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第3章 中学校における評価の具体的な進め方

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第3章 中学校における評価の具体的な進め方
第3章
中学校における評価の具体的な進め方
この章では実態調査を踏まえ,中学校における評価の具体的な進め方や視点について述べる。
実態調査からも分かるように,評価というとすぐに評定に結び付ける傾向がある。大切なこと
は教師が生徒の学習意欲を引き出し,生徒一人一人のよさを伸ばしていくために評価をすること
である。評価に当たっては,基礎・基本の定着を図るために,生徒の学力を集団に準拠した評価
(いわゆる相対評価)ではなく,目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)によってとらえるこ
とが大切である。具体的な観点別の評価規準の作成に当たっては,学習指導要領を基に教科等の
目標・内容を観点別にとらえ直し,まず単元の評価規準を作成し,育成すべき資質や能力を領域
や単元の学習内容に応じて具体化することが必要である。
指導と評価の一体化の工夫のポイントとしては,単元あるいは学期・年間を通して4観点をバ
ランスよく評価することを考え,1単位時間では評価項目を重点化することである。また,設定
した評価の結果を指導に生かすための手だてや方策を考えておくことも大切である。
評価の場面としては,学習指導後だけではなく,学習指導前や学習指導中を含む学習過程全体
に随時設定し,特に,学習指導中の形成的評価を重視する。
生徒の学習状況を見取るための評価方法としては,ペーパーテストのほか,観察,ノート,自
己評価,相互評価等が挙げられる。評価を適切に行うためには,多様な評価方法を組み合わせて
用いることが大切である。このような考え方を基に,評価を計画的に行えるよう指導と評価の計
画を作成することが重要であるので,作成の手順例を示した。
評価の客観性を高めるためには,評価規準を見直したり,授業を通して評価方法の研修を行っ
たりするなどの取組をしていくことが必要である。また,信頼性を高めるためには,生徒や保護
者に対し,評定が目標に準拠した評価に変わったということにとどまることなく,生徒一人一人
のよさや可能性を積極的に評価することにより,豊かな自己実現に役立たせるために行うもので
あるという評価の目的を十分説明しておくことが大切である。
1
中学校における評価の在り方
現在,ゆとりの中で自ら学び自ら考える力などの生きる力の育成を基本とし,教育内容の厳選と
基礎・基本の徹底を図り,一人一人の個性を生かすための学習指導を改善することなどが求められ
ている。これまでの学習指導要領においても,基礎・基本を重視し,自ら学ぶ意欲や思考力,判断
力,表現力などの資質や能力の育成とともに,生徒のよさや進歩の状況などを積極的に評価し,生
徒の可能性を伸ばすことを重視した「新しい学力観」に立つ評価が行われており,このことは各学
校にも浸透してきていたが,従来どおりの知識の量のみを測るような評価が依然として行われてい
る面も見られた。
また,国立教育政策研究所が平成12∼13年度に「学習意欲に関する調査研究」を行い,概要をま
とめている。それによると,中学生の場合には「授業が分かったり,学ぶ目的が明確になったり,
学びの成果が評価されたりしたとき」に「やる気になる」と答えている。このことから,生徒に学
習意欲をもたせることができる学習指導は,教師が生徒の学ぶ目的を明確にさせ,生徒に分かる授
業を展開し,生徒の学びの成果を適切に評価するものということになる。
実態調査の結果からもうかがえるように,評価というと,すぐに評定に結び付ける傾向があった。
このような評価観をこれからは変えていく必要がある。また,各学校の実態に応じた独自の評価規
準を作成している学校は約半数であった。評価規準を用いた評価については,自校化やその活用が
まだ十分でない状況であり,各学校は評価方法等についての教師間の共通理解を目指した研修の在
り方や説明責任に耐え得る客観的な評価の在り方などの課題を抱えている。今後は,生徒の学習意
欲を引き出し,生徒一人一人のよさを評価し伸ばしていくために,学校独自の評価規準作成の下で,
授業中の評価方法の工夫や「おおむね満足できる」状況に到達していない生徒への手だて等を計画
的に行っていく必要がある。
2
目標に準拠した評価の進め方
(1) 評価規準作成の必要性
生きる力をはぐくむ観点から,基礎・基本の確実な定着を図るためには,学習指導を工夫改善
するとともに学習指導要領に示された内容を確実に習得したかどうかの評価を一層徹底する必要
がある。そのためには,目標に準拠した評価が適している。そこで各学校では学習指導要領に示
された目標及び内容を観点別に分析し,「おおむね満足できる」状況が生徒の姿でみえるような
学校独自の客観的で信頼性のある具体的な評価規準を作成する必要がある。
評価規準作成に当たっては,まず,各教科の綿密な目標分析を行わなければならない。このこ
とは授業の目標の明確化につながるとともに授業を構想する教師の力量を高めることにもつなが
る。評価規準を作成することは,育成すべき能力や態度などを具体的に把握することができ,そ
の結果,教材の分析や授業設計などのよりどころにすることができるという点からも重要である。
各学年や各単元で,具体的にどのような能力や態度を身に付けさせていくのかを具体化しておか
なければ,指導の成果や指導方法の適否の判断が不明確になり改善が期待できず,指導と評価の
一体化は望めない。
- 12 -
(2) 評価規準作成上の留意点
これからの評価規準作成に当たって留意すべき点として,次の3点が考えられる。
ア
生徒の学習状況を適切に把握できる評価規準にする。
知識・理解だけでなく,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力なども評価するという新し
い学力観の考え方を一層深め,適切に評価できるようにするため,これまでと同様に,4観点
(ただし,国語科の場合5観点)で評価規準を設定する。
イ
指導に生かすことのできる評価規準にする。
学習指導要領のねらいを実現するためには,学習指導の過程における生徒の学習状況の評価
を学習指導の改善に生かし,生徒の学習状況の改善につなげていくことが一層重要となる。評
価規準は,学習活動に即した具体的なものを,「おおむね満足できる」状況で設定する。その
際,
「おおむね満足できる」状況にない生徒への指導の手だてを示すなど工夫する必要がある。
また,多くの評価規準を設定したり,多くの評価方法を組み合わせたりすることは,評価に追
われ,その結果を後の学習指導の改善に生かすことが十分できなくなる恐れがある。教師が無
理なく生徒の学習状況を的確に評価でき,指導の充実に努められるよう重点化を図り,評価規
準を作成する。
ウ
保護者や生徒にとっても理解しやすい表現になるような評価規準にする。
目標に準拠した評価の信頼性を高めていくためには,どのような評価規準,評価方法により
評価を行ったのかを保護者や生徒に分かりやすく説明し,理解を図ることが重要となる。その
ために単元の具体的な評価規準の設定に当たっては,保護者や生徒にとっても理解しやすい表
現になるようにすることが大切である。
実態調査の結果によると,自校化している学校では,具体的な評価規準を作る際に,自校の生徒
の姿を想定するため,その過程で教師間の共通理解が図られ,指導場面での活用について課題意識
をもち,一方,自校化していない学校では,評価の数値化や評定の出し方,データ蓄積,研修の充
実,共通理解に課題意識をもっているという違いがあった。評価規準は自校化したものが望ましい
ので,国立教育政策研究所等で作成されたものを参考にしながらも,実践を記録するなどして自校
化することが必要である。すでに作成された評価規準も,上述のア∼ウを踏まえ,もう一度見直し,
引き続き校内研究・研修等を通じて評価に関する研究を進めることが大切である。さらに,教師間
の共通理解を図るとともに,国立教育政策研究所や出版社等で作成された評価規準等を参考に,こ
れまでの学校の実践の蓄積を生かし,実践を行いつつ絶えず評価規準の改善を図っていくことが望
まれる。
- 13 -
(3) 評価規準作成の手順
観点別に評価規準を作成するには,下図のような手順を踏まえることになる。
ここでは,国立教育政策研究所の参考資料と対比して述べる。
[評価規準作成の手順]
[国立教育政策研究所の参考資料]
[数学科の例]
学習指導要領
第1
教科目標,評価の観点及びその趣旨等
数学への関心・意欲
数学的な見方や考え方
・態度
数学的な事象 に関心をも 数学的活動を通して,数学
つとともに, 数学的活動 的な見方や考え方を身に付
の楽しさ,数 学的な見方 け,事象を数学的にとらえ,
教科・学年の
目標・内容の
分析
学習指導要領に示された教科・学
や考え方のよ さを知り, 論理的に考えるとともに思
年の目標・内容を観点別にとらえ
それらを事象 の考察に進 考の過程を振り返り考えを
直す。そして教科において育成す
んで活用しようとする。
べき資質や能力を整理し,評価規
数学的な表現・処理
準を作成する際の視点にする。
深める。
数量,図形などについ
ての知識・理解
事象を数量, 図形などで 数量,図形などに関する基
数学的に表現 し処理する 礎的な概念や原理・法則な
仕方や推論の 方法を身に どについて理解し,知識を
付けている。
育成すべき資質や能力を領域や単
元の学習内容に応じて具体化する。
単元の評価規準
の作成
第2
内容のまとまりごとの評価規準及び
その具体例
社会や数学や理科などのように指
導すべき内容が規定されている教
数学への関心・意欲
科と国語や英語のように育成すべ
・態度
き能力が具体的に示されている教
①正の数・負の数に
②正の数・負の数につ
科によって,作成の過程で重点の
ついて,数学的活動
いての基礎的な知識の
置き方が異なることが考えられる。
の楽しさや数学的に
習得や活用を通して,
前者の場合は,指導すべき内容が
考えることのよさに
数学的な見方や考え方
規定されているからこそ,指導の
関心をもち,意欲的
を身に付け,事象を見
過程でどのような資質や能力を育
に問題の解決に活用
通しをもち筋道を立て
成するべきかを再認識する必要が
しようとする。
て考えることができる。
ある。また,後者においては,育
数学的な表現・処理
数量,図形などについて
使って指導すればよいかという教
③正の数・負の数の
④負の数の必要性,正
材分析に重点を置き,教材との関
四則計算をしたり,
の数と負の数の意味や
連を明確にした単元ごとの評価規
合理的に操作,処理
四則計算の解の意味,
準の具体化が大切になる。
したりすることがで
等式の性質や文字を用
きる。
いることの意義を理解
成すべき能力をどのような教材を
具体的な評価規準
の作成
(指導と評価の計画)
(詳細は p.15を参照)
身に付けている。
数学的な見方や考え方
の知識・理解
している。
- 14 -
3
指導と評価の一体化の工夫
(1) 工夫改善のポイント
これまでも指導と評価の一体化が言われ続けてきたが,学校では十分に実現されていなかった。
その要因としては,
・
これまでは観点別学習状況の評価が評定のために利用され,あまり学習指導の改善に生か
されなかったこと。
・
観点別学習状況の評価は目標に準拠した評価で,評定は絶対評価を加味した相対評価であ
ったので,直接観点別学習状況の評価を生かしにくかったこと。
・
教師が毎時間,多くの評価項目を定め,生徒一人一人の状況等をすべて把握しようと考え,
評価方法が煩雑になるとともに,評価のための授業になってしまったこと。
等が挙げられる。
また,本年度4月以降の状況について,実態調査を見ても評価規準を学習指導中に活用してい
る学校より,評定や単元の総括への活用が多い実態があり,さらに活用している学校でももっと
簡便に効率よく評価して指導が充実できないかという課題をもっている。
これらのことを踏まえると,工夫改善のポイントは次のとおりである。
ア
単元を通して4観点を評価する。
イ
1単位時間では評価項目を重点化する。
ウ
評価の結果を指導に生かすために手だてや方策を考える。
エ
生徒の学習状況を適切に見取るために,評価方法の工夫改善を行う。
オ
評価の場面は学習指導後のみならず,学習過程全体に随時設定し,特に学習指導中の形成的
評価を大切にする。
【学習指導前】
学習前の実態把握
【学習指導中】
→
指導 → 評価 → 指導 → 評価
<診断的評価など>
※
<形成的評価など>
【学習指導後】
→
評価
→・・
<総括的評価など>
診断的評価・・・・実際の指導に先立って,既習事項は何か,学習内容とこれまでの体験や生
活との関連性はどうか,興味・関心はどの程度なのかの観点から単元の目
標との関連で生徒の実態をとらえる。
※
形成的評価・・・・生徒の学習指導中の反応に対し,困っている点や誤っている点,生徒のよ
さを生かしている点はどこかなど,繰り返し確認し,指導に生かすために
評価する。
※
総括的評価・・・・指導した内容がその目標に照らし,どの程度達成されたのか,生徒一人一
人の学習上のつまずきはどこにあったのか,生徒のよさはどのように発揮
されたのかなどの学習状況について,多様な観点から評価する。また,教
師が自らの指導について反省と改善の資料を得ることや,生徒が自分の学
習を振り返る資料を得ることができるようにすることも大切なことであ
る。
以上述べた五つの工夫改善のポイントを生かして,評価が計画的に行えるように指導と評価の計
- 15 -
画を作成することが大切である。
(2) 指導と評価の計画
ここでは,指導と評価の計画の作成に当たっての基本的な考え方や作成手順について述べる。
ア
基本的な考え方
(ア)
単元や学期・年間を通してバランスよく評価できるようにする。単元の内容等によっては,
観点の軽重を図ることも必要である。
(イ)
年間を通して4観点がバランスよく評価できるように年間指導計画に評価を位置付ける。
(ウ)
1単位時間の評価に当たっては,「おおむね満足できる」状況にない生徒への手だてを位
置付けるとともに,「おおむね満足できる」状況にある生徒への方策も位置付ける。
(エ)
イ
それぞれの観点に合った適切な評価方法(ノート,発表,作品,自己評価等)を位置付ける。
指導と評価の計画の作成の手順例
ここでは,単元の指導計画にそって評価を盛り込んだ指導と評価の計画を作成する手順につ
いて述べる。
単
①
単元の目標を基に「おおむね
満足できる」状況で観点別に単
元の評価規準を設定する。
②
学習活動を基
に1単位時間の
具体的な評価規
準を設定する。
時
間
元
の
↓
単 元 の 評
関心・意欲・態度
α
思考・判断
β
技能・表現
χ
知識・理解
δ
↓
目
価
標
規
準
具体的な評価規準(重点評価項目)
関 心 思 考 技 能 知 識 評価方法と評価を指導に生かす手だて
意 欲 判 断 表 現 理 解 と方策
態 度
<評価方法>観察,発表など具体的に関
心・意欲・態度を見取る方法を書く。
単位時間の
α (関心・意欲・態度)を生
<手だて>関心・意欲・態度について評
学習活動のポ
徒の具体的な姿で ,「おおむね
価規準に達していない生徒を支援する
イントを書く
満足できる」状況で書く。
具体的な対応を書く。
学習活動
③
具体的な評価
規準を見取る<評
価方法>を設定す
る。
第
1
時
④
具体的な評価
規準の「おおむ
ね満足できる」
状況を達成して
いない生徒に対
する<手だて>や,
達成している生
徒に対する<方
策>を設定する。
第 単位時間の
2 学習活動のポ
時 イントを書く
χ (技能・表現)についてα の
要領で書く。
第 単位時間の
3 学習活動のポ
時 イントを書く
β (思考・判断)について α の
要領で書く。
第 単位時間の
4 学習活動のポ
時 イントを書く
δ (知識・理解)についてα の
要領で書く。
- 16 -
<評価方法>ノートやワークシートなど
技能・表現を見取る方法を書く。
<手だて>第1時を参照
<方策> 技能・表現について,評価規準
に達している生徒を更に伸ばすための
具体的な指導内容を書く。
<評価方法>発表やノートなど思考・判
断を見取る方法を書く。
<手だて>第1時を参照
<方策>第2時を参照
<評価方法>ペーパーテストやノートな
ど知識・理解を見取る方法を書く。
<手だて>第1時を参照
<方策>第2時を参照
(3)
評価方法の工夫改善の視点
具体的な評価方法としては,ペーパーテストのほか,観察,面接,質問紙,作品,ノート,レ
ポートや自己評価,相互評価等が考えられる。ここでは,学校でよく行われているペーパーテス
ト,観察,ノート,自己評価,相互評価の工夫改善の視点について述べる。
ア
ペーパーテスト
テスト問題の作成に当たっては,目標に準拠した問題であるか,個々の問題がどの観点の評
価に相当するのかを検討してテストを構成することが大切である。また,目的に応じて応用・
発展的な問題を作成することも必要である。
イ
観察
観察に当たっては,授業中の生徒の行動や発言,表情を想定した評価規準に基づいて対応す
ることが大切である。そのことにより,生徒の理解度やつまずきを把握でき,次の指導として
何が必要かを判断することができる。また,個々の生徒に対し具体的な指導を行ったり,変容
の過程を長期的にとらえたりするために,観察して見取ったことの中で,特に残しておきたい
ことを補助簿等に記録することも大切である。
ウ
ノート
観点別学習状況の評価のねらいに応じて,生徒の思考の過程や学習に対する意欲,理解の状
況などをとらえられるように,あらかじめノートのとり方等を指示しておく必要がある。また,
ノートに書かれた内容について,理解の状況を確認する問い掛けをし,必要な手だてや方策を
行うことも大切である。
エ
自己評価
自己評価は,生徒自身が自分の学習を振り返ることを通して,自分の学習が目指すところに
どれだけ近づいたか,これからの学習をいかにすべきかを考える機会となる。このことが生徒
が自己の活動を客観的に評価する能力を身に付けることにつながっていく。そこで,自己評価
カードと評価規準とのつながりを考えて,評価項目を設定し,生徒たちに振り返らすことが大
切である。また,生徒によって自己評価能力に差があるので,自己評価と教師の評価,自己評
価とペーパーテストなどの結果を比較し,自己評価を見直させる機会を与えるような指導の工
夫が必要である。さらに,自己評価カードに教師のコメントを記入することにより,生徒の学
習に対する意欲等の動機付けを図ることも大切である。
オ 相互評価
相互評価は,互いのよさを認め,自分自身の参考にするとともに,評価によってより客観的
に自己を見つめることができる。そこで,日ごろから生徒同士のよさを発見し,学び合うこと
の大切さを指導しておくことや,自己評価と併用しながら,授業の中で学習活動の一つとして
行うことが大切である。
評価を適切に行うという観点に立てば,一つの評価方法だけでなく,多様な評価方法を組み合
わせて用いることが大切である。例えば,観察と自己評価を用いた場合,観察により授業中の生
徒の理解度やつまずきを把握したことを,生徒自身の自己評価を見ることでより正確にそれをと
- 17 -
らえることができる。
このようにして,評価の主体者である教師は,評価方法を工夫することで生徒のつまずきやよ
さを確認し,手だてや方策を行うなど,常に指導に生かしていくことが大切である。
4
評価の客観性と信頼性を高める工夫
今後,評価をより客観性や信頼性のあるものにしていくためには,「おおむね満足できる」状況
など,評価規準を明確に説明できるものにしていかなければならない。そのためには,作成した評
価規準を絶えず見直すことが必要である。見取ろうとしているものが見取れるような,自校の生徒
の姿を想定した具体的な評価規準であるか,評価方法が適切であったかを検討することである。さ
らには,評価の分析の仕方など,教師が評価する力を身に付けることも大切である。これらを授業
を通した研修等で高めることも必要になる。
また,実態調査にも見られるように,評定が目標に準拠した評価へ変わったということを生徒や
保護者等へ説明することにとどまるのでなく,生徒をどのように伸ばしていくか。今後の方向性を
説明していくことが大切である。その際,目標に到達したかどうかだけではなく,その生徒がどれ
だけ伸びたのか個人内評価(生徒のよい点や可能性,進歩の状況などの評価)を伝えていくことが,
評価の信頼性を高めることにつながる。そこでは,生徒を励ましたり,努力を支援したりする観点
に立って,生徒の進歩を賞賛したり,努力を要する点を伝えたりすることにも配慮する必要がある。
単に数値化されたデータだけが客観性や信頼性の根拠になるのではなく,評価の目的に応じて,
評価する人,評価される人,それを利用する人が,お互いにおおむね妥当であると判断できること,
生徒自身が自分をどれだけ真剣に見てもらっているかということを認識することが,客観性や信頼
性を得ることにもつながる。その意味でも,評価規準や評価方法等に関する情報が生徒や保護者に
機会をとらえ適切に提供され,理解されていることが大切である。
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