele_12.html
インド、グリーンピースなどの資金調達を規制―経済成長を阻害と判断
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303844704580002254056319586
31 http://www.sankei.com/world/news/150102/wor1501020014-n1.html
32 Modi's Gujarat Model http://www.bjp.org/images/pdf_2014/the_gujarat_model.pdf
33 U.S.-India Joint Statement साँझा प्रयास - सबका िवकास” –“Shared Effort; Progress for All”
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2015/01/25/us-india-joint-statement-shared-effort-progress
-all
34 ”India to submit climate plans to United Nations by June
http://articles.economictimes.indiatimes.com/2014-12-06/news/56780008_1_indcs-national-action-plan
-climate-change
29
30
- 101 -
ⅱ温暖化対策の概要
2008 年 6 月 30 日、インドの「気候変動に関する国家行動計画(NAPCC:National Action
Plan on Climate Change)」を発表した35。
国家行動計画は 8 つの優先国家事業(①太陽エネルギー、②エネルギー効率の改善、③
持続可能な居住環境、④水の保全、⑤ヒマラヤのエコシステムの維持、⑥「緑のインド」、
⑦持続可能な農業、⑧気候変動についての戦略的知識プラットフォーム)に焦点を当てて
おり、太陽エネルギーの国家事業が卓越した位置を占めている。CDM についても付属の技
術的文書の中で最新の CDM の動向を踏まえた、プロジェクト開発の必要が指摘されている。
NAPCC のもと、エネルギー効率の改善の活動が位置づけられている。省エネ対策も、気
候変動の一環として明確に規定されている点が、インドの特徴である。なかでもインドの
新しい取り組みである PAT について、以下に概観を示す。
2007 年にインド政府は 9 業種の年間エネルギー消費量一定以上の企業を指定エネルギー
消費事業者(Designated Consumer、以下 DCs)として指定した。具体的な業種とエネル
ギー消費量基準は次の通りである。2012 年 4 月から PAT の第 1 サイクルが開始され、省
エネ法の指定エネルギー消費事業者のうち鉄道業を除く 8 業種、478 の DCs が対象となっ
ている。DCs に課せられる目標は原単位に基づく効率目標であるが、これに活動量を乗じ
た省エネルギー削減目標は 8 業種合計で 6,686 万 toe となっている。
表 17: 指定エネルギー消費事業者のエネルギー消費量基準)
業種
火力発電
肥料
セメント
鉄鋼
塩化アルカリ
アルミニウム
鉄道
繊維
紙・パルプ
石油換算(年間)
30000 トン以上
30000 トン以上
30000 トン以上
30000 トン以上
12000 トン以上
7500 トン以上
30000 トン以上
3000 トン以上
30000 トン以上
(出所)各種資料により日本エネルギー経済研究所作成
35
http://www.moef.nic.in/sites/default/files/Pg01-52_2.pdf
- 102 -
表 18: PAT の第 1 サイクルの対象工場数および目標
(出所)PAT booklet
表 19: PAT 制度の概要
項目
期
間
目標設定
内容
第 1 期サイクルは、2012 年 4 月 1 日~2015 年 3 月 31 日
「生産量あたりのエネルギー消費量(specific energy consumption、
略称は SEC)」を指標として、指定事業者別に削減目標を設定
指定事業者別にベースラインとして 2007 年度から 2009 年度の平均の
SEC および生産量を計算し、
(SEC のベースライン-SEC の目標)に
ベースライン生産量を乗じて、エネルギー消費削減量を計算すると、3
年間の累積で 669 万トン(原油換算)となる
目標未達時の対応 指定事業者は未達時に、下記の罰則に従うか、省エネ証書を購入して
未達分を埋め合わせなければならない
原単位目標の未達分にベースライン生産量を乗じた量を「不遵守量」
罰 則
とし、不遵守量に「エネルギーコスト(※)」を乗じて、「罰金額」と
する
(※)エネルギーコストは、石炭・石油・ガス・電力の重み付け平均
価格。全指定事業者の平均消費量に応じて重み付けし、2011 年度の場
合、10,154 ルピー/toe
原 単位 目標を 超過 達成し た場 合に、 省エ ネ証書 ( Energy Saving
省エネ証書取引
Certificates、略称は ESCerts)を発行。発行量は、超過達成分にベー
スライン生産量を乗じた量。ただし、初年度と 2 年目の発行量はこの
80%まで。次の期間へのバンキングが可能
(出所)BEE 資料により日本エネルギー経済研究所作成
鉄道、配電、石油精製なども PAT 下に置かれる可能性についても、2014 年 12 月に報道
されている。現在の規制対象は、インド全体の化石燃料消費の 36%であるが、今後 40%に
拡大する事も検討されている。
電力省・省エネルギー局局長の Ajay Mathur 局長は、
「一部は取引を行う事を含めて全て
の事業所が目標をクリアするだろう」とのべた。217 の事業所が PAT 目標をクリアしてい
- 103 -
て、残り 60 事業者もそれに近い状態であるという36。2015 年4月から取引期間に入ること
から、今後の活動が注目される。
③JCM FS 実施状況
インドと日本の間では、いまだに JCM の実施にむけた二国間文書の署名は行われていな
いが、2010 年から、様々な実施可能性調査(FS)事業が行われている。以下に、これまで
にインド国内で実施された FS 事業をまとめた。この表のように、民生用 LED 照明や空調
などの民生部門から、鉄鋼業界、高効率石炭火力など広範なプロジェクトタイプの FS が実
施されている。
表 20: JCM FS 事業採択案件一覧
採択年度
事業名
事業者名
平成24年
製糖工場における廃熱利用を含むバガス利用発電
日本工営(株)
平成23年
平成23年
平成25年
平成25年
平成24年
平成24年
平成24年
平成24年
平成24年
平成24年
平成24年
インド・LED照明普及を通じた業務用ビル省エネ推進に関する新メ
(株)日本総合研究所
カニズム実現可能性調査
インド・アルミ産業における高性能工業炉導入に関する新メカニズ
(社)日本工業炉協会
ム実現可能性調査
鉄鋼業における省エネ技術普及等のための事業化に向けた計画
パシフィックコンサルタンツ(株)
等検討調査
R32高効率空調機普及における政策提言と方法論の精緻化
ダイキン工業(株)
低温廃熱回収型石炭乾燥技術の導入検討を踏まえたインドにお
みずほ情報総研(株)
ける省エネルギー政策に対する提言
インド共和国のデータセンターにおける高効率サーバー導入のプ
兼松(株)、(株)日立製作所
ログラム型BOCM プロジェクト組成事業
HFC冷媒を用いた省エネ空調機の普及と政策提言
インド共和国におけるマイクロ水力導入による無電化・弱電化地
域解消プロジェクト
インド鉄鋼業における省エネ技術普及等のための政策提言等検
討調査
インド超々臨界(USC)石炭火力発電所建設プロジェクト案件形成
のフォローアップ調査
インドJSWスチール社製鉄所における効率的な燃料利用技術案
件の組成調査
ダイキン工業(株)
シーベルインターナショナル(株)
パシフィックコンサルタンツ(株)
みずほ総合研究所(株)
JFEテクノリサーチ(株)、JFEスチール(株)
平成23年
インド鉄鋼業への政策提言及びCDQ導入等の事業スキーム検討 新日本製鐵(株)
平成23年
超々臨界圧石炭火力発電及び予防保全アフターサービスの普及 三菱重工業(株)
平成23年
平成23年
平成23年
平成23年
平成23年
平成23年
平成23年
平成23年
平成23年
インド共和国における鉄鋼焼結プロセス温室効果ガス削減プロ
住友金属工業(株)、パシフィックコンサルタンツ(株)
ジェクトの案件組成調査
インドJSWスチール社製鉄所における省エネルギー・プロジェクト
JFEスチール(株)、JFEテクノリサーチ(株)
案件の組成調査
インド国石炭火力発電所における効率改善事業の案件(組成)調
出光興産(株)
査
インド国における太陽光発電事業の案件発掘調査
(株)NTTファシリティーズ、(株)日本総合研究所、昭和シェル石油(株)、ソー
ラーフロンティア(株)
インド国 コークス炉 自動燃焼制御システム(ACCS)技術導入に
三菱化学エンジニアリング(株)
よる省エネルギー案件の発掘調査
インド共和国における流水式マイクロ水力プロジェクトの案件発掘 シーベル・インターナショナル(株)、双日マシナリー(株)、(株)リサイクル
ワン
調査
インド超々臨界(USC)石炭火力発電所建設プロジェクト案件組成
みずほ情報総研(株)
調査
インド共和国の多くのデータセンターにおける高効率サーバー+エ 兼松(株)、有限会社クライメート・エキスパーツ、兼松エレクトロニクス
ネルギーマネージメントシステム導入によるプログラム型CO2削減 (株)
インド・トルコにおける高炉ガス焚きガスタービン複合発電プロジェ
丸紅(株)、三菱重工業(株)、(株)三菱総合研究所
クトの案件組成調査
平成22年
高効率石炭火力(超々臨界)
みずほ情報総研(株)
平成22年
コークス炉への環境・省エネ技術の導入
新日本製鐵(株)
(出所)日本エネルギー経済研究所作成
36
http://www.business-standard.com/article/economy-policy/centre-eyes-higher-targets-for-energy-efficie
ncy-mission-114120401384_1.html
- 104 -
④今後、求められる JCM プロジェクトの分析
マッキンゼーによる限界削減費用の試算では、LED 照明やセメント排熱回収技術などネ
ガティブコストとなる省エネ対策も算出された。但し、こうしたメリットのある省エネ技
術も、生産拡大が優先される事、初期投資の高さ等の障害により導入に至っていないケー
スが見られる。セメント排熱回収技術はモディ政権でも注目を浴びており、インド国内で、
600MWの導入ポテンシャルが存在するといわれている37。
図 20: 2030 年におけるインドの対策コストカーブ
(出所)マッキンゼー38
○LED 普及事業
マッキンゼーカーブでは LED 照明などがネガティブコストとなる省エネ対策が示され
ていたが、LED 普及のための試みとして低価格販売事業が行われており、こうした事業へ
の支援も JCM プロジェクトの候補となり得る。
主体となっているのは、2010 年 2 月、国家電力会社( National Thermal Power
Corporation)等 4 つ公共セクターが共同ではじめて設立したエネルギー効率サービス会社
(EESL : Energy Efficiency Service Ltd)および電力省である。2014 年 10 月の最初の事
業として Andra Pradesh 州で、200 万個の LED が 10 ルピーで 200 万個が販売される。3
37
http://www.dnaindia.com/money/report-for-cement-companies-a-600-megawatt-promise-in-wasted-heat1383848
38
http://www.mckinsey.com/Client_Service/Sustainability/Latest_thinking/Costcurves
- 105 -
億人がエネルギーアクセスを持たないインドの照明普及事業として注目されるが、2010 年
現在インド国内の LED は 1200 ルピーで販売されている事から、競争を歪めるという批判
の声も聞かれる39。なお、本件については、オランダ・フィリップスの LED 照明が大量に
調達されている模様である40。
インドの照明器具市場は 2011 年度に 900 億ルピー(約 1,440 億円、1 ルピー=約 1.6 円)
となり、その後も 2 桁成長が続いている。白熱電球や蛍光灯がいまだに主流だが、慢性的
な電力不足、無電化村の存在や高まる省エネへのニーズなどから、エネルギー効率の高い
LED 照明の需要が高まっている。
インド電気照明器具工業会(ELCOMA)によると、2012 年の照明市場における LED
のシェアは 4%にすぎないが、今後 5 年間で 4 割近くまで上昇するという。また、マッキン
ゼーの報告によると、2020 年には照明の約 7 割が LED になるともいわれる。さらに調査
会社フロスト&サリバンは、インドの LED 市場規模は 2018 年までに 2012 年比で約 8 倍
に拡大し、13 億ドルに達すると予測する。
図 21: 2030 年におけるインドの対策コストカーブ
(出所)大穀宏(2014)JETRO インド事務所
○高効率石炭火力
インドでは、3億人に電力アクセスが無いこともあって、発電容量拡大への投資は重要
課題となっている。2013 年 3 月末現在の総発電設備容量は、2 億 2,334.4 万 kW で、石炭
が 58%と 6 割近くを占める。その他の電源では大水力 18%、近年導入が進んだ再エネ(主
に風力)が 12%、ガス火力 9%、原子力 2%などとなっている。
しかし、インドでは急速な経済成長のペースに、電源などインフラ整備が追い付かず、
http://www.niticentral.com/2014/10/10/power-ministry-sell-led-bulbs-going-maximum-government240410.html
40 JETRO 調べ
大穀宏(2014)
39
- 106 -
電力不足が成長のボトルネックとなっている。第 12 次五カ年計画は電力、道路、鉄道、港
湾等のインフラ整備に 56 兆ルピーを投じる計画であり、そのうち全体の約 3 分の 1 を占め
る 18 兆ルピーが電力・再エネ部門となり、電源開発が最も重視されている。
民間部門による投資に重点を置いた 1991 年の経済開放以降、5 カ年計画の達成率は 50%
前後で低迷しており(第 11 次計画の達成率は約 70%)、実際に 2017 年 3 月末までにこの
目標が達成できるかは不透明である41。
第 12 次 5 ヶ年計画期間中(2012 から 2017 年)に、8,800 万 kW の設備容量の増加が
計画されているが、このうち、78%にあたる 6,928 万 kW が石炭火力である。一方、イン
ドの 5 カ年計画は、導入する石炭火力のうちの約 6 割を高効率型の超臨界圧にすること、
さらに次期計画期間中には増設分の全てを超臨界圧とすることなど、高効率技術の導入に
向けた目標も掲げている42。
一般に、インドは国力向上の観点から国産化政策を図っていることもあり、現地工場を
伴う新規技術導入には積極的である。しかし、先述の通り、政府の計画通りには、導入が
進んでいない。インドのインフラ整備のうち、電源開発が最も重視されており、日本の現
地工場を活用した高効率型の石炭火力の普及促進プロジェクトなどは、インドのニーズに
対応したプロジェクトとなりえるだろう。
○鉄鋼分野の省エネ対策
日本の鉄鋼業界は、JCM の FS 事業には積極的に参加している。鉄鋼分野では日印鉄鋼
官民協力会合を通じて、ベストプラクティス集の作成など具体的なアクションが継続され
ている。
図 22: 日本鉄鋼業が考える二国間オフセット・メカニズムによる技術移転のための 3 つの
推進力
(出所)2011 年日本鉄鋼連盟プレス
海外電力調査会 http://www.jepic.or.jp/data/ele/ele_08.html
Planning Commission ,Government of India(2013),” Twelfth Five Year Plan (2012–2017)Economic
Sectors Volume II” 14.125
41
42
- 107 -
鉄鋼業界は、省エネ技術の海外への普及及び移転を通じて地球規模での CO2 削減に資
することが可能との認識をもっているが、京都議定書の枠組みの下での CDM では、対象プ
ロジェクトの適用条件や手続きに膨大な時間がかかる上、厳格な追加性証明が適用される
ため、省エネ技術の海外への普及が困難な状況となっている。
この状況を踏まえて、日本鉄鋼業界は JCM の FS 事業を積極的に活用し、JCM をより
機動的で、かつ相手国に調和した「協力的セクトラル・アプローチを浸透させるツール」
として、より実効性のあるエコソリューションを実現するために活用しようとしている。
また、個別技術導入後、ISO14404 の考え方を利用した製鉄所の総合エネルギー効率指標に
よる統合的アプローチを提案し、インド鉄鋼業の自律的な省エネ改善を目指している(図
23 参照)。
図 23: 統合的アプローチのイメージ
二国間オフセットメカニズム等による技術導入
技術カスタマイズ
ドリストに基づく
技術移転
プロジェクトの
省エネ効果(CO2削
減量)の評価
ISO 14404の考えに基づく製鉄所の
総合エネルギーマネジメント手法等に
よる統合的アプローチ等
次の省エネ機会の
特定
インド鉄鋼業による自律的改善
(出所)2011 年日本鉄鋼連盟プレス
省エネ対策だけではなく、鉄鋼業におけるその他の環境対策に関する協力も始まってい
る。例えば 2015 年 3 月に開催された日印鉄鋼官民協力会合では、日本の低炭素社会実行計
画をはじめとする省エネ対策や 2014 年 10 月にインド JSW 社 Vijayanagar 製鉄所で実施
した「ISO14404 を用いた製鉄所省エネルギー診断」の結果を報告されるとともに、水処理・
ダスト処理等の環境保全技術について紹介された43。こうしたインド国内の社会問題に資す
る Co-benefit(随伴便益)を持つプロジェクトは、インド側の期待が高まっていくであろ
う。
43
http://www.jisf.or.jp/news/topics/150309.html
- 108 -
3. タイ
(1). CDM の開発動向(政府承認、有効化審査、登録動向)
2009 年に公表されたタイエネルギー政策「Thailand’s Energy Policy」44の中には、温室
効果ガス排出削減を目的とした CDM の活用や一般市民の参加を通じて、環境保全ととも
にエネルギーの重要性を認識する取り組みをおこなうと掲載されているが、CDM はあまり
進んでいない。2015 年 2 月 2 日現在、147 件が国連 CDM 理事会に登録されている。バイ
オガスの利用の案件が最も多く、それに次ぎ多いのが、バイオマスによるエネルギー生産
関連のプロジェクトである(2014 年に登録された 1 件のみ)。2013 年 12 月 31 日までに、
有効化審査についたプロジェクトの累計は 273 件となっているが、ここでも大半は、メタ
ン回収プロジェクトとなっている。
図 24:登録プロジェクト(件数)
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
(2). JCM プロジェクトの開発が期待されるセクター・プロジェクトタイプの検討
①CO2 及び GHG 排出量の動向
タイの 2000 年の温室効果ガス排出量の概要を図 25 に示す。工業化の進展に伴い、2000
年には CO2 排出量は温室効果ガスの過半を占めるに至っている。セクター別においては、
エネルギー起源が最も多く、全体の 7 割程度を占めている45。エネルギー起源の CO2 排出
量においては、IEA の CO2 Emission データによる、1990 年の 8,041 万トンから、2012
年の 2 億 5,665 万トンまでに増加した。部門別で見ると発電部門は最大の排出源となって
いる(図 26、図 27)。
44
45
EPPO ホームページ. Thailand’s Energy Policy.
2000 年以降の GHG 排出量の動向に関するデータは発表されていない。
- 109 -
図 25:タイの温室効果ガス排出量の概要:排出源別、温室効果ガス別
(2000 年、千トン CO2e)
(出所)MONRE(2011)46
図 26:タイのエネルギー起源 CO2 排出量
(単位:百万t‐CO2)
300 250 200 150 100 50 0 1990
1995
発電部門
2000
産業部門(製造・建設業)
2005
運輸部門
家庭部門
2012
その他
※化石燃料燃焼による CO2 排出量のみが対象
(出所)OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
46
MONRE (2011) Thailand Second National Communication under the UNFCCC.
- 110 -
図 27:タイのエネルギー起源部門別 CO2 排出量
家庭部門, 1.45, 2%
家庭部門, 6.29, 2%
その他, 9.29, 11%
発電部門, 27.67, 34%
その他, 36.65, 14%
発電部門, 83.38, 33%
運輸部門, 60.87, 24%
運輸部門, 27.07, 34%
産業部門(製
造・建設業), 14.93, 19%
産業部門(製
造・建設業), 69.46, 27%
(1990 年、2012 年、百万トン CO2)
※化石燃料燃焼による CO2 排出量のみが対象
(出所)OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
②温暖化政策の動向
温暖化対策においては、2008 年 1 月に策定された気候変動対応国家戦略(National
Strategic Plan on Climate Change、2008-2012)があり、重点課題への対策方針として
6 つの戦略を定めた。同戦略計画は、現在完了し、後続として、国家気候変動マスタープラ
ン(National Master Plan on Climate Change、2013-2019)が作成されたが、その後 2050
年までの国家気候変動マスタープラン(National Master Plan on Climate Change、2013
-2050、ドラフト段階)と統合された。
同 マ ス タ ー プ ラ ン は 、 気 候 変 動 問 題 に 対 す る 包 括 的 な 緩 和 ( Mitigation )・ 適 応
( Adaptation ) 策 の 実 施 に 向 け た 国 家 計 画 で あ る 。 政 治 ・ 経 済 ・ 社 会 文 化 ・ 技 術
(Political/Economic/Socio-cultural/Technological、PEST)に関する周辺要素、並びに
SWOT 分析を踏まえて、各分野の現状、今後必要とされる政策や戦略を取り上げ、各分野
における短期(2016 年)、中期(2020 年)、長期・継続目標(2021 年~)の行動方針や 3
つの戦略を打ち出した。
3 つの戦略は、
(1)気候変動による影響に対する適応戦略(Adaptation)、
(2)温室効果
ガス削減及び低炭素促進戦略(Mitigation)、(3)気候変動管理能力向上計画、である。マ
スタープランは、今後 5 年ごとに見直される予定である。各期間における目標の詳細は、
次に示す(抜粋)。
- 111 -
国家気候変動マスタープランの概要
期間
短期目標
(2016 年)
目標
(ア) 何も対策を講じなかった場合(BAU)の国内全体の温室効果ガス排
出量の情報を含む、国内の温室効果ガス排出に関する全国および分野
別の最新データベースを作成する。
(イ) 温室効果ガス排出量の削減ならびに温室効果ガス削減量の売買に関
連する公式ならびに任意の活動についての登録データベースを作成
する。
(ウ) 国内における温室効果ガス排出削減活動に関する計測、報告、検証
(MRV)についての適切な仕組みを構築する。
(エ) 炭素税、炭素市場、炭素基金など、低炭素モデルの開発において動機
付けとなる地道な戦略を策定する。
(オ) 気候変動に関する研究及び開発についての国家レベルの実行計画を
策定する。
(カ) 気候変動に関する研究開発ならびにデータベースネットワークの集
約センターを設立する。
(キ) 気候変動適応及び温室効果ガス削減のための技術開発に関する国家
レベルの実行計画を定める。
(ク) 気候変動についての活動に対応するための人材開発ならびに低炭素
モデルの開発に関する国家レベルの実行計画を策定する。
(ケ) 気候変動に関する協力要請の交渉を支援するためのデータベースを
設ける。
中期目標
(2020 年)
(コ) エネルギー消費による温室効果ガス排出量を、何も対策を講じなかっ
た場合(BAU)と比較して 10%以上低減する。
(サ) 国内における最終消費エネルギーにおける再生可能エネルギーの割
合を 25%以上に増やす(2021 年の目標)。
長期・継続目
標 ( 2021 年
~)
(シ) エネルギー原単位を、何も対策を講じなかった場合(BAU)と比較
して 25%以上低減する(2030 年目標)
。
(ス) 次世代送電網(smart grid)を全国レベルで採用する。
(セ) 最終エネルギー消費を、何も対策を講じなかった場合(BAU)と比
較して 20%以上低減する(2030 年目標)。
(ソ) 低炭素排出モデル開発ならびに気候変動による影響に対する調整の
方策に対応するための人材開発計画を有する中央行政機関、地方自治
体、コミュニティーの割合を増やす。
(タ) GDP に対する温室効果ガス排出率を低減する。
- 112 -
タイ 20 ヵ年省エネルギー開発計画(Thailand 20-Year Energy Efficiency Development
Plan 2011-2030)」における部門別の削減ポテンシャル試算結果によると、輸送部門の削
減ポテンシャルが最も大きく、全体の 44.7%を占めている。産業と民生部門は、それぞれ
37.7%と 17.6%となっている(図 28)。
図 28:タイ 20 ヵ年省エネルギー開発計画:部門別削減ポテンシャルと目標
(出所)EPPO ホームページ47
省エネ計画実施のための予算として、実施期間の最初の 5 年間に、省エネルギー振興基
金(ENCON Fund)から合計 295 億バーツ(年間 59 億バーツ)を投じる予定である。様々
な省エネ対策の実施により、2030 年まで平均で年間約 14.5Mtoe の省エネと 4900 万トンの
CO2 排出削減が見込まれている(2030 年までの累積削減量は、エネルギーは 289Mtoe、
CO2 は 9 億 7600 万トンとなっている)。部門別の省エネ効果や CO2 削減ポテンシャルは
図 29 に示す。
図 29:タイ 20 ヵ年省エネルギー開発計画:部門別省エネ効果や CO2 削減見通し
(出所)EPPO ホームページ48
47
Thailand 20-Year Energy Efficiency Development Plan (2011 - 2030)
- 113 -
③今後、求められる JCM プロジェクトの分析
タイでは、2010 年度から 2013 年度、次のような F/S 事業と実証事業が行われており、
今後とも、タイ 20 ヵ年省エネルギー開発計画で指摘された省エネポテンシャルなどを踏ま
えて、産業、輸送や民生部門などについて JCM の活用を図っていく必要がある。
F/S 事業
タイにおける車両管理装置によるエコドライブ
IT 技術を活用したプラントのエネルギー消費最適化に関する調査
化学プラントにおける自家発電設備・CHP 設備の導入
タイ王国・ベトナム社会主義共和国におけるコンビニエンスストア・エコ店舗化プ
ロジェクトの案件発掘調査
タイ国における次世代型(ゼロエミッション) 太陽熱利用空調システムによる温
室効果ガス削減事業案件組成調査
タイ国における食品飲料工場への冷温同時取出ヒートポンプ導入による GHG 削
減プロジェクトの案件組成調査
タイ王国・ベトナム社会主義共和国におけるコンビニエンスストア・エコ店舗化プ
ロジェクトの案件組成調査
タイ、ベトナム、マレーシアにおける規模別商業施設向け省エネシステム導入プ
ロジェクトの案件組成調査
ベトナムおよびタイ等における水処理施設へのマイクロ水力発電設備導入案件
発掘調査
タイ王国における空調冷媒過冷却システムプロジェクトの案件(発掘)調査
工業団地での総合的エネルギー削減効果検証調査
NEDO 実証事業
分野
年度
道路交通
省エネ
(工場)
化学
2010
建物・家電
2011
太陽エネ
2011
省エネ
(工場)
2012
建物・家電
2012
省エネ
(その他)
2012
水力
2012
省エネ
(その他)
省エネ
(工場)
分野
2010
2010
2013
2013
年度
民生ビルの省エネモデル事業
省エネ
(ビル)
2011~2012
環境対応型高効率アーク炉の実証事業
省エネ
(鉄鋼)
2011~2013
キャッサバパルプからのバイオエタノール製造技術実証事業
バイオ燃料
2011~2015
酵素法によるバイオマスエタノール製造技術実証事業
バイオ燃料
2011~2015
発展途上国として、タイでは、国家気候変動マスタープランで定めた方針に沿った、省
エネや再エネ利用促進の諸気候変動対策の実施に当たって、資金の調達や環境にやさしい
技術の開発と普及に大きな制約があり、先進国からの資金援助や技術移転は重要である。
特に、タイ 20 ヵ年省エネルギー開発計画により、削減ポテンシャルが大きいセクターと
して、輸送や産業部門などが特定されたことから、これらに対して政策・措置を採ってい
く必要があり、JCM プロジェクトの開発の余地があると言えるだろう。タイは、2013 年末
時点で合計 200 件の CDM プロジェクトが登録されており、JCM を実施するために必要な
キャパシティはある程度、整っている。
48
Thailand 20-Year Energy Efficiency Development Plan (2011 - 2030)
- 114 -
また、タイ政府は、省エネの実施により、2030 年までに累積で約 9 億 7600 万 tCO2e の
排出削減が可能と推計している。この他、エネルギーの輸入依存度を低減するため、輸送
部門のバイオ燃料の利用、再生可能エネルギーの発電利用、国内エネルギー資源開発など
を推進しており、これらのタイ政府が実施している省エネ対策や、その他の施策の実施に
資するものも JCM のもとでのプロジェクト開発の可能性があるかも知れない。
- 115 -
4. チリ
(1). 基本情報49
1.
面積:75 万 6 千平方キロメートル(日本の約 2 倍)
2.
1,762 万人(2013 年、世界銀行)
3.
主要産業:鉱業、農林水産業、製造業(食品加工、木材加工)
4.
実質 GDP:2,302 億ドル(2013 年、チリ中央銀行)
5.
経済成長率:4.2%(2013 年度、チリ中央銀行)
6.
貿易(2013 年)
輸出:774 億ドル(銅、モリブデン、木材・チップ、サケ・マス、メタノール、果物、魚粉)
輸入:750 億ドル(石油・石油製品、輸送機器、通信機器、金属製品、天然ガス、化学製品)
(2). CDM の承認体制
①DNA の体制
チリは 1994 年 12 月に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)を批准し、2002 年 8 月に京
都議定書を批准している。指定国家機関(DNA)は国家環境委員会(Comisión Nacional del
Medio Ambiente:CONAMA)主催による大臣審議会が担っており、外務省、農務省、経
済省、国家エネルギー委員会(CNE)等から構成されている。
②CDM 承認手続き・承認基準
CDM プロジェクトの承認に先立ち、環境規制に適合する必要がある。この環境規制には
2 種類あり、環境影響評価審査(SIEA)対象のプロジェクトか否かによって異なる。SIEA
審査対象プロジェクトについては審査に適合する必要があり、対象外のものはプロジェク
トを管轄する各担当省庁による認可を経て、DNA が発行する承認レターを受ける必要があ
る。なお、DNA の承認にあたっては、次の情報を提供することが必要である。
・環境規制に関する認可書のコピー(SIEA 対象プロジェクトは環境資格決議書)
・オペレーションのスケジュールを含むプロジェクトの情報
・CDM の参加が自主的であることを示す誓約書
・保留中の請求がないことを示す CONAMA 地域ディレクターからのレター
承認手続きの詳細はチリ政府の HP 上では公開されてないものの、申請から承認までは 1
カ月以内50と迅速な対応が取られており、CDM プロジェクトの推進が図られている。
49
50
外務省 HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/chile/index.html
京都メカニズム - JAPAN Carbon Investors Forum - チリ発表資料
http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/pdf/Chile_public.pdf
- 116 -
(3). CDM 登録・有効化審査状況
下図は CDM におけるセクトラルスコープ別の登録済プロジェクト数の推移を示したも
のである。「エネルギー産業」が登録数・削減量ともに最も割合が大きく、「廃棄物処理」
が、これも登録数・削減量ともに 2 番手に来ている。「化学工業」は登録数では 4%未満で
はあるが、プロジェクト当たりの削減量が大きいことから、削減量全体の約 1 割強を占め
ている。
図 30:チリの登録済み CDM プロジェクト
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
登録済プロジェクト数の推移を見ると、2005 年以降は多少の幅を持ちつつ年間 10 件前
後で推移していたが、2012 年は京都議定書第一約束期間の終了に伴う駆け込みもあり 41
件が登録された。なお、その後は大幅に減少している。登録されたプロジェクトの内訳を
見ると、2010 年頃までは Scope1「エネルギー産業(再生可能エネルギー・非再生可能エネ
ルギー)」とメタンの回収・利用による Scope13「廃棄物処理」が主であったが、2010 年以
降は再生可能エネルギーを中心とした「エネルギー産業」の割合が非常に高まっている。
「エ
ネルギー産業」での内訳では、水力発電が約 4 割強を占め、風力が 24%、バイオマスが 15%
と続いている。また、足元では太陽光(熱)プロジェクトの割合が高く、太陽光(熱)プ
ロジェクトは全て 2012 年に登録されたものである。
政府は 2020 年までに BAU 比 20%温室効果ガス削減の目標達成および国内一次エネルギ
ー総供給の 7 割を輸入に頼る状況から脱するべく、純国産エネルギーである再生可能エネ
ルギーの導入を促進しており、今後もこうした動きが継続するものと考えられる。
- 117 -
表
31:2013 年以降に新たに登録されたプロジェクトの概要
年以降に新たに登録されたプロジェクトの概要
表 21:2013
Ref No.
プロジェクト名
登録年月日
セクトラル・ス
セクター
方法論
コープ
9723
E.CL 社による風
2014/01/23
力発電事業
9803
Aysen における
2013/12/06
Monreal 水力発
排出削減量
予測(t-CO2)
エネルギー産業
風力発電
ACM0002
507,358
エネルギー産業
水力発電
AMS-I.D.
4,786
エネルギー産業
風力発電
ACM0002
305,956
エネルギー産業
水力発電
AMS-I.D.
18,897
ACM0012
90,692
ACM0018
74,293
ACM0002
66,636
電事業
9741
Cabo Leones ウ
2013/10/15
インドファーム
事業
8867
Ensenada に お
2013/04/10
ける水力発電事
業
8854
Mejillones 硫 酸
エネルギー産業
廃ガス・排
2013/03/05
プラント
製造業
熱利用
8099
Lautaro に お け
エネルギー産業
バイオマス
2013/01/31
る発電事業
9248
Lagunas におけ
2013/01/02
る 30MW ソーラ
可能エネル
ーファーム
ギー
利用
エネルギー産業
その他再生
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
図 31:セクトラルスコープ別のプロジェクト数推移
(単位:件)
45
Scope 1
40
35
Scope 4
30
Scope 5
25
20
Scope13
15
10
Scope14
5
Scope15
0
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
- 118 -
図 32:登録済プロジェクトにおける「エネルギー産業」領域の内訳
非再生可
能エネル
ギー7%
地熱
1%
太陽光
9%
水力
44%
バイオマス
15%
風力
24%
(出所)UNFCCC ホームページより日本エネルギー経済研究所作成
(4). JCM プロジェクトの開発が期待されるセクター・プロジェクトタイプの検討
①CO2 及び GHG 排出量の動向
CO2 総排出量は急速に進展した経済成長を背景として、1990 年の 3,081 万トンから 2012
年では 7,777 万トンとおよそ 2.5 倍に拡大した。増加の内訳を見てみると、増加に対する寄
与率の大きい順に、発電部門(54.3%)、運輸部門(28.1%)、産業部門(10.5%)、その他
(4.9%)、家庭部門(2.2%)となっている(カッコ内は寄与率を示す)
。なお、2000 年以
降では発電部門の伸びが大きく(2000 年以降の CO2 排出量の増加分に占める発電部門の
割合は 78.3%)、逆に産業部門の排出量は 1 割弱減少している。
図 33:部門別 CO2 排出量の推移
(単位:百万t‐CO2)
80 70 60 50 40 30 20 10 0 1990
1995
発電部門
2000
産業部門(製造・建設業)
2005
運輸部門
家庭部門
2012
その他
(出所)OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
- 119 -
2012 年における部門別の CO2 排出量割合では発電部門(43%)、運輸部門(28%)の割
合が大きく、産業部門は 17%と小さい。チリは世界の銅生産のおよそ 3 割を担っており、
鉱山事業が経済の柱となっているものの、製造業があまり盛んではないことが CO2 排出量
割合の低い理由として考えられる。
図 34:部門別 CO2 排出量割合
家庭部門, 3.55, 5%
その他, 5.43, 7%
発電部門, 33.68, 43%
運輸部門, 22.2, 28%
産業部門(製
造・建設業), 12.91, 17%
(単位:百万t‐CO2,%)
(出所)OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
②UNFCCC にチリが提出した第 2 次国家報告書の GHG 排出量データ
下図は 2006 年における GHG 排出量データを示している。部門別ではエネルギー産業、
工業、運輸、木質燃料などのエネルギー部門が 73%と最も割合が高く、以下、農業部門の
17%、工業プロセス部門の 7%、廃棄物の 3%と続いている。
図 35:部門別 GHG 排出量および割合
廃棄物, 24.89,3%
農業部門, 134.01,17%
工業プロセス
部門, 53.61,7%
エネルギー
部門, 578.06,73%
(単位:百万t‐CO2,%)
(出典)Second National Communication of Chile to the United Nations Framework
Convention on Climate Change より日本エネルギー経済研究所作成
- 120 -
③国の温暖化政策及びエネルギー政策の動向
チリは国内の化石燃料資源に乏しく、IEA のデータによると、一次エネルギー総供給の
うち、約 7 割を輸入に依存している。国内のエネルギーとしては、水力とバイオ燃料およ
びバイオマスがあり、電力部門では水力発電が約 3 割程度を占めている。しかし、電力部
門の大部分は輸入に依存する化石燃料で賄われており、この 20 年間で 3 度の電力供給危機
に直面した。1998~1999 年では渇水に伴う水力の発電電力量の減少、2004 年はアルゼン
チンからの天然ガス供給の制限、2007~2008 年ではその 2 つが同時に発生している。これ
らの電力供給危機の間、首都サンティアゴでの輪番停電や電気料金値上げ等による需要抑
制など、様々な対応に追われた経緯があり、安定したエネルギーの確保が課題となってい
る。
これらを踏まえ、チリは 2012 年 2 月に「国家エネルギー戦略(National Energy Strategy
2012-2030)」を公表しており、その中で省エネ行動計画を策定している。同戦略では、2020
年までにエネルギー総需要を 12%削減する目標を掲げており、この削減分は 41,500Tcal
に相当し、1,122MW 分の発電設備および 4.15Mtoe のエネルギー消費の抑制に資するとし
ている。
また、温暖化対策としては、チリは 2020 年までに BAU 比 20%の温室効果ガス削減を自
主的な目標として約束した。目標達成の手段として、省エネの推進、再生可能エネルギー
の導入、土地利用、土地利用変化および林業による対策をメインとしている。この取組み
の中、チリでは国内初となる炭素税(南アメリカではメキシコに次ぐ 2 番目の導入となる)
の導入を進めており、発電容量が 50MW 以上の発電所に対して、二酸化炭素排出 1 トン当
たり 5 ドルの課税を 2017 年に開始する予定である51。
また、広大な砂漠と 6,400km に及ぶ海岸線を保持していることから、太陽光と風力のポ
テンシャルが大きく、再生可能エネルギーの積極的な導入を計画している。再生可能エネ
ルギーの導入により、温室効果ガスの排出削減に加え、純国産エネルギーの獲得が可能と
なる。2020 年までに BAU 比 20%温室効果ガス削減の目標達成および国内一次エネルギー
総供給の 7 割を輸入に頼る状況から脱するべく、取り組みが進められている。
④JCMFS 実施状況/VCS の実績
平成 26 年度の JCSFS は、経産省による「高効率発電技術の導入による JCM プロジェ
クト実現可能性調査」(実施事業者:株式会社三菱総合研究所)および NEDO による「チ
リにおける商業・産業部門のルーフトップ向け高効率太陽光発電システムプロジェクトの
案件発掘調査」(実施事業者:株式会社日本総合研究所)が行われる。
また、チリにおける VCS 事業では、水力、風力など再生可能エネルギーによる発電事業
が多く見受けられ、CDM 事業と同様の傾向である。なお、水力発電は数万~10 万 kW 規
模が中心となっている。
51
世界銀行(2014)「State and Trends of Carbon Pricing」
- 121 -
表
36:チリにおける VCS
VCS プロジェクトの概要
プロジェクトの概要
表 22:チリにおける
(出典)VCS 発表資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
⑤今後、求められる JCM プロジェクトの分析
チリは国内の化石燃料資源に乏しいものの、再生可能エネルギーのポテンシャルは豊富
である。
水力はすでに全発電量の 3 割程度を占めるほど活用されており、今後も主要電源として
位置付けられているものの、渇水によって大きな影響を受けた過去の例から、他の再生可
能エネルギー利用のニーズもあると考えられる。
太陽光は北部にある砂漠地帯を筆頭にポテンシャルが大きく、また、足元では CDM プロ
ジェクトの登録が増加しており、今後の有望分野であると言える。また、国の中央部およ
び南部地域では多くのバイオマス資源が存在しており、熱や電気エネルギー利用が可能で
ある。さらに、沿岸地域では風力エネルギーの開発に最適な自然条件を持つ谷がいくつも
あり、有望な地熱資源も豊富に揃っている。
チリは地震や火山活動が活発な環太平洋火山帯にまたがっていることから、特に地熱資
- 122 -
源のポテンシャルが大きいとされる。地熱資源の開発はこれまでほとんど行われて来なか
ったものの、現在は南米初となる地熱発電所に向け、建設計画が進んでいるところである。
地熱発電は安定した発電が可能な電源の側面を持つことから、エネルギー自給率の向上と
安定電源の確保を狙うチリのニーズは高いものと考えられる。
- 123 -
5. サウジアラビア
(1). 基本情報
1.
国土面積:215 万平方キロメートル
2.
人口:2,920 万人(内外国人 936 万人)
3.
産業:石油、石油化学、LPG
4.
GDP:7,110 億ドル
5.
経済成長率:5.1%
6.
貿易
7.
輸出:3,960 億ドル(内訳:原油、石油製品、LPG)
輸入:1,280 億ドル(内訳:機械製品、食料品、繊維製品)
(2). CDM の承認体制
①DNA の体制
サウジアラビアの DNA は同国の国家クリ―ン開発メカニズム委員会が務めている。同委
員会は石油鉱物資源省を中心にその他の関係省庁・企業52から構成され、事務局も石油鉱物
資源省に置かれている。
②CDM 承認手続き・承認基準
a.
申請書の提出
申請者には以下の書類の提出が義務付けられている。
・ 申請書
・ 申請者の設立関連書(登記簿の写しなど)
・ PDD
・ 質問票
・ DNA が審査をするのに有用な資料
・ 書類の完全性・真実性を誓う覚書(申請書の一部)
その他に、プロジェクトの性質に応じて追加の書類の提出を求めることがある。
b.
ステークホルダーコメントの募集
事務局が申請書に不備のないことを確認したのち、PDD を CDM 委員会のウェブサイト
に掲載する。これにより第三者からのコメントを受け付ける。
52
自治省、商工業省、保健省、水電力省、農業省、環境保護気象庁、ジュベイル・ヤンブー王立委員会、
Saline Water Conversation Corporation、アブドッラー国王原子力・再生可能エネルギー都市、電力コジ
ェネ規制公社、サウジアラムコ、サウジ基礎産業公社、サウジ電力公社、キングアブドラアジズ科学技術
市
- 124 -
c.
技術的プロジェクト評価リポートの準備
b. と同時に、CDM 委員会の技術的プロジェクト評価レポートチームが以下の基準で PDD
を審査を行う。
・ プロジェクトがサウジアラビアの持続可能な開発に寄与すること。
・
CDM 登録の実現可能性と CDM の追加性の条件を満たしていること。
・
プロジェクトがモニタリング方法論に合致していること。
レポートには b.で募集したコメントと技術評価チームの提案が反映される。
d.
委員会の投票
申請されたプロジェクトの承認の可否について委員会で投票を行う。承認の場合、承認通
知を、不承認の場合、不承認通知を発行する。
e.
再検討の申し立て(不承認の場合)
d.で不承認となった場合、申請者は石油鉱物大臣に決定を再検討する旨申し立てること
ができる。
図 37:サウジアラビアにおける政府承認手続きの流れ
申請者
不承認通知の30
日以内であれば
申請書の提出
PDDを委員会ホー
ムページに掲載
事務局
技術評価ユニット
石油鉱物大臣
技術専門家のインプット
技術評価レポートの
作成
技術評価レポート
技術評価レポート
の提出後、10営
委員会
委員会の決定の
伝達
5営業日以内に承
認通知または不
委員長
(出典)各種資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
- 125 -
(3). CDM プロジェクトの開発状況
現在 CDM 理事会に登録されているサウジアラビアのプロジェクトは以下の 6 件である。
登録日
2012/7/23
プロジェクト名
Madinah Landfill Gas Capture
参加国
削減量(t)
スイス
139,108
イギリス
355,425
Project
2012/11/12
Jeddah Old Landfill and Jeddah New
Landfill Gas Recovery Bundled
Project
2012/12/7
Solar Power Project at North Park
8,613
Building
2014/4/24
Installation of a tri-generation
アイルランド
6,515
system supplying energy to a
commercial Building
2014/7/17
Efficiency Improvement by Boiler
41,831
Rehabilitation in fossil fuel-fired
(Natural Gas) Steam Boiler System
現在のところ、サウジアラビアがホスト国となっている CDM プロジェクトは 6 件にとど
まり、その内訳も廃棄物埋め立て地のメタンガス燃焼、そして太陽光発電等となっている。
サウジアラビアは、二酸化炭素隔離貯蔵(CCS)プロジェクトを CDM 対象事業に含め
ることに強く主張し、2010 年の COP16/CMP6 において、CCS を CDM 事業として実施す
ることが認められた。しかし、いまだに承認された方法論がないため、CDM プロジェクト
として登録された CCS はない。CCS の CDM 化にあたっては、ホスト国における法整備が
求められているが、サウジアラビアにおいて CCS に関連する法整備の進展は見られない53。
(4). JCM プロジェクトの開発が期待されるセクター・プロジェクトタイプの検討
①CO2 及び GHG 排出量の動向
サウジアラビアのエネルギー由来の CO2 排出量は、1990 年の 5 億 8000 万トンから 2000
年には 9 億 7800 万トンに増加し、さらに 2012 年には 19 億 5400 万トンとなっている。こ
のように、サウジアラビアの温室効果ガス排出量は 10 年毎に倍増してきている。2012 年
の内訳では、発電部門が全体の 54%を占め最大となっており、ついで産業部門が 25%とな
っている。
53
Baker and McKenzie,
http://cdn.globalccsinstitute.com/sites/default/files/publications/27352/gccsi-update-report-v9-1416504
-syddms.pdf
- 126 -
図 38:サウジアラビアにおける CO2 排出量の推移
(単位:百万t‐CO2)
2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1990
1995
発電部門
2000
産業部門(製造・建設業)
2005
運輸部門
家庭部門
2012
その他
出典:OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
図 39:セクター別 CO2 排出量の内訳(左:1990 年、右:2012 年)
家庭部門, 80.58, 4%
その他, 139.73, 7%
運輸部門, 216.23, 11%
産業部門(製
造・建設業), 473.23, 24%
発電部門, 1044.24, 54%
(単位:百万t‐CO2,%)
出典:OECD/IEA(2014)“CO2 Emissions From Fuel Combustion Highlights 2014”
②サウジアラビアの温暖化政策・エネルギー政策の動向
サウジアラビアは、OPEC の盟主として、温暖化緩和政策に伴う石油消費の減退による
産油国の利益減少を懸念してきた。そのため、気候変動政策は一貫して産油国の権益を守
ることを前提に進めてきた。一方で CDM においては、既に述べたように CCS を含めるこ
とを強く主張し続けてきた(サウジアラビアは石油増進回収法としての CCS が盛んである)。
UNFCCC における国際交渉ではこうした意向を一貫して示してきた一方、国内的には安
価な化石燃料の需要が増加を続けており、このまま需要が増加し続ければ将来的には輸出
- 127 -
の余力を残さなくなる見込みである。このため、国内の石油および天然ガス消費を抑える
ことには積極的な姿勢をしめしており、国内的には省エネと再生可能エネルギーの利用を
推進し、結果として化石燃料由来の温室効果ガス排出を抑制する動きが活発となっている。
このような国内状況を踏まえて作成されたサウジアラビアは気候変動対策では、a. カー
ボンマネジメント、b. 水の持続可利用、c. フレアガス管理、d. 省エネルギー、そして e. 原
子力及び再生可能エネルギーなどが主要な項目としてあげられている。それぞれの項目の
内容は以下のようになっている。
a. カーボンマネジメント
サウジアラビアによるカーボンマネジメントとは、CCS と CCU を指す。現在、
サウジアラムコを中心に CCS のパイロットプロジェクトが行われている。EOR を
中心に行われている。また、サウジ基礎産業公社では、パイロットプロジェクトし
てジュバイルのエチレン工場から 1 日 1,500 トンの二酸化炭素を収集し、純度を上
げるプロセスを経て他の産業用途に利用するプロジェクトを実施している。このプ
ロジェクトで年間 50 万トンの二酸化炭素の大気への放出防止を見込んでいる。
b. 水の持続的利用
水資源の乏しいサウジアラビアでは、石油ボイラで海水を蒸発させて真水を生産
している工程で大量の二酸化炭素を排出している。このため、節水や下水の再処理
による利用を実施している。
c. フレアガスの管理
石油の採掘や精製において大量のフレアが行われているが、先進的な設備とモニ
タリングシステムによりフレアガスの最小化及び効率的なフレアを目指し、ガスの
利用の最適化及びメタン排出削減を図っている。
d. 省エネルギー
サウジアラビア省エネルギーセンター(SEEC)中心となって、省エネルギーを
推進している。現在、建物、運輸、産業部門を対象にサウジアラビア省エネルギー
プログラム(SEEP)を実施している。建物及び運輸部門では、省エネ基準とラベ
リング及び啓蒙活動に取り組んでいる。産業部門については、エネルギーマネジメ
ントプログラムを推進中である。その他にコジェネレーションの普及等を通じて、
国全体のエネルギー消費効率化を推進している。
e. 原子力及び再生可能エネルギー
サウジアラビアは、アブドッラー国王原子力・再生可能エネルギー都市(KACARE)
を中心に再生可能エネルギーの利用を推進している。原子力の利用については、具
体的な計画はないもののプロジェクトの計画や周辺環境の整備が進められている。
再生可能エネルギーについては、太陽光と地熱に注力している。太陽光発電におい
ては、すでに 10MW 級の発電所設置したほか、現在は 100MW の規模の大型の設
- 128 -
備も計画中である。地熱については現在研究段階にあり、フラッシュ型、バイナリ
型、高温岩体型の発電所を検討中のほか、ヒートポンプを利用した家庭用空調装置
や地域冷房等への応用も研究中である。
③JCM FS 実施状況
平成 26 年度に株式会社みずほ銀行が太陽光発電・複合ガス火力等の導入による JCM プ
ロジェクト実現可能性調査を実施している。
④今後、求められる JCM プロジェクトの分析
上記のように、サウジアラビアでは急増する国内のエネルギー需要への対応が今後の課
題となっている。この対応策の一つとして、太陽光などを活用した化石燃料以外のエネル
ギー供給源を確保することが考えられる。サウジアラビアは晴天日数が多く、膨大な日射
量を見込める機構にあるため、太陽光を利用した発電にポテンシャルがある。さらに、国
民の大部分は大都市に集中して居住し、国土の大半の砂漠は利用されていない。このため、
大規模発電施設のために土地を用意することも容易である。ただし、サウジアラビアの最
高気温は摂氏 50℃に達する日数も多いため、現在の技術では太陽光パネルの発電効率の低
下及びパネルの低下といった問題を生じる可能性がある。このため、太陽光の利用の際に
は太陽光電池のみならず、太陽熱の観点も含め幅広く検討すべきである。
また、サウジアラビアでは現在産業部門の省エネルギーを進めている。なかでも、セメ
ント、石油化学、鉄鋼の分野で重点的に省エネルギーに取り組むとしている。このため、
我が国の省エネルギー技術をこうした分野で活かすことで、サウジアラビアの温室効果ガ
ス削減に寄与できると考えられる。
- 129 -
- 130 -
第 4 章 CDM/JI 事業実施者に向けた
情報提供体制の構築および運営
- 131 -
- 132 -
1.
DOE の現状・専門性
CDM プロジェクトの登録や、CER の発行を受ける際にプロジェクトの検証及び認証を
得るため、第 3 者認証組織として COP/MOP によって指定された運営組織(OE)がプロジ
ェクトの審査を行う。ここでは、登録件数及び CER 発行件数に分けて DOE の活動を集計
した。
(登録)
表 23 に DOE 別登録件数一覧を示す。CDM プロジェクトの有効審査を行い、CDM 理事
によって登録されたプロジェクト数は、2014 年末の時点で 7,597 件、これらのプロジェク
トの審査をおこなった DOE 数は 43 であった。これらの DOE のうち、図 40に示すよう
に、DNV が 1,756 件、TÜV SÜD が 850 件、TÜV NORD が 793 件、TÜV Rheinland が
676 件、BVCH が 655 件、SGS が 543 件とこれらの 6 社で登録されたプロジェクトの有効
化審査の約 70%を占めている。こうした状況は、図 41に DOE 別の登録件数の推移を示
すように、プロジェクトの登録が始まった 2004 年以降続いてきたが、2010 年以降は、こ
れら 6 つの DOE 以外の登録件数が増加した。2012 年に駆け込みで登録が多数あったが、
2013 年以降は全体として、大きく減少している。
次に、DOE が行ったプロジェクトの有効化審査をセクトラルスコープ別に集計したもの
を図 42 に示す。ここでは、上記の上位 6 社の活動をセクトラルスコープ別に集計した。そ
の結果、当然のことながら、どの DOE も登録件数の多いスコープ 1 の割合が高い。また、
DNV はスコープ 13、TÜV SÜD はスコープ 15 のプロジェクトの有効化審査を行った件数
が、他の DOE と比べて多いことがわかる。
DOE のうち、日本から JQA、JACO、JCI、Deloitte-TECO、KPMG-AZSA、EYSUS、
NKKKQA、JMA の 8 つが活動している。これらによる有効化審査によって登録されたプ
ロジェクト数は 2014 年末の時点で 397 件、全体の約 5%となっている。
- 133 -
表 23 DOE 別登録件数一覧
組織番号
E-0001
E-0002
E-0003
E-0005
E-0006
E-0007
E-0008
E-0009
E-0010
E-0011
E-0013
E-0014
E-0016
E-0018
E-0020
E-0021
E-0022
E-0023
E-0024
E-0025
E-0027
E-0028
E-0029
E-0030
E-0031
E-0032
E-0034
E-0037
E-0038
E-0039
E-0040
E-0041
E-0042
E-0044
E-0045
E-0046
E-0047
E-0048
E-0049
E-0050
E-0051
E-0052
E-0054
E-0055
E-0056
E-0057
E-0058
E-0060
E-0061
E-0062
E-0063
E-0064
E-0065
E-0066
組織名
指定を受けた
プロジェクト
セクトラルスコープ
件数
(有効化審査)
JQA
1, 3-5, 9, 10, 13, 14
62
JACO
1, 3, 13, 14
71
DNV
1, 3, 5, 13, 14
1756
TÜV SÜD
1-15
850
Deloitte-TECO
1-5, 8, 10, 12, 13, 15
64
JCI
1, 2, 4, 5, 8-10, 13
197
KPMG-AZSA
1-3, 10
0
BVCH
1-15
655
SGS
1-7, 9-13, 15
543
KEMCO
1, 3-5, 7, 9, 11-15
69
TÜV Rheinland
1-15
676
KPMG
6
ERM CVS
1-5, 8-10, 13, 15
243
BSI
2
CRA
1, 4, 5, 8-10, 12, 13
2
AENOR
1-15
107
TÜV NORD
1-16
793
LRQA
1-13
212
ICONTEC
1-5, 7, 10, 13-15
44
KFQ
1-5, 8-11, 13
108
SQS
1-15
51
EYSUS
1-3
0
PwC
1
NKKKQA
1, 3-5, 7, 12, 13
0
1-4, 7, 9, 10, 12, 13, 15
96
PJRCES
LGAI Tech. Cente
1, 13
80
CEC
1-15
126
RINA
1-11, 13-15
246
SIRIM
1-4, 7-10, 13, 15
68
KSA
1-5, 9, 10, 13
18
KECO
1-7, 9, 10, 13-15
13
JMA
1-4, 6, 8, 9, 14
3
GLC
1-5, 7-10, 13, 15
75
CQC
1-15
155
EYG
14
3
CCSC
1-10, 13
24
CEPREI
1-5, 8-10, 13, 15
56
Deloitte Cert
1-3, 5
0
I.C.F.R.E
14
0
HKQAA
1
8
KBS
3-5, 7, 9, 10, 12, 13, 1
56
Carbon Check
1-5, 8-10, 13, 14
15
Re-consult
1
14
URS
1, 13
23
KTR
1, 4, 5, 9-11, 13
1
IBOPE
1
1
MASCI
1, 3, 4, 9, 10, 13, 15
0
KR
1, 7, 13
0
CTI
1-4, 6-10, 13
3
EPIC
1-11, 13-15
1
NAC
1-13, 15
0
BRTUV
1-5, 12-14
0
CTC
1-4, 6, 13
0
1, 3-5, 8, 10, 12, 13, 15
0
Earthood
略称
Japan Quality Assurance Organisation
JACO CDM., LTD
DNV Climate Change Services AS
TÜV SÜD South Asia Private Limited
Deloitte Tohmatsu Evaluation and Certification Organization
Japan Consulting Institute
KPMG AZSA Sustainability Co. Ltd.
Bureau Veritas Certification Holding SAS
SGS United Kingdom Limited
Korea Energy Management Corporation
TÜV Rheinland (China) Ltd.
KPMG Sustainability B.V. (KPMG) — withdrawn (EB51)
ERM Certification and Verification Services Limited
British Standards Institution (BSI) — withdrawn (EB44)
Conestoga Rovers & Associates Limited
Spanish Association for Standardisation and Certification
TUV NORD CERT GmbH
Lloyd’s Register Quality Assurance Ltd.
Colombian Institute for Technical Standards and Certification
Korean Foundation for Quality
Swiss Association for Quality and Management Systems
Ernst & Young Sustainability Co., Ltd.
PricewaterhouseCoopers - South Africa (PwC) — withdrawn (EB44)
Nippon Kaiji Kentei Quality Assurance Limited
Perry Johnson Registrars Carbon Emissions Services
LGAI Technological Center, S.A.
China Environmental United Certification Center Co., Ltd.
RINA Services S.p.A.
SIRIM QAS INTERNATIONAL SDN.BHD
Korean Standards Association
Korea Environment Corporation
Japan Management Association
Germanischer Lloyd Certification GmbH
China Quality Certification Center
Ernst & Young Associes (France)
China Classification Society Certification Company
CEPREI certification body
Deloitte Cert Umweltgutachter GmbH
Indian Council of Forestry Research and Education
Hong Kong Quality Assurance Agency
KBS Certification Services Pvt. Ltd
Carbon Check (Pty) Ltd
re-consult Ltd.
URS Verification Private Limited
Korea Testing & Research Institute
IBOPE Instituto Brasileiro de Opiniao Publica e Estatistica Ltda.
Foundation for Industrial Development
Korean Register of Shipping
Shenzhen CTI International Certification Co., Ltd
EPIC Sustainability Services Pvt. Ltd.
Northeast Audit Co., Ltd.
BRTUV Avaliacoes da Qualidade S.A.
CTC
Earthood Services Private Limited
表注; スコープ 1: エネルギー産業 (再生可能・非再生可能エネルギー源), スコープ 2: エネルギー配送, スコープ 3: エ
ネルギー需要, スコープ 4: 製造業, スコープ 5: 化学工業, スコープ 6: 建設業, スコープ 7: 運輸, スコープ 8: 鉱業・鉱
物生産業, スコープ 9: 金属生産, スコープ 10: 燃料からの漏出(固形、石油およびガス), スコープ 11: HFC、PFC およ
び SF6 の生産・消費からの漏出, スコープ 12: 溶剤の使用, スコープ 13: 廃棄物処理・処分, スコープ 14: 植林・再植
林, スコープ 15: 農業
- 134 -
JCI, 197 , 2.6%
その他, 1,426 , 18.8%
LRQA, 212 , 2.8%
ERM CVS, 243 , 3.2%
DNV, 1,756 , 23.1%
TÜV SÜD, 850 , 11.2%
RINA, 246 , 3.2%
SGS, 543 , 7.1%
BVCH, 655 , 8.6%
図 40
図 41
TÜV NORD, TÜV 793 , 10.4%
Rheinland, 676 , 8.9%
DOE 別累計登録件数
DOE 別登録件数
- 135 -
図 42 セクトラルスコープ別 DOE によるプロジェクトの登録件数
表注; スコープ 1: エネルギー産業 (再生可能・非再生可能エネルギー源), スコープ 2: エネルギー配送, スコープ 3: エ
ネルギー需要, スコープ 4: 製造業, スコープ 5: 化学工業, スコープ 6: 建設業, スコープ 7: 運輸, スコープ 8: 鉱業・鉱
物生産業, スコープ 9: 金属生産, スコープ 10: 燃料からの漏出(固形、石油およびガス), スコープ 11: HFC、PFC およ
び SF6 の生産・消費からの漏出, スコープ 12: 溶剤の使用, スコープ 13: 廃棄物処理・処分, スコープ 14: 植林・再植
林, スコープ 15: 農業
(CER 発行)
表 24 に DOE 別モニタリングレポート提出件数を示す。CER の発行を受ける際に必要と
なるモニタリングレポートの作成は、プロジェクトの検証及び認証を行うことを COP/MOP
によって指定された OE が行う。2014 年末の時点で 53 の OE が指定されている。
モニタリングレポートは、DNV が 1,922 件、SGS が 1,767 件、TÜV SÜD が 1,021 件、
BVCH が 932 件、TÜV NORD が 777 件、TÜV Rheinland が 310 件と、これらの 6 社が
有効化審査と同様に全体の約 82%を占め、大きな割合となっている。図 44のモニタリン
グレポートの提出件数の推移をみると、この状況は CER の発行が本格化した 2007 年以降
から続いていることがわかるが、2012 年以降はその他の DOE によるモニタリングレポー
トの提出も増加している。
セクトラルスコープ別で DOE によるモニタリングレポートの提出件数を集計すると、ど
の DOE もスコープ 1 の件数が多い。しかし、有効化審査の場合と異なり、DNV はスコー
プ 13 の件数が多く、SGS はスコープ 11、TÜV SÜD はスコープ 5 の件数多いなど、DOE
によって差異が見られる。
モニタリングレポートを提出した DOE のうち、日本の DOE が提出した件数は 207 件、
全体の約 2%である。
- 136 -
表 24 DOE 別モニタリングレポート提出件数
組織番号
E-0001
E-0002
E-0003
E-0005
E-0006
E-0007
E-0008
E-0009
E-0010
E-0011
E-0013
E-0014
E-0016
E-0018
E-0020
E-0021
E-0022
E-0023
E-0024
E-0025
E-0027
E-0028
E-0029
E-0030
E-0031
E-0032
E-0034
E-0037
E-0038
E-0039
E-0040
E-0041
E-0042
E-0044
E-0045
E-0046
E-0047
E-0048
E-0049
E-0050
E-0051
E-0052
E-0054
E-0055
E-0056
E-0057
E-0058
E-0061
E-0062
E-0063
E-0064
E-0065
E-0066
組織名
略称
Japan Quality Assurance Organisation
JACO CDM., LTD
DNV Climate Change Services AS
TÜV SÜD South Asia Private Limited
Deloitte Tohmatsu Evaluation and Certification Organization
Japan Consulting Institute
KPMG AZSA Sustainability Co. Ltd.
Bureau Veritas Certification Holding SAS
SGS United Kingdom Limited
Korea Energy Management Corporation
TÜV Rheinland (China) Ltd.
KPMG Sustainability B.V. (KPMG) — withdrawn (EB51)
ERM Certification and Verification Services Limited
British Standards Institution (BSI) — withdrawn (EB44)
Conestoga Rovers & Associates Limited
Spanish Association for Standardisation and Certification
TUV NORD CERT GmbH
Lloyd’s Register Quality Assurance Ltd.
Colombian Institute for Technical Standards and Certification
Korean Foundation for Quality
Swiss Association for Quality and Management Systems
Ernst & Young Sustainability Co., Ltd.
PricewaterhouseCoopers - South Africa (PwC) — withdrawn (EB44)
Nippon Kaiji Kentei Quality Assurance Limited
Perry Johnson Registrars Carbon Emissions Services
LGAI Technological Center, S.A.
China Environmental United Certification Center Co., Ltd.
RINA Services S.p.A.
SIRIM QAS INTERNATIONAL SDN.BHD
Korean Standards Association
Korea Environment Corporation
Japan Management Association
Germanischer Lloyd Certification GmbH
China Quality Certification Center
Ernst & Young Associes (France)
China Classification Society Certification Company
CEPREI certification body
Deloitte Cert Umweltgutachter GmbH
Indian Council of Forestry Research and Education
Hong Kong Quality Assurance Agency
KBS Certification Services Pvt. Ltd
Carbon Check (Pty) Ltd
re-consult Ltd.
URS Verification Private Limited
Korea Testing & Research Institute
IBOPE Instituto Brasileiro de Opiniao Publica e Estatistica Ltda.
Foundation for Industrial Development
Shenzhen CTI International Certification Co., Ltd
EPIC Sustainability Services Pvt. Ltd.
Northeast Audit Co., Ltd.
BRTUV Avaliacoes da Qualidade S.A.
CTC
Earthood Services Private Limited
指定を受けた
セクトラルスコープ
(有効化審査)
1, 3-5, 11, 13, 14
1-4, 13, 14
1-15
1-15
1-10, 12, 13, 15
1, 2, 4, 5, 9, 10, 13
1-3, 10
1-15
1-13, 15
1-15
1-15
JQA
JACO
DNV
TÜV SÜD
TECO
JCI
KPMG-AZSA
BVCH
SGS
KEMCO
TÜV Rheinland
KPMG
ERM CVS
1-5, 8-10, 13, 15
BSI
CRA
1, 4, 5, 10, 12, 13
AENOR
1-15
TÜV NORD
1-15
LRQA
1-13
ICONTEC
1-5, 7, 8, 13-15
KFQ
1-5, 11, 13
SQS
1-15
EYSUS
1-3
PwC
NKKKQA
1, 3-5, 7, 12, 13
PJRCES
1-4, 7, 9, 12, 13, 15
LGAI Tech. Cente
1, 13
CEC
1-15
RINA
1-8, 10, 11, 13-15
SIRIM
1-4, 7, 10, 13, 15
KSA
1-5, 13
KECO
1-7, 13-15
JMA
1-4, 6, 8, 9, 14
GLC
1-5, 7, 8, 10, 13, 15
CQC
1-15
EYG
14
CCSC
1-10, 13
CEPREI
1-5, 8-10, 13, 15
Deloitte-TECO
1-3, 5
I.C.F.R.E
14
HKQAA
1
KBS
1, 3-5, 7, 12, 13, 15
Carbon Check
1-5, 8-10, 13
Re-consult
1
URS
1, 13
KTR
1, 4, 5, 11, 13
IBOPE
1
MASCI
1, 3, 4, 13, 15
CTI
1-4, 6-10, 13
EPIC
1-11, 13-15
NAC
1-13, 15
BRTUV
1-5, 12-14
CTC
1-4, 6, 13
1, 3-5, 8, 10, 12, 13, 15
Earthood
プロジェクト
件数
54
83
1922
1021
0
66
0
932
1767
22
310
0
161
0
2
95
777
137
48
26
10
0
0
0
21
34
153
88
48
12
4
4
80
139
0
3
33
80
0
0
29
3
2
2
7
0
0
15
1
0
0
0
0
表注; スコープ 1: エネルギー産業 (再生可能・非再生可能エネルギー源), スコープ 2: エネルギー配送, スコープ 3: エ
ネルギー需要, スコープ 4: 製造業, スコープ 5: 化学工業, スコープ 6: 建設業, スコープ 7: 運輸, スコープ 8: 鉱業・鉱
物生産業, スコープ 9: 金属生産, スコープ 10: 燃料からの漏出(固形、石油およびガス), スコープ 11: HFC、PFC およ
び SF6 の生産・消費からの漏出, スコープ 12: 溶剤の使用, スコープ 13: 廃棄物処理・処分, スコープ 14: 植林・再植
林, スコープ 15: 農業
- 137 -
CQC, 139 ,
1.7%
LRQA, 137 ,
1.7%
CEC, 153 ,
1.9%
その他, 872 ,
10.6%
DNV, 1,922 ,
23.5%
ERM CVS,
161 , 2.0%
TÜV
Rheinland,
310 , 3.8%
SGS, 1,767 ,
21.6%
TÜV NORD,
777 , 9.5%
TÜV SÜD,
1,021 , 12.5%
BVCH, 932 ,
11.4%
図 43
図 44
DOE 別累計モニタリングレポート提出件数
DOE 別モニタリングレポート提出件数
- 138 -
0
500
DNV
1000
1095
1500
205
145
2000
426
80
2500
scope 1
scope 2
scope 3
SGS
1285
6753
228
156
scope 4
scope 5
scope 6
TÜV SÜD
573
233
79 230
scope 7
scope 8
scope 9
BVCH
951
5
scope 10
scope 11
scope 12
TÜV NORD
694
scope 13
scope 14
scope 15
TÜV Rheinland
251
図 45 セクトラルスコープ別 DOE によるプロジェクトのモニタリングレポート提出件数
表注; スコープ 1: エネルギー産業 (再生可能・非再生可能エネルギー源), スコープ 2: エネルギー配送, スコープ 3: エ
ネルギー需要, スコープ 4: 製造業, スコープ 5: 化学工業, スコープ 6: 建設業, スコープ 7: 運輸, スコープ 8: 鉱業・鉱
物生産業, スコープ 9: 金属生産, スコープ 10: 燃料からの漏出(固形、石油およびガス), スコープ 11: HFC、PFC およ
び SF6 の生産・消費からの漏出, スコープ 12: 溶剤の使用, スコープ 13: 廃棄物処理・処分, スコープ 14: 植林・再植
林, スコープ 15: 農業
- 139 -
2.
AIE の現状・専門性
(1). JI 認定パネルについて
2006 年 2 月に JI 監督委員会が設立された後、同委員会は、COP/CMP 1 の決議54に従っ
て、2006 年 5 月にその下部組織として JI 認定パネル(以下、認定パネルと表す)を設置
し、認定パネルの勧告に基づき独立組織55を認定することを決定した。認定パネルは、2006
年 7 月に開催された第 1 回会合以降、JI 独立組織の認定に関する活動を行っている。なお
2013 年 8 月以降、開催されていない。
認定パネルは、 JI 監督委員会委員から選任された議長、副議長、一般から公募され同
委員会で選任された 6 名の委員の計 8 名で構成されている。
<2015 年 2 月現在の認定パネル委員の構成>
氏名
役割
Mr. Benoit Leguet
パネル議長(JI 監督委員会委員)
Mr. Calros Fuller
パネル副議長(JI 監督委員会委員)
Mr. Venkataraman Balakrishnan
委員
Mr. Abderrahmane Naas
委員
Ms. Anastasia Northland
委員
Mr. Takashi Otsubo
委員
Ms. Anikó Pogány
委員
Mr. Francesco Tubiello
委員
(2). JI 独立組織の認定状況
2006 年 11 月に認定申請受付を開始後、2014 年 3 月現在の申請数は 15 件。この 15 件の
申請の地域分布を見ると、西ヨーロッパおよびその他地域から 10 件、アジア太平洋地域か
ら 5 件となっている。現段階では、市場経済移行国あるいは非附属書 I 国の組織からの申請
はない。
認定審査手順書に従って、提出資料の完全性確認、初期検討、審査チーム編成、作業計
画作成、書類審査、追加書類提出要請、オンサイト審査、暫定認定書発行、ウィットネス
審査、の流れで審査されるが、独立認定機関の数を増やすため、ウィットネス審査が完了
していない独立機関を暫定的に認定する移行措置が JISC 25 において採択されている。こ
の移行措置の効果もあり、これまでに 11 機関(E-0001、0002、0004、0005、0007、0008、
54「JI
監督委員会が独立組織を認定するための要求事項とその手続きを推敲すること」、
「JI 監督委員会が JI ガイドラインの付属書 A に記述された、独立組織を認定するための要求事項とその
手続きに従って独立組織を認定すること」
55 認定独立組織(Accredited Independent Entity, AIE)
:JI の事業活動を第 2 トラックによって行う場
合に、JI プロジェクトが該当する条件およびガイドラインの要件を満たしているか否かの審査、あるいは、
JI プロジェクトによる GHG の排出削減(または吸収増大量)の検証を行う国内法人または国際機関。
- 140 -
0009、0011、0012、0013、0014)が認定を受けている。また 3 機関(E-0003、0006、0010)
は認定を辞退しており、1 機関(E-0015)はまだ審査が開始していない。
- 141 -
<独立組織の認定審査進捗状況(JI-AP26 および JISC26 会議報告より)>
UNFCCC
Ref. No.
組織名
申請 専門
分野スコ
ープ
完全性確認
事前検討
ワークプラ
ン
JI-AT 編成
書類審査
オンサイ
ト審査
暫定認定
書
ウィット
ネス審査
活動※1
段階的
認定※2
認定審査のステップ
JI-E-0001
DNV Climate Change
Services AS (DNV)
1-15
x
x
x
x
x
x
x
2WO
(1WC)
認定※4
JI-E-0002
Japan Quality Assurance
Organization (JQA)
Deloitte Tohmatsu
Evaluation and
Certification Organization
(Deloitte-TECO)
Lloyd’s Register Quality
Assurance Ltd. (LRQA)
JACO CDM., Ltd.(JACO)
1,3,4,5,11,
13,14
x
x
x
x
x
x
x
1WO
(1WW)
認定辞
退
1-10,
12-13, 15
x
x
x
x
x
x
x
1-13
X
X
x
X
x
x
x
1WO
認定辞
退
1-14
x
x
x
x
x
x
x
1WO
Japan Consulting Institute
(JCI)
Bureau Veritas
Certification Holding
SAS (BVC Holding SAS)
TÜV SÜD Industrie
Service GmbH
(TÜV-SÜD)
Spanish Association for
Standardisation and
1-5, 8-11,
13
x
x
x
x
x
x
x
認定辞
退
認定辞
退
1-15
x
x
x
x
x
x
x
認定辞
退
1-15
x
x
x
x
x
x
x
1-15
x
x
x
x
x
x
x
5WO
(1WC)
(2WW)
4WO
(1WC)
(2WW)
1WO
(1WC)
1-15
x
x
x
x
x
x
x
認定辞
退
1-15
x
x
x
x
x
x
x
4WO
(2WC)
(1WW)
1WO
(1WW)
JI-E-0003
JI-E-0004
JI-E-0005
JI-E-0006
JI-E-0007
JI-E-0008
JI-E-0009
JI-E-0010
JI-E-0011
Certification (AENOR)
SGS United KingdomLtd.
TÜV NORD CERT
GmbH (TÜV NORD)
- 142 -
認定辞
退
認定辞
退
認定
認定※3
JI-E-0012
JI-E-0013
JI-E-0014
JI-E-0015
TÜV Rheinland (China)
Ltd. (TÜV Rheinland)
Swiss Association for
Quality andManagement
Systems (SQS)
KPMG Advisory N.V.
(KPMG)
Germanischer Lloyd
Certification GmbH
(GLC)
1-15
x
x
x
x
x
x
x
2WO
(1WC)
1-15
x
x
x
x
x
x
x
認定※3
1-4, 13
x
x
x
x
x
x
x
認定辞
退
1-3, 7, 10,
13
x
x
x
x
認定※3
凡例:
x:当該ステージ完了
※1 WO:ウィットネス機会を合意済み、WA:ウィットネス活動実施中、WC:ウィットネス活動完了、WW:ウィットネス活動取下げ
※2 ローマ数字はセクトラル・グループを指す
Group Ⅰ: Sectoral scopes 1, 2, 3
Group Ⅱ: Sectoral scopes 4, 6, 8, 9, 10
Group Ⅲ: Sectoral scopes 5, 11, 12, 13
Group Ⅳ: Sectoral scopes 7
Group Ⅴ: Sectoral scopes 14
Group Ⅵ: Sectoral scopes 15
※3 JISC 25 で採択された移行措置により暫定的に認定
表注; スコープ 1: エネルギー産業 (再生可能・非再生可能エネルギー源), スコープ 2: エネルギー配送, スコープ 3: エネルギー需要, スコープ 4: 製造業, スコープ 5: 化学工業, スコープ 6: 建設業, ス
コープ 7: 運輸, スコープ 8: 鉱業・鉱物生産業, スコープ 9: 金属生産, スコープ 10: 燃料からの漏出(固形、石油およびガス), スコープ 11: HFC、PFC および SF6 の生産・消費からの漏出, スコープ
12: 溶剤の使用, スコープ 13: 廃棄物処理・処分, スコープ 14: 植林・再植林, スコープ 15: 農業
- 143 -
CDM プロジェクト集計
3.
(2015 年 1 月における CDM プロジェクトの集計結果)56
(1). 有効化審査
図 46において、四半期ごとの有効化審査件数及び、累積審査件数を示す。2014 年は
122 件、2015 年 1 月末までは 4 件提出されており、有効化審査のためのパブリックコメ
ントが行われた。2015 年 1 月時点では、累計 12,279 件のプロジェクトが UNFCCC57に
提出された。このうち、2013 年以降に提出されたプロジェクト件数は 338 件となってい
る。
ホスト国別では、図 47、図 48で示した通り、中国のプロジェクトが最も多く、次
いでインドとなり、CDM の地域的な偏在傾向に変化はない。2014 年第 3 四半期までの累
計では、中国が 40.5%を占め、インド 26.4%、ブラジル 6%と続いている。2013 年以降
に提出されたプロジェクトを見ると、インド 169 件、中国 52 件となっている一方で、後
発発展途上国については合計 38 件となっている。また、提出された CDM プロジェクト
のホスト国は累計 108 カ国である。
これらのプロジェクトによって期待される GHG の年予想排出削減量を図 49に示す。
2015 年 1 月時点で、累計5817 億 1568 万 tCO2e の温室効果ガスの排出量削減が予測され
ている。ホスト国別では、図 50のように 2012 年までは常に中国が大きな割合を占めて
きたが、その後はインドが一時的にシェアを独占することがあっても、一国が抜きんでて
継続的にシェアを占めることはない。図 51に示すように累計でみると、中国の割合が
47.6%と最も大きく、続いてインド、ブラジルの割合が多い。
次に、方法論別では、図 52が示すように ACM0002 や AMS-I.D.が多い59。図 53が
示すように、再生可能エネルギーの導入に関する方法論の割合は、ACM0002 が 30.9%、
AMS-I.D.が 24.2%を占め、2 つの方法論で全体の過半数を占めている。したがって、CDM
プロジェクトの中で再生可能エネルギー関連のプロジェクトが大きな割合を示しているこ
とが分かる。
セクトラルスコープ別60では、図 54及び図 55に示すように、スコープ 1 のエネル
ギー産業(再生可能・非再生可能エネルギー源)に属するプロジェクトが 70.7%を占めて
いる。
56
ここでの集計は下記 UNFCCC ウェブサイトにて公表されているプロジェクト一覧をもとに行った。ま
た、すべての項目において、集計結果は 2015 年 1 月 31 日時点の集計である。
57
上記のように、UNFCCC の HP をもとに作成している。しかし、以前存在したプロジェクト“Landfill Gas
to Energy Facility at the Nejapa Landfill Site, El Salvador”が HP 上から削除されている(2014 年 8 月 11 日現在)
。
UNEP の集計結果等には記載されているため、ここでの集計結果にも同プロジェクトは含まれている。
58
ここでの累計とは、プロジェクトごとの年間予想削減量を合計したものである。
59
ただし、プロジェクトによっては複数の方法論を用いている。そのため、この集計結果と有効化審査件
数は整合しない。
60
方法論によっては、複数のスコープをカバーしているため、スコープ別の集計結果と有効化審査件数と
は整合しない。
- 144 -
図 46 有効化審査件数
図 47
国別有効化審査件数の推移
- 145 -
図 48
国別累計有効化審査件数
図 49
予想削減量
- 146 -
図 50
国別予想削減量
その他, 27,548 , 16%
チリ, 2,080 , 1%
マレイシア, 2,128 ,
1%
中華人民共和国,
81,464 , 48%
ウズベキスタン,
2,373 , 1%
ベトナム, 2,441 , 2%
大韓民国, 2,729 , 2%
インドネシア, 3,196 ,
2%
メキシコ, 3,634 , 2%
インド, 33,143 , 20%
ブラジル, 8,773 , 5%
図 51
国別累計予想削減量の割合
- 147 -
900
ACM0002
AMS-I.D.
AMS-I.C.
ACM0012
ACM0006
ACM0001
AMS-III.D.
AMS-II.D.
ACM0004
その他
AMS-III.H.
800
700
600
31
15
500
27
400
29
163127
171
150
38
300
28
44 44 38
30
24
19 23 107
200
8 14 112108
100
13
39 35
28
148126 20 28 15 18 29
153
100 99
123120
80
96 88 92
95 88
13
19
108
123
365377
336
285
95 78
204
179
12
166
138
45
117112109
107118 104 97 106122
98
42
94
94
8
87
82
68 75
20 29 31 27 38
1 1 10 7 3 3 9 12
206
28
14 19
10
38 21
15 16 27 29 4
2003Q4
2004Q1
2004Q2
2004Q3
2004Q4
2005Q1
2005Q2
2005Q3
2005Q4
2006Q1
2006Q2
2006Q3
2006Q4
2007Q1
2007Q2
2007Q3
2007Q4
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
2010Q1
2010Q2
2010Q3
2010Q4
2011Q1
2011Q2
2011Q3
2011Q4
2012Q1
2012Q2
2012Q3
2012Q4
2013Q1
2013Q2
2013Q3
2013Q4
2014Q1
80
0
103
図 52
図 53
方法論別有効化審査件数
方法論別累計有効化審査件数の割合
- 148 -
表 25 セクトラルスコープ
1
エネルギー産業(再生可能・非再生可能エネルギー源)
Energy industries (renewable/non-renewable sources)
2
エネルギー配送 Energy distribution
3
エネルギー需要 Energy demand
4
製造業 Manufacturing industries
5
化学工業 Chemical industry
6
建設業 Construction
7
運輸 Transport
8
鉱業・鉱物生産業 Mining/mineral production
9
金属生産 Metal production
10
燃料からの漏出(固形、石油およびガス)
Fugitive emissions from fuels (solid, oil and gas)
11
HFC、PFC および SF6 の生産・消費からの漏出
Fugitive emissions from production and consumption of halocarbons and sulphur
hexafluoride
12
溶剤の使用 Solvents use
13
廃棄物処理・処分 Waste handling and disposal
14
植林・再植林 Land-use, land-use change and forestry
15
農業 Agriculture
- 149 -
図 54
図 55
セクトラルスコープ別有効化審査件数
セクトラルスコープ別累計有効化審査件数
- 150 -
(2). 登録
図 56に CDM 理事会にて登録されたプロジェクト数を示す。2014 年は 134 件のプロ
ジェクトが登録され、累計登録件数は 7,603 件となっている。
ホスト国別では、図 57、図 58で示すように、2014 年第 4 四半期時点の累計では
中国の割合が 49.5%を占め、その他のホスト国では、インド 20.3%、ブラジル 4.4%、ベ
トナム 3.3%と続いている。2013 年以降に登録されたプロジェクトを見ると、インドが最
も多く 175 件、次いで中国の 83 件となっている。
登録されたプロジェクトの年間の予想排出削減量は、図 59で示すように、2014 年第
4 四半期の時点で累計 9 億 8,335 万トンとなっている61。ホスト国別では図 60、図 6
1で示すように、中国の割合が大きく、全体の 60.6%を占めている。続いて、インド 11.4%、
ブラジル 4.9%となっている。2013 年以降に登録されたプロジェクトの年間予想排出削減
量は、中国が最も多く 1,303 万 tCO2e、次いでインド 1,108 万 tCO2e となっている。
次に、図 62、図 63で投資国別の登録件数を示す62。登録されたプロジェクトに最
も多く関与しているのが、イギリスであり、全体の 33.3%を占めている。次いで、スイス
21.0%、オランダ 8.8%、日本 8.5%となっている。
そして、セクトラルスコープ別と方法論別の登録件数を、図 64、図 65に示す63。
セクトラルスコープ別では、スコープ 1 が 75.9%を占めており、有効化審査同様にスコー
プ 1 の割合が大きいことがわかる。方法論別でも ACM0002 と AMS-I.D.で半数以上を占
めており、それぞれ ACM0002 が 39.5%、AMS-I.D.が 25.9%となっている。
2013 年以降登録数は減少するが、その背景には CER の最大の需要家である EU-ETS
において、2013 年以降に登録するプロジェクトについては LDC をホスト国とするものの
みに由来する CER しか利用しないと制限を設けたことによると思われる。
61
有効化審査の予想削減量と同様にここでの累計とはプロジェクトごとの年間登録削減量の合計である。
投資国別の集計結果には、マルチラテラルプロジェクトが含まれるため、登録件数とは整合しない。
63
有効化審査件数の集計結果と同様に、セクトラルスコープ別及び方法論別の集計結果は登録件数と整合
しない。
62
- 151 -
図 56
図 57
登録件数
国別登録件数
- 152 -
大韓民国, 91 , 1%
その他, 844 , 12%
チリ, 99 , 1%
マレイシア, 143 , 2%
インドネシア, 143 ,
2%
タイ, 144 , 2%
メキシコ, 189 , 3%
ベトナム, 249 , 3%
ブラジル, 322 , 4%
中華人民共和国,
3,738 , 50%
インド, 1,472 , 20%
図 58
国別累計登録件数
25,000
120,000
総計(単位: 万CO2換算トン)
累計(単位: 万CO2換算トン)
20,544
100,000
20,000
80,000
15,000
60,000
10,000
8,504
40,000
5,348
5,000
3,413
2,343
1,973 2,801
2,625
2,032
2,130
1,957 1,5551,734
1,904
1,997
1,777
1,313
1,664 1,701
1,520
1,711
990
927
442 189
24
0 0 0 0 67
4,454
4,166 3,673
3,352
2,789
2,119
20,000
1,371 976
629 172
0
2003Q4
2004Q1
2004Q2
2004Q3
2004Q4
2005Q1
2005Q2
2005Q3
2005Q4
2006Q1
2006Q2
2006Q3
2006Q4
2007Q1
2007Q2
2007Q3
2007Q4
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
2010Q1
2010Q2
2010Q3
2010Q4
2011Q1
2011Q2
2011Q3
2011Q4
2012Q1
2012Q2
2012Q3
2012Q4
2013Q1
2013Q2
2013Q3
2013Q4
0
図 59
登録プロジェクトの予想排出削減量(年間)
- 153 -
図 60
図 61
国別登録予想削減量(年間)
国別累計登録削減量(年間)の割合
- 154 -
図 62
図 63
投資国別登録件数
投資国別累計登録件数の割合
- 155 -
図 64
図 65
セクトラルスコープ別登録件数
セクトラルスコープ別累計登録件数の割合
- 156 -
図 66
図 67
方法論別登録件数
方法論別累計登録件数の割合
- 157 -
(3). 発行
図 68 に示すように、2014 年から 2015 年 1 月までに初めて CER の発行を受けたプロ
ジェクト数は 202 件、2015 年 1 月時点で累計 2,724 件のプロジェクトに対して CER が発
行された。
プロジェクト別の発行回数を図 69に示す。5 つのプロジェクトが 30 回以上の発行を
受けていることがわかる。なかでもプロジェクト番号 99 の“ N2O Emission Reduction in
Onsan, Republic of Korea”が最多となる 72 回の発行を受けており、次いでプロジェクト
番号 116 の“N2O Emission Reduction in Paulínia, SP, Brazil”が 60 回の発行を受けて
いる。また、プロジェクト番号1の“ Project for GHG emission reduction by thermal
oxidation of HFC 23 in Gujarat, India”が 47 回の発行を受けている。これらの発行回数
の多いプロジェクトは大量の排出削減が達成可能な、HFC や N2O の破壊プロジェクトで
ある。そのため、他のプロジェクトであれば 1 年あるいはそれ以上の時間を必要とする数
10 万トン単位の排出削減量を短期間(数か月)で得られることから、1 年のうちに複数回
の発行申請が行われ、結果として発行回数が多くなったと思われる。
次に、CER 発行件数を図 70に示す。2014 年には 577 件、2015 年 1 月には 26 件の
CER が発行され、2015 年 1 月の時点の累計では 8,193 件の CER が発行された。国別で
は図 71から、有効化審査や登録と同様に中国の割合が大きいことがわかる。図 72に
示すように、2015 年第 1 月時点の累計では、中国が全体の 49.4%を占めている。次いで、
インド 19.7%、ブラジルが 7.8%となっている。
CER の発行量は図 73が示すように、2014 年はで 1 億 159 万 tCO2e、2015 年 1 月は
500 万 tCO2e の CER 発行量があり、累計64で 15 億 2698 万 tCO2e となっている。近年
の発行量の減少の要因としては、CER の価格が暴落したまま低迷を続けていることが影響
していると思われる。ホスト国別では、図 74に示すように、中国のプロジェクトから
発行された CER 量が大きな割合を占めている。国別累計の CER 発行量の割合は 2015 年
1 月時点で、図 75のように、中国 59.5%、インド 13.2%、韓国 8.4%、ブラジル 6.4%
となっており、CER 発行量に占める中国の割合が大きいことがわかる。また、これら 4
カ国で CER 発行量の 90%近くを占めている。2013 年以降の CER 発行量を見ても、中国
が最も多く、2 億 458 万 tCO2e が発行され、次いでインドの 3,811 万トンとなっている。
図 76、図 77は、投資国別の CER 発行量である65。図 77から、CER が発行され
たプロジェクトに関与している国のうち、イギリスとスイスの割合が大きいことがわかる。
2015 年 1 月の時点で、イギリス 33.3%、スイス 21.0%となっている。これらの国々で投
資銀行や民間ファンドが拠点を置いていることが多いため、結果的にプロジェクトに記載
されることになっていると思われる。
64
65
累計とはプロジェクトごとの年間 CER 発行量を集計したものである。
ここでの集計には、マルチラテラルプロジェクトが含まれているため、CER 発行件数とは整合しない。
- 158 -
CER が発行されたプロジェクトをセクトラルスコープ別に集計した結果を、図 78、
図 79に示す66。有効化審査及び登録件数にスコープ 1 が多いため、CER 発行を受けた
プロジェクトもスコープ 1 のものが多い。同様に、方法論別に集計した結果を図 80、
図 81で示してあるように、ACM0002 と AMS-I.D.で半数以上を占めている。
66
この集計結果とプロジェクト数は、プロジェクトによって複数のセクトラルスコープの対象となるため
整合しない。
- 159 -
図 68
図 69
CER が発行されたプロジェクト数
CER 発行回数別のプロジェクト数
- 160 -
図 70
図 71
CER 発行件数
国別 CER 発行件数
- 161 -
図 72
国別累計 CER 発行件数の割合
図 73
CER 発行量
- 162 -
図 74
図 75
国別 CER 発行量
国別累計 CER 発行量の割合
- 163 -
図 76
図 77
投資国別 CER 発行件数
投資国別累計 CER 発行件数の割合
- 164 -
900
scope 1
scope 6
scope 11
800
scope 2
scope 7
scope 12
scope 3
scope 8
scope 13
scope 4
scope 9
scope 14
scope 5
scope 10
scope 15
77
75
78
700
600
500
47
44
400
75 59
629
31
300
28
25
100
29 22 10 21
26
15 15 19
12
83
104
39
328
316
23
53
4
272
220
302
307
109103 161
69
321
230
145
7
36
2003Q4
2004Q1
2004Q2
2004Q3
2004Q4
2005Q1
2005Q2
2005Q3
2005Q4
2006Q1
2006Q2
2006Q3
2006Q4
2007Q1
2007Q2
2007Q3
2007Q4
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
2010Q1
2010Q2
2010Q3
2010Q4
2011Q1
2011Q2
2011Q3
2011Q4
2012Q1
2012Q2
2012Q3
2012Q4
2013Q1
2013Q2
2013Q3
2013Q4
2014Q1
4
81
5
76 57 87
73
37 40 40 40 45 44 51
6
0 0 0 0 0 0 0 0 3 2 10
25
29
589
538
22
200
0
36
26
図 78
scope 14
0%
scope 13
12%
scope 11
6%
scope 10
2%
セクトラルスコープ別 CER 発行件数
scope 15
4%
scope
12
0%
scope 9
0%
scope 8
1%
scope 7
0%
scope 1
65%
scope 6
0%
scope 5
6%
scope 4
3%
scope 2 scope 3
0%
1%
図 79
セクトラルスコープ別累計 CER 発行件数の割合
- 165 -
図 80
図 81
方法論別 CER 発行件数
方法論別 CER 発行件数の割合
- 166 -
4.
JI プロジェクト集計
ここでは、JI プロジェクトの情報をトラック 1、トラック 2 それぞれ集計した67。ただし、
UNFCCC ホームページに JI プロジェクトとして公開された情報に基づく集計であり、公
開されていないプロジェクトは集計の対象としてはいない。
(1). トラック1
図 82 にホスト国別のトラック 1 プロジェクト数と ERU クレジット発行見込み量を示す。
2014 年以降新規プロジェクトの登録はなく、2015 年 1 月の時点で 548 件のプロジェクト
が JI トラック1プロジェクトとして登録されている。また、ERU クレジットの発行見込み
量は 9 億 2,907 万換算 CO2 トンである。ホスト国別に比較すると、プロジェクト件数では
ウクライナの 210 件となっており、ロシアの 92 件、チェコの 85 件と続いている。ただし、
チェコはクレジットの発行見込み量は小さい。クレジットの発行見込み量が最も多いのは
ウクライナで、5 億 5,865 万 tCO2e のクレジットが発行される見込みとなっており、トラ
ック 1 プロジェクト合計のクレジット発行見込み量の約 60%近くを占める。東欧の国々が
ホスト国である場合が多い理由は、効率改善による排出削減ポテンシャルが大きいためで
ある。
次に、投資国が発表されているトラック 1 プロジェクトは 387 件、クレジット発行見込
み量 8 億 2,977 万 tCO2e となっている。図 83 に示すように、投資国別に見たプロジェク
ト件数は、オランダ 101 件、ついでスイスの 99 件となっており、ラトビアの 34 件、ドイ
ツの 26 件と続く。クレジット発行見込み量が最も多いのは、スイスの 2 億 8,275 万 tCO2e
である。
そして、セクトラルスコープ別のトラック1プロジェクトを図 84 に示す。プロジェクト
件数では、スコープ 1(エネルギー産業)が 157 件と最も多く、1 億 1,940 万 CO2 換算ト
ンのクレジット発行が見込まれる。一方で、スコープ 8(鉱業・鉱物生産業)やスコープ 9
(金属生産)
、スコープ 10(燃料からの漏出)は、プロジェクト件数が少ない一方で、多く
のクレジット発行を受ける見込みとなっている。特に、スコープ 8 は最も多くの 2 億 2,129
万 tCO2e のクレジットが見込まれている。
図 85 に国別の ERU 発行量を示す。2014 年の ERU 発行量が最も多いのは、ウクライナ
の 2,667 万 CO2 換算トンである。それに大きく差をつけられて、次いでロシア 279 万 tCO2e、
ハンガリー95 万 tCO2e となっている。累計の ERU 発行量もウクライナの 5 億 685 万 tCO2e
が最も大きく、ついでロシアの 2 億 6,569 万 tCO2e となっている。ウクライナとロシアの
発行量で全体の 91%を占めている。
67
ここでの集計には、以下の UNFCCC の HP に掲載されている 2014 年 7 月 31 日までのプロジェクトの一
覧を用いた(HP アクセス日:2014 年 8 月 19 日)。
http://ji.unfccc.int/index.html
- 167 -
図 82 ホスト国別トラック 1 プロジェクト
図 83
投資国別トラック 1 プロジェクト
- 168 -
図 84
セクトラルスコープ別トラック 1 プロジェクト
図 85 国別トラック 1ERU 発行量
- 169 -
(2). トラック 2
UNFCCC ホームページに公開された JI トラック 2 プロジェクトの情報を集計した。
図 86
は、トラック 2 プロジェクトのホスト国別の件数である。2013 年の間に 4 件が新たに追加
され、累計で 333 件となった。ただし、2014 年は、2015 年 1 月の時点で登録がなかったた
め、依然として累計で 333 件となっている。国別でみると、累計ではロシアでのプロジェ
クト件数が多いが図 86 からわかるように、2011 年と 2012 年ではウクライナのプロジェク
トロシアを上回っており、ウクライナでのプロジェクトが次いで多い。図 87 に示すように、
公表されている投資国別の累計では、オランダが最も多い。
トラック 2 プロジェクトによる ERU 発行見込み量を、ホスト国別及び投資国別集計した
ものを図 88、図 89 に示す。ホスト国別では、2012 年、2013 年はウクライナの ERU 発行見
込み量が最大であった。累計でみるとロシアが最大である。投資国別にみると、全期間を
通じてオランダの ERU 発行見込み量が最大であった。
そして、有効化審査を行った AIE 別、セクトラルスコープ別、方法論別に集計したもの
を図 90、図 91、図 92 に示す。AIE 別では、2009 年以降、一貫して BVC Holding SAS が大
きな割合を示している。セクトラルスコープ別ではスコープ1の割合が一貫して多かった
が、2012 年以降は他のスコープの割合も増加した。方法論別では全期間を通じて JI
Specific Approach が最も多く、次いで ACM0001 の割合が大きい。
最後にホスト国別の ERU 発行量を図 93 に示す。トラック 2 は 2014 年に発行のみ行われ
たが、その量も 2014 年は 67 万tCO2e となっており、すべてウクライナの発行量である。
累計ではウクライナが最も多く、次いでリトアニアが大きい。なお、プロジェクト件数や
ERU 発行見込み量の最も多いロシアが、トラック 2 での実際の ERU 発行量が少ないのは、ERU
発行以前に多くのプロジェクトがトラック 2 からトラック 1 に変更したため、結果的にト
ラック 2 の発行が少なくなっているためである。
- 170 -
図 86
図 87
ホスト国別トラック 2 プロジェクト件数
投資国別トラック 2 プロジェクト件数
- 171 -
図 88
図 89
ホスト国別トラック 2 プロジェクトによるクレジット規模
投資国別トラック 2 プロジェクトによるクレジット規模
- 172 -
図 90
図 91
AIE 別トラック 2 プロジェクト件数
セクトラルスコープ別トラック 2 プロジェクト件数
- 173 -
図 92
方法論別トラック 2 プロジェクト件数
図 93 国別トラック 2ERU 発行量
- 174 -
5.
方法論リスト
注 1:データは 2014 年 12 月 31 日までに登録されたプログラムを対象としている。
注 2:登録件数・予想削減量のいずれかが、全体の 1%以上であるもの対象としている。
- 175 -
6.
横断的課題、重要方法論の論点・経緯
CDM 理事会で横断的な検討課題となったものについて、過去 6 年間(EB23~EB67)の検討経緯を整
理するとともに、最新状況のアップデートを行う。
(1) 追加性立証ツール及びベースライン・シナリオ選定ツール
(2) 炭素回収・貯留(CCS)
(3) プログラム型 CDM
- 176 -
(1)追加性立証ツール及びベースライン・シナリオの選定ツール
概要
CDM 理事会はこれまでに「追加性立証ツール」を策定しているが、同ツールは、想定される
ベースライン・シナリオの妥当性について判断するために用いることができず、提出される新
方法論で、この点についての問題が多く見られることが指摘されている。第 20 回 CDM 理事
会にて、ベースライン・シナリオ選定のためのツールを新たに開発することが合意された。
経緯
EB23
方法論パネルが勧告案を提出。その内容は、基本的に追加性ツールと類似のステップ・バイ・
ステップのアプローチとされ、CDM 理事会のこれまでの議論を反映して、追加性立証ツールとあ
わせて用いられるものとされた。これに対し、今次会合の議論においては、追加性立証との一体
性を求める意見が多く出され、追加性立証及びベースライン・シナリオ選定のプロセスの複雑化
を避けるべきとの見解が示された。
また、追加性立証に関する COP/MOP から CDM 理事会への要請として、①ベースライン・シ
ナリオの選定及び追加性立証を統合するオプションを含む追加性立証に関する新たな提案、お
よび②追加性立証ツールの改善について、パブリック・コメントの受付を行うこととされていること
から、CDM 理事会によるベースライン・シナリオ選定ツールの策定は単独では行わず、追加性
立証に関する検討に組み込む方向性で方法論パネルにて検討を行うことが合意された。また、
方法論パネルでの検討に向け、「ベースライン選定ツール」案について、「追加性の立証ツー
ル」とあわせて、パブリック・コメントを受付ける(2006 年 3 月 1 日~26 日)ことが合意された。
EB27
方法論パネルが「追加性立証及びベースライン・シナリオ選定のためのツール(Combined
Tool)」のドラフトを提出した。勧告案に対し理事会では、事業者の使い勝手を考慮したツールと
するために、要求される分析の種類や程度を低減することなどを求める意見が理事会メンバー
から出された。さらに、既存の「追加性立証ツール」の枠組に拠るのではなく、COP/MOP の要請
を受け行われたパブリック・コメントに示された各種代替案をより積極的に検討するべきといった
意見も出された。しかしながら、理事会は方法論パネルからの勧告案を対象として検討を行っ
た。この結果、ツールで求められる分析の規定等を一部緩和する方向性で修正が行われ、採択
された。このため基本的な構造は、既存の「追加性立証ツール」を踏襲した内容となった。
当該ツールは、ベースラインとして考えられるすべてのシナリオが、プロジェクト事業者の裁量
で決まる場合にのみ適用可能とされる。なお、事業者の裁量外で決まるベースライン・シナリオ
が含まれる決まる場合は適用不可。さらに、新規に設立された施設が当該ツールを使用するケ
ースについては、方法論パネルにて検討することとされた。
EB28
コンバインド・ツールについて、すべての代替シナリオが PP にとって利用可能なオプションであ
る場合に、新規施設の建設に適用されることを追加。
方法論パネルは、代替シナリオの同定のため、提案 CDM プロジェクトと同様の、関係する地域
で以前実施された、または、現在、行われているほかの技術・プラクティスの概観を提供しなけれ
- 177 -
ばならないが、その関係する地域には少なくとも 10 施設が含まれていなければならないとの内
容を勧告。理事会の検討の結果、”preferably ten”、”if possible, ten”に変更。
EB29
「ベースライン・シナリオの特定及び追加性立証のツール(Combined Tool)」をふまえ、既存の
「追加性立証ツール(Additionality Tool;AT)」を改訂。これまでに「追加性立証ツール」で求めら
れていた CDM の影響分析(ステップ 5)の削除等を合意。
EB31
投資分析のみの使用といった追加性ツールの使用に関して制約が行われるべきでないことが
再度述べられた。CDM 理事会はパネル・ワーキンググループ議長に対して、追加性ツールの使
用を投資分析に限定することは例外的な場合のみに、かつ、特に強い理由によって行われるよ
う求めた。
EB36
方法論パネルから、(i)どのような場合に、ステップ 2 投資分析のそれぞれのアプローチが用い
られるべきかの明確化、(ii)ベンチマーク分析を用いる際のベンチマークの適切な選択の明確化
を改善する改訂の承認が勧告された。
CDM 理事会では、提案された変更点を次回会合でさらに検討するとともに、脚注 7 を改訂し、
ベンチマーク分析オプションを行う際にプロジェクト IRR、エクイティ IRR のいずれでも用いること
ができる旨明確化することが合意された。
EB37
改定案の検討は延期された。事務局によって作成される投資分析に関するガイダンスの改訂
版および方法論パネルによって行われる作業をまって、EB38 で改訂を検討することが合意され
た。
EB38
普及度分析に関する進行中の作業および投資分析に関するガイダンスを考慮するため、
EB39 で改正案の検討を終了することを目処に延期となった。
EB39
CDM 理事会は「追加性立証・評価ツール」改訂の検討を終え、バージョン 5 が採択された。こ
れにより投資分析の利用法が明確化されたほか、登録申請された CDM プロジェクトが「初めて
のケース(First-of-its-kind)」である場合は普及度分析を使用しなくてよいことが明記された。
さらに、「投資分析の評価に関するガイダンス」が採択された。
EB41
「投資分析の評価に関するガイダンス」のバージョン 2 が採択された。この中で、中断されたプ
ロジェクトが再開する場合には、再開の意思決定がなされた時点での経済的状況を反映した投
資分析を行う必要があることが明記された。
さらに「CDM 事前検討の立証および評価に関するガイダンス」が採択された。
なお、CDM 用語集では CDM プロジェクトの開始日を「活動開始、建設開始、実際の行動開
- 178 -
始日のうちいずれか最も早いもの」と定義づけているが、CDM 理事会は更なる明確化を行うため
に以下のように定義した。
・ 「PP が活動開始・建設開始のために出費を公約した日」を開始日とみなす。例えばプロジェ
クト実施に必要な機材購入や建設の契約にサインした日であり、調査費用などの軽微な支
出はこれに該当しない。照明交換プロジェクトなど、建設や明らかな事前実施が必要でない
プロジェクトに関しては、「実際の行動開始日」をプロジェクト開始日とする。
・ 一度中断されたプロジェクトが CDM の収益を考慮することにより再開される場合は、建設の
取消や政府認可の撤回など信頼できる中断の証拠を示さなければならない。
EB42
今次会合に先立ち開催された MP34 において、初めてのケース(First-of-its-kind)に関するガ
イダンス案が方法論パネルにより作成された。その中で技術、類似プロジェクト数、対象範囲の
定義について言及されているが、審議時間の関係で検討は延期となった。
EB46
審議時間の関係で、CDM 理事会は「初めてのケース(First-of-its-kind)に関するガイダンス」
案および「コモンプラクティス分析の適用ガイダンス」案を検討することが出来なかった。CDM 理
事会は作業グループのメンバーに対して、EB47 での検討に向けて作業を進めるよう要請した。
EB47
CDM 理事会は「初めてのケース(First-of-its-kind)に関するガイダンス」案および「コモンプラ
クティス分析の適用ガイダンス」案の検討を EB49 に延期することで合意した。また CDM 理事会
は事務局に対して、CDM 理事会メンバーの様々な提供情報を反映した新提案書を作成して
EB49 で提示するよう要請した。
EB49
CDM 理事会は「初めてのケース(First-of-its-kind)に関するガイダンス」案および「コモンプラ
クティス分析の適用ガイダンス」案を検討し、新提案をまとめあげるために更なる議論を行うよう
作業グループのメンバーに対して要請した。また CDM 理事会は、作業グループから合意提案
が提出されれば、この問題に関して再検討を行うことで合意した。
EB54
「初めてのケース(First-of-its-kind)およびコモンプラクティスに関するガイドライン案」を EB56
までに準備するよう事務局に要請した。また、「5MW 以下の再生可能エネルギープロジェクト及
び年 20GWh以下のエネルギー節約を超えない省エネプロジェクトの追加性証明ガイドライン」を
採択した。
EB56
CDM 理事会は EB54 で事務局に要請した「初めてのケース(First-of-its-kind)およびコモンプ
ラクティスに関するガイドライン案」に関して検討したが、将来の会議で検討するために更に作業
を進めるよう事務局に要請した。また、ベースラインシナリオの追加性証明及び認定に関する統
合化ツール案を検討した。さらに潜在的な代替シナリオの定義を含めるために引き続き MP に
- 179 -
て検討作業を続けるように要請した。
EB57
CDM 理事会は将来の会議で検討するために、適用地域、類似の技術および普及率の閾値
の定義を含めて、初めてのケース(First-of-its-kind)の利用およびコモンプラクティスの評価に
関して、プロジェクト実施者に対するガイドラインの改善についての一般原則の作業を理事会メ
ンバーの支援とともに検討するよう事務局に要請した。
また、EB54 にて採択された「5MW 以下の再生可能エネルギープロジェクト及びエネルギー節
約が年 20GWh以下の省エネプロジェクトの追加性証明ガイドライン」に適合するプロジェクトは、
承認済み方法論の規模に関わらず適用が可能であることを決定した。
EB58
改訂案「投資分析の評価に関するガイドライン」について 2010 年 12 月 1 日から 2011 年 1 月
12 日までにパブリックコメントを行うとともに、特に、地域および地方の開発銀行等の金融機関か
らの意見を求めることに合意した。さらに、金融の専門家から意見を収集するためにワークショッ
プを開催することを事務局に要請した。理事会は、将来の会合でのこれらのガイドラインのさらな
る検討のため、パブリックコメントおよびワークショップの結果を分析、統合および考慮をするよう
に事務局に要請した。
「ベースラインシナリオの特定とベースライン排出量計算のためのツール」案について 2010 年
12 月 1 日から 2011 年1月 12 日までパブリックコメントを行うことと、このツールを議論するために
関連するステークホルダーとのワークショップを開催することを事務局に要請した。また、ワーク
ショップの結果を考慮検討することと、将来の会議で理事会にこの問題に関する勧告を行うこと
を方法論パネルに要請した。
EB59
・ 初めてのケース(First-of-its-kind)の利用およびコモンプラクティスの評価に関するガイドラ
インに関する作業状況の進展について協議し、作業グループメンバーに事務局の支援のも
と、将来の CDM 理事会で検討するための、ガイドライン案の作成を要請した。
・ 改訂案「投資分析の評価に関するガイドライン」については、パブリックインプットの結果を踏
まえて検討した上で、方法論パネルに対して修正案の作成を要請した。
EB60
・ 初めてのケース(First-of-its-kind)の利用およびコモンプラクティスの評価に関するガイドラ
インに関する作業状況の進展について協議し、事務局に、パブリックインプット用の草案を
作成するように要請した。
・ ベースラインシナリオの追加性証明及び認定に関する統合化ツールの改訂版を承認した。
・ 標準化ベースラインに関するノートについて検討し、今後もトップダウンアプローチによる作
成作業を継続することを合意した。
・ 電力システムにおける排出係数算定ツールの改訂版を承認。これによりホスト国以外の非
附属書Ⅰ国の電力システムと接続している場合に、OM に0以外の数値を利用することが認
- 180 -
められることになった。
・ 「ベースラインシナリオの特定とベースライン排出量計算のためのツール」案についてパブリ
ックインプットを通じて寄せられた意見の要約と実務担当者が参加したワークショップの結果
を踏まえた方法論パネルの勧告を踏まえて検討し、事務局に concept note の作成を要請。
EB61
・ 改訂案「投資分析の評価に関するガイドライン」を承認した。
・ 初めてのケース(First-of-its-kind)の利用およびコモンプラクティスの評価に関するガイドラ
インに関する作業状況の進展について協議し、作業グループにパブリックインプットの際に
示す質問事項を明らかにするよう要請した。
・ ホスト国における将来の人為的な(GHG)排出量増加に関する information note を留意し、
抑圧された需要(suppressed demand)を参照しながら事務局に、ベースライン及びモニタリ
ング方法論における抑圧された需要に関連する事項についての基準案を作成することを要
請した。同時に、抑圧された需要について既に承認された方法論においてどのように対応
するのか検討する作業計画を策定するよう要請した。
EB62
・ 改訂案「投資分析の評価に関するガイドライン」を承認した。
・ CDM 方法論における抑圧された需要の考慮に関するガイドラインを採択した。同時に、事
務局に、当該ガイドラインの実施に関する作業計画の策定を要請した。
・ 初めてのケース(First-of-its-kind)の利用およびコモンプラクティスの評価に関するガイドラ
インについて、パブリックインプットを実施することを決定した。
・ 特定された分野における標準化されたベースライン方法論の設定に関するガイドラインを採
択した。また CDM 理事会は、事務局に対して、このガイドラインの適用を通じて得られた経
験を踏まえて、ガイドラインを改善し、適用される分野を拡大していくために、関係するパネ
ルなどと協議するとともに、ガイドライン実施に関する作業計画の策定を要請した。
EB63
・ 標準化ベースラインの提出と検討に関する手続きを採択した。その上で、事務局に対して
手続きの実施に関する作業計画を策定するよう要請した。CDM 理事会は同時に、標準化
ベースラインの厳格さの水準は、十分な環境十全性を保つレベルにする必要のあることを
強調し、策定にあたっては EB62 で採択された特定された分野の標準化されたベースライン
ガイドラインを参照するよう求めた。
・ 初めてのケース(First-of-its-kind)の利用およびコモンプラクティスの評価に関するガイドラ
イン案へのパブリックインプットの結果、集められた意見の要約を検討し、を実施することを
決定した。初めてのケース(First-of-its-kind)の利用に関するガイドラインとコモンプラクティ
スに関するガイドラインを採択した。
- 181 -
EB67
「標本数と信頼度に関するベストベストプラクティスの実例」の採択:第 50 回 CDM 理事会におい
て、「小規模プロジェクトにおけるサンプリング及び調査に関する一般的なガイドライン」(以下、
サンプリングガイドライン)が採択されたが、その後、第 60 回 CDM 理事会において大規模、小規
模、そしてプログラム CDM 共通に適用されうるガイドラインやベストプラクティスの実例をまとめる
必要性が認識され、その策定のために共同作業チーム(方法論パネル、小規模ワーキンググル
ープのメンバーが参加)が設立された。既にプログラム CDM におけるサンプリングの基準は採択
されていたが、今回、この作業チームの作業結果がまとめられ、大規模及び小規模を対象とした
幾つかのベストプラクティスの実例が採択された。ただし、ここでは目標信頼性が達成されない
場合の対応先や、DOE における有効化審査あるいは検証作業に関するベストプラクティスは含
まれていない。これらについては、年内に発表される予定である。
EB68
・
標準化ベースラインの発展を促進するための、技術のコストと効率性に関するデータベー
スに係るコンセプトノートについて検討。2012年8月6日から2012年8月19日までパブコメの
募集がされる。
・
「方法論における抑圧された需要の検討についてのガイドライン」を改訂することに同意。
・
追加性の証明の改善に関する草案について検討し、事務局に作業プログラムを準備する
よう要請。
・
検証における重大性の適用に関するガイドライン案について検討。パブリックコメントを行う
ことに同意。
・
「プログラムCDMにおける多様な方法論の適用における、相互効果の検討のためのガイド
ライン」を採択。
EB69
・
2013年1月1日から達成されるあらゆる排出削減・除去の計算に対しては、CMP.7決定4に
従った地球温暖化係数(GWPs)が適用されるということで同意。
・
追加性の証明に係る3つの課題(将来の燃料の予想価格、CER収益、採用技術など)につ
いては、これ以上掘り下げた議論はしないことに同意。
・
FOIKとコモンプラクティスに関するガイドラインの改正案を採択。
EB70
・
EB69で採択されたFOIKとコモンプラクティスに関する改正ガイドラインを追加性評価ツール
に範囲させるため、ツールを修正。
EB72
・
個別事案の検討から、第22回理事会において採択された“ベースライン・シナリオの決定
における国家・産業政策の扱いについて(EB22, Annex 3 CLARIFICATIONS ON THE
CONSIDERATION OF NATIONAL AND/OR SECTORAL POLICIES AND
CIRCUMSTANCES IN BASELINE SCENARIOS(以下、E-/E+政策の取扱い))”について
- 182 -
検討し、さらに検討を継続することを合意。
EB73
・
“E-/E+政策の取扱い”について、引き続き検討。理事会では、投資分析を通じた追加性
の証明において、E-関連の政策について、実効的な実施日から7年間、考慮しないことで
合意したが、更に検討作業を続けることで合意。理事会では、事務局に対して、このような
対応を踏まえたガイドラインと、“ベースラインシナリオの同定及び追加性の証明のため
の複合ツール”と“追加性の証明と評価のためのツール”について必要とされる修正
について準備するように求めた。
EB74
・
「CDMプロジェクト基準(PS)」「CDM有効化審査と検証に係る基準(VVS)」及び「追加性の証
明、適格性要件の進展及びPoAにおける多様な方法論の適用に係る基準」の改訂案を採
択。
EB75
・
理事会は「プロジェクト基準」「有効化審査および評価基準」「プロジェクトサイクル手順」
の改訂に係るコンセプトノートについて、関係当事者からのコメントや事務局におけるこれ
までの経験を踏まえて検討。その上で、理事会は事務局に対して、今回の理事会での議
論の中で、特に指摘された以下の内容を考慮して、これらの文書の修正を行うとともに、広
く一般からの意見を募るよう求めた。理事会は、さらに事務局に対して修正案を77回あるい
は78回理事会までに提出するようもとめた。なお、以下に示した点については、PoAにおい
ても適用される論点である。45
(a)事前検討:プロジェクト参加者が事前検討に含める情報について、さらなる明確化が必要。現
行の事前検討の通知の例外(新しいベースライン・モニタリング方法論あるいは、承認済み
方法論の改正が提案されている場合)の除外することを検討。
(b)登録前の発行済PDDの変更:全てのプロジェクト参加者が変更する場合にはPDDの新規発行
が必要となることを明確化。それ以外にも、DOEあるいは事業計画の変更があった場合、
プロジェクト活動の変更による潜在的な影響を評価し、同様な要件をもうける必要性がある
のかさらに検討。
(c)一部のプロジェクト活動における直接の説明:DOEやプロジェクト参加者が、理事会が登録・発
行申請の却下やクレディッティング期間更新の申請を却下した際に事務局と対話できる機
会を導入できるか、実施可能性について調査。
(d)実施段階での方法論適用可能性のチェック:モニタリング期間において方法論の適用条件が
満たされているか否かを証明することについて、規制文書の中で要請する必要があるかど
うかさらに分析。
(e)登録後変更プロセス:理事会による事前承認を必要とする変更の種類(事前承認変更手続き)
と、発行申請と同時に行うことが可能な変更の種類(発行申請時変更手続き)など変更を
種類について分析し、修正が適当と見なされる場合、プロジェクト基準の附属書1の修正な
- 183 -
どを含む改正案を理由とともに提案すること。
(f)モニタリング報告書の取り下げ:プロジェクト参加者やDOEが発行済みモニタリング報告書を取
り下げるためのシンプルなプロセスの導入。
(g)発行申請の取り下げと再提出:以前申請が取り下げられたことのある発行申請については、再
提出のための理事会からの承認を得る必要性を削除することを検討。発行再申請におけ
るプロジェクト参加者によるモニタリング期間の短縮・拡大についてのすべての規制は、も
し必要である場合、環境十全性を守るものでなければならない。
(h)クレジット期間の更新:クレジット期間は間を空けず連続すべき。クレディッティング期間更新の
意思表明の遅延が、CERの発行申請に影響を与えるのか、もし与える場合はどのような影
響なのか、さらに検討する必要がある。同時に、クレディッティング期間の更新の意思表明
を公開することも検討する。
(i)プロジェクト活動の登録取消および活動停止:事務局は自発的なプロジェクト活動の登録取消
を許可するルールについて提案。
EB78
・ 「追加性の立証およびベースラインシナリオの選択に係る投資分析におけるE‐政策の適用ガ
イドライン」草案、「追加性の立証および証明ツール」改訂、「ベースラインシナリオおよび追
加性の評価認定に係る複合ツール」改訂に係る議論を行った。その結果、提案されていた
「E‐政策の便益が受けられる期間」についてさらに絞り込むことで合意した。その上で事務
局に対して、上記ガイドライン草案ならびにツールについて、以下の論点を踏まえて、第79
回理事会において検討するために修正を加えるよう要請した。
a)第75回理事会に提案された「E‐政策の便益が受けられる期間」の縮小パターンの選択肢
(第74回理事会議題の附属書16参照)について、さらに分析すること
b) E‐政策の実施日の定義について改めて検討すること
EB79
・
追加性の立証およびベースラインシナリオの選択に係る投資分析におけるE‐政策効果に
関して検討を行った。その結果、理事会は事務局に対して、更に多くの具体例に基づいた
オプション2Aと4Bの分析を実施するよう要請した。
Option 2A: ホスト国においてE-政策の効力が発生して以降あるいは2014年1月1日以降のう
ちいずれか遅い日を起点として、7年間は、E-政策によってプロジェクトが享受す
る利益を考慮しない。
Option4B:
ホスト国においてE-政策が実施されてから、あるいは2014年1月1日以降のうち
いずれか遅い日を起点として、7年間に登録申請されたプロジェクトについて、投
資分析の対象となる全プロジェクト期間(最大21年)、E-政策によってプロジェクト
が享受する利益を考慮しない。
- 184 -
EB81
・
理事会は、事務局による「追加性の立証およびベースラインの選択のためのE - 政策分析
の適用」に関係する作業結果について検討し、継続して審議していくことに同意した。
・
さらに、理事会は、事務局に対して、E - 便益年数をパラメーターとして設定した場合に、実
際のプロジェクト活動における追加性が認められる範囲について説明する分析の準備を要
請した。
(2) 炭素回収・貯留(CCS)方法論の扱い
概要
経緯
COP/MOP1
炭素回収・貯留(CCS)に関連した主要論点として、プロジェクト領域、漏出、永続性の 3 つに
焦点を当てて、①政府意見書の提出を求めること、②SBSTA24(今年 5 月)にて本件に関するワ
ークショップを開催すること、③CDM 理事会に提出された方法論の検討を行い、方法論策定の
観点から COP/MOP2 に勧告を提出すること、が求められている。
EB23
上記③を受け、これまでに CDM 理事会に提出された CCS 関連方法論 2 件の扱いについて
討議が行われた。その結果、まず、COP/MOP2 に対し行う勧告としては、COP/MOP1で要請さ
れた上記 3 つの論点に関する方法論パネルによる qualitative assessment に基づく一般的な勧
告のみを提出することが確認された。その上で、当該勧告内容の検討を行うために、個別の排
出源 CDM の新方法論に適用される手続き(「新規方法論の提出及び審査に関する手続き」)に
則り、これら 2 件の方法論について方法論パネルで検討を開始することが合意された。この結
果、提出された 2 件の個別の方法論の評価は行わず、また、当該手続きに規定される従前の事
前審査は行わないこと、ただし、必要に応じて方法論提案者から clarification を求めることが合
意された。
本件については、CCS プロジェクトを実施するためのモダリティが存在しないとの解釈(CO2
削減の非永続性の観点から、排出源 CDM(温室効果ガス排出の reduction を対象)のモダリティ
を定めた Decision 17/CP.7 は適用されないとの考えに基づく解釈。他方、吸収源 CDM(温室効
果ガスの removal を対象)のモダリティを定めた Decision 19/CP.9 はその対象を植林・再植林に
限定しており、CCS は含まれない。)から、既存の排出源 CDM の方法論における手続きを CCS
方法 論の検討に適用するこ とに抵抗を示す 考え方が一部メ ンバー より示された。他 方、
COP/MOP2 への有効な方法論の勧告を行うためには、CCS プロジェクトに関する様々な専門的
な知識や情報が不可欠であり、まずは方法論パネルにより具体的かつ技術的な検討を早期に
行うことが必要との見解が多くのメンバーから示され、上記合意が行われた。
CDM 理事会メンバーに対しては、2006 年 5 月に開催されるワークショップにおいて議論され
るべき項目等の提出を 3 月 2 日までに行うことが求められた。
なお小規模 CDM においても CCS 方法論が 1 件提出(SSC_0038 "Anthropogenic Ocean
- 185 -
Sequestration by Changing the Alkalinity of Ocean Surface Water")されており、上記と同様の方
向性で小規模ワーキンググループが検討を行なうことが合意された。
EB25
方法論パネルは、CCS 関連方法論 2 件(NM0167(三菱東京 UFJ 証券による開発)、NM0168
(三菱総合研究所による開発))に基づき、上記 3 つの論点について、定性評価を行った。CCS
方法論について、①政策的・法的論点、②技術的・方法論的論点の両面から、方法論パネルの
考察を示す内容となっている。
理事会は、今次の会合において、提出された評価報告に基づき COP/MOP2 への勧告の作
成を進めるよう、方法論パネルに要請することを合意した。その際に勘案されるべき事項として、
以下の 4 点が挙げられた:①貯留された CO2 量の具体的計測方法、②CO2 の注入サイトだけで
なく、漏洩のモニタリングを行うために、プロジェクト領域として貯留層全体を含むための規定の
策定、③CO2 の腐食性(強酸性)による貯留層からの漏洩への影響、④小規模 CDM の方法論と
して提出された海洋貯留に関する専門家の見解。
なお、方法論パネルから提出された評価には、今後の検討の進め方についてのオプションが
提示されていたが、これについての具体的な議論は行われなかった。
EB26
方法論パネルによる勧告案について検討。勧告案は、CCS の方法論に関する問題点を①政
策的・法的論点、②技術的・方法論的論点に分類し、①については COP/MOP で、②について
は COP/MOP が指定した専門的な組織(IPCC を想定)で検討することを求める内容であった。
また、これまでに提出された方法論については、それぞれの問題点を分析した上で、その解決
のためには、COP/MOP および専門的な組織からのガイダンスがまずは必要とされた。
理事会会合で検討が行われた結果、具体的な方法論の分析に限定することが適切との考え
方から、COP/MOP に対する勧告の中に COP/MOP で検討すべき課題の抽出等は含まない内
容とした上で採択された。
理事会の議論では、例えば、“国際社会が許容できる漏洩レベル”といった問題は、まずは技
術的な観点から検討する必要があるとする意見と、政策的な意思決定が求められるとする意見
等に分かれた。このように CCS に関する課題の検討プロセスについても CDM 理事会内で合意
が得られにくいことが観察され、CCS プロジェクトを CDM として認めることの是非について明示
的な見解は示されなかった。
CMP2(2006 年 11 月)
検討スケジュールをめぐって各国が対立し、結局、次のような決定がなされた。
・ 方法論の承認は CMP ガイダンスの後にしかすることができない。
・ 長期的な物理的リーケージ(漏出)のリスクと不確実性のレベル等政策的・法的問題および技
術的・方法論的問題についての政府間組織および非政府組織による情報提供(2007 年 5 月
まで)。
・ 締約国によるサブミッション(2007 年 9 月まで)。
- 186 -
・ 事務局によるコンピレーション。
・ SBSTA27(2007 年 12 月)による勧告作成、CMP3 による検討、CMP4(2008 年 12 月)におけ
る決定を目途。
CMP3(2007 年 12 月)
CMP4 に向けて、締約国等に対して意見提出を求める追加トピックのスコープについて、どの
ような政策的問題(モニタリング、責任、法的アプローチ等)を含めるか、特に、CCS による他の
CDM プロジェクトに対する影響および CDM によって生じた追加的収入による化石燃料生産増
加に対する影響を含めるか、プロセスについて、SBSTA28(2008 年 6 月)と 29(2008 年 12 月)の
間・前でワークショップ(非公式協議)を行うか等が論点となった。
議論の結果、スコープについては、追加トピックのリストを削除し、プロセスについては、すでに
行われた締約国等からのサブミッションに関する統合報告書を作成し SBSTA28 で検討、また、
追加的な意見募集を行うとともにそれに関する統合報告書を作成し SBSTA29 で検討することと
なった。
CMP4(2008 年 12 月)
CMP4 の議題 5「CDM に関する問題」において CCS の CDM 化が取り上げられた。CMP の決
定書において、CCS を影響の評価を技術面・方法論面・法律面の問題点に配慮しつつ実施し、
CMP へ報告するように CDM 理事会への要請がなされた。
EB46
CDM 理事会は CCS の CDM 化に関する TOR 案に留意し、検討チームのメンバーに対して、
TOR 策定作業を継続すると共に出来るだけ早く終了するよう要請した。また CDM 理事会は CCS
専門家(特に CMP4 決定で要求された「技術・方法論・法律」の経験を有する人材)の募集を決
定した。募集期間は 2009 年 3 月 27 日~5 月 4 日で、応募者は次回 EB47 で選考される。
EB47
CDM 理事会は下記 3 点を検討した。
・検討メンバーから提出された、CCS の CDM 化に関する TOR 案
・CCS 専門化選考プロセスの草案
・CCS 専門化募集の応募者リスト
CDM 理事会は、提出された TOR 案を承認すると共に、専門家の選出を行った。
EB49
CDM 理事会は、外部コンサルタントにより用意された CCS の CDM 化に関する報告書を検証
した。CDM 理事会は、「本報告書は CCS に関する広範な考察を提供するものであるが、TOR の
核となる要素である『CDM 化の可能性』について言及されていない」との判断を下し、再検証の
前に更なる作業を求めることで合意した。よって CDM 理事会は事務局に対して下記 2 点の作業
を要請した。
・ EB で議論された問題を外部コンサルタントにフィードバック
・ EB50 での検討に向けて報告書の再考を外部コンサルタントに要請
- 187 -
EB50
CDM 理事会は「CCS の CDM 化により生じうる影響」を採択した。本文書は CMP5 に提出する
EB 報告書の附属書として添付される予定である。
CMP5
CMP5 の議題「CDM に関する問題」において、CCS の CDM 化が取り上げられた。CMP 決定
書において下記のように決定がなされた。
・ 下記の点に関する懸念を認識した上で、可能性を秘めた緩和技術として CCS は重要である
ことを認識する。
(a)長期永続性を含む非永続性、(b)測定・報告・検証、(c)環境への影響、(d)プロジェクト
活動の境界、(e)国際法、(f)信頼性、(g)予期せぬ結果となる可能性、(h)安全性、(i)漏
出・リーケージによるダメージの保険担保および補償
・ CMP6 でこの問題の決定が採択できるよう、CCS の CDM 化に関して上記の問題点に取り組
みつつ作業を継続するよう、科学および技術に関する補助機関(SBSTA)へ要請する。
・ 上記問題点に関する意見を 2010 年 3 月 22 日までに事務局へ提出するよう、京都議定書締
約国に奨励する。
・ 京都議定書締約国から提出された意見を SBSTA32 での検証に向けて集約するよう、事務
局に要請する。
CMP6
CMP 決定書において、CDM のプロジェクト活動としての CCS は下記のように決定がなされ
た。
・ CCS は条約の最終目標への到達に関連する技術であり、可能性を秘めた緩和技術として
CCS は重要であること、また、CDM のプロジェクト活動に含める際の影響に対する懸念を示
し、CDM 化に向けた検討を行えるよう CCS の計画・実行の取り組みをする必要があることを
認識する。
・ CCS は決定書 2/CMP.5 第 29 項に特定された問題が解決されるならば、CDM のプロジェク
ト活動としてふさわしい。
・ CMP7 での決定の提案に向けて、CCS を CDM に基づくプロジェクト活動に含めるために様
式と手続を詳細化するよう、SBSTA へ要請する。
・ 上記の様式と手続は下記の問題に取り組むものでなければならない。
(a)強固な水準に基づいた用地選定、(b)モニタリング計画の策定、(c)2006 年 IPCC 国別温
室効果ガスインベントリに関するガイドライン、(d)用地選定やモニタリング計画の基準は国
際的組織による関連のガイドラインが利用可能、(e)境界、(f)境界の定義、(g)境界からの
CO2 放出の計測および算定、(h)開発の適切性とその影響、(i)漏出・リーケージ、(j)リスク・
安全性・社会環境影響の評価、(k) リスク・安全性の条件:放出による気候への影響と緩和
行動の提案を含むもの、(l) リスク・安全性・社会環境影響の評価の条件:技術的・環境的
に実行可能性を評価する際に検討要、(m)短期的、中期的、長期的責任、(n)救済措置、
- 188 -
規定、責任移転、(o)生態系の修復、地域への補償
・ 上記の様式と手続きに関する意見を 2011 年 2 月 21 日までに事務局に提出するよう、締約
国と一部のオブザーバー組織に奨励する。また、この提出文書とその意見を集約した報告
書を事務局に作成するよう要請する。
・ 上記の提出文書と報告書を検討し、上記の様式と手続きについて議論を行うため、
SBSTA34 と SBSTA35 の間に、技術と法律の専門家が参加する技術ワークショップの開催
を事務局に要請する。
・ 上記の提出文書と技術ワークショップでの検討を踏まえて、SBSTA35 での検討に向けた様
式と手続の草案を作成するように事務局に要請する。
CMP7
CMP 決定において、CCS プロジェクトに関する Modarity and Procedures が採択される。
EB67
CCS Working group のTORを採択(CDM理事会の TOR を改正)。
EB70
CDMCCS プロジェクトに求められる要件をPS、VVS及びPCPに反映・統合するための作業計
画を承認。同時に事務局に、責任の移転及び資金に関連する手続きの策定についても考慮
し、2013 年から 2014 年の作業計画に反映させることを要請。
EB74
・
CDMプロジェクトとしてのCCSの具体的な実施のためのconcept noteについて検討し以下
のフィードバックを行うとともに、次回の理事会において検討するために、事務局に足して
ホスト国による合意の表明(EoA, the expression of agreement)及びCCSをCDMプロジェクト
として実施する場合の政府承認(LoA)の雛形のドラフトを作成するよう求めた。さらに、理
事会は事務局に対して、今後の理事会において検討するために、以下の項目を検討した
上でPS,VVS及び「CDM project cycle procedure(PCP)」の改正するよう求めた。36
(a)EoAの交付:締約国は将来の全てのプロジェクトへの適用に対し、EoAを一度提出す
ることが可能とすること。EoAは、CDMプロジェクトとして実施されるCCS事業の
Modalities and Procedures(CCSM&P)の要件を満たすために国内法や規制の一覧表
を示すことができる。
(b)有効化審査と登録:DOEはホスト国の法律や規則がCCSM&Pの8(a)から(f)に規定され
ているような参加要件を満たしているか調査しなければならない。
(c)CERの発行:PCPに規定されているCER発行申請の処理期間について他のCDMプロ
ジェクトに適用されている現行の28日間の期間をCCSプロジェクトの発行にも適用され
るべき。
(d)モニタリング:CCSプロジェクトのヒストリーマッチングの間における重大な乖離は方法
論ごとに処理されるべき。仮に重大な乖離がプロジェクトサイクルのいずれかの段階で
発生した場合には、プロジェクト参加者は速やかにそのホスト国に文書で通知しなけ
- 189 -
ればならない。
(e)SoP:既存のPCPに規定されているCDMプロジェクトに対する規定は、CCSプロジェクト
にも適用されるべき。
(f)非永続性の問題の扱い:CDMへの登録に際しては、それぞれのCCSプロジェクトに対
し、貯留したCO2の漏洩が生じた場合や検証報告書が提出されない場合のための口
座を、プロジェクト毎に与えられるべき。
(g)資金に関する規定:プロジェクト参加者の資金力に関する規定は、ホスト国の法律や
規則やCCSM&Pに規定されている要請に従い、DOEによって審査されるべき。
(h)プロジェクト及びプロジェクトサイトの管理責任:プロジェクト参加者は適当なDNAを通
じて、責任の移転の発生が予定される6ヶ月以上前に、理事会に文書で通知するべ
き。
(i) 以下の事項については、PS案、VVS案、PCP案のなかで選択肢が提供される:
(i)CCSM&Pに基づくプロジェクトへの参加要件に適用可能なホスト国の法律や規則の
リスト;
(ii)飲料水供給に適した場所におけるCCSプロジェクト活動の問題;
EB78
・
CCSプロジェクトに関して、以下の項目を採択。
a) 「CDMプロジェクト基準(PS)」、「CDM有効化審査と検証に係る基準(VVS)」、「CDMプ
ロジェクトサイクル手順(PCP)」の改訂
b)CCS事業の承認レターに関するガイドラインの作成
c)DNAによるCCS事業における合意表明の形成
(3)プログラム型 CDM
概要
“プログラムのもとで行われる CDM のプロジェクト活動”として新規方法論(NM0159:ガーナにお
いてエアコンのエネルギー効率基準を規制として定めた場合に、そうでない場合と比較し回避
可能な GHGs 排出を削減クレジットとして算出するという内容)が提出され、その適格性が検討さ
れた。当該方法論は、エアコンの省エネルギー基準の遵守状況のテストや省エネルギーラベリ
ングの実施をプロジェクトの内容としている。こうした活動をもって、省エネルギー効果をどのよう
に計測するのか等、具体的な検討が求められた。
経緯
COP/MOP1:
政策や基準自体は CDM となり得ないが、政府プログラムの下に実施されるプロジェクトについて
はバンドリング等を通じて CDM として実施することを認めることが決定された。
EB24
方法論パネルは、これに合わせた方法論が提案されたことを背景に、また、COP/MOP1 決定
とも整合性を図り、“プログラムのもとで行われる CDM のプロジェクト活動”について定義の検討
を方法論パネルで開始することを勧告した。理事会では、政策と CDM の関連についての定義
- 190 -
づけ等については、これまでに議論が重ねられつつ明確な結論に至っていない事実をふまえ、
こうした up-front の定義づけを行うことがそもそも可能であるのか、といった疑問が出された。他
方、具体的な方法論がすでに提出されつつあり、迅速な対応が求められることから、こうした方
法論について方法論パネルが検討を開始し、その過程で得られる知見を反映することで定義等
を決めるべき(ボトムアップ・プロセス)といった意見が出された。しかしながら、具体的な手順や
検討方法について議論が紛糾し、合意に至らなかった。
最終的には、以下が決定された:①方法論パネルに対し、本件の定義を EB25 で検討する際
の資料とするため、これら提出方法論を用い具体的検討課題を抽出するよう要請すること;②こ
の作業と並行して、政策及びプログラムによる活動の定義についてパブリック・コメントを募集
(2006 年 5 月 19 日~6 月 16 日)すること。
EB25
方法論パネルは、今次理事会に対し検討結果を提出し、追加性立証やベースライン・シナリオ
の選定等の要件に関して想定される課題等を示した。
理事会では、本件について CDM 理事会が検討を進めるためには、具体的な判断材料が必
要であることや、方法論パネルは、課題をより具体的に示し、それぞれについて考えられる対応
策を提示すべきとの見解が示された。このため CDM 理事会では、定義の策定についての実質
的な議論は行われず、本件については実質的に方法論パネルに差し戻しとすることとなった。
EB26
理事会に対し方法論パネルは、“プログラム”、“政策”のそれぞれについて定義のオプションを
提示した。関連して、政策の強制度(implementation, enforcement)について明確化を求めた。し
かしながら、今次理事会会合では、本件について各メンバーの見解が示されるにとどまったこと
から、今次理事会会合での議論を勘案し事務局がオプションの精緻化を行い、次回 CDM 理事
会にあらためて提案することとされた。
EB27
事務局が作成した“プログラム”及び“政策”の定義案に基づき検討が行われた。定義案は、
“活動プログラム”(実施主体や活動内容が多様あるいは複数の活動)をひとつのプロジェクト活
動として実施可能とすることを意図した内容であった。そして今次理事会会合では、その具体的
方法等についてさらに議論が行われた。その結果をふまえて事務局が勧告案の作成をすすめ、
次回 CDM 理事会会合にて再検討することが合意された。
EB28
「単一 CDM プロジェクトとしての活動のプログラム下のプロジェクト活動の登録に関するガイダ
ンス」を採択。
活動のプログラム(PoA)は民間または公的機関による自主的で調整された活動。PoA が登録さ
れ、CDM プロジェクト活動(PoA 下のプロジェクト活動,CPA)は登録 PoA に追加される。
原則の基本的なセットを提供するもので、知識が広がるにつれ改訂される。事務局に対して、
EB29 での検討のためプロジェクトサイクルに関して提案を洗練するよう要請。
- 191 -
<ガイダンスの内容>
・ 活動のプログラム(PoA)は、政策/措置または目標(インセンティブ制度、自主的プログラム)
を調整・実施する民間または公的機関による自主的で調整された活動。
・ PoA は登録時に、CDM プロジェクト活動(PoA 下のプロジェクト活動,CPA)によって提供され
るべき情報のタイプを定める。
・ CPA は登録 PoA に追加される際に、登録 PoA で定められた情報を提供する。
・ PoA の期間は、30 年を超えない範囲で、PoA の主体によって PoA の登録申請時に定められ
る。CPA は PoA に、PoA の期間内のどの時点でも追加されることができる。CPA のクレジット
期間は、7 年×3 回の renewable か 10 年 fix。CPA のクレジット期間は、PoA の終了日までに
限られる。
・ 排出削減量を検証する方法またはアプローチ(ランダムサンプリングを含む)は正確性を確保
しなければならない。
EB29
事務局案に基づき、プログラム CDM の手続き、PDD 等を検討する予定であったが、次回に先送
りとなった。
EB30
PoA 手続きが検討され、CDM 理事会は事務局に対して、できるだけ早く、メンバーからのコメン
トに基づき、EB31 での検討のため文書の改訂版を作成するよう求めた。
EB31
PoA 手続きに関して引き続き議論が行われ、CDM 理事会は事務局に対して、できるだけ早く、
メンバーからのコメントに基づき、EB32 での検討のため文書の改訂版を作成するよう求めた。
EB32
PoA ガイダンス ver.2 および PoA 手続きが合意された。CDM 理事会は事務局に対して、小規
模および小規模 AR のプロジェクトについての PoA ガイダンス案を小規模および ARWG の報告
および今次会合でのメンバーによるコメントを考慮して作成するよう求めた。
EB33
小規模および小規模 AR の CPA についての方法論の適用およびデバンドリングに関する PoA
ガイダンスが合意された。
また、政策・基準を実施するための検査機関、実施機関などのインフラや能力をつくることそれ
自体は CDM プロジェクトとはみなされないことが合意された。プロジェクトはインフラや能力の創
出の結果であり、その適格性は、測定可能な排出削減であって当該プロジェクトへの直接帰属
可能なもののみに基づかなければならないとされた。
EB35
方法論は、CDM プロジェクトおよび PoA 下の CPA の両方への適用について承認されること、
新規方法論を提出する際は、提案方法論が適用できる活動を明確に定めるべきことが明確化さ
れた。
- 192 -
EB41
CDM 理事会は PoA に関するパブコメの実施を決定した(募集期間:2008 年 8 月 6 日~9 月 3
日)。募集内容は PoA の促進、および PoA の有効化審査・登録申請における問題点についてで
ある。またパブコメの結果は次回の EB42 で確認されることが決定した。
EB42
PoA の促進、および PoA の有効化審査・登録申請における問題点についてパブコメ募集を行
った結果寄せられた意見を踏まえ、CDM 理事会はステークホルダーから寄せられた問題点に
留意した。CDM 理事会は次回の EB43 での審議に向けてオプションを作成するよう事務局に要
請した。
EB43
PoA の促進、および PoA の有効化審査・登録申請における問題点について事務局によりオプ
ションが作成され、それに基づいて審議が行われた。パブコメで寄せられたもののうち、追加性
の立証、方法論の適用、CPA の包含と DOE の責任に関してオプションが作成された。CDM 理
事会は次回の EB44 にてさらなる審議を進めることで合意した。
EB44
事務局により作成されたオプションが留意されたが、審議時間の関係で次回の EB45 で引き続
き審議を行うこととなった。
EB45
プログラム活動登録手続きの問題に関するパブコメが事務局より提示され、追加性立証、CPA
の包含と DOE の責任、方法論の適用、デバンドリングの発生における手続きの改訂について議
論が行われた。CDM 理事会は事務局に対して、次回 EB46 での検討に向けた改正案および関
連文書を用意するよう要求した。
EB46
CDM 理事会は事務局に対して、パブコメで寄せられた意見、および EB45・46 での政策に関
する議論を考慮した上で、PoA 登録手続きの改訂版を用意するよう要求した。CDM 理事会はこ
れを次回 EB47 で検討する予定である。
EB47
CDM理事会は下記4点の採択に合意したほか、これらに基づき、関連するPDDフォームおよび
CDM用語集の改訂と、必要なフォームを発行するよう事務局に要求した。
①PoA登録およびCER発行の手続きver.3
②CPAを誤って含めた際のレビュー手続き
③PoAにおける複数方法論適用の承認手続き
④小規模プロジェクトのデバンドリングに関するガイドラインver.2
CDM理事会は、2009年12月31日以前に有効化審査が開始されたPoAについては、 「PoA登
録およびCER発行の手続き」のパラ5(d)の適用除外を決定した。すなわち「開始日が2007年6月
22日からPoAの有効化審査開始までの間にあるCPAを含むPoA」が適用対象であり、これに該
- 193 -
当するCPAのリストを2010年1月31日までに有効化審査を行うDOEとUNFCCC事務局に対して
提出することが用件である。
CDM 理事会は事務局に対して、PoA における追加性立証のガイドラインを今後の EB での検
討に向けて準備するよう要求した。また準備にあたって、PoA における追加性は「PoA 単位」もし
くは「CPA 単位」で立証が必要であることに留意することも要求した。
EB48
CDM 理事会は PoA の登録要請である「CUIDEMOS Mexico (Campana De Uso Intelegente De
Energia Mexico) - Smart Use of Energy Mexico」 (Ref.2535) のレビュー要請を考慮し、本件を修
正条件付き登録とすることで合意した。
EB49
EB48 で修正条件付き登録となった Ref.2535 が 2009 年 7 月 31 日に登録されたことに関して、
初の PoA 登録に謝意が寄せられ、CDM 理事会はそれに留意した。
EB51
PoAの登録2件目となる「Methane capture and combustion from Animal Waste Management
System (AWMS) of the 3S Program farms of the Instituto Sadia de Sustentabilidade」(Ref.2767)
が2009年10月29日に登録された。それを踏まえ、CDM理事会は累計2件のPoAが登録されてい
ることに留意した。
CDM 理事会は、PoA における追加性立証のガイドライン案を検討した。これについては次回 EB
でさらに検討することで合意した。
EB52
「PoA の追加性立証ガイドライン案」は次回 EB53 にて検討を継続することが決定した。
EB53
レビュー要請されていた PoA 案件「Uganda Municipal Waste Compost Programme」(Ref.2956)
が、修正条件付で登録承認された。また、「登録 PoA に CPA を含める際の追加性立証に関する
適格性基準決定ガイドライン」は次回以降にて検討を行うことを決定した。
EB54
「登録 PoA に CPA を含める際の追加性立証に関する適格性基準決定ガイドライン」について、
PoA の追加性は PoA レベルのみで立証し、CPA の含有の基準を CPA レベルの追加性立証に
使用するというアプローチが確認され、事務局がガイドライン案を作成することになった。また、
EB56 にて検討を行う予定となった。
EB55
ステークホルダーの意見に基づいて、登録された PoA の中に CPA が含まれた後の 1 年以内、
CPA のクレジット期間更新後 1 年以内、あるいは最初の CER 発行後の 6 ヶ月までのいずれか遅
いものにレビュー要請期間を制限する、などと PoA ルールの枠組みを見直して明確化を図り、
EB47 で採択された「PoA 登録および CER 発行の手続き ver.3」及び「CPA を誤って含めた際の
レビュー手続き」を改訂した。
- 194 -
EB56
「登録 PoA に CPA を含める際の適格性基準決定ガイドライン」案を検討したものの、その内容
を踏まえ、再度、案の作成を事務局に要請した。
EB57
EB56 で検討された「登録 PoA に CPA を含める際の適格性基準決定ガイドライン」案の作成作
業を継続するよう事務局に要請した。
EB60
マイクロスケールプロジェクトの適用範囲をタイプⅢまで拡大するマイクロスケールプロジェクト
の追加性の証明ガイドラインの改訂版を承認するとともに、改訂版の中で、マイクロスケールプロ
ジェクトが PoA にも適用されることが明確にされた。
EB61
CPA を PoA に誤って含めた場合の審査に関連する規定が、PoA の拡大の障害となっているこ
とを認識し、CDM 理事会は、このうような過誤が発生した場合、DOE のみが CER を取得し、取り
消すことが求められると決定した。さらに、これを踏まえて事務局に、PoA の手続きの枠組みにこ
の決定を組み入れるように要請した。同時に、CPA を誤って PoA に含めた場合のガイドラインを
改訂することにも合意した。
EB63
・PoA による GHG 排出削減の追加性の証明に関する基準を採択した。
・PoA のもとでの CPA として含まれるプロジェクト活動の適格性基準の策定の基準を採択した。
EB65
PoA における追加性の証明、複数の方法論の適用と適格性基準の策定に関する基準を採択し
た。
EB67
複数の方法論を活用したプログラム CDM による横断的な影響を考慮するためのガイダンスの検
討開始。理事会は事務局に対して、理事会から示された複数の方法論を活用したプログラム
CDM の影響に関する条件を踏まえて、ガイドラインを策定するよう要請した。理事会が示した条
件とは以下の通り。
(a)プログラム CDM に複数の小規模方法論の組み合わせがベースラインに及ぼす潜在的
な横断的影響の範囲を明確にすること。
(b)方法論の承認手続きにおいて考慮されるべき単一の方法論における複数の技術の組
み合わせによる潜在的な横断的影響。プロジェクト参加者からの大規模方法論と小規
模方法論の組み合わせによる横断的な影響の明確化の問い合わせへの対応も含まれ
うる。また、この手続きの中で理事会は、CDM に関する措置による価格への影響(公共
交通機関におけるモーダルシフトのようなもの)も、考慮されうる。
(c)適用される方法論のベースラインの連続定量が、特定の場合には適切である可能性も
あること。ただし、全ての場合の解決策にはならないため、その他の対策も求められる。
- 195 -
(d)横断的影響には良い影響だけではなく悪影響も含まれうる点を考慮すること。
(e)横断的影響を、他の用語を用いて表現する可能性を検討すること(例えば、ダブルアカ
ウントに関する横断的な手法など)。
EB68
・「プログラム CDM における多様な方法論の適用における、相互効果の検討のためのガイドライ
ン」を採択。
EB69
・「プロジェクト活動・プログラム CDM に対するサンプリング及び調査の基準」と「プロジェクト活
動・プログラム CDM に対するサンプリング及び調査のガイドライン」の改訂を採択。
EB74
・「CDM プロジェクト基準(PS)」「CDM 有効化審査と検証に係る基準(VVS)」及び「追加性の証
明、適格性要件の進展及び PoA における多様な方法論の適用に係る基準」の改訂案を採
択。
EB75
・ PoA に関して、「CDM プロジェクト基準」「CDM 有効化審査および検証基準」「CDM プロジェ
クトサイクル手順」「モニタリング報告様式を完成するためのガイドライン」の改訂に同意。
・ ネガティブ排出削減への懸念に対応するために、設けられている PoA の CER 発行申請手続
きにおける条件(二つの CPA のグループからのモニタリング結果に対する CER 発行がなされ
た場合、この CER 発行申請手続きが終了するまでは、継続して行われたモニタリング結果に
対する CER 発行申請を行うことが出来ない)について、利害関係者から PoA 実施の障害とな
っているとのコメントがあったため、事務局に対して柔軟な手続きとするための対応策を検討
することを要請していた。
EB78
・ 事務局が作成したPoAからのCER発行申請手続きをより柔軟な手続きとするための対応策に
ついてまとめたコンセプトノート(第78回理事会会議資料附属書11)を踏まえて協議し、以下
の事項を事務局、方法論パネル、小規模WGに要請した。
(a)事務局に対して、以下の二つの要請を行った。
*コンセプトノートのオプション1(ネガティブ排出削減の生じる可能性のない方法論につい
ては柔軟な対応を認めるもの)で示されたように、PoAに関する規制文書の修正を提案
するよう更に作業を行うこと。
*一連の修正についてCMPにおいて確認を得るための勧告を検討することを要請するとと
もに、さらに簡素化する余地が残っているのか評価し、将来の理事会において検討する
ために提案を作成すること。
(b) 同時にMathパネルと小規模WGに規制関係文書および関連する方法論について、オ
プション1で示されたようなネガティブ排出削減(排出増)についての対応するため適切
な修正を求めた。
- 196 -
・ PoA におけるマイクロスケール CPA に関するコンセプトノートについて検討し、今後の小規模
ワーキンググループの作業のマイクロスケール CPA の閾値に関する勧告作成作業において
考慮することが求められる点を以下のように示した。
(a) 閾値の分析は、マイクロスケールプロジェクトだけではなく、自動的に追加的と見做さ
れる技術のポジティブリストの基準を満たす小規模プロジェクトも対象とすること
(b)閾値の分析には、変更された結果、潜在的にプロジェクト規模の閾値となりうる数値
(CPA の合計と個別の CPA)を含めること、また、もし適切であれば、時間的な変化ある
いは技術的な考慮(関連する方法論の技術に関する特定の規定を通じたもの)も視野
に入れて検討すること
・複数の国で実施される PoA の規則の改善に関するコンセプトノートについて検討し、関連する
規則について、次のように修正することを合意した。
CME は、PoA に含まれる CPA で実施される技術/措置が同一であったとしても、以下の
手続きにおいてそれぞれのホスト国における特定 CPA-DD をを提出する。
*PoA の登録申請時 あるいは
*追加的なホスト国を加えるために PoA を拡大する時
EB80
・理事会は、PoA 関連の規制文書の改訂について検討を行い、下記項目に同意した。
(a) PoA における単一モニタリング期間に最大 10 件までの CPA の発行申請を許可(現行 2
件まで)。
(b) 一つのモニタリング期間において全ての CPA の検証を同一の DOE とする制限を削除。
(c) 複数の CPA を用いる際、CPA のレベルにおいてサンプリングと調査を実施すること。
(d) 特定のケースについて、CPA において、PoA 登録の提出時とともに登録後の PoA 変更申
請における CPA-DD 数の制限を廃止。
(e) PoA への適用の際に生じる必要性に応じて、大規模方法論を組み合わせること(小規模
方法論を含めて)を、理事会による事前承認無しで行うことを認める。その際は下記の事
項を満たす必要がある。
(i)技術/追加性証明が共通の方針または PoA の目標の実現のために実施されること。
(ii)各々の CPA は 1 つの方法論を適用すること
(iii)異なる CPA 間での相互作用がないこと
- 197 -
7.
CDM レファレンスルール
<基準>
ガバナンス
○行動規範
Code of Conduct(Ver02.0, EB69 Annex01)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Standards/meth/gov_stan01.pdf)
[EB47]採択。
[EB69]利害関係の定義を追加。
規定
(a)運営組織の認定基準
CDM Accreditation Standard for Operational Entities(Ver04.0, EB67 Annex05)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Standards/accr_stan01.pdf)
[EB46]採択。
[EB56]独立性要件の強化など。
[EB62]複雑技術分野についての有効化審査・検証チームの最初の資格認定に関する暫定
措置を導入。
[EB67]人材や能力に係る要件の一貫性と明確化を改良
(b)第 2 約束期間の CDM プロジェクトおよび PoA における地球温暖化係数の適用基準
Standard for application of the global warming potentials to clean development
mechanism project activities and programs of activities for the second commitment
period of the Kyoto Protocol(Ver01.0, EB69 Annex03)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Standards/meth/reg_stan02.pdf)
[EB69]採択。
(c)PoA の追加性照明、適格性基準の作成および複数方法論の適用の基準
Standard: Demonstration of additionality, development of eligibility criteria and
application of multiple methodologies for programmes of activities(Ver03.0, EB74
Annex05)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20130729142721867-meth_stan04.pdf/m
eth_stan04.pdf?t=TVJ8bjBlbmxyfDB8MHc2SHC2-F0WtBnuh35-)
- 198 -
[EB65]次を統合・置換。
・
Standard for demonstration of additionality of GHG emission reductions
achieved by a Programme of Activities (version 01.0) (Annex 02, EB 63 meeting
report)
・
Standard for the development of eligibility criteria for the inclusion of a project
activity as a CPA under the POA (version 01.0) (Annex 03, EB 63 meeting report)
・
Standard for application of multiple CDM methodologies for a Programme of
Activities (version 01.0) (Annex 04, EB 63 meeting report)
次の要件を置換。
・
Procedures for approval of the application of multiple methodologies to a
Programme of Activities (version 01.0 (Annex 31, EB 47 meeting report)
[EB70]CPAs に対して関連する追加性および PoA-DD、CPA-DD の適用について明確化。
(d)バンドリングの一般原則
General principles for bundling(Ver02.0, EB66 Annex21)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Guidclarif/ssc/methSSC_stan01.pdf)
[EB21]採択。
[EB66]プロジェクト基準及びプロジェクトサイクル手続きとの一貫性確保のための改定。
(e)プロジェクト基準
Clean development mechanism project standard(Ver05.0, EB75 Annex04)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131011143951951-reg_stand01.pdf/reg
_stand01.pdf?t=V218bjBlbnJufDBh0f5DdNUcxmWfh1QoBa6p)
[EB65]関連文書を置換。
[EB70]PoAs についての改訂された要件を反映。プロジェクト参加者が DOE を通じて、
もしくは直接事務局に改訂や明確化の要請を行うよう改訂。
[EB74]修正点統合の改訂。
[EB75]同じモニタリング期間であるふたつの発行要請を可能にすることを含む改訂。
(f)プロジェクトおよび PoA のサンプリング及び調査基準
Standard: Sampling and surveys for CDM project activities and programme of activities
(Ver04.1, EB74 Annex06)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131128104214767-meth_stan05.pdf/m
eth_stan05.pdf?t=YWZ8bjBlbnYyfDALePePUtuzt5ZGF2qg9KK5)
[EB50]採択。
[EB65]大規模プロジェクトおよびプログラム CDM についての要件と DOE 向けのサン
- 199 -
プリング関係の仕様を導入。また、次を置換。
General guidelines for sampling and surveys for SSC project activities (version 01.0)
(Annex 30, EB50 meeting report)
[EB69]
・
標本サイズを算定するのに使われる数値の明確化。
・
最小標本サイズを 30 に特定化。付属書部分を全て削除し、サンプリング・調査ガイ
ドラインに含めた。
[EB74]PoA が調査における信頼性要件を満たすアプローチを含む改訂など。
(g)有効化審査・検証基準
Clean development mechanism validation and verification standard(Ver05.0, EB75
Annex05)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131010181547796-accr_stan02.pdf/acc
r_stan02.pdf?t=R1d8bjBlbzBofDBq4NSLzS0DmmLcwW-ZnhfX)
[EB44]採択。
[EB65]関連文書を置換。
[EB70]PoA における改訂要件を反映。
[EB74]PoA の先議が確かめられる必要がある状況について明確化。
[EB75]同じモニタリング期間であるふたつの発行要請を可能にすることを含む改訂。
<手順>
ガバナンス-CDM 理事会
(a)利害関係者との直接的意思疎通の様式と手順
Modalities and procedures for direct communication with stakeholders(Ver01.0, EB62
Annex15)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/eb_proc03.pdf)
[EB62]次の文書を置換。パブリックコミュニケーションに関する手順
Procedures for Public communication with the CDM Executive Board (Version 02,
EB31 Annex37)(http://cdm.unfccc.int/EB/031/eb31_repan37.pdf )
(b)CDM 理事会ファイナンス委員会への付託条件
Terms of reference of the CDM Executive Board Finance Committee(Ver01.0, EB73
Annex01)
(http://cdm.unfccc.int/filestorage/s/e/extfile-20130604103043487-eb_proc04.pdf/eb_proc0
- 200 -
4.pdf?t=bWl8bjBlZmp2fDDpDVZK8sspTRCataEi65JI)
[EB73]採択。
ガバナンス-パネル・ワーキンググループ・チーム
(a)CDM 専門家名簿の付託条件
Terms of reference of the CDM rosters of experts ( Ver01.1, EB74 Annex02 )
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20130731141609077-panels_proc03.pdf/p
anels_proc03.pdf?t=TWZ8bjBlZnlzfDDJl8A5nVUQ59JVSvha2RcW)
[EB73]採択。
(b)CDM 理事会の支援組織の付託条件
Terms of reference of the support structure of the CDM EB(Ver04.0, EB73 Annex02)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/1/j/extfile-20130604103122813-panels_proc02.pdf/pa
nels_proc02.pdf?t=czh8bjBlZnRrfDBok-cHBspAy4gEKRC3HwBF)
[EB61]次の文書および各パネル・ワーキンググループの付託条件を置換。
パネル及びワーキンググループに関するガイドライン
General guidelines for panels/working groups ( Version 03, EB37 Annex01 )
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/panels_proc01.pdf)
[EB67]炭素隔離・貯留(CCS)WG に関わる箇所を追加。
[EB71]作業量を調整するために会合の数を調整できるようにする改訂。
[EB73]行動規範や関連する手法の参照を導入。
認定
(a)運営組織の認定手順
CDM accreditation procedure(Version 11.0, EB74 Annex12)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20130729144313644-accr_proc01.pdf/acc
r_proc01.pdf?t=d3l8bjBlajR3fDCKN59PodxTCFPEsw482h0u)
[EB05]採択。
[EB13]EB13 報告書パラ 11 に従い修正など。
[EB26]認定のフェージングを追加など。
[EB27]DOE の指定の保留もしくは取り下げについてより精緻化など。
[EB29]3 年以内の定期的監視を規定など。
[EB32]CDMAT からの評価プロセスを特定化など。
[EB34]アピールパネルの設立および責任を特定化など。
- 201 -
[EB46]
[EB56]本会合において、ver.10 が採択された。特に抜き取り検査と差し止めにおけるプ
ロセスと、再認定プロセスの短縮と AE と DOE に対する不平や口論を扱うための
進行中の手順が簡素化・明確化された。改訂版 CDM 認定手順の実施に対して2ヶ
月の猶予期間を与えることで同意した(発効日は 2010 年 11 月 17 日)。発効日後
に改訂版 CDM 認定手順は、認定活動の段階で適用することが明らかになった。
[EB74]DOE の「監視状態」の追記など。
(b)指定運営組織のパフォーマンスモニタリング手順
Procedure: Performance monitoring of designated operational entities(Ver02.0, EB73
Annex14)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/l/p/extfile-20130604165418362-accr_proc02.pdf/accr_
proc02.pdf?t=R258bjBlamF1fDAAW1AIQO_8TfBqmAPKJiQ-)
[EB58]採択。
[EB73]プロジェクトサイクル手順と有効化審査及び検証基準を整合する。
方法論
○方法論及びツールにおけるベースライン・モニタリングの発展、改訂及び明確化手順
Procedure: Development, revision and clarification of baseline and monitoring
methodologies and methodological tools (Version 01.1, EB70 Annex 36)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/meth_proc09.pdf)
[EB70]以下の手順を統合。
・
Procedure for the submission and consideration of queries regarding the
application of approved methodologies and methodological tools by DOEs to the
Meth Panel (Version 06, EB 42 Annex 09)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/meth_proc01.pdf )
・
Procedure for the submission and consideration of requests for revision of AMs
and tools for large scale CDM project activities
(version 01, EB 54 Annex 2)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/meth_proc06_ver01.pdf)
・
Revision of an approved baseline or monitoring methodology by the Executive
Board (version 09, EB 35 Annex 13)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/meth_proc03_v09.pdf )
・
Procedure for the submission and consideration of a proposed new baseline and
monitoring methodology for large scale CDM project activities (Version 01, EB 52
Annex 9) (http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/meth_proc05.pdf)
- 202 -
・
Procedure for the submission and consideration of request for clarification on the
application of approved small scale methodologies (version 01, EB34 Annex 06)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/methSSC_proc01_v01.pdf)
・
Procedure for the revision of an approved small scale methodology by the
Executive Board (version 01, EB34 Annex 07)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/methSSC_proc02_v01.pdf)
・
Procedure for the Submission and consideration of a proposed new small scale
methodology (Version 03, EB 40 Annex 02)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/methSSC_proc03.pdf)
・
Procedure for the submission and consideration of requests for revision of AMs
and tools for A/R CDM project activities (Version01, EB54 Annex 03)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/MethAR_proc05_ver01.pdf)
・
Procedure for the submission and consideration of a proposed new baseline and
monitoring methodology for large scale afforestation and reforestation CDM
project activities (Version 01, EB 53 Annex 13)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/methAR_proc04.pdf)
・
Procedure for the submission and consideration of a proposed new baseline and
monitoring methodology for carbon capture and storage CDM project activities
(Version01.0, EB67 Annex 27)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/meth_proc08.pdf)
方法論-標準化ベースライン
○標準化ベースラインの発展、改訂、明確化及び更新手順
Procedure: Development, revision, clarification and update of standardized baselines
(Ver03.1, EB75 Annex3)
(http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131128162823723-Meth_proc07_ver03.
1.pdf/Meth_proc07_ver03.1?t=Z1F8bjBlazd5fDBnlc7k8zN4DCTMi9ForLmg)
[EB63]採択。
[EB68]データテンプレートの提出や発行のプロセスを追記。
[EB75]タイトル変更など。
- 203 -
方法論-小規模
○自動的に追加的とされるマイクロスケール再生可能エネルギー技術の提出と検討
Procedure: Submission and consideration of microscale renewable energy technologies
for automatic additionality(Ver02.0, EB70 Annex37)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/methSSC_proc04.pdf)
[EB65]採択。
[EB70]SUZs の提出や承認の手順を追加。
方法論-植林・再植林
○ホスト国が要求される最小樹冠率、最小面積、および最小樹高の選択値変更
Procedure on change in the selected values of minimum tree crown cover, minimum
land area and minimum tree height required for hosting an afforestation or
reforestation project activity under CDM (Version 01, EB 40 Annex 01)
(http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/methAR_proc02.pdf)
プロジェクトサイクル
(a)プロジェクトサイクル手順
Procedure: Clean development mechanism project cycle procedure(Ver05.0, EB75
Annex06)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131010174237757-pc_proc01.pdf/pc_pr
oc01.pdf?t=MW18bjBlbW0xfDBaXrRXRpcifpA2kUdKZl4D)
[EB65]関連文書を置換。
[EB66]次を追加。
・すでに公表した PDD で適用した方法論を変える場合、改定 PDD をグローバルステー
クホルダーコンサルテーション(GSC)に公表する必要があること
・(猶予期間の失効より 45 日前に提出した)登録要請で適用した方法論の有効期間を登
録要請の再提出に際して延長すること
[EB70]PoAs についての改訂された要件を反映。
(b)DNA からの取消レターの処理手順
Procedure: Process for dealing with letters from DNAs that withdraw
approval/authorization(Ver01.0, EB76 Annex12)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131111130016461-reg_proc10.pdf/reg_
- 204 -
proc10.pdf?t=UmR8bjBlbXR3fDAh_o3LSbz9vGmoqJOdpFNY)
(c)CDM 登録簿における CER の自主的取り消し
Procedure: Voluntary cancellation of CERs in the CDM registry ( Ver02.0, EB75
Annex34)
( http://cdm.unfccc.int/filestorage/e/x/t/extfile-20131010112531515-Iss_proc11.pdf/Iss_p
roc11.pdf?t=bXZ8bjBlbjE1fDCjf0ARvxJ4Gb6PJ6FFxucW)
[EB69]採択。
[EB75]CER の取消を含む改訂。
- 205 -
8.
JI レファレンス・ルール
<Procedure>
Rules of procedure of the Joint Implementation Supervisory Committee (version02)
<内容> メンバーシップや会議の運営に係わる事項などJI監督委員会の全ての活動に関わ
るルール
General guidelines for panels and working groups under the Joint Implementation
Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会の下にパネルやワーキンググループを設置する場合の最小限の要求事
項
Procedures for programmes of activities under the verification procedure under the
Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JIにおけるプログラム活動の一般的な原理及び手続き
Procedures for accrediting independent entities by the Joint Implementation
Supervisory Committee (version07)
<内容> 独立機関の認定手続き
<JISC26での改定内容>
・ 認定の前後に行っているウィットネス活動を認定後のパフォーマンス審査に置き換え
る修正版の採択に合わせて改定
<JISC25で採択された移行措置>
・ 独立認定機関を増やすための移行措置として、ウィットネス審査が完了していない認定
組織を暫定的に認定する「TRANSITIONAL MEASURES FOR ACCREDITING
APPLICANT INDEPENDENT ENTITIES THAT HAVE BEEN ISSUED AN
INDICATIVE LETTER IN ACCORDANCE WITH THE JOINT
IMPLEMENTATION ACCREDITATION PROCEDURE」がJISC25で採択されてい
る。
Terms of reference for the establishment of the joint implementation accreditation
panel
<内容> 作業領域やメンバーシップなどJI認定パネルへの委託事項
Terms of reference for joint implementation assessment teams
<内容> 作業領域やメンバーシップなどJI評価チームへの委託事項
- 206 -
Procedures on public availability of documents under the verification procedure under
the Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> プロジェクト設計書や有効性決定報告書などJI監督委員会の下での検証に関わる
文書の公開手続き
<JISC25での改定内容>
・ 独立認定機関が可能な限り早期に審査を完了して定期的に決定を通知するための修正
版の採択に合わせて改定。
Procedures for appraisals of determinations under the verification procedure under the
Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会の下での検証手続きにおける有効性決定の評価手続き
<JISC25での改定内容>
・ 有効性決定におけるJISC委員/委員代理による評価を省略する修正版の採択に合わせ
て改定。
Procedures for reviews under the verification procedure under the Joint Inplementation
Supervisory Committee(version 04)
<内容> JI監督委員会の下での有効性決定におけるレビュー手順
<JISC25での改定内容>
・ 電子的な意思決定システムの導入を含む修正版の採択に合わせて改定。
Terms of reference for experts appraising determinations or participating in review
teams under the verification procedure under the Joint Implementation Supervisory
Committee
<内容> JI監督委員会での検証に関して、有効性決定を評価あるいはレビューチームへ参加
する専門家への委託事項
Modalities of communication of project participants with the Joint Implementation
Supervisory Committee
<内容> プロジェクト参加者によるJI監督委員会への連絡方法
Procedures for including additional project participants or Parties involved in joint
implementation projects after final determination under the verification procedure
under the Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会での検証に関して、プロジェクトが有効性決定された後に、プロジェ
クト参加者や締約国がプロジェクトに加わるための手続き
- 207 -
Procedures for the withdrawal of project participants after final determination under
the verification procedure under the Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会での検証に関して、プロジェクトが有効性決定された後に、プロジェ
クト参加者が脱退するための手続き
Terms of reference of the Designated Focal Point Forum
<JISC25での採択内容> DFPフォーラムの運営規約を採択。
Procedures for communication of the public with the Joint Implementation Supervisory
Committee
<内容> 公衆がJI監督委員会と連絡を取るための手続き。
Procedures for requests for clarification under the verification procedure under the
Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会での検証手続きに関する明確化要請のための手続き。
Procedures for the withdrawal of submissions under the verification procedure under
the Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会での検証におけるプロジェクト取り下げのための手続き。
Procedures regarding changes during project implementation
<内容> プロジェクト実施の際の計画内容の変更に関する手続き。
<Standards/Guidance/Clarifications>
Guidance on criteria for baseline setting and monitoring
<内容> ベースライン設定及びモニタリングの基準に関するガイダンス
<JISC26での改定内容> リーケージの決定に対する量的な閾値の導入とベースライン決定
のオプションを含む修正版を採択。
Provisions for joint implementation small-scale projects
<内容> 小規模JIプロジェクトに関する規定
Clarification regarding overlapping monitoring periods under the verification procedure
under the Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会での検証において、プロジェクトのモニタリング期間が重なっている
場合の扱いの明確化
- 208 -
Standard for applying the concept of materiality in verification
<内容> 検証において重要性(materiality)の概念を適用するための標準
Determination and verification manual
<内容> プロジェクトの有効性決定及び検証マニュアル
TRANSITIONAL MEASURES FOR ACCREDITING APPLICANT INDEPENDENT
ENTITIES THAT HAVE BEEN ISSUED AN INDICATIVE LETTER IN
ACCORDANCE WITH THE JOINT IMPLEMENTATION ACCREDITATION
PROCEDURE
<内容>独立認定機関の認定手順に対する移行措置。
<JISC25での採択内容>
独立認定機関を増やすための移行措置として、ウィットネス審査が完了していない認定組
織を暫定的に認定する規約を採択。
Joint implementation accreditation standard
<内容> JIにおける独立機関の認定標準
Clarification
regarding utilization of laboratory services for monitoring and
determination of emission reductions or enhancements of removals
<内容> 排出削減量あるいは吸収増大量のモニタリングと有効性決定のための試験所サー
ビスの利用に関する明確化
Clarification regarding the public availability of documents under the verification
procedure under the Joint Implementation Supervisory Committee
<内容> JI監督委員会における検証の際の文書類の公開についての明確化
Clarification regarding project participants’ change of accredited independent entity
<内容> プロジェクト参加者による認定独立組織の変更についての明確化
- 209 -
9.
関連リンク
CDM/JI 情報リンク集
省庁・独立行政法人等
① 経済産業省
京都メカニズムのページ
http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/kyomecha_main.htm
CDM/JI 標準教材 ver.2
http://www.meti.go.jp/policy/global_environment/kyomecha/060523CDMJItext/060523c
dmjitextbook.htm
② 環境省
京都メカニズム情報コーナー
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/index.html
③ 林野庁
CDM 植林ヘルプデスク(京都メカニズムとしての植林の相談窓口)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/cdm/index.html
CDM 植林(吸収源 CDM)実施ルールと解説、小規模 CDM 植林、CDM 植林を支援す
るための関連事業一覧等
④ NEDO
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
京都メカニズム事業
http://www.nedo.go.jp/activities/introduction8_07.html
京都メカニズムクレジット取得事業、地球温暖化対策技術普及等推進事業等
研究機関等
①
京都メカニズム情報プラットフォーム
http://www.kyomecha.org/
海外環境協力センター(OECC)が環境省の事業として作成している、CDM/JI 事業者
にホスト国情報などを提供するサイト。
②
IGES 財団法人地球環境戦略研究機関
http://www.iges.or.jp/jp/cdm/index.html
CDM 各国情報等
図解 京都メカニズム 第 15 版(2011 年 10 月版)
http://enviroscope.iges.or.jp/modules/envirolib/upload/962/attach/kyomeka.pdf
③
GEC 財団法人地球環境センター
http://gec.jp/main.nsf/jp/Activities-CDM_and_JI-Top
CDM/JI 事業調査、CDM/JI 事業調査事業実施マニュアル、CDM/JI ホスト国基礎情報等
④ GISPRI 財団法人地球産業文化研究所
- 210 -
http://www.gispri.or.jp/menu.html
UNFCCC、IPCC 情報等
⑤
UNEP Risoe Centre, CD4CDM (Capacity Development for the CDM)
http://www.cd4cdm.org/
CDM/JI パイプライン等
認証機関
①
JQA 財団法人日本品質保証機構
http://www.jqa.jp/index.html
②
JACO 株式会社 JACO CDM
http://www.jaco-cdm.com/
③
JCI 社団法人日本プラント協会
http://www.jci-plant.or.jp/index.php
④
Delotte-TECO 株式会社トーマツ審査評価機構
http://www.tohmatsu.com/view/ja_JP/jp/index.htm
⑤
JMACC 社団法人日本能率協会 地球温暖化対策センター
http://www.jma.or.jp/jmacc/index.html
⑥
E&YSNSI 新日本サステナビリティ研究所
http://sustainability.shinnihon.or.jp/index.html
⑦
NKKKQA 日本海事検定キューエイ株式会社
http://www.nkkkqa.co.jp/index.htm
国際機関等
①
UNFCCC CDM(気候変動枠組み条約 クリーン開発メカニズム)
http://cdm.unfccc.int/
②
UNFCCC JI(気候変動枠組み条約 共同実施)
http://ji.unfccc.int/index.html
③
Carbon Finance Unit, The World Bank(世界銀行 カーボンファイナンスユニット)
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/TOPICS/ENVIRONMENT/EXTCARBO
NFINANCE/0,,menuPK:4125909~pagePK:64168427~piPK:64168435~theSitePK:4125
853,00.html
④
IETA(国際排出権取引協会)
http://www.ieta.org/
- 211 -
用語集

AAU
Assigned Amount unit。附属書Ⅰ国に割り当てられた初期排出枠。

BAU
特段の対策を行わない場合(Business As Usual)のこと。

CCS
二酸化炭素回収・貯留(Carbon Dioxide Capture and Storage)。発電所や工場等の出源
から分離回収した二酸化炭素を地層に貯留する技術の総称。分離方法には、化学吸収
法、物理吸収法、膜分離法、物理吸着法、深冷分離法、ハイドレート分離法等がある。
貯留方法には、地中隔離法、海洋隔離法、プラズマ分解法等がある。

CDM
クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)。京都議定書によって温室効
果ガス排出量の数値目標が設定されている先進国が、数値目標が設定されていない途
上国内において排出削減等のプロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量分の
クレジットを先進国へ移転するスキームの総称。

CER
Certified Emission Reduction。CDM を通じて発行されたクレジット。

CH4
メタン。温室効果ガスの種類で、有機性の廃棄物の最終処分場や、沼沢の底、家畜の
糞尿、下水汚泥の嫌気性分解過程などから発生する。

CMP
京都議定書締約国会合(the Conference of the Parties serving as the Meeting of the
Parties to the Kyoto Protocol)。京都議定書の締約国の会合。COP とともに、現在は年
に一度の頻度で開催されている。

CO2
二酸化炭素。温室効果ガスの種類で、石油、石炭、木材等の炭素を含む物質の燃焼、
動植物の呼吸や微生物による有機物の分解等による発生する。一方、植物の光合成に
よって様々な有機化合物へと固定される。

COP
気候変動枠組条約締約国会議(the Conference of the Parties)。気候変動枠組条約の締約
国の会議。現在は年に一度の頻度で開催されている。

ERU
Emission Reduction Unit。共同実施を通じて発行されたクレジット。

ETS
排出権取引または排出量取引制度(Emissions Trading Scheme)。環境汚染物質の排出
- 212 -
量低減のために用いられる経済的手法であり、全体の排出量を抑制するために、国や
企業などの排出主体間で排出する枠(キャップ)を割り当て、枠を超過して排出する
主体と枠を下回る主体との間でその枠の売買をする制度。排出枠の割当方法には過去
の実績に応じて無償で割り当てる方法(グランド・ファザーリング)や必要な排出枠
を政府等から有償で調達する方法(オークション)等、様々な方法が存在する。

EUA
EU アロウワンス(EU Allowance)。EUETS で取引される排出枠。

EUETS
欧州域内排出量取引制度(European Emissions Trading Scheme)。京都議定書上の EU
加盟国の約束を、できるだけ小さい費用で経済的に効率よく達成することを目的とし
て、2005 年より欧州域内の EU15 カ国を対象として開始された。順次対象国を拡大し、
現在では EU27 カ国を対象としている。

GHGs
温室効果ガス(Greenhouse Gases)。地表から放射された赤外線の一部を吸収すること
によって、温室効果をもたらす気体の総称。京都議定書では、二酸化炭素、メタン、
一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄が
抑制の対象となっている。

HFC
ハイドロフルオロカーボン(Hydrofluorocarbons)。京都議定書の対象ガス。

IPCC
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)。人為的
な気候変動のリスクに関する最新の科学的・技術的・社会経済的な知見をとりまとめ
て評価し、政策決定者に情報を提供することを目的とした政府間機構。1970 年代の異
常気象を契機に、気候変動に関する科学的情報を包括的に提供する必要性が高り、IPCC
の設立構想が 1987 年の WMO 総会並びに UNEP 理事会で提案され、1988 年に承認、
同年に IPCC が設立された。

JI
共同実施(Joint Implementation)。京都議定書において、温室効果ガス排出量の数値目
標が設定されている先進国間で排出削減等のプロジェクトを実施し、その結果生じた
排出削減量分のクレジットを投資国側のプロジェクト参加者に移転することができる
スキームの総称。

LULUCF
土地利用、土地利用変化および森林(Land use, land use change and forestry)。いわ
ゆる吸収源。

MRV
測定・報告・検証(Measurement, Reporting and Verification)。
- 213 -

N2O
亜酸化窒素。燃焼、窒素肥料の使用、化学工業(硝酸などの製造)や有機物の微生物
分解等によって発生する温室効果ガス。

NF3
三ふっ化窒素。京都議定書の対象ガス。第 2 約束期間から追加された。

PFC
パーフルオロカーボン(Perfluorocarbons)。京都議定書の対象ガス。

REDD
森林減少・劣化による排出の削減(Reducing Emissions from deforestation and forest
degradation in developing countries)。

RMU
Removal Unit。吸収源活動によるネットの吸収量として発行されたクレジット。

SB
COP および CMP の補助機関(Subsidiary Body)。科学上および技術上の助言に関する
補助機関(SBSTA : Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice)、実施に関
する補助機関(SBI: Subsidiary Body for Implementation)などがある。

SF6
六フッ化硫黄。京都議定書の対象ガス。

UNFCCC
国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change)。地
球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約。

京都議定書
Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change。先進
国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国毎に設定。国際
的に協調して、目標を達成するための仕組み(排出量取引、クリーン開発メカニズム、
共同実施など)を定めている。一方、途上国に対しては、数値目標などの新たな義務
は導入していない。

京都メカニズム
京都議定書目で定められた標達成のための温室効果ガス削減プロジェクト(共同実施、
クリーン開発メカニズム)や排出量取引の総称。

附属書 I 締約国
UNFCCC の附属書に掲げられた国(主に先進国)。
- 214 -
補 足 資 料
- 215 -
- 216 -
調査制度:カリフォルニア州キャップアンドトレード
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
カリフォルニア州政府は、2006 年に地球温暖化対策法(AB32)68を制定し、そ
の中で州全体の排出削減量を、2020 年までに 1990 年の排出量69まで削減する目
標を設定した70。この AB32 では、排出量取引制度の導入が明記され(section
38570)、この規定を踏まえて制度構築が進められ、2010 年に排出量取引制度の
導入が決定された。その後、排出量取引制度の導入に反対する住民からの訴訟
があり、裁判所から制度導入にあたって、炭素税などの代替策について十分な
検討が行われていないとして、制度導入に向けた作業を停止する命令が出され
た。これに対して、州政府は、改めて代替策についての検討を行った結果、裁
判所は作業停止命令を解除した。これにより、制度導入時期が当初の 2012 年か
ら 2013 年へと延期された。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
カリフォルニア州地球温暖化対策法(California Global Warming Solutions
Act)
②制度運営者
カリフォルニア大気資源局(California Air Resources Board, CARB)
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
Assembly Bill No. 32, CHAPTER 488, An act to add Division 25.5 (commencing with Section 38500)
to the Health and Safety Code, relating to air pollution,
(http://www.leginfo.ca.gov/pub/05-06/bill/asm/ab_0001-0050/ab_32_bill_20060927_chaptered.pdf).
69 1990 年の排出量は 4 億 3100 万 CO2 換算トンである。
(http://www.arb.ca.gov/cc/inventory/1990level/1990level.htmhttp://www.arb.ca.gov/cc/inventory/1990l
evel/1990level.htmhttp://www.arb.ca.gov/cc/inventory/1990level/1990level.htmhttp://www.arb.ca.gov/c
c/inventory/1990level/1990level.htm)。
70 2012 年の排出量は 4 億 5868 万 CO2 換算トンである。
目標値は 2012 年比で 6%の排出削減となってい
る。
68
- 217 -
①対象セクター
第 1 遵守期間(2013 年から 2014 年の 2 年間)から第 2 遵守期間(2015 年か
ら 2017 年の 3 年間)
・第 3 遵守期間(2018 年から 2020 年の 3 年間)にかけて規
制対象分野が拡大する。さらに、規制対象事業者以外の事業者でも、自主的に
取引に参加することが認められている。
第 1 遵守期間の対象セクター
ⅰ 製造業(セメント、熱電供給、ガラス製造、水素製造、鉄鋼製造、石
灰製造、硝酸製造、石油及び天然ガスシステム、石油精製、紙パルプ
製造、自家発電、固定燃焼など)の 2008 年から 2010 年の報告済み排
出量が 25,000tCO2 以上のカリフォルニア州内の企業
ⅱ 電力の一次供給者
○発電施設(年間排出量が 25,000tCO2 以上の発電施設の運営者)
○電力輸入事業者
 年間排出量が 25,000tCO2 以上の特定電力源から電力をカリフ
ォルニア州外から輸入している電力輸入事業者
 非特定電源からの電力輸入業者
ⅲ CO2 供給業者
年間 25,000tCO2 以上の CO2 供給業者
第 2 遵守期間・第 3 遵守期間における対象のセクター
ⅰ 州内の天然ガス供給者
 公益ガス供給者
 州営ガス供給者
ⅱ 上記以外で天然ガスを最終消費者に直接供給するパイプラインの運営
者
ⅲ RBOB ガソリン、蒸留燃料油(灯油、ディーゼル等の総称)の保有者及
び、州内への燃料輸入者。
ⅲ 液化石油ガスの供給者

液化石油ガスを製造する製油所の事業者

液化石油ガスを天然ガスから製造する事業者
ⅳ 上記(D)~(F)の燃料の混合燃料の提供者
規制対象事業者以外の参加者
ⅰ Opt-in 事業者(opt-in cover entity):年間排出量が 25,000tCO2 未
満の事業者も自主的に参加可能で、制度対象者同様、報告・検証・遵
- 218 -
ⅱ
守の義務を負う。
自主的関連事業者(Voluntarily Associated Entities, VAE):制度対
象者及び Opt-in 事業者以外で以下のいずれかに該当するもの。

排出枠の購入者、所有、売却、及び自主的な償却を行う事業者

オフセットプロジェクトまたは早期行動オフセットプロジェ
クトの運営者

商品取引法(Commodities Exchange Act)に基づき、米国先物
取引委員会に登録しているデリバティブ清算機関で、本制度の
登録事業者間における排出枠取引のクリアリングサービスを
行ううえで、一時的に排出枠を保持する事業者
②遵守期間
遵守期間は、以下のように第一遵守期間は 2 年となっているが、それ以外の
第二及び第三遵守期間は、3 年間の遵守期間となっている。
第一遵守期間:2013 年 1 月 1 日~2014 年 12 月 31 日(2 年間)
第二遵守期間:2015 年 1 月 1 日~2017 年 12 月 31 日(3 年間)
第三遵守期間:2018 年 1 月 1 日~2020 年 12 月 31 日(3 年間)
③削減目標
目標として 2020 年カリフォルニア州の GHG 排出量を 1990 年の水準に抑制す
ることを掲げている。
④排出枠総量の決定方法とその配分方法
ⅰ 排出枠の総量の決定
カリフォルニア州全体の排出削減目標と削減対策を示した Scoping Plan にお
いて実行可能な技術や、費用対効果、削減対策の実施に伴う負担の影響緩和(低
所得者層への影響緩和)などを考慮して産業分野毎の排出削減量が設定された。
これを踏まえて、排出量取引制度規制対象事業者の排出枠の総量も、以下のよ
うに設定された。
- 219 -
排出枠総量
遵守期間
年
排出枠総量
(百万 tCO2)
第一遵守期
間
2013 年
162.8
2014 年
159.7
2015 年
394.5
2016 年
382.4
2017 年
370.4
2018 年
358.3
2019 年
346.3
2020 年
334.2
第二遵守期
間
第三遵守期
間
ⅱ
無償割当での配分
規制対象事業者の配分量については、製造業についてはベンチマーク71を踏ま
えて決定されるが、ベンチマークの設定が困難な事業者については、エネルギ
ー利用量を踏まえて配分量が決められた。
製造業については、州外の企業との競争や負担の増加などを考慮して、基本
的には無償で排出枠が配分されることになっている。ただし、製造業の中でも
州外の企業との競争を考慮する必要のない産業については無償での配分が第二
遵守期間、第三遵守期間で徐々に削減され、無償での配分量が第二遵守期間で
50%、第三遵守期間で 30%まで減少する。
規制対象となっている電力供給事業者にも、排出削減の費用が電力価格に上
乗せされることで電力価格が高騰するのを避けるために排出枠は無償で配分さ
れる。無償で配分される排出枠の量は、毎年、9,770 万 tCO2e にキャップ調整係
数を乗じて算出した数量となっている。この排出枠は直ちに売却し、電力価格
の抑制に利用することが求められている。
ⅲ
入札などによる配分
一方、発電事業者などは入札によって排出枠が配分されている。排出枠緩和
リザーブと呼ばれる固定価格72での排出枠の売却制度があり、この制度を通じて
排出枠を入手することも可能である。
71
製品の単位当たりの排出原単位もしくは、エネルギー消費量の単位当たりの排出原単位によって計算さ
れる。
72 2013 年は 40 ドル、45 ドル、50 ドルの三種の固定価格が設定された。2014 年以降はインフレーション
を考慮し、毎年 5%ずつ引き上げていく。
- 220 -
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
ⅰ 遵守方法
電力事業者以外については、前年の排出量について州政府に 4 月 1 日までに
報告し、9 月 1 日までに第三者からの検証を受ける。電力事業者は 6 月 1 日まで
に前年の排出量を報告し、9 月 1 日までに検証を受けることが求められている。
遵守期間のうち、最終年を除く年については毎年、その年の排出量の 30%を、
翌年の 11 月 1 日までに償却し、最終年については遵守期間全体の排出量から、
既に償却済みの排出量を控除した残りの排出量に相当する排出枠を、遵守期間
終了後の 11 月 1 日までに償却する。
ⅱ
遵守の手段
規制の遵守にあたっては、排出枠だけではなく、遵守義務量の 8%を上限とし
て、他の排出量取引制度のクレジット利用や CARB の定めるオフセットクレジッ
トの利用も認められている。オフセットクレジットは、ARB オフセットクレジッ
ト、早期行動オフセットクレジット、そしてセクター別オフセットクレジット
の三種類ある。
ARB オフセットクレジットは、2007 年以降のプロジェクトで、CARB が承認す
る Compliance Offset Protocol に基づいて追加性、確実性、定量化可能性、永
続性等の要件を満たした削減量に対してクレジットを発行する制度である。プ
ロジェクト実施地は、米国、カナダ、メキシコに限られる。
早期行動オフセットクレジットは、2013 年 12 月 31 日までに登録することが
必要なプログラムで、事業の実施期間は 2005 年 1 月 1 日から 2014 年 12 月 31
日までとなっている。この制度では CARB が認証した期間による検証を受けるこ
とがクレジット発行に当たり必要とされている。プロジェクト実施地は、米国
内のみに限られる。
セクター別オフセットクレジットは、途上国による特定セクター全体の取組
から得た削減量にクレジットを発行する制度である。現在認められているセク
タ ー は 森 林 保 全 ( Reducing Emission from Deforestation and Forest
Degradation)のみとなっている。今後他のセクターが追加される可能性がある。
ⅲ
繰り越し及びボローウィング
さらに余剰の排出枠が生じた場合には繰り越しも認められているが、ボロー
ウィングは認められていない。
ⅳ
罰則
規制の遵守に失敗した場合(排出量に相当する排出枠あるいはクレジットの
- 221 -
償却ができなかった場合)、オークションあるいは排出枠緩和リザーブを通じて、
不足する排出枠の 4 倍の排出枠あるいはクレジットを償却期限後、最初に行わ
れるオークションあるいは緩和リザーブの売却の実施日から 5 日以内に政府に
提出する必要がある。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
CARB または CARB と契約する事業者が登録簿を管理する。登録簿には以下の口
座が設けられている。
保有口座:
規制対象事業者、Opt-in 事業者、VAE 事業者が
開設する口座。
限定的利用保有口座:
電力供給事業者に対してのみ開設される口座。
この口座からはオークション用に設けられて
いるオークション保有口座のみに移転可能。
遵守口座:
規制の遵守のために設けられた口座
取引クリアリング保有口座: 排出枠の取引のために設けられる口座。特に
VAE 事業者の中でも「商品取引所法に基づき米
国商品先物取引委員会(CFTC)に登録している
デリバティブ清算機関」で、CARB が「カリフ
ォルニア州の排出量取引制度の登録事業者間
での取引における清算サービスを提供し、清算
のために一時的にのみ排出枠を保有する事業
者である」と認められた事業者のみ開設が認め
られる口座。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
2002 年から 2004 年までの平均排出量、4 億 9,600 万 tCO2e の排出量となって
いる。
総排出量
(百 万 CO2換 算 ト ン )
基準年
(1990
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
431
483.05
492.86
485.13
482.52
489.16
487.1
458.44
453.06
450.94
458.68
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
排出量取引制度の規制対象分野における排出量は第二遵守期間以降カリフォ
- 222 -
ルニア州全体の 85%を占める。
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
規制対象事業者、金融機関なども取引に参加している。商品取引所の ICE に
おいて、取引されており、オークション以外にも取引所取引も行われている。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
ICE における取引価格の動向は以下のような動きとなっている
(2011 年以降)。
しかし、入札によって販売される量に比較すると、取引量はわずかな数量に留
まっている。
図:2013 年限月先物取引価格の動向(2011 年以降)
(出典)Carbon Market California 2014
また、取引価格を分析すると多くの場合、入札で配分された排出枠の落札価
格と近い価格となっており、二次取引市場での取引が活発に行われているとは
言えない状況となっており、事業者の大半は排出枠を入札あるいは無償割当に
よって取得していると言えるだろう。
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
環境 NGO の EDF がまとめた報告書、”Carbon Market California“には実際に
- 223 -
取引へ参加している仲介業者の声として、現状では、二次取引市場の取引量は
まだ多くはないものの、徐々に増加傾向にはあり、今後も増加するとの見方が
紹介されている。特に、2014 年 11 月には 2013 年の一部の遵守期限があり、2015
年 11 月には第一遵守期間の遵守の期限があるため、それに合わせて二次市場で
の取引量の増加につながる可能性がある。
4.他類似制度との連携
カリフォルニア州政府は、当初から、WCI を主導するなどして、他の州の排出
量取引制度との連携に積極的な姿勢を示してきた。しかし、WCI からは脱退が相
次ぎ、現在のパートナーは 2014 年 1 月 1 日から連携を開始した果たしたカナダ
のケベック州のみに留まっている。
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
今後、他の州との連携、特に米国内の他の州との連携を模索している73。特に、
米国連坊政府の EPA が発表した火力発電所における CO2 排出規制案(クリーン
パワープラン)では、複数の州が協力して排出量取引制度を実施することも認
めていることから、今後、排出量取引制度の導入を検討する州が増えていく可
能性もある。
しかし、それがカリフォルニア州の排出量取引制度との連携につながるかは
疑問が残る。カリフォルニア州の制度が電力以外にも製造業なども規制対象と
していることで、複雑なものとなっているためである。
一方で、米国の北東部で実施されている RGGI は、電力会社のみを規制対象と
しており、発電所のみを規制対象としているクリーンパワープランの規制内容
に近いものとなっている。クリーンパワープランの下での規制を履行すること
を考えた場合は、RGGI のような排出量取引制度の導入が進み、市場を連携する
場合でも、制度が大きく異なるカリフォルニア州ではなく、RGGI が選択される
可能性もある。
そもそもクリーンパワープラン自体について、今後、当初の予定通りに実施
されるか不確実な部分が多く残されており、今後、排出量取引制度を導入する
州が増えていくのか不透明な部分ある。そのため、将来的に米国国内でカリフ
ォルニア州の排出量取引制度と連携するような州が、どれだけ増えるのか疑問
が残る。
このようにカリフォルニア州以外に、排出量取引制度の導入が広がっていく
のか不確実な部分は残っているが、カリフォルニア州政府は、今後も排出量取
73 California, Quebec Seek Partners to Grow Carbon Market, Bloomberg,
(http://www.bloomberg.com/news/2014-09-24/quebec-california-seeking-to-boost-size-of-carbon-market
.html).
- 224 -
引制度を含めた地球温暖化対策の実施に積極的な姿勢を見せている。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
EDF の報告書、“Carbon Market California”では規制対象事業者の声も報告
されている。紹介された規制対象事業者は、制度そのものについても、登録簿
における口座開設、入札などの手続きが問題なく行えたと肯定的に評価し、こ
の制度のもとで、今後も事業を展開する意向を示している。また、この企業は
投資判断・経営計画の策定の上でも、2020 年以降の規制を早い段階で明確にす
る必要性を指摘している。
- 225 -
調査制度:ケベック州
キャップアンドトレード
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
2009 年にケベック州政府が作成した Climate Change Action Plan(気候変動行
動計画)にはケベック州の 2020 年までの削減目標(90 年比で 20%排出量削減)
が設定され、この目標を達成するための主要な政策措置として、排出量取引制
度が導入された。ケベック州は、カリフォルニア州が主導する WCI(Western
Climate Initiative)に 2008 年に参加していることから、カリフォルニア州と
の連携を視野に入れて構築されていた。
1-2.制度根拠、制度運営者
気候変動計画を踏まえて 2011 年にケベック州政府が制定した Regulation
respecting a cap-and-trade system for greenhouse gas emission allowance
(Cap-and-Trade 規則)が直接の制度根拠。ケベック州政府(環境省)が制度の
運営者となっている。
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)
、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
2013 年 1 月 1 日から 2014 年 12 月 31 日までの第 1 遵守期間については採鉱・
採石・石油&天然ガス採掘、発電・送電・配電、天然ガス供給、蒸汽&冷暖房
供給、製造業(鉄鋼、セメント、石灰、水素アンモニア等)、天然ガスパイプラ
イン輸送に該当する産業分野の中で 2009 年から 2011 年までのいずれのかの年
で 25,000tCO2e 以上の GHG 排出量のあった産業。
2015 年以降に実施される第 2 遵守期間以降については、ガソリン、ディーゼ
ル燃料、プロパンガス、天然ガス、暖房用燃料を供給する事業者で 2012 年ある
いは 2013 年のいずれかの年で、排出量が 25,000tCO2e である事業者も規制対象
となる。
②遵守期間
基本的には 3 年毎の遵守期間とするが、第 1 遵守期間については 2013 年から
2015 年までは 2 年間の遵守期間とし、第 2 遵守期間以降を 3 年毎とする。
- 226 -
③削減目標
州全体で、90 年比で 20%の削減目標を設定しており、これを踏まえて設定。
④排出枠の総量決定方法とその配分方法
排出枠の総量は第 1 遵守期間の 2013 年から 2014 年は毎年、2,300 万 tCO2e が
配分され、第 2 遵守期間の 2015 年以降は 6,530 万 tCO2e から 210 万 tCO2e ずつ
削減され、2020 年には 5,474 万 tCO2e となる。
配分方法は、無償割当、入札そして固定価格での売却制度の三つからなる。
上記の規制対象分野のうち一部(石油、天然ガス採掘など)を除く分野では、
無償で排出枠が配分される。無償での配分量は、39 の活動タイプ毎に設定され
る原単位目標に基づき算定され、算定された無償割当量の 75%を毎年、1 月 1
日までに無償で配分し、残りの 25%については、その年の排出量を踏まえて配
分量を調整し、翌年の 9 月 30 日までに州政府が規制対象事業者に配分する。
その他、年 4 回を限度に実施される入札と、保有口座を開設していない事業
者向けに固定価格で政府が規制対象事業者に排出枠を販売する制度も設けられ
ている(この場合、購入した排出枠は、事業者の保有口座ではなく遵守口座に
移転される)。
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
繰り越しについては、保有限度の枠内で認められる(規制対象事業者は口座
に保有する。ボローウィングについては規定がなく認められていない。
オフセットクレジットについては、遵守期間の排出量の8%の範囲で利用が
認められている。認められているのは以下の二つのタイプ。
 カナダ国内で実施される削減プロジェクト(家畜メタン回収プロジェクト、
LFG プロジェクト、オゾン層破壊物質破壊プロジェクトなどに限定)から
発行されるクレジット。
 一定の基準を満たした 2008 年 1 月 1 日から 2011 年 12 月 31 日までに実施
された排出削減活動に対して発行される Early Reduction credits
不遵守の場合には、不足している排出枠の 3 倍の排出枠/クレジットを償却す
る必要がある。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
州政府が登録簿を整備する。
- 227 -
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
ケベック州の排出量は 8,250 万 tCO2e。
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
2013 年から 2014 年はケベック州の総排出量の 30%、2015 年以降は 85%が規
制対象となる予定。
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
規制対象事業者、自発的に取引に参加を希望する個人。取引の状況について
は不明。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
不明。
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
不明。
4.他類似制度との連携
カリフォルニア州の排出量取引制度との連携を行い、2014 年 1 月から二つの
市場が正式につながっている。
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
カリフォルニア州、ケベック州ともに当初の WCI が想定していたように、複
数の州による排出量取引制度の実施を目指しており、更に多くの州との連携を
目指している。カナダ国内ではオンタリオ州に参加に向けて強く働きかけてい
るが、今のところ進展は見られない。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
不明。
- 228 -
調査制度:中国試行排出量取引制度
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
2011 年に発表された第 12 次五カ年計画(2011 年~2015 年)の中では温室効
果ガス(GHG)の排出削減を含む、環境問題への取組みが主要な政策課題として
取り上げられ、政策手段として「炭素取引市場を逐次確立する」ことが明記さ
れた。これを受けて、国家発展改革委員会は、2013 年~2015 年に試行的な排出
量取引制度(キャップ&トレード型排出量取引制度)を、2 省 5 都市(北京市、
上海市、深セン市、天津市、重慶市、湖北省、広東省)において実施すること
を決定した。
これと並行して国家発展改革委員会は、自主的排出削減プロジェクト制度(ベ
ースラインクレジット型排出量取引制度)を設けた。この制度によって創出さ
れるクレジットは CCER と呼ばれ、後述するように、試行的排出量取引制度のも
とで規制対象となっている企業が、その義務の遵守のために活用することが認
められている。
各地方政府が、個々の状況を踏まえて制度を作成しており、制度の内容は、
それぞれ異なる。これは、経済状況、産業構成、電源構成などの要因が地方に
よって異なることも影響していると考えられるが、それ以外にも試行的な排出
量取引制度の経験を踏まえて、全国レベルでの排出量取引制度の制度構築がな
されるため、多様な制度を実際に運営することで、制度運営に関する知見をよ
り多く得ようとする中国政府の意図も影響していると考えられる。
なお、このように多様な制度が実施されているため、それぞれの制度の概要
については、添付の附表にまとめた。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
第12次五カ年計画において示された基本的な方針をもとに、発表された国家
発展改革委員会の「炭素排出権取引モデル事業の展開に関する国家発展改革委
員会弁公庁の通知」をもとに、試行的な制度の実施が行われる2省5都市の市
政府、省政府が具体的な制度を構築した。
②制度運営者
各地方政府が制度を運営しており、主な担当は地方の発展改革委員会となっ
ている。
- 229 -
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)
、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
各地方によって規制対象分野は異なる。情報が得られている範囲で見ると上
海市のように、電力、鉄鋼、石油化学、非鉄金属などの GHG の直接排出源とな
っている産業分野だけではなく、商業施設、ホテル、金融機関などの間接排出
の多い産業分野も規制対象としている場合もあれば、広東省のように電力、セ
メント、鉄鋼、窯業、石油化学など直接排出源となっている産業分野のみを対
象とするものなど様々な産業分野が規制対象となっている。ただ、いずれの場
合にせよエネルギー集約的な産業については規制対象に含まれており、さらに
全ての制度で裾切り値が設けられており、小規模な施設については規制対象外
としている。
②遵守期間
入手できた資料の中では、遵守期間について明示的に説明しているものはな
かったが、試行排出量取引制度を実施する根拠となっている第 12 次五カ年計画
が 2015 年までの計画であることを踏まえると 2015 年が一つの区切りとなる可
能性が高い。一部の地方では 2015 年以降も継続することを前提としているもの
もあるが、2016 年には全国レベルでの排出量取引制度が導入が予定されており、
2015 年以降については、2015 年までに実施された試行的排出量取引制度のもと
で実施された制度とは異なるものとなる可能性もある。
③削減目標
地方政府毎に排出削減目標は異なるが(GDP 原単位で 2015 年までに 17%から
21%)、基準年は 2010 年となっており共通である
(2020 年の目標については 2005
年が基準年となっている)。
④排出枠の総量決定方法とその配分方法
排出枠の総量決定方法については、過去の排出量を踏まえて排出枠の総量を
決定するグランドファザリングの方法と、最もエネルギー効率の高い機器を踏
まえて排出枠の総量を決定するベンチマークの方法の二つのどちらか、あるい
は、そのどちらも併用されているなど、制度によって異なる。排出枠の配分方
法については、大半の排出枠を無償配分によって配分し、一部の排出枠を入札
- 230 -
で配分する場合が多いが、入札によって配分される排出枠の数量は制度によっ
て異なる。
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
規制対象施設は各年の排出量を翌年の 3 月~4 月までの間に報告するとともに
第三者からの検証を受ける必要がある。検証を行う第三者については、各地方
政府がそれぞれ申請手続きと資格要件を制定している。具体的な資格要件とし
ては、例えば、上海や北京の例を見ると、独立法人資格や、登録資金の規模、
中国の関連政策知識の有無、CDM プロジェクト等専門知識の有無、関係 ISO 管理
体制の有無、などが要件あるいは参考情報としている(申請窓口は各改革委員
会)74。
第 3 者の検証を受けたのち、報告した排出量に相当する排出枠を 4 月~6 月ま
での間に規制当局に提出することが求められている。繰り越し・ボローウィン
グについて、繰り越しについては認められているが、一方で、ボローウィング
については全ての制度で認められていない。オフセットの利用については認め
られおり、CCER(中国が独自に実施している自主的排出削減プロジェクトに由
来するクレジット)の利用が 5%~10%の間で認められている。さらに、遵守に
失敗した場合の罰金も設けられている。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
試行的な排出量取引制度を実施している地方政府毎に登録簿を整備している
が、詳細は不明である(CCER を管理している登録簿と接続する形での登録簿と
なっている模様)。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
試行的な排出量取引制度の実施されている地域の合計の排出量は 15 億トン。
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
各制度で異なるが規制対象施設の排出量の合計は、その地域の総排出量の
35%~60%を占めるものとなっている。
74北京:http://www.bjpc.gov.cn/tztg/201411/t8513110.htm
上海:http://www.shdrc.gov.cn/main?main_colid=319&top_id=312&main_artid=23797
- 231 -
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
多くの制度でオークションによる配分方法が導入されるとともに、各地域に
設けられた取引所において取引されている。これまでの市場動向を見ると、取
引量は少量に留まっており、その背景には、試行的な排出量取引制度のもとで
は先物取引が認められず、現物取引しか認められないことが原因となっている。
取引には、規制対象企業以外にも金融機関が参加しており、さらに外資系の企
業の参加を認める動きも見られる75。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
各制度の間で、大きな価格の差がある。最も高い価格帯で取引されている深
セン市の制度では最高値でトン当たり、120 人民元の価格を付けた一方で、湖北
省の制度では、22 人民元の価格に留まっている(2014 年 5 月までのデータ)。
この価格差は排出量の大きさの違いや、制度の違いなどに由来すると考えられ
る。
各地域の排出量取引制度の価格動向
(出典)“State and Trends of Carbon Pricing 2014” World Bankg
75外資企業でも現地法人で一定の条件に満たせば、対象となり、キャップをかけられるとなっている。一
方、取引の仲介としての参加は不明だが日本の MyClimate 社を含んで 5 社が批准をうけたとされている。
「http://www.mofcom.gov.cn/article/i/jyjl/j/201407/20140700659244.shtml」また、日経ではこの報道があ
った。
「http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD270K1_U4A110C1TJ2000/」また 2013 年ではフィン
ランドの会社も参加した報道もあった。http://www.zgjn365.com/news/show-4643.html」
- 232 -
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
2014 年 8 月に中国政府は 2016 年から、全国レベルでの排出量取引制度を導入
する方針を決めており、その場合の市場規模は年間の排出量で 40 億トンを越え、
世界最大の排出量取引市場となる見こみである(EUETS で約 20 億トン)。市場規
模は、現在、実施されている試行的な排出量取引制度よりも更に大きなものと
なる。一部の報道では、国家発展計画委員会は全国レベルでの排出量取引制度
のもとでは 100 人民元程度の価格帯を想定していると報じられているが、どの
ような制度となるのか、まだ明確になっていないこともあり価格がどの程度の
ものとなるのかは現時点では不明である。
4.他類似制度との連携
試行的な排出量取引制度の間では連携する動き(湖北省と広東省)は見られ
るが、他国の制度との連携は不明である。
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
今後、全国レベルでの排出量取引制度の導入に合わせて、他の制度との連携
が検討される可能性がある。既に、EUETS は、2020 年以降の第 4 フェーズにつ
いて、基本的には CDM などのオフセットクレジットの利用は認めない代わりに、
他国の排出量取引制度との連携によって得られる他国の排出削減量については
利用を認めるとの方針が示しているが、これは中国を念頭においたものと考え
られる。カリフォルニア州も中国政府と温暖化に関する協力する協定に署名し
ており、その背景には EU と同様の思惑があるものと考えられる。そのため、全
国レベルでの排出量取引制度の導入に合わせて各国、地域から様々な形で中国
へ市場連携に向けた働きかけがなされていくものと予想される。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
Ecofys が実施した規制対象企業へのインタビュー調査によれば、ほとんどの
制度の排出枠が無償配分により配分されることにより負担軽減がなされるとし
て好意的に受け止めている。ただし、省政府あるいは市政府から発表される規
則が一般的なものに留まる事が多いため、各企業に配分される排出枠が決定さ
れた算定根拠は明確にされていない場合が多く、企業側からは不満の声があが
っている。
さらに、中国全土で事業を展開している企業にとっては、試行排出量取引制
度によって複数の異なる規制のもとに置かれることになり、規制を遵守するた
めの費用が過大なものとなってことへの懸念も表明されている76。同時に、一部
76
Wu Qian et al “Chinese Emission Trading Schemes” Ecofys April 2014 p13~16
- 233 -
の企業が規制当局の指示に従わない姿勢を見せているとの報道もあり、どれだ
け実効的な制度となっているのか疑問が残る77。
このような問題があるものの、中央政府が 2016 年から全国レベルでの排出量
取引制度の導入を明言したため、制度導入はほぼ確実なものとなった。どのよ
うな制度となるのか、まだ不確実な部分は残るが、このような状況を踏まえて
企業側の対応も変化していく可能性もある。
2014 年 6 月 12 日
参照
77
Reuter 報道記事“Beijing emitter ignore carbon scheme, question govt authority”
- 234 -
表:中国で実施されている試行的排出量取引制度の概要
北京市
上海市
広東省
天津市
深セン市
湖北省
重慶市
110
230
541
155
83.4
306
131
50%
50%
42%
60%
38%
35%
35%~40%
産業分野及び業務
エネルギー集約的
電力会社(827 社で
5 つのエネルギー集
26 種の産業セクター
鉄 鋼 、 化 学、 セ メ ン
(送電、熱供給、製
産業(鉄鋼、石油化
省の電力消費の
約的産業(鉄鋼、化
が対象
ト、自動車製造業、
造業、主要な公共施
学、非鉄金属、電力
42%に相当)を含む
学、電力及び熱供
設など(600 社程度)
等)、航空、港湾、鉄
9 つのエネルギー集
給、関化学、石油及
道 、 商 業 施 設 ( 197
約的産業
びガス開発)と大規
2010 年におけ
る総排出量
(単位:100 万)
規制対象施設
の排出量
(総排出量にお
ける割合)
発電、非鉄金属、
規制対象範囲
N/A
社程度)
裾切り値
配分方法
排出枠の
決定方法
模建築物
>10,000tCO2e
>20,000tCO2e
>20,000tCO2e
>20,000tCO2e
>20,000tCO2e
>60,000tSEC
2013 年-2015 年は
2013 年-2015 年は
2013 年-2015 年は
2013 年-2015 年は
無償配分を実施しな
80%の無償配分と、
無償配分。入札用の
無償配分(これまで
無償配分(グランドフ
無償配分(グランドフ
がら、入札による配
残り 20%を産業分
保留分を少量、設
の排出量を踏まえた
ァザリングによって
ァザリングとベンチ
分量を漸増
野毎のベンチマーク
定。
修正係数をグランド
配分量を決定)。入
マーキングによる配
によって配分量を決
ファザリングによって
札は補足的に実施。
分量を決定)。キャッ
定。3 年後に 10%は
配分量を決定)。入
プと排出枠を毎年、
入札を実施。
札の実施は検討中
更新することが可能
過去の排出量+
原単位+
ベンチマーキング
過去の排出量+
ベンチマーキング
(電力)
過去の排出量+
ベンチマーキング
(電力)
過去の排出量+
原単位+
ベンチマーキング
(電力)
- 235 -
ベンチマーキング
過去の排出量+
ベンチマーキング
(電力)
>20,000tCO2e
N/A
過去の排出量
北京市
上海市
広東省
北京市発展 改 革委
IPCC ガイドラインナ
員会が、産業分野毎
ショナルインベントリ
の MRV ガイドライン
天津市
深セン市
湖北省
省政府がガイドライ
深セン市市場監督
現時点では不明
ンを発表。
局が ISO140064 や
(IPCC2006 のガイド
ーを踏まえた”GHG
GHG プロトコルなど
ラインを踏まえたも
を策定。策定済みの
アカウンティング及
を踏まえた「GHG の
のとなる見こみ)。
産業分野は、電力、
び報告に関する技
計測及び報告に関
熱供給、セメント、石
術的な基準(暫定)”
するガイダンス」を発
油化学、その他産
が発表される。この
重慶市
表。GHG6 ガスのモ
MRV
N/A
N/A
業、サービス産業な
ガイドラインで示され
ニタリング及びレポ
ど。
ているのは、繊維・
ーティングのガイドラ
製紙及びパルプ、非
インが示されてい
金属鉱業、鉄鋼、航
る。
空、商業ビル、非鉄
金属、交通・港湾・空
港
市場価格の
10,000-100,000
3 倍から 5 倍
人民元
5%
5%
罰金
市場価格の 3 倍
N/A
市場価格の 3 倍
市場価格の 3 倍
市場価格の 2 倍
10%
10%
10%
10%
N/A
オフセット利用
量
上海
武漢オプティックス
中国深セン排出量
取引所
北京環境取引所
環境エネルギー
中国排出量取引所
天津気候取引所
重慶総合資産・株式
バレー総合所有権
取引所
取引所
取引所
取引所
(出典)各種資料を踏まえてエネ研作成
- 236 -
調査制度:韓国
キャップアンドトレード
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
2010年1月に韓国政府は、低炭素グリーン成長基本法を制定したが、これにより
韓国における温暖化政策の基本的な枠組みが定められた。2020年までに排出削
減目標をBAUレベルから30%削減(絶対値目標)することが目標として掲げられ、
この目標を達成するために様々な政策措置が示されていた。この中で主要な政
策と示されたものが、韓国全体で実施する排出量取引制度である。
低炭素グリーン成長基本法では、排出量取引制度の導入は規定されていたが、
具体的な制度内容については規定されていなかった。政府は、低炭素グリーン
法を受けて 2013 年 1 月からの制度導入を目指して「温室効果ガス排出量の取引
制度に関する法律案」を作成し、2010 年 11 月に国会に提出した。しかし、産業
界などからの強い反発にあい、開始時期を 2015 年 1 月に変更するなどの修正を
余儀なくされ、2011 年 2 月に改めて法案が提出された。その後、1 年以上にわ
たって審議され、2012 年 5 月に国会で採択された。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
「温室効果ガス排出量の取引制度に関する法律」が制度の根拠となっている。
②制度運営者
排出枠の総量の決定する割当計画については企画財政部(財務省)におかれ
た排出量割当委員会が審議するとともに、企画財務長官がその委員長となるこ
ととされている。個々の企業への割当にあたっては、業界に関連する主務官庁
が担当し、規制対象施設の指定とともに、割当計画に基づいて各施設への排出
枠の配分量を決定する。
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)
、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
温室効果ガス及びエネルギー目標管理制度(TMS) の下で規制対象となって
いた施設・事業者(電力、製造業、建築物、輸送部門、廃棄物部門)のうちで、
- 237 -
年間の GHG 排出量(過去 3 年の平均)が以下の基準を満たす事業者あるいは施
設78。


125,000tCO2e を越える事業者
25,000tCO2e を越える施設
②遵守期間
基本的には 5 年毎の遵守期間とするが、2015 年から 2020 年までは変則的な遵
守期間となっており、2015 年から 2017 年を第 1 遵守期間、2018 年から 2020 年
までを第 2 遵守期間とされている(第 3 遵守期間以降は 5 年毎)。
③削減目標
国全体の削減目標を踏まえて決定することとされている。
④排出枠の総量決定方法とその配分方法
国全体の削減目標を踏まえるとともに、各産業別に排出枠の配分が決定され
る。規制対象となっている事業者・施設に対する配分については、事業者から
の申請を踏まえて以下の点を考慮。

事業者の需要(規制対象事業者が申請する過去の排出実績や施設の
拡張計画などを踏まえた予想される排出量)

早期削減実績

貿易・炭素集約度

過去の排出量あるいは技術の水準

産業分野あるいは個々の事業者の予想される成長率

ベンチマーク値
等
これらの点を踏まえて決定された排出枠の多くは無償割当で配分され(第 1
遵守期間は 100%、第 2 遵守期間は 97%、第 3 遵守期間以降は 95%以下)
、少な
くとも 2020 年までは入札によって配分される排出枠はわずかな割合に留まって
いる。
なお、国際的な競争に直面し、炭素リーケージの発生が懸念されるような産
業分野については、一定の基準を満たした場合、100%無償割当されることにな
っている。
TMS は低炭素グリーン成長基本法において規定されたもので、年間 50,000tCO2e 以上の GHG を排出
する事業者(あるいは個々の施設で年間 15,000tCOe2 以上の排出するもの)に排出削減目標を設定し、排
出量を報告することを求める制度。
78
- 238 -
一度決定された排出枠の配分量は、規制対象事業者が排出枠の申請時に想定
していなかった状況に直面した場合、変更することも認められている。変更が
認められるのは以下の場合である。
a. 施設の新設・増設などにより排出量が増加した場合(排出枠の増加が
認められる)
b. 生産品目の変更、事業計画の変更等により排出枠より 30%以上排出
量が増加した場合(排出量の増加分の 50%までの排出枠の増加が認
められる)
c. 送電網の事故などにより事業者が自ら発電したことにより発電量が
増加又は省エネなどで排出量が減少した場合(排出量の増減に応じて
排出枠を変更)
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
規制対象事業者は年度毎に排出量を報告し、排出量に相当する排出枠を規制
当局に提出することが義務付けられている。排出量の報告は年度終了後 3 カ月
以内、排出枠の提出は 6 カ月以内に実施することとされている。繰り越しは認
められており、遵守期間内であればボローウィングも一定の制限(10%まで)
のもとで認められている。
CDM あるいは、その他の国際的な基準と合致する削減事業により得られたクレ
ジットの利用も認められており、排出量の 10%まで利用が認められる(クレジ
ットを排出枠へと変換する形をとる)79。海外だけではなく韓国国内のオフセッ
トプロジェクト80の活用も認められるが、海外のクレジットは使用上限の 50%ま
でとされている。また、海外のクレジットの利用が認められるのは 2020 年以降
となっている。
不遵守した場合には、最大でトン当たり 100,000 ウォンの罰金が課せられる。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
登録簿が設けられ、電子登録簿として管理される。登録簿は主務官庁(韓国環
境部)が管理することとなっており、韓国環境部傘下の温室ガス総合情報セン
79
オフセット排出権に認められるためには、大統領令で定める基準を満たし、かつ担当省庁の認証を得る
ことを要求している。現在においては基準に関する大統領令が策定されていないため、CDM 以外の国外排
出権でどのようなものが認められるかは明確になっていない。
80 2011 年より本格実施されている国内オフセット事業として KVER 制度がある。規制対象外の企業(年
間排出量 100 トン以上)が温室ガス削減事業を登録し、審査を受けて削減量を認証する制度で、削減量は
政府が購入するスキーム。購入価格は 12,000 ウォン/トンが基準であるが、毎年予算等を勘案し購入価格
が変動する仕組み。ただし、現在 KVER は韓国 ETS での使用は認められていない。現在環境部は国内オ
フセットプロジェクトに関する指針等を順次発表しており、2015 年に方法論等を策定するとしている。
- 239 -
ター(Greenhouse Gas Inventory & Research Center of Korea)が運用してい
る。規制対象事業者が取引に参加する際には登録簿内に口座を設けることが求
められている。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
約 6.5 億 tCO2e の排出量。
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
第1次計画期間の対象企業数は526企業。国家温室効果ガス排出量の約 66%。
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
政府が、一定の基準を満たした取引所を排出枠の取引を行う取引所として認
証する。規制対象企業だけではなく、金融機関も参加することが認められてお
り、法律で認定を受けた証券や金融派生商品の取引の仲介を行う仲介業者も取
引に参加することが認められている。2014 年 1 月、環境部は韓国取引所(Korea
Exchange Inc)を排出権取引所として指定した。なお、2015 年 1 月 12 から韓国
取引所における取引が開始されている。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
2015 年 1 月 12 日の取引所における取引開始以来、価格は 2015 年 1 月末現在
約 10000 ウォン(9960 ウォン)で推移しているものの、取引量は少なく、開始
日には 1190 トンの取引量があったが、1 月末時点では取引がほとんどない状況
になっている。政府が基準価格とする 1 万ウォン以下で推移しており、買い注
文の価格が若干上昇しているが、売り量が少なく取引がない状況である。
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
2015 年度の排出量を実際に償却する 2016 年に取引市場が活発化するとみられ
ている。そもそも、排出枠が少ないため、排出権価格が高騰すると予想されて
いるが、売り手と予想される企業もしばらくは様子を見ている状況である。
- 240 -
4.他類似制度との連携
今のところ、そのような動きはない。
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
2015 年 1 月の発足に向けて準備が整った段階であり、現時点では、大きな制
度改革の動きは見られないが、2020 年以降の中長期国家排出量の見通しを試算
する計画であり、その際に 2020 年の BAU 排出量も再試算する方針であるため、
その結果により排出枠が増減する可能性がある。また他の制度との連携なども、
現時点では動きは見られない。制度そのものについては、EUETS などを踏まえて
構築されており、共通する部分も多いことから、もし、今後、EUETS との連携を
行う場合でも、大きな制度の変更は必要ないとの指摘もある。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
当初、企業からは排出量取引制度導入への反発が強かった。それを受けて、
政府は排出枠の配分量を当初よりも増やし、負担軽減に努めている。2014 年国
家温室ガス削減目標達成のためのロードマップが発表されたが、2009 年に試算
した 2020 年の BAU 値が据え置きされており、これが現在の排出量増加傾向を反
映していないということで、産業界が強く反発した。一時期、制度延期の議論
も行われたが、企業への排出枠の増加や市場安定化措置の強化等で負担を緩和
する妥協案が提示されたことで、制度を計画通りに実施することになっている。
- 241 -
調査制度:Regional Greenhouse Gas Initiative
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
2005 年 12 月に、温室効果ガスの排出量削減に向けた排出量取引制度
(Regional
Green house Gas Initiative(RGGI))を 2009 年から実施することをアメリカの
デラウェア州、コネチカット州、メイン州、ニューハンプシャー州、ニュージ
ャージー州、ニューヨーク州、バーモント州の北東部 7 州が合意し、その基本
的な枠組を示した覚書に参加州の知事が署名した(その後、ニュージャージー
州が脱退する一方で、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、メリーラン
ド州が参加)。この合意を踏まえて、RGGI に参加する各州において立法措置をと
る際に、含まれるべき具体的な実施規則を示した Model Rule を 2006 年 8 月が
公開された。これを踏まえて、各州とも州内で立法措置をとり、2009 年から制
度の運用が開始された。
既に、5 年の制度の運営実績を有しているが、これまでの運用の過程で、幾つ
かの課題が明らかになった。特に、問題になったのは、2008 年のリーマンショ
ックによる大不況と、それによる経済活動の停滞が、排出量の大幅な減少につ
ながり、結果として大量の余剰の排出枠が発生し、取引価格が低迷を続けたこ
とであった。
2012 年から 2013 年にかけて制度の改正作業が行われ、2013 年に改正案が発
表された。これを踏まえて、2014 年から、改正された Model Rule に基づいて制
度が実施されることとなっている。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
2005 年に合意された覚書が排出量取引制度を各州に設ける根拠となっている。
制度の具体的な内容については、Model Rule に示されており、各州政府は Model
Rule を踏まえて排出量取引制度を導入するための州法を制定している。
②制度運営者
規制の履行は各州政府の担当機関が行うが、それとは別途、各州における制
度実施を支援し、市場動向を監視する機関、RGGI,inc.が設立されている。
RGGI,inc.は以下の業務を行うこととされている。


排出量データの管理及び排出枠の移転の管理
排出枠のオークションの実施
- 242 -


市場動向の監視
参加州に対する技術的な支援(オフセットクレジットの審査など)
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
電力セクターのみ。その中でも、最高出力 25MW以上で以下の条件を満たす
発電所が規制対象施設となっている。


2004 年 12 月 31 日以前に操業を開始した発電所の場合、年間入熱量の
50%以上を、化石燃料を燃やしている発電所。
2005 年 1 月 1 日意向に操業を開始した発電所の場合、年間入熱量の 5%
以上を、化石燃料を燃やしている発電所
②遵守期間
遵守期間は 3 年間となっており、2009 年に第 1 遵守期間が開始されており、
これ以降、3 年毎の遵守期間が繰り返されることになる。
③削減目標
RGGI に参加している州全体での排出削減目標はない。RGGI においては規制対
象施設における排出枠の総量のみが示されている。
④排出枠総量の決定方法とその配分方法
ⅰ 排出枠の総量の決定
改正前の Model Rule と 2006 年に署名された MoU(その後、脱退したニュージ
ャージー州も含む)においては、第 1 遵守期間の規制対象施設全体の排出枠の
総量(年間)は 121,253,550 ショートトンとされていた。ニュージャージー州
脱退後、新たなに参加した 3 州(マサチューセッツ州、バーモント州)を含め
た排出枠の総量(年間)は、第 2 遵守期間
(2012 年~2015 年)
において 165,184,246
ショートトンとなっていた。そして、この総量は、2015 年から 2018 年の間は、
毎年、2.5%ずつ削減されることになっていた。
しかし、上記のように大量の余剰の排出枠が発生したことを受けて 2013 年の
改正によって、以下の点が改正された。
- 243 -
・排出枠総量の削減:
2014 年以降、当初、予定されていた排出枠総
量を削減
・余剰排出枠補正係数の設定: 第 1 遵守期間に生じた余剰及び第 2 遵守期間に
おいて発生すると予想される余剰排出枠に対
応するため、配分される予定の排出枠総量から
一定の割合を控除する。
・2.5%の削減率の拡大:
当初の Model Rule では、2015 年から 2018 年
の間に限定されていた排出枠総量の削減率
2.5%について、2014 年から 2020 年まで適用
を拡大。
この改正を受けて、2014 年以降 2020 年まで排出枠の総量を以下のように削減
されることとなった。
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
当初の配分量
91,000,000
88,725,000
86,506,875
84,344,203
82,235,598
80,179,708
78,175,215
修正後の配分量
削減率
82,792,336
9.0%
66,833,592
24.7%
64,615,467
25.3%
62,452,795
26.0%
60,344,190
26.6%
58,288,301
27.3%
56,283,807
28.0%
(単位:ショートトン)
ⅱ
配分方法
各州は無償割当あるいは入札のいずれかの方法によって排出枠を配分するこ
とができるが、全ての州が入札によって配分しおり、4 半期に 1 回ずつ、入札は
行われている。入札にあたっては最低留保価格(Minimum Reserve Price)が設
定されており、2014 年は US$2 を下限価格とし、それ以降、毎年、前年の最低留
保価格に 1.025 を乗じた価格とすることになっている。最低留保価格の設定に
より、市場で取引される排出枠の下限価格が設けられることとなった。
入札によって得られた収益は、エネルギー効率の向上、排出量取引制度によ
って生じる一般消費者への影響の緩和策実施、再生可能エネルギーあるいは二
酸化炭素非排出エネルギー技術の促進などのために利用することとされている。
- 244 -
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
ⅰ 遵守方法
規制対象施設は、四半期ごとに四半期終了後、1 か月以内に CO2 排出量の報告
が求められている(各州の規制及び EPA が求める排出量報告規則に則り報告し
なければならない)。
遵守期間最後の四半期の排出量報告書を提出してから、1 か月後の 3 月 1 日ま
でに、遵守期間中の排出量に相当する排出枠を遵守口座に移転する(同時にモ
ニタリング方法が適正に実施されていのか確認する遵守認証も提出する)。
第 3 遵守期間以降(2015 年以降)、3 年間の遵守期間中、1 年目、2 年目につ
いて、中間遵守期間として、それぞれの年の排出量の 50%に相当する排出枠を
翌年の 3 月 1 日までに、遵守口座に移転することが求められている(遵守期間
終了後に償却口座に移転が求められる排出枠の数量は、中間遵守期間に提出が
求められた排出枠を控除したものとなる)。
ⅱ
遵守の手段
規制の遵守にあたっては、排出枠だけではなく、一定の条件のもとで各規制
対象施設の排出量の 3.3%を上限としてクレジットの利用も認められている。
利用が認められるクレジットは、Model Rule が示している要件を満たすプロ
ジェクトに由来するものであることが必要である。現状で認められているのは
LFG、SF6 削減プロジェクト、植林事業、建築物における省エネ、家畜メタン回
収などの 5 つのプロジェクトタイプとなっている。
第 1 遵守期間の開始前、3 年間(2006 年から 2008 年)に実施された規制対象
施設における排出削減への取組みに対して早期削減クレジットが発行されるこ
とになっていた(2009 年 5 月 1 日が申請期限となっており、現時点では発行さ
れていない)。
それ以外にも、発電所において一定の基準を満たすバイオマスを燃焼させた
場合、バイオマス燃焼によって削減される CO2 排出量を、四半期毎に報告する
排出量から控除することも認められており、実質的な遵守手段となっている。
ⅲ
繰り越し及びボローウィング
余剰の排出枠が生じた場合には繰り越しも認められているが、ボローウィン
グは認められていない。
ⅳ
罰則
規制の遵守に失敗した場合(排出量に相当する排出枠あるいはクレジットの
償却ができなかった場合)、規制当局が不足する排出枠の 3 倍に相当する排出枠
- 245 -
を、規制の遵守に失敗した規制対象施設の遵守口座に保有されている排出枠を
控除する。もし、規制対象施設の保有する排出枠が、控除される数量に満たな
い場合は、速やかに不足する排出枠を遵守口座に移転しなければならない。
これ以外にも各州の規制当局は、それぞれ遵守に失敗した規制対象施設に対
する罰金などを設けることが認められている。
ⅴ
市場安定化措置
2013 年の改正まではオフセットクレジットの利用が、市場価格が高騰した場
合のみに利用が認められ、オフセットクレジットを市場価格の安定化のために
活用していた。
2013 年の改正では、オフセットクレジット利用に関する市場動向の条件は削
除され、かわりに 2014 年以降は、
費用抑制留保(CCR,Cost Containment Reserve)
が設けられ、入札において市場で取引される排出枠の価格が一定の基準価格を
越えて高騰した場合(入札における指し値が基準を上回った場合)に、取引価
格の抑制のために入札を通じて追加的に排出枠が供給されることになった。
2014 年以降、以下のような基準価格が設定されている。
2014 年 US$4
2015 年 US$6
2016 年 US$8
2017 年 US$10
2018 年~2.5%ずつ上昇。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
RGGI Inc が登録簿を管理する。
一般口座: 排出枠の保有と移転のために設けられる口座。規制対象施設以
外の事業者も口座を開設することが認められている。
遵守口座: 規制の遵守のために設けられた口座。規制対象施設のみ開設。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
RGGI 参加州全体の排出量は4億 1,900 万メトリックトン(2010 年)81。
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
81
The World Bank “State and Trends of Carbon Pricing 2013”,p52
- 246 -
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
第 1 遵守期間における規制対象施設全体の年間の平均排出量は 1 億 1,400 万
メトリックトン。
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
規制対象事業者、金融機関なども取引に参加している。商品取引所の ICE に
おいて、取引されており、オークション以外にも取引所取引も行われている。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
上記のように、大量の余剰排出枠が発生したこともあり2次取引(転売)は
活発には行われず、入札が取引の中心となっていた。
図:RGGI における排出枠価格動向(入札価格の動向)
(出典)State and Trends of Carbon Pricing 2014
需給バランスを反映して、取引価格も低迷し、制度発足後に、若干、価格が
上昇したが、その後は、下落傾向に転じた。2013 年の改正前にも入札時の最低
留保価格は設定されており、2009 年から 2012 年にかけては、最低留保価格
(US$1.86)が入札価格となっていた。
しかし、2013 年の改正が発表された後、入札価格は上昇に転じた。これは、
改正によって、排出枠の供給が、今後、厳しくなることが予想されたことを踏
- 247 -
まえて、規制対象施設などが積極的に購入するようになったこと受けたものと
考えられる。
2014 年 5 月には、入札価格が価格高騰を防止するために設けられた特別な留
保枠 CCR における基準価格 US$4 を越え、初めて CCR からの排出枠が市場に供給
された。ここで、2014 年分のために準備された CCR における排出枠は全て売却
された。それ以降の入札では追加的な排出枠が供給されないため、その後、入
札価格は更に上昇し、6 月の入札では US$5.02、9 月の入札では US$4.88 と US$5
近辺での取引価格となっている。
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
2013 年の改正において、今後、市場に供給される排出枠が大幅に削減された
ことを受けて、現時点では、取引価格は上昇に転じている。改正のための検討
作業においても、排出枠の削減が市場に与える影響について分析が行われ、こ
の中では、
2014 年から 2020 年にかけて排出枠の取引価格は、
US$3.6 から US$10.2
で推移すると予測しており、これまでは、この予測に近い形で市場も動いてい
る。
この傾向が今後も継続するかどうか慎重に見極める必要がある。景気動向な
どによっては、排出量が大幅に減少する可能性もあり、その場合、価格が再び
伸び悩む状況に陥る場合も考えられる。
価格上昇によってオフセットクレジットの開発が促進される可能性もあり、
利用制限が設けられているものの、追加的なオフセットクレジットが市場に供
給されれば、市場価格の上昇をある程度、抑える役割を果たすことも考えられ
る。
4.他類似制度との連携
特に積極的な動きは示していない。ただ、6 月に発表された EPA のクリーンパ
ワープランを受けて、参加州が拡大する可能性もある。
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
RGGI 参加州は、これまで米国連坊政府機関 EPA に対して、大気浄化法を踏ま
えて作成されている火力発電所における CO2 排出規制案においては、先行する
取組みについても配慮するよう求めていたが、6 月に発表された規制案(クリー
ンパワープラン)の中では、RGGI 側の主張がほぼ認められる形になっていた。
クリーンパワープランが発表された直後の、RGGI, inc.のプレスリリースでも、
この点を踏まえて、クリーンパワープランを高く評価する内容となっている。
カリフォルニア州の制度と比較すると、発電所のみを規制対象としている
- 248 -
RGGI の方が、よりクリーンパワープランの規制内容に近いものになっていると
言えるため、あるいは、今後、参加州が増加することも考えられる。
ただし、RGGI では発電事業者のみを規制対象とし、電力小売事業者は対象と
しておらず、参加州以外からの電力購入が増加することが懸念されており、対
策の必要性が RGGI 参加州においても認識されている。
連邦政府全体での排出量取引制度の実施が望めない中では、このような州外
からの電力購入に対して、どのような対応をするのか、大きな課題と言えるだ
ろう。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
N/D
- 249 -
調査制度:ニュージーランド
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
2008 年に制定された気候変動適応(排出量取引)改正法(Climate Change
Response (Emissions Trading) Amendment Act 2008)において、排出量取引
制度の導入が決定された。この排出量取引制度は、京都議定書の第 1 約束期間
の目標を遵守することを目的として導入されたものである。
京都議定書第 1 約束期間において、ニュージーランドは 90 年比で-0 パーセ
ントの削減目標を担っていたが、その後の経済成長により排出量が大幅に増加
し、京都議定書遵守に向けた何らかの措置の導入が迫られていた。政府は対応
策の検討作業の行い、その結果として排出量取引制度の導入に至った。
なお、当該制度は 2008 年から実施されているが、2012 年に大幅な改正が行わ
れた。2013 年から改正された制度が実施されており、ここでは 2012 年に改正さ
れた内容を踏まえて報告する。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
気候変動適応(排出量取引)改正法(Climate Change Response (Emissions
Trading) Amendment Act 2008)が制度導入の根拠となっている。
②制度運営者
ニュージーランド政府
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)
、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター(規制対象ガス:CO2、CH4、N2O、SF6、HFCs、PFCs)
森林、固定排出源(石炭、天然ガスの輸入者等)、工業プロセス(鉄鋼、アル
ミニウム、クリンカー等)などの分野が規制対象となっているが、規制導入時
期が、産業分野によって異なるとともに、それぞれの産業分野において、規制
対象となっていない事業者も自主的に排出量取引制度に参加することが認めら
れている。当初の規制対象事業者は以下の通り。
- 250 -
セクター
森林
規制開始年
2008 年
対象事業者

義務的参加者
1990 年以前の森林(1989 年 12 月 31 日時点におい
て森林であり、かつ、林業部門が ETS に導入される
2008 年 1 月 1 日に森林である土地)を持つ土地所
有者。

自主的参加者
1990 年以降、森林となった土地の所有者
固定排出源
2010 年

義務的参加者

石炭:年間 2,000 トン以上の採掘・輸入を行う
事業者。

天然ガス:輸入・採掘を行う事業者。

地熱:発電・産業向け熱供給を行う事業者で年
間の CO2 排出量が 4,000 トンを越えるもの

1500 トン以上の廃油を燃料として発電・産業向
け熱供給を行う事業者

廃タイヤ・廃棄物を燃料として発電・産業向け
熱供給を行う事業者


石油精製業者
自主的参加者

義務的参加者から年間、250,000 トン以上の石
炭を購入する事業者

義務的参加者から年間、2PJ 以上の天然ガスを
購入する事業者

産業プロセス
義務的参加者
鉄鋼・アルミ・石灰などの生産業者など。

液体化石燃料
82
義務的参加者
精製を経た液体化石燃料を、家庭向けまたは国内産
業向けに供給する業者。
農業
合成ガス
83
廃棄物
2012 年
窒素肥料製造・輸入業者、食肉業者
2013 年
HFC,PFC,SF6 などを利用している事業者
廃棄物処理施設(埋立地など)の運営主体
82液化化石燃料については、政府から一定額(NZ$25)で購入した排出枠を排出量の半分に対して償却する
ことで義務を履行したと見做される優遇措置が認められている。
83廃棄物については、排出量に対して半分の排出枠の償却によって義務を履行したと見做される優遇措置
が認められている。
- 251 -
農業については、当初、2013 年から規制対象分野となる予定であったが、現
時点では、2012 年から開始された排出量報告のみ義務化され、排出枠の償却は
求められていない。これは、世界の他の国で、いまだに農業が排出量取引制度
の規制対象となっていないこと、農業における経済合理的な GHG 排出削減技術
が確立されていないためであると政府からは説明されている84。
②遵守期間
遵守期間は 1 年間。
森林については 5 年間の遵守期間が設けられている。
③削減目標
ニュージーランドの京都議定書第 1 約束期間の目標は 90 年比-0%。2020 年
までの目標は 10%~20%。
④排出枠総量の決定方法とその配分方法
ⅰ 排出枠の総量の決定と配分方法
森林については下記のように、予め決められた数量が無償割当される。また、
産業分野などで、国際競争に直面しているものについては、炭素リーケージを
防ぐために、ベンチマークを設定し、排出枠量が無償配分される。個々の規制
対象分野に対する配分量は以下の通り。
配分方法及び配分量
森林

無償割当

国有林の使用権(Crown Forest26 license)保持者:18NZU/ha

2002 年11 月1日以降に購入した森林の所有者:39NZU/ha

2002 年 10 月 31 日以前に購入した森林の所有者:60NZU/ha
*自主的な参加者(1990 年以降の植林された森林の保有者)が植林を行った
場合、排出枠が割り当てられる。
産業プロセス 

固定排出源/
合成ガス
84
無償割当(炭素リーケージの可能性の高い産業)

炭素集約度の高い・比較的高い産業及び貿易集約度の高い産業が対象。
生産量、補助率(炭素集約度の高い場合 90%、比較的高い場合 60%)、
ベンチマーク(生産単位当りの原単位で設定される)を踏まえて配分。

無償割当対象外


政府からの固定価格購入制度(NZ$25/tCO2e)を利用可能。
今後、入札により配分される可能性もある。
http://www.mpi.govt.nz/news-resources/faqs/faqs-agriculture-and-the-ets.aspx 参照
- 252 -
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
ⅰ 遵守方法
規制対象事業者は毎年、前年の排出量を 1 月 1 日から 3 月 31 日までの間に報
告し、4 月 30 日までに、排出量に相当する排出枠を政府に償却しなければなら
ない。
森林の規制対象事業者は、一つの遵守期間につき 2h まで伐採することがみと
められており、それ以上、保有する森林を伐採しない限り、排出枠を政府に償
却する必要はない。また、森林分野の規制対象事業者については、森林を伐採
した場合でも、失われた炭素量を相殺するための植林を他の地域で実施すれば、
排出枠を政府に償却する必要はない(相殺するために植林された地域に対して
は、排出枠は発行されない)。
ⅱ
遵守の手段
現在、排出枠以外にも、京都クレジット(RMU,ERUs,CERs)の利用が認められ
ており、利用枠に上限は設けられていない。
ただし、CER、ERU については、HFC および N2O(アジピン酸破壊)プロジェク
トに由来するクレジットの利用が禁止されていた85。さらに 2015 年 5 月以降は、
京都議定書の第 1 約束期間の京都クレジットの利用は認められないこととなり、
さらに CDM への政府承認も停止されることとなった86。
ⅲ 繰り越し及びボローウィング
無制限での繰り越しは認められているが、ボローウィングは認められていない。
ⅳ
罰則
義務の遵守に必要とされる排出枠を償却できなかった場合、不足分を償却す
るかまたは取り消した上で、不足した 1tCO2e につき NZ$30 を支払う必要があ
る。罰金を支払った事業者が、排出枠の償却が不足したのは意図的なものでは
なかったことあるいは、排出枠の償却の際にミスを犯したことなどを申告すれ
ば、100%を最大として減免される可能性もある。
それ以外に、排出量の報告を意図的に改変した場合や管理に問題があった場
合についても罰金が課される。
85
HFC、N2O プロジェクト由来のクレジットのリン禁止は、CER については 2011 年、ERU については 2012
年から適用されている。
86 以下のニュージーランド政府ウェブサイト参照。
http://www.beehive.govt.nz/release/decisions-kyoto-protocol-emission-units
- 253 -
ⅴ
暫定期間の設定
当初、2010 年 1 月 1 日から 2012 年 12 月 31 日までを暫定期間として、固定排
出源、液体化石燃料、工業プロセスについては、2tCO2e の排出に対して 1t の排
出枠を政府に償却することで義務を履行したと見做されていた。また、不足し
た排出枠が不足した場合は、NZ$25 で政府から排出枠を購入し、義務を履行する
ことが認められた。
さらに、この暫定期間は、2012 年の法改正の際に、無期限で延長されること
になっており、2015 年に見直しがなされる予定となっているが、これらの産業
への優遇措置が継続されることになった。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
政府が設けた NZUER において排出枠の発行、移転、償却などが管理されてい
る。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
ニュージーランドの排出量は 7,820 万 tCO2e(2011 年)
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
100%近い排出量が規制対象となっている。規制対象事業者が上流部門(石
炭・石油などのエネルギー商品の輸入業者など)が規制対象となっているため。
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
規制対象事業者、金融機関なども取引に参加している。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
2012 年に NZ$8 から NZ$2.5 まで下落。その後、2013 年から 2014 年 1 月にか
けて NZ$2 から NZ$3.5 の間で取引されていた。上記のように、オフセットクレ
ジットに利用制限が設けられていないため、規制対象企業は、安価な CER を政
府に償却して義務を履行している(政府に償却された 2,700 万 tCO2e の排出枠
のうち、95%は国際クレジット、京都クレジットによるものである87)。
このことは結果として、排出枠への需要が CER に奪われるとともに、排出枠
87
World Bank “State and Trends Carbon Pricing 2014”
- 254 -
May 2014 p 62
の取引価格も CER の取引価格から大きな影響を受けることにつながった。その
ため、政府が設定した固定価格 NZ$25 で排出枠を買取る企業は、いまだに現れ
ていない。
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
ニュージーランドにおける排出量取引市場の取引価格は低迷しているが、京
都クレジットの利用が 2015 年以降、認められなくなったことを受けて、今後、
排出枠の価格が上昇することも予想される。
4.他類似制度との連携
上記のように、2015 年以降、京都クレジットの利用を禁じ、さらに CDM への
参加も認められないことから、他の制度との連携はせず、ニュージーランド国
内のみで完結する制度となっている。
一部の専門家は、ニュージーランドの排出量取引制度は豪州との連携を念頭
に設計されている部分もあり、今後、二つの制度が連携する可能性があると指
摘している。しかし、実際には規制対象分野などが異なること等の理由から、
二つの制度の連携には多くの困難があり、また豪州での排出量取引制度の廃止
などを受けて、二つの制度の連携は実現されなかった88。
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
2013 年の制度改革を受けて、当面はニュージーランド国内で完結した排出量
取引制度として継続していくものと思われる。
ただ、主要な排出源となっている農業については、排出量の報告のみが義務
化されているに留まっており、削減義務は設けられておらず、どのような規制
を設けるのか今後の課題と言えるだろう89。
また、現時点では暫定期間として、固定排出源や工業プロセスに対して優遇
措置が取られているが、この暫定措置が解除された場合は、市場動向に大きな
影響を及ぼすと思われる。そのため 2015 年に予定されている暫定期間の見直し
の結果によっては、市場の状況が大きく変わる可能性もある。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
森林分野における自主的な参加者は、植林を実施することで排出枠を獲得す
ることができる。これにより、ニュージーランド国内における森林吸収源が拡
88 IETA /EDF “New Zealand –The World’s Carbon Markets: Access Study Guide to Emissions
Trading”2014 p4-p5 参照。
89 (前掲 7)p6
- 255 -
大した可能性も指摘されているが、それを裏付ける十分なデータは得られてい
ない。
なお、ニュージーランドの国内市場で流通する排出枠、NZE については政府に
申請すれば AAU へと変換することが認められていた。NZE については、CDM と異
なり AAU へと変換後、森林が伐採されたとしても、買い手は補填の義務を負わ
ない特徴があった(CDM の場合は、例え伐採されなくとも買い手は補填義務を負
うこととされている)。
この NZE は、排出量取引制度の規制対象事業者(義務的及び自主的参加者)
以外にも、Permanent Forest Sink Initiative(PFSI)と呼ばれる制度のもとで、
植林事業を行った事業者に対しても発行されたが、この PFSI のもとで発行され
た NZE の中には、AAU へと変換され海外へと販売されるものも見られた。NZE 由
来の AAU は補填義務がなく、またイメージの良い森林に由来するクレジットと
して、先進国の企業から一定の需要が見られた90。
しかし、このクレジットも、第 2 約束期間の AAU がニュージーランドには発
行されなくなるため、今後は市場に供給されなくなる。
90 日本の企業でも CSR の目的で PFSI によって発行された NZE から転換された AAU を購入する企業もあっ
た(http://www.hibiya.co.jp/carbonoffset/参照)
。
- 256 -
調査制度:Emission Reduction Fund の動向
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
豪州では 2013 年に労働党政権から保守連合政権へと政権交代が行われた。新
たに政権を執った保守連合政権では、労働党政権が導入した排出量取引制度を
廃止することが公約として掲げられていた。Emission Reduction Fund(EMF)は
保守連合政権が、排出量取引制度に代わる豪州における温暖化対策として導入
を図っている制度である。本稿執筆時点(11/14)では、下院で可決され上院に
おいて検討が続けられており、まだ正式な制度としては発足していない。
この基金の基本的な考え方は、豪州国内で実施される排出削減量プロジェク
トに由来するクレジットを排出削減基金が買取り、豪州国内における GHG 排出
削減を達成しようとするものである。制度の趣旨は、排出削減をより費用対効
果に行うことであり、そのためクレジットの買取りにあたっては入札が行われ、
提示価格の安いクレジットから買取り契約が締結されるとされている。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
カーボンファーミングイニシアティブ改正法案(正式名称は、THE CARBON
FARMING INITIATIVE AMENDMENT BILL 以下、法案)。現在、上院で審議中。
②制度運営者
法案では、クリーンエネルギー規制当局(以下、規制当局)が排出削減事業
を実施する事業者との契約などを行うこととされている。
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
基金の買取り対象となりうる排出削減プロジェクトは以下のようなプロジェ
クトタイプ。
- 257 -









商業用建築物の更新
産業施設や一般住宅におけるエネルギー効率の改善
発電所における排出削減
LFG の回収
炭鉱メタンガスの削減
郊外における再森林化
土壌改善
車両や交通機関の改良
草原地における火災管理
②登録手続き
EMF は、規制当局のもとで登録されたプロジェクトに対してされたクレジット
を購入する。登録プロジェクトについては、環境大臣が承認する方法論を踏ま
えて事業を実施することが求められており、規制当局は申請されたプロジェク
トに対して、幾つかの基準を考慮した上で登録する。登録されたプロジェクト
について、事業者は EMF の実施する入札に参加し、クレジットの買取り契約を
別途、締結する。事業者は契約に定められたスケジュールに従いクレジットを
発行し、EMF に売却する。
○方法論の審査手続き:審査において参照される方法論は、以下の手続きを経
て策定される。
i. 環境大臣が、排出削減保証委員会(Emissions Reduction Assurance
Committee)や産業界からの助言の下で、優先的に策定される方法論
を決定。
ii. 産業界及びその他の利害関係者、並びに環境局から構成される技術的
作業部会において排出削減方法論を策定
iii. 策定された排出削減方法論については、パブリックコンサルテーショ
ンを行うとともに、排出削減保障委員会において評価される。
iv. 環境大臣は、排出削減保障委員会の助言を考慮して方法論の承認を決
定。
○登録手続き:規制当局は以下の点を考慮して、EMF の下での買取り対象プロジ
ェクトとして登録する。
- 258 -





申請者の身元、信頼性および能力
提案されたプロジェクトの承認された方法論との適合性
提案されたプロジェクトを実施するための申請者の法的権利(吸収源プ
ロジェクト対象地に対して何らか利益を有する第三者の同意を含む)
提案されたプロジェクトが商業的に実施する準備が整っていること
申請者の資産した排出削減量の信頼性
③入札手続き
登録されたプロジェクトから発行されたクレジットを買取るため、政府は定
期的に入札を行う。この入札では、事業者が希望する売却価格を提示し、その
中から政府は価格の安いものから落札していく方式が執られている。落札した
事業者は政府と別途、契約を締結し、入札において提示した価格及び数量での
売買契約を結び、契約書に示されたスケジュールに従いクレジットを政府に対
して引き渡す。なお、契約を締結した事業者は、自ら実施する排出削減プロジ
ェクトから得られる排出削減量が、契約で定められた数量に達しない場合は、
他のプロジェクトに対して発行されたクレジットを購入し、政府に引き渡すこ
ともできる。
④報告及び監査
政府と契約を締結した事業者は、登録されたプロジェクトは排出削減量を規
制当局に提出し、規制当局は、これらの報告書を検証した上で、クレジットを
発行する。報告方法については、各方法論において定められている。
⑤セーフガードメカニズム
法案とともに、政府から発表された資料では、豪州全体での排出量の増加を
防ぐため、セーフガードメカニズムが設けるとされている。このメカニズムの
対象は、直接排出量が年間 10 万 t/CO2e 以上の施設とするとされ、政府は、2015
年 7 月 1 日を目途に産業界との技術的に重要な点について協議を行うとしてい
る。しかし、政府発表資料の中では、具体的な制度の内容は説明されていない
(法案の中でも具体的な規定は設けられていない)。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
排出削減基金登録簿において登録プロジェクトが管理される。
- 259 -
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
N/D
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
N/D
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
N/D
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
N/D
4.他類似制度との連携
N/D
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
N/D
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
N/D
- 260 -
調査制度:ノルウェー
国内 ETS と EU・ETS との連携
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
国内 ETS は EU・ETS と同様にフェーズ1(2005~2007 年)
、フェーズ2(2008
~2012 年)、フェーズ3(2013~2020 年)に分けることができる。
2005 年 1 月 1 日に国内 ETS が開始され、フェーズ1の期間中は他との連携を
行わずに独立して運用されていたが、EU・ETS との連携を見据えて類似した制度
設計であった。ノルウェーは温暖化対策の柱として 1991 年より炭素税を導入し
ており、国内 ETS は炭素税の対象外の部門に排出抑制を促すことが導入目的で
あったことから、制度対象は産業部門を中心に 51 事業者、総排出量 6.1 MtCO2
と少なく、2005 年の国内排出量におけるカバー率はおよそ 11%に留まっていた。
その後 2007 年 6 月および 2009 年 2 月に国内 ETS 法が改正されたことにより、
フェーズ2では EUETS と相互の部分的な連携が開始され、規制対象は 100 事業
者以上、国内のカバー率は 40%に上昇した。なお、フェーズ3では完全に連携
している。
1-2.制度根拠、制度運営者
温室効果ガス排出量取引法(the Greenhouse Gas Emissions Trading Act
(GGETA))を踏まえて、ノルウェー国内の排出量取引制度は導入された。その後、
EU ETS と連携していることから、EU ETS 関連指令も制度に大きな影響を与えて
いる。
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)
、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
フェーズ1
・石油精製業、鉄鋼業、建築資材、硝子および陶器の製造業など産業を中心
に 51 事業者
フェーズ2
・上記に石油・ガス抽出、ガス処理プラント、石油化学産業が加わり、合計
で 100 事業者を超える
フェーズ3
・フェーズ1およびフェーズ2で規制対象となった施設のほかに EUETS の第 3
- 261 -
フェーズのもとで新たに規制対象となった GHG(N2O,PFC 等)も規制対象。これ
により、ノルウェーの排出量の 50%が ETS の規制対象となった。
②遵守期間
フェーズ1:2005~2007 年
フェーズ2:2008~2012 年
フェーズ3:2013~2020 年
③削減目標
2020 年までに 1990 年と比較して 30%の削減を目標としている。
さらに、2050 年においてはカーボン・ニュートラルを目指している。
④排出枠提供方法
フェーズ1:
1998~2001 年の排出実績に基づく無償配分(95%)
フェーズ2:
年間総キャップ(15 MtCO2e)のうち、無償配分は 5.8 MtCO2e(39%)に留
まり、7.4 MtCO2e(49%)がオークションあるいは他の市場メカニズムを通
じて販売される(1.8 MtCO2e はリザーブ)
。なお、総キャップ(15MtCO2e)は
2005 年水準(18MtCO2e)と比較して 17%減であり、2010 年水準(21MtCO2e)
では 30%の減少となる。
フェーズ3:
規制対象企業は全量オークションなどを通じて取得する必要がある
(EU・ETS と同様、国際競争リスクの高いセクターはベンチマークによって決
定される予定である。)
⑤遵守方法(繰り越し・ボローウィング、オフセットの利用等)と罰金
(1)繰り越し・ボローウィング
期間中の繰り越しは無制限に認められるが、フェーズを跨いでの繰り越しは
認められていない。また、同フェーズ内のボローウィングは認められる。
(2)オフセット
フェーズ2では、年間 3 MtCO2e あるいは年間総割当量の 20%まで、CER と ERU
の利用が認められる。ただし、EU・ETS と同様、原子力発電、二酸化炭素吸収源
および大規模水力発電におけるオフセットは認められない。またノルウェー政
府は、政府として水力および風力事業におけるオフセットの購入を中止してい
る。
- 262 -
(3)罰則
フェーズ1:40 ユーロ/tCO2e
フェーズ2:100 ユーロ/tCO2e
フェーズ3:100 ユーロ/tCO2e
(さらに、事業者名公表の上、不足分について翌年の排出枠から控除する。)
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
ノルウェー政府(環境保護庁)が管理している。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
52.9 MtCO2e(2012 年値)。1990 年比 5.1%増。
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
フェーズ1:制度の規制対象分野における排出量は全体の 11%
フェーズ2:同 40%
フェーズ3:同 50%
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
EU・ETS に同じ。
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
EU・ETS に同じ。
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
EU・ETS に同じ。
4.他類似制度との連携
国内 ETS は EU・ETS と段階的に連携している。フェーズ1(2005~2007 年)
の下では、削減遵守のために EU・ETS から購入した割当量を用いることが認め
られていた(ただし、EU の企業がノルウェー国内割当量を購入することは認め
られていなかった)。その後ノルウェーの国家割当計画の修正を経て、2009 年に
EU・ETS との連携が欧州委員会にて承認された。
- 263 -
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
1991 年以来、ノルウェーではガソリン、燃料油、北海の石油およびガス、紙・
パルプ、重油および軽油、魚粉、国内航空および出荷、の部門において炭素税
を課しており、2005 年時点で CO2 排出量の 68%(温室効果ガスの 50%)をカバ
ーしている。炭素税の対象である沖合の石油施設は、さらに国内 ETS による規
制下にも置かれたが、2007 年から 2008 年にかけて炭素税率は軽減された
($340/tCO2e→$160/tCO2e)。しかし、2013 年には$200/tCO2e まで引き上げら
れている。炭素税率引き上げ時の水準と比べて EU・ETS における割当量の価格
が上昇した場合、炭素税率を引き下げる意図があるとしている。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
不明
- 264 -
調査制度:カザフスタン排出量取引制度
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
カザフスタンは 2009 年 3 月に京都議定書を批准し、既存の環境規制関連の法
律を改正する形で京都メカニズム参加に向けた国内法整備を進めた。2011 年に
は生態系法改正により、アジアで初めてとなる全国的な排出量取引制度の法的
根拠を定めた。
排出量取引制度は 2013 年に試用期間として 1 年間の第一遵守期間が始まった。
2014 年 1 月に第二遵守期間が始まったが、データの整備等を含め現在も運用に
関する細則は検討中である。
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度根拠
2011 年 12 月 3 日の生態系法を改正する法
②制度運営者
環境保護省低炭素開発局及び同省が株の 100%を保有する Zhasyl Damu 社
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
第一遵守期間、第二遵守期間ともに年間の CO2 排出量が 2 万 tCO2e を超える
エネルギー産業(石油・ガス開発を含む)、鉱業、化学の 3 業種が対象となって
いる。現在、第三遵守期間に向けて、農業部門と運輸部門への拡大が検討され
ている。
②遵守期間
遵守期間は 1 年毎になっているが、以下のように3つの遵守期間に分かれて
いる。第一遵守期間は試行期間として設定されている。
・第一遵守期間: 2013 年
・第二遵守期間: 2014~2015 年
・第三遵守期間: 2016~2020 年
- 265 -
③目標
目標として 2020 年の GHG 排出量を 1990 年比マイナス 15%削減することを掲
げている。
④排出枠総量の決定方法とその配分方法
第一遵守期間の排出枠総量は対象企業の 2010 年の排出実績と同量に設定され
た。また、第二遵守期間の 2014 年は 2011 年の排出実績と同量に設定されたが、
2015 年については 2013 年の排出実績のマイナス 1.5%に設定された。2016 年以
降の排出枠総量は 2020 年の目標値に向けて段階的に引き下げされていく予定で
ある。
排出枠総量
遵守期間
排出枠総量
(百万 tCO2)
年
第一遵守期
147
2013 年
間
(リザーブ 20.6)
第二遵守期 2014 年
間
2015 年
第三遵守期
間
155.4
153
未定
(現在策定中)
基準年と参加企業の変化に伴い、排出総量が増加している。
⑤遵守方法(キャリーオーバーとボローイング)と罰金
i. 遵守方法
年間のCO2排出量が 2 万 tCO2e を超える企業は、毎年 4 月 1 日までに報告
書の提出を義務付けられている。また、本制度は CO2 のみを対象としているが、
報告においてはメタンと一酸化窒素についても報告が義務付けられている。排
出量データは認証された第三者機関による検証を経なければならない。排出量
が 2 万トン未満の事業者については、検証は経ていない報告書の提出が義務付
けられている。
ii. 遵守の手段
現在、特定の部門と及びCO2以外のガス(メタンなど)の国内的なオフセ
ット制度について政府内で検討が進められている。
後述の通り、カザフスタンは現在京都メカニズムを利用できないため、京都
クレジットの購入による目標達成はできない。
- 266 -
報告に関する細則は現在検討中である。
iii. キャリーオーバーとボローイング
現在、キャリーオーバーとボローイングは認められていない。
iv. 罰則
第一遵守期間に目標達成できなかった場合のペナルティーは免除された。た
だし、報告を怠った場合にはペナルティーが科された。
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
N/D
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
カザフスタンの 2011 年(直近)の総排出量は 2 億 74 万トンとなっている。
内訳は以下の通りとなっている。
・エネルギー部門: 2 億 12 万トン
・運輸部門:
2000 万トン
・産業プロセス: 1700 万トン
・農業:
2100 万トン
・廃棄物:
400 万トン
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
排出量取引制度の規制対象分野における排出量はカザフスタン全体の 55%を
占める。
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
N/D
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
N/D
- 267 -
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
N/D
4.他類似制度との連携
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
EU ETS、あるいは将来、日本で排出量取引制度が導入されれば、日本との連
携をカザフスタン政府は希望しているとの報告もある。特に EUETS については、
カザフスタンの排出量取引制度の構築時における欧州復興開発銀行からの支援
を通じて、大きな影響を受けている。このことから、EU ETS との連携が比較的、
容易なものとなる可能性もある。一部にはロシア、ウクライナとの連携を目指
しているとの情報もあり、具体的に、どのような制度と連携していくのか、現
時点では明らかではない。
さらに、京都メカニズムを利用したクレジットの移転も検討されているが、
そのためには京都メカニズムの参加資格が必要となる。現在、カザフスタンを
附属書 B に含めるための改正の発効を待っている段階であり、この発効まで京
都メカニズムへの参画はできない。
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
N/D
- 268 -
調査制度:ボランタリーマーケット
1.制度概要
1-1.制度概要、制度設立経緯、
国の規制に基づかない、民間の NGO が独自に設ける基準に則り、排出削減プ
ロジェクトを承認し、そこから生じる排出削減量に対してクレジットを発行す
る取組みが幾つか存在している。
その中で、主要な取組みとなっているのは VCS である(図1参照)。VCS は NGO
として、独自に排出削減プロジェクトの基準や方法論を定め、登録簿を管理し
ている。基準に適合するプロジェクトを承認し、プロジェクトから得られる排
出削減量に対してクレジットを発行している。
また、CDM プロジェクトに由来するクレジットを、規制の遵守ではなく、企業
の CSR 目的で購入する取組みも見られる。その場合、CDM の登録手続き以外に別
途、独自の基準を設け、基準に適合したプロジェクトを認定する Gold Standard
と呼ばれる取組みが活用されている。
以下の図では、ボランタリークレジットの取引市場で取引されているクレジ
ットが、どのような基準に由来するものなのか、まとめたものである。VCS が
61%と市場の大半を占めていることから、ここでは VCS に焦点をあて報告する。
図:ボランタリークレジットの取引動向(2012 年)
(出典)State of the Voluntary Carbon Markets 2013
- 269 -
1-2.制度根拠、制度運営者
①制度の根拠
2005 年 に 、 The Climate group, International Association Emissions
Trading(IETA), World Economic Forum(WEF)などが、自主的な排出削減プロジ
ェクトの基準の設定、プロジェクトの登録などを行う VCS を設立し、VCS のもと
での認められるプロジェクトの条件、方法論に求められる内容、手続きなどを
定めた基準の検討作業に入った。その後、2006 年に World Business Council on
Sustainable Development(WBCSD)も検討作業に参加し、VCS の基準が発表された。
この基準は、何度か改正されているが、基準を踏まえて方法論の承認、プロジ
ェクトの登録手続き、クレジットの発行手続きが実施されている。
②制度運営者
非営利法人として、米国に拠点を置く Voluntary Carbon Standard(VCS)が制度
の管理・運営にあたっている。
1-3.対象セクター、遵守期間、制度による削減目標、キャリーオーバーや
ボローイングの可否((キャップ&トレード型制度の場合、キャップの設定、排
出枠の提供方法、不遵守時の罰則等)、
(クレジット型制度の場合、手続き、MRV
手法等))
①対象セクター
本報告書執筆時(2014 年 11 月)までに VCS のもとで策定された方法論は以下の
分野で、合計で 29 の方法論が策定されている。
VCS における承認方法論
エネルギー関係(再エネ/非再エネ)
1
産業系ガス
2
廃棄物処理
1
農業・森林・土地管理
16
エネルギー需要
4
化学
1
交通
2
鉱業
2
総計
29
- 270 -
図.VCS に登録されているプロジェクトの予想排出削減量(年間)
3.7
エネルギー関係(再エネ/非再エネ)
10.9
産業系ガス
36.3
メタン回収(廃棄物処理/家畜メタ
ン)
農業・森林・土地管理
96.7
7.1
エネルギー供給・需要
10.4
その他
単位:百万トン
(出典)VCS 発表資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
②手続き
VCS のもとでは以下の手続きでクレジット(VCU)の発行に至る。
i. 方法論の選定:プロジェクトで利用する方法論を選定。
ii. プロジェクトの有効化:プロジェクトが VCS の求める条件などを満た
しているか第三者が有効化し、VCS のもとに設けられた専門家機関の
Validation/Verification Body(VVB)の承認を得る。
iii.
iv.
プロジェクトの検証:プロジェクトの排出削減量についてモニタリン
グ結果などを踏まえて第三者が検証し、VVB の承認を得る。
プロジェクトの登録:有効化手続き終了後あるいは検証手続き後に
VCS 登録簿へのプロジェクト登録申請を行う。登録されたプロジェク
トに対して口座が開設され、検証手続きが終了したプロジェクトにつ
いては VCU が発行される。
なお、CDM 登録手続きにおいて有効化審査が終了しているプロジェクトや、その
他、VCS が承認した他のボランタリークレジットを認証する基準のもとで登録手
続きをしているプロジェクトについても、登録手続きを行うことが認められて
いる。ただし、CDM や他の基準のもとで登録手続きを行っているプロジェクトに
ついては、CDM・他の基準のもとでクレジット発行申請を行うことは認められて
いない。
- 271 -
1-4.排出量の管理方法(登録簿の在り方等)
VCS 登録簿は、民間運営事業者が 3 社(NYSE Blue, Markit、CDC Climat)が
管理している。登録簿には以下の口座が設けられている。
Project Proponent プロジェクト登録、クレジットの発行・保有・売却・償却を行う
General Account
Retail Aggregator
End-User
口座。プロジェクトの実施者が開設。
プロジェクト登録、クレジットの発行・保有・売却・償却を行う
口座。クレジットの代理保有、代理償却も認められている。
クレジットの購入・保有・償却を行う口座。クレジットの代理保
有、代理償却も認められている。クレジットの代理保有、代理償
却も認められている。2012 年 9 月に追加されたもので主にオフセ
ットプロバイダーが活用。
クレジットの購入・償却を行う口座。2012 年 9 月に追加。
2.制度規模
2-1.制度が実施されている各国/地域の排出量
N/A
2-2.(キャップ&トレード型制度の場合、カバーする範囲・排出量)(クレ
ジット型制度の場合、発行量(分野別含む)、オフセット利用量)
VCS から発行されるクレジットは VCU と呼ばれ、発行量などは以下の通り。
図:クレジット発行量(プロジェクトタイプ別)
2.7
18.9
エネルギー関係(再エネ/非再エネ)
産業系ガス
24.1
メタン回収(廃棄物処理/家畜メタン)
農業・森林・土地管理
9.4
98.5
エネルギー供給・需要
4.6
その他
単位:百万トン
(出典)VCS 発表資料を踏まえて日本エネルギー経済研究所作成
- 272 -
3.取引動向
3-1.クレジットの取引方法(オークション、OTC 等)
、取引量、主なプレー
ヤー(買い手、売り手)
VCS のみの取引動向についてのデータはないため、ここではボランタリークレ
ジット市場全体の動向を踏まえて報告する。ボランタリークレジット市場では、
取引の大半は、売り手と買い手が直接、取引を行う(OTC)での取引であり、取
引所での取引の割合は少ない。
○買い手
企業の社会貢献(CSR)のためにクレジットを購入する買い手や、規制の遵守
(今後、導入される可能性を見こんだものも含めて)のために購入する買い手
がいる。
2009 年に米国連邦議会において、排出量取引制度の導入の機運が高まった際
には、導入される制度のもとで規制の遵守のために利用が認められるオフセッ
トクレジットに、VCS が含まれるのではないか、との見込みから、取引が活発化
した場合もあった。
また、VCS については、2014 年 8 月にカリフォルニア州の排出量取引制度に
おいて規制対象企業が遵守に活用することが認められることになったため、今
後、カリフォルニア州の規制対象企業が VCU を積極的に購入する可能性がある。
○売り手
プロジェクトデベロッパーなど。
○仲介業者/リテーラー
売り手と買い手を結び付ける仲介業者などが取引に介在する場合もあり、さ
らにプロジェクトデベロッパーからクレジットを先渡し契約で購入し、売り手
に売却するリテーラーが取引の主体となる場合もある。
取引量の推移は図 2 に示した通りとなっており、2008 年には前年の 7,000 万
トンから大きく増加し 1 億 3100 万 tCO2e に達したが、2009 年には 1 億 tCO2e ま
で下落した。それ以降は大きな増加は見られず、2011 年、2012 年は 1 億 tCO2e
近辺の取引量で推移している。
- 273 -
図:取引量の推移
(出典)State of the Voluntary Carbon Markets 2013
3-2.クレジットの価格と最近の価格動向
取引所取引の割合が小さいため、価格推移を示すデータはないが、OTC におけ
る取引総額についての推移を示すデータは公開されている。2011 年、2012 年に
取引されたボランタリークレジットの取引価格については、US$1を下回る価格
で取引されているものもあれば、ごくわずかではあるが、US$10 を越える価格で
取引されており、価格帯に大きな幅が見られる。
ただし、大半のクレジットについては、US$10 を下回る価格で取引されており、
2012 年の加重平均価格で見ると US$5.9/tCO2e となっている。
図:取引額の動向
(出典)State of the Voluntary Carbon Markets 2013
- 274 -
図:取引価格の動向
(出典)State of the Voluntary Carbon Markets 2013
3-3.市場、クレジット価格の将来の見通し
ボランタリークレジット取引市場の動向を毎年、調査している”State of
Voluntary Carbon Markets 2013”によれば、EUETS における価格暴落と需要の
減少を受けて、ボランタリークレジット取引市場に活路を見出そうとする動き
が見られるという。ただし、ボランタリークレジットの取引量は市場全体でも 1
億 tCO2e の取引高に留まっており、10 億 tCO2e を越える余剰の CER を受け入れ
るだけの需要はない。特に、CSR 目的での需要は少量に留まることが多く、その
傾向は今後も変わらないと予想される。
4.他類似制度との連携
N/D
5.将来の見通し(制度改革の状況、将来の他制度との連携可能性等)
N/D
6.国内企業の反応(制度実施への賛否)
N/D
- 275 -
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